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特許7361022切断先端部において引き込み式用具を用いて組織を除去するための挿入可能な内視鏡器具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】切断先端部において引き込み式用具を用いて組織を除去するための挿入可能な内視鏡器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/3205 20060101AFI20231005BHJP
   A61B 1/018 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A61B17/3205
A61B1/018 515
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020517973
(86)(22)【出願日】2018-10-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 US2018054196
(87)【国際公開番号】W WO2019070874
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-10-01
(31)【優先権主張番号】62/567,664
(32)【優先日】2017-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514136646
【氏名又は名称】インタースコープ, インク.
【氏名又は名称原語表記】INTERSCOPE, INC.
【住所又は居所原語表記】200 Commerce Dr, 2nd Floor Northbridge, MA 01534 (US).
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 祐啓
(74)【代理人】
【識別番号】100201514
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 悦
(72)【発明者】
【氏名】ライアン, ジュニア, ジェフリー ビー.
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/161003(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/109900(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1694392(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡器具であって:
外側カニューレと、当該外側カニューレ内に配置された内側カニューレとを含む切断アセンブリであって、前記外側カニューレが、前記内側カニューレによって切除された物質が前記切断アセンブリに入る経路となる開口部を形成する、切断アセンブリと;
前記外側カニューレの近位端に結合された柔軟性外側チュービングであって、当該柔軟性外側チュービングの回転に応答して前記外側カニューレを回転させる柔軟性外側チュービングと;
前記内側カニューレを前記外側カニューレに対して回転させるため前記内側カニューレの近位端に結合された柔軟性トルクコイルであって、前記柔軟性外側チュービング内に配置されると共に前記柔軟性外側チュービングに対して回転するよう構成された柔軟性トルクコイルと;
前記外側カニューレの半径方向壁内に形成された用具チャンネルと;
遠位先端から延伸する刃先を含むと共に前記用具チャンネル内に収容されるよう寸法決めされた引き込み式用具、と;
前記用具チャンネル内に配置されると共に前記引き込み式用具に取り付けられたリニアアクチュエータとを含み、前記リニアアクチュエータは、当該リニアアクチュエータの作動に応答して、前記引き込み式用具を、前記引き込み式用具の前記遠位先端が前記用具チャンネル内に位置する第1位置から、前記引き込み式用具の前記遠位先端が前記外側カニューレの遠位端を超えて延伸する第2位置まで、前記用具チャンネルに沿って移動させるよう構成されている、内視鏡器具。
【請求項2】
前記開口部は第1開口部であり、前記内視鏡器具が、被験者内部の部位から前記内側カニューレによって物質が除去される前記内側カニューレの第2開口部から、前記内視鏡器具の近位端まで、前記柔軟性トルクコイルの内壁に沿って延伸する吸入チャンネルをさらに含む、請求項1に記載の内視鏡器具。
【請求項3】
前記引き込み式用具は、ステンレス鋼、チタン、または生体適合材料の少なくとも1つから作製されている、請求項1に記載の内視鏡器具。
【請求項4】
前記リニアアクチュエータは、前記引き込み式用具が延伸して前記用具チャンネルから出る距離または前記引き込み式用具の移動の頻度の少なくとも一方を、受信された制御信号に基づいて制御するよう構成されている、請求項1に記載の内視鏡器具。
【請求項5】
前記リニアアクチュエータは、電力によって駆動されるモーターまたは電力によって駆動される圧電素子の少なくとも一方を含む、請求項1に記載の内視鏡器具。
【請求項6】
前記リニアアクチュエータは、電力を受け取ると共に前記引き込み式用具に前記電力を送出して前記引き込み式用具に電気焼灼を行わせることができるように、1つまたは複数の電線に結合されている、請求項1に記載の内視鏡器具。
【請求項7】
前記引き込み式用具は、前記内側カニューレまたは前記外側カニューレの少なくとも一方に取り付けられている、請求項1に記載の内視鏡器具。
【請求項8】
前記リニアアクチュエータは、前記近位端から前記引き込み式用具まで延伸する制御ワイヤを含み、前記制御ワイヤは、前記用具チャンネルに対する前記引き込み式用具の位置を付勢する付勢要素に結合されている、請求項1に記載の内視鏡器具
【請求項9】
前記遠位先端が、第1組の1つまたは複数の電磁石を含み、前記内視鏡器具が:
前記用具チャンネルの前記第2位置で前記外側カニューレに結合された第2組の1つまたは複数の電磁石と;
前記第2組の1つまたは複数の電磁石に結合された電源であって、前記第2組の1つまたは複数の電磁石に磁界を発生させて、前記遠位先端を前記第2位置に維持するため前記第1組の1つまたは複数の電磁石を前記前記第2位置に引きつけるよう構成された電源とをさらに含む、請求項1に記載の内視鏡器具。
【請求項10】
前記磁界は第1磁界であり、前記内視鏡器具が、前記用具チャンネルの前記第1位置で前記外側カニューレに結合された第3組の1つまたは複数の電磁石をさらに含み;
前記電源は、前記第3組の1つまたは複数の電磁石に第2磁界を発生させて、前記遠位先端を前記第2位置に維持するため前記第1組の1つまたは複数の電磁石を前記第1位置から反発させるようさらに構成されている、請求項9に記載の内視鏡器具。
【請求項11】
前記リニアアクチュエータは、当該リニアアクチュエータの作動に応答して、前記引き込み式用具を、前記用具チャンネルに沿って前記第2位置から前記第1位置まで移動させるようさらに構成されており、
前記電源は、(i)前記第3組の1つまたは複数の電磁石に第3磁界を発生させて、前記遠位先端を前記第1位置に維持するため前記第1組の1つまたは複数の電磁石を前記第1位置に引きつけ、 (ii)前記第2組の1つまたは複数の電磁石に第4磁界を発生させて、前記遠位先端を前記第1位置に維持するため前記第1組の1つまたは複数の電磁石を前記第2位置から反発させるようさらに構成されている、請求項10に記載の内視鏡器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2017年10月3日付けで提出された「切断先端部において引き込み式用具を用いて組織を除去するための挿入可能な内視鏡器具(INSERTABLE ENDOSCOPIC INSTRUMENT FOR TISSUE REMOVAL WITH RETRACTABLE BLADE AT CUTTING TIP)」と題した米国仮特許出願第62/567,664号の利益及び優先権を主張し、その開示はその全体をここに引用して援用する。
【背景技術】
【0002】
結腸癌は米国において三番目の癌の原因であるが、癌関連の二番目の死亡原因である。結腸癌は、米国人口のうち35%もの割合で発生する既存の結腸ポリープ(脂肪腫)から発生する。結腸ポリープは、良性、前癌性、および癌性のいずれかでありうる。結腸鏡検査は、世界中で発病率が増加している結腸癌の優れた判別検査ツールであると広く考えられている。文献によれば、結腸鏡検査の判別検査における1%の増加は、結腸癌発病率の3% の減少に繋がる。結腸鏡検査に対する現在の需要は、医療制度が適切な判別検査を行う能力を超えている。過去数十年における結腸癌判別検査の増加にもかかわらず、該当する人口の55%しか判別検査を受けておらず、推奨されている80%には遠く及ばないため、数百万人の患者が危険にさらされている。
【0003】
適切な資源の欠如によって、結腸鏡検査を行う操作者は、典型的には最も大きいポリープだけしか標本として採取せず、将来的に結腸鏡検査を行う前に結腸癌に転化しうる小型で検出可能性がより低いポリープを残してしまうことで患者に関して標本偏差を引き起こす。この標本偏差のおかげで、標本採取されたポリープから陰性の結果が得られたとしても、患者が本当に癌を患っていないことを保証するものではない。既存のポリープ切除技法は精度を欠き、厄介で長時間を要する。
【0004】
現時点では、結腸ポリープの切除には、内視鏡内に形成された作業チャンネルを介して患者の体内に導入されるスネアを使用する。スネアの先端部がポリープの茎の周りに掛けられ、ポリープを結腸壁から切断する。切断が終了すると、切断されたポリープは、操作者により標本として取り出されるまで患者の腸壁に置かれる。この標本を取り出すには、まずスネアを内視鏡から取り除き、生検鉗子またはサクションを内視鏡の同じチャンネルを介して送り込んでこの標本を取り出す。
【0005】
従って、生検用のポリープ除去の正確性およびスピードを向上させる改良型内視鏡器具の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0006】
この発明の概要は、詳細な説明で後にさらに説明する幾つかの概念を単純化した形式で導入することを意図している。この発明の概要は、請求項に記載した主題の重要または必須の特徴を示すことを意図したものではなく、請求項に記載した主題の範囲を限定することを意図したものでもない。また、請求項に記載した主題は、従来技術の問題に関わるいかなる、または、すべての利点を提供する実装例や、従来技術の問題のいかなる、または、すべてを解決したりする実装例に限定されない。
【0007】
患者から無茎性ポリープを患者から正確に除去でき、複数ポリープの標本を効率的に採取できる改良型内視鏡器具が提供される。特に、前記改良型内視鏡器具は、別の引き込み式用具および別の標本取り出し工具を交互に使用することなく、1つまたは複数のポリープのデブリードマンを行いかつ前記デブリードマンを行ったポリープを取り出すことができる。この標本採取は結腸鏡検査と統合できる。幾つかの実装例では、前記内視鏡器具は患者体内から組織を切断しかつ除去できる。こうした幾つかの実装例では、前記内視鏡器具は、軟性内視鏡を介してアクセスした患者体内から実質的に同時に組織を切断しかつ除去できる。
【0008】
一局面では、内視鏡器具は、外側カニューレと、当該外側カニューレ内に配置された内側カニューレと、用具チャンネルと、引き込み式用具と、引き込み式用具アクチュエータとを含む。前記用具チャンネルは、前記外側カニューレの半径方向壁内に形成されるかまたは前記外側カニューレの前記半径方向壁に隣接して配置されている。前記引き込み式用具は、遠位先端を含むと共に前記用具チャンネル内に収容されるよう寸法決めされている。前記引き込み式用具アクチュエータは、当該引き込み式用具アクチュエータの作動に応答して、前記引き込み式用具を、前記引き込み式用具の前記遠位先端が前記用具チャンネル内に位置する第1位置から、前記引き込み式用具の前記遠位先端が前記外側カニューレの遠位端を超えて延伸する第2位置まで、前記用具チャンネルに沿って移動させるよう構成されている。
【0009】
さらに別の局面では、内視鏡器具を操作する方法は、前記内視鏡器具を被験者の部位の近傍に位置決めする段階であって、前記内視鏡器具が、外側カニューレ及び当該外側カニューレ内に配置された内側カニューレと、前記外側カニューレの半径方向壁内に形成されるかまたは前記外側カニューレの前記半径方向壁に隣接して配置された用具チャンネルとを含む、位置決めする段階と;制御信号を前記内視鏡器具の引き込み式用具アクチュエータで受信する段階と;前記制御信号に応答して前記引き込み式用具アクチュエータによって、引き込み式用具を、当該引き込み式用具の遠位先端が前記用具チャンネル内に位置する第1位置から、前記引き込み式用具の遠位先端が前記外側カニューレの遠位端を超えて延伸する第2位置まで前記用具チャンネルに沿って移動させる段階と;前記被験者の標本を前記被験者の前記部位から取り出す段階とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示は例示的に示したものであり、添付図面を参照して説明する。
図1A図1Aは、体内で形成される可能性がある様々な種類のポリープを示す。
図1B図1Bは、本開示の実施形態による改良型内視鏡器具の分解組立透視図である。
図1C図1Cは、本開示の実施形態による図1Aに示した改良型内視鏡器具の端面図である。
図1D図1Dは、本開示の実施形態によるA-A断面について図1Bに示した改良型内視鏡器具の断面図である。
図2図2は、本開示の実施形態による引き込み式用具を含む内視鏡器具のブロック図である。
図3A図3Aは、本開示の実施形態によるリニアアクチュエータにより動作される第1配置にある引き込み式用具を含む内視鏡器具の遠位端の断面図である。
図3B図3Bは、本開示の実施形態による第2配置にある図3Aの内視鏡器具の断面図である。
図3C図3Cは、本開示の実施形態による制御ワイヤにより動作される第1配置にある引き込み式用具を含む内視鏡器具の遠位端の断面図である。
図3D図3Dは、本開示の実施形態による電磁石により動作される第1配置にある引き込み式用具を含む内視鏡器具の遠位端の断面図である。
図3E図3Eは、本開示の実施形態による第1配置にある図3Dの内視鏡器具の詳細図である。
図3F図3Fは、本開示の実施形態による第2配置にある図3Dの内視鏡器具の詳細図である。
図4図4は、本開示の実施形態による引き込み式用具を含む内視鏡器具を動作させる方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で記載する技術は、患者から単一および複数のポリープ並びに新生物の標本を正確かつ効率的に採取できる改良型の軟性内視鏡器具に関する。特に、この改良型内視鏡器具は、患者の体内の治療部位からこの内視鏡器具を除去することなく、1つまたは複数のポリープから標本のデブリードマンを行いかつデブリードマンを行った標本を取り出すことができる。
【0012】
図1Aは、体内で形成しうる様々な種類のポリープを示す。ほとんどのポリープはスネアポリープ切除術によって除去できるが、特に大型のポリープおよび/または無茎性もしくは平坦ポリープは生検鉗子で断片的に、または内視鏡的粘膜切除術(EMR)を用いて一括して除去しなければならない。ある最近の研究は、陥凹型無茎性ポリープ(depressed sessile polyps)が、悪性病変を保持する割合が33%と最も高いと結論づけている。同じ研究は、非ポリープ状の腫瘍性障害(無茎性ポリープ)がポリープを持つ患者の22%または大腸鏡検査を受けた全患者の10%を占めていたことも発見した。結腸ポリープの切除には多くの障害が存在し、具体的には、無茎性ポリープを除去する際の困難性、多数のポリープの除去に要する時間、2つ以上のポリープの切除に対する償還差額(reimbursement differential)の欠如である。到達が困難な無茎性ポリープを切除するのは難題であり、複数のポリープは患者一人にかかる時間が増えるので、ほとんどのポリープはその大きさが増えるにつれ組織が残された状態で断片的に除去されることになり、残った組織の病理が解明されないという標本偏差の一因となり、偽陰性率の増加につながってしまう。
【0013】
結腸鏡検査は完璧な判別検査ツールではない。現在の結腸鏡検査の実施では、内視鏡操作者は、最大のポリープ(有柄性ポリープ(stalked polyps))を除去して、検出および到達が困難な無茎性/平坦ポリープを残すことで患者を標本偏差に曝すことになってしまう。無茎性ポリープは、現在の技法では内視鏡的に除去することは極めて困難か不可能であり、しばしば取り残されてしまう。現在の医療では推定で有柄性ポリープの28%および無茎性(平坦)ポリープの60%が検出、生検、または除去されず、これが標本偏差と結腸鏡判別検査の6%の偽陰性率につながっている。ポリープ切除用の現在の結腸鏡検査器具は、無茎性ポリープを適切に除去できないこと及び多数のポリープを完全に除去する際の非能率によって制限を受けている。臨床文献によれば、10mmより大きい無茎性ポリープは悪性の危険度がより高い。不完全な切除後に残された無茎性ポリープの断片は新たなポリープに成長し、悪性の危険が継続する。
【0014】
最近では、内視鏡的粘膜切除術(EMR)が無茎性ポリープを除去するために使用されてきた。EMRには、注射液を使用して周囲の粘膜を持ち上げた後、スネアを広げてポリープを切り、最後に生検鉗子または取り出し器具を用いてポリープを除去することが含まれる。概ね5.2フィートの結腸鏡の全長を介した注射針およびスネアの導入および除去は、鉗子について繰り返し行う必要がある。
【0015】
本開示は、現世代の結腸鏡とともに動作し、任意のポリープを切断し且つ除去できる柔軟な電動器具を導入することで、スネア、ホットバイオプシー、及びEMRを含む既存のポリープ除去用具の革新的な代替物を送出できる内視鏡用具に関する。本明細書で記載した内視鏡器具は、医師による無茎性又は大型ポリープの処置が向上し、さらに多数のポリープをかなり短い時間で除去可能とするように設計できる。本明細書で記載した内視鏡器具を採用することで、医師は結腸直腸癌をより効率的に早期診断できるようになる。
【0016】
本開示は、図面と合わせて読まれるべき次の記載を介すれば完全に理解されるはずである。この記載では、類似の番号は本開示の異なる実施形態においても類似の要素を示す。この記載において、請求項は実施形態に関連して説明する。当業者であれば、本明細書に記載された方法、装置、およびシステムは例示的なものにすぎず、本開示の趣旨と範囲を逸脱することなく変更可能であることは容易に理解するはずである。
【0017】
A. 内視鏡器具
図面を再び参照すると、図1B-1Dは、本開示の実施形態による内視鏡器具100を示す。内視鏡器具100は、引用して本明細書にその全体を援用する米国特許出願第15/459,870号に記載された様々な内視鏡器具に類似のものでよい。
【0018】
内視鏡器具100は、患者からポリープおよび新生物の標本を採取するよう構成できる。内視鏡器具100は、トルク源(例えば、内視鏡器具100の駆動アセンブリまたは駆動シャフトに結合されたモーター)によって回転されるように構成できる。内視鏡器具100は、被験者内の部位(例えば、被験者の結腸、食道、被験者の肺)内に洗浄流体を流入させるように構成できる。内視鏡器具100は、被験者体内の部位で物質を切除するよう構成できる。内視鏡器具100は、被験者体内の部位で切除された物質の標本を採取するための吸入チャンネルを介して吸引力を与えるよう構成できる。幾つかの他の実装例では、内視鏡器具100は、内視鏡の器具チャンネルなどの器具チャンネルに挿入されるよう構成できる(例えば、結腸鏡等の胃鏡、喉頭鏡、または他の任意の軟性内視鏡)。
【0019】
内視鏡器具100は、近位コネクタ110および柔軟性トルク送出アセンブリ200を含む。近位コネクタ110は、内視鏡器具100の駆動アセンブリ150(例えば、回転エネルギー源により回転されるよう構成された駆動シャフトを含む駆動アセンブリ)を内視鏡用具100の柔軟性トルク送出アセンブリに結合するように構成されている。幾つかの実装例では、近位コネクタ110は、駆動アセンブリ150が結合される第1コネクタ端部114と、柔軟性トルク送出アセンブリ200が結合される第2コネクタ端部118とを含む。図1Bおよび1Dに示したように、第1コネクタ端部114は、内部で駆動アセンブリ150を収容できる開口部を形成する内壁116を含む。例えば、幾つかの実装例では、近位コネクタ110を用いて駆動アセンブリ150を外科コンソールの駆動シャフトに接続できる。近位コネクタ110は駆動伝達アセンブリ122を含む。駆動伝達アセンブリ122は、駆動アセンブリ150に動作可能に結合され、駆動アセンブリ150の回転時に駆動アセンブリ150からトルクを受け取り、柔軟性トルク送出アセンブリ200を回転させるために柔軟性トルク送出アセンブリ200にそのトルクを伝達するよう構成されている。幾つかの実装例では、駆動アセンブリ150、駆動伝達アセンブリ122、および柔軟性トルク送出アセンブリ200の少なくとも一部は同軸となっている。例えば、駆動伝達アセンブリ122は駆動軸102に沿って駆動アセンブリ150に係合でき、駆動伝達アセンブリ122は、柔軟性トルク送出アセンブリ200の近位端204において駆動軸102に沿って柔軟性トルク送出アセンブリ200に係合できる。柔軟性トルク送出アセンブリを回転させると、当該柔軟性トルク送出アセンブリが当該柔軟性トルク送出アセンブリの一つにおいて構成要素(内側カニューレなど)を回転させることにもなることは理解すべきである。
【0020】
幾つかの実装例では、駆動伝達アセンブリ122は、駆動アセンブリ150から柔軟性トルク送出アセンブリ200に伝達される方向および/またはトルクを制御するためのギヤ、ベルト、または他の駆動構成要素を含む。例えば、そうした駆動構成要素は、柔軟性トルク送出アセンブリ200の回転軸を変更するため互いに対して角度を付けて位置決めでき、或いは、駆動軸102に対する柔軟性トルク送出アセンブリ200の回転軸を移すため互いからオフセットさせてもよい。
【0021】
幾つかの実装例では、駆動アセンブリ150は駆動係合部材152を含む。駆動係合部材152は、駆動アセンブリ150を回転エネルギー源に係合させるよう構成されている(例えば、外科コンソールのコンソール駆動アセンブリなどのモーターにより回転される駆動装置)。結合構成部材152は、コンソール駆動アセンブリに固定的かつ/または強固に接続されるよう構成できるので、駆動係合部材152はコンソール駆動アセンブリと同調して回転する。例えば、図1Bに示したように、駆動係合部材152は、コンソール駆動アセンブリに係合する(例えば、ロックする、噛み合う、固定係合する、摩擦係合するなど)よう構成された結合部材(例えば、六角結合部材、ピン結合部材など)を含む近位駆動端154を含む。従って、コンソール駆動アセンブリの回転が、駆動係合部材152を回転させる。
【0022】
幾つかの実装例では、駆動アセンブリ150は、駆動係合部材150の回転を駆動伝達アセンブリ122に伝達するよう構成された1つまたは複数のシャフト部材154を含む。幾つかの実装例では、駆動伝達アセンブリ122は、1つまたは複数のシャフト部材156を含む。シャフト部材156は、駆動アセンブリまたはその構成要素の回転により発生する熱から駆動アセンブリ150の構成要素を断熱するよう構成された断熱部材156a(例えば、熱シース、熱収縮など)含むことができる。シャフト部材156は切断器156bを含むことができる。シャフト部材156は、本明細書で記載した他のトルクコイルに類似したシャフトトルクコイル156cを含むことができる。幾つかの実装例では、シャフト部材156はシャフトトルクロープを含むことができる。シャフト部材156はシャフトチューブ156bを含むことができる。シャフトチューブ156dは、駆動係合部材152の比較的大きい半径(例えば、駆動係合部材152をコンソール駆動アセンブリに係合させることによって、駆動シャフトまたは他の回転エネルギー源からの回転エネルギーを受け取りやすくする比較的大きい半径)より小さい半径を有することができる。例えば、シャフトチューブ156dは、駆動伝達アセンブリ122および/または柔軟性トルク送出アセンブリ200の半径により一致するよう比較的小さくできる。幾つかの実装例では、駆動伝達アセンブリ122および/または柔軟性トルク送出アセンブリ200で受け取られるトルクは、駆動係合部材152の半径とシャフトチューブ156dの半径との間の半径の変化に対応するように修正(例えば、増大)させることができる。
【0023】
幾つかの実装例では、切断アセンブリ201は、外側カニューレと、当該外側カニューレ内に配置された内側カニューレとを含むことができる。この外側カニューレは、切除すべき物質が切断アセンブリ201に入る際に通過する開口部208を形成できる。幾つかの実装例では、開口部208は、外側カニューレの半径方向壁の一部を貫通して形成されている。幾つかの実装例では、この開口部208は、外側カニューレの半径の一部のみ、例えば半径方向壁の円周の最大3分の1を延伸するようにしてよい。吸入チャンネルは吸入ポート(例えば、真空ポート126)と開口部208との間を延伸しているので、真空ポートで吸引力を掛けると開口部208で吸引力が掛けられることになる。この吸引力によって物質が外側カニューレの開口部または切断ウィンドウ内に導入され、次に切断アセンブリ201の内側カニューレにより切断可能となる。
【0024】
この内側カニューレは、開口部208に隣接して配置されるように構成された切断部を含むことができ、開口部208を介して切断アセンブリ201に入る切除対象の物質は内側カニューレの切断部によって切除できる。内側カニューレは中空でよく、内側カニューレの内壁は、内視鏡器具の全長にわたり延伸可能な吸入チャンネルの一部を形成できる。内側カニューレの遠位端は切断部を含むことができる一方、内側カニューレの近位端は開口させることができ、切断部を介して内側カニューレの遠位端に入る物質は内側カニューレの近位端を通過できる。幾つかの実装例では、内側カニューレの遠位端は、外側カニューレの遠位端の内側表面と接触できる。これによって、幾つかの実装例では、内側カニューレが概ね長手方向軸に沿って外側カニューレに対して回転でき、内側カニューレの回転時に内側カニューレをより安定させる。幾つかの実装例では、開口部の大きさが、内側カニューレにより切断または切除される物質の大きさを決定できる。よって、開口部の大きさは、柔軟性トルクコイルの内周により形成される吸入チャンネルのサイズに部分的に基づいて決定される。
【0025】
内視鏡器具100は柔軟性トルクコイル212を含むことができ、当該柔軟性トルクコイル212はその遠位端において内側カニューレの近位端に結合するよう構成されている。この柔軟性トルクコイルは、多数のスレッドおよび多数の層を備えた微細なコイルを含み、これが柔軟性トルクコイルの一端の回転を柔軟性トルクコイルの反対端に伝えることができる。この柔軟性トルクコイルのスレッドの層それぞれは、そのスレッドの層に隣接するスレッドの層それぞれが巻かれている方向とは反対方向に巻くことができる。幾つかの実装例では、この柔軟性トルクコイルは、時計回り方向に巻かれた第1のスレッドの層と、反時計回りに巻かれた第2のスレッドの層と、時計回り方向に巻かれた第3のスレッドの層とを含むことができる。幾つかの実装例では、第1のスレッドの層は、第2のスレッドの層によって第3のスレッドの層から分離されている。幾つかの実装例では、各スレッドの層は1つまたは複数のスレッドを含むことができる。幾つかの実装例では、これらスレッドの層は異なる材料製としたり、厚さ、長さなどの異なる特徴を備えたりすることができる。
【0026】
トルクコイル212の柔軟性により、コイルは、トルクコイル212の曲がった部分でも性能を維持できる。柔軟性トルクコイル212の例としては、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンタアナ所在のアサヒ・インテック・ユーエスエー社(ASAHI INTECC USA, INC)製のトルクコイルが含まれる。幾つかの実装例では、柔軟性トルクコイル212はシースまたはライニング(例えば、シース214)で囲んで、柔軟性トルクコイル212の外側表面と他の表面との摩擦接触を避けることができる。幾つかの実装例では、柔軟性トルクコイル212はポリテトラフルオロエチレン(PFTE)で被覆して、柔軟性トルクコイル212の外側表面と他の表面との摩擦接触を減少させることができる。柔軟性トルクコイル212は、内視鏡器具が挿入される内視鏡の器具チャンネルの直径より小さい外径となるよう寸法決め、成形、または構成できる。例えば、幾つかの実装例では、この柔軟性トルクコイルの外径は1~4ミリメートルの範囲内とすることができる。この柔軟性トルクコイルの長さは、内視鏡の長さを超えるように寸法決めできる。幾つかの実装例では、柔軟性トルクコイル212の内壁は、切断アセンブリ201の内側カニューレの内壁により形成された吸入チャンネルの部分に流体結合される吸入チャンネルの別の部分を形成するよう構成できる。柔軟性トルクコイル212の近位端は近位コネクタア110に結合できる(例えば、近位コネクタ110の駆動伝達アセンブリ122など)。
【0027】
内視鏡用具100は、外側カニューレの近位端に結合可能な柔軟性外側チュービング206を含むことができる。幾つかの実装例では、柔軟性外側チュービング206の遠位端は、結合構成要素を用いて、外側カニューレの近位端に結合できる。幾つかの実装例では、外側カニューレは、柔軟性外側チュービングの回転に応答して回転するように構成できる。幾つかの実装例では、柔軟性外側チュービング206は、内視鏡器具100が挿入される内視鏡の器具チャンネルよりも小さい外径を備えた中空の編組チュービングとすることができる。幾つかの実装例では、柔軟性外側チュービング206の長さは、内視鏡の長さを超えるように寸法決めできる。柔軟性外側チュービング206は、柔軟性外側チュービング206の一部分が延伸する穴を形成できる。柔軟性外側チュービング206は、当該柔軟性外側チュービング206内に部分的に配置される柔軟性トルクコイルに対する柔軟性外側チュービング206の回転を促進する編組、スレッド、または他の特徴を含むことができる。この柔軟性外側チュービングは、被験者内の部位に流体を出力するための洗浄チャンネルの一部を形成できる。
【0028】
内視鏡器具100は、柔軟性外側チュービング206の近位端に結合するよう構成された回転結合器216を含むことができる。回転結合器216は、内視鏡器具の操作者が、回転結合器206に結合されたまたはその一体部分である回転タブ218を介して柔軟性外側チュービング216を回転できるよう構成してよい。回転タブ218を回転させることで、操作者は、柔軟性外側チュービングおよび外側カニューレを内視鏡の長手方向軸に沿ってかつ内視鏡および切断アセンブリ201の内側カニューレに対して回転できる。幾つかの実装例では、内視鏡が患者体内に留置された状態で内視鏡器具が内視鏡に挿入されているときに、操作者は外側カニューレを回転させたいと望むことがある。操作者が開口部を介して切除のために内視鏡器具に入る物質を見ることができるように、操作者は外側カニューレを回転させて、外側カニューレの開口部を、開口部が形成された外側カニューレの半径方向壁の部分が内視鏡のカメラに位置合わせできる位置に配置したいと望むことがある。これが可能になるのは、開口部が、外側カニューレの軸方向壁に形成された開口部でなく、外側カニューレの側部に延伸する半径方向壁に沿って形成されていることが部分的な理由である。
【0029】
幾つかの実装例では、回転結合器220の近位端216は、近位コネクタ110に流体結合でき、内視鏡器具100の洗浄チャンネルが洗浄ポート134から柔軟性外側チュービング206を介して回転結合器216内まで通っている。洗浄ポート134において近位コネクタ110に入る洗浄流体は、被験者内の部位で出力されるように回転結合器216を通過できる。幾つかの実装例では、回転結合器216は、回転結合器216の遠位端222を回転結合器216の近位端220に対して回転可能とする回転ルアー構成要素でよい。こうすることで、柔軟性外側チュービング206が回転する際に、回転結合器216の近位端が結合された構成要素は回転されない。回転結合器216は、柔軟性トルクコイル212の一部がその内部を延伸する回転結合器216の中央部に沿った穴を形成できる。幾つかの実装例では、回転結合器216は、オス・オス回転ルアー結合器とすることができる。幾つかの実装例では、この回転結合器は1200 psiまでの圧力を扱うよう構成できる。
【0030】
幾つかの実装例では、柔軟性トルク送出アセンブリ200は、吸引力を吸入チャンネルに掛けるために吸引源に流体結合するよう構成されている。吸入チャンネルにより、流体および物質(例えば、採取される標本)は、柔軟性トルク送出アセンブリ200の近位端202まで流動させるため、柔軟性トルク送出アセンブリ200の遠位端204内に吸い込むことができる。例えば、切断アセンブリ201が被験者内の部位から物質を切除するために使用された後、流体および物質を柔軟性トルク送出アセンブリ200内に吸い込む(例えば、吸引力によって移動させる)ため、真空圧を吸入チャンネルを介して印加できる。
【0031】
幾つかの実装例では、近位コネクタ110は、吸入用の吸引力を与えるための真空源に結合するよう構成されている。例えば、図1Bおよび1Dに示したように、近位コネクタ110は真空ポート126(例えば、吸入ポート)を含む。真空ポート/吸入ポート126は、本明細書に記載された他の吸入ポートに類似していてもよい。真空ポート126は、内視鏡器具100の吸入チャンネルを真空源(例えば、真空源と内視鏡器具との間に検体受け器が配置された真空源)に流体結合するよう構成されている。真空ポート126は、内視鏡器具100の遠位端204に入る流体および物質を吸入チャンネルを介して真空源に向けて吸引するため、真空ポート126に印加された吸引力を吸入チャンネルに伝達するように構成されている。幾つかの実装例では、図1Bおよび1Dで示したように、真空ポート126は、駆動軸102を(従って吸入チャンネルをも)横切るように配向された真空ポートチャンネルを130含む。これにより、近位コネクタ110および内視鏡器具100の操作に干渉することなく、検体受け器または真空源まで延伸する真空ポート126にチュービングを結合しやすくなる。さまざまな実装例では、真空ポートチャンネル130は、駆動軸102に対して様々な角度で配向できる。幾つかの実装例では、真空チュービング132を真空ポート126に結合できる。
【0032】
幾つかの実装例では、近位コネクタ110は、内視鏡器具100によって被験者内の部位まで出力される流体を提供するための流体源に結合するよう構成されている。例えば、図1B-1Dに示したように、近位コネクタ110は、流体源から流体を受け取るよう構成されると共に洗浄ポートチャンネル136を含んだ洗浄ポート134を含む。洗浄ポート134は、柔軟性トルク送出アセンブリ200の洗浄チャンネル(例えば、柔軟性外側チュービング206と柔軟性トルクコイル212との間に形成されると共に、柔軟性トルク送出アセンブリ204の遠位端200における開口部まで延伸する洗浄チャンネル)に流体結合されるよう構成されており、流体は近位コネクタ110から柔軟性トルク送出アセンブリ200を介して流動して被験者内の部位で出力される。幾つかの実装例では、この流体(例えば、洗浄流体)を用いて柔軟性トルク送出アセンブリ200を冷却できるが、これは回転または他の運動による摩擦によって発熱することがある。幾つかの実装例では、この流体を用いて被験者内の部位を洗浄できる。幾つかの実装例では、この流体は、内視鏡器具100の構成要素の互いに対する回転または他の運動を容易にするための潤滑効果をもたらす。幾つかの実装例では、洗浄ポート134は、流体移動装置又は洗浄ポンプに結合するよう構成されている。洗浄ポート134は、洗浄流体を洗浄ポンプから受け取って、洗浄チャンネル内にその流体を移動させる。幾つかの実装例では、洗浄チャンネルは、洗浄ポート134および/または洗浄ポート134を流体源に接続するためのチュービングを含むよう形成されている。幾つかの実装例では、洗浄ポート134は、流体チュービング140によって流体源に結合できる。流体チュービング140は、流体チュービング140を流体源に接続するよう構成された結合部材144(例えば、排気型スパイク結合部材、非排気型スパイク結合部材など)に結合できる。
【0033】
B. 切断先端部において引き込み式用具を用いて組織を除去するための挿入可能な内視鏡器具のシステムおよび方法
既存の内視鏡器具システムには、被験者体内の部位からポリープおよび他の物質を切除するために回転可能な切断アセンブリを設けることができる。しかし、一定の使用事例又は手順では、この切断アセンブリは、下層組織からのポリープの突出箇所に隣接したそのポリープの比較的大型部分などの、所望の物質を効果的に切除できないことがある。
【0034】
図2は、本開示の実施形態による引き込み式ブレードを含む内視鏡器具250のブロック図を示す。内視鏡器具250は、図1B-1Dに関連して説明した内視鏡器具100の特徴を組み込むことができる。幾つかの実装例では、内視鏡器具250は、駆動アセンブリ255、近位コネクタ260、切断アセンブリ265、および柔軟性トルク送出アセンブリ270を含む。駆動アセンブリ255は、柔軟性トルク送出アセンブリ270を回転させるために、近位コネクタ260を介して柔軟性トルク送出アセンブリ270に結合させることができる。
【0035】
幾つかの実装例では、内視鏡器具200は、引き込み式用具275および引き込み式用具アクチュエータ280を含む。引き込み式用具275は、被験者内の部位で物質を切除するよう構成されている。引き込み式用具275は、切断アセンブリ265が回転する方向を横切る方向に移動するよう構成でき、これにより、内視鏡器具250は、内視鏡処置で有用なコンパクトなフォームファクタを維持しつつ、より広範囲の手技および組織処置でより多く使用可能となりうる。
【0036】
引き込み式用具275は、本明細書で記載されている様々な内視鏡器具の器具チャンネル、カメラ、またはカメラレンズに似た方式で内視鏡器具250の遠位端に配置できる。幾つかの実施形態では、引き込み式用具275は、内視鏡器具250の長手方向軸よりも内視鏡器具250の外表面に近い位置に配置される。よって、内視鏡器具250の長手方向軸を中心とした内視鏡器具250の回転によって、引き込み式用具275は、そうでなければ切断アセンブリ265が達することができない(例えば、もし切断アセンブリ265が長手方向軸に沿って配置されていれば)被験者内部の部位付近の様々な場所に到達できる。
【0037】
引き込み式用具275は、被験者内の部位で物質(例えば、組織)の標本を切断、切り取り、又はその他の方法で除去するよう構成できる。引き込み式用具275は、内視鏡器具250の長手方向軸に概ね平行な方向に延伸した比較的薄い刃を含むことができる。幾つかの実施形態では、引き込み式用具275の刃は、のこぎり歯状である。引き込み式用具275は、ステンレス鋼またはチタンなどの材料から作製してもよい。引き込み式用具275は、生体適合材料から作製してもよい。引き込み式用具275は、引き込み式用具275の表面積と体積の比に関して、物質の標本を切除するのに十分な閾値剛性を上回る剛性を備えることができる。幾つかの実装例では、引き込み式用具275は1つまたは複数のブレードを含む。
【0038】
引き込み式用具275は、引き込み式用具アクチュエータ280によって操作される(例えば、内視鏡器具250から出し入れするなどよって、内視鏡器具250に対して移動させるなど)よう構成できる。幾つかの実装例では、引き込み式用具280は1つまたは複数のブレードを含む。引き込み式用具アクチュエータ280は、第1位置(例えば、引き込み位置)から第2位置(例えば伸展位置)まで駆動し、その後、第1位置に戻すように構成できる。第1位置では、引き込み式用具275の遠位端は内視鏡器具250内に配置できる。第2位置では、引き込み式用具275の遠位端は内視鏡器具250の外部まで延伸できる。
【0039】
引き込み式用具275を具備することの利点は、この引き込み式用具が使用されていないまたは動作していない時に、被験者への創傷の危険が低下することである。外科医が内視鏡器具250を被験者の体内で操作するにあたって、引き込み式用具275は引き込み位置に保持されたままとすることができ、被験者内に挿入されている内視鏡にこの内視鏡器具が挿入されている間は、引き込み式用具275は、結腸、食道、または被験者の他の部位と接触しないようにできる。外科医が引き込み式用具275を使用したい時は、外科医は、内視鏡器具を引き込み位置から伸展位置まで展開させてから使用できる。外科医が引き込み式用具275を必要としなくなれば、外科医は、内視鏡器具を展開位置から引き込み位置まで引き込めることができる。内視鏡器具250に対する引き込み式用具275の展開および引き込みの両方は、内視鏡器具を被験者内からまたはそれ自身が挿入されている内視鏡内から除去することなく行うことができる。
【0040】
本明細書に記載の引き込み式用具275並びに展開および引き込み機構は、当該引き込み式用具の不使用時に当該引き込み式用具を引き込むまたはしまい込む必要がある任意の医療装置に実装できることは理解すべきである。
【0041】
幾つかの実装例では、引き込み式用具アクチュエータ280は、引き込み式用具275の動作を制御信号に基づいて制御するように構成されている。引き込み式用具アクチュエータ280は、内視鏡器具250内で内視鏡器具250の近位端から引き込み式用具アクチュエータ280まで延伸する制御線(図示しない)を介して制御信号を受け取るよう構成できる。引き込み式用具アクチュエータ280は、制御信号の電圧の大きさ、パルス幅、またはその他のパラメータに基づいて引き込み式用具275の制御を実行するよう構成できる。幾つかの実装例では、引き込み式用具アクチュエータ280は、制御信号を受信し且つ引き込み式用具275の動作をその制御信号に基づいて制御するように構成された処理回路を含む。引き込み式用具アクチュエータ280は、引き込み式用具275が延伸して内視鏡器具250から出る距離、または引き込み式用具275の移動頻度の少なくとも一方を(例えば制御信号に基づいて)制御するよう構成できる。
【0042】
ここで図3A-3Bを参照すると、本開示の実施形態による内視鏡器具300aが図示されている。内視鏡器具300aは、図2に関連して説明した内視鏡器具200の特徴を組み込むことができる。幾つかの実装例では、内視鏡器具300aは、外側カニューレ305および内側カニューレ315を形成する内側切断器310を含む。内側切断器310は、内側切断器310が接触する物質を切除するためなどに、内視鏡器具300aの長手方向軸302の周りを(例えば、柔軟性トルク送出アセンブリ215によって)回転されるよう構成できる。物質は内側カニューレ315のなかに(例えば、吸入チャンネルを介して印加される真空力を介して)吸い込まれる。
【0043】
この内視鏡器具には用具チャンネル306を形成でき、このチャンネルは、外側カニューレ305の半径方向壁内に形成するか、外側カニューレ305の半径方向壁に隣接して配置すればよい。内視鏡器具300aは、用具チャンネル306内に配置できる引き込み式用具325aおよび引き込み式用具アクチュエータ330aを含む。図3Aに示したように、引き込み式用具325aは、シャフト335aによって引き込み式用具アクチュエータ330aに接続できる。例えば、引き込み式用具アクチュエータ330aは、駆動軸326に沿ってシャフト335aを駆動して、引き込み式用具325aを用具チャンネル306の外へ(またその内部に戻すように)移動させるように構成できる。幾つかの実装例では、引き込み式用具アクチュエータ330aは、引き込み式用具325aを第1位置(例えば、図3Aに示したように)から第2位置(例えば、図3Bに示したように)まで移動させるよう構成できる。例えば、第1位置では、引き込み式用具325aの遠位端327aは用具チャンネル306内に配置できる(例えば、遠位端327aは外側カニューレ305の遠位端部307の内側に位置している)。第2位置において、遠位端327aは、用具チャンネル306内に配置させることができる。
【0044】
引き込み式用具325aは刃先328aを含む。図3Aに示すように、刃先328aは、遠位端327a(例えば、引き込み式用具325aの、長手方向軸302に遠位の側)から長手方向軸302および引き込み式用具アクチュエータ330aに向けて(例えば、内視鏡器具300aの近位端に向けて)延伸している。刃先328aは、例えば切除対象の物質の境界線に沿って前後に移動されることによって、被験者体内の部位で物質を切除するよう構成できる。刃先328aは、のこぎり歯状の表面を含むことができる。
【0045】
引き込み式用具アクチュエータ330aは、引き込み式用具325aの動作を、制御線340aを介して受信した制御信号に基づいて制御するように構成できる。制御線340aは、ユーザインターフェース(図示しない)から制御信号を受信するように構成でき、例えば、ユーザインターフェースは、ユーザ入力を受信してそのユーザ入力に基づいて制御信号を発生するよう構成できる。引き込み式用具アクチュエータ330aは、引き込み式用具325aの動作を制御信号に基づいて制御するための制御パラメータを特定するよう構成できる。この制御パラメータは、引き込み式用具325aの移動に関する移動期間、移動頻度、または移動間欠性のうち1つまたは複数を含むことができる。引き込み式用具アクチュエータ330aは、制御線340aまたは別個の電力線(図示しない)を介して電力を受け取るように構成可能である。引き込み式用具アクチュエータ330aは、電力によって駆動されるよう構成されたモーター、または受け取った電力に応答して振動するよう構成された圧電素子を含むことができる。
【0046】
幾つかの実装例では、引き込み式用具アクチュエータ330aは、制御線340aから電力を電気信号として受信し、この場合、この電気信号は制御信号も搬送する。例えば、制御線340aから受信した電気信号は、制御信号に従って変調させることができ(例えば、電圧が変調される)、引き込み式用具アクチュエータ330aの電気モーター、圧電素子、または他の駆動要素は、変調電気信号により送出された電力に基づいて作動させることができる。
【0047】
幾つかの実装例では、引き込み式用具アクチュエータ330aは、用具軸326に沿って引き込み式用具325aを(例えばシャフト335aによって)駆動するように構成されたリニアアクチュエータを含む。このリニアアクチュエータは、回転運動を発生するよう構成されたモーターと、この回転運動を往復運動に変換するためこのモーターに接続された駆動シャフトとを含むことができ、この駆動シャフトは、シャフト335aを含みまたはそれに結合されて、引き込み式用具325aを直線運動させることができる。幾つかの実装例では、引き込み式用具アクチュエータ330aは、引き込み式用具325aの位置に対応可能なシャフトの位置を示す信号を出力するよう構成された直線エンコーダーを含む。
【0048】
引き込み式用具アクチュエータ330aは、引き込み式用具325aをこの移動頻度で移動させるよう構成でき、この頻度は、引き込み式用具325aが用具軸326に沿って移動する率(rate)(例えば、工具軸326が、遠位端部307が位置する平面と交差する点などの、遠位端327aが基準点を通過する率)に対応できる。同様に、引き込み式用具アクチュエータ330aは、引き込み式用具325aを移動期間および/または移動間欠性に基づいて移動させるように構成できる。幾つかの実装例では、引き込み式用具アクチュエータ330aは、引き込み式用具325aに電気を送出するよう構成されており、これによって、引き込み式用具325aが電気焼灼を行えるようにしてもよい。
【0049】
引き込み式用具アクチュエータ330aは、内側切断器315または外側カニューレ305に取り付ければよい。例えば、引き込み式用具アクチュエータ330aは、内側切断器315または外側カニューレ305に取り付けて、当該構成要素と共に回転するよう構成できる。
【0050】
ここで図3Cを参照すると、本開示の実施形態による内視鏡器具300cが図示されている。内視鏡器具300cは内視鏡器具300aに類似したものでよいが、後述するように引き込み式用具アクチュエータ330cの動作が異なる。内視鏡器具300cは、遠位端327cおよび刃先328cを含む引き込み式用具325cと引き込み式用具アクチュエータ330cとを含む。
【0051】
幾つかの実装例では、引き込み式用具アクチュエータ330cは、制御ワイヤ335cを含む。この制御ワイヤは、内視鏡器具300の近位端(例えば、参照のため記載した近位コネクタ205などの近位コネクタに隣接している)から用具チャンネル306内に配置された引き込み式用具325cまで延伸する。
【0052】
制御ワイヤ335cは、内視鏡器具300cの遠位端近くに配置された付勢要素(例えば、バネ)を含むか、またはその付勢要素に接続できる。この付勢要素は、引き込み式用具325cを第1位置(図3Cに示した位置)まで付勢するよう構成でき、制御ワイヤを介して引き込み式用具325cに印加される力は、引き込み式用具325cを用具チャンネル306の外に移動させるように、付勢要素の付勢力より大きくすることができる。制御ワイヤは、内視鏡器具300cの遠位端から離れる方向に印加される力を内視鏡器具300cの遠位端に向かう方向に印加される力に変換するよう構成されたプーリーシステムまたは他の機構を含むかまたはそれに結合してよく、これによって内視鏡器具300cの操作者は制御ワイヤ335cに力を印加できるようになり(例えば、制御ワイヤ335cの近位部分を内視鏡器具300cの遠位端から離れる方向に引っ張り)、引き込み式用具325cを用具チャンネル306外に移動させることができる。すなわち、制御ワイヤ335cがこの力を受けていないときは、付勢要素が引き込み式用具325cを第1位置まで戻すことができる。引き込み式用具325cは、制御ワイヤ335cからの力の受け取りに応答して第2位置(例えば、図3Bに示した内視鏡器具300aの第2位置に似た位置)まで移動させるよう構成できる。
【0053】
内視鏡器具300cは、1つまたは複数の軌道要素340cを含むことができる。軌道要素340cは、引き込み式用具325cを収容するよう構成されたスロットを含むことができ、これによって、引き込み式用具325cが用具チャンネル306に入ったりそれから出たりする際に引き込み式用具325cが安定化される。
【0054】
図3D-3Fをここで参照すると、本開示の実施形態による内視鏡器具300dが図示されている。内視鏡器具300dは内視鏡器具300aおよび300cに似たものでよいが、後述するように引き込み式用具325dおよび引き込み式用具アクチュエータ330dの動作が異なる。内視鏡器具300dは、遠位端327dおよび刃先328dを含む引き込み式用具325dと、引き込み式用具アクチュエータ330dとを含む。
【0055】
幾つかの実装例では、引き込み式用具325dは永久磁石を含む。例えば、引き込み式用具325dは、強磁性体材料から作製してもよい。図3E-3Fに示したように、引き込み式用具325dは、遠位端327dに第1磁極(例えば、N極)と、遠位端の反対側に位置した近位端329dに第2磁極(例えば、S極)とを備えることができる。引き込み式用具325dの極性は反対にしてもよいことは理解されるはずである。
【0056】
引き込み式用具アクチュエータ330dは、引き込み式用具325dがそれに沿って平行移動するシャフト335dを含むことができる。例えば、引き込み式用具325dは、第1位置(例えば、図3Eに示したように)から第2位置(例えば、図3Fに示したように)まで平行移動できる。幾つかの実装例では、引き込み式用具アクチュエータ330dは、内視鏡器具300dの近位端に向かう方向への引き込み式用具325dの平行移動を制限するよう構成された止め具331dを含む。
【0057】
幾つかの実装例では、内視鏡器具300dは、1つまたは複数の電力線340dを含む。電力線340dは、内視鏡器具300dの近位端から図3D-3Fに示された遠位端まで電力を伝えるよう構成されている。各電力線340dは、電力を送出するよう構成された1つまたは複数の電線を含むことができる。内視鏡器具300dも1つまたは複数の電磁石345dを含むことができ、これらは電力線340dから電気を受け取り、第1磁極および第2磁極を持つ磁界を発生できる。この磁界の大きさは、電力線340dを介して電磁石345dに送出される電流の大きさに基づいて制御できる。図3Eに示した構成では、電磁石345dのN極は、内視鏡器具300dの遠位端に隣接している一方で、電磁石345dのS極は内視鏡器具300dの遠位端から離れている。
【0058】
電磁石345dが発生した磁界を用いることで、内視鏡器具300dは、1つまたは複数の安定した位置で引き込み式用具325dを保持するように構成できる。例えば、電磁石345dからの磁力を含む引き込み式用具325dにおける力の平衡は、この1つまたは複数の安定した位置においてゼロである。電磁石345dおよび引き込み式用具325dの構成によって、電磁石345dにより発生される磁力が、引き込み式用具325dに印加されうる他の力(例えば、引力、被験者の部位近くの流体からの圧力)に比べ十分大きくなるようにして、そうした他の力は、引き込み式用具325dの動作制御にあたっては無視できるほどにできることは理解されるはずである。図3Eに示すように、第1位置は、引き込み式用具325dのS極が電磁石345dの遠位のN極に最も近くなり、引き込み式用具325dのN極が電磁石345dの近位のS極に最も近くなる、安定した位置となりうる。
【0059】
図3Fに示したように、電磁石345dの両極は、図3Eの構成と比べると反転されている。よって、合力を引き込み式用具325dに印加でき(例えば、極性が同じ磁極が互いに隣接することで)、引き込み式用具325dが用具チャンネル306から図3Fに示した第2位置まで押し出される。第2位置も安定した位置とすることができ、幾つかの実装例では、シャフト335dの遠位端は、内視鏡器具300dの近位端から離れる方向への引き込み式用具325dの平行移動を制限する1つまたは複数の止め具(図示しない)を含むことができる。
【0060】
様々な実装例では、異なる電磁石345dに送出される電流の大きさは異なっていてもよく、これにより、引き込み式用具325dの移動に関する異なる制御方式が可能となる。様々な実装例では、内視鏡器具300dは、それぞれが電力線340dから電力を個別に受け取るよう構成された複数の電磁石345dを含むことができ、これによって、引き込み式用具325dが切断軸326に沿って移動する際に電磁石345dを連続的に起動させるためなどの目的で、電磁石345dの個別のオン/オフが可能となる。
【0061】
ここで図4を参照して、本開示の実施形態による引き込み式用具ブレードを含む内視鏡器具を動作させる方法400のフローチャートを示す。この方法は、本明細書で開示した様々な内視鏡器具(例えば、内視鏡用具200、300a、300c、300d)を用いて実行できる。この方法は、内視鏡器具の動作を制御するよう構成された外科コンソールまたは他のインターフェースを用いて実行できる。この方法は、外科医、技師、または他の医療専門家により実行できる。
【0062】
405において、内視鏡器具が被験者の部位の近傍に配置される。この被験者の部位は、被験者の結腸内のポリープのような切除が望まれる標本または切除対象の他の組織を含むことができる。この内視鏡器具の位置決めは、この内視鏡器具のカメラを用いて監視できる。この内視鏡器具は、外側カニューレと、この外側カニューレ内に配置された内側カニューレとを含むことができる。用具チャンネルは、外側カニューレの半径方向壁内に形成するか、外側カニューレの半径方向壁に隣接して配置させればよい。
【0063】
410において、内視鏡器具の引き込み式用具アクチュエータが動作される。この引き込み式用具アクチュエータは引き込み式用具(例えばブレード)に取り付けでき、引き込み式用具を用具軸に沿って移動可能である。この切断用具は、内視鏡器具の長手方向軸に平行に延伸できる。引き込み式用具アクチュエータはリニアアクチュエータを含むことができる。幾つかの実装例では、引き込み式用具アクチュエータを動作させる段階は、この引き込み式用具アクチュエータに引き込み式用具を移動させる制御信号を引き込み式用具アクチュエータで受信することを含む。引き込み式用具アクチュエータは、この制御信号に基づいて引き込み式用具の動作を制御できる。引き込み式用具を動作させる段階は、引き込み式用具を、切除が望まれる標本の表面に沿って外側カニューレの用具チャンネルから出し入れすることを含むことができる。
【0064】
415では、標本を取り出すことができる。標本を取り出す段階は、内視鏡器具の吸入チャンネル(例えば、内側カニューレに流体結合された吸入チャンネル)を標本の近傍に位置決めして、真空力を標本に印加して標本を内視鏡器具の遠位端から内視鏡器具の近位端まで吸引する段階を含む。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4