(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】サンプルに存在する複数の検体を検出及び/又は定量化するための診断手段
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
G01N33/543 521
(21)【出願番号】P 2020519697
(86)(22)【出願日】2018-10-04
(86)【国際出願番号】 EP2018076993
(87)【国際公開番号】W WO2019068806
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-09-08
(32)【優先日】2017-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(32)【優先日】2017-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(32)【優先日】2017-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(32)【優先日】2017-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(32)【優先日】2017-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】520115048
【氏名又は名称】ユニセンサ
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャボタウクス,ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】グロウデン,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】グラニエル,ブノワ
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-516195(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0024016(US,A1)
【文献】国際公開第2017/075649(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/061772(WO,A1)
【文献】NADEZHDA A TARANOVA,INTEGRATION OF LATERAL FLOW AND MICROARRAY TECHNOLOGIES FOR MULTIPLEX 以下備考,MIKROCHIMICA ACTA,2013年07月13日,VOL:180, NR:11-12,PAGE(S):1165 - 1172,http://dx.doi.org/10.1007/s00604-013-1043-2,IMMUNOASSAY: APPLICATION TO THE DETERMINATION OF DRUGS OF ABUSE
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/543
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本質的に液体のサンプル(E)に存在する複数の検体をそれぞれ、同時に、かつ特異的に検
出するためのイムノクロマトグラフ診断手段(1)を含む、サンプル(E)に存在する検体を、同時に、かつ特異的に検出するための診断セットであって、
前記診断手段(1)が、
-少なくとも1種の可視化分子で標識された認識生物学的分子及び/又は競合リガンドを含有する少なくとも1種の反応混合物(2)と、
-2次元マトリックス配置により配置された異なりかつ既知の回収位置(4,5)で、競合リガンド及び/又は認識生物学的分子が結合する固体支持体の形態の少なくとも1つの回収システム(3)であって、前記支持体上に存在する前記回収位置(4,5)の配置により、前記サンプル(E)に存在する前記検体を識別する、少なくとも1つの回収システム(3)と、
を含み、
a)前記2次元マトリックス配置が、第1座標(X)及び第2座標(Y)を有する座標系に従い画定され、1つの同じ座標Xに対して、それぞれが異なる認識生物学的分子又は競合リガンドを含む複数の回収位置が、異なる複数の座標Yに沿って配置され、1つの同じ座標Yに対して、それぞれが異なる認識生物学的分子又は競合リガンドを含む複数の回収位置が、異なる複数の座標Xに沿って配置されており、
b)所与の検体の前記検
出のために、競合リガンド及び認識生物学的分子からなる診断カップルが、前記認識生物学的分子が前記反応混合物(2)中
に存在し、前記競合リガンドが少なくとも1つの回収位置(4)で結合するように存在し、又はこれらの逆となるように存在し、
c)前記少なくとも1種の可視化分子が蛍光で検出可能な分子であり、
d)前記反応混合物(2)が、前記回収システム(3)とは分離している容器中に存在しており、
前記診断セットは、取り外し可能な固体支持体(3)を光学的に読み取るための装置をさらに含み、当該装置が、
-前記支持体(3)を受領するための配置;
-前記固体支持体(3)を分析するための光学ユニットであって、
○発光強度に従い、第1の波長帯で第1の光線を前記配置に放出する第1の光源と、
○前記配置の少なくとも一部を含む可視化ゾーンの画像を提供する、光学検出器を含むイメージングシステムと、
○画定された画定波長帯をフィルターし、前記配置と前記イメージングシステムとの間に配置されるフィルターと、
を含む光学ユニット;
-固体支持体(3)に関する情報のアイテムを得るための通信手段;
-選択手段であって、
○前記固体支持体(3)上に結合した前記回収位置に対応する所定の検体のリストから、1つの同じ固体支持体(3)からの前記サンプルに対して検
出される検体を選択する、
選択手段;
-前記画像に対する画像処理手段であって、
○読み取られる前記固体支持体(3)に関する情報から、前記画像の有限数のサブアセンブリを判定し、それぞれのサブアセンブリは検体に対応しており、
○前記サブアセンブリから得られる光強度に関するデータを提供する、
画像処理手段;
-判定手段であって、
○前記検体の選択において選択された検体に対応する各サブアセンブリに対して、サブアセンブリ強度を計算し、
○前記サブアセンブリ強度に基づき、前記検体の選択において選択された検体に対応する各サブアセンブリに対して、前記サンプルからの検体情報を判定する、
判定手段;
及び
-前記検体の選択において選択された検体に対応する各サブアセンブリに対して分析された、前記サンプルからの前記検体情報を伝達するように構成された伝達手段;
を備える診断セット。
【請求項2】
前記回収位置(4,5)は、それぞれが20μm~2mmの直径を有する点の形態の2次元マトリックス配置により配置されることを特徴とする、請求項1に記載の診断セット。
【請求項3】
前記回収システム(3)は、サンプルに存在する少なくとも15個の異なる検体と、制御及び/又は較正のための少なくとも1つの回収位置と、を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の診断セット。
【請求項4】
固体支持体の形態の前記回収システム(3)は、膜、又は膜のセットを含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の診断セット。
【請求項5】
前記少なくとも1種の可視化分子は、化学及び/又は遺伝子カップリングによって、前記認識生物学的分子と、及び/又は前記競合リガンドと、融合していることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の診断セット。
【請求項6】
前記化学及び/又は遺伝子カップリングは、少なくとも1つの静電気力、少なくとも1つのペプチド結合、少なくとも1つのレポーター遺伝子、又はこれらの組み合わせにより実施されることを特徴とする、請求項5に記載の診断セット。
【請求項7】
前記検体は、残留薬物、毒素、ウイルス、細菌、ホルモン、重金属、不純物、アレルゲン、及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の診断セット。
【請求項8】
前記検体は、残留薬物であり、ペニシリン、セファロスポリン、テトラサイクリン、スルホンアミド、アミノグリコシド、アミノシクリトール、マクロライド、キノロン、イオノフォア、カルバドックス、ニトロフラン抗生物質、フェニコール、及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項7に記載の診断セット。
【請求項9】
本質的に液体のサンプル(E)に存在する複数の検体をそれぞれ、同時に、かつ特異的に検出及び/又は定量化する方法であって、
-請求項1~8のいずれか一項に記載の診断セットを準備し、
-前記診断セットの前記反応混合物(2)を前記サンプル(E)と接触させて液体を得、
-0~70℃の温度にて、15分以下の期間、インキュベートし、
-前記診断手段(1)の前記回収システム(3)の末端を前記液体に浸漬し、
-0~70℃の温度にて、15分以下の期間、インキュベートし、
-前記取り外し可能な固体支持体(3)を光学的に読み取るための前記装置により、前記回収システム上の結果を定性的及び/又は定量的に解釈する、
ことを含む方法。
【請求項10】
前記取り外し可能な固体支持体(3)を光学的に読み取るための前記装置は、
-選択プロファイルの読み取りを可能にする手段;
をさらに含み、
前記選択手段は、前記選択プロファイルに基づき検体の前記選択を実施するように構成されている、
ことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の診断セット。
【請求項11】
サンプル(E)に存在する検体のクラスをそれぞれ、同時に、かつ特異的に検
出するための、請求項1~8のいずれか一項に記載の診断セットの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本質的に液体のサンプルに存在する、複数の検体をそれぞれ、同時に、かつ特異的に検出及び/又は定量化するための、イムノ(免疫)クロマトグラフ診断手段であって、
-少なくとも1種の可視化分子で標識した認識生物学的分子及び/又は競合リガンドを含有する少なくとも1種の反応混合物と、
-異なりかつ既知の回収位置で、競合リガンド及び/又は認識生物学的分子が結合する固体支持体の形態の少なくとも1つの回収システムであって、上記支持体上の上記回収位置の配置により、上記サンプルに存在する上記検体を識別するための、少なくとも1つの回収システムと、
を含む、手段に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、サンプルに存在する検体をそれぞれ、同時に、かつ特異的に検出及び/又は定量化することを可能にする診断手段への関心が増えており、これは特に食品分野、そして同様に医学分野におけるものとなっている。
【0003】
実際、公衆衛生に伴う新規の問題には、好適な治療を提供する点において開発されなければならない迅速かつ効果的な診断解決策に対して、継続して取り組まれなければならない。例えば、毎年世界中で、約60000人のヒトの中毒状態が、藻類により生み出される毒素(軟水シアノトキシンを含む)と関連しており、全体の死亡率の約1.5%を占めている。海洋生体毒素(フィコトキシンとも呼ばれる)は、特定の植物プランクトン種により生み出され、例えば魚類、カニ、又は濾過摂食二枚貝(甲殻類)(ムラサキイガイ、カキ、ホタテガイ、及び食用二枚貝など)などの、様々な海洋種にて蓄積される可能性が高い。著しい量の汚染甲殻類を消費すると、深刻な中毒の犠牲になる可能性がある。したがって、例えば血液又は尿を分析することによりこれらの海洋生体毒素を検出する迅速かつ効果的な診断手段を有することが重要である。
【0004】
上述のような診断手段は、多数の様々な病状を担うウイルスを検出及び定量化するためにもまた使用することができる。このような診断手段により、(1)観察される臨床的徴候のウイルス起源を証明し、その役割を有するウイルス(virus responsible)を診断し(例えば肝炎又はヘルペス)、感染症の生物学的進展を監視する(例えば、血液中でウイルス:HIV、HBV、HCVを定量化することにより)こと;(2)感染症(例えばHIV又はB型肝炎)の生物学的進展を監視すること;(3)治療のための決断を可能にし、抗ウイルス治療薬の有効性(例えば、ガンシクロビルによるサイトメガロウイルス感染症の治療に関する)を判断すること;(4)血液、臓器、及び組織を与えた(giving)際に、ウイルス感染の伝染を予防すること;(5)(例えば、風疹の場合の)免疫状態を評価すること;(6)母集団内での血清マーカを(例えば、有病数調査又は疫学的研究の間に)研究することが可能となる。一般に、医学的診断は、検出されるパラメータを最大程度にし、治療の標的、及び患者に提供されるケアの種類をより良くすることを目標としており、多くの場合、特に、十分に知られていない二次的影響を制限する。
【0005】
更に、食品領域、及びより具体的には乳製品業界においては、製品を監視して制御することは、その製造のできる限り早い段階で試験を実施することを伴う。理想的には、これらの試験は、原材料の製造場所、又は、それらの変換場所にて実施されなければならない。これらのスクリーニング試験は特に、化学的汚染物質(例えば抗生物質性残留物及び毒素)、タンパク質(例えばアレルゲン)、又は病原体(例えばウイルス、寄生生物、若しくは細菌)である、特定の検体の存在及び量を検出するように設計されている。健康基準の増加と、食品のより良いトレーサビリティに対する要求には、試験される検体の増加、並びに、できるだけ正確に、それらのクラス(ファミリー、クラスの識別、及び特定の化合物の識別)、及び、各マトリックスで認可される最大限に関する(with respect to the maximum limits authorised in each of the matrices)量を知ることを伴う。更に、世界中の様々な多くの異なる場所からの牛乳では、世界のある場所と別の場所での慣習が異なるため、製造場所に従って、牛乳で発見され得る汚染物質を具体的に測定するのは困難である。実際、食品の原産地、及び関連する地方の製造慣習は常に知られているわけではなく、これは、分析されるサンプルで発見され得るあらゆるものをできる限り広くカバーして、化合物の広域スペクトルとして検出することを義務化させている。
【0006】
特に、農業ビジネスが、1回の操作で、ある同じ検体のファミリーに属するか否か、所与のサンプルに同時に存在する、本質的に異なる物理化学的特性を有し得る異なるクラスに所属する化合物の分析を考慮することを可能にする診断手段に興味を示している。例えば、動物に投与可能な抗生物質の種類及び数は、治療用又は予防用用途に応じ、動物種、戦われる細菌、獣医学的慣習、効力を有する法令、利用可能な手段、又は地理的領域に応じても、変化し得る。ある種の特定の治療の場合、薬剤混合物を使用することができる。一般原則として、現場の人は、最良の有効性を有する評価に従い、あらゆる市販の化合物の中から選択される抗生物質製品そのもの、又はそれらの組み合わせを用いる。
【0007】
抗菌剤及び抗生物質の主なクラスとしては、ペニシリン及びセファロスポリン、テトラサイクリン、スルホンアミド、アミノグリコシド及びアミノシクリトール、マクロライド、クロラムフェニコール又は他のペプチド、イオノフォア、ニトロフラン抗生物質、キノロン、カルバドックスなどがあり、これらのクラスのそれぞれが共に、化学的に異なる化合物の非常に広範な集合をグルーピングしている。
【0008】
乳製品にこのような分子が存在すると、新鮮な牛乳からの発酵(チーズ、ヨーグルトなど)を伴う産業的方法の収益性への、大きなマイナスの影響を有し得る。
【0009】
更に、場合によっては強力な抗生物質を、獣医学用薬剤及び農業製品で使用することは、抗生物質に耐性を有する、発生する細菌株の起源におけるものであることができる。ヒトの健康を維持し、これに関する法律を制定するために、多くの国が、食品における抗生物質残留物に対する最大残留制限(MRL)を確立している。これらのMRLは、陽性サンプルと陰性サンプル、即ち、拒否されたサンプルと認可されたサンプルとの間の制限をつなぎ合わせる。
【0010】
スクリーニング方法は、(1)化合物の最大同時検出をカバーし、それ故に好ましくは、かつ論理的に、複数の検体試験を必要とする、(2)陽性サンプルで発見される化合物が属するクラスを知ることで、好適な確認方法に直接向かうことができることを可能にする、かつ、(3)「偽陰性」種の結果を、(これらは後で分析を回避し、後で確認されないため)与えることができない診断手段を考慮することが重要である。
【0011】
先行技術
開始部分にて示したような診断手段が知られている。実際、特許文献1は、本質的に液体のサンプルに存在する、複数の検体をそれぞれ、同時に、かつ特異的に検出及び/又は定量化するための、イムノクロマトグラフ診断手段であって、
-少なくとも1種の可視化分子で標識した認識生物学的分子及び/又は競合リガンドを含有する少なくとも1種の反応混合物と、
-異なりかつ既知の回収位置で、競合リガンド及び/又は認識生物学的分子が結合する固体支持体の形態の少なくとも1つの回収システムであって、上記支持体上の上記回収位置の配置によって、上記サンプルに存在する上記検体を識別するための、少なくとも1つの回収システムと、
を含む、手段について開示している。
【0012】
より具体的には、この特許文献1は、少なくとも2つの個別の検体のクラスに属し得る化合物の集合を同時に検出し、検出された化合物が実際どのクラスに属するかを特性決定することができる診断手段を提供し、これは、1つの、かつ同じ方法(他方の機能と干渉することができるいずれかの機能を有さない、少なくとも2つのメカニズム)を組み合わせる技術的及び実用的適合性を示すことにより可能となる。更に、特許文献1に記載の診断手段は、迅速に(例えば、10分未満)で、そして、1つかつ及び同じサンプルの開始時にて、1つかつ同じ分析工程において実施可能な、複数の検体の投与の技術的可能性を示す。
【0013】
実用的には、特許文献1に記載の診断手段を実施する方法は、以下の工程を特徴とする:
-所定の反応混合物を、特性決定されるサンプルと接触させて溶液を得、これを50℃で3分間インキュベートし、
-上記の回収システムを、得た溶液に浸漬して3分間インキュベートし、
-光学式読取装置を用いて、回収システムでの結果を定量的及び定性的に解釈する。
【0014】
この特許文献1に従うと、汚染の種類を識別可能にするのは、回収要素(競合リガンド)の位置づけである。例えば、テトラサイクリン、β-ラクタム、及びスルホンアミドの同時投与に対応する特許文献1に従うと、各回収要素は捕捉線の形態で配置され、これらのそれぞれは、(サンプルと接触した反応混合物に対応する)液体の移動方向を参照することにより、互いに連続して背後に配置される。この診断手段の好ましい様式に従うと、β-ラクタム、テトラサイクリン、及びスルファジメトキシンの回収要素を含む捕捉ゾーンは、液体の移動方向を参照して、それぞれ第1、第2、及び第3レベルに配置される。
【0015】
このような診断手段に従った結果の解釈は逆に行わなければならず、競合リガンド及び/又は認識生物学的分子に関して探索される化合物の認識を利用する競合原理に基づく。回収システムに結合した回収要素が競合リガンドであるときに、いくつかのケースが存在し得る:
-探索される化合物のいずれかがサンプルに存在する場合、それ故に、その後、探索される化合物は、回収システムに結合した競合分子にもはや自由に結合しない反応混合物に存在する認識生物学的分子に連結するであろう。それ故、結果は陽性であり、存在しないマーキングを有する;
-又は、探索される化合物はサンプルには存在せず、反応混合物に存在する認識生物学的分子はそれ故、回収システムに結合した競合分子に結合する。結果はそれ故陰性であり、存在するマーキングを有する。
【0016】
残念なことに、特許文献1に記載の診断手段は、サンプルに存在する限定された数の検体を検出及び/又は定量化することが可能であるのみであり、それ故、実際には複数検体の診断手段として考えることができない。より具体的には、特許文献1に記載の診断手段は、3つの異なるクラスの抗生物質に属する化合物、即ち、β-ラクタム、テトラサイクリン、及びスルホンアミドを検出することができるのみである。
【0017】
結果的に、β-ラクタム、テトラサイクリン、及びスルホンアミドが実際には、異なるものとして考えられ得るクラスの検体を構成していたとしても、この特許文献1では、抗生物質を検出することが可能になるのみである。したがって、この特許文献1に記載の診断手段は必ずしも、抗菌剤、毒素、ホルモン、病原体、不純物、又はアレルゲンなどの検体を検出/及び定量化することもできない。
【0018】
実際、農業ビジネス及び医学領域などに関係する領域では、できる限り完ぺきで、好ましくは最大数の化合物を識別できる分析が必要とされている。特許文献1に記載の診断手段を用いる場合におけるような、各化合物に、又は、1つの小さな群の化合物(即ち、最大でも2つ若しくは3つの化合物)のみに特定の試験を実施することを必要とするよりも、1つのサンプルから1つの複数試験を実施することが、より実用的であり、より経済的である。
【0019】
上記のとおり、特許文献1は、互いに背後に配置され、液体の移動方向に対して垂直な線の形態での、(回収要素に結合した)捕捉ゾーンを有する、回収システムを含み、当業者が、より多くの数の捕捉ゾーンを回収システムで同時に配置しようとする際に技術的不適合性が満たされ、これは、(1)試験ゾーンのサイズが制限されており、(2)連続した線に付着する試薬の量が多く(バックグラウンドノイズ、及びより著しい試薬間反応性を大事に扱う)、かつ、(3)長くかつ複雑な、視覚的又は機器的分析を用いた結果の解釈の間の欠落が正確だからである。したがって、互いに異なる捕捉ゾーンの限界を定めることは困難、更に不可能となり、それ故、互いに異なる検体を区別することも困難、更に不可能となる。
【0020】
非特許文献1(Taranovaら、2013)は、イムノクロマトグラフィー及び「マイクロアレイ」技術を組み合わせることにより、特許文献1の欠点を解決することを試みている。実際、1つの試験で検出/定量化可能な検体の数を増加させる点では、非特許文献1では、2次元マトリックスに従い、固体支持体上に回収位置を配置することが提案されている。この方法では、非特許文献1に記載のイムノクロマトグラフ診断の固体支持体は、点(回収位置)の形態で結合した、32個の抗原(競合リガンド)のマイクロアレイ化合物を有する。残念ながら、非特許文献1に記載の診断手段は、乱用の薬剤と認識されている4つの検体、即ちアンフェタミン、ベンゾイルエクゴニン、メタンフェタミン、及びモルヒネの検出及び定量化が可能となるのみである。実際、Taranovaらによると、点の形態の、8つの回収位置が、1つの検体を検出及び定量化するために、固体支持体に提供される。具体的には、所与の検体を検出及び/又は定量化するために、この検体の特異的抗原(競合リガンド)を含む8つの点が固体支持体に結合され、この8つの点は、液体の移動方向に垂直な軸を中心に配置された、所与の検体を識別することを可能にする。結果的に、非特許文献1に従うと、これは32個の異なる抗原であり、固体支持体に結合した32個の異なる検体を検出することが可能になるが、4つの異なる抗原のみが、4つの異なる検体で特異的な8倍を再生産した。したがって、検体の識別は1つの次元に従ってのみ行われ、移動方向に垂直な軸を中心に配置された8つの回収位置は同一であり、即ち、これらは1つの検体の特異的抗原を含む。この文書に従うと、点の形態での回収移動の配置は、点の列に沿ってなされ、各列は所与の検体に対応するが、実際の2次元マトリックス配置に従ったものではない。
【0021】
したがって、現況技術のイムノクロマトグラフ診断手段はこの段階で、迅速かつ実用的であり、
-特異的、即ち、異なるクラスの検体を検出し、かつ、
-普遍的である、即ち、残留薬物(例えば抗生物質及び抗菌剤)、毒素、ホルモン、病原体、不純物、又は更にアレルゲンなどの、農業ビジネス及び医学診断の分野で分析をするのに有用である、大部分の物質に適用可能な
検体の検出及び/又は定量化を可能にする、実際は複数検体である試験が存在しないことを特徴とする、著しい有効性の制限を満たす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【非特許文献】
【0023】
【発明の概要】
【0024】
発明の目的
本発明は、より迅速、より実用的、より経済的、より効果的であり、
-特異的、即ち、異なるクラスの検体を区別し、かつ、
-普遍的である、即ち、残留薬物(例えば抗生物質及び抗菌剤)、毒素、ホルモン、病原体、不純物、又は更にアレルゲンなどの、農業ビジネス及び医学診断の分野で分析をするのに有用である、大部分の物質に適用可能であり、
検出及び/又は定量化が1つの工程で且つ15分未満で実施される、検体の検出及び/又は定量化を担うことができる、
診断手段を提供することにより、先行技術の欠点を克服することを目的とする。
【0025】
より具体的には、本発明に従った診断手段は、サンプルに存在する、少なくとも5個の異なるクラスの検体、好ましくは少なくとも10個の異なるクラスの検体、好ましくは少なくとも15個の異なるクラスの検体を検出及び/又は定量化することを可能にし、検体のクラスは残留物(例えば、抗生物質又は抗菌剤)、毒素、ホルモン、病原体、不純物、又は更にアレルゲンであり、検出及び/又は定量化は15分未満で且つ1つの工程で実施可能である。この課題を解決するために、本発明による、本質的に液体のサンプルに存在する複数の検体をそれぞれ、同時に、かつ特異的に検出及び/又は定量化する、イムノクロマトグラフ診断手段が提供され、当該診断手段は、
-少なくとも1種の可視化分子で標識した認識生物学的分子及び/又は競合リガンドを含有する少なくとも1種の反応混合物と、
-2次元マトリックス配置により配置された異なりかつ既知の回収位置で、競合リガンド及び/又は認識生物学的分子が結合する固体支持体の形態の少なくとも1つの回収システムであって、上記支持体上の上記回収位置の配置により、上記サンプル中に存在する上記検体を識別する、少なくとも1つの回収システムと、
を含み、上記診断手段が、
a)上記固体支持体上に結合された各回収位置が、異なる検体の識別を可能にするように、上記2次元マトリックス配置が、第1座標X及び第2座標Yを有する座標系に従い画定され、
b)所与の検体を検出及び/又は定量化するために、競合リガンド及び認識生物学的分子からなる診断カップルが、上記認識生物学的分子が上記反応混合物内で発見され、上記競合リガンドが少なくとも1つの回収位置に結合するように存在し、又はこれらの逆となるように存在し、
c)上記少なくとも1種の可視化分子が蛍光で検出可能であり、
d)上記反応混合物が、上記回収システムとは分離した容器中に存在している、
ことを特徴とする診断手段が提供される。
【0026】
用語「検体」とは、本発明の意味において、検出及び/又は定量化され、特に農業ビジネス及び医学分野での診断を提供する、対象を構成する化合物を意味する。
【0027】
用語「検体のクラス」とは、本発明の意味において、類似の生物学的及び化学的性質を有する、いくつかの検体を合わせた群を意味する。例として、残留薬物は、ペニシリン、セファロスポリン、テトラサイクリン、スルホンアミド、アミノグリコシド、アミノシクリトール、マクロライド、キノロン、イオノフォア、カルバドックス、ニトロフラン抗生物質、及びフェニコールなどの異なるクラスに分離することができる。具体的には、ペニシリンは、共通の作用機序(生物学的性質)を有し、類似の化学構造(化学的性質)を有する抗生物質である。
【0028】
用語「それぞれの検出及び/又は定量化」とは、本発明の意味において、本発明に従った1つの診断手段を用いて、対象の検体全ての検出及び/又は定量化をすることを意味する。
【0029】
用語「同時検出及び/又は定量化」とは、本発明の意味において、同一の時間経過後に、対象の検体の全てを検出及び/又は定量化することを意味する。
【0030】
用語「特異的検出及び/又は定量化」とは、本発明の意味において、対象の検体全てを個別に検出及び/又は定量化して、検出される、及び/又は定量化される検体を正確識別可能にすることを意味する。
【0031】
用語「分析カップル」とは、本発明の意味において、所与の検体を検出及び/又は定量化することを意図する2つの相補性分子であって、認識生物学的分子及び競合リガンドである2つの分子を意味する。所与の検体の検出及び/又は定量化は、2つの可能な状況に従った競合原理に基づく:
-認識生物学的分子が反応混合物で発見され、相補性競合リガンドが固体支持体上に結合されているか、
-又は、競合リガンドが反応混合物で発見され、相補性認識生物学的分子が固体支持体上に結合されているか、のいずれかである。
【0032】
用語「認識生物学的分子」とは、本発明の意味において、対象の検体に特異的に結合可能な、天然又は合成分子を意味する。
【0033】
用語「競合リガンド」とは、本発明の意味において、認識生物学的分子に特異的に結合可能であり、それ故、認識生物学的分子への結合のために、対象の検体と競合する分子を意味する。
【0034】
用語「回収位置」とは、本発明の意味において、認識生物学的分子又は競合リガンドが結合される位置を意味する。認識生物学的分子が回収位置に結合される場合、対象の検体(存在する場合)又は競合リガンド(対象の検体が存在しない場合)が特異的に結合されて捕捉され、故に移動が停止する。競合リガンドが回収位置に結合される場合、これは対象の検体が存在しない場合、対象の検体の特異的な認識生物学的分子は特異的に結合されて回収され、それ故移動が停止する。
【0035】
検出及び/又は定量化のために実装される方法は、以下のとおりである:
-反応混合物をサンプルと接触させて液体を得、
-30℃の温度にて3分間インキュベートし、
-移動方向の上流に見出される回収システムの末端を液体(サンプルと反応混合物とを含む)に浸漬し、
-10分間30℃でインキュベートし、
-光学式読取装置を用いて、回収システムでの結果を定性的及び/又は定量的に解釈する。
【0036】
本発明に従った液体の移動方向は、本発明の回収システムで結合された回収位置のマトリックス配置を画定する座標系に従い定義され、結果として、座標X及び座標Yに従い定義される。
【0037】
本発明による検出及び/又は定量化は、競合リガンド及び/又は認識生物学的分子に関して探索される検体の認識を利用する、競合原理に基づいている。
【0038】
いくつかのケースは競合リガンドにより示され得る、又は、認識生物学的分子は回収位置に結合される:
1)回収要素が競合リガンドである場合、
-探索される化合物がサンプルに存在する場合、探索される化合物は、それ故に、回収システムに結合した競合分子に自由に結合しない反応混合物に存在する認識生物学的分子に結合するであろう。それ故、結果は陽性であり、存在しないマーキングを有する;
-又は、探索される化合物がサンプルには存在しない場合、反応混合物に存在する認識生物学的分子はそれ故、回収システムに結合した競合分子に結合する。結果はそれ故陰性であり、存在するマーキングを有する。
2)回収要素が認識生物学的分子である場合、
-探索される化合物がサンプルに存在する場合、探索される化合物は、それ故に、回収システムに結合した認識生物学的分子に結合する反応混合物に存在する競合リガンドと競合するであろう。それ故、結果は陽性であり、存在しない又は弱いマーキングを有する;
-又は、探索される化合物がサンプルには存在しない場合、競合リガンドはそれ故、回収システムに結合した認識生物学的分子に結合するだけである。結果はそれ故陰性であり、存在するマーキングを有する。
【0039】
本発明の範囲において、驚くべきことに、上で示したような特徴(a)、(b)、(c)、及び(d)を含むイムノクロマトグラフ診断手段は、本発明による診断手段がより効果的であり、特異的かつ普遍的の両方であることを意味することが示されている。具体的には、サンプルに存在する少なくとも5個の異なるクラスの検体、好ましくは少なくとも10個の異なるクラスの検体、好ましくは少なくとも15個の異なる検体を検出及び/又は定量化することが可能になり、検体のクラスは残留薬物(例えば、抗生物質又は抗菌剤)、毒素、ホルモン、病原体、不純物、又は更にアレルゲンであり、これは15分未満で、1つの工程で実施可能である。本発明による診断手段は結果的に、5個未満の異なるクラスの検体の検出及び/又は定量化に限定されている、現在知られている診断手段と比較して、より実用的、より経済的、かつより効果的である。
【0040】
具体的には、驚くべきことに、固体支持体とは分離した容器内の反応混合物の配置が、いくつかの利点をもたらしたことが観察されている。
【0041】
第1に、分析される反応混合物の、サンプルとの相互作用は別個の容器で局部的に食い止められており、サンプルとの反応混合物の相互作用の制御が最適化される。そうすることにより、(反応混合物及びサンプルから形成される)液体が得られる前に、反応混合物と完全に相互作用するサンプルは、固体支持体と接触せず、そしてそれ故、回収位置と接触しないことが確実となる。結果的に、固体支持体から分離された、容器内の反応混合物の分離により、偽陰性が得られることを回避することが可能となる。実際、Taranovaらにより文書で示された場合にあるように、移動方向に対して回収要素の上流の固体支持体に反応混合物が結合されている場合において、主に液体のサンプルは、固体支持体上に結合した反応混合物と直接接触し、これにより、毛管現象により液体の迅速な移動がもたらされる。それ故、反応混合物との相互作用が終了する前にサンプルが回収位置を満たすという危険性が増加し、エラー結果、即ち、検体が実際にはサンプルに存在するのに検出されない、ということがもたらされる。
【0042】
第二に、容器での反応混合物の分離により、分析されるサンプルの量をよりよく制御することが可能となる。実際、本発明に従った診断手段を用いると、所定の、かつ具体的なサンプル体積を容器中に保管し、確実にこのサンプル体積全てが分析されることが可能となり、このことは、Taranovaらにより開示された診断手段とは対象的である。実際、このような診断手段を用いると、即ち、反応混合物が液体の移動方向に対して、回収要素の上流の固体支持体に存在する場合において、サンプルは、サンプル中に浸漬される固体支持体と直接接触し、得られる液体(サンプル及び反応混合物から形成される)が毛管現象により、即座に移動する。この方法では、固体支持体上を移動する液体の体積を具体的に規定することが不可能であり、実際に分析されるサンプル体積を測定するのが非常に困難となり、更には不可能となる。本発明による診断手段の、この特有の特徴により、標準偏差を減少させることができ、それ故に、先行技術の診断手段に対して改善された再現性を得ることができる。分析される、サンプル体積の具体的な測定もまた、反応混合物の組成物、特に、反応混合物を構成する異なる成分の量を規定し、より好適にすることが可能である。結果的に、所与の検体の検出又は定量化は、1つのサンプルにおいてさえも著しくかつ弱く、これは、Taranovaの文書とは対象的である。実際、この文書に従うと、そして、上で引用したように、1つの検体を検出し定量化するために、8個の回収位置が固体支持体上に提供されなければならない。それ故、1つの同じ数の検体、例えば4つの検体の弱い検出及び/又は定量化のために、本発明による固体支持体は4つの回収位置を含まなければいけないが、Taranovaらによる固体支持体は32個の回収位置を含まなければならない。したがって、1つの同じ固体支持体表面に対して、本発明による診断手段は、32個の異なる検体を検出及び/又は定量化することを可能にする。
【0043】
第三に、容器内の反応混合物の分離により、反応混合物の成分の数を増加させることが可能になる。実際、上述したように、所与の検体を検出及び/又は定量化するために、競合リガンドと認識生物学的分子とで構成される、診断ペアが、認識生物学的分子が反応混合物中で発見され、競合リガンドが、少なくとも1つの回収位置にて結合される、又はこれらの逆となるように存在する。したがって、反応混合物は検体1つに対して、1つの認識分子、又は1つの競合リガンドを含有する。結果的に、多数の異なる検体を検出及び/又は定量化するために、より多くの数の異なる認識分子又は競合リガンドを反応混合物に添加しなければならない。Taranovaらにより開示されているように、先行技術の診断手段を用いると、反応混合物の成分の数は、固体支持体上で利用可能な表面によって限定される。
【0044】
更に、本発明により、2次元マトリックス配置は、上記固体支持体上に結合した各回収位置が、個別の検体を識別可能にするように、第1座標X及び第2座標Yを有する座標系に従い画定される。同じ支持表面に対して、より多くの数の個別の検体を検出及び/又は定量化することを可能にする(例えば、Taranovaらに従った診断手段に対して、有効性を8倍改善することを可能にする)診断手段を提供することにより、この特徴はまた、本発明による診断手段の有効性を著しく改善する。
【0045】
したがって、本発明により、1つの同じ座標Xに対して、それぞれが異なる認識生物学的分子又は競合リガンドを含む、複数の回収位置が、異なる複数の座標Yに沿って配置され、これにより、1つの同じ座標Xに対して、複数の異なる検体を検出及び/又は定量化することが可能になる。逆に、1つの同じ座標Yに対して、それぞれが異なる認識生物学的分子又は競合リガンドを含む、複数の回収位置が、異なる複数の座標Xに沿って配置され、これにより、複数の異なる検体を検出及び/又は定量化することが可能になる。
【0046】
更に、驚くべきことに、蛍光で検出可能な可視化分子を使用することにより、シグナルの検出限界を改善し、それ故に、検出及び/又は定量化の感度を増加させることにより、偽陰性のリスクを低下させることが可能となることが観察されている。結果的に、検出閾値が下がると、回収位置は小さくなり得、これにより、同じ表面に対してより多くの回収位置を含む固体支持体を得ることが可能となる。更に、蛍光によるシグナルの検出がより敏感になることで、より少ない量の競合リガンド及び/又は認識生物学的分子が回収位置に結合されればよく、これにより著しい経済的利点がもたらされるが、バックグラウンドノイズの減少、並びに、複数の検出及び/又は定量化メカニズム間の反応のリスクの低下もまた、もたらされる。
【0047】
結論として、本発明による診断手段は、現在の診断手段、より具体的には、Taranovaらによる文書に記載の診断手段に対して、より大きな技術的効果を提供する。
【0048】
したがって、本発明は、数が増加した(少なくとも5、好ましくは少なくとも10、好ましくは少なくとも15個の)検出及び/又は定量化メカニズムである、1つかつ同じ検出手段の組み合わせの技術的及び実用的適合性を示す。本発明の範囲において、15分未満、好ましくは13分未満で、かつ、1つかつ同じサンプルを用いた1つかつ同じ分析工程にて迅速に実施可能な、複数検体投与という、技術的可能性が更に強調されている。実際、本発明による診断手段は、本発明により、反応混合物が、少なくとも1種の可視化分子と結合した認識分子及び/又は競合リガンドを含む場合に、認識分子及び/又は競合リガンドを少なくとも1種の可視化分子と分離する工程を排除することも、生み出すことをも必要としない。
【0049】
本発明による、上記診断手段の上記回収システム上に結合される上記回収位置は、それぞれが20μm~2mm、好ましくは100μm~500μm、好ましくは250μm~400μmの直径を有する、点の形態の2次元マトリックス配置に従って配置されるのが好ましい。
【0050】
それぞれが20μm~2mm、好ましくは100μm~500μm、好ましくは250μm~400μmの直径を有する、点の形態の回収位置により、少なくとも5、好ましくは少なくとも10、好ましくは少なくとも15個の異なる検体を検出及び/又は定量化するために、1つのサンプル、2つのサンプル、又は3つのサンプルに、少なくとも5、好ましくは少なくとも10、好ましくは少なくとも15個の回収位置を結合することが可能になり、また、検出閾値の制御を意図した、1つのサンプル、2つのサンプル、又は3つのサンプルに配置される、少なくとも1つの回収配置により、検出及び/又は定量化のための試験及び/又は較正を有効にすることができ、これは、光学式読取装置によって少なくとも15個の検体の検出及び/又は定量化を実施するために合理的サイズを有する回収システムが可能になるということが実証されている。
【0051】
有利には、本発明による上記診断手段の上記回収システム上に結合した回収位置は、点の形態の2次元マトリックス配置に従って配置され、上記点は、1cm2当たり62500~6.25個の点、好ましくは1cm2当たり2500~100個の点、好ましくは1cm2当たり400~150個の点の密度で存在する。
【0052】
好ましくは、全ての回収位置のマトリックス配置は、3cm2以下、好ましくは2cm2以下、好ましくは1cm2以下である。
【0053】
有利には、第1座標Xは、上記回収システムの長さの長手軸上に画定され、第2座標Yは、上記回収システムの幅の長手軸上に画定される。
【0054】
座標X及びYに従い、20μm~2mm、好ましくは100μm~500μm、好ましくは250μm~400μmである、2つの点の最小間隔距離を提供するのが合理的である。
【0055】
特定の実施形態では、本発明による上記回収システムは、サンプルに存在する、少なくとも5、好ましくは少なくとも10、好ましくは少なくとも15個の個別の検体をそれぞれ、同時に、かつ特異的に検出及び/又は定量化することを意図する、少なくとも5、好ましくは少なくとも10、好ましくは少なくとも15個の、個別の回収位置と、制御及び/又は較正のための少なくとも1つの回収配置と、を含む。
【0056】
上記制御及び/又は較正は、独立した競合リガンド/認識分子のペアから入手するのが好ましく、その本来備わっている(又は人工的)性質は、制御分子が、サンプル(例えば、タンパク質の特異的抗体、又は、そのサンプルが由来するものとは異なる別の動物種)、又は、合成マーカ(例えば、ビオチン又はポリヒスチジン又はc-Mycマーカ)で化学修飾されたキャリアタンパク質(例えばウシ血清アルブミン)に存在しないことを意味する。
【0057】
本発明による診断手段の特に有利な実施形態では、上記回収位置のそれぞれは、上記回収システムに2通りで、好ましくは3通りで配置される。2通り又は3通りで実施することにより、得られる結果の統計量及び精度もまた改善することができる。
【0058】
競合リガンド又は認識分子が結合する回収位置のマトリックス配置は、第1の所与の検体を検出及び/又は定量化することが意図される、競合リガンド又は認識生物学的分子が結合する回収配置が、第2の所与の検体を検出及び/又は定量化することが意図される、競合リガンド又は認識生物学的分子が結合する回収配置の上流に位置するように、液体の移動方向により決定されるのが好ましく、これは液体の移動方向に対するものである。このようなマトリックス配置により、対象の検体を検出及び/又は定量化するための、異なるメカニズム間の反応のリスクを低下させることもまた、可能になる。
【0059】
有利には、固体支持体の形態の上記回収システムは、膜、又は膜のセットを含む。膜はニトロセルロース膜であるのが好ましい。
【0060】
有利には、上記容器はガラス又はプラスチック容器である。
【0061】
有利には、上記認識生物学的分子は、抗体、好ましくは、モノクローナル又はポリクローナル、精製又は非精製のいずれかの一次抗体、及び/又はアプタマー及び/又はGEPI及び/又は生物学的受容体である。
【0062】
有利には、上記競合リガンドは、上記認識生物学的分子に特異的に結合可能な、探索される検体、及び/又は分子に類似している。
【0063】
本発明による診断手段の特定の有利な実施形態では、上記競合リガンドは、抗生物質の原薬、ホルモン、アフラトキシンなどの毒素種、デング種などのウイルス、L型細菌、モノサイトゲネス、重金属、不純物、アレルゲン、及びこれらの混合物で構成される群から選択される。
【0064】
上記少なくとも1種の可視化分子は、化学及び/又は遺伝子カップリングにより、上記認識生物学的分子及び/又は上記競合リガンドと融合しているのが好ましい。
【0065】
用語「化学及び/又は遺伝子カップリング」とは、本発明の意味において、認識生物学的分子及び/又は競合リガンドの化学及び/又は遺伝子修飾による可視化分子への、認識分子及び/又は競合リガンドの結合と理解され、これらは結果的に、その自然状態にはあらず、修飾形態又は複合形態にある。
【0066】
反応混合物内に存在している認識生物学的分子及び/又は競合リガンドへの、可視化分子のこのような化学及び/又は遺伝子カップリングにより、多くの(少なくとも5、好ましくは少なくとも10、好ましくは少なくとも15個の)検出及び/又は定量化メカニズムを検出及び/又は定量化するための、1つかつ同じ手段を組み合わせる技術的及び実用的適合性を、これらのメカニズムの1つの機能が、別のメカニズムの1つの機能と干渉できないまま、改善することもまた、可能になることが示されている。実際、このようなカップリングを有する本発明による反応混合物は、反応混合物内に存在している異なる認識生物学的分子、及び/又は異なる競合リガンド間の反応の非特異度のリスク、故に、偽陽性及び/又は偽陰性の観察リスクの低下、更には除去という利点をもたらし、かつ、このようなカップリングが存在しない場合に回収システムで観察される、残留マーキング(バックグラウンドノイズ)の有意な低下、及び故に、回収要素のマーキングと、非結合固体支持体のマーキングとの良好な対比の入手(そして故に、良好な検出閾値の入手)という利点をももたらす。
【0067】
対照的に、EP1712914は、使用される受容体及び抗体の機能性を最大限に保存するために、化学修飾によるマーキングを行わず、結果的に、認識生物学的分子が、そのできる限り自然な状態で利用されることを推奨している。例えば、受容体などの認識生物学的分子はコロイド金とコンジュゲートしたプロテインA(一般に、あらゆる種類のタンパク質を認識する)により認識され抗体自体を用いて標識される。この文書に従うと、それ故、コロイド金(可視化分子)とカップリングするのは、認識生物学的分子ではなくプロテインAである。
【0068】
有利には、上記化学及び/又は遺伝子カップリングは、少なくとも1つの静電気力、少なくとも1つのペプチド結合、少なくとも1つのレポーター遺伝子、又はこれらの組み合わせにより達成される。
【0069】
特定の実施形態では、上記少なくとも1種の可視化分子は、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE)、ローダミンB、及びこれらの混合物で構成される群から選択される。
【0070】
上記検体は、残留薬物、毒素、ウイルス、細菌、ホルモン、重金属、不純物、アレルゲン、及びこれらの混合物からなる群から選択されるのが好ましい。残留薬物の中でも特に、抗生物質及び抗菌剤が見出される。望ましくない化学的分子、不純物もまた、容器の(例えば、プラスチック包装からの)移動による受動性汚染の後で、検出することができる。
【0071】
特に有利な実施形態において、上記検体は残留薬物であり、ペニシリン、セファロスポリン、テトラサイクリン、スルホンアミド、アミノグリコシド、アミノシクリトール、マクロライド、キノロン、イオノフォア、カルバドックス、ニトロフラン抗生物質、フェニコール、及びこれらの混合物で構成される群から選択される。
【0072】
有利には、上記サンプルは牛乳、蜂蜜、肉、卵、全血、血清、尿、又は他の生物学的液体から入手される。
【0073】
用語「生物学的液体」とは、本発明の意味において、生物により生み出される、任意の有機又は体液性液体を意味する。
【0074】
好ましくは、上記サンプルは牛乳から入手される。分析されるサンプルが牛乳から得られるとき、検体の検出はより感度が高いことが観察されており、これは、牛乳の成分がニトロセルロース膜を飽和させ、バックグラウンドノイズを低下させるからである。
【0075】
具体的には、本発明に従うと、サンプルに存在する複数の検体をそれぞれ、同時に、かつ特異的に検出及び/又は定量化することは、光学式読取装置によって実施される。
【0076】
本発明による特定の実施形態では、回収位置は3次元マトリックス配置に従い配置される。このような3次元マトリックス配置は、類似の表面を有する固体支持体上のより多くの数の回収位置の間に配置されることが可能となり、それ故、対象のより多くの数の検体をそれぞれ、そして同時に検出及び/又は定量化することができる。
【0077】
有利には、3次元マトリックス配置は、上記回収システムの長さの長手軸上に画定される第1座標(X)、上記回収システムの幅の長手軸上に画定される第2座標(Y)、及び、上記回収システムの深さの長手軸上に画定される第3座標(Z)を有する座標系に従い画定される。この場合、(サンプル及び反応混合物を含む)液体の移動方向は、本発明による回収システム上に結合した回収位置のマトリックス配置を画定する上記座標系に従い画定され、結果的に座標X、座標Y、及び座標Zに従い画定される。
【0078】
本発明による診断手段の別の実施形態は、添付の特許請求の範囲にて示されている。
【0079】
本発明は、本質的に液体のサンプルに存在する複数の検体をそれぞれ、同時に、かつ特異的に検出及び/又は定量化する方法にもまた基づいており:
-本発明による診断手段の反応混合物をサンプルと接触させて液体を得ることと、
-0~70℃、好ましくは10~60℃、好ましくは20~50℃、好ましくは20~40℃、好ましくは25~35℃、好ましくは30℃の温度にて、15分以下、好ましくは10分以下、好ましくは5分以下、好ましくは3分以下、好ましくは3分の期間インキュベートすることと、
-本発明による診断手段の回収システムの末端を液体に浸漬することと、
-0~70℃、好ましくは10~60℃、好ましくは20~50℃、好ましくは20~40℃、好ましくは25~35℃、好ましくは30℃の温度にて、15分以下、好ましくは10分以下、好ましくは10分の期間インキュベートすることと、
-光学装置により、回収システム上の結果を定性的及び/又は定量的に解釈することと、
を含む。
【0080】
本発明による方法は、マイクロ流体及びイムノクロマトグラフ技術に基づく。
【0081】
本発明は、本発明による診断手段を含む、サンプルに存在する検体をそれぞれ、同時に、かつ特異的に検出及び/又は定量化するための診断セットもまた目的にし、取り外し可能な固体支持体を光学的に読み取る装置をさらに含み、当該装置は、
-上記固体支持体を受領するための配置;
-上記固体支持体を分析するための光学ユニットであって、
○所定の発光強度により、第1の波長帯で、第1の光線を上記配置に放射する第1の光源と、
○上記配置の少なくとも一部を含む可視化ゾーンの画像を提供する、光学検出器を含むイメージングシステムと、
○画定された画定波長帯をフィルターし、上記配置と上記イメージングシステムとの間に配置されるフィルターと、
を含む光学ユニット;
-固体支持体に関する情報のアイテムを得るための通信手段;
-選択手段であって、
○固体支持体上に結合した上記回収位置に対応する所定の検体のリストから、1つの同じ固体支持体からの上記サンプルに対して検出及び/又は定量化される検体を選択する、
選択手段;
-上記画像の画像処理手段であって、
○読み取られる上記固体支持体に関する情報から、上記画像の有限数のサブアセンブリを判定し、それぞれのサブアセンブリは検体に対応しており、
○上記サブアセンブリから得られる光強度に関するデータを提供する、
画像処理手段;
-判定手段であって、
○上記検体の選択において選択された検体に対応する各サブアセンブリに対して、サブアセンブリ強度を計算し、
○上記サブアセンブリ強度に基づき、上記検体の選択において選択された検体に対応する各サブアセンブリに対して、上記サンプルからの検体情報を判定する、
判定出段;
-上記検体の選択において選択された検体に対応する各サブアセンブリに対して分析された上記サンプルから、上記検体情報を伝達するように構成された伝達手段;
を含む。
【0082】
本発明によるこのような装置は、特に、瞬間蛍光測定により、又は好ましくは、試験されるゾーンから反射する光の測定により、試験されるゾーンを読み取ることを可能とする。スティック上で対象のゾーンに対応する、試験される検体の選択を可能にするために、このような装置は、スティックに関する情報を含む方法へのアクセスにより、試験される検体のリストからの選択を提案する。実際、ユーザに、大きすぎる量の結果を公開しないために、試験結果を知ることが必要である検体を正しく標的化するために、それらから結果を得る前に、試験される検体を選択することが有用である。その最初の分析目的に関して、客観性を失うリスクに晒される必要が必ずしもないユーザにあまりにも多い量の結果へのアクセスを与えること。したがって、本発明のこのような装置は、選択手段により、スティックを読み取る前に、ユーザにより、試験される検体を選択することが可能となる。画像処理手段と通信した選択手段により、画像処理手段が、選択された検体のみから情報を判定することが可能となる。
【0083】
対象の検体の選択を含む診断を実施するために、本発明の光学式リーダを使用する利点は、選択される異なる最初のストリップを最初に選択することも、これらのストリップのそれぞれを、試験する製品と接触させて、光学的リーダにこれらを配置することをも必要としないことである。これら全てにより、試験されるストリップのかなりの取り扱い、経時的な高価さ(expensive over time)、及び在庫管理を回避することが可能となる。本発明の光学的リーダによって、ストリップの読み取りから選択される結果を有するだけで、これは、試験される検体を、より簡潔、迅速、かつ標的化して分析することもまた可能にする。
【0084】
有利には、検体の選択は、いくつかの検体の選択である。
【0085】
光学装置は、
-選択プロファイルの読み取りを可能にする手段;を更に含み、
上記選択手段が、上記選択プロファイルに基づき検体の上記選択を実施するように構成されているのが好ましい。
【0086】
有利には、画像処理手段により判定される、上記画像の上記有限数のサブアセンブリの各サブアセンブリは、検体の上記選択、好ましくは、選択される各検体に対応する。
【0087】
上記画像処理手段は、上記選択プロファイルから、上記画像の上記有限数のサブアセンブリを更に判定するように構成されるのが好ましい。
【0088】
有利には、上記第1の光源は、上記第1の光線を上記配置に直接、好ましくは、固体支持体上に結合した上記回収位置に直接放射するように構成されている。
【0089】
上記固体支持体は、それぞれが20μm~2mm、好ましくは100μm~500μm、好ましくは250μm~400μmの直径を有する、点の形態の回収位置を含むのが好ましい。
【0090】
本発明は、本発明による診断手段を含む、サンプルに存在する検体をそれぞれ、同時に、かつ特異的に検出及び/又は定量化するための診断セットにもまた基づき、取り外し可能な固体支持体の光学式読取装置をさらに含み、当該光学式読取装置は、
-上記固体支持体を受領するための配置;
-上記固体支持体を分析するための光学ユニットであって、
○所定の発光強度により、第1の波長帯で第1の光線を上記配置に放射する第1の光源と、
○上記第1の光源により放射された放射強度を測定する光強度センサと、
○上記第1の光源が目標強度を放射するように、上記光強度センサにより測定された放射強度に従い、第1の光源の上記放射強度を調整するフィードバック手段と、
○上記配置の少なくとも一部を含む可視化ゾーンの画像を提供する、光学検出器を含むイメージングシステムと、
○画定波長帯をフィルターし、上記配置と上記イメージングシステムとの間に配置されるフィルターと、
を含む光学ユニット;
-上記画像の画像処理手段であって、
○上記画像の有限数のサブアセンブリを判定し、
○上記サブアセンブリから得られる光強度に関するデータを提供する、
画像処理手段;
-判定手段であって、
○各サブアセンブリに対してサブアセンブリ強度を計算する、
判定手段;
-各サブアセンブリに対する上記サブアセンブリ強度に関する情報のアイテムを伝達する伝達手段;
を含む。
【0091】
本発明に従ったこのような光学装置は、特に、瞬間蛍光測定により、又は好ましくは、試験されるゾーンから反射する光の測定により、試験されるゾーンを読み取ることを可能とする。試験されるゾーン(又は点)を読み取るために、蛍光技術又は反射光技術を使用すると、フィードバック手段は、常に等しい励起光強度を保証することが可能となり、これにより、温度、使用するエネルギー供給源、又は使用する期間、及び光源のエイジングに関係なく、信頼できる瞬間蛍光測定又は反射が可能となる。フィードバック手段を使用することにより、経時的に一定かつ所定の強度を有する光源を保証することが可能となる。所定の強度を有する光エネルギー源により、特に、信頼できる定量的結果を保証することが可能となる。フィードバック手段は電子式フィードバック手段であるのが好ましい。例えば、光強度センサは光ダイオードである。
【0092】
本発明は、本発明による診断ユニットを含む、サンプルに存在する検体をそれぞれ、同時に、かつ特異的に検出及び/又は定量化するための診断セットもまた目的にし、取り外し可能な固体支持体を光学的に読み取るための装置をさらに含み、当該装置は、
-上記固体支持体を受領するための配置;
-上記固体支持体を分析するための光学ユニットであって、
○所定の発光強度により、第1の波長帯で第1の光線を上記配置に放射する第1の光源と、
○上記配置の少なくとも一部を含む可視化ゾーンの2次元画像を提供する、2次元光学検出器を含むイメージングシステムと、
○画定波長帯をフィルターし、上記配置と上記イメージングシステムとの間に配置されるフィルターと、
を含む光学ユニット;
-上記2次元画像の画像処理手段であって、
○上記2次元画像の参照ゾーンを検出し、
○上記2次元画像の有限数のサブアセンブリを判定し、
○上記2次元画像内で、各サブアセンブリを、上記参照ゾーンに対して所定の位置に配置し、
○上記サブアセンブリから得られる光強度に関するデータを提供する、
画像処理手段;
-判定手段であって、
○各サブアセンブリに対してサブアセンブリ強度を計算する、
判定出段;
-各サブアセンブリに対する上記サブアセンブリ強度を伝達するように構成された伝達手段;
を含む。
【0093】
本発明によるこのような光学装置により、2次元光学検出器、及び画像処理判定手段のおかげで多数の点を同時に読み取ることが可能になり、点のそれぞれについての検体情報を読み取ることが可能になる。2次元画像は、サブアセンブリ、部分、対象領域、対象ゾーン、又はまた、画像の一部を含む。2次元画像のサブアセンブリは複数のピクセルを含むのが好ましい。好ましくは、各サブアセンブリは、少なくとも20個のピクセル、好ましくは50個を超えるピクセル、そしてまた、より好ましくは200個を超えるピクセルを含む。
【0094】
本発明に従ったこのような装置の利点は、光源が原因の最大のバックグラウンドノイズを避けることで、連続した蛍光読み取りにより診断を行うことができる、ということである。
【0095】
本発明のこのような光学式読取装置の別の利点は、1つかつ同一のスティックに存在する、対象の多数の領域を光学的に読み取ることが可能となる、ということである。本発明によるこのような光学装置の場合、対象の多数の領域の読み取りには、いくつかのスティックの配置を提供することを必要としない。間違った配置の源である1つの同じ光学センサにより、多数の対象領域を、そして、ある測定から別の測定及びこれへの対象領域の、多数のオフセットをカバーするために、光学リーダに挿入されるスティックのそれぞれについて、いくつかのスティックの同時読み取りのために、1つの同じ光学リーダにていくつかのスティックを使用すること。
【0096】
本発明は、本発明による診断手段を含む、サンプルに存在する検体をそれぞれ、同時に、かつ特異的に検出及び/又は定量化するための診断セットにもまた基づいており、取り外し可能な固体支持体を光学的に読み取るための装置をさらに含み、当該装置は、
-上記固体支持体を受領するための配置;
-読み取られる固体支持体を識別する識別装置;
-読み取られる上記固体支持体に関係する方法のデータベースにアクセスし、固体支持体に関する情報のアイテムを得る通信手段;
-固体支持体に関する上記情報に含まれる分析パラメータに基づき上記固体支持体を分析する光学ユニットであって、
○所定の発光強度により、第1の波長帯で第1の光線を上記配置に放射する第1の光源と、
○上記配置の少なくとも一部を含む可視化ゾーンの画像を提供する、光学検出器を含むイメージングシステムと、
○画定波長帯をフィルターし、上記配置と上記イメージングシステムとの間に配置されるフィルターと、
を含む光学ユニット;
-上記画像の画像処理手段であって、
○読み取られる上記固体支持体に関する情報において、上記画像の有限数のサブアセンブリに関する情報のアイテムを読み取り、
○上記サブアセンブリから得られる光強度に関するデータを提供する、
画像処理手段;
-判定手段であって、
○各サブアセンブリに対してサブアセンブリ強度を計算し、
○上記サブアセンブリの強度に基づき、かつ、読み取られる上記固体支持体に関する情報に基づき、各サブアセンブリに関する検体情報を判定する、
判定手段;
-各サブアセンブリに対する上記検体情報を伝達するように構成された伝達手段;
を含む。
【0097】
本発明による光学式読取装置によって、自動読み取り方法の選択を用いた、サンプルの分析のためのスティックの光学式読み取りが可能になる。読み取り方法は、方法のバージョン、バッチ番号、消費期限日、使用する光源の種類、対象のゾーンの種類(線又は点)、定性(2元的)又は定量分析のための方法、画像取得パラメータ(露光時間、ゲインなど)、基準点に対する位置(例えば、デカルト座標に従う)、対象のゾーンの数、検体当たりの複製の数、移動固体支持体上での、対象のゾーンのマトリックス組織化、対象のゾーンの寸法(例えば半径)、バックグラウンドを考慮するために考慮される、対象のゾーンの周りのゾーンに関する寸法、データ補間種の、又は、サンプルの定量分析を可能にする較正パラメータ、及び最終的には、検出及び/又は定量化を可能にする、検体に従った対象のゾーンの指定に関する情報を含むのが好ましい。
【0098】
本発明による診断セットの別の実施形態は、添付の特許請求の範囲にて示されている。
【0099】
本発明は、サンプルに存在する検体、好ましくは少なくとも5、好ましくは少なくとも10、好ましくは少なくとも15個の異なる検体をそれぞれ、同時に、かつ特異的に検出及び/又は定量化するための、本発明による診断手段の使用もまた目的とする。
【0100】
本発明は、サンプルに存在する検体、好ましくは少なくとも5、好ましくは少なくとも10、好ましくは少なくとも15個の異なる検体をそれぞれ、同時に、かつ特異的に検出及び/又は定量化するための、本発明による診断セットの使用もまた目的とする。
【0101】
本発明による診断手段及び診断セットの使用の、他の実施形態を、添付の特許請求の範囲に示す。
【0102】
本発明の他の特徴、詳細、及び利点は、以下に与えられる説明から非限定的に、及び、添付図面を参照することにより現れるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【
図1a】EP1712914に記載の診断手段の概略図である。
【
図1b】Taranovaらによる文書に記載の診断手段の概略図である。
【
図3】本発明に記載の回収システムを詳細に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0104】
図面において、同一又は類似の要素は同じ言及を有する。
【0105】
図1aは、EP1712914に記載の診断手段1を表し、β-ラクタム4
1、テトラサイクリン4
2、及びスルファジメトキシン4
3の同時投与の場合の、ニトロセルロース固体支持体の形態の回収システム3上での、回収要素4
1、4
2、4
3、及び5の配置を示し、移動方向Mに対して、結合された対照ゾーン5もまた提供されている。この文書によると、試験されるサンプルEと接触する別個の容器に、反応混合物2が提供される。
【0106】
図1bは、Taranovaらによる文書に記載の診断手段1を表し、アンフェタミン(4
1a、4
1b、4
1c、4
1d、4
1e、4
1f、4
1g、4
1h)、ベンゾイルエクゴニン(4
2a、4
2b、4
2c、4
2d、4
2e、4
2f、4
2g、4
2h)、メタンフェタミン(4
3a、4
3b、4
3c、4
3d、4
3e、4
3f、4
3g、4
3h)、及びモルヒネ(4
4a、4
4b、4
4c、4
4d、4
4e、4
4f、4
4g、4
4h)の同時投与の場合における、ニトロセルロース固体支持体の形態の回収システム3上での、回収要素4
1a、4
1b、4
1c、4
1d、4
1e、4
1f、4
1g、4
1h、4
2a、4
2b、4
2c、4
2d、4
2e、4
2f、4
2g、4
2h、4
3a、4
3b、4
3c、4
3d、4
3e、4
3f、4
3g、4
3h、4
4a、4
4b、4
4c、4
4d、4
4e、4
4f、4
4g、4
4hの配置を表す。回収要素4は、2次元マトリックス配置に従った点の形態で結合される。Taranovaらによると、反応混合物2は上記回収システム3の上に、反応混合物2上の試験されるサンプルEを含む液体の移動方向Mに対して、上記回収システム3上に結合される上記回収要素4の上流に、凍結乾燥形態で存在する。この文書によると、1つの同じ列、即ち同じ座標Yを有する列に配置された回収要素は、同一の検体に対して特異的である。
【0107】
図2は、本発明による診断手段1を表し、移動方向Mに対する、固体支持体の形態の回収システム3上の回収要素4及び5の配置を示し、回収要素4及び5は、2次元マトリックス配置に従い点の形態で結合されている。本発明によると、反応混合物2は、液体を得るために試験されるサンプルEが接触する別個の容器の中に、得られる液体の中に回収システム3を浸漬する前に提供される。
【0108】
図3は、本発明による回収システム3を詳細に示しており、回収システム3上には、画定された直径を有し、それぞれが最小距離で分離している点の形態の、2次元マトリックス配置に従い、回収位置4及び5が配置されている。2次元マトリックス配置は、上記回収システム3の長さ(L)の長手軸(A
L)上に画定される第1座標X、及び、上記回収システム3の幅(l)の長手軸(A
l)上で画定される第2座標Yを有する座標系(X;Y)に従い画定される。好ましい実施形態によると、回収システム3は、サンプルEに存在する個別のクラスの、少なくとも12個の検体をそれぞれ、同時に、かつ特異的に検出及び/又は定量化することを意図する、少なくとも12個の個別の回収位置(4
1~4
12)と、検出閾値を制御することが意図される、又は、キャリブレータとして使用される、少なくとも3つの回収位置5と、を含む。更に、回収位置(4
1~4
12、及び5
1~5
3)のそれぞれは、2つのサンプルに配置される(4
1A;4
1B~4
12A;4
12B)。
【0109】
本発明は上述の実施形態に何ら限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲の範囲を逸脱することなく、上述の実施形態に修正を加えることができると理解されている。
【0110】
本発明に従った実施形態-実施例
実施例1:反応混合物用の緩衝液の組成物の実施例、及び、反応混合物の調製方法の実施例
【0111】
この緩衝液に、認識分子及び/又は競合リガンドを添加する。混合物を一晩4℃でインキュベートした後、これを凍結乾燥する。試験の実施中、試験される250μLのサンプルを、このようにして得られた反応混合物に添加する。
【0112】
実施例2:認識分子をフルオロフォアローダミンBにカップリングする実施例
「β」及び「テトラ」受容体、並びにDNAオリゴヌクレオチドを、EP1712914A1に記載の方法に従い入手する。
【0113】
モノクローナル抗体を、種による及びアイソタイプのプロテインA又はプロテインGで精製する。次に抗体を、リン酸緩衝液(10mM)NaCl(140mM)(pH7.4)中で、-20℃にて保存する。
【0114】
使用したローダミンBは、塩基性pHを有するタンパク質のアミン基と反応する特徴を有する、N-ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)エステルを有する。
【0115】
認識分子(抗体及び/又は受容体)を、炭酸塩緩衝液(50mM、pH8.5)中で一晩透析する。
【0116】
フルオロフォアを5mg/mLにて、DMF中に溶解させる。
【0117】
認識分子及びフルオロフォア(可視化分子)を、光がないところで、約1/4のモル比で1時間一緒にした。
【0118】
最後に、複合透析の間に、リン酸緩衝液(10mM、pH7.4)により化学反応を停止する。
【0119】
マレイミド又はカルボキシル基を有する蛍光色素を用いて、他の種類の化学結合を実現することができる。
【0120】
FITC、Alexa、DyLightなどの、他の種類のフルオロフォアを使用することができる。
【0121】
認識分子のカップリングは、比色分析ナノ粒子(金、ラテックス、炭素ナノ粒子など)により、等しく共有カップリングより、静電吸着により、実施することもできる。
【0122】
実施例3:反応混合物の組成物の実施例、及び回収システム上に結合する回収要素の実施例
【0123】
実施例4:試験を実施する実施例、及び得られた結果
牛乳サンプルを反応混合物(凍結乾燥形態で、緩衝液、並びに認識分子及び/又は競合リガンドを含む)と、3分間30℃で接触させる。次に、回収システムの移動方向の上流末端を(サンプル及び反応混合物を含む)溶液に浸漬する。10分間30℃でインキュベートした後、光学装置を用いて結果の読み取りを行う。
【0124】
結果の概要を表3に示す。
【0125】