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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】光学システム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/28 20060101AFI20231005BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20231005BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20231005BHJP
   G02B 27/28 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
G02B5/28
G02B3/00
G02B5/30
G02B27/28 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020523371
(86)(22)【出願日】2018-10-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 IB2018058260
(87)【国際公開番号】W WO2019082080
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-10-22
(31)【優先権主張番号】62/578,057
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ティモシー エル.
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/039713(WO,A1)
【文献】特開2005-242361(JP,A)
【文献】特表2015-502565(JP,A)
【文献】特開2006-145884(JP,A)
【文献】特表2018-513392(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105676477(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20-5/28
G02B 3/00
G02B 5/30
G02B 27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察者に対して像を表示する光学システムであって、
湾曲した第1の主表面を備える第1の光学レンズと、
前記第1の光学レンズの前記湾曲した第1の主表面上に配設され、かつそれに適合し、第1、第2、及び第3の色光のそれぞれに対して少なくとも30%の平均光反射率を有する部分反射体と、
湾曲した第1の主表面を備える第2の光学レンズと、
前記第2の光学レンズの前記湾曲した第1の主表面上に配設され、かつそれに適合する一体型反射型偏光子とを備え、
前記一体型反射型偏光子は、第1の偏光状態を有する前記第1の色光を反射し、直交する第2の偏光状態を有する前記第1の色光を透過させ、かつ、前記第1及び前記第2の偏光状態のそれぞれについて前記第2及び第3の色光を透過させるように構成された、連続的に配列された第1の複数干渉層と、
第1の合計厚さを有する1つ以上の第1の非干渉層によって前記第1の複数干渉層と隔てられ、前記第1の偏光状態を有する前記第2の色光を反射し、前記第2の偏光状態を有する前記第2の色光を透過させ、かつ、前記第1の偏光状態と前記第2の偏光状態のそれぞれについて前記第1及び前記第3の色光を透過させるように構成された、連続的に配置された第2の複数干渉層と、
第2の合計厚さを有する1つ以上の第2の非干渉層によって前記第2の複数干渉層と隔てられ、前記第1の偏光状態を有する前記第3の色光を反射し、前記第2の偏光状態を有する前記第3の色光を透過させ、かつ、前記第1の偏光状態と前記第2の偏光状態のそれぞれについて前記第1及び前記第2の色光を透過させるように構成された、連続的に配置された第3の複数干渉層と、を含み、前記第1、第2、及び第3の複数干渉層内の各干渉層は、主に光干渉によって光を反射又は透過させ、前記第1及び前記第2の各非干渉層は、主に光干渉によって光を反射又は透過させず、前記第2の複数干渉層は、前記第1の複数干渉層と前記第3の複数干渉層の間に配設されており、前記第1及び第2の合計厚さのそれぞれが10%違った場合、前記光学システムの色収差の大きさが少なくとも20%大きくなるように構成されている、
光学システム。
【請求項2】
前記第1の色光は赤色、前記第2の色光は緑色、前記第3の色光は青色である、請求項1に記載の光学システム。
【請求項3】
前記第1、第2、及び第3の複数干渉層内の各干渉層は、200nm未満の厚さを有し、前記第1及び第2の各非干渉層は、1マイクロメートルを超える厚さを有する、請求項1に記載の光学システム。
【請求項4】
前記第1及び第2の合計厚さのそれぞれが10%大きかった場合、前記光学システムの色収差の大きさが少なくとも20%大きくなるように構成されている、請求項1に記載の光学システム。
【請求項5】
前記第1及び第2の合計厚さのそれぞれが10%小さかった場合、前記光学システムの色収差の大きさが少なくとも20%大きくなるように構成されている、請求項1に記載の光学システム。
【請求項6】
前記色収差は、方向の色収差である、請求項1に記載の光学システム。
【請求項7】
前記一体型反射型偏光子は、対向する第1及び第2の主表面を備え、前記第2の主表面は、前記観察者に面しており、前記光学システムは、前記第2の色光に対する前記第1の色光の第1の方向の色収差d1を有し、前記第1の主表面が前記観察者に面するように前記一体型反射型偏光子を反転させることにより、前記光学システムは、前記第3の色光に対する前記第1の色光の第2の方向の色収差d2を有するようになり、d2>d1である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の光学システム。
【請求項8】
観察者に対して像を表示する光学システムであって、前記一体型反射型偏光子は第1及び第2の反射ゾーンを備え、前記一体型反射型偏光子に実質的に垂直に入射する光について、前記第1の反射ゾーンは、第1の波長範囲内の光を実質的に反射し、かつ、別の重複しない第2の波長範囲内の光を実質的に透過させ、前記第2の反射ゾーンは、前記第2の波長範囲内の光を実質的に反射し、かつ、前記第1の波長範囲内の光を実質的に透過させ、前記第1及び第2の反射ゾーンは、それぞれに対応する、距離dだけ離れた厚み方向における第1及び第2の中間点を有する第1及び第2の厚さを有し、前記第1の反射ゾーンと前記第2の反射ゾーンが直接隣接するようにdを減少させたときに引き起こされる、前記光学システムの、前記第2の波長範囲に対する前記第1の波長範囲の方向の色収差は、距離hであり、0.3h≦d≦0.7hである、
請求項1に記載の光学システム。
【請求項9】
前記一体型反射型偏光子は、前記第1の反射ゾーンと前記第2の反射ゾーンの間に配設された第3の反射ゾーンを更に備え、前記第3の反射ゾーンは、前記一体型反射型偏光子に実質的に垂直に入射する光について、前記第1の波長範囲と前記第2の波長範囲の間の第3の波長範囲内の光を実質的に反射する、請求項8に記載の光学システム。
【請求項10】
前記一体型反射型偏光子は、対向する第1及び第2の主表面を備え、前記第2の主表面は、観察者に面しており、前記光学システムは、前記第2の波長範囲内の光に対する前記第1の波長範囲内の光の第1の方向の色収差d1を有し、前記第1の主表面が前記観察者に面するように前記一体型反射型偏光子を反転させた場合、前記光学システムが、前記第2の波長範囲内の光に対する前記第1の波長範囲内の光の第2の方向の色収差d2を有し、d2>d1である、
請求項8又は9に記載の光学システム。
【請求項11】
観察者に対して物体の像を表示する光学システムであって、前記一体型反射型偏光子は、対向する第1及び第2の主表面を含み、前記第1の主表面は、前記物体に面しており、前記光学システムは、前記第2の色に対する前記第1の色の第1の方向の色収差d1を有し、前記第2の主表面が前記物体に対面するように前記一体型反射型偏光子を反転させた場合、前記光学システムが、前記第2の色に対する前記第1の色の第2の方向の色収差d2を有し、d2>d1である、
請求項1に記載の光学システム。
【請求項12】
前記一体型反射型偏光子において
前記第1の複数干渉層は、第1の偏光状態について前記第1の色を有する光を反射し、直交する第2の偏光状態について前記第1の色を有する光を透過させ、かつ、前記第1及び第2の偏光状態のそれぞれについて前記第2の色を有する光を透過させるように構成され、
前記第2の複数干渉層は、第1の偏光状態について前記第2の色を有する光を反射し、前記第2の偏光状態について前記第2の色を有する光を透過させ、かつ、前記第1及び第2の偏光状態のそれぞれについて前記第1の色を有する光を透過させるように構成され、
前記第1及び第2の複数干渉層は、それぞれの厚み方向において第1及び第2の中間点を有し、前記第1の中間点と前記第2の中間点との距離が10%違った場合、前記第1の方向の色収差が、少なくとも20%大きくなるように構成されている、
請求項11に記載の光学システム。
【請求項13】
観察者に対して物体の像を表示する光学システムであって、
前記一体型反射型偏光子は、前記物体に面する第1の主表面と、少なくとも50個の複数のポリマー干渉層を有し、かつ少なくとも400~600nmにわたる所定の波長範囲内で主に光学干渉によって光を反射及び透過させ、前記第1の主表面が前記物体の反対方向を向くように前記一体型反射型偏光子を反転させた場合、前記光学システムの前記所定の波長範囲内の方向色収差が、少なくとも20%大きくなるように構成されている、
請求項1に記載の光学システム。
【請求項14】
前記一体型反射型偏光子は、第1及び第2の反射ゾーンを備え、前記一体型反射型偏光子に実質的に垂直に入射する光について、前記第1の反射ゾーンが所定の波長範囲内の第1の波長範囲内の光を実質的に反射し、かつ、別の重複しない、前記所定の波長範囲内の第2の波長範囲内の光を実質的に透過させ、前記第2の反射ゾーンは、前記第2の波長範囲内の光を実質的に反射し、かつ、前記第1の波長範囲内の光を実質的に透過させ、前記第1及び第2の反射ゾーンは、それぞれに対応する、距離dだけ離れた厚み方向における第1及び第2の中間点を有する第1及び第2の厚さを有し、前記第1の反射ゾーンと第2の反射ゾーンが直接隣接するようにdを減少させた場合に引き起こされる、前記光学システムの、前記第2の波長範囲に対する前記第1の波長範囲の方向の色収差が、距離hであり、0.3h≦d≦0.7hである、
請求項13に記載の光学システム。
【請求項15】
前記一体型反射型偏光子において
前記第1の複数干渉層は、第1の偏光状態を有する第1の色光を反射し、直交する第2の偏光状態を有する前記第1の色光を透過させ、かつ、前記第1及び第2の偏光状態のそれぞれについて第2及び第3の色光を透過させるように構成され、
前記第2の複数干渉層は、第1の合計厚さを有する1つ以上の第1の非干渉層によって前記第1の複数干渉層と隔てられ、前記第1の偏光状態を有する前記第2の色光を反射し、前記第2の偏光状態を有する前記第2の色光を透過させ、かつ、前記第1の偏光状態と前記第2の偏光状態のそれぞれについて前記第1及び第3の色光を透過させるように構成され、
さらに、第2の合計厚さを有する1つ以上の第2の非干渉層によって前記第2の複数干渉層と隔てられ、前記第1の偏光状態を有する前記第3の色光を反射し、前記第2の偏光状態を有する前記第3の色光を透過させ、かつ、前記第1の偏光状態と前記第2の偏光状態のそれぞれについて前記第1及び第2の色光を透過させるように構成された、連続的に配置された第3の複数干渉層を含み、前記第1、第2、及び第3の複数干渉層内の各干渉層は、主に光干渉によって光を反射又は透過させ、前記第1及び第2の各非干渉層は、主に光干渉によって光を反射又は透過させず、前記第2の複数干渉層は、前記第1の複数干渉層と前記第3の複数干渉層の間に配設されており、前記第1及び第2の合計厚さのそれぞれが10%違った場合、前記光学システムの前記所定の波長範囲内の方向の色収差の大きさが少なくとも20%大きくなるように構成されている、
請求項13又は14に記載の光学システム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
光学システムは光学収差を呈することがある。色収差は、光の横方向又は縦方向の焦点が波長につれて変動する光学収差である。縦方向の色(軸方向の色シフト又は焦点シフトと呼ばれることもある)では、異なる波長について焦平面の位置に差がある。
【発明の概要】
【0002】
本説明のいくつかの態様では、観察者に像を表示するための光学システムが提供される。この光学システムは、湾曲した第1の主表面を備える第1の光学レンズと、第1の光学レンズの湾曲した第1の主表面上に配設され、かつそれに適合し、第1、第2、及び第3の色光のそれぞれについて少なくとも30%の平均光反射率を有する部分反射体と、湾曲した第1の主表面を備える第2の光学レンズと、第2の光学レンズの湾曲した第1の主表面上に配設され、かつそれに適合する一体型反射型偏光子と、を備える。一体型反射型偏光子は、第1の偏光状態を有する第1の色光を反射し、直交する第2の偏光状態を有する第1の色光を透過させ、かつ、第1の偏光状態と第2の偏光状態のそれぞれについて第2及び第3の色光を透過させるように構成された、連続的に配置された第1の複数干渉層と、第1の合計厚さを有する1つ以上の第1の非干渉層によって第1の複数干渉層と隔てられ、第1の偏光状態を有する第2の色光を反射し、第2の偏光状態を有する第2の色光を透過させ、かつ、第1の偏光状態と第2の偏光状態のそれぞれについて第1及び第3の色光を透過させるように構成された、連続的に配置された第2の複数干渉層と、第2の合計厚さを有する1つ以上の第2の非干渉層によって第2の複数干渉層と隔てられ、第1の偏光状態を有する第3の色光を反射し、第2の偏光状態を有する第3の色光を透過させ、かつ、第1の偏光状態と第2の偏光状態のそれぞれについて第1及び第2の色光を透過させるように構成された、連続的に配置された第3の複数干渉層と、を含む。第1、第2、及び第3の複数干渉層内の各干渉層は、主に光干渉によって光を反射又は透過させる。第1及び第2の非干渉層のそれぞれは、主に光干渉によって光を反射又は透過させない。第2の複数干渉層は、第1の複数干渉層と第3の複数干渉層との間に配設される。第1及び第2の厚さのそれぞれを10%変化させると、光学システムの色収差の大きさが少なくとも20%増大する。
【0003】
本明細書のいくつかの態様では、観察者に対して像を表示する光学イメージングシステムが提供される。この光学イメージングシステムは、反射型偏光子に実質的に垂直に入射する光について、第1のゾーンが第1の波長範囲内の光を実質的に反射し、かつ、別の重複しない第2の波長範囲内の光を実質的に透過させ、第2のゾーンが第2の波長範囲内の光を実質的に反射し、かつ、第1の波長範囲内の光を実質的に透過させる、第1及び第2の反射ゾーンを含む反射型偏光子を含む。第1及び第2の反射ゾーンは、それぞれに対応する、距離dだけ離れた第1及び第2の中間点を有する第1及び第2の厚さを有し、第1の反射ゾーンと第2の反射ゾーンが直接隣接するようにdを減少させたときに引き起こされる、光学イメージングシステムの、第2の波長範囲に対する第1の波長範囲の縦方向の色収差は距離hであり、ここで0.3h≦d≦0.7hである。
【0004】
本明細書のいくつかの態様では、観察者に対して像を表示する光学イメージングシステムが提供される。この光学イメージングシステムは、対向する第1及び第2の主表面を有する反射型偏光子を含み、第1の主表面は物体に面する。この光学イメージングシステムは、第2の色波長に対する第1の色波長の第1の縦方向の色収差d1を有し、第2の主表面が物体に対面するように反射型偏光子を反転させることにより、第2の色波長に対する第1の色波長の第2の縦方向の色収差d2を有する光学イメージングシステムが得られ、d2はd1より大きい。
【0005】
本明細書のいくつかの態様では、観察者に対して像を表示する光学イメージングシステムが提供される。この光学イメージングシステムは、物体に面する第1の主表面と、少なくとも50個の複数のポリマー干渉層を有し、かつ、少なくとも400~600nmにわたる所定の波長範囲内で主に光学干渉によって光を反射及び透過させる反射型偏光子と、を含む。第1の主表面が物体と反対の方向に向くように反射型偏光子を反転させることにより、光学イメージングシステムの所定の波長範囲内の縦方向の色収差が少なくとも20%増大する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】反射型偏光子の概略断面図である。
図2】複数干渉層の概略断面図である。
図3】非干渉層の概略断面図である。
図4】非干渉層の概略断面図である。
図5A】光学システムの概略断面図である。
図5B】光学システムの概略断面図である。
図6A】反射型偏光子の概略断面図である。
図6B】反射型偏光子の概略断面図である。
図7A】反射型偏光子の概略断面図である。
図7B】反射型偏光子の概略断面図である。
図8】光学システムの概略断面図である。
図9】光学システムの概略断面図である。
図10】光学システムの概略断面図である。
【発明の詳細な説明】
【0007】
以下の説明では、本明細書の一部を構成し、様々な実施形態が実例として示される、添付図面が参照される。図面は、必ずしも正確な比率の縮尺ではない。本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他の実施形態が想到され、実施可能である点を理解されたい。したがって、以下の発明を実施するための形態は、限定的な意味では解釈されないものとする。
【0008】
本明細書のいくつかの実施形態によれば、反射型偏光子を含む光学システムでは、システム内の縦方向の残留色は、好適な多層反射型偏光子の選択による色の光路長の差によって平衡させることが可能であると判明した。好適な反射型偏光子の選択には、例えば、赤色波長を反射する反射型偏光子からなる干渉層のセットと青色波長を反射する反射型偏光子からなる干渉層のセットとの間の適切な分離の選択を含むことができる。干渉層のセット間の適切な分離は、反射型偏光子の層の厚さプロファイルを変更して所望の分離を達成すること、及び/又は、干渉層のセットの間に非干渉層を含ませることによって達成することができる。本明細書の光学システムは、典型的には、屈曲光路を提供する。屈曲光学システムは、例えば、米国特許第9,557,568号(Ouderkirkら)に記載されている。
【0009】
図1は、連続的に配置された第1の複数の干渉層110と、連続的に配置された第2の複数の干渉層112と、連続的に配置された第3の複数の干渉層114とを含む反射型偏光子100の概略図である。第2の複数干渉層112は、第1の合計厚さt1を有する1つ以上の第1の非干渉層121によって第1の複数干渉層110から隔てられている。第3の複数干渉層114は、第2の合計厚さt2を有する1つ以上の第2の非干渉層123によって第2の複数干渉層112から隔てられている。第1の複数の干渉層110と第3の複数の干渉層114の中点間の距離Δが示されている。第1の複数干渉層110は、第1の偏光状態132を有する第1の(例えば、赤色)色光を反射し、直交する第2の偏光状態134を有する第1の色光を透過させ、かつ、第1の偏光状態132と第2の偏光状態134のそれぞれについて第2(例えば、緑色)及び第3(例えば、青色)色光を透過させるように構成されている。第2の複数干渉層112は、第1の偏光状態132を有する第2の色光を反射し、第2の偏光状態134を有する第2の色光を透過させ、かつ、第1の偏光状態132と第2の偏光状態134のそれぞれについて第1及び第3の色光を透過させるように構成されている。第3の複数干渉層114は、第1の偏光状態132を有する第3の色光を反射し、かつ、第2の偏光状態134を有する第3の色光を透過させ、第1の偏光状態132と第2の偏光状態134のそれぞれについて第1及び第2の色光を透過させるように構成されている。いくつかの実施形態では、第1、第2、及び第3の複数干渉層110、112及び114内の各干渉層は、200nm未満の厚さを有する。いくつかの実施形態では、t1及びt2はそれぞれ、1マイクロメートルより大きい。
【0010】
いくつかの実施形態では、第1の色光は、赤色の範囲(例えば、600nm超かつ700nm以下、又は625nm~675nm)の波長λ1を有する。いくつかの実施形態では、第2の色光は、緑色の範囲(例えば、600nm~700nm、又は625nm~675nm)の波長λ2を有する。いくつかの実施形態では、第3の色光は、青色の範囲(例えば、400nm以上かつ500nm未満、又は425nm~475nm)の波長λ3を有する。いくつかの実施形態では、反射型偏光子100を含む光学システムは、少なくとも3つの異なる色を有する複数の副画素(副画素)を有する、画素(ピクセル)で構成されたディスプレイを含む。第1、第2、及び第3の色光は、3つの異なる色の副画素からの光であってもよい。
【0011】
光130は、第1、第2、及び第3の色光を含み、第1の偏光状態132及び第2の偏光状態134を含む。光130の一部は、第3の複数干渉層114によって光131として反射され、光130の一部は、第3の複数干渉層114を光137として透過する。光131は、第3の色波長λ3及び第1の偏光状態132を有する。光137は、第2の偏光状態134を有する第3の色光を含み、第1の偏光状態132と第2の偏光状態134のそれぞれについて第1及び第2の色光を含む。光137の一部は、第2の複数干渉層112によって光133として反射され、光137の一部は、第2の複数干渉層112を光139として透過する。光133は、第3の複数干渉層114を透過させ、第2の色波長λ2及び第1の偏光状態132を有する。光139は、第1の偏光状態132を有する第1の色光を含み、第2の偏光状態134について第1、第2、及び第3の色光を含む。光139の一部は、第1の複数干渉層110によって光135として反射され、光139の一部は、第1の複数干渉層110を光136として透過する。光135は、第2の複数の干渉層112及び第3の複数の干渉層114を透過させ、第3の色波長λ3及び第1の偏光状態132を有する。光136は、第2の偏光状態134を有する第1、第2、及び第3の色光を含む。
【0012】
図2は、第1、第2、及び第3の複数干渉層110、112及び114のうちのいずれか1つに対応してもよい、複数干渉層210の概略断面図である。複数干渉層210は、主に光干渉によって光を反射及び透過させる、交互に配置された第1のポリマー層241及び第2のポリマー層242を含む。いくつかの実施形態では、第1のポリマー層241及び第2のポリマー層242はそれぞれ、約200nm未満の厚さを有する。いくつかの実施形態では、ポリマー層241及び242の厚さは、所望の波長範囲で反射を生成するために、複数干渉層210の厚さにわたって(例えば、単調に)変化する。いくつかの実施形態では、一体的に形成された光学積層体が複数干渉層210を含み、任意選択として、複数干渉層210の片側又は両側に非干渉層を含む。この非干渉層は、例えば、外被層又は保護境界層であってもよい。
【0013】
本明細書で使用するとき、第2の要素と「一体的に形成された」第1の要素とは、第1及び第2の要素が個別に製造されてから接合されるのではなく、一緒に製造されることを意味する。一体的に形成することには、第1の要素を製造し、続いて第2の要素を第1の要素上に製造することが含まれる。複数の層を含む反射型偏光子は、層が個別に製造されてから接合されているのではなく、一緒に製造されている(例えば、メルトストリームとして結合させてから、それぞれの層を有するキャストフィルムを形成し、次いで、キャストフィルムを配向させる)場合は、一体的に形成されている。一体的に形成された反射型偏光子は、一体型反射型偏光子と呼ばれることがある。
【0014】
本明細書の反射型偏光子100及び他の反射型偏光子は、例えば、米国特許第5,882,774号(Jonzaら)、及び米国特許第6,609,795号(Weberら)に記載されているものなどの従来の多層フィルム処理技術を用いて作製することができる。この作製方法は、(a)完成フィルムに使用される第1のポリマー層及び第2のポリマー層に対応する樹脂の少なくとも第1及び第2の流れを提供することと、(b)好適な供給ブロックを使用して、第1及び第2の流れを複数の層に分割することであって、供給ブロックが、(i)第1及び第2の流路を含み、第1の流路が、流路に沿って第1の位置から第2の位置へ変化する断面積を有する、勾配プレート、(ii)第1の流路と流体連通する第1の複数の導管及び、第2の流路と流体連通する第2の複数の導管を有し、各導管がそのそれぞれのスロットダイを供給し、各導管が第1の端部と第2の端部を有し、導管の第1の端部が流路と流体連通し、導管の第2の端部がスロットダイと流体連通している、供給管プレート、並びに(iii)任意選択として、導管の近傍に位置する軸方向のロッドヒータとを備える供給管を備えるようなものであることと、(c)複合ストリームを押出ダイに通過させて、各層が隣接する層の主表面に概ね平行である多層ウェブを形成することと、(d)その多層ウェブを、キャスティングホイール又はキャスティングドラムと呼ばれることもあるチルロール上で鋳造して、キャスト多層フィルムを形成することと、を含んでもよい。このキャストフィルムは、仕上げフィルムと同じ数の層を有し得るが、キャストフィルムの層は、典型的には、完成フィルムの層よりもはるかに厚い。
【0015】
冷却後、多層ウェブを再加熱し、引き伸ばし、又は延伸して、近仕上げ多層光学フィルムを製造することができる。引き伸ばし又は延伸は、2つの目的、すなわち、層を所望の最終的な厚さプロファイルまで薄くすること、また層の少なくともいくつかが複屈折となるように層を配向することを達成する。配向又は延伸は、クロスウェブ方向(例えば、テンターを介して)に沿って、ダウンウェブ方向に沿って(例えば、長さ配向器を介して)、又はそれらの任意の組合せで、同時に又は連続的に、達成することができる。1つの方向にのみ延伸される場合、延伸は「拘束しない」(フィルムは延伸方向に直角な面内方向に寸法的に緩和可能である)、又は「拘束する」(フィルムが拘束され、延伸方向に直角な面内方向で寸法的に緩和できない)。拘束しない延伸を使用して、米国特許第2010/0254002号(Merrillら)に記載されているように、実質的に一軸配向された多層光学フィルムを提供し得る。あるいは、フィルムは、バッチプロセスで延伸されてもよい。いずれの場合も、後続又は同時のドロー低減、応力又は歪み平衡、ヒートセット、及び他の処理操作もフィルムに適用することができる。
【0016】
反射型偏光子は、所定の波長範囲内で第1の偏光状態を有する光の少なくとも60パーセントがその反射型偏光子から反射されるなら、所定の波長範囲内で第1の偏光状態を有する光を実質的に反射すると言える。いくつかの実施形態では、第1の偏光状態及び所定の波長を有する光の少なくとも70パーセント、又は少なくとも80パーセントが偏光子から反射される。反射型偏光子は、所定の波長範囲内で第2の偏光状態を有する光の少なくとも60パーセントがその偏光子を透過するなら、所定の波長範囲内で第2の偏光状態を有する光を実質的に透過させると言える。いくつかの実施形態では、所定の波長範囲内で第2の偏光状態を有する光の少なくとも70パーセント、又は少なくとも80パーセントが偏光子を透過する。
【0017】
非干渉層は、主に光学干渉によって光を反射及び透過させるのではなく、また、典型的には、光学的に厚い(すなわち、400nm~700nmなどの所定の波長範囲内の波長を実質的に超える厚さを有する)。光学積層体の非干渉層は、光学フィルムの外層であってもよく、又は、例えば、1つ以上の第1の非干渉層121若しくは123内の層であってもよい。いくつかの実施形態では、非干渉層、又は2つ以上の非干渉層からなる積層体の厚さ(例えば、t1又はt2)は、約1マイクロメートルより大きいか、約2マイクロメートルより大きいか、所定の波長範囲内の最大波長の約2倍より大きいか、又は、所定の波長範囲内の最大波長の約3倍より大きい。
【0018】
図3は、例えば、1つ以上の非干渉層121又は123に対応してもよい、1つ以上の非干渉層321の概略断面図である。図示した実施形態では、1つ以上の非干渉層321は、第1の層345及び第2の層347を含む。他の実施形態では、1つの非干渉層のみが含まれるか、又は3つ以上の非干渉層が含まれる。第1の非干渉層345及び第2の非干渉層347は、例えば、隣接する光学積層体の外被層であってもよい。
【0019】
図4は、例えば、1つ以上の非干渉層121又は123に対応してもよい、1つ以上の非干渉層421の概略断面図である。1つ以上の非干渉層421は、第1の外側非干渉層445及び第2の外側非干渉層447、並びに内側スペーサ非干渉層449を含む。第1の外側非干渉層445及び第2の外側非干渉層447は、例えば、隣接する光学積層体の外被層であってもよく、内側スペーサ非干渉層449によって、1つ以上の非干渉層421の全体的な厚さ(例えば、t1又はt2に対応する)を増大させ得る。
【0020】
あるいは、又は加えて、第1の複数の干渉層110と第3の複数の干渉層114との中心間距離Δは、干渉層の層の厚さ、及び直接隣接する干渉層の間の屈折率差の選択によって調整することができる。直接隣接する干渉層のペアは、そのペアの合計の光学厚さ(屈折率×物理的厚さ)の2倍の波長を有する光を、隣接する層の間の屈折率差に応じた反射率で反射する。比較的大きな屈折率差を利用すると、所望の波長範囲にわたって所望の反射率を達成するために利用する干渉層を比較的少なくすることができ、これにより、第1の複数干渉層110と第3の複数干渉層114との中心間距離が、より短くなり得る。同様に、比較的小さい屈折率差を利用すると、比較的多くの干渉層が使用される場合に、所望の波長範囲にわたって所望の反射率を達成することができ、これにより、第1の複数干渉層110と第3の複数の干渉層114との間の中心間の分離が、より大きくなり得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、光学システムは反射型偏光子を含み、ある指定された様式で反射型偏光子が変更されたときに、ある指定された様式で変化する色収差(例えば、縦方向の色収差)を有する。
【0022】
図5Aは、所定の波長範囲内の波長を有するコリメートされた入力光552を受光する光学システム550の概略図である。この光学システムは、入力光552の波長のそれぞれを、光学システム550の光軸555上の、第1の点554と第2の点556の間の1点に集束させる。例えば、第1の波長を有する第1の光線553は、第1の点554に集束し、第2の波長を有する第2の光線557は、第2の点556に集束する。いくつかの実施形態では、第1及び第2の波長のうちの1つは、所定の波長範囲内で最短の波長であり、第1及び第2の波長の他方は、所定の波長範囲内で最長の波長である。第1の点554と第2の点556の間の距離d1は、光学システム550の縦方向の色収差であり、これは、軸方向の色収差としても知られる。光学システム550は、本明細書の他の箇所で更に詳細に説明するように、反射型偏光子(図5には図示せず)を含む。
【0023】
図5Bは、光学システム550bの概略図を示し、このシステムは、光学システム550と同等であるが、光学システム550の反射型偏光子が、本明細書の他の箇所で更に詳しく説明するように修正(例えば、干渉層間の距離を変更、又は反射型偏光子を反転)されている点が異なる。光学システム550bは、縦方向の色収差d2を有する。距離d2は、反射型偏光子を修正したときに引き起こされる光学システムの縦方向の色収差と称されてもよく、また、hとして示されてもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、縦方向の色収差d1及びd2は、特定の波長に対して指定される。例えば、いくつかの実施形態では、d1及びd2は、第2の色波長に対する第1の色波長の縦方向の色収差として説明され得る。いくつかの実施形態では、縦方向の色収差d1及びd2は、特定の波長範囲に対して指定される。例えば、いくつかの実施形態では、d1及びd2は、第2の波長範囲に対する第1の波長範囲の縦方向の色収差として説明され得る。この場合、縦方向の色収差d1及びd2は、指定された範囲内の波長についての最大の縦方向の色収差を指す。例えば、図5Aでは、光線553及び光線557は、それぞれ第1の波長範囲内及び第2の波長範囲内の、最大のd1をもたらす波長を有してもよい。同様に、図5Bでは、対応する光線は、第1及び第2のそれぞれの波長範囲内の、最大のd2をもたらす波長を有してもよい。多くの場合、縦方向の色収差は波長の単調関数であり、このため、特定の波長範囲内の縦方向の色収差は、指定された波長範囲内の最長波長での縦方向の色収差と最短波長での縦方向の色収差との差の絶対値となる。
【0025】
いくつかの実施形態では、d2がd1より大きいか、又は、d2が少なくともd1の1.2倍(すなわち、d2は、d1から少なくとも20%増大している)、少なくともd1の1.5倍、少なくともd1の1.75倍、少なくともd1の2倍、少なくともd1の2.5倍、少なくともd1の3倍、少なくともd1の3.5倍、若しくは少なくともd1の4倍である。
【0026】
いくつかの実施形態では、図5Aの反射型偏光子は、反射型偏光子100であり、上記で言及した反射型偏光子の変更は、第1の分離距離t1及び第2の分離距離t2を10%だけ変化させることである。いくつかの実施形態では、第1及び第2の分離距離は、どちらも10%増大する。いくつかの実施形態では、第1及び第2の分離距離は、どちらも10%縮小する。いくつかの実施形態では、この変更は、光学システムの色収差(例えば、縦方向の色収差)の大きさを、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%増大させる。いくつかの実施形態では、反射型偏光子は、それぞれの第1及び第2の中間点を有する第1及び第2の複数干渉層を含み、上記で言及した反射型偏光子の変更は、第1の中間点と第2の中間点との距離を10%だけ変化させることである(いくつかの実施形態では増大させ、いくつかの実施形態では縮小させる)。例えば、ここで言及する第1及び第2の複数干渉層は、図1に示す第1の複数干渉層110及び第3の複数干渉層114に対応してもよく、第1の中間点と第2の中間点との距離は、図1に示される距離Δに対応してもよい。別の例として、ここで言及する第1及び第2の複数干渉層は、図6Aに示す第1の反射ゾーン643及び第2の反射ゾーン644に対応してもよく、第1の中間点と第2の中間点との距離は、図6Aに示される距離dに対応してもよい。いくつかの実施形態では、この変更は、光学システムの縦方向の色収差の大きさを、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、又は、少なくとも50%増大させる。
【0027】
いくつかの実施形態では、上記で言及した反射型偏光子の修正は、第1の反射ゾーンと第2の反射ゾーンとの距離を(例えば、10%だけ変更するか、又は第1の反射ゾーンと第2の反射ゾーンが直接隣接するまで距離を短縮することによって)変更することである。図6Aは、そのような第1の反射ゾーン643及び第2の反射ゾーン644を有する反射型偏光子600の概略図である。いくつかの実施形態では、第1の反射ゾーン643及び第2の反射ゾーン644は、反射型偏光子に実質的に垂直に入射する光について、第1の反射ゾーン643が第1の波長範囲内の光を実質的に反射し、かつ、別の重複しない第2の波長範囲内の光を実質的に透過させ、第2の反射ゾーン644が第2の波長範囲内の光を実質的に反射し、かつ第1の波長範囲内の光を実質的に透過させるようになっている。例えば、第1の反射ゾーン643は、第1の複数干渉層110に対応してもよく、第1の波長範囲は、第1の色光の波長範囲(波長λ1)に対応してもよい。同様に、第2の反射ゾーン644は、第3の複数干渉層114に対応してもよく、第2の波長範囲は、例えば第3の色光の波長範囲(波長λ3)に対応してもよい。第1の反射ゾーン643と第2の反射ゾーン644の間の領域は、追加の反射ゾーン(例えば、第2の複数干渉層112に対応する第3の反射ゾーン)を含んでもよく、かつ/又は、1つ以上の非干渉層(例えば、非干渉層121及び/又は123)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、第1及び第2の反射ゾーン並びに追加の反射ゾーン(あれば)は、第1の偏光状態を有する対応する波長範囲内の光を反射し、かつ、直交する第2の偏光状態を有する光について、それぞれの波長範囲内の光を透過させる。
【0028】
第1の反射ゾーン643及び第2の反射ゾーン644は、それぞれに対応する、距離dだけ離れた第1の中間点663及び第2の中間点664(厚さ方向に沿った中間点)を有する第1の厚さw1及び第2の厚さw2を有する。
【0029】
図6Bは、第1の反射ゾーン643と第2の反射ゾーン644が直接隣接するように反射型偏光子600の距離dを短縮させることによって得られる、反射型偏光子600bの概略図である。
【0030】
いくつかの実施形態では、反射型偏光子600を含む光学イメージングシステムは、第1の反射ゾーンと第2の反射ゾーンが直接隣接するようにdを短縮させたときに引き起こされる、第2の波長範囲に対する第1の波長範囲の縦方向の色収差を有し、これは、距離hであり、ここで、0.3h≦d≦0.7h、又は0.35h≦d≦0.65h、又は0.4h≦d≦0.6hである。例えば、実施例においてモデル化した光学システムでは、第1の反射ゾーンと第2の反射ゾーンの間の分離をゼロにまで短縮したとき、約486nmから約656nmまでの縦方向の色収差は約82マイクロメートルであった。この場合、反射型偏光子は、約243nmの合計光学厚さを有する、直接隣接する第1の干渉層のペアからなる第1の反射ゾーンから486nmの波長を反射することができ、また、反射型偏光子は、約328nmの合計光学厚さを有する、直接隣接する第2の干渉層のペアからなる第2の反射ゾーンから656nmの波長を反射することができる。第1及び第2のペアの厚さは40マイクロメートルに比較して小さいので、第1のペアの中間点と第2のペアの中間点の間隔dを40マイクロメートルから両ペアが直接隣接するまで変化させることは、40マイクロメートルからゼロまで縮小させることによって近似できる。縦方向の色収差は、dが40マイクロメートルのときは約24マイクロメートルで、dを0まで縮小させたときは約82マイクロメートルであった。この場合、d=40マイクロメートル、h≒82マイクロメートルなので、d≒0.49hである。
【0031】
いくつかの実施形態では、上記で言及した反射型偏光子の修正は、反射型偏光子を反転させることである。反射型偏光子を反転させることは、反射型偏光子の形状を変化させないまま、(隣接する層間の境界面が同じ境界面のままとなり、かつ、片方の最も外側の主表面が他方の最も外側の面と交換されるように)層の順序(例えば、1~NからNから1へ)及び層配向を反転させることとして説明できる。これを、図7A図7Bに示す。図7Aは、第1の主表面708及び第2の主表面709を有する反射型偏光子700の概略図であり、第1の主表面708は物体777に対面している。物体777は、例えば、この反射型偏光子700が、観察者に対して物体の像を表示する光学イメージングシステムに使用されたときに、イメージャによって表示されてもよい。反射型偏光子700は、説明を簡単にするために4つの層701、702、703、及び704を有して概略的に示されているが、典型的には、少なくとも50個の層(例えば、50~1200個の干渉層、又は100~1000個の干渉層)を含む。図7Bは、第2の主表面709が物体777に対面するように反射型偏光子700を反転させることにより得られる、反射型偏光子700bの概略図である。
【0032】
いくつかの実施形態では、この光学システムは、観察者に対して物体の像を表示する光学イメージングシステムであり、反射型偏光子は、対向する第1及び第2の主表面を有し、第1の主表面は物体に対面する。いくつかの実施形態では、この光学イメージングシステムは、第2の色波長に対する第1の色波長の第1の縦方向の色収差d1を有し、第2の主表面が物体に対面するように反射型偏光子を反転させることにより、第2の色波長に対する第1の色波長の第2の縦方向の色収差d2を有する光学イメージングシステムが得られ、ここでd2>d1である。いくつかの実施形態では、d2は、少なくともd1の1.2倍、少なくともd1の1.5倍、少なくともd1の1.75倍、少なくともd1の2倍、少なくともd1の2.5倍、少なくともd1の3倍、少なくともd1の3.5倍、少なくともd1の4倍、少なくともd1の4.5倍、又は少なくともd1の5倍である。いくつかの実施形態では、観察者に対して物体の像を表示する光学イメージングシステムは、物体に対面する第1の主表面と、少なくとも50個の複数のポリマー干渉層を有し、かつ、少なくとも400~600nmにわたる所定の波長範囲内で主に光学干渉によって光を反射及び透過させる反射型偏光子と、を含み、第1の主表面が物体の反対方向を向くように反射型偏光子を反転させることにより、光学イメージングシステムの所定の波長範囲内の縦方向の色収差が、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%、少なくとも250%、少なくとも300%、少なくとも350%、又は少なくとも400%増大する。例えば、実施例の光学システムは、約24マイクロメートルのd1及び約141マイクロメートルのd2を有し、d2はd1の約5.9倍であった。すなわち、d2は、d1より約490%((141μm-24μm)/24μm×100%)増大した。
【0033】
図8は、対向する第1の主表面11及び第2の主表面12を有する第1の光学レンズ10と、第1の光学レンズ10の第1の主表面11上に配設され、かつそれに適合する部分反射体30と、対向する第1の主表面21及び第2の主表面22を有する第2の光学レンズ20と、第2の光学レンズ20の第1の主表面21上に配設され、かつそれに適合する反射型偏光子40と、を含む、を含む光学システム850の概略図である。いくつかの実施形態では、第1の光学レンズ10の第1の主表面11は湾曲している。いくつかの実施形態では、第2の光学レンズ20の第1の主表面21は湾曲している。例えば、第1の主表面11及び/又は第1の主表面21は、直交する2つの方向のそれぞれに6mm~1000mmの範囲の曲率半径を有する位置を、少なくとも1つ有してもよい。図示される実施形態では、リターダ50は、第1の光学レンズ10の第2の主表面12上に配設されている。他の実施形態では、リターダ50は、第1のレンズと第2のレンズの間に別個のリターダ板として含まれるか、そうでなければ、部分反射体30と反射型偏光子40の間のどこかの位置に含まれる。
【0034】
いくつかの実施形態では、部分反射体30は、所定の波長範囲内で、少なくとも30%の平均光反射率を有する。いくつかの実施形態では、所定の波長範囲は約550nmの波長を含んでもよく、例えば、587.6nmの波長を含んでもよい。所定の波長範囲は、いくつかの実施形態では、約400nm~約600nm又は約700nmにわたってもよい。例えば、所定の波長は、青の原色波長、緑の原色波長、及び赤の原色波長を含むことができる。所定の波長範囲は、光学システムが動作するように設計されたどのような波長範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、所定の波長範囲は他の波長範囲を含む。例えば、赤外線(例えば、近赤外線(約700nm~約2500nm))及び/又は紫外線(例えば、近紫外線(約300nm~約400nm))の波長、並びに可視光線(400nm~700nm)の波長が所定の波長範囲に含まれてもよい。いくつかの実施形態では、部分反射体30は、第1の(例えば、赤色)、第2の(例えば、緑色)及び第3の(例えば、青色)色光のそれぞれについて、少なくとも30%の平均光反射率を有する。
【0035】
本明細書の光学システムのいずれかに使用される部分反射体は、任意の好適な部分反射体であってもよい。例えば、部分反射体は、透明基材(例えば、次にレンズに接着することができるフィルム、又は基材はレンズであってもよい)上に金属(例えば、銀又はアルミニウム)の薄層をコーティングすることによって構築されてもよい。この部分反射体はまた、例えば、レンズ基材の表面上に薄膜誘電体コーティングを堆積させることによって、又はレンズ基材の表面上に、金属コーティングと誘電体コーティングとの組み合わせを堆積させることによって、形成することもできる。いくつかの実施形態では、部分反射体は、それぞれ20%~80%の範囲内にある、又はそれぞれ30%~70%の範囲内にある、又はそれぞれ40%~60%の範囲内にある、又はそれぞれ45%~55%の範囲内にある、所定の波長又は所定の波長範囲内で平均光反射率及び平均光透過率を有する。部分反射体は、例えばハーフミラーであってよい。所定の波長範囲内の平均光反射率及び平均光透過率は、特に指示がない限り、垂直入射で測定された、所定の波長範囲にわたる、並びに光反射率及び光透過率それぞれの偏光にわたる、非加重平均を指す。所定の波長における平均光反射率と平均光透過率は、特に指示がない限り、垂直入射で測定された、光反射率と光透過率それぞれの偏光にわたる非加重平均を指す。いくつかの実施形態では、部分反射体は、反射偏光子であってもよく、又は偏光依存反射率を有してもよい。しかしながら、通常、垂直入射光反射率及び光透過率は、入射光の偏光状態とは独立している、又は実質的に独立していることが好ましい。そのような偏光独立性は、例えば、実質的に等方性の金属層及び/又は誘電体層を使用して得ることができる。
【0036】
リターダ50は、所定の波長範囲内の少なくとも1つの波長に対する四分の一波長リターダであってもよい。あるいは、リターダ50は、所定の波長範囲内の波長の、例えば5/4又は9/4のリターダンスを有してもよい。本明細書の光学システムに使用されるリターダ層(例えば、リターダ50)は、フィルム若しくはコーティング、又はフィルムとコーティングの組み合わせであることができる。好適なフィルムとしては、例えば、Meadowlark Optics(Frederick,CO)から入手可能なものなどの複屈折ポリマーフィルムリターダが挙げられる。リターダ層を形成するために好適なコーティングには、米国特許出願第2002/0180916号(Schadtら)、第2003/028048号(Cherkaouiら)、第2005/0072959号(Moiaらal.)及び第2006/0197068号(Schadtら)、並びに米国特許第6,300,991号(Schadtら)に記載されている線状光重合性ポリマー(LPP)材料及び液晶ポリマー(LCP)材料が挙げられる。好適なLPP材料としては、ROP-131 EXP 306 LPPが挙げられ、好適なLCP材料としては、ROF-5185 EXP 410 LCPが挙げられ、双方ともROLIC Technologies Ltd.(Allschwil,Switzerland)より入手可能である。
【0037】
部分反射体30及び反射型偏光子40は、屈曲光路を提供するので、光学システム850は屈曲光学システムであると説明できる。米国特許第9,557,568号(Ouderkirkら)に記載されているように、屈曲光学システムは、図8の第1の光学レンズ10の右に画像レコーダが位置するカメラとして使用することができ、又は、第1の光学レンズ10の右に表示パネルが位置する表示システムとして使用することもできる。
【0038】
図9は、光学システム850の第2の光学レンズ20の第2の主表面22に入射する、第2の偏光状態を有するコリメートされた光52を有する光学システム850の概略図である。コリメートされた光52を使用して、光学システム850の色収差を決定することができる。コリメートされた光52は、例えば、コリメーティング光学レンズ及び直線偏光子を使用して準備することができる。いくつかの実施形態では、光学システム850は瞳孔を更に含み、瞳孔は、その中に開口部を有する。いくつかの実施形態では、光学システム850は、ディスプレイの用途に使用され、瞳孔は、射出瞳である。いくつかの実施形態では、光学システム850は、例えばカメラの用途に使用され、瞳孔は入射瞳である。光学システム850がディスプレイとカメラのどちらのシステムで使用されるのかにかかわらず、光学システム850の縦方向の色収差は、図9に概略的に示すとおりに決定することができる。光学システム850がディスプレイの用途に使用される場合、図9の光学システム850に入射するコリメートされた光52の直径は、ディスプレイの用途に使用される光学システム850の射出瞳の直径に一致するように制限されてもよい。
【0039】
コリメートされた光52は、第2の偏光状態を有して光学システム850に入射し、反射型偏光子40及びリターダ50を透過し、次に部分反射体30から反射されてリターダ50を透過し、次に反射型偏光子40から反射され、リターダ50及び部分反射体30を通って焦点54まで透過する。光学システム850の色収差は、図7A~7Bに概略的に示されるように、異なる波長を有するコリメート光52を使用して決定することができる。
【0040】
図10は、光学システム850を含み、第1の光学レンズ10に隣接し、かつそれに対面して配設されたイメージャ55を更に含む、光学システム1050の概略図である。イメージャ55は像15を放射し、その像は第1のレンズ10に入射する。光学システム1050は、光学イメージングシステムと呼ばれてもよく、観察者16に対して像15を表示する。射出瞳60が、第2のレンズ20に隣接し、かつ対面して配設され、射出瞳自体の中に開口部61を画定する。第1の光学レンズ10に入射した像15は、射出瞳60内の開口部61を通って光学システム1050から出る。光学システム1050は、第1の直線吸収型偏光子80、第2のリターダ90、及び第2の直線吸収型偏光子88を更に含む。第1の光学レンズ10は、第2の光学レンズ20と第2のリターダ90の間に配設されている。第2のリターダ90(例えば、第2の四分の一波長リターダ)は、第1の光学レンズ10と第1の直線吸収型偏光子80の間に配設されている。第2の光学レンズ20は、第2の直線吸収型偏光子88と反射型偏光子40の間に配設されている。
【0041】
いくつかの実施形態では、第2のリターダ90及び/又は第1の直線吸収型偏光子80は、省略されてもよいし、又はイメージャ55に組み込まれてもよい。いくつかの実施形態では、第2の直線吸収型偏光子88は省略されるか、又は第2の光学レンズ20の第2の主表面上に配設される。
【0042】
光学システム1050は、光軸155に沿って伝播する光線が、第1の光学レンズ10及び第2の光学レンズ20、部分反射体30、反射型偏光子40、及びリターダ50を、実質的には屈折せずに通過するように構成されている。いくつかの構成では、第1の光学レンズ10及び第2の光学レンズ20、部分反射体30、反射型偏光子40、並びにリターダ層50のうちの少なくとも1つは、回転対称である。いくつかの構成では、第1の光学レンズ10及び第2の光学レンズ20、部分反射体30、反射型偏光子40、並びにリターダ50のうちの少なくとも1つは、非回転対称である。いくつかの構成では、第1の光学レンズ10及び第2の光学レンズ20、部分反射体30、反射型偏光子40、並びにリターダ50のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの対称面を有する。
【0043】
光学システム若しくはディスプレイシステム、又は光学システム内の光学レンズ若しくは光学素子の光軸は、そのシステム、又はレンズ若しくは光学素子の中心付近の軸として理解することができ、光軸に沿って伝播する光線は、レンズ及び/又は光学素子を小さな屈折度又は最小の屈折度で通過するので、光軸とは異なる軸に沿って伝播する光の屈折度は、それよりも大きくなる。いくつかの実施形態では、それぞれのレンズの中心は、それぞれのレンズの1つの頂点を通る光軸上にある。光軸に沿った光線は、レンズ及び/又は光学素子を、屈折せずに、又は実質的には屈折せずに通過してもよい。実質的には屈折せず、とは、表面に入射する光線と、その表面を通って透過される光線との間の角度が、15度以下であることを意味する。一部の実施形態では、この入射光線と透過光線との間の角度は、10度未満、又は5度未満、又は3度未満、又は2度未満である。いくつかの実施形態では、光学システムの光軸は、その軸に沿って伝播する光線が、光学レンズ、部分反射体、反射偏光子、及びリターダ層を、実質的には屈折せずに通過するような軸である。いくつかの実施形態では、この軸に沿って伝播する光線は、この光学システムのどの主表面においても、10度、5度、3度、又は2度のいずれかを超えて屈折することなく、光学レンズ、部分反射体、反射偏光子、及びリターダ層を通過する。
【0044】
光学システム850の、第1の光学レンズ10及び第2の光学レンズ20は、ガラス又はプラスチックなどの、どのような好適な材料で作られていてもよい。第1の光学レンズ10は、ホウケイ酸BK7ガラス、ランタンクラウンLAK34、ランタンフリントLAF7ガラス、フリントF2ガラス、高密度フリントSF2、ランタン高密度フリントLASF45、フルオロホスフェートFPL51及びフルオロホスフェートFPL55ガラスのうちの1つ以上を含んでもよい。第2の光学レンズ20は、プラスチック製であってもよく、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、及びポリカーボネートのうちの1つ以上を含んでもよい。いくつかの実施形態では、第1の光学レンズ10は一体型のガラス要素である。いくつかの実施形態では、第2の光学レンズ20は一体型のプラスチック要素である。
【0045】
いくつかの実施形態では、イメージャ55は、液晶ディスプレイパネル又は有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイパネルである。
【0046】
本明細書で使用及び記載されている文脈において、「約、ほぼ(about)」及び「実質的に」などの用語は、当業者には理解されるであろう。本明細書に使用及び記載されている文脈において、特徴部の形状、量、及び物理的性質を表す量に適用される「約、ほぼ」の用法が当業者にとって明らかではない場合、「約、ほぼ」は、特定の値の5パーセント以内を意味すると理解されるであろう。特定の値の約、ほぼとして与えられる量は、正確に特定の値であり得る。例えば、本明細書に使用及び記載されている文脈において当業者にとって明らかではない場合には、約1の値を有する量とは、その量が0.95~1.05の値を有すること、及び、その値が1である場合もあることを意味する。本明細書に使用及び記載されている文脈において「実質的に垂直」という用法が当業者にとって明らかではない場合、「実質的に垂直」とは、垂直から30度以内を意味する。実質的に垂直として記載される方向は、いくつかの実施形態では、垂直から20度以内、垂直から10度以内又は、垂直若しくは名目上垂直であってもよい。
【0047】
以下は、本明細書の例示的な実施形態の列挙である。
【0048】
実施形態1は、観察者に対して像を表示するための光学システムであって、
湾曲した第1の主表面を備える第1の光学レンズと、
第1の光学レンズの湾曲した第1の主表面上に配設され、かつそれに適合し、第1、第2、及び第3の色光のそれぞれに対して少なくとも30%の平均光反射率を有する、部分反射体と、
湾曲した第1の主表面を備える第2の光学レンズと、
第2の光学レンズの湾曲した第1の主表面上に配設され、かつそれに適合する一体型反射型偏光子とを備え、一体型反射型偏光子は、
第1の偏光状態を有する第1の色光を反射し、直交する第2の偏光状態を有する第1の色光を透過させ、かつ、第1及び第2の偏光状態のそれぞれについて第2及び第3の色光を透過させるように構成された、連続的に配列された第1の複数干渉層と、
第1の合計厚さを有する1つ以上の第1の非干渉層によって第1の複数干渉層と隔てられ、第1の偏光状態を有する第2の色光を反射し、第2の偏光状態を有する第2の色光を透過させ、第1の偏光状態と第2の偏光状態のそれぞれについて第1及び第3の色光を透過させるように構成された、連続的に配置された第2の複数干渉層と、
第2の合計厚さを有する1つ以上の第2の非干渉層によって第2の複数干渉層と隔てられ、第1の偏光状態を有する第3の色光を反射し、第2の偏光状態を有する第3の色光を透過させ、かつ、第1の偏光状態と第2の偏光状態のそれぞれについて第1及び第2の色光を透過させるように構成された、連続的に配置された第3の複数干渉層とを含み、第1、第2、及び第3の複数干渉層内の各干渉層は主に光干渉によって光を反射又は透過させ、第1及び第2の非干渉層は主に光干渉によって光を反射又は透過させるのではなく、第2の複数干渉層は第1の複数干渉層と第3の複数干渉層の間に配設されており、第1及び第2の厚さのそれぞれを10%増大させると、光学システムの色収差の大きさが少なくとも20%増大する。
【0049】
実施形態2は、第1の色光が赤色、第2の色光が緑色、第3の色光が青色である、実施形態1の光学システムである。
【0050】
実施形態3は、第1、第2、及び第3の複数干渉層内の各干渉層が200nm未満の厚さを有する、実施形態1又は2の光学システムである。
【0051】
実施形態4は、第1及び第2の非干渉層のそれぞれが、1マイクロメートルを超える厚さを有する、実施形態1~3のいずれか1つの光学システムである。
【0052】
実施形態5は、第1及び第2の厚さのそれぞれを10%変化させることが、第1及び第2の厚さのそれぞれを10%増大させることを含む、実施形態1~4のいずれか1つの光学システムである。
【0053】
実施形態6は、第1及び第2の厚さのそれぞれを10%変化させることが、第1及び第2の厚さのそれぞれを10%縮小させることを含む、実施形態1~4のいずれか1つの光学システムである。
【0054】
実施形態7は、第1及び第2の厚さのそれぞれを10%変化させることが、光学システムの色収差の大きさを少なくとも30%増大させる、実施形態1~6のいずれか1つの光学システムである。
【0055】
実施形態8は、第1及び第2の厚さのそれぞれを10%によって変化させることが、光学システムの色収差の大きさを少なくとも40%増大させる、実施形態1~6のいずれか1つの光学システムである。
【0056】
実施形態9は、第1及び第2の厚さのそれぞれを10%変更することが、光学システムの色収差の大きさを少なくとも50%増大させる、実施形態1~6のいずれか1つの光学システムである。
【0057】
実施形態10は、色収差が縦方向の色収差である、実施形態1~9のいずれか1つの光学システムである。
【0058】
実施形態11は、反射型偏光子が対向する第1及び第2の主表面を備え、第2の主表面が観察者に面しており、光学システムが、第2の色光に対する第1の色光の第1の縦方向の色収差d1を有し、第1の主表面が観察者に対面するように反射型偏光子を反転させることにより、光学システムが、第3の色光に対する第1の色光の第2の縦方向の色収差d2を有するようになり、d2>d1である、実施形態1~10のいずれか1つの光学システムである。
【0059】
実施形態12は、反射型偏光子と部分反射体の間に配設されたリターダを更に備える、実施形態1~11のいずれか1つの光学システムである。
【0060】
実施形態13は、観察者に対して像を表示する光学イメージングシステムであり、第1及び第2の反射ゾーンを備える反射型偏光子を備え、反射型偏光子に実質的に垂直に入射する光について、第1のゾーンが第1の波長範囲内の光を実質的に反射し、かつ、別の重複しない第2の波長範囲内の光を実質的に透過させ、第2のゾーンが第2の波長範囲内の光を実質的に反射し、かつ、第1の波長範囲内の光を実質的に透過させ、第1及び第2の反射ゾーンは、それぞれに対応する、距離dだけ離れた第1及び第2の中間点を有する第1及び第2の厚さを有し、第1の反射ゾーンと第2の反射ゾーンが直接隣接するようにdを減少させたときに引き起こされる、光学イメージングシステムの、第2の波長範囲に対する第1の波長範囲の縦方向の色収差は距離hであり、ここで0.3h≦d≦0.7hである。
【0061】
実施形態14は、反射型偏光子が、第1の反射ゾーンと第2の反射ゾーンの間に配設された第3の反射ゾーンを更に備え、反射型偏光子に実質的に垂直に入射する光について、第3のゾーンが、第1の波長範囲と第2の波長範囲の間の第3の波長範囲の光を実質的に反射する、実施形態13の光学イメージングシステムである。
【0062】
実施形態15は、湾曲した第1の主表面を備える第1の光学レンズと、
第1の光学レンズの湾曲した第1の主表面上に配設され、かつそれに適合し、第1及び第2の波長範囲のそれぞれについて少なくとも30%の平均光反射率を有する、部分反射体と、
湾曲した第1の主表面を備える第2の光学レンズと、を更に備え、
反射型偏光子が、第2の光学レンズの湾曲した第1の主表面上に配設され、かつそれに適合する、実施形態13又は14の光学イメージングシステムである。
【0063】
実施形態16は、部分反射体と反射型偏光子の間に配設されたリターダを更に備える、実施形態15の光学イメージングシステムである。
【0064】
実施形態17は、dを10%変化させることが、縦方向の色収差の大きさを少なくとも20%増大させる、実施形態13~16のいずれか1つの光学イメージングシステムである。
【0065】
実施形態18は、反射型偏光子が対向する第1及び第2の主表面を備え、第2の主表面が観察者に対面しており、光学システムが、第2の波長範囲内の光に対する第1の波長範囲内の光の第1の縦方向の色収差d1を有し、第1の主表面が観察者に対面するように反射型偏光子を反転させることにより、光学システムが、第2の波長範囲内の光に対する第1の波長範囲内の光の第2の縦方向の色収差d2を有するようになり、d2>d1である、実施形態13~17のいずれか1つの光学イメージングシステムである。
【0066】
実施形態19は、0.35h≦d≦0.65hである、実施形態13~18のいずれか1つの光学イメージングシステムである。
【0067】
実施形態20は、0.4h≦d≦0.6hである、実施形態13~18のいずれか1つの光学イメージングシステムである。
【0068】
実施形態21は、観察者に対して物体の像を表示する光学イメージングシステムであり、対向する第1及び第2の主表面を含む反射型偏光子を備え、第1の主表面が物体に対面しており、この光学イメージングシステムは、第2の色波長に対する第1の色波長の第1の縦方向の色収差d1を有し、第2の主表面が物体に対面するように反射型偏光子を反転させることにより、光学イメージングシステムが第2の色波長に対する第1の色波長の第2の縦方向の色収差d2を有するようになり、ここで、d2>d1である。
【0069】
実施形態22は、d2が、少なくともd1の1.2倍、少なくともd1の1.5倍、少なくともd1の2倍、少なくともd1の2.5倍、少なくともd1の3倍、少なくともd1の3.5倍、又は少なくともd1の4倍である、実施形態21の光学イメージングシステムである。
【0070】
実施形態23は、
反射型偏光子が、
第1の偏光状態について第1の色波長を有する光を反射し、直交する第2の偏光状態について第1の色波長を有する光を透過させ、かつ、第1の偏光状態と第2の偏光状態のそれぞれについて第2の色波長を有する光を透過させるように構成された第1の複数干渉層と、
第1の偏光状態について第2の色波長を有する光を反射し、第2の偏光状態について第2の色波長を有する光を透過させ、かつ、第1の偏光状態と第2の偏光状態のそれぞれについて第1の色波長を有する光を透過させるように構成された第2の複数干渉層と、を備え、
第1及び第2の複数干渉層が、それぞれの第1及び第2の中間点を有し、第1の中間点と第2の中間点との距離を10%変化させることにより、第1の縦方向の色収差が少なくとも20%増大する、
実施形態21又は22の光学イメージングシステムである。
【0071】
実施形態24は、
湾曲した第1の主表面を備える第1の光学レンズと、
第1の光学レンズの湾曲した第1の主表面上に配設され、かつそれに適合し、第1及び第2の色波長のそれぞれに対して少なくとも30%の平均光反射率を有する、部分反射体と、
湾曲した第1の主表面を備える第2の光学レンズと、を備え、
反射型偏光子が、第2の光学レンズの湾曲した第1の主表面上に配設され、かつそれに適合する、実施形態21~23のいずれか1つの光学イメージングシステムである。
【0072】
実施形態25は、反射型偏光子と部分反射体の間に配設されたリターダを更に備える、実施形態21~23のいずれか1つの光学イメージングシステムである。
【0073】
実施形態26は、反射型偏光子が第1及び第2の反射ゾーンを備え、反射型偏光子に実質的に垂直に入射する光について、第1のゾーンが第1の色波長を含む第1の波長範囲内の光を実質的に反射し、かつ、別の重複しない、第2の色波長を含む第2の波長範囲内の光を実質的に透過させ、第2のゾーンが第2の波長範囲内の光を実質的に反射し、かつ、第1の波長範囲内の光を実質的に透過させ、第1及び第2の反射ゾーンが、それぞれに対応する、距離dだけ離れた第1及び第2の中間点を有する第1及び第2の厚さを有し、第1の反射ゾーンと第2の反射ゾーンが直接隣接するようにdを減少させたときに引き起こされる、光学イメージングシステムの、第2の波長範囲に対する第1の波長範囲の縦方向の色収差が距離hであり、0.3h≦d≦0.7hである、実施形態21~25のいずれか1つの光学イメージングシステムである。
【0074】
実施形態27は、観察者に対して物体の像を表示する光学イメージングシステムであって、物体に対面する第1の主表面と、少なくとも50個の複数のポリマー干渉層を有し、かつ、少なくとも400~600nmにわたる所定の波長範囲内で主に光学干渉によって光を反射及び透過させる反射型偏光子と、を備え、第1の主表面が物体の反対方向を向くように反射型偏光子を反転させることにより、光学イメージングシステムの所定の波長範囲内の縦方向の色収差が、少なくとも20%増大する。
【0075】
実施形態28は、第1の主表面が物体の反対方向を向くように反射型偏光子を反転させることにより、光学イメージングシステムの所定の波長範囲内の縦方向の色収差が少なくとも50%増大する、実施形態27の光学イメージングシステムである。
【0076】
実施形態29は、第1の主表面が物体の反対方向を向くように反射型偏光子を反転させることにより、光学イメージングシステムの所定の波長範囲内の縦方向の色収差が少なくとも100%増大する、実施形態27又は28の光学イメージングシステムである。
【0077】
実施形態30は、第1の主表面が物体と反対の方向に向くように反射型偏光子を反転させることにより、光学イメージングシステムの所定の波長範囲内の縦方向の色収差が少なくとも150%増大する、実施形態27~29のいずれか1つの光学イメージングシステムである。
【0078】
実施形態31は、第1の主表面が物体の反対方向を向くように反射型偏光子を反転させることにより、光学イメージングシステムの所定の波長範囲内の縦方向の色収差が少なくとも200%、少なくとも250%、又は少なくとも300%増大する、実施形態27~30のいずれか1つの光学イメージングシステムである。
【0079】
実施形態32は、所定の波長範囲が400nm~700nmにわたる、実施形態27~31のいずれか1つの光学イメージングシステムである。
【0080】
実施形態33は、反射型偏光子が第1及び第2の反射ゾーンを備え、反射型偏光子に実質的に垂直に入射する光について、第1のゾーンが所定の波長範囲内の第1の波長範囲内の光を実質的に反射し、かつ、別の重複しない、所定の波長範囲内の第2の波長範囲内の光を実質的に透過させ、第2のゾーンが第2の波長範囲内の光を実質的に反射し、かつ、第1の波長範囲内の光を実質的に透過させ、第1及び第2の反射ゾーンが、それぞれに対応する、距離dだけ離れた第1及び第2の中間点を有する第1及び第2の厚さを有し、第1の反射ゾーンと第2の反射ゾーンが直接隣接するようにdを減少させたときに引き起こされる、光学イメージングシステムの、第2の波長範囲に対する第1の波長範囲の縦方向の色収差は距離hであり、0.3h≦d≦0.7hである、実施形態27~32のいずれか1つの光学イメージングシステムである。
【0081】
実施形態34は、
反射型偏光子が一体的に形成され、
第1の偏光状態を有する第1の色光を反射し、直交する第2の偏光状態を有する第1の色光を透過させ、かつ、第1及び第2の偏光状態のそれぞれについて第2及び第3の色光を透過させるように構成された、連続的に配列された第1の複数干渉層と、
第1の合計厚さを有する1つ以上の第1の非干渉層によって第1の複数干渉層と隔てられ、第1の偏光状態を有する第2の色光を反射し、第2の偏光状態を有する第2の色光を透過させ、かつ、第1の偏光状態と第2の偏光状態のそれぞれについて第1及び第3の色光を透過させるように構成された、連続的に配置された第2の複数干渉層と、
第2の合計厚さを有する1つ以上の第2の非干渉層によって第2の複数干渉層と隔てられ、第1の偏光状態を有する第3の色光を反射し、第2の偏光状態を有する第3の色光を透過させ、第1の偏光状態と第2の偏光状態のそれぞれについて第1及び第2の色光を透過させるように構成された、連続的に配置された第3の複数干渉層とを含み、
第1、第2、及び第3の複数干渉層内の各干渉層は主に光干渉によって光を反射又は透過させ、第1及び第2の非干渉層は主に光干渉によって光を反射又は透過させるのではなく、第2の複数干渉層は第1の複数干渉層と第3の複数干渉層の間に配設されており、第1及び第2の厚さのそれぞれを10%増大させると、光学システムの色収差の大きさが少なくとも20%増大する、実施形態27~33のいずれか1つの光学イメージングシステムである。
【0082】
実施形態35は、
湾曲した第1の主表面を備える第1の光学レンズと、
第1の光学レンズの湾曲した第1の主表面上に配設され、それに適合し、所定の波長範囲内で少なくとも30%の平均光反射率を有する、部分反射体と、
湾曲した第1の主表面を備える第2の光学レンズと、を更に備え、
反射型偏光子が、第2の光学レンズの湾曲した第1の主表面上に配設され、かつそれに適合する、実施形態27~34のいずれか1つの光学イメージングシステムである。
【0083】
実施形態36は、部分反射体と反射型偏光子の間に配設されたリターダを更に備える、実施形態35の光学イメージングシステムである。
【実施例
【0084】
光学システム850に類似する光学システムを、Zemax OpticStudio(登録商標)モデリングソフトウェアを使用してモデル化した。反射型偏光子を、第2の光学レンズ20の第1の主表面21上の、40マイクロメートル厚の要素としてモデル化した。ブロック偏光状態における光の反射を、第2の光学レンズ20と反対側の最も外側の主表面、又は第2の光学レンズ20に直接隣接する主表面のいずれかで生じるものとしてモデル化した。第1の光学レンズ10をN-BK7ガラスとしてモデル化し、第2の光学レンズ20をアクリルとしてモデル化した。第1の光学レンズ10の第1の主表面11は曲率半径51.7mmを有する球面で、第1の光学レンズ10の第2の主表面12は非球面であった。第1の光学レンズ10の厚さは、第1の光学レンズ10の中心で7mmであった。第2の光学レンズ20の第1の主表面21及び第2の主表面22は、式1によって記述される滑らかな球面であった。
【数1】
【0085】
第1の主表面21では、長さの単位にmmを使用すると、c=-1/(120.4)、k=0、E=2.5E-06で、F及びGはゼロであった。第2の主表面22では、長さの単位にmmを使用すると、c=1/(231.3)、k=4.91、E=-1.43E-05で、F=2.11E-08、G=-9.33E-11であった。第2の光学レンズ20の厚さは、第2の光学レンズ20の中心で3.2mmであった。
【0086】
焦平面の部分反射体に対する位置(図9では、これは、点54から部分反射体30までの光軸155に沿った距離である)は、波長の関数として定まり、以下の表で、3つの波長について報告する。
【0087】
【表1】
【0088】
最も外側の面で反射が生じた場合は、約486~約656nmの所定の波長範囲にわたる縦方向の色収差は、0.162253mm-0.079771mm=0.082482mm、すなわち約82.5マイクロメートルであった。最も外側の面の40マイクロメートル下で反射が生じた場合は、所定の波長範囲にわたる縦方向の色収差は、0.103613mm-0.021588mm=0.082025mm、すなわち約82.0マイクロメートルであった。
【0089】
また、上記の表中の3つの波長について、Zemaxソフトウェアを使用して、スポットダイアグラムを決定した。スポットダイアグラムによって、点物体からの像のサイズが決まる。収差がない場合、点物体は、1つの像点に収束する。収差は、スポットのサイズを増大させる。色収差は、より大きなスポットを作り出すいくつかの波長を生じる可能性があり、したがって、全体的なスポットサイズが大きくなる可能性がある。最も外側の面で反射が生じた場合、二乗平均平方根(RMS)スポット半径は13.2マイクロメートル、幾何学的スポット半径は21.9マイクロメートルであった。最も外側の面の40マイクロメートル下で反射が生じた場合、RMSスポット半径は11.6マイクロメートル、幾何学的スポット半径は29.7マイクロメートルであった。
【0090】
最も外側の主表面で、約486nmの波長を有する光を反射するように適合され、かつ、この最も外側の主表面の40マイクロメートル下の表面で、約656nmの波長を有する光を反射するように適合された層を有する反射型偏光子は、0.103613mm-0.07977mm=0.023842mm、すなわち約23.8マイクロメートルの縦方向の色収差を有する。この場合、RMSスポット半径は8.0マイクロメートルに決まり、幾何学的スポット半径は12.5マイクロメートルに決まった。
【0091】
反射型偏光子を反転させて、最も外側の主表面で約656nmの波長が反射され、この最も外側の主表面の40マイクロメートル下の表面で約486nmの波長が反射されるようすると、0.162253-0.021588=0.140665mm、すなわち約141マイクロメートルの縦方向の色収差が得られる。この場合、RMSスポット半径は16.7マイクロメートルに決まり、幾何学的スポット半径は28.7マイクロメートルに決まった。
【0092】
上記特許出願において引用された全ての文献、特許文献又は特許出願は、一貫した形でそれらの全容が参照により本明細書に組み込まれる。組み込まれた参照文献の一部と本出願との間に不一致又は矛盾がある場合、前述の記載における情報が優先するものとする。
【0093】
図中の要素の説明は、別段の指示がない限り、他の図中の対応する要素に等しく適用されるものと理解されたい。具体的な実施形態を本明細書において例示し記述したが、様々な代替及び/又は同等の実施により、図示及び記載した具体的な実施形態を、本開示の範囲を逸脱することなく置き換え可能であることが、当業者には理解されるであろう。本出願は、本明細書において説明した具体的な実施形態のあらゆる適合例又は変形例を包含することを意図する。したがって、本開示は、特許請求の範囲及びその同等物によってのみ限定されるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10