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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ライソゾーム病の遺伝子治療
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20231005BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20231005BHJP
   C12N 15/67 20060101ALI20231005BHJP
   C12N 15/866 20060101ALI20231005BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20231005BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231005BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231005BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231005BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231005BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20231005BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20231005BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20231005BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N15/864 100Z
C12N15/67 Z
C12N15/866 Z
C12N7/01
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P25/16
A61K48/00
A61K31/7088
A61K35/76
C12N15/113 Z
【請求項の数】 37
(21)【出願番号】P 2020540683
(86)(22)【出願日】2018-10-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 US2018054227
(87)【国際公開番号】W WO2019070894
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-10-01
(31)【優先権主張番号】62/567,311
(32)【優先日】2017-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/567,310
(32)【優先日】2017-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/567,301
(32)【優先日】2017-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/567,319
(32)【優先日】2017-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/567,296
(32)【優先日】2017-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520118865
【氏名又は名称】プリベイル セラピューティクス,インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】PREVAIL THERAPEUTICS, INC.
【住所又は居所原語表記】Suite 940,430 East 29th Street,New York,NY 10016,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】アベリオビック,アーサ
(72)【発明者】
【氏名】ヘックマン,ローラ
(72)【発明者】
【氏名】ライン,エルベ
【審査官】鈴木 崇之
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-516143(JP,A)
【文献】特表2009-538631(JP,A)
【文献】国際公開第2009/120978(WO,A2)
【文献】国際公開第2016/081927(WO,A2)
【文献】特表2016-503405(JP,A)
【文献】特表2004-516016(JP,A)
【文献】Molecular Brain,2014年,7:17,URL<http://www.molecularbrain.com/content/7/1/17>, 検索日: 2023-01-19
【文献】HUMAN GENE THERAPY METHODS,2017年10月01日,Vol. 28, No. 5,pp. 277-289
【文献】J Virol.,2005年,Vol. 79, No. 17,pp. 11082-11094
【文献】植物由来脂肪酸不飽和化酵素を哺乳類細胞において高発現させるためのコドン使用頻度の最適化,Mem. School. B. O. S. T. Kinki University,2008年,No. 22,pp.33-41
【文献】World J Exp Med.,2015年,Vol. 5, Issue 1,pp. 11-20
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 7/00-7/08
C12N 5/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、単離された核酸:
(i)導入遺伝子が、配列番号68のヌクレオチド配列を含む、プログラニュリン(PGRN)タンパク質をコードする導入遺伝子を含む発現構築物、
および
(ii)発現構築物に隣接する2つのアデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列であって、第1のITR配列は5’ITRであり、および第2のITR配列は3’ITRである、前記2つのITR配列
【請求項2】
導入遺伝子が、プロモーターに作動可能に連結されている、請求項1に記載の単離された核酸。
【請求項3】
プロモーターが、ニワトリ-ベータアクチン(CBA)プロモーターである、請求項2に記載の単離された核酸。
【請求項4】
CMVエンハンサーをさらに含む、請求項3に記載の単離された核酸。
【請求項5】
ウッドチャック肝炎ウイルスの転写後調節要素(WPRE)をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【請求項6】
ウシ成長ホルモンポリAシグナルテールをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【請求項7】
2つのITR配列の各々が、野生型AAV2 ITR配列である、請求項1~4のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【請求項8】
2つのITR配列の各々が、発現構築物に対して近位の「D」領域(配列番号27)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【請求項9】
少なくとも1つのITR配列が、発現構築物に対してITR配列の外側に位置する「D」領域(配列番号27)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【請求項10】
発現構築物に対して5’に位置するITR配列が、発現構築物に対して近位の「D」領域(配列番号27)を含み、および、発現構築物に対して3’に位置するITR配列が、発現構築物に対してITR配列の外側に位置する「D」領域(配列番号27)を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の単離された核酸。
【請求項11】
5’ITRの核酸配列が、配列番号69のヌクレオチド1~145であり、および3’ITRの核酸配列が、配列番号69のヌクレオチド4041~4185である、請求項10に記載の単離された核酸。
【請求項12】
5’ITRと発現構築物との間にTRY領域をさらに含み、ここで、TRY領域が配列番号28に示される配列を有する、請求項11に記載の単離された核酸。
【請求項13】
2つのアデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列が隣接したプログラニュリン(PGRN)タンパク質をコードする導入遺伝子を含む発現構築物を含む、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターであって、
ここで、前記導入遺伝子が、配列番号68のヌクレオチド配列を含み、ならびに、ここで、第1のITR配列は5’ITRであり、および第2のITR配列は3’ITRである
前記rAAVベクター
【請求項14】
導入遺伝子が、プロモーターに作動可能に連結されている、請求項13に記載のrAAVベクター。
【請求項15】
プロモーターが、ニワトリベータアクチン(CBA)プロモーターである、請求項14に記載のrAAVベクター。
【請求項16】
CMVエンハンサーをさらに含む、請求項15に記載のrAAVベクター。
【請求項17】
ウッドチャック肝炎ウイルスの転写後調節要素(WPRE)をさらに含む、請求項13~16のいずれか一項に記載のrAAVベクター。
【請求項18】
ウシ成長ホルモンポリAシグナルテールをさらに含む、請求項13~16のいずれか一項に記載のrAAVベクター。
【請求項19】
2つのITR配列の各々が、野生型AAV2 ITR配列である、請求項13~16のいずれか一項に記載のrAAVベクター。
【請求項20】
2つのITR配列の各々が、発現構築物に対して近位の「D」領域(配列番号27)を含む、請求項13~16のいずれか一項に記載のrAAVベクター。
【請求項21】
少なくとも1つのITR配列が、発現構築物に対してITR配列の外側に位置する「D」領域(配列番号27)を含む、請求項13~16のいずれか一項に記載のrAAVベクター。
【請求項22】
発現構築物に対して5’に位置するITR配列が、発現構築物に対して近位の「D」領域(配列番号27)を含み、および、発現構築物に対して3’に位置するITR配列が、発現構築物に対してITR配列の外側に位置する「D」領域(配列番号27)を含む、請求項13~16のいずれか一項に記載のrAAVベクター。
【請求項23】
5’ITRの核酸配列が、配列番号69のヌクレオチド1~145であり、および、3’ITRの核酸配列が、配列番号69のヌクレオチド4041~4185である、請求項22に記載のrAAVベクター。
【請求項24】
5’ITRと発現構築物との間にTRY領域をさらに含み、ここで、TRY領域が配列番号28に示される配列を有する、請求項23に記載のrAAVベクター。
【請求項25】
以下を含む、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV):
(i)アデノ随伴ウイルス(AAV)カプシドタンパク質;
および
(ii)請求項13~24のいずれか一項に記載のrAAVベクター。
【請求項26】
AAVカプシドタンパク質が、AAV9カプシドタンパク質である、請求項25に記載のrAAV。
【請求項27】
5’から3’の順番で、以下を含む核酸を含む、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター:
(a)5’アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR);
(b)CMVエンハンサー;
(c)ニワトリベータアクチン(CBA)プロモーター;
(d)配列番号68のヌクレオチド配列を含む、プログラニュリン(PGRN)タンパク質をコードする導入遺伝子;
(e)ウッドチャック肝炎ウイルスの転写後調節要素(WPRE);
(f)ウシ成長ホルモンポリAシグナルテール;
および
(g)3’AAV ITR。
【請求項28】
以下を含む、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV):
(i)AAVカプシドタンパク質;
および
(ii)請求項27に記載のrAAVベクター。
【請求項29】
AAVカプシドタンパク質が、AAV9カプシドタンパク質である、請求項28に記載のrAAV。
【請求項30】
請求項1~12のいずれか一項に記載の単離された核酸を含む、プラスミド。
【請求項31】
配列番号68に示されるヌクレオチド配列を含む、バキュロウイルスベクター。
【請求項32】
以下を含む、細胞:
(i)1つ以上のアデノ随伴ウイルスrepタンパク質、および/または、1つ以上のアデノ随伴ウイルスcapタンパク質をコードする第1のベクター;
および
(ii)配列番号68に示されるヌクレオチド配列を含む、第2のベクター。
【請求項33】
第1のベクターが、プラスミドであり、および、第2のベクターが、プラスミドである、請求項32に記載の細胞。
【請求項34】
哺乳動物細胞である、請求項32または33に記載の細胞。
【請求項35】
哺乳動物細胞が、HEK293細胞である、請求項34に記載の細胞。
【請求項36】
第1のベクターが、バキュロウイルスベクターであり、および、第2のベクターが、バキュロウイルスベクターである、請求項32に記載の細胞。
【請求項37】
以下を含む、請求項25、26、28、および29のいずれか一項に記載の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を生成する方法:
(i)細胞に、1つ以上のアデノ随伴ウイルスrepタンパク質、および/または、1つ以上のアデノ随伴ウイルスcapタンパク質をコードする第1のベクター、および配列番号68のヌクレオチド配列を含むrAAVベクターを送達すること;
(ii)rAAVのパッケージングを可能にする条件の下で細胞を培養すること;
および
(iii)rAAVの収集のために培養宿主細胞または培養培地を回収すること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、35 U.S.C. 119(e)の下で、2017年10月3日に提出された米国仮出願第62/567,296号、表題「ライソゾーム病の遺伝子治療」、2017年10月3日に提出された第62/567,311号、表題「ライソゾーム病の遺伝子治療」、2017年10月3日に提出された第62/567,319号、表題「ライソゾーム病の遺伝子治療」、2018年10月3日に提出された第62/567,301号、表題「ライソゾーム病の遺伝子治療」、および2017年10月3日に提出された第62/567,310号、表題「ライソゾーム病の遺伝子治療」の出願日の利益を主張する;これら各出願の内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
ゴーシェ病は、リソソーム酸β-グルコセレブロシダーゼ(Gcase、「GBA」)の欠損による、スフィンゴ糖脂質代謝の稀な先天性異常である。患者は、非CNS症状ならびに、肝脾腫および、汎血球減少症、肺障害/線維症および骨欠損につながる骨髄不全を含む所見に苦しむ。さらに、かなりの数の患者が神経症状にも苦しみ、これには、断続性眼球運動と注視の異常、発作、認知障害、発達遅延、およびパーキンソン病を含む運動障害が含まれる。
【0003】
末梢疾患および造血骨髄と内臓の主な臨床症状に対処するいくつかの治療法が存在し、これには、以下に記載の酵素補充療法、欠陥Gcaseに結合して安定性を改善するシャペロン様小分子薬、およびゴーシェ病において蓄積して症状や所見をもたらす基質の生成をブロックする基質抑制療法などが含まれる。しかし、ゴーシェ病の他の側面(特に、骨格および脳に影響を与えるもの)は、処置に不応性のようである。
【発明の概要】
【0004】
概要
ゴーシェ病患者(GBA1遺伝子の両方の染色体アレルに変異がある患者)に加えて、GBA1の一方のアレルのみに変異がある患者は、パーキンソン病(PD)のリスクが非常に高くなる。PD症状-歩行困難、安静時の振戦、硬直、および多くの場合うつ病、睡眠困難、認知機能低下など-の重症度は、酵素活性の低下の程度と相関する。したがって、ゴーシェ病患者は最も重篤な経過をたどり、一方GBA1に単一の軽度の変異を有する患者は、典型的にはより良性の経過をたどる。突然変異保有者は他のPD関連疾患のリスクも高く、これには、実行機能障害、精神病、およびPD様の運動障害を特徴とするレビー小体型認知症、および特徴的な運動および認知障害を伴う多系統萎縮症が含まれる。これらの疾患の容赦のない経過を変える治療法は存在しない。
【0005】
Gcase(例えば、GBA1遺伝子の遺伝子産物)などの酵素、およびリソソーム機能またはリソソームへの高分子の輸送に関連する多くの遺伝子の一般的なバリアント(例:リソソーム膜タンパク質1(LIMP)、これはSCARB2とも呼ばれる)の欠損は、PDリスクの増加と関連付けられている。本開示は部分的に、1つ以上のPD関連遺伝子、例えば、Gcase、GBA2、プロサポシン、プログラニュリン、LIMP2、GALC、CTSB、SMPD1、GCH1、RAB7、VPS35、IL-34、TREM2、TMEM106B、または前述のいずれかの組み合わせ(またはその一部)をコードする発現構築物(例えば、ベクター)に基づく。いくつかの態様において、本明細書に記載の遺伝子産物の組み合わせは、対象において発現された場合に、一緒に(例えば相乗的に)作用してPDの1つ以上の兆候および症状を軽減する。
【0006】
したがって、いくつかの側面において、本開示は、Gcase(例えば、GBA1遺伝子の遺伝子産物)をコードする発現構築物を含む、単離された核酸を提供する。いくつかの態様において、単離された核酸は、コドン最適化された(例えば、ヒト細胞などの哺乳動物細胞における発現のためにコドン最適化された)Gcaseコード配列を含む。いくつかの態様において、Gcaseをコードする核酸配列は、配列番号14に示されるようなアミノ酸配列(例えば、NCBI参照配列NP_0014148.2に示されるもの)を含むタンパク質をコードする。いくつかの態様において、単離された核酸は、配列番号15に示される配列を含む。いくつかの態様において、発現構築物は、アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)、例えば、Gcaseタンパク質をコードする核酸配列に隣接するAAV ITRを含む。
【0007】
いくつかの側面において、本開示は、プロサポシン(例えば、PSAP遺伝子の遺伝子産物)をコードする発現構築物を含む、単離された核酸を提供する。いくつかの態様において、単離発された核酸は、コドン最適化された(例えば、ヒト細胞などの哺乳動物細胞における発現のためにコドン最適化された)プロサポシンコード配列を含む。いくつかの態様において、プロサポシンをコードする核酸配列は、配列番号16に示されるようなアミノ酸配列(例えば、NCBI参照配列NP_002769.1に示されるもの)を含むタンパク質をコードする。いくつかの態様において、単離された核酸は、配列番号17に示される配列を含む。いくつかの態様において、発現構築物は、アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)、例えば、プロサポシンタンパク質をコードする核酸配列に隣接するAAV ITRを含む。
【0008】
いくつかの側面において、本開示は、LIMP2/SCARB2(例えば、SCARB2遺伝子の遺伝子産物)をコードする発現構築物を含む、単離された核酸を提供する。いくつかの態様において、単離された核酸は、コドン最適化された(例えば、ヒト細胞などの哺乳動物細胞における発現のためにコドン最適化された)SCARB2コード配列を含む。いくつかの態様において、LIMP2/SCARB2をコードする核酸配列は、配列番号18に示されるようなアミノ酸配列(例えば、NCBI参照配列NP_005497.1に示されるもの)を含むタンパク質をコードする。いくつかの態様において、単離された核酸は、配列番号29に示される配列を含む。いくつかの態様において、発現構築物は、アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)、例えば、SCARB2タンパク質をコードする核酸配列に隣接するAAV ITRを含む。
【0009】
いくつかの側面において、本開示は、GBA2タンパク質(例えば、GBA2遺伝子の遺伝子産物)をコードする発現構築物を含む、単離された核酸を提供する。いくつかの態様において、単離された核酸は、コドン最適化された(例えば、ヒト細胞などの哺乳動物細胞における発現のためにコドン最適化された)GBA2コード配列を含む。いくつかの態様において、GBA2をコードする核酸配列は、配列番号30に示されるようなアミノ酸配列(例えば、NCBI参照配列NP_065995.1に示されるもの)を含むタンパク質をコードする。いくつかの態様において、単離された核酸は、配列番号31に示される配列を含む。いくつかの態様において、発現構築物は、アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)、例えば、GBA2タンパク質をコードする核酸配列に隣接するAAV ITRを含む。
【0010】
いくつかの側面において、本開示は、GALCタンパク質(例えば、GALC遺伝子の遺伝子産物)をコードする発現構築物を含む、単離された核酸を提供する。いくつかの態様において、単離された核酸は、コドン最適化された(例えば、ヒト細胞などの哺乳動物細胞における発現のためにコドン最適化された)GALCコード配列を含む。いくつかの態様において、GALCをコードする核酸配列は、配列番号33に示されるようなアミノ酸配列(例えば、NCBI参照配列NP_0014144.2に示されるもの)を含むタンパク質をコードする。いくつかの態様において、単離された核酸は、配列番号34に示される配列を含む。いくつかの態様において、発現構築物は、アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)、例えば、GALCタンパク質をコードする核酸配列に隣接するAAV ITRを含む。
【0011】
いくつかの側面において、本開示は、CTSBタンパク質(例えば、CTSB遺伝子の遺伝子産物)をコードする発現構築物を含む、単離された核酸を提供する。いくつかの態様において、単離された核酸は、コドン最適化された(例えば、ヒト細胞などの哺乳動物細胞における発現のためにコドン最適化された)CTSBコード配列を含む。いくつかの態様において、CTSBをコードする核酸配列は、配列番号35に示されるようなアミノ酸配列(例えば、NCBI参照配列NP_001899.1に示されるもの)を含むタンパク質をコードする。いくつかの態様において、単離された核酸は、配列番号36に示される配列を含む。いくつかの態様において、発現構築物は、アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)、例えば、CTSBタンパク質をコードする核酸配列に隣接するAAV ITRを含む。
【0012】
いくつかの側面において、本開示は、SMPD1タンパク質(例えば、SMPD1遺伝子の遺伝子産物)をコードする発現構築物を含む、単離された核酸を提供する。いくつかの態様において、単離された核酸は、コドン最適化された(例えば、ヒト細胞などの哺乳動物細胞における発現のためにコドン最適化された)SMPD1コード配列を含む。いくつかの態様において、SMPD1をコードする核酸配列は、配列番号37に示されるようなアミノ酸配列(例えば、NCBI参照配列NP_000534.3に示されるもの)を含むタンパク質をコードする。いくつかの態様において、単離された核酸は、配列番号38に示される配列を含む。いくつかの態様において、発現構築物は、アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)、例えば、CTSBタンパク質をコードする核酸配列に隣接するAAV ITRを含む。
【0013】
いくつかの側面において、本開示は、GCH1タンパク質(例えば、GCH1遺伝子の遺伝子産物)をコードする発現構築物を含む、単離された核酸を提供する。いくつかの態様において、単離された核酸は、コドン最適化された(例えば、ヒト細胞などの哺乳動物細胞における発現のためにコドン最適化された)GCH1コード配列を含む。いくつかの態様において、GCH1をコードする核酸配列は、配列番号45に示されるようなアミノ酸配列(例えば、NCBI参照配列NP_000534.3に示されるもの)を含むタンパク質をコードする。いくつかの態様において、単離された核酸は、配列番号46に示される配列を含む。いくつかの態様において、発現構築物は、アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)、例えば、GCH1タンパク質をコードする核酸配列に隣接するAAV ITRを含む。
【0014】
いくつかの側面において、本開示は、RAB7Lタンパク質(例えば、RAB7L遺伝子の遺伝子産物)をコードする発現構築物を含む、単離された核酸を提供する。いくつかの態様において、単離された核酸は、コドン最適化された(例えば、ヒト細胞などの哺乳動物細胞における発現のためにコドン最適化された)RAB7Lコード配列を含む。いくつかの態様において、RAB7Lをコードする核酸配列は、配列番号47に示されるようなアミノ酸配列(例えば、NCBI参照配列NP_003920.1に示されるもの)を含むタンパク質をコードする。いくつかの態様において、単離された核酸は、配列番号48に示される配列を含む。いくつかの態様において、発現構築物は、アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)、例えば、RAB7Lタンパク質をコードする核酸配列に隣接するAAV ITRを含む。
【0015】
いくつかの側面において、本開示は、VPS35タンパク質(例えば、VPS35遺伝子の遺伝子産物)をコードする発現構築物を含む、単離された核酸を提供する。いくつかの態様において、単離された核酸は、コドン最適化された(例えば、ヒト細胞などの哺乳動物細胞における発現のためにコドン最適化された)VPS35コード配列を含む。いくつかの態様において、VPS35をコードする核酸配列は、配列番号49に示されるようなアミノ酸配列(例えば、NCBI参照配列NP_060676.2に示されるもの)を含むタンパク質をコードする。いくつかの態様において、単離された核酸は、配列番号50に示される配列を含む。いくつかの態様において、発現構築物は、アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)、例えば、VPS35タンパク質をコードする核酸配列に隣接するAAV ITRを含む。
【0016】
いくつかの側面において、本開示は、IL-34タンパク質(例えば、IL34遺伝子の遺伝子産物)をコードする発現構築物を含む、単離された核酸を提供する。いくつかの態様において、単離された核酸は、コドン最適化された(例えば、ヒト細胞などの哺乳動物細胞における発現のためにコドン最適化された)IL-34コード配列を含む。いくつかの態様において、IL-34をコードする核酸配列は、配列番号55に示されるようなアミノ酸配列(例えば、NCBI参照配列NP_689669.2に示されるもの)を含むタンパク質をコードする。いくつかの態様において、単離された核酸は、配列番号56に示される配列を含む。いくつかの態様において、発現構築物は、アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)、例えば、IL_34タンパク質をコードする核酸配列に隣接するAAV ITRを含む。
【0017】
いくつかの側面において、本開示は、TREM2タンパク質(例えば、TREM遺伝子の遺伝子産物)をコードする発現構築物を含む、単離された核酸を提供する。いくつかの態様において、単離された核酸は、コドン最適化された(例えば、ヒト細胞などの哺乳動物細胞における発現のためにコドン最適化された)TREM2コード配列を含む。いくつかの態様において、TREM2をコードする核酸配列は、配列番号57に示されるようなアミノ酸配列(例えば、NCBI参照配列NP_061838.1に示されるもの)を含むタンパク質をコードする。いくつかの態様において、単離された核酸は、配列番号58に示される配列を含む。いくつかの態様において、発現構築物は、アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)、例えば、TREM2タンパク質をコードする核酸配列に隣接するAAV ITRを含む。
【0018】
いくつかの側面において、本開示は、TMEM106Bタンパク質(例えば、TMEM106B遺伝子の遺伝子産物)をコードする発現構築物を含む、単離された核酸を提供する。いくつかの態様において、単離された核酸は、コドン最適化された(例えば、ヒト細胞などの哺乳動物細胞における発現のためにコドン最適化された)TMEM106Bコード配列を含む。いくつかの態様において、TMEM106Bをコードする核酸配列は、配列番号63に示されるようなアミノ酸配列(例えば、NCBI参照配列NP_060844.2に示されるもの)を含むタンパク質をコードする。いくつかの態様において、単離された核酸は、配列番号64に示される配列を含む。いくつかの態様において、発現構築物は、アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)、例えば、TMEM106Bタンパク質をコードする核酸配列に隣接するAAV ITRを含む。
【0019】
いくつかの側面において、本開示は、プログラニュリン(例えば、PGRN遺伝子の遺伝子産物)をコードする発現構築物を含む、単離された核酸を提供する。いくつかの態様において、単離された核酸は、コドン最適化された(例えば、ヒト細胞などの哺乳動物細胞における発現のためにコドン最適化された)プロサポシンコード配列を含む。いくつかの態様において、プログラニュリン(PRGN)をコードする核酸配列は、配列番号67に示されるようなアミノ酸配列(例えば、NCBI参照配列NP_002078.1に示されるもの)を含むタンパク質をコードする。いくつかの態様において、単離された核酸は、配列番号68に示される配列を含む。いくつかの態様において、発現構築物は、アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)、例えば、プロサポシンタンパク質をコードする核酸配列に隣接するAAV ITRを含む。
【0020】
いくつかの側面において、本開示は、第1の遺伝子産物および第2の遺伝子産物をコードする発現構築物を含む、単離された核酸を提供し、ここで各遺伝子産物は独立して、表1に示される遺伝子産物またはその一部から選択される。
いくつかの態様において、第1の遺伝子産物または第2の遺伝子産物は、Gcaseタンパク質またはその一部である。いくつかの態様において、第1の遺伝子産物はGcaseタンパク質であり、第2の遺伝子産物は、GBA2、プロサポシン、プログラニュリン、LIMP2、GALC、CTSB、SMPD1、GCH1、RAB7、VPS35、IL-34、TREM2、およびTMEM106Bから選択される。
【0021】
いくつかの態様において、発現構築物はさらに、干渉核酸(例えば、shRNA、miRNA、dsRNAなど)をコードする。いくつかの態様において、干渉核酸は、α-シヌクレイン(α-シヌクレイン)の発現を阻害する。いくつかの態様において、α-シヌクレインを標的とする干渉核酸は、配列番号20~25のいずれか1つに示される配列を含む。いくつかの態様において、α-シヌクレインを標的とする干渉核酸は、配列番号20~25のいずれか1つに示される配列に結合する(例えば、ハイブリダイズする)。
いくつかの態様において、干渉核酸は、TMEM106Bの発現を阻害する。いくつかの態様において、TMEM106Bを標的とする干渉核酸は、配列番号64または65に示される配列を含む。いくつかの態様において、TMEM106Bを標的とする干渉核酸は、配列番号64または65に示される配列に結合する(例えば、ハイブリダイズする)。
【0022】
いくつかの態様において、発現構築物はさらに、1つ以上のプロモーターを含む。いくつかの態様において、プロモーターは、ニワトリベータアクチン(CBA)プロモーター、CAGプロモーター、CD68プロモーター、またはJeTプロモーターである。いくつかの態様において、プロモーターは、RNA pol IIプロモーター(例えば、またはRNA pol IIIプロモーター(例えば、U6など))である。
いくつかの態様において、発現構築物はさらに、内部リボソーム進入部位(IRES)を含む。いくつかの態様において、IRESは、第1の遺伝子産物と第2の遺伝子産物の間に位置する。
いくつかの態様において、発現構築物はさらに、自己切断型ペプチドコード配列を含む。いくつかの態様において、自己切断型ペプチドは、T2Aペプチドである。
【0023】
いくつかの態様において、発現構築物は、2つのアデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復(ITR)配列を含む。いくつかの態様において、ITR配列は、第1の遺伝子産物および第2の遺伝子産物に隣接する(例えば、5’末端から3’末端へと次のように配置される:ITR-第1遺伝子産物-第2遺伝子産物-ITR)。いくつかの態様において、単離された核酸のITR配列の1つは、機能的な末端分解部位(trs)を欠いている。例えば、いくつかの態様において、ITRの1つはΔITRである。
本開示は、いくつかの側面において、修飾された「D」領域(例えば、野生型AAV2 ITR、配列番号29と比べて修飾されたD配列)を有するITRを含むrAAVベクターに関する。いくつかの態様において、修飾D領域を有するITRは、rAAVベクターの5’ITRである。いくつかの態様において、修飾「D」領域は、例えば配列番号26に示されるような「S」配列を含む。いくつかの態様において、修飾「D」領域を有するITRは、rAAVベクターの3’ITRである。いくつかの態様において、修飾「D」領域は3’ITRを含み、ここで「D」領域は、ITRの3’末端(例えば、ベクターの導入遺伝子インサートに対してITRの外側または末端)に位置する。いくつかの態様において、修飾「D」領域は、配列番号26または27に示されるような配列を含む。
【0024】
いくつかの態様において、単離された核酸(例えば、rAAVベクター)は、TRY領域を含む。いくつかの態様において、TRY領域は、配列番号28に示される配列を含む。
いくつかの態様において、本開示に記載の単離された核酸は、配列番号1~78のいずれか1つに示される配列を有するペプチドを含むか、またはそれからなるか、またはそれをコードする。
いくつかの側面において、本開示は、本開示に記載の単離された核酸を含むベクターを提供する。いくつかの態様において、ベクターは、プラスミドまたはウイルスベクターである。いくつかの態様において、ウイルスベクターは、組換えAAV(rAAV)ベクターまたはバキュロウイルスベクターである。いくつかの態様において、rAAVベクターは一本鎖(例えば、一本鎖DNA)である。
【0025】
いくつかの側面において、本開示は、本開示に記載の単離された核酸または本開示に記載のベクターを含む、宿主細胞を提供する。
いくつかの側面において、本開示は、カプシドタンパク質および本開示に記載の単離された核酸またはベクターを含む、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を提供する。
いくつかの態様において、カプシドタンパク質は血液脳関門を通過することができ、例えば、AAV9カプシドタンパク質またはAAVrh.10カプシドタンパク質である。いくつかの態様において、rAAVは、中枢神経系(CNS)の神経細胞および非神経細胞を形質導入する。
【0026】
いくつかの側面において、本開示は、パーキンソン病を有するかまたは有すると疑われる対象を処置する方法を提供し、該方法は、対象に、本開示に記載の組成物(例えば、単離された核酸またはベクターまたはrAAVを含む組成物)を投与することを含む。
いくつかの態様において、投与は、対象のCNSへの直接注射を含む。いくつかの態様において、直接注射は、脳内注射、実質内注射、髄腔内注射、大槽内注射、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの態様において、対象のCNSへの直接注射は、対流強化送達(CED)を含む。
いくつかの態様において、投与は末梢注射を含む。いくつかの態様において、末梢注射は静脈内注射である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、Gcase(例えば、GBA1またはその一部)をコードする発現構築物を含むベクターの、一態様を示す概略図である。
図2図2は、Gcase(例えば、GBA1またはその一部)およびLIMP2(SCARB2)またはその一部をコードする発現構築物を含むベクターの、一態様を示す概略図である。GcaseおよびLIMP2のコード配列は、内部リボソーム進入部位(IRES)によって分離されている。
図3図3は、Gcase(例えば、GBA1またはその一部)およびLIMP2(SCARB2)またはその一部をコードする発現構築物を含むベクターの、一態様を示す概略図である。GcaseおよびLIMP2のコード配列の発現は、それぞれ別のプロモーターによって駆動される。
【0028】
図4図4は、Gcase(例えば、GBA1またはその一部)、LIMP2(SCARB2)またはその一部、およびα-Synの干渉RNAをコードする発現構築物を含むベクターの、一態様を示す概略図である。
図5図5は、Gcase(例えば、GBA1またはその一部)、プロサポシン(例えば、PSAPまたはその一部)、およびα-Synの干渉RNAをコードする発現構築物を含むベクターの、一態様を示す概略図である。
図6図6は、Gcase(例えば、GBA1またはその一部)およびプロサポシン(例えば、PSAPまたはその一部)をコードする発現構築物を含むベクターの、一態様を示す概略図である。Gcaseおよびプロサポシンのコード配列は、内部リボソーム進入部位(IRES)によって分離されている。
【0029】
図7図7は、Gcase(例えば、GBA1またはその一部)をコードする発現構築物を含むベクターの、一態様を示す概略図である。この態様においてベクターは、4つの部分:CMVエンハンサー(CMVe)、CBAプロモーター(CBAp)、エクソン1、およびイントロン(int)からなるCBAプロモーター要素(CBA)を含み、ヒトGBA1のコドン最適化コード配列を構成的に発現する。3’領域には、WPRE調節要素とそれに続くbGHポリAテールも含まれている。プロモーター領域の5’末端には、TATA、RBS、YY1の3つの転写調節活性化部位が含まれている。隣接するITRは、介在する配列の正しいパッケージングを可能にする。5’ITR配列の2つのバリアント(挿入ボックス)を評価した;これらは、野生型AAV2 ITRの20ヌクレオチドの「D」領域内にいくつかのヌクレオチドの違いを有する。いくつかの態様において、rAAVベクターは、最上行に示される「D」ドメインヌクレオチド配列を含む。いくつかの態様において、rAAVベクターは、変異体「D」ドメイン(例えば、「S」ドメインであり、ヌクレオチドの変化が最下行に示されている)を含む。
【0030】
図8図8は、図6に記載されたベクターの一態様を示す概略図である。
図9-1】図9は、パーキンソン病のCBEマウスモデルにおける、Gcase(例えばGBA1またはその一部)をコードする導入遺伝子を含むrAAVの送達に関する、代表的なデータを示す。PBSビヒクル、25mg/kgのCBE、37.5mg/kgのCBE、または50mg/kgのCBE(左から右)の毎日のIP送達は、P8で開始した。生存率(左上)は1日2回チェックし、体重(右上)を毎日チェックした。すべての群はn=8で開始した。行動は、オープンフィールド(左下)を移動した総距離をP23で、ロータロッド(中央下)での落下までの時間をP24で評価した。GCase基質のレベルを、PBSおよび25mg/kgのCBE処置群において、CBE中止あり(3日目)となし(1日目)の両方のマウスの皮質で分析した。総GluSph&GalSphレベル(右下)は、組織の湿重量1mgあたりのpmolとして表示する。平均値を提示する。エラーバーはSEMである。p<0.05;**p<0.01;***p<0.001、線形回帰による処置群の公称p値。
図9-2】図9は、パーキンソン病のCBEマウスモデルにおける、Gcase(例えばGBA1またはその一部)をコードする導入遺伝子を含むrAAVの送達に関する、代表的なデータを示す。PBSビヒクル、25mg/kgのCBE、37.5mg/kgのCBE、または50mg/kgのCBE(左から右)の毎日のIP送達は、P8で開始した。生存率(左上)は1日2回チェックし、体重(右上)を毎日チェックした。すべての群はn=8で開始した。行動は、オープンフィールド(左下)を移動した総距離をP23で、ロータロッド(中央下)での落下までの時間をP24で評価した。GCase基質のレベルを、PBSおよび25mg/kgのCBE処置群において、CBE中止あり(3日目)となし(1日目)の両方のマウスの皮質で分析した。総GluSph&GalSphレベル(右下)は、組織の湿重量1mgあたりのpmolとして表示する。平均値を提示する。エラーバーはSEMである。p<0.05;**p<0.01;***p<0.001、線形回帰による処置群の公称p値。
【0031】
図10図10は、CBEマウスモデルにおける、最大rAAV用量のための研究デザインの一態様を示す概略図である。簡潔に述べると、rAAVはICV注射によりP3で送達し、毎日のCBE処置はP8で開始した。行動はオープンフィールドおよびロータロッドアッセイによりP24~25で評価し、基質レベルはP36およびP38で測定した。
図11-1】図11は、CBEマウスモデルにおける、最大rAAV用量の生存評価のための代表的なデータを示す。P3において、マウスを、賦形剤または8.8e9vgのrAAV-GBA1のいずれかで、ICV送達を介して処置した。PBSまたは25mg/kgのCBEの毎日のIP送達を、P8で開始した。研究の最後に、マウスの半分を最後のCBE投与の1日後にP36(1日目)で犠牲にし、一方残りの半分は、P38(3日目)で犠牲にする前に、3日間のCBEの中止を経た。すべての処置群(賦形剤+PBS:n=8、rAAV-GBA1+PBS:n=7、賦形剤+CBE:n=8、およびバリアント+CBE:n=9)を、毎日計量し(左上)、P36での体重を分析した(右上)。行動は、オープンフィールドを移動した総距離をP23で(左下)、ロータロッドでの落下までの時間をP24で(右下)評価し、各動物について3回の試験の中央値として評価した。致死性のため、行動アッセイの賦形剤+CBE群においてn=7であり、その他すべての群においてn=8である。動物にわたる平均値を表示する。エラーバーはSEMである。p<0.05;***p<0.001、CBE処置動物での線形回帰による処置群の公称p値。
図11-2】図11は、CBEマウスモデルにおける、最大rAAV用量の生存評価のための代表的なデータを示す。P3において、マウスを、賦形剤または8.8e9vgのrAAV-GBA1のいずれかで、ICV送達を介して処置した。PBSまたは25mg/kgのCBEの毎日のIP送達を、P8で開始した。研究の最後に、マウスの半分を最後のCBE投与の1日後にP36(1日目)で犠牲にし、一方残りの半分は、P38(3日目)で犠牲にする前に、3日間のCBEの中止を経た。すべての処置群(賦形剤+PBS:n=8、rAAV-GBA1+PBS:n=7、賦形剤+CBE:n=8、およびバリアント+CBE:n=9)を、毎日計量し(左上)、P36での体重を分析した(右上)。行動は、オープンフィールドを移動した総距離をP23で(左下)、ロータロッドでの落下までの時間をP24で(右下)評価し、各動物について3回の試験の中央値として評価した。致死性のため、行動アッセイの賦形剤+CBE群においてn=7であり、その他すべての群においてn=8である。動物にわたる平均値を表示する。エラーバーはSEMである。p<0.05;***p<0.001、CBE処置動物での線形回帰による処置群の公称p値。
図11-3】図11は、CBEマウスモデルにおける、最大rAAV用量の生存評価のための代表的なデータを示す。P3において、マウスを、賦形剤または8.8e9vgのrAAV-GBA1のいずれかで、ICV送達を介して処置した。PBSまたは25mg/kgのCBEの毎日のIP送達を、P8で開始した。研究の最後に、マウスの半分を最後のCBE投与の1日後にP36(1日目)で犠牲にし、一方残りの半分は、P38(3日目)で犠牲にする前に、3日間のCBEの中止を経た。すべての処置群(賦形剤+PBS:n=8、rAAV-GBA1+PBS:n=7、賦形剤+CBE:n=8、およびバリアント+CBE:n=9)を、毎日計量し(左上)、P36での体重を分析した(右上)。行動は、オープンフィールドを移動した総距離をP23で(左下)、ロータロッドでの落下までの時間をP24で(右下)評価し、各動物について3回の試験の中央値として評価した。致死性のため、行動アッセイの賦形剤+CBE群においてn=7であり、その他すべての群においてn=8である。動物にわたる平均値を表示する。エラーバーはSEMである。p<0.05;***p<0.001、CBE処置動物での線形回帰による処置群の公称p値。
【0032】
図12-1】図12は、CBEマウスモデルにおける、最大rAAV用量の生化学的評価のための代表的なデータを示す。すべての処置群(賦形剤+PBS:n=8、バリアント+PBS:n=7、賦形剤+CBE:n=7、バリアント+CBE:n=9)の皮質を使用して、CBE中止の前(1日目)または後(3日目)の群における、GCase活性(左上)、GluSphレベル(右上)、GluCerレベル(左下)、およびベクターゲノム(右下)を測定した。生体内分布は、ゲノムDNA1μgあたりのベクターゲノムとして表示する。平均値を表示する。エラーバーはSEMである。()p<0.1;**p<0.01;***p<0.001、CBE処置動物での線形回帰による処置群の公称p値、収集日と性差を共変量とした補正あり。
図12-2】図12は、CBEマウスモデルにおける、最大rAAV用量の生化学的評価のための代表的なデータを示す。すべての処置群(賦形剤+PBS:n=8、バリアント+PBS:n=7、賦形剤+CBE:n=7、バリアント+CBE:n=9)の皮質を使用して、CBE中止の前(1日目)または後(3日目)の群における、GCase活性(左上)、GluSphレベル(右上)、GluCerレベル(左下)、およびベクターゲノム(右下)を測定した。生体内分布は、ゲノムDNA1μgあたりのベクターゲノムとして表示する。平均値を表示する。エラーバーはSEMである。()p<0.1;**p<0.01;***p<0.001、CBE処置動物での線形回帰による処置群の公称p値、収集日と性差を共変量とした補正あり。
図13図13は、CBEマウスモデルにおける行動的および生化学的相関の、賦形剤+PBS、賦形剤+CBE、およびバリアント+CBE処置群の投与後の代表的なデータを示す。処置群全体で、ロータロッドのパフォーマンスはGluCerの蓄積と負の相関があり(A、線形回帰によるp=0.0012)、GluSphの蓄積はGCase活性の増加と負の相関があった(B、線形回帰によるp=0.0086)。
【0033】
図14-1】図14は、CBEマウスモデルにおけるバリアントの生体内分布の代表的なデータを示す。ベクターゲノムの存在を、すべての処置群(賦形剤+PBS:n=8、バリアント+PBS:n=7、賦形剤+CBE:n=7、およびバリアント+CBE:n=9)の肝臓、脾臓、腎臓、および生殖腺で評価した。生体内分布は、ゲノムDNA1μgあたりのベクターゲノムとして表示する。ベクターゲノムの存在は、定量PCRによりベクター参照標準曲線を使用して定量化した;ゲノムDNA濃度は、A260光学密度測定によって評価した。平均値を表示する。エラーバーはSEMである。p<0.05;**p<0.01;***p<0.001、CBE処置動物での線形回帰による処置群の公称p値、収集日と性差を共変量とした補正あり。
図14-2】図14は、CBEマウスモデルにおけるバリアントの生体内分布の代表的なデータを示す。ベクターゲノムの存在を、すべての処置群(賦形剤+PBS:n=8、バリアント+PBS:n=7、賦形剤+CBE:n=7、およびバリアント+CBE:n=9)の肝臓、脾臓、腎臓、および生殖腺で評価した。生体内分布は、ゲノムDNA1μgあたりのベクターゲノムとして表示する。ベクターゲノムの存在は、定量PCRによりベクター参照標準曲線を使用して定量化した;ゲノムDNA濃度は、A260光学密度測定によって評価した。平均値を表示する。エラーバーはSEMである。p<0.05;**p<0.01;***p<0.001、CBE処置動物での線形回帰による処置群の公称p値、収集日と性差を共変量とした補正あり。
【0034】
図15-1】図15は、CBEマウスモデルにおける、rAAV用量範囲の生存評価のための代表的なデータを示す。マウスに、賦形剤またはrAAV-GBA1の3つの異なる用量:3.2e9vg、1.0e10vg、または3.2e10vgの1つを、ICV送達によりP3で投与した。P8で、25mg/kgのCBEの毎日のIP処置を開始した。賦形剤とCBEまたは賦形剤とPBSを投与したマウスを対照とした。すべての処置群は、群あたりn=10(5M/5F)で開始した。すべてのマウスを、CBEの最終投与(P38~P40)の1日後に犠牲にした。すべての処置群の体重を毎日測定し、その体重をP36で分析した。運動パフォーマンスは、P24でのロータロッドで落下するまでの時間、およびP30でのテーパ梁の横断時間により、評価した。初期の致死性のため、行動アッセイに参加したマウスの数は以下である:賦形剤+PBS:n=10、賦形剤+CBE:n=9、および3.2e9vgのrAAV-GBA1+CBE:n=6、1.0e10vgのrAAV-GBA1+CBE:n=10、3.2e10vgのrAAV-GBA1+CBE:n=7。平均値を表示する。エラーバーはSEMである;p<0.05;**p<0.01、CBE処置動物での線形回帰による公称p値、性差を共変量とした補正あり。
図15-2】図15は、CBEマウスモデルにおける、rAAV用量範囲の生存評価のための代表的なデータを示す。マウスに、賦形剤またはrAAV-GBA1の3つの異なる用量:3.2e9vg、1.0e10vg、または3.2e10vgの1つを、ICV送達によりP3で投与した。P8で、25mg/kgのCBEの毎日のIP処置を開始した。賦形剤とCBEまたは賦形剤とPBSを投与したマウスを対照とした。すべての処置群は、群あたりn=10(5M/5F)で開始した。すべてのマウスを、CBEの最終投与(P38~P40)の1日後に犠牲にした。すべての処置群の体重を毎日測定し、その体重をP36で分析した。運動パフォーマンスは、P24でのロータロッドで落下するまでの時間、およびP30でのテーパ梁の横断時間により、評価した。初期の致死性のため、行動アッセイに参加したマウスの数は以下である:賦形剤+PBS:n=10、賦形剤+CBE:n=9、および3.2e9vgのrAAV-GBA1+CBE:n=6、1.0e10vgのrAAV-GBA1+CBE:n=10、3.2e10vgのrAAV-GBA1+CBE:n=7。平均値を表示する。エラーバーはSEMである;p<0.05;**p<0.01、CBE処置動物での線形回帰による公称p値、性差を共変量とした補正あり。
【0035】
図16-1】図16は、CBEマウスモデルにおける、rAAV用量範囲の生化学的評価のための代表的なデータを示す。すべての処置群(賦形剤+PBS:n=10、賦形剤+CBE:n=9、および3.2e9vgのrAAV-GBA1+CBE:n=6、1.0e10vgのrAAV-GBA1+CBE:n=10、3.2e10vgのrAAV-GBA1+CBE:n=7)の皮質を使用して、GCase活性、GluSphレベル、GluCerレベル、およびベクターゲノムを測定した。GCase活性は、総タンパク質1mgあたりのGCaseのngとして示す。GluSphおよびGluCerレベルは、組織の湿重量1mgあたりのpmolとして示す。生体内分布は、ゲノムDNA1μgあたりのベクターゲノムとして示す。ベクターゲノムの存在は、定量PCRによりベクター参照標準曲線を使用して定量化した;ゲノムDNA濃度は、A260光学密度測定によって評価した。ベクターゲノムの存在は肝臓でも測定した(E)。平均値を表示する。エラーバーはSEMである。**p<0.01;***p<0.001、CBE処置動物での線形回帰による公称p値、性差を共変量とした補正あり。
図16-2】図16は、CBEマウスモデルにおける、rAAV用量範囲の生化学的評価のための代表的なデータを示す。すべての処置群(賦形剤+PBS:n=10、賦形剤+CBE:n=9、および3.2e9vgのrAAV-GBA1+CBE:n=6、1.0e10vgのrAAV-GBA1+CBE:n=10、3.2e10vgのrAAV-GBA1+CBE:n=7)の皮質を使用して、GCase活性、GluSphレベル、GluCerレベル、およびベクターゲノムを測定した。GCase活性は、総タンパク質1mgあたりのGCaseのngとして示す。GluSphおよびGluCerレベルは、組織の湿重量1mgあたりのpmolとして示す。生体内分布は、ゲノムDNA1μgあたりのベクターゲノムとして示す。ベクターゲノムの存在は、定量PCRによりベクター参照標準曲線を使用して定量化した;ゲノムDNA濃度は、A260光学密度測定によって評価した。ベクターゲノムの存在は肝臓でも測定した(E)。平均値を表示する。エラーバーはSEMである。**p<0.01;***p<0.001、CBE処置動物での線形回帰による公称p値、性差を共変量とした補正あり。
【0036】
図17-1】図17は、遺伝子マウスモデルにおける、最大用量rAAV-GBA1でのテーパ梁分析の代表的なデータを示す。処置群(WT+賦形剤、(n=5)、4L/PS-NA+賦形剤(n=6)、および4L/PS-NA+rAAV-GBA1(n=5))の運動パフォーマンスを、rAAV-GBA1投与後4週間での梁歩行によって分析した。合計スリップおよび活性時間は、異なる梁での5回の試行の平均として示す。速度および速度当たりのスリップは、異なる梁での5回の試行の平均として示す。平均値を表示する。エラーバーはSEMである。
図17-2】図17は、遺伝子マウスモデルにおける、最大用量rAAV-GBA1でのテーパ梁分析の代表的なデータを示す。処置群(WT+賦形剤、(n=5)、4L/PS-NA+賦形剤(n=6)、および4L/PS-NA+rAAV-GBA1(n=5))の運動パフォーマンスを、rAAV-GBA1投与後4週間での梁歩行によって分析した。合計スリップおよび活性時間は、異なる梁での5回の試行の平均として示す。速度および速度当たりのスリップは、異なる梁での5回の試行の平均として示す。平均値を表示する。エラーバーはSEMである。
図18図18は、プログラニュリン(PGRN)タンパク質をコードするrAAV構築物のin vitro発現についての代表的なデータを示す。左のパネルは、プログラニュリン(PGRN)ELISAアッセイの標準曲線を示す。下のパネルは、rAAVで形質導入されたHEK293T細胞の細胞溶解物においてELISAアッセイにより測定された、PGRN発現の用量反応を示す。MOI=感染の多重度(細胞あたりのベクターゲノム)。
【0037】
図19-1】図19は、プロサポシン(PSAP)、SCARB2、および/または1つ以上の阻害性核酸と組み合わせてGBA1をコードするrAAV構築物のin vitro発現についての、代表的なデータを示す。データは、各構築物によるHEK293細胞のトランスフェクションが、モックトランスフェクトされた細胞と比べて、目的の導入遺伝子の過剰発現をもたらしたことを示す。
図19-2】図19は、プロサポシン(PSAP)、SCARB2、および/または1つ以上の阻害性核酸と組み合わせてGBA1をコードするrAAV構築物のin vitro発現についての、代表的なデータを示す。データは、各構築物によるHEK293細胞のトランスフェクションが、モックトランスフェクトされた細胞と比べて、目的の導入遺伝子の過剰発現をもたらしたことを示す。
図19-3】図19は、プロサポシン(PSAP)、SCARB2、および/または1つ以上の阻害性核酸と組み合わせてGBA1をコードするrAAV構築物のin vitro発現についての、代表的なデータを示す。データは、各構築物によるHEK293細胞のトランスフェクションが、モックトランスフェクトされた細胞と比べて、目的の導入遺伝子の過剰発現をもたらしたことを示す。
図20図20は、ITRの「外側」(例えば、導入遺伝子インサートまたは発現構築物と比べてITRの末端の近位)に位置する「D」領域を含むrAAVベクター(上)、およびITRをベクターの「内側」(例えば、ベクターの導入遺伝子インサートの近位)に有する野生型rAAVベクターを示す概略図である。
【0038】
図21図21は、GBA2またはその一部、およびα-Synの干渉RNAをコードする発現構築物を含むベクターの、一態様を示す概略図である。
図22図22は、Gcase(例えば、GBA1またはその一部)およびガラクトシルセラミダーゼ(例えば、GALCまたはその一部)をコードする発現構築物を含むベクターの、一態様を示す概略図である。Gcaseおよびガラクトシルセラミダーゼのコード配列の発現は、T2A自己切断型ペプチド配列によって分離されている。
図23図23は、Gcase(例えば、GBA1またはその一部)およびガラクトシルセラミダーゼ(例えば、GALCまたはその一部)をコードする発現構築物を含むベクターの、一態様を示す概略図である。Gcaseおよびガラクトシルセラミダーゼのコード配列の発現は、T2A自己切断型ペプチド配列によって分離されている。
【0039】
図24図24は、Gcase(例えば、GBA1またはその一部)、カテプシンB(例えば、CTSBまたはその一部)、およびα-Synの干渉RNAをコードする発現構築物を含むベクターの、一態様を示す概略図である。GcaseおよびカテプシンBのコード配列の発現は、T2A自己切断型ペプチド配列によって分離されている。
図25図25は、Gcase(例えば、GBA1またはその一部)、スフィンゴミエリンホスホジエステラーゼ1(例えば、SMPD1、その一部)、およびα-Synの干渉RNAをコードする発現構築物を含むベクターの、一態様を示す概略図である。
図26図26は、Gcase(例えば、GBA1またはその一部)およびガラクトシルセラミダーゼ(例えば、GALCまたはその一部)をコードする発現構築物を含むベクターの、一態様を示す概略図である。Gcaseおよびガラクトシルセラミダーゼのコード配列は、内部リボソーム進入部位(IRES)によって分離されている。
【0040】
図27図27は、Gcase(例えば、GBA1またはその一部)およびカテプシンB(例えば、CTSBまたはその一部)をコードする発現構築物を含むベクターの、一態様を示す概略図である。GcaseおよびカテプシンBのコード配列の発現は、それぞれ別のプロモーターによって駆動される。
図28図28は、Gcase(例えば、GBA1またはその一部)、GCH1(例えば、GCH1またはその一部)、およびα-Synの干渉RNAをコードする発現構築物を含むベクターの、一態様を示す概略図である。GcaseおよびGCH1のコード配列は、T2A自己切断型ペプチド配列によって分離されている。
図29図29は、Gcase(例えば、GBA1またはその一部)、RAB7L1(例えば、RAB7L1またはその一部)、およびα-Synの干渉RNAをコードする発現構築物を含むベクターの、一態様を示す概略図である。GcaseおよびRAB7L1のコード配列は、T2A自己切断型ペプチド配列によって分離されている。
【0041】
図30図30は、Gcase(例えば、GBA1またはその一部)、GCH1(例えば、GCH1またはその一部)、およびα-Synの干渉RNAをコードする発現構築物を含むベクターの、一態様を示す概略図である。GcaseおよびGCH1のコード配列の発現は、内部リボソーム進入部位(IRES)である。
図31図31は、VPS35(例えば、VPS35またはその一部)およびα-SynとTMEM106Bの干渉RNAをコードする発現構築物を含むベクターの、一態様を示す概略図である。
図32図32は、Gcase(例えば、GBA1またはその一部)、IL-34(例えば、IL34またはその一部)、およびα-Synの干渉RNAをコードする発現構築物を含むベクターの、一態様を示す概略図である。GcaseおよびIL-34のコード配列は、T2A自己切断型ペプチド配列によって分離されている。
【0042】
図33図33は、Gcase(例えば、GBA1またはその一部)およびIL-34(例えば、IL34またはその一部)をコードする発現構築物を含むベクターの、一態様を示す概略図である。GcaseおよびIL-34のコード配列は、内部リボソーム進入部位(IRES)によって分離されている。
図34図34は、Gcase(例えば、GBA1またはその一部)およびTREM2(例えば、TREM2またはその一部)をコードする発現構築物を含むベクターの、一態様を示す概略図である。GcaseおよびTREM2のコード配列の発現は、それぞれ別のプロモーターによって駆動される。
【0043】
図35図35は、Gcase(例えば、GBA1またはその一部)およびIL-34(例えば、IL34またはその一部)をコードする発現構築物を含むベクターの、一態様を示す概略図である。GcaseおよびIL-34のコード配列の発現は、それぞれ別のプロモーターによって駆動される。
図36図36A~36Bは、qPCRおよびELISAで測定され、対照の形質導入細胞と比較した、HEK293細胞におけるTREM2およびGBA1の過剰発現についての代表的なデータを示す。図36Aは、TREM2の過剰発現についてのデータを示す。図36Bは、同じ構築物からのGBA1の過剰発現についてのデータを示す。
【0044】
図37図37は、GFPレポーターアッセイ(上)およびα-Synアッセイ(下)による、in vitroでのSCNAの成功したサイレンシングを示す代表的なデータを示す。
図38図38は、GFPレポーターアッセイ(上)およびα-Synアッセイ(下)による、in vitroでのTMEM106Bの成功したサイレンシングを示す代表的なデータを示す。
図39図39は、PGRNをコードする発現構築物を含むベクターの、一態様を示す概略図である。
図40図40は、野生型(丸)のITR、または「D」配列の代替(例えば、「外側」;四角)配置のITRを有するrAAVを使用した、HEK293細胞の形質導入のデータを示す。「外側」に配置されたITRを有するrAAVは、野生型ITRを有するrAAVと同程度に効率的に、細胞を形質導入することができた。
【0045】
詳細な説明
本開示は部分的に、対象におけるPD関連遺伝子産物の組み合わせの発現のための、組成物および方法に基づく。遺伝子産物は、タンパク質、タンパク質の断片(例えば、一部)、PD関連遺伝子を阻害する干渉核酸などであり得る。いくつかの態様において、遺伝子産物は、PD関連遺伝子によってコードされるタンパク質またはタンパク質断片である。いくつかの態様において、遺伝子産物は、PD関連遺伝子を阻害する干渉核酸(例えば、shRNA、siRNA、miRNA、amiRNAなど)である。
【0046】
PD関連遺伝子とは、遺伝的、生化学的または機能的にPDに関連する遺伝子産物をコードする遺伝子を指す。例えば、GBA1遺伝子(これはタンパク質Gcaseをコードする)に変異のある個体は、GBA1に変異がない個体と比べて、PD発症のリスクが高いことが観察されている。別の例において、PDは、α-シヌクレイン(α-Syn)タンパク質を含むタンパク質凝集体の蓄積に関連する;したがって、SCNA(これはα-Synをコードする)は、PD関連遺伝子である。いくつかの態様において、本明細書に記載の発現カセットは、PD関連遺伝子(またはそのコード配列)の野生型または非変異型形態をコードする。PD関連遺伝子の例を、表1に列挙する。
【0047】
【表1-1】
【表1-2】
【0048】
単離された核酸およびベクター
単離された核酸は、DNAまたはRNAであってよい。本開示は、いくつかの側面において、1つ以上のPD関連遺伝子、例えばGcase(例えば、GBA1遺伝子の遺伝子産物)またはその一部をコードする発現構築物を含む、単離された核酸(例えば、rAAVベクター)を提供する。β-グルコセレブロシダーゼまたはGBAとも呼ばれるGcaseは、糖脂質代謝の中間体である化学物質グルコセレブロシドのβ-グルコシド結合を切断する、リソソームタンパク質を指す。ヒトにおいて、Gcaseは、1番染色体にあるGBA1遺伝子によってコードされる。いくつかの態様において、GBA1は、NCBI参照配列NP_000148.2(配列番号14)によって表されるペプチドをコードする。いくつかの態様において、単離された核酸は、配列番号15に示される配列などの、コドン最適化された(例えば、ヒト細胞などの哺乳動物細胞における発現のためにコドン最適化された)Gcaseコード配列を含む。
【0049】
いくつかの側面において、本開示は、プロサポシン(例えば、PSAP遺伝子の遺伝子産物)をコードする発現構築物を含む、単離された核酸を提供する。プロサポシンは、スフィンゴ脂質活性化タンパク質(サポシン)A、B、C、およびDの前駆体糖タンパク質であり、短いオリゴ糖グループを持つスフィンゴ糖脂質の異化を促進する。ヒトにおいて、PSAP遺伝子は10番染色体上に位置する。いくつかの態様において、PSAPは、NCBI参照配列NP_002769.1(例えば、配列番号16)によって表されるペプチドをコードする。いくつかの態様において、単離された核酸は、配列番号17に示される配列などの、コドン最適化された(例えば、ヒト細胞などの哺乳動物細胞における発現のためにコドン最適化された)プロサポシンコード配列を含む。
【0050】
本開示の側面は、LIMP2/SCARB2(例えば、SCARB2遺伝子の遺伝子産物)をコードする発現構築物を含む、単離された核酸に関する。SCARB2は、細胞内のリソソームおよびエンドソーム輸送を調節する膜タンパク質を指す。ヒトにおいて、SCARB2遺伝子は4番染色体上に位置する。いくつかの態様において、SCARB2遺伝子は、NCBI参照配列NP_005497.1(配列番号18)で表されるペプチドをコードする。いくつかの態様において、単離された核酸は、配列番号19に示される配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸は、コドン最適化されたSCARB2コード配列を含む。
【0051】
本開示の側面は、GBA2タンパク質(例えば、GBA2遺伝子の遺伝子産物)をコードする発現構築物を含む、単離された核酸に関する。GBA2タンパク質は、非リソソームグルコシルセラミダーゼを指す。ヒトにおいて、GBA2遺伝子は9番染色体上に位置する。いくつかの態様において、GBA2遺伝子は、NCBI参照配列NP_065995.1(配列番号30)によって表されるペプチドをコードする。いくつかの態様において、単離された核酸は、配列番号31に示される配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸は、コドン最適化されたGBA2コード配列を含む。
【0052】
本開示の側面は、GALCタンパク質(例えば、GALC遺伝子の遺伝子産物)をコードする発現構築物を含む、単離された核酸に関する。GALCタンパク質は、ガラクトセレブロシド、ガラクトシルスフィンゴシン、ラクトシルセラミド、およびモノガラクトシルジグリセリドのガラクトースエステル結合を加水分解する酵素である、ガラクトシルセラミダーゼ(またはガラクトセレブロシダーゼ)を指す。ヒトにおいて、GALC遺伝子は14番染色体上に位置する。いくつかの態様において、GALC遺伝子は、NCBI参照配列NP_000144.2(配列番号33)で表されるペプチドをコードする。いくつかの態様において、単離された核酸は、配列番号34に示される配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸は、コドン最適化されたGALCコード配列を含む。
【0053】
本開示の側面は、CTSBタンパク質(例えば、CTSB遺伝子の遺伝子産物)をコードする発現構築物を含む、単離された核酸に関する。CTSBタンパク質は、細胞内タンパク質分解に重要な役割を果たす、リソソームのシステインプロテアーゼであるカテプシンBを指す。ヒトにおいて、CTSB遺伝子は8番染色体上に位置する。いくつかの態様において、CTSB遺伝子は、NCBI参照配列NP_001899.1(配列番号35)で表されるペプチドをコードする。いくつかの態様において、単離された核酸は、配列番号36に示される配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸は、コドン最適化されたCTSBコード配列を含む。
【0054】
本開示の側面は、SMPD1タンパク質(例えば、SMPD1遺伝子の遺伝子産物)をコードする発現構築物を含む、単離された核酸に関する。SMPD1タンパク質は、スフィンゴ脂質代謝に関与する加水分解酵素である、スフィンゴミエリンホスホジエステラーゼ1を指す。ヒトにおいて、SMPD1遺伝子は11番染色体上に位置する。いくつかの態様において、SMPD1遺伝子は、NCBI参照配列NP_000534.3(配列番号37)によって表されるペプチドをコードする。いくつかの態様において、単離された核酸は、配列番号38に示される配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸は、コドン最適化されたSMPD1コード配列を含む。
【0055】
本開示の側面は、GCH1タンパク質(例えば、GCH1遺伝子の遺伝子産物)をコードする発現構築物を含む、単離された核酸に関する。GCH1タンパク質は、葉酸およびビオプテリンの生合成経路の一部である加水分解酵素である、GTPシクロヒドロラーゼIを指す。ヒトにおいて、GCH1遺伝子は14番染色体上に位置する。いくつかの態様において、GCH1遺伝子は、NCBI参照配列NP_000152.1(配列番号45)によって表されるペプチドをコードする。いくつかの態様において、単離された核酸は、配列番号46に示される配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸は、コドン最適化されたGCH1コード配列を含む。
【0056】
本開示の側面は、RAB7Lタンパク質(例えば、RAB7L遺伝子の遺伝子産物)をコードする発現構築物を含む、単離された核酸に関する。RAB7Lタンパク質は、GTP結合タンパク質である、RAS発がん遺伝子ファミリー様1のメンバーであるRAB7を指す。ヒトにおいて、RAB7L遺伝子は1番染色体上に位置する。いくつかの態様において、RAB7L遺伝子は、NCBI参照配列NP_003920.1(配列番号47)で表されるペプチドをコードする。いくつかの態様において、単離された核酸は、配列番号48に示される配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸は、コドン最適化されたRAB7Lコード配列を含む。
【0057】
本開示の側面は、VPS35タンパク質(例えば、VPS35遺伝子の遺伝子産物)をコードする発現構築物を含む、単離された核酸に関する。VPS35タンパク質は、液胞タンパク質分類関連タンパク質35を指し、これはエンドソームからトランスゴルジネットワークへのタンパク質の逆行性輸送に関与するタンパク質複合体の一部である。ヒトにおいて、VPS35遺伝子は16番染色体上に位置する。いくつかの態様において、VPS35遺伝子は、NCBI参照配列NP_060676.2(配列番号49)によって表されるペプチドをコードする。いくつかの態様において、単離された核酸は、配列番号50に示される配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸は、コドン最適化されたVPS35コード配列を含む。
【0058】
本開示の側面は、IL-34タンパク質(例えば、IL34遺伝子の遺伝子産物)をコードする発現構築物を含む、単離された核酸に関する。IL-34タンパク質は、単球の成長および生存を増加させるサイトカインである、インターロイキン34を指す。ヒトにおいて、IL34遺伝子は16番染色体上に位置する。いくつかの態様において、IL34遺伝子は、NCBI参照配列NP_689669.2(配列番号55)によって表されるペプチドをコードする。いくつかの態様において、単離された核酸は、配列番号56に示される配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸は、コドン最適化されたIL-34コード配列を含む。
【0059】
本開示の側面は、TREM2タンパク質(例えば、TREM2遺伝子の遺伝子産物)をコードする発現構築物を含む、単離された核酸に関する。TREM2タンパク質は、骨髄細胞に見られる免疫グロブリンスーパーファミリー受容体である、骨髄細胞2に発現するトリガー受容体を指す。ヒトにおいて、TREM2遺伝子は第6染色体上に位置する。いくつかの態様において、TREM2遺伝子は、NCBI参照配列NP_061838.1(配列番号57)によって表されるペプチドをコードする。いくつかの態様において、単離された核酸は、配列番号58に示される配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸は、コドン最適化されたTREM2コード配列を含む。
【0060】
本開示の側面は、TMEM106Bタンパク質(例えば、TMEM106B遺伝子の遺伝子産物)をコードする発現構築物を含む、単離された核酸に関する。TMEM106Bタンパク質は、樹状突起の形態形成とリソソーム輸送の調節に関与するタンパク質である、膜貫通タンパク質106Bを指す。ヒトにおいて、TMEM106B遺伝子は7番染色体上に位置する。いくつかの態様において、TMEM106B遺伝子は、NCBI参照配列NP_060844.2(配列番号62)によって表されるペプチドをコードする。いくつかの態様において、単離された核酸は、配列番号63に示される配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸は、コドン最適化されたTMEM106Bコード配列を含む。
【0061】
本開示の側面は、プログラニュリンタンパク質(例えば、PRGN遺伝子の遺伝子産物)をコードする発現構築物を含む、単離された核酸に関する。PGRNタンパク質は、発生、炎症、細胞増殖、およびタンパク質の恒常性に関与するタンパク質である、プログラニュリンを指す。ヒトにおいて、PGRN遺伝子は17番染色体に位置する。いくつかの態様において、PGRN遺伝子は、NCBI参照配列NP_002078.1(配列番号6)によって表されるペプチドをコードする。いくつかの態様において、単離された核酸は、配列番号6に示される配列を含む。いくつかの態様において、単離された核酸は、コドン最適化されたPGRNコード配列を含む。
【0062】
いくつかの側面において、本開示は、第1の遺伝子産物および第2の遺伝子産物をコードする発現構築物を含む、単離された核酸を提供し、ここで各遺伝子産物は独立して、表1に示される遺伝子産物またはその一部から選択される。
【0063】
いくつかの態様において、遺伝子産物は、天然に存在する遺伝子のコード部分(例えば、cDNA)によってコードされる。いくつかの態様において、第1の遺伝子産物は、GBA1遺伝子によってコードされるタンパク質(またはその断片)である。いくつかの態様において、遺伝子産物は、表1に列挙される別の遺伝子、例えば、SCARB2/LIMP2遺伝子またはPSAP遺伝子によってコードされるタンパク質(またはその断片)である。しかしながら当業者は、第1の遺伝子産物(例えば、Gcase)および第2の遺伝子産物(例えば、LIMP2など)の発現の順序は、一般的に逆転され得ることを認識する(例えば、LIMP2が第1の遺伝子産物であり、Gcaseが第2の遺伝子産物である)。いくつかの態様において、遺伝子産物は、表1に列挙された遺伝子の断片(例えば、一部)である。タンパク質断片は、表1に列挙された遺伝子によってコードされるタンパク質の、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%または約99%を含み得る。いくつかの態様において、タンパク質断片は、表1に列挙された遺伝子によってコードされるタンパク質の50%~99.9%(例えば、50%~99.9%の間の任意の値)を含む。
【0064】
いくつかの態様において、発現構築物はモノシストロニックである(例えば、発現構築物は、第1の遺伝子産物および第2の遺伝子産物を含む単一の融合タンパク質をコードする)。いくつかの態様において、発現構築物はポリシストロニックである(例えば、発現構築物は、2つの異なる遺伝子産物、例えば2つの異なるタンパク質またはタンパク質断片をコードする)。
【0065】
ポリシストロニックな発現ベクターは、1つ以上(例えば、1、2、3、4、5、またはそれ以上)のプロモーターを含み得る。任意の適切なプロモーター、例えば、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、内因性プロモーター、組織特異的プロモーター(例えば、CNS特異的プロモーター)などを使用することができる。いくつかの態様において、プロモーターは、ニワトリベータ-アクチンプロモーター(CBAプロモーター)、CAGプロモーター(例えば、Alexopoulou et al. (2008) BMC Cell Biol. 9:2; doi: 10.1186/1471-2121-9-2に記載のもの)、CD68プロモーター、またはJeTプロモーター(例えばTornoe et al. (2002) Gene 297(1-2):21-32に記載のもの)である。いくつかの態様において、プロモーターは、第1の遺伝子産物、第2の遺伝子産物、または第1の遺伝子産物と第2の遺伝子産物をコードする核酸配列に、作動可能に連結されている。いくつかの態様において、発現カセットは1つ以上の追加の調節配列を含み、これには、限定することなく、転写因子結合配列、イントロンスプライス部位、ポリ(A)付加部位、エンハンサー配列、リプレッサー結合部位、またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0066】
いくつかの態様において、第1の遺伝子産物をコードする核酸配列と第2の遺伝子産物をコードする核酸配列は、内部リボソーム進入部位(IRES)をコードする核酸配列によって分離されている。IRES部位の例は、例えば、Mokrejs et al. (2006) Nucleic Acids Res. 34(Database issue):D125-30に記載されている。いくつかの態様において、第1の遺伝子産物をコードする核酸配列と第2の遺伝子産物をコードする核酸配列は、自己切断型ペプチドをコードする核酸配列によって分離されている。自己切断型ペプチドの例には、限定はされないが、T2A、P2A、E2A、F2A、BmCPV 2A、およびBmIFV 2A、およびLiu et al. (2017) Sci Rep. 7: 2193に記載されたものが含まれる。いくつかの態様において、自己切断型ペプチドはT2Aペプチドである。
【0067】
病理学的には、PDおよびゴーシェ病などの疾患は、α-シヌクレイン(α-Syn)タンパク質で主に構成されるタンパク質凝集体の蓄積に関連する。したがって、いくつかの態様において、本明細書に記載の単離された核酸は、α-Synタンパク質の発現を低減または防止する阻害性核酸を含む。阻害性核酸をコードする配列は、発現ベクターの非翻訳領域(例えば、イントロン、5’UTR、3’UTRなど)に配置され得る。
【0068】
いくつかの態様において、阻害性核酸は、発現構築物のイントロン、例えば、第1の遺伝子産物をコードする配列の上流のイントロンに配置される。阻害性核酸は、二本鎖RNA(dsRNA)、siRNA、マイクロRNA(miRNA)、人工miRNA(amiRNA)、またはRNAアプタマーであることができる。一般に阻害性核酸は、標的RNA(例えば、mRNA)に隣接する約6~約30(例えば、両端を含む6~30の間の任意の整数)のヌクレオチドに結合する(例えば、ハイブリダイズする)。いくつかの態様において、阻害性核酸分子は、miRNAまたはamiRNA、例えば、SNCA(α-Synタンパク質をコードする遺伝子)またはTMEM106B(例えば、TMEM106Bタンパク質をコードする遺伝子)を標的とするmiRNAである。いくつかの態様において、miRNAは、それがハイブリダイズするSNCAのmRNAの領域とのいかなるミスマッチも含まない(例えば、miRNAは「完全」である)。いくつかの態様において、阻害性核酸は、shRNA(例えば、SNCAまたはTMEM106Bを標的とするshRNA)である。いくつかの態様において、阻害性核酸は、miR-155足場およびSCNAまたはTMEM106B標的化配列を含む、人工miRNA(amiRNA)である。
【0069】
本明細書に記載の単離された核酸は、それ自体で、またはベクターの一部として存在し得る。一般にベクターは、プラスミド、コスミド、ファージミド、細菌人工染色体(BAC)、またはウイルスベクター(例えば、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、レトロウイルスベクター、バキュロウイルスベクターなど)である。いくつかの態様において、ベクターは、プラスミド(例えば、本明細書に記載の単離された核酸を含むプラスミド)である。いくつかの態様において、rAAVベクターは、一本鎖(例えば、一本鎖DNA)である。いくつかの態様において、ベクターは、組換えAAV(rAAV)ベクターである。いくつかの態様において、ベクターは、バキュロウイルスベクター(例えば、Autographa californica核多角体病(AcNPV)ベクター)である。
【0070】
典型的には、rAAVベクター(例えば、rAAVゲノム)は、2つのAAV逆方向末端反復(ITR)配列が隣接した、導入遺伝子(例えば、以下の各々の1つ以上を含む発現構築物:プロモーター、イントロン、エンハンサー配列、タンパク質コード配列、阻害性RNAコード配列、ポリAテール配列など)を含む。いくつかの態様において、rAAVベクターの導入遺伝子は、本開示に記載の単離された核酸を含む。いくつかの態様において、rAAVベクターの2つのITR配列のそれぞれは、完全長ITR(例えば、長さが約145bpであり、機能的Rep結合部位(RBS)および末端分解部位(trs)を含む)である。いくつかの態様において、rAAVベクターのITRの1つは、切断されている(例えば、短縮されているかまたは完全長ではない)。いくつかの態様において、切断型ITRは、機能的末端分解部位(trs)を欠き、自己相補的AAVベクター(scAAVベクター)の生成のために使用される。いくつかの態様において、切断型ITRは、例えば、McCarty et al. (2003) Gene Ther. 10(26):2112-8に記載のΔITRである。
【0071】
本開示の側面は、野生型AAV ITRと比べて、例えば野生型AAV2 ITR(例えば、配列番号29)と比べて、1つ以上の修飾(例えば、核酸の追加、欠失、置換など)を有するITRを含む、単離された核酸(例えば、rAAVベクター)に関する。野生型AAV2 ITRの構造を、図20に示す。一般に野生型ITRは、自己アニーリングして回文構造の二本鎖T型ヘアピン構造(これは、2つのクロスアーム(それぞれB/B’およびC/C’と呼ばれる配列によって形成される)、より長いステム領域(配列A/A’によって形成される)、および「D」領域と呼ばれる一本鎖末端領域からなる)を形成する、125ヌクレオチドの領域を含む(図20)。一般に、ITRの「D」領域は、A/A’配列によって形成されるステム領域と、rAAVベクターの導入遺伝子を含むインサートの間に配置される(例えば、ITRの末端に対してITRの「内側」に配置されるか、またはrAAVベクターの導入遺伝子インサートもしくは発現構築物の近位に配置される)。いくつかの態様において、「D」領域は、配列番号27に示される配列を含む。「D」領域は、例えば、Ling et al. (2015) J Mol Genet Med 9(3)に開示されるように、カプシドタンパク質によるrAAVベクターのカプシド形成において重要な役割を果たすことが観察されている。
【0072】
本開示は、部分的に、ITRの「外側」に位置する「D」領域(例えば、導入遺伝子インサートまたは発現構築物に対してITRの末端に近い)を含むrAAVベクターが、修飾されていない(例えば、野生型の)ITRを有するrAAVベクターよりも、AAVカプシドタンパク質によって効率的にカプシド化されるという、驚くべき発見に基づいている。いくつかの態様において、修飾された「D」領域を有するrAAVベクターは、野生型ITR配列を有するrAAVベクターと比べて、毒性が減少している。
【0073】
いくつかの態様において、修飾「D」配列は、野生型「D」配列(例えば、配列番号27)と比べて、少なくとも1つのヌクレオチド置換を含む。修飾「D」配列は、野生型「D」配列(例えば、配列番号27)と比べて、少なくも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上のヌクレオチド置換を有し得る。いくつかの態様において、修飾「D」配列は、野生型「D」配列(例えば、配列番号27)と比べて、少なくも10、11、12、13、14、15、16、17、18、または19のヌクレオチド置換を含む。いくつかの態様において、修飾「D」配列は、野生型「D」配列(例えば、配列番号27)と、約10%~約99%(例えば、10%、15%、20%、25%、30%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%)同一である。いくつかの態様において、修飾「D」配列は、Wang et al. (1995) J Mol Biol 250(5):573-80に記載のように、「S」配列とも呼ばれる配列番号26に示される配列を含む。
【0074】
本開示に記載の単離された核酸またはrAAVベクターはさらに、例えば、配列番号28に示されるような、またはFrancois, et al. 2005. The Cellular TATA Binding Protein Is Required for Rep-Dependent Replication of a Minimal Adeno-Associated Virus Type 2 p5 Element. J Virolに記載のような「TRY」配列を含み得る。いくつかの態様において、TRY配列は、単離された核酸またはrAAVベクターのITR(例えば、5’ITR)と発現構築物(例えば、導入遺伝子をコードするインサート)との間に配置される。
【0075】
いくつかの側面において、本開示は、本開示に記載の単離された核酸またはrAAVベクターを含む、バキュロウイルスベクターに関する。いくつかの態様において、バキュロウイルスベクターは、例えばUrabe et al. (2002) Hum Gene Ther 13(16):1935-43およびSmith et al. (2009) Mol Ther 17(11):1888-1896に記載されるような、Autographa californica核多角体病(AcNPV)ベクターである。
【0076】
いくつかの側面において、本開示は、本明細書に記載の単離された核酸またはベクターを含む、宿主細胞を提供する。宿主細胞は、原核細胞または真核細胞であり得る。例えば宿主細胞は、哺乳動物細胞、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞などであり得る。いくつかの態様において、宿主細胞は哺乳動物細胞、例えば、HEK293T細胞である。いくつかの態様において、宿主細胞は細菌細胞、例えば大腸菌細胞である。
【0077】
rAAV
いくつかの側面において、本開示は、本明細書に記載の核酸をコードする導入遺伝子を含む、組換えAAV(rAAV)に関する(例えば、本明細書に記載のrAAVベクター)。「rAAV」という用語は一般に、1つ以上のAAVカプシドタンパク質によってカプシド化されたrAAVベクターを含む、ウイルス粒子を指す。本開示に記載のrAAVは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9およびAAV10から選択される血清型を有するカプシドタンパク質を含み得る。いくつかの態様において、rAAVは、非ヒト宿主由来のカプシドタンパク質、例えば、AAVrh.10、AAVrh.39などのアカゲザルAAVカプシドタンパク質を含む。いくつかの態様において、本開示に記載のrAAVは、野生型カプシドタンパク質のバリアントであるカプシドタンパク質を含み、これは例えば、それが由来する野生型AAVカプシドタンパク質に対して、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または10より多く(例えば、15、20、25、50、100など)のアミノ酸置換(例えば、変異)を含む、カプシドタンパク質バリアントである。
【0078】
いくつかの態様において、本開示に記載のrAAVは、特にCSF空間にまたは直接脳実質に導入された場合に、CNSを通して容易に広がる。したがって、いくつかの態様において、本開示に記載のrAAVは、血液脳関門(BBB)を通過することができるカプシドタンパク質を含む。例えば、いくつかの態様において、rAAVは、AAV9またはAAVrh.10血清型を有するカプシドタンパク質を含む。rAAVの生成は、例えば、Samulski et al. (1989) J Virol. 63(9):3822-8 and Wright (2009) Hum Gene Ther. 20(7): 698-706に記載されている。
【0079】
いくつかの態様において、本開示に記載のrAAV(例えば、AAVカプシドタンパク質によってカプシド化されてrAAVカプシド粒子を形成する、組換えrAAVゲノムを含むもの)は、バキュロウイルスベクター発現系(BEVS)で生成される。BEVSを使用したrAAVの生成は、例えば以下に記載されている:Urabe et al. (2002) Hum Gene Ther 13(16):1935-43、Smith et al. (2009) Mol Ther 17(11):1888-1896、米国特許第8,945,918号、米国特許第9,879,282号、および国際PCT公開WO 2017/184879。しかしながらrAAVは、任意の適切な方法を使用して(例えば、組換えrepおよびcap遺伝子を使用して)生成され得る。
【0080】
医薬組成物
いくつかの側面において、本開示は、本明細書に記載の単離された核酸またはrAAVおよび薬学的に許容し得る担体を含む、医薬組成物を提供する。本明細書で使用する場合、「薬学的に許容し得る」という用語は、化合物の生物活性または特性を無効にせず、比較的非毒性である担体または希釈剤などの材料を指し、例えば材料は、望ましくない生物学的影響を引き起こしたり、またはそれが含まれている組成物の任意の成分と有害な様式で相互作用したりすることなく、個体に投与し得る。
【0081】
本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容し得る担体」とは、薬学的に許容し得る材料、組成物または担体、例えば、液体または固体の充填剤、安定剤、分散剤、懸濁剤、希釈剤、賦形剤、増粘剤、溶媒または封入材料などであって、本発明内で有用な化合物をそれが意図する機能を果たすことができるように患者内にまたは患者に運ぶかまたは輸送することに関連するものを、意味する。本発明の実施において使用される医薬組成物に含まれ得るさらなる成分は、当該分野で知られており、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences (Genaro, Ed., Mack Publishing Co., 1985, Easton, PA)に記載されている;これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0082】
本明細書で提供される組成物(例えば、医薬組成物)は、以下を含む任意の経路で投与することができる:経腸(例えば、経口)、非経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、皮下、脳室内、経皮、皮内、直腸、膣内、腹腔内、局所的(粉末、軟膏、クリーム、および/または滴剤による)、粘膜、鼻腔、頬側、舌下;気管内注入、気管支注入、および/または吸入;および/または経口スプレー、鼻スプレー、および/またはエアロゾルとして。具体的に企図される経路は、経口投与、静脈内投与(例えば、全身静脈内注射)、血液および/またはリンパ供給による局所投与、および/または罹患部位への直接投与である。一般に、最も適切な投与経路は、様々な因子、例えば薬剤の性質(例えば、胃腸管の環境におけるその安定性)、および/または対象の状態(例えば、対象が経口投与に耐えることができるかどうか)などに依存するであろう。特定の態様において、本明細書に記載の化合物または医薬組成物は、対象の眼への局所投与に適している。
【0083】
方法
本開示は、部分的に、パーキンソン病を処置するために一緒に(例えば、相乗的に)作用する、対象におけるPD関連遺伝子産物の組み合わせの発現のための組成物に基づく。本明細書で使用される場合、「処置する」または「処置すること」とは、(a)パーキンソン病の発症を予防または遅延させること;(b)パーキンソン病の重症度を軽減すること;(c)パーキンソン病に特徴的な症状の発症を軽減または防止すること;(d)パーキンソン病に特徴的な症状の悪化を防ぐこと、を指す。パーキンソン病の症状には、例えば、運動機能障害(例えば、震え、硬直、動きの鈍さ、歩行困難)、認知機能障害(例えば、認知症、うつ病、不安症)、感情的および行動的機能障害が含まれる。
【0084】
したがって、いくつかの側面において、本開示は、パーキンソン病を有するかまたは有すると疑われる対象を処置する方法を提供し、該方法は、対象に、本開示に記載の組成物(例えば、単離された核酸またはベクターまたはrAAVを含む組成物)を投与することを含む。
【0085】
いくつかの態様において、組成物は、対象のCNSに直接、例えば対象の脳および/または脊髄への直接注射によって、投与される。CNS直接投与法の例には、限定はされないが、脳内注射、脳室内注射、大槽内注射、実質内注射、髄腔内注射、および前述の任意の組み合わせが含まれる。いくつかの態様において、対象のCNSへの直接注射は、対象の中脳、線条体および/または大脳皮質における、導入遺伝子発現(例えば、第1の遺伝子産物、第2の遺伝子産物、および該当する場合は第3の遺伝子産物の発現)をもたらす。いくつかの態様において、CNSへの直接注射は、対象の脊髄および/またはCSFにおける、導入遺伝子発現(例えば、第1の遺伝子産物、第2の遺伝子産物、および該当する場合は第3の遺伝子産物の発現)をもたらす。
【0086】
いくつかの態様において、対象のCNSへの直接注射は、対流強化送達(CED)を含む。対流強化送達は、脳の外科的露出および小径カテーテルを脳の標的領域に直接配置し、続いて治療剤(例えば、本明細書に記載の組成物またはrAAV)を対象の脳に直接注入することを含む、治療戦略である。CEDは、例えば、Debinski et al. (2009) Expert Rev Neurother. 9(10):1519-27に記載されている。
【0087】
いくつかの態様において、組成物は、例えば末梢注射により、対象の末梢に投与される。末梢注射の例には、皮下注射、静脈内注射、動脈内注射、腹腔内注射、またはこれらの任意の組み合わせが含まれる。いくつかの態様において、末梢注射は、動脈内注射、例えば対象の頸動脈への注射である。
【0088】
いくつかの態様において、本開示に記載の組成物(例えば、単離された核酸またはベクターまたはrAAVを含む組成物)は、対象のCNSに末梢および直接の両方で投与される。例えば、いくつかの態様において、対象は、動脈内注射(例えば、頸動脈への注射)および実質内注射(例えば、CEDによる実質内注射)によって、組成物を投与される。いくつかの態様において、CNSへの直接注射および末梢注射は同時である(例えば、同時に起こる)。いくつかの態様において、直接注射は、末梢注射の前(例えば、1分から1週間の間、またはそれより前)に行われる。いくつかの態様において、直接注射は、末梢注射の後(例えば、1分から1週間の間、またはその後)に行われる。
【0089】
対象に投与される本開示に記載の組成物(例えば、単離された核酸またはベクターまたはrAAVを含む組成物)の量は、投与方法に応じて変化するであろう。例えば、いくつかの態様において、本明細書に記載のrAAVは、対象に、約10ゲノムコピー(GC)/kgと約1014GC/kgの間(例えば、約10GC/kg、約1010GC/kg、約1011GC/kg、約1012GC/kg、約1012GC/kg、または約1014GC/kg)の力価で投与される。いくつかの態様において、対象は、高力価(例えば、>1012ゲノムコピーGC/kgのrAAV)を、CSF空間への注射により、または実質内注射により投与される。
【0090】
本開示に記載の組成物(例えば、単離された核酸またはベクターまたはrAAVを含む組成物)は、対象に1回または複数回(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、またはそれ以上)投与され得る。いくつかの態様において、組成物は対象に継続的に(例えば、慢性的に)、例えば注入ポンプを介して、投与される。
【実施例
【0091】
例1:rAAVベクター
AAVベクターは、トリプルプラスミドトランスフェクション用のHEK293細胞などの細胞を使用して生成される。ITR配列は、目的の各導入遺伝子のプロモーター/エンハンサー要素、3’ポリAシグナル、およびWPRE要素等の翻訳後シグナルを含む発現構築物に隣接している。GBA1、LIMP2、プロサポシンなどの複数の遺伝子産物を、以下によって同時に発現させることができる:タンパク質配列の融合により;または、T2AやP2Aなどの2Aペプチドリンカーの使用により(ペプチド結合の作成が妨げられるため、アミノ酸が付加された2ペプチド断片がもたらされる);またはIRES要素の使用により;または2つの別々の発現カセットでの発現により。発現された遺伝子の上流で効率的にスプライシングされる短いイントロン配列の存在は、発現レベルを改善することができる。shRNAおよび他の調節RNAは、これらの配列内に含まれる可能性がある。本開示に記載の発現構築物の例を、図1~8および21~35、ならびに下の表2に示す。
【0092】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0093】
例2:GBA欠損細胞へのウイルス形質導入の、細胞ベースのアッセイ
GBA1が欠損した細胞は、例えばGD患者からの線維芽細胞、単球、またはhES細胞、または患者由来の人工多能性幹細胞(iPSC)として取得される。これらの細胞は、グルコシルセラミドおよびグルコシルスフィンゴシン(GluCerおよびGluSph)などの基質を蓄積する。野生型または変異培養細胞株のCBEなどのGcase阻害剤による処理も、GBA欠損細胞を得るために使用される。
【0094】
かかる細胞モデルを使用して、リソソームの欠陥(lysosomal defects)を、α-シヌクレインなどのタンパク質凝集体の蓄積の観点からこのタンパク質に対する抗体またはホスホ-αSynを用いて定量化し、続いて蛍光顕微鏡を使用して画像化する。LAMP1、LAMP2、LIMP1、LIMP2などのタンパク質マーカーのICCによる、またはLysotrackerなどの色素を使用した、または蛍光デキストランもしくは他のマーカーのエンドサイトーシスコンパートメントを介した取り込みによる、リソソーム異常の画像化も実施する。LC3などのリソソームとの融合の欠陥によるオートファジーマーカーの蓄積の画像化も、実施可能である。ウエスタンブロッティングおよび/またはELISAを使用して、これらのマーカーの異常な蓄積を定量化する。また、糖脂質基質およびGBA1の産物の蓄積は、標準的なアプローチを使用して測定する。
治療のエンドポイント(PD関連の病状の軽減など)は、AAVベクターの形質導入の発現の文脈において測定し、活性および機能を確認および定量化する。Gcaseは、タンパク質ELISA測度を使用して、または標準のGcase活性アッセイによっても定量化することができる。
【0095】
例3:変異マウスを使用したin vivoアッセイ
この例では、変異マウスを使用したAAVベクターのin vivoアッセイについて記載する。変異マウスにおける上記のようなAAVベクターのin vivo研究は、例えば、Liou et al. (2006) J. Biol. Chem. 281(7): 4242-4253、Sun et al. (2005) J. Lipid Res. 46:2102-2113、およびFarfel-Becker et al. (2011) Dis. Model Mech. 4(6):746-752に記載されたアッセイを使用して実施する。
ビヒクル対照およびAAVベクターの髄腔内または脳室内送達(例えば、2×1011vg/マウスの用量)は、濃縮AAVストックを使用して、例えば5~10μLの注入量で行う。対流強化送達による実質内送達を行う。
処置は、症状の発症前、または発症後に開始する。測定するエンドポイントは、CNSおよびCSFにおける基質の蓄積、ELISAによるGcase酵素の蓄積、および酵素活性の蓄積、運動および認知エンドポイント、リソソーム機能障害、およびα-シヌクレインモノマー、プロトフィブリルまたはフィブリルの蓄積である。
【0096】
例4:疾患の化学的モデル
この例では、ゴーシェ病の化学的誘発マウスモデル(CBEマウスモデルなど)を使用した、AAVベクターのin vivoアッセイについて記載する。これらのAAVベクターのin vivo研究は、例えばVardi et al. (2016) J Pathol. 239(4):496-509に記載のように、ゴーシェ病の化学的誘発マウスモデルで実施される。
ビヒクル対照とAAVベクターの髄腔内または脳室内送達(例えば、2×1011vg/マウスの用量)は、濃縮されたAAVストックを使用して、例えば5~10μLの注入量で行う。対流強化送達による実質内送達を行う。末梢送達は、尾静脈注射によって達成する。
処置は、症状の発症前、または発症後に開始する。測定するエンドポイントは、CNSおよびCSFにおける基質の蓄積、ELISAによるGcase酵素の蓄積、および酵素活性の蓄積、運動および認知エンドポイント、リソソーム機能障害、およびα-シヌクレインモノマー、プロトフィブリルまたはフィブリルの蓄積である。
【0097】
例5:PD、LBD、ゴーシェ病の患者の臨床試験
いくつかの態様において、特定の形態のゴーシェ病(例えば、GD1)を有する患者は、パーキンソン病(PD)またはレビー小体型認知症(LBD)を発症するリスクが高い。この例では、ゴーシェ病、PDおよび/またはLBDを有する患者における、本開示に記載のrAAVの安全性および有効性を評価するための臨床試験を記載する。
ゴーシェ病、PDおよび/またはLBDの処置のためのかかるベクターの臨床試験は、Grabowski et al. (1995) Ann. Intern. Med. 122(1):33-39に記載されているものと同様の研究デザインを使用して実施する。
【0098】
例6:末梢疾患の処置
いくつかの態様において、特定の形態のゴーシェ病を有する患者は、例えば、Biegstraaten et al. (2010) Brain 133(10):2909-2919に記載のように、末梢神経障害の症状を示す。
この例は、ゴーシェ病(例えば、1型ゴーシェ病)に関連する末梢神経障害の処置のための、本明細書に記載のAAVベクターのin vivoアッセイを記載する。簡潔に述べると、末梢神経障害の兆候または症状を有すると同定された1型ゴーシェ病患者に、本開示に記載のようにrAAVを投与する。いくつかの態様において、対象の末梢神経障害の兆候および症状を、例えば、Biegstraatenらに記載されている方法を使用して、rAAVの投与後に監視する。
患者(例えば、患者の血清、末梢組織(例えば、肝臓組織、脾臓組織など))に存在する本開示に記載の形質導入された遺伝子産物のレベルを、例えばウエスタンブロット分析、酵素機能アッセイ、または画像検査によりアッセイする。
【0099】
例7:CNS型の処置
この例では、CNS型ゴーシェ病の処置のための、本明細書に記載のrAAVのin vivoアッセイを記載する。簡潔に述べると、CNS型のゴーシェ病(例えば、2型または3型ゴーシェ病)を有すると同定されたゴーシェ病患者に、本開示に記載のようにrAAVを投与する。患者のCNS(例えば、患者のCNSの血清中、患者の脳脊髄液(CSF)中、または患者のCNS組織中)に存在する本開示に記載の形質導入された遺伝子産物のレベルを、例えばウエスタンブロット分析、酵素機能アッセイ、または画像検査によりアッセイする。
【0100】
例8:GBA1に変異を有する対象におけるパーキンソン病の遺伝子治療
この例では、GBA1遺伝子の変異を特徴とするパーキンソン病の患者への、GBA1をコードする組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)の投与について記載する。
rAAV-GBA1ベクターインサートは、4つの部分:CMVエンハンサー(CMVe)、CBAプロモーター(CBAp)、エクソン1、およびイントロン(int)から構成されており、ヒトGBA1(maroon)のコドン最適化コード配列(CDS)を構成的に発現するCBAプロモーター要素(CBA)を含む。3’領域はまた、ウッドチャック肝炎ウイルスの転写後調節要素(WPRE)の転写後調節要素と、それに続くウシ成長ホルモンポリAシグナル(bGHポリA)テールも含む。隣接するITRは、介在する配列の正しいパッケージングを可能にする。5’ITR配列の2つのバリアント(図7、挿入ボックス、下の配列)を評価した;これらのバリアントは、ITRの20ヌクレオチド「D」領域内にいくつかのヌクレオチドの違いがあり、これはパッケージングおよび発現の効率に影響を与えると考えられている。rAAV-GBA1ベクター産物は、図7に示される「D」ドメインヌクレオチド配列を含む(挿入ボックス、上部配列)。バリアントベクターは、前臨床試験で同様に作用する変異「D」ドメイン(本明細書では「S」ドメインと呼ばれ、ヌクレオチドの変化は網掛けで示される)を備えている。骨格には、カナマイシン耐性を付与する遺伝子と、逆パッケージングを防ぐためのスタッファー配列が含まれる。rAAV-GBA1ベクターを示す概略図を図8に示す。rAAV-GBA1ベクターは、AAV9血清型カプシドタンパク質を使用してrAAVにパッケージングされている。
【0101】
rAAV-GBA1を、対象に単回用量として大槽(大槽内;ICM)へのX線透視法ガイドによる後頭下注射を介して投与する。rAAV-GBA1投与計画研究の一態様は、以下の通りである:
rAAV-GBA1の単回用量を患者(N=12)に、非臨床薬理学および毒物学研究の結果に基づいて決定される2つの用量レベル(3e13vg(低用量);1e14vg(高用量)など)の1つで投与する。
初期の研究は、rAAV-GBA1ベクターとrAAV-GBA1のSバリアント構築物の有効性および安全性を評価するためのGCaseの阻害剤であるコンズリトール-b-エポキシド(CBE)の毎日の送達を含む、化学的マウスモデルで実施した(以下にさらに説明するとおり)。また、初期の研究は、ホモ接合GBA1変異を保有し、サポシン(4L/PS-NA)が部分的に欠損している遺伝子マウスモデルにおいて実施した。マウスおよび非ヒト霊長類(NHP)での追加の用量範囲研究を実施して、ベクターの安全性および有効性をさらに評価する。
【0102】
AAV骨格の5’逆方向末端反復(ITR)のわずかに異なる2つのバージョンを試験して、製造性および導入遺伝子発現を評価した(図7)。145bpの5’ITR内の20bpの「D」ドメインは、最適なウイルスベクターの生成に必要であると考えられているが、しかし「D」ドメイン内の変異もまた、いくつかの場合において導入遺伝子の発現を増加させることが報告されている。したがって、無傷の「D」ドメインを保有するウイルスベクターrAAV-GBA1に加えて、変異型Dドメイン(本明細書では「S」ドメインと呼ばれる)を有する第2のベクター形態も評価した。rAAV-GBA1とバリアントの両方が、同じ導入遺伝子を発現する。両方のベクターが以下に詳述するようにin vivoで有効なウイルスを生成したが、野生型「D」ドメインを含むrAAV-GBA1を、さらなる開発用に選択した。
【0103】
GCase欠損のCBEモデルを確立するために、若年マウスに、GCaseの特異的阻害剤であるCBEを投与した。マウスには、CBEを毎日IP注射により生後8日(P8)から開始して与えた。3つの異なるCBE用量(25mg/kg、37.5mg/kg、50mg/kg)およびPBSを試験して、行動表現型を示すモデルを確立した(図9)。CBEの高用量は、用量依存的に致死をもたらした。50mg/kgのCBEで処置したすべてのマウスはP23までに死亡し、37.5mg/kgのCBEで処置した8匹のマウスのうち5匹はP27までに死亡した。25mg/kgのCBEで処置したマウスには致死性はなかった。CBEを注射したマウスは、オープンフィールドアッセイで一般的な運動障害を示さなかったが(PBSを投与したマウスと同じ距離および同じ速度で移動する)、CBEで処置したマウスは、ロータロッドアッセイの測定により、運動協調性とバランスの障害を示した。
【0104】
研究の終わりまで生存したマウスは、最後のCBE投与の翌日(P27、「1日目」)またはCBE中止の3日後(P29、「3日目」)に犠牲にした。25mg/kgのCBEを投与したマウスの皮質で脂質分析を行い、1日目と3日目のコホートの両方でGCase基質の蓄積を評価した。GluSphおよびGalSphレベル(この例では合計で測定)は、PBS処置対照と比べてCBE処置マウスで有意に蓄積され、GCase不全と整合した。
上記の研究に基づき、生存に影響を与えることなく行動障害を引き起こしたことにより、25mg/kgのCBE用量を選択した。脳全体にわたるGBA1分布とCBE処置中の導入遺伝子発現を達成するために、rAAV-GBA1または賦形剤を、脳室内(ICV)注射によって出生後3日目(P3)に送達し、続いて毎日のIPでのCBEまたはPBS処置を、P8で開始した(図10)。
【0105】
rAAV-GBA1を投与したCBE処置マウスは、賦形剤を投与したマウスよりも、ロータロッドにおいて統計的に有意に良好に機能した(図11)。バリアント処置群のマウスは、試験中の総移動距離などの他の行動指標の点で、賦形剤で処置したマウスと差はなかった(図11)。
生存試験の完了時に、CBEの最終投与の翌日(P36、「1日目」)またはCBE中止の3日後(P38、「3日目」)に、マウスの半分を生化学分析のために犠牲にした(図12)。生物学的トリプリケートで行われた蛍光酵素アッセイを使用して、GCase活性を皮質で評価した。GCase活性は、rAAV-GBA1で処置したマウスで増加したが、一方CBE処置は、GCase活性を低下させた。さらに、CBEとrAAV-GBA1の両方を投与したマウスは、PBS処置群と同様のGCase活性レベルを示し、これは、rAAV-GBA1の送達が、CBE処置により誘導されるGCase活性の阻害を克服できることを示す。脂質分析をマウスの運動皮質で実施して、基質GluCerおよびGluSphのレベルを調べた。両方の脂質がCBEを投与したマウスの脳に蓄積し、rAAV-GBA1処置は基質の蓄積を大幅に減少させた。
【0106】
脂質レベルは、処置群全体にわたり、GCase活性およびロータロッドでのパフォーマンスの両方に負の相関があった。rAAV-GBA1投与後のGCase活性の増加は、基質の減少および運動機能の増強と関連していた(図13)。図14に示すように、予備的な生体内分布は、qPCRの測定を用いてベクターゲノムの存在により評価した(ゲノムDNA1μgあたり100を超えるベクターゲノムを陽性と定義)。CBEありとなしの両方でrAAV-GBA1を投与したマウスは、皮質でのrAAV-GBA1ベクターゲノムが陽性であり、ICV送達が皮質へのrAAV-GBA1送達をもたらすことを示す。さらに、ベクターゲノムは肝臓で検出され、脾臓ではほとんど検出されず、心臓、腎臓または生殖腺では全く検出されなかった。すべての測定値について、1日目群と3日目群の間に統計的に有意な差はなかった。
【0107】
CBEモデルでの大規模な研究により、CBEモデルでのrAAV-GBA1の有効用量をさらに調べた。25mg/kgのCBE用量モデルを使用して、賦形剤またはrAAV-GBA1を、ICVを介してP3で送達し、毎日のIPでのPBSまたはCBE処置をP8で開始した。以前の研究で観察されたCBE中止ありとなしの群間の類似性を考慮して、すべてのマウスを最終CBE投与の1日後に犠牲にした(P38~40)。3つの異なるrAAV-GBA1用量の効果を評価した結果、次の5つの群を、1群あたり10匹のマウス(5M/5F)で得た。
賦形剤 ICV+PBS IP
賦形剤 ICV+25mg/kgのCBE IP
3.2e9vg(2.13e10vg/脳1g)のrAAV-GBA1 ICV+25mg/kgのCBE IP
1.0e10vg(6.67e10vg/脳1g)のrAAV-GBA1 ICV+25mg/kgのCBE IP
3.2e10vg(2.13e11vg/脳1g)のrAAV-GBA1 ICV+25mg/kgのCBE IP。
【0108】
最高用量のrAAV-GBA1は、CBE処置に関連したP37での体重増加の失敗を救済した。さらに、この用量により、ロータロッドおよびテーパ梁でのパフォーマンスが賦形剤+CBE処置群と比べて統計的に有意に増加した(図15)。致死性は、賦形剤処置群とrAAV-GBA1処置群の両方を含むいくつかの群で観察された(賦形剤+PBS:0;賦形剤+25mg/kgのCBE:1;3.2e9vgのrAAV-GBA1+25mg/kgのCBE:4;1.0e10vgのrAAV-GBA1+25mg/kgのCBE:0;3.2e10vgのrAAV-GBA1+25mg/kgのCBE:3)。
【0109】
生存試験の完了時に、マウスを生化学的分析のために犠牲にした(図16)。皮質のGCase活性を、生物学的トリプリケートで蛍光アッセイにより評価した。CBE処置マウスはGCase活性の低下を示したのに対し、高用量rAAV-GBA1を投与したマウスは、CBE処置と比べて統計的に有意なGCase活性の増加を示した。CBE処置マウスもまた、GluCerとGluSphの蓄積があり、どちらも高用量のrAAV-GBA1を投与することで救済された。
【0110】
確立された化学的CBEモデルに加えて、rAAV-GBA1を4L/PS-NA遺伝モデルでも評価する;これは、Gba1のV394L GD変異についてホモ接合であり、かつGCaseの局在と活性に影響を与えるサポシンが部分的に欠損している。これらのマウスは、梁歩行、ロータロッド、およびワイヤハングアッセイでのパフォーマンスから明らかなように、運動強度、協調性、バランスの障害を示す。通常、これらのマウスの寿命は22週間未満である。初期の研究では、3μlの最大力価ウイルスをICVによりP23で送達し、最終投与量は2.4e10vg(6.0e10vg/脳1g)であった。1群あたり6匹のマウスを用いた処置群は以下である:
WT+賦形剤 ICV
4L/PS-NA+賦形剤 ICV
4L/PS-NA+2.4e10vg(6.0e10vg/脳1g)のrAAV-GBA1 ICV
【0111】
梁歩行試験による運動パフォーマンスは、rAAV-GBA1送達の4週間後に評価した。rAAV-GBA1を投与した変異マウスの群は、賦形剤で処置した変異マウスと比べて合計スリップが少なく、速度あたりのスリップが少ない傾向を示し、運動機能をWTレベル近くまで回復させた(図17)。これらのマウスが加齢するにつれて運動表現型はより重症になるので、これと他の行動試験におけるそのパフォーマンスは、後の時点で評価する。生存試験の完了時に、脂質レベル、GCase活性、および生体内分布をこれらのマウスにおいて評価する。
【0112】
追加の低用量のrAAV-GBA1は現在、CBEモデルを使用して試験されており、提案されているフェーズ1の高臨床用量の0.03倍、0.1倍、および1倍に相当する。各群には、群ごとに10匹のマウス(5M/5F)が含まれる:
賦形剤 ICV
賦形剤 ICV+25mg/kgのCBE IP
3.2e8vg(2.13e9vg/脳1g)のrAAV-GBA1 ICV+25mg/kgのCBE IP
1.0e9vg(6.67e9vg/脳1g)のrAAV-GBA1 ICV+25mg/kgのCBE IP
1.0e10vg(6.67e10vg/脳1g)のrAAV-GBA1 ICV+25mg/kgのCBE IP。
【0113】
運動表現型に加えて、脂質レベルおよびGCase活性を皮質で評価する。処置の時間経過および分析も実施する。
より大きな用量範囲の研究を開始して、有効性と安全性のデータを評価した。10匹の4L/PS-NAマウス(群当たり5M/5F)に、10μlのrAAV-GBA1を注射した。アロメトリック脳重量計算を使用して、用量は提案されたフェーズ1の高臨床用量の0.15倍、1.5倍、4.4倍、14.5倍に相関する。注射群は以下から構成される:
WT+賦形剤 ICV
4L/PS-NA+賦形剤 ICV
4L/PS-NA+4.3e9vg(1.1e10vg/脳1g)のrAAV-GBA1 ICV
4L/PS-NA+4.3e10vg(1.1e11vg/g/脳)のrAAV-GBA1 ICV
4L/PS-NA+1.3e11vg(3.2e11vg/脳1g)のrAAV-GBA1 ICV
4L/PS-NA+4.3e11vg(1.1e12vg/脳1g)のrAAV-GBA1 ICV。
【0114】
CBEモデルの非臨床試験の概要を、以下の表3に示す。
【表3】
正の生体内分布は、100vg/1μgゲノムDNAより大として定義されることに注意。
略語:BD=生体内分布;NS=有意性なし;T=傾向;S=有意;N/A=適用されず;+=正;-=負。
【0115】
例9:rAAVベクターのin vitro分析
rAAV構築物を、in vitroおよびin vivoで試験した。図18は、プログラニュリン(PGRN)タンパク質をコードするrAAV構築物のin vitro発現についての代表的なデータを示す。左のパネルは、プログラニュリン(PGRN)ELISAアッセイの標準曲線を示す。下のパネルは、rAAVで形質導入されたHEK293T細胞の細胞溶解物においてELISAアッセイにより測定された、PGRN発現の用量反応を示す。MOI=感染の多重度(細胞あたりのベクターゲノム)。
パイロット研究を実施して、プロサポシン(PSAP)およびSCARB2を、単独で、またはGBA1および/または1つ以上の阻害性RNAと組み合わせてコードするrAAVベクターのin vitro活性を評価した。PSAPおよびプログラニュリン(PGRN)をコードする1つの構築物も試験した。試験したベクターは、表4に示すものを含む。「Opt」は、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞)での発現用に最適化された核酸配列コドンを指す。図19は、各構築物によるHEK293細胞のトランスフェクションが、モックトランスフェクトされた細胞と比べて、対応する遺伝子産物の過剰発現をもたらしたことを示す代表的なデータを示す。
【0116】
パイロット研究を実施して、TREM2を、単独で、または1つ以上の阻害性RNAと組み合わせてコードするrAAVベクターのin vitro活性を評価した。試験したベクターは、表4に示すものを含む。「Opt」は、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞)での発現用に最適化された核酸配列コドンを指す。図36A~36Bは、各構築物によるHEK293細胞のトランスフェクションが、モックトランスフェクトされた細胞と比べて、対応する遺伝子産物の過剰発現をもたらしたことを示す代表的なデータを示す。
【表4】
【0117】
例10:SCNAおよびTMEM106B shRNA構築物の試験
HEK293細胞
ヒト胚性腎臓293細胞株(HEK293)をこの研究で使用した(#85120602, Sigma-Aldrich)。HEK293細胞は、100単位/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシン(#15140122, Thermo Fisher Scientific)を含有する培地(D-MEM[#11995065, Thermo Fisher Scientific]に10%ウシ胎児血清[FBS][#10082147, Thermo Fisher Scientific]を補充)で維持した。
【0118】
プラスミドトランスフェクション
プラスミドのトランスフェクションを、Lipofectamine 2000トランスフェクション試薬(#11668019, Thermo Fisher Scientific)を使用し、製造元の指示に従って実施した。簡潔に述べると、HEK293細胞(#12022001, Sigma-Aldrich)を、3×10細胞/mlの密度で抗生物質を含まない培地にプレーティングした。翌日、プラスミドおよびLipofectamine 2000試薬をOpti-MEM溶液(#31985062, Thermo Fisher Scientific)に混合した。5分後、混合物をHEK293培養物に加えた。72時間後、細胞を、RNAまたはタンパク質の抽出のために回収するか、または画像解析を行った。画像分析のために、プレートを0.01%のポリ-L-リジン溶液(P8920, Sigma-Aldrich)で、細胞をプレーティングする前にプレコートした。
【0119】
定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)による遺伝子発現解析
相対遺伝子発現レベルは、Power SYBR Green Cells-to-CTキット(#4402955, Thermo Fisher Scientific)を使用した定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)により、製造元の指示に従って決定した。候補プラスミドを、48ウェルプレート(7.5×10細胞/ウェル)にプレーティングしたHEK293細胞に、Lipofectamine 2000トランスフェクション試薬(50μlのOpti-MEM溶液中、0.5μgのプラスミドおよび1.5μlの試薬)を使用して、一時的にトランスフェクションした。72時間後、RNAを細胞から抽出し、製造元の指示に従って逆転写に使用してcDNAを合成した。定量的PCR分析では、2~5μlのcDNA産物を、遺伝子特異的プライマーペア(最終濃度250nM)を使用して、Power SYBR Green PCR Master Mix(#4367659, Thermo Fisher Scientific)でデュプリケートに増幅した。SNCA、TMEM106B、およびGAPDH遺伝子のプライマー配列は以下である:SNCAについて、5’-AAG AGG GTG TTC TCT ATG TAG GC-3’(配列番号71)、5’-GCT CCT CCA ACA TTT GTC ACT T-3’(配列番号72);TMEM106Bについて、5’-ACA CAG TAC CTA CCG TTA TAG CA-3’(配列番号73)、5’-TGT TGT CAC AGT AA TTG CAT CA-3’(配列番号74);およびGAPDHについて、5’-CTG GGC TAC ACT GAG CAC C-3’(配列番号75)、5’-AAG TGG TCG TCG AGG GCA ATG-3’(配列番号76)。定量的PCRは、QuantStudio 3リアルタイムPCRシステム(Thermo Fisher Scientific)で実施した。発現レベルは、ハウスキーピング遺伝子GAPDHによって正規化し、比較CT法を使用して算出した。
【0120】
蛍光画像分析
ヒトSNCA遺伝子の3’-UTRをEGFPコード領域の下流に含むEGFPレポータープラスミドを使用して、SNCAおよびTMEM106Bノックダウンプラスミドを検証した。EGFPレポータープラスミドおよび候補ノックダウンプラスミドを、ポリ-L-リジンを被覆した96ウェルプレート(3.0×10細胞/ウェル)上にプレーティングしたHEK293細胞に、Lipofectamine 2000トランスフェクション試薬(10μlのOpti-MEM溶液中、0.04μgのレポータープラスミド、0.06μgのノックダウンプラスミドおよび0.3μlの試薬)を使用して、同時にトランスフェクトした。72時間後、EGFPシグナルの蛍光強度を、励起488nm/発光512nmで、Varioskan LUXマルチモードリーダー(Thermo Fisher Scientific)を使用して測定した。細胞を、4%PFAで室温で10分間固定し、40μg/mlの7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD)を含むD-PBSで、室温で30分間インキュベートした。D-PBSで洗浄した後、7-AADシグナルの蛍光強度を、励起546nm/発光647nmでVarioskanリーダーを使用して測定し、細胞数を定量化した。7-AADシグナルレベルあたりの正規化EGFPシグナルを、対照のノックダウン試料と比較した。
【0121】
酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)
ヒトSNCA遺伝子またはTMEM106B遺伝子の3’-UTRをSNCAコード領域の下流に含む、α-シヌクレインレポータープラスミドを使用して、タンパク質レベルでのノックダウンプラスミドを検証した。α-シヌクレインタンパク質のレベルを、HEK293細胞から抽出した細胞溶解物を使用して、ELISA(#KHB0061, Thermo Fisher Scientific)で測定した。候補プラスミドを、48ウェルプレート(7.5×10細胞/ウェル)にプレーティングしたHEK293細胞に、Lipofectamine 2000トランスフェクション試薬(25μlのOpti-MEM溶液中、0.1μgのレポータープラスミド、0.15μgのノックダウンプラスミド、および0.75μlの試薬)を使用して、一時的にトランスフェクトした。72時間後、細胞を、プロテアーゼ阻害剤カクテル(#P8340, Sigma-Aldrich)を補充したラジオイムノ沈降アッセイ(RIPA)バッファー(#89900, Thermo Fisher Scientific)に溶解し、数秒間超音波処理した。氷上で30分間インキュベートした後、細胞溶解物を20,000×g、4℃で15分間遠心分離し、上清を回収した。タンパク質レベルを定量化した。プレートを、Varioskanプレートリーダーで450nmで読み取り、SoftMax Pro 5ソフトウェアを使用して濃度を算出した。測定されたタンパク質濃度は、ビシンコニン酸アッセイ(#23225, Thermo Fisher Scientific)で決定した総タンパク質濃度に対して正規化した。
【0122】
図37および表5は、GFPレポーターアッセイ(上)およびα-Synアッセイ(下)による、in vitroでのSCNAの成功したサイレンシングを示す代表的なデータを示す。図38および表6は、GFPレポーターアッセイ(上)およびα-Synアッセイ(下)による、in vitroでのTMEM106Bの成功したサイレンシングを示す代表的なデータを示す。
【表5】
【0123】
【表6】
【0124】
例11:ITR「D」配列の配置および細胞の形質導入
ITR「D」配列の配置の、rAAVベクターの細胞の形質導入に対する効果を調べた。HEK293細胞は、GcaseをコードするrAAVであって、図20に示すように1)野生型ITR(例えば、導入遺伝子インサートの近位でITRの末端から遠位の「D」配列)、または2)ベクターの「外側」に位置する「D」配列(例えば、ITRの末端の近位で、導入遺伝子インサートの遠位に位置する「D」配列)を有するITR、を有するものを用いて形質導入した。驚くべきことにデータは、「外側」の位置にある「D」配列を有するrAAVが、パッケージングされる能力を保持し、細胞を効率的に形質導入することを示している(図40)。
【0125】
例12:プログラニュリンrAAVのin vitro試験
図39は、PGRNをコードする発現構築物を含むベクターの、一態様を示す概略図である。プログラニュリンは、GRN欠損についてヘテロ接合性またはホモ接合性であるGRN欠損齧歯類のCNSにおいて、PGNをコードするrAAVベクター(コドン最適化PGRNなど)を実質内注射または大槽等への髄腔内注射のいずれかによって注入することにより、過剰発現される。
マウスは2か月齢または6か月齢で注射され、6か月または12か月まで育成され、以下の1つ以上について分析される:RNAレベルおよびタンパク質レベルでのGRNの発現レベル、行動アッセイ(例:運動の改善)、生存アッセイ(例:生存期間の改善)、ミクログリアおよび炎症マーカー、神経膠症、神経細胞の喪失、リポフスチン症、および/またはLAMP1などのリソソームマーカー蓄積の救済。PGRN欠損マウスに対するアッセイは、例えば、Arrant et al. (2017) Brain 140: 1477-1465;Arrant et al. (2018) J. Neuroscience 38(9):2341-2358;およびAmado et al. (2018) doi:https://doi.org/10.1101/30869に記載されている;その内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0126】
均等物
本出願には、以下の文献の内容全体が参照により組み込まれる:2018年10月3日に提出された代理人整理番号P1094.70002WO00により参照される国際PCT出願;2018年10月3日に提出された代理人整理番号P1094.70004WO00により参照される国際PCT出願;2017年10月3日に提出された米国仮出願第62/567,296号、表題「ライソゾーム病の遺伝子治療」;2017年10月3日に提出された第62/567,311号、表題「ライソゾーム病の遺伝子治療」;2017年10月3日に提出された第62/567,319号、表題「ライソゾーム病の遺伝子治療」;201年10月3日に提出された第62/567,301号、表題「ライソゾーム病の遺伝子治療」;2017年10月3日に提出された第62/567,310号、表題「ライソゾーム病の遺伝子治療」;2017年10月3日に提出された第62/567,303号、表題「ライソゾーム病の遺伝子治療」;および2017年10月3日に提出された第62/567,305号、表題「ライソゾーム病の遺伝子治療」。
【0127】
本発明の少なくとも1つの態様のいくつかの側面をこのように説明してきたが、様々な変更、修正、および改善が当業者には容易に思い浮かぶであろうことを理解されたい。かかる変更、修正、および改善は、この開示の一部であることが意図されており、本発明の精神および範囲の内にあることが意図されている。したがって、前述の説明および図面は、例示としてのみのものである。
【0128】
本明細書では本発明のいくつかの態様を説明および図示してきたが、当業者は、本明細書に記載の機能を実行し、および/または結果および/または1つ以上の利点を取得するための、さまざまな他の手段および/または構造を容易に思い浮かべるであろうし、かかる変更および/または修正のそれぞれは、本発明の範囲内であると見なされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載のすべてのパラメータ、寸法、材料、および構成が例示であることを意味し、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は、本発明の教示が使用される特定の用途(単数または複数)に依存することを、容易に理解するであろう。当業者は、本明細書に記載される本発明の特定の態様に対する多くの均等物を認識し、または日常的な実験のみを使用して確認することができるであろう。したがって、前述の態様は例としてのみ提示され、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内で、本発明は、具体的に記載されおよび特許請求された以外の方法で実施できることを理解されたい。本発明は、本明細書に記載の個々の特徴、システム、物品、材料、および/または方法を対象とする。さらに、2つ以上のかかる特徴、システム、物品、材料、および/または方法の任意の組み合わせは、かかる特徴、システム、物品、材料、および/または方法が相互に矛盾しない場合、本発明の範囲内に含まれる。
【0129】
本明細書および特許請求の範囲で使用される不定冠詞「a」および「an」は、明確に逆が示されない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
本明細書および特許請求の範囲で使用される「および/または」という語句は、そのように結合された要素の「いずれかまたは両方」、すなわち、ある場合には結合的に存在し、他の場合には分離的に存在する要素を意味すると理解すべきである。明確に逆が示されない限り、任意に他の要素も、「および/または」節で具体的に識別された要素以外に、具体的に識別された要素に関連するかどうかに関係なく存在し得る。したがって非限定的な例として、「含む」などのオープンエンドの言語と組み合わせて使用される場合の「Aおよび/またはB」への言及は、一態様では、BなしでAを指す(任意にB以外の要素を含む)ことができ;別の態様では、AなしでBを指す(任意にA以外の要素を含む)ことができ;さらに別の態様では、AおよびBの両方を指す(任意に他の要素を含む)ことができる;など。
【0130】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「または」は、上記で定義された「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を分ける場合、「または」または「および/または」は、包括的、すなわち要素の数またはリストの少なくとも1つを含み、さらにまた複数も含み、および任意にリストされていない追加の項目を含むものとして解釈される。明確に逆の用語が示されている場合、例えば「1つのみ」または「正確に1つ」など、または特許請求の範囲で使用されている場合の「からなる」は、要素の数またはリストの正確に1つを含むことを指す。一般に、本明細書で使用される「または」という用語は、排他性の用語、例えば「いずれか」、「1つ」または「1つのみ」、または「正確に1つ」が先行する場合には、排他的選択肢(すなわち、一方または他方だが、両方ではない)を指すとして解釈されるべきである。特許請求の範囲で使用される場合の「から本質的になる」は、特許法の分野で使用される通常の意味を有するものとする。
【0131】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、1つ以上の要素のリストに関して「少なくとも1つ」という語句は、要素のリストの任意の1つ以上の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味すると理解されたい;ただし、要素のリスト内に具体的にリストされているすべてのそれぞれの要素の少なくとも1つを必ずしも含む必要はなく、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを除外することもない。この定義により、「少なくとも1つ」という句が参照する要素のリスト内で具体的に識別された要素以外の要素が、具体的に識別された要素に関連するかどうかに関係なく、任意に存在可能とされる。したがって、非限定的な例として、「AおよびBの少なくとも1つ」(または、同等に、「AまたはBの少なくとも1つ」、または同等に「Aおよび/またはBの少なくとも1つ」)は、一態様では、少なくとも1つ、任意に複数のAを含み、Bが存在しない(および任意にB以外の要素を含む);別の態様では、少なくとも1つ、任意に複数のBを含み、Aが存在しない(任意にA以外の要素を含む);さらに別の態様では、少なくとも1つ、任意に複数のAを含み、および少なくとも1つ、任意に複数のBを含む(および任意に他の要素を含む);など。
【0132】
特許請求の範囲、および上記の明細書において、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「保持する(carrying)」、「有する」、「含有する」、「含む(involving)」、「保有する(holding)」などのすべての移行句は、オープンエンドとして、すなわち、限定することなく含むことを意味すると理解されたい。「からなる」および「本質的にからなる」という移行句のみが、米国特許庁の特許審査手続きマニュアルのSection 2111.03に記載されているように、それぞれクローズまたはセミクローズの移行句とする。
「第1」、「第2」、「第3」などの順序を示す用語の、クレーム要素を修飾するためのクレームにおける使用は、それ自体では、あるクレーム要素の他に対する優先権、先行、もしくは順序、または方法の行為が実行される時間的な順序を示すものではなく、しかし、特定の名前を有する一定のクレーム要素を、同じ名前(ただし順序用語のみが異なる)の別の要素から区別するためのラベルとしてのみ使用されて、クレーム要素を区別する。
明確に逆が示されない限り、1つ以上のステップまたは行為を含む本明細書で特許請求される任意の方法において、方法のステップまたは行為の順序は必ずしも、方法のステップまたは行為が示されている順序に限定されないことも、理解されるべきである。
【0133】
配列
いくつかの態様において、1つ以上の遺伝子産物(例えば、第1、第2および/または第3の遺伝子産物)をコードする発現カセットは、配列番号1~78のいずれか1つに示される配列を含むか、またはそれからなる(または該配列を有するペプチドをコードする)。いくつかの態様において、遺伝子産物は、配列番号1~78のいずれか1つの一部(例えば、断片)によってコードされる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9-1】
図9-2】
図10
図11-1】
図11-2】
図11-3】
図12-1】
図12-2】
図13
図14-1】
図14-2】
図15-1】
図15-2】
図16-1】
図16-2】
図17-1】
図17-2】
図18
図19-1】
図19-2】
図19-3】
図20
図21
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図23
図24
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図27
図28
図29
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図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
【配列表】
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