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特許7361042化学線によって硬化されたフッ素化エラストマー及びその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】化学線によって硬化されたフッ素化エラストマー及びその方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/00 20060101AFI20231005BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20231005BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20231005BHJP
   C09D 127/12 20060101ALI20231005BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20231005BHJP
【FI】
C08J7/00 302
C08L27/12
C08J5/18 CEW
C09D127/12
C09D7/63
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020552677
(86)(22)【出願日】2018-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 US2018065960
(87)【国際公開番号】W WO2019126016
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-15
(31)【優先権主張番号】62/599,939
(32)【優先日】2017-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】グエン,ソー キュー.
(72)【発明者】
【氏名】福士 達夫
(72)【発明者】
【氏名】イエ,ション
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-077286(JP,A)
【文献】特表2015-533924(JP,A)
【文献】特開2013-064159(JP,A)
【文献】特表2009-545652(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0082430(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0141425(US,A1)
【文献】国際公開第2010/074038(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/018352(WO,A1)
【文献】特表2012-530804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J5/00 -5/02;5/12-5/22;C08K3/00-13/08;
C08L1/00-101/14; C08J3/00-3/28;99/00
C08J7/00-7/02;7/12-7/18;
B29C71/04;
C09D1/00 -10/00;101/00-201/10
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質フルオロポリマーを少なくとも部分的に硬化する方法であって、前記方法が、
(i)
(a)複数の硬化部位を有する非晶質フルオロポリマーであって、前記硬化部位が、ヨウ素、臭素、ニトリル、又はこれらの組み合わせを含む、非晶質フルオロポリマーと、
(b)過酸化物及び多官能性多価不飽和II型助剤を含む過酸化物硬化系と、
を含む組成物を得ることであって、前記組成物が0.01重量%未満の光開始剤を含み、前記光開始剤がI型光開始剤、II型光開始剤、及び3成分電子移動開始剤系から選択される、得ることと、
(ii)前記組成物の少なくとも一表面を化学線に曝露することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記組成物が、カーボンブラックを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非晶質フルオロポリマーが、前記非晶質フルオロポリマーの総重量に対して少なくとも0.1重量%のヨウ素を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記非晶質フルオロポリマーが、前記非晶質フルオロポリマーの総重量に対して少なくとも0.1重量%の臭素を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記II型助剤が、(i)グリセリンのジアリルエーテル、(ii)トリアリルリン酸、(iii)ジアリルアジペート、(iv)ジアリルメラミン及びトリアリルイソシアヌレート、(v)トリ(メチル)アリルイソシアヌレート、(vi)トリ(メチル)アリルシアヌレート、(vii)ポリトリアリルイソシアヌレート、(viii)キシリレン-ビス(ジアリルイソシアヌレート)、及び(ix)これらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、基材上に層として配置され、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記層が、少なくとも10ミクロン~最大で300ミクロンの乾燥厚さを有する、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非晶質フルオロポリマーを含む組成物であって、非晶質フルオロポリマーが化学線を使用して少なくとも部分的に硬化される、組成物に関する。フッ素化エラストマー及び硬化フルオロエラストマー物品の製造方法が、本明細書に開示される。
【発明の概要】
【0002】
過酸化物硬化フッ素化エラストマーは、ビスフェノール又はトリアジンなどの他の硬化系を使用して硬化されたフッ素化エラストマーと比較して、改善された耐蒸気性及び耐化学性で知られる。非晶質フルオロポリマーと過酸化物硬化系とを含む硬化性組成物を基材上に薄くコーティングし、熱硬化させた場合、コーティングが十分に硬化しないことが判明している。したがって、薄層としてコーティングしたときに十分に硬化する過酸化物硬化フルオロエラストマーを特定することが望ましい。
【0003】
一態様では、フルオロエラストマーを少なくとも部分的に硬化させる方法が記載され、この方法は、
(i)
(a)複数の硬化部位を有する非晶質フルオロポリマーであって、硬化部位が、ヨウ素、臭素、ニトリル、又はこれらの組み合わせを含む、非晶質フルオロポリマーと、
(b)過酸化物及びII型助剤を含む過酸化物硬化系と、
を含む組成物を得ることであって、組成物が光開始剤を実質的に含まず、光開始剤がI型光開始剤、II型光開始剤、及び3成分電子移動開始剤系(3-component electron transfer initiator system)から選択される、得ることと、
(ii)上記組成物の少なくとも一表面を化学線に曝露することと、
を含む。
【0004】
一実施形態において、紫外線(UV)光を用いて非晶質フルオロポリマーを硬化させる方法が開示される。
【0005】
一態様において、物品が開示され、当該物品は、
(a)複数の硬化部位を有する非晶質フルオロポリマーであって、硬化部位が、ヨウ素、臭素、ニトリル、又はこれらの組み合わせを含む、非晶質フルオロポリマーと、
(b)過酸化物及びII型助剤を含む過酸化物硬化系と、
を含む組成物を、少なくとも部分的に硬化させることによって製造され、当該組成物は光開始剤を実質的に含まず、光開始剤はI型光開始剤、II型光開始剤、及び3成分電子移動開始剤系から選択され、組成物の少なくとも一表面が化学線に曝露される。
【0006】
一態様では、フルオロエラストマーコーティングが記載され、当該フルオロエラストマーコーティングは、少なくとも25ミクロン、かつ最大で260ミクロンの厚さを有し、フルオロエラストマーは過酸化物硬化フルオロエラストマーであって、所望により、カーボンブラックを含み、光開始剤を実質的に含まず、光開始剤はI型光開始剤、II型光開始剤、及び3成分電子移動開始剤系から選択される。
【0007】
以上の発明の概要は、各実施形態について説明することを意図するものではない。本発明における1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明にも記載されている。その他の特徴、目的、及び利点は、本明細書から及び特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書で使用する場合、用語
「及び/又は」は、述べられた事柄の一方又は両方が起こり得ることを示すために使用され、例えば、A及び/又はBは、(A及びB)並びに(A又はB)を含み、
「主鎖」とは、ポリマーの主な連続鎖を指す。
「架橋」とは、予め形成した2つのポリマー鎖を、化学結合又は化学的な基を使用して連結することを指す。
「硬化部位」は、架橋に関与する場合がある、官能基を指す。
「共重合」とは、モノマーが一緒に重合してポリマー主鎖を形成することを指す。
「モノマー」は、重合を経てその後ポリマーの基本的構造の部分を形成することができる分子である。
「全フッ素化」とは、すべての水素原子がフッ素原子に置換されている、炭化水素から誘導される基又は化合物を意味する。しかし、全フッ素化化合物は、酸素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子のような、フッ素原子及び炭素原子以外の原子を更に含有してもよい。
「ポリマー」は、少なくとも50,000ダルトン、少なくとも100,000ダルトン、少なくとも300,000ダルトン、少なくとも500,000ダルトン、少なくとも750,000ダルトン、少なくとも1,000,000ダルトン、又は更には少なくとも1,500,000ダルトンであり、かつポリマーの早期ゲル化を引き起こすほどには高くない数平均分子量(Mn)を有するマクロ構造を指す。
【0009】
「からなる」の使用とは対照的に、「含む」、「含有する」、「備える」、又は「有する」及びその変化形などの語の使用は、これらの語の前に列挙される要素及びその均等物に加えて更なる要素を包含することを意味する。
【0010】
本明細書で使用するとき、列挙に続く、「のうちの少なくとも1つを含む」という語句は、列挙中の要素のうちのいずれか1つ、及び列挙中の2つ以上の要素の任意の組み合わせを含むことを指す。列挙に続く、「のうちの少なくとも1つ」という語句は、列挙中の項目のうちのいずれか1つ、又は列挙中の2つ以上の項目の任意の組み合わせを指す。
【0011】
また、本明細書において、端点による範囲の記載は、その範囲内に包含されるすべての数(例えば、1~10は、1.4、1.9、2.33、5.75、9.98など)を含む。
【0012】
また、本明細書において、「少なくとも1つ」の記載は、1以上のすべての数(例えば、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100など)を含む。
【0013】
本明細書では、硬化性フルオロポリマー組成物が開示される。この硬化性フルオロポリマー組成物は、化学線への曝露によって少なくとも部分的に硬化される。一実施形態において、硬化性フルオロポリマー組成物は、化学線を介して実質的に硬化される。別の実施形態では、硬化性フルオロポリマー組成物は、最初に化学線への曝露によって部分的に硬化され、その後、熱処理に曝露される。
【0014】
本開示の硬化性フルオロポリマー組成物は、非晶質フルオロポリマーと、過酸化物と、II型助剤と、所望によりカーボンブラックと、を含み、硬化性フルオロポリマー組成物は光開始剤を実質的に含まず、光開始剤は(a)I型光開始剤、(b)II型光開始剤、及び/又は(c)3成分電子移動開始剤から選択される。
【0015】
本開示のフルオロポリマーは非晶質であり、これは長距離秩序がないことを意味する(すなわち、長距離秩序では、最近接隣接物より大きな巨大分子の配列及び配向があると理解される)。非結晶ポリマーは、DSC(示差走査熱量測定)によって検出可能な結晶性状を有さない。DSCで研究した場合、フルオロポリマーは、DSCサーモグラムを使用して、第1サイクルは-85℃で開始して10℃/分で350℃まで昇温し、-85℃まで10℃/分の速度で冷却し、第2サイクルは-85℃から開始して10℃/分で350℃まで昇温したときに、加熱/冷却/加熱サイクルの第2の加熱から、0.002、0.01、0.1、又は更には1ジュール/gを超えるエンタルピーを有する融点又は融解転移を有さない。
【0016】
本開示の非晶質フルオロポリマーは、全フッ素化又は部分フッ素化されていてもよい。全フッ素化非晶質ポリマーは、C-F結合を含み、ポリマー鎖の炭素骨格に沿ったC-H結合を含まないが、重合が開始又は終了したポリマーの末端部はC-H結合を含み得る。部分フッ素化非晶質ポリマーは、末端を除いて、ポリマー鎖の炭素骨格に沿ったC-F結合及びC-H結合の両方を含む。
【0017】
一実施形態において、本開示の非晶質フルオロポリマーは、少なくとも30重量%、50%重量、55重量%、58重量%、又は更には60重量%のフッ素、及び65、70、71、又は更には73重量%以下のフッ素を含む(非晶質フルオロポリマーの総重量を基準にして)。
【0018】
一実施形態において、非晶質フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)、フッ化ビニル(VF)、フッ化ビニリデン(VDF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン(CTFE)、全フッ素化ビニルエーテル、全フッ素化アリルエーテル、及びこれらの組み合わせなどの1つ以上のフッ素化モノマーから誘導されてもよい。
【0019】
一実施形態において、ペルフルオロビニルエーテルは、式Iのものである。
CF=CFO(Rf’O) (I)
式中、Rf”は、2、3、4、5、又は6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖ペルフルオロアルキレン基であり、mは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10から選択される整数であり、Rは、1、2、3、4、5、又は6個の炭素原子を含むペルフルオロアルキル基である。例示的なペルフルオロビニルエーテルモノマーとしては、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、ペルフルオロ(エチルビニル)エーテル(PEVE)、ペルフルオロ(n-プロピルビニル)エーテル(PPVE-1)、ペルフルオロ-2-プロポキシプロピルビニルエーテル(PPVE-2)、ペルフルオロ-3-メトキシ-n-プロピルビニルエーテル、ペルフルオロ-2-メトキシ-エチルビニルエーテル、ペルフルオロ-メトキシ-メチルビニルエーテル、(CF-O-CF-O-CF=CF)、及びCF-(CF-O-CF(CF)-CF-O-CF(CF)-CF-O-CF=CF、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0020】
一実施形態において、ペルフルオロアリルエーテルは式IIのものである。
CF=CFCFO(Rf”O)(Rf’O) (II)
式中、Rf”及びRf’は、独立して、2、3、4、5、又は6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖ペルフルオロアルキレン基であり、m及びnは、独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10から選択される整数であり、Rは、1、2、3、4、5、又は6個の炭素原子を含むペルフルオロアルキル基である。例示的なペルフルオロアリルエーテルモノマーとしては、ペルフルオロ(エチルアリル)エーテル、ペルフルオロ(n-プロピルアリル)エーテル、ペルフルオロ-2-プロポキシプロピルアリルエーテル、ペルフルオロ-3-メトキシ-n-プロピルアリルエーテル、ペルフルオロ-2-メトキシ-エチルアリルエーテル、ペルフルオロ-メトキシ-メチルアリルエーテル、及びCF-(CF-O-CF(CF)-CF-O-CF(CF)-CF-O-CFCF=CF、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0021】
ポリマー形成中の非晶質フルオロポリマーは、少量の他の共重合性モノマーを添加することによって変性されてもよく、当該モノマーは、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンなど、フッ素置換を含有してもなくてもよい。概ね、これらの追加のモノマー(すなわち、コモノマー)は、フルオロポリマーの25モルパーセント未満、好ましくは10モルパーセント未満、及び更には3モルパーセント未満で使用される。
【0022】
例示的な非晶質フルオロポリマーとしては、ランダムコポリマー、例えば、TFE及び全フッ素化ビニルエーテルのモノマー単位を含むコポリマー(TFEとPMVEとを含むコポリマー、TFEとCF=CFOCとを含むコポリマー、TFE CF=CFOCFとCF=CFOCとを含むコポリマー、及びTFEとPEVEとを含むコポリマーなど);TFE及び全フッ素化アリルエーテルのモノマー単位を含むコポリマー;TFE及びプロピレンのモノマー単位を含むコポリマー;TFE、プロピレン、及びVDFのモノマー単位を含むコポリマー;VDF及びHFPのモノマー単位を含むコポリマー;TFE及びHFPのモノマー単位を含むコポリマー;TFE、VDF、及びHFPのモノマー単位を含むコポリマー;TFE及びエチルビニルエーテル(EVE)のモノマー単位を含むコポリマー;TFE及びブチルビニルエーテル(BVE)のモノマー単位を含むコポリマー;TFE、EVE、及びBVEのモノマー単位を含むコポリマー;VDF及び全フッ素化ビニルエーテルのモノマー単位を含むコポリマー(VDF及びCF=CFOCのモノマー単位を含むコポリマーなど);エチレン及びHFPのモノマー単位を含むコポリマー;CTFE及びVDFのモノマー単位を含むコポリマー;TFE及びVDFのモノマー単位を含むコポリマー;TFE、VDF及び全フッ素化ビニルエーテルのモノマー単位を含むコポリマー(TFE、VDF、及びPMVEのモノマー単位を含むコポリマーなど);VDF、TFE、及びプロピレンのモノマー単位を含むコポリマー;TFE、VDF、PMVE及びエチレンのモノマー単位を含むコポリマー;TFE、VDF、及び全フッ素化ビニルエーテルのモノマー単位を含むコポリマー(TFE、VDF、及びCF=CFO(CFOCFのモノマー単位を含むコポリマーなど);及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0023】
一実施形態において、非晶質フルオロポリマーは、フッ化ビニリデン(VDF)から誘導された共重合単位(interpolymerized unit)を含む。一実施形態において、非晶質フルオロポリマーは、25~65重量%のVDF又は更には35~60重量%のVDFから誘導される。
【0024】
一実施形態において、非晶質フルオロポリマーは、(i)ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、テトラフルオロエチレン(TFE)、及びフッ化ビニリデン(VDF)、(ii)HFP及びVDF、(iii)VDF及びペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、(iv)VDF、TFE、及びPMVE、(v)VDF、TFE、及びプロピレン、(vi)エチレン、TFE、及びPMVE、(vii)TFE、VDF、PMVE、及びエチレン、並びに(viii)TFE、VDF、及びCF=CFO(CFOCFから誘導される共重合単位を含む。
【0025】
一実施形態において、非晶質フルオロポリマーは、少なくとも50、55、又は更には60重量%、かつ最高65、70、又は更には75重量%のVDFと、少なくとも30、又は更には35重量%、かつ最高40、45、又は更には50重量%のHFPから誘導される共重合単位とを含む。一実施形態において、非晶質フルオロポリマーは、少なくとも45、50、55、又は更には60重量%、かつ最高65、70、又は更には75重量%のVDFと、少なくとも10、15、又は更には20重量%、かつ最高30、35、40、又は更には45重量%のHFPと、少なくとも3、5、又は更には7重量%、かつ最高10、又は更には15重量%のTFEとから誘導される共重合単位を含む。一実施形態において、非晶質フルオロポリマーは、少なくとも25、30、又は更には35重量%、かつ最高40、45、50、55、又は更には65重量%のVDFと、少なくとも20、25、又は更には30重量%、かつ最高35、40、又は更には45重量%のHFPと、少なくとも15、20、又は更には25重量%、かつ最高30、35、又は更には40重量%のTFEとから誘導される共重合単位を含む。一実施形態において、非晶質フルオロポリマーは、少なくとも30、35、40、又は更には少なくとも45重量%、かつ最高55、60、又は更には65重量%のVDFと、少なくとも25、30、又は更には35重量%、かつ最高40、45、50、55、60、又は更には65重量%のPMVEと、少なくとも3、5、又は更には7重量%、かつ最高10、15、又は更には20重量%のTFEとから誘導される共重合単位を含む。一実施形態において、非晶質フルオロポリマーは、少なくとも30、35、40、又は更には45重量%、かつ最高55、60、又は更には65重量%のVDFと、少なくとも10、15、20、25、又は更には35重量%、かつ最高40、45、50、55、又は更には60重量%のPMVEと、少なくとも10、15、又は更には20重量%、かつ最高25、30、又は更には35重量%のTFEとから誘導される共重合単位を含む。一実施形態において、非晶質フルオロポリマーは、少なくとも5、10又は更には15重量%、かつ最高20、25、又は更には30重量%のVDFと、少なくとも5、10、又は更には15重量%、かつ最高20、25、又は更には30重量%のプロピレンと、少なくとも50、55、60、又は更には65重量%、かつ最高70、75、80、又は更には85重量%のTFEとから誘導される共重合単位を含む。一実施形態において、非晶質ペルフルオロエラストマーは、上記のように、少なくとも50、60、又は更には65重量%、かつ最高70、75、又は更には80重量%のTFEと、少なくとも20、25、又は更には30重量%、かつ最高35、40、45、又は更には50重量%のペルフルオロエーテルモノマーとから誘導される共重合単位を含む。
【0026】
本開示の非晶質フルオロポリマーは、フルオロポリマーの架橋を促進する硬化部位を含有する。これらの硬化部位は、ヨウ素、臭素、及びニトリルのうちの少なくとも1つを含む。フルオロポリマーを、連鎖移動剤及び/又は硬化部位モノマーの存在下で重合させて、フルオロポリマーに硬化部位を導入してもよい。このような硬化部位モノマー及び連鎖移動剤は、当該技術分野において既知である。例示的な連鎖移動剤としては、ヨード連鎖移動剤、ブロモ連鎖移動剤、又はクロロ連鎖移動剤が挙げられる。例えば、重合において好適なヨード連鎖移動剤としては、式RI[式中、(i)Rは3~12個の炭素原子のペルフルオロアルキル基又はクロロペルフルオロアルキル基であり、(ii)x=1又は2である]のものが挙げられる。ヨード連鎖移動剤は全フッ素化ヨード化合物でよい。例示的なヨード-ペルフルオロ化合物としては、1,3-ジヨードペルフルオロプロパン、1,4-ジヨードペルフルオロブタン、1,6-ジヨードペルフルオロヘキサン、1,8-ジヨードフルオロオクタン、1,10-ジヨードペルフルオロデカン、1,12-ジヨードペルフルオロドデカン、2-ヨード-1,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロエタン、4-ヨード-1,2,4-トリクロロペルフルオロブタン及びこれらの混合物が挙げられる。一部の実施形態において、ヨード連鎖移動剤は、式I(CF-O-R-(CFI[式中、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10であり、mは1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10であり、Rは、部分フッ素化又は全フッ素化アルキレンセグメントであり、直鎖又は分枝鎖であり得、所望により少なくとも1つの連結されたエーテル結合を含む]のものである。例示的な化合物としては、I-CF-CF-O-CF-CF-I、I-CF(CF)-CF-O-CF-CF-I、I-CF-CF-O-CF(CF)-CF-O-CF-CF-I、I-(CF(CF)-CF-O)-CF-CF-I、I-CF-CF-O-(CF-O-CF-CF-I、I-CF-CF-O-(CF-O-CF-CF-I、及びI-CF-CF-O-(CF-O-CF-CF-I、I-CF-CF-CF-O-CF-CF-I、及びI-CF-CF-CF-O-CF(CF)-CF-O-CF-CF-Iが挙げられる。一部の実施形態において、臭素は、式RBr[式中、(i)Rは、3~12個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル又はクロロペルフルオロアルキル基であり、(ii)x=1又は2である]の臭素化連鎖移動剤から誘導される。連鎖移動剤は全フッ素化ブロモ化合物でよい。
【0027】
硬化部位モノマーは、用いられる場合、臭素、ヨウ素、及び/又はニトリル硬化部分のうちの少なくとも1つを含む。
【0028】
一実施形態において、硬化部位モノマーは、式:a)CX=CX(Z)[式中、(i)各Xは独立してH若しくはFであり、(ii)Zは、I、Br、R-U[式中、U=I若しくはBrであり、R=所望によりエーテル結合を含む全フッ素化若しくは部分全フッ素化アルキレン基である]、又は(b)Y(CFY(式中、(i)YはBr又はI若しくはClであり、(ii)q=1~6である]のものであり得る。加えて、非フッ素化ブロモ又はヨードオレフィン、例えば、ヨウ化ビニル及びヨウ化アリルを使用することができる。例示的な硬化部位モノマーとしては、CH=CHI、CF=CHI、CF=CFI、CH=CHCHI、CF=CFCFI、ICFCFCFCFI、CH=CHCFCFI、CF=CFCHCHI、CF=CFCFCFI、CH=CH(CFCHCHI、CF=CFOCFCFI、CF=CFOCFCFCFI、CF=CFOCFCFCHI、CF=CFCFOCHCHI、CF=CFO(CF-OCFCFI、CH=CHBr、CF=CHBr、CF=CFBr、CH=CHCHBr、CF=CFCFBr、CH=CHCFCFBr、CF=CFOCFCFBr、CF=CFCl、I-CF-CFCF-O-CF=CF、I-CF-CFCF-O-CFCF=CF、I-CF-CF-O-CF-CF=CF、I-CF(CF)-CF-O-CF=CF、I-CF(CF)-CF-O-CF-CF=CF、I-CF-CF-O-CF(CF)-CF-O-CF=CF、I-CF-CF-O-CF(CF)-CF-O-CF-CF=CF、I-CF-CF-(O-(CF(CF)-CF-O-CF=CF、I-CF-CF-(O-(CF(CF)-CF-O-CF-CF=CF、Br-CF-CF-O-CF-CF=CF、Br-CF(CF)-CF-O-CF=CF、I-CF-CF-CF-O-CF(CF)-CF-O-CF=CF、I-CF-CF-CF-O-CF(CF)-CF-O-CF-CF=CF、I-CF-CF-CF-(O-(CF(CF)-CF-O-CF=CF、I-CF-CF-CF-O-(CF(CF)-CF-O)-CF-CF=CF、Br-CF-CF-CF-O-CF=CF、Br-CF-CF-CF-O-CF-CF=CF、I-CF-CF-O-(CF-O-CF=CF、I-CF-CF-O-(CF-O-CF=CF、I-CF-CF-O-(CF-O-CF=CF、I-CF-CF-O-(CF-O-CF-CF=CF、I-CF-CF-O-(CF-O-CF-CF=CF、I-CF-CF-O-(CF-O-CF(CF)CF-O-CF=CF、I-CF-CF-O-(CF-O-CF(CF)CF-O-CF-CF=CF、Br-CF-CF-O-(CF-O-CF=CF、Br-CF-CF-O-(CF-O-CF=CF、Br-CF-CF-O-(CF-O-CF=CF、及びBr-CF-CF-O-(CF-O-CF-CF=CFが挙げられる。
【0029】
別の実施形態では、硬化部位モノマーは、ニトリル含有硬化部分を含む。有用なニトリル含有硬化部位モノマーとしては、ニトリル含有フッ素化オレフィン及びニトリル含有フッ素化ビニルエーテル、例えば、ペルフルオロ(8-シアノ-5-メチル-3,6-ジオキサ-1-オクテン)、CF=CF-O-(CF-CN[式中、n=2~12、好ましくは2、3、4、5、又は6である]が挙げられる。ニトリル含有硬化部位モノマーの例としては、CF=CF-O-[CF-CFCF-O]-CF-CF(CF)-CN;[式中、nは0、1、2、3、又は4、好ましくは0、1、又は2である];CF=CF-[OCFCF(CF)]-O-(CF-CN;[式中、xは1又は2であり、nは1、2、3、又は4である];及びCF=CF-O-(CF-O-CF(CF)CN[式中、nは2、3、又は4である]が挙げられる。例示的なニトリル含有硬化部位モノマーとしては、CF=CFO(CFCN、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN、CF=CFOCFCF(CF)OCFCF(CF)CN、CF=CFOCFCFCFOCF(CF)CN、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0030】
本開示の非晶質フルオロポリマー組成物は、ヨウ素、臭素、及び/又はニトリル硬化部位を含み、これは、過酸化物の存在下で非晶質フルオロポリマーの架橋に使用され得る。一実施形態において、本開示の非晶質フルオロポリマー組成物は、非晶質フルオロポリマーの総重量に対して、少なくとも0.1、0.5、1、2、又は更には2.5重量%のヨウ素、臭素、及び/又はニトリル基を含む。一実施形態において、本開示の非晶質フルオロポリマーは、非晶質フルオロポリマーの総重量に対して、3、5、又は更には10重量%以下のヨウ素、臭素、及び/又はニトリル基を含む。
【0031】
一実施形態において、硬化部位を含む非晶質フルオロポリマーは、第2のポリマーとブレンドされる。第2のポリマーは、フルオロプラスチック又は非晶質フルオロポリマーであってもよく、臭素、ヨウ素、及び/又はニトリル硬化部位を含んでも含まなくてもよい。一実施形態において、第2のポリマーは、上記開示のように(i)TFEと(ii)ペルフルオロビニルエーテル及び/又はペルフルオロアリルエーテルとから誘導されるペルフルオロアルコキシアルカンポリマーである。一実施形態において、本開示の組成物は、従来紫外線硬化を起こすアクリレート及びメタクリレート又は他の非フッ素化ポリマーを実質的に含まない(すなわち、1重量%未満含む)。
【0032】
本開示の組成物は、過酸化物及びII型助剤を含む、過酸化物硬化系を含む。
【0033】
一実施形態において、過酸化物は有機過酸化物であり、好ましくは、ペルオキシ酸素に結合した第三級炭素原子を有する、第三級ブチルペルオキシドである。
【0034】
例示的な過酸化物としては、ベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-tert-ブチルペルオキシヘキサン、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルクロロへキサン、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート(TBIC)、tert-ブチルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート(TBEC)、tert-アミルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、tert-ヘキシルペルオキシイソプロピルカーボネート、カルボノペルオキシ酸、O,O’-1,3-プロパンジイルOO,OO’-ビス(1,1-ジメチルエチル)エステル、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ヘキシルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(4-メチルベンゾイル)ペルオキシド、ラウレルペルオキシド、及びシクロヘキサノンペルオキシドが挙げられる。他の好適な過酸化物硬化剤は、米国特許第5,225,504号(Tatsu et al.)に列挙されている。
【0035】
使用される過酸化物の量は、概ね、非晶質フルオロポリマー100重量部当たり、少なくとも0.1、0.2、0.4、0.6、0.8、1、1.2、又は更には1.5重量部、最高2、2.25、2.5、2.75、3、3.5、4、4.5、5、又は更には5.5重量部となる。
【0036】
助剤は、ラジカルと迅速に反応すること、及び副反応を潜在的に抑制すること、並びに/又は更なる架橋を発生させることによって、過酸化物硬化効率を改善するために使用される反応性添加剤である。助剤は、その硬化に対する寄与に基づいてI型又はII型として分類することができる。I型助剤は、典型的には、付加反応によって反応性の高い基を形成する極性の多官能性低分子量化合物である。I型助剤は、容易にホモ重合し、ラジカル付加反応によって架橋を形成することができる。例示的なI型助剤としては、多官能性アクリレート及びメタクリレートエステル並びにジマレイミドが挙げられる。II型助剤は、より反応性の低いラジカルを形成し、硬化の状態にのみ寄与する。助剤は、過酸化物からの水素引き抜き又はラジカルの付加によってラジカルを形成する。次いで、これらの助剤ラジカルは、Br、I、及び/又はCN部位を介してフルオロポリマーと反応することができる。アリル水素を含むII型助剤は、分子内環化反応並びに分子間成長反応に関与する傾向がある。本開示の過酸化物硬化系は、過酸化物及びII型助剤を含む。一実施形態において、本開示の過酸化物硬化系は、I型助剤を実質的に含まず、これは、非晶質フルオロポリマーの重量に対して5、2、1、0.5、又は更には0.1重量%未満のI型助剤が存在すること、又は更にはI型助剤が存在しないことを意味する。一実施形態において、本開示の硬化性組成物は、式Y(4-n)MX[式中、Yはアルキル、アリール、カルボン酸、又はアルキルエステル基から選択され、MはSi、Ge、Sn、又はPbであり、Xはアリル、ビニル、アルキレニル(alkyenyl)、又はプロパルギル基であり、nは1、2、又は3である]の不飽和金属助剤を実質的に含まない(すなわち、5、2、1、0.5、0.1重量%未満を含む、又は更には全く含まない)。
【0037】
本明細書で使用するとき、II型助剤は、当該技術分野において既知である、アリル含有シアヌレート、アリル含有イソシアヌレート、及びアリル含有フタレート、ジエンのホモポリマー、並びにジエンとビニル芳香族とのコポリマーなどの多官能性多価不飽和化合物を指す。ジ-及びトリアリル化合物、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、ビニルピリジン、1,2-シス-ポリブタジエン、及びこれらの誘導体など、多種多様な有用なII型助剤が市販されている。例示的なII型助剤としては、グリセリンのジアリルエーテル、トリアリルリン酸、ジアリルアジペート、ジアリルメラミン及びトリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリ(メチル)アリルイソシアヌレート(TMAIC)、トリ(メチル)アリルシアヌレート、ポリトリアリルイソシアヌレート(ポリ-TAIC)、キシリレン-ビス(ジアリルイソシアヌレート)(XBD)、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、ジアリルフタレート、トリス(ジアリルアミン)-s-トリアジン、トリアリルホスファイト、1,2-ポリブタジエン、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、及びこれらの組み合わせが挙げられる。2つの末端不飽和部位を含む例示的な部分フッ素化化合物としては、CH=CH-Rf1-CH=CH[式中、Rf1は、1~8個の炭素原子のペルフルオロアルキレンであってもよい]が挙げられる。
【0038】
使用されるII型助剤の量は、概ね、非晶質フルオロポリマー100部当たり少なくとも0.1、0.5、又は更には1重量部であり、非晶質フルオロポリマー100部当たり最高2、2.5、3、又は更には5重量部である。
【0039】
一実施形態において、本開示の非晶質フルオロポリマー組成物は、カーボンブラックを含む。カーボンブラックの例示的な種類としては、N990及びN991などの中粒熱分解カーボンブラック;N110などの超耐摩耗性;N330及びN326などの高耐摩耗性;N550及びN650などの良押出性;N774及びN762などの中補強性;オースチンブラック;及び商品名「NEAT90」でCarbonNeat(Cornelius,NC)から販売されている再生可能炭素質材料が挙げられる。使用されるカーボンブラックの種類に応じて、平均粒径は、例えば、少なくとも15、20、又は更には30nm~最高35、40、45、50、又は更には60nm、少なくとも40、50は更には60nm~最高70、80、90nm、又は更には100nm、及び少なくとも150nm、180、又は更には190nm~最高200、250、300、350、又は更には400nmの範囲であり得る。一実施形態において、カーボンブラック含有量は、組成物の総重量を基準にして、少なくとも0.01、0.1、1、5、又は更には10重量%、かつ最高15、20、30、40、又は更には50重量%である。理論に束縛されるものではないが、カーボンブラックの存在は、化学線を吸収し、それを熱に変換して過酸化物硬化反応を開始することによって、非晶質フルオロポリマーの過酸化物硬化を助け得ると考えられる。
【0040】
本開示の非晶質フルオロポリマー組成物は、(i)I型光開始剤、(ii)II型光開始剤、及び/又は(iii)3成分電子移動開始剤系を実質的に含まない。これらの光開始剤を実質的に含まないとは、これらの化合物が、化学線への曝露時に組成物の硬化を引き起こさないように、十分に少ない量で存在することを意味する。一実施形態において、組成物は、非晶質フルオロポリマーの量に対して、0.1、0.05、0.01又は更には0.001重量%未満の(i)I型光開始剤、(ii)II型光開始剤、及び/又は(iii)3成分電子移動開始剤系の光増感剤を含む。
【0041】
本開示の硬化性組成物は、(i)I型光開始剤、(ii)II型光開始剤、及び/又は(iii)3成分電子移動開始剤系を含まないが、なおも化学線に曝露されるとフルオロポリマーを少なくとも部分的に架橋できることが発見された。
【0042】
I型光開始剤及びII型光開始剤は、当技術分野において既知である。I型光開始剤は、2つのラジカル種を形成するα開裂により機能する。少なくとも1つのラジカル種がモノマーの重合を開始する。例示的なI型光開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインエーテル;商品名「IRGACURE(商標)651」光開始剤(Ciba Specialty Chemicals)で入手可能な2,2-ジメトキシアセトフェノン、商品名「ESACURE KB-1」光開始剤(Sartomer Co.(West Chester,PA))で入手可能な2,2 ジメトキシ-2-フェニル-1-フェニルエタノン、商品名「IRGACURE 2959」(Ciba Specialty Chemicals)で入手可能な1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、及びジメトキシヒドロキシアセトフェノンなどの置換アセトフェノン;2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノンなどの置換α-ケトール;2-ナフタレン-スルホニルクロリドなどの芳香族スルホニルクロリド;1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシ-カルボニル)オキシムなどの光活性オキシムが挙げられる。αこれらの中で特に好ましいのは置換アセトフェノンであり、特にその水溶性から1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンが好ましい。
【0043】
II型光開始剤は光開始剤を含み、これは、エネルギーを吸収すると、引き抜き可能な官能基(アルコール又はアミンなど)を有する第2の実体(entity)(例えば、共開始剤)からの水素引き抜きを促進して最初のフリーラジカルを提供する。例示的なII型光開始剤としては、ベンゾフェノン、4-(3-スルホプロピルオキシ)ベンゾフェノンナトリウム塩、ミヒラーケトン、ベンジル、アントラキノン、5,12-ナフタセンキノン、アセアントラセンキノン、ベンズ(A)アントラセン-7,12-ジオン、1,4-クリセンキノン、6,13-ペンタセンキノン、5,7,12,14-ペンタセンテトロン、9-フルオレノン、アントロン、キサントン、チオキサントン、2-(3-スルホプロピルオキシ)チオキサンテン-9-オン、アクリドン、ジベンゾスベロン、アセトフェノン、及びクロモンが挙げられる。
【0044】
3成分電子移動開始剤系は、当該技術分野において既知であり、典型的には、(i)光増感剤、(ii)ヨードニウム塩、及び(iii)様々な成分に関して参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,545,676号(Palazzotto,et al.)に記載の電子供与体を含む。
【0045】
光増感剤は、対象となる波長の範囲内のどこかで電磁放射線吸収が可能である(例えば、化学線がUV範囲内にある場合、光増感剤は、UV範囲内の波長を吸収するはずである)。好適な光増感剤としては、ケトン、クマリン染料(例えば、ケトクマリン)、キサンテン染料、アクリジン染料、チアゾール染料、チアジン染料、オキサジン染料、アジン染料、アミノケトン染料、ポルフィリン、芳香族多環式炭化水素、p-置換アミノスチリルケトン化合物、アミノトリアリールメタン、メロシアニン、スクアリリウム染料及びピリジニウム染料、の範疇の化合物が挙げられると考えられる。ケトン(例えば、モノケトン又はα-ジケトン)、ケトクマリン、アミノアリールケトン、及びp-置換アミノスチリルケトン化合物が、好ましい増感剤である。例示的な光増感剤としては、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン(ITX)、及び9,10-ジブトキシアントラセンが挙げられる。好適なヨードニウム塩は、米国特許第3,729,313号、同第3,741,769号、同第3,808,006号、同第4,250,053号、及び同第4,394,403号に記載されており、これらの特許のヨードニウム塩に関する開示は、参照により本明細書に組み込まれる。ヨードニウム塩は、単塩(例えば、Cl、Br、I、又はCSO などのアニオンを含有する)又は金属錯塩(例えば、SbFOH又はAsF を含有する)であり得る。所望により、ヨードニウム塩の混合物を使用することができる。好ましい電子供与体化合物としては、アミン(アミノアルデヒド及びアミノシランなど)、アスコルビン酸及びその塩が挙げられる。供与体は、非置換であってもよく、又は1つ以上の非干渉置換基により置換されていてもよい。特に好ましい供与体は、窒素、酸素、リン、又はイオウ原子などの電子供与体原子、及び電子供与体原子に対してα位置にある炭素又はケイ素原子に結合された引抜き可能な水素原子を含有する。好ましいアミン供与体化合物としては、アルキル-、アリール-、アルカリル-、及びアラルキル-アミン、例えば、トリエタノールアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、p-N N-ジメチルアミノフェノキシエタノール;アミノアルデヒド、例えば、p-N,N-ジメチルアミノベンズアルデヒド、p-N,N-ジエチルアミノベンズアルデヒド、及び4-モルホリノベンズアルデヒドが挙げられ、好適なエーテル供与体化合物としては、4,4’-ジメトキシビフェニル、1,2,4-トリメトキシベンゼン、及び1,2,4,5-テトラメトキシベンゼンが挙げられる。
【0046】
一実施形態において、本開示の組成物は、得られる物品の加工又は最終特性を促進する追加成分を含む。
【0047】
例えば、強度を高めること又は機能性を付与することを目的として、従来の補助剤、例えば、充填剤、酸受容体、加工助剤、又は着色剤などを硬化性組成物に添加してよい。
【0048】
例示的な充填剤としては、有機充填剤又は無機充填剤、例えば、クレイ、シリカ(SiO)、アルミナ、ベンガラ、タルク、珪藻土、硫酸バリウム、珪灰石(CaSiO)、炭酸カルシウム(CaCO)、フッ化カルシウム、酸化チタン、酸化鉄、グラファイト、炭素繊維、及びカーボンナノチューブ、炭化ケイ素、窒化ホウ素、硫化モリブデン、高温プラスチック、導電性充填剤、及び放熱充填剤などを所望の成分として組成物に添加してもよい。高温プラスチックを硬化性組成物に添加して、コストを削減し、加工性を改善し、及び/又は最終製品性能を改善することができる。これらの高温プラスチックは、熱処理温度よりも高い融点を有する。一実施形態において、高温プラスチックは、少なくとも100、120、又は更には150℃、かつ最高250、300、320、350、又は更には400℃の融点を有する。高温プラスチックは、部分フッ素化ポリマー(例えば、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマー、ポリ-VDF、又はTFEと、HFPと、VDFとのコポリマー)、全フッ素化ポリマー(例えば、フッ素化エチレンプロピレンポリマー、及び全フッ素化アルコキシポリマー(PFA)、又は非フッ素化ポリマー(例えば、ポリアミド、ポリアラミド、ポリベンズイミダゾール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド)であってもよい。このような高温熱可塑性樹脂は、国際公開第2011/035258号(Singh et al.)に記載されている。当業者は、特定の充填剤を、加硫処理した化合物に所望の物理特性を得るのに必要な量にて選択することができる。充填剤成分により、より低温(TR-10)において収縮などの所望の特性を保持しながら、伸び及び引張強度の値によって示されるとおり、好ましい弾性及び物理的引張性の保持が可能な化合物を得ることができる。
【0049】
一実施形態において、充填剤含有量は、組成物の総重量を基準にして、少なくとも0.01、0.1、1、5、又は更には10重量%、かつ最高15、20、30、40、又は更には50重量%である。
【0050】
また、得られる組成物及び/又は硬化物品の特性を強化するために、従来の補助剤も本開示の化合物に配合してもよい。例えば、化合物の硬化及び熱安定性を促進するために酸受容体を用いてよい。好適な酸受容体としては、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、二塩基性亜リン酸鉛、酸化亜鉛、炭酸バリウム、水酸化ストロンチウム、炭酸カルシウム、ハイドロタルサイト、アルカリステアレート、シュウ酸マグネシウム、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。酸受容体は、好ましくは、非晶質フルオロポリマー100重量部当たり約1~約20部の範囲の量で使用される。
【0051】
上記の添加剤は、得られる物品の特性を変更するために、及び/又は化学線を使用した組成物の硬化を妨げないように、選択されてもよい。一実施形態において、充填剤は透明である。一実施形態において、充填剤は、500μm未満、好ましくは50μm未満、又は更には5μm未満の粒径を有する。
【0052】
本開示の硬化性組成物は、溶媒を含んでもよい。溶媒を使用して、硬化性組成物の粘度を調節し、例えば、硬化性組成物のコーティングを促進することができる。
【0053】
一実施形態において、硬化性組成物は、非晶質フルオロポリマーと、過酸化物硬化系と、任意のカーボンブラックと、所望の添加剤と、溶媒、例えば、水、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン)、エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル)、及びフッ素化不活性溶媒(例えば、商品名「3M FLUOROINERT ELECTRONIC LIQUID」及び「3M NOVEC ENGINEERED FLUID」で3M Co.(St.Paul,MN)から入手可能なものなどのフッ素化溶媒と、を含有する溶液又は分散液である。一実施形態において、溶媒は、参照により組み込まれる欧州特許出願第16203046.4号(2016年12月8日出願)に開示されている部分フッ素化エーテル又はポリエーテルである。一実施形態において、溶媒が使用されるとき、溶媒は、組成物の総重量に対して少なくとも40、50、又は更には60重量%、かつ最高70、80、又は更には90重量%である。
【0054】
一実施形態において、硬化性組成物は、溶媒を実質的に含まない(すなわち、硬化性組成物の総重量を基準にして、5、1、又は更には0.5重量%未満)。
【0055】
一実施形態において、硬化性組成物の非晶質フルオロポリマー含有量は、好ましくはできるだけ高く、例えば、硬化性組成物の総重量を基準にして、少なくとも50、75、80、85、又は更には90重量%から、最高95、98、99、又は更には99.5重量%の濃度である。
【0056】
一実施形態において、本開示の硬化性組成物は、
(a)ヨウ素、臭素及び/又はニトリル硬化部位を有する非晶質フルオロポリマーと、
(b)過酸化物及びII型助剤を含む過酸化物硬化系と、
(c)所望により、カーボンブラックと、
から本質的になり、
硬化性組成物は光開始剤を実質的に含まず、光開始剤はI型光開始剤、II型光開始剤、及び/又は3成分電子移動開始剤系から選択される。
語句「から本質的になる」は、組成物が列挙された要素を含み、組成物に実質的に影響を与えない限り、列挙されていない追加の要素を含んでもよいことを意味する。換言すれば、列挙されていない要素が完全に除去された場合、組成物の加工(例えば、硬化時間、押出速度など)及び最終製品特性(例えば、耐化学性、耐熱性、硬度など)は変わらないままである。
【0057】
一実施形態において、本開示の硬化性組成物は、
(a)ヨウ素、臭素及び/又はニトリル硬化部位を有する非晶質フルオロポリマーと、
(b)過酸化物及びII型助剤を含む過酸化物硬化系と、
(c)所望により、カーボンブラックと、を含み、要素(a)、(b)、及び(c)の総重量が、硬化性組成物の総重量に対して少なくとも95、98、99.0、99.5、又は更には99.9重量%を構成し、硬化性組成物が光開始剤を実質的に含まず、光開始剤がI型光開始剤、II型光開始剤、及び/又は3成分電子移動開始剤系から選択される。
【0058】
非晶質フルオロポリマーと、過酸化物硬化系と、所望のカーボンブラックと、所望の添加剤と、所望の溶媒と、を含む硬化性組成物は、化学線を使用して少なくとも部分的に硬化される。化学線は、紫外波長、可視波長、及び/又は赤外波長の電磁放射線を含む。
【0059】
本明細書で使用するとき、化学線は、紫外波長、可視波長、及び/又は赤外波長の電磁放射線を指す。一実施形態において、硬化性組成物は、少なくとも180、200、210、220、240、260、又は更には280nm、かつ最高700、800、1000、1200、又は更には1500nmの波長に曝露される。一実施形態において、硬化性組成物は、少なくとも180、210、又は更には220nm、かつ最高340、360、380、400、410、450、又は更には500nmの波長に曝露される。一実施形態において、硬化性組成物は、少なくとも400、420、又は更には450nm、かつ最高700、750、又は更には800nmの波長に曝露される。一実施形態において、硬化性組成物は、少なくとも800、850、又は更には900nm、かつ最高1000、1200、又は更には1500nmの波長に曝露される。
【0060】
高圧又は低圧水銀ランプ、冷陰極管、ブラックライト、発光ダイオード、レーザー、及び/又はフラッシュライトなどの任意の光源が、放射線源として用いられてもよい。これらの中でも好ましい線源は、300~400nmの主波長を有する比較的長波長のUV寄与(contribution)を示すものである。UV線は、概して、UV-A、UV-B、及びUV-Cとして、UV-Aが400nm~320nm、UV-Bが320nm~290nm、及びUV-Cが290nm~100nmのように分類される。
【0061】
一実施形態において、化学線の出力は10~1000ワットであり、これは使用される放射線源及び使用される任意のフィルタに依存し得る。一実施形態において、化学線の出力は10~100ワットである。別の実施形態では、化学線の出力は200~600ワットである。
【0062】
一実施形態において、化学線の強度は、少なくとも0.2、0.3、0.5、又は更には1ワット/cm、かつ最高3、5、8、10、又は更には15ワット/cmである。
【0063】
過酸化物で熱硬化するとき、硬化性組成物は、典型的には過酸化物の分解温度を超えて加熱される。一部の実施形態において、この分解温度は過酸化物の沸点よりも高い。理論に束縛されるものではないが、硬化性組成物の表面において過酸化物が蒸発して表面における存在量が減少し得ると仮定される。あるいは、又はそれに加えて、熱加熱は低速になる傾向があることから、ラジカル発生速度が遅い場合、表面で発生した過酸化物ラジカルが周囲環境に存在する酸素と反応して、架橋反応が起こる前にラジカル種の終端を起こす場合がある。
【0064】
意外にも、過酸化物硬化性フルオロポリマー組成物は、I型光開始剤、II型光開始剤、及び/又は3成分電子移動開始剤系の不在下で化学線に曝露されると少なくとも部分的に硬化され得ることが今回発見された。本明細書で使用するとき、部分的に硬化されるとは、フルオロポリマーの架橋度が、未架橋フルオロポリマー(又は化学線に曝露されていないポリマー)の架橋度よりも高い状態を指し、これは、フルオロポリマーの粘度の増加(UVレオメーターを使用した弾性率又はトルク増加など)によって及び/又は下記のゲルテストにおけるゲル化によって観察できる。
【0065】
一実施形態において、過酸化物は、対象となる波長において実質的に吸収しない。例えば、一実施形態において、過酸化物は芳香環を実質的に含まないが、組成物は、紫外線及び/又は可視放射(例えば、100~600nmの波長)を使用して少なくとも部分的に硬化し得る。一実施形態において、化学線源が200~600nmの波長を放射する場合、未希釈の過酸化物は、その波長範囲において1cmの経路長で90、95、又は更には99%超を透過する。
【0066】
意外にも、硬化性組成物は、プレス硬化なしで硬化させることができる。典型的には、過酸化物硬化性ポリマー組成物を硬化させるために、組成物を成形型に入れ、圧力及び熱を使用して、組成物を最初に硬化させる。一実施形態において、硬化性組成物は、化学線への曝露中に周囲圧力条件下で硬化させることができる。
【0067】
一実施形態において、化学線への曝露の間、硬化性組成物は、酸素を実質的に含まない環境(すなわち、500、200、又は更には100ppm未満の酸素を含む)にある。
【0068】
一実施形態において、硬化性組成物は、まず、組成物を部分的に硬化する(例えば、本明細書に開示されるゲル試験方法に従って試験したときに、少なくとも5、10、又は更には15%ゲル化が存在する)化学線に曝露され、次いで、部分的に硬化した組成物が熱処理工程に曝露される。一実施形態において、部分的に硬化した組成物は、後続の熱処理工程において少なくとも60、80、又は更には100℃、かつ最高200、250、又は更には300℃の温度に最大5時間曝露される。熱処理工程では、組成物は、ホットプレート、オーブン、熱風、ホットプレスなどの熱源に曝露され、これにより、過酸化物は熱分解を起こし、ラジカルが発生して、このラジカルがその後フルオロポリマーのバルクを硬化させる。
【0069】
一実施形態において、硬化性組成物は基材上にコーティングされ、次いで化学線に曝露される。例えば、硬化性組成物は、当該技術分野において既知の技術、例えば、ディップコーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、ブレード又はナイフコーティング、バーコーティング、ロールコーティング、及び注入コーティング(すなわち、液体を表面に注ぎ、液体を表面上で流動させること)などを使用して、基材上にコーティングされる。基材としては、金属(炭素鋼、ステンレス鋼、及びアルミニウムなど)、プラスチック(ポリエチレン、又はポリエチレンテレフタレートなど)、又は剥離ライナーが挙げられ、剥離ライナーは、剥離剤(シリコーン、フルオロポリマー、又はポリウレタンなど)でコーティングされたバッキング層を含む一時的支持体である。基材及び硬化性組成物の層を含む複合材料は、次いで、化学線に曝露されて、硬化性組成物が少なくとも部分的に硬化される。一実施形態において、硬化性組成物の薄いコーティングは、基材上に、例えば、少なくとも1、5、又は更には10μm、かつ最大で20、50、100、200、又は更には300μmの乾燥コーティング厚さで配置される。一実施形態において、薄いコーティングは、化学線で実質的に架橋され、これは、下記のゲル試験方法に従って試験したときに、少なくとも65、70、80、又は更には90%ゲル化が存在することを意味する。
【0070】
本開示の例示的な実施形態としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
実施形態1.フルオロエラストマーを少なくとも部分的に硬化する方法であって、当該方法が、
(i)
(a)複数の硬化部位を有する非晶質フルオロポリマーであって、硬化部位が、ヨウ素、臭素、ニトリル、又はこれらの組み合わせを含む、非晶質フルオロポリマーと、
(b)過酸化物及びII型助剤を含む過酸化物硬化系と、
を含む組成物を得ることであって、組成物が光開始剤を実質的に含まず、光開始剤がI型光開始剤、II型光開始剤、及び3成分電子移動開始剤系から選択される、得ることと、
(ii)上記組成物の少なくとも一表面を化学線に曝露することと、
を含む、方法。
【0072】
実施形態2.組成物が、カーボンブラックを更に含む、実施形態1に記載の方法。
【0073】
実施形態3.非晶質フルオロポリマーが、非晶質フルオロポリマーの総重量に対して少なくとも0.1重量%のヨウ素を含む、実施形態1又は2に記載の方法。
【0074】
実施形態4.非晶質フルオロポリマーが、非晶質フルオロポリマーの総重量に対して少なくとも0.1重量%の臭素を含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0075】
実施形態5.非晶質フルオロポリマーが、部分フッ素化されている、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
【0076】
実施形態6.非晶質フルオロポリマーが(i)ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、及びフッ化ビニリデンのモノマー単位を含むコポリマー、(ii)ヘキサフルオロプロピレン及びフッ化ビニリデンのモノマー単位を含むコポリマー、(iii)フッ化ビニリデン及びペルフルオロメチルビニルエーテルのモノマー単位を含むコポリマー、(iv)フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、及びペルフルオロメチルビニルエーテルのモノマー単位を含むコポリマー、(v)フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、及びプロピレンのモノマー単位を含むコポリマー、(vi)エチレン、テトラフルオロエチレン、及びペルフルオロメチルビニルエーテルのモノマー単位を含むコポリマー、並びに(vii)これらのブレンドを含む、コポリマーである、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0077】
実施形態7.非晶質フルオロポリマーが、全フッ素化されている、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0078】
実施形態8.過酸化物が、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン;ジクミルペルオキシド;ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン;ジアルキルペルオキシド;ビス(ジアルキルペルオキシド);2,5-ジメチル-2,5-ジ(第三級ブチルペルオキシ)3-ヘキシン;ジベンゾイルペルオキシド;2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド;第三級ブチルペルベンゾエート;α,α’-ビス(t-ブチルペルオキシ-ジイソプロピルベンゼン);t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、t-アミルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、t-ヘキシルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジ[1,3-ジメチル-3-(t-ブチルペルオキシ)ブチル]カーボネート、カルボノペルオキシ酸、又はO,O’-1,3-プロパンジイルOO,OO’-ビス(1,1-ジメチルエチル)エステルのうちの少なくとも1つである、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0079】
実施形態9.組成物が、非晶質フルオロポリマー100部当たり少なくとも0.1部かつ5部以下の過酸化物を含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0080】
実施形態10.II型助剤が、(i)グリセリンのジアリルエーテル、(ii)トリアリルリン酸、(iii)ジアリルアジペート、(iv)ジアリルメラミン及びトリアリルイソシアヌレート、(v)トリ(メチル)アリルイソシアヌレート、(vi)トリ(メチル)アリルシアヌレート、(vii)ポリトリアリルイソシアヌレート、(viii)キシリレン-ビス(ジアリルイソシアヌレート)、及び(ix)これらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0081】
実施形態11.組成物が、非晶質フルオロポリマー100部当たり0.1~10重量部のII型助剤を含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0082】
実施形態12.組成物が、基材上の層として配置される、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0083】
実施形態13.層が、少なくとも10ミクロン~最大で300ミクロンの乾燥厚さを有する、実施形態12に記載の方法。
【0084】
実施形態14.基材が、炭素鋼、ステンレス鋼、及びアルミニウムのうちの少なくとも1つを含む、実施形態12又は13に記載の方法。
【0085】
実施形態15.硬化性組成物が、充填剤を更に含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0086】
実施形態16.組成物の総重量に対して50~90重量%の溶媒を更に含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0087】
実施形態17.過酸化物又はII型助剤のうちの少なくとも1つが、化学線の波長を吸収する、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0088】
実施形態18.化学線が、紫外線、可視放射線、赤外線、及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0089】
実施形態19.化学線の強度が0.2~10ワット/cmである、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法。
【0090】
実施形態20.化学線への曝露中に、組成物が250℃以下の温度に曝露される、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法。
【0091】
実施形態21.方法が周囲圧力において実施される、実施形態1~20のいずれか1つに記載の方法。
【0092】
実施形態22.組成物が、酸素を実質的に含まない環境中で化学線に曝露される、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法。
【0093】
実施形態23.化学線が水銀電球を利用する、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0094】
実施形態24.化学線が発光ダイオード電球を利用する、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法。
【0095】
実施形態25.化学線が、200~600nmの少なくとも1つの波長を含む、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法。
【0096】
実施形態26.部分的に硬化した組成物を熱エネルギーに接触させることを更に含む、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法。
【0097】
実施形態27.実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法を使用して製造された硬化物品。
【0098】
実施形態28.I型光開始剤、II型光開始剤、及び3成分電子移動開始剤系から選択される光開始剤を実質的に含まない、過酸化物硬化フルオロエラストマーを含むフルオロエラストマーコーティングであって、少なくとも10ミクロン、かつ最大で300ミクロンの厚さを有する、フルオロエラストマーコーティング。
【実施例
【0099】
特に明記しない限り、実施例及び本明細書の他の部分におけるすべての部、百分率、比率等は、重量によるものであり、実施例において使用されたすべての試薬は、例えば、Sigma-Aldrich Company,Saint Louis,Missouri等の、一般の化学物質製造業者から入手した、若しくは入手可能なものであるか、又は従来の方法によって合成できるものである。
【0100】
以下の略語をこのセクションで使用する:g=グラム、μm=マイクロメートル、mil=1000分の1インチ、ft=フィート、m=メートル、wt%=重量パーセント、min=分、h=時間、ppm=百万分率。このセクションで使用される材料の略語、並びに材料の説明を表1に示す。
材料
【表1】
【0101】
配合
【0102】
表2に示したフルオロポリマー100gのバッチを、表2及び表3に示すように、助剤あり又はなし、過酸化物あり又はなし、並びに添加剤ZnO及びN990あり又はなしで、オープンミルで配合した。
【0103】
特性評価方法(Characterization Methods)
【0104】
ゲル試験:
【0105】
ゲル試験は、硬化サンプルの質量(約0.2g)を測定し、次いで、それを複数のワイヤメッシュ(平織り、ステンレス鋼304型、織物構成体、325メッシュ、0.0014インチ(35ミクロン)のワイヤ、0.0017インチ(43ミクロン)の開口部、McNICHOLS CO.(Minneapolis,MN,USA)から品番3888704810として入手可能)の間に配置し、10gのMEK中に24時間浸漬することによって実施した。浸漬後、サンプルを溶媒から取り出し、溶媒をサンプルの表面から乾燥させた。サンプルの質量を測定した。パーセントゲルは、浸漬後の質量の浸漬前の質量に対する比に100%を乗じて計算した。
【0106】
実施例1~4(EX-1~EX-4)及び比較例1~3(CE-1~CE-3)
【0107】
表2に記載の化合物のバッチ30gを、63gのMEK及び7gのMeOHに溶解した。混合物をローラー上で24時間混合した後、30mil(762μm)の名目上の(nominal)コーティング厚さを有するコーティングバーゲートを用いてポリイミドフィルム上にコーティングした。コーティングをフード内に30分間置いた後、60℃のオーブンに10分間入れて溶媒を蒸発させた。この未硬化コーティングを、出力100%、600ワットのH-バルブ用いたUV水銀ランプを装備したUV-ウェブ(商品名「F600」でHeraeus(Hanau,Germany)より入手可能)を使用して、Nパージ下で10ft/分(3.0m/分)で5回通過させて化学線に曝露した。その間のO濃度は30±5ppmと測定され、総UV曝露時間は30秒であった。硬化したコーティングをポリイミドフィルムから剥がした後、上記ゲル試験により試験した。
【表2】
【0108】
比較例4~7(CE-4~CE-7)
【0109】
表3に記載の化合物のバッチ30gを、63gのMEK及び7gのMeOHに溶解した。混合物をローラー上で24時間混合した後、30mil(762μm)の名目上の(nominal)コーティング厚さを有するコーティングバーゲートを用いてポリイミドフィルム上にコーティングした。コーティングをフード内に30分間置いた後、60℃のオーブンに10分間入れて溶媒を蒸発させた。熱硬化サンプル(CE-4~CE-7)を、商品名「FED115-UL E2」でBINDER(Tuttingen,Germany)から入手可能なバッチオーブン内で、表3に示した雰囲気下、190℃で2分間硬化させた。硬化したコーティングをポリイミドフィルムから剥がした後、上記ゲル試験により試験した。
【表3】
【0110】
本発明の範囲及び趣旨を逸脱することのない、本発明の予見可能な改変及び変更が、当業者には明らかであろう。本発明は、例示目的のために本出願に記載されている実施形態に限定されるものではない。本明細書の記述と本明細書に述べられ参照により組み込まれる任意の文書中の開示との間に何らかの不一致及び矛盾が存在する場合、本明細書の記述が優先される。