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特許7361058アルミニウム-スカンジウム合金の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】アルミニウム-スカンジウム合金の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25C 3/36 20060101AFI20231005BHJP
   C22C 1/00 20230101ALI20231005BHJP
   C22C 21/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C25C3/36
C22C1/00 K
C22C21/00 N
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020573087
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 US2019022575
(87)【国際公開番号】W WO2019178537
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-02-07
(31)【優先権主張番号】62/643,301
(32)【優先日】2018-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521069467
【氏名又は名称】エフイーエー マテリアルズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パウエル、アダム・クレイトン
(72)【発明者】
【氏名】アーラム、マシュー・アール
(72)【発明者】
【氏名】バリガ、サルバドール・エー
(72)【発明者】
【氏名】サルヴッチ、リチャード
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-140446(JP,A)
【文献】国際公開第2016/171589(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/207834(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0087129(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107502923(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104694975(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 1/00,21/00
C25C 3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム-スカンジウム(Al-Sc)合金の製造方法であって、
(a)ScFと、AlFと、LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1を含む電解質浴を用意するステップと、
(b)前記電解質浴と接触するカソードであって、アルミニウムを含む該カソードを用意するステップと、
(c)前記電解質浴と接触するアノードを用意するステップと、
(d)前記電解質浴に第1の量のScを添加するステップであって、前記第1の量のSc バッチとして供給される、該ステップと、
(e)前記(d)のステップの後に、アルミニウムイオン及びスカンジウムイオンをカソードで反応させてAl-Sc合金を製造する金属熱反応ステップと、
(f)前記(e)のステップの後に、前記カソードに電流を印加し、それにより、アルミニウムイオン及びスカンジウムイオンを前記カソードで反応させてAl-Sc合金を製造する電解反応ステップと、を含み、
前記スカンジウムイオンを前記カソードで反応させた後、
前記電解質浴は、ScF、AlF、LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つを含み、
前記カソードは、Al-Sc合金を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記Al-Sc合金は、1~12重量%のスカンジウムを含有することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記Al-Sc合金は、3~12重量%のスカンジウムを含有することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、
前記カソードにおける前記アルミニウム及び前記Al-Sc合金のスカンジウムの少なくとも一部が液体であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、
前記カソードに印加される前記電流は、0.2~1.0A/cmの電流密度を有することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、
前記カソードに印加する前記電流を制御することによって、前記スカンジウムイオンと前記アルミニウムイオンとのモル比を、0:1~2:1の範囲の予め定められたモル比に維持するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、
前記カソードに印加する前記電流を制御するか、または、前記電解質浴に第2の量のSc 添加することによって、酸素イオンとフッ化物イオンとのモル比を、1:20~1:250の範囲の予め定められたモル比に維持するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、
前記電解質浴に第2の量のLiFを添加することによって、リチウムイオンと前記スカンジウムイオン及び前記アルミニウムイオンとのモル比を、0.5:1~4:1の範囲の予め定められたモル比に維持するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、
前記電解質浴に第2の量のNaFを添加することによって、ナトリウムイオンと前記スカンジウムイオン及び前記アルミニウムイオンとのモル比を、0.5:1~6:1の範囲の予め定められたモル比に維持するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、
前記電解質浴に第2の量のFを添加することによって、カリウムイオンと前記スカンジウムイオン及び前記アルミニウムイオンとのモル比を、0.5:1~6:1の範囲の予め定められたモル比に維持するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、
前記Al-Sc合金を抽出する前及び/または後に、前記電解質浴に、第2の量の
(i)Sc
(ii)AlF 及び/または
(iii)LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1
添加するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、
前記第2の量の(i)Sc 、(ii)AlF 及び/または(iii)LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つは、前記電解質浴が、17~38重量%のScF、15~28重量%のAlF、43~55重量%のNaF、及び1~5重量%のScを含むように添加されることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法であって、
前記第2の量の(i)Sc 、(ii)AlF 及び/または(iii)LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つは、前記電解質浴が、22~45重量%のScF、18~33重量%のAlF、31~43重量%のLiF、及び1~6重量%のScを含むように添加されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法であって、
前記第2の量の(i)Sc 、(ii)AlF 及び/または(iii)LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つは、前記電解質浴が、14~32重量%のScF、12~24重量%のAlF、51~63重量%のKF、及び1~5重量%のScを含むように添加されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1のいずれか記載の方法であって、
前記Al-Sc合金を抽出する前及び/または後に、前記電解質浴に、第2の量の
(i)Sc
(ii)ScF
(iii)AlF 及び/または
(iv)LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1
添加するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、
前記第2の量の(i)Sc(ii)ScF(iii)AlF 及び/または(iv)LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つは、前記電解質浴が、17~38重量%のScF、15~28重量%のAlF、43~55重量%のNaF、及び1~5重量%のScを含むように添加されることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法であって、
前記第2の量の(i)Sc(ii)ScF(iii)AlF 及び/または(iv)LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つは、前記電解質浴が、22~45重量%のScF、18~33重量%のAlF、31~43重量%のLiF、及び1~6重量%のScを含むように添加されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項15に記載の方法であって、
前記第2の量の(i)Sc(ii)ScF(iii)AlF 及び/または(iv)LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つは、前記電解質浴が、14~32重量%のScF、12~24重量%のAlF、51~63重量%のKF、及び1~5重量%のScを含むように添加されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年3月15日出願の「アルミニウム-スカンジウム合金の製造方法」なる標題の米国特許仮出願第62/643、301号に基づく優先権を主張するものである。上記出願の開示内容の全体は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
本明細書に引用されたすべての刊行物、特許出願、特許、及び他の文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書に引用された特許文献及び科学文献は、当業者に利用可能な知識を確立する。本明細書で引用された発行済みの特許、出願、及び他の刊行物は、それぞれが参照により組み込まれることを具体的かつ個別に示されると同じ程度で、参照により本明細書に組み込まれる。矛盾が存在する場合、本開示が優先する。
【0003】
(技術分野)
本発明の実施形態は、アルミニウム-スカンジウム合金(Al-Sc)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0004】
スカンジウム(Sc)は、合金添加物1モル当たりの、アルミニウム合金のための好ましい強化剤の1つである。スカンジウム-アルミニウム(AlSc)コヒーレント析出物は非常に微細であり、高温で安定的であるので、これらの合金は、例えば3D印刷などにおける溶接または焼結に適している。例えば、スカルマロイ(Scalmalloy)(登録商標)は、APWorks社製のスカンジウム-マグネシウム-アルミニウム合金であり、代表的な粉末合金であるAlSi10Mg(AlSi10Mg EOSデータシート;参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)の降伏応力の2倍である約525MPaの降伏応力を有する(MatWeb上のRSPTechnology RSA-501;参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。1.94×10/sでの焼結スカルマロイ(登録商標)粉末の比強度(σy/ρ)は、焼結Ti-6-4粉末の比強度と比べて20%高くあり得る(Global Titanium Inc社のTi-6-4データシート;参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。スカルマロイ(登録商標)の比剛性(E/ρ)及び比曲げ剛性(E1/3/ρ)は、チタン合金と比べてそれぞれ3%及び40%高くあり得る。
【0005】
スカンジウム金属は、約3300ドル/kg(2016年の市場価格)と高価であるが、多くの合金は、スカンジウムを約0.2重量%(wt%)添加するだけで、恩恵を受けることができる。スカンジウムはアルミニウム中への溶解度が低いので、2重量%スカンジウムを含有するAl-Sc合金(Al-2wt%Sc)を、約100~115ドル/kgの市場価格で市販の母合金組成として提供することができる。スカンジウムは、地殻中に鉛よりも豊富に含まれているが、地殻中に分散して存在しており、また、単離が困難であるため、酸化スカンジウム(Sc)の世界生産量は、年間約10トンにすぎない。Scは、現在の市場で広く入手可能なスカンジウムの最も安価な形態の1つである。例えば、Scの価格は約1200ドル/kg(2016年の市場価格)であり、フッ化スカンジウム(ScF)の価格は約2947ドル/kg(2016年の市場価格)である。とはいえ、複数の新しい鉱山が建設中または計画段階にあり、2027年までに最大で450トン/年(TPY)のScの生産が予測されている。このような予測されるSc生産の増加は、スカンジウムの価格を低下させ、最大で15万トン/年(TPY)のAl-2wt%Sc合金の生産を可能にし得る。したがって、アルミニウム-スカンジウム(Al-Sc)合金を製造するための改良された方法及び装置が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、アルミニウム-スカンジウム(Al-Sc)合金の製造方法が提供される。いくつかの実施形態では、本発明によるアルミニウム-スカンジウム(Al-Sc)合金の製造方法は、(a)ScF及びAlFのうちの少なくとも1つの第1の部分と、LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つの第1の部分とを含む電解質浴を用意するステップと、(b)前記電解質浴と電気的に接触するカソードであって、アルミニウムを含む該カソードを用意するステップと、(c)前記電解質浴と電気的に接触するアノードを用意するステップと、(d)前記電解質浴にScの第1の部分を添加するステップと、(e)アルミニウムイオンを前記カソードと反応させるステップと、(f)前記カソードに電流を印加し、それにより、スカンジウムイオンを前記カソードと反応させてAl-Sc合金を製造するステップと、を含み、前記スカンジウムイオンを前記カソードと反応させた後、前記電解質浴は、ScF、AlF、LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つを含み、前記カソードは、アルミニウム及びスカンジウムを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、前記Al-Sc合金は、5~12重量%のスカンジウムを含有する。
【0008】
いくつかの実施形態では、前記Al-Sc合金は、8~12重量%のスカンジウムを含有する。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記カソードにおける前記アルミニウム及び前記スカンジウムの少なくとも一部が液体である。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記カソードに印加される前記電流は、0.2~1.0A/cmの電流密度を有する。
【0011】
いくつかの実施形態では、本方法は、前記カソードに印加する前記電流を制御することによって、前記スカンジウムイオンと前記アルミニウムイオンとのモル比を、0:1~2:1の範囲の予め定められたモル比に維持するステップをさらに含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、本方法は、前記カソードに印加する前記電流を制御するか、または、前記電解質浴にScの第2の部分を添加することによって、酸素イオンとフッ化物イオンとのモル比を、1:20~1:250の範囲の予め定められたモル比に維持するステップをさらに含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、本方法は、前記電解質浴にLiFの第2の部分を添加することによって、リチウムイオンと前記スカンジウムイオン及び前記アルミニウムイオンとのモル比を、0.5:1~4:1の範囲の予め定められたモル比に維持するステップをさらに含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、本方法は、前記電解質浴にNaFの第2の部分を添加することによって、ナトリウムイオンと前記スカンジウムイオン及び前記アルミニウムイオンとのモル比を、0.5:1~6:1の範囲の予め定められたモル比に維持するステップをさらに含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、本方法は、前記電解質浴にKFの第2の部分を添加することによって、カリウムイオンと前記スカンジウムイオン及び前記アルミニウムイオンとのモル比を、0.5:1~6:1の範囲の予め定められたモル比に維持するステップをさらに含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、本方法は、前記電解質浴に、Sc及びAlFのうちの少なくとも1つの第2の部分、並びに、LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つの第2の部分を添加するステップをさらに含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、Sc及びAlFのうちの少なくとも1つの前記第2の部分、並びに、LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つの前記第2の部分は、前記電解質浴が、17~38重量%のScF、15~28重量%のAlF、43~55重量%のNaF、及び1~5重量%のScを含むように添加される。
【0018】
いくつかの実施形態では、Sc及びAlFのうちの少なくとも1つの前記第2の部分、並びに、LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つの前記第2の部分は、前記電解質浴が、22~45重量%のScF、18~33重量%のAlF、31~43重量%のLiF、及び1~6重量%のScを含むように添加される。
【0019】
いくつかの実施形態では、Sc及びAlFのうちの少なくとも1つの前記第2の部分、並びに、LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つの前記第2の部分は、前記電解質浴が、14~32重量%のScF、12~24重量%のAlF、51~63重量%のKF、及び1~5重量%のScを含むように添加される。
【0020】
いくつかの実施形態では、本方法は、前記電解質浴に、Sc、ScF、及びAlFのうちの少なくとも1つの第2の部分、並びに、LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つの第2の部分を添加するステップをさらに含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、Sc、ScF、及びAlFのうちの少なくとも1つの前記第2の部分、並びに、LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つの前記第2の部分は、前記電解質浴が、17~38重量%のScF、15~28重量%のAlF、43~55重量%のNaF、及び1~5重量%のScを含むように添加される。
【0022】
いくつかの実施形態では、Sc、ScF、及びAlFのうちの少なくとも1つの前記第2の部分、並びに、LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つの前記第2の部分は、前記電解質浴が、22~45重量%のScF、18~33重量%のAlF、31~43重量%のLiF、及び1~6重量%のScを含むように添加される。
【0023】
いくつかの実施形態では、Sc、ScF、及びAlFのうちの少なくとも1つの前記第2の部分、並びに、LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つの前記第2の部分は、前記電解質浴が、14~32重量%のScF、12~24重量%のAlF、51~63重量%のKF、及び1~5重量%のScを含むように添加される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
以下の図は、単に例示的なものであり、限定を意図するものではない。
【0025】
図1図1は、本開示の実施形態によるアルミニウム-スカンジウム相図を示す。
図2図2は、本開示の実施形態によるアルミニウム-スカンジウム合金を製造するための還元槽を示す。
図3図3は、本開示の実施形態によるアルミニウム-スカンジウム合金を製造するための別の還元槽を示す。
図4図4は、本開示の実施形態によるアルミニウム-スカンジウム合金を製造するための平衡型還元槽を示す。
図5A図5(A)は、本開示の実施形態によるアルミニウム-スカンジウム合金を製造するための還元槽の設計を示す。
図5B図5)は、本開示の実施形態によるアルミニウム-スカンジウム合金を製造するための別の還元槽の設計を示す。
図6図6は、本開示の実施形態による例示的な鋳造物中のSc濃度(重量%)のばらつきを示す。
図7図7は、本開示の実施形態による例示的な鋳造物中のSc濃度(重量%)を示す。
図8A図8Aは、本開示の実施形態によるAl-Sc組成物を検出する分析方法を示す。
図8B図8Bは、本開示の実施形態によるAl-Sc組成物を検出する分析方法を示す。
図9図9は、本開示の実施形態による還元槽内に様々な電流を印加することによって製造されたAl-Sc合金の試料を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
アルミニウム-スカンジウム(Al-Sc)合金の製造に有用な方法及び装置が本明細書に記載される。
【0027】
Al-Sc合金の製造は、フッ化スカンジウム(ScF)を使用して行うことができる。例えば、ScFをAlと反応させることにより、AlF及びAl-Sc合金を製造することができる(「Trans. Met. Soc. AIME 218:608, 1960; Russ. J. Phys. Chem. A. 84(12):2011-2016, 2010」;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。しかし、場合によっては、ScFは、酸化スカンジウム(Sc)よりも高価であり得(例えば、スカンジウムベースで、または単位スカンジウム当たりで)、この場合、Al-Sc合金の製造コストが増加する。
【0028】
また、Al-Sc合金の製造は、アルミニウム粉末を使用して行うことができる。例えば、アルミニウム粉末をScと混合させ、ペレットにプレスする。そして、このペレットを、例えば、液体アルミニウム中に浸漬することにより、Al-Sc合金を製造することができる。このようなアルミニウム粉末プロセスを用いたスカンジウム還元収率は、例えば、ペレットの形成条件に依存してばらつきがある(米国特許第6、045、631号;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0029】
また、Al-Sc合金の製造は、スカンジウム金属をアルミニウムに溶解させることによって行うことができる。しかし、この場合は、時間がかかり、また、スカンジウムの融点が比較的高いことに起因して収率にばらつきが生じて、溶解界面に、溶解を妨げるバリア層として作用する一連の高融点金属間化合物が形成される恐れがある。図1は、これらの点を示すAl-Sc相図である。
【0030】
また、Al-Sc合金の製造は、電解還元によって行うことができる。例えば、電気分解を行うことにより、ナトリウム氷晶石またはカリウム氷晶石(AlF-NaF、またはAlF-KF)に溶解したAl及びScの混合物を還元することができる。このような電気分解により、約0.5~1.5重量%(wt%)のScを含有するAl-Sc合金を製造することができる(中国特許第1、184、356号、国際公開第2006/079353号、「Chunyang Guan et al., 3rd Int'l Symp. High-Temp. Metall. Processing 2012」、「Qiaochu Liu et al., Light Metals 2012」;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。また、Alカソードを使用してCaCl中のScを電気分解することによって、約2重量%のScを含有するAl-Sc合金を製造することができるが、この場合、製造されるAl-Sc合金は、最大で約0.65重量%のカルシウムを含有することとなる(「J. Alloys Compounds 474:124-130, 2009」;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。しかし、カルシウムを含有するアルミニウム合金を製造することは、あまり好ましくない。また、ScF-NaFに溶解したScを電気分解することによって、固体のSc金属顆粒を製造することができる(米国特許第3、111、467号;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。しかし、Sc金属顆粒は、固体塩から分離する必要があり、この追加の工程は、商業化目的のためにはあまり望ましくない。
【0031】
また、Al-Sc合金の製造は、カルシウム蒸気または合金を使用して、ScをAl合金に還元することによって行うことができる(「Adv. Proc. Metals Mater. 4:155, 2006; Min. Proc. Extract. Metall. 117(2):96, 2008」;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。これにより製造された合金は、一般的に、約1%以上のカルシウムを含有することとなる。しかし、場合によっては、カルシウムを含有するアルミニウム合金を製造することは、あまり望ましくない。
【0032】
また、Al-Sc合金の製造は、マグネシウム(Mg)を還元剤として使用して行うことができる(米国特許第5、037、608号;欧州特許第2、298、944号;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。例えば、Scを、15~17重量%のMgを含有するAl合金と反応させることにより、最大で2.5重量%のScを含有するアルミニウム-マグネシウム-スカンジウム合金を製造することができる。しかし、この場合、Mg:Sc比があまり望ましくないものとなり、より望ましいMg:Sc比を達成するためには、Mg成分を除去する必要がある(「Russian Metallurgy 2015(7):516, 2015」;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0033】
また、Al-Sc合金の製造は、NHHFを使用して、Scをその場でフッ化物に変換し、Alと反応させることによって行うことができる。しかし、この方法は、健康被害をもたらす恐れがある(中国特許第100、410、400号;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。また、Al-Sc合金の製造は、ScFまたはScを、AlF-NaF-KClなどの塩化物-フッ化物塩に溶解させることによって行うことができる。しかし、この方法は、酸化物からの変換収率が低くなる恐れがある(国際公開第2003/042418号;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。また、Al-Sc合金の製造は、機械的合金化法を用いて行うことができる。例えば、まず、Alを使用してScを還元し、次いで、ボールミル粉砕し、その後、再溶解させることによって、Al-Sc合金を製造することができる。しかし、この機械的合金化法は、比較的時間がかかり、また、高価であり得る(「Mater. Trans. 44(4):1049, 2003」;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0034】
上記の方法は、大まかに、次の4つのカテゴリに分類することができる。(1)ScFの使用(あるいは、その場で、Scから生成したScFの使用)、(2)合金中に存在するMgまたはCaによる還元、(3)圧縮により形成した金属-Sc粉末ペレットの使用、(4)Al-Scの電気分解による、少量のScを含有するAl合金の製造。最後のオプションは、安価なScを使用して高収率を得ることができるが、小規模製造では、これは大量のアルミニウム合金を製造するための比較的高価な方法となる。
【0035】
本発明によれば、アルミニウム-スカンジウム(Al-Sc)合金の製造方法が提供される。いくつかの実施形態では、本発明によるアルミニウム-スカンジウム(Al-Sc)合金の製造方法は、(a)ScF及びAlFのうちの少なくとも1つの第1の部分と、LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つの第1の部分とを含む電解質浴を用意するステップと、(b)電解質浴と電気的に接触するカソードであって、アルミニウムを含む該カソードを用意するステップと、(c)電解質浴と電気的に接触するアノードを用意するステップと、(d)電解質浴にScの第1の部分を添加するステップと、(e)アルミニウムイオンをカソードと反応させるステップと、(f)カソードに電流を印加し、それにより、スカンジウムイオンをカソードと反応させてAl-Sc合金を製造するステップと、を含み、スカンジウムイオンをカソードと反応させた後、電解質浴は、ScF、AlF、LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つを含み、カソードは、アルミニウム及びスカンジウムを含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、Al-Sc合金は、5~12重量%のスカンジウムを含有する。
【0037】
いくつかの実施形態では、Al-Sc合金は、8~12重量%のスカンジウムを含有する。
【0038】
いくつかの実施形態では、カソードにおけるアルミニウム及びスカンジウムの少なくとも一部が液体である。
【0039】
いくつかの実施形態では、カソードに印加される電流は、0.2~1.0A/cmの電流密度を有する。
【0040】
いくつかの実施形態では、本方法は、カソードに印加する電流を制御することによって、スカンジウムイオンとアルミニウムイオンとのモル比を、0:1~2:1の範囲の予め定められたモル比に維持するステップをさらに含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、本方法は、カソードに印加する電流を制御するか、または、電解質浴にScの第2の部分を添加することによって、酸素イオンとフッ化物イオンとのモル比を、1:20~1:250の範囲の予め定められたモル比に維持するステップをさらに含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、本方法は、電解質浴にLiFの第2の部分を添加することによって、リチウムイオンとスカンジウムイオン及びアルミニウムイオンとのモル比を、0.5:1~4:1の範囲の予め定められたモル比に維持するステップをさらに含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、本方法は、電解質浴にNaFの第2の部分を添加することによって、ナトリウムイオンとスカンジウムイオン及びアルミニウムイオンとのモル比を、0.5:1~6:1の範囲の予め定められたモル比に維持するステップをさらに含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、本方法は、電解質浴にKFの第2の部分を添加することによって、カリウムイオンとスカンジウムイオン及びアルミニウムイオンとのモル比を、0.5:1~6:1の範囲の予め定められたモル比に維持するステップをさらに含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、本方法は、電解質浴に、Sc及びAlFのうちの少なくとも1つの第2の部分、並びに、LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つの第2の部分を添加するステップをさらに含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、Sc及びAlFのうちの少なくとも1つの第2の部分、並びに、LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つの第2の部分は、電解質浴が、17~38重量%のScF、15~28重量%のAlF、43~55重量%のNaF、及び1~5重量%のScを含むように添加される。
【0047】
いくつかの実施形態では、Sc及びAlFのうちの少なくとも1つの第2の部分、並びに、LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つの第2の部分は、電解質浴が、22~45重量%のScF、18~33重量%のAlF、31~43重量%のLiF、及び1~6重量%のScを含むように添加される。
【0048】
いくつかの実施形態では、Sc及びAlFのうちの少なくとも1つの第2の部分、並びに、LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つの第2の部分は、電解質浴が、14~32重量%のScF、12~24重量%のAlF、51~63重量%のKF、及び1~5重量%のScを含むように添加される。
【0049】
いくつかの実施形態では、本方法は、電解質浴に、Sc、ScF、及びAlFのうちの少なくとも1つの第2の部分、並びに、LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つの第2の部分を添加するステップをさらに含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、Sc、ScF、及びAlFのうちの少なくとも1つの第2の部分、並びに、LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つの第2の部分は、電解質浴が、17~38重量%のScF、15~28重量%のAlF、43~55重量%のNaF、及び1~5重量%のScを含むように添加される。
【0051】
いくつかの実施形態では、Sc、ScF、及びAlFのうちの少なくとも1つの第2の部分、並びに、LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つの第2の部分は、電解質浴が、22~45重量%のScF、18~33重量%のAlF、31~43重量%のLiF、及び1~6重量%のScを含むように添加される。
【0052】
いくつかの実施形態では、Sc、ScF、及びAlFのうちの少なくとも1つの第2の部分、並びに、LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つの第2の部分は、電解質浴が、14~32重量%のScF、12~24重量%のAlF、51~63重量%のKF、及び1~5重量%のScを含むように添加される。
【0053】
本開示では、Al-Sc合金の製造は、還元プロセスを用いて行うことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるAl-Sc合金を製造する還元プロセスは、ScF及び/またはAlFと、LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つとを含み、かつ、カソード及びアノードと電気的に接触している電解質浴中に溶解させたScの電解還元を含む。いくつかの実施形態では、電解質浴中に溶解したScの電解還元が進行すると、電解質浴は、ScF及び/またはAlFと、LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つとを含む。いくつかの実施形態では、電解質浴は、ScF及び/またはAlFと、LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つと、任意選択で、MgF、CaF、及びSrFのうちの少なくとも1つとを含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるカソードは、Alを含む。また、カソードは、Sc、TiB、C(例えばグラファイト)などの追加の金属または導電体、またはそれらの任意の組み合わせをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、還元プロセスの開始時のカソードは、Al、Sc、TiB、C(例えばグラファイト)などの任意の導電体、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、還元プロセスの開始時のカソードは、Al及び/またはScをほとんどまたは全く含んでいなくてもよいが、還元プロセスが進行するにしたがって、Al及び/またはScイオンがカソード上に還元され、これにより、Al及びScを含むカソード(例えば、Al-Sc合金)を形成することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるカソードは、液体状態、固体状態、またはその中間の任意の状態を取り得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるアノードは、ニッケルフェライトなどの任意の導電体、アルミニウム-銅ブロンズなどの高融点アルミニウム金属間化合物、酸化ジルコニウム、炭素(例えばグラファイト)などの任意の導電体、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるアノードは、液体状態または固体状態、またはその中間の任意の状態を取り得る。
【0055】
いくつかの実施形態では、ScF及び/またはAlFと、LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つとを含む電解質浴は、様々な範囲の組成を有し得る。いくつかの実施形態では、溶解したScを含む例示的なScF-AlF-NaF電解質浴のおおよその浴組成は、約17~38重量%のScF、約15~28重量%のAlF、約43~55重量%のNaF、及び約1~5重量%のScであり得る。いくつかの実施形態では、溶解したScを含む例示的なScF-AlF-NaF電解質浴のおおよその浴組成は、約26.8重量%のScF、約24.6重量%のAlF、約46.6重量%のNaF、及び約2重量%のScであり得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、溶解したScを含む例示的なScF-AlF-LiF電解質浴のおおよその浴組成は、約22~45重量%のScF、約18~33重量%のAlF、約31~43重量%のLiF、及び約1~6重量%のScであり得る。いくつかの実施形態では、溶解したScを含む例示的なScF-AlF-LiF電解質浴のおおよその浴組成は、約31.8重量%のScF、約29.3重量%のAlF、約36.3重量%のLiF、及び約2.6重量%のScであり得る。
【0057】
いくつかの実施形態では、溶解したScを含む例示的なScF-AlF-KF電解質浴のおおよその浴組成は、約14~32重量%のScF、約12~24重量%のAlF、約51~63重量%のKF、及び約1~5重量%のScであり得る。いくつかの実施形態では、溶解したScを有する例示的なScF-AlF-KF電解質浴のおおよその浴組成は、約21.9重量%のScF、約20.2重量%のAlF、約56.0重量%のKF、及び約1.8重量%のScであり得る。溶解したScを含むScF-AlF-NaF電解質浴、ScF-AlF-LiF電解質浴、またはScF-AlF-KF電解質浴の使用は、例示目的のために選択されたものであり、他の実施形態及び用途では、電解質浴は、ScF及び/またはAlFと、溶解したScを含む、NaF、LiF、及びKFの任意の組み合わせとを、本明細書に記載された組成範囲と同様または同等の様々な範囲の組成範囲で含むことができることを理解されたい。
【0058】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される金属熱反応プロセスと電解反応プロセスとを組み合わせた組み合わせ型還元プロセスは、Scを高収率で直接使用することができ、これにより、Al-Sc合金を製造するための原材料コストを最小限に抑えることができる。例えば、Scは、約80~100%という高収率で使用することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される還元プロセスは、Al-Sc合金製造のためにアルミニウムのすべてまたは大部分の還元を伴うプロセスと比較して、より低い電流で、かつ、より少ない及び/またはより小さい還元槽で実施することができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される還元プロセスは、上述の他のAl-Sc合金製造プロセスと比較して、より少ない工程数で実施することができる。例えば、本明細書に記載される還元プロセスは、Al-Sc合金を製造する還元工程と、製造されたAl-Sc合金を鋳型内に鋳造する工程との2つの工程を含み得る。比較として、Ca及び/またはMgを使用してAl-Sc合金を製造する方法では、Ca及び/またはMg成分を含有するAl-Sc合金が製造される。例えば、Ca及び/またはMgを使用してAl-Sc合金を製造する方法では、製造されたAl-Sc合金からCa及び/またはMg成分を除去する余分な工程が必要となる。別の比較として、いくつかのAl-Sc合金製造方法では、高温でScをHFなどの酸と反応させてScFを生成し、次いで、生成したScFをAlと反応させてAl-Sc合金を製造するフッ素化工程を含む。例えば、このようなAl-Sc合金製造方法では、余分なフッ素化工程が必要となる。
【0060】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組み合わせ型還元プロセスは、約0~12重量%、約1~12重量%、約2~12重量%、約3~12重量%、約4~12重量%、約5~12重量%、約6~12重量%、約8~12重量%、約0~10重量%、約1~10重量%、約2~10重量%、約3~10重量%、約4~10重量%、約5~10重量%、約6~10重量%、約0~8重量%、約1~8重量%、約2~8重量%、約3~8重量%、約4~8重量%、または、好ましくは約5~8重量%のScを含有するAl-Sc合金を製造することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組み合わせ型還元プロセスは、下記の3つの要因の組み合わせに基づいて、約12重量%という高いSc含有量を有するAl-Sc合金を製造することができる。いくつかの実施形態では、第1の要因は、電解質浴中のScFの濃度であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、電解質浴中のScFの濃度が高いことが、高いSc含有量を有するAl-Sc合金の製造を可能にする1つの要因であり得る。いくつかの実施形態では、第2の要因は、温度であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、高温が、高いSc含有量を有するAl-Sc合金の製造を可能にする1つの要因であり得る。参照として、図1は、約1重量%のScでは、液相温度が約700°Cであり、約2重量%のScでは、液相温度が約800°Cであり、約12重量%のScでは、液相温度が約1000°Cであり得ることを示す、アルミニウム-スカンジウム相図である。いくつかの実施形態では、第3の要因は、電流密度であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、電解質浴中の電流密度が高いことが、高いSc含有量を有するAl-Sc合金の製造を可能にする1つの要因であり得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される電解質浴中のAlFは、1以上の目的を果たすことができる。いくつかの実施形態では、電解質浴中のAlFは、浴密度のバランスを取るか、または浴密度を維持することができる。例えば、AlFをより多く有するAlF-ScF電解質浴は、ScFをより多く有する電解質浴と比べて浴密度を低下させることができる。いくつかの実施形態では、電解質浴中のAlFは、電解還元のためのAlイオンを提供することによって、電解質浴中のScFとAlカソードとの間の金属熱反応のバランスを取るのを助けることができる。いくつかの実施形態では、任意選択で、MgF、CaF、及びSrFのうちの少なくとも1つを本明細書に記載される電解質浴に添加することにより、例えば、浴密度のバランスを取るか、または浴密度を維持することができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、浴密度に応じて、Al及びScを含むアノードを電解質浴中に浸漬するか、または、電解質浴上に浮かせることができる。例えば、浴密度が、カソード(例えば、液体Al-Sc合金を含むカソード)の密度よりも高い場合は、カソードは電解質浴上に浮かせることができる。別の例では、カソード(例えば、液体Al-Sc合金を含むカソード)密度が、浴密度よりも高い場合には、カソードは電解質浴中に浸漬することができる。いくつかの実施形態では、カソードを電解質浴中に浸漬させた状態に維持することが好ましくあり得る。他の実施形態では、カソードを電解質浴上に浮かせた状態に維持することが好ましくあり得る。
【0063】
図2は、本開示の実施形態によるアルミニウム-スカンジウム(Al-Sc)合金を製造するための還元槽200を示す。いくつかの実施形態では、還元槽200は、ScFと、LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つとを含む電解質浴210からプロセスを開始することによって、Al-Sc合金を製造することができる。いくつかの実施形態では、プロセス開始時には、図2のカソード220は、液体アルミニウムを含み、図2のアノード230は、カーボングラファイトを含む。いくつかの実施形態では、図2に示すように、Sc還元槽200に添加し、金属熱還元下で還元して、Sc3+をAlカソード220に堆積させることにより、最大で約12重量%のSc含有量を有するAl-Sc合金を製造することができる。いくつかの実施形態では、金属熱還元を続けるにしたがって、電解質浴210中の総Sc含有量は、例えば、電解質浴中に最初から存在するScFと、カソードのAl金属との間の金属熱反応に起因して、経時的に減少する。いくつかの実施形態では、電解質浴210中のO2-はアノード230と反応し、アノード230が炭素を含む場合、この反応によってCOガスが生成される。
【0064】
いくつかの実施形態では、年間約500トンのAl-Sc合金を製造することができるAl-Sc合金製造プラントでは、年間約10トンのスカンジウムを電気分解することができ、このためには、例えば、すべての還元槽で約3000アンペアの総電流が必要となる。電流効率及び電解利用率がより低い同様のプラントでは、すべての還元槽で約7000アンペアの総電流が必要となる。
【0065】
図3は、本開示の実施形態によるアルミニウム-スカンジウム(Al-Sc)合金を製造するための別の還元槽300を示す。いくつかの実施形態では、還元槽300は、AlFと、LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つとを含む電解質浴310からプロセスを開始することによって、Al-Sc合金を製造することができる。いくつかの実施形態では、プロセス開始時には、図3のカソード320は、AlまたはScをほとんどまたは全く含まない。いくつかの実施形態では、図3のアノード330は、カーボングラファイトを含む。いくつかの実施形態では、Sc還元槽300に添加し、電気分解によってScと共にAlの還元を続けると、電解質浴310中の総Sc含有量は経時的増加する。例えば、供給酸化物はScであり、電気分解によって電解質浴中のAlイオンを消費するので、電気分解はScの供給速度よりも遅い速度でScを消費する。いくつかの実施形態では、電解質浴中のO2-はアノード330と反応し、アノード330が炭素を含む場合、この反応によってCOガスが生成される。いくつかの実施形態では、還元槽300における還元プロセスは、標準的なアルミニウム製造セルを使用して、ほとんどまたは全く変更を加えることなく実施することができる。
【0066】
図4は、本開示の実施形態によるアルミニウム-スカンジウム合金を製造するための平衡型還元槽400を示す。いくつかの実施形態では、図4還元槽400に示すように、図2及び図3に示した電解採取プロセスを組み合わせてバランスを取り、より好ましい態様でAl-Sc合金を製造することができる。いくつかの実施形態では、アルミニウムを含むカソードに純Scを電解採取するプロセスと比較した場合、還元槽400に示すような、組み合わされ平衡化されたプロセスは、実質的に同一のAl及びSc含有量(または、実質的に同一のAlとScとの比率)を有する実質的に同一のAl-Sc合金を製造するために、より多くの電流及びより多くの製造セルを必要とする。
【0067】
いくつかの実施形態では、還元槽400は、ScF及び/またはAlFと、LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つとを含む電解質浴410から開始することによって、Al-Sc合金を製造することができる。いくつかの実施形態では、還元槽400は、最大で約12重量%のScを含有するAl-Sc合金を製造することができる。いくつかの実施形態では、図4のカソード420は、液体状態のアルミニウムを含み、図4のアノード430は、カーボングラファイトを含む。いくつかの実施形態では、図4に示すように、Sc還元槽400に添加し、Scを電解還元することにより、Al及びScを共還元することができ、これにより、約99重量%のScを含有するAl-Sc合金を、約3重量%のScを有するAl-Sc合金を製造し、その後、Sc含有量がより少ない希釈されたAl-Sc合金にすることができる。例えば、この共還元アプローチは、Alカソード420を使用して、Al-Sc合金の製造時に、その場でAl-Sc合金を2重量%まで希釈してもよいし、または、還元後に別のAl希釈法を用いてもよい。いくつかの実施形態では、Alを添加せずに、アルミニウム及びScからAl-Sc合金を製造する場合(例えば、Alを添加せずにScを供給する場合)、金属熱及び電解反応に起因するアルミニウムフラックスは、電解質浴と金属との間での正味のアルミニウム移動が比較的少なくなるように、バランスを取ることができる。
全体的な電気分解反応は、下記の通りである。
Al(浴)+C(アノード)→2Al(金属)+3/2CO(ガス) (1)
金属熱反応は、下記の通りである。
Al(金属)+Sc3+(浴)→Al3+(浴)+Sc(金属) (2)
【0068】
いくつかの実施形態では、還元プロセスにおける還元槽中のアルミニウム及びスカンジウムは、通常、酸化物分子または単純な3+イオンとしては存在せず、共有結合された複合アニオンまたはカチオンのメンバーとして、酸化物またはフッ化物イオンと共に存在し、各複合イオン内のアルミニウム及びスカンジウムは、通常、3+酸化状態で存在する。したがって、いくつかの実施形態では、還元槽400が略定常状態に達すると、アルミニウムカチオンの金属合金への電気分解の平均速度は、金属熱反応による金属から電解質浴へのアルミニウムカチオン移動の平均速度とほぼ同じか等しくなる。
【0069】
いくつかの実施形態では、例えば、図4還元槽400に示すように、一定の浴組成(例えば、Scが溶解したScF-AlF-NaF浴)を達成するためにバランスを取るかまたは維持されるいくつかの変数が存在し得る。いくつかの実施形態では、実質的に一定の浴組成は、Al-Sc合金の定常還元製造を容易にし、実質的に一定のAl-Sc合金製品組成物を達成するのを助けることができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、O:Fアニオン比が、一定の浴組成(例えば、Scが溶解したScF-AlF-NaF浴)を達成するためにバランスを取るかまたは維持される変数の1つであり得る。いくつかの実施形態では、電解質浴中のO:Fアニオンのモル比は、約1:20~約1:250、約1:40~約1:250、約1:60~約1:250、約1:60~約1:200、約1:60~約1:150、好ましくは約1:60~約1:100、好ましくは約1:100であり得る。いくつかの実施形態では、電解質浴中のフッ化物含有量は比較的一定であり、酸素含有量は、Scの供給速度と、アノードでの酸素消費量との間のバランスにしたがって変化し得る。いくつかの実施形態では、定電圧での電流減衰及び/または定電流での電圧増加は、供給速度を変更することが望ましい時期、及び、そのときの供給速度を変更する程度を示す制御信号として機能することができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、Sc:Alカチオン比が、一定の浴組成(例えば、Scを溶解したScF-AlF-NaF浴)を達成するためにバランスを取るかまたは維持される変数の1つであり得る。いくつかの実施形態では、電解質浴中のSc:Alカチオンのモル比は、約0:1~約2:1、約0.5:1~約1.5:1、好ましくは約1:1であり得る。いくつかの実施形態では、Scの供給速度、金属熱反応の相対速度、及び電解反応の相対速度により、上記のモル比を制御または維持することができる。いくつかの実施形態では、Scの供給速度は、固定及び/または一定であり得る。いくつかの実施形態では、Scの供給速度は一定でなくてもよく、Scは電解質浴に一気に添加することができる。いくつかの実施形態では、Scの供給速度は、電解質浴中の酸化物濃度の測定に基づいて調節/決定することができる。いくつかの実施形態では、電解質浴に、電解質浴中の酸化物濃度を示す信号を送信するように構成された酸化物濃度分析器が設けられ、これにより、Scを適宜添加することによって、Sc:Alカチオン比を調節することが可能となる。いくつかの実施形態では、Scの供給速度は、還元槽のサイズなどのAl-Sc合金製造規模の全体的スケールに基づいて調節/決定することができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、図3に示すように、金属熱反応により、Alを金属から電解質浴へ、Scを電解質浴から金属へ移動させることができる。例えば、電解反応は、Al及びScの両方を、電解質浴から金属へ移動させることができる。したがって、例えば、電流を増加させると、金属熱反応に比べて電気分解反応がより多くなり、Alに比べて浴中のScがより少なくなる。いくつかの実施形態では、AlはScよりも電気陰性度が高いので、カソード電流密度を増加させると、カソードで還元されるSc3+のAl3+に対する比率がより高くなり、これにより、電解質浴中のScの濃度はAlよりも低くなる。したがって、いくつかの実施形態では、電流を使用して、Sc:Alカチオン比を調節することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも0.1アンペア/cm(A/cm)、少なくとも0.2A/cm、少なくとも0.3A/cm、または好ましくは少なくとも0.4A/cmの電流密度を電解反応に適用することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも0.5A/cm、少なくとも0.6A/cm、少なくとも0.7A/cm、少なくとも0.8A/cm、少なくとも0.9A/cm、または少なくとも1.0A/cmの電流密度を電解反応に適用することができる。いくつかの実施形態では、約0.1~3.0A/cm、約0.1~2.0A/cm、約0.1~1.0A/cm、約0.1~0.8A/cm、約0.1~0.6A/cm、約0.2~3.0A/cm、約0.2~2.0A/cm、約0.2~1.0A/cm、約0.2~0.6A/cm、約0.3~3.0A/cm、約0.3~2.0A/cm、約0.3~1.0A/cm、約0.3~0.8A/cm、約0.3~0.6A/cm、または好ましくは約0.4A/cmの電流密度を電解反応に適用することができる。いくつかの実施形態では、例えば、還元槽の電流効率、または全体的なAl-Sc合金製造操作が、電解電流の最適範囲を決定するための要因であり得る。いくつかの実施形態では、CF4またはスラッジ層を生成することなくAl-Sc合金を製造することができる電流を印加することが望ましい。いくつかの実施形態では、比率の制御/バランス取りは、電解質浴及び/または金属組成の測定によって支援することができ、このことは、例えば、X線蛍光分光法(XRF)またはレーザ誘起ブレークダウン分光法(LIBS)を用いて行うことができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、ナトリウムイオンのスカンジウムイオン及びアルミニウムイオンに対するモル比(Na:(Sc+Al))が、一定の浴組成(例えば、Scが溶解したScF-AlF-NaF浴)を達成するためにバランスを取るかまたは維持される変数の1つであり得る。いくつかの実施形態では、電解質浴中のモル比Na:(Sc+Al)は、約0.5:1~約6:1、約1:1~約4:1、約1.5:1~3:1、好ましくは約2:1に維持される。いくつかの実施形態では、フッ化物のように、ナトリウムは比較的受動的なバイスタンダーであり得るが、蒸発させることによって、ScFまたはAlFよりも迅速に電解質浴から除去することができる。したがって、いくつかの実施形態では、モル比Na:(Sc+Al)の制御/バランス取りは、過剰なNaFを供給し、浴組成を測定することを含む。
【0074】
いくつかの実施形態では、リチウムイオンのスカンジウムイオン及びアルミニウムイオンに対するモル比(Li:(Sc+Al))が、一定の浴組成(例えば、Scが溶解したScF-AlF-LiF浴)を達成するためにバランスを取るかまたは維持される変数の1つであり得る。いくつかの実施形態では、電解質浴中のモル比Li:(Sc+Al)は、約0.5:1~約4:1、約1:1~約3:1、約1.5:1~3:1、好ましくは約2:1に維持される。いくつかの実施形態では、モル比Li:(Sc+Al)の制御/バランス取りは、過剰なLiFを供給し、浴組成を測定することを含む。
【0075】
いくつかの実施形態では、カリウムイオンのスカンジウムイオン及びアルミニウムイオンに対するモル比(K:(Sc+Al))は、一定の浴組成(例えば、Scを溶解したScF-AlF-KF浴)を達成するためにバランスを取るかまたは維持される変数の1つであり得る。いくつかの実施形態では、電解質浴中のモル比K:(Sc+Al)は、約0.5:1~約6:1、約1:1~約4:1、約1.5:1~3:1、好ましくは約2:1に維持される。いくつかの実施形態では、モル比K:(Sc+Al)の制御/バランス取りは、過剰なKFを供給し、浴組成を測定することを含む。モル比Na:(Sc+Al)、Li:(Sc+Al)、及びK:(Sc+Al)の使用は、例示目的のために選択されたものであり、他の実施形態及び用途では、Na、Li、及び/またはK、またはそれらの任意の組み合わせのスカンジウムイオン及びアルミニウムイオンに対するモル比(Na、Li、K、またはそれらの任意の組み合わせ):(Sc+Al)が、本明細書に記載された比範囲と同様または同等の比範囲で使用できることを理解されたい。
【0076】
いくつかの実施形態では、還元槽(例えば、図4還元槽400)内の浴組成は、一定の浴組成(例えば、Scが溶解したScF-AlF-NaF浴、Scが溶解したScF-AlF-LiF浴、Scが溶解したScF-AlF-KF浴、または、Scが溶解したScF-AlF-Li、NaF、KFの任意の組み合わせの浴)を達成するためにバランスを取るかまたは維持される変数の1つであり得る。本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態では、浴組成は、約17~38重量%のScF、約15~28重量%のAlF、約43~55重量%のNaF、及び約1~5重量%のScであり;好ましくは、約26.8重量%のScF、約24.6重量%のAlF、約46.6重量%のNaF、及び約2重量%のScであり得る。いくつかの実施形態では、浴組成は、約22~45重量%のScF、約18~33重量%のAlF、約31~43重量%のLiF、及び約1~6重量%のScであり得る。いくつかの実施形態では、浴組成は、約14~32重量%のScF、約12~24重量%のAlF、約51~63重量%のKF、及び約1~5重量%のScであり得る。いくつかの実施形態では、蒸発及び金属除去は、電解質浴の総含有量及び還元槽内の濃度を減少させることができる。いくつかの実施形態では、例えば、生成物を除去するときに還元槽から除去された電解質浴の一部を、汚染を防ぐことができる方法で回収して、還元槽に戻すことも可能であり得る。いくつかの実施形態では、AlF、Sc、NaF、LiF、及び/またはKFを電解質浴中に供給し、その場でScFを生成することにより、浴組成を維持することができる。いくつかの実施形態では、AlF、ScF、Sc、NaF、LiF、及び/またはKFを電解質浴中に供給して、電解質浴の量及び組成を維持し、蒸発及び金属除去に起因する損失に対するバランスを取ることができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、プロセス開始時に、図3のカソードは、図2のカソードにおけるアルミニウムの量と比較して、比較的少ない量のアルミニウムを含むことができ、還元槽200及び還元槽300の両方は、実質的に同じAl及びSc含有量(または実質的に同じAl:Sc比)を有する実質的に同じ量のAl-Sc合金を製造して終了することができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、図2のプロセスは、カソードに含まれるアルミニウムの量が実質的に変化することなく開始及び終了することができ、カソードに含まれるアルミニウムにScを添加することができる(例えば、組み合わせ型還元プロセスによって)。例えば、図2のプロセスは、カソード220が約98グラムのアルミニウムを含む状態で開始することができ、(例えば、組み合わせ型還元プロセスにより)約2グラムのスカンジウムをカソード220に含まれるアルミニウム(例えば、約98グラム)に添加することによって、約2重量%のスカンジウムを含有する約100グラムのAl-Sc合金を製造することができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、図3組み合わせ型還元プロセスは、プロセスの開始時にカソードがアルミニウムをほとんど含まない状態で開始することができ、このプロセスでは、Al及びScの両方を共還元することにより、カソードでAl-Sc合金を製造する。例えば、図3のプロセスは、カソード320がアルミニウムをほとんどまたは全く含まない状態で開始することができ、(例えば、属熱反応プロセス及び電解反応プロセスにより)約98グラムの追加のアルミニウム及び約2グラムのスカンジウムをカソード320に添加することによって、約2重量%のスカンジウムを含有する約100グラムのAl-Sc合金を製造することができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、プロセスの開始時における図4のカソードに含まれるアルミニウム量は、図2組み合わせ型還元プロセスにおけるアルミニウム量と図3組み合わせ型還元プロセスにおけるアルミニウム量との間のいずれかであり得、3つの還元槽200還元槽300、及び還元槽400のすべては、実質的に同じAl及びSc含有量(または実質的に同じAl:Sc比)を有する実質的に同じ量のAl-Sc合金を製造して終了することができる。例えば、図4のプロセスは、カソード420が約90グラムのアルミニウムを含む状態から開始することができ、(例えば、図3及び図4組み合わせ型還元プロセスを用いて)カソード420に含まれるアルミニウム(例えば、約90グラム)に、約8グラムの追加のアルミニウム及び約2グラムのスカンジウムを添加することによって、約2重量%のスカンジウムを含有する約100グラムのAl-Sc合金を製造することができる。別の例では、図4のプロセスは、カソード420が約80グラムのアルミニウムを含む状態から開始することができ、(例えば、図3及び図4組み合わせ型還元プロセスを用いて)カソード420に含まれるアルミニウム(例えば、約80グラム)に、約18グラムの追加のアルミニウム及び約2グラムのスカンジウムを添加することによって、約2重量%のスカンジウムを含有する約100グラムのAl-Sc合金を製造することができる。
【0081】
図5A及び図5Bは、本開示の実施形態によるAl-Sc合金を製造するための還元槽の設計を示す。いくつかの実施形態では、還元槽(500Aまたは500B)は、ScF及び/またはAlFと、LiF、NaF、及びKFのうちの少なくとも1つとを含む電解質浴(510Aまたは510B)とを有する。いくつかの実施形態では、還元槽(500Aまたは500B)は、アノード(540Aまたは540B)と、導電体(530Aまたは530B)及びAl-Sc(520A及び520B)を含むカソードとを有する。導電体(530Aまたは530B)は、TiBなどの任意の導電体を含み得る。いくつかの実施形態では、還元槽内の組み合わせ型還元プロセスが進行するにしたがって、Scを添加して、Alまたは/及びScをカソードに還元し、これにより、Al-Sc合金(520Aまたは520B)を製造することができる。いくつかの実施形態では、等成形グラファイト傾斜インサート550Aのような傾斜インサートを還元槽500Aの底部に追加することができる。例えば、小規模製造では、傾斜インサートを追加することは、電解質浴510A及びAl-Sc金属520Aを片側にプールするために好ましい。いくつかの実施形態では、傾斜インサートを有していない還元槽500Bは、より多量の塩を収容することができ、これにより、組成ドラフトからの誤差を低減することが可能となる。いくつかの実施形態では、傾斜インサートを有していない還元槽500Bは、アノードの浸漬を増加させることができ、これにより、アノード短絡リスクを低減することが可能となる。
【0082】
図6は、本開示の実施形態による例示的な鋳造物におけるSc濃度(重量%)のばらつきを示す。図7は、本開示の実施形態による例示的な鋳造物中のSc濃度を重量%で示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組み合わせ型還元プロセスにより、液体状態のAl-Sc合金を製造することができる(例えば、図5A及び5Bは、アルミニウム及びスカンジウムを含む、液体状態であり得るカソード520A及びカソード520Bを示す)。いくつかの実施形態では、液体Al-Sc合金を鋳造用の鋳型に注入し、その結果成形されたAl-Sc合金鋳造物を収集することができる。例えば、小さなインゴット鋳型を使用して、小さなAl-Sc合金インゴット(例えば、602及び702)を鋳造することができる。別の例では、大きなインゴット鋳型を使用して、大きなAl-Sc合金インゴット(例えば、604及び704)を鋳造することができる。別の例では、ワッフル型インゴット鋳型を使用して、ワッフル型Al-Sc合金インゴット(例えば、606及び706)を鋳造することができる。いくつかの実施形態では、互いに異なるインゴット鋳型での鋳造により、Al-Sc合金インゴットの厚さにわずかなばらつきが生じ、これにより、インゴット全体のSc分布のばらつきが生じる。いくつかの実施形態では、ワッフル型鋳造は、Al-Sc合金の全体にわたってより一貫したSc分布を有するAl-Sc合金インゴットを製造することができ、これにより、より一貫した再現性を有する鋳造が可能となる。
【0083】
図8A及び図8Bは、本開示の実施形態によるAl-Sc合金を検出する分析方法を示す。いくつかの実施形態では、Scの重量%は、SEM-EDS(走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法)スキャナを使用して分析することができる。例えば、図8A及び図8Bにおいて、円802A、円802Bは、1回のスキャンでSEM-EDSによって分析された領域を示す。ワッフル型ナゲット800Aのスカンジウム含有量を分析及び測定するために、3回の別々のスキャン802Aを実施した。いくつかの実施形態では、正確な組成分析のために、製造されたAl-Sc合金鋳造物の全体の厚さを分析することが望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、厚いワッフル型インゴット800Aのような厚いAl-Sc合金鋳造物は、若干の誤差を伴う組成分析結果が得られる。いくつかの実施形態では、図8Aに示すように、Scの重量%は、鋳型の底面でより高くなる。例えば、液体Al-Scが鋳型内で凝固すると、より重く、より高密度のSc金属が鋳造物の底部に沈降し、これにより、鋳造物の底部側ではSc重量%がより高くなり、鋳造物の頂部側ではSc重量%がより低くなる。例えば、ワッフル型ナゲットの頂部側のSEM-EDSスキャン結果は、ワッフル型ナゲットの底部側のSEM-EDSスキャン結果と比較して、Sc重量%が比較的低いことを示した。いくつかの実施形態では、Al-Sc合金インゴット中において、Scの他の一貫性のない分布が存在し得る。いくつかの実施形態では、液体Al-Sc合金の少量の試料を収集し、急速に凝固させて、「スプラット」鋳造物800Bを成形することができる。いくつかの実施形態では、スプラット鋳造物800Bは薄く成形することができ、これにより、1回のスキャンで全体の厚さを分析して、誤差を低減することが可能となる。例えば、スプラット鋳造物をSEM-EDSスキャンすることによって、Al-Sc合金のSc重量%をより正確に検出することができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、約2重量%以上のScを含有するAl-Sc合金を製造するために商業運転を実施することができる。いくつかの実施形態では、商業運転では、液体アルミニウムを含むカソードを使用することができ、Scを電気分解して例示的なScF-AlF-NaF浴に溶解させることができる。参考として、図1に示すアルミニウム-スカンジウム相図では、約2重量%スカンジウムでは液相温度が約800°Cとなることを示している。
【0085】
いくつかの実施形態では、商業運転は250~800アンペアの還元槽を使用することができ、この場合、電流効率に応じて約100~250g/時でScを還元することができ、約5~12kg/時でAl-2重量%Sc合金を製造することができる。いくつかの実施形態では、約5~12kgのバッチを1時間毎にタップするか、または、約100kgのバッチを1日1回または1日2回タップすることができる。例えば、約120kgの金属(例えば、密度2.2で約55リットル)を有する内径40cmのるつぼは、44cmの金属深さを有し得る。追加の20kg溶融塩浴(密度2.1)は、約7.6cmの深さを有し得る。いくつかの実施形態では、上述したように、略最適な浴組成は、約26.8重量%のScF、約24.6重量%のAlF、約46.6重量%のNaF、及び約2重量%のScであり得る。いくつかの実施形態では、商用運転の各ステップは、下記の通りであり得る。
【0086】
いくつかの実施形態では、最初のステップでは、98kgのAlを溶融させ、約1000°Cに加熱し、るつぼに充填し、金属が浴に混合するのを最小限に抑えるように注意しながら、既に存在する20kgのAl-2重量%Scに添加する。
【0087】
いくつかの実施形態では、次のステップでは、約250~800アンペア(浴-金属界面で0.2~0.65A/cm)での電気分解を8~20時間行い、これにより、約45~90%の電流効率で約2kgのScが生成する。いくつかの実施形態では、観察された電流効率は、例えば、このバッチサイズ及びタッピング周波数に必要な電解電流及び持続時間を決定することができる。例えば、20kgの電解質浴は、400gのScを含有することができ、3kgのScを連続的に添加することによって、この商業運転でAl-Sc合金を製造することができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、次のステップでは、還元槽内に約20kgのAl-2重量%Scを残して、約100kgのAl-2重量%Scを除去(例えば、サイフォン)する(例えば、20kgAl-2重量%Scを使用して、次の商業運転を開始することができる)。
【0089】
いくつかの実施形態では、約250日/年にわたる約100~200kg/日の製造速度は、単一の還元槽での約25~50トン/年の製造速度に相当する。いくつかの実施形態では、年間500トン製造するプラントは、これらの還元槽を約10個備え、例えば、約5000~8000A総電流で、すなわち200kAで、上述のようにAl及びScを共還元することができる。
【0090】
実施例
【0091】
実験1~3:液体アルミニウムに2重量%(wt%)のScを製造して、2wt%のScを含有するAl-Sc合金(Al-2wt%Sc合金)を製造した。
【0092】
ScF-AlF-NaF-Sc浴を使用して、3つの小規模実験を行った。実験1及び実験2では、2.0wt%Sc及び2.3wt%Scを含有するAl-Sc合金を製造した。実験3では、3.42wt%Sc及び3.44wt%Scを含有する2つのバッチAl-Sc合金を製造した。
【0093】
実験1~3の実験パラメータ:
【0094】
浴組成:NaF-AlF-ScF-Sc
【0095】
基準電極:Al-20wt%のScを含む小さなBNカップに挿入したWワイヤ。
【0096】
るつぼ温度:1000°C。
【0097】
実験1~3の実験手順(注記:実験1及び実験2は、ステップ8で終了した):
【0098】
1.傾斜インサートを備えたるつぼの底部にAl金属を配置し、誘導溶融装置を使用してグローブボックス内のAl金属を融解させる。
【0099】
2.化学ドラフトチャンバ内で、300gのフラックス成分を予混合する。
【0100】
3.TiBカソード、外径0.375インチのグラファイトアノードを用意する。
【0101】
4.るつぼをケージに入れる。
【0102】
5.るつぼに、予混合した浴粉末を添加する。
【0103】
6.るつぼを入れたケージを還元槽内に配置し、1000°Cに加熱する。
【0104】
7.分析のために、浴と金属の両方から少量(約1~3g)の試料を取り出す:浴についてはLECO酸素分析を行い、金属についてはICP-OES分析を行う。
【0105】
8.最大8V、最大10Aで電気分解を行い、約15A/時の総電荷、例えば、約60%の電流収率で6gのScを還元するのに十分な電荷を得る。
【0106】
9.鋼鉄製のおたまを使用して、約80gのAl-Sc合金を取り出す。
【0107】
10.LECO酸素分析のために、少量(1~3g)の試料を浴から取り出す。
【0108】
11.6gのScを供給し、それが溶解するまで浴を攪拌する。
【0109】
12.Al金属を添加する。
【0110】
13.ステップ2~11を約2~4回繰り返す。
【0111】
14.室温に冷却し、分解する。
【0112】
実験1~3の結果と考察
【0113】
実験1及び実験2では、内部に段差を有する特注のるつぼを使用し、TiBカソード接続に巻き付けられたAl金属が配置される深い部分と、アノード及び基準電極が配置される浅い部分とを形成した。これらの実験は、15gのAl金属と100gの浴から開始した。
【0114】
実験1では、金属は、2.0wt%Scで、21gまで成長した。これは、Scの還元と共に、浴から金属へのかなりのAl電解採取活性を示しているように思われる(図2還元槽200に示したように)。しかしながら、アノードを浸漬するのに十分な浴がもともと存在していないことにより、浴を追加した結果、TiBカソードに取り付けられた鋼製リードに浴が接触してしまい、金属も、5wt%のFeを含有することとなった。
【0115】
実験2では、るつぼの形状を変更することにより、浴と鋼鉄製リードとの間の接触を排除した。この場合、金属は、2.31wt%Scで、17.5gまで成長した。
【0116】
実験3では、底部に金属をプールするために、平らな底部を有する外径5インチ、深さ4インチの等成形グラファイト、20°等成形グラファイト傾斜インサート550Aを使用した(図5A参照)。これは、300gの浴を保持し、100gのAlを最初に還元槽に配置した。それらの間に酸化スカンジウムを供給して、電解を2回行った。
【0117】
観察及び測定結果は次の通りであった:
【0118】
1回目のステップ7(浴及び金属の試料の取り出し)の実施:金属はAl-3.14wt%Scであり、いくらかの金属熱反応を示した。浴は、5.37重量%のScに相当する1.87%の酸素、または、フッ化物の不純物として添加された2.50重量%のAlが添加された2重量%のScを含む。
【0119】
1回目のステップ8(電気分解)の実施:17.5A/時で電流を印加すると、COの発生に起因すると考えられる少量のバブリングがアノードで観察された。
【0120】
1回目のステップ9(Al-Sc合金の取り出し)の実施:電気分解によって添加された約0.3gのScに相当する、初期濃度に対してScが0.30wt%増加したAl-3.44wt%Sc合金を80g取り出すことに成功した。これは、電解後のSc量がより小さい実験1及び実験2の両方と異なっていた。
【0121】
1回目のステップ10(浴試料の取り出し)の実施:浴酸素は、0.40重量%、例えば、4.0A/時に対応する1.2g酸化物イオンによって低下し、17.5A/時の電流印加に対して23%の電流収率を示した。電解によって金属に添加された0.3gのScは、浴酸素の0.05重量%の還元に対応して、浴から0.46gのScを消費することができる。したがって、酸素の還元量の0.35wt%は、Alの還元量2.23gに相当し、1.18gのアルミニウムが生成される。
【0122】
1回目のステップ11(6gのScの供給)の実施:よく溶けたように見えた。
【0123】
1回目のステップ12の実施:80gのAl金属を添加し、グラファイトロッドで攪拌し、還元槽内に存在する約20gの金属と凝集させる。
【0124】
2回目のステップ8(電気分解)の実施:14.7A/時で電流を印加した。
【0125】
2回目のステップ9(Al-Sc合金の取り出し)の実施:1回目のステップ9の結果と非常に近い60gのAl-3.42wt%Sc合金を取り出すことに成功した。金属熱反応と電解反応との組み合わせによって、約2.7gのScが、新たに追加されたAl金属に添加された。
【0126】
2回目のステップ10(浴試料の取り出し)の実施:浴は1.23wt%酸素を含んでおり、これは供給よりも酸化物還元が多いことを示している。1回目のステップ10に対する0.24wt%酸素の還元は、浴から消費された0.72gの酸素に、1回目のステップ11で添加された6gのScから消費された2.09gの酸素を加えたものに相当し、これにより、電気分解で消費された酸素は2.81gとなる。
これは9.43A/時の電流印加に相当し、14.7A/時で電流を印加した場合の電流効率が64%であることを示している。
【0127】
全体として、実験3は、3.42~3.44%Scで、2回の実験で約140gの金属を製造した。供給量及び浴酸素濃度の低下に基づいて、元の浴から1.9gの酸素が消費され、これは酸化スカンジウム5.4gまたはスカンジウム3.5gに相当する。4.8gのスカンジウムが合金に添加され、スカンジウムの約73%は酸化物還元に由来した。酸素消費量は浴からの酸化物の減少を示し、2回の実験間の類似性はある程度の再現性を示した。
【0128】
他の例
【0129】
図6は、本開示の実施形態による例示的な鋳造物中のSc濃度(wt%)のばらつきを示す。小型インゴットAl-Sc合金鋳造物602の4つの試料はそれぞれ、Sc濃度において、約0.1、0.4、1、及び1.9という比較的大きいばらつきを示した(例えば、ワッフル型鋳造物と比較した場合)。大型インゴットAl-Sc合金鋳造物604の3つの試料もそれぞれ、Sc濃度において、約0.2、0.5、及び0.8という比較的高いばらつきを示した(例えば、ワッフル型の鋳造物と比較した場合)。ワッフル型Al-Sc合金鋳造物の4つの試料606はそれぞれ、Sc濃度において、約0.6、0.6、0.7、及び0.5という比較的低いばらつきを示した(例えば、小型鋳造物及び大型鋳造物と比較した場合)。
【0130】
図7は、本開示の実施形態による例示的な鋳造物中のSc濃度(wt%)を示す。小型金型Al-Sc合金鋳造物の3つの試料702は、すべての合金にわたるSc分布は、一貫性のないばらつきを示した(例えば、ワッフル型鋳造物と比較した場合)。第1の小型鋳型試料は、すべての合金にわたるSc分布は約0.9重量%~約4.8重量%の範囲であり、平均Sc分布は約2.8重量%であった。第2の小型鋳型試料は、すべての合金にわたるSc分布のばらつきはほとんどまたは全くなく、平均Sc分布は約2.5重量%であり、第3の小型鋳型試料は、すべての合金にわたるSc分布は約2.9重量%~約3.8重量%の範囲であり、平均Sc分布は約3.4重量%であった。
【0131】
図7を引き続き参照して、大型金型Al-Sc合金鋳造物の4つの試料704も、合金中のSc分布は、一貫性のないばらつきを示した(例えば、ワッフル型鋳造物と比較した場合)。第1の大型金型試料は、すべての合金にわたるSc分布は約2重量%~約2.9重量%の範囲であり、平均Sc分布は約2.5重量%であった。第2の大型金型試料は、すべての合金にわたるSc分布は約2.1重量%~約3.9重量%の範囲であり、平均Sc分布は約3重量%であった。第3の大型鋳型試料は、すべての合金にわたるSc分布のばらつきはほとんどまたは全くなく、平均Sc分布は約3.1重量%であった。第4の大型金型試料は、すべての合金にわたるSc分布は約1.2重量%~約3.2重量%の範囲であり、平均Sc分布は約2.2重量%であった。
【0132】
図7を引き続き参照して、ワッフル型Al-Sc合金鋳造物の4つの試料706は、すべてのインゴットにわたるSc分布は一貫性のあるばらつきを示した(例えば、小型鋳造物及び大型鋳造物と比較した場合)。第1のワッフル型試料は、すべての合金にわたるSc分布は約2重量%~約3.6重量%の範囲であり、平均Sc分布は約2.8重量%であった。第2のワッフル型試料は、すべての合金にわたるSc分布は約2重量%~約3.3重量%の範囲であり、平均Sc分布は約2.7重量%であった。第3のワッフル型試料は、すべての合金にわたるSc分布は約2重量%~約3.2重量%の範囲であり、平均Sc分布は約2.6重量%であった。第4のワッフル型試料は、すべての合金にわたるSc分布は約3.9重量%~約4.9重量%の範囲であり、平均Sc分布は約4.4重量%であった。
【0133】
図7を引き続き参照して、すべての鋳造物の試料(702、704及び706)は、2重量%よりも高い平均Sc重量%を示した。試料702では、第1の小型金型試料のSc分布のばらつきが比較的大きく、試料の少なくとも一部は2重量%未満のSc含有量を示した。試料704では、第4の大型金型試料のSc分布のばらつきが比較的大きく、試料の少なくとも一部は2重量%未満のSc含有量を示した。試料706では、4つのワッフル型鋳型試料のすべてが、すべての合金にわたるSc分布が一貫性のあるばらつきを示し、ワッフル型試料の分析部分のすべては、2重量%以上のSc含有量を示した。
【0134】
図8A及び図8Bは、本開示の実施形態によるAl-Sc組成物を検出する分析方法を示す。いくつかの実施形態では、Scの重量%は、SEM-EDS(走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光法)スキャナを使用して分析することができる。例えば、図8A及び図8Bにおいて、円802A、802Bは、1回のスキャンでSEM-EDSによって分析された領域を示す。ワッフル型ナゲット800Aのスカンジウム含有量を分析及び測定するために、3回の別々のスキャン802Aを実施した。いくつかの実施形態では、Scの重量%は、鋳型の底面でより高くなる。液体Al-Scが鋳型内で凝固すると、より重く、より高密度のSc金属が鋳造物の底部に沈降し、これにより、鋳造物の底部側ではSc重量%がより高くなり、鋳造物の頂部側ではSc重量%がより低くなる。例えば、ワッフル型ナゲットの頂部側のSEM-EDSスキャン結果は、ワッフル型ナゲットの底部側のSEM-EDSスキャン結果と比較して、Sc重量%が比較的低いことを示した。いくつかの実施形態では、液体Al-Sc合金の少量の試料を収集し、急速に凝固させて、「スプラット」型鋳造物800Bを成形することができる。そして、スプラット型鋳造物のSEM-EDSスキャンでは、Al-Sc合金のSc重量%をより正確に検出することができる。
【0135】
図9は、本開示の実施形態による還元槽内に異なる電流を印加することによって製造されたAl-Sc合金試料を示す。実験中、CFやスラッジ層を生成することなくAl-Sc合金を製造するための2つの運転ポイントを特定した。この2つの運転ポイントは、約30~40アンペアの範囲で動作する還元槽、及び約14~18アンペアの範囲で動作する還元槽である。還元槽をこれらの運転ポイントで運転し、例えば、Al-Sc合金中の電流収率及びSc濃度を決定した。還元槽(例えば、約4インチの内径を有する)に30Aの電流を印加することにより、Al-Sc合金試料(902、904、912、914、918及び920)を製造した。製造されたAl-Sc合金は、約2.7~3.3重量%のSc含有量を有し、電流収率は約45~55%であった。還元槽(例えば、約4インチの内径を有する)に16Aの電流を印加することにより、Al-Sc合金試料(908及び910)を製造した。製造されたAl-Sc合金試料は、約2.1~2.5重量%のSc含有量を有し、電流収率は約18~29%であった。16Aでの運転中、アノードでのガス発生はほとんどまたは全く観察されず、これは、電気分解反応が最小限に抑えられたことを示す。還元槽(例えば、約4インチの内径を有する)に印加される30Aの電流は、約0.4A/cmの電流密度に換算することができ、還元槽(例えば、約4インチの内径を有する)に印加される16Aの電流は、約0.2A/cmの電流密度に換算することができる。試料906及び試料916については、プロセス中に塩成分を添加した。
【0136】
本開示を読むことにより当業者には明らかなように、本発明のさらなる実施形態は、上記に具体的に開示された形態以外の形態で提示することができる。したがって、上記の特定の実施形態は、例示的なものであり、限定的なものではないと見なされるべきである。当業者であれば、通常の実験のみを用いて、本明細書に記載された特定の実施形態に対する多数の等価物を認識するか、または確認することができるであろう。上記の例示的な実施形態により本発明を説明及び図示したが、本開示は、単なる例示であり、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本発明の実施形態の詳細に様々な変更を行うことができることを理解されたい。本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。開示された実施形態の特徴は、本発明の範囲及び精神の範囲内で、様々な方法で組み合わせたり、再構成したりすることができる。本発明の範囲は、上記の説明に含まれる実施例に限定されるのではなく、添付の特許請求の範囲及びその等価物に記載されている通りである。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B
図9