(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】広告素材配分装置及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0241 20230101AFI20231005BHJP
【FI】
G06Q30/0241
(21)【出願番号】P 2021059818
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2022-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】503066778
【氏名又は名称】株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100122563
【氏名又は名称】越柴 絵里
(72)【発明者】
【氏名】沼田 洋一
【審査官】渡邉 加寿磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-297247(JP,A)
【文献】特開2016-144063(JP,A)
【文献】特開2020-188378(JP,A)
【文献】特開2004-193701(JP,A)
【文献】特開2021-2157(JP,A)
【文献】国際公開第2003/056829(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0021395(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の広告枠に対する広告素材の出稿量(GRP)を決定する広告素材配分装置であって、
前記複数の広告枠に対し割当て可能な広告素材のデータを取込む素材データ取込み手段と、
前記複数の広告枠の1以上の広告枠に適用される制約条件を前記広告素材のデータに関連づけて指定する配分条件入力手段であって、広告素材の配分比率又は配分量の設定を制約条件の一つとして少なくとも含む、前記配分条件入力手段と、
前記複数の広告枠の購入のために要した総発注量に相当する総出稿量を、前記配分比率又は配分量の設定に従って前記複数の広告枠の各広告枠に配分するために、前記配分条件入力手段で設定された制約条件を満たす所与の演算式の解を求めることにより広告素材毎の配分量を決定する素材配分決定手段と、
前記素材配分決定手段によって決定された広告素材毎の配分量を変更する配分調整手段と、を備えた、広告素材配分装置。
【請求項2】
前記配分調整手段は、前記配分比率を維持された配分で変更されるよう前記広告素材毎の配分量を調整する、請求項1に記載の広告素材配分装置。
【請求項3】
前記配分調整手段は、前記複数の広告枠の全枠数に対する、決定された広告素材の配分量が許容範囲である広告枠の割合に基づき最適化判定をする、請求項1又は2に記載の広告素材配分装置。
【請求項4】
前記制約条件は、前記出稿量(GRP)の種類の設定、ターゲットの指定、段積み許可又は不許可の設定、使用制限のある時間帯の設定、必須又は回避の設定、期間設定の少なくとも何れかを更に含む、請求項1から3の何れか1項に記載の広告素材配分装置。
【請求項5】
複数の広告枠に対する広告素材の出稿量(GRP)を決定する処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、前記コンピュータに、
前記複数の広告枠に対し割当て可能な広告素材のデータを取込む処理と、
前記複数の広告枠の1以上の広告枠に適用され且つ広告素材の配分比率又は配分量の設定を少なくとも含む制約条件を前記広告素材のデータに関連づけて指定する処理と、
前記複数の広告枠の購入のために要した総発注量に相当する総出稿量を、前記配分比率又は配分量の設定に従って前記複数の広告枠の各広告枠に配分するために、前記制約条件を満たす所与の演算式の解を求めることにより広告素材毎の配分量を決定する処理と、
前記広告素材毎の配分量を決定する処理によって決定された広告素材毎の配分量を変更する処理と、
を実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広告素材を要求に応じて最適に配分することにより、特にスポット広告枠の買付け計画を支援する技術に関連する。
【背景技術】
【0002】
テレビ放送では、広告としてコマーシャル(CM:Commercial Message)が放送される。CMは、売買形式や広告枠の位置によって、いわゆるタイムCMとスポットCMの2種類に区分されている。タイムCMとは、番組のスポンサーがその番組内で放送する番組提供CMであるため、番組単位で取引される。これに対し、スポットCMは、番組と紐付かない形態で売買されるCMであり、出稿の時間帯を指定して取引される。なお、スポットCMは、細かく分けると、番組内で放送されるCM枠であるPT(Participation)と、番組と番組の間に放送されるCM枠であるSB(Station Break)に分けられる。
【0003】
広告主がスポットCMの広告枠を買付けする場合、各商品ブランドのためのスポットCM枠を個別に買うのではなく、複数の広告枠を一括(以下、「バルク」とも称する。)で仕入れることが多い。ブランド毎にスポットCM枠を購入するよりも、バルクで購入する方が広告主の購入の手間を削減し、何よりも取引コストを安くできるので、買い付けのやり方次第では買い付け単価を下げられるというメリットがあるためである。
【0004】
広告枠に対する素材配分の最適化に関する先行文献としては、過去の視聴率とリアルタイム視聴率(又は予測視聴率)の差に基づき素材割り付けの再配分をするシステムがある(例えば、下記特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バルク購入は買い付け単価を下げられるというメリットがある。一方で、購入したすべてのCM枠で提供される商品が同じ消費者層向け(例えば、30~40歳代の主婦層など)であることは希である。したがって、バルク購入は、ターゲットとなる消費者層が異なる複数の商品ブランドの広告枠をまとめ買いすることになり、しかも購入時点では各ブランドの広告をどこで出稿するかが決定しているわけではない。
【0007】
このため、バルク購入後に、各商品ブランドに興味があると想定される消費者層のゾーニング(よく視聴する曜日や時間帯)を絞り込むという、バルク購入した各広告枠に適する広告素材の配分作業が必要となる。ここで、広告素材の配分作業とは、例えば、商品ブランドXの広告素材Aを日曜日の19時帯の広告枠に、商品ブランドYの広告素材Bを月曜日~金曜日の9時帯の広告枠に割当てることを意味する。また、スポットCMの買付は、一般的には後述する延べ視聴率(GRP:Gross Rating Point)単位で取引されるので、配分作業では指定した広告枠で投下するGRP量の決定も必要となる。
【0008】
従来の場合、既存の出稿パターンや取り決めに準じて広告素材の配分が決定されるケースが殆どであり、細かな調整を含めて配分の決定は経験と勘に依存する部分が大きかった。そのため、非常に手間がかかり、しかもその配分が適しているかを定量的に検証することが不十分なまま行われていた。また、より適切な配分の可能性を追求したり、予定していた広告素材の使用中止など様々な理由で出稿前に決定した配分を修正することが発生したりする。この場合、せっかく決定した配分作業を一からやり直すのではなく、一部の修正をしてできるだけ簡易な調整で済まそうと思っても、当初の制約条件を維持しながら上手く調整をすることは困難であった。
【0009】
そこで、本発明は、バルク購入した複数の広告枠のそれぞれに対する広告素材の配分を最適且つ効率的に行い、さらに配分調整を簡便に行える装置及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために本発明に係る広告素材配分装置は、複数の広告枠に対する広告素材の出稿量(GRP)を決定する広告素材配分装置であって、前記複数の広告枠に対し割当て可能な広告素材のデータを取込む素材データ取込み手段と、前記複数の広告枠の1以上の広告枠に適用される制約条件を前記広告素材のデータに関連づけて指定する配分条件入力手段であって、広告素材の配分比率又は配分量の設定を制約条件の一つとして少なくとも含む、前記配分条件入力手段と、前記複数の広告枠の購入のために要した総発注量に相当する総出稿量を、前記配分比率又は配分量の設定に従って前記複数の広告枠の各広告枠に配分するために、前記配分条件入力手段で設定された制約条件を満たす所与の演算式の解を求めることにより広告素材毎の配分量を決定する素材配分決定手段と、前記素材配分決定手段によって決定された広告素材毎の配分量を変更する配分調整手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る広告素材配分装置によれば、広告枠毎に制約条件を指定できる配分条件入力手段を備え、制約条件の一つに各広告素材の配分比率又は配分量を含む。この配分比率又は配分量に従って複数の広告枠の各広告枠に配分するために、配分条件入力手段で設定された制約条件を満たす所与の演算式の解を求めて広告素材毎の出稿量を決定する素材配分決定手段を備えることから、複数の広告枠における各広告素材の配分を短時間で最適化することができる。その結果、本願発明は、消費者層のゾーニングに対応した広告素材の選定及び各広告素材の出稿量の最適な決定が可能となり、広告効果の向上を図れる。
【0012】
また、素材配分決定手段により決定した広告素材毎の配分量を変更する配分調整手段も備えている。このため、配分が適しているかを定量的に検証して、配分調整の必要があれば、当初に設定した制約条件(素材比)を維持しながら素材配分の調整を行う配分調整手段を有するため、修正後の素材配分の信頼性を担保でき、経験や勘に依存しない信頼度の高い確実な配分を決定できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る広告素材配分装置の機能をブロック図として示した図である。
【
図2】広告素材配分装置が実行する処理の手順を示すフローチャートである。
【
図4】段積み許可設定時及び不許可設定時の配分例を示した図である。
【
図5】時間帯で使用制限を設定する一例を示した図である。
【
図6A】必須回避の設定のための画面例を示した図である。
【
図6B】必須回避の設定のための画面例を示した図である。
【
図7】広告素材ごとの配分比率を設定するための画面例を示した図である。
【
図8】
図7の配分比率に従い世帯GRPを各広告素材のGRPへ配分した例を示す図である。
【
図9】エリア別や放映テレビ局ごとで異なる素材比率設定が行えるよう指定するための画面例の一部を示した図である。
【
図10A】配分量の指定をGRP実数で行う場合の画面例を示す図である。
【
図10B】配分量の指定をGRP比率で行う場合の画面例を示す図である。
【
図10C】特定の期間に対する期間比率で配分量の指定を行う場合の画面例を示す図である。
【
図10D】指定した特定の期間において各広告素材の配分量を設定する画面例を示す図である。
【
図11】設定するGRPに対して算出される最適値のズレ量をどこまで許容するかを設定するための画面例を示す図である。
【
図12】配分結果の調整をするための画面例を示す図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係る広告素材配分装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照しながら、本発明に係る広告素材配分装置100について説明する。
広告素材配分装置100が実行する処理は、要約すると、バルク購入のために要した費用(すなわち、総GRP値)、買い付けた複数の広告枠、出稿する広告に関連する商品ブランドのターゲットとなる消費者層が決定していることを前提として、総GRPを広告枠のそれぞれにどのように振り分けるのかを、視聴率や消費者層を考慮して決めていくものである。
【0015】
広告素材配分装置100は、パソコン(PC:Personal Computer)、サーバなどの端末装置が一般的であるが、かならずしも限定しているわけではない。例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット型端末などの携帯端末であってもよい。広告素材配分装置100のハードウェア構成の一例については、後述する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態である広告素材配分装置100の主な機能をブロック図であらわしている。バルク購入した複数の広告枠に対する広告素材の割り付けを実行する広告素材配分装置100は、素材データ取込み部1、配分条件入力部2、視聴率データ管理部3、素材配分決定部4、配分調整部5、処理結果提示部6を少なくとも含む。本実施形態では、これら機能が1つの装置により実現される構成を示すが、他の実施形態では複数の装置、システム又はサーバ等により実現される構成としてもよい。
【0017】
なお、広告素材配分装置100は、有線及び/又は無線(例えば、LTE(Long Term Evolution)、NR(New Radio)、Wi-Fi(R)など)を介して、他の装置や記憶媒体とネットワークと通信する機能や、任意の記憶媒体へのデータ記憶機能なども含むが、本発明の特徴とは直接関係しないのでそれらについての説明は省略する。
【0018】
上述したように、バルク購入とは、広告枠の購入単価を下げさせるために、複数の商品ブランドのスポットCM枠をまとめて買い付けることである。バルク購入の方法は下記の3種類があり、一番多用されているのが(a)である。なお、消費者層を「ターゲット」と称することがある。
(a)ターゲットの異なる商品ブランドの広告枠を合わせて買う手法である。合わせる商品ブランドの数が多くなる程、組み合わせたターゲット全体の範囲が広がるため、広告素材が配分される消費者層のゾーニングは大きくなる。
(b)商品ブランドの広告枠に付随する条件が異なるものを合わせて買う手法である。合わせる商品ブランドの数が多い場合、すべての条件を満たせなくなってくる。そのため、通常は各条件を緩和して複数のゾーニングを決定する。
(c)同一のターゲットに関する複数商品ブランドの広告枠を合わせて買う手法である。同一ターゲットであることからゾーニングの手間を少なくすることができるが、商品ブランドの数に比例してゾーニング範囲が必ず拡大するとは言えない。むしろ、スポット取引のスケールメリットを活かして大幅な購入単価の低減を期待するケースで採用される。
以下で説明する広告素材配分装置100が対象とするバルク購入は、上述した(a)のターゲットの異なる商品ブランドの広告枠を合わせて買うケースとして説明するが、他の態様によるバルク購入にも本願発明の適用が可能である。
【0019】
本実施形態では、テレビ局側の案(及び広告買い付け側との間での更なる折衝)又はその他の手段に基づき、素材データがあらかじめ作成され、広告素材配分装置100がアクセス可能な記憶媒体7に素材データが記憶されているとする。ここで、素材データとは、出稿する広告に関連する情報(例えば、広告を識別するタイトルや識別番号、枠秒数、出稿回避する期間や曜日や時間帯、ターゲット層等)を含む情報である。バルク購入のために要した費用(すなわち、総GRP値)も素材データに関連付けられている。
【0020】
広告素材配分装置100の素材データ取込み部1は、素材配分決定部4の処理に必要な素材データを任意のネットワークを介して記憶媒体7から読み出し、広告素材配分装置100に取り込む。例えば、ユーザが各広告枠に特定の広告素材のタイトルや識別番号等を設定すると、対応する素材データが取り込まれて使用可能になる。
【0021】
配分条件入力部2は、所定のユーザインターフェースを提示し、素材配分に必要なデータの選択や条件などを広告素材配分装置100のユーザが入力/指定できるようにする。
視聴率データ管理部3は、テレビ放送される番組や広告の実際の視聴率データを取得して管理する。視聴率データは、例えば、調査協力世帯などのテレビに接続された測定機器から得られる視聴履歴のデータから算出又は予測されるデータであり、従来の世帯視聴率の他に、個人全体(ALL)視聴率(4歳以上の個人全員)、ターゲットごとの視聴率(性年代別個人視聴率、以下、「個人視聴率」又は「個人GRP」とも称する。)、さらにはリアルタイム番組平均視聴率及びタイムシフト平均視聴率(いわゆる、「P+C7視聴率」)の全部又は一部を含む。タイムシフト視聴率は、放送開始から7日(=168時間)以内における、当該番組の録画再生による視聴をカウントした視聴率である。なお、視聴率データは、任意の視聴率把握会社から随時購入する他、広告素材配分装置100と連携するシステムが自ら取得しておりこれを使用する場合もある。
【0022】
素材配分決定部4は、素材データ取込み部1により取り込まれた素材データ、配分条件入力部2により入力された様々な条件、視聴率データ管理部3により取得/管理されている視聴率データを用いて、バルク購入した複数の広告枠に対する広告素材の配分を決定する。
配分調整部5は、素材配分決定部4が決定した結果を調整する。
処理結果提示部6は、最終的に決定した配分内容を出力し、任意の形式のデータとして使用できるよう提示する。
【0023】
広告素材配分装置100が実行する処理のフローチャートの一例を
図2に示す。
(1)素材配分データの取り込み(ステップS10)
素材配分データ取込み部1は素材データを取り込む際に、各広告素材と、割り付け対象の広告枠とが確定しているかを確認する。つまり、一度買い付けた広告枠や配分しようと想定していた広告素材が、何らかの事情で変更となることもある。不確定なデータで素材配分を行った場合、処理結果が諸条件を満たしていない可能性がある。これでは、結局やり直すことになるし、本来使用できない素材が割り付けられて実際に放映されてしまうと、放送事故をまねく危険もある。
【0024】
そこで、素材データ取込み部1の段階で、記憶媒体7から読み出した素材データが最新のものであるか、及び各広告枠に変更や使用不可なものが存在しないかを確定させておく。この確認は、番組や広告に関係する他の情報と突合わせて自動的にエラー検出してもよいし、広告素材配分装置100のユーザに対してチェックリストなどのエラー確認指示を出力するやり方でもよい。また、
図3に示すような、素材の使用可能期間や曜日を表示する素材基本情報の確認画面を提供してもよい。エラー検出された場合は、素材データを作成し直す必要がある。
【0025】
素材データ取込み部1は、各広告素材の基本情報である期間・時間・時間帯・曜日・秒数などに基づき出稿時点ごとに使用できる素材と使用できない素材を判別し、広告出稿時点で使用できる状態であることを確認した場合、取り込み完了合図を配分条件入力部2に出力する。
【0026】
(2)条件設定(ステップS20)
取り込み完了指示を受信した配分条件入力部2は、配分手法として、テレコ配分(ステップS21)或いは条件設定配分(ステップS22)の何れかをユーザに選択させる。
バルクで買い付けたスポット枠に対して複数の広告素材を配分する際、もっとも単純な配分の考え方は、本数ベースでテレコに割り付ける(交互に放送されるように配分する)ことである。例えば、素材A、素材BであればA,B,A,B、素材A、素材B、素材CであればA,B,C,A,B,Cというような割り付けである。ユーザがテレコ配分を選択した場合、素材配分決定部4は読み込まれた素材データを使って、買い付けた広告枠の出稿時点の順にA,B,A,BやA,B,C,A,B,Cなどのように配分する。なお、テレコ配分では、機械的に交互に配分するので後述する素材比率などの条件は反映されないことになる。そして、配分決定部2は、配分調整部5又は処理結果提示部6に配分決定(処理終了)の合図を送り、処理結果提示部6の処理後に広告素材配分装置100の実行が終了する。
【0027】
条件設定の内容を以下に詳述する。
上述したテレコ配分(ステップS21)の場合は、単純でわかりやすいが、各素材のターゲットがよく視聴する曜日や時間帯(即ち、ゾーニング)の情報が考慮されていない。しかも各時間枠の延べ視聴率(GRP)に差異があれば、GRPに基づく非均一の配分量、例えば素材Aは200GRP、素材Bは500GRPなどのように割り付けることによって効率的な広告効果が期待できるため、できればテレコ配分以外で行いたいという要望がある。しかし、広告素材の数が多くなると、最適な配分をすることは非常に手間がかかってしまう。
本願発明に係る広告素材配分装置100は、このような場面で使用することを特に想定しており、買い付けたスポット広告枠に対して、複数の広告素材をターゲットやGRPを考慮しながら配分することを可能にする。つまり、買付時又は予測の世帯GRP(又はALLGRP)、個人GRP、P+C7視聴率を使って素材ごとに最適な量の割付(配分)を行う条件設定配分(ステップS22)ができることが特徴である。
【0028】
<条件設定配分について>
配分条件入力部2は、ユーザが条件設定配分を選択した場合、買付時の世帯GRP、個人GRP等を使って素材配分するために必要な条件を設定する画面を、自動又は手動で切り替え表示する。
(i)世帯GRP(又はALLGRP)/個人GRPの設定
まず、配分条件入力部2は、世帯GRPで配分するのか、個人GRPで配分するのかをユーザに設定させる。上述したとおりGRPは延べ視聴率であり、スポットCM枠の素材配分はGRP単位で行われ、スポットCM枠の料金はGRPと、1GRPあたりのコストであるパーコストを乗じて算出されることが一般的である。なお、2020年4月より全国で個人の視聴率が測定されるようになり、取引指標が世帯視聴率から個人全体(ALL)視聴率に変更されていることから、以下に説明する世帯GRPは、個人全体(ALL)視聴率の延べ視聴率であるALLGRPに置き換えても構わない。さらに、P+C7視聴率を使用してもよい。
【0029】
世帯GRPか個人GRPの設定は、広告素材ごとのターゲット指定に関係してくる。すなわち、個人GRPを設定した場合、素材ごとにターゲットを更に指定する。ここで、ターゲットは、例えば「男性20~34歳」「女性20~34歳」「男性35~49歳」「女性35~49歳」、・・・などの区分があるが、これに限らず、例えば、C(Child)層、T(Teen)層、M(Male)1-M3層、F(Female)1-F3層などの区分などであってもよい。なお、選択できるターゲットは、素材データを作成するときに素材ごとにターゲット情報を登録しておき、各広告枠に対してあらかじめ登録したターゲットの中からしか選択できないようにする構成にしてもよい。
一方、世帯GRPを設定した場合はターゲット指定ができない。全素材でターゲットを特定しない場合に世帯GRPを設定する。
【0030】
(ii)段積み許可の設定
配分条件入力部2は、さらに段積みを含む配分でもよいのか、段積みをしない配分にするのかをユーザに設定させることができる。段積みとは、出稿時点の順に買い付けた広告枠を並べたとき、同じ素材が連続して配分され、積み上がった状態を示す。一例を
図4に示す。
広告素材A~Cに関し、段積み許可の設定をすると、出稿時点が早い順に例えば、C,C,A,A,B,Bというように同じ素材が連続することを含む。段積み不許可の設定をすると、例えば、B,C,A,B,A,Bという順の配分となり、時間的に前後の広告枠で異なる素材が振り分けられるよう制御される。
なお、出稿間隔が何分でも、日付を跨っていたとしても、2時点続けて同じ素材が配分されている場合は段積みとして判定するようにしてもよい。
【0031】
段積みすることは、段積みしない場合よりも連続して同一の広告がされることになるので、ターゲット特性、放映される地域の特色、放映時間帯、広告対象の商品ブランド性などの様々な要因からみて、同一広告の重なりを回避した方がよいケースと、強い印象を付与するためにむしろ連続して広告を出した方がよいケースがあるため、ユーザが適宜選択できるようにしている。なお、段積み許可の設定をしていても、他の条件設定(例えば、必須/回避設定など)によって、最終的には設定どおりにならないケースもあり得る。
【0032】
(iii)使用制限のある時間帯の設定
選択されている広告素材が特定の時間帯で使用制限されているときに指定する。
図5に示すような、各広告素材(例えば、ソザイA)に対して、使用制限となっている特定の曜日及び時間帯を指定色や網掛けにして視覚的に確認できるようにして、設定ボタンの押下で使用制限の時間帯を確定させる。
【0033】
(iv)必須/回避の設定
必須/回避の設定は、出稿時点ごとに必ず使用する広告素材、または使用しない広告素材の指定を行うときに指定する。必ず使用する広告素材が指定されていれば、当該広告素材の指定時間帯における使用が高い優先度で配分される。高い優先度で配分というのは、段積み許可の設定で述べたように、他の条件設定によっては100%配分されるとは限らないからである。
また、使用しない広告素材の指定は、素材毎に放映してはいけない時間帯がある場合に選択不可にあらかじめ設定しておくことで、うっかり選択してしまうミスを防止する上で有益な条件設定である。
【0034】
図6Aは、必須/回避設定のための画面例である。
すでにCM進行が進んでいる場合や最適化の部分反映を行っていた場合、放映された広告素材が対応の広告枠に割当てられる(
図6AのP枠参照)。
図6では、必須素材列の上から1~4行目の広告枠に広告素材Aを示す「A」が付されている。したがって、CM進行している部分を「必須」として固定し、残りの部分だけを最適化することが可能となる。また、
図6AのQ枠には素材A、Bの行欄に「×」が示されているが、これはその広告枠に出稿しないことを指定することを意味する。出稿させたくない行欄をマウス等で指定し、画面下部の回避ボタンの「しない」62を押下すると、該当する行欄に「×」の記号が表示される。
図6Aに示すQ枠の出稿時間では、「×」の無い素材Cのみが出稿対象として設定されている。さらに、
図6AのR枠では、素材Bに「×」があるので、R枠の出稿時間では素材Bが出稿されないよう設定している。
【0035】
図6Bは、期間指定欄63で2020年5月5日~5月20日の中で、5月5日~5月11日の1週間は素材Aのみ出稿させる(つまり、素材B、Cは出稿しない)よう設定した例である。各素材の切り替えは画面下部の必須ボタン65で指定する。
図6Bの右側には必須素材列に素材Aが設定された表示例を示しているが、設定した行欄の出稿時には素材Aの放映を指示している。
さらに、特定の時刻以降や特定の時間中に素材を出稿させないように設定する場合は、素材Aを選択するとともに時刻欄64に特定の時刻(例えば、24:00)を指定して回避ボタンの「する」61を押下すると、24:00以降の素材Aの列に「×」が付き、素材Aが放映されない設定にすることができる。
【0036】
(v)配分量又は素材比率の設定
広告素材ごとの配分量又は配分比率を設定する。
素材データ取込み部1によってバルク購入した総GRP値が読み込まれ表示されるので、ユーザは、各素材の配分量のためにGRP値(GRP実数)を直接入力して、トータルが総GRP値になるように指定する。或いは、バルク購入した総GRP値について、例えば、配分比率を素材A:50%、素材B:30%、素材C:20%(合計100%)のように振り分けた配分指定をする。
図7に示すように、配分比率欄71に所望の比率を入力して設定ボタン72を押下すると、
図8に示す投下出稿量として設定されているトータル世帯GRP81(
図8に示す例の場合は2370.3)が、設定した比率にしたがって配分されるよう素材毎のGRPを計算して条件画面に自動表示する(82の枠)。なお、対象とする放映エリアが複数ある場合は、エリア別(例えば、東京地区、大阪地区、名古屋地区などのエリア単位)で配分するようにしてもよい。
【0037】
また、上述したエリア全体におけるトータル世帯GRPを基にした配分比率は、放映テレビ局ごとにみたとき、曜日単位でみたとき、期間単位でみたときと同じ配分比率には必ずしもならない。例えば、
図8の例を参照すると、東京の全局計での比率は、A:50.8(1203.4/2370.3)%、B:29.1% C:20.2%となり、設定したA:50%、B:30%、C:20%の比率とほぼ等しいが、NTV局ではA:33.2(152.5/459.1)% B:34.5% C:32.2%となり、設定した比率になっていない。
【0038】
そこで、エリア別や放映テレビ局ごとで異なる素材比率設定を行うことを可能にするようにしてもよい。
図9は、「地区・局別」「項目別」のプルダウンリストから所望の組み合わせ方によって設定区分(設定の細かさ、粒度)を変えることが可能な一例を示す。
このように、各素材の配分量の指定は、素材毎の世帯GRP値の設定(GRP実数)、設定区分の世帯GRP合計に対する各素材の世帯GRPの比率(GRP比率)、素材毎の出稿本数(実本数)、各設定区分の出稿本数合計に対する各素材の出稿本数の比率(本数比率)といった複数の指定方法を選べるようにしておくことが望ましい。
【0039】
例えば、
図10Aに示す配分量の指定方法はGRP実数の場合であり、東京地区で素材Aに230GRP(GRP実数)を入力した場合、東京地区のために投下出稿量として設定されている量が合計574.3GRPなので素材Bは344.3GRPとなるように配分される。
図10Bに示す配分量の指定方法はGRP比率の場合であり、大阪地区で素材A:素材Bの世帯GRPの比率を40:60で入力した場合、素材Aには254.4(=636.1×0.4)GRP、素材Bには381.7GRPとなるように配分される。
上述した配分量に関する複数の指定方法は、放送局別、曜日別、及びタイムランク(視聴率を基準にCM料金が異なる時間区分「A・特B・B・C」)別の設定区分においても同様である。
【0040】
さらに、配分対象として異なる複数の期間を設定し、期間比率に従う配分量の設定が可能なことを含む。その設定画面例を
図10Cに示す。まず、任意の期間区分92を指定し、合計100%になるような期間比率93をそれぞれの期間区分に入力する。その上で、
図10Dに示すように、設定した各期間区分において少なくとも1つの広告素材(
図10Dの場合、素材A)の配分量を入力するようにしてもよい。指定しなかった素材(
図10Dの場合、素材B)の配分量は、GRP合計から入力した配分量を減算して自動的に計算される。
【0041】
なお、素材配分決定部4による配分決定処理の際、期間比以外の条件を「GRP実数」、「GRP比率」、「実本数」で設定した場合、複数の条件の同時成立を充足させることから、厳密な設定値どおりにならないことが多い。このため、配分決定処理において計算される値にどの程度の許容を持たせるかをあらかじめ設定しておく。許容値の設定方法としては、例えば、
許容範囲:±XXX%で指定する、
MAX:設定した「GRP実数」又は、「GRP比率」を上限値として指定する、
MIN:設定した「GRP実数」又は、「GRP比率」を下限値として指定する、
というようなやり方がある。その設定画面例を
図11に示す。
また、許容範囲は、広告素材配分装置100において予め所定の範囲を記憶し、ユーザが適宜変更できる構成であってもよい。
【0042】
以上、複数の条件設定の内容を説明してきたが、具体的な実際の設定例を以下に示す。
<例1:任意放送局に特定の素材だけを配分する例>
1000GRPを広告素材(A、B)でバルク買いし、東京地区の4放送局(T局、E局、N局、S局)に配分したい。また、素材AのターゲットはF1層(女性20-34歳)であり、素材Bのターゲットはteen層であり、1000GRPを46:54で配分したい。
つまり、素材Aには460GRP、素材Bには540GRPに振り分け、詳細には、T局、E局に素材Aのみ260GRPで、N局、S局に素材Aを200GRPと素材Bに540GRPで配分したい。この場合、上記を制約GRPとするため、配分条件入力部2において、
(1)
図7に示す素材比率設定において、素材Aに46%(460GRP)及び素材Bに54%(540GRP)を設定し、
(2)
図6Bに示す必須/回避設定において、東京地区に限定し、T局及びE局に素材A(260GRP)が必須素材になるよう設定する。
【0043】
<例2:特定期間区分の比率とキャンペーン全体の素材間比率を設定する例>
1000GRPを広告素材(A、B)でバルク買いし、2020年5月5日~5月20日の期間中のトータルでは素材比率をA:B=75%:25%にした上で、さらに5月5日~9日に33%、5月10日~15日に33%、5月16日~20日に34%の期間区分比率も設定したい。この場合、上記を制約GRPとするため、配分条件入力部2において、
(1)
図10Cに示す期間比設定において、「期間+期間比率」91にチェックを入れて、上記の期間区分92と期間比率93を設定する。
(2)
図10Dに示す素材比率設定において、素材比率をA:B=75%:25%に設定する。
【0044】
なお、上述した制約条件は代表的なものの一例であって、その他の制約条件を含むことができる。また、素材配分条件入力部2が提示する各制約条件を設定するためのインタフェース(画面)はあくまで一例であって、別のデザインの画面上で設定可能であることは言うまでも無い。
【0045】
(3)配分決定処理(ステップS30)
素材配分決定部4は、ステップS20で設定した制約条件を基に配分決定処理を実行する、本実施形態の場合、最適化問題を解くことによって素材配分のための最適な割り付けを決定する。ここで、最適化問題は以下のように定義される。
・目的関数:素材毎の世帯GRPの目標値との差の最小化
・変数 :買い付けた広告枠別の各広告素材の出稿量
・制約条件:段積み回避、必須時間帯の指定、回避時間帯の指定、素材比率、地区・テレビ局・曜日・期間・タイムクラスの各指定のうち任意の条件の設定
なお、目的関数は目標GRPではなく目標コストを使用してもよい。この場合、変数は、広告枠別の各広告素材に関するコストにすればよい。
【0046】
つまり、素材配分決定部4は、段積み回避や素材比率などの設定された制約条件の下、各広告素材の世帯GRPの目標値(世帯GRPの目標値を素材比率で按分することにより得られる広告素材毎の目標GRP)との差を最小にする、買付広告枠ごとの各広告素材の出稿量を解として求めていく。制約条件を満たし得る各買付広告枠のための出稿量の組み合わせの中で、その出稿量に対応するGRPと広告素材毎の目標GRPとの差の絶対値を算出することによって、その絶対値の総和を最小にする出稿量配分を見つけ出す処理となっており、線形性が保たれて線形計画問題として落とし込むことが可能である。よって、非線形最適化問題と比較して複雑な処理計算を回避できる。
【0047】
上述した最適化処理における目的関数は、世帯GRP(またはコスト)の目標値との差を最小にすることであったが、“世帯”に代わり個人GRPを指標として用いてもよい。つまり、設定した制約条件の下、広告素材毎に各ターゲットの個人GRPの合計を最大にするという目的関数に対して、買付広告枠ごとの出稿量(又はコスト)の解を求めていく。ターゲットがM1層(男性20-34歳)であればM1内での最大化、F1層(女性20-34歳)であればF1内での最大化を図る処理になる。制約条件は、世帯GRPの際の制約条件と同一にしてもよいし、異なる制約条件を用いてもよい。
なお、個人GRPを使用する場合の目的関数が世帯GRPの場合と異なるのは、世帯であれば一括りのGRPとして処理できるが、個人の場合はM1層のGRPの目標値との差は、他の層(例えば、F1層)のGRPの目標値との差と必ずしも関連するとは言えず、しかも層が異なればGRPを算出する母数が同一ではないことから、単純に各層の個人GRPの合計を最大にするという設定にしている。
【0048】
個人GRPの合計を最大化する最適化問題の基本アルゴリズムは、上述した<例1:任意放送局に特定の素材だけを配分する例>の場合で説明すると、
・手順1:まず、買付した広告枠のうち、N局及びS局については2つの個人ターゲット層(F1層とteen層)のGRP値を比較する。素材AはF1層向けの広告用であるため、F1のGRP値が、もう一つのターゲット層(teen層)のGRP値よりも高い広告枠に素材Aを優先的に割り当てることを決定する。例1の場合、T局及びE局については素材Aのみの配分を設定しているので、teen層のGRP値との比較はせず、買付した広告枠は素材Aのための枠となる。素材Bも同じ考え方で行い、N局及びS局についてのみF1のGRP値とteen層のGRP値を比較して、teen層のGRP値が、F1のGRP値よりも高い広告枠に素材Bを優先的に割り当てることを決定する。ただし、設定した素材比率及び必須回避の制約条件が他にもあれば、必ずしも優先割り当てされないこともある。
【0049】
・手順2:手順1の優先度に基づき素材Aを割り当てた4局の広告枠のGRP(F1層GRP)の合計が最大となり、且つ、手順1の優先度に基づき素材Bを割り当てたN局及びS局の広告枠のGRP(teen層GRP)の合計が最大となる出稿量の配分組み合わせを算出する。
【0050】
最適化問題は相当以前からそのアルゴリズムが研究され、問題を解くためのソルバーも多くの種類が開発されて現在では一般にも入手できる公知なものであるため、本明細書では説明を省略する。本願の素材配分決定部4においても、特殊な最適化ソルバーを必要としておらず、一般の線形計画問題を解くことができる任意のソルバーを適用し得る。
なお、他の実施形態では、最適化問題を、数理計画法問題としてモデル化してもよい。例えば、対象とするモデルが線形モデルの場合、システムは、CPLEX又はMINOSのような標準的線形計画法/最適法ソルバーを使用して、線形計画問題を解決することによって最適化してもよい。さらに他の実施形態では、最適化問題を、非線形問題として定式化し、数ある非線形最適化手法のいずれか一つを用いて解決してもよい。
【0051】
他の実施形態では、最適化問題以外の演算処理により配分組み合わせを算出することを含む。例えば、広告枠の出稿パターンや制約条件等が類似するものをパターンマッチング手法で抽出し、抽出した過去の出稿パターンで使用した配分量に比例する量を今回の配分量として設定するようにしてもよい。特に過去の出稿パターンが後述する結果修正(微調整)を完了している場合、今回の配分についても微修正をしなくてよい場合が期待できるため、作業の簡素化を一層図ることが可能である。
【0052】
(4)結果修正(ステップS40)
・最適化判定
配分調整部5は、素材配分決定部4による配分決定が終了すると、最適素材配分がどれくらいうまくいったかという最適化判定をし、その結果を画面出力する。ユーザは、最適化の判定結果から配分修正をする必要があるか否かを判断する。判定は、例えば、配分条件入力部2により許容値の設定をしていることを利用し、素材配分決定部4が各広告枠に関して配分すべきとして算出したGRP量が設定した許容範囲に収まっている広告枠数で決定すればよい。買付広告枠の総数に対する、許容範囲に収まっている広告枠の割合をパーセンテージ表示で出力して、素材配分の妥当性を定量化する。
【0053】
許容範囲に収まっている広告枠が所定の閾値(例えば、80%)よりも多い場合、設定した制約条件下での配分が可能であったと判定して、ユーザは配分の調整は不要と決定すればよい。一方、許容範囲に収まっている広告枠数が全体の80%未満の場合は、設定した制約条件に無理があったと推定する。ただし、許容範囲に収まっている広告枠の割合が例えば75%のように、閾値である80%に達していないが、閾値から極端に乖離しているわけではないこともある。このような場合、ユーザは、買付広告枠のうちの一部について、素材配分決定部4が決定した素材を変更したり(例えば、或る広告枠を素材Aに代えて素材Bにする等)、素材配分決定部4が算出した割当GRP量を増減変更することで、閾値に達する又は近づけるための調整を実行すればよい。
【0054】
一方、判定結果が40%以下のように閾値から相当逸脱している場合は、ユーザは、広告枠の一部に対する変更・調整ではなく、全体的な修正となるよう当初の制約条件自体の変更(例えば、全体の配分比率を素材A:50%、素材B:30%、素材C:20%に代えて、素材A:80%、素材B:10%、素材C:10%に振り分けるなど)をして素材配分決定部4による配分の実行をやり直すようにすればよい。
【0055】
また、上述した広告枠の一部に対する調整(以下、理解を容易にするため、以降、「微調整」と称する。)か、当初の制約条件自体の変更による最適化処理自体のやり直しかの選択をユーザに委ねるのではなく、配分調整部5が判定結果及び閾値に応じて自動的に決定するようにしてもよい。
【0056】
・配分の微調整処理
以下は、配分調整部5による最適化判定結果から微調整の必要があると認識したユーザが、自ら素材配分を修正する一例を示す。
もっともシンプルな修正は、修正画面上でユーザが修正したい広告枠の素材を他の素材に直接変更するやり方である。この場合、素材比の再計算を簡略化する目的で、割付けの結果リストを所定のフォーマットのテーブルに出力することを利用してもよい。具体的には、データが入力されたテーブルやスプレッドシート上で設定済みの素材比を算出する式をマクロ関数で組み込み、ユーザが所望の広告枠の素材を変更すると、素材比を算出する当該マクロ関数が起動して素材変更後の素材比を表示する。ユーザは、素材変更とデータ更新を繰り返しながら、初期の素材比が保持される割付素材を決定すればよい。
【0057】
ただし、配分条件入力部2で当初に回避設定したはずの素材をうっかり割付けたり、必須設定しておいた素材以外の素材を割り付けてしまうミスが生じることがある。また、当初に素材比を指定しているのにもかかわらず、結果修正によって素材比が変わってしまうため、修正後に素材比を再確認する必要がある。
【0058】
このように配分調整部5の結果修正画面上で素材を手作業で修正する方法の場合、初めに設定した回避条件や素材比等を維持しながら割付素材を的確に変更するのは慎重に行わなければならず手間を要する作業である。
【0059】
そこで、例えば、
図12に示すように素材配分決定部4が決定した表中の矢印箇所の割付素材Cを素材Aに変更しようとユーザが指定した場合(複数の広告枠の素材変更を同時に指定してもよい)、配分調整部5は、変更可能な素材でなければ警告を出力し、変更可能な素材の指定であっても当該広告枠の変更により影響を及ぼす他の広告枠の割付GRP量を当初設定しておいた素材比が維持されるように自動で微調整することを含む。さらに、複数の広告枠のうちどの広告枠を異なる素材に変更すべきかや、割当GRP量を具体的どの位増減量させればよいかを配分調整部5がシミュレーションした結果に基づき複数の候補の中から選択できるようユーザに提示するようにしてもよい。
【0060】
これにより、特定の広告枠の素材変更をしても、他の広告枠を含めた全体の素材比が維持される割付GRP量が算出されるので、ユーザによる微調整作業は極めて簡便となる。そして、修正した素材変更後の素材の組み合わせについて再び最適化判定をして、閾値の80%以上を満たさないことが分かれば、素材変更の指定を何度か繰り返しながら新たな割付の組み合わせを試みて、所望の組み合わせが得られるまで修正を行えばよい。この新たな割付の組み合わせの繰り返しは、機械学習のひとつである強化学習(Reinforcement Learning)という試行錯誤を通じて価値を最大化する行動を学習するアルゴリズムとして蓄積すればよい。すなわち、配分調整部5は、強化学習におけるいわゆる3要素の「状態」、「行動」、「報酬」のそれぞれを、今の判定結果、変更する枠に対する各素材配分量、変更後の素材配分量による判定結果と定義し、最終的に価値が最大化になる行動を選択する。なお、強化学習のアルゴリズムは、例えば、「Q学習」「Sarsa」「モンテカルロ法」等が挙げられるが、本実施形態では強化学習に適用するアルゴリズムを限定するものではない。これら強化学習アルゴリズムは当業者にとって既知であるのでここでは省略する。
【0061】
このようにして、本実施形態の広告素材配分装置100を実行すれば、素材比が維持され且つ最適化判定が閾値を満たす素材の種類及びその配分量を容易に決定できるという効果を有する。
【0062】
さらに素材比を維持できる割付素材の変更の候補が複数ある場合は、ユーザの手間又はミスをできるだけ少なくする目的で、どちらがよいかを配分調整部5がユーザに選択できるよう提示する構成にすることもあり得る。例えば、変更後の新たな割付素材Aを用いれば最適化判定の結果が満足することになっても、素材比が維持されない場合には、素材比が維持されるよう他の広告枠に関する割付素材を更に自動で抽出してユーザに推奨する。これにより、ユーザは、設定している素材比が維持される他の割付の組み合わせを容易に認識できる。
【0063】
ところで、配分調整部5が、素材比を維持できる割付素材の組み合わせを選定できない状況もあり得る。このような状況はもはや微調整では対処できないことを表すため、ユーザは素材配分条件入力部2で制約条件を再設定(1以上の制約条件を緩和するなど)し、素材配分決定部4が素材配分の再計算をする。
【0064】
また、最適化判定において、最適化結果が良くない要因が、
図11で説明した許容範囲自体の狭さであることもあり得る。許容範囲が拡大すればその範囲に収まっている広告枠の割合が増加するので、最適化結果が良くなる。そのため、広告素材配分装置100上でユーザが設定した許容範囲をどこまで拡大すれば、最適化判定の閾値を満たすことになるかを逆演算して提案できるようにしてもよい。
【0065】
(5)結果反映(ステップS50)
処理結果提示部は、最終的に決定した素材割り付けのデータ結果を画面又はプリンタへ出力する。その表示やフォーマットについては特に限定するものではない。
【0066】
広告素材配分装置100のハードウェア構成について説明しておく。
上述してきた実施形態に係る広告素材配分装置100は、例えば
図13に示すような構成のコンピュータ1000によって実現される。
図13は、広告素材配分装置100の機能を実現するコンピュータの一例を示すハードウェア構成図である。コンピュータ1000は、CPU1100、RAM1200、ROM1300、HDD1400、通信インターフェイス(I/F)1500、入出力インターフェイス(I/F)1600、及びメディアインターフェイス(I/F)1700を有する。
【0067】
CPU1100は、ROM1300またはHDD1400に格納されたプログラムに基づいて動作し、各部の制御を行う。ROM1300は、コンピュータ1000の起動時にCPU1100によって実行されるブートプログラムや、コンピュータ1000のハードウェアに依存するプログラム等を格納する。
【0068】
HDD1400は、CPU1100によって実行されるプログラム、及び、かかるプログラムによって使用されるデータ等を格納する。通信インターフェイス1500は、所定の通信網を介して他の機器からデータを受信してCPU1100へ送り、CPU1100が生成したデータを所定の通信網を介して他の機器へ送信する。
【0069】
CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、ディスプレイやプリンタ等の出力装置、及び、キーボードやマウス等の入力装置を制御する。CPU1100は、入出力インターフェイス1600を介して、入力装置からデータを取得する。また、CPU1100は、生成したデータを入出力インターフェイス1600を介して出力装置へ出力する。
【0070】
メディアインターフェイス1700は、記録媒体1800に格納されたプログラムまたはデータを読み取り、RAM1200を介してCPU1100に提供する。CPU1100は、かかるプログラムを、メディアインターフェイス1700を介して記録媒体1800からRAM1200上にロードし、ロードしたプログラムを実行する。記録媒体1800は、例えばDVD(Digital Versatile Disc)、PD(Phase change rewritable Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto-Optical disk)等の光磁気記録媒体、テープ媒体、磁気記録媒体、または半導体メモリ等である。
【0071】
例えば、コンピュータ1000が実施形態に係る広告素材配分装置100として機能する場合、コンピュータ1000のCPU1100は、RAM1200上にロードされたプログラムまたはデータを実行することにより、制御部130の機能を実現する。コンピュータ1000のCPU1100は、これらのプログラムまたはデータを記録媒体1800から読み取って実行するが、他の例として、他の装置から所定の通信網を介してこれらのプログラムまたはデータを取得してもよい。
【0072】
以上、本願の実施形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【0073】
(その他)
また、上記実施形態及び変形例において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。例えば、各図に示した各種情報は、図示した情報に限られない。
【0074】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0075】
また、上述してきた実施形態及び変形例は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 素材データ取込み部
2 配分条件入力部
3 視聴率データ管理部
4 素材配分決定部
5 配分調整部
6 処理結果提示部
7 記憶媒体
100 広告素材配分装置