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特許7361069組電池用スペーサーおよび該組電池用スペーサーを備えた組電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】組電池用スペーサーおよび該組電池用スペーサーを備えた組電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/291 20210101AFI20231005BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20231005BHJP
   H01G 11/12 20130101ALI20231005BHJP
【FI】
H01M50/291
H01M50/105
H01G11/12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021090273
(22)【出願日】2021-05-28
(65)【公開番号】P2022182616
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】馬場 泰憲
【審査官】山下 裕久
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-097888(JP,A)
【文献】国際公開第2019/142645(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/098939(WO,A1)
【文献】特開2016-189342(JP,A)
【文献】国際公開第2020/262080(WO,A1)
【文献】特開2020-061210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/291
H01M 50/105
H01G 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極が、セパレータを介して積層された正負極積層構造を有する電極体を備えた単電池が、前記正負極の積層方向に複数配列されて構成された組電池において、前記配列された単電池間に配置されるシート状のスペーサーであって、
前記単電池間に配置された場合に、前記積層方向において隣接する単電池それぞれに対向する2つの幅広面を有しており、
ここで、前記単電池間に配置されていない状態の前記スペーサーにおいて、前記単電池が備える前記電極体の中心部に対向する位置から、前記正負極積層構造の端面の中心部に対向する位置に至るまで引いた直線上の任意の2点について、前記電極体の中心部に対向する位置に近い順にa、bとしたとき、前記a、bそれぞれを中心とし、前記直線に沿った前後1.5cm区間における、前記2つの幅広面間の平均厚みをそれぞれDa、Dbとした場合、Da>Dbの関係を満た
前記単電池間に配置された状態において、前記積層方向において隣接する単電池それぞれがSOC90%以上であるときに、前記2つの幅広面間の厚みが平坦な状態となることを実現する、組電池用スペーサー。
【請求項2】
前記2つの幅広面のうちの少なくとも一方に、弾性体からなる凸部を複数具備した弾性表面が形成されている、請求項1に記載の組電池用スペーサー。
【請求項3】
正極および負極が、セパレータを介して積層された正負極積層構造を有する電極体を備えた単電池が、前記正負極の積層方向に複数配列されて構成された組電池において、前記配列された単電池間に配置されるシート状のスペーサーであって、
前記単電池間に配置された場合に、前記積層方向において隣接する単電池それぞれに対向する2つの幅広面を有しており、
ここで、前記単電池間に配置されていない状態の前記スペーサーにおいて、前記単電池が備える前記電極体の中心部に対向する位置から、前記正負極積層構造の端面の中心部に対向する位置に至るまで引いた直線上の任意の2点について、前記電極体の中心部に対向する位置に近い順にa、bとしたとき、前記a、bそれぞれを中心とし、前記直線に沿った前後1.5cm区間における、前記2つの幅広面間の平均厚みをそれぞれDa、Dbとした場合、Da>Dbの関係を満たし、
前記2つの幅広面のうちの少なくとも一方に、弾性体からなる凸部を複数具備した弾性表面が形成されている、組電池用スペーサー。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の組電池用スペーサーであって、弾性体からなる、組電池用スペーサー。
【請求項5】
前記弾性体の圧縮弾性率は120MPa以下である、請求項に記載の組電池用スペーサー。
【請求項6】
前記単電池間に配置されていない状態の前記スペーサーを、前記2つの幅広面間の厚みに対して垂直方向に2つに切断したとき、該2つの切断体において前記Da>Dbの関係が満たされる、請求項1~5のいずれか一項に記載の組電池用スペーサー。
【請求項7】
前記単電池間に配置されていない状態の前記スペーサーにおいて、前記単電池が備える前記電極体の中心部に対向する位置から、前記正負極積層構造の端面の中心部に対向する位置に至るまで引いた直線を3等分し、前記3等分した領域における前記2つの幅広面間の平均厚みを、前記電極体の中心部に対向する位置に近い順にそれぞれD1、D2、D3としたとき、Dn>Dn+1(ここで、nは1または2)の関係を満たす、請求項1~6のいずれか一項に記載の組電池用スペーサー。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の組電池用スペーサーを備えた組電池。
【請求項9】
前記単電池は、前記電極体がラミネート外装体によって覆われて構成されている、請求項8に記載の組電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組電池用スペーサーおよび該組電池用スペーサーを備えた組電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等の二次電池あるいはキャパシタ等の蓄電素子を単電池とし、該単電池を複数備えた組電池は、車両搭載用電源あるいはパソコンや携帯端末等の電源として重要性が高まっている。特に、軽量で高エネルギー密度が得られるリチウムイオン二次電池を単電池とした組電池は、車両搭載用の高出力電源等に好ましく用いられている。
【0003】
かかる組電池は、典型的には、電極(正極および負極)が、セパレータを介して積層された電極体を備えた複数の単電池が、該電極の積層方向に沿って配列された態様を有する。そして、上記積層方向において隣接する単電池どうしが、電極端子(正極端子および負極端子)を介して電気的に接続されることによって構築されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/075766号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、組電池のさらなる高性能化が要求されている。そして、本発明者らが鋭意検討した結果、単電池が備える電極体内でガスが発生し、電極とセパレータとの間にガスが滞留した場合、充放電反応が不均一化することで局所的な劣化が生じ得ることが分かった。これによって、充放電サイクルを進めた場合、組電池の容量維持率が低下する(即ち、容量劣化が生じる)おそれがあるため、好ましくない。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、その主な目的は、組電池の容量劣化を好適に抑制することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を実現するべく、本発明は、正極および負極が、セパレータを介して積層された正負極積層構造を有する電極体を備えた単電池が、該正負極の積層方向に複数配列されて構成された組電池において、該配列された単電池間に配置されるシート状のスペーサーを提供する。上記組電池用スペーサーは、上記単電池間に配置された場合に、上記積層方向において隣接する単電池それぞれに対向する2つの幅広面を有している。ここで、上記単電池間に配置されていない場合の上記スペーサーにおいて、上記単電池が備える上記電極体の中心部に対向する位置から、上記正負極積層構造の端面の中心部に対向する位置に至るまで引いた直線上の任意の2点について、上記電極体の中心部に対向する位置に近い順にa、bとしたとき、上記a、bそれぞれを中心とし、上記直線に沿った前後1.5cm区間における、上記2つの幅広面間の平均厚みをそれぞれDa、Dbとした場合、Da>Dbの関係を満たす(以下、かかる態様を単に「勾配を具備する」ということもある)。かかる構成の組電池用スペーサーを用いることで、組電池の容量劣化を好適に抑制することができる。
【0008】
ここで開示される組電池用スペーサーは、好ましくは弾性体からなる。かかる組電池用スペーサーを用いることで、組電池の容量劣化をより好適に抑制することができる。また、より好ましくは、上記弾性体の圧縮弾性率は120MPa以下である。
【0009】
ここで開示される組電池用スペーサーの好適な一態様では、上記2つの幅広面のうちの少なくとも一方に、弾性体からなる凸部を複数具備した弾性表面が形成されている。かかる構成によると、凸部が潰れることによる弾性を得ることができるため、電極体内のガスの押し出しをより緩やかに(効果的に)実現することができる。
【0010】
ここで開示される組電池用スペーサーの一態様では、上記単電池間に配置された状態において、上記積層方向において隣接する単電池それぞれがSOC(State of Charge)90%以上であるときに、上記2つの幅広面間の厚みが平坦な状態となることを実現する。
【0011】
ここで開示される組電池用スペーサーの好適な一態様では、上記単電池間に配置されていない状態の上記スペーサーを、上記2つの幅広面間の厚みに対して垂直方向に2つに切断したとき、該2つの切断体において上記Da>Dbの関係が満たされる。かかる構成の組電池用スペーサーを用いることで、組電池の容量劣化をより好適に抑制することができる。
【0012】
ここで開示される組電池用スペーサーの好適な一態様では、上記単電池間に配置されていない状態の前記スペーサーにおいて、上記単電池が備える上記電極体の中心部に対向する位置から、上記正負極積層構造の端面の中心部に対向する位置に至るまで引いた直線を3等分し、上記3等分した領域における上記2つの幅広面間の平均厚みを、上記電極体の中心部に対向する位置に近い順にそれぞれD、D、Dとしたとき、D>Dn+1(ここで、nは1または2)の関係を満たす。かかる構成の組電池用スペーサーを用いることで、組電池の容量劣化をより好適に抑制することができる。
【0013】
また、本発明は、他の側面から、ここで開示される組電池用スペーサーを備えた組電池を提供する。かかる構成によると、容量劣化が好適に抑制された組電池が提供される。
【0014】
ここで開示される組電池の好適な一態様では、上記単電池は、上記電極体がラミネート外装体によって覆われて構成されている。ラミネート外装体を備えた単電池は、電池ケースを備えた単電池と比較して、電池の充電時に膨張し易い傾向にある。したがって、ここで開示される技術を適用する対象として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る組電池について説明するための模式図である。
図2図1の組電池が備える単電池の構成を模式的に示す平面図である。
図3図1の組電池が備える組電池用スペーサーについて説明するための模式図である。
図4】一実施形態に係る組電池用スペーサーを備えた組電池を充電した場合に、電極体内に補足された気泡(ガス)が電極体外へ排出される機構を示す模式図である。
図5】従来の組電池用スペーサーを備えた組電池を充電した場合の態様を示す模式図である。
図6】一実施形態に係る組電池用スペーサーの中央厚み・端部厚みについて説明するための説明図である。
図7】一実施形態に係る組電池用スペーサーを、2つの幅広面間の厚みに対して垂直方向に2つに切断した場合に得られる2つの切断体について説明するための模式図である。
図8】一実施形態に係る組電池用スペーサーにおいて、単電池が備える電極体の中心部に対向する位置から、正負極積層構造の端面の中心部に対向する位置に至るまで引いた直線を3等分したときの、上記3等分した領域における2つの幅広面の間の平均厚みについて説明するための説明図である。
図9】他の実施形態に係る組電池用スペーサーについて説明するための模式図である。
図10】他の実施形態に係る組電池用スペーサーについて説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、ここで開示される技術のいくつかの好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の実施形態は、ここで開示される技術を限定することを意図したものではない。
なお、本明細書において、所定の数値範囲をA~B(A、Bは任意の数値)と記すときは、A以上B以下の意味である。したがって、Aを上回り且つBを下回る場合を包含する。
【0017】
なお、本明細書において「電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、一次電池と二次電池とを包含する概念である。また、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)と、を包含する概念である。
【0018】
<組電池1>
先ず、本実施形態に係る組電池1の構成について、図1を参照しつつ説明する。図示するように、組電池1は、大まかにいって、正極および負極が、セパレータを介して積層された正負極積層構造部82を有する電極体を備えた単電池100が、上記正負極の積層方向Xに複数配列されて構成されている。また、組電池1は、上記配列された単電池間に配置されるシート状のスペーサー20を備えている。そして、本実施形態に係る組電池1は、2つの拘束板10によって拘束されて構成されており、拘束圧は従来公知の組電池における拘束圧と同様とすることができる。なお、図1では便宜上、電極端子近傍の詳細な構造は省略している。単電池100どうしは電極端子を介して直列あるいは並列に接続されている。
【0019】
<単電池100>
次に、本実施形態に係る組電池1が備える単電池100の構成について、図2を参照しつつ簡単に説明する。なお、以下では、電極体として積層型電極体80を備えた場合を例にして説明するが、電極体をかかる種類に限定することを意図したものではない。電極体は、例えば正極シート(正極)と、負極シート(負極)とをセパレータが介在するようにしつつ重ね合わせた後、捲回し、扁平形状になるようにプレス処理したいわゆる捲回電極体等であってもよい。また、以下では、ラミネートフィルムからなる外装体70を用いた場合を例にして説明するが、外装体をかかる種類に限定することを意図したものではない。外装体は、例えば六面体形状の金属製の電池ケース等であってよい。なお、ラミネート外装体を備えた単電池は、電池ケースを備えた単電池と比較して、電池の充電時に膨張し易い傾向にある。したがって、ここで開示される技術を適用する対象として好適である。
【0020】
図2は、積層型電極体80を備えた単電池100の構成を模式的に示す平面図である。図2に示すように、単電池100は大まかにいって、積層型電極体80と、該積層型電極体を収容する外装体70とを備えている。一対のラミネートフィルムの間に積層型電極体80を配置し、ラミネートフィルムの外周縁部を溶着して図示しない溶着部を形成することにより、積層型電極体80を収容する外装体70が形成されている。
【0021】
詳しい図示は省略するが、本実施形態に係る積層型電極体80は、矩形状の正極シート40および負極シート50(以下、まとめて「電極シート」ともいう)が、同じく矩形状のセパレータシート60を介して複数積層されて形成されている。かかる電極シートは、箔状の金属部材である集電体(正極集電体42,負極集電体52)と、該集電体の表面(片面または両面)に形成された電極活物質層(正極活物質層41,負極活物質層51)とを備えている。
【0022】
本実施形態に係る矩形状の電極シートにおいて、長辺方向の一方の側縁部に、電極活物質層が形成されておらず集電体が露出した活物質層非形成部分(正極活物質層非形成部分43,負極活物質層非形成部分53)が形成されている。そして、正極活部物質層非形成部分43が一方の側縁部からはみ出し、かつ、負極活物質層非形成部分53が他方の側縁部からはみ出すように各々の電極シートを重ねることによって積層型電極体80が形成される。かかる積層型電極体の長辺方向の中央部には、電極シートの電極活物質層が重ねられたコア部(即ち、正負極積層構造部82)が形成されている。そして、長辺方向の一方の側縁部には、正極活物質層非形成部分43が複数層重ねられた正極端子接続部が形成され、他方の側縁部には、負極活物質層非形成部分53が複数層重ねられた負極端子接続部が形成される。正極集電端子44は正極集電端子接続部に接続されており、負極集電端子54は負極集電端子接続部に接続されている。
【0023】
ここで、単電池100は、例えば非水電解質二次電池であってもよいし、全固体電池であってもよい。非水電解質二次電池の場合、電極シートの間に絶縁性のセパレータシート60が挿入された積層型電極体80が用いられると共に、外装体70の内部に非水電解質が収容される。一方、全固体電池の場合、電極シートの間に固体電解質層(セパレータシート60に相当する)が挿入された積層型電極体80が用いられる。なお、上述した構成要素(具体的には、電極シート、セパレータシート、固体電解質層、非水電解質等)としては、この種の二次電池に使用され得るものを特に制限なく使用することが可能であり、本発明を特徴づけるものではないため、詳細な説明は省略する。
【0024】
<組電池用スペーサー20>
続いて、本実施形態に係る組電池1が備える組電池用スペーサー20について、図1および図3を参照しつつ説明する。先ず、図1に示すように、組電池用スペーサー20は、単電池間に配置された場合に、積層方向Xにおいて隣接する単電池100それぞれに対向する2つの幅広面22を有している。また、図3に示すように、組電池用スペーサー20は、単電池間に配置されていない状態(例えば、単電池間への配置前の状態や、電池解体後の状態)において、単電池100が備える積層型電極体80の中心部Pに対向する位置P’から、正負極積層構造の端面84aの中心部Qに対向する位置Q’に至るまで引いた直線上の任意の2点について、上記位置P’に近い順にa、bとしたとき、上記a、bそれぞれを中心とし、上記直線に沿った前後1.5cm区間における、2つの幅広面22の間の平均厚みをそれぞれDa、Dbとした場合、Da>Dbの関係を満たすことを特徴とする。即ち、2点a、bをどのように選択しても(但し、2点a、bとしては、前後1.5cm区間を確保できる点を選択するものとする)、Da>Dbを満たす。ここで、例えば、上記aを中心としたときの、上記直線に沿った前後1.5cm区間における2つの幅広面22の間の平均厚みDaは、次にように定義することができる。即ち、上記直線における、上記aから前方向(即ち、図3における左方向)1.5cmの部分から、上記aから後ろ方向(即ち、図3における右方向)1.5cmの部分までを10等分し、両端を含む11点における2つの幅広面22の間の厚みを測定する。そして、各々の厚みを用いて算出される平均値とすることができる。Dbについても同様である。なお、上記2点a、b間の距離は特に制限されないが、組電池用スペーサーの平均厚みを精度よく測定するという観点から、概ね1mm以上とすることができ、好ましくは3mm以上、より好ましくは5mm以上とすることができる。また、2点a、b間の距離の上限は、特に制限されないが、概ね1.5cm以下とすることができ、好ましくは1cm以下とすることができる。なお、2点a、b間の距離は上記範囲に制限されない。
【0025】
なお、本実施形態に係る積層型電極体80は、正負極積層構造の端面を、端面84a以外に3箇所有している(図3の端面84を参照)。したがって、位置P’から他の3箇所の端面84の中心部に対向する位置に至るまでそれぞれ引いた直線上の任意の2点について、上記位置P’に近い順にa、bとしたとき、上記a、bそれぞれを中心とし、上記直線に沿った前後1.5cm区間における、2つの幅広面間22の平均厚みをそれぞれDa、Dbとした場合、Da>Dbの関係を満たす。このような構成の組電池用スペーサー20を用いることで、組電池1の容量劣化を好適に抑制することができる。組電池用スペーサー20は、例えば金型を用いた成形等によって製造することができる。
【0026】
また、組電池用スペーサーの大きさが小さく、上述したような2点a、bを選択することができない場合は、以下のとおりとすることができる。即ち、単電池が備える積層型電極体の中心部に対向する位置から、端面の中心部に対向する位置に至るまで引いた直線上において任意の2点を選択し、上記中心部に対向する位置に近い順にx、yとする。そして、かかる2点から、上記中心部に対向する位置までの2つの幅広面間の平均厚みDx、Dyをそれぞれ算出し、Dx>Dyとなることが確認できればよい。ここで、例えば、上記xから上記中心部に対向する位置までの2つの幅広面間の平均厚みDxは、次にように定義することができる。即ち、上記直線における、上記xから上記中心部に対向する位置までを10等分し、両端を含む11点における2つの幅広面間の厚みを測定する。そして、各々の厚みを用いて算出される平均値とすることができる。Dyについても同様である。
【0027】
上記の構成とすることにより、ここに開示される技術による効果が達成される理由としては、特に限定して解釈されるものではないが、以下が考えられる。
図4は、組電池用スペーサー20を備えた組電池1を充電した場合に、電極体内に補足された気泡(ガス)30が電極体外へ排出される機構を示す模式図である。ここで、図4において、(a)は充電前の組電池1の一部を示す模式図であり、(b)は充電過程における組電池1の一部を示す模式図であり、(c)は充電後(典型的には、SOC90%以上)の組電池1の一部を示す模式図である。(b)に示すように、組電池1の充電過程において積層型電極体80が矢印sに沿って膨張すると、組電池用スペーサー20が存在することによって、電極面に対して中心より外側に向かって圧力が推移する(矢印tを参照)。これによって、電極体内に補足された気泡30を電極体外に効率よく排出することができる。したがって、組電池用スペーサー20によると、組電池における充放電反応が均一化し、容量劣化が好適に抑制されるものと考えられ得る。また、(c)に示すように、組電池スペーサー20は、積層方向Xにおいて隣接する単電池それぞれがSOC90%以上であるときに、2つの幅広面間の厚みが平坦な状態となることを実現することができる。
【0028】
一方、図5は、従来の組電池用スペーサー120を備えた組電池を充電した場合の態様を示す模式図である(図5における130,140,150,160,170は、それぞれ図4の30,40,50,60,70に対応する)。ここで、図5において、(a)は充電前の組電池1の一部を示す模式図であり、(b)は充電過程における組電池1の一部を示す模式図であり、(c)は充電後(典型的には、SOC90%以上)の組電池1の一部を示す模式図である。(b)に示すように、組電池1の充電過程において電極体が膨張した場合、電極面に対して圧力が均一にかかるため(矢印uを参照)、電極体内に補足された気泡(ガス)130を電極体外に排出することが困難であることが分かる。したがって、ガス噛みが解消されないことによって、組電池における充放電反応が不均一化するため、容量劣化が生じ易いと考えられ得る。
【0029】
なお、上記では「上記直線に沿った前後1.5cm区間」という規定を行っているが、これは、単電池100が備える積層型電極体80の中心部Pに対向する位置P’から、正負極積層構造の端面84aの中心部Qに対向する位置Q’に至るまで引いた直線に沿った3cm区間において、2つの幅広面22の間の厚みが一定の部分(即ち、平坦部)が存在しても良いことを意味している。これは、電極体内に滞留するガスの大きさは電池の大きさに比例するものではなく一様(最大で数cm程度)であり、上記2つの幅広面間の厚みが一定の部分が3cm以内であれば電極体で発生したガスを電極体外へ押し出すことができるという本発明者らの知見に基づくものである。
【0030】
組電池用スペーサー20を構成する材料としては、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、例えば弾性体から構成されていてもよい。また、かかる弾性体の圧縮弾性率は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、例えばJISK7181:2011に基づいて測定された圧縮弾性率が概ね50MPa以上であり、好ましくは70MPa以上、より好ましくは100MPa以上であり得る。また、上記圧縮弾性率の上限は、概ね200MPa以下であり、好ましくは150MPa以下(例えば120MPa以下)であり得る。しかしながら、圧縮弾性率は上記に限定されない。
【0031】
上述したような弾性体としては、例えば、天然ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、フッ素ゴム等の熱硬化性エラストマーや、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性エラストマー等を挙げることができる。
【0032】
また、図6に示すように、組電池用スペーサー20の中央部の厚みをD、端部の厚みをDとした場合、Dに対するDの比(D/D)は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、概ね1.2以上であり、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上とすることができる。また、上記比(D/D)は、概ね10以下であり、好ましくは8.0以下、より好ましくは6.0以下とすることができる。上記比(D/D)は、例えば1.5~6.0の範囲内とすることができる。
【0033】
そして、積層型電極体80の積層方向Xにおける厚み、上記D、上記D、の具体的な大きさの範囲は、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて特に制限されないが、例えば、積層型電極体80の積層方向Xにおける厚みが10mm~100mmであった場合、上記Dを1mm~10mm程度、上記Dを0.5mm~8mm程度とすることができる。
【0034】
また、好ましい一態様では、図8に示すように、単電池間に配置されていない状態のスペーサーにおいて、単電池100が備える積層型電極体80の中心部Pに対向する位置P’から、正負極積層構造82の端面84aの中心部Qに対向する位置Q’に至るまで引いた直線を3等分し、上記3等分した領域における2つの幅広面22の間の平均厚みを、上記位置P’に近い順にD、D、Dとしたとき、D>Dn+1(ここで、nは1または2)を満たす。なお、本実施形態に係る積層型電極体80は、正負極積層構造の端面を、端面84a以外に3箇所有している(図3の端面84を参照)。したがって、位置P’から他の3箇所の端面84の中心部に対向する位置に至るまでそれぞれ引いた直線を3等分し、上記3等分した領域における2つの幅広面22の間の平均厚みを、上記位置P’に近い順にD、D、Dとしたとき、D>Dn+1(ここで、nは1または2)を満たす。かかる構成の組電池用スペーサーを用いることで、組電池の容量劣化をより好適に抑制することができる。ここで、例えば、上記D次にように定義することができる。即ち、上記直線における、対応する領域を10等分し、両端を含む11点における2つの幅広面間の厚みを測定する。そして、各々の厚みを用いて算出される平均値とすることができる。
【0035】
また、図示していないが、上記位置P’から位置Q’に至るまで引いた直線を5等分し、上記5等分した領域における2つの幅広面22の間の平均厚みを、上記位置P’に近い順にD、D、・・・Dとしたとき、D>Dn+1(ここで、nは1~4の自然数)を満たす態様とすることもできる。また、図示していないが、上記位置P’から位置Q’に至るまで引いた直線を10等分し、上記10等分した領域における2つの幅広面22の間の平均厚みを、上記位置P’に近い順にD、D、・・・D10としたとき、D>Dn+1(ここで、nは1~9の自然数)を満たす態様とすることもできる。D、D、D、・・・D10のそれぞれの最大厚みは、D>D>D(>D・・・>D10)であることが好ましい。
【0036】
上記実施形態では、組電池用スペーサー20を例にして説明したが、ここで開示される組電池用スペーサーをかかる具体例に限定するものではない。ここで開示される組電池は、上述した具体例をその目的を変更しない限りにおいて種々変更したものが包含される。
【0037】
例えば図9に示すように、ここで開示される組電池用スペーサーは、2つの幅広面22Aのうちの少なくとも一方に、弾性体からなる凸部26を複数具備した弾性表面が形成された態様とすることができる。かかる構成によると、凸部26が潰れることによる弾性を得ることができるため、電極体内のガスの押し出しをより緩やかに(効果的に)実現することができる。電極体内のガスを緩やかに押し出した場合、ガスを急激に押し出した場合と比較して、ガスがより効果的に電極体外に排出されるとされる。なお、電極体内のガスをより効果的に排出するという観点から、2つの幅広面2Aが共に凸部26を具備している場合が好ましい。また、幅広面22Aは、凸部26をその一部または全面に具備していてもよい。電極体内のガスをより効果的に排出するという観点から、幅広面22A全体に凸部26を具備している場合が好ましい。なお、組電池用スペーサー20Aは、例えば金型の成形等によって製造することができる。
【0038】
凸部26を構成する材料としては、例えば組電池用スペーサー20を構成する材料の段落において列挙したようなものを特に制限することなく用いることができる。上記凸部26を構成する材料は、組電池用スペーサー20Aと同様であってもよいし、異なっていてもよい。凸部26の形状は、ここで開示される技術の効果が得られる限りにおいて特に制限されないが、例えば円柱状、直方体状、半球状、その他種々の形状とすることができる。また、上述したような形状を2種類以上組み合わせて用いることもできる。そして、凸部26として例えば円柱状、直方体状のものを用いる場合、それぞれの幅広面における長径の大きさは特に制限されないが、例えば3mm~10mm程度とすることができる。また、それぞれの厚みは、特に制限されないが、例えば1mm~4mm程度とすることができる。
【0039】
ここで、組電池用スペーサー20Aのように凸部26を具備する場合、組電池用スペーサーの2つの幅広面間の厚みは、凸部の厚みを含めた厚みとすることができる。
【0040】
上記実施形態で用いられている組電池用スペーサー20は、単電池間に配置されていない状態(例えば、単電池間への配置前の状態や、電池解体後の状態)の組電池用スペーサーを2つの幅広面間の厚みに対して垂直方向(即ち、図7におけるY方向)に2つに切断したとき、該2つの切断体24において上記Da>Dbの関係を満たしていた(即ち、2つの幅広面は共に勾配を具備していた)。しかしながら、これに限定されず、ここで開示される組電池用スペーサーは、2つの幅広面のうち一方が平坦である(即ち、図6の切断体24のような態様)とすることもできる。なお、図6に示すように、2つの切断体が共に勾配を具備する場合、ここで開示される技術の効果がより好適に発揮されるため好ましい。また、図1では、組電池1が備える7個の組電池用スペーサーの態様を同様としているが、これに限定されず、例えば拘束板1と該拘束板に隣接する単電池100の間に配置される組電池用スペーサーとして、切断体24のような態様のスペーサーを適宜用いてもよい。この場合、スペーサーが備える平坦面が拘束板と対向するように配置されることが好ましい。
【0041】
また、上記実施形態では、電極体として積層型電極体80を例にして説明したが、例えば図10に示すように電極体として捲回電極体を用いた場合は、正負極積層構造の2方の端面84bに向けて勾配を具備する組電池用スペーサー20Bが好適に用いられる。
【0042】
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0043】
<評価用組電池の作製>
<実施例1>
正極活物質としてのリチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物(NCM)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)とを、質量比がNCM:PVdF:AB=98:1:1となるように秤量し、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)中で混合して、正極スラリーを調製した。この正極スラリーを、長尺な帯状の正極芯体(アルミニウム箔、厚み12μm)の両面に塗布し、乾燥させた。これを所定のサイズに切り取り、ロールプレスで圧延することにより、正極芯体の両面に正極活物質層を備えた正極シートを得た。
【0044】
次に、負極活物質としての黒鉛粉末(C)と、バインダとしてのスチレンブタジエンラバー(SBR)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)とを、質量比がC:SBR:CMC=98:1:1となるように秤量し、水中で混合して、負極スラリーを調製した。この負極スラリーを長尺な帯状の負極芯体(銅箔、9μm)の両面に塗布し、乾燥させた。これを所定のサイズに切り取り、ロールプレスで圧延することにより、負極芯体の両面に負極活物質層を備えた負極シートを得た。
【0045】
セパレータとして、PE製の厚み14μmの多孔性ポリオレフィンシートを用意した。正極シートと、負極シートとをセパレータが介在するようにしつつ重ね合わせることで、積層型電極体を得た。かかる積層型電極体の厚みは24mm程度であった。
【0046】
上記のとおり作製した積層型電極体に電極端子を取り付けた後、非水電解質と共にラミネートケースに収容した。そして、ラミネートケースを封止することによって単電池を得た。ここで、非水電解質としては、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とをEC:DMC:EMC=3:3:4の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPFを1.1mol/Lの濃度で溶解させ、さらにビニレンカーボネート(VC)を2質量%濃度で溶解させたものを用いた。
【0047】
上記単電池を3個準備した。そして、単電池間に配置されていない状態において、単電池が備える電極体の中心部に対向する位置から、正負極積層構造の4方の端面の中心部に対向する位置に至るまで引いた直線上の任意の2点について、電極体の中心部に対向する位置に近い順にa、bとしたとき、上記a、bそれぞれを中心とし、上記直線に沿った前後1.5cm区間における、2つの幅広面間の平均厚みをそれぞれDa、Dbとした場合、Da>Dbの関係を満たすような組電池用スペーサー(図3の20を参照)を用意した。また、上記のとおり用意した組電池用スペーサーは、単電池間に配置されていない状態において、単電池が備える電極体の中心部に対向する位置から、正負極積層構造の4方の端面の中心部に対向する位置に至るまでそれぞれ引いた直線を3等分し、上記3等分した領域における2つの幅広面間の平均厚みを、電極体の中心部に対向する位置に近い順にD、D、Dとしたとき、D>Dn+1(ここで、nは1または2)を満たすことが確認された。
ここで、上記組電池用スペーサーとしては、中心厚み3mm、端部厚み1.5mm、エチレンプロピレンジエンゴム製のもの(圧縮弾性率:12MPa,以下同様)を使用した。かかる組電池用スペーサーを単電池間に配置し、各単電池を直列に接続した後、拘束板によって挟み込むことで、実施例1に係る評価用組電池を得た(図1を参照)。
【0048】
<実施例2>
実施例1と同様にして、正極シートと、負極シートとをセパレータが介在するようにしつつ重ね合わせた後、捲回し、これを扁平形状になるようにプレス処理することで扁平形状の捲回電極体を得た。かかる捲回電極体の厚みは24mm程度であった。そして、上記のとおり作製した捲回電極体に電極端子を取り付けた後、非水電解質と共にラミネートケースに収容した。そして、ラミネートケースを封止することによって単電池を得た。
【0049】
上記単電池を3個準備した。そして、単電池間に配置されていない状態において、単電池が備える電極体の中心部に対向する位置から、正負極積層構造の2方の端面の中心部に対向する位置に至るまで引いた直線上の任意の2点について、電極体の中心部に対向する位置に近い順にa、bとしたとき、上記a、bそれぞれを中心とし、上記直線に沿った前後1.5cm区間における、2つの幅広面間の平均厚みをそれぞれDa、Dbとした場合、Da>Dbの関係を満たすような組電池用スペーサー(図10の20Bを参照)を用意した。また、上記のとおり用意した組電池用スペーサーは、単電池間に配置されていない状態において、単電池が備える電極体の中心部に対向する位置から、正負極積層構造の2方の端面の中心部に対向する位置に至るまでそれぞれ引いた直線を3等分し、上記3等分した領域における2つの幅広面間の平均厚みを、電極体の中心部に対向する位置に近い順にD、D、Dとしたとき、D>Dn+1(ここで、nは1または2)を満たすことが確認された。
ここで、上記組電池用スペーサーとしては、中心厚み3mm、端部厚み1.5mm、エチレンプロピレンジエンゴム製のものを使用した。かかる組電池用スペーサーを単電池間に配置し、各単電池を直列に接続した後、拘束板によって挟み込むことで、実施例2に係る評価用組電池を得た。
【0050】
<比較例1>
単電池間に配置する組電池用スペーサーを、厚み勾配の無い平坦なエチレンプロピレンジエンゴム製のスペーサーとしたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1に係る評価用組電池を得た。
【0051】
<比較例2>
単電池間に配置する組電池用スペーサーを、厚み勾配の無い平坦なエチレンプロピレンジエンゴム製のスペーサーとしたこと以外は、実施例2と同様にして、比較例2に係る評価用組電池を得た。
【0052】
<比較例3>
組電池用スペーサーとして、単電池間に配置されていない状態において、単電池が備える電極体の中心部に対向する位置から、正負極積層構造が露出していない2方の端面の中心部に対向する位置に至るまで引いた直線上の任意の2点について、電極体の中心部に対向する位置に近い順にa、bとしたとき、上記a、bそれぞれを中心とし、上記直線に沿った前後1.5cm区間における、2つの幅広面間の平均厚みをそれぞれDa、Dbとしたとき、Da>Dbの関係を満たすような組電池用スペーサーを用意した。ここで、上記組電池用スペーサーとしては、中心厚み3mm、端部厚み1.5mm、エチレンプロピレンジエンゴム製を使用した。これ以外は実施例2と同様にして、比較例3に係る評価用組電池を得た。
【0053】
<容量維持率の評価>
各評価用組電池を、45℃下に置き、0.3Cの電流値で4.2Vまで定電流充電し、その後0.3Cの電流値で3.0Vまで定電流放電した。このときの放電容量を求め、初期容量とした。また、かかる充放電サイクルを100サイクル行った後の放電容量を、初期容量と同様な方法で求めた。そして、(充放電100サイクル後の放電容量/初期容量)×100より、容量維持率(%)を求めた。各評価用組電池に係る容量維持率はそれぞれ、実施例1:95%、実施例2:94%、比較例1:90%、比較例2:88%、比較例3:89%であった。なお、上記値が90%超である場合に、組電池の容量維持率の低下が好適に抑制されている(即ち、容量劣化が好適に抑制されている)と評価される。
【0054】
以上より、単電池間に配置されていない状態において、単電池が備える電極体の中心部に対向する位置から、正負極積層構造の端面の中心部に対向する位置に至るまで引いた直線上の任意の2点について、電極体の中心部に対向する位置に近い順にa、bとしたとき、上記a、bそれぞれを中心とし、上記直線に沿った前後1.5cm区間における、2つの幅広面間の平均厚みをそれぞれDa、Dbとした場合、Da>Dbの関係を満たすような組電池用スペーサーを用いた実施例1および2に係る評価用組電池では、厚み勾配の無い平坦な組電池用スペーサーを用いた比較例1,2に係る評価用組電池や、単電池間に配置されていない状態において、単電池が備える電極体の中心部に対向する位置から、正負極積層構造が露出していない端面の中心部に対向する位置に至るまで引いた直線上の任意の2点について、電極体の中心部に対向する位置に近い順にa、bとしたとき、該a、bそれぞれを中心とし、上記直線に沿った前後1.5cm区間における、2つの幅広面間の平均厚みをそれぞれDa、Dbとした場合、Da>Dbの関係を満たすような組電池用スペーサーを用いた比較例3に係る評価用組電池と比較して、容量劣化が好適に抑制されることが確認された。
【0055】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1 組電池
10 拘束板
20,20A,20B,120 組電池用スペーサー
22,22A 幅広面
24 切断体
26 凸部
30,130 気泡
40,140 正極シート(正極)
41 正極活物質層
42 正極集電体
43 正極活物質層非形成部分
44 正極集電端子
50,150 負極シート(負極)
51 負極活物質層
52 負極集電体
53 負極活物質層非形成部分
54 負極集電端子
60,160 セパレータ(セパレータシート)
70,170 ラミネート外装体
80 積層型電極体
82 正負極積層構造部
84,84a,84b 端面
100 単電池
X 積層方向

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10