(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】二酸化炭素還元触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 23/62 20060101AFI20231005BHJP
B01J 37/03 20060101ALI20231005BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20231005BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20231005BHJP
B01J 37/34 20060101ALI20231005BHJP
C07C 1/12 20060101ALN20231005BHJP
C07C 9/04 20060101ALN20231005BHJP
C07C 9/14 20060101ALN20231005BHJP
【FI】
B01J23/62 Z
B01J37/03 B
B01J37/08
B01J37/02 101Z
B01J37/34
C07C1/12
C07C9/04
C07C9/14
(21)【出願番号】P 2021117832
(22)【出願日】2021-07-16
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】305060567
【氏名又は名称】国立大学法人富山大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】山本 修身
(72)【発明者】
【氏名】隅 英明
(72)【発明者】
【氏名】椿 範立
(72)【発明者】
【氏名】張 培培
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-192714(JP,A)
【文献】特開平10-192706(JP,A)
【文献】特表2014-534902(JP,A)
【文献】特開昭53-076199(JP,A)
【文献】特開平10-080636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C07C 1/12
C07C 9/04
C07C 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を水素化反応させて二酸化炭素を還元し炭化水素を生成する二酸化炭素還元触媒であって、
触媒金属として、Fe
、Ga
、及びNaを含
み、
前記触媒金属中に前記Naは0.5~1.5質量%含まれる、二酸化炭素還元触媒。
【請求項2】
前記触媒金属中に前記Gaは10~30質量%含まれる、請求項
1に記載の二酸化炭素還元触媒。
【請求項3】
前記触媒金属中に前記Gaは20~30質量%含まれる、請求項
1に記載の二酸化炭素還元触媒。
【請求項4】
前記触媒金属は、前記Fe及び前記Gaにより形成されるFe-Ga複合酸化物を含む、請求項1~
3のいずれかに記載の二酸化炭素還元触媒。
【請求項5】
請求項1に記載の二酸化炭素還元触媒の製造方法であって、
前記Feの硝酸塩と前記Gaの硝酸塩とを所定量蒸留水に溶解させた水溶液から、共沈法により沈殿物を抽出する共沈工程を有する、二酸化炭素還元触媒の製造方法。
【請求項6】
前記共沈工程の次に、前記沈殿物にNaを含む水溶液を滴下して所定期間乾燥させ、得られた粉末を所定の温度で焼成する含浸工程を有する、請求項
5に記載の二酸化炭素還元触媒の製造方法。
【請求項7】
前記共沈工程において、前記水溶液に対しNaCO
3水溶液を滴下することで沈殿溶液を得る、請求項
5又は
6に記載の二酸化炭素還元触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素還元触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二酸化炭素を水素化反応させて燃料を生成する技術が知られている。例えば、二酸化炭素と水素の混合ガスからメタノールを合成する触媒として、Cu、Zn及びアルミナからなる触媒が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、二酸化炭素を水素化反応させて得られる燃料として、液体燃料として使用可能な、炭素数が例えば5以上の炭化水素を生成できることが求められる。このような技術として、FT(フィッシャー・トロプシュ:Fischer-Tropsch)合成反応におけるFe触媒に対しカリウムを助触媒として用いることで、高度に分岐したC5以上の生成物を調製する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特公昭45-16682号公報
【文献】特表2005-537340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に開示された技術において助触媒として用いられるカリウムは、FT合成反応において二酸化炭素を捕捉する機能を有すると考えられる。しかし、助触媒としてのカリウムは、生成される炭化水素の炭素数の増大には直接寄与しないものと考えられる。このため、例えば内燃機関の排ガス等の高流速下で、炭素数が例えば5以上の炭化水素を高収率で生成することは不可能だった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高流速下においても炭素数が5以上の炭化水素を高効率で生成可能な二酸化炭素還元触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明は、二酸化炭素を水素化反応させて二酸化炭素を還元し炭化水素を生成する二酸化炭素還元触媒であって、触媒金属として、Fe及びGaを含む、二酸化炭素還元触媒に関する。
【0008】
(2) 前記触媒金属として更にNaを含む、(1)に記載の二酸化炭素還元触媒。
【0009】
(3) 前記触媒金属中に前記Naは0.5~1.5質量%含まれる、(2)に記載の二酸化炭素還元触媒。
【0010】
(4) 前記触媒金属中に前記Gaは10~30質量%含まれる、(1)~(3)のいずれかに記載の二酸化炭素還元触媒。
【0011】
(5) 前記触媒金属中に前記Gaは20~30質量%含まれる、(1)~(3)のいずれかに記載の二酸化炭素還元触媒。
【0012】
(6) 前記触媒金属は、前記Fe及び前記Gaにより形成されるFe-Ga複合酸化物を含む、(1)~(5)のいずれかに記載の二酸化炭素還元触媒。
【0013】
(7) また、本発明は、(1)に記載の二酸化炭素還元触媒の製造方法であって、前記Feの硝酸塩と前記Gaの硝酸塩とを所定量蒸留水に溶解させた水溶液から、共沈法により沈殿物を抽出する共沈工程を有する、二酸化炭素還元触媒の製造方法に関する。
【0014】
(8) 前記共沈工程の次に、前記沈殿物にNaを含む水溶液を滴下して所定期間乾燥させ、得られた粉末を所定の温度で焼成する含浸工程を有する、(7)に記載の二酸化炭素還元触媒の製造方法。
【0015】
(9) 前記共沈工程において、前記水溶液に対しNaCO3水溶液を滴下することで沈殿溶液を得る、(7)又は(8)に記載の二酸化炭素還元触媒の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高流速下においても炭素数が5以上の炭化水素を高効率で生成可能な二酸化炭素還元触媒を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例及び比較例に係るCO
2変換率を示すグラフである。
【
図2】実施例及び比較例に係る炭化水素選択率を示すグラフである。
【
図3】実施例及び比較例に係るC
5+生成率を示すグラフである。
【
図4】CO
2変換率とGa含有量との関係を示すグラフである。
【
図5】C
5+選択率とGa含有量との関係を示すグラフである。
【
図6】C
5+生成率とGa含有量との関係を示すグラフである。
【
図7】触媒金属粒子径とGa含有量との関係を示すグラフである。
【
図8】CO
2変換率とNa含有量との関係を示すグラフである。
【
図9】C
5+選択率とNa含有量との関係を示すグラフである。
【
図10】C
5+生成率とNa含有量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について説明する。本実施形態に係る二酸化炭素還元触媒は、二酸化炭素を水素化反応させて二酸化炭素を還元するとともに炭化水素を生成することが可能な触媒である。特に、本実施形態に係る二酸化炭素還元触媒は、従来の触媒と比較して、炭素数が5以上の炭化水素の生成割合や生成率が高い。二酸化炭素の供給源としては特に限定されないが、本実施形態に係る二酸化炭素還元触媒は、内燃機関の排ガス等、高流速で二酸化炭素が供給される供給源に対しても、好ましく炭素数が5以上の炭化水素を生成できる。
【0019】
<二酸化炭素還元触媒>
本実施形態に係る二酸化炭素還元触媒(以下、単に「触媒」と記載する場合がある)は、触媒金属として、Fe(鉄)と、Ga(ガリウム)と、を含む。また、Na(ナトリウム)を含むことが好ましい。本実施形態に係る触媒を用いた二酸化炭素還元反応は、H2(水素)とCO2(二酸化炭素)の混合ガスを原料とし、CO2がCO(一酸化炭素)に還元される逆シフト反応と、COが炭化水素へと転換されるFT合成反応と、を一段で行うことにより炭化水素を生成する反応である。本実施形態に係る触媒は、上記逆シフト反応と、FT合成反応との両方に寄与する。本実施形態に係る触媒を用いた二酸化炭素還元反応は、従来のFT合成反応と比較して、例えば空間速度SV(Space Velocity)=50,000h-1程度の高流速下においても、炭素数が5以上の炭化水素を高効率に生成できる。
【0020】
本実施形態に係る触媒金属に含有されるFeは、酸化物、炭酸化合物、硝酸化合物、硫酸化合物等の化合物であってもよく、酸化物であることが好ましい。これらの化合物は2種以上含有されてもよい。また、Feは、Fe及びGaにより形成されるFe-Ga複合酸化物として触媒金属に含有されることがより好ましい。Fe-Ga複合酸化物は、鉄酸化物等の化合物と比較して、微粒子化されるため、Fe触媒の反応サイトが増大することで、FT合成反応の反応時間、即ち生成される炭化水素の炭素鎖が成長する時間を確保できる。従って、高流速下においても炭素数が5以上の炭化水素の収率を向上させることができる。
【0021】
本実施形態に係る触媒金属に含有されるGaは、Feと同様に、酸化物、炭酸化合物、硝酸化合物、硫酸化合物等の化合物であってもよく、酸化物であることが好ましい。これらの化合物は2種以上含有されてもよい。Gaは、Fe及びGaにより形成されるFe-Ga複合酸化物として触媒金属に含有されることがより好ましい。
【0022】
本実施形態に係る触媒金属中におけるGaの含有量は、金属原子換算で10~30質量%であることが好ましく、20~30質量%であることがより好ましい。Gaの含有量が10質量%未満である場合、触媒金属の微粒子化が十分ではない場合がある。Gaの含有量が30質量%を超える場合、GaがFeの反応サイトを被覆することで、触媒活性が低下する場合がある。
【0023】
本実施形態に係る触媒金属は、更にNaを含むことが好ましい。Naは、Fe及びGaを含む触媒金属において助触媒として機能し、CO2をNa2CO3として捕捉することで、H2及びCO2からCOが生成する逆シフト反応を進行させ、CO2変換率を向上させることができる。Naは、Fe-Ga複合酸化物とは別に、酸化物等の形態でFe-Ga複合酸化物の表面上に存在することが好ましい。なお、触媒金属は、Naに代えて、又はNaと共に、Li、K、Rb、Cs等のアルカリ金属を含有していてもよい。
【0024】
本実施形態に係る触媒金属中におけるNaの含有量は、0.5~1.5質量%であることが好ましく、1.0質量%であることがより好ましい。Naの含有量が0.5質量%未満である場合、炭素数が5以上の炭化水素の十分な生成効率が得られない。Naの含有量が1.5質量%を超える場合、NaがFeの反応サイトを被覆することで触媒活性が低下する。
【0025】
本実施形態に係る二酸化炭素還元触媒は、例えば、触媒金属の粉体であってもよいし、触媒金属を加圧成型することで形成されるペレット状の成型体であってもよい。また、シリカ等の公知の触媒担体に触媒金属が担持されたものであってもよい。本実施形態に係る二酸化炭素還元触媒は、上記以外に、触媒製造工程等で混入する不可避的不純物を含んでもよいが、できるだけ不純物を含まないことが好ましい。
【0026】
<二酸化炭素還元触媒の製造方法>
本実施形態に係る二酸化炭素還元触媒の製造方法は、共沈工程を有する。また、共沈工程の次に、含侵工程を有することが好ましい。
【0027】
(共沈工程)
共沈工程は、Feの硝酸塩とGaの硝酸塩とを所定量蒸留水に溶解させた水溶液から、共沈法により触媒前駆体である沈殿物を抽出する工程である。共沈工程により、Fe-Ga複合酸化物が形成される。共沈工程において、FeとGaを含む上記水溶液に対し、Na2CO3水溶液を滴下することで、沈殿溶液が得られる。その後、沈殿溶液からろ過・洗浄等によって沈殿物を分離し、乾燥させることで、触媒前駆体である沈殿物(Fe-Ga複合酸化物)が得られる。
【0028】
(含侵工程)
含侵工程は、共沈工程により得られた沈殿物にNaを含む水溶液を滴下して所定時間乾燥させ、得られた粉末を所定の温度で焼成する工程である。含侵工程により、Fe-Ga複合酸化物の表面付近にNa化合物を偏在させることができる。Naを含む水溶液としては、例えば、NaNO3水溶液が挙げられる。NaNO3水溶液は、超音波加振の下、滴下することができる。これにより、Fe-Ga複合酸化物の表面付近にNa化合物を均一に偏在させることができる。焼成温度は、例えば550℃、焼成時間は4時間とすることができる。
【0029】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良は本発明に含まれる。
【実施例】
【0030】
次に、本発明の実施例について説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0031】
[実施例1]
表1に示す触媒金属1としてのFeの硝酸塩(Fe(NO3)3・9H2O)と、同じく触媒金属2としてのGaの硝酸塩(Ga(NO3)3・6H2Oとを、金属原子換算でFe:Gaの質量比が8:2となるように秤量し、蒸留水に溶解させた。次いで、上記水溶液を撹拌しながら、1.0M NaNO3水溶液を2ml/min滴下し、pH8.5に固定することで、FeとGaを沈殿物として含む沈殿溶液を得た。次いで、沈殿溶液を室温下、24時間エージングさせた後、ろ過、洗浄を繰り返すことで沈殿物を分離した。分離した沈殿物を60℃×12時間乾燥させることで、Fe-Ga触媒前駆体を得た。
【0032】
上記Fe-Ga触媒前駆体に対し、NaNO3水溶液を92kHz超音波加振の下、Na含有量が1.0質量%となるように滴下した。次いで、5000Paの真空下で1時間乾燥させ、更に常圧下で60℃×12時間乾燥させ、粉末を得た。得られた粉末を550℃×4時間焼成することで、実施例1に係る触媒を得た。
【0033】
[実施例2~3、比較例1~9]
触媒金属1(Fe)、及び触媒金属2の種類及び量を、それぞれ表1に示すものとしたこと以外は、実施例1と同様として、実施例2~3、及び比較例1~9に係る触媒を得た。比較例1は触媒金属2を用いず、Feの硝酸塩のみを用いた。なお、表1に触媒金属1と触媒金属2の質量部を示しているが、各実施例及び比較例に係る触媒金属には、表1に示す触媒金属1と触媒金属2以外に1.0質量%のNaが含有される。
【0034】
【0035】
[評価]
実施例1~3、及び比較例1~9の二酸化炭素還元触媒について、以下の方法で二酸化炭素還元反応を行った。装置は、固定床流通式の反応装置を使用し、反応ガスはCO2 2.8NL/h、H2 8.4NL/h(CO2/H2=1/3)とした。各実施例及び比較例に係る二酸化炭素触媒は0.4~0.8mm角のペレット状としたものを0.25g用いた。上記ペレットを、反応管(内径6mm)に5cmの長さで充填して用いた。W/F(触媒重量/ガス流量)は0.5g・h/mol、空間速度SV(Space Velocity)=50,000h-1とした。反応条件は温度380℃、圧力3MPa、反応時間4時間とした。触媒反応後のガス成分を、オンラインでのガスクロマトグラフィー(Shimadzu,GC-2014AT、検出器:熱伝導度検出器(TCD))及び水素炎イオン化検出器(FID)(Shimadzu,GC-2014AF)により定性・定量分析した。また触媒反応後の液体成分もオフラインでのガスクロマトグラフィー(Shimadzu,GC-2014AF、検出器:水素炎イオン化検出器(FID))により定性・定量分析した。
【0036】
(CO
2変換率)
上記二酸化炭素還元反応によるCO
2の変換率を、以下の式(1)により求めた。結果を
図1に示す。
CO
2変換率(%)=((反応前のCO
2濃度)-(反応後のCO
2濃度))/(反応前のCO
2濃度)×100 …(1)
【0037】
(炭化水素選択率)
上記二酸化炭素還元反応により生成された炭化水素(CO、CH
4、C
2-4、C
5+)の選択率を、以下の式(2)により求めた。なおC
2-4は、炭素数2~4の炭化水素を示し、C
5+は、炭素数5以上の炭化水素を示す。結果を
図2に示す。
炭化水素選択率(%)=(炭化水素濃度)/(((反応前のCO
2濃度)-(反応後のCO
2濃度))×100 …(2)
【0038】
(C
5+生成率)
上記二酸化炭素還元反応により生成されたC
5+(炭素数5以上の炭化水素)の生成率を、以下の式(3)により求めた。結果を
図3に示す。
C
5+生成率(%)=CO
2変換率×C
5+選択率/100 …(3)
【0039】
(Ga含有量とCO
2変換率との関係)
次に、表1に示すように触媒金属中のFeとGaとの質量割合を変化させた実施例1~3及び、Ga含有量をそれぞれ40質量%、50質量、60質量%(Fe含有量約60質量%、約50質量%、約40質量%)とした触媒と、Gaを含有しない比較例1の触媒を用いた二酸化炭素還元反応における、Ga含有量とCO
2変換率との関係を調べた。結果を
図4に示す。
図4の縦軸は上記式(1)により求められるCO
2変換率(%)を示し、
図4の横軸はGa含有量(質量%)を示す。なお、各触媒には、Naが1.0質量%含有されるが、Ga含有量としては触媒金属中のFeとGaとの合計に対するGaの質量割合を近似値として用いることができる(以下同様)。
【0040】
(Ga含有量とC
5+選択率との関係)
次に、
図4と同様に実施例1~3等及び比較例1の触媒を用いた二酸化炭素還元反応における、Ga含有量とC
5+選択率との関係を調べた。結果を
図5に示す。
図5の縦軸は上記式(2)により求められるC
5+選択率(%)を示し、
図5の横軸はGa含有量(質量%)を示す。
【0041】
(Ga含有量とC
5+生成率との関係)
次に、
図4と同様に実施例1~3等及び比較例1の触媒を用いた二酸化炭素還元反応における、Ga含有量とC
5+生成率との関係を調べた。結果を
図6に示す。
図6の縦軸は上記式(3)により求められるC
5+生成率(%)を示し、
図5の横軸はGa含有量(質量%)を示す。
【0042】
(Ga含有量と触媒金属粒子径との関係)
次に、
図4と同様に実施例1~3等及び比較例1の触媒のGa含有量と触媒金属粒子径(nm)との関係を調べた。結果を
図7に示す。
図7の縦軸は触媒金属粒子径(nm)を示し、
図7の横軸はGa含有量(質量%)を示す。触媒金属粒子径(nm)は、X線回折強度測定装置を用い、X線源をCuKα線、出力を40kV、50mAとして、2θ=35.6°付近で得られるピークに対して、以下の式(4)に示すシェラーの式を用いて算出した。なお式(4)におけるKはシェラー定数を、λはX線波長(nm)を、βはピークの半値幅を、θは回折角度をそれぞれ示す。
粒子径(nm)=K=K×λ/(β×cosθ) …(4)
【0043】
(Na含有量とCO
2変換率、C
5+選択率、C
5+生成率との関係)
次に、触媒金属中のGa含有量を30質量%とした触媒において、Na含有量を0質量%、0.5質量%、1.0質量%、1.5質量%、2.0質量%とし、残りの触媒金属中の成分をFeとした触媒をそれぞれ調製し、
図4~
図6と同様の条件で、CO
2変換率、C
5+選択率、C
5+生成率をそれぞれ測定及び算出して、Na含有量との関係を調べた。結果をそれぞれ
図8~
図10に示す。
【0044】
[考察]
図1~
図3から、実施例1の触媒は、従来の触媒金属としてFeのみを用いた触媒や、触媒金属としてGaの代わりに他の金属元素を用いた各比較例に係る触媒と比較して、炭素数5以上の炭化水素の選択率及び生成率が高く、かつCO
2変換率も比較的高い結果が明らかであった。
【0045】
また、
図4~
図6から、触媒金属としてのGaの含有量は、10~30質量%の範囲が好ましく、20~30質量%の範囲がより好ましい結果が明らかであった。Ga添加量を増加させると、C
5+を生成する触媒活性は向上するが、Ga含有量が30質量%を超える場合、GaがFeの反応サイトを被覆することで、結果的に触媒活性が低下しているものと考えられる。
【0046】
また、
図7から、Gaの含有量が10~30質量%の範囲内である場合、触媒金属が微粒子化されている結果が明らかであった。
図4~
図6の結果と併せて考察すると、触媒金属にGaを添加することによるC
5+生成率等の触媒活性の向上は、触媒金属が微粒子化されていることによるものと推察される。
【0047】
また、
図8~
図10から、触媒金属としてのGaの含有量が、10~30質量%の範囲内である場合において、触媒金属としてのNaの含有量は、0.5~1.5質量%の範囲が好ましく、1.0質量%の範囲がより好ましい結果が明らかであった。Na含有量を増やすほど、C
5+生成活性は向上するが、Na含有量が1.0質量%を超える場合、NaがFe触媒の反応サイトを被覆するため、触媒活性が低下するものと考えられる。