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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】メディアの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20231005BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231005BHJP
   B44C 1/175 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B41M5/00 100
B41J2/01 121
B41M5/00 120
B44C1/175 A
B44C1/175 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021128483
(22)【出願日】2021-08-04
(62)【分割の表示】P 2017080807の分割
【原出願日】2017-04-14
(65)【公開番号】P2021183418
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2021-08-04
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松永 信隆
【審査官】高草木 綾音
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-075408(JP,A)
【文献】特表2005-501761(JP,A)
【文献】特開2014-136795(JP,A)
【文献】特開2010-231038(JP,A)
【文献】特開2012-116168(JP,A)
【文献】特開2014-124941(JP,A)
【文献】特開2009-269384(JP,A)
【文献】特開2014-184685(JP,A)
【文献】特開2013-119585(JP,A)
【文献】特開2001-056578(JP,A)
【文献】特開2002-370448(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00- 5/52
B41J 2/01
B41J 2/165-2/215
B44C 1/16- 1/175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、第1着色層をインクジェット方式により形成する第1着色層形成工程と、
前記第1着色層上に、接着層をインクジェット方式により形成する接着層形成工程と、
前記接着層上に、薄膜としての箔体を積層して貼着する薄膜貼着工程と
を備え、
前記接着層は、硬化後、耐溶剤性の低い紫外線硬化インクによって形成されており、溶剤が塗布されることにより溶解して接着剤として機能するものであり、
前記接着層の表面に前記溶剤を塗布する溶剤塗布工程を更に含む
メディアの製造方法。
【請求項2】
前記接着層は、透明である
請求項1に記載のメディアの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に着色層が形成されたメディアの製造方法及びメディアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、基材としての被記録媒体に箔を転写する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、被記録媒体に液体を吐出し、吐出された液体に活性エネルギー線を照射して第1硬化させることで、被記録媒体に粘着性をもつ接着剤の画像を形成する。そして、形成した接着剤の画像に箔を転写し、転写された箔の上から、活性エネルギー線を照射して第2硬化させ接着剤をさらに架橋させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-226880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法により、被記録媒体上に接着剤を介して転写された箔は、使用による擦過等により経時的に剥がれてしまい、被記録媒体に接着剤だけが残存する。接着剤が透明である場合、箔が剥がれた被記録媒体は、視認性が低下してしまう。このような場合、通常、箔の上にトップコートを形成することにより、箔を保護することが考えられる。しかしながら、箔の上にトップコートを形成すると、手間がかかってしまうため、箔が転写された被記録媒体の製造コストが増大してしまう。また、接着剤の接着強度を上げることも考えられるが、使用する接着剤によっては、インクジェット方式による被記録媒体への印刷の制限が考えられ、被記録媒体に対する加工の自由度が低下してしまうことが考えられる。
【0005】
そこで、本発明は、製造を容易としつつ、視認性の向上を図ることができるメディアの製造方法及びメディアを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のメディアは、基材と、前記基材上に設けられ、前記基材上に着色される第1着色部を有する第1着色層と、前記第1着色層上に設けられ、前記第1着色部に重ねて設けられる接着部を有する接着層と、前記接着層上に設けられ、前記接着部に重ねて設けられると共に、前記接着部上に着色される第2着色部を有する第2着色層と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、経時的に第2着色層の第2着色部が剥がれてしまっても、接着層により第1着色層を保護することができる。つまり、接着層を、第1着色層を保護する保護層として機能させることができる。これにより、残存する第2着色層の第2着色部と、第2着色部に重ねて設けられる露出する第1着色層の第1着色部との組み合わせによって、視認性を確保することができ、また、多様性を有する画像を提供することができる。多様性を有する画像として、例えば、剥がれた第2着色部を、重ねて設けられた第1着色層の第1着色部でカモフラージュすることができる。また、第1着色層を、第2着色層で隠蔽し、第2着色層を積極的に剥がす(スクラッチする)ことで、第1着色層をあらわにすることができる。具体的に、第1着色部を変化後の画像とし第2着色部を変化前の画像とすれば、第2着色部を剥がすことで、変化前の画像から変化後の画像に遷移させることができる。ここで、第1着色層及び第2着色層は、カラーインクを用いた画像層または薄膜により形成された薄膜層とすることができ、これらの組み合わせにより、4つの画像パターンとなる画像を提供することが可能となる。具体的に、第1着色層が画像層となり、第2着色層が薄膜層となる画像パターン、第1着色層が薄膜層となり、第2着色層が画像層となる画像パターン、第1着色層が画像層となり、第2着色層が画像層となる画像パターン、第1着色層が薄膜層となり、第2着色層が薄膜層となる画像パターンがある。
【0008】
また、前記第1着色層は、カラーインクにより形成された画像層及び薄膜により形成された層のいずれか一方であり、前記第2着色層は、カラーインクにより形成された画像層及び薄膜により形成された層のいずれか他方であることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、カラーインクにより形成された画像層と、薄膜により形成された層との組み合わせによって、装飾性の高い画像を提供することができる。また、経時的に第2着色層となる画像層または薄膜の一部が剥がれてしまっても、接着層により保護された第1着色層となる薄膜または画像層が露出することから、第1着色層でカモフラージュすることができ、視認性を確保することができる。また、カラーインクを用いることで、インクジェット方式で画像層を形成することができるため、高精細な画像層を形成することができる。なお、カラーインクとしては、例えば、紫外線硬化型のカラーインクであり、ミマキエンジニアリング製の「LH-100」または桜井株式会社製の「LF-350」が用いられる。
【0010】
また、前記第1着色層及び前記第2着色層は、カラーインクにより形成された画像層であることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、第2着色層となる画像層により、第1着色層となる画像層を隠蔽した画像を提供することができる。このため、第2着色層を剥離させることで、隠蔽された第1着色層の一部を露出させることができるため、第1着色層と第2着色層とを組み合わせた画像を提供することができる。また、カラーインクを用いることで、インクジェット方式で画像層を形成することができるため、高精細な画像層を形成することができる。
【0012】
また、前記接着層は、紫外線硬化インクにより形成された層であることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、紫外線硬化インクとしては、例えば、ミマキエンジニアリング製の「PR-100」または「LUS-350 Clear」を用いることができる。このため、インクジェット方式で紫外線硬化インクを吐出して接着層を形成することにより、高精細な接着層を形成することができる。
【0014】
また、前記接着層は、前記第1着色層の層厚よりも厚くなっていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、接着層の層厚を厚くすることができるため、使用による擦過等により接着層が剥がれることを抑制することができ、第1着色層を好適に保護することができる。
【0016】
また、前記第1着色層と前記接着層と前記第2着色層とは、前記基材上に形成される形状が同形であることが好ましい。
【0017】
この構成によれば、第1着色層と接着層と第2着色層とを同じ形状にできるため、経時的に第2着色層が剥がれてしまっても、接着層により保護された第2着色層と同形の第1着色層が露出することから、第1着色層でより好適にカモフラージュすることができ、視認性をより高めることができる。
【0018】
また、前記接着層は、前記第1着色層に対して凹凸を有する形状となっていることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、接着層を、凹凸を有する形状とすることで、接着層の凸部に第2着色層が形成されることになる。この場合、接着層に対する第2着色層の形成領域が小さいものとなるため、第2着色層を積極的に剥がしやすいものとすることができる。このため、第1着色層と第2着色層とを組み合わせた画像の形成を積極的に促すことができ、多様性を有する画像を提供することができる。
【0020】
本発明のメディアの製造方法は、基材上に、第1着色層をインクジェット方式により形成する第1着色層形成工程と、前記第1着色層上に、接着層をインクジェット方式により形成する接着層形成工程と、前記接着層上に、薄膜を積層して貼着する薄膜貼着工程と、を備えることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、第1着色層を、インクジェット方式により形成された画像層とすることができる。また、接着層を、インクジェット方式により形成された層とすることができる。このため、基材上に形成された第1着色層を、高精細な画像層として形成することができ、また、第1着色層上に形成された接着層を、高精細な層として形成することができる。これにより、第1着色層と接着層とを容易に同じ形状(同じ画像パターン)にすることができる。また、接着層に貼着される薄膜は、接着層と同じ形状(同じ画像パターン)となることから、接着層と薄膜の層とを容易に同じ形状にすることができる。よって、第1着色層と薄膜の層とも同じ形状にできることから、経時的に薄膜の層が剥がれてしまっても、薄膜の層と同じ形状となる接着層により保護された第1着色層が露出することになる。これにより、残存する第2着色層と、露出する第1着色層との組み合わせによって、視認性を確保することができ、また、多様性を有する画像を提供することができる。
【0022】
なお、前記第1着色層形成工程では、前記基材上に、薄膜を積層して貼着することで前記第1着色層を形成してもよい。
【0023】
この構成によれば、第1着色層を、薄膜により形成された層とすることができる。このため、基材上に形成された薄膜を接着層によって保護することができる。これにより、経時的に第2着色層が剥がれてしまっても、接着層により保護された第1着色層としての薄膜を露出させることができる。
【0024】
また、前記第2着色層形成工程では、前記接着層上に、インクジェットヘッドから吐出したカラーインクを着弾させて画像層となる前記第2着色層を形成してもよい。
【0025】
この構成によれば、第2着色層を、カラーインクにより形成された画像層とすることができる。このため、第2着色層となる画像層により、第1着色層を隠蔽することができる。これにより、第2着色層を剥離させることで、隠蔽された第1着色層の一部を露出させることができるため、第1着色層と第2着色層とを組み合わせた画像を提供することができる。また、カラーインクを用いることで、インクジェット方式で画像層を形成することができ、高精細な画像層を形成することができる。
【0026】
また、前記接着層は、硬化後、熱によって溶融する紫外線硬化インクによって形成されており、加熱されることによって溶融して接着剤として機能することが好ましい。
【0027】
この構成によれば、加熱されることにより接着層が溶融して軟化することで、接着層を接着剤として好適に機能させることができる。なお、紫外線硬化インクとしては、例えば、ミマキエンジニアリング製の「PR-100」または「LUS-350 Clear」を用いることができる。
【0028】
また、前記接着層は、硬化後、耐溶剤性の低い紫外線硬化インクによって形成されており、前記溶剤が塗布されることにより溶解して接着剤として機能することが好ましい。
【0029】
この構成によれば、溶剤が塗布されることにより接着層が溶解することで、接着層を接着剤として好適に機能させることができる。なお、このような紫外線硬化インクとしては、例えば、ミマキエンジニアリング製の「LUS-350 Clear」を用いることができる。
【0030】
また、前記接着層は、透明であることが好ましい。
【0031】
この構成によれば、透明な接着層を通して第1着色層を容易に視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、実施形態1に係るメディアの製造方法により製造されたメディアを示す断面図である。
図2図2は、実施形態1に係るメディアの製造方法に用いられるメディア本体及び蒸着フィルムを示す断面図である。
図3図3は、実施形態1に係るメディアの製造方法を示す説明図である。
図4図4は、実施形態2に係るメディアを示す断面図である。
図5図5は、実施形態3に係るメディアの製造方法により製造されたメディアを示す断面図である。
図6図6は、実施形態3に係るメディアの製造方法に用いられるメディア及び蒸着フィルムを示す断面図である。
図7図7は、実施形態4に係るメディアの製造方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0034】
[実施形態1]
実施形態1に係るメディアの製造方法は、基材としてのメディア本体5に画像を形成して、画像が形成されたメディア1を作製する方法である。先ず、図1を参照して、メディアの製造方法により作製されるメディア1について説明する。
【0035】
図1は、実施形態1に係るメディアの製造方法により形成されたメディアを示す断面図である。図1に示すように、メディア1は、メディア本体(基材)5と、カラーインク層(第1着色層)7と、接着層8と、箔体(第2着色層)11と、を含んで構成されている。
【0036】
メディア本体5は、材料として、樹脂、金属、布地または皮革材等の材料を適用可能であり、画像形成が可能な材料であれば、いずれの材料を適用することが可能である。また、メディア本体5は、画像が形成される被形成面を有しており、この被形成面は、形状として、平坦面、または曲面であってもよく、画像形成が可能な形状であれば、いずれの形状に適用することが可能である。
【0037】
カラーインク層7は、紫外線硬化型のカラーインクを用いて形成される画像層である。カラーインク層7は、メディア本体5の被形成面上に形成されており、カラーインクによってメディア本体5上に着色される第1着色部を有している。カラーインク層7において形成される画像は、例えば、文字及び図柄等を組み合わせたもの、または、所定の領域を塗りつぶしたベタ塗り等を含むものである。カラーインク層7に用いられる紫外線硬化型のカラーインクは、紫外線が照射されることで完全硬化するインクである。なお、完全硬化とは、紫外線硬化型のカラーインクに紫外線が照射されることで架橋した状態となることである。カラーインク層7に用いられる紫外線硬化型のカラーインクとしては、例えば、例えば、ミマキエンジニアリング製の「LH-100」または桜井株式会社製の「LF-350」が用いられる。
【0038】
接着層8は、紫外線硬化インクを用いて形成され、透明な層となっている。接着層8は、カラーインク層7上に形成されており、紫外線硬化インクによって第1着色部に重ねて設けられる接着部を有している。接着層8は、カラーインク層7の層厚よりも厚くなっている。接着層8に用いられる紫外線硬化インクは、紫外線が照射されることで完全硬化するインクであり、また、完全硬化となった状態において加熱されることにより溶融し軟化することで接着剤として機能するインクとなっている。紫外線硬化インクとしては、例えば、ミマキエンジニアリング製の「PR-100」または「LUS-350 Clear」が用いられる。
【0039】
箔体11は、例えば、金属等を用いて形成された蒸着膜(薄膜)であり、いわゆるコールドフォイル方式で用いられる箔体11となっている。この箔体11は、メディア本体5を装飾する装飾用の層として形成されている。また、箔体11は、着色された透明な薄膜となっている。箔体11は、接着層8上に形成されており、接着部に重ねて設けられると共に、接着部上に着色される第2着色部として機能する。箔体11は、軟化した接着層8が接着剤として機能することで、接着層8に接着される。
【0040】
上記のように構成されるメディア1は、メディア本体5の被形成面に対してカラーインク層7及び接着層8が盛り上がって形成されることで、接着層8を介してメディア本体5に接着される装飾用の箔体11が盛り上がって形成される。また、カラーインク層7と接着層8と箔体11とは、メディア本体5上に形成される形状が同形である。つまり、メディア本体5上に形成されるカラーインク層7の画像パターンと、カラーインク層7上に形成される接着層8の画像パターンとは、同じ画像となっている。また、箔体11は、接着層8と同じ画像パターンとなるように接着されることから、接着層8の画像パターンと同じ画像となる。このように、カラーインク層7と箔体11とは、同じ画像パターンとなることから、箔体11が剥がれても、カラーインク層7によりカモフラージュすることが可能となる。
【0041】
次に、図2を参照して、図1に示すメディア1を作製する際に、実施形態1のメディアの製造方法において用いられる、カラーインク層7及び接着層8が形成されたメディア本体5と、蒸着フィルム10とについて説明する。図2は、実施形態1に係るメディアの製造方法に用いられるメディア本体及び蒸着フィルムを示す断面図である。
【0042】
図2に示すように、カラーインク層7及び接着層8が形成されたメディア本体5は、蒸着フィルム10との接着前において、カラーインク層7及び接着層8が完全硬化の状態となっており、接着層8が接着剤として機能していないことから、取り扱いが容易なものとなっている。つまり、図2に示すメディア本体5は、カラーインク層7及び接着層8が完全硬化した状態で保管することが可能となっている。
【0043】
蒸着フィルム10は、はく離フィルム12と、蒸着膜である箔体11とを有する、コールドフォイル方式で加工されたフィルムとなっている。はく離フィルム12は、接着層8に接着される箔体11がはく離可能に付着されている。つまり、はく離フィルム12と箔体11との付着力は、箔体11と接着層8との接着力に比して低いものとなっている。このため、蒸着フィルム10の箔体11が接着層8に接着された状態で、蒸着フィルム10を剥がすと、接着層8に接着された箔体11がはく離フィルム12から剥離する。一方で、接着層8に接着されない箔体11は、はく離フィルム12に付着した状態を維持する。このため、接着層8の画像パターンと、箔体11の画像パターンとは、同じものとなる。
【0044】
次に、図3を参照して、実施形態1に係るメディアの製造方法について説明する。図3は、実施形態1に係るメディアの製造方法を示す説明図である。図3に示すように、実施形態1のメディアの製造方法は、第1着色層形成工程S10と、接着層形成工程S11と、第2着色層形成工程(薄膜貼着工程)S12とを順に行っている。
【0045】
図3に示すように、第1着色層形成工程S10では、紫外線硬化型のカラーインクをインクジェットヘッド20から吐出し、吐出したカラーインクをメディア本体5に着弾させる。第1着色層形成工程S10では、インクジェットヘッド20を有する印刷装置として、例えば、ミマキエンジニアリング製の「UJF-3042」または「UJF-6042」を用いて印刷を行っている。また、第1着色層形成工程S10では、インクジェットヘッド20の移動方向に後行して、紫外線照射装置21を移動させ、紫外線照射装置21からカラーインクに紫外線を照射して硬化させることで、カラーインク層7を形成する。
【0046】
接着層形成工程S11では、紫外線硬化インクをインクジェットヘッド30から吐出し、吐出した紫外線硬化インクをメディア本体5のカラーインク層7の第1着色部上に着弾させる。接着層形成工程S11では、インクジェットヘッド30を有する印刷装置として、第1着色層形成工程S10と同様に、ミマキエンジニアリング製の「UJF-3042」または「UJF-6042」を用いて印刷を行っている。このため、接着層形成工程S11は、第1着色層形成工程S10と、ほぼ同様の工程となることから、同じ印刷装置を用いて、接着層形成工程S11及び第1着色層形成工程S10を行ってもよい。また、接着層形成工程S11では、第1着色層形成工程S10と同様に、インクジェットヘッド30の移動方向に後行して、紫外線照射装置31を移動させ、紫外線照射装置31から紫外線硬化インクに紫外線を照射して硬化させることで、透明な接着層8を形成する。このとき、接着層形成工程S11では、カラーインク層7の層厚に比して、接着層8の層厚が厚くなるように、接着層8を形成する。つまり、接着層形成工程S11では、第1着色層形成工程S10に比して、紫外線硬化インクの吐出量を増大させており、これにより、接着層8の層厚を厚くしている。このように、接着層形成工程S11では、紫外線硬化インクの吐出後、紫外線を照射して硬化させることができるため、インクジェット印刷された透明な接着層8の画像を高精細に形成することができる。
【0047】
この第1着色層形成工程S10及び接着層形成工程S11では、メディア本体5の被形成面に対してカラーインク層7及び接着層8を盛り上げて形成している。そして、第1着色層形成工程S10及び接着層形成工程S11においてカラーインク層7及び接着層8が形成されたメディア本体5は、容易に取り扱うことが可能となる。カラーインク層7及び接着層8が形成されたメディア本体5は、そのまま保管されたり、または、後述する第2着色層形成工程S12で取り扱われたりする。また、カラーインク層7及び接着層8は、インクジェット方式で形成できることから、カラーインク層7及び接着層8を容易に同じ画像パターンとすることができる。
【0048】
続いて、第2着色層形成工程S12では、接着層8上に第2着色層としての箔体11を配置する。第2着色層形成工程S12は、積層工程S12aと、接着工程S12bと、はく離工程S12cとを順に行っている。
【0049】
積層工程S12aでは、メディア本体5に形成された接着層8と、蒸着フィルム10の箔体11とを対向させて重ね合わせることにより、カラーインク層7及び接着層8が形成されたメディア本体5と、箔体11とを積層させる。
【0050】
接着工程S12bでは、蒸着フィルム10の外側(はく離フィルム12側)から、加熱部材25により接着層8を加熱して溶融させることで、接着層8を接着剤として機能させ、接着層8に箔体11を接着させる。具体的に、接着工程S12bでは、接着層8の加熱時において、加熱部材25を、蒸着フィルム10、接着層8及びカラーインク層7を介して、メディア本体5に押し付けることで、メディア本体5と箔体11とを圧着させている。このとき、接着工程S12bでは、接着層8が平坦となるように、加熱部材25が、メディア本体5に向かって押圧される。接着層8が平坦となることで、平坦となる接着層8に箔体11が接着されるため、箔体11の輝度感を高めることができる。
【0051】
なお、接着工程S12bにおいて用いられる加熱部材25は、平坦な加熱面を有するアイロン等の加熱部材であってもよいし、外周面が加熱面となる円柱形状の加熱ローラであってもよく、特に限定されない。また、接着工程S12bでは、メディア本体5に対して蒸着フィルム10を押し付けていたが、メディア本体5を蒸着フィルム10に押し付けてもよく、特に限定されない。さらに、接着工程S12bでは、メディア本体5と箔体11とを圧着可能であれば、例えば、真空パック内に、メディア本体5と箔体11とを収容し、真空パック内を真空引きにして、大気圧によりメディア本体5と箔体11とを圧着してもよい。
【0052】
続いて、はく離工程S12cでは、メディア本体5から蒸着フィルム10を引き剥がす。蒸着フィルム10は、接着層8の接着部と接着した箔体11がはく離フィルム12から引き剥がされ、接着層8の接着部と接着していない箔体11がはく離フィルム12に付着した状態を維持する。このため、接着層8上に形成される箔体11は、接着層8の画像パターンと同じ画像となり、第2着色部として形成される。このように、図3に示すメディアの製造方法により、図1に示すメディア1が形成される。
【0053】
以上のように、実施形態1によれば、接着層8によりカラーインク層7を保護することができ、接着層8上に箔体11を設けることができる。このため、経時的に箔体11の一部(第2着色部)が剥がれてしまっても、接着層8により保護されたカラーインク層7の第1着色部が露出することから、剥がれた箔体11を、カラーインク層7でカモフラージュすることができる。これにより、残存する箔体11と露出するカラーインク層7との組み合わせによって、視認性を確保することができ、また、多様性を有する画像を提供することができる。このとき、カラーインク層7は、トップコートを形成する場合に比べて、メディア本体5上に容易に形成できることから、製造コストの増大を抑制することができる。
【0054】
また、実施形態1によれば、カラーインク層7と箔体11との組み合わせによって、装飾性の高い画像を提供することができる。そして、インクジェットヘッド20によりメディア本体5にカラーインク層7を高精細に形成することができ、また、メディア本体5上にカラーインク層7を容易に形成することができる。
【0055】
また、実施形態1によれば、インクジェットヘッド30により紫外線硬化インクを吐出して接着層8を形成することにより、高精細な接着層8を形成することができる。
【0056】
また、実施形態1によれば、第1着色層形成工程S10と、接着層形成工程S11とを、ほぼ同様の工程で行うことができるため、カラーインク層7をより容易に形成することができる。
【0057】
また、実施形態1によれば、接着層8が透明であるため、透明な接着層8を通してカラーインク層7を容易に視認することができる。
【0058】
また、実施形態1によれば、接着層8をカラーインク層7の層厚よりも厚くすることができるため、使用による擦過等により接着層8が剥がれることを抑制することができ、カラーインク層7を好適に保護することができる。
【0059】
また、実施形態1によれば、カラーインク層7及び接着層8が形成されたメディア本体5と、蒸着フィルム10の箔体11とを積層して、接着層8に箔体11を好適に接着することができる。なお、接着層8が接着剤として機能する前は、カラーインク層7及び接着層8が形成されたメディア本体5を、容易に取り扱うことができる。
【0060】
また、実施形態1によれば、硬化後に接着層8が加熱されることにより、接着層8が溶融して軟化することで、接着層8を接着剤として好適に機能させることができる。
【0061】
また、実施形態1によれば、カラーインク層7、接着層8及び箔体11を同じ形状にできるため、経時的に箔体11が剥がれてしまっても、接着層8により保護された箔体11と同形のカラーインク層7が露出することから、カラーインク層7でより好適にカモフラージュすることができ、視認性をより高めることができる。
【0062】
なお、実施形態1では、接着層8上に箔体11を接着させることで、箔体11を第2着色層としたが、箔体11に代えて、カラーインク層としてもよい。つまり、接着層8上に、第2着色層となるカラーインク層を形成する。第2着色層としてカラーインク層を形成する第2着色層形成工程S12は、第1着色層形成工程S10と同様に、紫外線硬化型のカラーインクをインクジェットヘッド20から吐出し、吐出したカラーインクをメディア本体5の接着層8上に着弾させる。そして、第2着色層形成工程S12では、インクジェットヘッド20の移動方向に後行して、紫外線照射装置21を移動させ、紫外線照射装置21からカラーインクに紫外線を照射して硬化させることで、カラーインク層を形成する。第1着色層となるカラーインク層7と、第2着色層となるカラーインク層とを形成することで、第2着色層となるカラーインク層により、第1着色層となるカラーインク層7を隠蔽した画像を提供することができる。この構成によれば、第1着色層となるカラーインク層7を、第2着色層となるカラーインク層で隠蔽し、第2着色層を積極的に剥がす(スクラッチする)ことで、第1着色層をあらわにすることができる。具体的に、第1着色部を変化後の画像とし第2着色部を変化前の画像とすれば、第2着色部を剥がすことで、変化前の画像から変化後の画像に遷移させることができる。このため、第1着色層と第2着色層とを組み合わせた多様な画像を提供することができる。
【0063】
[実施形態2]
次に、図4を参照して、実施形態2に係るメディアの製造方法について説明する。なお、実施形態2では、重複した記載を避けるべく、実施形態1と異なる部分について説明し、実施形態1と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。図4は、実施形態2に係るメディアを示す断面図である。
【0064】
実施形態2のメディアの製造方法では、メディア本体5上に箔体11を設け、箔体11上に接着層8を形成し、接着層8上にカラーインク層7を形成している。すなわち、実施形態2のメディアの製造方法では、実施形態1のカラーインク層7と箔体11とを入れ替えた構成となっている。
【0065】
具体的に、実施形態2の箔体11は、いわゆるホットスタンプ方式で用いられる箔体11となっている。この箔体11は、ホットメルト層41とトップコート層42とが一体となっている。ホットメルト層41は、加熱されることで接着剤として機能する層であり、箔体11のメディア本体5側に設けられる。トップコート層42は、箔体11を保護する層であり、箔体11の接着層8側に設けられる。ここで、トップコート層42には、カラーインクによる印刷が困難であるため、箔体11上に接着層8を設けることで、カラーインク層7の形成を可能としている。
【0066】
実施形態2のメディアの製造方法では、第1着色層形成工程S10において、メディア本体5上に第1着色層としての箔体11を配置する。第1着色層形成工程S10では、メディア5本体と箔体11とを対向させて重ね合わせ、箔体11のホットメルト層41を、図示しない加熱部材により加熱し、箔体11をメディア本体5に押し付けることで、メディア本体5と箔体11とを圧着させる。この後、接着層形成工程S11では、紫外線硬化インクをインクジェットヘッド30から吐出し、吐出した紫外線硬化インクをメディア本体5の箔体11上に着弾させる。そして、接着層形成工程S11では、インクジェットヘッド30の移動方向に後行して、紫外線照射装置31を移動させ、紫外線照射装置31から紫外線硬化インクに紫外線を照射して硬化させることで、透明な接着層8を形成する。第2着色層形成工程S12では、紫外線硬化型のカラーインクをインクジェットヘッド20から吐出し、吐出したカラーインクをメディア本体5の接着層8上に着弾させる。そして、第2着色層形成工程S12では、インクジェットヘッド20の移動方向に後行して、紫外線照射装置21を移動させ、紫外線照射装置21からカラーインクに紫外線を照射して硬化させることで、カラーインク層7を形成する。
【0067】
以上のように、実施形態2によれば、メディア本体5上に形成された箔体11を接着層8によって保護することができる。このため、経時的にカラーインク層7が剥がれてしまっても、接着層8により保護された第1着色層としての箔体11を露出させることができるため、剥がれたカラーインク層7を、箔体11でカモフラージュすることができる。これにより、残存するカラーインク層7と露出する箔体11との組み合わせによって、視認性を確保することができ、また、多様性を有する画像を提供することができる。
【0068】
[実施形態3]
次に、図5及び図6を参照して、実施形態3に係るメディアの製造方法について説明する。なお、実施形態3では、重複した記載を避けるべく、実施形態1及び2と異なる部分について説明し、実施形態1及び2と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。図5は、実施形態3に係るメディアの製造方法により形成されたメディアを示す断面図である。図6は、実施形態3に係るメディアの製造方法に用いられるメディア及び蒸着フィルムを示す断面図である。
【0069】
実施形態3のメディアの製造方法では、実施形態1の接着層8を、カラーインク層7に対して、凹凸を有する画像パターンとなるように形成している。図5に示すように、メディア1のカラーインク層7は、例えば、ドット柄となる画像パターンとなるように形成されている。また、接着層8は、カラーインク層7上に形成され、カラーインク層7と同様に、凹凸を有するドット柄となる画像パターンとなるように形成されている。つまり、カラーインク層7と接着層8とは、同じ画像パターンとなっている。この接着層8は、接着部と非接着部とにより、凹凸が形成され、接着部が凸部となり、非接着部が凹部となる。
【0070】
箔体11は、実施形態1と同様に、金属等を用いて形成された蒸着膜であり、いわゆるコールドフォイル方式で用いられる箔体11となっている。この箔体11は、メディア本体5を装飾する装飾用の層として形成されている。箔体11は、接着層8上に形成されており、軟化した接着層8が接着剤として機能することで、接着層8に接着される。このとき、接着層8がドット柄となる画像パターンであることから、接着層8の凸部に箔体11が接着されることで、接着層8に接着される箔体11も、接着層8と同じドット柄となる画像パターンとなる。
【0071】
図6に示すように、図5に示すメディア1を作製する際に、実施形態3のメディアの製造方法において用いられる、カラーインク層7及び接着層8が形成されたメディア本体5と、蒸着フィルム10とは、実施形態1と同様となっている。つまり、実施形態3において用いられる蒸着フィルム10は、はく離フィルム12と、蒸着膜である箔体11とを有する、コールドフォイル方式で加工されたフィルムとなっている。そして、この蒸着フィルム10の箔体11と、メディア本体5の接着層8とを対向させて重ね合わせ、加熱部材25により接着層8を加熱して溶融させることで、接着層8を接着剤として機能させ、接着層8に箔体11を接着させる。
【0072】
以上のように、実施形態3によれば、接着層8を、凹凸を有する画像パターンとすることで、接着層8の凸部に箔体11が接着されることになる。このとき、接着層8がベタ塗りされる実施形態1に比して、凹凸を有する接着層に形成される箔体11の形成領域が小さいものとなるため、箔体11を積極的に剥がしやすいものとすることができる。このため、カラーインク層7と箔体11とを組み合わせた画像の形成を積極的に促すことができ、多様性を有する画像を提供することができる。
【0073】
[実施形態4]
次に、図7を参照して、実施形態4に係るメディアの製造方法について説明する。なお、実施形態4でも、重複した記載を避けるべく、実施形態1から3と異なる部分について説明し、実施形態1から3と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。図7は、実施形態4に係るメディアの製造方法を示す説明図である。
【0074】
実施形態1のメディアの製造方法では、接着層8を加熱することで、接着層8を軟化させ、軟化した接着層8を接着剤として機能させていた。実施形態4のメディアの製造方法では、接着層8に溶剤45を塗布することで、接着層8を溶解させ、溶解した接着層8を接着剤として機能させている。
【0075】
実施形態4のメディアの製造方法は、図7に示すように、第2着色層形成工程S12として、溶剤塗布工程S12dと、積層工程S12eと、接着工程S12fと、はく離工程S12gとを順に行っている。なお、第1着色層形成工程S10と接着層形成工程S11とは、実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0076】
溶剤塗布工程S12dでは、メディア本体5上に形成された接着層8の表面に対して、溶剤45が塗布される。溶剤塗布工程S12dにおいて、接着層8の表面に溶剤45が塗布されると、接着層8の溶剤45が塗布された部位が溶解することで、接着層8が接着剤として機能する。
【0077】
積層工程S12eでは、実施形態1の積層工程S12aと同様に、メディア本体5の接着層8と、蒸着フィルム10の箔体11とを対向させて重ね合わせることにより、カラーインク層7及び接着層8が形成されたメディア本体5と、箔体11とを積層させる。
【0078】
接着工程S12fでは、メディア本体5の接着層8に、蒸着フィルム10を圧着させることで、メディア本体5の接着層8と箔体11とを接着させる。このとき、実施形態1のように、接着層8を加熱する必要がないため、加熱部材25を用いる必要がない。
【0079】
続いて、はく離工程S12gでは、メディア本体5から蒸着フィルム10を引き剥がす。蒸着フィルム10は、接着層8と接着した箔体11がはく離フィルム12から引き剥がされ、接着層8と接着していない箔体11がはく離フィルム12に付着した状態を維持する。このように、図7に示すメディアの製造方法により、図1に示すメディア1が形成される。
【0080】
以上のように、実施形態4によれば、溶剤45が塗布されることにより接着層8が溶解することで、接着層8を接着剤として好適に機能させることができる。このため、接着層8を加熱する必要がないため、加熱部材25を用いることなく、メディア本体5の接着層8と箔体11とを好適に接着することができる。
【0081】
なお、実施形態1から4において、メディア本体5から順に、第1着色層、接着層8、第2着色層が形成されていればよく、各層間に他の層が設けられていてもよい。例えば、接着層8と第2着色層との間に、フィルムを設けてもよいし、第2着色層上にトップコート層を形成してもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 メディア
5 メディア本体
7 カラーインク層
8 接着層
10 蒸着フィルム
11 箔体
12 はく離フィルム
20,30 インクジェットヘッド
21,31 紫外線照射装置
25 加熱部材
41 ホットメルト層
42 トップコート層
45 溶剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7