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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】鋼-タングステン傾斜機能材料系
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/25 20210101AFI20231005BHJP
   G21B 1/13 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
B22F10/25
G21B1/13
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021132348
(22)【出願日】2021-08-16
(65)【公開番号】P2022176395
(43)【公開日】2022-11-28
【審査請求日】2021-11-05
(31)【優先権主張番号】63/091,410
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/401,706
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515057827
【氏名又は名称】クエステック イノベーションズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100196405
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 邦光
(72)【発明者】
【氏名】マリー トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ダナ フランケル
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-518865(JP,A)
【文献】J.M. Missiaen et al.,Design of a W/steel functionally graded material for plasma facing components of DEMO,Journal of Nuclear Materials,2011年09月30日,Volume 416, Issue 3,Pages 262-269,https://doi.org/10.1016/j.jnucmat.2011.05.054
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 3/105
B22F 3/16
B22F 10/00-10/85
B22F 12/00-12/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タングステン系構造及び鋼系構造の間に広がる傾斜体積を含む傾斜機能材料であって、前記傾斜体積が複数の付加製造された層を含み、
前記複数の付加製造された層の少なくとも1つが、バナジウム及びクロムから選択される第3元素を含み、
鉄(Fe)を含む前記複数の付加製造された層の少なくとも1つが、アルミニウムを更に含む、傾斜機能材料。
【請求項2】
前記傾斜体積が、第3元素勾配を有し、
前記タングステン部分に隣接する付加製造された層における第3元素の質量パーセントが、前記タングステン部分及び前記鋼部分の中間の付加製造された層における第3元素の質量パーセントより低く、
前記鋼部分に隣接する付加製造された層における第3元素の質量パーセントが、前記タングステン部分及び前記鋼部分の中間の前記付加製造された層における第3元素の質量パーセントより低い、請求項1に記載の傾斜機能材料。
【請求項3】
前記傾斜体積が、20体積パーセント未満のラーベス相及びミュー相を含む、請求項1又は請求項2に記載の傾斜機能材料。
【請求項4】
アルミニウムが、前記複数の付加製造された層の少なくとも1つに、15質量パーセント以下で存在する、請求項に記載の傾斜機能材料。
【請求項5】
鉄(Fe)を含む前記付加製造された層が、20体積パーセント未満のシグマ相を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の傾斜機能材料。
【請求項6】
前記第3元素が、前記複数の付加製造された層の少なくとも1つに、80質量パーセント以上で存在する、請求項1~のいずれか1項に記載の傾斜機能材料。
【請求項7】
前記複数の付加製造された層のいずれも、鋼及びタングステンの両方を含まない、請求項1~のいずれか1項に記載の傾斜機能材料。
【請求項8】
前記鋼部分が、酸化物分散強化型低放射化フェライトマルテンサイト(RAFM)鋼を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の傾斜機能材料。
【請求項9】
第1終点材料及び第2終点材料に隣接する傾斜機能材料を作製する方法であって、
第1組の層を連続して作製する工程であって、前記第1組の層における各連続層が、前記第1終点材料を減少する量で含み、かつ第3元素を増加する量で含む、工程と;
80質量%以上の前記第3元素、並びに10質量%未満の前記第1終点材料及び/又は前記第2終点材料を含む層を作製する工程と;
第2組の層を連続して作製する工程であって、前記第2組の層における各連続層が、前記第2終点材料を増加する量で含み、かつ前記第3元素を減少する量で含む、工程と、
を含み、前記第1終点材料及び前記第2終点材料の一方がタングステン(W)を含み、他方が鋼合金を含み、
鉄(Fe)を含む前記層の少なくとも1つが、アルミニウムを更に含み、
前記第3元素が、バナジウム(V)又はクロム(Cr)のどちらかを含む、方法。
【請求項10】
前記第1終点材料が、前記鋼合金であり、前記第1組の層の少なくとも1つの層が、アルミニウム(Al)を含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
記第1組の層の任意の層におけるアルミニウム(Al)の最大量が、15質量%以下である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
タングステン(W)の量が、前記第2組の層における隣接層間で直線的に変化する、請求項に記載の方法。
【請求項13】
タングステンを含むプラズマ対向反応器部分;
前記プラズマ対向反応器部分の少なくとも一部を囲み、鋼を含む放熱部分;並びに
前記プラズマ対向反応器部分及び前記放熱部分の間に広がる傾斜体積を含む、プラズマ対向機器であって、
前記傾斜体積が、複数の付加製造された層を含み;
前記複数の付加製造された層の少なくとも1つが、バナジウム及びクロムから選択される第3元素を含み、
鉄(Fe)を含む前記複数の付加製造された層の少なくとも1つが、アルミニウムを更に含む、プラズマ対向機器。
【請求項14】
前記傾斜体積が、第3元素勾配を有し、
前記プラズマ対向反応器部分に隣接する付加製造された層における第3元素の質量パーセントが、前記プラズマ対向反応器部分及び前記放熱部分の中間の付加製造された層における第3元素の質量パーセントより低く;
前記放熱部分に隣接する付加製造された層における第3元素の質量パーセントが、前記プラズマ対向反応器部分及び前記放熱部分の中間の前記付加製造された層における第3元素の質量パーセントより低い、請求項13に記載のプラズマ対向機器。
【請求項15】
前記傾斜体積が、20体積パーセント未満のラーベス相及びミュー相を含み;
ルミニウムが、前記複数の付加製造された層の少なくとも1つに、15質量パーセント以下で存在し;
鉄(Fe)を含む前記付加製造された層が、20体積パーセント未満のシグマ相を含む、請求項13又は請求項14に記載のプラズマ対向機器。
【請求項16】
前記第3元素が、前記複数の付加製造された層の少なくとも1つに、80質量パーセント以上で存在し;前記複数の付加製造された層のいずれも、鋼及びタングステンの両方を含まない、請求項13~15のいずれか1項に記載のプラズマ対向機器。
【請求項17】
前記放熱部分が、酸化物分散強化型低放射化フェライトマルテンサイト(RAFM)鋼を含む、請求項13~16のいずれか1項に記載のプラズマ対向機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は2020年10月14日に出願された米国仮特許出願第63/091,410号の優先権を主張するものであり、その全文は参照によりここに組み入れられたものとする。
【0002】
政府所有権
本発明は、米国エネルギー省によって授与されたQuesTek Innovations LLCに対するDE-SC0020032に基づく米国政府の支援を受けて行われた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
技術分野
本開示は、異種金属を接合する材料、方法及び技術に関する。より具体的に、例示的な材料、方法及び技術は異種金属を接合することができる傾斜機能材料系に関する。
【背景技術】
【0004】
序論
優れた高温性能を有する材料、及びアクティブ冷却システムに熱伝導を提供する材料間で異種接合を行うのは難しく、多くの性能障害の原因となり得る。核融合炉におけるプラズマ対向機器(PFC)について、プラズマにより生じる極めて高い熱負荷を放散するため、タングステン(W)などのプラズマ対向耐熱性材料をヒートシンクに接合しなければならない。熱サイクル中に遮蔽材料(タングステン(W))及びヒートシンク(低放射化フェライトマルテンサイト(Reduced Activation Ferritic Martensitic;RAFM)鋼又は銅(Cu))間の熱膨張係数(CTE)の差が大きいことで誘発される応力は、クラッキング又は機器の破損を引き起こし得る。
【発明の概要】
【0005】
本明細書で開示、検討する材料、方法及び技術は、傾斜機能材料に関する。1つの態様において、傾斜機能材料はタングステン構造及び鋼構造間に広がる傾斜体積(graded volume)を含む。この傾斜体積は複数の付加製造された層を含む。複数の付加製造された層の少なくとも1つは、バナジウム及びクロムから選択される第3元素を含む。
別の態様において、第1終点材料及び第2終点材料に隣接する傾斜機能材料を作製する方法を開示する。本方法の例としては、第1組の層を連続して作製し、第1組の層における各連続層が、減少する量の第1終点材料及び増加する量の第3元素を含むことと;80質量%以上第3元素、並びに10質量%未満の第1終点材料及び/又は第2終点材料を含む層を作製することと;第2組の層を連続して作製し、第2組の層における各連続層が、増加する量の第2終点材料及び減少する量の第3元素を含むことと、からなり、第1終点材料又は第2終点材料のどちらかがタングステン(W)を含む。
別の態様において、製造物品を開示する。製造物品の例は、タングステン部分、鋼部分、並びにタングステン部分及び鋼部分に広がる傾斜体積を含んでよい。傾斜体積は複数の付加製造された層を含み、複数の付加製造された層の少なくとも1つはバナジウム及びクロムから選択される第3元素を含む。
別の態様において、プラズマ対向機器を開示する。プラズマ対向機器は、タングステンを含むプラズマ対向反応器部分;プラズマ対向反応器部分の少なくとも一部を囲む放熱部分;並びにプラズマ対向反応器部分及び放熱部分間に広がる傾斜体積を含んでよい。傾斜体積は複数の付加製造された層を含んでよい。複数の付加製造された層の少なくとも1つはバナジウム及びクロムから選択される第3元素を含んでよい。
本開示によるいくつかの利益を得るために、傾斜機能材料に関する材料、技術又は方法が本明細書で特徴づけられる詳細のすべてを含むという特定の要求は無い。従って、本明細書で特徴づけられる具体例は、記載される技術の例示的な応用であることが意図され、別の方法が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は例示的な印刷物品の側面概略図である。
図2図2は例示的な傾斜機能材料の側面概略図である。
図3A図3Aは傾斜機能材料例のある実施形態の側面概略図である。
図3B図3Bは傾斜機能材料例の別の実施形態の側面概略図である。
図3C図3Cは傾斜機能材料例の別の実施形態の側面概略図である。
図4図4は1100K(827℃)のFe-9CrからWの勾配を示す。
図5図5A及び図5Bは2つの異なる酸化物分散強化型低放射化フェライトマルテンサイト鋼及びタングステン間の擬2元系平衡等温図を示す。
図6図6A及び図6Bは、それぞれ1300℃及び800℃の温度におけるクロム(Cr)、タングステン(W)、及び鉄(Fe)の3元系状態図を示す。
図7図7A及び図7Bは、それぞれ826℃及び1300℃の温度におけるバナジウム(V)、タングステン(W)、及び鉄-9Cr(Fe-9Cr)の3元系状態図を示す。
図8図8A及び図8Bは、それぞれ827℃及び500℃の温度におけるバナジウム(V)、アルミニウム(Al)、及びRAFM鋼(Fe-9Cr-1W-0.1C)の3元系状態図を示す。
図9図9A及び図9Bは、それぞれ0質量%アルミニウム及び5質量%アルミニウムを有する、RAFM鋼(Fe-9Cr-1W-0.1C)及びバナジウム(V)の状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書で開示、検討する材料、方法及び技術は傾斜機能材料に関する。本明細書で開示する例示的な傾斜機能材料は、異なる材料間に界面を提供することができる。例えば、異なる材料は異なる熱膨張係数を有する場合がある。一例として、傾斜機能材料は高温を受けるように設計された材料、及び放熱材料として機能するように設計された材料間に界面を提供することができる。
上記のように、異なる熱膨張係数を有する材料間にシャープな界面を有すると、クラッキング又は機器の破損をもたらす場合がある。遮蔽材料及び下層の冷却構造体間において傾斜機能材料中間層でシャープな界面を置き換えると、異種材料間に熱的性質のより連続する勾配を作ることができる。結果として、熱機械応力成長を低減し、より強い接合を生じることができる。傾斜機能材料を調製することができる技術のうち、粉末噴射式指向性エネルギー堆積(powder-blown directed energy deposition;DED)などの付加製造(AM)技術は柔軟性があり、複雑な形態及び制御された微細構造を有する傾斜機能材料を製造することができる期待できる選択肢である。
本開示の特定の態様は、冷却構造体として鋼、及び遮蔽材料としてタングステンを含む。異種性質(融点、熱膨張係数等)及び脆い金属間相を形成する傾向のため、鋼をタングステンに直接接合することは困難である。これらすべてが接合の質を不十分にし得る。付加製造は組成傾斜系を製造することができ、この組成を制御された方法で2つ以上の材料(元素又は合金)間で変化させて、接合の性質及び性能を最適にする。
いくつかの態様において、本開示は組成系(鋼-X-Y-W)を特定しており、「鋼」は低放射化フェライトマルテンサイト鋼(「RAFM鋼」)又は酸化物分散強化型低放射化フェライトマルテンサイト鋼(「ODS RAFM鋼」)を指すことができる。X及びYは第3元素及び第4元素の添加であり、戦略的比率で添加されると、鋼及びタングステン間に組成経路を可能にする。これは脆い金属間相の形成を回避し、冷却及び加工性を増強し、並びに/又は高価で有害な(つまり、高い中性子放射化)元素を回避する。熱力学計算及び他のスクリーニング基準により、以下の系は期待できる鋼-W勾配系:鋼-V-Al-W、及び鋼-Cr-Al-Wとして特定されている。
【0008】
I.例示的な傾斜機能材料
例示的な傾斜機能材料の様々な態様を以下に記載する。
A.傾斜機能材料の配置の模式例
図1は、例示的な製造物品100の側面断面図を模式的に示す。図に示す実施形態において、一方の外面は冷却構造体102から構成され、反対の外面は遮蔽材料106から構成される。一連の中間層は冷却構造体102及び遮蔽材料106間に配置され、これらの層は傾斜機能材料104と呼ばれる。一般的に、冷却構造体102及び遮蔽材料106は、異なる熱膨張係数及び融点など、1つ又は複数の異種物性を有する。いくつかの実施において、「異種」は、特定の性質が冷却構造体102及び遮蔽材料106間で少なくとも1.5、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4又は少なくとも5倍異なることを意味する。
一連の材料層を印刷することを含む付加製造技術を用い、製造物品100を作製することができる。冷却構造体102又は遮蔽材料106のどちらかから開始して製造物品100を印刷することができる。傾斜機能材料104を印刷する場合、隣接する材料(冷却構造体102又は遮蔽材料106のどちらか)の量は各印刷された層で減少し、1つ又は複数の元素を各層に含むことができる。ある時点で、一方の外側材料の量は傾斜機能材料104における印刷された層に含まれず、その反対の外側材料の量はその材料が印刷された層の全体を形成するまで、各層で増加する。
【0009】
B.設計考察例
異種材料間に機能勾配を生じさせる際の1つの課題は、有害相の形成を回避することができる組成経路を決定することである。特定の実施において、傾斜機能材料はタングステン(W)系材料及びRAFM鋼又は銅(Cu)間の界面である。鋼及びタングステン終点間の単純な線形経路は、ラーベス相及びミュー相など、結合を弱くし、製造又は操作中にクラッキングを引き起こす可能性が高い多くの脆い金属間相を安定させる。特定の第3元素添加(鋼-X-W、Xは第3元素添加)又は第4元素添加(鋼-X-Y-W、X及びYは第3及び第4元素添加)は、これらの有害相を熱力学的に不安定にすることができる。更に、鋼及びタングステン終点間の融点の大きな相違は、加工を困難にする。目的の第3元素又は第4元素添加を特定するとき、目的の1つの態様は加工性を可能にするために中間融点を有する経路を特定することである。
本開示の傾斜機能材料は3元系及び4元系を採用してよく、鋼及びタングステン終点間の有害な脆い相を回避することができる。融点、価格、及び中性子照射による放射化など、他の考察は例示的な3元系及び4元系に関連してよく、融合反応器材料の取り扱いのための安全性の考察でよい。
【0010】
C.終点例
上記のように、例示的な傾斜機能材料は、3次元体積であるが「終点」とも呼ばれる2つの異なる材料間の界面を含む。いくつかの例において、終点は遮蔽材料及び冷却構造体でよい。いくつかの例において、非タングステン(W)系終点は、液体ヘリウム(He)又は水など、作動流体を運ぶ冷却システムの構造成分として機能することができる。
例示的な印刷材料における遮蔽材料の例は、典型的に低い熱膨張係数を有する。例えば、遮蔽材料の例は20℃(10-6-1)で5未満の線形熱膨張係数α、及び/又は20℃(10-6-1)で15未満の体積熱膨張係数αvを有してよい。いくつかの例において、遮蔽材料の例はタングステン及びタングステン系材料を含むことができる。
冷却構造体の例は、典型的に上記遮蔽材料より高い熱膨張係数を有する。いくつかの例において、冷却構造体の例は低放射化フェライトマルテンサイト(RAFM)鋼でよい。いくつかの例において、冷却構造体の例は酸化物分散強化型低放射化フェライトマルテンサイト(ODS-RAFM)鋼でよい。いくつかの例において、冷却構造体の例は銅又は銅系でよい。
【0011】
D.第3及び第4元素例
例示的な傾斜機能材料は、1つ又は複数の第3及び/又は第4元素を含んでよい。一般的に、第3元素の例は遮蔽材料の融点及び冷却構造体の融点間の融点を有する。これらの基準に見合う可能性のある元素のうち、特定の元素を当座の費用に基づき除外してよく(例、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、タンタル(Ta)及びジルコニウム(Zr))、特定の元素は核融合エネルギー条件下で高レベルの中性子放射化を示すため除外してよい(チタン(Ti)、ニオビウム(Nb)及びモリブデン(Mo))。従って、傾斜機能材料の例は第3元素としてクロム(Cr)又はバナジウム(V)を含んでよい。
付加製造のための目的の加工温度で3元平衡及び擬3元平衡等温図を計算した。クロム(Cr)及びバナジウム(V)のどちらもミュー及びラーベス相を不安定にすることがわかった。いくつかの例において、Cr又はVは脆い場合もあるシグマ相を安定させることができる。
いくつかの実施において、シグマ相形成を様々な方法で回避することができる。例えば、アルミニウム(Al)を第4元素として添加してよい。或いは又は加えて、温度調整など、付加製造加工パラメータを調整してよい。特定の理論に縛られることなく、単相BCCバナジウム(V)リッチ又はクロム(Cr)リッチ相が一旦安定すると、脆い相がタングステン及びバナジウム又はクロム間の連続固溶体相領域により更に形成されることが無ければ、タングステン(W)を系に添加してよいと思われる。
【0012】
E.第3及び第4元素の例示的な量
上記のように、例示的な傾斜機能材料は、第3元素、及びいくつかの例では第4元素を含んでよい。図2を参照して、傾斜機能材料の例における第3及び第4元素の例示的な量を検討する。
図2は、傾斜機能材料104の例の側面模式図である。傾斜機能材料104は3次元材料であり、一端に冷却構造体界面152、反対端に遮蔽材料界面156を有する。一連の付加製造された層は、冷却構造体界面152及び遮蔽材料界面156間に配置される。
概して、界面152及び156間の層を冷却構造体界面に隣接する部分150、及び遮蔽材料界面に隣接する部分154に分類することができる。冷却構造体界面に隣接する部分150は厚みT1を有し、遮蔽材料界面に隣接する部分154は厚みT2を有する。
傾斜機能材料104は、冷却構造体界面152又は遮蔽材料界面156から印刷することができる。冷却構造体界面152に最も近い層は、冷却構造体材料(例、鉄)の量が最も多く、各層は遮蔽材料界面156に近いほど、図2中の印をつけた層158に達するまで冷却構造体材料の量は少なくなる。この印をつけた層は全く冷却構造体材料を含まない。様々な実施において、冷却構造体材料の量は冷却構造体界面152から離れて直線的に(多数の異なる直線的減少を含み得る)又は非直線的に減少する。
遮蔽材料界面156に最も近い層は、遮蔽材料(例、タングステン)の量が最も多く、各層は冷却構造体界面152に近いほど、図2中の印をつけた層158に達するまで冷却構造体材料の量は少なくなる。この印をつけた層は遮蔽材料をほとんど含まないか、又は含まない。様々な実施において、冷却構造体材料の量は冷却構造体界面から離れて直線的に(多数の異なる直線的減少を含み得る)又は非直線的に減少する。いくつかの実施において、部分150又は部分154のどちらかに層は無く、遮蔽材料及び冷却構造体材料の両方を含む。
様々な実施において、層中の第3元素の量は、各界面152及び156から反対の界面に向かって層158まで増加する(「第3元素勾配」)。様々な例において、第3元素は、70質量パーセント(質量%)以上;75質量%以上;80質量%以上;85質量%以上;90質量%以上;95質量%以上;98質量%以上;99質量%以上又は99.9質量%以上の量で、層158など複数の付加製造された層の少なくとも1つに存在する。典型的に、遮蔽材料は全く第3元素を含まない。
いくつかの実施において、冷却構造体材料は第3元素を含んでよい。いくつかの実施において、冷却構造体に隣接する傾斜体積の第1層は、冷却構造体に含まれるのと類似又は同等量で第3元素を含んでよい。一例として、RAFM鋼は約9質量%のクロムを含んでよく、冷却構造体に隣接する傾斜体積の第1層は約9質量%のクロムを含んでよい。様々な実施において、冷却構造体に隣接する傾斜体積の第1層は約1質量%から約10質量%の第3元素を含んでよい。様々な実施において、冷却構造体に隣接する傾斜体積の第1層は、純鉄(Fe)又は異なるRAFM鋼、及び0質量%又は0.01質量%未満の第3元素を含んでよい。
様々な実施において、第3元素の量は冷却構造体界面から離れて、第3元素の質量パーセント量が最も多い層158に向かって直線的に(多数の異なる直線増加を含み得る)又は非直線的に増加する。例えば、冷却構造体界面152に隣接する層は、約9質量%の第3元素又は約10質量%の第3元素を含んでよく、冷却構造体界面152及び層158の中間の層は、53原子パーセントの第3元素を含んでよい。
いくつかの実施において、部分150は1つ又は複数の層を含んでよく、第3元素は冷却構造体材料と同じ質量パーセント又は原子パーセントで存在する。いくつかの実施において、部分154は1つ又は複数の層を含んでよく、第3元素は遮蔽材料と同じ質量パーセント又は原子パーセントで存在する。
【0013】
存在する場合、第4元素は部分150のいくつか又はすべての層に存在してよい。存在する場合、第4元素は部分154のいくつか又はすべての層に存在してよい。様々な実施において、第4元素は20原子%以下;15原子%以下;13原子%;以下10原子%;又は7原子%以下で部分150の少なくとも1つの層に存在してよい。様々な実施において、第4元素は15原子%以下;12原子%以下;10原子%以下;7原子%以下;又は5原子%以下で部分154の少なくとも1つの層に存在してよい。
【0014】
F.機能的傾斜体積(functionally graded volume)の例示的な実施形態
図3A図3B及び図3Cは、傾斜体積の実施形態の模式図である。図3A図3B及び図3Cに示すように、規格化距離0で、傾斜体積は鋼構造の境をなし、規格化距離1で、傾斜体積はタングステン系構造の境をなす。
図3Aにおいて、概して、傾斜体積における鉄(Fe)の量は鋼構造から0質量%に達するまで、各層において減少する。図のように、傾斜体積の実施形態の例は、代替方法は検討されるが、規格化距離0.5で鉄は0質量%である。図3Aに示す実施形態において、各連続層における鉄(Fe)の量は、鋼-傾斜体積の界面付近で距離0.5付近よりも急激に減少する。すなわち、図の実施形態において、規格化距離0から0.25の各層における鉄(Fe)の減少率は、0.25から0.5の各層における鉄(Fe)の減少率より大きい。
図3Aにおいて、鋼構造に隣接する傾斜体積における第1の層は、約9質量%又は約10質量%のクロム(Cr)も含む。各連続層は規格化距離0から0.5でクロムが増加し、鉄又はタングステンを含まないか、或いは実質的に含まない層において、クロムはピークの約100質量%に達する。図のように、規格化距離0.5でクロム量はピークとなる。図の実施形態において、各連続層は規格化距離0.5から1でクロム(Cr)が減少し、最終的に距離1でクロムは0質量%又は約0質量%に達する。
図3Aにおいて、各連続層は規格化距離0から約0.25でアルミニウム(Al)が増加する。図の実施形態において、傾斜体積の層の1つにおけるアルミニウムの最大量は約15質量%である。様々な実施形態において、アルミニウムは複数の付加製造された層の少なくとも1つに15質量%以下;13質量%以下;12質量%以下;10質量%以下;又は8質量%以下で存在してよい。図の実施形態において、各連続層は規格化距離0.25から0.5でアルミニウム(Al)が減少し、最終的に規格化距離0.5で0質量%に達する。
図3Aにおいて、傾斜体積におけるタングステン(W)の量は鉄(Fe)を含まない各層において約100質量%に達するまで増加する。図のように、傾斜体積の実施形態の例では、規格化距離0から約0.5でタングステンは0質量%であり、その後タングステンの量は規格化距離1に達するまで増加する。図の実施形態において、タングステン(W)の量は規格化距離0.5から1の各連続層において等しい割合で増加する。
【0015】
図3Bにおいて、概して、傾斜体積における鉄(Fe)の量は、鋼構造から0質量%に達するまで、各層において減少する。図のように、傾斜体積の実施形態の例は、代替方法は検討されるが、規格化距離0.5で鉄は0質量%である。図3Bに示す実施形態において、各連続層における鉄(Fe)の量は、鋼-傾斜体積の界面付近で距離0.5付近よりも急激に減少する。すなわち、図の実施形態において、規格化距離0から0.25の各層における鉄(Fe)の減少率は、0.25から0.5の各層における鉄(Fe)の減少率より大きい。
図3Bにおいて、鋼構造に隣接する傾斜体積における第1層は、0質量%又は約0質量%のクロム(Cr)を含む。各連続層は規格化距離0から0.5でクロムが増加し、鉄又はタングステンを含まないか、又は実質的に含まない層において、クロムはピークの約100質量%に達する。図のように、規格化距離0.5でクロム量はピークとなる。図の実施形態において、各連続層は規格化距離0.5から1でクロム(Cr)が減少し、最終的に距離1でクロムは0質量%又は約0質量%に達する。
図3Bにおいて、各連続層は規格化距離0から約0.25でアルミニウム(Al)が増加する。図の実施形態において、傾斜体積の層の1つにおけるアルミニウムの最大量は約10質量%である。様々な実施形態において、アルミニウムは複数の付加製造された層の少なくとも1つに10質量%以下;9質量%以下;又は8質量%以下で存在してよい。図の実施形態において、各連続層は規格化距離0.25から0.5でアルミニウム(Al)が減少し、最終的に規格化距離0.5で0質量%に達する。
図3Bにおいて、傾斜体積におけるタングステン(W)の量は鉄(Fe)を含まない各層において約100質量%に達するまで増加する。図のように、傾斜体積の実施形態の例は、規格化距離0から約0.5でタングステンは0質量%であり、その後タングステンの量は規格化距離1に達するまで増加する。図の実施形態において、タングステン(W)の量は規格化距離0.5から1の各連続層において等しい割合で増加する。
【0016】
図3Cにおいて、概して、傾斜体積における鉄(Fe)の量は、鋼構造から0質量%に達するまで、各層において減少する。図のように、傾斜体積の実施形態の例は、代替方法は検討されるが、規格化距離0.5で鉄は0質量%である。図3Bに示す実施形態において、各連続層における鉄(Fe)の量は、鋼-傾斜体積の界面付近で距離0.5付近よりも急激に減少する。すなわち、図の実施形態において、規格化距離0から0.25の各層における鉄(Fe)の減少率は、0.25から0.5の各層における鉄(Fe)の減少率より大きい。
図3Cにおいて、鋼構造に隣接する傾斜体積における第1層は、約0.0質量%のバナジウム(V)も含む。各連続層は規格化距離0から0.5でバナジウム(V)が増加し、鉄又はタングステンを含まないか、又は実質的に含まない層において、バナジウム(V)はピークの約100質量%に達する。図のように、規格化距離0.5でバナジウム(V)量はピークとなる。図の実施形態において、各連続層は規格化距離0.5から1でクロム(Cr)が減少し、最終的に距離1でクロムは0質量%又は約0質量%に達する。
図3Cにおいて、各連続層は規格化距離0から約0.25でアルミニウム(Al)が増加する。図の実施形態において、傾斜体積の層の1つにおけるアルミニウムの最大量は約15質量%である。様々な実施形態において、アルミニウムは複数の付加製造された層の少なくとも1つに15質量%以下;13質量%以下;12質量%以下;10質量%以下;又は8質量%以下で存在してよい。図の実施形態において、各連続層は規格化距離0.25から0.5でアルミニウム(Al)が減少し、最終的に規格化距離0.5で0質量%に達する。
図3Cにおいて、傾斜体積におけるタングステン(W)の量は鉄(Fe)を含まない各層において約100質量%に達するまで増加する。図のように、傾斜体積の実施形態の例は、規格化距離0から約0.5でタングステンは0質量%であり、その後タングステンの量は規格化距離1に達するまで増加する。図の実施形態において、タングステン(W)の量は規格化距離0.5から1の各連続層において等しい割合で増加する。
【0017】
G.相の例及びナノ構造特性
例示的な傾斜機能材料は、様々な相及びナノ構造特性を有することができる。
いくつかの実施において、例示的な傾斜機能材料はラーベス相をほとんど又は全く有さない場合がある。様々な実施において、例示的な傾斜機能材料は20体積パーセント未満;18体積パーセント未満;15体積パーセント未満;10体積パーセント未満;7体積パーセント未満;5体積パーセント未満;4体積パーセント未満;3体積パーセント未満;2体積パーセント未満;1体積パーセント未満;0.5体積パーセント未満;0.1体積パーセント未満;又は0.01体積パーセント未満のラーベス相を有する場合がある。
いくつかの実施において、例示的な傾斜機能材料はミュー相をほとんど又は全く有さない場合がある。様々な実施において、例示的な傾斜機能材料は20体積パーセント未満;18体積パーセント未満;15体積パーセント未満;10体積パーセント未満;7体積パーセント未満;5体積パーセント未満;4体積パーセント未満;3体積パーセント未満;2体積パーセント未満;1体積パーセント未満;0.5体積パーセント未満;0.1体積パーセント未満;又は0.01体積パーセント未満のミュー相を有する場合がある。
いくつかの実施において、例示的な傾斜機能材料は、特に鉄(Fe)を含む付加製造された層に、シグマ相をほとんど又は全く有さない場合がある。様々な実施において、鉄(Fe)を含む例示的な付加製造された層は20体積パーセント未満;18体積パーセント未満;15体積パーセント未満;10体積パーセント未満;7体積パーセント未満;5体積パーセント未満;4体積パーセント未満;3体積パーセント未満;2体積パーセント未満;1体積パーセント未満;0.5体積パーセント未満;0.1体積パーセント未満;又は0.01体積パーセント未満のシグマ相を有する場合がある。
【0018】
II.合金粉末系例
目的の付加製造系に関する様々なインプットストックフォーム(input stock form)を用いて、本明細書で開示、検討する傾斜機能材料例を作製することができる。一例として、付加製造粉末を提供するシステムは、鋼合金粉末を提供するように構成される第1金属合金供給源、タングステン(W)系粉末を提供するように構成される第2金属供給源、及びバナジウム(V)粉末又はクロム(Cr)粉末のどちらかを提供するように構成される第3金属供給源を含んでよい。いくつかの実施において、このシステムは、アルミニウム(Al)粉末を提供するように構成される第4金属供給源を含んでよい。
付加製造粉末を提供する例示的なシステムは、1つ又は複数の上記金属供給源を選択的に提供するように構成することができ、傾斜機能材料における所望の組成を達成する。例えば、多数の粉末供給装置は集光レーザビームを含むノズルに付加製造粉末を選択的に提供することができる。
【0019】
III.製造方法例
付加製造システムを用い、本明細書で開示、検討する傾斜機能材料例を作製することができる。付加製造はコンピュータ制御エネルギー源(例、レーザ、電子ビーム、溶接トーチ等)を用い、金属を選択的に融合することにより製品を層状に組み立てるプロセスである。付加製造はASTM F2792-12a「Standard Terminology for Additively Manufacturing Technologies」でも定義されている。
一般的に、付加製造技術は幾何学的制約、高速材料加工時間、及び革新的な接合技術を必要とせず、自由形状製造における柔軟性を提供する。いくつかの実施において、指向性エネルギー堆積(DED)付加製造を使用して、例示的な傾斜機能材料を作製することができる。DED付加製造システムの市販の例は、Optomec Laser Engineered Net Shaping(LENS)MR-7システム(Optomec社、アルバカーキ、ニューメキシコ州)である。様々な雰囲気を使用することができ、いくつかの例において、付加製造をアルゴン雰囲気下で実施することができる。
典型的に、付加製造後に物品は使用できる状態になっており、加工後の操作は必要無い。とは言え、様々な加工後操作を組み立てプロセス後に実施することができる。例えば、完成した製造物品を応力緩和のための基本的熱処理に付してよい。
【0020】
傾斜機能材料を作製する例示的方法は、遮蔽材料に第1層を印刷することにより開始することができる。第1層の印刷は、第1粉末供給装置から付加製造装置に鋼合金粉末を提供することを含んでよい。第1層の印刷は、バナジウム(V)又はクロム(Cr)などの第3元素粉末を付加製造装置に提供することも含んでよい。第1層の印刷は、アルミニウム(Al)などの第4元素粉末を付加製造装置に提供することも含んでよい。いくつかの実施において、様々な粉末を複数の供給源から提供することができ、各供給源は各粉末を提供する。いくつかの実施において、1つ又は複数の混合された粉末を有する供給源から様々な粉末を提供することができる。
例示的な方法は、複数の層を印刷し、各連続層がこの例では遮蔽材料である隣接する終点のより少ない量を含むことと、第3元素の量を増加させることとを含む。いくつかの例において、各層では第4元素の最大に達するまで第4元素の量が増加し、この段階で層中の第4元素量は連続して減少する。第4元素の例となる量は上記で検討される。
例示的な方法は、遮蔽材料が印刷層に存在しなくなるまで、層を印刷することを含む。例示的な方法は、その後複数の層を印刷することを含み、各連続層は先に印刷された層より冷却構造体材料が多く、第3元素が少ない。例示的な方法では、第3元素がある層に存在せず、この層が99質量%以上の冷却構造体材料を含むまで層の印刷を含んでよい。
或いは、傾斜機能材料を作製する例示的な方法は、遮蔽材料ではなく、冷却構造体に第1層を印刷することにより開始することができる。これらの実施において、例示的な方法は遮蔽材料に印刷することから開始した上記例示的な方法と反対に開始する。
【0021】
IV.製造物品例
本明細書で開示、検討した傾斜機能材料の例を様々な用途で使用することができる。限定されないが、放熱材料に関連する用途で例示的な傾斜機能材料を使用することができる。例えば、例示的な傾斜機能材料を反応器で使用することができる。いくつかの例において、例示的な傾斜機能材料を融合反応器で使用することができる。いくつかの例において、例示的な傾斜機能材料をプラズマ対向機器と用いることができる。
【0022】
V.実験例
実験産物の例を計算的に評価し、結果を以下に検討する。
RAFM鋼及びW終点間の擬2元平衡計算は、脆いラーベス及びミュー相がすべての中間組成を超えて大きな相分画で安定することができることを示した。これらの有害相が不安定であるかどうかを決定するため、第3合金化元素の制御された添加を調査した。RAFM鋼及びW間の中間融点を有する元素のうち、検討される多くの選択肢がある(Ti、Zr、Cr、V、Ru、Nb、Mo、Ta、Os及びRe)。しかし、これらの元素の多くはかなり高価である(Re、Os、Ta、Zr)か、又は核融合エネルギー条件下で高レベルの中性子放射化を示す(Ti、Nb及びMo)。結果として、目的の系はCr及びVである。
3元平衡及び擬3元平衡等温図を付加製造のための目的の加工温度で計算した。V及びCrのどちらもミュー及びラーベス相を不安定にすることがわかったが、代わりに脆くもあるシグマ相を安定させることができる。少量のAlの添加、又は加工パラメータ(例、温度など)の制御により、V又はCrが鋼に添加されると、シグマ相の形成を回避することができる。単相bccVリッチ又はCrリッチ相が一旦安定すると、脆い相がW及びV/Cr間の連続固溶体相領域により更に生じることがなければ、Wを系に容易に添加することができる。
【0023】
図4はThermo-Calcソフトウェアを用いて作製された1100K(827℃)のFe-9CrからWの勾配を示す。図のように、タングステン(W)の量は0質量%から100質量%まで変化し、BCC、ラーベス、及びミュー相にはラベルを付ける。概して、ラーベス及びミュー相が大きな分画で安定していることが図4からわかる。
図5A及び図5Bは、2つの異なる酸化物分散強化型低放射化フェライトマルテンサイト鋼及びタングステン間の擬2元平衡等温図を示す。図5Aにおいて、鋼はFe-9Cr-1W-0.5Mn-0.1C鋼であり、図5Bにおいて、鋼はFe-9Cr鋼である。図のように、タングステン(W)量は0質量%から100質量%まで変化し、様々な相にはラベルを付ける。概して、ラーベス及びミュー相が、特にW含有量30%超について、液相温度未満のすべての温度で安定することが、図5A及び図5Bからわかる。
図6A及び図6Bは、それぞれ1300℃及び800℃の温度におけるクロム(Cr)、タングステン(W)及び鉄(Fe)の3元系状態図を示す。概して、クロムはラーベス及びミュー相を不安定にすることが、図6A及び図6Bからわかる。クロムはシグマ相を安定させることも図6A及び図6Bからわかる。
図7A及び図7Bは、それぞれ826℃及び1300℃の温度におけるバナジウム(V)、タングステン(W)及び鉄-9Cr(Fe-9Cr)の3元系状態図を示す。概して、バナジウム(V)はラーベス及びミュー相を不安定にすることが図7A及び図7Bからわかる。バナジウムがシグマ相を安定させることも図7A及び図7Bからわかる。
図8A及び図8Bは、それぞれ827℃及び500℃の温度におけるバナジウム(V)、アルミニウム(Al)及びRAFM鋼(Fe-9Cr-1W-0.1C)の3元系状態図を示す。概して、アルミニウム(Al)はV-RAFM系におけるシグマ相を不安定にすることが図8A及び図8Bからわかる。
図9A及び図9Bは、それぞれ0質量%のアルミニウム及び5質量%のアルミニウムを有するRAFM鋼(Fe-9Cr-1W-0.1C)及びバナジウム(V)の状態図である。概して、5質量%のアルミニウム(Al)はV-RAFM系におけるシグマ相を不安定にすることが図9A及び図9Bからわかる。
【0024】
本明細書における数値範囲の記載について、同程度の精度間に介在する各数字が考慮される。例えば、6~9の範囲について、6及び9に加えて7及び8の数字が考慮され、6.0~7.0の範囲について、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9及び7.0の数字が考慮される。別の例について、圧力範囲が周囲圧力及び別の圧力間として記載される場合、周囲圧力である圧力は特に考慮される。
【0025】
上述の詳細な記載及び添付の実施例は単に説明のためのものであり、開示の範囲を限定するものとして見なされるべきではないことが理解される。開示された実施形態に対する様々な変更及び修正は当業者に明らかであろう。限定されないが、化学構造、置換、誘導体、中間体、合成、組成、製法又は使用方法に関するものなどを含む、このような変更及び修正は、本開示の主旨及び範囲を逸脱することなく行うことができる。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕タングステン系構造及び鋼系構造の間に広がる傾斜体積を含む傾斜機能材料であって、前記傾斜体積が複数の付加製造された層を含み、
前記複数の付加製造された層の少なくとも1つが、バナジウム及びクロムから選択される第3元素を含む、傾斜機能材料。
〔2〕前記傾斜体積が、第3元素勾配を有し、
前記タングステン部分に隣接する付加製造された層における第3元素の質量パーセントが、前記タングステン部分及び前記鋼部分の中間の付加製造された層における第3元素の質量パーセントより低く、
前記鋼部分に隣接する付加製造された層における第3元素の質量パーセントが、前記タングステン部分及び前記鋼部分の中間の前記付加製造された層における第3元素の質量パーセントより低い、前記〔1〕に記載の傾斜機能材料。
〔3〕前記傾斜体積が、20体積パーセント未満のラーベス相及びミュー相を含む、前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の傾斜機能材料。
〔4〕鉄(Fe)を含む前記複数の付加製造された層の少なくとも1つが、アルミニウムを更に含む、前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の傾斜機能材料。
〔5〕アルミニウムが、前記複数の付加製造された層の少なくとも1つに、15質量パーセント以下で存在する、前記〔4〕に記載の傾斜機能材料。
〔6〕鉄(Fe)を含む前記付加製造された層が、20体積パーセント未満のシグマ相を含む、前記〔4〕又は前記〔5〕に記載の傾斜機能材料。
〔7〕前記第3元素が、前記複数の付加製造された層の少なくとも1つに、80質量パーセント以上で存在する、前記〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の傾斜機能材料。
〔8〕前記複数の付加製造された層のいずれも、鋼及びタングステンの両方を含まない、前記〔1〕~〔7〕のいずれか1項に記載の傾斜機能材料。
〔9〕前記鋼部分が、酸化物分散強化型低放射化フェライトマルテンサイト(RAFM)鋼を含む、前記〔1〕~〔8〕のいずれか1項に記載の傾斜機能材料。
〔10〕第1終点材料及び第2終点材料に隣接する傾斜機能材料を作製する方法であって、
第1組の層を連続して作製する工程であって、前記第1組の層における各連続層が、前記第1終点材料を減少する量で含み、かつ第3元素を増加する量で含む、工程と;
80質量%以上の前記第3元素、並びに10質量%未満の前記第1終点材料及び/又は前記第2終点材料を含む層を作製する工程と;
第2組の層を連続して作製する工程であって、前記第2組の層における各連続層が、前記第2終点材料を増加する量で含み、かつ前記第3元素を減少する量で含む、工程と、
を含み、前記第1終点材料又は前記第2終点材料のどちらかがタングステン(W)を含む、方法。
〔11〕前記第3元素がバナジウム(V)又はクロム(Cr)のどちらかを含む、前記〔10〕に記載の方法。
〔12〕前記第1終点材料又は前記第2終点材料のどちらかが鋼合金を含む、前記〔11〕に記載の方法。
〔13〕前記第1終点材料が、前記鋼合金であり、前記第1組の層の少なくとも1つの層が、第4元素を含む、前記〔12〕に記載の方法。
〔14〕前記第4元素が、アルミニウム(Al)であり;
前記第1組の層の任意の層におけるアルミニウム(Al)の最大量が、15質量%以下である、前記〔13〕に記載の方法。
〔15〕タングステン(W)の量が、前記第2組の層における隣接層間で直線的に変化する、前記〔10〕に記載の方法。
〔16〕タングステンを含むプラズマ対向反応器部分;
前記プラズマ対向反応器部分の少なくとも一部を囲む放熱部分;並びに
前記プラズマ対向反応器部分及び前記放熱部分の間に広がる傾斜体積を含む、プラズマ対向機器であって、
前記傾斜体積が、複数の付加製造された層を含み;
前記複数の付加製造された層の少なくとも1つが、バナジウム及びクロムから選択される第3元素を含む、プラズマ対向機器。
〔17〕前記傾斜体積が、第3元素勾配を有し、
前記プラズマ対向反応器部分に隣接する付加製造された層における第3元素の質量パーセントが、前記プラズマ対向反応器部分及び前記放熱部分の中間の付加製造された層における第3元素の質量パーセントより低く;
前記放熱部分に隣接する付加製造された層における第3元素の質量パーセントが、前記プラズマ対向反応器部分及び前記放熱部分の中間の前記付加製造された層における第3元素の質量パーセントより低い、前記〔16〕に記載のプラズマ対向機器。
〔18〕前記傾斜体積が、20体積パーセント未満のラーベス相及びミュー相を含み;
鉄(Fe)を含む前記複数の付加製造された層の少なくとも1つが、アルミニウムを更に含み;
アルミニウムが、前記複数の付加製造された層の少なくとも1つに、15質量パーセント以下で存在し;
鉄(Fe)を含む前記付加製造された層が、20体積パーセント未満のシグマ相を含む、前記〔16〕又は前記〔17〕に記載のプラズマ対向機器。
〔19〕前記第3元素が、前記複数の付加製造された層の少なくとも1つに、80質量パーセント以上で存在し;前記複数の付加製造された層のいずれも、鋼及びタングステンの両方を含まない、前記〔16〕~〔18〕のいずれか1項に記載のプラズマ対向機器。
〔20〕前記放熱部分が、酸化物分散強化型低放射化フェライトマルテンサイト(RAFM)鋼を含む、前記〔16〕~〔19〕のいずれか1項に記載のプラズマ対向機器。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B