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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/173 20060101AFI20231005BHJP
【FI】
H02K5/173 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021171665
(22)【出願日】2021-10-20
(62)【分割の表示】P 2018203855の分割
【原出願日】2018-10-30
(65)【公開番号】P2022003869
(43)【公開日】2022-01-11
【審査請求日】2021-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】癸生川 幸嗣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克敏
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-129999(JP,A)
【文献】特開2009-055768(JP,A)
【文献】特開2010-041854(JP,A)
【文献】特開2002-130285(JP,A)
【文献】国際公開第2018/029741(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/173
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部と他方の端部とを有するシャフトと、
前記シャフトの一方の端部側の部分を支持する複数のボールベアリングと、前記複数のボールベアリングを囲むスリーブと、
前記シャフトの他方の端部と前記複数のボールベアリングとの間にある、当該シャフトの部分に固定されたロータと、
前記ロータに囲まれたステータと、
底部を有するハウジングと、を備え、
前記シャフトの径方向において、前記ハウジングの底部は、前記ロータ側の部分と、前記シャフト側の部分と、を備え、
前記シャフトの径方向において、前記スリーブの内周面は、凹んだ複数の凹部を備え、
前記複数の凹部に前記複数のボールベアリングが固定されており、
ステータ固定部が、前記ハウジングの底部の前記ロータ側の部分に設けられ、
前記スリーブは、前記ハウジングの底部の前記シャフト側の部分に設けられ、
前記スリーブと前記ステータ固定部との間にある前記ハウジングの底部の部分は、前記シャフトの長手方向に対して交差する方向に延在し、
前記ステータは、前記ステータ固定部に固定されており、
前記ロータは、マグネットと、当該マグネットを支持する筒部と、当該筒部と前記シャフトとを連結する円盤部と、を備え、
前記ロータの筒部は、磁性体で形成されている、モータ。
【請求項2】
前記スリーブと、前記ステータ固定部と、当該スリーブと当該ステータ固定部との間にある当該ハウジングの底部の部分とで囲まれた空間がある、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記ロータに固定される取付具を備える、請求項1又は2に記載のモータ。
【請求項4】
前記ハウジングの底部は、前記シャフト側に設けられた取付部を備え、
前記複数のボールベアリングと前記スリーブを有するカートリッジが、前記シャフトとともに、前記取付部に対して着脱可能に取り付けられる、請求項1~3のいずれかに記載のモータ。
【請求項5】
前記シャフトを形成する部材が、前記ボールベアリングを形成する部材より、比重が小さい、請求項1~4のいずれかに記載のモータ。
【請求項6】
前記シャフトが中空である、請求項1~5のいずれかに記載のモータ。
【請求項7】
前記シャフトの両端部のうち、前記底部側にある一方の端部が、前記底部よりも前記ハウジングの内側にある、請求項1~6のいずれかに記載のモータ。
【請求項8】
前記取付部が、前記カートリッジを収容する筒状部を有する、請求項4記載のモータ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載のモータを備える、浮遊式移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばドローンなどの浮遊式移動体に搭載可能なブラシレスのモータに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【文献】特開2018-117429号公報
【発明の概要】
【0003】
本発明に係るモータは、一方の端部と他方の端部とを有するシャフトと、前記シャフトの一方の端部側の部分を支持する複数のボールベアリングと、前記複数のボールベアリングを囲むスリーブと、前記シャフトの他方の端部と前記複数のボールベアリングとの間にある、当該シャフトの部分に固定されたロータと、前記ロータに囲まれたステータと、底部と、当該底部の前記ロータ側の部分に設けられたステータ固定部と、を有するハウジングと、を備え、前記シャフトの径方向において、前記スリーブの内周面には、凹んだ複数の凹部と、を備え、前記複数の凹部に前記複数のボールベアリングが固定されており、前記ハウジングの底部は、前記シャフトの長手方向に対して交差する方向に延在し、前記ステータは、前記ステータ固定部に固定されており、前記ロータは、マグネットと、当該マグネットを支持する筒部と、当該筒部と前記シャフトとを連結する円盤部と、を備え、前記ロータの筒部は、磁性体で形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】本発明の一例である実施の形態にかかるアウターロータ型のモータの断面図である。
図2】本発明の一例である実施の形態にかかるモータの断面斜視図である。
図3図2からカートリッジのみを抜き出した断面斜視図である。
図4】ハウジングにカートリッジが取り付けられた状態を説明するための分解図である。
図5図1からカートリッジ及びハウジングのみを抜き出した断面図である。
図6】シャフトにロータが取り付けられる状態を説明するための分解図である。
図7】本発明の変形例にかかるインナーロータ型のモータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一例である実施の形態にかかるモータ1の断面図であり、図2図1と同じ断面を斜め上方から見た断面斜視図である。なお、本実施の形態の説明において、上方乃至下方と云う時は、図1及び図2における上下関係を意味し、重力方向における上下関係とは、必ずしも一致しない。
【0006】
モータ1は、外径側に延びるティース部23及びティース部23に巻き回されたコイル22を含むステータ2と、ステータ2の外径側でティース部23と対向するマグネット31を含むロータ3と、ロータ3の中心に固定されて回転軸となるシャフト41が取り付けられたカートリッジ4と、ステータ2が固定されてこれを収容するハウジング5と、を備えており、アウターロータ型のブラシレスモータを構成する。ロータ3はステータ2に対して回転可能となっている。
【0007】
ロータ3に囲まれるステータ2は、ティース部23を含むステータコア21と、コイル22とを備える。
ステータコア21は、珪素鋼板等の積層体となっており、シャフト41と同軸上に配された円環部(コア)24と、円環部24から外径側へ向かって放射状に延びるように形成される複数のティース部(磁極部)23からなる。
コイル22は、複数のティース部23の各々の周囲に巻き回されている。ステータコア21とコイル22とは、絶縁体で形成されたインシュレータ(不図示)によって絶縁されている。なお、インシュレータに代えて、ステータコアの表面に絶縁膜を塗装してコイルと絶縁しても構わない。
【0008】
ロータ3は、マグネット31とロータヨーク32とからなり、ロータヨーク32は、外縁の筒部33と、シャフト41及び筒部33間を連結する円盤部34とからなる。筒部33は、円盤部34の外縁から垂直方向(図1及び図2においては下方向)に切り立った、シャフト41の軸を中心とする円筒状であり、ステータ2を取り囲んだ状態になっている。
【0009】
ロータヨーク(鉄心)32は、ロータヨーク32内部からの磁界の漏れを防ぐ機能を有し、磁性体により形成されている。なお、ロータヨーク32の筒部33及び円盤部34は、磁性体により形成されるが、特性上問題がなければ、非磁性体で形成しても構わない。例えば、筒部33と円盤部34をともにアルミニウムにて一体に形成しても構わないし、筒部33及び円盤部34のいずれか一方を磁性体により、他方を被磁性体により、それぞれ形成しても構わない。
マグネット31は、ステータ2と対向するように筒部33の内周面に取り付けられている。マグネット31は環状を有しており、N極に着磁された領域と、S極に着磁された領域とが円周方向に沿って一定周期で交互に設けられている。
【0010】
本実施形態において、カートリッジ4は、シャフト41と、2つの軸受42,42’と、スリーブ43とからなる。図2からカートリッジ4のみを抜き出して、図3に断面斜視図にて示す。
シャフト41は、軽量化のために、例えばアルミニウムで形成され、図1に示すように、中空状態(より詳しくは円筒状態)になっている。
シャフト41には、軸方向略中央に段差部41cが設けられており、段差部41cの下方側の外形(径)に比して上方側の外形(径)の方が細くなっている。
【0011】
2つの軸受42,42’は、シャフト41における下方寄りに一定の間隔を置いて並んで取り付けられる。なお、以下の説明において、単に「軸受42」と記載されている場合には、特に断りが無い限り、2つの軸受42,42’に共通する内容の説明である(軸受42の構成部材である、下記の外周輪42a、内周輪42b及びベアリングボール42cを含む)。
【0012】
軸受42は、外周輪42a,42a’と、内周輪42b,42b’と、外周輪42a及び内周輪42b間に介在するベアリングボール42c,42c’と、からなる、いわゆるボールベアリングである。ベアリングボール42cが外周輪42aと内周輪42bとの間で転がることにより、外周輪42aに対する内周輪42bの回転抵抗が大幅に少なくなるようになっている。軸受42は、その機能から、例えば、鉄等の硬質の金属やセラミックの部材で形成されている。
【0013】
スリーブ43は、円筒状の形状を有する部材であり、例えば、プラスチックあるいは金属で形成されている。スリーブ43の外周面には凹凸は無いが、スリーブ43の内周面に、軸方向において中央部が中心軸に向けて突出した突出部(小径の内周部)43a、軸方向においてその両側が凹んだ凹部(大径の内周部)43bとなっている。以下、突出部を小内径部と呼称し、凹部を大内径部と呼称する。
【0014】
なお、スリーブ43は、小内径部43aと大内径部43bとを有する形状となるように公知の手段によって一体成型で形成してもよいが、例えば、大内径部43bの内径を有する大径の円管の内部に、小内径部43aの内径と、大内径部43bの内径と同径の外径と、を有する小径の円管を挿し込んで、軸方向において大径円管の略中央に小径の円管が位置するようにして、スリーブ43を2つ以上の複数の部材で形成してもよい。
また、小径の円管は、大径の円管と異なる部材で形成してもよく、例えば、螺旋状のスプリングのような弾性部材を用いることができる。
【0015】
シャフト41は、長手方向(軸方向)において、後述するハウジング5の底部51側にある一方の端部41aと、その逆側の他方の端部41bとを有する。このシャフト41の一方の端部41a近傍には、2つの軸受42,42’が並んで位置している。シャフト41は2つの軸受42,42’の内周輪42bに嵌め込まれるとともに固定されて、2つの軸受42,42’に支持されている。このため、シャフト41は、ハウジング5に回転可能に支持されている。また、シャフト41における軸受42よりもさらに一方の端部41a側には、スナップリング44が取り付けられ、シャフト41の図1中の上方向への移動(シャフト41の抜け)が規制される。なお、必要に応じ、スナップリング44に代えて金属ワッシャを用いることにすれば、シャフト41のより強固な抜け止めを図ることができる。
【0016】
一方、2つの軸受42,42’の外周輪42a,42a’は、スリーブ43の2つの大内径部43bにそれぞれ嵌め込まれるとともに固定されて、支持されている。したがって、カートリッジ4において、スリーブ43に対してシャフト41が回転自在となるように支持されている。
【0017】
ハウジング5は、略平板状の底部51と、カートリッジ4が着脱可能に取り付けられる取付部54と、ステータ2が固定されるステータ固定部55とを有する。このうち、底部51は外部から衝撃を受ける面を形成している。 また、底部51はシャフトの長手方向(軸方向)に対して交差する方向に延在している。
図4に、ハウジング5にカートリッジ4が取り付けられた状態を説明するための分解図を示す。また、図1からカートリッジ4及びハウジング5のみを抜き出して、図5に断面図にて示す。
【0018】
底部51は、シャフト41の長手方向に対して交差する位置(底部51の中心)の周辺に円形状の開口51aを有し、その周囲に円環状の平板領域(平板部)51bを有し、さらに、その外縁に連なり外周に向けて上方(ステータ2側)への傾斜を有する円環状の傾斜領域(傾斜部)51cを有している。開口51aからは、モータ1の下方からシャフト41が視認できる状態になっている。
【0019】
底部51には、カートリッジ4の一部又は全部を収容する筒状部52が設けられており、この筒状部52の内側(中心側)の領域には、開口51aの他、筒状部52の内周面から中心軸に向けて円環状に張り出した張出部51dが形成されている。張出部51dの上面(ハウジング5の内側の面)には、リング状の弾性部材56aが貼り付けられている。
【0020】
ステータ固定部55は、底部51からステータ2に向かって(シャフト41の軸方向上方に)延在する扁平な円筒状の形状であり、その中途で肉厚が薄くなって外径が小さくなる段差部55aが、ステータ固定部55の外周側に形成されている。この段差部55aに円環部24の内周部が嵌合して、接着などの公知の手段でステータ2が固定されている。ステータ2は、カートリッジ4を取り囲んだ状態になっている。
取付部54は、底部51からステータ2に向かって(シャフト41の軸方向上方に)延在した筒状部52と、筒状部52とは別体のリング状の固定部材53とから構成される。この筒状部52は、底部51側にある一端部と、底部51の逆側にある他端部とを備え、筒状部52の他端部には、固定部材53が設けられている。
【0021】
固定部材53は、筒状部(以下、円筒部と呼称する。)53aと、円筒部53aの一方の端部から中心軸に向けて円環状に張り出した環状部(以下、押さえ片部と呼称する)53bとを有している。円筒部53aの内周面には螺旋状の溝が設けられてあり(不図示)、筒状部52の外周面の上方に設けられたネジ螺旋状の溝(不図示)と螺合可能になっている。
【0022】
また、押さえ片部53bの下面(底51を向く側の面)には、リング状の弾性部材56bが貼り付けられている。この押さえ片部53bの下面はスリーブ43の上端部と対向している。弾性部材56a及び弾性部材56bは、弾性を有する、例えば、天然ゴム、合成ゴム、シリコーンゴム、エラストマー等の材料で形成される。弾性部材56aと弾性部材56bは、本実施の形態では同一材料かつ同一形状の物であるが、別材料でも構わないし、厚みや径が異なる等形状が異なっていても構わない。
【0023】
カートリッジ4(スリーブ43)は、筒状部52に収容されることで、ハウジング5に取り付けられる。そして、固定部材53を筒状部52の上方(底部51とは逆の端部)に螺合させて固定することで、カートリッジ4(スリーブ43)を底部51との間に挟み込んで固定する。すなわち、カートリッジ4が、固定部材53と底部51とに挟まれて固定されている。以上のようにして、カートリッジ4が、シャフト41とともに、取付部54に対して着脱可能に取り付けられる。
【0024】
このとき、シャフト41の長手方向(軸方向)において、スリーブ43の下端部と底部51(張出部51d)との間に弾性部材56aが、スリーブ43の上端部と固定部材53との間に弾性部材56bが、それぞれ介在した状態となっている。この弾性部材56a,56bにより、外部からの衝撃がカートリッジ4に伝わるのを抑制することができる。
【0025】
カートリッジ4がハウジング5に取り付けられた状態では、シャフト41の一方の端部41aが、底部51よりもハウジング5の内側(図1における上側)に位置している。即ち、シャフト41の一方の端部41aは、底部51から浮いた状態になっている。そのため、例えば下方からの衝撃が、直接シャフト41に伝わることが抑制される。
【0026】
ハウジング5に取り付けられたカートリッジ4のシャフト41には、底部51側とは逆側となる他方の端部41bと、軸受42’との間で、ロータ3がシャフト41に着脱可能に固定される。図6は、シャフト41にロータ3が取り付けられる状態を説明するための分解図である。なお、図6においては、ステータ2及びハウジング5の図示が省略されている。
【0027】
他方の端部41b側から、ロータ3の中心軸に設けられた孔部(以下、軸孔35と呼称する)に、シャフト41を挿通させると、シャフト41の段差部41cに軸孔35の内周部が突き当たる。次いで、取付具36の軸孔36aに、シャフト41を挿通させ、ロータ3のネジ孔37と取付具36のネジ孔36bとを4カ所ネジ留めして、シャフト41にロータ3を固定させる。ロータ3または取付具36とシャフト41との間は、不図示の固定手段で固定されることによって、回転方向の動きが規制され、シャフト41がロータ3の回転に連れ回るようになっている。
【0028】
以上のように組み立てることで、図1図2に示す構造の本実施の形態のモータ1が完成する。
本実施の形態のモータによれば、シャフト41からロータ3を外し、固定部材53を筒状部52の上端から外すだけで、カートリッジ4をハウジング5の取付部54から抜き出すことができる。カートリッジ4の取り付けも、既述のように容易であり、即ち、本実施の形態のモータによれば、カートリッジ4を容易に着脱できる。
【0029】
ドローンにおいては、着陸時の機体への衝撃が、羽根駆動用のモータのベアリングにダメージを与えることが知られている。このため、衝撃の大きい着陸となった場合には、その都度モータを交換することが行われており、交換の手間が生じ、また、コストの増加原因となっている。
【0030】
したがって、本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、ドローンなどの浮遊式移動体等、大きな衝撃を受ける用途に用いても、手間やコストの増加が抑制されたモータを提供することを目的とする。
上記課題は、以下の本発明により解決される。即ち、本発明のモータは、シャフトと、前記シャフトを支持する複数の軸受、及び、該軸受を囲むスリーブ、を有するカートリッジと、外部から衝撃を受ける底部、及び、該底部に設けられた取付部を有するハウジングと、を備え、前記ハウジングの底部は、前記シャフトの長手方向に対して交差する方向に延在し、前記取付部に対して、前記カートリッジが着脱可能に取り付けられている。
【0031】
本発明のモータにおいては、前記カートリッジが、前記シャフトとともに、前記取付部に対して着脱可能に取り付けられることが好ましい。
また、本発明のモータにおいては、前記シャフトを形成する部材が、前記軸受を形成する部材より、比重が小さいことが好ましく、前記シャフトが中空であることが好ましい。
また、本発明のモータにおいては、前記シャフトの両端部のうち、前記底部側にある一方の端部が、前記底部よりも前記ハウジングの内側にあることが好ましい。
【0032】
本発明のモータにおいては、前記取付部が、前記カートリッジを収容する筒状部を有するものとすることができ、この場合、前記シャフトの長手方向において、前記筒状部は、前記底部側にある一端部と、当該底部と逆側にある他端部とを備え、前記カートリッジが、前記固定部材と前記底部とで挟まれて固定されていることが好ましい。
【0033】
また、本発明のモータにおいては、前記カートリッジと前記ハウジングとの間の少なくとも一部に、弾性部材があることが好ましく、この場合、前記シャフトの長手方向において、対向し合う前記カートリッジの一部分と前記ハウジングの一部分との間に、前記弾性部材が介在していることが好ましく、あるいは、前記シャフトの長手方向において、前記カートリッジと前記底部との間、及び、前記カートリッジと前記固定部材との間、のいずれか一方もしくは双方に前記弾性部材が介在していることが好ましい。
【0034】
本発明のモータにおいては、前記シャフトに着脱可能に固定されるロータを備えるものとすることができる。この場合、前記ロータに囲まれるステータを備え、前記ロータは、前記シャフトに着脱自在に固定される円盤部を有するものとすることができる。
【0035】
例えば、ドローンなどの浮遊式移動体の用途に用いた場合に、着陸の際、大きな衝撃を受けると、精密部品である軸受が破損し易く、破損した場合には、従来はモータ全体を交換していた。しかし、本実施の形態のモータによれば、カートリッジ4が、シャフト41を支持した状態で、取付部54に着脱可能取り付けられているため、シャフト41を支持したカートリッジ4だけを交換部品として用意しておき、これを交換するだけで、破損した軸受を復元することができ、モータを復活させることができる。そのため、モータ交換がカートリッジ4の交換で簡単かつ低コストで済ますことができるため、手間とコストを大幅に削減することができる。
【0036】
モータ全体を組み立てる際には、部品点数が多く、性能や公差に影響する要素が多いため、モータ毎の性能の個体差が生じやすく、モータ全体を交換した場合には、駆動調整の見直しが必要になる可能性が高く、その意味でも手間とコストがかかる。しかし、部品点数が少なく、均質な物を高精度に作ることがし易いカートリッジ4では、個体差が生じ難い。そのため、カートリッジ4のみを交換する本実施の形態の場合には、交換前後の駆動調整の見直しが不要になるばかりか、モータ長寿命化、機械負荷の低減による性能向上、回転ムラに起因する振動や騒音の低減等といった性能面での付加価値の向上を期待することができる。
【0037】
また、軸受ダメージの要因となるモータ外周面への衝撃荷重に対して、外周部材に直接軸受を取り付けていた従来の構造に比べ、本実施の形態のモータ1では、別部品であるスリーブ43を介して軸受42を組み付けているので、軸受42への衝撃が直接的には伝わり難い。そのため、本実施の形態では、外部の衝撃に対する強度を向上させることができる。
【0038】
さらに、本実施の形態のモータ1では、カートリッジ4とハウジング5との間の少なくとも一部に、弾性部材56a,56bが介在している。カートリッジ4とハウジング5とが、このように別部材化していることから、その間に衝撃緩衝材としての弾性部材56a,56bを介在させて、軸受42を保護することができる。
【0039】
特に、ドローンの用途に用いた場合には、着陸時に軸方向の衝撃荷重を受け易いが、本実施の形態では、カートリッジ4とハウジング5とが、シャフト41の軸方向に対向している箇所、即ち、シャフト41の長手方向(軸方向)において、カートリッジ4(スリーブ43)の一部分と底部51との間に弾性部材56aを、カートリッジ4(スリーブ43)の一部分と固定部材53との間に弾性部材56bを、それぞれ介在させているため、軸方向の衝撃荷重に対する耐衝撃性をさらに向上させることができる。
【0040】
なお、本実施の形態のモータ1においては、スリーブ43と底部51や固定部材53との間に弾性部材56a,56bを設けているが、スリーブ43ではなく外周輪42aと、あるいは、スリーブ43及び外周輪42aと、底部51や固定部材53との間に弾性部材を設けてもよく、さらには、カートリッジ4全体を覆うように弾性部材を設けてもよく、カートリッジ4とハウジング5との間の少なくとも一部に弾性部材が介在してさえいれば、外部からの衝撃に対する耐衝撃性の向上効果が期待できる。
【0041】
また、本実施の形態のモータによれば、シャフト41の一方の端部41aが、底部51よりもハウジング5の内部側(図1における上側)に位置し、底部51から浮いた状態になっているため、下方からの衝撃が、直接シャフト41に伝わることが抑制され、軸方向の衝撃荷重に対する耐衝撃性をより一層向上させることができる。
【0042】
なお、本実施の形態のモータ1においては、底部51における筒状部52の内側(中心軸側)の領域が開口して、モータ1の下方からシャフト41が視認できる状態になっているが、開口が無く、あるいは、開口が狭く、シャフト41の一方の端部41aに対向する位置に底部が存在する場合には、当該底部とシャフトの一方の端部とが離間していれば、本実施の形態と同様の効果が奏される。このように底部とシャフトの一方の端部とが離間している状態は、本発明に云う「底部側にある一方の端部が、前記底部よりも前記ハウジングの内側に位置する」の概念に含まれる。
【0043】
また、本実施の形態のモータ1においては、シャフト41が、軽量化のために、例えばアルミニウムで形成され、軸受42を形成する部材(鉄)よりも、その比重が小さくなっている。シャフト41を軽量化することで、外部から衝撃を受けた際の軸受42へのダメージを軽減することができる。
【0044】
さらに、本実施形態では、シャフト41を中空状態(なかでも、より好ましい円筒状態)にしているため、より一層のダメージの軽減を図ることができる。なお、軸受42と同じ、あるいは比重の変わらない材料を用いた場合にも、シャフト41を中空状態にすれば、シャフト41を軽量化することができ、外部から衝撃を受けた際の軸受42へのダメージを軽減することができる。
【0045】
なお、本実施の形態のモータは、アウターロータ型のブラシレスモータとして構成されているが、本発明はブラシレスモータ以外のモータにも適用可能である。また、本発明は、インナーロータ型のモータにも適用可能である。図7に、本発明の構成をインナーロータ型のモータにも適用した場合の変形例のモータを断面図にて示す。当該図7において、図1に示す実施の形態の各部材と同一の機能、同一の構成、同一の形状の部材については、図1(実施の形態)と同一の符号を付して、その詳細な説明は省略することにする。
【0046】
図7に示すように、インナーロータ型のモータ101では、ステータ102の内側にロータ103が配置される。このロータ103は、ロータヨーク132と、ロータヨーク132の外周面に環状のマグネット131が取り付けられている。また、ロータヨーク132が、ステータ102の内側に位置することから、筒部133は、ステータ102の円環部124よりも外径が小さくなっており、円盤部134の外径もそれに合わせた大きさになっている。
【0047】
ロータ3を囲むように配されるステータ102は、シャフト41と同軸上に配された円環部(コア)124及び円環部124からシャフト41に向かって(中心に)延びるように形成される複数のティース部(磁極部)123を含むステータコア121と、複数のティース部123の各々の周囲に巻き回されたコイル122と、を備えている。
【0048】
ハウジング105は、カートリッジ4が着脱可能に取り付けられる取付部54周辺の構造は、実施の形態のハウジング5と変わらないが、ステータ102が固定されるステータ固定部155が、傾斜領域151cの外縁に位置し、段差部155aがステータ固定部155の内周側に形成されている点が異なる。これら構成の相違に応じて、平板領域151b及び傾斜領域151cの大きさや形状も異なっている。
【0049】
図7に変形例として示すように、本発明の構成は、インナーロータ型のモータ101でも問題なく適用することができ、本変形例によれば、カートリッジ4を容易に着脱できる効果は勿論、実施の形態の項で説明した、その他付随する本発明の各種効果が同様に奏される。
【0050】
以上、本発明のモータについて、好ましい実施の形態を挙げて説明したが、本発明のモータは上記実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば、上記実施の形態においては、軸受が42,42’の2個の例を挙げて説明したが、カートリッジに含まれる軸受の数は、3個以上であっても構わない。
【0051】
上記実施の形態では、カートリッジ4がシャフト41を含んだ状態で1つのカートリッジを構成する例を挙げているが、本発明において、カートリッジは、シャフトを含まず、複数の軸受とスリーブとを有する構成であっても構わない。シャフトを含まない構成であっても、破損等により軸受を交換したい場合に、当該軸受をカートリッジごと容易に交換することができる。
【0052】
また、シャフトをカートリッジとは別体としておくことで、例えば、破損した軸受を含むカートリッジのみを交換することができ、使用可能な状態のシャフトをそのまま使いまわすことができる。シャフトも交換したい場合には、カートリッジとともにシャフトも交換用の物を用意しておき、予め軸受に圧入した上で、シャフトを支持するカートリッジごと交換すればよい。
【0053】
シャフトを含まないカートリッジであっても、スリーブに対して精度よく軸受を組み付けることができるため、均質な物を高精度に作ることがし易い。そのため、カートリッジ4のみを交換する場合に、交換前後の駆動調整の見直しが不要になるばかりか、モータ長寿命化、機械負荷の低減による性能向上、回転ムラに起因する振動や騒音の低減等といった性能面での付加価値の向上を期待することができる。
【0054】
勿論、シャフトを含んだ状態で1つのカートリッジが構成されている上記実施の形態で例示した構成は、シャフトを支持したカートリッジごと簡単に交換することができるため、作業効率の点では好ましい。
【0055】
また、上記実施の形態では、弾性部材56a,56bが、ハウジング5側の構成部材(底部51における張出部51d、及び、固定部材53における押さえ片部53b)に取り付けられた(貼り付けられた)例を挙げているが、弾性部材は、必ずしもハウジング5側の構成部材に取り付けられていなくてもよく、カートリッジ4側の構成部材(例えば、スリーブ43等)に取り付けられていても構わないし、いずれにも取り付けられておらず、単に挟み込まれた状態で、独立した部品であっても構わない。
【0056】
なお、着脱自在なカートリッジに基づく本発明の効果を奏する上では、カートリッジとハウジングとの間に、弾性部材が介在していなくても構わないが、勿論、介在することが好ましい。
【0057】
また、ハウジング5としては、底部51が平板状の領域(平板領域51b)を含む構成を例に挙げているが、ハウジングの底部としては、全体が平板状でもよいし、平板状の領域を有さず、例えば緩やかなドーム状や傾斜面のみで形成されていても構わない。平板状の領域の有無にかかわらず、全体として、ハウジングの底部を構成し得る程度の面を有していれば、当該面は、「平板状または略平板状の底部」の概念に含まれるものとする。
【0058】
また、本実施の形態においては、スリーブ43として、小内径部43aと大内径部43bとを有し、外周の径が一律の形状の物を例に挙げて説明したが、本発明において、スリーブの形状に制限はなく、複数の軸受の外周輪を支持することができ、かつ、ハウジングの取付部に着脱可能に構成されていれば、問題なく使用することができる。
【0059】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明のモータを適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0060】
1,101…モータ、2,102…ステータ、21,121…ステータコア、22,122…コイル、23,123…ティース部、24,124…円環部、3,103…ロータ、31,131…マグネット、32,132…ロータヨーク、33,133…筒部、34,134…円盤部、35…軸孔、36…取付具、36a…軸孔、4…カートリッジ、41…シャフト、41a…一方の端部、41b…他方の端部、41c…段差部、42,42’…軸受、42a,42a’…外周輪、42b,42b’…内周輪、42c,42c’…ベアリングボール、43…スリーブ、43a…小内径部、43b…大内径部、44…スナップリング、5,105…ハウジング、51,151…底部、51a…開口、51b,151b…平板領域、51c,151c…傾斜領域、51d…張出部、52…筒状部、53…固定部材、54…取付部、55,155…ステータ固定部、55a,155a…段差部、56a,56b…弾性部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7