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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】高密度ポストアレイ
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20231005BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20231005BHJP
【FI】
B32B27/00 M
C09J7/29
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021502924
(86)(22)【出願日】2019-07-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 IB2019056034
(87)【国際公開番号】W WO2020016754
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-07-13
(31)【優先権主張番号】62/701,107
(32)【優先日】2018-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ヘマー,サラ イー.
(72)【発明者】
【氏名】カルマン,ガイ エム.
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-529514(JP,A)
【文献】米国特許第05296277(US,A)
【文献】特表平07-508303(JP,A)
【文献】特開2001-079987(JP,A)
【文献】特開2004-115766(JP,A)
【文献】特開2001-287329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
C09J 7/00-7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムベースの物品であって、
第1の主面及び第2の主面を有するフィルム層と、
前記フィルムの前記第2の主面に隣接する第1の表面と、前記第1の表面と反対側の第2の表面とを含む接着剤層であって、前記接着剤層の前記第2の表面が、それぞれが基部を有する複数の外向きに延びる突出部を含む構造化表面を含み、前記複数の突出部の前記基部が、前記接着剤層の前記第2の表面の総表面積の少なくとも約6パーセントを構成する、接着剤層と、
前記フィルム層の前記第1の主面に、少なくとも100パーセントのインクレイダウンで適用されたインク層と、を含む、フィルムベースの物品。
【請求項2】
前記インク層が、溶剤系インクを含む、請求項1に記載のフィルムベースの物品。
【請求項3】
前記フィルム層の前記第1の主面に適用された前記インク層が、少なくとも2つの異なる顔料から構成される、請求項1に記載のフィルムベースの物品。
【請求項4】
前記フィルム層が、光学的に、クリア、透明、半透明、不透明、及び有色のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載のフィルムベースの物品。
【請求項5】
前記フィルム層が、複数の材料層を含む、請求項1に記載のフィルムベースの物品。
【請求項6】
前記複数の材料層のうちの少なくとも1つが、プライマー材料を含む、請求項5に記載のフィルムベースの物品。
【請求項7】
前記インク層の外面に隣接するオーバーラミネート層を更に含む、請求項1に記載のフィルムベースの物品。
【請求項8】
前記接着剤層の前記第2の表面が、少なくとも1つのチャネルを更に含む、請求項1に記載のフィルムベースの物品
【請求項9】
フィルムベースの物品を基材に適用する方法であって、
フィルムベースの物品を基材の外面に隣接して配置する工程であって、前記フィルムベースの物品が、
第1の主面及び第2の主面を有するフィルム層と、
前記フィルムの前記第2の主面に隣接する第1の表面と、前記第1の表面と反対側の第2の表面とを含む接着剤層であって、前記接着剤層の前記第2の表面が、それぞれが基部を有する複数の外向きに延びる突出部を含む構造化表面を含み、前記複数の突出部の前記基部が、前記接着剤層の前記第2の表面の総表面積の少なくとも約6パーセントを構成する、接着剤層と、
前記接着剤層の前記第2の表面に隣接する剥離ライナーと、
前記フィルム層の前記第1の主面に、少なくとも100パーセントのインクレイダウンで適用されたインク層と、を含む、フィルムベースの物品を基材の外面に隣接して配置する工程と、
前記剥離ライナーを前記接着剤層の前記第2の表面から取り外す工程と、
前記接着剤層の前記第2の表面を前記基材の前記外面に適用する工程と、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、位置決め可能かつ再配置可能な接着特性を有する接着剤材料に関し、より具体的には、構造化接着面のアレイを有する接着剤材料に関する。
【背景技術】
【0002】
感圧性接着剤(PSA)フィルムは、一般に、下にある基材の美的特性又は機能特性を修正することを含む、装飾、保護、又は他の目的のために、多種多様な基材に適用される。このような基材上に少量のPSAフィルム材料を配置することは比較的容易であり得るが、カーラップ又はフレットグラフィック設置の場合など、より大きなPSAフィルム材料を正確に配置することははるかに困難である。
【0003】
より大きなサイズのPSAフィルムの配置を補助するために、水、洗剤、及び/又は界面活性剤若しくは潤滑剤などの液体が、フィルムのPSA層とそれが適用される基材との間で使用されることが知られている。いくつかの状況において有効であるが、このプロセスは、フィルムの適切な接着を可能にするために十分な液体を除去することが困難であること、及び過剰な液体によって引き起こされる周囲の材料への意図しない損傷を含む、多くの欠点を生じやすい。
【0004】
特定のPSA材料の露出した接着面の改質は、下にある基材に対する再配置を可能にするために用いられる別の手法である。例えば、PSA層を越えて延びる非接着剤材料の不連続なコーティングは、PSAの基材への初期接着を防止することができるが、基材への接着剤の実際の接着もまた、非PSA伸長によって遮断される。非接着部分を有するフィルムに対する他の表面改質もまた使用されており、これにより、フィルム材料の最終的な付着を伴う配置中の再配置性のバランスが同様の困難をもたらす。
【0005】
他の接着剤材料は、3M Company(St.Paul,Minnesota)から商品名「Controltac」で市販されているグラフィックフィルム材料によって提供される接着剤ペグなどの、トポロジー的に構造化された接着面で利用可能である。このような材料は、多くの用途に有効であるが、その化学的特性を維持し、いくつかの構造化接着剤パターンで生じ得る溶剤移動の影響を緩和しつつ、装着を容易にするための所望の摺動特性を可能にする、カーラップ及びフレットグラフィック設置などの特定の用途に有用な構造化感圧性接着剤パターンを提供する必要性が引き続き存在する。
【発明の概要】
【0006】
適用中に容易に再配置可能であり、かつその所望の位置に配置されると、基材にしっかりと及び/又は恒久的に取り付けられ得る材料を提供するために、フィルム層の一方の側に延びるポスト及び/又は凹チャネルを含む構造化接着面を有するフィルム材料が提供される。これは、溶剤インクを使用するインクレイダウンで印刷されたフィルムであっても達成される。ポストのアレイは、比較的高密度であり得、これは、基材に接触する露出した接着剤の面積が少ないため、初期タックの量を減少させる。この高密度のポストの配列では、ポスト特徴部の有無にかかわらず、接着剤のバルク化学的性質は変化しないままであり、経時的に構築し続ける。本明細書に記載される実施形態によれば、同じ接着性の構築を経時的に維持しながら、制御可能な減少した初期タックを有することが可能である。
【0007】
更に、ポストの幾何学的形状及び密度を変化させることによって、摺動性能を操作及び制御することができる。第1の接着剤を基材に適用する際に、グラフィックの摺動性を評価する。摺動性は、実際に基材に適用されタックされる前に、グラフィックが基材上で少なくともある程度自由に摺動することを可能にする。場合によっては、利用可能な平坦な接着剤の接触点をより少なくすることによって、より多くの摺動を達成するために、ビーズがポストに組み込まれる。また、比較的高密度のポストアレイパターンを有することにより、ポストは、摺動の増加を可能にする接着剤中により剛性の構造を作り出す。この挙動は、グラフィックフィルム上の溶剤印刷時に更に確認される。場合によっては、溶剤印刷は、接着剤との相互作用により、摺動性能の低下をもたらし得る。本明細書で提供される比較的高密度のポストアレイパターンは、その剛性に起因して印刷されたときの摺動性能の低下を軽減するのに役立ち、更に摺動の改善を示す。
【0008】
再配置可能性が、本明細書に記載のグラフィックフィルムが適用され、次いで持ち上げられ、基材上に再配置されることを可能にすることが更に見出されている。従来の再配置可能なグラフィックフィルムにおいて、再配置可能性の変更は、接着剤化学物質のバルク弾性率を変化させる際に達成される。しかしながら、本明細書で提供される高密度のポストアレイパターンでは、接着剤の化学的性質を変化させることなく、再配置可能性を変更し、更に改善することができる。より高密度のポストアレイは、その剛性、摺動性、及び初期タックの増加により、材料をより容易に再配置することを可能にする。加えて、更に、比較的高密度のポストアレイは、基材に接着された後に、グラフィックフィルムのより望ましいレベルの「かみつき(snap up)」を提供することができ、これは、設置者が、大面積が基材に適用された後に、材料を比較的迅速に持ち上げるときに生じる。
【0009】
本明細書に記載のフィルム材料によれば、フィルムベースの物品の実施形態は、第1の主面及び第2の主面を有するフィルム層と、フィルムの第2の主面に隣接する第1の表面と、第1の表面と反対側の第2の表面とを含む接着剤層であって、接着剤層の第2の表面が、それぞれが基部を有する複数の外向きに延びる突出部を含む構造化表面を含み、複数の突出部の基部が、接着剤層の第2の表面の総表面積の少なくとも約6パーセントを構成する接着剤層と、フィルム層の第1の主面に、少なくとも100パーセントのインクレイダウンで適用されたインク層と、を含む。
【0010】
フィルムベースの物品のインク層は、溶剤系インクを含んでもよく、インク層は、少なくとも150パーセント、又は少なくとも200パーセント、又は少なくとも250パーセントのインクレイダウンでフィルム層の第1の主面に適用されてもよい。インク層は、少なくとも2つの異なる顔料、又は少なくとも3つの異なる顔料、又は少なくとも4つの異なる顔料で構成されてもよい。
【0011】
フィルム層は、光学的に、クリア、透明、半透明、不透明及び有色のうちの少なくとも1つであってもよい。フィルム層は、ビニル、ポリ塩化ビニル、可塑化ポリ塩化ビニル、ポリウレタン(PU)、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、及びアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)のうちの少なくとも1つを含む。フィルム層は、1つ又は複数の材料層を含んでもよく、複数の材料層のうちの少なくとも1つは、プライマー材料であり得る。フィルムベースの物品は、インク層の外面に隣接するオーバーラミネート層を含んでもよい。
【0012】
本明細書に記載のフィルム材料によれば、一実施形態の複数の突出部の基部は、接着剤層の第2の表面の総表面積の約9パーセント~約25パーセントを構成する。本明細書に記載のフィルム材料によれば、一実施形態の複数の突出部の基部は、接着剤層の第2の表面の総表面積の約16パーセント~約20パーセントを構成する。
【0013】
本明細書に記載のフィルム材料によれば、一実施形態の接着剤層の第2の表面は、少なくとも1つのチャネルを更に含み、少なくとも1つのチャネルは、不規則であり得るチャネルのアレイを含んでもよい。
【0014】
本明細書に記載されるフィルム材料によれば、一実施形態の複数の突出部は、少なくとも1つの追加の突出部の高さと同じ高さを有する少なくとも1つの突出部、及び/又は少なくとも1つの追加の突出部の高さとは異なる高さを有する少なくとも1つの突出部を含む。
【0015】
本明細書に記載のフィルム材料によれば、フィルムベースの物品の実施形態は、第1の主面及び第2の主面を有するフィルム層と、フィルムの第2の主面に隣接する第1の表面と、第1の表面と反対側の第2の表面とを含む接着剤層であって、接着剤層の第2の表面が、それぞれが基部を有する複数の外向きに延びる突出部を含む構造化表面を含み、複数の突出部の基部が、接着剤層の第2の表面の総表面積の少なくとも約6パーセントを構成する、接着剤層と、フィルム層の第1の主面に適用された溶剤系インクコーティングと、を含む。
【0016】
本発明のフィルムベースの物品は、フィルムベースの物品を基材の外面に隣接して配置する工程であって、フィルムベースの物品が、第1の主面及び第2の主面を有するフィルム層と、フィルムの第2の主面に隣接する第1の表面と、第1の表面と反対側の第2の表面とを含む接着剤層であって、接着剤層の第2の表面が、それぞれが基部を有する複数の外向きに延びる突出部を含む構造化表面を含み、複数の突出部の基部が、接着剤層の第2の表面の総表面積の少なくとも約6パーセントを構成する接着剤層と、接着剤層の第2の表面に隣接する剥離ライナーと、フィルム層の第1の主面に、少なくとも100パーセントのインクレイダウンで適用されたインク層と、を含む、フィルムベースの物品を基材の外面に隣接して配置する工程と、剥離ライナーを接着剤層の第2の表面から取り外す工程と、接着剤層の第2の表面を基材の外面に適用する工程と、を含む方法を使用して基材に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明は添付図面を参照して更に説明される。
図1】フィルムベースの物品の一実施形態の断面側面図であり、その複数の突出部及び1つのチャネルを含む例示的な構造化表面を示す。
図2】接着剤ポストのアレイを含む構造化感圧性接着剤層の一実施形態のトポグラフィー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書に記載される実施形態によれば、構造化感圧性接着剤(PSA)パターンは、例えば、カーラップ及びフレットグラフィック設置の形態のフィルム材料の用途に使用することができるビニルなどのフィルム材料に提供される。このような構造化PSAパターンを有するフィルム材料は、一部の印刷された構造化接着剤パターンにおいて生じ得る溶剤移動の化学的特性及び緩和効果を維持しながら、設置を容易にするための所望の摺動特性を可能にすることができる。本明細書に記載のフィルムベースの物品の例示的な使用としては、車両用ラップ、医療用テープ、看板用のグラフィック材料、構造テープ、並びに/又は工業用途及び/若しくは商業用途用のテープなどが挙げられる。フィルムベースの物品は、サイズを変化させることができ、特定の基材の全て又は一部分のみに適用することができる。
【0019】
本明細書に記載のフィルムベースの物品は、溶剤系インクで印刷され、少なくとも1つのトポロジー的に構造化された接着面及びバッキングを有するフィルムベースの物品を含む。構造化接着面は、基材へのシートの弱い初期接着又はタックを可能にし、したがって、必要に応じて比較的容易な再配置を可能にする一方で、下にあるベース接着面が基材に接触するまで突出部を圧縮することによって適用される基材への強固な恒久的結合を可能にする。構造化接着面は、接着面から外向きに突出又は延びる接着剤突出部の分布を含む。突出部は、物品を基材に接着することが望ましい場合、ライナーシート又は層を除去することによって露出される。突出部は、下にある接着剤層と同じ接着剤材料を含んでもよい。場合によっては、突出部は、下にある接着剤層とは異なる接着剤材料を含んでもよい。場合によっては、突出部は、粒子又はビーズなどの非接着剤材料を含有してもよく、これらは非粘着面又は非接着面を提供して、フィルムが適用される基材と最初に接触する、したがって、フィルムが表面にわたって「摺動する」ことを可能にする。
【0020】
突出部は、接着領域全体の基部において、約9パーセント~約25パーセント、又はより好ましくは約16パーセント~約20パーセントで構成するように分散及び配置することができる。これらの百分率に達するために、代表的な領域内の突出部の全ての基部の近似面積は、加算され、代表的な領域の全体的なサイズと比較される。突出部は、例えば、約8ミクロン~30ミクロンの平均高さを有し得る。
【0021】
ここで図を参照し、最初に図1を参照すると、フィルム材料又はフィルムベースの物品10の例示的な実施形態が示されており、これは概して、第1の面14と第2の面16とを有するフィルム層12と、フィルム層12の第2の面16に隣接し結合された第1の面22と反対側の第2の面24とを有する接着剤層20と、接着剤層20の第2の面24に剥離可能に取り付けられた第1の面32と第2の面34とを有する剥離ライナー30と、フィルム層12に隣接するインク層46と、インク層46に隣接するオーバーラミネート層50と、を含む。接着剤層20は、複数の突出部26と、少なくとも1つの任意のチャネル27とを含む感圧性接着剤である。剥離ライナー30は、その第1の面32にチャネル又は凹部を含み、チャネル又は凹部は接着剤層20から延びる対応する突出部26を形成するために使用される。剥離ライナー30は、その第1の面32からの突出部を更に含み、この突出部は接着剤層20内に対応するチャネル27を形成するために使用される。剥離ライナー30は、フィルムベースの物品10を基材に適用する前の任意の時点で、下にある接着剤層20及びその対応する突出部26を保護するために更に使用される。剥離ライナー30は、物品10が基材に適用される前に、接着剤層20から部分的又は完全に取り外し可能である。
【0022】
フィルム層12は形状適合性であっても非形状適合性であってもよいが、好ましくは、少なくとも50%の伸びレベルを有し、また1つ以上の層を含む形状適合性又は柔軟フィルム材料である。本明細書で使用する場合、用語「形状適合性」は概して、凸状特徴部、凹状特徴部、及び/又は他の形状若しくは外形を備える三次元基材の形状を実質的に又は完全に取ることができるフィルムを指す。しかしながら、フィルムの形状適合性の決定は、そのような基材に実際に適用される状況に限定されず、フィルムが基材に適用される前にこの機能を有することもある。いくつかの実施形態では、このような形状を取ることは、フィルムの構造的一体性及び/又は美的外観に望ましくない変化を伴わずに可能である。この意味では、形状適合性フィルムは、平坦面に適用することができ、及び/又は十分に大きな曲率半径(大円柱など)を有する表面の周りでわずかに湾曲することができるが、より複雑な三次元基材に適用する(及びその表面に適合する)ことは不可能である非形状適合性フィルムとは区別できる。
【0023】
フィルムの適合性に影響を及ぼし得る要因としては、フィルムを製造するために使用される材料が何であるか、そのような材料の分子量、そのようなフィルムが曝される条件(例えば、温度、放射線曝露、及び湿度)、並びにフィルム材料中の添加剤の存在(例えば、含有される可塑剤、強化繊維、顔料、安定剤(例えばUV安定剤)、及び硬度向上粒子)が挙げられる。
【0024】
本明細書に記載の実施形態で利用されるフィルム層12は概して、当業者に使用される様々なプラスチック材料で作製されている。好適なフィルム層としては、例えば、反射又は透過された色、不透明度、再帰反射性、透明度、拡散性、印刷受容性、印刷画像及びパターンなどの、仕上げた構造体にある程度の光学特性を提供するフィルム層が挙げられる。25~300μmの範囲のフィルム層の化学物質としては、可塑化PVCフィルム層(キャスト及びカレンダー加工の両方)、ウレタン、セルロース誘導体、アクリル、オレフィン、ポリエステル、及びこれらのブレンドが挙げられ得る。フィルム層は、アクリルコポリマー、ポリアミド、又はウレタンのような窒素に富むポリマーなどの適切なプライマーでプライミングすることができる。プライマーは、エポキシ、メラミン、又はイソシアネートなどの適切な化学物質を介して架橋されてもよく、架橋されなくてもよい。フィルム層厚さは、所望の用途に応じて広く変化することができるが、通常、約300μm以下、好ましくは約25μm~約100μmの範囲内である。フィルム層は、光がそれを通過し、層の背後にある物体を明確にみることができるように光学的にクリア又は透明であってもよく、鮮明な像ではないが、光がそれを通過することができる半透明(すなわち、準透明)であることができ、その領域にわたって見えない(すなわち、透明ではない)、及び/又は有色であるように不透明であってもよい。
【0025】
好適なフィルム層の具体例は、可塑化ポリ塩化ビニルフィルムであり、延伸された後に十分な非弾性変形を有するため、延伸されるとフィルムは元の長さに戻らない。好ましくは、フィルム層は、その元の長さの115%まで一度延伸された後に少なくとも5%の非弾性変形を有する。ビニルフィルムの典型的な配合物としては、ポリ塩化ビニル樹脂、光及び/又は熱安定剤、可塑剤、及び任意選択的に顔料が挙げられる。可塑剤の量は、約40重量%未満であることができ、好ましくは、ビニルフィルムと相溶性があり、所望の可撓性及び耐久性を提供するポリマー非移行性可塑剤から構成される。1つの好適な可塑剤は、芳香族溶剤中に可溶性であり、ビニル樹脂100部当たりそれぞれ約26部及び10部の量で存在する、ポリマーポリエステルエラストマーとエチレンビニルアセテートコポリマー(DuPont Co.製のElvaloy 742など)との組み合わせである。
【0026】
本発明に有用なフィルム層の非限定的な例は、薄い又は厚いプラスチック(合成又は天然)、反射シート、布地(織布又は不織布)、紙、金属箔、複合剥離ライナーなどであってもよい。フィルム層は、得られる物品が、グラフィック物品、転写テープ、両面テープ、日除けなどであるように構築されてもよい。更に、フィルム層は、クリアなコート、装飾的グラフィック、汚れ防止及び耐候性コーティング、既知の技術の接着剤層、スクリーン印刷可能インク、バリア層、接着促進剤、多層の半透明フィルムなどの追加の機能的及び装飾的な層を備えてもよい。このような機能的及び装飾的な層は、当該技術分野において既知であり、当業者に既知の技術にしたがって使用、適用、又は積層されてもよい。
【0027】
フィルム層と接着剤層との間の結合を強化するために、1つ以上のプライマー層を任意選択的に使用してもよい。プライマーの種類は、使用されるフィルム及び接着剤の種類によって変化し、当業者であれば適切なプライマーを選択することができる。好適なプライマー層の例としては、塩素化ポリオレフィン、ポリアミド、米国特許第5,677,376号、同第5,623,010号に開示されている変性ポリマー、並びに国際公開第98/15601号及び国際公開第99/03907号に開示されているもの、並びに他の変性アクリルポリマーが挙げられる。典型的には、プライマーは、非常に低い濃度、例えば、約5%未満(less that)の固形で適切な溶媒中に分散され、フィルム上にコーティングされ、室温又は高温で乾燥されて、非常に薄い層を形成する。使用される典型的な溶媒としては、水、ヘプタン、トルエン、アセトン、酢酸エチル、イソプロパノールなどを挙げることができ、単独、又はそれらのブレンドとして使用され得る。
【0028】
フィルム物品の実施形態によれば、感圧性接着剤層は、成形工具、バッキング、若しくはライナーによって成形された後に、露出面から延びる突出部を保持することができるもの、又は成形工具、バッキング、若しくはライナー上にコーティングされ、その後それから除去された後に、露出面から延びる突出部を保持することができるものなどの接着剤を含んでもよい。所与の用途のために選択される特定の感圧性接着剤は、物品が適用される基材の種類に応じて、及び接着剤バッキング物品を生産する際に用いられる方法に応じて異なる。更に、有用な構造化感圧性接着剤は、接着剤バッキング物品の利用を可能にするのに十分な時間、それらの構造化表面を保持することができる必要がある。
【0029】
感圧性接着剤は、乾燥した状態で(残留溶剤を除いて実質的に無溶剤)形態は強力であり、場合によっては室温(例えば、約15℃~約25℃)で恒久的に粘着性であり、手動圧力よりも多くを必要とすることなく単に接触すると、様々な異種表面にしっかりと接着する接着剤である。この接着剤は、紙、セロファン、ガラス、プラスチック、木材、塗装面、及び金属のような材料に対して強力な接着保持力を及ぼすために、水、溶剤、又は熱による活性化の必要がない。感圧性接着剤は概して、ゴム樹脂材料、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂などから化学的に構成される。非感圧性接着剤、熱活性化接着剤、又は溶剤活性化接着剤は、特定の弾性伸び特性を表示することができる場合に使用され得る。
【0030】
多くの種類の感圧性接着剤は、フィルムベースの物品10に有用であり得る。使用される接着剤は、接着される基材の種類に基づいて選択することができる。感圧性接着剤のクラスとしては、アクリル、粘着付与ゴム、粘着付与合成ゴム、エチレンビニルアセテート、及びシリコーンなどが挙げられる。好適なアクリル接着剤は、例えば、米国特許第3,239,478号、同第3,935,338号、同第5,169,727号、米国特許第RE24,906号、米国特許第4,952,650号、及び同第4,181,752号に開示されている。好ましいクラスの感圧性接着剤は、少なくともアルキルアクリレートと少なくとも1種の強化コモノマーの反応生成物である。好適なアルキルアクリレートは、約-10度C未満のホモポリマーガラス転移温度を有するものであり、例えば、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノルイル(isononlyl)アクリレート、オクタデシルアクリレートなどが挙げられる。好適な強化モノマーは、約-10度Cのホモポリマーガラス転移温度を有するものであり、例えば、アクリル酸、イタコン酸、イソボルニルアクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0031】
接着剤層は、溶媒又は水中に分散されるポリマーを含み、剥離ライナー上にコーティングして乾燥させ、任意に架橋してもよい。乾燥プロセスは、材料に応じて、空気乾燥、オーブン乾燥、及びUV硬化のうちの1つ以上を含んでもよい。溶剤系又は水系の感圧性接着剤組成物が用いられる場合、接着剤層は概して、キャリア液の全て又は大部分を除去するために乾燥ステップを施す。平滑な表面の達成において、追加のコーティング工程が役立つ場合がある。ライナー又は構造化バッキング上に接着剤をホットメルトコーティングしてもよい。更に、モノマープレ接着剤組成物をライナー上にコーティングし、熱、UV放射、電子ビーム線放射などのエネルギー源を用いて重合させることができる。
【0032】
比較的厚い感圧性接着剤コーティングが所望される場合、接着剤の複数の層を適用するか、又は接着剤をその場で光重合することのいずれかが望ましい場合がある。例えば、モノマーアルキルアクリレート、アクリル酸などの共重合性モノマー、及び任意に、ポリマーは、紫外線への曝露によって感圧性接着剤の状態へ共重合され得る。
【0033】
フィルムベースの物品10の例示的な作製では、接着剤層20は、ライナー30上にコーティングされ、その結果、接着剤混合物は、形成される突出部26に対応するライナー表面の凹部に流れ込む。次いで、フィルム層12を接着剤層20に積層する。フィルム層12は単一プライとして図示されているが、代わりに、複数のプライ又は熱可塑性材料の層、追加の接着剤層、プライマー層、保護コーティング、バリア層、並びに、当業者に既知の任意の他の構造及び構造の組み合わせ、例えば、サインシート、転写又は剥離ライナー、転写テープ、接着剤コーティングフィルム発泡体、織布シート及び不織布シート、紙、及び金属箔から構成され得る。
【0034】
図2も参照すると、接着フィルムバッキング又は層の接着剤層の実施形態が示されている。図示のように、複数の突出部26は、接着剤層表面20の機能部分上に比較的均一に分布しているが、場合によっては、突出部26は、より高密度及び低密度の領域、ランダム分布などを含むパターンで配置される。突出部26は、接着剤層に平行な平面で取られた突出部の断面の形状が、楕円形、円形、多角形、矩形、星形、環状形、不規則形、及びこれらの任意の組み合わせであってもよい。これらの突出部26の基部は、接着剤層表面20に直接隣接する突出部の一部であると考えられる。
【0035】
図1は、比較的平坦な頂部を有する突出部を示しているが、突出部の上面は、代わりに湾曲しても、輪郭形成しても、又は不規則であってもよく、突出部のためのテクスチャ加工されたタイプの上面を提供するビーズを含んでもよい。実施形態において、突出部26の頂部と側面との間の内角は、好ましくは150度以下、より好ましくは90度~135度である。実施形態では、突出部のサイズ及び形状は、ライナーの表面を改質する成形型又は工具と密接に一致するが、他の実施形態では、接着剤は形成中に凹領域に完全に充填されず、それによって、成形型又は工具の形状と概ね一致する突出部を有する材料を形成するが、違いも有する。
【0036】
接着面上の突出部のアレイの平均高さは、突出部が接着面から最も遠い突出部の点又は一般的区域を延ばす接着面から測定して、少なくとも12μmであり得る。突出部は概して、200μm、好ましくは150μm、及び最も好ましくは50μmの最大高さを有する。高さは変化し得るが、高さの変動はランダムであることが好ましく、これは、互いにグループ化された多数のより短い突出部を有することが望ましくない場合があるためである。加えて、突出部26の平均高さは約15μmであり、したがって、個々の突出部内の高さのばらつきを考慮している。しかしながら、高さ及び内角は、一部には、本発明の実施に使用するために選択される接着剤組成物の機能である。突出部の高さは好ましくは均一であるが、作製時の高さバラツキを有する複数の突出部を有することが企図される。また、所定の高さバラツキを有する複数の突出部を有し、有利には、位置決め能力及び/又は再配置能力を更に制御することも企図される。
【0037】
典型的には、突出部は、構造化ライナー上に接着剤を直接コーティングすることによって形成することができる。複合突出部の場合、突出部は、小さな凹部がビーズで、任意に機能的に十分な量のポリマーバインダーで予め充填された構造化ライナー上に接着剤を直接コーティングすることによって形成することができる。あるいは、複合突出部は、接着剤/ビーズスラリーの第1の通過コーティング、続いて接着剤のみのコーティングで形成することができる。第2の接着剤のみのコーティングは、第2の接着剤が第1の通過コーティング接着剤と十分に適合性であるならば、化学的に異なる接着剤であってもよい。これは概して、適用中にライナーが取り外された後に、接着剤(第2のコーティング)表面上に突出部を保持するのに有用である。図2に示されるように、突出部26の形状は、ライナーが接着剤から取り外されるとき、接着剤若しくはビーズの一部がライナーの凹部内に残されるかどうかに応じて、及び/又はライナー上にコーティングされた接着剤が充填プロセス中に凹部を完全に充填したかどうかに応じて、円形又は不規則のいずれであってもよい。
【0038】
本明細書に記載の突出部は、接着剤全体で作製することができるが、その代わりに、ビーズが接着剤によって実質的に被覆された状態で、接着剤及びビーズの複合体から構成されてもよい。場合によっては、突出部の全体的な表面が接着面を提供する限り、ビーズの小部分は表面の上方又は下方にあってもよく、接着剤によって覆われていなくてもよい。
【0039】
本発明のフィルムベースの物品を装飾目的のために使用する場合、ビーズは、好ましくは、接着剤層の厚さよりも実質的に小さく、これにより、接着剤層に押圧された後、ビーズはバッキングの露出面を損傷しない。例えば、接着剤層の厚さが約20~40μmである場合、ビーズのそれぞれは、好ましくは20μm未満の平均直径未満であり、好ましくは1~15μmの平均直径であり、及びより好ましくは1~10μmの平均直径である。このような群内のビーズは、同じ又はサイズの混合物であってもよい。約0.5μmよりも小さいビーズは、より大きな粒子よりも使用が困難かつ高価であり得る。マスキングテープなどの非装飾的用途では、ビーズは接着剤の厚さを超えることができる。凹部を部分的に充填するためにラテックス樹脂でエンボス加工ライナーを最初にコーティングし、ライナーの表面を拭き、樹脂を乾燥又は合体させることによって複合突出部を調製することも可能である。次いで、乾燥させた又は合体させた樹脂を、接着剤溶液でオーバーコートする。
【0040】
典型的には、突出部は、構造化ライナー上に接着剤を直接コーティングすることによって形成することができる。複合突出部の場合、突出部は、小さな凹部がビーズで、任意に機能的に十分な量のポリマーバインダーで予め充填された構造化ライナー上に接着剤を直接コーティングすることによって形成することができる。あるいは、複合突出部は、接着剤/ビーズスラリーの第1の通過コーティング、続いて接着剤のみのコーティングで形成することができる。第2の接着剤のみのコーティングは、第2の接着剤が第1の通過コーティング接着剤と十分に適合性であるならば、化学的に異なる接着剤であってもよい。これは、適用中にライナーがフィルムベースの物品から取り外された後に、接着剤(第2のコーティング)表面上に突出部を保持するのに重要であり得る。
【0041】
複合突出部を含むフィルムベースの物品を作製するための1つの方法は、(a)ビーズのスラリーを調製する工程と、(b)エンボス加工ライナー上にスラリーをコーティングして、エンボス加工ライナー内の凹部を充填する工程と、(c)エンボス加工ライナーを拭き取って過剰なスラリーを除去する工程と、(d)充填されたエンボス加工ライナーを接着剤溶液でコーティングする工程と、(e)接着剤溶液をビーズ及びその周辺に吸着させて乾燥させる工程と、を含む。接着剤溶液は、ラテックス接着剤溶液又は反応性モノマーを含有する溶液であり得る。
【0042】
本発明のフィルムベースの物品のための好ましいライナーは、低接着性表面ポリマープラスチックフィルムである。ライナーは、保護ライナー、剥離ライナーなどであってもよい。フィルムベースの物品が上記の方法の最初に作製される場合、プラスチックフィルムはエンボス加工されて凹部を形成することができる。エンボス加工可能なプラスチックフィルムは、自立性であることができるが、好ましいライナーはクラフト紙であり、その1つ以上の表面は、シリコーン剥離コーティングによって被覆される薄いエンボス加工可能なポリエチレンコーティングを有する。有用な自立性プラスチックフィルムとしては、可塑化ポリ(塩化ビニル)及び二軸配向ポリ(エチレンテレフタレート)並びにポリプロピレンが挙げられるが、これらに限定されず、これらの全ては経済的であり、良好な強度、強靱性、及び寸法安定性を有する。好ましくは、エンボス加工ライナー内の凹部形状は、典型的には、本質的に平坦な底部を有する切頭円錐である。
【0043】
本明細書に記載されるフィルムベースの物品は、シート、ロール、又は別の所望の構成で提供されてもよい。フィルムは、以下に記載されるように、フィルムベースの物品10のインク層46(例えば、例示的な溶剤系インク)を提供するために、任意の数の異なる種類のインクで印刷されることが可能であり、これは、例えば、少なくとも45%のインクレイダウンとして提供することができる(すなわち、インクレイダウンは所与の領域上のインクの割合であり、インクは、45%に等しい溶剤系顔料構造で作製される)。この印刷は、接着剤層がフィルムに積層される前又は後に行われ得る。一般に、より多数の突出部を提供することは、接着剤の摺動及びタックに影響を与える溶剤移動の影響を軽減することができ、より多くのインクレイダウンは概して、フィルムベースの物品の接着剤をより粘着性にする。
【0044】
本明細書で使用するとき、デジタル印刷におけるインクレイダウンの概念は概して、色を作るために使用されるインクの量を指す。より詳細には、4色の主な工程色(ブラック、シアン、マゼンタ、及びイエロー)が存在し、これらはそれぞれ0~100%印刷することができる。工程色を混合することにより、100%を超えるインクレイダウンを達成することができる。置かれたインクの実際の量は、プリンタ間で異なり、インクレイダウンは、機械言語に変換されて、プリンタに送られる、その後ソフトウェアを通して処理される画像ファイル内の指定された色である。この変換では、次いで、デザイン内の呼び出された色がプリンタの色出力/混合テーブルに参照され、色管理プロセスが、指定された色を達成するためにインクレイダウンを決定することになる。
【0045】
本明細書で提供されるフィルムベースの物品の一実施形態では、剥離ライナーは、1インチ当たり170ライン(1cm当たり67ライン)の密度で、16%の例示的な表面凹部領域被覆率及び28900/インチ(4480/cm)の凹部を含む。これにより、剥離ライナーの粒子充填面上に、390ミクロンの間隔及び13~14ミクロンの高さ及び40ミクロンの幅を有する正方格子内の60度の抜け勾配を有する表面突出部のアレイを作り出した。
【0046】
3M Company(St.Paul,Minnesota)から商品名「Scotchcal」で市販されているフィルムなどのオーバーラミネート層50を、オーバーラミネートプリント構造のフィルムのフィルム側に積層して、本明細書に記載のフィルム構造の実施形態を提供することができる。一般に、オーバーラミネート層は、UV、引っ掻き、及び風化作用から、ビニル上に印刷されたインク層を保護するフィルムであり得る。オーバーラミネート層は、グラフィックフィルムの外観、性能、及び耐久性を改善することができる。
【0047】
本明細書で提供されるフィルムベースの物品10の実施形態は、更に、接着剤と物品10が適用される基材の表面との間に捕捉された空気又は流体のある程度の排出を可能にするチャネル27を含む。チャネル27は、このような空気又は流体の排出を可能にする特定の特性を有する感圧性接着剤内のチャネルを画定する構造化表面の一部と考えることができる。したがって、本明細書で提供される物品の実施形態の接着剤中のチャネルは、フィルム物品の周辺で必ずしも終端しないチャネル又はチャネルセグメントを含む、空気/流体排出を改善するための特定の寸法及び特性を有する。
【実施例
【0048】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例に記載された特定の材料及びその量、並びに他の条件及び詳細は、本発明を不当に制限するものと解釈されるべきではない。これらの実施例は単に例示を目的としたものであり、添付の特許請求の範囲を限定することを意味するものではない。
【0049】
様々なポスト(突出部)接触領域を有するフィルムを調製し、異なるインクのレイダウンレベルで印刷した。サンプルが表面にわたって摺動する能力を評価した。本明細書の実施例及び他の箇所における全ての部、百分率、比などは、別途指示がない限り、重量に基づくものである。以下の略語を本明細書で使用する:in/min=インチ/分;sec=秒;cm=センチメートル;in=インチ;lb=ポンド;Kg=キログラム;℃=摂氏;RH=相対湿度。
【0050】
【表1】
【0051】
摺動試験
摺動試験は、基材上の材料の摺動性を評価した。基材は、ALUMET SUPPLY(Parsippany,NJ Branch)製の12インチ×12インチ(4.7cm×4.7cm)のアルミニウムパネルで予め塗装した。アルミニウムを白色のアクリル塗料で予め塗装した。
【0052】
摺動試験の手順
まず、ライナーをグラフィックフィルムから取り外して、接着剤を露出させた。次に、グラフィックフィルムの接着剤側を基材パネルに適用した(圧力を加えずにパネル上に軽く載せた)。次に、材料の一端を持ち上げ、それを基材全体に引っ張ることによって、サンプルを基材パネルの周囲に移動させた。次に、摺動ランクレベルを、グラフィックフィルムの摺動性及びタックに基づいて割り当てた(ランク付けレベルは以下のとおりである)。2つの別個の評価者を用い、以下のランク付けを使用して、各サンプルについての結果の平均を記録した。
レベル1:摺動性なし(基材上で横に摺動することなく、高いタックの、基材に接着されたフィルム)
レベル2:低摺動性及び中等度のタック(接着を破壊するために力が適用されたときにしわが認められる)
レベル3:中等度の摺動性及び中等度のタック(接着を破壊するために力が適用されたときにわずかなしわが認められる)
レベル4:中等度の摺動性及び低タック(接着を破壊するために力が水平に適用された後に摺動する)
レベル5:最大摺動性(基材に接着することなく自由に摺動する)
【0053】
摩擦係数摺動試験
摩擦係数手動試験は、材料の摺動性を評価した。使用した試験装置は、Accord,MAにあるIMASS INCから入手可能なI-MASS PEEL TESTER SP-2100(10lb/5kgロードセル)であった。7.6cm×20.3cmのサンプルを23℃+/-2℃及び50+/-5%のRHで24時間調整した。IMASSスレッド(201グラム)をライナーで包み、ライナーの紙側、F2から内側に巻き取った。更に800グラムの重量をスレッドに付加した。IMASSスレッドは、スレッドからロードセルにテザー(釣糸)を取り付けることによって固定した。テザーは長さ約6.5インチ(16.5cm)であった。
【0054】
摩擦係数摺動試験の手順
ライナーをフィルムサンプルから取り外し、接着剤を露出させた。次いで、接着剤側を上向きにするようにサンプルをプラテン上に配置した。次いで、サンプルの前端部をプラテンにテープで貼り付けた。スレッドを、その開始位置がサンプルの直前及び部分的にテープ上にあるように配置した。次いで、スレッドを、300インチ/分(0.127メートル/秒)の試験速度でサンプルの接着面にわたってドラッグし、その結果をグラム単位で記録した。
【0055】
実施例1-オーバーラミネートされ印刷された構造化フィルム(E1)
剥離ライナーを滑らかなシリコーンゴムロールと彫刻金属ロールとの間に通すことにより、剥離ライナー(L1)に第2のパターンをエンボス加工した。これにより、剥離ライナーの粒子充填面上に、390ミクロンの間隔及び13~14ミクロンの高さ及び40ミクロンの幅を有する正方格子内の60度の抜け勾配を有する表面突出部のアレイを作り出した。
【0056】
連続コーティング/乾燥機ラインを使用して、感圧性接着剤溶液(A1)をエンボス加工された剥離ライナーの粒子充填面上にスロットダイコーティングし、乾燥させた。これにより、接着剤コーティングされたエンボス加工剥離ライナーが製造された。乾燥時の接着剤の厚さは、30ミクロンであった。接着剤を、93℃で54秒間乾燥させた。接着剤コーティングされたエンボス加工剥離ライナーの露出した接着面を、室温でフィルムF1に積層して、構造化接着フィルムを形成した。
【0057】
構造化接着フィルムは、Roland SOLJET PRO 4 XR-640高容量プリンタ(Roland DGA Corp.Irvine,CA)を用い、Roland DGAからECO-SOL MAX 2として入手可能な溶剤インクを用いてインクジェット印刷した。プリンタは、45%のインクレイダウンを使用して設定した。インクレイダウンは、45%インクレイダウンに相当する溶剤系顔料の組み合わせからなり、45%のブラック顔料を使用することによって達成した。このフィルムを室温で24時間熟成させた。O1を、印刷された構造化接着フィルムのフィルム側に積層した。これにより、オーバーラミネートされ印刷された構造化接着フィルムが生成された。上記摺動試験を使用して、材料を試験した。結果について表1を参照されたい。
【0058】
比較例1(CE1)
比較例1は、印刷されていないフィルムF2であった。上記摺動試験及び摩擦係数摺動試験を使用して、材料を試験した。結果については表1及び表2を参照されたい。
【0059】
実施例2-オーバーラミネートされ印刷された構造化フィルム(E2)
実施例1からの構造化接着フィルムを、インクレイダウンが100%であり、シアン顔料からなることを除いて、実施例1と同じように加工した。上記摺動試験を使用して、材料を試験した。結果について表1を参照されたい。
【0060】
実施例3-オーバーラミネートされ印刷された構造化フィルム(E3)
実施例1からの構造化接着フィルムを、インクレイダウンが150%であり、150%に等しい溶剤含有量からなり、100%のシアン顔料と50%のマゼンタ顔料とから構成されることを除いて、実施例1と同じように加工した。上記摺動試験を使用して、材料を試験した。結果について表1を参照されたい。
【0061】
実施例4-オーバーラミネートされ印刷された構造化フィルム(E4)
実施例1からの構造化接着フィルムを、インクレイダウンが200%であり、100%のシアン顔料と100%のマゼンタ顔料とからなることを除いて、実施例1と同じように加工した。上記摺動試験を使用して、材料を試験した。結果について表1を参照されたい。
【0062】
実施例5-オーバーラミネートされ印刷された構造化フィルム(E5)
実施例1からの構造化接着フィルムを、インクレイダウンが250%であり、50%のシアン、50%のマゼンタ、50%のイエロー及び100%のブラック顔料からなることを除いて、実施例1と同じように加工した。上記摺動試験を使用して、材料を試験した。結果について表1を参照されたい。
【0063】
実施例6-オーバーラミネートされ印刷された構造化フィルム(E6)
剥離ライナーを滑らかなシリコーンゴムロールと彫刻金属ロールとの間に通すことにより、剥離ライナー(L2)に第2のパターンをエンボス加工した。これにより、剥離ライナーの粒子充填面上に、390ミクロンの間隔及び13~14ミクロンの高さ及び40ミクロンの幅を有する正方格子内の60度の抜け勾配を有する表面突出部のアレイを作り出した。
【0064】
連続コーティング/乾燥機ラインを使用して、感圧性接着剤溶液(A1)をエンボス加工された剥離ライナーの粒子充填面上にスロットダイコーティングし、乾燥させた。これにより、接着剤コーティングされたエンボス加工剥離ライナーが製造された。乾燥時の接着剤の厚さは、30ミクロンであった。接着剤を、93℃で54秒間乾燥させた。接着剤コーティングされたエンボス加工剥離ライナーの露出した接着面を、室温でフィルムF1に積層して、構造化接着フィルムを形成した。
【0065】
構造化接着フィルムは、Roland SOLJET PRO 4 XR-640高容量プリンタ(Roland DGA Corp.Irvine,CA)を用い、Roland DGAからECO-SOL MAX 2として入手可能な溶剤インクを用いてインクジェット印刷した。プリンタは、45%のインクレイダウンを使用して設定した。インクレイダウンは、45%に等しい溶剤含量レベルからなり、ブラック顔料で構成された。このフィルムを室温で24時間熟成させた。O1を、印刷された構造化接着フィルムのフィルム側に積層した。これにより、オーバーラミネートされ印刷された構造化フィルムが生成された。上記摺動試験を使用して、材料を試験した。結果について表1を参照されたい。
【0066】
実施例7-オーバーラミネートされ印刷された構造化フィルム(E7)
実施例6からの構造化接着フィルムを、インクレイダウンが100%であり、シアン顔料からなることを除いて、実施例6と同じように加工した。上記摺動試験を使用して、材料を試験した。結果について表1を参照されたい。
【0067】
実施例8-オーバーラミネートされ印刷された構造化フィルム(E8)
実施例6からの構造化接着フィルムを、インクレイダウンが150%であり、150%に等しい溶剤含有量からなり、100%のシアン顔料と50%のマゼンタ顔料とから構成されることを除いて、実施例6と同じように加工した。上記摺動試験を使用して、材料を試験した。結果について表1を参照されたい。
【0068】
実施例9-オーバーラミネートされ印刷された構造化フィルム(E9)
実施例6からの構造化接着フィルムを、インクレイダウンが200%であり、100%のシアン顔料と100%のマゼンタ顔料とからなることを除いて、実施例6と同じように加工した。上記摺動試験を使用して、材料を試験した。結果について表1を参照されたい。
【0069】
実施例10-オーバーラミネートされ印刷された構造化フィルム(E10)
実施例6からの構造化接着フィルムを、インクレイダウンが250%であり、50%のシアン、50%のマゼンタ、50%のイエロー及び100%のブラック顔料からなることを除いて、実施例6と同じように加工した。上記摺動試験を使用して、材料を試験した。結果について表1を参照されたい。
【0070】
【表2】
【0071】
実施例11-オーバーラミネートされ印刷された構造化フィルム(E11)
実施例1からの構造化接着フィルムを、OKIから3M SX Inkシリーズとして入手可能なエコ溶剤インク(OKI Data Corporation,Tokyo,Japanから入手可能)で、OKI data COLORPAINTER M-64sプリンタ(OKI Data Corporation,Tokyo,Japanから入手可能)を使用してインクジェット印刷した。プリンタは、250%のインクレイダウンを使用して設定した。インクレイダウンは、250%インクレイダウンに相当する溶剤系顔料の組み合わせからなり、50%のイエロー、50%のマゼンタ、50%のシアン及び100%のブラック顔料の組み合わせによって達成した。このフィルムを室温で24時間熟成させた。O1を、印刷された構造化接着フィルムのフィルム側に積層した。これにより、オーバーラミネートされ印刷された構造化フィルムが生成された。上記摩擦係数摺動試験を使用して、材料を試験した。結果について表2を参照されたい。
【0072】
実施例12-オーバーラミネートされ印刷された構造化フィルム(E12)
実施例6からの構造化接着フィルムを、OKIから3M SX Inkシリーズとして入手可能なエコ溶剤インク(OKI Data Corporation,Tokyo,Japanから入手可能)で、OKI data COLORPAINTER M-64sプリンタ(OKI Data Corporation,Tokyo,Japanから入手可能)を使用してインクジェット印刷した。プリンタは、250%のインクレイダウンを使用して設定した。インクレイダウンは、250%インクレイダウンに相当する溶剤系顔料の組み合わせからなり、50%のイエロー、50%のマゼンタ、50%のシアン及び100%のブラック顔料の組み合わせによって達成した。このフィルムを室温で24時間熟成させた。O1を、印刷された構造化接着フィルムのフィルム側に積層した。これにより、オーバーラミネートされ印刷された構造化フィルムが生成された。上記摩擦係数摺動試験を使用して、材料を試験した。結果について表2を参照されたい。
【0073】
比較例2-オーバーラミネートされ印刷された構造化フィルム(CE2)
構造化接着フィルムF2を、OKIから3M SX Inkシリーズとして入手可能なエコ溶剤インク(OKI Data Corporation,Tokyo,Japanから入手可能)で、OKI data COLORPAINTER M-64sプリンタ(OKI Data Corporation,Tokyo,Japanから入手可能)を使用してインクジェット印刷した。プリンタは、250%のインクレイダウンを使用して設定した。インクレイダウンは、250%インクレイダウンに相当する溶剤系顔料の組み合わせからなり、50%のイエロー、50%のマゼンタ、50%のシアン及び100%のブラック顔料の組み合わせによって達成した。このフィルムを室温で24時間熟成させた。O1を、印刷された構造化接着フィルムのフィルム側に積層した。これにより、オーバーラミネートされ印刷された構造化フィルムが生成された。上記摩擦係数摺動試験を使用して、材料を試験した。結果について表2を参照されたい。
【0074】
【表3】
【0075】
本発明をその複数の実施形態を参照して説明してきた。本明細書で特定される任意の特許又は特許出願の開示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。上記の詳細な説明及び実施例は、理解しやすいように示したものにすぎない。これによって不必要な限定がなされるものではない。本発明の範囲から逸脱することなく、記載された実施形態において多くの変更を行うことができることが、当業者には明白であろう。したがって本発明の範囲は、本明細書に記載される構造体に限定されるべきものではなく、特許請求の文言により記載される構造体及びそうした構造体の等価物によってのみ限定されるものである。
図1
図2