(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】ポリウレタンディスパージョン
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20231005BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20231005BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20231005BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
C08G18/00 C
C08G18/76 014
C08G18/08 019
C08G18/10
(21)【出願番号】P 2021526030
(86)(22)【出願日】2020-06-03
(86)【国際出願番号】 JP2020021922
(87)【国際公開番号】W WO2020250768
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2019110363
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】甲田 千佳子
(72)【発明者】
【氏名】福田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】内田 隆
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-193657(JP,A)
【文献】特開2001-098047(JP,A)
【文献】特開2005-139435(JP,A)
【文献】特開2006-143991(JP,A)
【文献】国際公開第2016/013624(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/016069(WO,A1)
【文献】特開2019-085511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00
C08G 18/76
C08G 18/08
C08G 18/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂が水分散されてなるポリウレタンディスパージョンであって、
前記ポリウレタン樹脂は、
水分散されたイソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤との反応生成物であり、
前記イソシアネート基末端プレポリマーは、ポリイソシアネート成分と、アニオン性基を含有する活性水素化合物を含有する活性水素基含有成分とが少なくとも反応して
なり、
ウレタン基およびウレア基の総モルの割合が、前記ポリウレタンディスパージョン1kgに対して、1.5モル以上であり、
炭酸イオン濃度が、前記ポリウレタンディスパージョンに対して、
10ppm以上700ppm以下である
ことを特徴とする、ポリウレタンディスパージョン。
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂が、ガスバリア性ポリウレタン樹脂である
ことを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタンディスパージョン。
【請求項3】
前記ポリイソシアネート成分が、芳香環を含有するポリイソシアネートを含有する
ことを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタンディスパージョン。
【請求項4】
前記ポリイソシアネート成分が、芳香脂肪族ポリイソシアネートと、脂環族ポリイソシアネートとを含有する
ことを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタンディスパージョン。
【請求項5】
前記ポリウレタン樹脂が、
キシリレンジイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分と、炭素数2~6の短鎖ジオール、および、アニオン性基を含有する活性水素化合物を含有する活性水素基含有成分とが少なくとも反応してなるイソシアネート基末端プレポリマーと、
鎖伸長剤と
の反応生成物である
ことを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタンディスパージョン。
【請求項6】
貯蔵前のポリウレタンディスパージョンの平均粒子径D1に対して、40℃で7日間貯蔵後のポリウレタンディスパージョンの平均粒子径D2の変化率(D2/D1)が、2.5以下である
ことを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタンディスパージョン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンディスパージョンに関し、詳しくは、ポリウレタン層を得るためのポリウレタンディスパージョンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガスバリア性に優れたフィルムとして、例えば、基材フィルム層と、その基材フィルム層にガスバリア性のポリウレタンディスパージョンを塗布および乾燥させて得られるポリウレタン層とを備えるガスバリア性複合フィルムが、知られている。
【0003】
ガスバリア性のポリウレタンディスパージョンとしては、例えば、水添キシリレンジイソシアネート、ジメチロールプロピオン酸およびエチレングリコールを反応させ、その後、得られるカルボン酸基含有ポリウレタンプレポリマー溶液をトリエチルアミンなどの中和剤により中和し、水に分散させ、2-[(2-アミノエチル)アミノ]エタノールで鎖伸長反応させて得られる、固形分濃度25質量%のガスバリア性のポリウレタン樹脂の水分散体が提案されている(例えば、特許文献1(製造例9)参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のポリウレタン樹脂の水分散体(ポリウレタンディスパージョン)においては、塗膜の生産効率、および、輸送コストの低減の観点から、ポリウレタン樹脂の固形分濃度を比較的高く(例えば、20質量%を超過)することが要求される。
【0006】
しかし、ポリウレタン樹脂の固形分濃度が比較的高い(例えば、20質量%を超過)場合、ポリウレタンディスパージョン中のウレタン基およびウレア基の濃度も、比較的高くなる。
【0007】
一方、ポリウレタンディスパージョンの製造では、鎖伸長反応において、カルボン酸基を含有する、イソシアネート基末端ポリウレタンプレポリマーを水に分散させるため、水とイソシアネート基との反応により炭酸ガスが生じ、ポリウレタンディスパージョンに炭酸イオンが含まれる。
【0008】
そして、炭酸イオンは、ポリウレタンディスパージョン中において、カルボン酸基(アニオン性基)を中和している中和剤を脱離させて、遊離のカルボン酸基(アニオン性基)を生成させる場合がある。
【0009】
遊離のカルボン酸基(アニオン性基)が生成すると、ポリウレタンディスパージョンの水分散安定性が低下する。とりわけ、ウレタン基およびウレア基濃度が高いポリウレタンディスパージョンは、ポリウレタン樹脂の凝集力が高いため、水分散安定性が低下すると、ポリウレタン樹脂の凝集が生じやすくなる。
【0010】
その結果、水分散している粒子の安定性が低下し、ポリウレタンディスパージョンの保存および輸送時における保存安定性(熱安定性)や、機械塗工時における機械安定性(耐凝固性)が十分ではない場合がある。
【0011】
本発明は、ウレタン基およびウレア基の濃度を比較的高くした場合にも、ポリウレタン樹脂の凝集を抑制することができ、保存安定性および機械安定性に優れるポリウレタンディスパージョンである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明[1]は、ポリウレタン樹脂が水分散されてなるポリウレタンディスパージョンであって、前記ポリウレタン樹脂は、ポリイソシアネート成分と、アニオン性基を含有する活性水素化合物を含有する活性水素基含有成分とが少なくとも反応してなる反応生成物であり、ウレタン基およびウレア基の総モルの割合が、前記ポリウレタンディスパージョン1kgに対して、1.5モル以上であり、炭酸イオン濃度が、前記ポリウレタンディスパージョンに対して、700ppm以下である、ポリウレタンディスパージョンを含んでいる。
【0013】
本発明[2]は、前記ポリウレタン樹脂が、ガスバリア性ポリウレタン樹脂である、上記[1]に記載のポリウレタンディスパージョンを含んでいる。
【0014】
本発明[3]は、前記ポリイソシアネート成分が、芳香環を含有するポリイソシアネートを含有する、上記[1]に記載のポリウレタンディスパージョンを含んでいる。
【0015】
本発明[4]は、前記ポリイソシアネート成分が、芳香脂肪族ポリイソシアネートと、脂環族ポリイソシアネートとを含有する、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載のポリウレタンディスパージョンを含んでいる。
【0016】
本発明[5]は、前記ポリウレタン樹脂が、キシリレンジイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分と、炭素数2~6の短鎖ジオール、および、アニオン性基を含有する活性水素化合物を含有する活性水素基含有成分とが少なくとも反応してなるイソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤との反応生成物である、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載のポリウレタンディスパージョンを含んでいる。
【0017】
本発明[6]は、貯蔵前のポリウレタンディスパージョンの平均粒子径D1に対して、40℃で7日間貯蔵後のポリウレタンディスパージョンの平均粒子径D2の変化率(D2/D1)が、2.5以下である、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載のポリウレタンディスパージョンを含んでいる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のポリウレタンディスパージョンは、ポリウレタン樹脂の原料成分として、アニオン性基を含有する活性水素化合物が使用されており、かつ、ウレタン基およびウレア基の総モルの割合が、ポリウレタンディスパージョン1kgに対して、1.5モル以上であり、炭酸イオン濃度が、ポリウレタンディスパージョンに対して、700ppm以下である。
【0019】
つまり、上記のポリウレタンディスパージョンでは、ウレタン基およびウレア基濃度が比較的高くなっている。このような場合、アニオン性基に対する中和剤の脱離が生じて、遊離のアニオン性基が生成すると、粒子の安定性が低下しやすく、ポリウレタン樹脂の凝集が生じやすくなる。
【0020】
しかし、上記のポリウレタンディスパージョンでは、炭酸イオン濃度が十分に低いため、炭酸イオンによる中和剤の脱離を抑制でき、その結果、遊離のアニオン性基の生成、および、ポリウレタン樹脂の凝集を抑制できる。
【0021】
そのため、上記のポリウレタンディスパージョンは、保存安定性および機械安定性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明のポリウレタンディスパージョンを用いて得られるポリウレタン積層体の一実施形態を示す概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明のポリウレタンディスパージョンを用いて得られるポリウレタン積層体の他の実施形態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のポリウレタンディスパージョンは、ポリウレタン樹脂(水性ポリウレタン樹脂)を水分散させることにより得られる。
【0024】
本発明におけるポリウレタン樹脂は、詳しくは後述するように、ウレタン基およびウレア基の含有割合が比較的高いポリウレタン樹脂である。そのようなポリウレタン樹脂としては、例えば、ガスバリア性ポリウレタン樹脂、耐薬品性ポリウレタン樹脂などが挙げられ、好ましくは、ガスバリア性ポリウレタン樹脂が挙げられる。
【0025】
なお、本発明におけるガスバリア性とは、酸素の透過率を低める性質を示す。より具体的には、後述する実施例に準拠して測定される、ポリウレタン樹脂の層を備える積層体の40℃7日後の酸素透過量が、90cc/(m2・day・atm)以下である場合に、ポリウレタン樹脂がガスバリア性を有すると定義される。
【0026】
このようなポリウレタン樹脂は、例えば、イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤との反応により得られる。つまり、ポリウレタン樹脂は、イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤との二次反応生成物である。
【0027】
イソシアネート基末端プレポリマーは、ポリイソシアネート成分と、活性水素基含有成分との反応により得られる。つまり、イソシアネート基末端プレポリマーは、ポリイソシアネート成分と、活性水素基含有成分との一次反応生成物である。
【0028】
ポリイソシアネート成分は、例えば、芳香環を含有するポリイソシアネート、芳香環を含有しないポリイソシアネートが挙げられる。
【0029】
芳香環を含有するポリイソシアネートとしては、例えば、芳香脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0030】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(1,2-、1,3-または1,4-キシリレンジイソシアネート)(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3-または1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TMXDI)、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼンなどの芳香脂肪族ジイソシアネートモノマー(芳香脂肪族ジイソシアネートなど)が挙げられ、好ましくは、キシリレンジイソシアネート(XDI)が挙げられる。これら芳香脂肪族ジイソシアネートモノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0031】
また、芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、芳香脂肪族ジイソシアネートモノマーの誘導体が挙げられる。
【0032】
芳香脂肪族ジイソシアネートモノマーの誘導体としては、例えば、芳香脂肪族ジイソシアネートモノマーの多量体(例えば、2量体、3量体、5量体、7量体など(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体))、アロファネート変性体(例えば、芳香脂肪族ジイソシアネートモノマーと、公知の1価アルコールおよび/または公知の2価アルコールとの反応より生成するアロファネート変性体など)、ポリオール変性体(例えば、芳香脂肪族ジイソシアネートモノマーと公知の3価以上のアルコールとの反応より生成するポリオール変性体(アルコール付加体)など)、ビウレット変性体(例えば、芳香脂肪族ジイソシアネートモノマーと、水やアミン類との反応により生成するビウレット変性体など)、ウレア変性体(例えば、芳香脂肪族ジイソシアネートモノマーとジアミンとの反応により生成するウレア変性体など)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、芳香脂肪族ジイソシアネートモノマーと炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド変性体(芳香脂肪族ジイソシアネートモノマーの脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体など)、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体などが挙げられる。これら誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0033】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(2,4-または2,6-トリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TDI)、フェニレンジイソシアネート(m-、p-フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物)、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタンジイソシネート(4,4’-、2,4’-または2,2’-ジフェニルメタンジイソシネートもしくはその混合物)(MDI)、4,4’-トルイジンジイソシアネート(TODI)、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートモノマー(芳香族ジイソシアネートなど)が挙げられ、好ましくは、トリレンジイソシアネート(TDI)が挙げられる。これら芳香族ジイソシアネートモノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0034】
また、芳香族ポリイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネートモノマーの誘導体が挙げられる。誘導体としては、上記した誘導体(芳香脂肪族ジイソシアネートモノマーの誘導体として例示した誘導体)が挙げられる。これら誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0035】
これら芳香環を含有するポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0036】
芳香環を含有しないポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0037】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート)、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエートなどの脂肪族ジイソシアネートモノマー(鎖状脂肪族ジイソシアネートなど)が挙げられ、好ましくは、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。これら脂肪族ジイソシアネートモノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0038】
また、脂肪族ポリイソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネートモノマーの誘導体が挙げられる。誘導体としては、上記した誘導体(芳香脂肪族ジイソシアネートモノマーの誘導体として例示した誘導体)が挙げられる。これら誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0039】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート)、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート)(IPDI)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(別名:水添キシリレンジイソシアネート(1,2-、1,3-または1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン))(H6XDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(別名:水添ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-、2,4’-または2,2’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)これらのTrans,Trans-体、Trans,Cis-体、Cis,Cis-体、もしくはその混合物)(H12MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート(各種異性体もしくはその混合物)(NBDI)、などの脂環族ジイソシアネートモノマー(脂環族ジイソシアネートなど)が挙げられ、好ましくは、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)が挙げられ、より好ましくは、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)が挙げられる。これら脂環族ジイソシアネートモノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0040】
また、脂環族ポリイソシアネートとしては、脂環族ジイソシアネートモノマーの誘導体が挙げられる。誘導体としては、上記した誘導体(芳香脂肪族ジイソシアネートモノマーの誘導体として例示した誘導体)が挙げられる。これら誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0041】
これら芳香環を含有しないポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0042】
ポリイソシアネート成分としては、特に制限されず、例えば、上記の芳香環を含有するポリイソシアネートが単独使用されてもよく、また、上記の芳香環を含有しないポリイソシアネートが単独使用されてもよく、さらには、これらが併用されていてもよい。
【0043】
ガスバリア性の向上を図る観点から、ポリイソシアネート成分は、好ましくは、芳香環を含有するポリイソシアネートを含有し、より好ましくは、芳香脂肪族ポリイソシアネートを含有し、さらに好ましくは、芳香脂肪族ジイソシアネートモノマーを含有し、とりわけ好ましくは、キシリレンジイソシアネート(XDI)を含有する。
【0044】
ポリイソシアネート成分が、芳香環を含有するポリイソシアネート(好ましくは、芳香脂肪族ポリイソシアネート、より好ましくは、キシリレンジイソシアネート(XDI))を含有する場合、その含有割合は、ポリイソシアネート成分の総量100質量部に対して、例えば、30質量部以上、好ましくは、50質量部以上、より好ましくは、70質量部以上であり、例えば、100質量部以下、好ましくは、95質量部以下、より好ましくは、90質量部以下である。
【0045】
また、水分散安定性の向上を図る観点から、ポリイソシアネート成分は、好ましくは、芳香環を含有するポリイソシアネートと、芳香環を含有しないポリイソシアネートとを含有し、より好ましくは、芳香脂肪族ポリイソシアネートと、脂環族ポリイソシアネートとを含有し、さらに好ましくは、芳香脂肪族ジイソシアネートモノマーと、脂環族ジイソシアネートモノマーとを含有し、とりわけ好ましくは、キシリレンジイソシアネート(XDI)と、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)とを含有する。
【0046】
また、ポリイソシアネート成分が、芳香脂肪族ポリイソシアネートと、脂環族ポリイソシアネートとを含有する場合、それらの総量100質量部に対して、芳香脂肪族ポリイソシアネートの含有割合が、例えば、30質量部以上、好ましくは、50質量部以上、より好ましくは、70質量部以上であり、例えば、99質量部以下、好ましくは、95質量部以下、より好ましくは、90質量部以下である。また、脂環族ポリイソシアネートの含有割合が、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上、より好ましくは、10質量部以上であり、例えば、70質量部以下、好ましくは、50質量部以下、より好ましくは、30質量部以下である。
【0047】
活性水素基含有成分としては、ポリオール成分が挙げられる。ポリオール成分は、必須成分として、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物を含んでいる。
【0048】
アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物は、例えば、カルボン酸などのアニオン性基と、2つ以上の水酸基またはアミノ基などの活性水素基とを併有する有機化合物である。
【0049】
アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物として、より具体的には、カルボン酸と2つの水酸基とを併有する有機化合物(カルボキシ基を含有する活性水素基含有化合物(例えば、カルボキシ基含有ポリオールなど))が挙げられる。
【0050】
カルボキシ基含有ポリオールとしては、例えば、2,2-ジメチロール酢酸、2,2-ジメチロール乳酸、2,2-ジメチロールプロピオン酸(別名:ジメチロールプロピオン酸)、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロール吉草酸などのポリヒドロキシアルカン酸などが挙げられ、好ましくは、2,2-ジメチロールプロピオン酸が挙げられる。
【0051】
これらアニオン性基を含有する活性水素基含有化合物は、単独使用または併用することができる。
【0052】
アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物として、好ましくは、カルボキシ基含有ポリオールが挙げられ、より好ましくは、ポリヒドロキシアルカン酸が挙げられ、さらに好ましくは、ジメチロールプロピオン酸が挙げられる。
【0053】
アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物の配合割合は、ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上、より好ましくは、30質量部以上であり、例えば、70質量部以下、好ましくは、55質量部以下、より好ましくは、40質量部以下である。
【0054】
また、ポリオール成分は、好ましくは、任意成分として、炭素数2~6の短鎖ジオールを含有する。
【0055】
炭素数2~6の短鎖ジオールは、分子量(分子量分布を有する場合には、GPC測定によるポリスチレン換算の数平均分子量)が50以上650以下であり、水酸基を2つ有する炭素数2~6の有機化合物であって、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,3-または1,4-シクロヘキサンジオールなどの炭素数2~6のアルカンジオール(炭素数2~6のアルキレングリコール)、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの炭素数2~6のエーテルジオール、例えば、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテンなどの炭素数2~6のアルケンジオールなどが挙げられる。
【0056】
これら炭素数2~6の短鎖ジオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0057】
炭素数2~6の短鎖ジオールとして、ガスバリア性の観点から、好ましくは、炭素数2~6のアルカンジオール、より好ましくは、エチレングリコールが挙げられる。
【0058】
炭素数2~6の短鎖ジオールの配合割合は、ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、30質量部以上、より好ましくは、50質量部以上であり、例えば、90質量部以下、好ましくは、80質量部以下、より好ましくは、70質量部以下である。
【0059】
ポリオール成分は、さらに、任意成分として、その他の低分子量ポリオール(炭素数2~6のジオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を除く低分子量ポリオール)や、高分子量ポリオールを含有することもできる。
【0060】
なお、ポリオール成分は、ガスバリア性の観点から、好ましくは、高分子量ポリオールを含有しない。
【0061】
高分子量ポリオールは、分子量(数平均分子量)が650を超過し、水酸基を2つ以上有する化合物であって、例えば、ポリエーテルポリオール(例えば、ポリオキシ(炭素数2~3)アルキレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオールなど)、ポリエステルポリオール(例えば、アジピン酸系ポリエステルポリオール、フタル酸系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオールなど)、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール(例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどをポリイソシアネートによりウレタン変性したポリオール)、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ビニルモノマー変性ポリオールなどの、分子量が650を超過する高分子量マクロポリオールが挙げられる。
【0062】
このような高分子量ポリオールは、ガスバリア性の低下を惹起する場合がある。
【0063】
そのため、ポリオール成分は、好ましくは、高分子量ポリオールを含有しない。これにより、ポリウレタン樹脂(後述)のガスバリア性を向上させることができる。
【0064】
一方、ポリオール成分は、任意成分として、分子量50以上650以下の低分子量ポリオール(上記した炭素数2~6の短鎖ジオールを除く。)(以下、その他の低分子量ポリオールと称する。)を含有することができる。
【0065】
その他の低分子量ポリオールとしては、例えば、炭素数7以上のジオール、3価以上の低分子量ポリオールなどが挙げられる。
【0066】
炭素数7以上のジオールとしては、例えば、炭素数7~20のアルカン-1,2-ジオール、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、1,3-または1,4-シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAなどの炭素数7以上の2価アルコール(ジオール)などが挙げられる。
【0067】
これら炭素数7以上のジオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0068】
3価以上の低分子量ポリオールは、分子量が650以下であり、1分子中に水酸基を3つ以上有する有機化合物であって、例えば、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジヒドロキシ-3-ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-3-ブタノールなどの3価アルコール(低分子量トリオール)、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール、例えば、キシリトールなどの5価アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール、例えば、ペルセイトールなどの7価アルコール、例えば、ショ糖などの8価アルコールなどが挙げられる。
【0069】
これら3価以上の低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0070】
さらに、数平均分子量が650以下であれば、上記したマクロポリオール(具体的には、例えば、ポリエーテルポリオール(例えば、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオールなど)、ポリエステルポリオール(例えば、アジピン酸系ポリエステルポリオール、フタル酸系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオールなど)、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール(例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどをポリイソシアネートによりウレタン変性したポリオール)、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ビニルモノマー変性ポリオールなどの、分子量650以下の低分子量マクロポリオール)を、その他の低分子量ポリオールとして用いることができる。
【0071】
その他の低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0072】
その他の低分子量ポリオールとして、耐溶剤性、耐熱性、および、ポリウレタンディスパージョンの水分散安定性の観点から、好ましくは、3価以上の低分子量ポリオールが挙げられ、より好ましくは、3価アルコール、4価アルコールが挙げられ、さらに好ましくは、3価アルコールが挙げられ、とりわけ好ましくは、トリメチロールプロパンが挙げられる。
【0073】
その他の低分子量ポリオールが配合される場合、その配合割合は、ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、0.2質量部以上、好ましくは、1質量部以上、より好ましくは、2質量部以上であり、例えば、20質量部以下、好ましくは、10質量部以下、より好ましくは、8質量部以下である。
【0074】
また、炭素数2~6の短鎖ジオールとその他の低分子量ポリオール(好ましくは、3価以上の低分子量ポリオール)との併用割合は、それらの総量100質量部に対して、その他の低分子量ポリオールが、例えば、2質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、例えば、20質量部以下、好ましくは、15質量部以下、より好ましくは、10質量部以下である。
【0075】
また、炭素数2~6の短鎖ジオールとその他の低分子量ポリオール(好ましくは、3価以上の低分子量ポリオール)との総量100質量部に対して、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物が、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上、より好ましくは、40質量部以上であり、例えば、90質量部以下、好ましくは、80質量部以下、より好ましくは、70質量部以下である。
【0076】
その他の低分子量ポリオールの含有割合が上記範囲であれば、優れた分散性を確保することができる。そのため、ガスバリア性および密着性に優れるポリウレタン層を良好に形成することができる。
【0077】
ポリオール成分は、好ましくは、炭素数2~6の短鎖ジオール、3価以上の低分子量ポリオール、および、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物からなるか、炭素数2~6の短鎖ジオール、および、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物からなる。
【0078】
そして、イソシアネート基末端プレポリマーを合成するには、上記各成分を、活性水素基(水酸基)に対するイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)において、1を超える割合、好ましくは、1.1~10の割合で配合する。そして、バルク重合または溶液重合などの公知の重合方法、好ましくは、反応性および粘度の調整がより容易な溶液重合によって、上記各成分を反応させる。
【0079】
バルク重合では、例えば、窒素雰囲気下、上記成分を配合して、反応温度75~85℃で、1~20時間程度反応させる。
【0080】
溶液重合では、例えば、窒素雰囲気下、有機溶媒(溶剤)に、上記成分を配合して、反応温度20~80℃で、1~20時間程度反応させる。
【0081】
有機溶媒としては、イソシアネート基に対して不活性で、かつ、親水性に富む、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトニトリルなどが挙げられる。
【0082】
この重合反応は、反応溶液中のイソシアネート基含有率が、下記イソシアネート基濃度になるまで反応させる。
【0083】
また、上記重合では、必要に応じて、例えば、アミン系、スズ系、鉛系などの反応触媒を添加してもよく、また、得られるイソシアネート基末端プレポリマーから未反応のポリイソシアネートを、例えば、蒸留や抽出などの公知の方法により、除去することもできる。
【0084】
このようにして得られるイソシアネート基末端プレポリマーは、その分子末端に、2つ以上の遊離のイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーであって、そのイソシアネート基濃度(溶剤を除いた固形分換算のイソシアネート基含有量)が、比較的高い。より具体的には、イソシアネート基濃度が、例えば、4質量%以上、好ましくは、5質量%以上、より好ましくは、6質量%以上、さらに好ましくは、8質量%以上であり、また、例えば、25質量%以下、好ましくは、20質量%以下、より好ましくは、17質量%以下、さらに好ましくは、15質量%以下である。
【0085】
また、イソシアネート基の平均官能基数は、例えば、1.5以上、好ましくは、1.9以上、より好ましくは、2.0以上であり、また、例えば、3.0以下、好ましくは、2.5以下である。
【0086】
イソシアネート基の平均官能基数が上記範囲にあれば、安定した上記ポリウレタンディスパージョンを得ることができ、基材密着性、ガスバリア性などを確保することができる。
【0087】
また、その数平均分子量(GPC測定によるポリスチレン換算分子量)が、例えば、500以上、好ましくは、800以上であり、また、例えば、100000以下、好ましくは、50000以下である。
【0088】
次いで、この方法では、上記により得られたイソシアネート基末端プレポリマーに中和剤を添加して、アニオン性基を中和剤により中和し、塩を形成させる。
【0089】
中和剤としては、慣用の塩基が挙げられ、例えば、有機塩基、無機塩基が挙げられる。
【0090】
有機塩基としては、例えば、トリアルキルアミン(例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの炭素数1~4のトリアルキルアミンなど)、アルカノールアミン(例えば、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなど)などの3級アミン、例えば、複素環式アミン(モルホリンなど)などの2級アミンなどが挙げられる。
【0091】
無機塩基としては、例えば、アンモニア、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アルカリ土類金属水酸化物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなど)、アルカリ金属炭酸塩(例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど)などが挙げられる。
【0092】
これらの中和剤は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0093】
中和剤として、好ましくは、有機塩基が挙げられ、より好ましくは、3級アミンが挙げられ、さらに好ましくは、トリアルキルアミンが挙げられ、とりわけ好ましくは、トリエチルアミンが挙げられる。すなわち、中和剤は、好ましくは、有機塩基からなり、より好ましくは、3級アミンからなり、さらに好ましくは、トリアルキルアミンからなり、とりわけ好ましくは、トリエチルアミンからなる。
【0094】
中和剤の添加量は、アニオン性基1当量あたり、例えば、0.4当量以上、好ましくは、0.6当量以上であり、例えば、1.2当量以下、好ましくは、1当量以下である。
【0095】
次いで、この方法では、上記の中和剤により中和されたイソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤とを、例えば、水中で反応させ、ポリウレタン樹脂が水分散されてなるポリウレタンディスパージョンを得る。
【0096】
鎖伸長剤は、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長反応するために複数の活性水素基を有する有機化合物であり、例えば、芳香族ポリアミン、芳香脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、脂肪族ポリアミン、ポリオキシエチレン基含有ポリアミンなどのポリアミン化合物、例えば、アミノアルコールなどが挙げられる。
【0097】
芳香族ポリアミンとしては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジアミン、トリレンジアミンなどが挙げられる。
【0098】
芳香脂肪族ポリアミンとしては、例えば、1,3-または1,4-キシリレンジアミンもしくはその混合物などが挙げられる。
【0099】
脂環族ポリアミンとしては、例えば、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(別名:イソホロンジアミン)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3-および1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよびそれらの混合物などが挙げられる。
【0100】
脂肪族ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン(水和物を含む)、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノペンタンなどが挙げられる。
【0101】
ポリオキシエチレン基含有ポリアミンとしては、例えば、ポリオキシエチレンエーテルジアミンなどのポリオキシアルキレンエーテルジアミンが挙げられる。より具体的には、例えば、日本油脂製のPEG#1000ジアミンや、ハンツマン社製のジェファーミンED―2003、EDR-148、XTJ-512などが挙げられる。
【0102】
アミノアルコールとしては、例えば、2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノール(別名:N-(2-アミノエチル)エタノールアミン)、2-((2-アミノエチル)アミノ)-1-メチルプロパノール(別名:N-(2-アミノエチル)イソプロパノールアミン)などが挙げられる。
【0103】
また、鎖伸長剤としては、さらに、第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物なども挙げられる。
【0104】
第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物としては、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどの第1級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物、例えば、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン)、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン)などの第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物などが挙げられる。
【0105】
これら鎖伸長剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0106】
鎖伸長剤として、好ましくは、アミノアルコールが挙げられ、より好ましくは、2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノールが挙げられる。
【0107】
そして、イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを水中で反応させるには、例えば、まず、水にイソシアネート基末端プレポリマーを添加することにより、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させ、次いで、それに鎖伸長剤を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長する。
【0108】
イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させるには、イソシアネート基末端プレポリマー100質量部に対して、水100~1000質量部の割合において、水を撹拌下、イソシアネート基末端プレポリマーを添加する。また、上記割合で、イソシアネート基末端プレポリマーに、水を添加することもできる。
【0109】
その後、鎖伸長剤を、イソシアネート基末端プレポリマーが水分散された水中に、撹拌下、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基に対する鎖伸長剤の活性水素基(アミノ基および水酸基)の当量比(活性水素基/イソシアネート基)が、例えば、0.6~1.2の割合となるように、滴下する。
【0110】
鎖伸長剤は、滴下および撹拌しつつ、例えば、常温にて反応を完結させる。反応完結までの反応時間は、例えば、0.1時間以上であり、また、例えば、10時間以下である。
【0111】
これにより、ポリウレタン樹脂が得られ、また、そのポリウレタン樹脂が水分散されてなるディスパージョン(ポリウレタンディスパージョン)が得られる。
【0112】
ポリウレタン樹脂(固形分)に対するウレタン基およびウレア基の含有割合は、ポリウレタン樹脂(固形分)1kgに対して、ウレタン基およびウレア基の総モルが、例えば、5.0モル以上、好ましくは、5.5モル以上、より好ましくは、6.0モル以上、さらに好ましくは、6.5モル以上であり、例えば、9.0モル以下、好ましくは、8.5モル以下、より好ましくは、8.0モル以下、さらに好ましくは、7.5モル以下である。
【0113】
なお、ウレタン基およびウレア基の含有割合は、原料成分の仕込み比から算出することができる(以下同様)。
【0114】
ウレタン基およびウレア基のポリウレタン樹脂(固形分)に対する含有割合が上記の範囲であれば、ガスバリア性に優れたポリウレタン層を得ることができる。
【0115】
また、ポリウレタン樹脂(固形分)の酸価は、例えば、10mgKOH/g以上、好ましくは、20mgKOH/g以上であり、例えば、50mgKOH/g以下、好ましくは、40mgKOH/g以下である。
【0116】
なお、酸価は、常法により測定することができ、また、ポリウレタン樹脂中に占めるカルボン酸の含有量から計算により求めることもできる。なお、カルボン酸の含有量は、ポリウレタン樹脂の原料およびその仕込み量から計算により求めることができる。
【0117】
そして、この方法では、必要に応じて、有機溶媒や水を除去(脱溶剤)する。
【0118】
これにより、ポリウレタンディスパージョンのポリウレタン樹脂の固形分濃度が調整され、また、ポリウレタンディスパージョン中のウレタン基およびウレア基のポリウレタンディスパージョンに対する割合が、所定の範囲に調整される。
【0119】
塗膜の生産効率、および、輸送コストの低減の観点から、ポリウレタンディスパージョン中のポリウレタン樹脂の固形分濃度は、比較的高く、例えば、20質量%を超過、好ましくは、21質量%以上、より好ましくは、25質量%以上、さらに好ましくは、30質量%以上であり、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下である。
【0120】
ポリウレタンディスパージョン中のポリウレタン樹脂の固形分濃度が上記の範囲であれば、塗膜の生産効率、および、輸送コストに優れる。
【0121】
すなわち、ポリウレタンディスパージョンは、通常、水を蒸発させることにより塗膜を形成するため、固形分濃度が上記下限を上回っていれば、水の蒸発におけるエネルギーコストを低減でき、また、環境負荷を低減でき、塗膜の生産効率の向上を図ることができる。また、固形分濃度が上記下限を上回っていれば、固形分濃度が上記下限を下回っている場合に比べ、より少ない質量および体積で、ポリウレタン樹脂(固形分)を効率よく運搬できるため、輸送コストに優れる。
【0122】
また、ウレタン基およびウレア基のポリウレタンディスパージョンに対する含有割合は、ポリウレタンディスパージョン1kgに対して、ウレタン基およびウレア基の総モルが、1.5モル以上、好ましくは、1.7モル以上、より好ましくは、1.8モル以上、さらに好ましくは、1.9モル以上であり、例えば、5.0モル以下、好ましくは、4.0モル以下、より好ましくは、3.0モル以下、さらに好ましくは、2.5モル以下である。
【0123】
ウレタン基およびウレア基のポリウレタンディスパージョンに対する含有割合が上記の範囲であれば、ガスバリア性に優れたポリウレタン層を得ることができる。
【0124】
一方、上記のポリウレタンディスパージョンでは、ウレタン基およびウレア基濃度が比較的高いため、アニオン性基に対する中和剤の脱離が生じて、遊離のアニオン性基が生成すると、粒子の安定性が低下しやすく、ポリウレタン樹脂の凝集が生じやすくなる。
【0125】
とりわけ、ポリイソシアネート成分としてキシリレンジイソシアネートが用いられる場合には、炭酸ガスが生じやすくなり、炭酸イオン濃度が高くなる。そのため、ポリウレタン樹脂の凝集が生じやすくなる。
【0126】
そのため、ウレタン基およびウレア基濃度が高いポリウレタンディスパージョンは、保存および輸送時における保存安定性(熱安定性)や、機械塗工時における機械安定性(耐凝固性)が十分ではない場合がある。
【0127】
これに対して、例えば、凝集を抑制するため、ポリウレタン樹脂の固形分濃度を比較的低く(例えば、20質量%以下)調整し、ポリウレタンディスパージョン中のウレタン基およびウレア基濃度を低減することも検討される。しかし、固形分濃度を比較的低くすると、塗膜の生産効率、および、輸送コストが低下する。
【0128】
また、例えば、窒素パージなどにより脱炭酸して、炭酸イオン濃度を低減し、保存安定性および機械安定性の向上を図ることも検討されるが、単に窒素パージするだけでは、十分に脱炭酸できず、優れた保存安定性および機械安定性を得られないという不具合がある。
【0129】
そこで、この方法では、例えば、真空パージすることにより、ポリウレタンディスパージョン中の炭酸イオン濃度を低減する。
【0130】
より具体的には、この方法では、ポリウレタンディスパージョンの固形分濃度を調整するときに、真空パージによって有機溶媒や水を除去(脱溶剤)するが、脱溶剤完了後も引き続き真空パージすることによって、ポリウレタンディスパージョン中の炭酸ガスおよび炭酸イオンを除去(脱炭酸)する。
【0131】
つまり、この方法では、有機溶媒や水が除去(脱溶剤)された後も、ポリウレタンディスパージョンの炭酸イオン濃度が所定値以下に達するまで、炭酸ガスおよび炭酸イオンの除去(脱炭酸)を継続する。
【0132】
真空パージの条件としては、圧力条件が、例えば、1kPa以上、好ましくは、2kPa以上であり、例えば、50kPa以下、好ましくは、40kPa以下である。
【0133】
また、真空パージの時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.0時間以上、より好ましくは、1.5時間以上、さらに好ましくは、2.0時間以上、とりわけ好ましくは、3.0時間以上である。
【0134】
これにより、ポリウレタンディスパージョン中の炭酸イオン濃度を、十分に低減することができる。
【0135】
一方、凝集を抑制する観点からは、真空パージの時間が長く、炭酸イオン濃度が低いほど好ましいが、炭酸イオン濃度を低下させるほど、真空パージの時間がかかり、生産性が低下し、コストがかかる。
【0136】
そこで、生産性およびコストの観点から、真空パージの時間は、例えば、24.0時間以下、好ましくは、18.0時間以下、より好ましくは、12.0時間以下、さらに好ましくは、6.0時間以下である。
【0137】
これにより、炭酸イオン濃度が十分に低減されたポリウレタンディスパージョンを、生産性およびコスト性よく得ることができる。
【0138】
ポリウレタンディスパージョンの総量に対して、ポリウレタンディスパージョンの残留溶剤量(溶剤含有量)は、例えば、0.5質量%以下、好ましくは、0.3質量%以下である。
【0139】
なお、ポリウレタンディスパージョンの残留溶剤量は、後述する実施例に準拠して、ガスクロマトグラフ法により測定することができる。
【0140】
また、ポリウレタンディスパージョンの総量に対して、炭酸イオン濃度は、700ppm以下、好ましくは、600ppm以下、より好ましくは、500ppm以下、さらに好ましくは、400ppm以下、とりわけ好ましくは、300ppm以下であり、通常、10ppm以上である。
【0141】
なお、炭酸イオン濃度は、後述する実施例に準拠して、電気泳動システムを用いた定量分析(1点検量線法)により、測定することができる。
【0142】
また、ウレタン基およびウレア基のポリウレタンディスパージョンに対する含有割合や、炭酸イオン濃度を、上記の範囲に調整するため、必要に応じて、有機溶媒や水を添加することもできる。
【0143】
そして、上記したように、炭酸イオン濃度が十分に低減することにより、炭酸イオンによる中和剤の脱離を抑制でき、遊離のアニオン性基の生成、および、ポリウレタン樹脂の凝集を抑制できるため、貯蔵安定性および機械安定性の向上を図ることができる。
【0144】
また、ポリウレタンディスパージョンには、必要に応じて、各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、アルコキシシラン化合物、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤など)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、分散安定剤、着色剤(顔料、染料など)、フィラー、コロイダルシリカ、無機粒子、無機酸化物粒子、結晶核剤などが挙げられる。
【0145】
なお、添加剤は、上記各原料成分に予め配合してもよく、また、合成後のイソシアネート基末端プレポリマーや、ポリウレタン樹脂に配合してもよく、さらに、それら各成分の配合時に同時に配合してもよい。
【0146】
また、添加剤の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0147】
また、必要に応じて、ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂を配合してもよい。
【0148】
ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデンまたは塩化ビニリデン共重合体、でんぷん、セルロースなどの多糖類などが挙げられる。
【0149】
なお、熱可塑性樹脂の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0150】
そして、このようなポリウレタンディスパージョンは、ポリウレタン樹脂の原料成分として、アニオン性基を含有する活性水素化合物が使用されており、かつ、ウレタン基およびウレア基の総モルの割合が、ポリウレタンディスパージョン1kgに対して、1.5モル以上であり、炭酸イオン濃度が、ポリウレタンディスパージョンに対して、700ppm以下である。
【0151】
つまり、上記のポリウレタンディスパージョンでは、ウレタン基およびウレア基濃度が比較的高くなっている。このような場合、アニオン性基に対する中和剤の脱離が生じて、遊離のアニオン性基が生成すると、粒子の安定性が低下しやすく、ポリウレタン樹脂の凝集が生じやすくなる。
【0152】
しかし、上記のポリウレタンディスパージョンでは、炭酸イオン濃度が十分に低いため、炭酸イオンによる中和剤の脱離を抑制でき、その結果、遊離のアニオン性基の生成、および、ポリウレタン樹脂の凝集を抑制できる。
【0153】
そのため、上記のポリウレタンディスパージョンは、保存安定性に優れる。
【0154】
例えば、貯蔵前(例えば、製造直後)のポリウレタンディスパージョンの平均粒子径D1は、例えば、10nm以上、好ましくは、20nm以上、より好ましくは、30nm以上、さらに好ましくは、40nm以上であり、また、例えば、200nm以下、好ましくは、100nm以下、より好ましくは、60nm以下である。
【0155】
一方、40℃で7日間貯蔵後のポリウレタンディスパージョンの平均粒子径D2は、例えば、10nm以上、好ましくは、30nm以上、より好ましくは、40nm以上であり、また、例えば、300nm以下、好ましくは、200nm以下、より好ましくは、150nm以下、さらに好ましくは、100nm以下である。
【0156】
そして、保存安定性の指標としての、貯蔵前のポリウレタンディスパージョンの平均粒子径D1に対して、40℃で7日間貯蔵後のポリウレタンディスパージョンの平均粒子径D2の変化率(D2/D1)が、2.5以下、好ましくは、2.0以下、より好ましくは、1.5以下、さらに好ましくは、1.2以下であり、通常、0.9以上である。
【0157】
なお、ポリウレタンディスパージョンの平均粒子径は、後述する実施例に準拠して測定される。
【0158】
また、例えば、貯蔵前(例えば、製造直後)のポリウレタンディスパージョンの25℃における粘度V1は、例えば、5mPa・s以上、好ましくは、8mPa・s以上、より好ましくは、10mPa・s以上であり、また、例えば、50mPa・s以下、好ましくは、30mPa・s以下、より好ましくは、20mPa・s以下である。
【0159】
一方、40℃で7日間貯蔵後のポリウレタンディスパージョンの25℃における粘度V2は、例えば、5mPa・s以上、好ましくは、8mPa・s以上、より好ましくは、10mPa・s以上であり、また、例えば、50mPa・s以下、好ましくは、30mPa・s以下、より好ましくは、20mPa・s以下である。
【0160】
そして、保存安定性の指標としての、貯蔵前のポリウレタンディスパージョンの粘度V1に対して、40℃で7日間貯蔵後のポリウレタンディスパージョンの粘度V2の変化率(V2/V1)が、2.5以下、好ましくは、2.0以下、より好ましくは、1.5以下、さらに好ましくは、1.2以下であり、通常、0.9以上である。
【0161】
なお、ポリウレタンディスパージョンの25℃における粘度は、後述する実施例に準拠して測定される。
【0162】
さらに、上記のポリウレタンディスパージョンは、機械安定性に優れる。
【0163】
例えば、マロン型試験機により後述する実施例に準拠して測定されるポリウレタン樹脂の凝集率が、例えば、6.0%以下、好ましくは、5.0%以下、より好ましくは、4.0%以下、さらに好ましくは、3.0%以下、とりわけ好ましくは、2.0%以下であり、通常、0.0%以上である。
【0164】
このように、上記のポリウレタンディスパージョンは、保存安定性および機械安定性に優れる。
【0165】
そのため、上記のポリウレタンディスパージョンは、ガスバリア層としてポリウレタン層を備えるポリウレタン積層体の製造において、好適に用いることができる。
【0166】
図1において、ポリウレタン積層体1は、基材2と、基材2の上に積層されるポリウレタン層3とを備えている。
【0167】
基材2は、特に制限されず、例えば、プラスチック(例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂など)、紙、布、木、金属、セラミックスなどから形成され、好ましくは、プラスチック、より好ましくは、熱可塑性樹脂から形成される。
【0168】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体など)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど)、ポリアミド系樹脂(例えば、ナイロン6(登録商標)、ナイロン66(登録商標)、ポリメタキシリレンアジパミドなど)、ビニル系樹脂(例えば、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニルなど)、アクリル系樹脂(例えば、ポリメチルメタアクリレート、ポリアクリロニトリルなど)、ポリカーボネート系樹脂(例えば、ビスフェノールA型ポリカーボネートなど)、セルロース系樹脂(例えば、セロファン、酢酸セルロースなど)などが挙げられる。好ましくは、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂が挙げられる。より好ましくは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6(登録商標)が挙げられる。
【0169】
基材2は、単層、または、同種または2種以上の積層体からなる。
【0170】
なお、基材2の形状は、特に制限されないが、例えば、フィルム状、シート状、ボトル状、カップ状などが挙げられる。好ましくは、フィルム状が挙げられる。
【0171】
基材2は、無延伸基材、一軸または二軸延伸基材のいずれでもよく、また、基材2には、表面処理(コロナ放電処理など)、アンカーコートまたはアンダーコート処理がなされていてもよく、さらに、アルミニウムなどの金属、シリカ、アルミナ、シリカとアルミナとの混合物などの金属酸化物の蒸着処理がなされていてもよい。
【0172】
基材2の厚みは、例えば、3μm以上、好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、500μm以下、好ましくは、200μm以下である。
【0173】
ポリウレタン層3は、上記のポリウレタン樹脂から形成されている。このようなポリウレタン層3は、製造効率の観点から、好ましくは、上記のポリウレタンディスパージョンを、基材2に塗布および乾燥させることにより、形成されている。
【0174】
より具体的には、ポリウレタン層3を形成するには、上記方法により得られたポリウレタンディスパージョンの濃度を調整してコート剤を調製する。そして、得られたコート剤を、基材2の上に塗布し、乾燥させる。
【0175】
ポリウレタンディスパージョンの濃度を調整では、例えば、水や公知の有機溶媒などを添加、または、脱離させるなど、公知の方法を採用することができる。
【0176】
コート剤の固形分濃度は、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、1質量%以上であり、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、25質量%以下である。
【0177】
また、コート剤には、必要に応じて、硬化剤を配合することができる。
【0178】
硬化剤としては、例えば、エポキシ硬化剤、メラミン硬化剤、カルボジイミド硬化剤、アジリジン硬化剤、オキサゾリン硬化剤、イソシアネート硬化剤などが挙げられる。この中で、イソシアネート硬化剤については、より具体的には、水分散性のイソシアネート硬化剤(例えば、ブロックイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート系のブロックイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート系のブロックイソシアネート、キシリレンジイソシアネート系のブロックイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート系のブロックイソシアネートなど)、親水性基を含有する非ブロックポリイソシアネートなど)が挙げられる。
【0179】
硬化剤を配合する場合には、その配合割合は、ポリウレタン樹脂100質量部に対して、硬化剤が、固形分として、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
【0180】
また、コート剤の塗布方法としては、特に制限されず、例えば、グラビアコート法、リバースコート法、ロールコート法、バーコート法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ディッピング法などの公知のコーティング方法が挙げられる。
【0181】
また、基材2を作製するときに、インラインで塗布してもよい。
【0182】
具体的には、基材2がフィルム状の場合、フィルム製膜時の縦方向の一軸延伸処理後にグラビアコート法などにより、コート剤を塗布および乾燥した後、二軸延伸処理してポリウレタン層3を基材2上に設けることができる。
【0183】
また、基材2がボトル状の場合、ブロー成型前のプリフォームにディッピング法などによりコート剤を塗布および乾燥した後、ブロー成型してポリウレタン層3を基材2上に設けることができる。
【0184】
また、乾燥条件は、乾燥温度が、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上であり、例えば、250℃以下、好ましくは、200℃以下である。また、乾燥時間が、例えば、1秒以上、好ましくは、3秒以上であり、例えば、10分以下、好ましくは、5分以下である。
【0185】
これにより、基材2の上に、ポリウレタン樹脂からなるポリウレタン層3を形成することができ、これにより、基材2およびポリウレタン層3を備えるポリウレタン積層体1を得ることができる。
【0186】
ポリウレタン層3の厚みは、ポリウレタン樹脂(乾燥後)の積層量として、例えば、0.1g/m2以上、好ましくは、0.2g/m2以上、より好ましくは、0.3g/m2以上であり、また、例えば、10g/m2以下、好ましくは、7g/m2以下、より好ましくは、5g/m2以下である。
【0187】
また、ポリウレタン積層体1の厚みは、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、1mm以下、好ましくは、0.5mm以下である。
【0188】
また、必要に応じて、得られたポリウレタン積層体1を、例えば、30~50℃で、2~5日間程度養生させてもよい。
【0189】
このようなポリウレタン積層体1は、上記のポリウレタンディスパージョンを用いて得られるポリウレタン層3を備えるため、ガスバリア性に優れる。
【0190】
また、ポリウレタン積層体1では、ガスバリア性の向上を図るため、ポリウレタン層3に、フィラーを分散させることもできる。
【0191】
より具体的には、例えば、上記のポリウレタンディスパージョンと、フィラーとの混合物を、基材2に塗布および乾燥させることにより、フィラーが分散されたポリウレタン層3を形成することができる。
【0192】
フィラーとしては、例えば、有機ナノファイバー、層状無機化合物などが挙げられ、ガスバリア性の観点から、好ましくは、層状無機化合物が挙げられる。
【0193】
有機ナノファイバーとしては、例えば、セルロースナノファイバー、キトサンナノファイバーなどが挙げられる。
【0194】
層状無機化合物としては、例えば、膨潤性の層状無機化合物、非膨潤性の層状無機化合物などが挙げられる。ガスバリア性の観点から、好ましくは、膨潤性の層状無機化合物が挙げられる。
【0195】
膨潤性の層状無機化合物は、極薄の単位結晶からなり、単位結晶層間に溶媒が配位または吸収・膨潤する性質を有する粘土鉱物である。
【0196】
膨潤性の層状無機化合物として、具体的には、例えば、含水ケイ酸塩(フィロケイ酸塩鉱物など)、例えば、カオリナイト族粘土鉱物(ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライトなど)、アンチゴライト族粘土鉱物(アンチゴライト、クリソタイルなど)、スメクタイト族粘土鉱物(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトなど)、バーミキュライト族粘土鉱物(バーミキュライトなど)、雲母またはマイカ族粘土鉱物(白雲母、金雲母などの雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライトなど)、合成マイカなどが挙げられる。
【0197】
これら膨潤性の層状無機化合物は、天然粘土鉱物であってもよく、また、合成粘土鉱物であってもよい。また、単独または2種以上併用することができ、好ましくは、スメクタイト族粘土鉱物(モンモリロナイトなど)、マイカ族粘土鉱物(水膨潤性雲母など)、合成マイカなどが挙げられ、より好ましくは、合成マイカが挙げられる。
【0198】
フィラーの平均粒径は、例えば、50nm以上、好ましくは、100nm以上であり、また、通常、10μm以下であり、例えば、5μm以下、好ましくは、3μm以下である。また、フィラーのアスペクト比は、例えば、50以上、好ましくは、100以上、より好ましくは、200以上であり、また、例えば、5000以下、好ましくは、3000以下、より好ましくは、2000以下である。
【0199】
フィラーのアスペクト比が上記範囲であれば、フィラーの結晶層間(ケイ酸塩層の間隙など)において、ガスの透過経路がつづら折り状になるため、透過経路が比較的長くなり、ガスの透過を抑制することができ、ガスバリア性の向上を図ることができる。
【0200】
そして、フィラーが分散されたポリウレタン層3を形成するには、例えば、まず、上記のポリウレタンディスパージョンと、フィラーとを混合し、混合物として、ハイブリッドコート剤を調製する。そして、得られたハイブリッドコート剤を基材2の上に塗布し、乾燥させる。
【0201】
混合物(ハイブリッドコート剤)を調製するには、まず、水にフィラーを分散させ、次いで、その分散液に、ポリウレタンディスパージョン(ポリウレタン樹脂を含む)を添加する。
【0202】
ポリウレタン樹脂とフィラーとの配合割合は、ポリウレタン樹脂とフィラーとの質量の総量100質量部に対して、フィラーが、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、例えば、50質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
【0203】
ポリウレタン樹脂とフィラーとの配合割合が上記範囲であれば、ガスバリア性を維持するとともに、基材との密着性、透明性および低コスト性の向上を図ることができる。
【0204】
得られる混合物(ハイブリッドコート剤)における、ポリウレタン樹脂およびフィラーの総濃度は、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上であり、また、例えば、15質量%以下、好ましくは、12質量%以下である。
【0205】
なお、混合物(ハイブリッドコート剤)において、フィラーは、2次凝集するおそれがあるため、好ましくは、フィラーを溶媒に分散または混合した後、せん断力が作用する機械的な強制分散処理、例えば、ホモミキサー、コロイドミル、ジェットミル、ニーダー、ビーズミル、サンドミル、ボールミル、3本ロール、超音波分散装置などによる分散処理を利用して、分散させる。
【0206】
また、ハイブリッドコート剤の塗布方法としては、特に制限されず、上記した公知のコーティング方法が挙げられる。
【0207】
乾燥条件は、乾燥温度が、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上であり、例えば、250℃以下、好ましくは、200℃以下である。また、乾燥時間が、例えば、1秒以上、好ましくは、3秒以上であり、例えば、10分以下、好ましくは、5分以下である。
【0208】
これにより、基材2の上に、ポリウレタン樹脂およびフィラーからなるポリウレタン層3(複合ポリウレタン層)を形成することができ、これにより、ポリウレタン積層体1を得ることができる。
【0209】
ポリウレタン層3の厚みは、ポリウレタン樹脂およびフィラー(乾燥後)の積層量として、例えば、0.1g/m2以上、好ましくは、0.2g/m2以上、より好ましくは、0.3g/m2以上であり、また、例えば、10g/m2以下、好ましくは、7g/m2以下、より好ましくは、5g/m2以下である。
【0210】
また、ポリウレタン積層体1の厚みは、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、1mm以下、好ましくは、0.5mm以下である。
【0211】
また、ポリウレタン積層体1において、フィラーの質量割合は、ポリウレタン層3の総量100質量部に対して、フィラーの質量が、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.2質量部以上、より好ましくは、1質量部以上であり、例えば、90質量部以下、好ましくは、70質量部以下、より好ましくは、50質量部以下である。
【0212】
フィラーの質量割合が上記範囲であれば、基材との密着性や、透明性の向上を図るとともに、フィラーの配合割合を少なくできるため、低コスト性の向上も図ることができる。
【0213】
また、必要に応じて、得られたポリウレタン積層体1を、例えば、30~60℃で、2~5日間程度養生させてもよい。
【0214】
このようなポリウレタン積層体1は、上記のポリウレタンディスパージョンを用いて得られるポリウレタン層3を備え、また、そのポリウレタン層3にフィラーが分散されているため、とりわけガスバリア性に優れる。
【0215】
そのため、ポリウレタン積層体1は、ガスバリア性フィルムの分野、具体的には、食品・医薬品などの包装フィルム、食品包装容器(ボトルを含む。)、光学フィルム、工業用フィルムなどにおいて好適に使用され、とりわけ、ボイル殺菌、レトルト殺菌などの高温殺菌処理、加熱調理等の加熱処理が必要とされる内容物の食品包装フィルムとして、好適に使用される。
【0216】
また、上記したコート剤に、顔料などの着色剤を含ませて印刷用インキとして調製し、これをプラスチックフィルム、紙、各種容器などへ塗装することで印刷フィルムや印刷体としても好適に使用することができる。
【0217】
なお、上記した説明では、ポリウレタン層3を単層としたが、例えば、
図2に示すように、ポリウレタン層3を、基材2に積層される第1ポリウレタン層3aと、その第1ポリウレタン層3aに積層される第2ポリウレタン層3bとの2層とすることができ、さらには、図示しないが、ポリウレタン層3を3層以上の多層とすることもできる。
【0218】
また、そのようなポリウレタン積層体1において、ポリウレタン層3にフィラーを分散させる場合には、少なくともいずれかの層にフィラーが分散されていればよく、また、全ての層にフィラーが分散されていてもよい。なお、いずれの層にもフィラーが分散されていなくともよい。
【0219】
例えば、ポリウレタン層3を、基材2に積層される第1ポリウレタン層3aと、その第1ポリウレタン層3aに積層される第2ポリウレタン層3bとの2層とし、第2ポリウレタン層3bにのみ、フィラーを分散させることができる。
【0220】
また、上記した説明では、ポリウレタン層3は、基材2の厚み方向一方面全面に積層されているが、これに限定されず、例えば、図示しないが、基材2の厚み方向両面、さらには、基材2を部分的に積層することができる。
【実施例】
【0221】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0222】
なお、以下において用いられる測定方法を下記する。
【0223】
<炭酸イオン濃度>
ポリウレタンディスパージョン中の炭酸イオン濃度を、電気泳動システムにより定量した。
【0224】
すなわち、ポリウレタンディスパージョンのサンプルを分取秤量した後、超純水で適宜希釈溶解して、定量試料溶液を調製した。そして、定量試料溶液および標準品溶液を、以下の電気泳動システムにより測定した。また、既知濃度の標準品溶液を添加した試料測定溶液を調整し、添加回収試験を行った。
【0225】
(装置および測定条件)
装置:Agilent Technologies社製 7100キャピラリー電気泳動システム
緩衝液:Agilent Technologies社製 有害陰イオン分析緩衝液
そして、1点検量線法によって、炭酸イオン濃度を求め、それらの質量比率を算出した。
【0226】
<残留溶剤>
ポリウレタンディスパージョン中の残留溶剤量を、ガスクロマトグラフ法で定量した。
【0227】
すなわち、内部標準として1-プロパノールを用い、標準物質、およびポリウレタンディスパージョン、それぞれの定量試料水溶液を調製した。そして、以下のガスクロマトグラフ条件にて測定し、ポリウレタンディスパージョン中の残留溶剤量を算出した。
【0228】
(装置および測定条件)
装置:島津製作所製GC-2014
カラム:Sunpak-A 50/80 ガラスカラムφ3.2 mm×2mm×2.1m
検出器:FID
合成例1(PUD1)
タケネート500(1,3-キシリレンジイソシアネート、m-XDI、三井化学社製)170.7g、VestanatH12MDI(4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、H12MDI、エボニック社製)29.8g、エチレングリコール34.4g、トリメチロールプロパン2.6g、ジメチロールプロピオン酸19.6gおよび溶剤としてメチルエチルケトン146.2gを混合し、窒素雰囲気下65~70℃で、イソシアネート基濃度(溶剤を除いた固形分あたりのNCO%)が9.53質量%に至るまで反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーを含む反応液を得た。
【0229】
イソシアネート基末端プレポリマーのウレタン基濃度(仕込み比)は、33.5質量%であった。
【0230】
次いで、反応液を40℃まで冷却し、その後、トリエチルアミン14.5gにて中和させた。
【0231】
次いで、反応液を1009.7gのイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、その分散液に、85.6gのイオン交換水に28.5gの2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノールを溶解したアミン水溶液を、添加した。その後、2時間鎖伸長反応させ、ポリウレタン樹脂を得た。
【0232】
これにより、ポリウレタンディスパージョン1(PUD1)を得た。
【0233】
ポリウレタン樹脂(固形分)1kgに対する、ウレタン基およびウレア基の含有割合を、仕込み比から算出したところ、6.7モル(質量基準で39.6質量%)であった。
【0234】
また、ポリウレタン樹脂の固形分の酸価を、JIS K 1557-5(2007)に準拠して測定したところ、27.3mgKOH/gであった。
【0235】
合成例2~8(PUD2~8)
表1に示す処方に従って、合成例1と同じ方法で、ポリウレタンディスパージョン2~8(PUD2~8)を得た。
【0236】
実施例1~13および比較例1~4
エバポレーターにて、水浴温度50℃の減圧下で、表2に示すポリウレタンディスパージョン(PUD)を、表2に示す時間、真空パージした。これにより、溶剤としてのメチルエチルケトンの割合が0.3質量%以下となったことを確認した。
【0237】
なお、溶剤(メチルエチルケトン)は、ガスクロマトグラフ法により定量した。0.3質量%は、その定量方法における検出限界である。
【0238】
また、比較例1から、1時間真空パージすれば溶剤濃度は0.3質量%以下となり、脱溶剤が完了していることがわかる。
【0239】
その後、表2に示す固形分濃度となるように、イオン交換水にて濃度調整した。
【0240】
<<評価>>
<ポリウレタンディスパージョンの評価>
(1)保存安定性1(平均粒子径)
濃厚系粒子径アナライザーFPAR-1000(大塚電子株式会社製)を用いて、PUDの粒子径D1を測定した。
【0241】
また、PUDを40℃で7日間保存した後、同様にして、粒子径D2を測定した。
【0242】
そして、保存前後における粒子径(D2/D1)の変化率を算出した。
【0243】
その結果を表2に示す。
【0244】
(2)保存安定性2(粘度)
JIS K 7117(1999)に準拠して、PUDの25℃における粘度V1を測定した。
【0245】
また、PUDを40℃で7日間保存した後、同様にして、25℃における粘度V2を測定した。
【0246】
そして、保存前後における粒子径(V2/V1)の変化率を算出した。
【0247】
その結果を表2に示す。
【0248】
(3)機械的安定性
PUD 100gを、マロン型試験機(マロン式機械的安定度試験機 AB-802、テスター産業製)にて、荷重15kg、回転数1,000rpmで15分間処理した。
【0249】
その後、処理液を100メッシュの金網でろ過し、残渣を水洗後、110℃で2時間乾燥することにより凝集物を採取した。そして、得られた凝集物の質量を測定し、凝集物濃度(質量%)を算出した。
【0250】
そして、PUDの固形分濃度(%)に対する凝集物濃度(%)の割合を求めて、ポリウレタン樹脂の凝集率を、下記式で求めた。これを、評価の指標とした。その結果を表2に示す。
(ポリウレタン樹脂の凝集率(%))=[(凝集物濃度)/(固形分濃度)]×100
なお、数値が小さいほど、機械的安定性が高いことを示す。
【0251】
<積層体の評価>
(4)酸素透過量
基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(二軸延伸ポリエステルフィルム、商品名:東洋紡エステルフィルムE5102、東洋紡社製、厚み12μm)に、乾燥時の厚みが3g/m2となるように、バーコーターを用いてPUDを塗布した。
【0252】
次いで、110℃に設定した乾燥オーブンに、塗布したフィルムを1分間入れて乾燥させて、積層体を得た。
【0253】
酸素透過測定装置(OX-TRAN2/20、MOCON社製)を用いて、JIS K 7126-2(2006)に準拠して、積層体の20℃における、相対湿度80%(80%RH)での1m2、1日および1気圧当たりの酸素透過量(cc)を、積層体の製造直後および40℃7日後に、測定した。その結果を表1に示す。
【0254】
なお、比較例1のポリウレタンディスパージョンは、炭酸イオン濃度が比較的高い(700ppm超過)ため、凝集を生じやすく、保存安定性および機械安定性が十分ではなかった。
【0255】
また、比較例2のポリウレタンディスパージョンは、固形分濃度が比較的低い(20質量%以下)ため、塗膜の生産効率、および、輸送コストの低減が低下した。
【0256】
また、比較例3および比較例4のポリウレタンディスパージョンは、ポリウレタン樹脂のガスバリア性が十分ではなかった。
【0257】
【0258】
【0259】
なお、表中の略号の詳細を下記する。
【0260】
XDI:商品名タケネート500、1,3-キシリレンジイソシアネート、m-XDI、三井化学製
H6XDI:商品名タケネート600、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、三井化学製
TDI:商品名タケネート80、トリレンジイソシアネート、2,4体/2,6体=80/20(質量比)、三井化学製
H12MDI:商品名VestanatH12MDI、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、エボニック製
UH-200:商品名ETERNACOLLR UH-200、ポリカーボネートジオール、数平均分子量2000、宇部興産製
P400:商品名アクトコールP400、ポリオキシプロピレングリコール、数平均分子量400、三井化学製
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。当該当技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記請求の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0261】
本発明のポリウレタンディスパージョンは、食品・医薬品などの包装フィルム、食品包装容器、光学フィルム、工業用フィルムなどにおいて好適に使用される。
【符号の説明】
【0262】
1 ポリウレタン積層体
2 基材
3 ポリウレタン層