(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】隔離板、当該隔離板を含む電気化学装置及び電子装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20231005BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20231005BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20231005BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20231005BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20231005BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20231005BHJP
H01M 50/423 20210101ALI20231005BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20231005BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20231005BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20231005BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20231005BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20231005BHJP
H01M 50/474 20210101ALI20231005BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20231005BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/052
H01M10/0585
H01M50/184 C
H01M50/414
H01M50/42
H01M50/423
H01M50/426
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M50/446
H01M50/451
H01M50/474
H01M50/489
(21)【出願番号】P 2021571770
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(86)【国際出願番号】 CN2020099430
(87)【国際公開番号】W WO2022000312
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2021-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】張 益博
(72)【発明者】
【氏名】胡 喬舒
(72)【発明者】
【氏名】張 楠
(72)【発明者】
【氏名】厳 坤
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/230323(WO,A1)
【文献】特開2007-188746(JP,A)
【文献】特開2010-250978(JP,A)
【文献】特開2018-028980(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0092898(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 10/052
H01M 10/0585
H01M 50/40
H01M 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔離板基材、正極膜、負極膜、及び絶縁層を含む隔離板であって、
前記正極膜及び前記負極膜はそれぞれ前記隔離板基材の両面に位置し、
前記絶縁層は隔離板基材上に配置され、且つ前記絶縁層は前記正極膜の外周に配置され、
前記絶縁層の外縁の前記隔離板基材上への正投影によって囲まれた領域は、前記負極膜の前記隔離板基材上への正投影を覆
い、
前記隔離板はさらにシール層を含み、前記シール層は前記隔離板の周りに位置し、前記絶縁層とシール層との間の距離をD3とすると、D3は、関係式0mm≦D3≦20mmを満たす、隔離板。
【請求項2】
前記正極膜の領域に対応する隔離板基材の反対側の領域に、負極膜領域が存在し、
前記絶縁層の領域に対応する隔離板基材の反対側の領域の少なくとも一部に、負極膜領域が存在する、請求項1に記載の隔離板。
【請求項3】
前記正極膜の幾何中心の前記隔離板基材への正投影と、前記負極膜の幾何中心の前記隔離板基材への正投影とが重なり合い、発散方向に沿って、前記幾何中心から正極膜の外縁までの長さをL1とし、同様な前記発散方向に沿って、正極膜の外縁から絶縁層の外縁までの長さをDとし、前記幾何中心から負極膜の外縁までの長さをL2とすると、前記L1、L2、Dは、以下の幾何関係を満たす、請求項2に記載の隔離板。
L1<L2、L1+D≧L2
【請求項4】
前記正極膜及び前記負極膜の形状は矩形であり、前記正極膜、負極膜、絶縁層は、以下の幾何関係を満たし、
【数1】
ここで、Lx1は前記正極膜の長さであり、Ly1は前記正極膜の幅であり、Lx2は前記負極膜の長さであり、Ly2は前記負極膜の幅であり、Dxは前記絶縁層が正極膜の長手方向に沿って延伸する部分の幅であり、Dyは前記絶縁層が正極膜の短手方向に沿って延伸する部分の幅である、請求項3に記載の隔離板。
【請求項5】
前記絶縁層の電気抵抗率は10
7Ω・mを超える、請求項1に記載の隔離板。
【請求項6】
前記L1、D、L2は、関係式0mm≦L1+D-L2≦4.5mmを満たす、請求項3に記載の隔離板。
【請求項7】
前記Dは、関係式0.5mm≦D≦5mmを満たす、請求項3に記載の隔離板。
【請求項8】
前記隔離板は、
(a)前記絶縁層の電気抵抗率は10
10Ω・mを超えること;
(b)前記L1、D、L2は、関係式1mm≦L1+D-L2≦2.5mmを満たすこと;
(c)前記Dは、関係式1.5mm≦D≦3mmを満たすこと;
の少なくとも一つの特徴を満たす、請求項3に記載の隔離板。
【請求項9】
D3は、関係式2mm≦D3≦5mmを満たす、請求項
1に記載の隔離板。
【請求項10】
前記絶縁層はセラミック粒子を含み、セラミック粒子の平均粒子径は10nm~20μmであり、前記絶縁層の孔隙率は10%~60%であり、前記絶縁層の平均ポアサイズは20nm~50μmである、請求項1に記載の隔離板。
【請求項11】
前記絶縁層は、
(a)前記絶縁セラミック粒子の平均粒子径は100nm~10μmであること;
(b)前記絶縁層の孔隙率は20%~40%であること;
(c)前記絶縁層の平均ポアサイズは200nm~20μmであること
の少なくとも一つの特徴を満たす、請求項
10に記載の隔離板。
【請求項12】
前記絶縁層は、さらに接着剤を含み、前記接着剤は前記絶縁層の質量の5%~40%を占める、請求項1に記載の隔離板。
【請求項13】
前記接着剤は、ポリアミド、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、アクリル酸エステル、ポリフッ化ビニリデン及びポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、請求項
12に記載の隔離板。
【請求項14】
前記絶縁層は、HfO
2、SrTiO
3、SnO
2、CeO
2、MgO、NiO、CaO、BaO、ZnO、ZrO
2、Y
2O
3、Al
2O
3、TiO
2、SiO
2、ベーマイト、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、リン酸リチウム、リン酸チタンリチウム、リン酸リチウムアルミニウムチタン、チタン酸ランタンリチウム、チオリン酸ゲルマニウムリチウム、窒化リチウム、SiS
2ガラス、P
2S
5ガラス、Li
2O、LiF、LiOH、Li
2CO
3、LiAlO
2、リチウムゲルマニウムリン硫黄セラミック、及びガーネットセラミックからなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1に記載の隔離板。
【請求項15】
請求項1~
14のいずれか1項に記載の隔離板を含む、電気化学装置。
【請求項16】
少なくとも二つの電極組立体を含み、前記隔離板は外装と密封で接続して、前記隔離板の両側にそれぞれ独立したシールキャビティを形成し、各シールキャビティには電極組立体一つ及び電解液が含まれる、請求項
15に記載の電気化学装置。
【請求項17】
請求項
15又は
16に記載の電気化学装置を含む、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学分野に関し、具体的に隔離板、当該隔離板を含む電気化学装置及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は比エネルギーが大きく、動作電圧が高く、自己放電率が低く、体積が小さく、重量が軽い等の特徴があり、消費電子分野に幅広く応用されている。電気自動車及びポータブル電子機器の高速の発展に伴い、リチウムイオン電池に対する性能需要も高まり、例えば、リチウムイオン電池には、さらに高いエネルギー密度、安全性、サイクル特性等が求められている。
【0003】
しかしながら、リチウムイオン電池はその固有の電気化学系に制限され、通常、単一のセルの動作電圧が5Vを超えることが困難である。しかし、リチウムイオン電池の実際の使用において、例えば、電気自動車(EV,Electric vehicle)、エネルギー貯蔵システム(ESS,Energy Storage System)などの高電圧の応用場面が多い。
【0004】
リチウムイオン電池の出力電圧を上げるために、従来の技術では通常、複数のリチウムイオン電池を外部ワイヤを介して直列に接続するが、このタイプの直列接続では、各リチウムイオン電池の個々の容量の差により、直列に接続しているリチウムイオン電池全体のエネルギー密度(ED)が低くなり、リチウムイオン電池の適用範囲が制限される。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、リチウムイオン電池のエネルギー密度を向上させるための、隔離板、当該隔離板を含む電気化学装置及び電子装置を提供することを目的とする。具体的な技術案は以下である。
【0006】
本発明の第一の態様は、隔離板基材、正極膜、負極膜、及び絶縁層を含む隔離板を提供し、
前記正極膜及び前記負極膜はそれぞれ前記隔離板基材の両面に位置し、
前記絶縁層は隔離板基材上に配置され、前記絶縁層は前記正極膜の外周に配置され、
前記絶縁層の外縁の前記隔離板基材上への正投影によって囲まれた領域は、前記負極膜の前記隔離板基材上への正投影を覆う。
【0007】
本発明の一つの実施案において、前記正極膜の領域に対応する隔離板基材の反対側の領域に、負極膜領域が存在し、前記絶縁層の領域に対応する隔離板基材の反対側の領域の少なくとも一部に、負極膜領域が存在する。
【0008】
本発明の一つの実施案において、前記正極膜領域と絶縁層領域との間に空隙が存在し、一方では、この空隙は、電極への電解液の浸入、及び充放電中の正極材料の体積の変化のための緩衝空間を与え、他方では、この空隙は電解液が側面から正極膜に浸入することに通路を提供し、充放電レートを向上させることができる。
【0009】
本発明の一つの実施案において、前記正極膜の幾何中心の前記隔離板基材上への正投影と、前記負極膜の幾何中心の前記隔離板基材上への正投影とが重なり合い、発散方向に沿って、前記幾何中心から正極膜の外縁までの長さをL1とし、同様な前記発散方向に沿って、正極膜の外縁から絶縁層の外縁までの長さをDとし、前記幾何中心から負極膜の外縁までの長さをL2とすると、L1、L2、Dは、以下の幾何関係を満たす。
L1<L2、L1+D≧L2
【0010】
本発明の一つの実施案において、前記正極膜及び前記負極膜の形状は矩形であり、前記正極膜の幾何中心の前記隔離板基材上への正投影と、前記負極膜の幾何中心の前記隔離板基材上への正投影とが重なり合い、前記正極膜、負極膜、絶縁層は、以下の幾何関係を満たし、
[式1]
ここで、Lx1は前記正極膜の長さであり、Ly1は前記正極膜の幅であり、Lx2は前記負極膜の長さであり、Ly2は前記負極膜の幅であり、Dxは絶縁層が正極膜の長手方向に沿って延伸する部分の幅であり、Dyは絶縁層が正極膜の短手方向に沿って延伸する部分の幅である。
【0011】
本発明の一つの実施案において、前記絶縁層が正極膜の長手方向に沿って延伸する部分は第一部分と第二部分を含み、前記第一部分と前記第二部分の幅は同一でも異なっていてもよい。前記絶縁層が正極膜の短手方向に延伸する部分は第三部分と第四部分を含み、前記第三部分と前記第四部分の幅は同一でも異なっていてもよい。
【0012】
本発明の一つの実施案において、前記絶縁層の電気抵抗率は107Ω・mを超える。
【0013】
本発明の一つの実施案において、前記L1、D、L2は、関係式0mm≦L1+D-L2≦4.5mmを満たす。
【0014】
本発明の一つの実施案において、前記Dは、関係式0.5mm≦D≦5mmを満たす。
【0015】
本発明の一つの実施案において、前記隔離板は、
(a)前記絶縁層の電気抵抗率は1010Ω・mを超えること;
(b)前記L1、D、L2は、関係式1mm≦L1+D-L2≦2.5mmを満たすこと;
(c)前記Dは、関係式1.5mm≦D≦3mmを満たすこと;
の少なくとも一つの特徴を満たす。
【0016】
本発明の一つの実施案において、前記隔離板はさらにシール層を含み、前記シール層は前記隔離板の周りに位置し、前記絶縁層とシール層との間の距離をD3とすると、D3は、関係式0mm≦D3≦20mmを満たす。
【0017】
本発明の一つの実施案において、D3は、関係式2mm≦D3≦5mmを満たす。
【0018】
本発明の一つの実施案において、前記絶縁層はセラミック粒子を含み、セラミック粒子の平均粒子径は10nm~20μmであり、前記絶縁層の孔隙率は10%~60%であり、前記絶縁層の平均ポアサイズは20nm~50μmである。
【0019】
本発明の一つの実施案において、前記絶縁層は、
(a)前記絶縁セラミック粒子の平均粒子径は100nm~10μmであること;
(b)前記絶縁層の孔隙率は20%~40%であること;
(c)前記絶縁層の平均ポアサイズは200nm~20μmであること;
の少なくとも一つの特徴を満たす。
【0020】
本発明の一つの実施案において、前記絶縁層は、さらに接着剤を含み、前記接着剤は前記絶縁層の質量の5%~40%を占める。
【0021】
本発明の一つの実施案において、前記接着剤は、ポリアミド、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、アクリル酸エステル、ポリフッ化ビニリデン、及びポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む。
【0022】
本発明の一つの実施案において、前記絶縁層は、HfO2、SrTiO3、SnO2、CeO2、MgO、NiO、CaO、BaO、ZnO、ZrO2、Y2O3、Al2O3、TiO2、SiO2、ベーマイト、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、リン酸リチウム、リン酸チタンリチウム、リン酸リチウムアルミニウムチタン、チタン酸ランタンリチウム、チオリン酸ゲルマニウムリチウム、窒化リチウム、SiS2ガラス、P2S5ガラス、Li2O、LiF、LiOH、Li2CO3、LiAlO2、リチウムゲルマニウムリン硫黄セラミック、及びガーネットセラミックからなる群から選ばれる少なくとも一種を含む。
【0023】
本発明の第二の態様は、上記のいずれかの実施案に記載の隔離板を含む電気化学装置を提供する。
【0024】
本発明の一つの実施案において、前記電気化学装置は少なくとも二つの電極組立体を含み、前記隔離板は外装と密封で接続し、前記隔離板の両側にそれぞれ独立したシールキャビティを形成し、各シールキャビティには電極組立体一つ及び電解液が含まれる。
【0025】
本発明の第三の態様は、本発明の第二の態様に記載の電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【0026】
本発明は隔離板、当該隔離板を含む電気化学装置及び電子装置を提供する。隔離板基材上に正極膜及び負極膜を配置することで、電気化学装置における活物質の含有量を向上させることができ、それによって、電気化学装置のエネルギー密度を向上させることができる。また、正極膜の外周に絶縁層を配置し、そして絶縁層の外縁の隔離板基材上への正投影によって囲まれた領域が前記負極膜の隔離板基材上への正投影を覆うようにすることで、隔離板を冷間プレスした後、その負極膜側の、負極が正極からオーバーハングする領域(AC Overhang)と極片領域との圧縮密度(Compaction density)が一致し、一方では、圧縮密度が一致しないことによる低圧縮密度領域での局所リチウム析出現象をなくし、他方では、隔離板の縁が折り畳み、破損する現象が発生することを減少し、それによって、電気化学装置の自己放電特性及び安全性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明の実施例及び先行技術の技術案をより明確に説明するために、以下では実施例及び先行技術に用いる図面を簡単に説明するが、明らかなことに、以下に説明する図面は本発明の一部の実施例に過ぎず、当業者は、これらの図面から他の技術案を得ることができる。
【
図1】
図1は本発明の一つの実施案における隔離板の構造の模式図である。
【
図2】
図2は本発明の一つの実施案における隔離板の上面図である。
【
図3】
図3は本発明の一つの実施案における隔離板の底面図である。
【
図4】
図4は本発明の一つの実施案における電気化学装置の構造の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の目的、技術案、及び利点をよく明らかにするため、以下では、図面及び実施例を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。明らかに、説明された実施例は本発明の一部の実施例のみであり、全部の実施例ではない。本発明の実施例に基づいて得られた他の技術案はすべて本発明の保護範囲に含まれる。
【0029】
なお、本発明の発明を実施するための形態において、リチウムイオン電池を電気化学装置の例として本発明を説明するが、本発明の電気化学装置はリチウムイオン電池に限らない。
【0030】
先行技術は通常、複数の電気化学セルを内部直列接続して一つのリチウムイオン電池を形成することで、リチウムイオン電池の出力電圧を高める。このようなリチウムイオン電池に使用される極片は双極性(バイポーラ)極片であり、ここで、双極性極片の一方側に正極活物質が塗布され、もう一方側に負極活物質が塗布される。リチウムイオン電池の安全を考慮すると、リチウムイオン電池局所の縁での負極側の活物質が正極側の活物質より少ないことによるリチウム析出問題を避けるため、負極活物質の塗布面積は通常、正極活物質の塗布面積より大きい。しかし、上記の双極性極片は両面不均一極片であり、冷間プレス工程において、上記の双極性極片の両面に同時に冷間プレスを行う必要があるため、この際、正極活物質塗布領域の外側、即ち負極活物質塗布領域(AC Overhang領域、又は負極が正極からオーバーハングする領域と称される。)の縁において、極片の総厚さが一致しないため、以下の問題が起こりやすい。
【0031】
1)正極活物質塗布領域の縁及びその位置に対応する負極活物質塗布領域は、冷間プレス後に折り畳み、粉落ち等の現象が起こる。これによって、双極性極片の縁の局所でリチウムが析出し、リチウムイオン電池の自己放電率が異常になる等の問題がもたらされる。
【0032】
2)負極活物質塗布領域における負極が正極からオーバーハングする領域は、冷間プレス後に圧縮密度が他の領域より低くなり、そのため、低圧縮密度領域の局所で電位が低くなり、サイクル中に局所でリチウムが析出しやすくなり、リチウムイオン電池的サイクル容量維持率の低下がもたらされる。
【0033】
3)正極活物質塗布領域の縁の集電体は、冷間プレス後に折り目が現出しやすく、集電体の機械的強度を低下され、リチウムイオン電池の安全性に影響を与える。
【0034】
それに鑑みて、本発明は隔離板を提供し、
図1は本発明の一つの実施案における隔離板の構造の模式図であり、
図2は本発明の一つの実施案における隔離板の上面図である。
図1及び
図2に示された通り、前記隔離板は隔離板基材101、正極膜102、負極膜103及び絶縁層104を含む。ここで、正極膜102及び負極膜103はそれぞれ前記隔離板基材101の両面に位置する。前記絶縁層104は隔離板基材101上に配置され、前記絶縁層104は前記正極膜102の外周に配置される。前記絶縁層104の外縁の前記隔離板基材101上への正投影によって囲まれた領域は、前記負極膜103の前記隔離板基材101上への正投影を覆うことにより、負極膜103側のAC Overhang領域と極片領域との圧縮密度が一致することができる。それによって、一方では、圧縮密度が一致しないことによる低圧縮密度領域での局所リチウム析出現象をなくし、他方では、隔離板の縁が折り畳み、破損する現象が発生することを減少し、電気化学装置の自己放電特性及び安全性を向上させる。
【0035】
図1から分かるように、正極膜102の長さは負極膜103の長さより短く、これは、リチウムイオン電池の安全性を向上させるため、負極活物質の塗布面積は通常、正極活物質の塗布面積より大きいからである。
【0036】
本発明の一つの実施案において、
図1を参照し、前記正極膜102領域と対応する隔離板基材101の反対側領域に、負極膜領域、即ち、
図1に示される極片領域が存在する。前記絶縁層104領域と対応する隔離板基材101の反対側の領域の少なくとも一部に負極膜領域、即ち、
図1に示されるAC Overhang領域が存在する。絶縁層104が反対側のAC Overhang領域を超えるようにすることで、冷間プレスの時に極片区とAC Overhang領域との圧縮密度が一致するようにすることができる。
【0037】
そして、絶縁層104は反対側のAC Overhang領域を超えているが、絶縁層104自身が絶縁であるため、絶縁層104が冷間プレス後に折り畳み、粉落ちになっても、陽極の縁の局所でリチウムが析出する問題が起こらず、リチウムイオン電池の自己放電特性及び安全性に影響を与えない。
【0038】
本発明の一つの実施案において、前記正極膜102の幾何中心の前記隔離板基材101上への正投影と、前記負極膜103の幾何中心の前記隔離板基材101上への正投影とが点Oで重なり合い、発散方向に沿って、前記幾何中心から正極膜102の外縁までの長さをL1とし、即ち、幾何中心から正極膜102の外縁までの距離をL1とし、同様な前記発散方向に沿って、正極膜の外縁から絶縁層外縁までの長さをDとし、前記幾何中心から負極膜の外縁までの長さをL2とし、即ち、幾何中心から負極膜103の外縁までの距離をL2とすると、L1、L2、Dは、以下の幾何関係を満たす。
L1<L2、L1+D≧L2
【0039】
理解できるように、L1、L2、Dの間の関係を説明する時、「同様な前記発散方向に沿って」という表現は、同時に、正、負極膜の長手方向に沿って発散することを指してもよく、又は、同時に、正、負極膜の短手方向に沿って発散することを指しても良い。説明の便利上のため、以下では、正、負極膜の長手方向に沿って発散する方向をX方向と定義し、正、負極膜の短手方向に沿って発散する方向をY方向と定義し、同様に、それぞれ、Dx、Dyで異なる発散方向に沿うDを区別し;
[式2]
で異なる発散方向に沿うL1を区別し;
[式3]
で異なる発散方向に沿うL2を区別し、ここで、Lx1は前記正極膜の長さであり、Ly1は前記正極膜の幅であり、Lx2は前記負極膜の長さであり、Ly2は前記負極膜の幅である。
【0040】
本発明の一つの実施案において、L1、D、L2が、関係式0mm≦L1+D-L2≦4.5mm、好ましくは1mm≦L1+D-L2≦2.5mmを満たす場合、リチウムイオン電池の特性がより良好になる。
【0041】
本発明の一つの実施案において、Dが関係式0.5mm≦D≦5mm、好ましくは1.5mm≦D≦3mmを満たす場合、リチウムイオン電池の特性がより良好になる。
【0042】
本発明の一つの実施案において、
図2~
図3に示されたように、前記正極膜102及び前記負極膜103の形状は矩形であり、前記正極膜102の幾何中心の前記隔離板基材101上への正投影と、前記負極膜103の幾何中心の前記隔離板基材101への正投影とが点Oで重なり合う。
【0043】
隔離板の長手方向及び短手方向で直交座標系を作成し、ここで、X方向は隔離板の長手方向を表し、Y方向は隔離板の短手方向を表し、そして、前記正極膜102、負極膜103、絶縁層104は以下の幾何関係を満たす。
[式4]
【0044】
ここで、Lx1は前記正極膜102の長さであり、Ly1は前記正極膜102の幅であり、Lx2は前記負極膜103の長さであり、Ly2は前記負極膜103の幅であり、Dxは前記絶縁層104が正極膜102の長手方向に沿って延伸する部分の幅であり、Dyは絶縁層104が正極膜102の短手方向に沿って延伸する部分の幅である。
【0045】
発明者は、正極膜102、負極膜103及び絶縁層104が上記の幾何関係を満たす場合、負極膜103側のAC Overhang領域と極片領域との圧縮密度が一致することができ、一方では、極片領域の圧縮密度が一致しないことによる低圧縮密度領域での局所リチウム析出現象をなくし、他方では、隔離板の縁が折り畳み、破損する現象が発生することを減少し、電気化学装置の自己放電特性及び安全性を向上させることを見出した。
【0046】
本発明の一つの実施案において、
図2に示された通り、前記絶縁層104の正極膜102の長手方向に沿って延伸する部分は第一部分1と第二部分2を含み、前記絶縁層104の正極膜102の短手方向に沿って延伸する部分は第三部分3と第四部分4を含み、そして、前記第一部分1及び前記第二部分2の幅Dxは同一でも異なっていてもよく、前記第三部分3及び前記第四部分4の幅Dyは同一でも異なっていてもよく、本発明の発明目的を達成できればよい。
【0047】
本発明の隔離板基材101は特に制限なく、本発明の発明目的を達成できればよく、例えば、前記隔離板基材101は高分子材料層を含んでもよく、前記高分子材料層の両側は、異なる活物質を担持するために、それぞれ異なる金属をメッキして、金属層を形成してもよい。例えば、一方の側ではCu、Ni、Ti、Ag、Au、Pt、ステンレス鋼又はそれらの合金からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む第一金属Mをメッキし、もう一方の側ではAl、Ni、Ti、Ag、Au、Pt、ステンレス鋼又はそれらの合金からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む第二金属Nをメッキしても良い。高分子材料層を電子伝導性とイオン絶縁性にするために、前記高分子材料層には、例えば、黒鉛、導電炭素繊維などの導電材料を添加してもよく、前記第一金属Mと前記第二金属Nとは同一でも異なってもよいが、その表面に塗布された活物質と適合可能であり、対応する抗酸化又は抗還元特性を有する必要がある。そして、本発明の隔離板基材101の厚さは特に制限なく、例えば、前記高分子材料層の厚さは5μm~500μmであってもよく、前記第一金属Mの厚さは0.95μm~800μmであってもよく、前記第二金属Nの厚さは0.95μm~200μmであってもよい。
【0048】
或いは、前記隔離板基材101は、Ni、Ti、Ag、Au、Pt、ステンレス鋼のからなる群から選ばれる少なくとも一種を含む金属板であってもよく、前記金属板の厚さは10μm~200μmであってもよい。
【0049】
さらに、本発明の高分子材料層に使用される高分子材料は特に制限なく、本発明の発明目的を達成できればよく、例えば、高分子材料層は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエチレングリコール、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド、ポリビニルアセテート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリメチレンナフタレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンカーボネート、ポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(フッ化ビニリデン-co-クロロトリフルオロエチレン)、シリコーン樹脂、ビニリオン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエーテルニトリル、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、及びこれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。
【0050】
本発明において、前記正極膜102には正極活物質を含有してもよく、前記負極膜103には負極活物質を含有してもよく、又は、前記正極膜102は正極活物質を隔離板基材101上に直接塗布してなるものであってもよく、前記負極膜103は負極活物質を隔離板基材101上に直接塗布してなるものであってもよい。
【0051】
本発明の一つの実施案において、前記絶縁層104的電気抵抗率は107Ω・mを超え、好ましくは1010Ω・mを超え、何らかの理論に限られず、絶縁層104の電気抵抗率が大きいほど、絶縁層104の絶縁特性が良好になる。
【0052】
本発明の一つの実施案において、前記正極膜、負極膜、絶縁層は、以下の関係式を満たす場合、リチウムイオン電池の特性がより良好になる。
[式5]
【0053】
本発明の一つの実施案において、前記正極膜、負極膜、絶縁層は、さらに、以下の関係式を満たす場合、リチウムイオン電池の特性がより良好になる。
[式6]
【0054】
本発明の一つの実施案において、絶縁層104における絶縁材料自身は電気化学反応に関与しないため、Dx、Dyは、それぞれ関係式0.5mm≦Dx≦5mm、0.5mm≦Dy≦5mmを満たすようにすることで、絶縁層がX方向及びY方向での幅をそれぞれ制御して、絶縁材料の添加量を制御し、本発明の発明目的を実現するとともに、リチウムイオン電池に非活物質を過度に導入することなく、リチウムイオン電池エネルギー密度を向上させる效果を実現する。
【0055】
本発明の一つの実施案において、リチウムイオン電池の特性をさらに向上させることができる点から、Dxは1.5mm≦Dx≦3mmであることが好ましく;Dyは1.5mm≦Dy≦3mmであることが好ましい。
【0056】
本発明の絶縁層104の厚さは特に制限なく、本発明の発明目的が実現できればよく、例えば、絶縁層104の厚さは正極膜102の厚さに応じて設定してもよく、絶縁層104と正極膜102とが一緒に冷間プレスを経て厚さが一致するように保持すればよく、それによって、反対側の負極膜103が冷間プレスを経て、AC Overhang領域と極片領域との圧縮密度がさらに一致することができる。
【0057】
そして、本発明の絶縁層104に使用される絶縁材料は特に制限なく、本発明の発明目的が達成できればよく、例えば、前記絶縁層はHfO2、SrTiO3、SnO2、CeO2、MgO、NiO、CaO、BaO、ZnO、ZrO2、Y2O3、Al2O3、TiO2、SiO2、ベーマイト、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種を含んでもよく、又は、リチウムイオン伝導性のある材料、例えば、リン酸リチウム(Li3PO4)、リン酸チタンリチウム、リン酸リチウムアルミニウムチタン、チタン酸ランタンリチウム、チオリン酸ゲルマニウムリチウム、窒化リチウム、SiS2ガラス、P2S5ガラス、Li2O、LiF、LiOH、Li2CO3、LiAlO2、Li2O-Al2O3-SiO2-P2O5-TiO2-GeO2セラミックもしくはガーネットセラミックからなる群から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。
【0058】
ここで、リン酸チタンリチウムの一般式は(LixTiy(PO4)3であってもよく、ここで、0<x<2且つ0<y<3である。
【0059】
リン酸リチウムアルミニウムチタンの一般式は(LixAlyTiz(PO4)3であってもよく、ここで、0<x<2、0<y<1、且つ0<z<3である。
【0060】
チタン酸ランタンリチウムの一般式はLixLayTiO3であってもよく、ここで、0<x<2且つ0<y<3である。
【0061】
チオリン酸ゲルマニウムリチウムの一般式はLixGeyPzSwであってもよく、ここで、0<x<4、0<y<1、0<z<1、且つ0<w<5である。
【0062】
窒化リチウムの一般式はLixNyであってもよく、ここで、0<x<4、且つ0<y<2である。
【0063】
SiS2ガラスの一般式はLixSiySzであってもよく、ここで、0≦x<3、0<y<2、且つ0<z<4である。
【0064】
P2S5ガラスの一般式はLixPySzであってもよく、ここで、0≦x<3、0<y<3、且つ0<z<7である。
【0065】
リチウムゲルマニウムリン硫黄セラミックの一般式はLi2O-Al2O3-SiO2-P2O5-TiO2-GeO2であってもよい。
【0066】
ガーネットセラミックの一般式はLi3+xLa3M2O12であり、ここで0≦x≦5、且つMはTe、Nb又はZrからなる群から選ばれる少なくとも一種を含む。
【0067】
本発明の一つの実施案において、
図1及び
図2に示された通り、前記隔離板はさらにシール層105を含んでもよく、シール層105は前記隔離板の周りに位置し、包装效果を改善する効果があり、前記絶縁層104とシール層105との間の距離をD3とすると、D3は、関係式0≦D3≦20mmを満たし、好ましくは関係式2≦D3≦5mmを満たすことにより、リチウムイオン電池の密封效果を向上させることができ、リチウムイオン電池の自己放電速率を低下させ、これによって、リチウムイオン電池の自己放電特性を向上させることができる。
【0068】
本発明のシール層105に使用される材料は特に制限なく、本発明の発明目的を達成できればよく、例えば、ポリプロピレン、ポリエステルプラスチック又はp-ヒドロキシベンズアルデヒド(PHBA)からなる群から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。
【0069】
本発明の一つの実施案において、前記絶縁層104はセラミック粒子を含み、セラミック粒子は優れた絶縁特性を有し、ここで、セラミック粒子の平均粒子径は10nm~20μmであり、100nm~10μmであることが好ましく、前記絶縁層の孔隙率は10%~60%であり、20%~40%であることが好ましく、前記絶縁層の平均ポアサイズは20nm~50μmであり、200nm~20μmであることが好ましい。
【0070】
本発明の一つの実施案において、前記絶縁層はさらに接着剤を含み、これによって、絶縁層における絶縁セラミック粒子の結合がより強固になり、冷間プレス時絶縁層の粉落ち現象を減らすことができる。ここで、絶縁層が良好な絶縁特性及び機械的性質を有することを確保する点から、前記接着剤は通常、前記絶縁層の質量の5%~40%を占める。
【0071】
本発明における接着剤は、特に制限なく、本発明の発明目的を達成できればよく、例えば、前記接着剤はポリアミド、ポリウレタン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、アクリル酸エステル、ポリフッ化ビニリデン又はポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。
【0072】
本発明の絶縁層の調製方式は特に制限なく、本発明の発明目的を達成できればよく、例えば、スラリー塗布法、グルー塗布法、3Dプリント法等の複数の方法で調製してもよい。
【0073】
本発明は隔離板を提供し、正極膜の外周に絶縁層を配置し、そして絶縁層の外縁の隔離板基材上への正投影によって囲まれた領域が前記負極膜の隔離板基材上への正投影を覆うようにすることで、隔離板の冷間プレス後、その負極膜側のAC Overhang領域と極片領域との圧縮密度が一致し、一方では、圧縮密度が一致しないことによる低圧縮密度領域での局所リチウム析出現象をなくし、他方では、隔離板の縁が折り畳み、破損する現象が発生することを減少することができる。それを極片として使用する時、電気化学装置の自己放電特性及び安全性を向上させることができる。
【0074】
本発明はさらに、少なくとも一つの本発明の上記のいずれの実施案における前記隔離板を含む電気化学装置を提供する。
【0075】
本発明の一つの実施案において、前記電気化学装置は少なくとも二つの電極組立体を含み、ここで、前記隔離板は外装と密封で接続し、前記隔離板の両側にそれぞれ独立したシールキャビティを形成し、各シールキャビティには電極組立体一つ及び電解液が含まれ、独立した電気化学セルを形成する。ここで、前記隔離板の両側にはそれぞれ反対の極性の活物質が塗布されている。
【0076】
図4は本発明の一つの実施案における電気化学装置の構造の模式図であり、
図4に示された通り、隔離板は当該電気化学装置を二つの電極組立体に分かち、それぞれは第一電極組立体300及び第二電極組立体400である。ここで、
図4において、第一電極組立体300は下から、正極極片301、正極活物質層302、第一セパレーター303をこの順に含む。
図4において、第二電極組立体400は上から負極極片401、負極活物質層402、第二セパレーター403をこの順に含む。隔離板基材101の負極膜103と第一電極組立体300の正極活物質層302と隣接し、隔離板基材101の正極膜102と第二電極組立体400の負極活物質層402と隣接する。そして、電気化学装置はさらにシール層105で封止し、当該電気化学装置が二つの独立したチャンバー構造を形成するようにしてもよく、二つのチャンバーはそれぞれ第一電極組立体300及び第二電極組立体400に対応する。
【0077】
一つの実施案において、隣接する二つの電極組立体はそれぞれ一つのタブを引き出してもよく、この二つの電極組立体のタブ極性は反対で、例えば、隔離板が、第一電極組立体と隣接する側を正極膜とし、第二電極組立体と隣接する側を負極膜とする場合、第一電極組立体から負極タブを引き出し、第二電極組立体から正極タブを引き出す。この時、二つのタブの間の出力電圧は、二つの電気化学セルの出力電圧の合計である。
【0078】
一つの実施案において、隣接する二つの電極組立体はそれぞれ二つのタブを引き出してもよく、例えば、隔離板が、第一電極組立体と隣接する側を正極膜とし、第二電極組立体と隣接する側を負極膜とする場合、第一電極組立体の正極タブと第二電極組立体の負極タブとが直列に接続し、第一電極組立体の負極タブ及び第二電極組立体の正極タブは出力タブであり、出力電圧は二つの電気化学セルの出力電圧の合計である。この際、隔離板は双極性極片として、二つの隣接する電気化学セルの間に隔離板による内直列接続及びタブによる外直列接続が同時に存在するようにする。
【0079】
一つの実施案において、隔離板を双極性極片とする場合、さらに、リチウムイオン電池の動作状態を確認するために、隔離板からタブを引き出してもよい。
【0080】
本発明の一つの実施案において、隔離板の隔離板基材と、正極膜又は負極膜との間にはアンダーコート層が含まれてもよく、アンダーコート層は隔離板基材と活物質との間での接着特性を改善させるためのものである。前記アンダーコート層は通常、導電性カーボンブラック、スチレンブタジエンゴム及び脱イオン水を混合してなるスラリーを隔離板基材上に塗布して、乾燥した後に得られたものであり、そして、隔離板基材両面のアンダーコート層は同一でも異なっていてもよい。
【0081】
本発明の正極極片は特に制限されなく、本発明の目的が実現できればよい。例えば、前記正極片は通常、正極集電体と正極活物質とを含む。ここで、前記正極集電体は特に制限されなく、例えばアルミ箔、アルミ合金箔又は複合集電体などの、当分野で公知の任意の正極集電体であってもよい。前記正極活物質は特に制限されなく、NCM811、NCM622、NCM523、NCM111、NCA、リン酸鉄リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄マンガンリチウム、又はチタン酸リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、先行技術の任意の正極活物質であってもよい。
【0082】
本発明の負極極片は特に制限されなく、本発明の目的が実現できればよい。例えば、負極極片は通常、負極集電体と負極活物質層とを含む。ここで、負極集電体は特に制限されなく、例えば銅箔、アルミ箔、アルミ合金箔及び複合集電体などの、当分野で公知の任意の負極集電体を用いてもよい。負極活物質層は負極活物質を含み、負極活物質は特に制限されなく、例えば、人工黒鉛、天然黒鉛、中間相炭素ミクロスフェア、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコン、シリコンカーボン、チタン酸リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一種を含む、当分野で公知の任意の負極活物質を用いてもよい。。
【0083】
本発明における電解液は特に制限されなく、当分野で公知の任意の電解液を用いてもよく、前記電解液は、例えばゲル、固体及び液体の任意の一種であってもよく、例えば、液体電解液はリチウム塩と非水溶媒を含んでもよい。
【0084】
リチウム塩は特に制限されなく、本発明の目的を実現できるものであれば、当分野で公知の任意のリチウム塩を用いてもよい。例えば、リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO2F2)、リチウムビストリフルオロメタンスルホンイミドLiN(CF3SO2)2(LiTFSI)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドLi(N(SO2F)2)(LiFSI)、ホウ酸ビスシュウ酸リチウムLiB(C2O4)2(LiBOB)、及びホウ酸ジフルオロシュウ酸リチウムLiBF2(C2O4)(LiDFOB)からなる群から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。例えば、リチウム塩はLiPF6を用いてもよい。
【0085】
非水溶媒は特に制限されなく、本発明の目的を実現できるものであればよい。例えば、非水溶媒は、炭酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物、エーテル化合物、ニトリル化合物及びその他の有機溶媒からなる群から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。
【0086】
例えば、炭酸エステル化合物はジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチレンプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、1,2-ジフルオロエチレンカーボネート、1,1-ジフルオロエチレンカーボネート、1,1,2-トリフルオロエチレンカーボネート、1,1,2,2-テトラフルオロエチレンカーボネート、1-フルオロ-2-メチルエチレンカーボネート、1-フルオロ-1-メチルエチレンカーボネート、1,2-ジフルオロ-1-メチルエチレンカーボネート、1,1,2-トリフルオロ-2-メチルエチレンカーボネート及びトリフルオロメチルエチレンカーボネートからなる群から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。
【0087】
本発明におけるセパレーターは特に制限されなく、例えば、セパレーターは本発明の電解液に対して安定な材料からなる重合体又は無機物などを含む。
【0088】
例えば、セパレーターは基材層と表面処理層を含んでもよい。基材層は構造を有する無織布、膜又は複合膜であってもよく、基材層の材料はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート及びポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも一種であってもよい。セパレーターは、任意に、ポリプロピレン膜、ポリエチレン膜、ポリプロピレン不織布、ポリエチレン不織布又はポリプロピレン-ポリエチレン-ポリプロピレン複合膜を使用してもよい。任意に、基材層の少なくとも一つの表面に表面処理層が設けられており、表面処理層は、ポリマー層又は無機物層であってもよく、ポリマーと無機物を混合してなる混合層であってもよい。
【0089】
例えば、無機物層は無機粒子とバインダーを含み、前記無機粒子は特に制限されなく、例えば酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化チタン、二酸化ハフニウム、酸化スズ、酸化セリウム、酸化ニッケル、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化イトリウム、炭化ケイ素、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、硫酸バリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種であってもよい。前記バインダーは特に制限されなく、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリメタクリル酸メチル、ポリテトラフルオロエチレン及びポリヘキサフルオロプロピレンからなる群から選ばれる一種又は複数の種類の組み合わせであってもよい。ポリマー層は、ポリマーを含み、ポリマーの材料は、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)からなる群から選ばれる少なくとも一種を含む。
【0090】
本発明により提供される電気化学装置に用いられる隔離板は、正極膜の外周に絶縁層を配置し、そして絶縁層の外縁の隔離板基材上への正投影によって囲まれた領域が前記負極膜の隔離板基材上への正投影を覆うようにすることで、隔離板の冷間プレス後、その負極膜側のAC Overhang領域が極片領域の圧縮密度と一致し、一方では、圧縮密度が一致しないことによる低圧縮密度領域での局所リチウム析出現象をなくし、他方では、隔離板の縁が折り畳み、破損する現象が発生することを減少することができ、それを極片として使用する時、電気化学装置の自己放電特性及び安全性を向上させることができる。
【0091】
本発明は、さらに本発明の実施例に提供される電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【0092】
本発明の電極組立体は、特に制限なく、本発明の目的が実現できれば、先行技術のいずれの電極組立体を使用してもよく、例えばラミネート型電極組立体又は捲回型電極組立体であってもよい。電極組立体は通常、正極極片、負極極片及びセパレーターを含む。
【0093】
以下では、実施例及び比較例を挙げて、本発明の実施形態をより詳しく説明する。各種の試験及び評価は下記の通りに行われる。なお、別に断らない限り、「部」、「%」は重量基準である。
【0094】
実施例1
<隔離板の調製>
絶縁層スラリーの調製:ベーマイト、ポリフッ化ビニリデンPVDFを質量比95:5で混合し、そして、DMF及びアセトンからなる混合溶媒に分散させ、均一に撹拌し、固形分(solid content)が40%である絶縁層スラリーを得た。ここで、混合溶媒におけるDMFとアセトンとの体積比は7:3であった。
【0095】
正極スラリーの調製:正極活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO2)、導電性カーボンブラック(Super P)、PVDFを重量比97.5:1.0:1.5で混合し、そして溶媒としてNMPを入れ、固形分が75%であるスラリーに調製し、均一に撹拌した。
【0096】
負極スラリーの調製:負極活物質である黒鉛(Graphite)、導電性カーボンブラック(Super P)、ブタジエン-スチレンゴム(SBR)を重量比96:1.5:2.5で混合し、そして溶媒として脱イオン水を入れ、固形分が70%であるスラリーに調製し、均一に撹拌した。
【0097】
正極膜の調製:市販品の厚さ20μmのステンレス鋼隔離板基材を選び、まずステンレス鋼隔離板基材の一面に一層の正極スラリーを塗布し、90℃の条件下で1時間乾燥し、正極膜が得られた。ここで、正極膜の厚さは110μmであり、正極膜の長さLx1は40mmであり、正極膜の幅Ly1は34mmであった。
【0098】
絶縁層の調製:正極膜の周りにスプレダー(spreading machine)で一層の絶縁層スラリーを調製し、90℃の条件下で1時間乾燥し、絶縁層が得られた。絶縁層の厚さは100μmであり、絶縁層の幅Dx及びDyはそれぞれ5mmである。
【0099】
負極膜の調製:ステンレス鋼隔離板基材のもう一方の面に一層の負極スラリーを塗布し、110℃の条件下で1時間乾燥し、負極膜が得られた。ここで、負極膜の厚さは130μmであり、負極膜の長さLx2は46mmであり、負極膜の幅Ly2は40mmであり、即ち、
[式7]
はそれぞれ2mmであった。
【0100】
隔離板の調製:両面塗布されたステンレス鋼隔離板基材を冷間プレスロールで冷間プレスし、隔離板が得られ、隔離板の厚さは230μmであった。
【0101】
<負極極片の調製>
負極活物質である黒鉛(Graphite)、導電性カーボンブラック(Super P)、ブタジエン-スチレンゴム(SBR)を重量比96:1.5:2.5で混合し、そして溶媒として脱イオン水を入れ、固形分が70%であるスラリーに調製し、均一に撹拌した。スラリーを厚さ10μmの銅箔の一方の表面上に均一に塗布し、110℃の条件下で乾燥し、塗布層の厚さが150μmである片面に負極活物質層が塗布された負極極片が得られた。そして当該負極極片のもう一方の表面上に以上の塗布ステップを繰り返し、両面に負極活物質層が塗布された負極極片が得られた。負極極片を41mm~61mmのサイズに切り出した。
【0102】
<正極極片の調製>
正極活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO2)、導電性カーボンブラック(Super P)、PVDFを重量比97.5:1.0:1.5で混合し、そして溶媒としてNMPを入れ、固形分が75%であるスラリーに調製し、均一に撹拌した。スラリーを厚さ12μmのアルミニウム箔の一方の表面上に均一に塗布し、90℃の条件下で乾燥し、塗布層の厚さが100μmである正極極片が得られた。そして当該正極極片のもう一方の表面上に以上の塗布ステップを繰り返し、両面に正極活物質層が塗布された正極極片が得られた。正極極片を38mm~58mmのサイズに切り出した。
【0103】
<電解液の調製>
乾燥したアルゴンガス雰囲気で、有機溶媒であるエチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジエチルカーボネート(DEC)を質量比30:50:20で混合し、そして有機溶媒にヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を溶解させ、均一に混合し、電解液が得られた。ここで、電解液におけるLiPF6のモル濃度は1.15mol/Lであった。
【0104】
<電極組立体の調製>
<第一電極組立体の調製>
厚さ15μmのポリエチレン(PE)フィルムをセパレーターとし、負極極片の両面にそれぞれ一つの正極極片を配置し、正極極片と負極極片との間に一層のセパレーターを配置し、ラミネートが構成された。そして、全ラミネート構造の四つの角をよく固定し、第一電極組立体が得られた。第一電極組立体は、一つの正極タブ及び一つの負極タブという二つのタブを備えた。
【0105】
<第二電極組立体の調製>
第二電極組立体は、第一電極組立体の調製と類似な方法で調製され、正極極片の両面にそれぞれ一つの負極極片を配置し、正極極片と負極極片との間に一層のセパレーターを配置し、ラミネートが構成された。そして、全ラミネート構造の四つの角をよく固定し、第二電極組立体が得られた。第二電極組立体は、第一電極組立体と同様に、一つの正極タブ及び一つの負極タブという二つのタブを備えた。
【0106】
<電極組立体の組み立て>
パンチング成形(Scouring-pit forming)された厚さ90μmのアルミニウムプラスチックフィルムのピットの凹面を上向きにして置き、第一電極組立体を、第一電極組立体の正極極片を上向きにするようにアルミニウムプラスチックフィルムのピットに置き、そして、隔離板を、負極膜を下向きにするように第一電極組立体上に置き、第一電極組立体の正極極片が隔離板の負極膜と対応するようにし、圧縮して、第一組立て部品が得られた。
【0107】
第一組立て部品に対して、その隔離板的正極膜を上向きにして、第二電極組立体を、負極極片を下向きにするように正極膜上に置き、第二電極組立体の負極極片が隔離板の正極膜と対応するようにし、そしてパンチング成形されたもう一つの厚さ90μmのアルミニウムプラスチックフィルムのピットの凹面を下向きにして、第二電極組立体を覆い、さらにホットプレスの方式で二つのアルミニウムプラスチックフィルムをヒートシールし、第一電極組立体及び第二電極組立体が隔離板によって分かれるようにし、組み立てた電極組立体が得られた。組み立てた電極組立体は二つの独立したチャンバーを有し、ここで、第一電極組立体は第一チャンバーに対応し、第二電極組立体は第二チャンバーに対応し、そして、第一電極組立体及び第二電極組立体の正、負極タブはいずれも包装パックから引き出された。
【0108】
<電極組立体の注液包装>
電解液を組み立てた電極組立体の二つのチャンバーにそれぞれ注液した後に包装し、この時、第一電極組立体は第一電気化学セルとなり、第二電極組立体は第二電気化学セルとなり、第一電気化学セルの正極タブと第二電気化学セルの負極タブとを直列で接続し、直列接続リチウムイオン電池が得られ、当該直列接続リチウムイオン電池の二つのチャンバーの間ではイオン交換はなかった。
【0109】
直列接続リチウムイオン電池を充放電する際に、第一電気化学セルの負極タブと第二電気化学セルの正極タブとを接続する。なお、直列接続された後のタブは、直列リチウムイオン電池の電圧監視電極としてキープしてもよく、又は、直列接続された後のタブは、絶縁で直列接続リチウムイオン電池内に埋めてもよい。
【0110】
実施例2
絶縁層の電気抵抗率は2.70×1010であり、絶縁セラミック材料はAl2O3を用いること以外、実施例1と同様であった。
【0111】
実施例3
絶縁層の電気抵抗率は3.50×1013であること以外、実施例2と同様であった。
【0112】
実施例4
絶縁層の電気抵抗率は3.60×10
13であり、Dx及びDyはそれぞれ2mmであり、
[式8]
はそれぞれ0mmであること以外、実施例2と同様であった。
【0113】
実施例5
絶縁層の電気抵抗率は3.30×10
13であり、Dx及びDyはそれぞれ0.5mmであり、
[式9]
はそれぞれ0mmであること以外、実施例2と同様であった。
【0114】
実施例6
絶縁層の電気抵抗率は3.40×10
13であり、Dx及びDyはそれぞれ2mmであり、
[式10]
はそれぞれ1mmであること以外、実施例2と同様であった。
【0115】
実施例7
絶縁層の電気抵抗率は3.40×10
13であり、
[式11]
はそれぞれ4.5mmであること以外、実施例2と同様であった。
【0116】
実施例8
絶縁層の電気抵抗率は3.50×10
13であり、Dx及びDyはそれぞれ2mmであり、
[式12]
はそれぞれ1mmであり、D3は1mmであること以外、実施例2と同様であった。
【0117】
実施例9
絶縁層の電気抵抗率は3.40×1013であり、D3は3mmであること以外、実施例8と同様であった。
【0118】
実施例10
絶縁層の電気抵抗率は3.30×1013であり、D3は20mmであること以外、実施例8と同様であった。
【0119】
実施例11
絶縁層の電気抵抗率は5.70×109であり、絶縁セラミック材料はZnOであること以外、実施例9と同様であった。
【0120】
実施例12
絶縁層の電気抵抗率は8.30×1012であり、絶縁セラミック材料はAl2O3であり、接着剤はポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレンであること以外、実施例11と同様であった。
【0121】
実施例13
絶縁セラミック粒子の平均粒子径は15μmであり、絶縁層の平均ポアサイズは50μmであること以外、実施例9と同様であった。
【0122】
実施例14
絶縁層の孔隙率は30%であること以外、実施例13と同様であった。
【0123】
実施例15
絶縁層の電気抵抗率は3.50×1013であり、絶縁セラミック粒子の平均粒子径は5μmであり、絶縁層の平均ポアサイズは15μmであること以外、実施例14と同様であった。
【0124】
比較例1
<負極極片の調製>
負極活物質である黒鉛(Graphite)、導電性カーボンブラック(Super P)、ブタジエン-スチレンゴム(SBR)を重量比96:1.5:2.5で混合し、そして溶媒として脱イオン水を入れ、固形分が70%であるスラリーに調製し、均一に撹拌し、スラリーを厚さ10μmの銅箔の一方の表面上に均一に塗布し、110℃の条件下で乾燥し、塗布層の厚さが150μmである片面に負極活物質層が塗布された負極極片が得られた。そして当該負極極片のもう一方の表面上に以上の塗布ステップを繰り返し、両面に負極活物質層が塗布された負極極片が得られた。負極極片を41mm~61mmのサイズに切り出した。
【0125】
<正極極片の調製>
正極活物質であるコバルト酸リチウム(LiCoO2)、導電性カーボンブラック(Super P)、PVDFを重量比97.5:1.0:1.5で混合し、そして溶媒としてNMPを入れ、固形分が75%であるスラリーに調製し、均一に撹拌した。スラリーを厚さ12μmのアルミニウム箔の一方の表面上に均一に塗布し、90℃の条件下で乾燥し、塗布層の厚さが100μmである正極極片が得られた。そして当該正極極片のもう一方の表面上に以上の塗布ステップを繰り返し、両面に正極活物質層が塗布された正極極片が得られた。正極極片を38mm~58mmのサイズに切り出した。
【0126】
<電解液の調製>
乾燥したアルゴンガス雰囲気で、有機溶媒であるエチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジエチルカーボネート(DEC)を質量比30:50:20で混合し、そして有機溶媒にヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を溶解させ、均一に混合し、電解液が得られた。ここで、電解液におけるLiPF6のモル濃度は1.15mol/Lであった。
【0127】
<電気化学セルの調製>
負極極片と正極極片と積層してラミネートにし、正極極片と負極極片の間にはセパレーターとして厚さ15μmのポリエチレン(PE)膜が選択され、そしてテープでラミネート構造の四つの角を固定して、アルミニウムプラスチックフィルムに置き、トップサイドシールを経て、電解液を注入し、包装した後、電気化学セルを得た。
同様な方法で少なくとも二つの電気化学セルを調製し、それぞれ第一電気化学セル及び第二電気化学セルとした。
【0128】
<直列接続リチウムイオン電池の調製>
第一電気化学セルの負極と第二電気化学セルの正極とを導線で直列接続し、直列接続リチウムイオン電池を得た。
【0129】
比較例2
第一電極組立体及び第二電極組立体の間の隔離板はステンレス鋼箔隔離板を使用した以外、実施例1と同様であった。ここで、ステンレス鋼箔の厚さは約20μmであった。
【0130】
比較例3
隔離板が絶縁層を含まないこと以外、実施例1と同様であった。
【0131】
<特性試験>
以下の方法で各実施例及び各比較例で得られた直列接続リチウムイオン電池を測定した。
01C放電エネルギー密度試験:
まず、0.5Cで8.90Vまで充電し、そして定電圧で0.025Cまで充電し、5分静置した後に0.1Cで6.0Vまで放電し、その放電容量を記録し、そして、エネルギー密度(Wh/kg)=放電容量(Wh)/電気化学装置重量(kg)という公式で01C放電エネルギー密度を算出した。
【0132】
サイクル試験:
試験温度は25℃であり、0.5Cの定電流で8.90Vまで充電し、定電圧で0.025Cまで充電し、5分静置した後に0.5Cで6.0Vまで放電し、このステップで得られた容量を初期容量とし、さらに0.5C充電/0.5C放電のサイクルを50回測定した後、初期容量に対するリチウムイオン電池の容量の比を算出した。
【0133】
落下試験:
1)リチウムイオン電池サンプルを高さ1.5メートルのところから滑らかな大理石の表面に自由落下させた。
2)落下後のリチウムイオン電池の正極の縁にある隔離板の折り曲げた部分の破損状況をチェックした。
3)20グループのサンプルを測定し、破損したサンプル数を記録した。
【0134】
自己放電特性試験:
リチウムイオン電池の容量を測定した後、室温下で48h静置し、その電圧をV1として測定した。そして、上記のリチウムイオン電池をさらに48h静置した後、その電圧をV2として測定し、そして、リチウムイオン電池の自己放電特性のK値はK=(V1-V2)/48、単位mV/hという公式により算出された。
【0135】
表1 各実施例と比較例の試験パラメータ及び対応の実験結果
【表1】
【0136】
実施例1~15及び比較例1~2から分かるように、本発明の双極性隔離板を有するリチウムイオン電池は放電エネルギー密度が著しく改善された。
【0137】
実施例1~15及び比較例3から分かるように、本発明の双極性隔離板を有するリチウムイオン電池はサイクル容量維持率が改善された。
【0138】
実施例1~15及び比較例3から分かるように、本発明の双極性隔離板を有するリチウムイオン電池は、落下試験後に正極の縁にある隔離板の折り曲げた部分がより破損しにくくなり、リチウムイオン電池の安全性が向上した。
【0139】
実施例1~15及び比較例1~3から分かるように、本発明の双極性隔離板を有するリチウムイオン電池は自己放電状況が大幅に改善された。
【0140】
実施例1~3から分かるように、リチウムイオン電池のサイクル容量維持率は絶縁層的電気抵抗率の増加につれて増加し、自己放電状況は絶縁層的電気抵抗率の増加につれて改善された。
【0141】
上記のものは本発明の好ましい実施例だけで、本発明を限定するためではなく、本発明の主旨と原則の範囲内で行われた変更、同等の代替、改善などは、本発明の保護の範囲に含まれるものとする。