(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】貼付剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/573 20060101AFI20231005BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20231005BHJP
A61K 31/215 20060101ALI20231005BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231005BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20231005BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20231005BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231005BHJP
【FI】
A61K31/573
A61K9/70 401
A61K31/215
A61K45/00
A61K47/32
A61K47/34
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2022176217
(22)【出願日】2022-11-02
(62)【分割の表示】P 2020568603の分割
【原出願日】2020-01-30
【審査請求日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2019015562
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000160522
【氏名又は名称】久光製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【氏名又は名称】木元 克輔
(72)【発明者】
【氏名】黒川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】隈 秀和
(72)【発明者】
【氏名】行弘 政樹
【審査官】篭島 福太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-053354(JP,A)
【文献】特許第6748237(JP,B2)
【文献】国際公開第2013/061969(WO,A1)
【文献】米国特許第05916587(US,A)
【文献】特開2011-241211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00-33/44
A61K 47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に粘着剤層を備える貼付剤であって、
前記粘着剤層が、粘着基剤と、皮膚刺激性薬物又はその薬学的に許容可能な塩と、ジフルコルトロン吉草酸エステルと、を含有し、
前記ジフルコルトロン吉草酸エステルの含有量が前記粘着剤層の全質量基準で0.0009~0.08質量%であり、
前記皮膚刺激性薬物が、HWY:Slcラットの背部皮膚に貼付剤を24時間貼付し、これを剥離してから0.5時間後の時点の貼付部位の皮膚を観察し、以下の基準にしたがってスコア化して得た平均スコアが0.1~2.0である薬物である、貼付剤(但し、オキシブチニン及びその薬学的に許容される塩からなる群から選択される少なくとも1種の薬物を含有する貼付剤、及び、クロタミトンを含有する貼付剤を除く。)。
(1)紅斑及び痂皮形成
0:紅斑なし
1:非常に軽微な紅斑
2:はっきりした紅斑
3:中等度ないし高度紅斑
4:高度紅斑からわずかな痂皮の形成まで
(2)浮腫形成
0:浮腫なし
1:非常に軽微な浮腫
2:軽度浮腫
3:中等度浮腫
4:高度浮腫
【請求項2】
前記粘着基剤が、ゴム系粘着基剤、アクリル系粘着基剤及びシリコーン系粘着基剤からなる群から選択される少なくとも1種の粘着基剤を含む、請求項1に記載の貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
貼付剤等の経皮吸収製剤は、薬物が皮膚を透過して直接血管に到達させることができるため、消化管酵素による分解、肝臓による初回通過効果等の経口投与のデメリットを回避することができ、投与回数の減少、服薬コンプライアンスの向上、容易に投薬の切り替えを行うことができる等のメリットを備えている。使用者が高齢者や小児の場合には、特にそのメリットが重要となる。
【0003】
しかし、経皮吸収製剤は、薬物が皮膚に直接接触することにより、掻痒、紅斑、発疹、疼痛、湿疹、皮膚炎等の症状(以下、「皮膚刺激」ともいう。)を発現する場合がある。そのため、様々な製剤検討がなされてきた。例えば、貼付剤の構造としては、支持体層、薬物貯留層、粘着剤層等の複数の層で構成される多層型貼付剤(例えば、特許文献1、2参照)と、粘着剤層が薬物を含有する二層型貼付剤(例えば、特許文献3参照)が挙げられる。
【0004】
多層型貼付剤は、薬物を含有する薬物貯留層と皮膚とが接着剤層で隔てられており、皮膚に適用した場合であっても、薬物による皮膚刺激が発現しにくい。しかし、多層型貼付剤は貼付剤全体の厚みが増すために、使用中の脱落しやすさ、保存用包装材の内層への付着等の新たな問題が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2007/064407号
【文献】国際公開第2015/087926号
【文献】国際公開第2010/098230号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記事情に鑑み、薬物による皮膚刺激及び皮膚萎縮を低減した貼付剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1] 支持体上に粘着剤層を備える貼付剤であって、粘着剤層が、粘着基剤と、皮膚刺激性薬物又はその薬学的に許容可能な塩と、ジフルコルトロン吉草酸エステルと、を含有し、ジフルコルトロン吉草酸エステルの含有量が粘着剤層の全質量基準で0.0009~0.08質量%である、貼付剤。
[2] 粘着基剤が、ゴム系粘着基剤、アクリル系粘着基剤及びシリコーン系粘着基剤からなる群から選択される少なくとも1種の粘着基剤を含む、[1]に記載の貼付剤。
[3-1] 皮膚刺激性薬物又はその薬学的に許容可能な塩がアセナピン又はその薬学的に許容可能な塩であり、アセナピン又はその薬学的に許容可能な塩の含有量がアセナピン遊離体の質量に換算した場合に、粘着剤層の全質量基準で、1~25質量%である、[1]又は[2]に記載の貼付剤。
[3-2] 皮膚刺激性薬物又はその薬学的に許容可能な塩がリバスチグミンであり、リバスチグミンの含有量が粘着剤層の全質量基準で、6~30質量%である、[1]又は[2]に記載の貼付剤。
[3-3] 皮膚刺激性薬物又はその薬学的に許容可能な塩がロチゴチンであり、ロチゴチンの含有量が粘着剤層の全質量基準で、5~15質量%である、[1]又は[2]に記載の貼付剤。
[3-4] 皮膚刺激性薬物又はその薬学的に許容可能な塩がメマンチン又はその薬学的に許容可能な塩であり、メマンチン又はその薬学的に許容可能な塩の含有量がメマンチン遊離体の質量に換算した場合に、粘着剤層の全質量基準で、0.1~50質量%である、[1]又は[2]に記載の貼付剤。
[3-5] 皮膚刺激性薬物又はその薬学的に許容可能な塩がアムロジピン又はその薬学的に許容可能な塩であり、アムロジピン又はその薬学的に許容可能な塩の含有量がアムロジピン遊離体の質量に換算した場合に、粘着剤層の全質量基準で、0.1~40質量%である、[1]又は[2]に記載の貼付剤。
[3-6] 皮膚刺激性薬物又はその薬学的に許容可能な塩がロピニロール又はその薬学的に許容可能な塩であり、ロピニロール又はその薬学的に許容可能な塩の含有量がロピニロール遊離体の質量に換算した場合に、粘着剤層の全質量基準で、0.5~50質量%である、[1]又は[2]に記載の貼付剤。
[4-1] 皮膚刺激性薬物又はその薬学的に許容可能な塩がマレイン酸アセナピンであり、粘着剤層に含有されるジフルコルトロン吉草酸エステルの含有量は、粘着剤層の全質量基準で、0.0009~0.08質量%である、[1]、[2]又は[3-1]に記載の貼付剤。
[4-2] 皮膚刺激性薬物又はその薬学的に許容可能な塩がリバスチグミンであり、粘着剤層に含有されるジフルコルトロン吉草酸エステルの含有量は、粘着剤層の全質量基準で、0.0009~0.08質量%である、[1]、[2]又は[3-2]に記載の貼付剤。
[4-3] 皮膚刺激性薬物又はその薬学的に許容可能な塩がロチゴチンであり、粘着剤層に含有されるジフルコルトロン吉草酸エステルの含有量は、粘着剤層の全質量基準で、0.0005~0.08質量%である、[1]、[2]又は[3-3]に記載の貼付剤。
[4-4] 皮膚刺激性薬物又はその薬学的に許容可能な塩が塩酸メマンチンであり、粘着剤層に含有されるジフルコルトロン吉草酸エステルの含有量は、粘着剤層の全質量基準で、0.0009~0.08質量%である、[1]、[2]又は[3-4]に記載の貼付剤。
[4-5] 皮膚刺激性薬物又はその薬学的に許容可能な塩がベシル酸アムロジピンであり、粘着剤層に含有されるジフルコルトロン吉草酸エステルの含有量は、粘着剤層の全質量基準で、0.0005~0.08質量%である、[1]、[2]又は[3-5]に記載の貼付剤。
[4-6] 皮膚刺激性薬物又はその薬学的に許容可能な塩が塩酸ロピニロールであり、粘着剤層に含有されるジフルコルトロン吉草酸エステルの含有量は、粘着剤層の全質量基準で、0.0009~0.08質量%である、[1]、[2]又は[3-6]に記載の貼付剤。
[5-1] 皮膚刺激性薬物又はその薬学的に許容可能な塩がマレイン酸アセナピンであり、粘着剤層に含有されるマレイン酸アセナピンとジフルコルトロン吉草酸エステルの質量比が、12.5:1~27778:1である、[1]、[2]又は[3-1]に記載の貼付剤。
[5-2] 皮膚刺激性薬物又はその薬学的に許容可能な塩がリバスチグミンであり、粘着剤層に含有されるリバスチグミンとジフルコルトロン吉草酸エステルの質量比が、75:1~33333:1である、[1]、[2]又は[3-2]に記載の貼付剤。
[5-3] 皮膚刺激性薬物又はその薬学的に許容可能な塩がロチゴチンであり、粘着剤層に含有されるロチゴチンとジフルコルトロン吉草酸エステルの質量比が、62.5:1~20000:1である、[1]、[2]又は[3-3]に記載の貼付剤。
[5-4] 皮膚刺激性薬物又はその薬学的に許容可能な塩が塩酸メマンチンであり、粘着剤層に含有される塩酸メマンチンとジフルコルトロン吉草酸エステルの質量比が、1.25:1~55556:1である、[1]、[2]又は[3-4]に記載の貼付剤。
[5-5] 皮膚刺激性薬物又はその薬学的に許容可能な塩がベシル酸アムロジピンであり、粘着剤層に含有されるベシル酸アムロジピンとジフルコルトロン吉草酸エステルの質量比が、1.25:1~44444:1である、[1]、[2]又は[3-5]に記載の貼付剤。
[5-6] 皮膚刺激性薬物又はその薬学的に許容可能な塩が塩酸ロピニロールであり、粘着剤層に含有される塩酸ロピニロールとジフルコルトロン吉草酸エステルの質量比が、6.25:1~55556:1である、[1]、[2]又は[3-6]に記載の貼付剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、薬物による皮膚刺激及び皮膚萎縮を低減した貼付剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、「皮膚刺激」とは、任意の薬物を含有する貼付剤を皮膚に適用した場合に、当該適用部位に生じる皮膚刺激を意味し、具体的には、掻痒、紅斑、発疹、疼痛、湿疹、皮膚炎等の皮膚症状を示す。また、皮膚刺激の程度は、紅斑及び浮腫の程度をスコア化して基準として評価できる。
【0010】
本明細書において、「皮膚萎縮」とは、ステロイドを皮膚に適用した場合に、適用部位の表皮が、通常の表皮(ステロイドの影響を受けていない状態における表皮の厚み)と比較して薄くなる症状を意味する。また、皮膚萎縮の程度は、貼付剤を皮膚に適用した後の表皮の厚みが、通常の表皮の厚みと比較して50%以下であるかどうかを基準として評価できる。
【0011】
本発明における「皮膚刺激の低減」及び「皮膚萎縮の低減」は、例えば、実施例に記載した方法により、相対的に評価される。
【0012】
本発明の一実施形態に係る貼付剤は、支持体上に粘着剤層を備える貼付剤であって、粘着剤層が、粘着基剤と、皮膚刺激性薬物又はその薬学的に許容可能な塩と、ジフルコルトロン吉草酸エステルと、を含有する。
【0013】
支持体は、粘着剤層を物理的に支持する層である。支持体の材質は、貼付剤に一般的に使用されているものであれば限定されない。支持体の材質としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;及びエチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ナイロン、セルロース誘導体、ポリウレタン等の合成樹脂が挙げられる。支持体の性状は、フィルム、シート、シート状多孔質体、シート状発泡体、織布、編布、不織布又はこれらの積層体であってよい。
【0014】
粘着剤層は、粘着基剤と、皮膚刺激性薬物又はその薬学的に許容可能な塩と、ジフルコルトロン吉草酸エステルと、を含有する。但し、本明細書において、皮膚刺激性薬物は、オキシブチニンではない。
【0015】
粘着基剤は、貼付剤に一般的に使用されているものであればよく、例えば、ゴム系粘着基剤、アクリル系粘着基剤及びシリコーン系粘着基剤が挙げられる。複数の粘着基剤を組み合わせて使用してもよい。好ましい粘着基剤は、ゴム系粘着基剤、アクリル系粘着基剤又はこれらの混合物である。
【0016】
ゴム系粘着基剤は、天然又は合成ゴムを主体とする高分子であってよく、例えば、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SISブロック共重合体)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンゴム、又はスチレン-イソプレンゴムである。
【0017】
アクリル系粘着基剤として、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体又は(メタ)アクリル酸アルキルエステルとコモノマーとの共重合体が挙げられる。ここで、「(メタ)アクリル酸」及びこれに類する表現は、アクリル酸、メタクリル酸、及びこれらの両方を意味し、アルキル基は炭素原子数1~20のアルキル基、好ましくは炭素原子数3~12のアルキル基である。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、及び(メタ)アクリル酸デシルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。コモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、エチレン、プロピレン、スチレン、酢酸ビニル、N-ビニルピロリドン、及び(メタ)アクリル酸アミドが挙げられる。コモノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。アクリル系粘着基剤としては、具体的には、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、酢酸ビニル、メタクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メトキシエチルアクリレート、及びアクリル酸から選ばれる少なくとも2種類を含む共重合体からなるものが挙げられる。具体例としては、DURO-TAK 87-2097、87-2194、87-2196、87-2287、87-2516及び87-2852(商品名、ヘンケル)、MAS811(商品名、コスメディ製薬(株)製)、PLASTOID B(商品名、Rohm Pharm Polymers社製)並びにニッセツKP-77及びAS-370(商品名、日本カーバイド工業(株))が挙げられる。
【0018】
アクリル系粘着基剤は、官能基を有しないアクリル粘着基剤であってもよく、官能基を有するアクリル粘着基剤であってもよい。「官能基」とは、炭素原子及び水素原子以外の元素を含む基であり、例えば、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシ基(塩も含む)、2-オキソピロリジニル基、アセトキシ基、アミド基、グリシジル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、第4級アンモニウムである。このような官能基は、主にコモノマーの化学構造に由来する。
【0019】
シリコーン系粘着基剤として、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサンとシリケート樹脂との縮合反応物等のオルガノポリシロキサンが挙げられる。シリコーン系粘着基剤として、具体的には、BIO-PSA X7-4201、BIO-PSA Q7-4501、360Medical fluid 1000CS、及びMDX4-4210(商品名、ダウ・コーニング社)が挙げられる。
【0020】
粘着基剤の含有量は、例えば、粘着剤層の全質量基準で、5~90質量%であることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましく、10~30質量%であることが更に好ましい。
【0021】
皮膚刺激性薬物は、皮膚刺激性及び経皮吸収性を示す薬物(遊離体)であれば特に限定されない。本発明における「皮膚刺激性薬物又はその薬学的に許容可能な塩」とは、後述する試験例1に記載のとおり、HWY:Slcラットに貼付剤を貼付した後、貼付剤を剥離してから0.5時間後の時点で、Draizeらの判定基準(参考文献:Draize JHら、J.Pharmacol.Exp.Ther.1944:82:377-390)に基づく平均スコアが0.1~2.0である薬物を意味する。
【0022】
皮膚刺激性薬物又はその薬学的に許容可能な塩としては、例えば、解熱消炎鎖痛剤(インドメタシン等)、抗炎症剤(カプサイシン、トウガラシエキス等)、精神神経用剤(臭化水素酸シタロプラム、マレイン酸アセナピン、リスペリドン等)、局所麻酔剤(塩酸リドカイン等)、泌尿器官用剤(トルテロジン等)、抗パーキンソン病剤(塩酸ロピニロール、ロチゴチン等)、禁煙補助薬(ニコチン等)、循環器官用剤(ベシル酸アムロジピン等)、抗アレルギー剤(フマル酸ケトチフェン等)、抗アルツハイマー剤(塩酸ドネペジル、リバスチグミン、塩酸メマンチン等)、骨格筋脂環剤(塩酸チザニジン等)、プロスタサイクリン受容体作動薬(セレキシパグ等)、興奮・覚醒剤(塩酸メタンフェタミン、塩酸メチルフェニデート等)が挙げられる。これらの薬物又はその薬学的に許容可能な塩は、当該薬物の遊離体のみ、当該薬物の薬学的に許容可能な塩のみ、又はこれらの混合物であってもよい。
【0023】
皮膚刺激性薬物又はその薬学的に許容可能な塩の含有量は、その薬物の有効血中濃度を確保できる量であればよい。皮膚刺激性薬物の含有量が規定の範囲の下限未満の場合には、皮膚透過量が減少する傾向にあるために貼付剤の面積を大きくする必要が生じ、他方、前記上限を超える場合には、皮膚刺激等の局所における副作用が生じたり、皮膚への付着力、タック性等の粘着物性が低下する傾向にある。
【0024】
皮膚刺激性薬物の薬学的に許容可能な塩がマレイン酸アセナピンである場合、その含有量は、アセナピン遊離体の質量に換算した場合に、粘着剤層の全質量基準で、1~25質量%、1~15質量%、1.5~12質量%、2~10質量%、3~8質量%、又は4~7質量%であってよい。
【0025】
皮膚刺激性薬物がリバスチグミンである場合、その含有量は粘着剤層の全質量基準で、6~30質量%、10~30質量%、又は20~30質量%であってよい。
【0026】
皮膚刺激性薬物がロチゴチンの場合、その含有量は粘着剤層の全質量基準で、5~15質量%、7~12質量%、又は8~10質量%であってよい。
【0027】
皮膚刺激性薬物の薬学的に許容可能な塩が塩酸メマンチンである場合、その含有量は、メマンチン遊離体の質量に換算した場合に、粘着剤層の全質量基準で、0.1~50質量%、5~45質量%、10~40質量%、10~30質量%、11~20質量%、又は12~15質量%であってよい。
【0028】
皮膚刺激性薬物の薬学的に許容可能な塩がベシル酸アムロジピンである場合、その含有量は、アムロジピン遊離体の質量に換算した場合に、粘着剤層の全質量基準で、0.1~40質量%、0.2~30質量%、0.5~20質量%、0.6~10質量%、0.8~8質量%、又は1~5質量%であってよい。
【0029】
皮膚刺激性薬物の薬学的に許容可能な塩が塩酸ロピニロールである場合、その含有量は、ロピニロール遊離体の質量に換算した場合に、粘着剤層の全質量基準で、0.5~50質量%、5~30質量%、10~20質量%、又は12~20質量%であってよい。
【0030】
ジフルコルトロン吉草酸エステルは、6α,9-ジフルオロ-11β-ヒドロキシ-21-バレリルオキシ-16α-メチル-1,4-プレグナジエン-3,20-ジオンとも呼ばれる。ジフルコルトロン吉草酸エステルは、合成副腎皮質ホルモン作用を有するステロイドの一種であり、他のステロイドと同様、抗炎症作用を有する。日本のアトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018によれば、ジフルコルトロン吉草酸エステルは、ステロイドの5分類のうち、II類(Very Strong)に属する。
【0031】
ジフルコルトロン吉草酸エステルの含有量は、粘着剤層の全質量基準で、0.0009~0.08質量%であればよく、0.0009~0.05質量%であることが好ましい。ジフルコルトロン吉草酸エステルの含有量が0.0009質量%以上であると、薬物による皮膚刺激をより軽減しやすい傾向がある。ジフルコルトロン吉草酸エステルの含有量が0.08質量%以下であると、貼付部位における皮膚萎縮をより生じにくくなる。
【0032】
皮膚刺激性薬物の薬学的に許容可能な塩がマレイン酸アセナピンである場合、ジフルコルトロン吉草酸エステルの含有量は、粘着剤層の全質量基準で、0.0009~0.08質量%であればよく、0.0009~0.05質量%であることが好ましい。ジフルコルトロン吉草酸エステルの含有量が0.0009質量%以上であると、薬物による皮膚刺激をより軽減しやすい傾向がある。ジフルコルトロン吉草酸エステルの含有量が0.08質量%以下であると、貼付部位における皮膚萎縮をより生じにくくなる。
【0033】
皮膚刺激性薬物がリバスチグミンである場合、ジフルコルトロン吉草酸エステルの含有量は、粘着剤層の全質量基準で、0.0009~0.08質量%であればよく、0.0009~0.05質量%であることが好ましい。ジフルコルトロン吉草酸エステルの含有量が0.0009質量%以上であると、薬物による皮膚刺激をより軽減しやすい傾向がある。ジフルコルトロン吉草酸エステルの含有量が0.08質量%以下であると、貼付部位における皮膚萎縮をより生じにくくなる。
【0034】
皮膚刺激性薬物がロチゴチンである場合、ジフルコルトロン吉草酸エステルの含有量は、粘着剤層の全質量基準で、0.0005~0.08質量%であればよく、0.0005~0.05質量%であることが好ましい。ジフルコルトロン吉草酸エステルの含有量が0.0005質量%以上であると、薬物による皮膚刺激をより軽減しやすい傾向がある。ジフルコルトロン吉草酸エステルの含有量が0.08質量%以下であると、貼付部位における皮膚委縮をより生じにくくなる。
【0035】
皮膚刺激性薬物の薬学的に許容可能な塩が塩酸メマンチンである場合、ジフルコルトロン吉草酸エステルの含有量は、粘着剤層の全質量基準で、0.0009~0.08質量%であればよく、0.0009~0.05質量%であることが好ましい。ジフルコルトロン吉草酸エステルの含有量が0.0009質量%以上であると、薬物による皮膚刺激をより軽減しやすい傾向がある。ジフルコルトロン吉草酸エステルの含有量が0.08質量%以下であると、貼付部位における皮膚萎縮をより生じにくくなる。
【0036】
皮膚刺激性薬物の薬学的に許容可能な塩がベシル酸アムロジピンである場合、ジフルコルトロン吉草酸エステルの含有量は、粘着剤層の全質量基準で、0.0005~0.08質量%であればよく、0.0005~0.05質量%であることが好ましい。ジフルコルトロン吉草酸エステルの含有量が0.0005質量%以上であると、薬物による皮膚刺激をより軽減しやすい傾向がある。ジフルコルトロン吉草酸エステルの含有量が0.08質量%以下であると、貼付部位における皮膚萎縮をより生じにくくなる。
【0037】
皮膚刺激性薬物の薬学的に許容可能な塩が塩酸ロピニロールである場合、ジフルコルトロン吉草酸エステルの含有量は、粘着剤層の全質量基準で、0.0009~0.08質量%であればよく、0.0009~0.05質量%であることが好ましい。ジフルコルトロン吉草酸エステルの含有量が0.0009質量%以上であると、薬物による皮膚刺激をより軽減しやすい傾向がある。ジフルコルトロン吉草酸エステルの含有量が0.08質量%以下であると、貼付部位における皮膚萎縮をより生じにくくなる。
【0038】
また、粘着剤層に含有される皮膚刺激性薬物とジフルコルトロン吉草酸エステルの質量比は、以下の範囲であることが好ましい。粘着剤層が皮膚刺激性薬物の薬学的に許容される塩を含有する場合、その塩の含有量は、その塩全体の分子量を基準にして当該薬物の遊離体の質量に換算し、その遊離体とジフルコルトロン吉草酸エステルとの質量比を計算する。
【0039】
皮膚刺激性薬物の薬学的に許容可能な塩がマレイン酸アセナピンである場合は、粘着剤層に含有されるマレイン酸アセナピン(アセナピン遊離体の質量に換算される)とジフルコルトロン吉草酸エステルの質量比は、12.5:1~27778:1、12.5:1~16667:1、18.75:1~13333:1、40:1~10000:1、70:1~9000:1、又は100:1~8000:1、又は110:1~7000:1であることが好ましい。
【0040】
皮膚刺激性薬物がリバスチグミンである場合は、粘着剤層に含有されるリバスチグミンとジフルコルトロン吉草酸エステルの質量比は、75:1~33333:1、125:1~33333:1、300:1~30000:1、400:1~30000:1、又は400:1~26000:1であることが好ましい。
【0041】
皮膚刺激性薬物がロチゴチンである場合は、粘着剤層に含有されるロチゴチンとジフルコルトロン吉草酸エステルの質量比は、62.5:1~20000:1、62.5:1~18000:1、62.5:1~16667:1、87.5:1~13333:1、100:1~12000:1、150:1~11000:1、又は160:1~10000:1であることが好ましい。
【0042】
皮膚刺激性薬物の薬学的に許容可能な塩が塩酸メマンチンである場合は、粘着剤層に含有される塩酸メマンチン(メマンチン遊離体の質量に換算される)とジフルコルトロン吉草酸エステルの質量比は、1.25:1~55556:1、62.5:1~50000:1、140:1~45000:1、200:1~40000:1、220:1~25000:1、又は250:1~15000:1であることが好ましい。
【0043】
皮膚刺激性薬物の薬学的に許容可能な塩がベシル酸アムロジピンである場合は、粘着剤層に含有されるベシル酸アムロジピン(アムロジピン遊離体の質量に換算される)とジフルコルトロン吉草酸エステルの質量比は、1.25:1~44444:1、6.25:1~22222:1、20:1~5000:1、20:1~2000:1、又は20:1~1600:1であることが好ましい。
【0044】
皮膚刺激性薬物の薬学的に許容可能な塩が塩酸ロピニロールである場合は、粘着剤層に含有される塩酸ロピニロール(ロピニロール遊離体の質量に換算される)とジフルコルトロン吉草酸エステルの質量比は、6.25:1~55556:1、62.5:1~33333:1、200:1~30000:1、又は200:1~15000:1であることが好ましい。
【0045】
粘着剤層は、その他の成分(粘着付与剤、可塑剤、充填剤、安定化剤、薬物の経皮吸収促進剤、香料等)を更に含有してもよい。
【0046】
粘着付与剤として、例えば、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジンエステル樹脂、水素添加ロジンエステル樹脂、脂環族飽和炭化水素樹脂、及び石油系樹脂が挙げられる。テルペン樹脂は、水素添加されたテルペン樹脂であることが好ましい。テルペン樹脂として、例えば、α-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、及びテルペンフェノール樹脂が挙げられる。
【0047】
可塑剤として、例えば、パラフィンオイル(流動パラフィン等)、スクワラン、スクワレン、植物油類(オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油、ラッカセイ油、スペアミント油、ユーカリ油、ホホバ油、樟脳白油、ヒマワリ油、オレンジ油等)、エステル類(ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等)、及び液状ゴム(液状ポリブテン、液状イソプレンゴム等)が挙げられる。
【0048】
充填剤としては、例えば、金属化合物(酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、炭酸カルシウム等)、セラミクス(タルク、クレー、カオリン、シリカ、ハイドロキシアパタイト、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等)又は有機化合物(セルロース粉末、ステアリン酸塩等)の、粉末又はこれらを含む樹脂の短繊維が挙げられる。
【0049】
経皮吸収促進剤は、従来、皮膚での経皮吸収促進作用を有することが知られている化合物であればよい。経皮吸収促進剤としては、例えば、有機酸及びその塩(例えば、炭素原子数6~20の脂肪族カルボン酸(以下、「脂肪酸」ともいう。)及びその塩、ケイ皮酸及びその塩)、有機酸エステル(例えば、脂肪酸エステル、ケイ皮酸エステル)、有機酸アミド(例えば、脂肪酸アミド)、脂肪アルコール、多価アルコール、エーテル(例えば、脂肪エーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル)などが挙げられる。これらの吸収促進剤は、不飽和結合を有していてもよく、環状、直鎖状又は分枝状の化学構造であってもよい。また、経皮吸収促進剤は、モノテルペン系化合物、セスキテルペン系化合物、及び植物油(例えば、オリーブ油)であってもよい。これらの経皮吸収促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
かかる有機酸としては、脂肪族(モノ、ジ又はトリ)カルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、クエン酸(無水クエン酸を含む)、イソ酪酸、カプロン酸、カプリル酸、脂肪酸、乳酸、マレイン酸、ピルビン酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸等)、芳香族カルボン酸(例えば、フタル酸、サリチル酸、安息香酸、アセチルサリチル酸等)、ケイ皮酸、アルカンスルホン酸(例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸)、アルキルスルホン酸誘導体(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸、N-2-ヒドロキシエチルピペラジン-N’-2-エタンスルホン酸)、コール酸誘導体(例えば、デヒドロコール酸等)が挙げられる。これらの有機酸は、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩であってもよい。中でも、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸又はこれらの塩が好ましく、酢酸、酢酸ナトリウム又はクエン酸が特に好ましい。
【0051】
脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノ-ル酸、リノレン酸が挙げられる。
【0052】
有機酸エステルとしては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、乳酸セチル、乳酸ラウリル、サリチル酸メチル、サリチル酸エチレングリコール、ケイ皮酸メチル、脂肪酸エステルが挙げられる。脂肪酸エステルとしては、例えば、ラウリン酸メチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸セチルが挙げられる。脂肪酸エステルは、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油であってもよい。脂肪酸エステルの具体例としては、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノオレエー卜、ソルビタンモノラウレート、ショ糖モノラウレート、ポリソルベート20(商品名)、プロピレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、Span20、Span40、Span60、Span80、Span120(商品名)、Tween20、Tween21、Tween40、Tween60、Tween80(商品名)、NIKKOL HCO-60(商品名)が挙げられる。
【0053】
有機酸アミドとしては、例えば、脂肪酸アミド(例えば、ラウリン酸ジエタノールアミド)、ヘキサヒドロ-1-ドデシル-2H-アゼピン-2-オン(Azoneともいう。)及びその誘導体、ピロチオデカンが挙げられる。
【0054】
脂肪アルコールとは、炭素原子数6~20の脂肪族アルコールを意味する。脂肪アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、セチルアルコールが挙げられる。多価アルコールとしては、例えば、プロピレングリコールが挙げられる。
【0055】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテルが挙げられる。
【0056】
モノテルペン系化合物としては、例えば、ゲラニオール、チモール、オイゲノール、テルピネオール、l-メントール、ボルネオロール、d-リモネン、イソオイゲノール、イソボルネオール、ネロール、dl-カンフルが挙げられる。
【0057】
オレイルアルコール、ラウリルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリン酸ジエタノールアミド、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノオレエー卜、ソルビタンモノラウレート、プロピレングリコールモノラウレート、ポリオキシエチレンラウリルエーテル又はピロチオデカンがより好ましい。脂肪酸が好ましく、オレイン酸が特に好ましい。
【0058】
粘着剤層は、支持体とは反対側の、皮膚に接する面上に剥離ライナーを備えていてもよい。剥離ライナーは、貼付剤を使用する際に除去されるライナーであり、貼付剤に一般的に使用されているものであれば限定されない。剥離ライナーの材質としては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)等)、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン等)、及びセルロース化合物(紙等)が挙げられる。剥離ライナーは、上記材質の積層体からなるシート状であってよい。剥離ライナーの表面は、シリコーン又はフッ素化ポリオレフィン等により離型処理されていることが好ましい。
【0059】
本実施形態に係る貼付剤は、例えば、以下の方法により製造することができる。
1)粘着剤層の成分を秤り取り、必要に応じて加温及び溶媒添加を行い、混合し、均一化する。
2)得られた粘着剤組成物を、剥離ライナーの離型面に一定の厚さで展延し、必要に応じて乾燥して溶媒成分を除去し、粘着剤層を形成する。
3)粘着剤層の上に支持体を積層する。
4)所定の形状(例えば、短辺が3cm~14cmかつ長辺が7cm~20cmの矩形、又は直径が1cm~10cmの円形)に裁断する。
【実施例】
【0060】
以下に、本発明の貼付剤について、実施例及び比較例を用いてより詳細に説明する。
【0061】
<貼付剤の製造>
各表の記載にしたがい、所定量の各成分を混合し、均一な粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物を、ポリエチレンテレフタレート製のフィルム(剥離ライナー)に展延し、粘着剤層を形成した。粘着剤層の上にポリエチレンテレフタレートフィルム(支持体)を積層し、所定の形状に裁断して、実施例、比較例又は参考例の貼付剤を得た。なお、各表中、特記しない限り、数値は質量%を意味する。
【0062】
試験例1:皮膚刺激及び皮膚萎縮の評価
HWY:Slcラット(6~7週齢、雌性)を購入し、6日以上馴化させた。馴化期間中にラット背部に刈毛及び剃毛処置を施した。全ラットの中から一般状態及び皮膚状態の良好なラットを選抜し、体重が均等になるように群分けを実施した。各群のラットに対して、いずれか1つの貼付剤と、対照として比較例1の貼付剤とを適用した。具体的には、貼付日にラットの背部皮膚(剃毛領域)に貼付部位(約1.5cm×1.5cm又は約1cm×1cmの矩形)を設定し、その四隅にマーキングした。上記で得られた貼付剤を、マーキングした貼付部位にそれぞれ貼付した。貼付後、貼付部位を覆うようにメッシュ状粘着包帯を貼付し、さらにリント布を被せて粘着性伸縮包帯で固定した。貼付から24時間後、リント布、粘着包帯及び貼付剤を除去し、各群のラットにおける皮膚刺激の程度を評価した。また、皮膚刺激の程度を評価した後、貼付部位の皮膚を摘出して、皮膚切片標本を調製し、皮膚萎縮の程度を評価した。
【0063】
皮膚刺激の評価は、貼付剤を剥離してから0.5時間後に、Draizeらの判定基準(参考文献:Draize JHら、J.Pharmacol.Exp.Ther.1944:82:377-390)を参考にして実施した。具体的には、剥離してから0.5時間後の貼付部位の皮膚を観察することにより、(1)紅斑及び痂皮形成、並びに(2)浮腫形成の点から、以下の基準にしたがってスコア化し、各群についてその平均値を算出した。そして、対応する参考例(ステロイド剤を含有しない貼付剤)の平均スコアに対する実施例の平均スコアを相対値として算出した。すなわち、皮膚刺激の評価は、対応する参考例の貼付剤の平均スコアに基づく相対値として記録された。
【0064】
実施例又は比較例の平均スコアが、対応する参考例の平均スコアを基準として60%以下である場合を「A」と評価し、60%を超える場合を「B」と評価した。
【0065】
<Draizeらの判定基準>
(1)紅斑及び痂皮形成
0:紅斑なし
1:非常に軽微な紅斑(かろうじて識別できる程度)
2:はっきりした紅斑
3:中等度ないし高度紅斑
4:高度紅斑(beet redness)からわずかな痂皮の形成(深部損傷)まで
(2)浮腫形成
0:浮腫なし
1:非常に軽微な浮腫(かろうじて識別できる程度)
2:軽度浮腫(はっきりとした膨隆による明確な縁が識別できる程度)
3:中等度浮腫(約1mmの膨隆)
4:高度浮腫(1mm以上の膨隆と暴露範囲を超えた広がり)
【0066】
皮膚萎縮の評価は、皮膚刺激の評価後のラット(各群2匹)に対して実施した。各動物をイソフルラン吸入麻酔下で腹部大動脈から全採血した。採血後、各貼付部位を含む皮膚の表皮切片を採取し、得られた表皮切片を10%ホルマリン液で固定した。固定後の表皮切片のうち、貼付部位の中央部を切り出して、パラフィンを包埋後、ヘマトキシリン・エオシン染色(HE染色)を行い、得られた標本を、顕微鏡(商品名:BX50、OLYMPUS社製)を用いて観察した。顕微鏡にて撮影された標本の画像を画像解析ソフト(商品名:WinROOF ver7.3、三谷商事(株)製)を用いて解析し、表皮の厚みを計測した。各表皮切片につき、5か所で表皮の厚みを測定し、平均値を算出した。
【0067】
貼付部位の表皮の厚みが、貼付していない部位(正常皮膚)の表皮の厚みの50%を超える場合を「A」と評価し、50%以下である場合を「B」と評価した。
【0068】
マレイン酸アセナピンを含有する貼付剤について、試験1~6の結果を表1及び表2に示す。比較例1の貼付剤では、マレイン酸アセナピンによる皮膚刺激を十分に抑制できなかった。比較例2の貼付剤では、皮膚萎縮が観察された。
【0069】
【0070】
【0071】
ロチゴチンを含有する貼付剤について、試験7~10の結果を表3及び表4に示す。比較例3の貼付剤では、皮膚萎縮が観察された。
【0072】
【0073】
【0074】
ロチゴチンを含有する貼付剤について、試験33の結果を表5に示す。
【表5】
【0075】
リバスチグミンを含有する貼付剤について、試験11~16の結果を表6及び表7に示す。アクリル系粘着基剤Xは、官能基を有しないアクリル系粘着基剤であり、アクリル系粘着基剤Yは、カルボキシ基を有するアクリル系粘着基剤である。比較例4の貼付剤では、皮膚萎縮が観察された。
【0076】
【0077】
【0078】
塩酸メマンチンを含有する貼付剤について、試験17~20の結果を表8及び表9に示す。比較例5の貼付剤では、皮膚萎縮が観察された。
【0079】
【0080】
【0081】
塩酸メマンチンを含有する貼付剤について、試験29の結果を表10に示す。比較例8及び9の貼付剤では、皮膚刺激が十分に低減されなかった。
【0082】
【0083】
ベシル酸アムロジピンを含有する貼付剤について、試験21~24の結果を表11及び表12に示す。比較例6の貼付剤では、皮膚萎縮が観察された。
【0084】
【0085】
【0086】
ベシル酸アムロジピンを含有する貼付剤について、試験30の結果を表13に示す。実施例22及び23の貼付剤では、皮膚刺激が低減され、皮膚萎縮は観察されなかった。
【0087】
【0088】
塩酸ロピニロールを含有する貼付剤について、試験25~28の結果を表14及び表15に示す。比較例7の貼付剤では、皮膚萎縮が観察された。
【0089】
【0090】
【0091】
塩酸ロピニロールを含有する貼付剤について、試験31及び32の結果を表16及び表17に示す。比較例10~12の貼付剤では、皮膚刺激が十分に低減されなかった。
【0092】
【0093】