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特許7361204材料除去作業を行うための流体組成物及び方法
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  • 特許-材料除去作業を行うための流体組成物及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-04
(45)【発行日】2023-10-13
(54)【発明の名称】材料除去作業を行うための流体組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20231005BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20231005BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20231005BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20231005BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
C09K3/14 550Z
C09G1/02
B24B37/00 H
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022511269
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-25
(86)【国際出願番号】 US2020048230
(87)【国際公開番号】W WO2021041699
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-02-21
(31)【優先権主張番号】62/894,050
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593150863
【氏名又は名称】サン-ゴバン セラミックス アンド プラスティクス,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】SAINT-GOBAIN CERAMICS AND PLASTICS, INC.
【住所又は居所原語表記】One New Bond Street, Worcester, MA 01615, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フー、リン
(72)【発明者】
【氏名】シャーロック、ジェイソン エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ブイ、ロン フイ
(72)【発明者】
【氏名】ウォード、ダグラス イー.
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/217978(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0134873(US,A1)
【文献】米国特許第09416338(US,B2)
【文献】特表2009-505423(JP,A)
【文献】特表2011-503873(JP,A)
【文献】特開2007-208215(JP,A)
【文献】特開2001-013696(JP,A)
【文献】特開2009-163808(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0085209(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C09K 3/14
C09G 1/02
B24B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多価金属ホウ酸塩、少なくとも1つの酸化剤、及び溶媒を含む、流体組成物であって、
前記多価金属ホウ酸塩が、ホウ酸鉄(III)、ホウ酸銅(II)、又はそれらの任意の組合せを含み、
前記酸化剤が、過マンガン酸塩を含む、流体組成物。
【請求項2】
前記多価金属ホウ酸塩が、ホウ酸鉄(III)から本質的になる、請求項に記載の流体組成物。
【請求項3】
前記流体組成物が、研磨粒子を本質的に含まない、請求項1~のいずれか一項に記載の流体組成物。
【請求項4】
前記多価金属ホウ酸塩の量が、前記流体組成物の総重量に基づいて少なくとも0.01重量%、且つ前記流体組成物の総重量に基づいて20重量%以下である、請求項1~のいずれか一項に記載の流体組成物。
【請求項5】
前記流体組成物の多価金属イオン対ホウ素のモル比が、1:1~1:7の範囲である、請求項1~のいずれか一項に記載の流体組成物。
【請求項6】
前記酸化剤が、過マンガン酸カリウムを含む、請求項1または2に記載の流体組成物。
【請求項7】
前記流体組成物が、基板の化学機械研磨に適合している、請求項1~のいずれか一項に記載の流体組成物。
【請求項8】
前記基板が、III-V族化合物又はIV-IV族化合物を含む、請求項に記載の流体組成物。
【請求項9】
基板を研磨する方法であって、
流体組成物が、多価金属ホウ酸塩、少なくとも1つの酸化剤、及び水を含む、前記流体組成物を提供することと、
前記流体組成物を前記基板及び研磨パッドに接触させることと、
前記基板を研磨することと、
を含み、
前記多価金属ホウ酸塩が、ホウ酸鉄(III)、ホウ酸銅(II)、又はそれらの任意の組合せを含み、前記酸化剤が、過マンガン酸塩を含む、前記方法。
【請求項10】
前記流体組成物が、研磨粒子を本質的に含まない、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記流体組成物のpHが、5以下である、請求項又は10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の流体組成物を調製するのに適したキットであって、前記キットが第1のパッケージ及び第2のパッケージを含み、前記第1のパッケージが多価金属塩を含み、前記多価金属塩のアニオンが、硝酸塩、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、リン酸塩、又はそれらの任意の組合せを含み、前記第2のパッケージがホウ酸を含み、前記第1のパッケージ又は前記第2のパッケージが、前記酸化剤を更に含む、前記キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、材料除去作業を行うための流体組成物、具体的には、多価金属ホウ酸塩、酸化剤、及び溶媒を含む流体組成物と、材料除去作業を行う方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
研磨プロセス、例えば研磨パッドで基板を研磨するプロセスを補助する流体組成物は、例えば、ガラス、セラミック、又は金属材料の研磨のための多種多様な用途を有し、しばしば化学機械平坦化(chemical mechanical planarization:CMP)プロセスにおいて使用するために設計される。典型的なCMPプロセスでは、研磨される基板に対するスラリーの相対的運動は、基板の外面と化学的及び機械的に相互作用し、不要な材料を除去することによって、平坦化(研磨)プロセスを補助する。研磨は、低い表面粗度を有する所望の滑らかな外面が得られるまで行われる。研磨中に高い材料除去速度に寄与し、低い表面粗度を有する研磨された基板をもたらすことができる、費用効率の高い流体組成物を開発する必要性が存在する。
【0003】
本開示は、添付の図面を参照することにより、当業者にとって、よりよく理解することができ、その多くの特徴及び利点が明らかになり得る。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1図1は、一実施形態に係る流体組成物の材料除去速度(material removal rate:MRR)、及び比較用流体組成物の材料除去速度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書で使用される場合、用語「含む(comprises)」、「含むこと(comprising)」、「含む(includes)」、「含むこと(including)」、「有する(has)」、「有すること(having)」、又はそれらの任意の他の変形は、非排他的な包含を網羅するように意図される。例えば、特徴のリストを含むプロセス、方法、物品、又は装置は、必ずしもそれらの特徴のみに限定されず、明示的に列挙されていない、又はそのようなプロセス、方法、物品、若しくは装置に固有である、他の特徴を含んでもよい。
【0006】
本明細書で使用される場合、逆のことが明示的に述べられていない限り、「又は」とは、排他的論理和ではなく包括的論理和を指す。例えば、A又はBという条件は、以下のいずれか1つによって満たされる:Aが真(又は存在)及びBが偽(又は存在しない)、Aが偽(又は存在しない)及びBが真(又は存在)、並びにA及びBの両方が真(又は存在)。
【0007】
また、「a」又は「an」の使用は、本明細書に記載の要素及び構成要素を説明するために使用される。これは、単に便宜上、且つ本発明の範囲の一般的な意味を与えるために行われる。この説明は、1つ又は少なくとも1つを含むように読解されるべきであり、そうでないことを意味することが明らかでない限り、単数形は複数形もまた含む。
【0008】
本開示は、材料除去作業を行うのに適した流体組成物を対象とする。組成物は、多価金属ホウ酸塩、少なくとも1つの酸化剤、及び溶媒を含む。驚くべきことに、本開示の流体組成物は、炭化ケイ素又はダイヤモンドなどの高硬度の材料を含む、多種多様な材料の研磨を、高い材料除去速度及び所望の低い表面粗度で行うことができることが観察されている。一実施形態では、本開示の流体組成物は、研磨粒子を本質的に含まなくてもよい。本明細書で使用される場合、研磨粒子を本質的に含まないとは、0.1重量%以下の研磨粒子の量を意味する。別の態様では、流体組成物は、不可避の不純物を除き、研磨粒子を含まなくてもよい。
【0009】
本明細書で使用される場合、用語「多価金属」とは、+2以上の酸化状態を有する金属含有カチオンに関する。本明細書で使用される場合、用語「多価金属ホウ酸塩」とは、少なくとも1つの多価金属カチオンを含む金属ホウ酸塩化合物又は錯体である。特定の多価金属ホウ酸塩化合物は、1種類の多価金属カチオンのみを含むことが理解されよう。
【0010】
組成物中の多価金属ホウ酸塩の濃度を算出するために、多価金属イオンとホウ酸イオンとの間に、例えば、FeBO、又はAlBO、又はCu(BOなどの中性塩が形成されているものと仮定する。
【0011】
一実施形態では、本開示の組成物の多価金属ホウ酸塩は、ホウ酸鉄(III)、ホウ酸銅(II)、ホウ酸コバルト(II)、ホウ酸ビスマス(III)、ホウ酸アルミニウム(III)、ホウ酸セリウム(III)、ホウ酸クロム(III)、ホウ酸ルテニウム(III)、ホウ酸チタン(III)、ホウ酸鉛(II)、又はそれらの任意の組合せを含み得る。特定の実施形態では、多価金属ホウ酸塩は、ホウ酸鉄(III)であってもよい。本明細書で使用される場合、用語「ホウ酸鉄(III)」とは、「ホウ酸鉄」又は「Fe+ホウ酸塩」又はFeBOという用語と、互換的に使用される。
【0012】
一実施形態では、本開示の組成物は、ホウ酸(HBO)及び多価金属塩(例えば、多価金属硝酸塩、又は塩化物、又は硫酸塩)を溶媒中に溶解し、少なくとも1つの酸化剤を添加して溶解し、分散液のpHを所望のpHに調整することによって、製造することができる。
【0013】
別の態様では、多価金属ホウ酸塩は、多価金属塩(例えば、多価金属硝酸塩、又は塩化物、又は硫酸塩)と一緒に、一価カチオン(例えば、ホウ酸ナトリウム又はホウ酸カリウム)を有するホウ酸塩を溶解させることにより、形成することができる。別の態様では、多価金属ホウ酸塩を、溶媒中に微粉として直接添加し、分散させることができる。
【0014】
一態様では、流体組成物中の多価金属ホウ酸塩の量は、組成物の総重量に基づいて少なくとも0.010重量%、又は少なくとも0.025重量%、又は少なくとも0.05重量%、又は少なくとも0.07重量%、又は少なくとも0.1重量%、又は少なくとも0.5重量%、又は少なくとも1重量%、又は少なくとも2重量%、又は少なくとも3重量%であり得る。別の態様では、多価金属ホウ酸塩の量は、組成物の総重量に基づいて50重量%以下、又は40重量%以下、又は30重量%以下、又は20重量%以下、又は10重量%以下、又は5重量%以下、又は4重量%以下、又は3重量%以下、又は2重量%以下、又は1重量%以下、又は0.5重量%以下、又は0.1重量%以下、又は0.08重量%以下、又は0.05重量%以下であってもよい。多価金属ホウ酸塩の量は、組成物の総重量に基づいて、少なくとも0.010重量%且つ5重量%以下、又は少なくとも0.05重量%且つ1重量%以下、又は少なくとも0.05重量%且つ0.2重量%以下など、上述した最小値と最大値とのいずれかの間の値であり得る。
【0015】
非限定的な一実施形態では、組成物は、1:20~20:1(金属:ホウ素)の範囲内の総多価金属イオン対総ホウ素のモル比を有してもよく、これは、過剰な多価金属イオン又は過剰なホウ酸イオンのいずれかを有してもよいことを意味する。一実施形態では、総多価金属イオン対総ホウ素のモル比は、少なくとも1:18、又は少なくとも1:15、又は少なくとも1:12、又は少なくとも1:10、又は少なくとも1:9、又は少なくとも1:8、又は少なくとも1:7、又は少なくとも1:6、又は少なくとも1:5、又は少なくとも1:4、又は少なくとも1:3、又は少なくとも1:2であり得る。別の実施形態では、多価金属イオン対ホウ素の比は、18:1以下、又は15:1以下、又は12:1以下、又は10:1以下、又は9:1以下、又は8:1以下、又は7:1以下、又は6:1以下、又は5:1以下、又は4:1以下、又は3:1以下、又は2:1以下、又は1:1以下であってもよい。
【0016】
一態様では、総多価金属イオン対総ホウ素のモル比を使用して総多価金属イオン対総ホウ酸イオンのモル比を算出することができ、これは、総多価金属イオン対総ホウ素について上述した比と同じ範囲内であり得る。例えば、非限定的な一実施形態では、総多価金属イオン対総ホウ酸イオンの比は、1:20~20:1の範囲内であってもよい。そのような計算は、組成物中の全てのホウ素がホウ酸イオンの形態であるという仮定に基づき得ることが理解されよう。
【0017】
本開示の組成物に含有される酸化剤は、溶媒中に少なくとも部分的に溶解し、単独で又は組成物に含有される多価金属ホウ酸塩と組み合わせてのいずれかで、基板の表面と化学的に反応するのに好適な酸化電位を有する、化合物であり得る。驚くべきことに、多価金属ホウ酸塩が研磨用スラリー組成物中へ更に含有される場合、酸化剤の効率を大幅に高めることができることが観察されている。理論に拘束されるものではないが、研磨中に基板材料の表面を化学的に変化させる場合、多価金属ホウ酸塩及び酸化剤の相乗効果が得られると推測される。
【0018】
一態様では、酸化剤は、少なくとも0.26V、又は少なくとも0.4V、又は少なくとも0.5V、又は少なくとも1.0V、又は少なくとも1.5Vの酸化電位を有し得る。別の態様では、酸化電位は、2.8V以下、又は2.5V以下、又は2.0V以下であり得る。本明細書で使用される場合、酸化電位は、標準水素電極に対して、温度25℃、圧力1atm、水中の試験化合物の濃度1mol/Lで測定され、ボルト(V)で測定される値である。
【0019】
酸化剤の非限定的な例は、例えば、過酸化物、過マンガン酸塩、ペルオキソ二硫酸塩、亜塩素酸塩、過塩素酸塩、次亜塩素酸塩、ヨウ素酸塩、過ヨウ素酸塩、臭素、亜硝酸塩、次亜硝酸塩、クロム酸塩、又はそれらの任意の組合せであり得る。特定の実施形態では、酸化剤は、過マンガン酸カリウム、過酸化水素、ペルオキソ二硫酸カリウム、酸化マンガン、又はそれらの任意の組合せから選択することができる。
【0020】
流体組成物中の酸化剤の量は、組成物の総重量に基づいて少なくとも0.01重量%、又は少なくとも0.05重量%、又は少なくとも0.1重量%、又は少なくとも0.05重量%、又は少なくとも1.0重量%、又は少なくとも1.5重量%、又は少なくとも2重量%、又は少なくとも3重量%であり得る。別の態様では、酸化剤の量は、組成物の総重量に基づいて、40重量%以下、例えば30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、7重量%以下、5重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、又は0.5重量%以下であり得る。酸化剤の量は、組成物の総重量に基づいて、少なくとも0.01重量%且つ10重量%以下、又は少なくとも1重量%且つ5重量%以下など、上述した最小値と最大値とのいずれかの間の値であり得る。
【0021】
一実施形態では、多価金属ホウ酸塩と酸化剤とのモル比は、1:10以下、又は1:20以下、又は1:25以下、又は1:30以下、又は1:35以下、又は1:40以下であり得る。別の実施形態では、多価金属ホウ酸塩と酸化剤とのモル比は、少なくとも1:100、又は少なくとも1:80、又は少なくとも1:60、又は少なくとも1:50であってもよい。
【0022】
特定の実施形態では、本開示の流体組成物の溶媒は水であり得るが、これに限定されない。一態様では、溶媒は、水と、1つ以上の他の極性溶媒及び/又は非極性溶媒との混合物であり得る。
【0023】
流体組成物は、1つ以上の任意の添加剤、例えば、界面活性剤、又は分散剤、又はキレート剤、pH緩衝剤、レオロジー調節剤、耐食性剤、又はそれらの任意の組合せを更に含むことができる。
【0024】
特定の実施形態では、本開示の流体組成物は、ホウ酸鉄、過マンガン酸塩、及び水から本質的になり得る。から本質的になるとは、これに関して、流体組成物中に含有される他の成分又は不純物の量が0.1重量%以下であることを意味する。
【0025】
流体組成物のpHは、少なくとも1且つ9以下の範囲内であり得る。ある特定の態様では、pHは、少なくとも1.3、又は少なくとも1.5、又は少なくとも1.7、又は少なくとも1.9、又は少なくとも2.0であり得る。他の態様では、組成物のpHは、8.5以下、例えば、8以下、又は7以下、又は5以下、又は4以下、又は3.5以下、又は3.0以下、又は2.5以下、又は2.3以下などであってもよい。流体組成物のpHは、少なくとも1且つ9以下、少なくとも1.5且つ5以下、又は少なくとも1.8且つ3.5以下など、上述した最小値と最大値とのいずれかの間の値であり得る。
【0026】
別の実施形態では、本開示の流体組成物は、研磨粒子を含む研磨用スラリーのためのベース組成物として使用することができる。一態様では、研磨粒子とは、特定の材料の種類に限定され得ず、例えば、ジルコニア、アルミナ、シリカ、ダイヤモンド、立方晶系窒化ホウ素、セリア、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ランタン(lanthanium oxide)、又はそれらの任意の組合せを含むことができる。特定の態様では、研磨粒子は、アルミナ、ジルコニア、二酸化マンガン、セリア、シリカ、ダイヤモンド、又は酸化鉄から選択することができる。ある特定の態様では、研磨粒子は、アルミナであり得る。別のある特定の態様では、研磨粒子は、ジルコニアであり得る。
【0027】
研磨粒子の平均サイズ(D50)は、少なくとも10nm、又は少なくとも25nm、又は少なくとも50nm、少なくとも80nm、少なくとも100nm、少なくとも130nm、又は少なくとも150nm、少なくとも少なくとも180nm、又は少なくとも200nm、又は少なくとも250nmであり得る。別の実施形態では、平均粒径は、50ミクロン以下、例えば、20ミクロン以下、10ミクロン以下、5ミクロン以下、1ミクロン以下、0.8ミクロン以下、0.5ミクロン以下、又は0.3ミクロン以下であってもよい。研磨粒子の平均粒径は、上述した最小値と最大値とのいずれかの間の値、例えば、少なくとも50nm且つ500nm以下、少なくとも70nm且つ250nm以下、又は少なくとも80nm且つ200nm以下であり得る。
【0028】
一実施形態では、研磨粒子の量は、組成物の総重量に基づいて少なくとも0.01重量%、又は少なくとも0.05重量%、又は少なくとも0.1重量%、又は少なくとも0.5重量%、又は少なくとも1重量%、又は少なくとも2重量%、又は少なくとも3重量%、又は少なくとも4重量%、又は少なくとも5重量%であり得る。別の実施形態では、研磨粒子の量は、50重量%以下、例えば、40重量%以下、又は30重量%以下、又は20重量%以下、又は15重量%以下、又は10重量%以下、又は8重量%以下、又は5重量%以下であり得る。研磨粒子の量は、上述した最小値と最大値とのいずれかの間の値であり得る。特定の態様では、研磨粒子の量は、少なくとも0.1重量%且つ5重量%以下であり得る。
【0029】
本開示は、基板を研磨する方法を更に対象とする。本方法は、上記の本開示の流体組成物を提供することと、流体組成物を基板と直接接触させることと、基板表面を研磨することと、を含み得る。一態様では、基板は研磨パッドで研磨することができ、ここで、研磨パッド及び基板は互いに対して移動しており、流体組成物は基板及び研磨パッドと接触している。
【0030】
一実施形態では、研磨中の流体組成物の温度は、少なくとも40℃、又は少なくとも45℃、又は少なくとも50℃、又は少なくとも55℃、又は少なくとも60℃、又は少なくとも65℃であり得る。別の実施形態では、研磨中の組成物の温度は、90℃以下、又は85℃以下、又は80℃以下、又は75℃以下、又は70℃以下であってもよい。研磨中の組成物の温度は、上述した最小値と最大値とのいずれかの間の範囲内の値であり得る。
【0031】
驚くべきことに、本開示の流体組成物は、化学機械研磨プロセスを支援することができ、低い表面粗度を有する研磨した基板の滑らかな外面と一緒に、基板を研磨する際の高い材料除去速度に寄与し得ることが発見された。
【0032】
一実施形態では、研磨される基板は、セラミック材料、金属、金属合金、ダイヤモンド、又はポリマーを含み得る。特定の実施形態では、基板は、III-V族化合物、例えば窒化ガリウムであり得る。別の特定の実施形態では、基板は、IV-IV族化合物、例えば炭化ケイ素であり得る。ポリマーの非限定的な例は、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ポリウレタン、又は例えばフォトレジストで使用されるそれらのクロスポリマーのコポリマーなどの任意の組合せであり得る。
【0033】
特定の態様では、本開示の流体組成物及び方法は、少なくとも2.0μm/h、又は少なくとも3μm/h、又は少なくとも3.5μm/h、又は少なくとも4μm/hの材料除去速度で、炭化ケイ素基板を研磨するように適合させることができる。
【0034】
別の特定の態様では、本開示の流体組成物及び方法は、炭化ケイ素基板を研磨するために適合させることができ、研磨後の基板の表面粗度は、5Å以下、又は4Å以下、又は3Å以下、又は2.5Å以下、又は2Å以下であり得る。
【0035】
以下の例で更に実証されるように、研磨粒子を添加しない本開示の流体組成物は、驚くべきことに、高い材料除去速度及び優れた表面仕上げを有する基板の化学機械研磨に好適であり得ることが観察された。
【0036】
更なる非限定的な実施形態では、本開示の流体組成物はまた、水質浄化に使用することもできる。酸化剤、例えば過マンガン酸塩はまた、水中の有機材料及び金属不純物を分解するために広く使用することができ、金属は金属イオンに変換される。本開示の例に示されるように、研磨中の材料除去速度に対する多価金属ホウ酸塩との過マンガン酸塩の相乗効果、特にホウ酸鉄と組み合わせた過マンガン酸塩もまた、金属汚染水の処理効率を高めることができる。
【0037】
別の実施形態では、本開示は、流体組成物を調製するのに適したキット、及びキットにより作成した流体組成物を用いて基板を研磨する方法を対象とする。キットは、第1のパッケージ及び第2のパッケージ(本明細書では、「2パッケージキット」とも称される)を含むことができ、ここで、第1のパッケージは多価金属塩を含んでもよく、第2のパッケージはホウ酸を含んでもよい。特にある特定の態様では、2パッケージキットから作成された流体組成物は、研磨粒子を本質的に含まなくてもよい。驚くべきことに、2パッケージキットによって調製された流体組成物は、1パッケージ中に全成分を含有する流体組成物よりも長い期間にわたって所望の研磨効率を有することができることが観察されている。理論に拘束されるものではないが、研磨作業を行う前に、多価金属ホウ酸塩をその場で形成することは、多価金属ホウ酸塩がより長期間含有される組成物と比較して、利点を有し得ると想定される。
【0038】
キットから得られた流体組成物は、第1のパッケージと第2のパッケージとを組み合わせた後、同じ特性及び特徴を有する基板を研磨するための上記と同じ流体組成物に対応することができる。一態様では、少なくとも1つの酸化剤は、キットの第1のパッケージ又は第2のパッケージに含有され得る。特定の態様では、少なくとも1つの酸化剤は、第1のパッケージ中にホウ酸及び溶媒と一緒に含有されてもよく、第2のパッケージは、多価金属塩及び溶媒を含有することができる。
【0039】
多くの異なる態様及び実施形態が可能である。それらの態様及び実施形態のいくつかを本明細書に記載する。本明細書を読んだ後、当業者は、それらの態様及び実施形態が例示にすぎず、本発明の範囲を限定しないことを理解するであろう。実施形態は、以下に列挙される実施形態のいずれか1つ以上に従い得る。
【0040】
実施形態
実施形態1.多価金属ホウ酸塩、少なくとも1つの酸化剤、及び溶媒を含む、流体組成物。
【0041】
実施形態2.多価金属ホウ酸塩が、ホウ酸鉄(III)、ホウ酸銅(II)、ホウ酸コバルト(II)、ホウ酸ビスマス(III)、ホウ酸アルミニウム(III)、ホウ酸セリウム(III)、ホウ酸クロム(III)、ホウ酸ルテニウム(III)、ホウ酸チタン(III)、ホウ酸鉛(II)、又はそれらの任意の組合せを含む、実施形態1に記載の流体組成物。
【0042】
実施形態3.多価金属ホウ酸塩が、ホウ酸鉄(III)、ホウ酸銅(II)、ホウ酸コバルト(II)、ホウ酸ビスマス(III)、ホウ酸アルミニウム(III)、ホウ酸セリウム(III)、又はそれらの任意の組合せを含む、実施形態2に記載の流体組成物。
【0043】
実施形態4.多価金属ホウ酸塩が、ホウ酸鉄(III)から本質的になる、実施形態3に記載の流体組成物。
【0044】
実施形態5.組成物が、研磨粒子を本質的に含まない、実施形態1~4のいずれかに記載の流体組成物。
【0045】
実施形態6.流体組成物が、研磨粒子を本質的に含まない、請求項5に記載の流体組成物。
【0046】
実施形態7.多価金属ホウ酸塩の量が、流体組成物の総重量に基づいて少なくとも0.010重量%、又は少なくとも0.025重量%、又は少なくとも0.05重量%、又は少なくとも0.07重量%、又は少なくとも0.1重量%、又は少なくとも0.3重量%、又は少なくとも0.5重量%、又は少なくとも0.07重量%、又は少なくとも1.0重量%、又は少なくとも1.5重量%、又は少なくとも2.0重量%である、実施形態1~6のいずれかに記載の流体組成物。
【0047】
実施形態8.多価金属ホウ酸塩の量が、組成物の総重量に基づいて、50重量%以下、又は40重量%以下、又は30重量%以下、又は20重量%以下、又は10重量%以下、又は5重量%以下、又は4重量%以下、又は3重量%以下、又は2重量%以下、又は1重量%以下、又は0.5重量%以下、又は0.1重量%以下である、実施形態1~7のいずれかに記載の流体組成物。
【0048】
実施形態9.多価金属ホウ酸塩の量が、少なくとも0.010重量%且つ5重量%以下、又は少なくとも0.05重量%且つ0.2重量%以下である、実施形態1~8のいずれかに記載の流体組成物。
【0049】
実施形態10.流体組成物が、1:20~20:1の範囲内で、総多価金属イオン対総ホウ素のモル比を含む、実施形態1~9のいずれかに記載の流体組成物。
【0050】
実施形態11.総多価金属イオン対総ホウ素のモル比が、少なくとも1:18、又は少なくとも1:15、又は少なくとも1:12、又は少なくとも1:10、又は少なくとも1:9、又は少なくとも1:8、又は少なくとも1:7、又は少なくとも1:6、又は少なくとも1:5、又は少なくとも1:4、又は少なくとも1:3、又は少なくとも1:2である、実施形態10に記載の流体組成物。
【0051】
実施形態12.総多価金属イオン対総ホウ素のモル比が、18:1以下、又は15:1、又は12:1、又は10:1、又は9:1、又は8:1以下、又は7:1以下、又は6:1以下、又は5:1以下、又は4:1以下、又は3:1以下、又は2:1以下、又は1:1以下である、実施形態10に記載の流体組成物。
【0052】
実施形態13.多価金属イオン対ホウ素のモル比が、1:1~1:7の範囲である、実施形態10に記載の流体組成物。
【0053】
実施形態14.少なくとも1つの酸化剤の酸化電位が、少なくとも0.26V、又は少なくとも0.4V、又は少なくとも0.5V、又は少なくとも1.0V、又は少なくとも1.5Vである、実施形態1~13のいずれかに記載の流体組成物。
【0054】
実施形態15.少なくとも1つの酸化剤の酸化電位が、2.8V以下である、実施形態1~14のいずれかに記載の流体組成物。
【0055】
実施形態16.少なくとも1つの酸化剤が、過酸化物、過マンガン酸塩、ペルオキソ二硫酸塩、亜塩素酸塩、過塩素酸塩、次亜塩素酸塩、亜硝酸塩、次亜硝酸塩、ヨウ素酸塩、過ヨウ素酸塩、クロム酸塩、酸化マンガン、又はそれらの任意の組合せを含む、実施形態1~15のいずれかに記載の流体組成物。
【0056】
実施形態17.酸化剤が、過マンガン酸塩から本質的になる、実施形態16に記載の流体組成物。
【0057】
実施形態18.過マンガン酸塩が、過マンガン酸カリウムである、実施形態17に記載の流体組成物。
【0058】
実施形態19.酸化剤の量が、流体組成物の総重量に基づいて少なくとも0.01重量%、又は少なくとも0.05重量%、又は少なくとも0.1重量%、又は少なくとも0.05重量%、又は少なくとも1.0重量%、又は少なくとも1.5重量%、又は少なくとも2重量%、又は少なくとも3重量%である、実施形態1~18のいずれかに記載の流体組成物。
【0059】
実施形態20.酸化剤の量が、流体組成物の総重量に基づいて、40重量%以下、例えば30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、7重量%以下、5重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、1重量%以下、又は0.5重量%以下である、実施形態1~19のいずれかに記載の流体組成物。
【0060】
実施形態21.酸化剤の量が、組成物の総重量に基づいて、少なくとも0.01重量%且つ10重量%以下、又は少なくとも1重量%且つ5重量%以下である、実施形態19又は20に記載の流体組成物。
【0061】
実施形態22.溶媒が、水を含む、実施形態1~21のいずれかに記載の流体組成物。
【0062】
実施形態23.pHが、少なくとも1.0、又は少なくとも1.3、少なくとも1.5、少なくとも1.7、少なくとも1.9、少なくとも2.0、少なくとも2.1、少なくとも2.2、少なくとも2.3、少なくとも2.4、又は少なくとも2.5である、実施形態1~22のいずれかに記載の流体組成物。
【0063】
実施形態24.pHが、9以下、又は7以下、又は5以下、又は4以下、又は3.8以下、又は3.5以下、又は3.2以下、又は3.0以下、又は2.8以下、又は2.5以下、又は2.3以下である、実施形態1~23のいずれかに記載の流体組成物。
【0064】
実施形態25.組成物のpHが、少なくとも1且つ9以下、又は少なくとも1.5且つ5以下、又は少なくとも1.8且つ3.5以下である、実施形態1~24のいずれかに記載の流体組成物。
【0065】
実施形態26.流体組成物が、基板の化学機械研磨に適合している、実施形態1~25のいずれかに記載の流体組成物。
【0066】
実施形態27.基板が、セラミック材料、金属、金属合金、ダイヤモンド、又はポリマーを含む、実施形態26に記載の流体組成物。
【0067】
実施形態28.セラミック材料が、III-V族化合物又はIV-IV族化合物を含む、実施形態27に記載の流体組成物。
【0068】
実施形態29.セラミック材料が、窒化ガリウム又は炭化ケイ素を含む、実施形態26又は27に記載の流体組成物。
【0069】
実施形態30.組成物が、界面活性剤、又は分散剤、又はキレート剤、又はpH緩衝剤、又はレオロジー調節剤、耐食性剤、又はそれらの任意の組合せを更に含むことができる、実施形態1~29のいずれかに記載の流体組成物。
【0070】
実施形態31.ホウ酸鉄、過マンガン酸塩、及び水から本質的になる、実施形態1~30のいずれかに記載の流体組成物。
【0071】
実施形態32.流体組成物が、少なくとも2μm/hの材料除去速度及び5.0Å以下の表面粗度で、炭化ケイ素基板を研磨するのに適している、実施形態1~31のいずれかに記載の流体組成物。
【0072】
実施形態33.炭化ケイ素基板を研磨するための材料除去速度が、少なくとも2.5μm/h、又は少なくとも3.0μm/h、又は少なくとも3.2μm/h、又は少なくとも3.4μm/h、又は少なくとも3.6μm/h、又は少なくとも3.8μm/h、又は少なくとも4.0μm/hである、実施形態32に記載の流体組成物。
【0073】
実施形態34.炭化ケイ素基板を研磨した後の表面粗度が、4Å以下、又は3Å以下、又は2.8Å以下、又は2.6Å以下、又は2.4Å以下、又は2.2Å以下、又は2.0Å以下である、実施形態32に記載の流体組成物。
【0074】
実施形態35.流体組成物を調製する方法であって、多価金属塩のアニオンが、硝酸塩、塩化物、又は硫酸塩から選択される、溶媒中への多価金属塩及びホウ酸又はアルカリホウ酸塩の溶解によって多価金属ホウ酸塩を形成することと、少なくとも1つの酸化剤を溶媒に溶解することと、1~9の間でpHを調整することと、を含む、方法。
【0075】
実施形態36.多価金属ホウ酸塩と酸化剤とのモル比が、1:20以下、又は1:25以下、又は1:30以下、又は1:35以下、又は1:40以下である、実施形態35に記載の方法。
【0076】
実施形態37.多価金属ホウ酸塩がホウ酸鉄(III)を含み、酸化剤が過マンガン酸塩を含む、実施形態35に記載の方法。
【0077】
実施形態38.流体組成物が、1:20~20:1の範囲の多価金属イオン対ホウ素のモル比を含む、実施形態35~37のいずれかに記載の方法。
【0078】
実施形態39.多価金属イオン対ホウ素のモル比が、少なくとも1:18、又は少なくとも1:15、又は少なくとも1:12、又は少なくとも1:10、又は少なくとも1:9、又は少なくとも1:8、又は少なくとも1:7、又は少なくとも1:6、又は少なくとも1:5、又は少なくとも1:4、又は少なくとも1:3、又は少なくとも1:2である、実施形態38に記載の方法。
【0079】
実施形態40.多価金属イオン対ホウ素のモル比が、18:1以下、又は15:1以下、又は12:1以下、又は10:1以下、又は9:1以下、又は8:1以下、又は7:1以下、又は6:1以下、又は5:1以下、又は4:1以下、又は3:1以下、又は2:1以下、又は1:1以下である、実施形態38に記載の方法。
【0080】
実施形態41.多価金属イオン対ホウ素のモルが、1:1~1:7の範囲である、実施形態38に記載の方法。
【0081】
実施形態42.流体組成物が、研磨粒子を本質的に含まない、実施形態35~41のいずれかに記載の方法。
【0082】
実施形態43.基板を研磨する方法であって、流体組成物が、多価金属ホウ酸塩、少なくとも1つの酸化剤、及び水を含む、流体組成物を提供することと、流体組成物を基板及び研磨パッドに接触させることと、基板を研磨することと、を含む、方法。
【0083】
実施形態44.流体組成物が、研磨粒子を本質的に含まない、実施形態43に記載の方法。
【0084】
実施形態45.流体組成物が、研磨粒子を含まない、実施形態43又は44に記載の方法。
【0085】
実施形態46.基板が、セラミック材料、金属、金属合金、ダイヤモンド、又はポリマー、III-V族化合物、若しくはIV-IV族化合物を含む、実施形態43~45のいずれかに記載の方法。
【0086】
実施形態47.基板が、炭化ケイ素又は窒化ガリウムである、実施形態46に記載の方法。
【0087】
実施形態48.研磨が、少なくとも2.0μm/h、又は少なくとも3μm/h、又は少なくとも3.5μm/h、又は少なくとも4μm/hの基板の除去速度で行われる、実施形態43~47のいずれかに記載の方法。
【0088】
実施形態49.研磨した後の基板の表面粗度が、5Å以下、又は4Å以下、又は3Å以下、又は2.5Å以下、又は2Å以下である、実施形態43~48のいずれかに記載の方法。
【0089】
実施形態50.少なくとも1つの酸化剤の酸化電位が、少なくとも0.26V、又は少なくとも0.4V、又は少なくとも0.5V、又は少なくとも1.0V、又は少なくとも1.5Vである、実施形態35~49のいずれかに記載の方法。
【0090】
実施形態51.酸化剤の酸化電位が、2.8V以下である、実施形態35~50のいずれかに記載の方法。
【0091】
実施形態52.少なくとも1つの酸化剤が、過酸化物、ペルオキソ二硫酸塩、過マンガン酸塩、亜塩素酸塩、亜硝酸塩、次亜硝酸塩、過塩素酸塩、次亜塩素酸塩、酸化マンガン、又はそれらの任意の組合せを含む、実施形態35~51のいずれかに記載の方法。
【0092】
実施形態53.酸化剤が、過マンガン酸塩から本質的になる、実施形態52に記載の方法。
【0093】
実施形態54.過マンガン酸塩が、過マンガン酸カリウムを含む、実施形態53に記載の方法。
【0094】
実施形態55.多価金属ホウ酸塩の量が、組成物の総重量に基づいて、少なくとも0.010重量%且つ5重量%以下、又は少なくとも0.05重量%且つ1重量%以下、又は少なくとも0.05重量%且つ0.3重量%以下である、実施形態35~54のいずれかに記載の方法。
【0095】
実施形態56.酸化剤の量が、組成物の総重量に基づいて、少なくとも0.01重量%且つ10重量%以下、又は少なくとも0.5重量%且つ5重量%以下である、実施形態35~55のいずれかに記載の方法。
【0096】
実施形態57.溶媒が、水を含む、実施形態35~56のいずれかに記載の方法。
【0097】
実施形態58.流体組成物のpHが、少なくとも1.3、又は少なくとも1.5、少なくとも1.7、少なくとも1.9、少なくとも2.0、少なくとも2.1、少なくとも2.2、少なくとも2.3、少なくとも2.4、又は少なくとも2.5である、実施形態35~57のいずれかに記載の方法。
【0098】
実施形態59.流体組成物のpHが、8.5以下、又は7以下、又は5以下、又は4以下、又は3.8以下、又は3.5以下、又は3.2以下、又は3.0以下、又は2.8以下、又は2.5以下、又は2.3以下である、実施形態35~58のいずれかに記載の方法。
【0099】
実施形態60.流体組成物のpHが、少なくとも1.3且つ8以下、又は少なくとも1.5且つ5以下、又は少なくとも1.8且つ3.5以下である、実施形態35~59のいずれかに記載の方法。
【0100】
実施形態61.流体組成物が、研磨粒子を本質的に含まない、実施形態35~60のいずれかに記載の方法。
【0101】
実施形態62.基板を研磨するための流体を調製するのに適したキットであって、キットが第1のパッケージ及び第2のパッケージを含み、第1のパッケージが多価金属塩を含み、第2のパッケージがホウ酸を含む、キット。
【0102】
実施形態63.キットが、パッケージ1とパッケージ2とを組み合わせた後、多価金属ホウ酸塩がその場で形成されるように適合されている、実施形態62に記載のキット。
【0103】
実施形態64.第1のパッケージ又は第2のパッケージが、少なくとも1つの酸化剤を更に含む、実施形態62又は63に記載のキット。
【0104】
実施形態65.第2のパッケージが、少なくとも1つの酸化剤を更に含む、実施形態62~64のいずれかに記載のキット。
【0105】
実施形態66.多価金属塩の多価金属イオンが、Fe3+、Fe2+、Co2+、Ce3+、Bi3+、Al3+、Ru3+、Ti3+、Pb2+、又はそれらの任意の組合せを含む、実施形態62~65のいずれかに記載のキット。
【0106】
実施形態67.多価金属イオンが、Fe3+又はCu2+を含む、実施形態66に記載のキット。
【0107】
実施形態68.多価金属イオンが、Fe3+から本質的になる、実施形態67に記載のキット。
【0108】
実施形態69.第1のパッケージが、ホウ素を本質的に含まない、実施形態62~68のいずれかに記載のキット。
【0109】
実施形態70.多価金属塩のアニオンが、硝酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、リン酸塩、又はそれらの任意の組合せを含む、実施形態62~69のいずれかに記載のキット。
【0110】
実施形態71.少なくとも1つの酸化剤が、過マンガン酸塩、ペルオキソ二硫酸塩、亜塩素酸塩、過塩素酸塩、次亜塩素酸塩、亜硝酸塩、次亜硝酸塩、ヨウ素酸塩、過ヨウ素酸塩、クロム酸塩、過酸化物、酸化マンガン、又はそれらの任意の組合せを含む、実施形態62~70のいずれかに記載のキット。
【0111】
実施形態72.少なくとも1つの酸化剤が、過マンガン酸塩を含む、実施形態71に記載のキット。
【0112】
実施形態73.少なくとも1つの酸化剤が、過マンガン酸カリウムを含む、実施形態72に記載のキット。
【0113】
実施形態74.キットが、研磨粒子を本質的に含まない、実施形態62~74のいずれかに記載のキット。
【0114】
実施形態75.基板を研磨する方法であって、流体組成物を調製することが第1のパッケージと第2のパッケージとを組み合わせることを含み、第1のパッケージ及び第2のパッケージがキットの一部であり、第1のパッケージが多価金属塩を含み、第2のパッケージがホウ酸を含む、流体組成物を調製することと、流体組成物を基板及び研磨パッドに接触させることと、基板を研磨することと、を含む、方法。
【0115】
実施形態76.第1のパッケージと第2のパッケージとを組み合わせることが、多価金属ホウ酸塩をその場で形成することを含む、実施形態75に記載の方法。
【0116】
実施形態77.流体組成物の調製が、基板の研磨と同日に行われる、実施形態75又は76に記載の方法。
【0117】
実施形態78.第1のパッケージ又は第2のパッケージが、少なくとも1つの酸化剤を更に含む、実施形態75~77のいずれかに記載の方法。
【0118】
実施形態79.第2のパッケージが、少なくとも1つの酸化剤を更に含む、実施形態75~78のいずれかに記載の方法。
【0119】
実施形態80.多価金属塩の多価金属イオンが、Fe3+、Fe2+、Co2+、Ce3+、Bi3+、Al3+、Ru3+、Ti3+、Pb2+、又はそれらの任意の組合せを含む、実施形態75~79のいずれかに記載の方法。
【0120】
実施形態81.多価金属イオンが、Fe3+又はCu2+を含む、実施形態80に記載の方法。
【0121】
実施形態82.多価金属イオンが、Fe3+から本質的になる、実施形態81に記載の方法。
【0122】
実施形態83.第1のパッケージが、ホウ素を本質的に含まない、実施形態75~82のいずれかに記載の方法。
【0123】
実施形態84.多価金属塩のアニオンが、硝酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、リン酸塩、硫酸塩、又はそれらの任意の組合せを含む、実施形態75~83のいずれかに記載の方法。
【0124】
実施形態85.流体組成物のpHが、少なくとも1.3、又は少なくとも1.5、少なくとも1.7、少なくとも1.9、少なくとも2.0、少なくとも2.1、少なくとも2.2、少なくとも2.3、少なくとも2.4、又は少なくとも2.5である、実施形態75~84のいずれかに記載の方法。
【0125】
実施形態86.流体組成物のpHが、8.5以下、又は7以下、又は5以下、又は4以下、又は3.8以下、又は3.5以下、又は3.2以下、又は3.0以下、又は2.8以下、又は2.5以下、又は2.3以下である、実施形態75~85のいずれかに記載の方法。
【0126】
実施形態87.流体組成物のpHが、少なくとも1.3且つ8以下、又は少なくとも1.5且つ5以下、又は少なくとも1.8且つ2.5以下である、実施形態75~86のいずれかに記載の方法。
【0127】
実施形態88.キットによって調製された流体組成物が、研磨粒子を本質的に含まない、実施形態75~87のいずれかに記載の方法。
【0128】
実施形態89.実施形態43~61のいずれか1つを更に含む、実施形態74~86のいずれかに記載の方法。
【実施例
【0129】
以下の非限定的な例は本発明を説明する。
【0130】
例1
2.5g(6.19mmol)の硝酸鉄(III)九水和物(Fe(NO 9HO)、2.5g(40.3mmol)のホウ酸(HBO)、及び40.0g(253.2mmol)の過マンガン酸カリウム(KMnO)を、撹拌しながら蒸留水955mL中に溶解することによって、水性流体組成物(S1)を調製した。全ての成分を合わせた後、pHを1N HNOでpH2.1に調整した。成分のモル量に従って、Fe3+イオン対ホウ酸イオン(BO 3-)のモル比は、1:6.5であった。
【0131】
ホウ酸を含まず、Fe3+イオン塩を含まず、試料S1と同じ種類及び量の酸化剤(KMnO)のみを含有するように、並びに同じpH2.1に調整したことを除いて、比較用流体組成物C1は、スラリーS1と同じ方法で調製した。
【0132】
平均粒径100nmである1重量%のαアルミナ粒子を更に含んだことを除いて、比較用スラリー組成物C2は、比較用比較スラリーC1と同様に調製した。
【0133】
スラリーの研磨特性を試験し、Strasbaugh 6EC Polishing Toolを用いて炭化ケイ素基板を研磨することによって比較した。
【0134】
試験した組成物及び試験結果、例えば材料除去速度(MMR)及び研磨後の表面粗度などの要約は、表1に見ることができる。
【表1】
【0135】
図1で更に示すように、ホウ酸鉄と酸化剤(KMnO)との組合せを有する流体組成物(試料S1を参照)は、4.07μm/hの高い炭化ケイ素除去速度を有し、これは、酸化剤KMnOのみを含有し、ホウ酸鉄を含まない、比較用流体組成物C1の除去速度よりも約50%高かったことが分かる。Fe3+及びHBOの濃度が要素5により増加した場合、MMRを更に増加させることができた(試料S2参照)。Fe3+ホウ酸塩と同様に、酸化剤としてKMnOと組み合わせたCu2+ホウ酸塩(試料S3参照)もまた、酸化剤KMnOのみを含む比較用試料C1、又はKMnO及びホウ酸のみを含有する比較用組成物C3と比較して、MMRの強い改善を示した。
【0136】
更に、組成物C1に1重量%の量のアルミナ研磨粒子(組成物C2参照)を添加することでも、研磨効率は、研磨粒子を含まなかった組成物S1、S2、及びS3の除去速度と比較して、依然として低かったことが更に分かる。Co2+ホウ酸塩の形成(試料S4参照)は、選択された条件下では、試料C2及びC3と比較してMMRの増加を示さず、試料C1に対してわずかな利点しか示さなかった。
【0137】
研磨試験の解説:
本開示の例の全ての流体組成物を、Cabot製D100研磨パッドを備えたStrasbaugh 6EC片面研磨ツールを用いて、4Hタイプ炭化ケイ素(軸外4°)ウェハを研磨する材料除去速度に対するそれらの影響について試験した。炭化ケイ素ウェハは、直径150mm及び厚さ350μmであった。材料除去速度は、Ohaus Explorer Model FX324精密スケールで測定した重量損失から算出した。
【0138】
表面粗度は、Zygo New View 8300+走査光学プロファイラで測定した。
研磨は以下の条件下において行った。
【表2】
【0139】
前述の明細書では、概念は特定の実施形態を参照して説明されている。しかしながら、当業者は、以下の特許請求の範囲に記載される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更を行うことができることを理解する。したがって、本明細書及び図面は、限定的な意味ではなく例示的な意味で見なされるべきであり、そのような修正は全て本発明の範囲内に含まれることが意図されている。
図1