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特許7361242マルチセンサ情報融合に基づくモデル適応横方向速度推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】マルチセンサ情報融合に基づくモデル適応横方向速度推定方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/114 20120101AFI20231006BHJP
   B60W 40/109 20120101ALI20231006BHJP
   B60W 40/10 20120101ALI20231006BHJP
   G05B 11/36 20060101ALI20231006BHJP
   G05B 13/04 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
B60W40/114
B60W40/109
B60W40/10
G05B11/36 G
G05B13/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021529850
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-22
(86)【国際出願番号】 CN2020103631
(87)【国際公開番号】W WO2021248641
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2021-05-26
(31)【優先権主張番号】202010525798.7
(32)【優先日】2020-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514112868
【氏名又は名称】北京理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】王 偉達
(72)【発明者】
【氏名】楊 超
(72)【発明者】
【氏名】項 昌楽
(72)【発明者】
【氏名】郭 興華
(72)【発明者】
【氏名】劉 金剛
(72)【発明者】
【氏名】張 中国
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0125455(US,A1)
【文献】米国特許第6816804(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0159365(US,A1)
【文献】特開2006-046986(JP,A)
【文献】特表2019-523176(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102008051962(DE,A1)
【文献】特開2012-141953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 40/10 ~ 40/13
G05B 11/36
G05B 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチセンサ情報融合に基づくモデル適応横方向速度推定方法であって、
工程1:車両の横方向加速度、ヨーレート、縦方向速度、ステアリングホイール偏向角、横方向加速度センサ測定結果を含むセンサデータを入力して、車両動力学モデルと運動学モデルを作成し、動力学モデルでマジックフォーミュラタイヤモデルを採用してタイヤ縦方向力と横方向力を計算することと、
工程3:車両動力学モデルと運動学モデルを融合して観測システムモデルを作成し、そして観測システムモデル重み適応項により、観測システムモデル適応を実現し、観測システムモデルの適応方法として、観測システムモデル重み適応項係数を1として動力学モデルと運動学モデルとの重み比を調整し、観測システムモデル重み適応項係数の具体的な数値が、横方向加速度とヨーレートセンサ情報を参照してDempster-Shafer証拠理論に準じて計算されてなり、ここで、観測システムモデル重み適応項の決定方法として、車両の横方向加速度センサとヨーレートセンサの測定情報から、車両の横方向加速度センサの測定情報と動力学モデルにおける横方向力との偏差値を計算し、並びに、ヨーレートセンサの測定情報と動力学モデルにおけるヨーレートとの偏差値を計算し、2つの偏差値を動力学モデルの誤差判定統計量とし、誤差判定統計量により車両の横方向加速度センサ及びヨーレートセンサ信頼度の基本確率関数を定義し、そしてDempster-Shafer証拠理論に準じて横方向加速度センサ及びヨーレートセンサの情報値を融合することにより、横方向加速度センサとヨーレートセンサの観測値から動力学モデルの精度と横方向加速度センサ及びヨーレートセンサの不確定性を定量的に計算評価し、観測システムモデルにおける重み適応項係数の係数値を得て、最終的に観測システムモデルの適応調節を実現することであることと、
工程4:ノイズ行列と観測システムモデルをSR-UKFアルゴリズムに代入して、適応SR-UKFアルゴリズム(ASR-UKF)を構成して、横方向速度推定を行い、ここで、SR-UKFアルゴリズム(ASR-UKF)工程が、重みの計算とSigma点の生成、Sigma点の伝播、状態値と共分散値の更新/時間の更新、推定値と測定値の更新/計測の更新、カルマンフィルターゲインの更新工程を含むことと、
を含む、ことを特徴とする、推定方法。
【請求項2】
請求項1記載の推定方法であって、
前記工程1において、前記車両動力学モデルを作成することは、
前記タイヤ縦方向力と横方向力は、マジックフォーミュラを採用して計算され、
マジックフォーミュラタイヤモデルには、三角関数の組み合わせを使用してタイヤ実験データをフィッティングし、同じ形式の一つの式を使用してタイヤ縦方向力、横方向力と戻しトルクの運転状態を完全に表記でき、タイヤの横・縦方向力が合わせて作用する場合でも同様に適用し、そしてフィッティング精度があり、そのため、マジックタイヤフォーミュラを採用してタイヤモデルを作成し、縦方向力と横方向力の計算式が、式2.8であり、
ここでBが剛性因子であり、関数曲線原点での傾きを決定するとともに、線形タイヤモデルの剛性係数にも近似することができ、Cが曲線形状因子であり、関数曲線の形状を決定し、Dがピーク因子であり、関数曲線の最大値を決定し、Eが曲線曲率因子であり、関数曲線最大値付近の曲線形状を示し、が車輪の縦方向スリップ率であり、がタイヤ側スリップ角であり、
車両の旋回走行の途中において、タイヤの縦方向力と横方向力に一定のカップリング関係が存在し、その場合、マジックタイヤフォーミュラ計算結果が以下の通り補正し、式2.13のとおりである、
ことを特徴とする、推定方法。
【請求項3】
請求項1記載の推定方法であって、
前記工程2におけるノイズ適応の具体的な方法は、
横方向加速度により構成される動力学モデルの誤差判定統計量が、式5.12で示され、
【請求項4】
請求項1記載の推定方法であって、
前記工程3の具体的な方法は、
上記式5.17により当該係数の作用をより直感的に示し、当該適応項係数がであって、式5.16における第2の項が完全に加速度センサに基づく運動学モデルとなり、式5.18で示されるため、動力学モデルとセンサの偏差値を参照し、当該適応項係数の具体的な数値を計算することにより、動力学モデルと運動学モデルの重み適応調節を実現することができ、式5.18のとおりであり、
車体のヨーレートはヨーモーメントと車体のz軸回転慣性モーメントとの比の積分に等しく、以下の式5.26で示されるとおりであり、
同じように、車体ヨーレートセンサにより観測される動力学モデル精度の基本確率分配関数が、式5.29であり、
その後、動力学モデル精度dの組み合わせmass関数を計算し、
式5.31
センサ情報の精度kの組み合わせmass関数が、式5.32であり、
この場合、d、kの組み合わせmass関数について、その信頼関数と尤度関数値とを組み合わせた後のmass関数値がいずれも同等であり、即ち、式5.33であり、
動力学モデル適応項係数について、以下の式に従って計算し、
式5.34
ここでμが標定パラメータであり、シミュレーションと実際の実験により標定される、
ことを特徴とする、推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横方向速度を推定する技術分野に関し、具体的にマルチセンサ情報融合に基づくモデル適応横方向速度推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の走行安全は自動車工業の発展から終わりまでのテーマであり、車両の走行安全を確保するためには、その安定性制御が第一の問題である。車両安定製御システムは、車両の横縦方向速度、加速度、ヨーレート、重心側スリップ角などの状態情報を用いて、車両の両側の駆動またはブレーキトルクを制御配分し、車両の安定走行を保証する。その中で、車両の横縦方向加速度とヨーレートは既存の車載センサーで測定できるが、他の動力学的状態パラメータは状態推定のアルゴリズムを用いて推定する必要がある。センサ測定情報では、センサノイズのばらつきも無視できないため、動力学モデルと合わせてセンサシグナルを補正する必要がある。動力学モデルは車両の非線形状況下で大きなモデル誤差が発生するため、逆にセンサー情報を結合して推定アルゴリズムの収束と正確性を保証する必要がある。また、車両の横縦方向速度と加速度は、車両自体のピッチ角、ロール角、ヨー角の影響を受けるため、車両重心側スリップ角(横方向速度)の推定精度は常に上記の様々な要因に制限される。
【0003】
縦速度に比べて、車両の横方向速度に関する情報が少なく、推定難易度が高く、原始的なカルマンフィルタ推定方法の精度とロバスト性は要求を満たすことができないため、新しい適応的な推定方法を用いて横方向速度の推定を行う必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、まず、車両の横方向加速度、ヨーレート及び前輪操舵角等の情報を参照し、SR-UKFアルゴリズムの適応過程ノイズ行列と測定ノイズ行列を設計し、その後、元の推定方法動力学モデルを基礎として、運動学モデルを融合するように適応項を加えて、両モデル重み比が適応項の係数により調整され、最後に、適応ノイズ行列と適応モデルをSR-UKFアルゴリズムに代入して横方向速度推定を行う、マルチセンサ情報融合に基づくモデル適応横方向速度推定方法を提供することにある。ここで、横方向加速度及びヨーレートセンサ値と動力学モデル計算値との偏差により両センサ信頼度の基本確率関数を定義し、そしてDempster-Shafer証拠理論に準じて両センサ情報を融合することにより、両センサの観測値から動力学モデルの精度とセンサの不確定性を定量的に計算評価し、推定方法モデルにおける適応項の係数値を得て、最終的にモデルの適応を実現する。
【0005】
上記技術課題を解決するために、本発明は、以下の実施形態を提供する。
【0006】
マルチセンサ情報融合に基づくモデル適応横方向速度推定方法であって、
工程1:車両の横方向加速度、ヨーレート、縦方向速度、ステアリングホイール偏向角、横方向加速度センサ測定結果を含むセンサデータを入力して、車両動力学モデルと運動学モデルを作成し、動力学モデルでマジックフォーミュラタイヤモデルを採用してタイヤ縦方向力と横方向力を計算することと、
工程3:車両動力学モデルと運動学モデルを融合して観測システムモデルを作成し、そして観測システムモデル重み適応項により、観測システムモデル適応を実現し、観測システムモデルの適応方法として、観測システムモデル重み適応項係数の調節により動力学モデルと運動学モデルとの重み比を調整し、観測システムモデル重み適応項係数の具体的な数値が、横方向加速度とヨーレートセンサ情報を参照してDempster-Shafer証拠理論に準じて計算されてなり、ここで、観測システムモデル重み適応項の決定方法として、車両の横方向加速度センサとヨーレートセンサの測定情報から、車両の横方向加速度センサの測定情報と動力学モデルにおける横方向力との偏差値を計算し、並びに、ヨーレートセンサの測定情報と動力学モデルにおけるヨーレートとの偏差値を計算し、2つの偏差値を動力学モデルの誤差判定統計量とし、誤差判定統計量により車両の横方向加速度センサ及びヨーレートセンサ信頼度の基本確率関数を定義し、そしてDempster-Shafer証拠理論に準じて横方向加速度センサ及びヨーレートセンサの情報値を融合することにより、横方向加速度センサとヨーレートセンサの観測値から動力学モデルの精度と横方向加速度センサ及びヨーレートセンサの不確定性を定量的に計算評価し、観測システムモデルにおける重み適応項係数の係数値を得て、最終的に観測システムモデルの適応調節を実現することであることと、
工程4:ノイズ行列と観測システムモデルをSR-UKFアルゴリズムに代入して、適応SR-UKFアルゴリズム(ASR-UKF)を構成して、横方向速度推定を行い、ここで、SR-UKFアルゴリズム(ASR-UKF)工程が、重みの計算とSigma点の生成、Sigma点の伝播、状態値と共分散値の更新/時間の更新、推定値と測定値の更新/計測の更新、カルマンフィルターゲインの更新工程を含むことと、
を含む、方法。
【0007】
・・・(5.11)
前記運動学モデルを作成することは、即ち、式(4.27)であり、
前記タイヤ縦方向力と横方向力は、マジックフォーミュラを採用して計算され、マジックフォーミュラタイヤモデルには、三角関数の組み合わせを使用してタイヤ実験データをフィッティングし、同じ形式の一つの式を使用してタイヤ縦方向力、横方向力と戻しトルクの運転状態を完全に表記でき、タイヤの横・縦方向力が合わせて作用する場合でも同様に適用し、そしてフィッティング精度があり、そのため、マジックタイヤフォーミュラを採用してタイヤモデルを作成し、縦方向力と横方向力の計算式が、式2.8であり、
ここでBが剛性因子であり、関数曲線原点での傾きを決定するとともに、線形タイヤモデルの剛性係数にも近似することができ、Cが曲線形状因子であり、関数曲線の形状を決定し、Dがピーク因子であり、関数曲線の最大値を決定し、Eが曲線曲率因子であり、関数曲線最大値付近の曲線形状を示し、が車輪の縦方向スリップ率であり、がタイヤ側スリップ角であり、車両の旋回走行の途中において、タイヤの縦方向力と横方向力に一定のカップリング関係が存在し、その場合、マジックタイヤフォーミュラ計算結果が以下の通り補正する。
式2.13
【0008】
上記推定方法では、前記工程2におけるノイズ適応の具体的な方法は、横方向加速度により構成される動力学モデルの誤差判定統計量が、式5.12で示され、
【0009】
・・・(5.16)
上記式5.17により当該係数の作用をより直感的に示し、当該適応項係数がゼロである場合、式5.16における第2の項が完全にマジックタイヤフォーミュラに基づく動力学モデルであり、一方、係数が1である場合、式5.16における第2の項が完全に加速度センサに基づく運動学モデルとなり、式5.18で示されるように、そのため、動力学モデルとセンサの偏差値を参照し、当該適応項係数の具体的な数値を計算することにより、動力学モデルと運動学モデルの重み適応調節を実現することができ、
式5.18
同じように、車体ヨーレートセンサにより観測される動力学モデル精度の基本確率分配関数が、式5.29であり、
センサ情報の精度kの組み合わせmass関数が、式5.32であり、
ここでμが標定パラメータであり、シミュレーションと実際の実験により定義される。
【0010】
従来技術と比較して、本発明が達成した有益な効果は、本発明がアルゴリズムモデル適応調節、ノイズ行列適応調節及び平方根無軌跡カルマンフィルター(SR-UKF)アルゴリズムの応用という3つの点で車両の横方向速度推定の適応を実現する。まず、車両の横方向加速度とヨーレートセンサ情報を参照して、SR-UKFアルゴリズムの過程ノイズ行列と測定ノイズ行列を設計し、推定方法が様々な運転状態でのノイズ適応を実現する。その後、推定方法モデルに適応項を加えて、D-S証拠理論に準じて適応項パラメータの数値を計算することにより、動力学モデルと運動学モデルとの重み比を定量的に分配し、推定方法モデルの適応を実現する。最後に、適応ノイズ行列と適応モデルをSR-UKFアルゴリズムに代入して横方向速度推定を行う。
【図面の簡単な説明】
【0011】
添付の図面は本発明のさらなる理解を提供するために使用され、明細書の一部を構成し、本発明の実施例とともに本発明を説明するために使用され、本発明を限定するものではない。
図1】本発明の実施例における横方向速度適応推定方法の概略構成図である。
図2】本発明推定方法が高付着路面の二重動線運転状態下での横方向速度推定結果を検証する概要図である。
図3】本発明推定方法が低付着路面の二重動線運転状態下での横方向速度推定結果を検証する概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例における実施形態を、本発明の実施例における添付図面を参照して明確かつ完全に説明するが、説明する実施例は、本発明の一部の実施例にすぎず、全ての実施例ではないことは明らかである。本発明における実施例に基づいて、当業者が創造的な労働をしないことを前提にして得た他のすべての実施例は、本発明の保護の範囲に属する。
【0013】
実施例一
【0014】
低付着路面の場合での車両モデルとタイヤモデルの誤差、並びに、有色ノイズの場合でのセンサの累積誤差を考慮しながら、本発明は、マルチセンサ情報融合に基づくモデル適応横方向速度推定方法を提供する。まず、車両の横方向加速度、ヨーレート及び前輪操舵角等の情報を参照し、SR-UKFアルゴリズムの過程ノイズ行列と測定ノイズ行列を設計することにより、車両の様々な運転状態でアルゴリズムノイズの適応を実現する。その後、元の推定方法動力学モデルを基礎として、運動学モデルを融合するように適応項を加えて、両モデル重み比が適応項の係数により調整される。インホイールモーター駆動車両の縦方向力情報が比較的に精確的であるため、動力学モデルのヨーレート情報が、基本的にモデルにおける横方向力の精確程度を反映し、同様にそれを適応項に引入して推定計算することができる。車両ESPにおける横方向加速度センサとヨーレートセンサ測定情報により、それぞれ、動力学モデルにおける横方向力とヨーレートとの偏差値を計算し、動力学モデルの誤差判定統計量とする。当該統計量により両センサ信頼度の基本確率関数を定義し、そしてDempster-Shafer証拠理論に準じて両センサの情報値を融合し、両センサの観測値から動力学モデルの精度とセンサの不確定性を定量的に計算評価し、推定方法モデルにおける適応項の係数値を得て、最終的にモデルの適応を実現し、横方向速度推定方法のロバスト性を向上する。
【0015】
本発明は、車両の横方向加速度、ヨーレート及び前輪操舵角等の情報を参照し、平方根無軌跡カルマンフィルターSR-UKF方法を利用して車両の横方向速度推定を行う。それにより、車両の様々な運転状態でアルゴリズムノイズの適応を実現する。つまり、本発明の中核は、SR-UKFアルゴリズムを利用して推定を行い、推定の前にセンサデータによりノイズ行列とモデルを姿勢向かい計算を行うことにある。モデルは、動力学と運動学モデルとの2つの部分からなり、2つのモデル重み(占める比率)は、D-S証拠理論に準じて計算する。重みを得た後、適応モデルを得る。その具体的な概略は、図4で示されるようになる。横方向速度推定過程におけるロバスト性と推定精度を向上させるために、推定方法に対して適応則設計を行う。一方、横方向加速度とヨーレートによりノイズ行列を定義し、様々な運転状態でのノイズ適応を実現し、一方、推定方法モデルに適応項を加えて、適応項係数の調節により動力学モデルと運動学モデルとの重み比を調整し、適応項係数の具体的な数値は、横方向加速度とヨーレートセンサ情報を参照してDempster-Shafer証拠理論に準じて計算されてなる。
【0016】
本発明は、以下の工程を含む、マルチセンサ情報融合に基づくモデル適応横方向速度推定方法を提供する。
【0017】
工程1:車両の横方向加速度、ヨーレート、縦方向速度、ステアリングホイール偏向角等を含むセンサデータを入力して、車両動力学モデルと運動学モデルを作成する。
【0018】
【0019】
工程3:動力学モデルと運動学モデルを融合して観測システムモデルを作成し、そしてモデル重み適応項により、モデル適応を実現する。モデル適応方法として、推定方法モデルに適応項を加えて、適応項係数の調節により動力学モデルと運動学モデルとの重み比を調整し、適応項係数の具体的な数値は、横方向加速度とヨーレートセンサ情報を参照してDempster-Shafer証拠理論に準じて計算されてなる。ここで、モデル適応項(即ち、動力学モデルと運動学モデルとの重み比)の決定方法として、車両の横方向加速度センサとヨーレートセンサ測定情報により、それぞれ、動力学モデルにおける横方向力とヨーレートとの偏差値を計算し、動力学モデルの誤差判定統計量とする。当該統計量により両センサ信頼度の基本確率関数を定義し、そしてDempster-Shafer証拠理論に準じて両センサの情報値を融合し、両センサの観測値から動力学モデルの精度とセンサの不確定性を定量的に計算評価し、推定方法モデルにおける適応項の係数値を得て、最終的にモデルの適応を実現する。
【0020】
工程4:適応ノイズ行列と適応モデルをSR-UKFアルゴリズムに代入して横方向速度推定を行う。SR-UKFアルゴリズム工程は、重みの計算とSigma点の生成、Sigma点の伝播、状態値と共分散値の更新/時間の更新、推定値と測定値の更新/計測の更新、カルマンフィルターゲインの更新等の工程を含む。
【0021】
【0022】
上記工程1において、前記運動学モデルを作成することは、即ち、式(4.27)である。
【0023】
上記工程1において、タイヤ縦方向力と横方向力は、マジックフォーミュラを採用して計算される。
【0024】
マジックフォーミュラタイヤモデルには、三角関数の組み合わせを使用してタイヤ実験データをフィッティングし、同じ形式の一つの式を使用してタイヤ縦方向力、横方向力と戻しトルクの運転状態を完全に表記でき、タイヤの横・縦方向力が合わせて作用する場合でも同様に適用し、そしてフィッティング精度がある。そのため、マジックタイヤフォーミュラを採用してタイヤモデルを作成する。縦方向力と横方向力の計算式が、式2.8である。
【0025】
【0026】
車両の旋回走行の途中において、タイヤの縦方向力と横方向力に一定のカップリング関係が存在する。その場合、マジックタイヤフォーミュラ計算結果が以下の通り補正し、式2.13である。
【0027】
上記工程2において、推定方法ノイズ適応は、具体的に、以下のとおりである。
【0028】
【0029】
ここで、
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
当該動力学モデル適応項の意義は、適応的に運動学モデルと動力学モデルとの重み値を調整することができることにある。式5.16を展開すると、
【0035】
上記式5.17により当該係数の作用をより直感的に示す。当該適応項係数がゼロである場合、式5.16における第2の項が完全にマジックタイヤフォーミュラに基づく動力学モデルである。一方、係数が1である場合、式5.16における第2の項が完全に加速度センサに基づく運動学モデルとなり、式5.18で示されるようになる。そのため、動力学モデルとセンサの偏差値を参照し、当該適応項係数の具体的な数値を計算することにより、動力学モデルと運動学モデルの重み適応調節を実現することができる。
【0036】
モデル適応に基づくUKF推定方法は、適応因子によりノイズを調整することにより、モデルの不精確性による誤差を補償する。動力学モデルに横方向加速度センサ情報に基づく適応項を加えることにより、モデルパラメータと加速度センサノイズ累積の影響を軽減する。それとともに、元の共分散の代わりに、平方根アルゴリズムを使用して反復して、ステップ誤差及びカットオフ誤差により共分散が正定性を失い、フィルタリングができなくなる課題を解決する。
【0037】
Dempster-Shafer証拠理論を導入して、横方向加速度センサ、車体ヨーレートセンサと車両動力学モデルとの不確定性情報を処理することにより、各情報源の確率値を計算し、最終的に動力学モデル適応項係数の具体的な数値を得る。
【0038】
以上での推定方法のモデル適応項係数の計算
【0039】
車両重心側スリップ角の推定において、本発明は、横方向加速度センサ及び車体ヨーレートセンサを観測量として使用して、推定される重心側スリップ角と横縦方向速度値を、マジックフォーミュラタイヤモデルに反復することにより、各タイヤの横方向力を計算する。車両の七つの自由度動力学モデルは、マジックタイヤフォーミュラにより計算される横方向力を基礎として、車両の旋回運動時の動力学関係式を作成する。動力学モデルの精確程度を評価するために、以上で横方向力の計算結果と横方向加速度センサ測定結果との偏差値を誤差判定統計量として、横方向加速度センサ情報動力学モデルを参照してある程度の補正を行うことを提案する。しかしながら、実際の場合に、横方向加速度センサは、ある外部の要因による干渉を受ける可能性があるため、その測定値の偏差が比較的に大きくなることがあり、この場合、横方向運動の動力学モデル精確程度が、正確的に補正と評価できなくなる。式5.17によりわかるように、ヨーレートの動力学モデル精度は、かなり四つの車輪の縦方向力と横方向力精度に依存し、そしてインホイールモーター駆動車両の縦方向力が正確的に知られるとみなすため、ヨーレート計算数値も同様に動力学モデル横方向力の精度を反映することができる。アルゴリズムのロバスト性を向上させるために、本発明には、ヨーレートセンサ測定情報を導入し、新たなヨーレート動力学モデル誤差判定統計量を作成し、横方向加速度偏差統計量と交差検証を行い、D-S証拠理論と組み合わせて動力学モデルの正確程度を推定することにより、最終的な動力学モデル適応項係数値を計算する。
【0040】
車体のヨーレートが、ヨーモーメントと車体のz軸回転慣性モーメントとの比の積分と同じであり、以下の式5.26で示されるとおりである。
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
同じように、車体ヨーレートセンサにより観測される動力学モデル精度の基本確率分配関数が、式5.29である。
【0045】
まず、正規化定数Kを計算し、式5.30のとおりである。
【0046】
その後、動力学モデル精度dの組み合わせmass関数を計算し、式5.31のとおりである。
【0047】
センサ情報の精度kの組み合わせmass関数が、式5.32である。
【0048】
この場合、d、kの組み合わせmass関数について、その信頼関数と尤度関数値とを組み合わせた後のmass関数値がいずれも同等である。即ち、式5.33である。
【0049】
動力学モデル適応項係数について、以下の式に従って計算することができ、式5.34のとおりである。
【0050】
ここでμが標定パラメータであり、シミュレーションと実際の実験により定義される。
【0051】
上記工程4で、適応ノイズ行列と適応モデルを代入SR-UKFアルゴリズム横方向速度推定を行う。SR-UKFアルゴリズム工程は、重みの計算とSigma点の生成、Sigma点の伝播、状態値と共分散値の更新/時間の更新、推定値と測定値の更新/計測の更新、カルマンフィルターゲインの更新等の工程を含む。
【0052】
SR-UKFアルゴリズム工程に含まれる内容である、重みの計算とSigma点の生成、Sigma点の伝播、状態値と共分散値の更新/時間の更新、推定値と測定値の更新/計測の更新、カルマンフィルターゲインの更新工程は、いずれも従来技術の工程である。
【0053】
本発明は、システムノイズ行列、アルゴリズムモデル、SR-UKFアルゴリズムという3つの点で車輪の横方向速度推定の適応を実現する。まず、RLSアルゴリズムを使用して、それぞれ、車両の質量及び重心の位置を標識し、担持の変化による動力学モデル誤差を低下させる。その後、車両の横方向加速度とヨーレートセンサ情報を参照してSR-UKFアルゴリズムの過程ノイズ行列と測定ノイズ行列を設計し、推定方法の様々な運転状態でのノイズ適応を実現する。最後に、推定方法モデルに適応項を加えて、D-S証拠理論に準じて適応項パラメータの数値を計算することにより、動力学モデルと運動学モデルとの重み比を定量的に分配し、推定方法モデルの適応を実現する。
【0054】
本発明の推定方法の推定効果を検証するために、以下の検証方式により検証を行った。
【0055】
1、本発明の推定方法に対して高付着路面の二重動線運転状態で検証を行い、検証効果を得た。
【0056】
路面付着係数が0.85であり、標準二重動線運転状態、目的速度が60km/hと設定された。高付着路面の二重動線運転状態での横方向速度の推定誤差は、以下の表1で示される。
【0057】
表1及び図2からわかるように、本発明の方法は、高付着路面の安定運転状態で車両が旋回した場合、SR-UKFアルゴリズムとモデル適応に基づくSR-UKFアルゴリズムが、いずれも横方向速度の変化によく追従できた。しかしながら、車両が安定的に直進し、即ち操舵角が比較的小さい場合、ASR-UKFアルゴリズムの精確性は、SR-UKFよりも優れ、即ち、アルゴリズムの適応方法は効果的であった。
【0058】
2、本発明の推定方法に対して低付着路面の二重動線運転状態で検証を行い、検証効果を得た。
【0059】
CarSimで、車両の初期速度を48km/hと設定し、路面状態が、氷結路面と設定し、路面付着係数が0.4であり、二重動線運転状態で行った。前輪回転角、各車輪の車輪速度、ガウスホワイトノイズを加えた横方向加速度シグナル及びヨーレートシグナルである。
【0060】
誤差分析は、以下の表2で示される。
【0061】
表2及び図3からわかるように、車両が正常に走行する場合、ASR-UKFとSR-UKFの相違が大きくなく、いずれも比較的に精確的に追従して横方向速度の値を推定することができた。しかしながら、車両は操舵角が最も大きい、即ち極端的な非線形領域に入った場合、元のSR-UKFアルゴリズムが、一定の偏差を示し、かつ時間に渡って増加する誤差は、次の安定走行状態に累積した。一方、本発明により提出したモデル適応に基づくSR-UKFアルゴリズムは、依然としてよく追従して横方向速度の値を推定することができた。即ち、本発明方法におけるアルゴリズムの適応規則は、車両の級端運転状態での動力学状態の推定課題をよく処理できた。
【0062】
なお、以上の説明は本発明の好適な実施例にすぎず、本発明を限定するものではなく、前述の実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、当業者にとっては、前述の各実施例に記載された技術的手段を修正したり、その技術的特徴の一部を均等に置き換えたりすることができる。本発明の精神と原則の中で、いかなる修正、同等の置換、改善なども本発明の保護範囲に含まれなければならない。
図1
図2
図3