(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】局所手術用密閉カバーを備える医療装置
(51)【国際特許分類】
A61B 90/00 20160101AFI20231006BHJP
A61C 19/00 20060101ALI20231006BHJP
A61C 13/00 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
A61B90/00
A61C19/00 H
A61C13/00 M
(21)【出願番号】P 2018228694
(22)【出願日】2018-12-06
【審査請求日】2021-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000141598
【氏名又は名称】株式会社吉田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100069420
【氏名又は名称】奈良 武
(72)【発明者】
【氏名】竹本 照美
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-034841(JP,A)
【文献】特開平06-015468(JP,A)
【文献】特開平11-070121(JP,A)
【文献】特開平08-103411(JP,A)
【文献】特開2002-360604(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0143640(US,A1)
【文献】特開2002-345838(JP,A)
【文献】特開昭57-134150(JP,A)
【文献】特開平04-002339(JP,A)
【文献】特表2010-507425(JP,A)
【文献】特開2016-030008(JP,A)
【文献】特開平04-028357(JP,A)
【文献】米国特許第05971978(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0004582(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 - 18/28
90/00
A61M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の患部を切開、切除、蒸散または凝固させるための医療装置であって、前記医療装置は患部を治療するためのプローブと、前記プローブの周囲と治療患部を密閉するように設けた密閉カバーと、前記密閉カバー内で発生する煙、におい、又は粒子を吸引する為の吸引口と、
前記吸引口に接続した吸引装置と吸気口により構成し、前記密閉カバーは、小型カメラが設けられ、
前記密閉カバー内に設けられた小型カメラによって、当該密閉カバーで前記プローブの周囲と治療患部を密閉した場合に治療患部を認識することができるように構成されることを特徴とする局所手術用密閉カバーを備える医療装置。
【請求項2】
前記医療装置は、炭酸ガスレーザ装置、半導体レーザ装置、Nd:YAGレーザ装置、アレキサンドライトレーザ装置、またはルビーレーザ装置であることを特徴とする請求項1に記載の局所手術用密閉カバーを備える医療装置。
【請求項3】
前記プローブはレーザプローブであり、前記密閉カバーは、当該密閉カバーで前記
レーザプローブの周囲と患者の皮膚上の治療患部を密閉した状態で、
前記レーザプローブのレーザ焦点位置が患者の皮膚上の患部位置になるように採寸された形状により構成されることを特徴とする請求項1乃至2記載の局所手術用密閉カバーを備える医療装置。
前記密閉カバーは、当該密閉カバーで前記プローブの周囲と患者の皮膚上の治療患部を密閉した状態で、レーザ焦点位置が患者の皮膚上の患部位置になるように採寸された形状により構成されることを特徴とする請求項1乃至2記載の局所手術用密閉カバーを備える医療装置。
【請求項4】
前記密閉カバーは、治療患部を視認できる、光を透過する透過性の素材で構成されることを特徴とする請求項1乃至3に記載の局所手術用密閉カバーを備える医療装置。
【請求項5】
前記密閉カバーは、光を透過しない不透過性の素材で構成されることを特徴とする請求項1に記載の局所手術用密閉カバーを備える医療装置。
【請求項6】
前記密閉カバーは、前記医療装置から照射されるレーザまたはレーザの散乱光を吸収して目を保護する機能を有する素材で構成されることを特徴とする請求項1乃至
5に記載の局所手術用密閉カバーを備える医療装置。
【請求項7】
前記密閉カバーは、遮光性がなく目を保護しない機能の素材で構成されることを特徴とする請求項1乃至6に記載の局所手術用密閉カバーを備える医療装置。
【請求項8】
前記密閉カバーは、患者との接触部が可撓性のある可撓性接触部を備えることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項5に記載の局所手術用密閉カバーを備える医療装置。
【請求項9】
前記密閉カバーの吸引口又は前記密閉カバーに開口した吸気口にフィルタ部を設けることにより構成したことを特徴とする請求項1乃至8記載の局所手術用密閉カバーを備える医療装置。
【請求項10】
前記密閉カバーには、治療部位を覆ったことを検知する検知手段を設け、
前記検知手段が作動したことを確認して前記吸引装置を作動することができるように構成されることを特徴とする請求項1乃至9記載の局所手術用密閉カバーを備える医療装置。
【請求項11】
前記吸引装置および前記小型カメラは、
前記医療装置と一体型又は分離型により構成したことを特徴とする請求項1乃至10記載の局所手術用密閉カバーを備える医療装置。
【請求項12】
前記吸引装置は、前記医療装置と連動して動作することを特徴とする請求項1乃至11記載の局所手術用密閉カバーを備える医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体に医療装置で外科的処置を施した際に発生する煙、臭いや粒子を防煙かつ防臭する局所手術用密閉カバーを備える医療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の医療装置において、ホクロやイボ等除去の施術を行う場合に、皮膚等が蒸散され煙、臭いや粒子が発生する。通常、これらの煙や臭いや粒子を含む気体は治療室内に拡散する為、空調装置や、施術者や患者の傍に設置されたバキューム装置によって排出される。空調装置の能力やバキューム装置の設置位置によって、煙や臭いが長時間に渡って治療室内に滞留してしまうことがあった。煙の臭いも不快なものであり、さらに煙や粒子には体に有害な物質が混ざっており施術者や患者の体に負担である。
また病院のレイアウトによっては、施術者や患者の傍にバキューム装置を設置することが難しく、施術の邪魔になることがあった。
【0003】
これらの問題点に対応する背景技術の一例としては、歯科治療時に患者の口から飛散する傾向にある血液、唾液、切削粉塵等の飛散物を吸引除去するための歯科用口腔外バキューム装置が提案されている(特許文献1)。
【0004】
又、その他の例としては、生体に外科的処置を施した際に発生するガスを脱臭して清浄化する手術用局所排気システムである(特許文献2)。
【0005】
そして当該特許文献2記載の手術用局所排気システムはチューブによって吸引口をガス発生位置に臨ませて近接配置して臭気や粒子を含むガスを吸引し、脱臭フィルタ部によって脱臭し清浄化するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-75705号公報
【文献】特開2014-204901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さて、前記した特許文献1および2においては、それぞれ以下の問題点を有する。
【0008】
特許文献1に記載の歯科用口腔外バキューム装置は、上下に回動自在なアームの先端面に照明手段を備えており、患者の口元に対する吸引フードの位置によっては、歯科診療時に生じた切削粉塵等を効率的に吸引除去することができない。
【0009】
又、特許文献2に記載の手術用局所排気システムは、生体に外科的処置を施した際に発生するガスを吸引する吸引口と生体の間に隙間が存在している為、治療室内にガスや臭気が滞留してしまうことを防ぐことができない。
【0010】
よって、本発明は上記問題点を解消する為に、患者の患部を切開、切除、蒸散または凝固させるための医療装置であって、前記医療装置は患部を治療するためのプローブと、前記プローブの周囲と治療患部を密閉するように設けた密閉カバーと、前記密閉カバー内で発生する煙、におい、又は粒子を吸引する為の吸引口と、前記吸引口と接続する吸引装置と吸気口を設けた構成により、煙や臭いや粒子を効率的に吸引し、さらに必要な場合には施術者や患者は保護メガネを付ける必要性をなくして、施術者や患者への負担を軽減させることのできる医療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前述した従来の問題点に鑑みてなされたもので、請求項1は、患者の患部を切開、切除、蒸散または凝固させるための医療装置であって、前記医療装置は患部を治療するためのプローブと、前記プローブの周囲と治療患部を密閉するように設けた密閉カバーと、前記密閉カバー内で発生する煙、におい、又は粒子を吸引する為の吸引口と、前記吸引口に接続した吸引装置と吸気口により構成し、前記密閉カバーは、小型カメラが設けられ、前記密閉カバー内に設けられた小型カメラによって、当該密閉カバーで前記プローブの周囲と治療患部を密閉した場合に治療患部を認識することができるように構成されることを特徴とする。
【0013】
請求項2は、請求項1記載の前記医療装置は、炭酸ガスレーザ装置、半導体レーザ装置、Nd:YAGレーザ装置、アレキサンドライトレーザ装置、またはルビーレーザ装置であることを特徴とする。
【0014】
請求項3は、請求項1乃至2記載の前記プローブはレーザプローブであり前記密閉カバーは、当該密閉カバーで前記レーザプローブの周囲と患者の皮膚上の治療患部を密閉した状態で、前記レーザプローブのレーザ焦点位置が患者の皮膚上の患部位置になるように採寸された形状により構成されることを特徴とする。
【0015】
請求項4は、請求項1乃至3記載の前記密閉カバーは、治療患部を視認できる光を透過する透過性の素材で構成されることを特徴とする。
【0016】
請求項5は、請求項1記載の前記密閉カバーは、光を透過しない不透過性の素材で構成されることを特徴とする。
【0017】
請求項6は、請求項1乃至5記載の前記密閉カバーは、前記医療装置から照射されるレーザまたはレーザの散乱光を吸収して目を保護する機能を有する素材で構成されることを特徴とする。
【0018】
請求項7は、請求項1乃至6記載の前記密閉カバーは、遮光性がなく目を保護しない機能の素材で構成されることを特徴とする。
【0019】
請求項8は、請求項1、請求項2または請求項5に記載の前記密閉カバーは、患者との接触部が可撓性のある可撓性接触部を備えることを特徴とする。
【0020】
請求項9は、請求項1乃至8記載の前記密閉カバーの吸引口又は前記密閉カバーに開口した吸気口にフィルタ部を設けることにより構成したことを特徴とする。
【0021】
請求項10は、請求項1乃至9記載の前記密閉カバーには、治療部位を覆ったことを検知する検知手段を設け、前記検知手段が作動したことを確認して前記吸引装置を作動することができるように構成されることを特徴とする。
【0022】
請求項11は、請求項1乃至10記載の前記吸引装置および前記小型カメラは、 前記医療装置と一体型又は分離型により構成したことを特徴とする。
【0023】
請求項12は、請求項1乃至11記載の前記吸引装置は、前記医療装置と連動して動作することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、密閉カバーは可撓性を備える柔らかい部材で構成され、生体の治療患部の施術部に高気密に密着せしめることができ、施術時に発生する煙、臭いや粒子を含む気体を外部に漏らすことなく吸引装置によって吸引除去することができる。
【0026】
又、前記密閉カバーは視認性(透過性)を備える透明部材で構成されることから光を遮ることなく視認性が良好であり、施術部位の確認が容易であるとともに前記治療患部の施術部を認識する小型カメラを備えることにより施術部の位置確認が可能である。
【0027】
そして、前記小型カメラ以外のセンサー手段を備えることにより、前記吸引装置のON/OFFを自動的に遂行することができ、特別な操作を介することなく操作性を向上することができる。
【0028】
さらに、レーザ治療時には、患者と施術者や近傍にいる人はレーザの散乱光から目を保護するために保護メガネを装着する必要があるが、前記密閉カバーはレーザの散乱光を吸収する吸収性を備える素材にて構成するので、メガネの装着を省略することができる。
【0029】
よって、前述の作用効果のもとに所要の施術を実施し得る結果、前記操作の簡易性により施術時に看護師が必要なく施術者一人での施術が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の医療装置の狭範囲用密閉カバーを備える構成を示す実施例1の斜視図である。
【
図2】本発明の医療装置の広範囲用密閉カバーを備える構成を示す実施例2の斜視図である。
【
図3】本発明の医療装置の吸引装置一体型の構成を示す実施例3の構成説明図である。
【
図4】本発明の医療装置の吸引装置分離型の構成を示す実施例4の構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下本発明の医療装置の実施例1~4を図面とともに説明する。
【実施例1】
【0032】
図1は本発明の医療装置の実施例1をレーザハンドピース1に適用するとともに密閉カバー2が狭範囲用型の実施形態とした場合について説明するものである。
【0033】
図1において1は、医療装置としてのレーザハンドピースで、当該レーザハンドピース1のレーザプローブ10のヘッド部11には密閉カバー2を装着するとともにレーザプローブ10には、医療装置本体12が接続されることにより構成されている。
【0034】
又、前記密閉カバー2はレーザプローブ10のヘッド部11による治療患部の視認を可能とする視認性(透過性)を備えるとともにレーザプローブ10のヘッド部11におけるレーザ光13およびレーザ光13の散乱光を吸収可能な光を吸収する効果を備え、かつ治療患部の周囲との接触部に対して気密性を保持することのできる可撓性接触部は、可撓性を備える形成素材にて形成することにより構成する。前記密閉カバー2は、光を吸収する効果を備えない素材であっても良く、光を吸収する効果を備える素材と光の吸収効果を備えない素材を組み合せて使用してもよい。前記密閉カバーは、素材そのものに光を吸収する効果があっても良いし、光を吸収する効果のない素材に光を吸収する効果のある塗料を塗布してもよい。
【0035】
その形成素材の具体例については以下の素材を挙げることができる。
熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマー、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・酢酸ビニルゴム、エピクロルヒドリンゴム、天然ゴム、合成天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロブレンゴム、ウレタンゴム等が好適であり、熱可塑性エラストマーとしては、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・ブタジエン・アクリロニトリル共重合体、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、変成アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、テフロン(登録商標)等のフッ素系を挙げることが出来る。
熱硬化性エラストマーとしては、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フェノール・ホルムアルデヒド、尿素アルファ-セルロース充填、メラミン・ホルムアルデヒド、エポキシ、フラン、キシレン、不飽和ポリエステル、ジアリルフタレートを挙げることができる。
【0036】
又、前記密閉カバー2の形状については、治療患部の部位に対応し得る形状が要求されるが、特にレーザハンドピース1においては、ヘッド部11の焦点位置14の採寸に対応することのできる構成により形成することが要求される。
【0037】
すなわち、レーザ光13の焦点位置14にて切開、切除、蒸散した時に煙や臭気が発生するもので、密閉カバー2は当該発生部位の周囲を高気密に密閉することのできる形状により構成することが要求され、それは同時に前記したようにレーザ光13の焦点位置14の採寸となる。
また、前記密閉カバー2は、患者の治療患部を含む周辺領域を3Dスキャナによりスキャンしたデータに基づいて作成してもよい。この場合、患者個人に基づいたフィット性を向上した密閉カバーを提供することが出来る。
患者との接触部は、可撓性のある可撓性接触部により構成される。可撓性接触部は、患者との接触部を滑らかに移動する為に、円筒状の回転物といった駆動部(図示しない)を備えてもよい。前記駆動部は、密閉カバー2に埋め込むように構成され、円筒状の回転物が回転することで、吸引時も患者との接触部を滑らかに移動する。
また、粘性のある液体を治療患部周辺に塗布し、液体の粘性によって、前記密閉カバー2が患者との接触部を滑るように移動してもよい。
【0038】
尚、前記密閉カバー2は図示の円筒状の形状に限定されず、必要に応じて多角形の筒状体あるいは治療患部の周囲の形態に対して適切に対応し得る形状により実施することができる。
【0039】
しかして、前記密閉カバー2の吸引口2bを開口するとともに吸引口2bに接続部材(バキュームホース)21を介して吸引装置20を装備し、さらに当該密閉カバー2内には小型カメラ30を設置することにより構成されている。
【0040】
又、吸気口40は密閉カバー2に開口した吸気口で、当該吸気口40にはメッシュ部材41を張設するとともに当該吸気口40にはフィルタ(図示しない)や逆止弁(図示しない)を着脱自在に装着することにより構成する。吸気口40にフィルタや逆止弁を設けることで、吸引を開始した時に密閉カバー内が真空になることを防ぎ、さらに吸引を終了した時に外部からのゴミや粒子および密閉カバー内で発生した蒸散した物質を外部に漏れることを防止する効果がある。
【0041】
すなわち、前記着脱自在に装着するフィルタとしては、治療部へのレーザ照射時に発生する煙、臭いや粒子を除去することのできるフィルタを装着することにより実施するものである。
【0042】
尚、前記フィルタは、一般的な空調用や除塵用として利用される公知の除塵用フィルタや、臭気やガスの除去に適した一般的な吸着フィルタを用いるとよい。例えば、活性炭、ACF(繊維状活性炭)、化学吸着剤、イオン交換樹脂、ゼオライト、活性アルミナ等からなるものを用いるとよい。又フィルタには、臭気の除去に適した触媒を担持しておいてもよい。
【0043】
そして、当該フィルタによる作用効果は、密閉カバー2の吸引口2bにフィルタを装着する構成によっても達成することができる。
【0044】
さて、前記レーザハンドピース1の構成における吸引装置20の構成の詳細については図示するものではないが、当該技術分野における公知の吸引装置を適用することにより実施することができる(例えば、商品名「ウィスパーリベル2」歯科用吸引装置ポンプ JMDN:7072700(株)ヨシダ製)。
【0045】
尚、以下には実施に使用する吸引装置20の適用例を示す。
【0046】
吸引装置20は真空吸引するバキューム用モーターを備えている。動作原理は下記の通り。
吸引装置20は、操作スイッチが入れられると、モーターが回転を始めモーターはベルトで接続されたブロアーのタービンを回転させる。
【0047】
タービンの回転により生じる負圧によって歯科用ユニットの吸引装置で吸引を行い吸引した空気は例えば吸引装置用フィルタ(図示しない)により濾過され排気される。
【0048】
吸引装置用フィルタとしては、粒子の除去に適した一般的な空調用や除塵用として利用される下記に記載した公知のエアフィルタを用いるとよい。
・MEPAフィルタ(メパフィルタ英:Medium Efficiency Particulate Air Filter)
中性能フィルタは粒径が5?より小さい粒子に対して中程度の粒子捕集効率をもつエアフィルタ。
・HEPA(ヘパフィルタ、英:High Efficiency Particulate Air Filter)
高性能フィルタ。定格流量で粒径が0.3?の粒子に対して99.97%以上の粒子捕集効率を持ち、かつ初期圧力損失が245Pa(25mmH20)以下の性能を持つエアフィルタ。
・ULPA(ウルパフィルタ、英: Ultra Low Penetration Air Filter)
高性能フィルタ。定格流量で粒径が0.15?の粒子に対して99.9995%以上の粒子捕集効率を持ち、かつ初期圧力損失が245Pa(25mmH20)以下の性能を持つエアフィルタ。
【0049】
さらに前記レーザハンドピース1の構成における小型カメラ30の構成については、治療患部の位置または範囲の確認を行うことを特徴とする。すなわち、治療患部が密閉カバー2に覆われることで位置の確認が難しいが、密閉カバー2上部に設けられた小型カメラ30によって施術部の位置を確認することが出来るので安全に施術することができる。
【0050】
また、治療患部の位置が確認できれば良く、小型カメラ30の設置場所は密閉カバー2上部に限定されない。
【0051】
すなわち煙は上部に溜まるので、密閉カバー2上部に小型カメラ30を設置すると画像認識し難い可能性がある。例えば、施術の前後や施術の様子なども小型カメラで記録し、カルテ情報に保存することで患者への説明時に活用することが出来る。
【0052】
さらに小型カメラ30をセンサーのように使用しても良い。例えば、施術部から煙や気体が発生したことを小型カメラ30で画像認識し検知することで吸引装置20と連動して動作し、煙や気体が排気されて消失したことを画像認識し検知すると吸引装置が停止する。
【0053】
レーザ光13を自動的に前後左右にスキャニングさせるスキャニング機能付きのレーザ装置であれば、小型カメラ30で確認した治療患部の位置または範囲に合わせて自動的にスキャニングすることが出来る。
【0054】
また、前記レーザハンドピース1の構成において医療装置本体12のON/OFFと前記吸引装置20の電源は連動して動作し、医療装置本体12の電源を切った数秒後に吸引装置20の電源も自動的に切れる構成とする実施が好適である。
【0055】
以上の構成からなるレーザハンドピース1により、治療患部の施術を遂行する場合には、特に本実施例1の場合には狭範囲用の密閉カバー2を装着するものであって、患者の顔等、凹凸の多い部位に使用することが好適である。
【0056】
そして、密閉カバー2の患部の部位に対する皮膚との密着端面2aは、可撓性の柔軟な素材で形成されることにより治療部位に密着しやすく、さらに吸引装置20で減圧することによりぴったりと治療患部の部位周囲に密着させることができる。
【0057】
よって、治療患部の部位周囲を密閉カバー2により高気密に密閉することができ、レーザ光13による治療患部を切開、切除、蒸散又は凝固させる等の施術の際に発生する煙、臭い又は粒子等の気体を密閉カバー2により防煙防臭しつつ、当該密閉カバー2に接続した接続部材21を介して吸引装置20により吸引除去することができる。
【0058】
又、前記密閉カバー2は視認性(透過性)を備える透明部材で構成されることから光を遮ることなく視認性が良好であり、施術部位の確認が容易であるとともに前記治療患部の施術部を認識する小型カメラ30を備えることにより施術部の位置確認が可能である。
【0059】
さらに、レーザ治療時には、患者と施術者や近傍にいる人はレーザの散乱光から目を保護するために保護メガネを装着する必要があるが、前記密閉カバー2はレーザの散乱光を吸収する吸収性を備える素材にて構成するので、メガネの装着を省略することができる。
【0060】
よって、前述の作用効果のもとに所要の施術を実施し得る結果、前記操作の簡易性により施術時に看護師が必要なく施術者一人での施術が可能となる。
【0061】
尚、前記構成における密閉カバー2については、ヘッド部11に装着した実施形態を説明したが、これを着脱自在な構成を備える(図示しない)ことにより繰り返し使用することができるようにするとともに使い捨てとすることも可能である。
【0062】
すなわちレーザ装置による切開、切除、蒸散などの施術時には煙や臭い、粒子が発生し、これが密閉カバー2内部に付着することが考えられることから、当該密閉カバー2の成形素材が耐熱、耐滅菌性を有することから、これを掃除しつつ使用することも可能であるが、使い捨てとする実施形態が望ましい。
【0063】
但し、当該密閉カバー2は、前記したように134℃以上の耐熱性を備える素材により形成され、オートクレーブで高温滅菌することが可能であるとともに薬剤耐性を備えるものである。
【実施例2】
【0064】
図2は、本発明医療装置の実施例2をレーザ装置50に適用するとともに密閉カバー2が広範囲用型の実施形態とした場合について説明するものである。
【0065】
そして、
図2において
図1の実施例1において説明した構成と同一構成は、同一番号を付してその構成説明を省略する。
【0066】
50は医療装置としてのレーザ装置を示すとともに51はそのレーザプローブを示すものである。
【0067】
前記レーザ装置50のレーザプローブ51に装着した密閉カバー2は、
図1の実施例1に対して広範囲用型の実施形態からなるもので、
図1の狭範囲用型の密閉カバー2が患者の顔等の凹凸の多い部位に使用するのに対して、患者の首から下の凹凸の少ない部位において使用するものである。
【0068】
そして密閉カバー2の上部2cと下部2dを2分した構成とし、密着端面2aを備える下部2dについては、上部2cの成形素材に対してより柔軟性に富む素材、例えばシリコーンゴム等により形成することにより構成する。
尚、当該密閉カバー2の構成については、前記段落〔0032〕に記載した構成によって実施することが好適である。
【0069】
又、密着端面2aの周方向には所要間隔置きにタッチセンサー60を設置することにより構成してある。
【0070】
かかるタッチセンサー60については、治療患部を覆ったことを検知して吸引装置20と連動して医療装置1、50を動作することができるように構成したものである。
【0071】
従ってそのセンサーとしては、圧力センサー、光センサー、静電容量センサー又は温度センサー等を設置することにより構成する。
【0072】
尚、この吸引装置20と連動の動作の構成については、前記タッチセンサー60による構成に限定されず、医療装置1、50のレーザ装置の操作部において操作する構成により実施することが可能である。
【0073】
よって、以上の実施例2の医療装置としてのレーザ装置50により実施例1のレーザハンドピース1による実施と同様の作用効果を奏しつつ所期の施術を実施することができる。
【実施例3】
【0074】
図3は医療装置に対して実施例1および2における吸引装置20を一体型とした実施形態の構成を示すものである。
【0075】
すなわち、医療装置本体12に密閉カバー2に装備する吸引装置20および小型カメラ30の駆動電源回路部31を一体に組み込むとともに医療装置1、50のレーザ発振管70、空気供給源71の制御部80により制御するとともに表示部81を介して表示することにより実施例1および2において必要な操作を実施することができるように構成したものである。
【実施例4】
【0076】
図4は、
図3の実施例3における一体型の実施形態を分離型とする構成を示すものである。
【0077】
すなわち、医療装置本体12とは分離して吸引装置20および小型カメラ30の駆動電源回路部31の制御部90を別体に設けることにより構成したものである。
【0078】
以上の実施例1~4における医療装置については、炭酸ガスレーザ装置、半導体レーザ装置、Nd:YAGレーザ装置、アレキサンドライトレーザ装置、ルビーレーザ装置および高周波電気メスにおいて適用することができる。
【0079】
しかして、これらのレーザ装置の中、整形外科分野として、Nd:YAGレーザ装置は皮膚の真皮にある皮膚色素性病変に対し治療可能であり、アレキサンドライトレーザ装置やルビーレーザ装置は皮膚の表皮の色素沈着の除去に有効である。
【0080】
また、炭酸ガスレーザ装置はイボや色素沈着の除去に有効であり、アレキサンドライトレーザ装置は、アレキサンドライトという鉱物の人工合成石を触媒とする755mmの波長を持つレーザ装置である。
【0081】
また、ルビーレーザ装置は、ルビーの人工合成石を触媒とする694nmの波長を持つレーザ装置であり、どちらもメラニン色素を吸収しやすい特徴がある。
【符号の説明】
【0082】
1 レーザハンドピース
2 密閉カバー
2a 密着端面
2b 吸引口
2c 上部
2d 下部
10 レーザプローブ
11 ヘッド部
12 医療装置本体
13 レーザ光
14 レーザ光の焦点位置
20 吸引装置
21 接続部材(バキュームホース)
30 小型カメラ
31 駆動電源回路部
40 吸気口
41 メッシュ部材
50 レーザ装置
51 レーザプローブ
60 タッチセンサー
70 レーザ発振管
71 空気供給源
80 制御部
81 表示部
90 制御部