(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 34/16 20200101AFI20231006BHJP
【FI】
D06F34/16
(21)【出願番号】P 2019170961
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2022-02-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 龍太
(72)【発明者】
【氏名】徳崎 雅朗
【審査官】粟倉 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-130376(JP,A)
【文献】特開平10-263275(JP,A)
【文献】特開2014-133182(JP,A)
【文献】特開2000-308793(JP,A)
【文献】特開2019-024719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/00-34/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯兼脱水槽と、
前記洗濯兼脱水槽を備えた水受け槽と、
前記洗濯兼脱水槽を回転駆動する駆動部と、
圧力センサで構成され前記洗濯兼脱水槽の水位を圧力で検知し出力する水位検知部と、
洗い工程、すすぎ工程、および、脱水工程を実行する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記すすぎ工程において、
前記駆動部による前記洗濯兼脱水槽の回転によって、前記水受け槽内の洗濯液に遠心力を作用させ、前記洗濯兼脱水槽と前記水受け槽の間の洗濯液を撹乱する撹乱工程を実行し、前記制御部は、前記撹乱工程において、
前記洗濯兼脱水槽内の水位の変動である前記水位検知部の出力値の変動が閾値を超えている場合には、前記洗濯兼脱水槽内の洗濯物のアンバランスが発生していると判定し、前記洗濯兼脱水槽の回転数を低減する変更工程の実行を決定する、洗濯機。
【請求項2】
洗濯兼脱水槽と、
前記洗濯兼脱水槽を備えた水受け槽と、
前記洗濯兼脱水槽を回転駆動する駆動部と、
圧力センサで構成され前記洗濯兼脱水槽の水位を圧力で検知し出力する水位検知部と、
洗い工程、すすぎ工程、および、脱水工程を実行する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記すすぎ工程において、
前記駆動部による前記洗濯兼脱水槽の回転によって、前記水受け槽内の洗濯液に遠心力を作用させ、前記洗濯兼脱水槽と前記水受け槽の間の洗濯液を撹乱する撹乱工程を実行し、前記制御部は、前記撹乱工程において、
前記洗濯兼脱水槽内の水位の変動である前記水位検知部の出力値の変動が閾値を超えている場合には、前記洗濯兼脱水槽内の洗濯物のアンバランスが発生していると判定し、前記アンバランスの状態を修正する修正すすぎ工程の実行を決定する、洗濯機。
【請求項3】
前記制御部は、前記撹乱工程において、前記洗濯兼脱水槽の前記回転数を上昇させながら前記洗濯液の排水を実行する、請求項1または請求項2に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記洗濯兼脱水槽内の洗濯物の量を検知する布量検知部をさらに備え、
前記制御部は、前記布量検知部の出力に基づいて洗濯物の量が多いと判断した場合、前記変更工程における前記回転数を小さくし、前記布量検知部の出力に基づいて洗濯物の量が少ないと判断した場合、前記変更工程における前記回転数を大きくする請求項1に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記洗濯兼脱水槽内の洗濯物の量を検知する布量検知部をさらに備え、
前記制御部は、前記布量検知部の出力に基づいて判断した洗濯物の量が多いほど、前記撹乱工程の開始時における前記洗濯兼脱水槽の前記水位が低くなるよう変更する請求項1または2に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、すすぎ工程の終わりに、洗濯兼脱水槽と水受け槽の間の洗濯液を撹乱する撹乱工程を実行する洗濯機を開示する。
【0003】
図8は、特許文献1に記載された従来の洗濯機の縦断面図、
図9は、同洗濯機の要部工程図、
図10は、同洗濯機の撹乱工程の要部動作タイムチャートである。以下その構成について説明する。
【0004】
従来の洗濯機は、水受け槽101と水受け槽101の内部に回転自在に配設されている洗濯兼脱水槽103を備えている。水受け槽101はサスペンション104を介して防振支持されている。洗濯兼脱水槽103内には、洗濯物113と洗剤114が投入され、洗濯液が所定水位まで入れられる。洗濯兼脱水槽103の上部にはバランサー110が設けられている。洗濯兼脱水槽103の内底部には回転自在にパルセータ102が設けられている。水受け槽101の底面には、洗濯兼脱水槽103および/またはパルセータ102を駆動するモータ106が配設されている。モータ106は、駆動の切換を行うクラッチ機構107を介して、洗濯兼脱水槽103および/またはパルセータ102を駆動する。洗濯兼脱水槽103の上部には、給水口117が設けられている。制御装置116は、モータ106、排水弁108、および、給水弁109の動作を制御し、洗い、すすぎ、脱水などの一連の工程を逐次制御する。
【0005】
次に、従来の洗濯機の動作(洗濯運転)を説明する。洗濯兼脱水槽103内に洗濯物113と洗剤114が投入され、洗濯液が所定水位まで入れられる。そして、制御装置116によりモータ106が回転駆動され、洗濯兼脱水槽103および/またはパルセータ102が回転して、洗濯物113に付着した汚れを落す、洗い工程が行われる。
【0006】
つぎに、洗濯物113に残留付着した洗剤114成分を取り除くために、汚れおよび洗剤114成分を含んだ洗濯液が一度排水され、再び給水が行われる。そして、洗濯兼脱水槽103および/またはパルセータ102が回転して、洗濯物113から洗剤114成分を取り除く、すすぎ工程が行われる。すすぎ工程終了後は、制御装置116は、すすぎ工程に使った洗濯液を排水し、洗濯兼脱水槽103を回転させ、遠心力によって洗濯物113に含まれた洗濯液を排出する脱水工程を行う。
【0007】
当該従来の洗濯機においては、
図9に示すように、制御装置116は、すすぎ工程の終わりにおいて、洗濯液の排水の途中に所定水位で排水を止め、再度、洗濯兼脱水槽103の回転によって、水受け槽101の洗濯液に遠心力を作用させ、洗濯液を撹乱させる撹乱工程を実行する。撹乱工程においては、洗濯兼脱水槽103と水受け槽101の間の洗濯液が撹乱されて、洗濯兼脱水槽103の外面と水受け槽101の内面の壁面に吸着して残っていた洗剤カス115が撹乱の水流の力により除去される。
【0008】
また、制御装置116は、洗濯兼脱水槽103と水受け槽101の間の洗濯液を撹乱する撹乱工程にて、
図10(a)に示すように、洗濯兼脱水槽103を回転数Nにて回転させている途中から、
図10(b)に示すように、排水弁108をオンして洗濯液の排水を始め、洗濯兼脱水槽103を回転しながら排水するように制御する。さらに、
図10(c)に示すように、制御装置116は、洗濯兼脱水槽103を回転数Nにて回転させている
途中から、給水弁109をオンして給水するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来の洗濯機は、洗濯兼脱水槽103の外面と水受け槽101の内面の壁面に吸着して残っていた洗剤カス115を除去するために撹乱工程を実行する。このため、洗濯兼脱水槽103内の洗濯物113のバランスが悪い場合には、制御装置116が洗濯兼脱水槽103を回転させると、洗濯兼脱水槽103が激しく揺れる。これにより、遠心力を作用させた洗濯液が機外に飛散し水漏れが発生したり、洗濯機の振動や騒音が大きくなるというおそれがあった。
【0011】
本開示は、撹乱工程における洗濯液の機外への飛び散り、ならびに、洗濯機の振動および騒音を防止する。さらに、洗濯兼脱水槽の外面と水受け槽の内面の壁面に吸着して残っていた洗剤カスを撹乱の水流の力により、安定して除去することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示に係る洗濯機は、洗濯兼脱水槽と、前記洗濯兼脱水槽を備えた水受け槽と、前記洗濯兼脱水槽を回転駆動する駆動部と、圧力センサで構成され前記洗濯兼脱水槽の水位を圧力で検知し出力する水位検知部と、洗い工程、すすぎ工程、および、脱水工程を実行する制御部とを備えている。前記制御部は、前記すすぎ工程において、前記駆動部による前記洗濯兼脱水槽の回転によって、前記水受け槽内の洗濯液に遠心力を作用させ、前記洗濯兼脱水槽と前記水受け槽の間の洗濯液を撹乱する撹乱工程を実行する。前記制御部は、前記撹乱工程において、前記洗濯兼脱水槽内の水位の変動である前記水位検知部の出力値の変動が閾値を超えている場合には、前記洗濯兼脱水槽内の洗濯物のアンバランスが発生していると判定し、前記洗濯兼脱水槽の回転数を低減する変更工程の実行を決定する。
【発明の効果】
【0013】
本開示における洗濯機は、撹乱工程における洗濯液の機外への飛び散り、ならびに、洗濯機の振動および騒音を防止する。さらに、洗濯兼脱水槽の外面と水受け槽の内面の壁面に吸着して残っていた洗剤カスを撹乱の水流の力により、安定して除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る洗濯機の縦断面図
【
図3】同洗濯機の基本的運転手順を示すシーケンス図
【
図4】同洗濯機の水位検知部の出力と水位との関係を示す図
【
図5】同洗濯機の水位検知部の出力および脱水回転数と時間との関係を示す図
【
図6】本開示の実施の形態2に係る洗濯機運転手順を示すシーケンス図
【
図10】同洗濯機の撹乱工程の要部動作タイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。なお、添付図面及び以下の説明によって本開示が限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
以下、
図1~
図4を用いて、実施の形態1を説明する。
【0017】
(洗濯機の構成)
図1は、実施の形態1における洗濯機の縦断面図、
図2は、同洗濯機のブロック回路図である。
【0018】
図1および
図2に示すように、本実施の形態に係る洗濯機は、水受け槽1と水受け槽1の内部に回転自在に配設されている洗濯兼脱水槽3を備えている。水受け槽1はサスペンション4を介して防振支持されている。洗濯兼脱水槽3内には、洗濯物13と洗剤が投入され、洗濯液が所定水位まで入れられる。洗濯兼脱水槽3の上部にはバランサー10が設けられている。洗濯兼脱水槽3の内底部には回転自在にパルセータ2が設けられている。水受け槽1の底面には、洗濯兼脱水槽3および/またはパルセータ2を駆動するモータ6が配設されている。モータ6は、駆動の切換を行うクラッチ機構7を介して、洗濯兼脱水槽3および/またはパルセータ2を駆動する。水位検知部18は、洗濯兼脱水槽3および水受け槽1内の水位を検知する。水位検知部18は、例えば、圧力センサで構成される。
【0019】
制御装置16は、マイクロコンピューターで構成された制御部19を有している。制御部19は、パワースイッチング部20を介してモータ6、排水弁8、給水弁9、などの動作を制御し、洗い、すすぎ、脱水などの一連の工程を逐次制御する。操作表示部21により、使用者は運転コース等を設定する。制御部19には、操作表示部21からの情報が入力される。操作表示部21は、設定された運転コースなどを表示して使用者に知らせる。記憶部22は、制御部19により制御するのに必要なデータを記憶している。
【0020】
回転検知部26はホールICなどで構成され、モータ6に取り付けられて、モータ6の回転を検知する。布量検知部23は、洗濯兼脱水槽3内の洗濯物13の量を検知する。回転検知部26の出力が布量検知部23に入力される。モータ6によりパルセータ2が駆動した後、駆動を停止したときのパルセータ2の回転数の低下度合いにより、布量検知部23は洗濯兼脱水槽3内の洗濯物13の量を検知する。なお、電源スイッチ24は、商用電源25から洗濯機に供給される電力をON/OFFするものであり、使用者により手動操作される。
【0021】
以上のように構成された洗濯機について、以下、その動作及び作用を説明する。
【0022】
(洗濯運転)
図3は、実施の形態1に係る洗濯機の基本的運転手順を示すシーケンス図、
図4は、同洗濯機の水位検知部の出力と水位との関係を示す図、
図5は、同洗濯機の水位検知部の出力および脱水回転数と時間との関係を示す図である。
【0023】
図3に示すように、本実施形態に係る洗濯機においては、制御部19は、すすぎ工程の終わりに、洗濯兼脱水槽3を回転させて水受け槽1内の洗濯液に遠心力を作用させ、洗濯兼脱水槽3と水受け槽1の間の洗濯液を撹乱する工程である撹乱工程を実行する。また、制御部19は、撹乱工程において、水位検知部18の出力に基づくアンバランス検知を実行する。
【0024】
以下、本実施の形態に係る洗濯機の動作の詳細について説明する。
【0025】
まず、洗濯兼脱水槽3内に洗濯物13と洗剤が投入され、洗濯液が所定水位まで入れられる。制御部19は、モータ6が回転駆動し、洗濯兼脱水槽3および/またはパルセータ2が回転して、洗濯物13に付着した汚れを落す洗い工程を行う(ステップS1)。
【0026】
つぎに、洗濯物13に残留付着した洗剤成分を取り除くために、汚れ、洗剤成分を含んだ洗濯液の排水が一度行われる。そして、再び給水が行われて、制御部19は、洗濯兼脱水槽3および/またはパルセータ2を回転させ、洗濯物13から洗剤成分を取り除くすすぎ工程を開始する(ステップS2)。
【0027】
上述のとおり、制御部19は、すすぎ工程の終わりに、洗濯液の排水の途中に所定水位で排水を止めるように制御し、再度、洗濯兼脱水槽3が回転するようにモータ6を駆動して(ステップS4)、撹乱工程を実行する(ステップS3)。これにより、水受け槽1の洗濯液に遠心力が作用し、洗濯液が撹乱する。
【0028】
この洗濯液の撹乱は、洗濯液に遠心力が作用して、洗濯兼脱水槽3と水受け槽1の間を回転するときに、洗濯兼脱水槽3および水受け槽1の僅かな壁面の凹凸によって発生する。
【0029】
水受け槽1内の水位は、洗濯兼脱水槽3の回転数が高くなるほど、遠心力の作用で上昇する。なお、本実施の形態においては、
図4で示すように、水位検知部18の出力と水受け槽1の水位との関係は、水位が上昇するにつれて、水位検知部18の出力値は低くなる関係となっている。
【0030】
また
図5に示すように、水位検知部18の出力と洗濯兼脱水槽3の回転数の関係は、洗濯兼脱水槽3の回転数が高くなるにつれて、水位検知部18の出力値は低くなる関係となっている。
【0031】
制御部19は、撹乱工程(ステップS3)が終了すると、すすぎ工程に使われた洗濯液を排水し、洗濯兼脱水槽3が回転して、遠心力によって洗濯物13に含まれた洗濯液を排出する脱水工程を実行する(ステップS7)。脱水工程において、制御部19はまず排水弁8を開放して排水する。排水が終了すると、制御部19はクラッチ機構7を脱水側に切り換えて、モータ6の動力を脱水軸を介し洗濯兼脱水槽3に伝達して回転させ、脱水を実行する。排水弁8は開放状態を維持する。脱水工程(ステップS7)の終了によって運転終了となる。
【0032】
以上のような一連の動作において、本実施の形態に係る洗濯機においては、撹乱工程(ステップS3)において、制御部19は、水位検知部18によって測定された水位変動に基づいて、アンバランス検知を実行する(ステップS5)。
【0033】
図5に示すように、洗濯物13のバランスが良い状態であれば、洗濯兼脱水槽3の回転数が上昇するのにあわせて、水位検知部18の出力値も連動して変化する。これに対し、洗濯物13のバランスが悪い状態では、洗濯兼脱水槽3の回転数上昇にあわせて、水受け槽1に激しい揺れが発生するとともに、遠心力を作用させた洗濯液の上下変動が発生するため、水位検知部18の出力値は大きく変動する。
【0034】
以下、アンバランス検知の詳細について説明する。モータ6の駆動によって、洗濯兼脱水槽3を回転させる間に、100ms毎に水位検知部18の出力値を記憶する。1秒間の最初の出力値をH0とし、最大出力値をHmaxとした場合、設定値以上(例えば、Hmax-H0>800Hz)であれば、制御部19は洗濯物13のアンバランスが発生していると判断し(ステップS5のYes)、回転数変更工程を実行する(ステップS6)。すなわち、制御部19は、洗濯兼脱水槽3の水位の変動(すなわち、水位検知部18の出力値の変動)が閾値を超える場合には、洗濯物13のアンバランスが発生していると判定し、回転数変更工程(ステップS6)を実行する。
【0035】
回転数変更工程(ステップS6)においては、洗濯兼脱水槽3の回転数を、例えば目標設定回転数200rpmに対し、150rpmにするなど、洗濯兼脱水槽3の回転数が低減される。すなわち、水受け槽1の激しい揺れを低減させた状態にして、モータ6による洗濯兼脱水槽3の回転を継続するようにする。また、水位検知部18の出力値の変動が閾値以下であれば、制御部19は、洗濯物13のアンバランスは発生していないと判断し(ステップS5のNo)、回転数変更工程(ステップS6)を実行することなく、目標設定回転数にて回転を継続するように制御する。そして、制御部19は、脱水工程(ステップS7)に移行する。
【0036】
これにより、制御部19はモータ6の回転を制御し、遠心力を作用させた水受け槽1の洗濯液が洗濯兼脱水槽3の上面を超えないように、洗濯兼脱水槽3の回転を制御する。これにより、洗濯液が機外へ飛び散ることが防止され、また洗濯機の振幅を抑制することもできる。したがって、撹乱工程における振動や騒音が防止されるとともに、洗濯兼脱水槽の外面と水受け槽の内面の壁面に吸着して残っていた洗剤カスを撹乱の水流の力により安定して除去することができる。
【0037】
以上説明したとおり、本実施形態に係る洗濯機においては、制御部19は、撹乱工程において、水位検知部18により検出された洗濯兼脱水槽3の水位変動が閾値を超える場合には、洗濯兼脱水槽3の回転数を低減する変更工程を実行する。
【0038】
(実施の形態2)
図6は、実施の形態2に係る洗濯機運転手順を示すシーケンス図、
図7は、同洗濯機の要部動作タイムチャートである。実施の形態1と同一構成については、同一符号を付して、説明を省略する。
【0039】
実施の形態2に係る洗濯機においては、
図6に示すように、制御部19がアンバランス異常を検知し洗濯物13の状態がアンバランスであると判断した場合(ステップS15のYes)は、制御部19は洗濯兼脱水槽3の回転運転を中断する。そして、制御部19は、給水工程-撹乱工程-排水工程からなる修正すすぎ工程を実行する(ステップS16)。制御部19は、修正すすぎ工程の後に、再度、洗濯兼脱水槽3が回転するようにモータ6を駆動して(ステップS14)、撹乱工程を実行する(ステップS13)。すなわち、制御部19は、撹乱工程(ステップS13)のアンバランス検知(ステップS15)において、水位検知部18により検出された洗濯兼脱水槽3の水位の変動が閾値を超える場合(ステップS15のYes)には、修正すすぎ工程を実行する(ステップS16)。
【0040】
これにより、洗濯物13がアンバランスの状態で洗濯兼脱水槽3の回転数が上昇していく際に発生する水受け槽1の激しい揺れが防止される。また洗濯物13のアンバランス状態を解消することができるため、洗濯機の振動や騒音を抑え、洗濯兼脱水槽3の外面と水受け槽1の内面の壁面に吸着して残っていた洗剤カスを撹乱の水流の力により安定して除去することができる。
【0041】
(実施の形態3)
図7は、実施の形態3に係る洗濯機の要部動作タイムチャートである。実施の形態1、2と同一構成については、同一符号を付して、説明を省略する。
【0042】
本実施の形態に係る洗濯機においては、
図7に示すように、洗濯兼脱水槽3と水受け槽1の間の洗濯液を撹乱する工程において、洗濯兼脱水槽3の回転前から排水弁8を開放して洗濯液の排水を始め、洗濯兼脱水槽3を回転しながら排水する。すなわち、制御部19は、洗濯兼脱水槽3の回転数を上昇させながら、洗濯液の排水を実行する。これにより、
撹乱の力により、洗剤カスを除去しながら洗濯液が排水されるので、洗濯時間を短くできる。さらに除去された洗剤カスが洗濯兼脱水槽3に浸入し、洗濯物13に洗剤カスが再付着することを防止することができる。
【0043】
(実施の形態4)
実施の形態4に係る洗濯機は、洗濯兼脱水槽3内の洗濯物13の量を検知する布量検知部23の出力と水位検知部18の出力に応じて、撹乱工程における洗濯兼脱水槽3の回転数を変更する。実施の形態1~3と同一構成については、同一符号を付して、説明を省略する。
【0044】
本実施の形態においては、制御部19は、布量検知部23の出力に基づいて洗濯物13の量が多いと判断した場合、撹乱工程における洗濯兼脱水槽3の回転数を小さくする。一方、制御部19は、布量検知部23の出力に基づいて洗濯物13の量が少ないと判断した場合、撹乱工程における洗濯兼脱水槽3の回転数を大きくする。これにより、洗濯物13の量によって撹乱の水流の水位が大きく変動するのを防止し、より安定して洗剤カスを除去することができる。
【0045】
(実施の形態5)
実施の形態5に係る洗濯機は、洗濯兼脱水槽3内の洗濯物13の量を検知する布量検知部23の出力に応じて、撹乱工程開始時における洗濯兼脱水槽3の水位を変更する。実施の形態1~4と同一構成については、同一符号を付して、説明を省略する。
【0046】
本実施の形態においては、制御部19は布量検知部23の出力に基づいて、あらかじめ、記憶されている撹乱工程開始時における複数の水位のうち、どの水位に設定するか決定するように構成されている。設定される水位は、洗濯物13の量が多くなるほど、低くなるようにすればよい。これにより、洗濯物13の量が多い場合に洗濯液が洗濯兼脱水槽3の上面を超えることを防止し、より安定して洗剤カスを除去することができる。
【0047】
以上、実施の形態1~5について説明したが、ある実施の形態例の構成の一部を他の実施の形態例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態例の構成に他の実施の形態例の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態例の構成の一部について、他実施の形態例の構成を追加・削除・置換をすることが可能である。
【0048】
(作用等)
以上のように、本開示に係る洗濯機は、洗濯兼脱水槽3と、洗濯兼脱水槽3を備えた水受け槽1と、洗濯兼脱水槽3を回転駆動するモータ6と、洗濯兼脱水槽3の水位を検知する水位検知部18と、洗い工程、すすぎ工程、および、脱水工程を実行する制御部19とを備えている。制御部19は、すすぎ工程において、モータ6による洗濯兼脱水槽3の回転によって、水受け槽1内の洗濯液に遠心力を作用させ、洗濯兼脱水槽3と水受け槽1の間の洗濯液を撹乱する撹乱工程を実行する。制御部19は、撹乱工程において、水位検知部18の出力に応じて、洗濯兼脱水槽3の回転数を低減する変更工程の実行を決定する。
【0049】
これにより、撹乱工程における洗濯液の機外への飛び散り、ならびに、洗濯機の振動および騒音を防止する。また、洗濯兼脱水槽3の外面と水受け槽1の内面の壁面に吸着して残っていた洗剤カスを撹乱の水流の力により、安定して除去することができる。
【0050】
また、本開示に係る洗濯機は、洗濯兼脱水槽3と、洗濯兼脱水槽3を備えた水受け槽1と、洗濯兼脱水槽3を回転駆動するモータ6と、洗濯兼脱水槽3の水位を検知する水位検知部18と、洗い工程、すすぎ工程、および、脱水工程を実行する制御部19とを備えている。制御部19は、すすぎ工程において、モータ6による洗濯兼脱水槽3の回転によっ
て、水受け槽1内の洗濯液に遠心力を作用させ、洗濯兼脱水槽3と水受け槽1の間の洗濯液を撹乱する撹乱工程を実行する。制御部19は、撹乱工程において、水位検知部18の出力に応じて、洗濯兼脱水槽3内の洗濯物13のアンバランス状態を修正する修正すすぎ工程の実行を決定する。
【0051】
これにより、洗濯物13がアンバランスに配置されている状態にて洗濯兼脱水槽3の回転数を上昇させていく際に発生する水受け槽1の激しい揺れを防止する。また洗濯物13のアンバランス状態を解消することができるため、洗濯機の振動や騒音を抑えるとともに、洗濯兼脱水槽3の外面と水受け槽1の内面の壁面に吸着して残っていた洗剤カスを撹乱の水流の力により、安定して除去することができる。
【0052】
また、上記実施形態のように、制御部19は、撹乱工程において、洗濯兼脱水槽3の回転数を上昇させながら洗濯水の排水を実行するように制御してもよい。
【0053】
これにより、水受け槽1内に所定量の水量をためた後に洗剤カスの除去工程を実行する場合に比べて、排水動作と洗剤カスの除去工程とを同時に行うので洗濯時間を短くできる。さらに除去された洗剤カスが洗濯兼脱水槽3に浸入し、洗濯兼脱水槽3の中の洗濯物13に洗剤カスが付着するのを防止することができる。
【0054】
また、上記実施形態のように、洗濯兼脱水槽3内の洗濯物13の量を検知する布量検知部23をさらに備え、制御部19は、布量検知部23の出力と水位検知部18の出力に応じて、洗濯兼脱水槽3の回転数の変更を決定してもよい。
【0055】
これにより、洗濯物13の量によって撹乱の水流の水位が激しく変動するのを防止し、より安定して洗剤カスを除去することができる。
【0056】
また、上記実施形態のように、洗濯兼脱水槽3内の洗濯物13の量を検知する布量検知部23をさらに備え、制御部19は、布量検知部23の出力と水位検知部18の出力に応じて修正すすぎ工程の実行を決定してもよい。
【0057】
これにより、洗濯物13の量によって撹乱の水流の水位が激しく変動するのを防止し、より安定して洗剤カスを除去することができる。
【0058】
また、上記実施形態のように、洗濯兼脱水槽3内の洗濯物13の量を検知する布量検知部23をさらに備え、制御部19は、布量検知部23の出力に応じて、撹乱工程開始時における洗濯兼脱水槽3の水位を変更する。
【0059】
これにより、洗濯物13の量が多い場合に洗濯液が洗濯兼脱水槽3の上面を超えることを防止し、より安定して洗剤カスを除去することができる。
【0060】
また、上記実施形態のように、水位検知部18により検出された水位の変動が閾値を超える場合は、変更工程を実行してもよい。
【0061】
また、上記実施形態のように、水位検知部18により検出された水位の変動が閾値を超える場合は、修正すすぎ工程を実行してもよい。
【0062】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1~4を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されない。
【0063】
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0064】
本実施の形態で説明したその他の構成および撹乱工程における設定回転数、変更後の回転数、および、アンバラス検知の設定値等は単なる例示にすぎず、適宜設定されればよい。
【0065】
なお、上述の説明では、撹乱工程はすすぎ工程の終わりに実行されると表現したが、撹乱工程はすすぎ工程と脱水工程との間に実行されるとも表現できる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上のように、本開示にかかる洗濯機は、洗濯兼脱水槽の外面、水受け槽の内面に付着する洗剤カスを除去する機能を有している。撹乱工程における洗濯液の機外への飛び散り、ならびに、洗濯機の振動および騒音を防止する。また、洗濯兼脱水槽の外面と水受け槽の内面の壁面に吸着して残っていた洗剤カスを撹乱の水流の力により、安定して除去することが可能となる。したがって、洗剤カスの洗濯物への再付着を防止し衣類を清潔に保ち、安全性を向上させた洗濯機等として有用である。
【符号の説明】
【0067】
1 水受け槽
2 パルセータ
3 洗濯兼脱水槽
6 モータ(駆動部)
7 クラッチ機構
13 洗濯物
16 制御装置
18 水位検知部
19 制御部
23 布量検知部