(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】操作可能なカテーテルシステムの関節シャフト、カテーテル、および作製方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/008 20060101AFI20231006BHJP
A61M 25/092 20060101ALI20231006BHJP
A61M 25/14 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
A61B1/008 510
A61M25/092 500
A61M25/14 512
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021197620
(22)【出願日】2021-12-06
【審査請求日】2022-01-28
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518066507
【氏名又は名称】クレガナ・アンリミテッド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Creganna Unlimited Company
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】バーナード マクダーモット
(72)【発明者】
【氏名】アダム シュチェパンスキー
(72)【発明者】
【氏名】リチャード フェラン
(72)【発明者】
【氏名】デミアン マルドゥーン
【審査官】田辺 正樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0046209(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0228346(US,A1)
【文献】特表2006-521882(JP,A)
【文献】特開2012-075660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B1/00-1/32
A61F2/82-2/97
A61M25/00-29/04、35/00-36/08、37/00、99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作可能なカテーテルシステムの関節シャフト(100)であって、
長手方向中心軸(118)を有し、かつ遠位端および近位端を持つ少なくとも1つのメインルーメ
ンを有する管状体(101)と、
少なくとも1本の作動ワイヤ(128)を支持するための、少なくとも1つのワイヤルーメン(108)を形成する少なくとも1つのワイヤ支持要素(106)とを備え、
前記メインルーメ
ンと前記ワイヤルーメン(108)とは、軸方向および半径方向に均一な硬度を有する押出成形部品に一体形成され、
前記シャフト(100)は複数の除去部分または切込み(110)をさらに備え、前記複数の除去部分または切込み(110)は、半径方向に延び、かつ互いに軸方向に離間して
おり、
前記関節シャフトは、
操作ワイヤを収容するための一対の操作ワイヤルーメンと、
中立軸支持ワイヤを受け入れるための2つの中立軸支持ワイヤルーメンと、
電気リードまたは光ファイバケーブルのための複数の追加のルーメン(226)をさらに備え、
前記メインルーメン(204)は、その中心軸が前記関節シャフトの前記長手方向中心軸(118)から離間している状態で、前記シャフトの外形内に配置されており、
前記2つの中立軸支持ワイヤルーメンは、前記一対の操作ワイヤルーメンに対して90°に配置されている、関節シャフト。
【請求項2】
前記管状体(901)を取り囲む柔軟な外側ジャケット(944)をさらに備える、請求項1に記載の関節シャフト。
【請求項3】
前記少なくとも1つのメインルーメン(904)が、前記管状体(901)に挿入される柔軟なチューブ(942)を含む、請求項1または2に記載の関節シャフト。
【請求項4】
前記管状体(101)は複数のセグメント(102)を含み、前記セグメントの各々は、前記複数の除去部分または切込み(110)のうちの1つによって少なくとも部分的に互いに軸方向に分離され、前記除去部分または切込み(110)は前記メインルーメン(104)の内壁を横切り、前記除去部分または切込み(110)の各々は、
半径方向に延び、かつ、前記管状体(101)の
周方向に少なくとも180°延びる、請求項1から3のいずれか一項に記載の関節シャフト。
【請求項5】
前記シャフト(100)は、前記長手方向中心軸(118)に沿って整列された複数の個別のセグメント(102)を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の関節シャフト。
【請求項6】
前記個別のセグメント(402)が、各対の隣接するセグメント(402)間に少なくとも1つの独立したスペーサ要素(440)を有して整列されている、請求項5に記載の関節シャフト。
【請求項7】
前記セグメント(402)は各々、直線円筒形状を有し、前記スペーサ要素(440)は
、C字状の半径方向外形を有し、前記セグメント間に軸方向に離間した除去部分または切込み(410)を残す、請求項6に記載の関節シャフト。
【請求項8】
前記セグメント(102)の各々は、前記セグメント(102)を軸方向に画定する第1の側面(114)および第2の側面(116)を有し、前記側面(114、116)のうちの少なくとも一方は、90°とは異なる角度で前記長手方向
中心軸(118)に対して少なくとも部分的に傾斜している、請求項5から7のいずれか一項に記載の関節シャフト。
【請求項9】
前記シャフト(100)は円形の半径方向外形を有し、前記除去部分または切込み(110)はくさび状のテーパ外形を有し、前記ワイヤ支持要素(106)は、
前記管状体(101)が最小の軸方向寸法を有する領域に位置する、請求項1から8のいずれか一項に記載の関節シャフト。
【請求項10】
複数の第1のワイヤ支持要素(106)を互いに分離する複数の第1の除去部分または切込み(110)が設けられ、前記複数の第1の除去部分または切込み(110)とは半径方向に反対側の、前記複数の第1の除去部分または切込み(110)から軸方向にずれて配置されている複数の第2の除去部分または切込み(112)が設けられている、請求項1から9のいずれか一項に記載の関節シャフト。
【請求項11】
前記少なくとも1つのワイヤ支持要素(106)は、内壁および外壁を有するチューブ状のワイヤルーメンを含み、前記外壁は前記メインルーメンの内壁によって部分的に形成されている、請求項1から
10のいずれか一項に記載の関節シャフト。
【請求項12】
前記管状体(101)は単一のマルチルーメン押出成形品(MLE)から作製されている、請求項1から
11のいずれか一項に記載の関節シャフト。
【請求項13】
請求項1から
12のいずれか一項に記載の関節シャフト(100)を備える、操作可能なワイヤ案内カテーテルシステムであって、
少なくとも1つのワイヤルーメンを通る少なくとも1本の作動ワイヤ(128)であって、近位端および遠位端を有し、固定されて、前記作動ワイヤを引くことによりカテーテルを操作するようになっている作動ワイヤと、
前記作動ワイヤ(128)の前記近位端における引きを制御するために前記カテーテルの近位部に位置する制御手段とを備える、カテーテルシステム。
【請求項14】
操作可能なカテーテルシステムの関節シャフト(100)を作製する方法であって、
長手方向中心軸(118)を有し、かつ遠位開口部および近位開口部を持つ少なくとも1つのメインルーメ
ンを有する管状体(101)、ならびに少なくとも1本の作動ワイヤを支持するための、少なくとも1つのワイヤルーメン(108)を形成する少なくとも1つのワイヤ支持要素(106)とを設けるステップであって、前記メインルーメ
ンと前記ワイヤルーメン(108)とは、軸方向および半径方向に均一な硬度を有する押出成形部品に一体形成される、ステップと、
半径方向に延び、かつ互いに軸方向に離間した複数の除去部分または切込み(110)を設けるステップとを含む、方法
であって、
前記関節シャフトは、操作ワイヤを収容するための一対の操作ワイヤルーメンと、中立軸支持ワイヤを受け入れるための2つの中立軸支持ワイヤルーメンと、電気リードまたは光ファイバケーブルのための複数の追加のルーメン(226)をさらに備え、
前記メインルーメン(204)は、その中心軸が前記関節シャフトの前記長手方向中心軸(118)から離間している状態で、前記シャフトの外形内に配置されており、
前記2つの中立軸支持ワイヤルーメンは、前記一対の操作ワイヤルーメンに対して90°に配置されている、方法。
【請求項15】
前記管状体(101)は単一のマルチルーメン押出成形品(MLE)から作製されている、請求項
14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡処置または低侵襲処置における使用に適した、操作可能なカテーテルシステムのための低コストの関節シャフトに関する。本発明はまた、そのような関節シャフトを備える操作可能なカテーテルシステム、およびそのようなシャフトを作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡は、身体の内臓を検査するために使用され、小さな切開または自然開口部を通して挿入される。内視鏡は、通常、画像をユーザに中継するためのカメラまたは光ファイバ束およびレンズシステムと、内部構造を照明するための照明システムとを備えた細長く柔軟なシースである。内視鏡は、通常、1方向、2方向、または全方向のいずれかに、急な曲げ半径で先端を偏向させる操作システムを有して、ユーザが必要に応じて先端を位置決めできるようになっている。内視鏡は、一般に、そのタイプに応じて他の作業ルーメンを有する。例えば、生検器具および治療器具を通すため、先端を洗浄してレンズを清浄にするため、体液を吸引するため、および空気を通して体腔に通気し空間を作り出すために、1つまたは複数のルーメンが設けられる。
【0003】
内視鏡治療は、内視鏡を介して治療を行う内視鏡処置である。内視鏡診断は、消化管、気道、または尿路の一部を可視化するために使用されて、診断を助ける。
【0004】
内視鏡は、一般に、再利用可能であり、多数の処置を実行し、各処置後の殺菌プロセスに耐えるように設計される。このため、取得コストが高く、消毒、メンテナンス、および修理に関連するコストが高い。
【0005】
一回使用または使い捨てのデバイスに必要な取得コストは低い。このようなデバイスは、殺菌およびメンテナンスコストがかからず、交差汚染の危険もない。
【0006】
既知の内視鏡は、一般に、多数の部品から構成され、多くの場合、複雑なマルチセグメントのヒンジ付き金属部品またはポリマー部品から構成された遠位端関節部と、必要なプルワイヤを位置合わせして収容するための追加の部品とを備える。この関節部は、一般に、以下の要素、すなわち、編組線、コイル、ライナ、ポリマージャケット、マルチルーメン押出コア、プルワイヤ、およびプルワイヤライナのうちの一部または全部から構成された多層近位部シースに取り付けられる。
【0007】
このタイプの構成は、長い耐用年数とともに、遠位部における関節運動を可能にするための高い柔軟性と、近位部におけるより低い柔軟性およびより高い押込み性とを可能にする。
【0008】
他の従来の構成方法は、チューブの柔軟性および押込み性が遠位部から近位部へと変化する、長さに沿ったレーザカット機構を有する一体鋼管設計に基づき得る。
【0009】
さらなる既知の構成は、関節運動に使用するプルワイヤを収容して位置合わせするためにシースの壁に組み込まれたルーメンを含む編組シースを備える。これらのシャフトは、一般に、単一の大きい内部ルーメンを有し、この内部ルーメンは、マルチルーメン押出成形によって、または編組シースのメインルーメンを通して挿入された単一のルーメン作業流路チューブによってさらに細分化され得る。これらのタイプの構成は、柔軟性が高いシャフトの関節遠位端から、柔軟性が低く押込み性の高い近位部へと柔軟性が変化する必要がある。これは主に、遠位部で使用される低デュロメータの柔軟なポリマーマトリックスと、近位部の構成に使用される、高デュロメータの、より柔軟性が低くより押込み性が高い材料と、通常、軟質部と硬質部との間の移行部として機能する、遠位部と近位部との間のデュロメータを持つ材料とを含む、複数のデュロメータのポリマー材料を編組シャフトの構成において使用することによって実現される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これらのすべての従来の構成タイプは、デバイスを完成させる追加のルーメンを設けるために追加の部品を必要とする。
【0011】
機械的特性を向上させ、同時に作製プロセスを向上させ、かつ生産コストを削減する関節シャフトが依然として必要である。
【0012】
内視鏡デバイスのほとんどは、規定の一貫した曲げ幾何形状で1つまたは複数の方向に操作可能な遠位部を有することが要求される。これには、デバイスの遠位部を必要な曲げ半径に偏向させるために使用される関節ワイヤまたはケーブルを正確に位置合わせするためのルーメンまたはその他の機構が必要である。さらに、デバイスの動作に必要な様々な要素を位置合わせおよび位置決めするための追加のルーメン、カメラのリード線または光ファイバ束のためのルーメン、光伝送ケーブルまたは電源ケーブルのためのルーメン、および1つまたは複数の作業流路ルーメンが必要である。
【0013】
さらに、関節部の近位のシャフトは、解剖学的構造に押し通されて標的領域に到達できるように、軸方向に硬くする必要がある。
【0014】
この近位領域はまた、解剖学的構造を容易にたどって標的領域に到達できるように、ある程度の柔軟性を有する必要がある。
【0015】
使い捨てデバイスとしての使用に実用的であるように、シャフトの構成コストおよび材料コストを低くする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
これらの目的は、独立請求項の主題によって解決される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0017】
本開示は、単一のデュロメータのマルチルーメン押出成形品(MLE)から構成可能な低コストの操作可能なデバイスを提供する。MLEは、通常は円形の断面の押出要素から構成され、軸方向に整列したいくつかの孔またはルーメンが、断面の外形を通って連続して、かつ概ね断面の外形内に延び、チューブの長さ全体にわたって延びる。これらのルーメンのサイズおよび位置は、設計要件に応じて様々な方法で配置されてよい。このようなポリマー押出成形品は、その後に必要な長さにカットされるように連続プロファイルに形成される。
【0018】
単一のデュロメータのMLEを様々な方法でカットして、切込みがないか最小限の切込みしかない比較的硬く押込み性の高い近位部から、1つまたは複数の方向へ関節運動を可能にする切込みを有する柔軟性の高い操作可能な遠位部へと、必要に応じて長さに沿って柔軟性を変更することができると有利である。
【0019】
さらに、単一のMLEは、関節運動に必要なプルワイヤおよび軸支持ワイヤを案内および位置決めするために必要なすべてのルーメンおよび機構を提供して、軸方向剛性を高め、部分の曲げのためのヒンジを補強または提供する。このような構成を使用するデバイスのアセンブリに必要な他の要素、例えば、電子デバイスのリード線、光ファイバケーブル、および作業流路を案内および位置決めするために、追加のルーメンを容易に設けることができる。追加の柔軟なチューブを押出ルーメンに挿入して、様々な医療機器を通すため、ならびに吸引、洗浄、および通気のために使用される液密または連続閉ルーメンを提供することができる。
【0020】
さらに、MLEの外側に柔軟な外側ジャケットを装着して、内部要素を外部環境から保護することができる。この構成により、最小数の比較的低コストの部品から構成される操作可能なシースが得られる。
【0021】
中央の一般に大きいルーメンを、作業ルーメン、メインルーメン、またはコアルーメンと呼ぶこともできる。シャフトの操作を可能にするために、少なくとも1本の操作ワイヤ(以下で「プルワイヤ」または「作動ワイヤ」とも呼ぶ)を、ワイヤ支持要素に設けられた複数の整列した開口部により形成されている操作ワイヤルーメンに挿入することができる。これらのワイヤ支持要素は、除去部分または切込みによって互いに分離され、その結果シャフトを曲げることが容易になっている。シャフトの外壁がそのような除去部分または切込みを含むことにより、シャフトをこの側で収縮させ曲げることができる。
【0022】
特に、本発明は、操作可能なカテーテルシステムのための関節シャフトであって、シャフトは、長手方向中心軸を有し、かつ遠位開口部および近位開口部を持つ少なくとも1つのメインルーメンを有する管状体と、少なくとも1本の作動ワイヤを支持するための、ワイヤルーメンを形成する複数のワイヤ支持要素とを備える関節シャフトを提供する。メインルーメンとワイヤルーメンとは、均一な材料硬度を有する押出成形部品に一体形成され、シャフトは複数の除去部分または切込みをさらに備え、複数の除去部分または切込みは、半径方向に延び、かつ互いに軸方向に離間している。
【0023】
「デュロメータ」と呼ぶこともある硬度は、ショアD硬度を意味するものであり、選択されたポリマー材料に特有のパラメータである。
【0024】
この解決策の利点は、シャフトの半径方向一体設計により組立プロセスが容易になるということからわかる。さらに、関節シャフトは、高い可撓性を有し、同時に高精度の操作を保証する。特に、本開示により、いわゆるマルチルーメン押出成形(MLE)部品に基づくことのできる操作可能なカテーテルシステムのための関節シャフトの作製が可能になる。このようなシャフトは、最小数の比較的低コストの部品から作製することができる。押出成形部品は、例えば、硬質ポリマー材料または任意の他の適切な材料から製造されてよい。単一のMLEは、電線および/またはケーブルおよび光ファイバケーブルのためのルーメンならびに1つまたは複数の作業ルーメンを含む、組み立てられたデバイスに必要な様々な要素を単一部品に位置決めおよび位置合わせするために必要なすべてのルーメンおよび機構を提供することが有利である。単一のMLEは、関節システムのためのルーメンも提供する。さらに、シャフトは、遠位関節部として機能し、かつ押込み性の高い近位部としても機能する単一のMLEを使用することができる。
【0025】
さらなる有利な例によれば、シャフトは、管状体を取り囲む柔軟な外側ジャケットを備える。このようなジャケット(またはシース)は、ポリマーから作製されてよく、解剖学的構造に接触するための滑らかな表面を提供し、完成したデバイスの他の部品を外部物質、例えば体液からを保護するように機能する。外側ジャケットは、例えば、単純な押出チューブまたは編組もしくはコイル補強チューブまたは他の構成を含むことができる。
【0026】
さらに、少なくとも1つのメインルーメンおよび/または他のルーメンのうちのいずれかは、管状体に挿入される柔軟なチューブを含むことができる。チューブは、例えばポリマー材料から作製されてよく、液密な流路を提供する。
【0027】
本発明の有利な実施形態によれば、除去部分または切込みは、管状体の周りで半径方向に少なくとも180°延びる。したがって、シャフトの十分に大きいセグメントが、操作プロセスを容易にするのに十分な可撓性を有する。例えば、各除去部分または切込みを、シャフトの周囲の約半分に沿って延びるように設けることができる。各除去部分または切込みは、シャフトの周囲に沿った周辺領域に向かって、寸法が軸方向に徐々に減少していてもよい。この設計により、シャフトを曲げるときに最適な力分布が可能になる。除去部分または切込みは、ギャングソー、グラインダ、ブレード、または他の方法によって、機械的にカットまたはレーザカットすることができる。
【0028】
有利な実施形態によれば、シャフトは、長手方向中心軸に沿って整列された複数の個別のセグメントを含む。これらのセグメントは、糸に通したビーズのように、少なくとも1本の作動ワイヤおよび補強ワイヤ(支持ワイヤとも呼ぶ)によって整列されて共に保持されてよい。この設計は、関節シャフトが複数の短い部品から構成されることにより、製造プロセスの柔軟性を高めることができるという利点を有する。さらに、関節シャフトの可撓性は、シャフトの内側曲げ半径の圧縮を容易にし、加えてシャフトの外側曲げ半径の膨張を容易にすることによって大幅に向上する。個々のセグメントが、中心軸に対して本質的に直交する断面を有していても、断面の少なくとも一部が、長手方向中心軸との角度を含んでいてもよい。
【0029】
さらに、個別のセグメントは、各対の隣接するセグメント間に独立したスペーサ要素を有して整列されてよい。これにより、セグメントを単純な幾何形状に形成することができ、同時に、それにもかかわらず可撓性および正確な操作を提供する。例えば、セグメントは各々、直線円筒形状を有することができ、スペーサ要素は、軸方向厚さが均一な本質的にC字状の半径方向外形を有し、セグメント間に軸方向に離間した開口部を残す。このような開口部は、1方向操作が望ましい場合に、シャフトの一側に整列されてもよい。あるいは、開口部は、2方向操作カテーテルの2方向への曲げを容易にするために、シャフトの2つの反対側の半径部分に配置されてもよい。
【0030】
このようなスペーサの代わりに、またはこれに加えて、セグメントの各々は、セグメントを軸方向に画定する第1の側面および第2の側面を有することができ、側面は、90°とは異なる角度で長手方向軸に対して少なくとも部分的に傾斜している。このような傾斜面は、1方向または2方向の曲げを容易にするために設けることができる。例えば、傾斜面は直交方向から約20°ずれていてよい。
【0031】
さらに有利な実施形態によれば、シャフトは円形の半径方向外形を有し、除去部分または切込みはくさび状のテーパ外形を有し、ワイヤ支持要素は、除去部分または切込みが最小の軸方向寸法を有する領域に位置する。この幾何形状により、作動ワイヤを介した特に正確な操作が可能になる。1方向操作の場合、余剰な操作ルーメンを追加の支持ワイヤ用に使用して、トルク性能を向上させることができる。
【0032】
さらに、シャフトの可撓性をさらに高めるために、複数の第1のワイヤ支持要素を互いに分離する複数の第1の除去部分または切込みが設けられ、第1の除去部分または切込みとは半径方向に反対側の、複数の第1の除去部分または切込みから軸方向にずれて配置されている複数の第2の除去部分または切込みが設けられる。これにより、シャフトの内側曲げ半径の圧縮を容易にし、加えてシャフトの外側曲げ半径の膨張を容易にすることによって、関節シャフトの可撓性が大幅に向上する。
【0033】
メインルーメンがシャフトの外形内に同心に配置されているとき、対称な力分布を実現することができる。あるいは、1方向操作のみを意図している場合、メインルーメンを、その中心軸がシャフトの長手方向中心軸から離間している状態で、シャフトの外形内に配置することにより、例えば、電気ケーブルまたは光ケーブルのための追加のルーメンのためにシャフトの断面に空間を残すことができる。
【0034】
少なくとも1つのワイヤ支持要素が、内壁および外壁を有するチューブ状のワイヤルーメンを含み、外壁がメインルーメンの内壁によって部分的に形成されている場合、最大のルーメン断面積を有する幾何形状を実現することができる。
【0035】
2方向操作システム、すなわち、シャフトを2つの異なる方向、好ましくは反対方向に引く2本のプルワイヤを用いたシャフトの使用を可能にするために、シャフトは、長手方向軸に沿って軸方向に延び、かつ第1の貫通開口部および第2の貫通開口部をそれぞれ有する、ワイヤ支持要素の第1の列および第2の列を備えることができ、第1の列および第2の列は半径方向に互いに反対側に配置され、第1の貫通開口部は第2の貫通開口部とは反対側に整列されている。
【0036】
有利な例によれば、シャフトは円形の半径方向外形を有する。このような設計は既存の操作システムに適合し、最適な力分布を可能にする。
【0037】
さらに有利な例によれば、シャフトは、軸支持ワイヤを受け入れるための2つの軸支持ルーメンをさらに備える。これらのルーメンに組み込まれる軸支持ワイヤを、いくらかの弾性特性を有する鋼またはニチノールまたは他の適切な材料から形成することができる。
【0038】
作動ワイヤがアセンブリの遠位端に取り付けられ、引張荷重が加わると、ワイヤは短くなる。これにより、除去部分または切込みによって形成された開口部が閉じて、アセンブリが開口部の方向に曲がる。同様に遠位端および近位端に取り付けられている中立軸支持ワイヤが曲がることにより、アセンブリを曲げることができる。中立軸支持ワイヤは、いくらかの関節軸方向荷重も担持する。ワイヤは、セグメントを整列させて定位置に維持し、アセンブリに加わる張力も維持することによって、セグメントの分離を防ぐ。前述したように、1方向操作の場合、余剰な操作ルーメンを、近位端に取り付けられておらず、そのルーメンにおいて浮いている追加の支持ワイヤ用に使用して、トルク性能を向上させることができる。
【0039】
曲げることを容易にするために、軸支持ルーメンを、除去部分または切込みの周辺領域によって少なくとも部分的に分割することができる。
【0040】
さらに、例えば電気ケーブルなどのための他のルーメンを、本発明によるシャフトに設けてもよい。
【0041】
本開示はさらに、本発明による関節シャフトを備える、ワイヤ関節連結式の操作可能なカテーテルシステムに関する。カテーテルシステムは、ワイヤルーメンを通る少なくとも1本の作動ワイヤであって、近位端および遠位端を有し、遠位端で固定されて、作動ワイヤを近位端で引くことによりカテーテルを操作するようになっている作動ワイヤと、作動ワイヤの近位端における引きを制御するためにカテーテルの近位部に位置するカテーテル制御手段とをさらに備える。
【0042】
本明細書で使用されるとき、「近位」および「遠位」という用語は、開示される送達デバイスを使用するユーザに対するものとして理解すべきである。「近位」とはユーザに比較的近いものと理解され、「遠位」とはユーザから比較的離れているものと理解される。
【0043】
最後に、本発明はさらに、操作可能なカテーテルシステムの関節シャフトを作製する方法であって、
長手方向中心軸を有し、かつ遠位開口部および近位開口部を持つ少なくとも1つのメインルーメンを有する管状体、ならびに少なくとも1本の作動ワイヤを支持するための、少なくとも1つのワイヤルーメンを形成する少なくとも1つのワイヤ支持要素とを設けるステップであって、メインルーメンとワイヤルーメンとは、軸方向および半径方向に均一な硬度を有する押出成形部品に一体形成される、ステップと、
半径方向に延び、かつ互いに軸方向に離間した複数の除去部分または切込みを設けるステップとを含む、方法に関する。
【0044】
前述したように、シャフトの半径方向一体設計により組立プロセスが容易になる。さらに、関節シャフトは、高い可撓性を有し、同時に高精度の操作を保証する。
【0045】
特に、シャフトが押出プロセスによって作製されるため、自由度の高い設計を低コストで実現することができる。例えば、2方向操作可能なデバイスの可能な構成は以下の通りである。マルチルーメン押出成形品(MLE)は、硬質ポリマー材料から押し出される。この押出成形品は、押出成形品の長さを貫通するいくつかのルーメン(孔)を含む。押出特性がシャフトの近位部に必要な剛性/柔軟性および押込み性を満たすように、ポリマー材料を選択することができる。あるいは、押出成形品が近位部に必要な硬さよりも硬くなるように材料を選択することができる。この場合、近位部を、その柔軟性を高めるように機械的に変更する必要がある。PTFEなどの本来潤滑性の材料を含む多数のポリマー材料を使用することができる。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を示すために、添付図面が本明細書に組み込まれ、本明細書の一部をなす。これらの図面は、明細書と共に本発明の原理を説明する役割を果たす。図面は、本発明を形成し使用することのできる方法の好ましい例および代替例を示すためのものにすぎず、図示し説明する実施形態のみに本発明を限定するものと解釈すべきではない。さらに、実施形態のいくつかの態様は、個々にまたは異なる組合せで本発明による解決策を形成することができる。したがって、以下に記載の実施形態を、単独でまたは任意の組合せで考慮することができる。さらなる特徴および利点が、添付図面に示す本開示の様々な例の以下のより詳細な説明から明らかになろう。図中、同様の参照符号は同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】第1の例による関節シャフトの概略斜視図である。
【
図4】さらなる例による関節シャフトのセグメントの概略斜視図である。
【
図5】別の例による関節シャフトの概略斜視図である。
【
図6】さらなる例による関節シャフトの概略斜視図である。
【
図7】さらなる例による関節シャフトの概略斜視図である。
【
図8】さらなる例による関節シャフトの概略斜視図である。
【
図9】さらなる例による関節シャフトの概略斜視図である。
【
図10】さらなる例による関節シャフトの概略斜視図である。
【
図11】さらなる例による関節シャフトの概略斜視図である。
【
図12】さらなる例による関節シャフトの概略斜視図である。
【
図13】さらなる例による関節シャフトの概略斜視図である。
【
図14】マルチルーメン押出成形品の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下で、図面を参照しながら、本発明についてより詳細に説明する。最初に
図1~
図3を参照する。
【0049】
図1は、本発明の第1の例による関節シャフト100の概略斜視図である。
図2は、曲げ状態における関節シャフト100の一部を示す。
図3は、シャフト100の一部である複数のセグメント102のうちの1つの斜視図である。図面において、様々なルーメンに挿入される操作ワイヤおよび他の要素は、
図2および
図3には示されていないことに留意されたい。
【0050】
本開示によれば、関節シャフト100の管状体101は、必要とされるすべてのルーメンを有する、単一のデュロメータの押出成形部品から作製される。このような押出成形部品は、マルチルーメン押出成形品(MLE)と呼ばれる。
図14は、6つのルーメンを有するMLE1000の例を示す。単一のデュロメータの押出成形品を様々な方法でカットして、切込みがないか最小限の切込みしかない比較的硬く押込み性の高い近位部から、幅広の開口部を有する柔軟性の高い操作可能な遠位部へと、必要に応じて長さに沿って柔軟性を変更することができる。
【0051】
押出成形品は、関節運動に必要なプルワイヤおよび軸支持ワイヤを案内および位置決めするための複数のルーメンを有して形成されて、軸方向支持を高め、部分の曲げのためのヒンジを補強または提供する。このような構成を使用するデバイスの構成に必要な他の要素、例えば、リード線、光ファイバケーブル、作業流路などを案内および位置決めするために、MLEの製造時に追加のルーメンを容易に設けることができる。この構成により、最小数の部品から構成される操作可能なシースが得られる。
【0052】
図1に示す例によれば、メインルーメン104はシャフト100の全長に沿って延びる。
図1に示す例によれば、関節シャフト100は、貫通開口部108を有する操作ワイヤ支持要素106を備える。貫通開口部108は、シャフト100の長手方向に直線状に配置されて、操作ワイヤ128のための分割されたルーメン120が形成されるようになっている。セグメント102の特定の形状により、第1の除去部分または切込み110が隣接するセグメント102間に形成される。操作ワイヤが貫通開口部108の列に挿入され、シャフト100に曲げ力を及ぼす場合に、これらの除去部分または切込み110により、関節シャフト100を曲げることが容易になる。第1の除去部分または切込み110とは反対側に配置された第2の除去部分または切込み112があると、シャフト100の外面が伸長して関節運動を容易にすることができる。
【0053】
図3からわかるように、各セグメント102は本質的に円筒形であり、セグメント102を軸方向に画定する第1の側面114および第2の側面116を有し、側面は90°とは異なる角度で長手方向軸に対して部分的に傾斜している。
図3において、第1の側面114および第2の側面116のそれぞれの下半分が長手方向軸に直交し、側面114、116の上半分が90°から約20°だけずれた角度を形成している。
図1に示す、曲がっていないシャフト100の図から明らかなように、側面のこれらの傾斜部分は、隣接するセグメント102間にくさび状の除去部分または切込み110を形成する。
【0054】
セグメント102は、長手方向軸118の周りでシャフト100の周囲に沿って均等に離間した4つのワイヤ支持要素を含む。貫通開口部は、長手方向軸118に沿って整列して4つのルーメンを形成し、そのうちの2つは操作ワイヤルーメン120である。操作ワイヤルーメン120は、関節運動に使用される操作ワイヤ128、129を収容する。
【0055】
第1の例によるシャフト100は、軸支持ワイヤを受け入れるための補強ルーメン122をさらに備える。これらの軸支持ワイヤを、例えば、いくらかの弾性特性を有する鋼、ニチノール、または他の適切な材料から形成することができる。軸支持ワイヤを中立軸支持ワイヤと呼ぶこともできる。これは、軸支持ワイヤが、除去部分または切込み110、112によって形成されたセグメント102を整列させて定位置に安定させるからである。引張荷重が加わると、作動ワイヤが短くなり、開口部110が閉じることにより、アセンブリは開口部110の方向に曲がる。補強ルーメン122に配置された中立軸支持ワイヤ130も曲がることにより、アセンブリを動かすことができる。補強ワイヤは、いくらかの関節軸方向荷重を担持し、アセンブリに加わる張力も維持することによって、セグメントの分離を防ぐ。中立軸支持ワイヤ130は、プルワイヤ128、129に対して90°の間隔で配置されることが有利である。
【0056】
図示の実施形態において、2つの軸支持ワイヤルーメン122が設けられている。しかしながら、任意の他の数のルーメンを設けてもよいことが当業者には明らかである。さらに、電気ケーブルもしくは光ケーブルまたは流路のための追加のルーメンを設けてもよい。
【0057】
図示の例において、シャフト100は本質的に円形の外形を有する。しかしながら、任意の他の断面外形、例えば長円形または多角形の外形を選択してもよい。本明細書に示すように、ルーメンを形成するすべての開口部も円形断面を有する。必ずしもこれに限らず、任意の他の適切な断面、例えば長円形または多角形を使用してもよい。
【0058】
本発明の有利な態様によれば、メインルーメン104はシャフト100の断面積の大部分を占める。特に、操作ワイヤルーメン120と補強ルーメン122とを画定する壁124がメインルーメン104内に突出する。
【0059】
図1~
図3は、単一の内部作業ルーメン104を有するMLEから作製された管状体を示す。例えば電気ケーブルのための追加のルーメンが必要な場合、
図4に示すように、メインルーメン204を中心から外れて配置してもよい。ここでは、セグメント202の外形は、
図3に示すセグメント202の外形と同一である。しかしながら、メインルーメン204は、操作ワイヤルーメン220のうちの1つに近接して配置され、さらなるルーメン226のための空間を残す。追加のルーメンは、電気リード、光ファイバケーブルなどのために設けられる。追加のルーメンを、必要なデバイス機能に応じて配置することができる。
【0060】
図1~
図3に戻り、前述したように、管状体101は1つの一体のMLEとして作製され、押出成形品の遠位端は、押出成形品の軸に垂直な方向に形成された開口部110、112を有する。これらの開口部(除去部分または切込みとも呼ぶ)は、遠位端が開口部の方向に曲がることができるように形成される。これらの開口部は、押出成形品を実質的に小さい部分に分割し、これらの部分は各々、実質的にヒンジとして機能する薄い材料ストリップにより、隣接するセグメントに接合される。しかしながら、セグメント102を互いに完全に分離させてもよい。
【0061】
プルワイヤはプルワイヤルーメンに装入され、遠位端セグメントに固定される。このプルワイヤを近位端でルーメンを通して引くと、ルーメンにおけるワイヤの長さが短くなり、これは開口部を閉じる効果がある。これにより、遠位端は、開口部のサイズによって規定された最小半径曲線に曲がる。
【0062】
図1に概略的に示すように、個々のセグメント102は、シャフト100の長手方向軸118に沿って整列し、操作ワイヤ128、129および中立軸支持ワイヤ130によって定位置に維持される。くさび状の第1の除去部分または切込み110により、操作ワイヤ128が引かれて短くなったときにシャフト100を曲げることが容易になる。一方、当接する個々のセグメント102によって形成される細い除去部分または切込み112は、
図1に示すように開き、曲げに対する機械抵抗を減らす。壁124はメインルーメン104内に突出することにより、シャフト100の断面の全体的な材料厚さを低減させる。これにより、特に軽量なシャフトと、メインルーメン104の最大の断面積とが可能になる。
【0063】
関節シャフト100を作製するために、管状体101を形成するマルチルーメン押出成形品は開口部110を備え、この開口部110は、一側において周方向に約170°に形成され、中立軸から等量で終端し、これにより、各セグメントを接続する切れていない少量の材料を残し、セグメント間にポリマーヒンジを形成する。このポリマーヒンジは図面では見えない。さらなる切込み112が、他側に形成され、軸方向において第1の側の開口部110の中央に位置合わせされる。これらの切込みも周方向に約170°に形成され、中立軸から等量で終端し、ポリマーヒンジの他側を形成する。
図2からわかるように、開口部110は、プルワイヤがシースに対して短くなるとシースが規定の半径で湾曲できるように形成されている。
【0064】
開口部110とは半径方向に反対側の切込み112により、押出成形品101はその側で開くことができ、MLEの外面が実質的に伸長して曲げを形成することができる。切込み112の端部と開口部110の端部との間の残りの材料は、実質的に、セグメント102がその周りで曲がるヒンジ103となる。
【0065】
プルワイヤ128は、プルワイヤルーメン120に挿入される。関節運動を可能にするためにヒンジ103の幅を狭くする必要があるので、中立軸支持ワイヤルーメン122を設けることができる。柔軟な中立軸支持ワイヤ130が、これらのルーメンに装入され、柔軟な部分の遠位および近位で固定される。これらのワイヤ130を、ステンレス鋼、ニチノール、または柔軟で軸方向に硬い別の材料から形成することができる。これらのワイヤ130は、柔軟な接合部を補強し、アセンブリに高い軸方向剛性を与えて、遠位端に加わるプルワイヤの荷重による軸方向の圧縮を低減させる。これにより、関節運動の正確性および精度を向上させる。さらに、中立軸支持ワイヤ130は、軸方向荷重によって起こり得る座屈を防ぐために、ポリマーヒンジ103に高いコラム強度を与える。また、ワイヤ130は、システムに弾性を与えて、関節運動中に遠位先端のスプリングバックをもたらす。
【0066】
さらに、ワイヤ130は、セグメント102間の接続をもたらすこともできるので、構成を、最小のポリマーヒンジ103を有するセグメント102を使用して実現することができ、またはワイヤ130に組み付けられた、個別の独立したセグメント102によっても実現することができる。
【0067】
図5は、整列した開口部310、312および2本のプルワイヤを有するシャフト300の2方向操作可能な構成を示す。このために、第1の除去部分または切込み(または開口部)310と第2の除去部分または切込み312とは、中立軸支持ワイヤ330を相互接続する直径に対して対称である。したがって、第1の操作ワイヤ328は、操作ワイヤルーメン320を通して送られ、作動時に、矢印336で示す方向にシャフト300を曲げる。さらに、第2の操作ワイヤ329は、第2の操作ワイヤルーメン320を形成する貫通開口部に保持される。第2の操作ワイヤ329を作動させると、シャフト300は方向338に曲がる。この例によるシャフト300は、軽量かつ作製が容易で、2方向に高い可撓性を有するという利点を有する。したがって、カテーテルシステムの正確な操作を、最小限の部品、この場合、MLE、2本のプルワイヤ、および2本の軸支持ワイヤにより実現することができる。
【0068】
セグメント302は、隣接する部分との接続部のない別々の部品であってもよい。
【0069】
補強または軸支持ワイヤ330を、例えば、いくらかの弾性特性を有する鋼、ニチノール、または他の適切な材料から形成することができる。軸支持ワイヤ330を中立軸支持ワイヤと呼ぶこともできる。これは、軸支持ワイヤ330が、除去部分または切込み310、312によって形成されたセグメントを整列させて定位置に安定させ、シャフトが周りで曲がる軸であるシャフトの中立軸に位置し、この軸の長さがシャフトの関節運動中に一定のままであるからである。効率的な関節運動のために、中立軸の長さは、操作ワイヤによりシャフトに加わる荷重によって縮小または圧縮してはならない。中立軸支持ワイヤによってこの軸方向剛性はもたらされ、この軸方向剛性では、操作荷重が、この荷重による圧縮および座屈にポリマーヒンジが抵抗する能力よりも高くなる。
引張荷重が加わると、それぞれの側の作動ワイヤ328、329が短くなり、作動ワイヤの側の開口部310、312が閉じることにより、アセンブリがそれらの開口部310、312の方向に曲がる。軸支持ワイヤルーメンに配置された中立軸支持ワイヤ330も曲がることにより、アセンブリを動かすことができる。また、軸支持ワイヤ330は、独立したセグメント302が離れることを防ぎ、分離していないセグメントのためのポリマーヒンジの引張強度を補強して、ポリマーヒンジが引張荷重によって壊れないようにする。
【0070】
図6は、1方向操作可能なシャフト400の例を示す。この例では、MLEを、長手方向のMLE軸に対して本質的に垂直な切込みによりセグメントにカットすることができる。スペーサを、軸方向支持ワイヤ上に、かつ直角カットセグメントの各々の間に組み付けることができる。これらのスペーサは、アセンブリの一側または両側に間隙を提供することにより、アセンブリを一側または両側に曲げることができる。スペーサは円筒形であってもよい。スペーサは、一方または両方向に曲がることができるように材料が除去されたMLEからカットされた薄い切片または部分440から形成されてもよい。
【0071】
この例によれば、独立したセグメント402の各々が、その周囲に沿って均一な半径方向寸法Dを有する。可撓性を高めるために、セグメント402はスペーサ要素440(ヒンジと呼ぶこともできる)によって互いに分離される。スペーサ要素440は、シャフトの断面の180°をわずかに超えて延びる。したがって、スペーサ要素440は、軸支持ワイヤルーメン422ならびに操作ワイヤルーメン420の一部を形成し、同時に、隣接するセグメント402間に、開いた除去部分または切込み410を残す。スペーサ要素440を、セグメント402に緩く取り付けて、作動時にセグメントがスペーサ要素から分離できるようにしても、隣接するセグメントに一側でしっかりと取り付けてもよい。スペーサ要素440の近位面を、例えば、セグメント402の遠位面に接着または溶接することができ、スペーサ要素440およびセグメント402のそれぞれの個々のアセンブリが、組み合わされたセグメントを形成する。
【0072】
2方向操作シャフトが望ましい場合、スペーサ440を、シャフト400の上半分と下半分とに交互に配置してもよい(図示せず)。
【0073】
図7は、関節シャフト500の変形形態を示し、MLEは、軸方向に整列していない、半径方向に反対側の開口部を備える。
図7に示すように、シャフト500は、シャフト500の全長に沿って延びるメインルーメン504を有する。
図7に示す例によれば、関節シャフト500は、第1の貫通開口部508を有する第1のワイヤ支持要素506と、第2の貫通開口部509を有する第2のワイヤ支持要素507とを備える。貫通開口部508、509はシャフト500の長手方向に直線状に配置されて、2本の操作ワイヤ528、529のための2つの分割されたルーメン520が形成されるようになっている。したがって、
図7に示すシャフト500を使用して、2方向操作可能なカテーテルを提供することができる。
【0074】
シャフト500は、レーザ加工または鋸引きによって材料に切り込まれた除去部分または切込み510、512を有するMLE部品として形成されてよい。
図5に示す設計と同様に、
図7に示すシャフト500は、除去部分または切込み510とは半径方向に反対側に配置された除去部分または切込み512を有することにより、シャフト500の2方向操作を可能にする。
図5の分割配置とは対照的に、第2の除去部分または切込み512は、第1の除去部分または切込み510に対して軸方向に互い違いになっている。これはシャフト500の外壁のジグザグ構造を生み出すため、高い可撓性を有し、同時に中立軸における安定した支持をもたらす。中立軸支持ワイヤ530はさらに安定性を高め、シャフトのトルク能力を高める。
【0075】
図8は、MLEから1つの一体部品として作製された1方向操作可能なシャフト600を示す。メインルーメン604は、シャフト600の全長に沿って延びる。関節シャフト600は、第1の貫通開口部608を有する第1のワイヤ支持要素606を備える。貫通開口部608は、シャフト600の長手方向に直線状に配置されて、操作ワイヤ628のための分割されたルーメン620が形成されるようになっている。
図1に示す設計に対応して、第2の除去部分または切込み612は細く、第1の除去部分または切込み610のようなくさび状ではない。これにより、第2の除去部分または切込み612は、操作ワイヤ628の作動時にのみシャフト600を開くことができる。図示の例では、除去部分または切込み610、612は、軸支持ワイヤルーメン622を部分的に横切る。しかしながら、当然、軸支持ワイヤルーメン622の壁は、シャフト600の長手方向軸に沿って連続して閉じていてもよい。
【0076】
シャフト600が貫通開口部608に向かう方向に曲がると、開口部610は閉じるが、第2の除去部分または切込み612は開き、これにより曲げプロセスが容易になる。
【0077】
図1の配置とは対照的に、第2の除去部分または切込み612は、第1の除去部分または切込み610と軸方向に位置合わせされず、軸方向にずれてシャフト600の機械的安定性を高める。
【0078】
さらに、既に前述したように、電気ケーブルまたは流路のための追加のルーメンを設けてもよい。このようなシャフト700の例を
図9に示す。
【0079】
この例では、MLEを、半径の約半分で傾斜しているくさび状の第1の切込み710と、長手方向のMLE軸に本質的に垂直な第2の切込み712とを有するセグメントにカットすることができる。スペーサ740を、軸支持ワイヤに、かつセグメント702の直角カット部分の各々の間に組み付けることができる。これらのスペーサ740は、アセンブリの一側または両側に間隙を提供することにより、アセンブリを片側または両側に曲げることができる。スペーサは円筒形であってもよい。スペーサは、一方または両方向に曲がることができるように材料が除去されたMLEからカットされた薄い切片または部分から形成されてもよい。
【0080】
この例によれば、独立したセグメント702の各々が、
図4に示すように形成され、スペーサ要素740(ヒンジと呼ぶこともできる)によって互いに分離される。スペーサ要素740は、シャフトの断面の180°をならびに超えて延びる。したがって、スペーサ要素740は、軸支持ワイヤルーメン722および操作ワイヤルーメン720の一部を形成し、同時に、隣接するセグメント702間に、開いた除去部分または切込み710を残す。スペーサ要素740を、セグメント702に緩く取り付けて、作動時にセグメントがスペーサ要素740から分離できるようにしても、セグメント702にしっかりと取り付けてもよい。スペーサ要素740を、例えば、隣接するセグメントに片側で接着または溶接することができる。スペーサ要素740の近位面を、例えば、セグメント702の遠位面に接着または溶接することができ、スペーサ要素740およびセグメント702のそれぞれの個々のアセンブリが、組み合わされたセグメントを形成する。
【0081】
作動シャフト700の代替例が、
図10に示されている。例えばMLEから作製された比較的大きいスペーサ740を使用する代わりに、シャフト700のセグメント702は、中立軸支持ワイヤ730を単に囲む単純な円筒形のスペーサ741によって互いに離間されていてもよい。
【0082】
本開示によれば、関節シャフトは、必ずしもその長手方向範囲全体に沿って同一に形成される必要はない。例えば、
図1~
図10を参照して説明した幾何形状を、高い柔軟性が必要なシャフトの遠位領域にのみ使用してもよい。シャフトの近位部を異なって形成してもよい。例えば、
図11に示すように、シャフト800の近位部を、1つのMLEから作製しても、遠位関節部と同じMLEから作製してもよく、シャフトの柔軟性を高めるために複数の切り目810を備えていてもよい。切り目810のサイズ、幾何学的形状、およびピッチを長手方向の長さに沿って変化させて、シース800の柔軟性を長さに沿って変更してもよい。
【0083】
関節シャフトを、遠位部の1つまたは複数の方向の関節運動を可能にするための概説した遠位切込みパターン配置と、遠位部から近位端へ柔軟性が変化するように、または中間部および近位部についてはMLEにさらなる変更を加えないように設計された異なる切込みパターンとを有する単一のMLEから構成して、遠位から近位までのシャフト全体を、単純で低コストの最小限の部品、単一のMLE、1~2本のプルワイヤ、および1~2本の軸支持ワイヤにより構成することができる。
【0084】
図示のすべての例において、シャフトは本質的に円形の外形を有する。しかしながら、任意の他の断面外形、例えば長円形または多角形の外形を選択してもよい。本明細書に示すように、ルーメンを形成するすべての開口部も円形断面を有する。必ずしもこれに限らず、任意の他の適切な断面、例えば長円形または多角形を使用してもよい。
【0085】
さらに、1つまたは複数の液密な流路を作成するために、ルーメンのうちの少なくとも1つを、例えばポリマーから作製されたチューブで裏張りしてもよい。
図12は、ポリマーチューブ942がメインルーメン904に挿入されたシャフト900を示す。当然、代わりにまたは加えて、追加のルーメン926のうちの1つまたは複数が、液密なライナ942を備えていてもよい。
【0086】
加えてまたは代わりに、
図13に示すように、ポリマージャケット944をマルチルーメン押出成形品の外面に装着して、解剖学的構造に接触するための滑らかな表面を提供し、完成したデバイスの他の部品を外部物質、例えば体液からを保護することができる。ジャケット944は、単純な押出ポリマーチューブ、編組もしくはコイル補強チューブ、または任意の他の適切な構成を含むことができる。
【0087】
要約すると、本発明は、マルチルーメン押出成形品に基づく関節シャフト設計を提供する。マルチルーメン押出成形品を、例えば硬質ポリマー材料または他の適切な材料から形成することができる。この押出成形部品は、180°離れて外面に近接して配置された関節ルーメンを有することができる。ワイヤまたはケーブルを、これらのルーメンを通して送ることができる。除去部分または切込みは、これらの関節ルーメンを横切るように配置される。
【0088】
押出成形品は、表面に近接して互いに180°に配置された中立軸支持ルーメンを有することができる。これらのルーメンは、関節ルーメンに対して90°に配置されると有利であり得る。
【0089】
軸支持ワイヤをこれらのルーメンに組み込むことができる。軸支持ワイヤは、いくらかの弾性特性を有する鋼またはニチノールまたは他の適切な材料であってよい。これらの軸支持ワイヤを、中立軸支持ワイヤとも呼ぶこともできる。関節ワイヤは関節ルーメンに組み込まれる。これらのワイヤがアセンブリの遠位端に取り付けられ、引張荷重が加わると、ワイヤ(またはケーブル)は短くなる。これにより開口部が閉じて、アセンブリが開口部の方向に曲がる。中立軸支持ワイヤが曲がることにより、アセンブリを曲げることができる。これらの軸支持ワイヤは、いくらかの関節軸方向荷重も担持する。ワイヤは、セグメントを整列させて定位置に維持する。ワイヤは、アセンブリに加わる張力も維持することによって、セグメントの分離を防ぐ。
【0090】
セグメントを、1方向および2方向の操作が可能であり、(独立したセグメントにつながる)整列された開口部または交互のセグメントが一体設計を提供する、多数の方法で構成することができる。
【0091】
様々な要素を担持するための複数のルーメンを含むことができる。
【0092】
開口部は、ギャングソー、グラインダ、ブレード、または他の方法によって、機械的にカットまたはレーザカットすることができる。
【0093】
直角セグメント間に組み付けられた直角面とヒンジ部品とによって、個々のセグメントをカットすることができる。
【0094】
1方向操作の場合、余剰な操作ルーメンを追加の支持ワイヤ用に使用して、トルク性能を向上させることができる。このワイヤは遠位端にのみ固定され、部品を関節運動させると軸方向に自由に動く。
【符号の説明】
【0095】
100、200、300、400、500、600、700、800、900 関節シャフト
101、701、901 管状体
102、202、302、402、702 セグメント
103 ヒンジ
104、204、304、404、504、604、704、804、904 メインルーメン
106、206、306、406、506、606 ワイヤ支持要素
307、507 第2のワイヤ支持要素
108、508 貫通開口部
509 第2の貫通開口部
110、210、310、410、510、610、710、810 第1の除去部分または切込み
112、212、312、512、612、712 第2の除去部分または切込み
114、214、314 第1の側面
116、216、316 第2の側面
118 長手方向軸
120、220、320、420、520、620、720、820、920 操作ワイヤルーメン
122、222、322、422、522、622、722、822、922 補強ルーメン
124、324、424、524、624 メインルーメン内に突出する壁
226、826、926 追加のルーメン
128、328、428、528、628、728 (第1の)操作ワイヤ
129、329、529、729 第2の操作ワイヤ
130、330、430、530、630、730 中立軸支持ワイヤ
336 第1の曲げ方向
338 第2の曲げ方向
440、740 スペーサ要素
741 円筒形のスペーサ要素
942 ポリマーチューブ
944 外側ジャケット
1000 マルチルーメン押出成形品(MLE)