IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社エーワンテクニカの特許一覧 ▶ 学校法人帝京大学の特許一覧

<>
  • 特許-バブル製剤の製造方法 図1
  • 特許-バブル製剤の製造方法 図2
  • 特許-バブル製剤の製造方法 図3
  • 特許-バブル製剤の製造方法 図4
  • 特許-バブル製剤の製造方法 図5
  • 特許-バブル製剤の製造方法 図6
  • 特許-バブル製剤の製造方法 図7
  • 特許-バブル製剤の製造方法 図8
  • 特許-バブル製剤の製造方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】バブル製剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/10 20060101AFI20231006BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20231006BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20231006BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
A61K9/10
A61K47/06
A61K47/24
A61K47/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019154308
(22)【出願日】2019-08-27
(65)【公開番号】P2021031449
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】510314792
【氏名又は名称】株式会社エーワンテクニカ
(73)【特許権者】
【識別番号】399086263
【氏名又は名称】学校法人帝京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100158850
【弁理士】
【氏名又は名称】明坂 正博
(72)【発明者】
【氏名】金田 英一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亮
(72)【発明者】
【氏名】丸山 一雄
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-131809(JP,A)
【文献】国際公開第2016/199430(WO,A1)
【文献】LANGMUIR,2016年,Vol.32,pp.3937-3944
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バブル製剤の製造方法であって、
内部に流体の流通路を有し、外周面から前記流通路まで貫通し、前記流通路を流れる流体にガスを取り込むための貫通孔が形成されたノズル本体部と、前記流体の流れに対して上流側端部から下流側端部にかけて内径が漸次的に狭くなる第1の筒状体と、前記第1の筒状体の下流側に配置され、前記流体の流れに対して上流側端部から下流側端部にかけて内径が広くなる第2の筒状体とを備え、
前記第1の筒状体及び前記第2の筒状体は、前記ノズル本体部中に隙間を設けて配置され、
前記貫通孔は、前記隙間に連通して設けられ、
前記第2の筒状体は、前記ノズル本体部の長手方向に平行な向きの内周面における断面形状が、下流側に準線を設け、この準線よりも上流側の位置であり、かつ流路内でない位置に焦点を設けてなる放物線の一部となる形状のものよりなるものであるバブル製剤の製造装置の前記貫通孔にパーフルオロプロパン、パーフルオロブタン、パーフルオロペンタン、及び、パーフルオロヘキサンの少なくとも何れかのガス又はこれらの混合ガスを導入し、
前記流通路に前記流体として、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、及び、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトオキシ(ポリエチレングリコール)](DSPE-PEG)の少なくとも1以上を含む脂質懸濁液を流通させることにより、前記流体中に前記混合ガスの微小気泡を生成させることを特徴とするバブル製剤の製造方法。
【請求項2】
前記流路内での前記流体の流速が1~28L/minであることを特徴とする請求項1に記載のバブル製剤の製造方法。
【請求項3】
前記流路内での前記流体の圧力が0.2~0.3MPaであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のバブル製剤の製造方法。
【請求項4】
前記貫通孔から導入される前記ガス又は前記混合ガスのガス流量が毎分0.1~0.4リットルの範囲内であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のバブル製剤の製造方法。
【請求項5】
前記脂質懸濁液は、
DSPC:DSPG:DSPE-PEG2k-Omeがモル比率で30:60:10の割合で混合した混合物にリン酸緩衝液を加えて水和させることで得られたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のバブル製剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バブル製剤の製造方法に関し、特にセラノスティクス用のバブル製剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体内での薬剤の動きをコントロールし、必要な場所に、必要な時、必要な量だけ作用させることで薬の効果を最大限に発揮させるDDS(ドラッグ・デリバリー・システム)が注目されている。DDSとして提案されている手法のなかに超音波を利用したものがある。超音波を利用したDDSでは、微小気泡の懸濁液であるバブル製剤を対象組織に導入し、超音波を対象組織に作用させることにより対象組織の診断及び治療を行うことが提案されている。そのようなバルブ製剤の製造方法として、例えば、特許文献1には、NMR映像法におけるフッ素の有用性を期待した、乳剤性造影剤としてパーフルオロカーボン乳化製剤を、高圧ジェット流型乳化機を用いて製造することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-205061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、バブル製剤を用いた診断及び治療が注目を浴びているが、バブル製剤を衛生的に製造できる装置は未だ知られていない。
【0005】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、バブル製剤を衛生的に製造できるバブル製剤の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決すべく、本発明に係るバブル製剤の製造方法は、内部に流体の流通路を有し、外周面から流通路まで貫通し、流通路を流れる流体にガスを取り込むための貫通孔が形成されたノズル本体部と、流体の流れに対して上流側端部から下流側端部にかけて内径が漸次的に狭くなる第1の筒状体と、第1の筒状体の下流側に配置され、流体の流れに対して上流側端部から下流側端部にかけて内径が広くなる第2の筒状体とを備え、第2の筒状体は、ノズル本体部の長手方向に平行な向きの内周面における断面形状が、下流側に準線を設け、この準線よりも上流側の位置であり、かつ流路内でない位置に焦点を設けてなる放物線の一部となる形状のものよりなるものであるバブル製剤の製造装置の貫通孔にパーフルオロプロパン、パーフルオロブタン、パーフルオロペンタン、及び、パーフルオロヘキサンの少なくとも何れか又はこれらの混合ガスを導入し、流通路に流体として、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、及び、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトオキシ(ポリエチレングリコール)](DSPE-PEG)の少なくとも1以上を含む脂質懸濁液を流通させることにより、流体中に混合ガスの微小気泡を生成させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように、本発明によれば、簡易で構造でバブル製剤を衛生的かつ大量に製造できるバブル製剤の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るバブル製剤のイメージ図(断面図)である。
図2】実施形態に係るバブル製剤の製造装置の一部断面図である。
図3】実施形態に係るバブル製剤の製造装置のノズル本体部の構成図である。
図4】実施形態に係るバブル製剤の製造装置の整流板の構成図である。
図5】実施形態に係るバブル製剤の製造装置の第1の筒状体の構成図である。
図6】実施形態に係るバブル製剤の製造装置の第2の筒状体の構成図である。
図7】実施形態に係るバブル製剤の製造装置の第3の筒状体の構成図である。
図8】実施形態に係るバブル製剤の製造システムの構成図である。
図9】実施例に係るバブル製剤の測定結果(粒径分布)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、実施形態では、脂質からなる被膜と前記被膜の内腔に封入されたガスとからなり、低強度治療用超音波を作用させることにより、対象組織の診断及び治療を可能とするセラノスティクス用のバブル製剤(TB製剤ともいう)の製造装置、製造方法及び製造システムについて説明するが、本発明は、セラノスティクス用のバブル製剤に限らず、他のバブル製剤、例えば、対象組織の診断用のバブル製剤及び対象組織の治療用のバブル製剤の製造装置、製造方法及び製造システムにも適用可能である。
【0010】
[実施形態]
(バブル製剤)
図1は、実施形態に係るバブル製剤のイメージ図(断面図)である。図1に示すように、バブル製剤は、脂質からなる被膜と、この被膜の内腔に封入されたガスとからなる。被膜は、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、及び、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトオキシ(ポリエチレングリコール)](DSPE-PEG)を、22~60:30~68:4~12のモル比にて被覆され形成されたアニオニック脂質である。また、ガスは、パーフルオロプロパン、パーフルオロブタン、パーフルオロペンタン、及び、パーフルオロヘキサンの少なくとも何れか又はこれらの混合ガスである。被膜は、DSPC、DSPG及びDSPE-PEGを22~60:30~68:4~12のモル比にて形成されることにより、パーフルオロ炭化水素の保持性が高まり、診断用超音波の照射で崩壊すること無く持続的な共振・共鳴を示し、これにより長時間の連続超音波造影が可能となる。
【0011】
実施形態のバブル製剤の被膜の内部には薬物を内包又は表面吸着させることも可能である。薬物は、長期間血中濃度が維持されることが望まれる薬物又は特定の疾患部位や細胞への標的指向性を意図した投与が必要な薬物等が好ましい。薬物は、特に限定されるものではないが、例えば抗癌剤、抗生物質、抗喘息薬、抗血栓剤、抗原虫薬、免疫賦活剤、ペプチド系薬物、抗ウイルス薬である。これにより、対象組織に対して診断及び治療を行うことができる。
【0012】
上記バブル製剤を用いて診断及び治療を行う際は、バブル製剤が注射用水に懸濁されている懸濁液を対象組織に導入し、造影用超音波を対象組織に作用させることにより対象組織の造影による診断(Diagnostics)を行い、低強度超音波又は低強度収束超音波を対象組織に作用させることによりキャビテーション現象による対象組織の治療(Therapeutics)を行う。ここで、造影用超音波の周波数は、例えば3MHz~20MHzの範囲内であることが好ましい。3MHz~20MHzの範囲内の周波数の音波を作用させることによりMicrostreaming現象が生じ、超音波の音圧強度によりバブル製剤(微小気泡)が拡大・縮小を繰り返して局所的に振動する。また、低強度超音波又は低強度収束超音波の周波数は、例えば0.5MHz~3.0MHzの範囲内であることが好ましい。0.5MHz~3.0MHzの範囲内の周波数の音波を作用させることによりキャビテーション現象による対象組織の治療を行うことができる。なお、キャビテーション現象は、バブル製剤が圧壊する時点で大きな圧力を放出し、ジェット流が生じるものである.なお、造影診断及び治療の両方の超音波(3MHz~20MHz及び0.5MHz~3.0MHz)に反応させるためには、バブル製剤の粒径は、1~5μmの範囲内であることが好ましい。
【0013】
(製造装置)
図2に示すように、実施形態に係るバブル製剤の製造装置10は、ノズル本体部110と、整流板120と、第1の筒状体130と、第2の筒状体140と、第3の筒状体150と、第4の筒状体160とを備える。なお、図2では、バブル製剤の製造装置10の両端に接続されるチェックバルブ(Check Valve)も図示している。
【0014】
図3(a)はノズル本体部110の正面図、図3(b)はノズル本体部110の側面図である。図3に示すように、ノズル本体部110は、内部に流体(本実施形態では、脂質懸濁液)の流通路111を有している。また、ノズル本体部110には、外周面112から流通路111まで貫通し、流通路111を流れる流体にガスを取り込むための貫通孔110Hが形成されている。また、ノズル本体部110には、貫通孔110Hからガスを取り込むためのプラグPが設けられている。
【0015】
ここで、貫通孔110Hは、第1の筒状体130と第2の筒状体140との間に設けられた隙間Gに連通している。そして、プラグPから流入するガスは、貫通孔110Hを介して隙間Gから流通路111を流れる流体に取り込まれる。
【0016】
図4(a)は整流板120の正面図、図4(b)は整流板120の断面図である。図4に示すように、整流板120は、板厚方向に貫通した貫通孔121を複数(図4では4つ)有している。整流板120は、ノズル本体部110内部(流通路111)の第1の筒状体130の上流側に配置され、流通路111を流れる流体の流れを整え(整流し)、流体を層流とする。整流板120を通過することにより流体のレイノルズ数(Re)の値が小さくなる。
【0017】
図5(a)は第1の筒状体130の断面図、図5(b)は第1の筒状体130の正面図である。図2に示すように、第1の筒状体130は、整流板120の下流側(図2の紙面に向かって右側)に配置される。また、図5に示すように、第1の筒状体130は、流体の流れに対して上流側端部131から下流側端部132にかけて、つまり図5の紙面右側に向かうに従い内径D1が漸次的に狭くなっている。また、第1の筒状体130の下流側端部132側には、第2の筒状体140との間に隙間Gを形成するために凸部134が設けられている。
【0018】
図6(a)は第2の筒状体140の断面図、図6(b)は第2の筒状体140の裏面図である。図2に示すように、第2の筒状体140は、第1の筒状体130との間に微小な隙間Gを設けて第1の筒状体130の下流側(図2の紙面に向かって右側)に配置される。また、図6に示すように、第2の筒状体140は、流体の流れに対して上流側端部141から下流側端部142にかけて、つまり図6の紙面右側に向かうに従い内径D2の大きさが漸次的に広くなっている。より具体的には、第2の筒状体140は、ノズル本体部110の長手方向に平行な向きの内周面における断面形状が、下流側に準線を設け、この準線よりも上流側の位置であり、かつ流路内でない位置に焦点を設けてなる放物線の一部となる形状のものよりなる(換言すると、第2の筒状体140の内壁143が、立体的な形状がホーン(horn)形状となっている)。第2の筒状体140により、流体は、乱流となり、そのレイノルズ数(Re)が増大する。
【0019】
図7(a)は第3の筒状体150の正面図、図7(b)は第3の筒状体150の断面図である。図2に示すように、第3の筒状体150は、第2の筒状体140の下流側(図2の紙面に向かって右側)に配置される。また、図2及び図7に示すように、第3の筒状体150は、流体の流れに対して上流側端部151の内径D3が第2の筒状体140の下流側端部142の内径D2と略同一であり、第2の筒状体140の下流側端部142の内径D2とノズル本体部110の内径(流通路径)との違いにより生じる段差を低減するために、ノズル本体部110の流通路111に配置される。
【0020】
図2に示すように、第4の筒状体160は、第1の筒状体130の上流側(図2の紙面に向かって左側)に配置される。ここで、第4の筒状体160は、第1の筒状体130の上流側端部131の内径D1とノズル本体部110の内径(流通路径)との違いにより生じる段差を低減するために、ノズル本体部110の流通路111に配置される。なお、第4の筒状体160の構成は、図7を参照して説明した第3の筒状体150と略同一であるため重複する説明を省略する。
【0021】
以上のように、実施形態に係るバブル製剤の製造装置23は、図3図6及び図7を参照して説明したように、板厚方向に貫通した貫通孔121を複数有し、ノズル本体部110の内部に配置されて流通路111を流れる流体を整流する整流板120と、流体の流れに対して上流側端部131から下流側端部132にかけて内径D1が漸次的に狭くなる第1の筒状体130(図6参照)と、第1の筒状体130との間に微小な隙間Gを設けて第1の筒状体130の下流側に配置され、流体の流れに対して上流側端部141から下流側端部142にかけて内径D2の大きさが漸次的に広くなる第2の筒状体140(図6参照)とを備えている。そして、第2の筒状体140は、ノズル本体部110の長手方向に平行な向きの内周面における断面形状が、下流側に準線を設け、この準線よりも上流側の位置であり、かつ流路内でない位置に焦点を設けてなる放物線の一部となる形状のものよりなる。
【0022】
つまり、整流板120で流体を層流とした後に、第1の筒状体130を通過させることで急激に流速を上げたのち、断面形状が指数関数による放物線形状、つまり立体的な形状がホーン(horn)形状となっている第2の筒状体140を通過させることで流体全体に効率よく乱流を発生することができる。このため、微小気泡(ナノバブル)を効率よく連続的・安定的に生成することができる。また、構造が簡易であるため、取扱いが容易で製造コストを低減することができる。
【0023】
微小気泡を効率よく連続的・安定的に生成することができる理由としては、発生した乱流により生じるせん断力によりガスを効率よくせん断して流体中に分散させることができるためであると考えられる。また、第1の筒状体で流体の圧力が高まり、第2の筒状体で流体の圧力が低下するため、取り込んだガスを圧力の高い状態で流体中に高濃度で溶解させることが出来、第2の筒状体で高濃度にガスが溶解した流体の圧力を解放することで溶解したガスが過飽和状態となり微小気泡として析出するためであると考えられる。
【0024】
また、実施形態に係るバブル製剤の製造装置10の第2の筒状体140は、ノズル本体部110の長手方向に平行な向きの内周面における断面形状が、下流側に準線を設け、この準線よりも上流側の位置であり、かつ流路内でない位置に焦点を設けてなる放物線の一部となる形状のものよりなる(換言すると、第2の筒状体140の内壁143が、立体的な形状がホーン(horn)形状となっている)。このため、流体に効率的に乱流を発生させることができる。この結果、極めて効率よく微小気泡を生成することができる。
【0025】
また、実施形態に係るバブル製剤の製造装置10の貫通孔110Hは、第1の筒状体130と第2の筒状体140との間に設けられた隙間Gに連通しており、ガスは、該貫通孔110Hを介して隙間Gから流通路111を流れる流体に取り込まれる。つまり、乱流を発生させる第2の筒状体140の手前でガスを取り込むようにしているので、非常に効率よく微小気泡を連続的・安定的に生成することができる。
【0026】
また、実施形態に係るバブル製剤の製造装置10は、第2の筒状体140の下流側に配置され、流体の流れに対して上流側端部151の内径D3が第2の筒状体140の下流側端部142の内径D2と略同一であり、第2の筒状体140の下流側端部142の内径D2とノズル本体部110の内径との違いにより生じる段差を低減する第3の筒状体150を備えている。このため、第2の筒状体140の下流側端部142で流体の流れが乱れずにスムーズに流れる。このため、バブル製剤の製造装置10での微小気泡の生成に悪影響を与えることを抑制することができる。
【0027】
なお、従来の技術において、高圧ジェット流型乳化機などのバブル製剤の製造装置は、流体の圧力を高くする必要があるため、その圧力に耐えることができるように金属製のものがほとんどであるため価格も高額となっている。このため、ノズルを簡単に取り換えることができず、高度な衛生管理が必要な医療用のバブル製剤の製造に利用する場合、定期的に洗浄を行う必要がある。しかしながら、洗浄中はバブル製剤を製造することができずダウンタイムとなる。
【0028】
一方、実施形態に係るバブル製剤の製造装置10は、流体を高圧とする必要がないため、金属に比して耐久性が低いABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)樹脂、ナイロン、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PPS(ポリフェニレンスルファインド)樹脂等の樹脂製とすることが可能である。このため、金属製に比して、安価にバブル製剤の製造装置10を製造することができ、製造装置10を定期的もしくは利用のたびに交換することで、ダウンタイムを極力少なくすことができる。また、製造装置10を定期的もしくは利用のたびに交換するので高度な衛生管理を実施することができ、GMP(good manufacturing practice)に準拠した運用が可能となる。なお、該記載は、実施形態に係るバブル製剤の製造装置10の利点を記述したものであり、実施形態に係るバブル製剤の製造装置10を樹脂製に限定するものではない。
【0029】
(バブル製剤の製造システム)
次に、バブル製剤の製造装置10を用いたバブル製剤の製造システム1について、図8を参照して説明する。図8に示すように、実施形態に係るバブル製剤の製造システム1は、バブル製剤の製造装置(NOZZLE)10と、バブル製剤の製造装置10に流体を送出するためのポンプ(PUMP)11とを備える。
【0030】
ポンプ11は、モータ11Aを有し、流体(例えば、脂質懸濁液)をバブル製剤の製造装置10へと送出する。バブル製剤の製造装置10では、GAS SUPPLYに接続された配管Bから供給されるガスが取り込まれて微小気泡が生成され、バブル製剤の製造装置10へと送られた流体は、GAS SUPPLYから供給されたガスの微小気泡(ナノバブル)を含んだ状態となって配管A内を循環する。配管A内を循環させることで、流体に十分な量の微小気泡(ナノバブル)を含ませることができる。
【0031】
また、バブル製剤の製造装置及び製造システムによれば、全てを閉塞した状態(外気に触れない状態)でバブル製剤を製造することができ、攪拌タイプのように製造途中にバブル製剤が外気に触れることない。このため、バブル製剤への雑菌等の混入(コンタミネーション)を抑制することができる。
【実施例
【0032】
次に、実施例について説明する。発明者らは、図8を参照して説明したバブル製剤の製造システム1を用いて、バブル製剤を生成し、バブル製剤に含まれる微小気泡(バブル)の粒径及び数を計測した。
【0033】
(脂質懸濁液の作成)
初めに、脂質懸濁液の製造について説明する。本実施例では、発明者らは、以下の手順で脂質懸濁液を作成した。
DSPC:DSPG:DSPE-PEG2k-Omeがモル比率で30:60:10の割合となるように、DSPCを711.2 mg、DSPGを1433 mg、DSPE-PEG2k-OMeを825 mgをナスフラスコに秤取し、クロロホルム、メタノール、水の混合液の溶媒に完全に溶解させた。なお、クロロホルム、メタノール、水の比率は、65:35:4(体積%(v/v%))である。
【0034】
次に、上記のようにして作成した脂質溶液をエバポレーターにセットし、溶媒(クロロホルム、メタノール、水の混合液)を完全に除去した。ナスフラスコに析出した脂質混合物の溶媒を完全に除去するため、真空デシケーターを用いて1晩で乾燥させた。この脂質にリン酸緩衝液(pH7.4)を3L(リットル)加えて脂質を水和させ、脂質懸濁液を得た。
【0035】
(バブル製剤の作成)
次に発明者らは、上記のようにして製造した脂質懸濁液に、実施形態で説明したバブル製剤の製造装置10を用いてプラグPからガス(パーフルオロプロパンガス(C))を導入して、バブル製剤を作成した。
【0036】
以下の表1にバブル製剤の作成条件及び測定結果を示す。なお平均粒径は、算術平均により算出された値である。
【表1】
なお、微小気泡の粒径及び数の計測には、ベックマン・コールター株式会社製の超高分解能粒度分布測定&粗大粒子数測定装置(商品名:Multisizer3(マルチサイザー3))を用いた。また、圧力は、バブル製剤の製造装置の上流に設けた圧力計(SMC社製)で計測した値である(図8の圧力計の位置を参照)。
【0037】
図9は、上記表1のサンプルNo.4の粒径分布を示す図である。図9において、縦軸は粒子数(×107個)、横軸は粒子径(直径(μm))である。図9に示すように、粒子径1.1μm前後に粒子数のピークがあることがわかる。
【0038】
以上のように、実施形態に係るバブル製剤製造装置に製造されたバブル製剤は、微小気泡の平均粒径(算術平均による平均粒径)が1.5μm~1.6μm、1cc当たりの微小気泡の粒子数が2×109個(2億個)以上という良好な測定結果を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上で説明したように、本発明に係るバブル製剤の製造方法は、バブル製剤の製造に好適である。
【符号の説明】
【0040】
1 バブル製剤の製造システム
10 バブル製剤の製造装置
11 ポンプ(PUMP)
110 ノズル本体部
120 整流板
130 第1の筒状体
140 第2の筒状体
150 第3の筒状体
160 第4の筒状体

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9