(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】信号処理装置、慣性力センサ、信号処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01P 15/125 20060101AFI20231006BHJP
G01P 15/18 20130101ALI20231006BHJP
【FI】
G01P15/125 V
G01P15/18
(21)【出願番号】P 2021508092
(86)(22)【出願日】2020-01-09
(86)【国際出願番号】 JP2020000474
(87)【国際公開番号】W WO2020195000
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2019061932
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 啓介
(72)【発明者】
【氏名】梶原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】中塚 淳二
(72)【発明者】
【氏名】永井 正昭
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/052926(WO,A1)
【文献】特開2015-010856(JP,A)
【文献】特開2018-077200(JP,A)
【文献】特開2016-017792(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0288200(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P 15/125
G01P 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する3つの方向のうち少なくとも2つの方向における慣性力を検出する検出素子の出力信号から検出信号を生成する検出回路と、
前記検出信号を補正する補正回路と、を備え、
前記検出回路は、
前記少なくとも2つの方向の各々における前記出力信号から前記検出信号を生成する第1検出部と、
前記第1検出部よりも検出範囲が広く、前記少なくとも2つの方向の各々における前記出力信号から補正用信号を生成する第2検出部と、を有し、
前記補正回路は、前記少なくとも2つの方向の各々における前記検出信号を、前記少なくとも2つの方向のうち補正対象である1つの方向を除く少なくとも1つの方向における前記補正用信号で補正する、
信号処理装置。
【請求項2】
前記第1検出部及び前記第2検出部の各々は、A/D変換器を含む、
請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記少なくとも2つの方向は、互いに直交するX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向であり、
前記検出素子は、
X軸方向における慣性力を検出するX軸用検出素子と、
Y軸方向における慣性力を検出するY軸用検出素子と、
Z軸方向における慣性力を検出するZ軸用検出素子と、を含む、
請求項1又は2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記少なくとも2つの方向は、互いに直交するX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向であり、
前記検出回路は、
X軸方向における慣性力を検出する前記検出素子としてのX軸用検出素子の前記出力信号から前記検出信号を生成するX軸用検出回路と、
Y軸方向における慣性力を検出する前記検出素子としてのY軸用検出素子の前記出力信号から前記検出信号を生成するY軸用検出回路と、
Z軸方向における慣性力を検出する前記検出素子としてのZ軸用検出素子の前記出力信号から前記検出信号を生成するZ軸用検出回路と、を含み、
前記X軸用検出回路は、前記第1検出部としてのX軸用第1検出部と、前記第2検出部としてのX軸用第2検出部と、を有し、
前記Y軸用検出回路は、前記第1検出部としてのY軸用第1検出部と、前記第2検出部としてのY軸用第2検出部と、を有し、
前記Z軸用検出回路は、前記第1検出部としてのZ軸用第1検出部と、前記第2検出部としてのZ軸用第2検出部と、を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記第1検出部の前記検出信号と前記第2検出部の前記補正用信号とを比較する信号比較部を更に備える、
請求項1~4のいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の信号処理装置と、
前記検出素子と、を備える、
慣性力センサ。
【請求項7】
互いに直交する3つの方向のうち少なくとも2つの方向における慣性力を検出する検出素子の出力信号を処理する信号処理方法であって、
前記少なくとも2つの方向の各々における前記出力信号から検出信号を生成する第1検出ステップと、
前記第1検出ステップよりも広い検出範囲で、前記少なくとも2つの方向の各々における前記出力信号から補正用信号を生成する第2検出ステップと、
前記検出信号を補正する補正ステップと、を含み、
前記補正ステップでは、前記少なくとも2つの方向の各々における前記検出信号を、前記少なくとも2つの方向のうち補正対象である1つの方向を除く少なくとも1つの方向における前記補正用信号で補正する、
信号処理方法。
【請求項8】
請求項7に記載の信号処理方法を1以上のプロセッサに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、信号処理装置、慣性力センサ、信号処理方法、及びプログラムに関する。より詳細には、本開示は、慣性力を検出する検出素子からの信号を処理する信号処理装置、慣性力センサ、信号処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両、ナビゲーション装置、及び携帯端末等に用いられる加速度センサ(慣性力センサ)が記載されている。特許文献1に記載の加速度センサは、センサ部(検出素子)と、検出回路(信号処理装置)と、を有する。検出回路は、CV変換回路と、信号調整回路と、AD変換回路(第1検出部及び第2検出部)と、を含む。CV変換回路は、センサ部で生じた容量の変化を電圧に変換する。信号調整回路は、CV変換回路の出力電圧をサンプリングし、得られた出力電圧にオフセット電圧を付加した後、所定の感度まで増幅する。AD変換回路は、信号調整回路の出力電圧をデジタル値に変換して出力する。
【0003】
特許文献1に記載の加速度センサが3軸加速度センサの場合、例えばX軸方向の加速度に対して、Y軸方向とZ軸方向との少なくとも一方の加速度が影響する場合がある。この場合、上記加速度の影響を抑制する必要があるが、AD変換回路のダイナミックレンジを超えるような加速度に対しては抑制できない可能性がある。
【0004】
この問題に対して、AD変換回路のダイナミックレンジを大きくする方法もあるが、ダイナミックレンジと最小分解能とはトレードオフの関係にあり、ダイナミックレンジを大きくすると最小分解能が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
本開示の目的は、感度の低下を抑えながら他軸感度の影響を抑えることができる信号処理装置、慣性力センサ、信号処理方法、及びプログラムを提供することにある。
【0007】
本開示の一態様に係る信号処理装置は、検出回路と、補正回路と、を備える。前記検出回路は、互いに直交する3つの方向のうち少なくとも2つの方向における慣性力を検出する検出素子の出力信号から検出信号を生成する。前記補正回路は、前記検出信号を補正する。前記検出回路は、第1検出部と、第2検出部と、を有する。前記第1検出部は、前記少なくとも2つの方向の各々における前記出力信号から前記検出信号を生成する。前記第2検出部は、前記第1検出部よりも検出範囲が広く、前記少なくとも2つの方向の各々における前記出力信号から補正用信号を生成する。前記補正回路は、前記少なくとも2つの方向の各々における前記検出信号を、前記少なくとも2つの方向のうち補正対象である1つの方向を除く少なくとも1つの方向における前記補正用信号で補正する。
【0008】
本開示の一態様に係る慣性力センサは、前記信号処理装置と、前記検出素子と、を備える。
【0009】
本開示の一態様に係る信号処理方法は、互いに直交する3つの方向のうち少なくとも2つの方向における慣性力を検出する検出素子の出力信号を処理する信号処理方法である。前記信号処理方法は、第1検出ステップと、第2検出ステップと、補正ステップと、を含む。前記第1検出ステップは、前記少なくとも2つの方向の各々における前記出力信号から検出信号を生成するステップである。前記第2検出ステップは、前記第1検出ステップよりも広い検出範囲で、前記少なくとも2つの方向の各々における前記出力信号から補正用信号を生成するステップである。前記補正ステップは、前記検出信号を補正するステップである。前記補正ステップでは、前記少なくとも2つの方向の各々における前記検出信号を、前記少なくとも2つの方向のうち補正対象である1つの方向を除く少なくとも1つの方向における前記補正用信号で補正する。
【0010】
本開示の一態様に係るプログラムは、前記信号処理方法を1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る信号処理装置及び慣性力センサの構成を示す概略図である。
【
図2A】
図2Aは、同上の慣性力センサの他軸感度を説明する説明図である。
【
図2B】
図2Bは、同上の慣性力センサの他軸感度を説明する説明図である。
【
図3】
図3は、同上の慣性力センサを構成する検出素子の分解斜視図である。
【
図5】
図5は、同上の信号処理装置の動作を説明するシーケンス図である。
【
図6】
図6は、本開示の一実施形態の変形例に係る信号処理装置の一部構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態)
以下の実施形態等において参照する
図3及び
図4は、いずれも模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさや厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0013】
(1)概要
以下、本実施形態に係る慣性力センサ10の概要について、
図1及び
図2を参照して説明する。
【0014】
本実施形態に係る慣性力センサ10は、慣性力を検出するためのセンサであり、例えば、互いに直交する3軸方向の加速度を検出する3軸加速度センサである。つまり、本実施形態に係る慣性力センサ10は、X軸方向における加速度と、Y軸方向における加速度と、Z軸方向における加速度と、をそれぞれ検出することができる。慣性力センサ10は、
図2A及び
図2Bに示すように、例えば、プリント基板100の一表面(基準面)101に実装される表面実装型の加速度センサである。慣性力センサ10は、例えば、静電容量型の加速度センサである(
図4参照)。
【0015】
本実施形態に係る慣性力センサ10は、
図1に示すように、信号処理装置1と、複数(
図1では3つ)の検出素子2と、を備えている。信号処理装置1は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)である。また、本実施形態では、検出素子2は、X軸用検出素子2Aと、Y軸用検出素子2Bと、Z軸用検出素子2Cと、を含む。X軸用検出素子2Aは、X軸方向における慣性力(加速度)を検出する。Y軸用検出素子2Bは、Y軸方向における慣性力(加速度)を検出する。Z軸用検出素子2Cは、Z軸方向における慣性力(加速度)を検出する。以下では、X軸用検出素子2A、Y軸用検出素子2B、及びZ軸用検出素子2Cを特に区別しない場合には、X軸用検出素子2A、Y軸用検出素子2B、及びZ軸用検出素子2Cの各々を「検出素子2」ともいう。
【0016】
図2A及び
図2Bは、本実施形態に係る慣性力センサ10をプリント基板100に実装した状態の模式図である。
図2A及び
図2Bでは、プリント基板100の一表面(上面)101が基準面(以下、「基準面101」ともいう)である。
図2Aは、基準面101に対する慣性力センサ10の傾斜角度がゼロの場合における他軸感度を示している。
図2Bは、基準面101に対する慣性力センサ10の傾斜角度がθ(θ>0)の場合における他軸感度を示している。本開示でいう「他軸感度」とは、測定軸以外、すなわち測定軸に直交する軸方向の加速度による測定軸方向への影響の度合いをいう。例えば、
図2A及び
図2Bに示すように、鉛直方向(Z軸方向)に重力加速度1Gが加わっている場合には、他軸感度は、Z軸方向以外の軸方向(
図2A及び
図2BではX軸方向)において鉛直方向の重力加速度1Gによる成分が検出されることをいう。
【0017】
図2Aでは、鉛直方向の重力加速度1GはZ軸方向のみに作用し、X軸方向には作用していない。つまり、
図2Aでは、X軸方向のセンサ出力はゼロであり、Z軸方向のセンサ出力は1Gである。この場合、鉛直方向の重力加速度1GによるX軸方向の他軸感度はゼロである。一方、
図2Bでは、プリント基板100の基準面101に対して慣性力センサ10が傾斜しているため、鉛直方向の重力加速度1GはZ軸方向の成分とX軸方向の成分とに分けられる。
図2Bに示す例では、基準面101に対する慣性力センサ10の傾斜角度がθであることから、重力加速度1GによるZ軸方向の成分は(1G×cosθ)となり、重力加速度1GによるX軸方向の成分は(1G×sinθ)となる。この場合、鉛直方向の重力加速度1GによるX軸方向の他軸感度は(1G×sinθ)である。このような他軸感度はX軸方向における誤差成分であるため、補正により低減する必要がある。
【0018】
このような他軸感度による誤差を補正する方法は従来から種々提供されているが、例えば、上述の特許文献1に記載の加速度センサでは、他軸感度の原因となる加速度の大きさがAD変換回路のダイナミックレンジ(フルスケール電圧)よりも大きくなると、他軸感度による誤差を補正できない可能性がある。この場合、AD変換回路のダイナミックレンジを大きくすることで対応可能であるが、AD変換回路のダイナミックレンジと最小分解能とはトレードオフの関係にあるため、ダイナミックレンジを大きくすると最小分解能(信号精度)が低下するという問題がある。本実施形態に係る信号処理装置1では、感度(最小分解能)の低下を抑えながら他軸感度の影響を抑えることができるように、以下の構成を採用している。
【0019】
本実施形態に係る信号処理装置1は、
図1に示すように、検出回路11と、補正回路12と、を備える。検出回路11は、互いに直交する3つの方向のうち少なくとも2つの方向における慣性力を検出する検出素子2の出力信号Sig1から検出信号Sig2を生成する。補正回路12は、検出信号Sig2を補正する。検出回路11は、第1検出部112と、第2検出部113と、を有する。第1検出部112は、少なくとも2つの方向の各々における出力信号Sig1から検出信号Sig2を生成する。第2検出部113は、第1検出部112よりも検出範囲が広く、少なくとも2つの方向の各々における出力信号Sig1から補正用信号Sig3を生成する。補正回路12は、少なくとも2つの方向の各々における検出信号Sig2を、少なくとも2つの方向のうち補正対象である1つの方向を除く少なくとも1つの方向における補正用信号Sig3で補正する。
【0020】
このように、本実施形態に係る信号処理装置1では、補正用信号Sig3を生成する第2検出部113の検出範囲(フルスケールレンジ)が、検出信号Sig2を生成する第1検出部112の検出範囲(フルスケールレンジ)よりも広い。そのため、加速度については、第2検出部113よりも検出範囲の狭い第1検出部112により検出することで、感度の低下を抑えることができる。また、他軸感度については、第1検出部112よりも検出範囲の広い第2検出部113により検出することで、他軸感度の原因となる加速度が大きい場合でも、他軸感度の影響を抑えることができる。つまり、本実施形態に係る信号処理装置1によれば、感度(最小分解能)の低下を抑えながら他軸感度の影響を抑えることができる。
【0021】
(2)構成
次に、本実施形態に係る慣性力センサ10の構成について、
図1、
図3及び
図4を参照して説明する。
【0022】
本実施形態に係る慣性力センサ10は、
図1に示すように、信号処理装置1と、複数(
図1では3つ)の検出素子2と、を備えている。
【0023】
(2.1)信号処理装置
信号処理装置1は、複数(
図1では3つ)の検出回路11と、複数(
図1では3つ)の補正回路12と、を備えている。
【0024】
複数の検出回路11の各々は、X軸用検出回路11Aと、Y軸用検出回路11Bと、Z軸用検出回路11Cのいずれかである。X軸用検出回路11Aは、後述するX軸用検出素子2Aの出力信号Sig1から検出信号Sig2を生成する。Y軸用検出回路11Bは、後述するY軸用検出素子2Bの出力信号Sig1から検出信号Sig2を生成する。Z軸用検出回路11Cは、後述するZ軸用検出素子2Cの出力信号Sig1から検出信号Sig2を生成する。
【0025】
また、複数の補正回路12の各々は、X軸用補正回路12Aと、Y軸用補正回路12Bと、Z軸用補正回路12Cのいずれかである。X軸用補正回路12Aは、X軸方向の他軸感度による誤差を補正する。Y軸用補正回路12Bは、Y軸方向の他軸感度による誤差を補正する。Z軸用補正回路12Cは、Z軸方向の他軸感度による誤差を補正する。
【0026】
以下では、X軸用検出回路11A、Y軸用検出回路11B、及びZ軸用検出回路11Cを特に区別しない場合には、X軸用検出回路11A、Y軸用検出回路11B、及びZ軸用検出回路11Cの各々を「検出回路11」ともいう。また、以下では、X軸用補正回路12A、Y軸用補正回路12B、及びZ軸用補正回路12Cを特に区別しない場合には、X軸用補正回路12A、Y軸用補正回路12B、及びZ軸用補正回路12Cの各々を「補正回路12」ともいう。
【0027】
(2.1.1)X軸用検出回路
X軸用検出回路11Aは、
図1に示すように、CV変換回路111と、X軸用第1検出部112Aと、X軸用第2検出部113Aと、を有している。言い換えると、X軸用検出回路11Aは、第1検出部112としてのX軸用第1検出部112Aと、第2検出部113としてのX軸用第2検出部113Aと、を有している。
【0028】
CV変換回路111は、X軸用検出素子2Aで生じた容量の変化を電圧に変換する。CV変換回路111は、増幅器114と、コンデンサ115と、スイッチ116と、を含む。増幅器114の反転入力端子は、X軸用検出素子2Aの一部を構成する2つのコンデンサC1,C2の接続点に電気的に接続されている。増幅器114の反転入力端子と出力端子との間には、コンデンサ115とスイッチ116とが並列に電気的に接続されている。また、増幅器114の非反転入力端子には、基準電圧が入力される。
【0029】
X軸用第1検出部112Aは、例えば、A/D変換器である。言い換えると、第1検出部112は、A/D変換器を含む。X軸用第1検出部112Aは、CV変換回路111を介して入力されるX軸用検出素子2Aのアナログの出力信号Sig1からデジタルの検出信号Sig2を生成する。X軸用第1検出部112Aの検出信号Sig2は、後述するX軸用補正回路12Aの減算器123に入力される。
【0030】
X軸用第2検出部113Aは、例えば、A/D変換器である。言い換えると、第2検出部113は、A/D変換器を含む。X軸用第2検出部113Aは、CV変換回路111を介して入力されるX軸用検出素子2Aのアナログの出力信号Sig1からデジタルの補正用信号Sig3を生成する。X軸用第2検出部113Aの補正用信号Sig3は、後述するY軸用補正回路12Bの第1乗算器121、及び後述するZ軸用補正回路12Cの第1乗算器121に入力される。
【0031】
(2.1.2)Y軸用検出回路
Y軸用検出回路11Bは、
図1に示すように、CV変換回路111と、Y軸用第1検出部112Bと、Y軸用第2検出部113Bと、を有している。言い換えると、Y軸用検出回路11Bは、第1検出部112としてのY軸用第1検出部112Bと、第2検出部113としてのY軸用第2検出部113Bと、を有している。なお、CV変換回路111については、X軸用検出回路11AのCV変換回路111と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0032】
Y軸用第1検出部112Bは、例えば、A/D変換器である。言い換えると、第1検出部112は、A/D変換器を含む。Y軸用第1検出部112Bは、CV変換回路111を介して入力されるY軸用検出素子2Bのアナログの出力信号Sig1からデジタルの検出信号Sig2を生成する。Y軸用第1検出部112Bの検出信号Sig2は、Y軸用補正回路12Bの減算器123に入力される。
【0033】
Y軸用第2検出部113Bは、例えば、A/D変換器である。言い換えると、第2検出部113は、A/D変換器を含む。Y軸用第2検出部113Bは、CV変換回路111を介して入力されるY軸用検出素子2Bのアナログの出力信号Sig1からデジタルの補正用信号Sig3を生成する。Y軸用第2検出部113Bの補正用信号Sig3は、Z軸用補正回路12Cの第2乗算器122、及びX軸用補正回路12Aの第1乗算器121に入力される。
【0034】
(2.1.3)Z軸用検出回路
Z軸用検出回路11Cは、
図1に示すように、CV変換回路111と、Z軸用第1検出部112Cと、Z軸用第2検出部113Cと、を有している。言い換えると、Z軸用検出回路11Cは、第1検出部112としてのZ軸用第1検出部112Cと、第2検出部113としてのZ軸用第2検出部113Cと、を有している。なお、CV変換回路111については、X軸用検出回路11AのCV変換回路111と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0035】
Z軸用第1検出部112Cは、例えば、A/D変換器である。言い換えると、第1検出部112は、A/D変換器を含む。Z軸用第1検出部112Cは、CV変換回路111を介して入力されるZ軸用検出素子2Cのアナログの出力信号Sig1からデジタルの検出信号Sig2を生成する。Z軸用第1検出部112Cの検出信号Sig2は、Z軸用補正回路12Cの減算器123に入力される。
【0036】
Z軸用第2検出部113Cは、例えば、A/D変換器である。言い換えると、第2検出部113は、A/D変換器を含む。Z軸用第2検出部113Cは、CV変換回路111を介して入力されるZ軸用検出素子2Cのアナログの出力信号Sig1からデジタルの補正用信号Sig3を生成する。Z軸用第2検出部113Cの補正用信号Sig3は、X軸用補正回路12Aの第2乗算器122、及びY軸用補正回路12Bの第2乗算器122に入力される。
【0037】
ここで、第1検出部112による加速度の検出範囲を±6Gとした場合、第2検出部113による加速度の検出範囲は、例えば、±30Gとすることが好ましい。これにより、広範囲に亘って他軸感度による誤差を補正することができる。
【0038】
(2.1.4)X軸用補正回路
X軸用補正回路12Aは、
図1に示すように、第1乗算器121と、第2乗算器122と、減算器123と、を有している。
【0039】
第1乗算器121は、Y軸用第2検出部113Bからの補正用信号Sig3に補正係数A1を乗算し、減算器123に出力する。第2乗算器122は、Z軸用第2検出部113Cからの補正用信号Sig3に補正係数B1を乗算し、減算器123に出力する。減算器123は、X軸用第1検出部112Aの検出信号Sig2から、乗算後の2つの補正用信号Sig3を減算する。これにより、Y軸方向の加速度によるX軸方向の他軸感度、及びZ軸方向の加速度によるX軸方向の他軸感度について補正することができる。
【0040】
(2.1.5)Y軸用補正回路
Y軸用補正回路12Bは、
図1に示すように、第1乗算器121と、第2乗算器122と、減算器123と、を有している。
【0041】
第1乗算器121は、X軸用第2検出部113Aからの補正用信号Sig3に補正係数A2を乗算し、減算器123に出力する。第2乗算器122は、Z軸用第2検出部113Cからの補正用信号Sig3に補正係数B2を乗算し、減算器123に出力する。減算器123は、Y軸用第1検出部112Bの検出信号Sig2から、乗算後の2つの補正用信号Sig3を減算する。これにより、Z軸方向の加速度によるY軸方向の他軸感度、及びX軸方向の加速度によるY軸方向の他軸感度について補正することができる。
【0042】
(2.1.6)Z軸用補正回路
Z軸用補正回路12Cは、
図1に示すように、第1乗算器121と、第2乗算器122と、減算器123と、を有している。
【0043】
第1乗算器121は、X軸用第2検出部113Aからの補正用信号Sig3に補正係数A3を乗算し、減算器123に出力する。第2乗算器122は、Y軸用第2検出部113Bからの補正用信号Sig3に補正係数B3を乗算し、減算器123に出力する。減算器123は、Z軸用第1検出部112Cの検出信号Sig2から、乗算後の2つの補正用信号Sig3を減算する。これにより、X軸方向の加速度によるZ軸方向の他軸感度、及びY軸方向の加速度によるZ軸方向の他軸感度について補正することができる。上述の補正係数A1~A3,B1~B3は、ASICのレジスタに記憶されている。
【0044】
(2.2)検出素子
複数の検出素子2の各々は、X軸用検出素子2Aと、Y軸用検出素子2Bと、Z軸用検出素子2Cと、のいずれかである。X軸用検出素子2Aは、X軸方向の慣性力(加速度)を検出する。Y軸用検出素子2Bは、Y軸方向の慣性力(加速度)を検出する。Z軸用検出素子2Cは、Z軸方向の慣性力(加速度)を検出する。
【0045】
本実施形態に係る慣性力センサ10は、
図3に示すように、筐体21と、上蓋22と、下蓋23と、を更に備えている。筐体21、上蓋22、及び下蓋23の各々は、Y軸方向に長い直方体状に形成されており、Z軸方向から見たときの外形寸法(X軸方向の寸法及びY軸方向の寸法)は略同じである。
【0046】
X軸用検出素子2Aは、錘24Aと、一対の固定電極25A,25Aと、一対の可動電極26A,26Aと、を有している。錘24Aは、Z軸方向から見たときの形状が矩形状に形成されている。錘24Aは、Y軸方向の両端部において一対の梁27A,27Aを介して筐体21に固定されている。錘24Aの上面(上蓋22との対向面)には、一対の可動電極26A,26AがX軸方向に並んだ状態で取り付けられている。一対の固定電極25A,25Aは、X軸方向に並んだ状態で上蓋22の下面(筐体21との対向面)に取り付けられている。一対の固定電極25A,25Aと一対の可動電極26A,26Aとは、筐体21と上蓋22とを重ねた状態において、所定の間隔を空けた状態で対向している。X軸用検出素子2Aは、X軸方向に加速度が加わると、一対の梁27A,27Aを支点として、ZX平面内で揺動するように構成されている。
【0047】
Y軸用検出素子2Bは、錘24Bと、一対の固定電極25B,25Bと、一対の可動電極26B,26Bと、を有している。錘24Bは、Z軸方向から見たときの形状が矩形状に形成されている。錘24Bは、X軸方向の両端部において一対の梁27B,27Bを介して筐体21に固定されている。錘24Bの上面(上蓋22との対向面)には、一対の可動電極26B,26BがY軸方向に並んだ状態で取り付けられている。一対の固定電極25B,25Bは、Y軸方向に並んだ状態で上蓋22の下面(筐体21との対向面)に取り付けられている。一対の固定電極25B,25Bと一対の可動電極26B,26Bとは、筐体21と上蓋22とを重ねた状態において、所定の間隔を空けた状態で対向している。Y軸用検出素子2Bは、Y軸方向に加速度が加わると、一対の梁27B,27Bを支点として、YZ平面内で揺動するように構成されている。
【0048】
Z軸用検出素子2Cは、錘24Cと、一対の固定電極25C,25Cと、一対の可動電極26C,26C(
図3では、上側の可動電極26Cのみ図示)と、を有している。錘24Cは、Z軸方向から見たときの形状が矩形状に形成されている。錘24Cは、L字状の4つの梁27Cを介して筐体21に固定されている。錘24CのZ軸方向における両面には、一対の可動電極26C,26Cがそれぞれ取り付けられている。一対の固定電極25Cのうち一方の固定電極25Cは、上蓋22の下面に取り付けられ、一対の固定電極25Cのうち他方の固定電極25Cは、下蓋23の上面に取り付けられている。筐体21と上蓋22と下蓋23とを重ねた状態では、一対の固定電極25Cのうち一方の固定電極25Cと、一対の可動電極26Cのうち一方の可動電極26Cとが、所定の間隔を空けた状態で対向している。また、筐体21と上蓋22と下蓋23とを重ねた状態では、一対の固定電極25Cのうち他方の固定電極25Cと、一対の可動電極26Cのうち他方の可動電極26Cとが、所定の間隔を空けた状態で対向している。Z軸用検出素子2Cは、Z軸方向に加速度が加わると、4つの梁27Cを支点として、Z軸方向に移動可能に構成されている。
【0049】
図4は、
図3のX1-X2断面図であり、X軸用検出素子2Aを示している。一対の固定電極25Aのうち一方(
図4の左側)の固定電極25Aと、一対の可動電極26Aのうち一方(
図4の左側)の可動電極26Aと、でコンデンサC1を構成している。また、一対の固定電極25Aのうち他方(
図4の右側)の固定電極25Aと、一対の可動電極26Aのうち他方(
図4の右側)の可動電極26Aと、でコンデンサC2を構成している。ここで、
図4におけるX3の向きに加速度が作用した場合を想定する。この場合、X軸用検出素子2Aの錘24Aは、上記加速度によって、一対の梁27A,27Aを支点としてZX平面内を揺動する。
図4に示す例では、X3の向きの加速度によって、一方の固定電極25Aと可動電極26Aとの間隔が広く、他方の固定電極25Aと可動電極26Aとの間隔が狭くなっている。これにより、X3の向きに加速度が作用していない場合に比べて、コンデンサC1の容量が小さくなり、かつコンデンサC2の容量が大きくなっている。そして、本実施形態に係る慣性力センサ10では、これら2つのコンデンサC1,C2の容量からX3の向きの加速度を検出することができる。
【0050】
(3)動作
次に、本実施形態に係る信号処理装置1の動作について、
図5に示すシーケンス図を参照して説明する。以下では、X軸方向及びY軸方向に加速度が作用し、Y軸方向の加速度によるX軸方向の他軸感度による誤差を補正する場合について説明する。なお、Y軸方向の他軸感度及びZ軸方向の他軸感度についても同様であるから、ここではX軸方向の他軸感度について説明し、Y軸方向の他軸感度及びZ軸方向の他軸感度については説明を省略する。
【0051】
X軸用検出素子2Aは、X軸方向の加速度を検出すると、信号処理装置1のX軸用検出回路11Aに対して出力信号Sig1を出力する(第1ステップS1)。また、Y軸用検出素子2Bは、Y軸方向の加速度を検出すると、Y軸用検出回路11Bに対して出力信号Sig1を出力する(第1ステップS1)。X軸用検出回路11Aに入力された出力信号Sig1は、CV変換回路111にてアナログの電圧信号に変換され、X軸用第1検出部112A及びX軸用第2検出部113Aにそれぞれ入力される。また、Y軸用検出回路11Bに入力された出力信号Sig1は、CV変換回路111にてアナログの電圧信号に変換され、Y軸用第1検出部112B及びY軸用第2検出部113Bにそれぞれ入力される。
【0052】
X軸用第1検出部112Aは、CV変換回路111の出力信号から検出信号Sig2を生成する(第2ステップS2)。また、Y軸用第2検出部113Bは、CV変換回路111の出力信号から補正用信号Sig3を生成する(第3ステップS3)。X軸用第1検出部112Aは、生成した検出信号Sig2をX軸用補正回路12Aに出力する(第4ステップS4)。また、Y軸用第2検出部113Bは、生成した補正用信号Sig3をX軸用補正回路12Aに出力する(第5ステップS5)。
【0053】
X軸用補正回路12Aは、X軸用第1検出部112Aの検出信号Sig2と、Y軸用第2検出部113Bの補正用信号Sig3とから、他軸感度による誤差を補正した検出信号Sig4を生成する(第6ステップS6)。具体的には、X軸用補正回路12Aは、補正係数A1を乗算した補正用信号Sig3を検出信号Sig2から減算する。これにより、Y軸方向の加速度によって生じるX軸方向の他軸感度による誤差を補正することができる。そして、X軸用補正回路12Aは、プリント基板100に実装されている制御回路に対して検出信号Sig4を出力する(第7ステップS7)。
【0054】
(4)効果
本実施形態に係る信号処理装置1では、補正用信号Sig3を生成する第2検出部113の検出範囲は、検出信号Sig2を生成する第1検出部112の検出範囲よりも広い。そのため、加速度については、第2検出部113よりも検出範囲の狭い(最小分解能の高い)第1検出部112により検出することで、最小分解能(信号精度)の低下を抑えることができる。また、他軸感度については、第1検出部112よりも検出範囲の広い第2検出部113により検出することで、他軸感度の原因となる加速度が大きい場合でも、他軸感度の影響を抑えることができる。つまり、本実施形態に係る信号処理装置1によれば、最小分解能(信号精度)の低下を抑えながら他軸感度の影響を抑えることができる。
【0055】
また、本実施形態に係る信号処理装置1では、第1検出部112及び第2検出部113の各々は、A/D変換器を含む。そのため、検出素子2から入力されるアナログの出力信号Sig1をデジタルの検出信号Sig2に変換することができる。
【0056】
また、本実施形態に係る信号処理装置1では、検出素子2は、X軸方向における慣性力を検出するX軸用検出素子2Aと、Y軸方向における慣性力を検出するY軸用検出素子2Bと、Z軸方向における慣性力を検出するZ軸用検出素子2Cと、を含む。そのため、X軸方向の慣性力、Y軸方向の慣性力、及びZ軸方向の慣性力をそれぞれ検出することができる。
【0057】
また、本実施形態に係る信号処理装置1では、X軸用検出回路11Aは、X軸用第1検出部112AとX軸用第2検出部113Aとを有し、Y軸用検出回路11Bは、Y軸用第1検出部112BとY軸用第2検出部113Bとを有し、Z軸用検出回路11Cは、Z軸用第1検出部112CとZ軸用第2検出部113Cとを有している。そのため、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向の各々について、最小分解能(信号精度)の低下を抑えながら他軸感度の影響を抑えることができる。
【0058】
(5)変形例
上述の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上述の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、上述の実施形態に係る信号処理装置1と同様の機能は、信号処理方法、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化されてもよい。
【0059】
一態様に係る信号処理方法は、互いに直交する3つの方向のうち少なくとも2つの方向における慣性力を検出する検出素子2の出力信号Sig1を処理する信号処理方法である。信号処理方法は、
図5に示すように、第1検出ステップ(第2ステップS2)と、第2検出ステップ(第3ステップS3)と、補正ステップ(第6ステップS6)と、を含む。第1検出ステップは、少なくとも2つの方向の各々における出力信号Sig1から検出信号Sig2を生成するステップである。第2検出ステップは、第1検出ステップよりも広い検出範囲で、少なくとも2つの方向の各々における出力信号Sig1から補正用信号Sig3を生成するステップである。補正ステップは、検出信号Sig2を補正するステップである。補正ステップでは、少なくとも2つの方向の各々における検出信号Sig2を、少なくとも2つの方向のうち補正対象である1つの方向を除く少なくとも1つの方向における補正用信号Sig3で補正する。
【0060】
一態様に係るプログラムは、1以上のプロセッサに上述の信号処理方法を実行させるためのプログラムである。
【0061】
以下、上述の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0062】
本開示における信号処理装置1は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における信号処理装置1としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。更に、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0063】
また、信号処理装置1における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは、信号処理装置1に必須の構成ではない。つまり、信号処理装置1の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、信号処理装置1の少なくとも一部の機能、例えば、補正回路12の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0064】
(5.1)変形例1
以下、本実施形態の変形例1に係る慣性力センサ10について、
図6を参照して説明する。
【0065】
変形例1に係る慣性力センサ10は、
図6に示すように、信号比較部13を備えている点で上述の実施形態に係る慣性力センサ10と異なっている。なお、変形例1に係る慣性力センサ10は、信号比較部13以外の構成については上述の実施形態に係る慣性力センサ10と同様であり、同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
図6では、複数の検出回路11のうち、X軸方向の加速度を検出するX軸用検出回路11Aを示している。
【0066】
変形例1に係る慣性力センサ10は、信号処理装置1と、複数の検出素子2と、を備えている。また、変形例1に係る慣性力センサ10は、信号比較部13を更に備えている。信号比較部13は、
図6に示すように、第1検出部112の検出信号Sig2と、第2検出部113の補正用信号Sig3と、が入力され、検出信号Sig2の値と補正用信号Sig3の値とを比較する。信号比較部13の比較結果は、プリント基板100上に実装されている制御回路に入力される。制御回路は、信号比較部13の比較結果から、検出信号Sig2の値と補正用信号Sig3の値とが一致していれば、第1検出部112と第2検出部113との両方が正常であると判断する。また、制御回路は、信号比較部13の比較結果から、検出信号Sig2の値と補正用信号Sig3の値とが一致していなければ、第1検出部112と第2検出部113との少なくとも一方が異常(故障)であると判断する。本開示でいう「一致する」とは、両者が完全に一致する場合だけでなく、両者の差分が所定範囲内に収まっている場合も含む。したがって、制御回路は、検出信号Sig2の値と補正用信号Sig3の値との差分が所定範囲内に収まっていれば、検出信号Sig2の値と補正用信号Sig3の値とが一致していると判断する。
【0067】
変形例1に係る慣性力センサ10によれば、信号比較部13を備えることにより、第1検出部112及び第2検出部113の異常の有無を検出することができる。
【0068】
ここで、
図6では、複数の検出回路11のうち、X軸方向の加速度を検出するX軸用検出回路11Aに信号比較部13が設けられている。これに対して、Y軸方向の加速度を検出するY軸用検出回路11Bに信号比較部が設けられていてもよいし、Z軸方向の加速度を検出するZ軸用検出回路11Cに信号比較部が設けられていてもよい。言い換えると、X軸用検出回路11A、Y軸用検出回路11B、及びZ軸用検出回路11Cの少なくとも1つに信号比較部が設けられていればよい。
【0069】
(5.2)その他の変形例
上述の実施形態では、慣性力センサ10が静電容量型のセンサであるが、慣性力センサ10は、例えば、ピエゾ抵抗型のセンサであってもよい。
【0070】
上述の実施形態では、慣性力センサ10が3軸加速度センサであるが、慣性力センサ10は、例えば、2軸加速度センサであってもよい。
【0071】
上述の実施形態では、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向の加速度をそれぞれ別々の検出回路11で検出しているが、例えば、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向の加速度を1つの検出回路で検出してもよい。この場合、例えば、マルチプレクサによって時分割で、X軸方向の加速度、Y軸方向の加速度、Z軸方向の加速度の順に順次検出すればよい。
【0072】
上述の実施形態では、慣性力センサ10が表面実装型であるが、例えば、スルーホール実装型であってもよい。
【0073】
上述の実施形態では、慣性力センサ10が加速度センサであるが、慣性力センサ10は加速度センサに限らず、例えば、角速度センサ(ジャイロセンサ)であってもよい。
【0074】
上述の実施形態では、信号処理装置1がASICであるが、信号処理装置1はASICに限らず、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)であってもよいし、1以上のプロセッサ及びメモリにて構成されていてもよい。
【0075】
上述の実施形態では、X軸方向の加速度、Y軸方向の加速度、及びZ軸方向の加速度をそれぞれ別々の検出素子2で検出しているが、X軸方向の加速度、Y軸方向の加速度、及びZ軸方向の加速度を1つの検出素子で検出してもよい。すなわち、検出素子は、X軸方向の加速度、Y軸方向の加速度、及びZ軸方向の加速度を検出する機能を1チップに集積させたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)で構成されていてもよい。
【0076】
上述の実施形態では、第1検出部112及び第2検出部113の各々がA/D変換器であるが、第1検出部112及び第2検出部113の各々は、例えば、オペアンプであってもよい。つまり、第1検出部112及び第2検出部113の各々はアナログ回路であってもよい。オペアンプの場合でも信号の検出範囲と感度とがトレードオフの関係にあるため、信号の検出範囲を大きくすると感度が低下するという問題がある。そのため、第2検出部113を構成するオペアンプの信号幅が、第1検出部112を構成するオペアンプの信号幅よりも大きくなるように、オペアンプを選択すればよい。この構成によれば、上述の実施形態に係る信号処理装置1と同様に、感度の低下を抑えながら他軸感度の影響を抑えることができる。
【0077】
(まとめ)
以上説明したように、第1の態様に係る信号処理装置(1)は、検出回路(11)と、補正回路(12)と、を備える。検出回路(11)は、互いに直交する3つの方向のうち少なくとも2つの方向における慣性力を検出する検出素子(2)の出力信号(Sig1)から検出信号(Sig2)を生成する。補正回路(12)は、検出信号(Sig2)を補正する。検出回路(11)は、第1検出部(112)と、第2検出部(113)と、を有する。第1検出部(112)は、少なくとも2つの方向の各々における出力信号(Sig1)から検出信号(Sig2)を生成する。第2検出部(113)は、第1検出部(112)よりも検出範囲が広く、少なくとも2つの方向の各々における出力信号(Sig1)から補正用信号(Sig3)を生成する。補正回路(12)は、少なくとも2つの方向の各々における検出信号(Sig2)を、少なくとも2つの方向のうち補正対象である1つの方向を除く少なくとも1つの方向における補正用信号(Sig3)で補正する。
【0078】
この態様によれば、第2検出部(113)の検出範囲が第1検出部(112)の検出範囲よりも広くなっており、そのため感度の低下を抑えながら他軸感度の影響を抑えることができる。
【0079】
第2の態様に係る信号処理装置(1)では、第1の態様において、第1検出部(112)及び第2検出部(113)の各々は、A/D変換器を含む。
【0080】
この態様によれば、検出素子(2)から入力されるアナログの出力信号(Sig1)をデジタルの検出信号(Sig2)に変換することができる。
【0081】
第3の態様に係る信号処理装置(1)では、第1又は2の態様において、少なくとも2つの方向は、互いに直交するX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向である。検出素子(2)は、X軸用検出素子(2A)と、Y軸用検出素子(2B)と、Z軸用検出素子(2C)と、を含む。X軸用検出素子(2A)は、X軸方向における慣性力を検出する。Y軸用検出素子(2B)は、Y軸方向における慣性力を検出する。Z軸用検出素子(2C)は、Z軸方向における慣性力を検出する。
【0082】
この態様によれば、X軸方向の慣性力、Y軸方向の慣性力、及びZ軸方向の慣性力をそれぞれ検出することができる。
【0083】
第4の態様に係る信号処理装置(1)では、第1~3のいずれかの態様において、少なくとも2つの方向は、互いに直交するX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向である。検出回路(11)は、X軸用検出回路(11A)と、Y軸用検出回路(11B)と、Z軸用検出回路(11C)と、を含む。X軸用検出回路(11A)は、X軸方向における慣性力を検出する検出素子(2)としてのX軸用検出素子(2A)の出力信号(Sig1)から検出信号(Sig2)を生成する。Y軸用検出回路(11B)は、Y軸方向における慣性力を検出する検出素子(2)としてのY軸用検出素子(2B)の出力信号(Sig1)から検出信号(Sig2)を生成する。Z軸用検出回路(11C)は、Z軸方向における慣性力を検出する検出素子(2)としてのZ軸用検出素子(2C)の出力信号(Sig1)から検出信号(Sig2)を生成する。X軸用検出回路(11A)は、第1検出部(112)としてのX軸用第1検出部(112A)と、第2検出部(113)としてのX軸用第2検出部(113A)と、を有する。Y軸用検出回路(11B)は、第1検出部(112)としてのY軸用第1検出部(112B)と、第2検出部(113)としてのY軸用第2検出部(113B)と、を有する。Z軸用検出回路(11C)は、第1検出部(112)としてのZ軸用第1検出部(112C)と、第2検出部(113)としてのZ軸用第2検出部(113C)と、を有する。
【0084】
この態様によれば、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向の各々について、感度の低下を抑えながら他軸感度の影響を抑えることができる。
【0085】
第5の態様に係る信号処理装置(1)では、第1~4のいずれかの態様において、第1検出部(112)の検出信号(Sig2)と第2検出部(113)の補正用信号(Sig3)とを比較する信号比較部(13)を更に備える。
【0086】
この態様によれば、信号比較部(13)の比較結果から、第1検出部(112)と第2検出部(113)との少なくとも一方の異常(故障)を検出することができる。
【0087】
第6の態様に係る慣性力センサ(10)は、第1~5のいずれかの態様に係る信号処理装置(1)と、検出素子(2)と、を備える。
【0088】
この態様によれば、第2検出部(113)の検出範囲が第1検出部(112)の検出範囲よりも広くなっており、そのため感度の低下を抑えながら他軸感度の影響を抑えることができる。
【0089】
第7の態様に係る信号処理方法は、互いに直交する3つの方向のうち少なくとも2つの方向における慣性力を検出する検出素子(2)の出力信号(Sig1)を処理する信号処理方法である。信号処理方法は、第1検出ステップ(S2)と、第2検出ステップ(S3)と、補正ステップ(S6)と、を含む。第1検出ステップ(S2)は、少なくとも2つの方向の各々における出力信号(Sig1)から検出信号(Sig2)を生成するステップである。第2検出ステップ(S3)は、第1検出ステップ(S2)よりも広い検出範囲で、少なくとも2つの方向の各々における出力信号(Sig1)から補正用信号(Sig3)を生成するステップである。補正ステップ(S6)は、検出信号(Sig2)を補正するステップである。補正ステップ(S6)では、少なくとも2つの方向の各々における検出信号(Sig2)を、少なくとも2つの方向のうち補正対象である1つの方向を除く少なくとも1つの方向における補正用信号(Sig3)で補正する。
【0090】
この態様によれば、第2検出部(113)の検出範囲が第1検出部(112)の検出範囲よりも広くなっており、そのため感度の低下を抑えながら他軸感度の影響を抑えることができる。
【0091】
第8の態様に係るプログラムは、第7の態様に係る信号処理方法を1以上のプロセッサに実行させるためのプログラムである。
【0092】
この態様によれば、第2検出部(113)の検出範囲が第1検出部(112)の検出範囲よりも広くなっており、そのため感度の低下を抑えながら他軸感度の影響を抑えることができる。
【0093】
第2~5の態様に係る構成については、信号処理装置(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 信号処理装置
11 検出回路
11A X軸用検出回路
11B Y軸用検出回路
11C Z軸用検出回路
110 A/D変換器
112 第1検出部
112A X軸用第1検出部
112B Y軸用第1検出部
112C Z軸用第1検出部
113 第2検出部
113A X軸用第2検出部
113B Y軸用第2検出部
113C Z軸用第2検出部
12 補正回路
13 信号比較部
2 検出素子
2A X軸用検出素子
2B Y軸用検出素子
2C Z軸用検出素子
10 慣性力センサ
Sig1 出力信号
Sig2 検出信号
Sig3 補正用信号
S2 第2ステップ(第1検出ステップ)
S3 第3ステップ(第2検出ステップ)
S6 第6ステップ(補正ステップ)