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特許7361345発光装置並びにそれを用いた医療システム、電子機器及び検査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】発光装置並びにそれを用いた医療システム、電子機器及び検査方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/0225 20210101AFI20231006BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20231006BHJP
   A61B 1/06 20060101ALI20231006BHJP
   A61B 1/07 20060101ALI20231006BHJP
   G02B 23/26 20060101ALI20231006BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20231006BHJP
   H01S 5/0239 20210101ALI20231006BHJP
【FI】
H01S5/0225
A61B1/00 511
A61B1/06 511
A61B1/07 736
G02B23/26 B
H01L33/50
H01S5/0239
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021515824
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2020006522
(87)【国際公開番号】W WO2020217669
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-10-15
(31)【優先権主張番号】P 2019082915
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(74)【代理人】
【識別番号】100141449
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 隆芳
(74)【代理人】
【識別番号】100142446
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 覚
(72)【発明者】
【氏名】阿部 岳志
(72)【発明者】
【氏名】大塩 祥三
(72)【発明者】
【氏名】新田 充
【審査官】大和田 有軌
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-518046(JP,A)
【文献】特開2009-226072(JP,A)
【文献】特許第6461411(JP,B1)
【文献】特開2006-114911(JP,A)
【文献】特開2012-104245(JP,A)
【文献】国際公開第2018/207703(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/163830(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/143198(WO,A1)
【文献】特表2018-515913(JP,A)
【文献】国際公開第2018/025457(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/008282(WO,A1)
【文献】特開2016-170968(JP,A)
【文献】国際公開第2016/039000(WO,A1)
【文献】特開2013-239551(JP,A)
【文献】特開2007-017986(JP,A)
【文献】特開平08-317907(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0287081(US,A1)
【文献】国際公開第2012/069542(WO,A1)
【文献】特許第7220363(JP,B2)
【文献】特許第6964270(JP,B2)
【文献】特開2021-027074(JP,A)
【文献】国際公開第2020/217671(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/217670(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
A61B 1/00 - 1/32
G02B 21/00 - 23/26
H01L 33/00 - 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次光を放つ光源と、
前記一次光を吸収して前記一次光よりも長波長の第一の波長変換光に変換し、前記第一の波長変換光を放つ第一の蛍光体を含む第一の波長変換体と、
前記一次光を吸収して前記一次光よりも長波長の第二の波長変換光に変換し、前記第二の波長変換光を放つ第二の蛍光体を含む第二の波長変換体と、
を備え、
前記第一の波長変換光は、700nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘って光成分を有し、700nm以上の波長領域に蛍光強度が最大値を示すピークを有する蛍光であり、
前記第二の波長変換光は、380nm以上700nm未満の波長範囲内に蛍光強度が最大値を示すピークを有する蛍光であり、
前記第一の波長変換光を含み、前記第二の波長変換光を含まない第一の出力光と前記第二の波長変換光を含み、前記第一の波長変換光を含まない第二の出力光とを時間的に交互に放ち、
前記第二の出力光の強度が前記第一の出力光に対して相対的に小さくなっている間に、前記第一の出力光による励起によって被照射物体から放射される前記第一の出力光よりも長波長の蛍光が、近赤外蛍光用イメージセンサに検知されるように前記第一の出力光と前記第二の出力光とを交互に放つ、発光装置。
【請求項2】
前記一次光はレーザー光である、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第一の蛍光体を励起する一次光と前記第二の蛍光体を励起する一次光は光軸が異なる、請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記第一の蛍光体を励起する一次光と前記第二の蛍光体を励起する一次光は同一の光源によって放たれる、請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項5】
前記第一の蛍光体を励起する一次光と前記第二の蛍光体を励起する一次光は光軸が同じである、請求項4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第一の波長変換体と前記第二の波長変換体とが前記光源に対して位置を変更することにより、前記第一の出力光と前記第二の出力光とを時間的に交互に放つ、請求項1~5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第一の蛍光体は遷移金属イオンによって賦活されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記第二の蛍光体はCe3+及びEu2+の少なくともいずれか一方で賦活されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記一次光と前記第二の波長変換光との混合光の相関色温度は2500K以上7000K未満である、請求項1~8のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記第一の波長変換光の蛍光スペクトルにおいて、蛍光強度最大値の80%の強度におけるスペクトル幅は、20nm以上80nm未満である、請求項1~9のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項11】
前記一次光は前記第一の波長変換体と前記第二の波長変換体とに時間的に交互に照射される、請求項1~10のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項12】
前記光源はレーザー素子及び発光ダイオードの少なくとも一方を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の発光装置と、
前記近赤外蛍光用イメージセンサと、
を備え、
前記発光装置は、前記第二の出力光の強度が前記第一の出力光に対して相対的に小さくなっている間に、前記第一の出力光による励起によって前記被照射物体から放射される前記第一の出力光よりも長波長の蛍光が、前記近赤外蛍光用イメージセンサに検知されるように前記第一の出力光と前記第二の出力光とを交互に放つ、
発光用システム。
【請求項14】
センシングシステム用光源又はセンシングシステム用照明システムである、請求項1~13のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項15】
蛍光イメージング法又は光線力学療法のいずれかに利用される、請求項1~14のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の発光装置を備える、医療システム。
【請求項17】
請求項1~14のいずれか一項に記載の発光装置を備える、電子機器。
【請求項18】
情報認識装置、分別装置、検知装置、又は検査装置のいずれかである、請求項17に記載の電子機器。
【請求項19】
前記検査装置は、医療用検査装置、農畜産業用検査装置、漁業用検査装置、又は工業用検査装置のいずれかである、請求項18に記載の電子機器。
【請求項20】
請求項1~14のいずれか一項に記載の発光装置を利用する、検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置並びに当該発光装置を用いた医療システム、電子機器及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療の分野で、蛍光イメージング法と呼ばれる、病巣の観察手法が注目されている。蛍光イメージング法は、腫瘍等の病巣と選択的に結合する蛍光薬剤を被検体に投与した後に、蛍光薬剤を特定の光によって励起し、蛍光薬剤から発せられた蛍光をイメージセンサで検出及び画像化することにより、病巣を観察する手法である。蛍光イメージング法によれば、目視では観察が困難な病巣を観察することができる。
【0003】
代表的な蛍光イメージング法としては、蛍光薬剤としてインドシアニングリーン(ICG)を利用する蛍光イメージング法(ICG蛍光法)が知られている。ICGは、生体を透過し易い近赤外光(例えば、蛍光ピーク波長が770nm)によって励起され、これよりも長波長の近赤外光(例えば、蛍光ピーク波長が810nm)を放射する。そのため、ICGから発せられた蛍光を検出することにより、生体内部の病巣の観察が可能となる。ICG蛍光法は、生体を傷つけることなく、生体内部の病巣を観察できる低侵襲な医療技術といえる。
【0004】
ICG蛍光法のような蛍光イメージング法を利用するためには、少なくとも近赤外光を放つ装置が必要となる。近赤外蛍光を放つオプトエレクトロニクス素子として、特許文献1には、一次ビームを放射する半導体チップと、Cr3+イオン及び/又はNi2+イオンを含む変換材料とを含むオプトエレクトロニクス素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2018-518046号公報
【発明の概要】
【0006】
上述のように、ICG蛍光法のような蛍光イメージング法を利用するためには、少なくとも近赤外光を放つ装置が必要となる。一方で、粘膜表層の状態を、可視光用のイメージセンサを介して映し出された映像又はレンズを通して目視で通常観察するためには、可視光も放たれることが好ましい。したがって、可視光と近赤外光を同時に放つ装置があれば、可視光を利用した通常観察と、近赤外光を利用した特殊観察との両立が可能になる。
【0007】
しかしながら、例えば可視光と近赤外光の混合光を放つ場合、可視光の内の近赤外領域に近い光成分は、近赤外光用イメージセンサに検知されやすい。したがって、例えば蛍光薬剤から発せられた近赤外蛍光以外の光成分も、近赤外光用イメージセンサに検知されてノイズが生じ、病巣を高いコントラストで観察することが困難であるという課題があった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、高コントラストな観察結果を取得可能なように近赤外光及び可視光を放つ発光装置、並びに当該発光装置を用いた医療システム、電子機器及び検査方法を提供することにある。
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第一の態様に係る発光装置は、一次光を放つ光源と、一次光を吸収して一次光よりも長波長の第一の波長変換光に変換する第一の蛍光体を含む第一の波長変換体と、一次光を吸収して一次光よりも長波長の第二の波長変換光に変換する第二の蛍光体を含む第二の波長変換体と、を備える。第一の波長変換光は、700nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘って光成分を有し、700nm以上の波長領域に蛍光強度が最大値を示すピークを有する蛍光である。第二の波長変換光は、380nm以上700nm未満の波長範囲内に蛍光強度が最大値を示すピークを有する蛍光である。発光装置は、第一の波長変換光を含む第一の出力光と第二の波長変換光を含む第二の出力光とを時間的に交互に放つ。
【0010】
本発明の第二の態様に係る医療システムは、第一の態様に係る発光装置を備える。
【0011】
本発明の第三の態様に係る電子機器は、第一の態様に係る発光装置を備える。
【0012】
本発明の第四の態様に係る検査方法は、第一の態様に係る発光装置を利用する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第一実施形態に係る発光装置の一例を概略的に示す断面図である。
図2図2は、第二実施形態に係る発光装置の例を概略的に示す断面図である。
図3図3は、チョッパーの一例を概略的に示す平面図である。
図4図4は、第三実施形態に係る発光装置の例を概略的に示す断面図である。
図5図5は、第四実施形態に係る発光装置の例を概略的に示す断面図である。
図6図6は、蛍光体ホイールの一例を概略的に示す平面図である。
図7図7は、第五実施形態に係る発光装置の例を概略的に示す断面図である。
図8図8は、第六実施形態に係る発光装置の例を概略的に示す断面図である。
図9図9は、第七実施形態に係る発光装置の例を概略的に示す断面図である。
図10図10は、本実施形態に係る内視鏡の構成を概略的に示す図である。
図11図11は、本実施形態に係る内視鏡システムの構成を概略的に示す図である。
図12図12は、実施例に係る第一の蛍光体が放つ蛍光の蛍光スペクトルである。
図13図13は、実施例に係る第二の蛍光体が放つ蛍光の蛍光スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本実施形態に係る発光装置、並びに当該発光装置を用いた医療システム、電子機器及び検査方法について説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0015】
[発光装置]
以下、図1図9を用いて、本実施形態に係る発光装置を説明する。
【0016】
[第一実施形態]
図1に示すように、本実施形態に係る発光装置1は、光源2と、第一の波長変換体4と、第二の波長変換体7と、を備えている。光源2は一次光3を放つ。第一の波長変換体4は第一の蛍光体5を含んでいる。第一の蛍光体5は一次光3を吸収して一次光3よりも長波長の第一の波長変換光10に変換する。第二の波長変換体7は第二の蛍光体8を含んでいる。第二の蛍光体8は一次光3を吸収して一次光3よりも長波長の第二の波長変換光11に変換する。
【0017】
第一の波長変換光10は、700nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘って光成分を有し、700nm以上の波長領域に蛍光強度が最大値を示すピークを有する蛍光である。第二の波長変換光11は、380nm以上700nm未満の波長範囲内に蛍光強度が最大値を示すピークを有する蛍光である。発光装置1は、第一の波長変換光10を含む第一の出力光12と第二の波長変換光11を含む第二の出力光13とを時間的に交互に放つ。
【0018】
つまり、光源2から放射された一次光3が第一の波長変換体4に入射すると、第一の波長変換体4が近赤外蛍光成分を主体としてなる第一の波長変換光10を放射する。一方、光源2から放射された一次光3が第二の波長変換体7に入射すると、第二の波長変換体7が、可視光成分を主体としてなる第二の波長変換光11を放射する。
【0019】
近赤外の蛍光成分は、生体透過性に優れ、蛍光スペクトル幅が広く、例えば、蛍光イメージング法に用いられる蛍光薬剤を励起し、蛍光薬剤は励起する近赤外よりも長波長の近赤外蛍光を放つ。蛍光薬剤によって放たれる近赤外蛍光は、近赤外光用イメージセンサで検出及び画像化されることにより、特殊観察が可能になる。一方、発光装置1が放つ可視の蛍光成分は、視認性に優れ、生体の患部を目視で通常観察するのに有用である。
【0020】
発光装置1は、第一の波長変換光10を含む第一の出力光12と第二の波長変換光11を含む第二の出力光13とを時間的に交互に放つものである。そのため、近赤外蛍光用イメージセンサは、ノイズ成分の強度が相対的に小さくなっている間に、相対的な強度比が高くなった近赤外の蛍光成分を検出することができる。したがって、本実施形態に係る発光装置1によれば、時間差を利用して、高コントラストな観察結果を取得可能なように近赤外光及び可視光を放つことができる。
【0021】
光源2は、一つの光源であってもよいが、図1に示すように少なくとも二つの光源を含んでいてもよい。少なくとも二つの光源2は、一次光3の色調や出力特性の面で同一のものとしてもよく、蛍光体の励起特性などに合わせて、異なるものとしてもよい。同様に、各光源2が放つ一次光3は、同じ光成分を有する光であってもよく、異なる光成分を有する光であってもよい。
【0022】
本実施形態では、図1に示すように、光源2が第一の光源2Aと第二の光源2Bとを含んでいる。第一の光源2Aは一次光3Aを放ち、第二の光源2Bは一次光3Bを放つ。一次光3Aの光軸の向きは第一の波長変換体4の正面4Aに対して垂直方向であり、一次光3Bの光軸の向きは第二の波長変換体7の正面7Aに対して垂直方向である。すなわち、本実施形態では、一次光3Aと一次光3Bの光軸の向きが同じである。一次光3Aは、第一の波長変換体4に放たれ、第一の波長変換体4に含まれる第一の蛍光体5を励起する。一次光3Bは、第二の波長変換体7に放たれ、第二の波長変換体7に含まれる第二の蛍光体8を励起する。
【0023】
図1に示すように、第一の蛍光体5を励起する一次光3Aと、第二の蛍光体8を励起する一次光3Bは、光軸が異なっていてもよい。このようにすると、第一の光源2Aと第二の光源2Bとによって、一次光3Aと一次光3Bとを別々に制御することが可能になることから、第一の波長変換光10と第二の波長変換光11のON-OFF制御が容易になる。
【0024】
本実施形態では、一次光3Aと一次光3Bは、時間的に交互に放たれる。すなわち、第一の光源2Aが点灯している間に第二の光源2Bが消灯し、第一の光源2Aが消灯している間に第二の光源2Bが点灯する。したがって、発光装置1は、第一の出力光12と第二の出力光13とを時間的に交互に放つことが可能である。
【0025】
一次光3は、レーザー光であることが好ましい。レーザー光は指向性が強い高出力の点光源であるので、光学系の小型化や導光部の細径化のみならず、光ファイバーへのレーザー光の結合効率なども向上する。したがって、高出力化が容易な発光装置1が得られる。レーザー光は、発光装置1の小型化の観点から、半導体発光素子によって放たれる事が好ましい。
【0026】
光源2から放たれる光のスペクトルは、400nm以上500nm未満に強度が最大値を示すピークを有することが好ましい。光源2から放たれる光のスペクトルは、420nm以上480nm未満の波長領域内に強度が最大値を示すピークを有し、光源2から放たれる光は青色光であることも好ましい。光源2から放たれる光のスペクトルは、より好ましくは430nm以上480nm未満、さらに好ましくは440nm以上470nm未満の波長領域内に強度が最大値を示すピークを有する。これにより、第一の蛍光体5及び第二の蛍光体8は高効率で励起されることから、発光装置1は高出力な近赤外光を放射することが可能となる。
【0027】
光源2は、赤色レーザー素子を備えていてもよく、青色レーザー素子を備えていてもよい。赤色レーザー素子は、第一の蛍光体5を励起する第一の光源2Aに含まれていることが好ましい。赤色レーザー素子は近赤外の光成分とのエネルギー差が小さく、波長変換に伴うエネルギーロスが小さいので、発光装置1の高効率化を図る上で好ましい。赤色レーザー素子は、600nm以上660nm未満、特に610nm以上660nm未満の波長範囲内に蛍光強度が最大値を示すピークを持つことが好ましい。一方、青色レーザー素子は高効率かつ高出力のレーザー素子の入手が容易であるので、発光装置1の高出力化を図る上で好ましい。なお、光源2は、励起源としての青色レーザー素子を備え、青色のレーザー光を放射することが好ましい。これにより、第一の蛍光体5及び第二の蛍光体8が高効率かつ高出力で励起されることから、発光装置1は高出力な近赤外光を放射することが可能となる。
【0028】
光源2は固体発光素子を含み、上記青色光は固体発光素子によって放たれることが好ましい。このようにすると、信頼性が高い小型の発光素子を上記青色光の発光源として利用することになるので、信頼性が高い小型の発光装置1が得られる。
【0029】
固体発光素子は、一次光3を放射する発光素子である。固体発光素子は、高いエネルギー密度を有する一次光3を放つことが可能ならば、あらゆる発光素子を用いることができる。なお、固体発光素子は、レーザー素子及び発光ダイオード(LED)の少なくとも一方であることが好ましく、レーザー素子であることがより好ましい。光源2は、例えば、面発光レーザーダイオード等であってもよい。
【0030】
固体発光素子の定格光出力は、1W以上であることが好ましく、3W以上であることがより好ましい。これによって、光源2は高出力の一次光3を放つことができるようになるので、高出力化が容易な発光装置1が得られる。
【0031】
定格光出力の上限は特に限定されるものではなく、光源2が複数の固体発光素子を有することにより、定格光出力を高くすることができる。ただし、実用可能性を考慮すると、定格光出力は、10kW未満であることが好ましく、3kW未満であることがより好ましい。
【0032】
一次光3の光密度は、0.5W/mm超であることが好ましく、3W/mm超であることがより好ましく、10W/mm超であることがさらに好ましい。光密度は、30W/mmを超えていてもよい。このようにすると、第一の蛍光体5及び第二の蛍光体8が高密度で光励起されるので、発光装置1は高出力の蛍光成分を放つことができる。
【0033】
一次光3と第二の波長変換光11との混合光の相関色温度は2500K以上7000K未満であることが好ましい。相関色温度は、2700K以上5500K未満であることがより好ましく、2800K以上3200K未満又は4500K以上5500K未満であることがさらに好ましい。相関色温度が上記範囲内にある出力光は、白色系の出力光であり、画像表示装置又は光学機器を通して視認できる患部が、自然光の下で観察する患部に近い見え方をする。したがって、医師が持つ医療経験を活かすことが容易な医療用として好ましい発光装置1が得られる。
【0034】
第二の波長変換光11は、500nm以上580nm未満の波長範囲全体に亘って光成分を有することが好ましい。第二の波長変換光11が、このような光成分を有することにより、目視に有利な蛍光成分を発光装置1が効果的に放つことができる。第二の波長変換光11は、500nm以上600nm未満の波長範囲全体に亘って光成分を有していてもよい。
【0035】
第一の波長変換光10は、700nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘って光成分を有する。第一の波長変換光10は、750nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘って光成分を有することがより好ましい。このようにすると、近赤外線の光吸収特性がばらつきやすい薬剤を利用しても、発光装置1は、薬剤を効率よく励起可能な近赤外の励起光を放つことができる。そのため、発光装置1は、蛍光薬剤から放射される近赤外光の光量、又は、光感受性薬剤から放たれる熱線、若しくは光感受性薬剤の励起に伴い発生する活性酸素を多くすることができる。
【0036】
第一の蛍光体5は遷移金属イオンによって賦活されていることが好ましく、Cr3+によって賦活されていることがより好ましい。これによって、第一の波長変換光10として、蛍光スペクトル幅が広く、700nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘って光成分を有する蛍光を得ることが容易になる。
【0037】
第一の波長変換光10は、700nm以上の波長領域に蛍光強度が最大値を示すピークを有する蛍光である。第一の波長変換光10は、710nm以上の波長領域に蛍光強度が最大値を示すピークを有することが好ましい。このようにすると、発光装置1は、生体透過性の高い近赤外光成分を多く含む蛍光を放つことができる。
【0038】
第一の波長変換光10は、Cr3+の電子エネルギー遷移に基づく蛍光を含むことが好ましい。そして、第一の波長変換光10の蛍光スペクトルは、波長720nmを超える波長領域に蛍光強度が最大値を示すピークを持つことが好ましい。このようにすると、第一の蛍光体5は、長残光性の線状スペクトル成分よりも、短残光性のブロードなスペクトル成分の方が優勢な蛍光を放つことができる。その結果、発光装置1は、近赤外成分を多く含む光を放出することができる。なお、線状スペクトル成分は、Cr3+の、E→(t )の電子エネルギー遷移(スピン禁制遷移)に基づく蛍光成分であり、680nm~720nmの波長領域内に蛍光強度が最大値を示すピークを持っている。ブロードなスペクトル成分は、Cr3+の、(t e)→(t )の電子エネルギー遷移(スピン許容遷移)に基づく蛍光成分であり、720nmを超える波長領域に蛍光強度が最大値を示すピークを持っている。
【0039】
第一の波長変換光10の蛍光スペクトルは、720nm超900nm以下の波長領域に蛍光強度が最大値を示すピークを有していてもよい。第一の波長変換光10の蛍光スペクトルは、730nmを超える波長領域に蛍光強度が最大値を示すピークを有することがより好ましく、750nmを超える波長領域に蛍光強度が最大値を示すピークを有することがさらに好ましい。
【0040】
第一の波長変換光10の1/10残光時間は、1ms未満であることが好ましく、300μs未満であることがより好ましく、100μs未満の短残光性であることがさらに好ましい。これにより、第一の蛍光体5を励起する励起光の光密度が高い場合であっても、第一の波長変換光10の出力が飽和し難くなる。そのため、高出力の近赤外光を放つことが可能な発光装置1を得ることができる。なお、1/10残光時間とは、最大発光強度を示した時間から、最大発光強度の1/10の強度になるまでに要した時間τ1/10を意味する。
【0041】
第一の波長変換光10の1/10残光時間は、第二の波長変換光11の1/10残光時間よりも長いことが好ましい。具体的には、第一の波長変換光10の1/10残光時間は、10μs以上であることが好ましい。なお、Cr3+で賦活された第一の波長変換光10の1/10残光時間は、Ce3+やEu2+等のパリティー許容遷移に基づく短残光性(10μs未満)の蛍光の1/10残光時間より長くなる。これは、第一の波長変換光10の残光時間が比較的長いCr3+のスピン許容型の電子エネルギー遷移に基づく蛍光であるためである。
【0042】
第一の波長変換光10の蛍光スペクトルにおいて、蛍光強度最大値の80%の強度におけるスペクトル幅は、20nm以上80nm未満であることが好ましい。このようにすると、第一の波長変換光10の主成分がブロードなスペクトル成分となる。そのため、蛍光イメージング法又は光線力学療法(PDT法)を利用する医療現場において、蛍光薬剤又は光感受性薬剤の感度の波長依存性にばらつきがあったとしても、これらの薬剤が十分機能可能な高出力の近赤外光を発光装置1が放つことができる。
【0043】
第一の波長変換光10の蛍光スペクトルにおいて、蛍光強度最大値に対する波長780nmの蛍光強度の比率は、30%を超えることが好ましい。蛍光強度最大値に対する波長780nmの蛍光強度の比率は、60%を超えることがより好ましく、80%を超えることがさらに好ましい。このようにすると、第一の蛍光体5が、「生体の窓」と呼ばれる、光が生体を透過しやすい近赤外の波長域(650~1000nm)の蛍光成分を多く含む蛍光を放つことができる。したがって、このような発光装置1によれば、生体を透過する近赤外の光強度を大きくすることができる。
【0044】
第一の波長変換光10の蛍光スペクトルは、Cr3+の電子エネルギー遷移に由来する線状スペクトル成分の証跡を残していないことが好ましい。すなわち、第一の波長変換光10は、720nmを超える波長領域に蛍光強度が最大値を示すピークを持つブロードなスペクトル成分(短残光性)のみを有していることが好ましい。このようにすると、第一の蛍光体5は、Cr3+のスピン禁制遷移による長残光性の蛍光成分を含まず、スピン許容遷移による短残光性の蛍光成分だけを含む。これにより、第一の蛍光体5を励起する励起光の光密度が高い場合であっても、第一の波長変換光10の出力が飽和し難くなる。そのため、より高出力の近赤外光を放つことが可能な点光源の発光装置1を得ることもできる。
【0045】
第一の蛍光体5は、Cr3+以外の賦活剤を含まないことが好ましい。このようにすると、第一の蛍光体5に吸収された光が、Cr3+の電子エネルギー遷移に基づく蛍光だけに変換されるので、近赤外の蛍光成分の出力割合を最大限にまで高める出力光の設計が容易な発光装置1を得ることができる。
【0046】
第一の蛍光体5は、二種類以上のCr3+賦活蛍光体を含むことも好ましい。これによって、少なくとも近赤外の波長領域の出力光成分を制御できるので、近赤外の蛍光成分を利用する用途に応じた分光分布の調整が容易な発光装置1が得られる。
【0047】
第一の蛍光体5は、酸化物系の蛍光体であることが好ましく、酸化物蛍光体であることがより好ましい。なお、酸化物系の蛍光体とは、酸素を含むが窒素や硫黄は含まない蛍光体をいう。酸化物系の蛍光体は、酸化物、複合酸化物、並びに酸素及びハロゲンを陰イオンとして含む化合物からなる群より選択される少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0048】
酸化物は大気中で安定な物質であるため、レーザー光による高密度の光励起によって酸化物蛍光体が発熱した場合であっても、窒化物蛍光体で生じるような、大気で酸化されることによる蛍光体結晶の変質が生じ難い。このため、第一の波長変換体4に含まれる全ての蛍光体が酸化物蛍光体である場合には、信頼性の高い発光装置1を得ることができる。
【0049】
第一の蛍光体5は、ガーネットの結晶構造を有することが好ましい。第一の蛍光体5は、ガーネットの結晶構造を有する酸化物蛍光体であることも好ましい。ガーネット蛍光体は、組成変形が容易で数多くの蛍光体化合物を提供できるので、Cr3+の周囲の結晶場の調整が容易であり、Cr3+の電子エネルギー遷移に基づく蛍光の色調制御が容易である。
【0050】
なお、ガーネット構造を有する蛍光体、特に酸化物は、球に近い多面体の粒子形状を持ち、蛍光体粒子群の分散性に優れる。このため、第一の波長変換体4に含まれる蛍光体がガーネット構造を有する場合には、光透過性に優れる第一の波長変換体4を比較的容易に製造できるようになり、発光装置1の高出力化が可能となる。また、ガーネットの結晶構造を有する蛍光体はLED用蛍光体として実用実績があることから、第一の蛍光体5がガーネットの結晶構造を有することにより、信頼性の高い発光装置1を得ることができる。
【0051】
第一の蛍光体5は、例えば、LuCaMg(SiO:Cr3+、YGa(AlO:Cr3+、YGa(GaO:Cr3+、GdGa(AlO:Cr3+、GdGa(GaO:Cr3+、(Y,La)Ga(GaO:Cr3+、(Gd,La)Ga(GaO:Cr3+、CaLuZr(AlO:Cr3+、CaGdZr(AlO:Cr3+、LuSc(GaO:Cr3+、YSc(AlO:Cr3+、YSc(GaO:Cr3+、GdSc(GaO:Cr3+、LaSc(GaO:Cr3+、CaSc(SiO:Cr3+、CaSc(GeO:Cr3+、BeAl:Cr3+、LiAl:Cr3+、LiGa:Cr3+、MgSiO:Cr3+,Li、LaGaGeO14:Cr3+、及びLaGa5.5Nb0.514:Cr3+等からなる群より選択される少なくとも1つの蛍光体を含んでいてもよい。
【0052】
上述のように、第一の波長変換光10は、近赤外の蛍光成分を持つものである。これにより、発光装置1によれば、例えばICGなどの蛍光薬剤や例えばフタロシアニンなどの光感受性薬剤(蛍光薬剤でもある)を効率的に励起することができる。
【0053】
第二の蛍光体8は、Ce3+及びEu2+の少なくともいずれか一方で賦活されていることが好ましい。これによって、380nm以上700nm未満の波長範囲内に蛍光強度が最大値を示すピークを有する第二の波長変換光11を得ることが容易になる。なお、第二の蛍光体8は、Ce3+で賦活された蛍光体であることが好ましい。
【0054】
第二の蛍光体8は、例えば、酸化物及びハロゲン酸化物などの酸化物系の蛍光体、並びに、窒化物及び酸窒化物などの窒化物系の蛍光体の少なくともいずれか一方であってもよい。
【0055】
第二の蛍光体8は、ガーネット型、カルシウムフェライト型、及びランタンシリコンナイトライド(LaSi11)型の結晶構造からなる化合物群より選ばれる少なくとも一つを主成分とする化合物を母体としてなるCe3+賦活蛍光体であることが好ましい。または、第二の蛍光体8は、ガーネット型、カルシウムフェライト型、及びランタンシリコンナイトライド(LaSi11)型の結晶構造からなる化合物群より選ばれる少なくとも一つの化合物を母体としてなるCe3+賦活蛍光体であることが好ましい。このような第二の蛍光体8を用いることで、緑色系から黄色系の光成分を多く持つ出力光を得ることができるようになる。
【0056】
具体的には、第二の蛍光体8は、MRE(SiO、REAl(AlO、MRE、及びRESi11からなる群より選ばれる少なくとも一つを主成分とする化合物を母体としてなるCe3+賦活蛍光体であることが好ましい。若しくは、第二の蛍光体8は、MRE(SiO、REAl(AlO、MRE、及びRESi11からなる群より選ばれる少なくとも一つを母体としてなるCe3+賦活蛍光体であることが好ましい。または、第二の蛍光体8は、当該化合物を端成分とする固溶体を母体としてなるCe3+賦活蛍光体であることが好ましい。なお、Mはアルカリ土類金属であり、REは希土類元素である。
【0057】
このような第二の蛍光体8は430nm以上480nm以下の波長範囲内の光をよく吸収し、540nm以上590nm未満の波長範囲内に蛍光強度が最大値を示すピークを有する緑色~黄色系の光に高効率に変換する。そのため、430nm以上480nm以下の波長範囲内の寒色光を一次光3として放つ光源2とした上で、このような蛍光体を第二の蛍光体8として用いることにより、可視光成分を容易に得ることが可能となる。
【0058】
少なくとも第二の波長変換体7は、一次光3を吸収して第三の波長変換光を放つ第三の蛍光体をさらに含んでいてもよい。第三の波長変換光は、第二の出力光13に含まれ、第二の出力光13は白色の出力光であることが好ましい。このような白色光は、例えば、一次光3が青色光である場合に、この青色光と加法混色により、発光装置1から放出される。
【0059】
第一の波長変換体4は無機材料からなることが好ましい。ここで無機材料とは、有機材料以外の材料を意味し、セラミックスや金属を含む概念である。第一の波長変換体4が無機材料からなることにより、封止樹脂等の有機材料を含む波長変換体と比較して熱伝導性が高くなるため、放熱設計が容易となる。このため、光源2から放射された一次光3により蛍光体が高密度で光励起された場合でも、第一の波長変換体4の温度上昇を効果的に抑制することができる。この結果、第一の波長変換体4中の蛍光体の温度消光が抑制され、発光の高出力化が可能になる。これにより、第一の蛍光体5の放熱性が高まるため、温度消光による蛍光体の出力低下が抑制され、高出力の近赤外光を放つことが可能となる。なお、第一の波長変換体4と同様の理由で、第二の波長変換体7も無機材料からなることが好ましい。
【0060】
第一の波長変換体4及び第二の波長変換体7の少なくともいずれか一方の全てが無機材料からなることが好ましい。これにより、第一の蛍光体5及び/又は第二の蛍光体8の放熱性が高まるため、温度消光による蛍光体の出力低下が抑制され、高出力の近赤外蛍光及び/又は可視光を放つ発光装置1を得ることが可能となる。なお、第一の波長変換体4及び第二の波長変換体7の両方の全てが無機材料からなることが好ましい。
【0061】
第一の蛍光体5及び第二の蛍光体8の少なくとも一方は、セラミックスであってもよい。これにより、第一の波長変換体4及び第二の波長変換体7の少なくともいずれか一方の熱伝導性が高くなるため、発熱が少ない高出力の発光装置1を提供できる。なお、ここでは、セラミックスとは、粒子同士が接合した状態の焼結体のことをいう。
【0062】
第一の波長変換体4は、図1に示すように、第一の蛍光体5に加え、第一の蛍光体5を分散させる第一の封止材6をさらに有することが好ましい。そして、第一の波長変換体4において、第一の蛍光体5は第一の封止材6中に分散されていることが好ましい。第一の蛍光体5が第一の封止材6中に分散されることにより、第一の波長変換体4に放たれる光を効率的に吸収し、近赤外光に波長変換することが可能となる。また、第一の波長変換体4をシート状やフィルム状に成形しやすくすることができる。なお、第一の波長変換体4と同様の理由で、第二の蛍光体8に加え、第二の蛍光体8を分散させる第二の封止材9をさらに有することが好ましい。
【0063】
第一の封止材6は、有機材料及び無機材料の少なくとも一方、特に、透明(透光性)有機材料及び透明(透光性)無機材料の少なくとも一方であることが好ましい。有機材料の封止材としては、例えば、シリコーン樹脂などの透明有機材料が挙げられる。無機材料の封止材としては、例えば、低融点ガラスなどの透明無機材料が挙げられる。なお、第二の封止材9も第一の封止材6と同様であることが好ましい。
【0064】
上述のように、第一の波長変換体4は無機材料からなることが好ましいことから、第一の封止材6は無機材料からなることが好ましい。また、無機材料としては、酸化亜鉛(ZnO)を用いることが好ましい。これにより、蛍光体の放熱性がさらに高まるため、温度消光による蛍光体の出力低下が抑制され、高出力の近赤外光を放つ発光装置1を得ることが可能となる。なお、第二の封止材9も第一の封止材6と同様であることが好ましい。
【0065】
第一の波長変換体4は第一の封止材6を使用しなくてもよく、第二の波長変換体7は第二の封止材9を使用しなくてもよい。この場合、有機又は無機の結着剤を利用して、蛍光体同士を固着すればよい。また、蛍光体の加熱反応を利用して、蛍光体同士を固着することもできる。結着剤としては、一般的に利用される樹脂系の接着剤、又はセラミックス微粒子や低融点ガラスなどを使用することができる。第一の封止材6を利用しない第一の波長変換体4又は第二の封止材9を利用しない第二の波長変換体7は厚みを薄くすることができるため、発光装置1に好適に用いることができる。
【0066】
次に、本実施形態に係る発光装置1の作用について説明する。図1に示すように、本実施形態に係る発光装置1では、はじめに、第一の光源2Aから放射された一次光3Aと、第二の光源2Bから放射された一次光3Bとが時間的に交互に第一の波長変換体4と第二の波長変換体7とにそれぞれ照射される。一次光3Aは第一の波長変換体4の正面4Aに照射され、照射された一次光3Aは第一の波長変換体4を透過する。一次光3Bは第二の波長変換体7の正面7Aに照射され、照射された一次光3Bは第二の波長変換体7を透過する。そして、一次光3Aが第一の波長変換体4を透過する際に、第一の波長変換体4に含まれる第一の蛍光体5が一次光3Aの一部を吸収して第一の波長変換光10を放射する。同様に、一次光3Bが第二の波長変換体7を透過する際に、第二の波長変換体7に含まれる第二の蛍光体8が一次光3Bの一部を吸収して第二の波長変換光11を放射する。このようにして、第一の波長変換体4の背面4Bから一次光3Aと第一の波長変換光10とを含む第一の出力光12が放射される。同様に、第二の波長変換体7の背面7Bから一次光3Bと第二の波長変換光11とを含む第二の出力光13が放射される。
【0067】
このようにして、第一の光源2Aと第二の光源2Bとが時間的に互い違いに点灯と消灯を繰り返すため、発光装置1は第一の出力光12と第二の出力光13とを時間的に交互に放射することができる。
【0068】
[第二実施形態]
次に、図2を用いて、第二実施形態に係る発光装置1を説明する。なお、上述した実施形態と同一の構成には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0069】
図2に示すように、本実施形態は、光源2の点滅ではなく、チョッパー14によって、第一の出力光12と第二の出力光13とを時間的に交互に放射している点において第一実施形態と相違している。
【0070】
本実施形態では、第一の実施形態と同様に、光源2が第一の光源2Aと第二の光源2Bとを含んでいる。第一の光源2Aは一次光3Aを放ち、第二の光源2Bは一次光3Bを放つ。そして、第一の蛍光体5を励起する一次光3Aと、第二の蛍光体8を励起する一次光3Bとは、光軸が異なっている。本実施形態では、一次光3Aと一次光3Bは、それぞれ連続して継続的に放たれる。すなわち、一次光3Aと一次光3Bは、同時に放たれ、第一の光源2Aが点灯している間に第二の光源2Bも点灯している。
【0071】
本実施形態に係る発光装置1は、チョッパー14を備えている。チョッパー14は、第一の波長変換体4の背面4B側かつ第二の波長変換体7の背面7B側に配置されている。すなわち、第一の波長変換体4はチョッパー14と第一の光源2Aとの間に配置されており、第二の波長変換体7はチョッパー14と第二の光源2Bとの間に配置されている。チョッパー14は、図3に示すように、中心点を有する円板であり、中心点を通る回転軸C1を中心として回転するように設けられている。
【0072】
チョッパー14は、円板の中心に設けられた中心部14Aと、円板の外周に設けられた外枠部14Bと、中心部14Aと外枠部14Bとの間に設けられた遮蔽部14C及び非遮蔽部14Dと、を備えている。第一の波長変換体4及び第二の波長変換体7は、円周方向に交互に配置されている。チョッパー14は、回転軸C1が通る断面において、回転軸C1に対して一方側に遮蔽部14Cが設けられ、その反対側に非遮蔽部14Dが設けられている。遮蔽部14Cは、板状部材で形成されており、第一の出力光12及び第二の出力光13を遮蔽するように形成されている。非遮蔽部14Dは、中心部14Aと外枠部14Bと遮蔽部14Cとで囲われた空間であり、第一の出力光12及び第二の出力光13が通過可能なように形成されている。チョッパー14は、回転軸C1を中心として回転することによって、第一の出力光12及び第二の出力光13を、遮蔽部14Cによって遮蔽したり非遮蔽部14Dにおいて通過させたりする。チョッパー14は、第一の出力光12が遮蔽部14Cによって遮蔽されている間には第二の出力光13が非遮蔽部14Dを通過し、第二の出力光13が遮蔽部14Cによって遮蔽されている間には第一の出力光12が非遮蔽部14Dを通過するように形成されている。なお、中心部14A、外枠部14B及び遮蔽部14Cは、同一の材料によって一体的に形成されていてもよい。
【0073】
次に、本実施形態に係る発光装置1の作用について説明する。図2に示すように、本実施形態に係る発光装置1では、はじめに、第一の光源2Aから放射された一次光3Aと、第二の光源2Bから放射された一次光3Bとが同時に第一の波長変換体4と第二の波長変換体7とにそれぞれ照射される。一次光3Aは第一の波長変換体4の正面4Aに照射され、照射された一次光3Aは第一の波長変換体4を透過する。一次光3Bは第二の波長変換体7の正面7Aに照射され、照射された一次光3Bは第二の波長変換体7を透過する。そして、一次光3Aが第一の波長変換体4を透過する際に、第一の波長変換体4に含まれる第一の蛍光体5が一次光3Aの一部を吸収して第一の波長変換光10を放射する。同様に、一次光3Bが第二の波長変換体7を透過する際に、第二の波長変換体7に含まれる第二の蛍光体8が一次光3Bの一部を吸収して第二の波長変換光11を放射する。このようにして、第一の波長変換体4の背面4Bから、一次光3Aと第一の波長変換光10とを含む第一の出力光12が放射される。同様に、第二の波長変換体7の背面7Bから、一次光3Bと第二の波長変換光11とを含む第二の出力光13が放射される。
【0074】
そして、チョッパー14が回転することによって、第一の波長変換体4から放射される第一の出力光12は、遮蔽部14Cによる遮蔽と、非遮蔽部14Dにおける通過を時間的に交互に繰り返す。同様に、第二の波長変換体7から放射される第二の出力光13は、遮蔽部14Cによる遮蔽と、非遮蔽部14Dにおける通過を時間的に交互に繰り返す。第一の出力光12が遮蔽部14Cによって遮蔽されている間には第二の出力光13が非遮蔽部14Dを通過し、第二の出力光13が遮蔽部14Cによって遮蔽されている間には第一の出力光12が非遮蔽部14Dを通過する。このようにして、第一の出力光12と第二の出力光13は、チョッパー14によって、時間的に交互に出力されるため、発光装置1は第一の出力光12と第二の出力光13とを時間的に交互に放射することができる。
【0075】
[第三実施形態]
次に、図4を用いて、第三実施形態に係る発光装置1を説明する。なお、上述した実施形態と同一の構成には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0076】
図4に示すように、本実施形態は、一次光3Aと一次光3Bの光軸の向きが互いに異なる点において第一実施形態と相違している。
【0077】
第一の光源2Aは、第一の波長変換体4の断面視中央よりも第二の波長変換体7に近い位置に配置されている。第二の光源2Bは、第二の波長変換体7の断面視中央よりも第一の波長変換体4に近い位置に配置されている。すなわち、第一の光源2Aと第二の光源2Bとの相対的な位置は、第一の波長変換体4の断面中心部と第二の波長変換体7の断面中心部との相対的な位置よりも近くなるように配置されている。したがって、本実施形態に係る発光装置1では、第一の光源2Aと第二の光源2Bとの相対的な位置が近くなるため、光源のサイズを小さくすることが可能である。
【0078】
したがって、本実施形態に係る発光装置1は、第一実施形態と同様に、第一の出力光12と第二の出力光13とを時間的に交互に放射することができる。
【0079】
[第四実施形態]
次に、図5を用いて、第四実施形態に係る発光装置1を説明する。なお、上述した実施形態と同一の構成には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0080】
図5に示すように、本実施形態は、第一の波長変換体4と第二の波長変換体7とが光源2に対して位置を変更することにより、第一の出力光12と第二の出力光13とを時間的に交互に放つ点において、第一実施形態と異なっている。
【0081】
本実施形態のように、第一の蛍光体5を励起する一次光3と第二の蛍光体8を励起する一次光3は同一の光源2によって放たれてもよい。すなわち、本実施形態に係る発光装置1は、単一の光源2を備えている。このため、光源2の数を必要最小限にすることができるので、発光装置1の小型化及び低価格化の面で有利になる。
【0082】
本実施形態のように、第一の蛍光体5を励起する一次光3と第二の蛍光体8を励起する一次光3は、光軸が同じであってもよい。このため、光学部品の種類や数を必要最小限にすることができるので、発光装置1の小型化や低価格化の面で有利になる。
【0083】
本実施形態のように、第一の波長変換体4と第二の波長変換体7とが光源2に対して位置を変更することにより、第一の出力光12と第二の出力光13とを時間的に交互に放ってもよい。このことにより、第一の蛍光体5を励起する一次光3と第二の蛍光体8を励起する一次光3は、光軸を同じにすることができる。ただし、後述するように、光軸が異なる場合であっても、第一の波長変換体4と第二の波長変換体7とが光源2に対して位置を変更することにより、第一の出力光12と第二の出力光13とを時間的に交互に放ってもよい。
【0084】
本実施形態では、発光装置1は第一の波長変換体4と第二の波長変換体7とが設けられた蛍光体ホイール15を備えている。蛍光体ホイール15は、中心点を有する円板であり、中心点を通る回転軸C2を中心として回転するように設けられている。蛍光体ホイール15は、図6に示すように、円板の中心に設けられた中心部15Aと円板の外周に設けられた外枠部15Bとを備えている。中心部15Aと外枠部15Bとの間には、第一の波長変換体4と第二の波長変換体7とが円周方向に交互に配置されている。蛍光体ホイール15は、回転軸C2が通る断面において、回転軸C2に対して一方側に第一の波長変換体4が設けられ、その反対側に第二の波長変換体7が設けられている。
【0085】
光源2は、回転軸C2よりも径方向外側に配置されており、第一の波長変換体4又は第二の波長変換体7のいずれか一方を照射するように設けられている。一次光3の光軸の向きは第一の波長変換体4の正面4A又は第二の波長変換体7の正面7Aに対して垂直方向である。蛍光体ホイール15は、回転軸C2を中心として回転することによって、一次光3が第一の波長変換体4と第二の波長変換体7に時間的に交互に照射されるように設けられている。すなわち、蛍光体ホイール15は、一次光3が第一の波長変換体4に照射されている間には第二の波長変換体7が一次光3に照射されず、一次光3が第二の波長変換体7に照射されている間には第一の波長変換体4が一次光3照射されないように形成されている。なお、蛍光体ホイール15の光源2側には、一次光3を透過する放熱基板が設けられていてもよい。これによって、ストークスロスの大きい第一の蛍光体5の発熱に起因する蛍光体ホイール15の温度上昇を抑制できるようになるので、蛍光体の温度消光による発光効率低下を抑制できるようになり、高出力の光を出射する発光装置1が得られる。放熱基板を形成する材料としては、例えば、サファイアなどが挙げられる。
【0086】
次に、本実施形態に係る発光装置1の作用について説明する。図5に示すように、本実施形態に係る発光装置1では、はじめに、光源2から放射された一次光3が第一の波長変換体4の正面4Aに照射される。正面4Aに照射された一次光3は第一の波長変換体4を透過する。そして、一次光3が第一の波長変換体4を透過する際に、第一の波長変換体4に含まれる第一の蛍光体5が一次光3の一部を吸収して第一の波長変換光10を放射する。
【0087】
第一の波長変換体4と第二の波長変換体7とは、蛍光体ホイール15が回転軸C2を中心として回転することによって、光源2に対して位置を変更する。そのため、第一の波長変換体4が一次光3に照射された後、一次光3は第二の波長変換体7の正面7Aに照射され、照射された一次光3は第二の波長変換体7を透過する。そして、一次光3が第二の波長変換体7を透過する際に、第二の波長変換体7に含まれる第二の蛍光体8が一次光3の一部を吸収して第二の波長変換光11を放射する。このようにして、第一の波長変換体4の背面4Bから一次光3と第一の波長変換光10とを含む第一の出力光12が放射される。その後、第二の波長変換体7の背面7Bから一次光3と第二の波長変換光11とを含む第二の出力光13が放射される。蛍光体ホイール15が回転することによって第一の波長変換体4と第二の波長変換体7とが時間的に交互に一次光3に照射されるため、発光装置1は第一の出力光12と第二の出力光13とを時間的に交互に放射することができる。
【0088】
[第五実施形態]
次に、図7を用いて、第五実施形態に係る発光装置1を説明する。なお、上述した実施形態と同一の構成には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0089】
図7に示すように、本実施形態に係る発光装置1では、一次光3Aは第一の波長変換体4の正面4Aに照射され、第一の波長変換光10は第一の波長変換体4の正面4Aから放射される。一次光3Bは第二の波長変換体7の正面7Aに照射され、第二の波長変換光11は第二の波長変換体7の正面7Aから放射される。これらの点において、本実施形態に係る発光装置1は、第一実施形態に係る発光装置1と相違している。
【0090】
本実施形態では、図7に示すように、光源2が第一の光源2Aと第二の光源2Bとを含んでいる。第一の光源2Aは一次光3Aを放ち、第二の光源2Bは一次光3Bを放つ。本実施形態では、第一の蛍光体5を励起する一次光3Aと、第二の蛍光体8を励起する一次光3Bとは、光軸が異なっており、一次光3Aと一次光3Bは、時間的に交互に放たれる。
【0091】
次に、本実施形態に係る発光装置1の作用について説明する。図7に示すように、本実施形態に係る発光装置1では、はじめに、第一の光源2Aから放射された一次光3Aと、第二の光源2Bから放射された一次光3Bとが時間的に交互に第一の波長変換体4と第二の波長変換体7とにそれぞれ照射される。一次光3Aは第一の波長変換体4の正面4Aに照射され、照射された一次光3Aの大部分は第一の波長変換体4の正面4Aから内部に進入し、残りの部分は第一の波長変換体4の表面で反射する。一次光3Bは第二の波長変換体7の正面7Aに照射され、照射された一次光3Bの大部分は第二の波長変換体7の正面7Aから内部に進入し、残りの部分は第二の波長変換体7の表面で反射する。第一の波長変換体4では、一次光3Aで励起された第一の蛍光体5から第一の波長変換光10が放射され、第一の波長変換光10は正面4Aから放射される。一方、第二の波長変換体7では、一次光3Bで励起された第二の蛍光体8から第二の波長変換光11が放射され、第二の波長変換光11は正面7Aから放射される。このようにして、第一の光源2Aと第二の光源2Bとが時間的に互い違いに点灯と消灯を繰り返すため、発光装置1は第一の出力光12と第二の出力光13とを時間的に交互に放射することができる。
【0092】
[第六実施形態]
次に、図8を用いて、第六実施形態に係る発光装置1を説明する。なお、上述した実施形態と同一の構成には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0093】
図8に示すように、本実施形態に係る発光装置1では、一次光3Aは第一の波長変換体4の正面4Aに照射され、第一の波長変換光10は第一の波長変換体4の正面4Aから放射される。一次光3Bは第二の波長変換体7の正面7Aに照射され、第二の波長変換光11は第二の波長変換体7の正面7Aから放射される。これらの点において、本実施形態に係る発光装置1は、第四実施形態に係る発光装置1と相違している。
【0094】
図8に示すように、第一の蛍光体5を励起する一次光3と第二の蛍光体8を励起する一次光3は同一の光源2によって放たれている。第一の蛍光体5を励起する一次光3と第二の蛍光体8を励起する一次光3は、光軸が同じである。第一の波長変換体4と第二の波長変換体7とが光源2に対して位置を変更することにより、第一の出力光12と第二の出力光13とを時間的に交互に放っている。発光装置1は第一の波長変換体4と第二の波長変換体7とが設けられた蛍光体ホイール15を備えている。
【0095】
蛍光体ホイール15の光源2とは反対側には、一次光3、第一の波長変換光10、及び第二の波長変換光11を反射するための反射層が設けられていてもよい。反射層は、光を反射する機能を有するものであれば特に限定されないが、例えば、銀及び/又は酸化チタンを含有した樹脂からなる。これによって、第一の波長変換光10及び第二の波長変換光11が、より正面側から取り出せるようになるので、高出力の光を出射する発光装置1が得られる。また、蛍光体ホイール15の背面側には、上述した放熱基板が設けられていてもよい。これによって、ストークスロスの大きい第一の蛍光体5の発熱に起因する蛍光体ホイール15の温度上昇を抑制できるようになるので、蛍光体の温度消光による発光効率低下を抑制できるようになり、高出力の光を出射する発光装置1が得られる。
【0096】
次に、本実施形態に係る発光装置1の作用について説明する。図8に示すように、本実施形態に係る発光装置1では、はじめに、光源2から放射された一次光3が第一の波長変換体4の正面4Aに照射される。正面4Aに照射された一次光3の大部分は第一の波長変換体4の内部に進入し、残りの部分は第一の波長変換体4の表面で反射する。第一の波長変換体4では、一次光3で励起された第一の蛍光体5から第一の波長変換光10が放射され、第一の波長変換光10は正面4Aから放射される。
【0097】
第一の波長変換体4と第二の波長変換体7とは、蛍光体ホイール15が回転軸C2を中心として回転することによって、光源2に対して位置を変更する。そのため、第一の波長変換体4が一次光3に照射された後、光源2から放射された一次光3は第二の波長変換体7の正面7Aに照射される。照射された一次光3の大部分は第二の波長変換体7の正面7Aから内部に進入し、残りの部分は第二の波長変換体7の表面で反射する。第二の波長変換体7では、一次光3で励起された第二の蛍光体8から第二の波長変換光11が放射され、第二の波長変換光11は正面7Aから放射される。このようにして、蛍光体ホイール15が回転することによって第一の波長変換体4と第二の波長変換体7とが時間的に交互に一次光3に照射されるため、発光装置1は第一の出力光12と第二の出力光13とを時間的に交互に放射することができる。
【0098】
[第七実施形態]
次に、図9を用いて、第七実施形態に係る発光装置1を説明する。なお、上述した実施形態と同一の構成には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0099】
図9に示すように、本実施形態に係る発光装置1では、一次光3Aは第一の波長変換体4の正面4Aに照射され、第一の波長変換光10は第一の波長変換体4の背面4Bから放射される。一次光3Bは第二の波長変換体7の正面7Aに照射され、第二の波長変換光11は第二の波長変換体7の正面7Aから放射される。これらの点において、本実施形態に係る発光装置1は、第一実施形態に係る発光装置1と相違している。
【0100】
本実施形態では、図9に示すように、光源2が第一の光源2Aと第二の光源2Bとを含んでいる。第一の光源2Aは一次光3Aを放ち、第二の光源2Bは一次光3Bを放つ。本実施形態では、第一の蛍光体5を励起する一次光3Aと、第二の蛍光体8を励起する一次光3Bとは、光軸が異なっており、一次光3Aと一次光3Bは、時間的に交互に放たれる。
【0101】
次に、本実施形態に係る発光装置1の作用について説明する。図9に示すように、本実施形態に係る発光装置1では、はじめに、第一の光源2Aから放射された一次光3Aと、第二の光源2Bから放射された一次光3Bとが時間的に交互に第一の波長変換体4と第二の波長変換体7とにそれぞれ照射される。一次光3Aは第一の波長変換体4の正面4Aに照射され、照射された一次光3Aの大部分は第一の波長変換体4の正面4Aから内部に進入し、残りの部分は第一の波長変換体4の表面で反射する。そして、一次光3Aが第一の波長変換体4を透過する際に、第一の波長変換体4に含まれる第一の蛍光体5が一次光3Aの一部を吸収して第一の波長変換光10を放射する。第一の波長変換光10は、第一の波長変換体4の背面4Bから放射される。その一方で、一次光3Bは第二の波長変換体7の正面7Aに照射され、照射された一次光3Bの大部分は第二の波長変換体7の正面7Aから内部に進入し、残りの部分は第二の波長変換体7の表面で反射する。第二の波長変換体7では、一次光3で励起された第二の蛍光体8から第二の波長変換光11が放射され、第二の波長変換光11は正面7Aから放射される。このようにして、第一の光源2Aと第二の光源2Bとが時間的に互い違いに点灯と消灯を繰り返すため、発光装置1は第一の出力光12と第二の出力光13とを時間的に交互に放射することができる。
【0102】
なお、本実施形態に係る発光装置1において、第一の波長変換体4と第二の波長変換体7の位置を入れ替えてもよい。すなわち、一次光3Aは第一の波長変換体4の正面4Aに照射され、第一の波長変換光10は第一の波長変換体4の正面4Aから放射されてもよい。一次光3Bは第二の波長変換体7の正面7Aに照射され、第二の波長変換光11は第二の波長変換体7の背面7Bから放射されてもよい。
【0103】
また、本実施形態においても、第一の波長変換体4と第二の波長変換体7とが光源2に対して位置を変更することにより、第一の出力光12と第二の出力光13とを時間的に交互に放ってもよい。
【0104】
以上、第一実施形態~第七実施形態に係る発光装置を用いて本実施形態に係る発光装置1について説明した。上記のような発光装置1は医療に用いられてもよい。すなわち、発光装置1は医療用発光装置であってもよい。言い換えれば、発光装置1は、医療用照明装置であってもよい。このような発光装置1は、先に説明したような、通常観察と特殊観察との両立が可能で病状診断に有利である。
【0105】
発光装置1は、光干渉断層法(OCT)などに利用されていてもよい。ただし、発光装置1は、蛍光イメージング法又は光線力学療法のいずれかに利用されることが好ましい。これらの方法で利用される発光装置1は、蛍光薬剤や光感受性薬剤などの薬剤を利用する医療システム用の発光装置である。これらの方法は、幅広い応用が期待されている医療技術であり、実用性が高い。これらの発光装置1は、「生体の窓」を通して、生体内部を、近赤外のブロードな高出力光で照らし、生体内に取り込んだ蛍光薬剤や光感受性薬剤を十分機能させることができるので、大きな治療効果が期待される。
【0106】
蛍光イメージング法は、腫瘍等の病巣と選択的に結合する蛍光薬剤を被検体に投与した後に、蛍光薬剤を特定の光によって励起し、蛍光薬剤から発せられた蛍光をイメージセンサで検出及び画像化することにより、病巣を観察する手法である。蛍光イメージング法によれば、一般的な照明のみでは観察が困難な病巣を観察することができる。蛍光薬剤としては、近赤外光領域の励起光を吸収し、さらに当該励起光よりも長波長であり、かつ、近赤外光領域の蛍光を放射する薬剤を用いることができる。蛍光薬剤としては、例えば、インドシアニングリーン(ICG)、フタロシアニン系の化合物、タラポルフィンナトリウム系の化合物、及びDipicolylcyanine(DIPCY)系の化合物からなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。
【0107】
光線力学療法は、標的となる生体組織に選択的に結合する光感受性薬剤を被検体に投与した後に、光感受性薬剤に近赤外線を照射する治療方法である。光感受性薬剤に近赤外線が照射されると、光感受性薬剤から活性酸素が発生し、これによって腫瘍や感染症などの病巣を治療することができる。光感受性薬剤としては、例えば、フタロシアニン系の化合物、タラポルフィンナトリウム系の化合物、及びポルフィマーナトリウム系の化合物からなる群より選ばれる少なくとも一つを用いることができる。
【0108】
本実施形態の発光装置1は、センシングシステム用光源又はセンシングシステム用照明システムとすることもできる。発光装置1では、近赤外の波長領域に受光感度を有する、オーソドックスな受光素子を用いて、高感度のセンシングシステムを構成することができる。このため、センシングシステムの小型化やセンシング範囲の広域化を容易にする発光装置を得ることができる。
【0109】
[医療システム]
次に、上述の発光装置1を備える医療システムについて説明する。具体的には、医療システムの一例として、発光装置1を備えた内視鏡20及び当該内視鏡20を用いた内視鏡システム100について、図10及び図11を用いて説明する。
【0110】
(内視鏡)
図10に示すように、本実施形態に係る内視鏡20は、上述の発光装置1を備えるものである。内視鏡20は、スコープ110、光源コネクタ111、マウントアダプタ112、リレーレンズ113、カメラヘッド114、及び操作スイッチ115を備えている。
【0111】
スコープ110は、末端から先端まで光を導くことが可能な細長い導光部材であり、使用時には体内に挿入される。スコープ110は先端に撮像窓110zを備えており、撮像窓110zには光学ガラスや光学プラスチック等の光学材料が用いられる。スコープ110は、光源コネクタ111から導入された光を先端まで導く光ファイバーと、撮像窓110zから入射した光学像が伝送される光ファイバーとを有する。
【0112】
光源コネクタ111は、発光装置1から、体内の患部等に照射される照明光を導入する。本実施形態では、照明光は可視光及び近赤外光を含んでいる。光源コネクタ111に導入された光は、光ファイバーを介してスコープ110の先端まで導かれ、撮像窓110zから体内の患部等に照射される。なお、図10に示すように、光源コネクタ111には、発光装置1からスコープ110に照明光を導くための伝送ケーブル111zが接続されている。伝送ケーブル111zには、光ファイバーが含まれていてもよい。
【0113】
マウントアダプタ112は、スコープ110をカメラヘッド114に取り付けるための部材である。マウントアダプタ112には、種々のスコープ110が着脱自在に装着される。
【0114】
リレーレンズ113は、スコープ110を通して伝達される光学像を、イメージセンサの撮像面に収束させる。なお、リレーレンズ113は、操作スイッチ115の操作量に応じてレンズを移動させて、焦点調整及び倍率調整を行ってもよい。
【0115】
カメラヘッド114は、色分解プリズムを内部に有する。色分解プリズムは、リレーレンズ113で収束された光を、R光(赤色光)、G光(緑色光)、B光(青色光)、及びIR光(近赤外光)の4色に分解する。色分解プリズムは、例えば、ガラス等の透光性部材で構成されている。
【0116】
カメラヘッド114は、さらに、検出器としてのイメージセンサを内部に有する。イメージセンサは、例えば4つ備えられており、4つのイメージセンサは、各々の撮像面に結像した光学像を電気信号に変換する。イメージセンサは特に限定されないが、CCD(Charge Coupled Device)及びCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)の少なくとも一方を用いることができる。そして、4つのイメージセンサは、IR成分(近赤外成分)、R成分(赤色成分)、G成分(緑色成分)、及びB成分(青色成分)の光をそれぞれ受光する専用のセンサである。
【0117】
カメラヘッド114は、色分解プリズムの替わりに、カラーフィルターを内部に有していてもよい。カラーフィルターは、イメージセンサの撮像面に備えられる。カラーフィルターは、例えば4つ備えられており、4つのカラーフィルターは、リレーレンズ113で収束された光を受けて、R光(赤色光)、G光(緑色光)、B光(青色光)、及びIR光(近赤外光)をそれぞれ選択的に透過する。
【0118】
IR光を選択的に透過するカラーフィルターには、照明光に含まれる近赤外光(IR光)の反射成分をカットするバリアフィルムが備えられていることが好ましい。これにより、例えばICGなどの蛍光薬剤から発せられたIR光からなる蛍光のみが、IR光用イメージセンサの撮像面に結像するようになる。そのため、蛍光薬剤により発光した患部を明瞭に観察し易くなる。
【0119】
なお、図10に示すように、カメラヘッド114には、イメージセンサからの電気信号を、後述するCCU21に伝送するための信号ケーブル114zが接続されている。
【0120】
このような構成の内視鏡20では、被検体からの光は、スコープ110を通ってリレーレンズ113に導かれ、さらにカメラヘッド114内の色分解プリズムを透過して4つのイメージセンサに結像する。
【0121】
(内視鏡システム)
図11に示すように、内視鏡システム100は、被検体内を撮像する内視鏡20、CCU(Camera Control Unit)12、及びディスプレイなどの表示装置22を備えている。
【0122】
CCU21は、少なくとも、RGB信号処理部、IR信号処理部、及び出力部を備えている。そして、CCU21は、CCU21の内部又は外部のメモリが保持するプログラムを実行することで、RGB信号処理部、IR信号処理部、及び出力部の各機能を実現する。
【0123】
RGB信号処理部は、イメージセンサからのR成分、G成分及びB成分の電気信号を、表示装置22に表示可能な映像信号に変換し、出力部に出力する。また、IR信号処理部は、イメージセンサからのIR成分の電気信号を映像信号に変換し、出力部に出力する。
【0124】
出力部は、RGB各色成分の映像信号及びIR成分の映像信号の少なくとも一方を表示装置22に出力する。例えば、出力部は、同時出力モード及び重畳出力モードのいずれかに基づいて、映像信号を出力する。
【0125】
同時出力モードでは、出力部は、RGB画像とIR画像とを別画面により同時に出力する。同時出力モードにより、RGB画像とIR画像とを別画面で比較して、患部を観察できる。重畳出力モードでは、出力部は、RGB画像とIR画像とが重畳された合成画像を出力する。重畳出力モードにより、例えば、RGB画像内で、ICGにより発光した患部を明瞭に観察できる。
【0126】
表示装置22は、CCU21からの映像信号に基づいて、患部等の対象物の画像を画面に表示する。同時出力モードの場合、表示装置22は、画面を複数に分割し、各画面にRGB画像及びIR画像を並べて表示する。重畳出力モードの場合、表示装置22は、RGB画像とIR画像とが重ねられた合成画像を1画面で表示する。
【0127】
次に、本実施形態に係る内視鏡20及び内視鏡システム100の機能について説明する。内視鏡システム100を用いて被検体を観察する場合、まず蛍光物質であるインドシアニングリーン(ICG)を被検体に投与する。これにより、ICGがリンパや腫瘍等の部位(患部)に集積する。
【0128】
次に、伝送ケーブル111zを通じて、発光装置1から光源コネクタ111に可視光及び近赤外光を導入する。光源コネクタ111に導入された光は、スコープ110の先端側に導かれ、撮像窓110zから投射されることで、患部及び患部周囲を照射する。患部等で反射された光及びICGから発せられた蛍光は、撮像窓110z及び光ファイバーを通してスコープ110の後端側に導かれ、リレーレンズ113で収束し、カメラヘッド114内部の色分解プリズムに入射する。
【0129】
色分解プリズムでは、入射した光のうち、IR分解プリズムによって分解したIR成分の光は、IR光用イメージセンサで、赤外光成分の光学像として撮像される。赤色分解プリズムによって分解したR成分の光は、R光用イメージセンサで、赤色成分の光学像として撮像される。緑色分解プリズムによって分解したG成分の光は、G光用イメージセンサで、緑色成分の光学像として撮像される。青色分解プリズムによって分解したB成分の光は、B光用イメージセンサで、青色成分の光学像として撮像される。
【0130】
IR光用イメージセンサで変換されたIR成分の電気信号は、CCU21内部のIR信号処理部で映像信号に変換される。RGB光用イメージセンサでそれぞれ変換されたR成分、G成分、B成分の各電気信号は、CCU21内部のRGB信号処理部で各映像信号に変換される。IR成分の映像信号及びR成分、G成分、B成分の各映像信号は同期して、表示装置22に出力される。
【0131】
CCU21内部で同時出力モードが設定されている場合、表示装置22には、RGB画像とIR画像とが同時に2画面で表示される。また、CCU21内部で重畳出力モードが設定されている場合、表示装置22には、RGB画像とIR画像とが重畳された合成画像が表示される。
【0132】
このように、本実施形態の内視鏡20は、発光装置1を備える。そのため、内視鏡20を用いて蛍光薬剤を効率的に励起して発光させることにより、患部を明瞭に観察することが可能となる。
【0133】
本実施形態の内視鏡20は、第一の波長変換光10を吸収した蛍光薬剤から発せられる蛍光を検出する検出器をさらに備えることが好ましい。内視鏡20が発光装置1に加えて、蛍光薬剤から発せられた蛍光を検出する検出器を備えることにより、内視鏡のみで患部を特定することができる。そのため、従来のように大きく開腹して患部を特定する必要がないことから、患者の負担が少ない診察及び治療を行うことが可能となる。また、内視鏡20を使用する医師は患部を正確に把握できることから、治療効率を向上させることが可能となる。
【0134】
上述のように、医療システムは、蛍光イメージング法又は光線力学療法のいずれかに利用されることが好ましい。これらの方法で利用される医療システムは、幅広い応用が期待されている医療技術であり、実用性が高い。これらの医療システムは、「生体の窓」を通して、生体内部を、近赤外のブロードな高出力光で照らし、生体内に取り込んだ蛍光薬剤や光感受性薬剤を十分機能させることができるので、大きな治療効果が期待される。また、このような医療システムは、比較的単純な構成の発光装置1を利用しているので、小型化や低価格化を図る上で有利である。
【0135】
[電子機器]
次に、本実施形態に係る電子機器について説明する。本実施形態に係る電子機器は、発光装置1を備える。発光装置1は、上述のように、大きな治療効果を期待することができ、センシングシステムの小型化等が容易である。本実施形態に係る電子機器は発光装置1を用いるため、医療機器やセンシング機器用に用いると、大きな治療効果やセンシングシステムの小型化等を期待することができる。
【0136】
電子機器は、例えば、発光装置1と、受光素子とを備える。受光素子は、例えば、近赤外の波長領域の光を検知する赤外線センサなどのセンサである。電子機器は、情報認識装置、分別装置、検知装置、又は検査装置のいずれかであってもよい。これらの装置も、上述のように、センシングシステムの小型化やセンシング範囲の広域化を容易にすることができる。
【0137】
情報認識装置は、例えば、放射した赤外線の反射成分を検知し、周囲状況を認識するドライバー支援システムである。
【0138】
分別装置は、例えば、照射光と、被照射物体で反射された反射光との赤外光成分の違いを利用して被照射物体を予め定められた区分に分別する装置である。
【0139】
検知装置は、例えば、液体を検知する装置である。液体としては、水分、及び航空機などでの輸送が禁じられている引火性液体などが挙げられる。検知装置は、具体的には、ガラスに付着した水分、並びに、スポンジ及び微粉末などの物体に吸水された水分を検知する装置であってもよい。検知装置は、検知された液体を可視化してもよい。具体的には、検知装置は、検知された液体の分布情報を可視化してもよい。
【0140】
検査装置は、医療用検査装置、農畜産業用検査装置、漁業用検査装置、又は工業用検査装置のいずれかであってもよい。これらの装置は、各産業において検査対象物を検査するのに有用である。
【0141】
医療用検査装置は、例えば、人又は人以外の動物の健康状態を検査する検査装置である。人以外の動物は例えば家畜である。医療用検査装置は、例えば、眼底検査及び血中酸素飽和度検査などの生体検査に用いられる装置、並びに、血管及び臓器などの器官の検査に用いられる装置である。医療用検査装置は、生体の内部を検査する装置であってもよく、生体の外部を検査する装置であってもよい。
【0142】
農畜産業用検査装置は、例えば、農産物及び畜産物を含む農畜産物を検査する装置である。農産物は、例えば、青果物及び穀類のように食品として用いられてもよく、油などの燃料に用いられてもよい。畜産物は、例えば、食肉及び乳製品等である。農畜産業用検査装置は、農畜産物の内部又は外部を非破壊で検査する装置であってもよい。農畜産業用検査装置は、例えば、青果物の糖度を検査する装置、青果物の酸味を検査する装置、葉脈などの可視化によって青果物の鮮度を検査する装置、傷及び内部欠損の可視化によって青果物の品質を検査する装置、食肉の品質を検査する装置、乳及び食肉などを原料として加工した加工食品の品質を検査する装置などである。
【0143】
漁業用検査装置は、例えば、マグロなどの魚類の肉質を検査する装置、又は貝類の貝殻内の中身の有無を検査する装置などである。
【0144】
工業用検査装置は、例えば、異物検査装置、内容量検査装置、状態検査装置、又は構造物の検査装置などである。
【0145】
異物検査装置は、例えば、飲料及び液体薬剤などの容器に入っている液体中の異物を検査する装置、包装材中の異物を検査する装置、印刷画像中の異物を検査する装置、半導体及び電子部品中の異物を検査する装置、食品中の残骨、ごみ及び機械油などの異物を検査する装置、容器内の加工食品の異物を検査する装置、並びに、絆創膏などの医療機器、医薬品及び医薬部外品の内部の異物を検査する装置などである。
【0146】
内容量検査装置は、例えば、飲料及び液体薬剤などの容器に入っている液体の内容量を検査する装置、容器に入っている加工食品の内容量を検査する装置、並びに建材中のアスベストの含有量を検査する装置などである。
【0147】
状態検査装置は、例えば、包装材の包装状態を検査する装置、及び包装材の印刷状態を検査する装置などである。
【0148】
構造物の検査装置は、例えば、樹脂製品等の複合部材又は複合部品の内部非破壊検査装置及び外部非破壊検査装置などである。樹脂製品等の具体例としては、例えば、樹脂中に金属ワイヤの一部を埋設させた金属ブラシであり、検査装置によって樹脂と金属の接合状態を検査することができる。
【0149】
電子機器は、カラー暗視技術を利用してもよい。カラー暗視技術は、可視光と赤外線の反射強度の相関関係を利用して、赤外線を波長ごとにRGB信号に割り当てることによって、画像をカラー化する技術である。カラー暗視技術によれば、赤外線のみでカラー画像を得ることができるので、とりわけ防犯装置などに適している。
【0150】
以上のように、電子機器は発光装置1を備える。発光装置1は、電源と、光源2と、第一の波長変換体4と、第二の波長変換体7とを備えていても、これらの全てを一つの筐体内に収容させる必要はない。したがって、本実施形態に係る電子機器は、操作性に優れ、高精度でコンパクトな検査方法等を提供することも可能である。
【0151】
[検査方法]
次に、本実施形態に係る検査方法について説明する。上述のように、発光装置1を備える電子機器は、検査装置として利用することもできる。すなわち、本実施形態に係る検査方法は、発光装置1を利用することができる。これにより、操作性に優れ、高精度でコンパクトな検査方法を提供することが可能になる。
【実施例
【0152】
以下、実施例により本実施形態の発光装置をさらに詳細に説明するが、本実施形態はこれらによって限定されるものではない。
【0153】
[蛍光体の調製]
(第一の蛍光体)
固相反応を利用する調製手法を用いて、第一の蛍光体を合成した。第一の蛍光体で使用するCr3+で賦活された蛍光体は、(Gd0.75La0.25(Ga0.97Cr0.03Ga12の組成式で表される酸化物蛍光体である。第一の蛍光体を合成する際、以下の化合物粉末を主原料として使用した。
酸化ガドリニウム(Gd):純度3N、和光純薬工業株式会社
酸化ランタン(La):純度3N、和光純薬工業株式会社
酸化ガリウム(Ga):純度4N、和光純薬工業株式会社
酸化クロム(Cr):純度3N、株式会社高純度化学研究所
【0154】
まず、化学量論的組成の化合物(Gd0.75La0.25(Ga0.97Cr0.03Ga12となるように、上記原料を秤量した。次に、秤量した原料を、純水を入れたビーカー中に投入し、マグネチックスターラーを用いて1時間攪拌した。これによって、純水と原料からなるスラリー状の混合原料を得た。その後、スラリー状の混合原料を、乾燥機を用いて全量乾燥させた。そして、乾燥後の混合原料を乳鉢と乳棒を用いて粉砕し、焼成原料とした。
【0155】
上記焼成原料を小型アルミナるつぼに移し、箱型電気炉を利用して、1400℃~1500℃の大気中で1時間の焼成を行うことによって、本例の蛍光体を得た。なお、昇降温速度は400℃/hとした。得られた蛍光体の体色は、薄い緑色であった。
【0156】
(第二の蛍光体)
市販のYAG蛍光体(YAlAl12:Ce3+)を入手し、第二の蛍光体とした。なお、蛍光ピーク波長などを考慮すると、当該YAG蛍光体の化学組成は、(Y0.97Ce0.03AlAl12と推定される。
【0157】
[評価]
(結晶構造解析)
第一の蛍光体及び第二の蛍光体の結晶構造を、X線回折装置(X‘Pert PRO;スペクトリス株式会社、PANalytical社製)を用いて評価した。
【0158】
詳細は省略するが、評価の結果、第一の蛍光体及び第二の蛍光体は、ガーネットの結晶構造を持つ化合物を主体にしてなることが分かった。つまり、第一の蛍光体及び第二の蛍光体は、いずれも、ガーネット蛍光体であることが分かった。
【0159】
(蛍光スペクトル)
次に、第一の蛍光体及び第二の蛍光体を含む波長変換体を作製して、蛍光特性を評価した。具体的には、第一の蛍光体については、ハンドプレスを用いてペレット状に成型した上記焼成原料を、1450℃の大気中で1時間焼成することで、波長変換体を作製した。第二の蛍光体については、ハンドプレスを用いてペレット状に成型した蛍光体を、1600℃~1700℃の還元雰囲気下で1~6時間焼成することで、波長変換体を作製した。次いで、得られた波長変換体をレーザー光で励起し、その際に波長変換体から放射される蛍光の蛍光スペクトルを評価した。この際、レーザー光の中心波長は445nmとした。また、レーザー光のエネルギーは、3.87Wとした。
【0160】
図12では、第一の蛍光体の蛍光スペクトルを示す。第一の蛍光体の蛍光スペクトルは、Cr3+のd-d遷移に起因するとみなせるブロードなスペクトルから形成されていた。そして、第一の蛍光体の蛍光スペクトルは、700nm以上800nm以下の波長範囲全体に亘って光成分を有していた。また、第一の蛍光体の蛍光スペクトルは、700nm以上の波長領域に強度が最大値を示すピークを有するものであった。具体的には、第一の蛍光体の蛍光スペクトルのピーク波長は、768nmであった。
【0161】
図13では、第二の蛍光体の蛍光スペクトルを示す。第二の蛍光体の蛍光スペクトルは、Ce3+の5d→4f遷移に起因するとみなせるブロードなスペクトルから形成されていた。そして、第二の蛍光体の蛍光スペクトルは、380nm以上700nm未満の波長範囲内に蛍光強度が最大値を示すピークを有していた。具体的には、第二の蛍光体の蛍光スペクトルのピーク波長は、570nmであった。
【0162】
例えば、第一の蛍光体及び第二の蛍光体を塗分けた蛍光体ホイールを作製し、当該蛍光体ホイールを回転させた状態で、レーザーによってこれらの蛍光体を励起する。そうすると、以上の結果から、第一の蛍光体から放射される近赤外光と、第二の蛍光体から放射される可視光が、時間的に交互に出力される発光装置を実現できるといえる。
【0163】
特願2019-082915号(出願日:2019年4月24日)の全内容は、ここに援用される。
【0164】
以上、実施例に沿って本実施形態の内容を説明したが、本実施形態はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本開示によれば、高コントラストな観察結果を取得可能なように近赤外光及び可視光を放つ発光装置、並びに当該発光装置を用いた医療システム、電子機器及び検査方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0166】
1 発光装置
2 光源
3 一次光
4 第一の波長変換体
5 第一の蛍光体
7 第二の波長変換体
8 第二の蛍光体
10 第一の波長変換光
11 第二の波長変換光
12 第一の出力光
13 第二の出力光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13