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特許7361351生物反応器の運転条件を決定する装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】生物反応器の運転条件を決定する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/36 20060101AFI20231006BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20231006BHJP
   C12P 1/00 20060101ALN20231006BHJP
【FI】
C12M1/36
C12N1/00 B
C12P1/00
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021547294
(86)(22)【出願日】2020-01-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-12
(86)【国際出願番号】 KR2020000656
(87)【国際公開番号】W WO2020166831
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-08-26
(31)【優先権主張番号】10-2019-0017574
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513178894
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】509329800
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、デシク
(72)【発明者】
【氏名】バン、ソンウン
(72)【発明者】
【氏名】シン、ジョンファン
(72)【発明者】
【氏名】キム、イルチュル
(72)【発明者】
【氏名】パク、ソンミ
(72)【発明者】
【氏名】リ、ジョンミン
(72)【発明者】
【氏名】ベ、ゼハン
(72)【発明者】
【氏名】リ、ヘジ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジョンフン
【審査官】福澤 洋光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/148962(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/066002(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2012/0107921(US,A1)
【文献】特表2009-509756(JP,A)
【文献】特表2008-526203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00- 3/10
C12N 1/00-15/90
C12P 1/00-41/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
n(nは自然数)個の実験データセットの入力を受ける段階、前記n個の実験データセットを用いて生物反応器をモデリングして生物反応器モデルを構築する段階、前記生物反応器の全体運転時間を複数の区間に分ける段階、前記生物反応器モデルを用いて各区間別の養分供給速度、温度、pHのうち少なくとも1つによる状態変数の変化を計算する段階、及び、前記状態変数の変化計算の結果に基づいて前記生物反応器の運転方式に応じた最適の運転条件を決定する段階を含み、
前記生物反応器の全体運転時間を複数の区間に分ける段階が、
養分供給速度の変更回数を選択する段階、養分供給開始時間を計算する段階、及び、前 記養分供給開始時間から前記生物反応器の運転終了時間までを前記養分供給速度の変更回 数に基づいて前記複数の区間に分ける段階を含むことを特徴とする生物反応器の運転条件決定方法。
【請求項12】
前記最適の養分供給速度を決定する段階は、前記運転方式がMBO方式の場合、反応器体積が最大の体積に到達する時点を計算する段階、前記計算された時点で前記反応器体積を、前記反応器体積から生物反応器から排出される生産物の体積であるMBO体積(V BO)を差し引いた体積とし、前記反応器体積が最大の体積に到達した区間の開始地点から前記計算された時点までの状態変数の変化計算の結果を記憶する段階、及び、前記構築された生物反応器モデルを用いて前記計算された時点から前記反応器体積が最大の体積に到達した区間の終了地点までの状態変数の変化を計算して記憶する段階を含むことを特徴とする、請求項11に記載の生物反応器の運転条件決定方法。
【請求項13】
メモリ及び前記メモリに連結されるプロセッサを含み、
前記プロセッサは、n(nは自然数)個の実験データセットの入力を受け、前記n個の実験データセットを用いて生物反応器をモデリングして生物反応器モデルを構築し、養分 供給速度の変更回数を選択し、養分供給開始時間を計算した後、前記養分供給開始時間か ら前記生物反応器の運転終了時間までを前記養分供給速度の変更回数に基づいて複数の区 間に分け、構築された生物反応器モデルを用いて各区間別の養分供給速度、温度、pHのうち少なくとも1つによる状態変数の変化を計算し、前記状態変数の変化計算の結果に基づいて前記生物反応器の運転方式に応じた最適の運転条件を決定することを特徴とする、生物反応器の運転条件決定装置。
【請求項21】
前記プロセッサは、前記運転方式がMBO方式の場合、反応器体積が最大の体積に到達する時点を計算して、前記計算された時点で前記反応器体積を前記反応器体積から生物反応器から排出される生産物の体積であるMBO体積(VMBO)を差し引いた体積とし、前記反応器体積が最大の体積に到達した区間の開始地点から前記計算された時点までの状態変数の変化計算の結果を記憶し、前記構築された生物反応器モデルを用いて前記計算された時点から前記反応器体積が最大の体積に到達した区間の終了地点までの状態変数の変化を計算して記憶することを特徴とする、請求項15に記載の生物反応器の運転条件決定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物反応器の運転条件を決定する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物(バクテリア)基盤の発酵工程からエネルギー燃料、栄養素、石油由来の有機化合物などを生産する方法に対する重要性が、全世界的に増加している。
例えば、L-アミノ酸は、タンパク質の基本構成単位であって、微生物からこれを産業的に生産する多様な方法が研究されている。
高効率でL-アミノ酸のような産物を生産する微生物を開発するために多様な研究が行われているが(韓国登録特許公報第10-0924065号、第1208480号)、産業的規模の微生物の発酵工程、特に、一貫性ある発酵結果を得るための工程に対する研究は不足している実情である。
【0003】
このような商用微生物の発酵工程又は生物反応工程は、生産者の経験と過去の運転結果に依存して運転されている。
この場合には、実際に現在の運転戦略が最適であるか否かを判断することができないため、現在の工程に用いられる菌株の最大性能を引き出すことができない。
【0004】
また、運転戦略を変化させた際の生産量に及ぶ影響を予測することができないので、市場の動きによる生産目標変化を実際の工程に迅速に適用しにくい。
【0005】
従来には、菌株の挙動自体を数学的にモデリングしてきたが、特定の菌株に対してのみモデリングした結果は、当該菌株の挙動は正確に模写するが、遺伝子の改良を介して性能を改善した菌株に対する予測力は劣らざるを得ない。
【0006】
このような背景下で、本発明者らは、微生物の発酵工程において、目標とした結果を得るための最適の運転条件を確立しようと鋭意研究した結果、生物反応器モデルを構築して最適の運転条件を導出し、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、実際の工程データを基盤に生物反応器をモデリングし、これを介して構築された生物反応器モデルを用いて生物反応器の最適の運転条件を導出する生物反応器の運転条件決定装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の一実施形態に係る生物反応器の運転条件決定方法は、n(nは自然数)個の実験データセットの入力を受ける段階、前記n個の実験データセットを用いて生物反応器をモデリングして生物反応器モデルを構築する段階、前記生物反応器の全体運転時間を複数の区間に分ける段階、前記生物反応器モデルを用いて各区間別の養分供給速度、温度、pHのうち少なくとも1つによる状態変数の変化を計算する段階、及び、前記状態変数の変化計算の結果に基づいて前記生物反応器の運転方式に応じた最適の運転条件を決定する段階を含み、前記生物反応器の全体運転時間を複数の区間に分け る段階が、養分供給速度の変更回数を選択する段階、養分供給開始時間を計算する段階、 及び、前記養分供給開始時間から前記生物反応器の運転終了時間までを前記養分供給速度 の変更回数に基づいて前記複数の区間に分ける段階を含む。
【0009】
前記実験データセットは、既運転された工程の状態変数及び運転条件を含むことを特徴とする。
【0010】
前記生物反応器モデルを構築する段階は、前記n個の実験データセットのうち何れか1つの実験データセットを検証データセット(validation data set)とし、残りのn-1個の実験データセット又はこの一部をトレーニングデータセット(training data set)としてパラメータセットを推定する段階、前記トレーニングデータセットにより推定されたパラメータセットを用いて候補生物反応器モデルを生成する段階、前記検証データセットを用いて前記生成された候補生物反応器モデルの模写性能を検証する段階、及び、前記模写性能検証の結果に基づいて前記生成された候補生物反応器モデルのうち何れか1つの候補生物反応器モデルの最終生物反応器モデルを選定する段階を含むことを特徴とする。
【0011】
前記候補生物反応器モデルの模写性能を検証する段階は、前記候補生物反応器モデルの予測値と前記検証データセットの測定値を比較して有効性検査の誤謬を計算することを特徴とする。
【0012】
前記最終生物反応器モデルを選定する段階は、前記有効性検査の誤謬が最も小さい候補生物反応器モデルを前記最終生物反応器モデルに選定することを特徴とする。
【0013】
前記候補生物反応器モデルの模写性能を検証する段階は、前記n個の実験データセットのうちトレーニングデータセット及び検証データセットを変更しながら繰り返し行うことを特徴とする。
【0014】
前記最適の運転条件を決定する段階は、前記生物反応器の全体運転時間を複数の区間に分ける段階、前記構築された生物反応器モデルを用いて各区間別の養分供給速度による状態変数の変化を計算する段階、及び、前記状態変数の変化計算の結果に基づいて前記生物反応器の運転方式に応じて目的関数を最小化する最適の養分供給速度を決定する段階を含むことを特徴とする。
【0015】
前記生物反応器の全体運転時間を複数の区間に分ける段階は、前記複数の区間が分けられる時点を計算する段階をさらに含むことを特徴とする。
【0016】
前記目的関数は、収率及び生産性のうち何れか1つに選択されることを特徴とする。
【0017】
前記運転方式は、CBO(Continuous Broth Output)又はMBO(Middle Broth Output)を含むことを特徴とする。
【0018】
前記最適の供給速度を決定する段階は、前記運転方式がMBO方式である場合、反応器体積が最大の体積に到達する時点を計算する段階、前記計算された時点で前記反応器体積を前記反応器体積から生物反応器から排出される生産物の体積であるMBO体積(VMBO)を差し引いた体積とし、前記反応器体積が最大の体積に到達した区間の開始地点から前記計算された時点までの状態変数の変化計算の結果を記憶する段階、及び、前記構築された生物反応器モデルを用いて前記計算された時点から前記反応器体積が最大の体積に到達した区間の終了地点までの状態変数の変化を計算して記憶する段階を含むことを特徴とする。
【0019】
一方、本発明の一実施形態に係る生物反応器の運転条件決定装置は、メモリ、及び前記メモリに連結されるプロセッサを含み、前記プロセッサ、n(nは自然数)個の実験データセットの入力を受け、前記n個の実験データセットを用いて生物反応器をモデリングして生物反応器モデルを構築し、養分供給速度の変更回数を選択し、養分供給開始時間を 計算した後、前記養分供給開始時間から前記生物反応器の運転終了時間までを前記養分供 給速度の変更回数に基づいて前記複数の区間に分け、構築された生物反応器モデルを用いて各区間別の養分供給速度、温度、pHのうち少なくとも1つによる状態変数の変化を計算し、前記状態変数の変化計算の結果に基づいて前記生物反応器の運転方式に応じた最適の運転条件を決定することを特徴とする。
【0020】
前記実験データセットは、既運転された工程の状態変数及び運転条件を含み、前記状態変数は、細胞濃度、養分濃度、反応器体積及び生産物濃度のうち少なくとも何れか1つを含み、前記運転条件は、養分供給速度(feed rate)、温度、pH及び運転方式のうち少なくとも何れか1つを含むことを特徴とする。
【0021】
前記プロセッサは、前記n個の実験データセットのうち何れか1つの実験データセットを検証データセットとし、残りのn-1個の実験データセット又はこの一部をトレーニングデータセットとして用いてパラメータセットを推定し、前記推定されたパラメータセットを用いて候補生物反応器モデルを生成し、前記検証データセットを用いて前記候補生物反応器モデルの模写性能を検証し、前記模写性能検証の結果に基づいて最終生物反応器モデルを選定することを特徴とする。
【0022】
前記プロセッサは、前記候補生物反応器モデルの予測値と前記検証データセットの測定値を比較して有効性検査の誤謬を計算することを特徴とする。
【0023】
前記プロセッサは、前記候補生物反応器モデルのうち前記有効性検査の誤謬が最も小さい候補生物反応器モデルを最終生物反応器モデルとして選択することを特徴とする。
【0024】
前記プロセッサは、前記n個の実験データセットのうちトレーニングデータセット及び検証データセットを変更しながら前記候補生物反応器モデルの模写性能検証を繰り返し行うことを特徴とする。
【0025】
前記プロセッサは、前記生物反応器の全体運転時間を複数の区間に分け、前記構築された生物反応器モデルを用いて各区間別の養分供給速度による状態変数の変化を計算し、前記状態変数の変化計算の結果に基づいて前記生物反応器の運転方式に応じて計算された状態変数の変化に目的関数を最小化する最適の供給速度を算出する段階を含むことを特徴とする。
【0026】
前記プロセッサは、前記複数の区間が分けられる時点を計算することを特徴とする。
【0027】
前記プロセッサは、前記運転方式がMBO方式である場合、反応器体積が最大の体積に到達する時点を計算し、前記計算された時点で前記反応器体積を前記反応器体積から生物反応器から排出される生産物の体積であるMBO体積(VMBO)を差し引いた体積とし、前記反応器体積が最大の体積に到達した区間の開始地点から前記計算された時点までの状態変数の変化計算の結果を記憶し、前記構築された生物反応器モデルを用いて前記計算された時点から前記反応器体積が最大の体積に到達した区間の終了地点までの状態変数の変化を計算して記憶することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明の実施形態によると、実際の工程データを基盤に生物反応器をモデリングし、これを介して構築された生物反応器モデルを用いて生物反応器の挙動を予測することができ、生物反応器の最適の運転条件を導出することができる。
【0029】
また、本発明の実施形態によると、実際の工程データを基盤にモデリングを行うので遺伝的に修正された菌株を用いる生物反応器にも適用することができ、実際の工程データを直接用いてモデリングを行うため規模拡大(scale-up)に対して追加で悩まなくてもよいという長所がある。
【0030】
また、本発明の実施形態によると、実際の工程データを基盤に使用者が指定した目的関数を最小化する方向になされるため、アミノ酸の市場状況によってそれぞれ異なる運転目的に従いながらも、当該時点で用いられている菌株の性能を最大限発揮することができる運転戦略を導き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態に係る生物反応器の運転条件決定装置の構成を示した図である。
図2】本発明に係る実際の工程データと生物反応器モデルにより予測された工程指標の挙動を示したグラフである。
図3】本発明の一実施形態に係る生物反応器の運転条件決定方法を示したフローチャートである。
図4図3に示された生物反応器モデルを構築する過程を示したフローチャートである。
図5図3に示された生物反応器モデルを用いて運転条件を決定する過程を示したフローチャートである。
図6】本発明により生物反応器を運転した時の工程指標の変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の一部の実施形態を例示的な図面を介して詳細に説明する。
各図面の構成要素に参照符号を付けるに際し、同じ構成要素に対しては、別の図面上に示されているとしてもできるだけ同じ符号を有するようにしていることに留意すべきである。
また、本発明の実施形態を説明するに際し、関連する公知の構成又は機能に対する具体的な説明が、本発明の実施形態に対する理解を妨げると判断される場合には、その詳細な説明は省略する。
【0033】
本発明の実施形態の構成要素について説明するに際し、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を使用することができる。
かかる用語は、その構成要素を他の構成要素と区別するためのものに過ぎず、その用語により当該構成要素の本質や手順又は順番などが限定されない。
また、別に定義されない限り、技術的又は科学的な用語をはじめ、ここで使用される全ての用語は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が一般的に理解しているものと同じ意味を有する。
一般的に使用される辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈上有する意味と一致する意味を有すると解釈すべきであり、本出願において明白に定義されていない限り、理想的又は過剰に形式的な意味に解釈されない。
【0034】
本発明は、生物反応器(bioreactor)を用いた実際の工程データを基盤に生物反応器をモデリングし、当該モデルを用いて生物反応器の最適の運転条件を導出する技術に関する。
【0035】
例えば、本発明の実施形態は、リシン(Lysine)を生産するのに用いられる生物反応器を、既運転された工程の状態変数及び運転条件(運転戦略)を含む実際の工程データを基盤にコリネバクテリウム属(the genus Corynebacterium)菌株の挙動特性を反映した形態にモデリングし、当該生物反応器モデルを用いて動的最適化技法で多様な運転戦略をシミュレーションして使用者が定めた目的関数を最小化する最適の運転戦略を決定するアルゴリズムを提示する。これを介して生産性又は収穫量などの工程性能指標をその目的により最大化することができる。
【0036】
図1は、本発明の一実施形態に係る生物反応器の運転条件決定装置の構成を示した図であり、図2は、本発明に係わる実際の工程データと生物反応器モデルにより予測された工程指標の挙動を示したグラフである。
本発明による生物反応器の運転条件決定装置は、コンピュータ装置により具現されてよい。
【0037】
図1を参照すると、生物反応器の運転条件決定装置は、メモリ110、入力装置120、出力装置130、ストレージ140、ネットワークインタフェース150及びプロセッサ160を含む。
【0038】
メモリ110は、プロセッサ160の動作のためのプログラムを記憶することができ、入力されるデータ及び出力されるデータを臨時記憶することもできる。
【0039】
また、メモリ110は、生物反応器のモデルを構築するアルゴリズム及び生物反応器の最適の運転戦略を最適化するアルゴリズムなどを記憶することができる。
メモリ110は、既運転された工程の状態変数及び運転条件を含む実際の工程データ、すなわち、実験データセットを記憶することもできる。
【0040】
このようなメモリ110は、フラッシュメモリ、ハードディスク、SDカード、RAM、ROM、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable ROM)、EPROM(Erasable and Programmable ROM)、レジスター及び着脱型ディスクなどの記憶媒体のうち少なくとも1つ以上の記憶媒体(記録媒体)に具現されてよい。
【0041】
入力装置120は、データを入力するための装置である。
入力装置120は、キーパッド、キーボード、ドームスイッチ、タッチパッド及びタッチスクリーンなどの入力装置のうち少なくとも1つ以上に具現されてよい。
また、入力装置120は、バーコード読み取り機及び磁気インク文字読み取り機などに具現されてもよい。
【0042】
出力装置130は、プロセッサ160の動作による各種情報又はデータを視覚情報及び/又は聴覚情報などの形態に出力する。
出力装置130は、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜トランジスター液晶ディスプレイ(thin film transistor-liquid crystal display、TFT LCD)、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、3次元ディスプレイ及び/又は透明ディスプレイなどの表示装置及び/又はレシーバー、スピーカー及び/又はブザーなどのオーディオ出力装置などを含むことができる。
【0043】
ストレージ140は、メモリ110のように多様な種類の記憶媒体を含むことができる。
ストレージ140は、インターネット上でメモリ110の記憶機能を行うウェブストレージに具現されてもよい。
【0044】
ストレージ140は、実験データを記憶することもできる。
【0045】
ネットワークインタフェース150は、ネットワークを介して他の端末機と有無線通信を行うことができるようにする。
ネットワークインタフェース150は、無線インターネット、移動通信、及び近距離通信などの通信技術のうち何れか1つ以上を用いることができる。
無線インターネット技術としては、WLAN(Wireless LAN)(WiFi)、Wibro(Wireless broadband)及び/又はWimax(World Interoperability for Microwave Access)などが用いられてよい。
近距離通信技術としては、ブルートゥース、NFC(Near Field Communication)、RFID(Radio Frequency Identification)、赤外線通信(IrDA、infrared Data Association)、UWB(Ultra Wideband)及び/又はジグビー(ZigBee)などが用いられてよい。
移動通信技術としては、CDMA(Code Division Multiple Access)、GSM(Global System for Mobile communication)、LTE(Long Term Evolution)及び/又は LTE-Advancedなどが用いられてよい。
【0046】
プロセッサ160は、メモリ110に記憶されたプログラム及び/又はアルゴリズムを行う。
プロセッサ160は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、PLD(Programmable Logic Devices)、FPGAs(Field Programmable Gate Arrays)、CPU、マイクロコントローラー及びマイクロプロセッサのうち少なくとも1つ以上に具現されてよい。
【0047】
プロセッサ160は、生物反応器の実際の工程データを用いた生物反応器の数学的モデリングを介して生物反応器モデルを生成(構築)する。
プロセッサ160は、生成された生物反応器モデルを用いて使用者が望む工程性能に到達するための生物反応器の最適の運転条件(又は最適の運転戦略)を決定する。
【0048】
以下では、生物反応器モデルを構築する過程を具体的に説明する。
生物反応器モデルを構築する過程は、大きく生物反応器を数式で定義する過程と、数式に含まれているパラメータセットを推定する過程とを含むことができる。
【0049】
生物反応器は、下記[数式1]~[数式4]のような物質収支式(mole balance equation)で示すことができる。
【0050】
【数1】
【0051】
【数2】
【0052】
【数3】
【0053】
【数4】
【0054】
前記物質収支式に含まれているμ及びπは、[数式5]及び[数式6]のとおり示すことができる。
【0055】
【数5】
【0056】
【数6】
【0057】
養分の投入による希釈速度(dilution rate)Dは、生物反応器の運転方式に応じて下記[数式7]及び[数式8]のとおり示すことができる。
生物反応器の運転方式は、持続的に生産物を出力するCBO(Continuous Broth Out)及び運転の中間に生産物を出力するMBO(Middle Broth Out)に区分される。
生物反応器の運転方式がMBOである場合には、希釈速度Dを[数式7]のように示し、
【0058】
【数7】
【0059】
生物反応器の運転方式がCBOである場合には、希釈速度Dを[数式8]のように示す。
【0060】
【数8】
【0061】
前記[数式1]から[数式8]に含まれている状態変数(性能指標、工程指標)X、S、V及びPは[表1]のとおり定義される。
【0062】
【表1】
【0063】
前記[数式1]から[数式8]に含まれているパラメータ(パラメータセット、parameter set)は、[表2]のとおり定義される。
【0064】
【表2】
【0065】
以上のとおり、MBO方式で運転される生物反応器は、[数式1]から[数式7]で示し、CBO方式で運転される生物反応器は、[数式1]から[数式6]及び[数式8]で定義することができる。
【0066】
その後、各運転方式(MBO又はCBO)で運転される生物反応器に対応される数式に含まれているパラメータセットを推定する。
すなわち、MBO方式で運転される生物反応器モデルを構築するためには、[数式1]から[数式7]に含まれているパラメータセットを推定する。
一方、CBO方式で運転される生物反応器モデルを構築するためには、[数式1]から[数式6]及び[数式8]に含まれているパラメータセットを推定する。
【0067】
MBO方式及びCBO方式で運転される生物反応器モデルの構築のためのパラメータセットを推定する過程は、同一であり、本明細書では、MBO方式で運転される生物反応器モデルを構築するためのパラメータセットの推定過程を代表的な例として説明する。
【0068】
先ず、プロセッサ160は、少なくとも2つ以上の実験データセットの入力を受ける。
ここで、各実験データセットは、実際の工程に用いられたデータであって、生物反応器を介して既運転された工程の状態変数及び運転条件を含むことができる。
前記状態変数は、細胞濃度、養分濃度、反応器体積及び生産物濃度のうち少なくとも何れか1つを含むことができ、前記運転条件は、工程を運転するのに必要な入力値を意味するものであって、養分供給速度、温度、pH、及び運転方式(CBO又はMBO)のうち少なくとも何れか1つを含むことができる。
プロセッサ160は、入力装置120又はネットワークインタフェース150を介して実験データセットの入力を受けることができる。
また、プロセッサ160は、メモリ110又はストレージ140に記憶された実験データセットを入力データとしてアクセスすることができる。
【0069】
プロセッサ160は、n個の実験データセットのうち何れか1つの実験データセットを検証データセットとし、残りのn-1個の実験データセット又はこの一部をトレーニングデータセットとして設定することができる。
【0070】
プロセッサ160は、トレーニングデータセットを用いて運転方式に応じたパラメータセットを推定することにより、細胞の特徴を反映した生物反応器モデルを完成する。
つまり、プロセッサ160は、運転方式がMBOである場合、トレーニングデータセットを用いて前記[数式1]から[数式7]に含まれているパラメータセットを推定し、推定されたパラメータセットを[数式1]から[数式7]に代入してMBO方式で運転される生物反応器モデルを完成する。
一方、プロセッサ160は、運転方式がCBOである場合、トレーニングデータセットを用いて前記[数式1]から[数式6]及び[数式8]に含まれているパラメータセットを推定し、推定されたパラメータセットを[数式1]から[数式6]及び[数式8]に代入することにより、CBO方式で運転される生物反応器モデルを完成する。
【0071】
より具体的に、プロセッサ160は、トレーニングデータセットを用いてパラメータセットP={p,p,...,p}の値を推定する。
ここで、パラメータセットPは、[表2]に羅列されたパラメータ(P)の値を含む。
プロセッサ160は、全域最適化アルゴリズムである遺伝アルゴリズム(Genetic Algorithm、GA)を用いてトレーニングデータセットに含まれているn-1個又はこの一部の実験データセットを最もよく模写するパラメータセットPを推定する。
【0072】
プロセッサ160は、検証データセットを用いて推定されたパラメータセットPにより生成される生物反応器モデルの模写性能を検証(すなわち、有効性検査)する。
プロセッサ160は、推定されたパラメータセットに含まれているパラメータ値を、運転方式に応じて前記[数式1]から[数式7]又は前記[数式1]から[数式6]及び[数式8]に反映し、候補生物反応器モデルを生成する。
ここで、候補生物反応器モデルは、推定された各パラメータセットPを用いて生成される生物反応器モデルに定義することができる。
【0073】
プロセッサ160は、検証データセットを用いて生成された候補生物反応器モデルの模写性能を検証する。
すなわち、プロセッサ160は、サンプリングポイントで実験で測定した値(すなわち、検証データセットの測定値)と候補生物反応器モデルに予測した値(すなわち、候補生物反応器モデルの予測値)を比較し、二乗誤差和(sum of normalized square error)、すなわち、有効性検査の誤謬(validation error)を計算し、その結果を記憶する。
ここで、サンプリングポイントは、生物反応器の生産工程で状態変数値を測定する時点として定義することができる。
例えば、図2を参照すると、プロセッサ160は、実験で測定された細胞濃度X、養分濃度S、反応器体積V及び生産物濃度Pと、生物反応器モデルにより予測された細胞濃度X、養分濃度S、反応器体積V及び生産物濃度Pとをそれぞれ比較し、生物反応器モデルの模写性能を確認する。
つまり、プロセッサ160は、実験で測定された状態変数値と生物反応器モデルにより予測された状態変数値の類似度に基づいて当該生物反応器モデルの模写性能を決定する。
【0074】
プロセッサ160は、n個の実験データセットのうちトレーニングデータセット及び検証データセットを別に決定して有効性検査誤謬の計算を繰り返し行うことにより、幾多の組み合わせの生物反応器モデルに対する性能を検証することができる。
具体的に、プロセッサ160は、n個の実験データセットを検証データセットとトレーニングデータセットに区分することができる全ての組み合わせで生物反応器モデリング及び交差検証(cross-validation)を行う。
例えば、実験データセットがD1、D2及びD3である場合、D1を検証データセットから除外し、D2及びD3を用いて生物反応器モデリングを行い、D1を用いて当該生物反応器モデルの模写性能を検証する。
次に、D2を検証データセットから除外し、D1及びD3を用いて生物反応器モデリングを行い、D2を用いて生物反応器モデルの模写性能検証を行う。
最後に、D3を検証データセットとし、D1及びD2を用いて生物反応器モデリングを行い、D3を用いて当該生物反応器モデルの模写性能を検証する。
【0075】
プロセッサ160は、候補生物反応器モデルのうち検証データセットに対する模写性能が最も良い候補生物反応器モデルを最終生物反応器モデルとして選択する。
プロセッサ160は、有効性検査の誤謬を目的関数として推定されたパラメータセットのうち、有効性検査の誤謬が最も小さいパラメータセットを選択する。
本明細書において、目的関数とは、ある目的のために用いる関数として定義されてよい。
生物反応器モデルを構築する過程での目的関数は、有効性検査の誤謬を最小化するパラメータセットを選定するためのものであり、後述される最適の運転条件を決定する過程での目的関数は、収率及び生産性を最大化する最適の運転条件を求めるためのものである。
【0076】
次に、構築された生物反応器モデル(すなわち、選択された最終生物反応器モデル)を用いて、生物反応器の最適の運転条件を決定する方法を具体的に説明する。
ここで、最適の運転条件は、区間別養分の最適の供給速度(optimal feed rate)であり得る。
例えば、生物反応器の全体運転時間を複数の区間に分け、構築された生物反応器モデルを用いて各区間別の養分供給速度による状態変数(例:細胞濃度、養分濃度、反応器体積及び生産物濃度)の変化を計算し、状態変数の変化を計算した結果に基づいて生物反応器の運転方式に応じて計算された状態変数の変化に目的関数を最小化する最適の養分供給速度(以下、最適の供給速度)を算出する。
【0077】
先ず、プロセッサ160は、使用者の入力により養分供給速度の変更回数Kと目的関数Jを選択する。
ここで、養分供給速度の変更回数Kは、生物反応器の全体運転時間の間に養分供給速度を変更する回数を意味し、任意に指定されてよい。
目的関数Jは、収率又は生産性に選択されてよい。
【0078】
プロセッサ160は、選択された養分供給速度の変更回数Kに基づいて生物反応器の全体運転時間をK+1個の区間(time element)に分け、構築された生物反応器モデルを用いて各区間別の養分供給速度による状態変数の変化を計算する。
ここで、区間別の養分供給速度の最小及び最大は、経験的に得た既運転された工程データ(すなわち、実際の工程データ)を用いてよい。
【0079】
より具体的に、プロセッサ160は、養分(feed)を供給しない一番目の区間で生物反応器内の養分(substrate)が全て消費される時点tfsを計算する。
プロセッサ160は、tfsから生物反応器の運転終了時点tまでの時間をK個に分ける時点t(k=1,...,K+1)を計算する。
【0080】
プロセッサ160は、K+1個に分けられた各区間別の養分供給速度を媒介変数化し、すなわち、養分供給速度を制御入力にして構築された生物反応器モデルに入力する。
このとき、プロセッサ160は、制御ベクター媒介化(Control Vector Parameterization、CVP)方式を用いて、区間別の最適の養分供給速度を媒介変数化する。
プロセッサ160は、養分供給速度を媒介変数として生物反応器モデルに反映し、状態変数の変化を計算する。
養分供給速度を媒介変数として生物反応器モデルに反映すると、常微分方程式(Ordinary Differential Equation、ODE)で表現される。
【0081】
プロセッサ160は、生物反応器の運転方式に応じて異なる条件での最適の供給速度を計算する。
先ず、運転方式がMBOである場合、プロセッサ160は、流加式生物反応器(fed-batch reactor)として運転する。
生物反応器の体積Vが最大の反応器体積Vmaxに到達すると、VMBO=0.25LのMBOが起こるようにする条件での最適の供給速度を計算する。
ここで、VMBOは、生物反応器から排出される生産物の体積であって、運転者により任意に設定され、Vmaxは、生物反応器により別に設定されてよい。
【0082】
プロセッサ160は、計算された状態変数の変化に基づいて目的関数Jを最小化する生物反応器の運転条件を最適の運転条件に導出する。
すなわち、プロセッサ160は、収率又は生産性を最大化する生物反応器の最適の供給速度を決定する。
【0083】
目的関数Jは、収率(yield)又は生産性(productivity)に負数を乗じて定義される。
収率は、生物反応器の全体運転時間の間に投入された養分(substrate)の量に対する全体生産量であって、[数式9]のように示すことができる。
このとき、全体生産量は、生物反応器の運転終了時点に、生物反応器内の生産物の量と、運転途中のMBO又はCBOで取り出した溶液内の生産物の量とを合わせたものである。
【0084】
【数9】
【0085】
生産性は、バッチ洗浄時間(batch cleaning time)を含めて1年間生産することができる量(ton/KL year)であって、[数式10]のように示すことができる。
【0086】
【数10】
【0087】
ここで、tfinalは、生物反応器の運転終了時間を意味する。
【0088】
収率の最大化を目的とする場合、[数式11]のとおり、収率(Yield)に負数を乗じて目的関数JYieldを構成する。
目的関数JYieldは、新しい養分で運転した時に既存の運転方式と類似の生産性を示すよう、既存の運転との生産性の差を示す(Productivity-Productivityheuristic)項を含む。
また、目的関数JYieldは、生物反応器の現実的な限界を反映するために、区間別の供給速度の変化が大きくなり過ぎないようにする(Input change)項を含む。
【0089】
【数11】
【0090】
生産性の最大化を目的とする場合、[数式12]のとおり、目的関数JProductivityは、生産性(Productivity)に負数を乗じた値を含む。
目的関数JProductivityは、多すぎる養分(substrate)を用いて非効率的に生産性だけ増加させる工程が最適に表れないよう、養分の消耗量を示すSconsumption項を含む。
また、目的関数JProductivityは、生物反応器の限界を反映した区間別の供給速度の変化を示す(Input change)項を含む。
【0091】
【数12】
【0092】
各目的関数JYield及び目的関数JProductivityにおいて、A、B及びCは、各項の加重値を相対的に表現する比例定数、すなわち、スケーリング係数(scaling factor)であって、正数であってよい。
スケーリング係数A、B及びCは、各項の計算次数(order of magnitude)が大きな差を示さないようにスケールを合わせる役割を担う。
ここで、スケーリング係数A、B及びCは、使用者により任意に調整されてよい。
プロセッサ160は、遺伝アルゴリズム(GA)を用いて目的関数JYield及び目的関数JProductivityを最小化する養分供給速度を算出する。
【0093】
一方、運転方式がCBOである場合、プロセッサ160は、入力流量(input flow rate)及び出力流量(output flow rate)が同一に設定され、体積が一定の連続撹拌タンク反応器(Continuous Stirred Tank Reactor、CSTR)条件での最適の供給速度を計算する。
プロセッサ160は、運転方式がCBOである場合にも、生物反応器の全体運転時間をK+1個の区間に分けて区間別の最適の供給速度を計算する。
【0094】
図3は、本発明の一実施形態に係る生物反応器の運転条件決定方法を示したフローチャートであり、図4は、図3に示された生物反応器モデルを構築する過程を示したフローチャートであり、図5は、図3に示されたモデルを用いて最適の運転条件を決定する過程を示したフローチャートである。
【0095】
プロセッサ160は、n個の実験データセットの入力を受ける(S10)。
ここで、実験データセットは、同じ菌種で実験したデータセットであって、生物反応器で既運転された工程の運転条件及び状態変数値(測定値)などを含む。
【0096】
プロセッサ160は、実験データセットに基づいて生物反応器をモデリングして生物反応器モデルを構築(又は生成)する(S20)。
生物反応器モデルを構築する過程は、生物反応器を数式で示す過程と、数式に含まれているパラメータセットを推定する過程とに分けられる。
S20では、生物反応器を数式で示す過程が完了した状態であるものと仮定する。
【0097】
より具体的に、図4を参照して生物反応器モデルを構築する過程(S20)を説明する。
プロセッサ160は、n個の実験データセットのうち何れか1つの実験データセットを検証データセットから除外し、残りのn-1個の実験データセット又はこの一部をトレーニングデータセットとして用いてパラメータセットを推定する(S201)。
このとき、プロセッサ160は、遺伝アルゴリズムを用いてパラメータセットを推定する。
プロセッサ160は、生物反応器の運転方式がMBOである場合、トレーニングデータセットに基づいて[数式1]から[数式7]に含まれているパラメータセットを推定し、運転方式がCBOである場合、トレーニングデータセットを用いて[数式1]から[数式6]及び[数式8]に含まれているパラメータセットを推定する。
【0098】
プロセッサ160は、推定されたパラメータセットを生物反応器の運転方式に対応する数式に反映し、候補生物反応器モデルを生成する(S202)。
すなわち、プロセッサ160は、推定されたパラメータセットを[数式1]から[数式7]に反映し、MBO方式で運転される候補生物反応器モデルを完成する。
一方、プロセッサ160は、推定されたパラメータセットを[数式1]から[数式6]及び[数式8]に反映し、CBO方式で運転される候補生物反応器モデルを完成する。
【0099】
プロセッサ160は、検証データセットを用いて生成された候補生物反応器モデルの有効性検査の誤謬を演算する(S203)。
換言すれば、プロセッサ160は、検証データセットを基盤に候補生物反応器モデルの模写性能を検証する。
【0100】
プロセッサ160は、演算された有効性検査の誤謬を記憶する(S204)。
すなわち、プロセッサ160は、候補生物反応器モデルの有効性検査の結果(すなわち、模写性能検証の結果)を記憶する。
【0101】
プロセッサ160は、n個の実験データセットで構成することができる検証データセットとトレーニングデータセットの全ての組み合わせに対する交差検証を実施したのかを確認する(S205)。
プロセッサ160は、全ての実験データセットに対する交差検証が完了するまでS201からS204を繰り返し行う。
【0102】
プロセッサ160は、記憶された有効性検査の誤謬に基づいて最終生物反応器モデルを選択する(S206)。
プロセッサ160は、有効性検査の結果に基づいて、模写性能が最も良い候補生物反応器モデルを最終生物反応器モデルとして選定する。
換言すれば、プロセッサ160は、推定されたパラメータセットのうち有効性検査の誤謬が最も小さいパラメータセットを用いて生物反応器モデルを完成する。
【0103】
プロセッサ160は、図4に示された生物反応器モデルの構築過程を介して構築された生物反応器モデル、すなわち、最終生物反応器モデルを用いて生物反応器の最適の運転条件を決定する(S30)。
換言すれば、プロセッサ160は、構築された生物反応器モデルを用いて生物反応器の最適の供給速度を決定する。
【0104】
図5を参照しつつ、最適の運転条件を決定する過程をより具体的に説明する。
プロセッサ160は、使用者の入力により養分供給速度の変更回数Kと目的関数Jを選択する(S301)。
養分供給速度の変更回数Kは、生物反応器の全体運転時間の間に養分供給速度を変更する回数を意味し、使用者により任意に指定されてよい。
目的関数Jは、収率又は生産性に設定されてよい。
換言すれば、プロセッサ160は、使用者の入力により養分供給速度の変更回数Kと目的関数Jを設定する。
本実施形態では、目的関数Jを収率に選択した場合を例に挙げて説明する。
【0105】
プロセッサ160は、養分供給速度の変更回数Kと目的関数Jが選択されると、養分供給開始時間tfsを計算する(S302)。
プロセッサ160は、生物反応器に養分を供給しない一番目の区間で養分(substrate)が全て消費される時点を養分供給開始時間tfsとして算出する。
【0106】
プロセッサ160は、養分供給開始時間tfsから生物反応器の運転終了時間(時点)tfinalまでの区間(時間)をK個の時間要素(time element)に分け、その分けられる時点tを計算する(S303)。
すなわち、tは、各区間の開始時点であり、tk+1は、各区間の終了時点を意味する。
【0107】
プロセッサ160は、[t,tk+1]区間内の養分供給速度を構築された生物反応器モデルに入力して常微分方程式を計算し、状態変数(state variable)の変化を計算する(S304)。
すなわち、プロセッサ160は、[t,tk+1]区間内の養分供給速度を媒介変数として生物反応器モデルを表現した常微分方程式を計算して状態変数の変化を算出する。
【0108】
次いで、プロセッサ160は、生物反応器の運転方式がMBO方式であるのかを確認する(S305)。
すなわち、プロセッサ160は、構築された生物反応器モデルの運転方式がMBO方式であるのかを確認する。
【0109】
プロセッサ160は、生物反応器の運転方式がMBO方式であれば、[t,tk+1]区間内で反応器体積Vが最大の体積Vmax以上の時点があるのかを確認する(S306)。
プロセッサ160は、当該区間で反応器体積Vが最大の体積Vmaxに到達する時点があるのかを確認する。
このとき、プロセッサ160は、MBOが発生した回数(すなわち、MBO回数)をカウンティングする。
【0110】
プロセッサ160は、[t,tk+1]区間内で反応器体積Vが最大の体積Vmaxに到達する時点、すなわち、MBO時点tMBO,jとして算出する(S307)。
ここで、tMBO,jは、j番目のMBOが起こる時点を意味する。
生物反応器の運転方式がMBOに設定された場合、連続工程で不連続的な操作が加えられる部分を反映するため、MBO時点及びMBO回数が計算されるようにする。
【0111】
プロセッサ160は、算出されたMBO時点tMBO,jで反応器体積VをV-VMBOとし、[t,tk+1]区間でMBO時点tMBO,jまで、すなわち、[t,tMBO,j]区間内の常微分方程式の計算結果を記憶する(S308)。
プロセッサ160は、[t,tMBO,j]区間内の状態変数の変化を算出する。
【0112】
プロセッサ160は、構築された生物反応器モデルを用いて[tMBO,j,tk+1]区間の常微分方程式を計算し、計算された常微分方程式を用いて[tMBO,j,tk+1]区間で状態変数の変化を計算する(S309)。
換言すれば、プロセッサ160は、[tMBO,j,tk+1]区間の常微分方程式を用いて状態変数値を算出し、算出された状態変数値を用いて当該区間で状態変数の変化を算出する。
その後、プロセッサ160は、S306に戻って反応器体積が最大の体積以上であるのかを確認する。
【0113】
プロセッサ160は、反応器体積Vが最大の体積Vmax未満であれば、計算された状態変数の変化計算の結果を記憶する(S310)。
プロセッサ160は、[tMBO,j,tk+1]区間、又は、[t,tk+1]区間内の状態変数の常微分方程式(ODE)の計算結果を記憶することができる。
【0114】
プロセッサ160は、全ての区間に対する状態変数の変化を計算したのかを確認する(S311)。
すなわち、プロセッサ160は、K個の区間に対する状態変数の変化の計算が完了したのかを確認する。
【0115】
プロセッサ160は、状態変数の変化計算の結果を遺伝アルゴリズム(GA)に変数として入力し、選択された目的関数Jを最小化する養分供給速度を決定する(S312)。
換言すれば、プロセッサ160は、状態変数の変化を計算した結果に基づいて収率又は生産性を最大化することができる生物反応器の最適の養分供給速度を導出する。
【0116】
プロセッサ160は、決定された最適の運転条件を出力装置130に出力する(S40)。
例えば、プロセッサ160は、決定された最適の運転条件をディスプレイ画面に表示する。
【0117】
このように、本発明では、各区間別に養分供給速度を媒介化して遺伝アルゴリズムに変数として提供することで、生物反応器の最適の運転条件を導出する。
【0118】
図6は、本発明により生物反応器を運転した時の工程指標の変化を示したグラフである。
【0119】
図6を参照すると、生物反応器モデルにより予測された最適の養分供給速度、すなわち、最適の運転方式は、既存の運転方式に比べて最初の段階に供給速度が高く、全体的に少ない量の養分を用いる方式である。
当該方式で生物反応器を運転した時の各工程指標の変化を検討すると、細胞濃度Xは、初めに早く増加して運転後半部には少ない供給により減少する形である。
これにより、養分の濃度Sは、初めにだけ既存の運転より高く形成されて細胞濃度の増加を助け、その後の運転では既存の運転と大きな差を示さない。
それにより、生産物濃度Pが既存の運転より増加することを確認することができる。
【0120】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したことに過ぎないものであって、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から外れない範囲で多様な修正及び変形が可能である。
したがって、本発明に開示された実施形態は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく説明するためのものであり、このような実施形態により本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。
本発明の保護範囲は、特許請求の範囲により解釈されるべきであり、それと同等な範囲内にある全ての技術思想は、本発明の権利範囲に含まれるものとして解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6