(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】試験キット及びアッセイ
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20231006BHJP
G01N 33/536 20060101ALI20231006BHJP
C12N 15/115 20100101ALI20231006BHJP
C12Q 1/6897 20180101ALI20231006BHJP
【FI】
G01N33/53 G ZNA
G01N33/53 A
G01N33/536 D
C12N15/115 Z
C12Q1/6897
(21)【出願番号】P 2020524617
(86)(22)【出願日】2018-11-02
(86)【国際出願番号】 NZ2018050154
(87)【国際公開番号】W WO2019088852
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-11-02
(32)【優先日】2017-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
(73)【特許権者】
【識別番号】521330482
【氏名又は名称】インサイチュジェン・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】INSITUGEN LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ヘザー,アリソン・ケイ
(72)【発明者】
【氏名】サワビー,スティーブン・ジョン
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-528137(JP,A)
【文献】特表2001-522583(JP,A)
【文献】特許第4406183(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2009/0035754(US,A1)
【文献】COOPER, E.R. et al.,In Vitro Androgen Bioassays as a Detection Method for Designer Androgens,SENSORS,2013年02月06日,vol. 13,p.2148-2163
【文献】OUELLET, J.,RNA Fluorescence with Light-Up Aptamers,FRONTIERS IN CHEMISTRY,2016年06月28日,Vol.4/Article 29,p.1-12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
C12Q 1/00- 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための
無細胞試験キットであって、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、
核酸応答エレメントに結合することができ、該試験キットは、
(i)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成する
ステロイドホルモン受容体;
(ii)該受容体-リガンド複合体に結合する核酸応答エレメント;及び
(iii)該受容体-リガンド複合体と該核酸応答エレメントとの間の結合を検出するための検出手段
を含
み、核酸応答エレメントに対する該ステロイドホルモン受容体の相対量がx:1であり、ここでのxはステロイドホルモン受容体の量であり、[0.2≦x≦20]として定義される、
該試験キット。
【請求項2】
ステロイドホルモン受容体が核酸応答エレメントと結合するのを妨げるステロイドホルモン受容体補因子をさらに含む、請求項1記載の試験キット。
【請求項3】
該ステロイドホルモン受容体補因子が、熱ショックタンパク質70、熱ショックタンパク質40、熱ショックタンパク質90、p23、熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)、48kD Hipタンパク質、p60、及びFKBP52からなる群より選択される、請求項
2記載の試験キット。
【請求項4】
該核酸応答エレメントが、レポーターエレメントに作動可能に連結され、該核酸応答エレメントに対する該受容体-リガンド複合体の結合が、レポーターエレメントの転写又は翻訳を調べることによって決定される、請求項
1~3のいずれか一項記載の試験キット。
【請求項5】
リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための
無細胞試験キットであって、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、
核酸応答エレメントに結合することができ、該試験キットは、
(i)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成する
ステロイドホルモン受容体;
(ii)該受容体-リガンド複合体に結合する核酸応答エレメント;
(iii)該核酸応答エレメントに作動可能に連結されたレポーター構築物;及び
(iv)0、1、2、3、又は全4つのステロイドホルモン受容体補因子、転写機構、ステロイド代謝機構、及び無細胞抽出物
を含み、
ここで、核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量がx:1であり、ここでのxはステロイドホルモン受容体の量であり、[0.2≦x≦20]として定義され、
ここで、該レポーター構築物は、該受容体-リガンド複合体が該核酸応答エレメントに結合した場合に活性化され、
及び
ここで、該試料中の該リガンドの存在は、該試料を該試験キットと配合し、該レポーター構築物の転写が検出された時に決定される、該試験キット。
【請求項6】
該ステロイドホルモン受容体補因子が、熱ショックタンパク質70、熱ショックタンパク質40、熱ショックタンパク質90、p23、熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)、48kD Hipタンパク質、p60、及びFKBP52からなる群より選択される、請求項
5記載の試験キット。
【請求項7】
該レポーター構築物が、プロモーター配列とレポーター構築物を含み、該プロモーター配列は該核酸応答エレメントが該受容体-リガンド複合体と結合した時に活性化される、
請求項5又は請求項6記載の試験キット。
【請求項8】
該レポーター構築物が、フルオロフォアに結合しその蛍光を増強することのできるRNAアプタマーをコードしている核酸配列を含む、請求項
5~7のいずれか一項記載の試験キット。
【請求項9】
RNAアプタマーが、ホウレンソウ(Spinach)、ホウレンソウ2、iホウレンソウ、ブロッコリー、及びマンゴーアプタマー、又はマンゴーI、マンゴーII、マンゴーIII、マンゴーIVの1つから選択される、請求項
8記載の試験キット。
【請求項10】
フルオロフォアが、3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシベンジリデンイミダゾリノン(DFHBI)及びチアゾールオレンジ1(TO-1)から選択される、請求項
8記載の試験キット。
【請求項11】
該ステロイドホルモン受容体が、アンドロゲン受容体、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、鉱質コルチコイド受容体、及び糖質コルチコイド受容体からなる群より選択される、請求項
1~10のいずれか一項記載の試験キット。
【請求項12】
該リガンドが、運動能力向上薬物及びステロイドのいずれか1つ又は両者である、あるいは該リガンドは未知の化学構造のものである、請求項
1~11のいずれか一項記載の試験キット。
【請求項13】
該試験試料が、ウマ、イヌ、ラクダ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、トリ、サル、マウス、ウサギ、シカ、魚類、サケ、及びヒトからなる群より選択される動物からの生物学的試料である、請求項
1~12のいずれか一項記載の試験キット。
【請求項14】
試験試料中のリガンドを検出するためのアッセイ法であって、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、
核酸応答エレメントに結合することができ、該アッセイ法は、
(i)
a.該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成する
ステロイドホルモン受容体;
b.該受容体-リガンド複合体に結合する核酸応答エレメント;
c.該受容体-リガンド複合体と該核酸
応答エレメントとの間の結合を検出するための検出手段;及び
d.0、1、2、3、4又は全5つのステロイドホルモン受容体補因子、転写機構、翻訳機構、ステロイド代謝機構、及び無細胞抽出物
を含むアッセイ試薬を準備する工程;及び
(ii)該試験試料を該アッセイ試薬と配合する工程
を含み、
ここで、核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量がx:1であり、ここでのxはステロイドホルモン受容体の量であり、[0.2≦x≦20]として定義され、
ここで、該試料中の該リガンドの存在は、該試料を該アッセイ試薬と配合し、該受容体-リガンド複合体と該核酸応答エレメントとの間の結合が検出された時に決定される、該アッセイ法。
【請求項15】
該試験試料が動物からの生物学的試料であり、該試料中の該リガンドの存在は、動物におけるドーピングの指標である、請求項
14記載のアッセイ法。
【請求項16】
動物におけるスポーツドーピングを判定するための製品であって、請求項
1~13のいずれか一項記載の該試験キットを、動物に由来する試料中のリガンドの存在を検出するための説明書と一緒に含み、ここで、該試料中の該リガンドの存在が動物におけるドーピングの指標である、該製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は一般的に、試験試料中のリガンドの検出のためのアッセイ、方法、及び試験キットに関する。特に、本発明は、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするためのアッセイ、方法、及び試験キットを提供し、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起する該リガンドの能力によって特徴付けられる。
【0002】
発明の背景
ステロイドホルモン受容体タンパク質に結合するリガンドの検出は、例えば、ヒトの健康に影響を及ぼす可能性のある有機汚染物質についての環境検査、(例えば)内分泌性及び非内分泌性の癌の検出及び/又はモニタリングをはじめとする、ヒト疾患についての診断検査及び予後予測検査、並びに、(例えば)ヒトアスリート及び競馬産業における公正な競争の維持を担うプロスポーツ団体を含む薬物検査をはじめとする、多くの領域において重要である。
【0003】
ステロイドホルモン受容体タンパク質に結合するリガンドの存在を検出するための一般的な方法は、試料中のリガンドを直接測定することである。しかしながら、試料は、複雑な分子の混合物であることが多く、典型的には分析のために複雑な調製プロセスを必要とする。試料中のリガンドの存在の検出は典型的には、複雑な混合物に由来する分子種を相対的に純粋な組成の画分へと分離する液体又はガスクロマトグラフィーなどのプロセスと、その後、質量分析法などの構造に対する感度の高い方法を用いて各画分を分析することに依拠する。自動精製システム、ガス又は液体クロマトグラム、及び質量分析計は、信頼できる結果を出すために、熟練技術者によって連続的に校正され操作されなければならない、費用がかかりかつ技術的に複雑な実験装置である。別の欠点は、この方法論は、リガンドの生物学的活性に関する情報を提供せず、それ故、生物学的に活性なリガンド分子と生物学的に不活性なリガンド分子とを区別することができないことである。さらに、この構造に基づいた方法論は、アゴニストとアンタゴニストを区別することができない。さらに、リガンド(群)及び該リガンド(群)の生物学的代謝に起因するその関連代謝物(群)の分子構造の事前知識が、試料中のリガンド(群)の存在の確実な同定を成し遂げるために必要とされることが多い。
【0004】
分光法に基づいた検出法の他に、ステロイドホルモン受容体タンパク質に結合するリガンド(群)の存在の検出のためのいくつかの細胞ベースアッセイが開発されている。しかしながら、生細胞培養液を維持するために特殊な機器及び専門知識も必要とするこれらの細胞ベースアッセイにはかなりの制約を伴う。これは、細胞ベース検査の費用を上昇させ、これらの方法の広範な適用を減少させる。
【0005】
さらに、生細胞の高いレベルの分子的複雑性は検査を困難にし、感度及び再現性を低下させる。
【0006】
分析用の試料において、ステロイドホルモン受容体に結合しかつ遺伝子発現を変調するリガンド分子の存在を検出することが有益であることが多い。例えば、アンドロゲン受容体に結合しゲノム応答を惹起するリガンドは、蛋白同化による成長作用に関連する。動物及びヒトにおける蛋白同化による成長は、(例えば)筋肉量、骨のリモデリング、血液産生量増加、食欲及び筋力の増加、体調、忍耐力、並びに運動からの回復に関する利点を提供することができるが、疾患の兆候でもあり得る。アンドロゲン受容体に結合し蛋白同化作用を引き起こすリガンドの存在の検出は、競走馬及びイヌなどの動物、並びにヒト及びヒトアスリートの関与する禁止薬物の使用の検出;食品又は食品サプリメントにおける禁止添加物の検出;例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、及び魚をはじめとする、動物において餌に使用される成長を刺激するために使用される禁止リガンド(コメントあり?)の存在の検出;薬物のスクリーニング;健康状態の評価をはじめとする理由による生物学的試料のモニタリングにおいて特定の産業用途を有する。
【0007】
ステロイドホルモン受容体は、分子リガンドに特異的に結合する結合ドメインを含有し、これによって、ステロイドホルモン受容体-リガンド複合体が、ゲノム応答をはじめとする様々な細胞応答を開始することを引き起こし、ここで、遺伝子の発現が、ステロイドホルモン受容体によって直接変調される。
【0008】
本発明は特に、細胞内にある場合には、ステロイドホルモン受容体へのリガンドの結合を通じて、遺伝子発現を直接変調する該リガンドの能力によって特徴付けられる、該リガンドの存在及び/又は強度の検出に関する。
【0009】
発明の概要
本明細書において記載され特許請求されている本発明は、この本発明の概要に示されているか又は記載されているか又は参照されている特質及び例を含むがこれらに限定されない、多くの特質及び例を有する。それは、包括的であることを意図するものではなく、本明細書において記載及び特許請求された本発明は、この本発明の概要に認められる特色又は例に限定されず、この本発明の概要は、例示のためだけに含まれ、限定するために含まれるのではない。
【0010】
本発明のある態様では、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができる(他の同様の箇所は修正しておりません)リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットであって、
(i)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するステロイドホルモン受容体;及び
(ii)該受容体-リガンド複合体に結合する核酸応答エレメント;及び
(iii)該受容体-リガンド複合体と該核酸応答エレメントとの間の結合を検出するための検出手段
を含み、
該試験試料中のリガンドの存在が、該試料を該試験キットと配合し、該受容体-リガンド複合体と該核酸応答エレメントとの間の結合が検出された時に決定される、試験キットが提供される(他の同様の箇所は修正しておりません)。
【0011】
本発明のこの態様による一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.2≦x≦20]として定義される。関連した一例では、該試験キットにおける核酸応答配列に対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.3≦x≦7]として定義される。
【0012】
本発明のこの態様による別の例では、該試験キットはさらに、本明細書に記載のような少なくとも1つのステロイドホルモン受容体補因子、ステロイド代謝機構、転写機構及び/若しくは翻訳機構、並びに/又は無細胞抽出物を含む。
【0013】
関連した一例では、ステロイドホルモン受容体補因子は、熱ショックタンパク質70、熱ショックタンパク質40、熱ショックタンパク質90、p23、熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)、48kD Hipタンパク質、p60、及びFKBP52を含むがこれらに限定されない、1つ以上の熱ショックタンパク質(HSP)から選択される。
【0014】
本発明のこの態様によるさらなる関連した一例では、該試験キットはさらにHSP90を含む。
【0015】
本発明のこの態様による別の例では、該核酸応答エレメントは、レポーター構築物に作動可能に連結され、該核酸応答配列に対する該受容体-リガンド複合体の結合は、レポーター構築物の転写又は翻訳を測定することによって検出される。
【0016】
別の例では、該レポーター構築物は、プロモーター配列及びレポーター遺伝子からなる。
【0017】
さらなる一例では、該プロモーター配列からの転写は、該受容体-リガンド複合体が該核酸応答エレメントに結合した場合に活性化される。
【0018】
さらなる一例では、該レポーター構築物は、フルオロフォアに結合することのできるRNAアプタマーをコードしている配列を含む。関連した一例では、該核酸応答配列に対する該受容体-リガンド複合体の結合は、該RNAアプタマーの転写によって検出され、該RNAアプタマーに対して該フルオロフォアが結合すると、該フルオロフォアの蛍光が検出される。
【0019】
またさらなる一例では、該レポーター構築物は、任意のタンパク質又はポリペプチドをコードしている遺伝子、タンパク質又はポリペプチドをコードしていない遺伝子、及びタンパク質又はポリペプチドをコードしているか又はコードしていないかのいずれかである合成核酸配列からなる群より選択される。関連した一例では、該レポーター構築物は、緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、及び黄色蛍光タンパク質を含むがこれらに限定されない蛍光タンパク質をコードしている遺伝子又は核酸配列、LacZを含むがこれらに限定されないβ-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ(GUS)、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼをコードしている遺伝子、アミノ酸生合成遺伝子、例えば酵母LEU2、HIS3、又はLYS2遺伝子、核酸生合成遺伝子、例えばURA3又はADE2遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子、あるいはその特異的な抗体が利用可能である任意の表面抗原遺伝子から選択される。
【0020】
別の例では、該試験キットはさらに、該レポーター構築物の転写及び/又は翻訳を容易にするための翻訳機構及び/又は転写機構を含む。
【0021】
さらなる一例では、該核酸応答エレメントに対する該受容体-リガンド複合体の結合は、光学的方法、分光法、可視分光法、ラマン分光法、紫外分光法、表面プラズモン共鳴、電気化学的方法、インピーダンス、抵抗、静電容量、質量の変化、力学的共振の変化による機械的感知、電気泳動、ゲル電気泳動、ゲル遅延度、画像撮影法、蛍光、蛍光共鳴エネルギー移動、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、定量PCR(リアルタイムPCR、qPCRとしても知られる)、逆転写PCR(RT-PCR)、及び逆転写qPCR(RTqPCR)を含むがこれらに限定されない方法を使用して検出される。
【0022】
本発明の別の態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該試験キットは、
(i)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するステロイドホルモン受容体;及び
(ii)該受容体-リガンド複合体に結合する核酸応答エレメント;及び
(iii)該受容体-リガンド複合体と該核酸応答エレメントとの間の結合を検出するための検出手段
を含み、
ここで、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.2≦x≦20]として定義され、該試験試料中のリガンドの存在は、該試料を該試験キットと配合し、該核酸応答エレメントに対する該受容体-リガンド複合体の結合が検出された時に決定される。
【0023】
本発明のこの態様による一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.3≦x≦7]として定義される。
【0024】
本発明のさらに別の態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該試験キットは、
(i)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するステロイドホルモン受容体;及び
(ii)該受容体-リガンド複合体に結合する核酸応答エレメント;及び
(iii)該受容体-リガンド複合体と該核酸応答配列との間の結合を検出するための検出手段;及び
(iv)熱ショックタンパク質90、熱ショックタンパク質70、熱ショックタンパク質40、p23、熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)、48kD Hipタンパク質、p60、及びFKBP52から選択される少なくとも1つのステロイドホルモン受容体補因子
を含み、
ここで、該試験試料中のリガンドの存在は、該試料を該試験キットと配合し、該核酸応答エレメントに対する該受容体-リガンド複合体の結合が検出された時に決定される。
【0025】
本発明のさらに別の態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該試験キットは、
(i)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するステロイドホルモン受容体;及び
(ii)該受容体-リガンド複合体に結合する核酸応答エレメント;及び
(iii)該受容体-リガンド複合体と該核酸応答エレメントとの間の結合を検出するための検出手段;及び
(iv)熱ショックタンパク質90、熱ショックタンパク質70、熱ショックタンパク質40、p23、熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)、48kD Hipタンパク質、p60、及びFKBP52から選択される少なくとも1つのステロイドホルモン受容体補因子
を含み、
ここで、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.2≦x≦20]として定義され、該試験試料中のリガンドの存在は、該試料を該試験キットと配合し、該核酸応答エレメントに対する該受容体-リガンド複合体の結合が検出された時に決定される。
【0026】
本発明のこの態様による一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.3≦x≦7]として定義される。
【0027】
本発明の別の態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該試験キットは、
(i)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するステロイドホルモン受容体;及び
(ii)該受容体-リガンド複合体に結合する核酸応答エレメント;
(iii)該核酸応答エレメントに作動可能に連結されたレポーター構築物
を含み、
ここで、該レポーター構築物は、該受容体-リガンド複合体が該核酸応答エレメントに結合した場合に活性化され、
ここで、該試験試料中のリガンドの存在は、該試料を該試験キットと配合し、該レポーター構築物の転写が検出された場合に決定される。
【0028】
本発明のこの態様による一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.2≦x≦20]として定義される。関連した一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.3≦x≦7]として定義される。
【0029】
本発明のこの態様による別の例では、該試験キットはさらに、熱ショックタンパク質90、熱ショックタンパク質70、熱ショックタンパク質40、p23、熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)、48kD Hipタンパク質、p60、及びFKBP52を含むがこれらに限定されないステロイドホルモン受容体補因子を含む。
【0030】
本発明のこの態様によるさらに別の例では、該試験キットはさらに、組み合わせて又は単独で、本明細書に記載のようなステロイド代謝機構、転写機構及び/若しくは翻訳機構並びに/又は無細胞抽出物を含む。
【0031】
本発明のこの態様によるさらなる一例では、該レポーター構築物は、フルオロフォアに結合するRNAアプタマーを含む。
【0032】
本発明のこの態様による別の例では、該RNAアプタマーは、ホウレンソウ(Spinach)、iホウレンソウ、及びブロッコリーから選択され、該RNAアプタマーに結合し、これにより蛍光シグナルを発生するフルオロフォアは、3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシベンジリデンイミダゾリノン(DFHBI)である。
【0033】
本発明のこの態様による別の例では、該RNAアプタマーはマンゴーであり、該RNAアプタマーに結合し、これにより蛍光シグナルを発生するフルオロフォアは、チアゾールオレンジ(TO)誘導体である。
【0034】
本発明のこの態様によるまたさらなる一例では、該核酸応答エレメント及び該レポーター構築物は、同じ核酸配列上に含まれる。関連した一例では、該核酸応答エレメントと該レポーター構築物とを含む核酸配列は、配列番号19によって定義される。
【0035】
本発明のこの態様によるさらに別の例では、該試験キットはさらに、該レポーター構築物の転写を検出するための検出手段を含む。
【0036】
本発明のさらなる態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該試験キットは、
(i)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するステロイドホルモン受容体;及び
(ii)該受容体-リガンド複合体に結合する核酸応答エレメント;及び
(iii)該核酸応答エレメントに作動可能に連結されたレポーター構築物;及び
(iv)転写機構
を含み、
ここで、該レポーター構築物は、該受容体-リガンド複合体が該核酸応答エレメントに結合した場合に活性化され、
ここで、該試験試料中のリガンドの存在は、該試料を該試験キットと配合し、該レポーター構築物の転写が検出された場合に決定される。
【0037】
本発明のこの態様による一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.2≦x≦20]として定義される。関連した一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.3≦x≦7]として定義される。
【0038】
本発明のこれらの態様及び他の態様による一例では、該ステロイドホルモン受容体補因子は、熱ショックタンパク質70、熱ショックタンパク質40、熱ショックタンパク質90、p23、熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)、48kD Hipタンパク質、p60、及びFKBP52を含むがこれらに限定されない1つ以上の熱ショックタンパク質(HSP)から選択される。
【0039】
本発明のこれらの態様及び他の態様によるさらなる関連した一例では、該試験キットはさらにHSP90を含む。
【0040】
本発明のこれらの態様及び他の態様による別の例では、レポーター構築物の転写は、デオキシリボース核酸(DNA)、メッセンジャーリボース核酸(mRNA)、又は相補的デオキシリボース核酸(cDNA)のレベルを検出する工程を含む。
【0041】
本発明のこれらの態様及び他の態様によるさらなる一例では、該核酸応答エレメント及び該レポーター構築物は同じ核酸分子上に含まれる。
【0042】
本発明のさらなる態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該試験キットは、
(i)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するステロイドホルモン受容体;及び
(ii)該受容体-リガンド複合体に結合する核酸応答エレメント;及び
(iii)該核酸応答エレメントに作動可能に連結されたレポーター構築物
を含み、
ここで、該レポーター構築物は、該受容体-リガンド複合体が該核酸応答エレメントに結合した場合に活性化され、
ここで、該試験試料中のリガンドの存在は、該試料を該試験キットと配合し、該レポーター構築物の翻訳が検出された場合に決定される。
【0043】
本発明のこの態様による一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.2≦x≦20]として定義される。関連した一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.3≦x≦7]として定義される。
【0044】
本発明のこの態様による別の例では、該試験キットはさらに、熱ショックタンパク質90、熱ショックタンパク質70、熱ショックタンパク質40、p23、熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)、48kD Hipタンパク質、p60、及びFKBP52を含むがこれらに限定されないステロイドホルモン受容体補因子を含む。
【0045】
本発明のこの態様によるさらに別の例では、該試験キットはさらに、組み合わせて又は単独で、本明細書に記載のようなステロイド代謝機構、転写機構及び/若しくは翻訳機構並びに/又は無細胞抽出物を含む。
【0046】
本発明のこの態様によるさらに別の例では、該試験キットはさらに、該レポーター構築物の翻訳を検出するための検出手段を含む。
【0047】
本発明のまたさらなる態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該試験キットは、
(i)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するステロイドホルモン受容体;及び
(ii)該受容体-リガンド複合体に結合する核酸応答配列;及び
(iii)該核酸配列に作動可能に連結されたレポーター構築物;及び
(iv)転写機構及び翻訳機構
を含み、
ここで、該レポーター構築物は、該受容体-リガンド複合体が該核酸応答エレメントに結合した場合に活性化され、
ここで、該試験試料中のリガンドの存在は、該試料を該試験キットと配合し、該レポーター構築物の翻訳が検出された場合に決定される。
【0048】
本発明のこの態様による一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.2≦x≦20]として定義される。関連した一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.3≦x≦7]として定義される。
【0049】
本発明のこれらの態様及び他の態様による一例では、該ステロイドホルモン受容体補因子は、熱ショックタンパク質70、熱ショックタンパク質40、熱ショックタンパク質90、p23、熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)、48kD Hipタンパク質、p60、及びFKBP52を含むがこれらに限定されない1つ以上の熱ショックタンパク質(HSP)から選択される。
【0050】
本発明のこれらの態様及び他の態様によるさらに関連した一例では、該試験キットはさらにHSP90を含む。
【0051】
本発明のこれらの態様及び他の態様による別の例では、該レポーターエレメントの翻訳は、翻訳されたレポータータンパク質の存在を検出する工程を含む。
【0052】
本発明のこれらの態様及び他の態様によるさらなる一例では、該核酸配列及び該レポーター配列は同じ核酸分子上に含まれる。
【0053】
本発明のさらなる態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするためのアッセイ法が提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該アッセイ法は、
(i)(a)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するステロイドホルモン受容体;及び
(b)該受容体-リガンド複合体に結合する核酸応答エレメント;及び
(c)該受容体-リガンド複合体と該核酸応答エレメントとの間の結合を検出するための検出手段
を含むアッセイ試薬を準備する工程;並びに
(ii)該試験試料を該アッセイ試薬と配合する工程
を含み、ここで、該試験試料中のリガンドの存在は、該試料を該試験キットと配合し、該受容体-リガンド複合体と該核酸応答エレメントとの間の結合が検出された場合に決定される。
【0054】
本明細書に記載のアッセイ法による一例では、該方法はさらに、試験結果を基準閾値と比較する工程を含み、ここでの基準閾値は、リガンドの非存在下において該核酸応答エレメントに対する該ステロイドホルモン受容体の結合によって引き起こされるシグナルのレベルを反映する。関連した一例では、該試験試料中のリガンドの存在は、該試験試料から得られたシグナルのレベルが、基準閾値から得られたシグナルのレベルよりも高い場合に確認される。
【0055】
本発明のこの態様による一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.2≦x≦20]として定義される。関連した一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.3≦x≦7]として定義される。
【0056】
本発明のこの態様による一例では、該アッセイ試薬はさらに、本明細書に記載のようなステロイドホルモン受容体補因子、ステロイド代謝機構、転写機構及び/若しくは翻訳機構並びに/又は無細胞抽出物を含む。
【0057】
本発明のこの態様によるさらなる一例では、該ステロイドホルモン受容体補因子は、熱ショックタンパク質70、熱ショックタンパク質40、熱ショックタンパク質90、p23、熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)、48kD Hipタンパク質、p60、及びFKBP52を含むがこれらに限定されない1つ以上の熱ショックタンパク質(HSP)から選択される。
【0058】
本発明のこの態様によるさらに関連した一例では、該熱ショックタンパク質はHSP90である。
【0059】
本明細書に記載の試験キット及び方法による一例では、該ステロイドホルモン受容体は、アンドロゲン受容体(AR);エストロゲン受容体(エストロゲン受容体-α(ER-α)及びエストロゲン受容体-β(ER-β)を含むがこれらに限定されない);プロゲステロン受容体(プロゲステロン受容体A(PRA)及びプロゲステロン受容体B(PRB)を含むがこれらに限定されない);鉱質コルチコイド受容体(MR);及び糖質コルチコイド受容体(GR)からなる群より選択される。
【0060】
本明細書に記載の試験キット及び方法による別の例では、該リガンドは運動能力向上デザイナー薬物及び/又はステロイドである。
【0061】
本明細書に記載の試験キット及び方法による関連した一例では、該リガンドは、未知の化学構造のものである。
【0062】
本明細書に記載の試験キット及び方法によるさらなる一例では、該リガンドは、以前は未知であった化学構造のものである。
【0063】
本明細書に記載の試験キット及び方法によるさらに別の例では、生物学的試料は、ウマ、イヌ、ラクダ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、トリ、サル、ネズミ、ウサギ、シカ、魚類、サケ、霊長類、サル、及びヒトからなる群より選択される動物に由来する。
【0064】
本明細書に記載の試験キット及び方法によるさらに別の例では、該試験試料は、尿、唾液、糞便、髪、組織(血液(血漿及び血清)、筋肉、腫瘍、精液などを含むがこれらに限定されない)からなる群より選択される生物学的材料に由来する。
【0065】
本明細書に記載の試験キット及び方法によるさらに別の例では、該試験試料は、野菜、肉類、飲料(スポーツドリンク及びミルクを含むがこれらに限定されない)、サプリメント(食品サプリメント及びスポーツサプリメント、栄養サプリメントを含むがこれらに限定されない)、ハーブエキスなどからなる群より選択される食品に由来する。
【0066】
本明細書に記載の試験キット及び方法によるさらに別の例では、該試験試料は、薬物、トニック剤、シロップ剤、丸剤、ロゼンジ剤、クリーム剤、スプレー剤、及びゲル剤からなる群より選択される医薬品に由来する。
【0067】
本明細書に記載の試験キット及び方法によるさらに別の例では、該試料は、液体、水、土壌、織物(プラスチックを含むがこれらに限定されない)、及び鉱物からなる群より選択される環境に由来する。
【0068】
本発明の別の態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該リガンドは、アンドロゲン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該試験キットは、
(i)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するアンドロゲン受容体;及び
(ii)該受容体-リガンド複合体に結合する核酸応答エレメント;及び
(iii)該受容体-リガンド複合体と該核酸応答エレメントとの間の結合を検出するための検出手段
を含み、
ここで、該試験試料中のリガンドの存在は、該試料を該試験キットと配合し、該受容体-リガンド複合体と該核酸応答エレメントとの間の結合が検出された時に決定される。
【0069】
本発明のこの態様による一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.2≦x≦20]として定義される。関連した一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.3≦x≦7]として定義される。
【0070】
本発明のこの態様による別の例では、該試験キットはさらに、熱ショックタンパク質90、熱ショックタンパク質70、熱ショックタンパク質40、p23、熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)、48kD Hipタンパク質、p60、及びFKBP52を含むがこれらに限定されないステロイドホルモン受容体補因子を含む。
【0071】
本発明のこの態様によるさらに関連した一例では、該熱ショックタンパク質はHSP90である。
【0072】
本発明のこの態様によるさらに別の例では、該試験キットはさらに、組み合わせて又は単独で、本明細書に記載のようなステロイド代謝機構、転写機構及び/若しくは翻訳機構並びに/又は無細胞抽出物を含む。
【0073】
本発明のこの態様による一例では、該核酸応答エレメントは、配列番号1又は配列番号2に示される配列を含む。
【0074】
本発明のこの態様による別の例では、該リガンドは選択的アンドロゲン受容体修飾薬(SARM)化合物である。
【0075】
本発明の別の態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該リガンドは、エストロゲン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該試験キットは、
(i)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するエストロゲン受容体;及び
(ii)該受容体-リガンド複合体に結合する核酸応答エレメント;及び
(iii)該受容体-リガンド複合体と該核酸配列との間の結合を検出するための検出手段
を含み、
ここで、該試験試料中のリガンドの存在は、該試料を該試験キットと配合し、該受容体-リガンド複合体と該核酸応答エレメントとの間の結合が検出された時に決定される。
【0076】
本発明のこの態様による一例では、該核酸応答エレメントは配列番号3~6のいずれか1つに示される配列を含む。
【0077】
本発明のこの態様による一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.2≦x≦20]として定義される。関連した一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.3≦x≦7]として定義される。
【0078】
本発明のこの態様による別の例では、該試験キットはさらに、熱ショックタンパク質90、熱ショックタンパク質70、熱ショックタンパク質40、p23、熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)、48kD Hipタンパク質、p60、及びFKBP52を含むがこれらに限定されないステロイドホルモン受容体補因子を含む。
【0079】
本発明のこの態様によるさらなる関連した一例では、該熱ショックタンパク質はHSP90である。
【0080】
本発明のこの態様によるさらに別の例では、該試験キットはさらに、組み合わせて又は単独で、本明細書に記載のようなステロイド代謝機構、転写機構及び/若しくは翻訳機構並びに/又は無細胞抽出物を含む。
【0081】
本発明のこの態様による別の例では、該リガンドは、選択的エストロゲン受容体修飾薬(SERM)化合物である。
【0082】
本発明のさらに別の態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該リガンドは、プロゲステロン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該試験キットは、
(i)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するプロゲステロン受容体;及び
(ii)該受容体-リガンド複合体に結合する核酸応答エレメント;及び
(iii)該受容体-リガンド複合体と該核酸配列との間の結合を検出するための検出手段
を含み、
ここで、該試験試料中のリガンドの存在は、該試料を該試験キットと配合し、該受容体-リガンド複合体と該核酸応答エレメントとの間の結合が検出された時に決定される。
【0083】
本発明のこの態様による一例では、該核酸応答エレメントは、配列番号7~10のいずれか1つに示される配列を含む。
【0084】
本発明のこの態様による一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.2≦x≦20]として定義される。関連した一例において、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.3≦x≦7]として定義される。
【0085】
本発明のこの態様による別の例では、該試験キットはさらに、熱ショックタンパク質90、熱ショックタンパク質70、熱ショックタンパク質40、p23、熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)、48kD Hipタンパク質、p60、及びFKBP52を含むがこれらに限定されないステロイドホルモン受容体補因子を含む。
【0086】
本発明のこの態様によるさらに関連した一例では、該熱ショックタンパク質はHSP90である。
【0087】
本発明のこの態様によるさらに別の例では、該試験キットはさらに、組み合わせて又は単独で、本明細書に記載のようなステロイド代謝機構、転写機構及び/若しくは翻訳機構並びに/又は無細胞抽出物を含む。
【0088】
本発明のさらなる態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該リガンドは、鉱質コルチコイド受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該試験キットは、
(i)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成する鉱質コルチコイド受容体;及び
(ii)該受容体-リガンド複合体に結合する核酸配列;及び
(iii)該受容体-リガンド複合体と該核酸配列との間の結合を検出するための検出手段
を含み、
ここで、該試料中のリガンドの存在は、該試料を該試験キットと配合し、該受容体-リガンド複合体と該核酸配列との間の結合が検出された時に決定される。
【0089】
本発明のこの態様による一例では、該核酸応答エレメントは、配列番号11又は配列番号12に示される配列を含む。
【0090】
本発明のこの態様による一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.2≦x≦20]として定義される。関連した一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.3≦x≦7]として定義される。
【0091】
本発明のこの態様による別の例では、該試験キットはさらに、熱ショックタンパク質90、熱ショックタンパク質70、熱ショックタンパク質40、p23、熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)、48kD Hipタンパク質、p60、及びFKBP52を含むがこれらに限定されないステロイドホルモン受容体補因子を含む。
【0092】
本発明のこの態様によるさらに関連した一例では、該熱ショックタンパク質はHSP90である。
【0093】
本発明のこの態様によるさらに別の例では、該試験キットはさらに、組み合わせて又は単独で、本明細書に記載のようなステロイド代謝機構、転写機構及び/若しくは翻訳機構並びに/又は無細胞抽出物を含む。
【0094】
本発明のさらに別の態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該リガンドは、糖質コルチコイド受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該試験キットは、
(i)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成する糖質コルチコイド受容体;及び
(ii)該受容体-リガンド複合体に結合する核酸応答エレメント;及び
(iii)該受容体-リガンド複合体と該核酸配列との間の結合を検出するための検出手段
を含み、
ここで、該試験試料中のリガンドの存在は、該試料を該試験キットと配合し、該受容体-リガンド複合体と該核酸配列との間の結合が検出された時に決定される。
【0095】
本発明のこの態様による一例では、該核酸応答エレメントは、配列番号13又は配列番号14に示される配列を含む。
【0096】
本発明のこの態様による一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.2≦x≦20]として定義される。関連した一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.3≦x≦7]として定義される。
【0097】
本発明のこの態様による別の例では、該試験キットはさらに、熱ショックタンパク質90、熱ショックタンパク質70、熱ショックタンパク質40、p23、熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)、48kD Hipタンパク質、p60、及びFKBP52を含むがこれらに限定されないステロイドホルモン受容体補因子を含む。
【0098】
本発明のこの態様によるさらに関連した一例では、該熱ショックタンパク質はHSP90である。
【0099】
本発明のこの態様によるさらに別の例では、該試験キットはさらに、組み合わせて又は単独で、本明細書に記載のようなステロイド代謝機構、転写機構及び/若しくは翻訳機構並びに/又は無細胞抽出物を含む。
【0100】
本発明のさらに別の態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするためのアッセイ法が提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該アッセイ法は、
(i)(a)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するステロイドホルモン受容体;及び
(b)該受容体-リガンドに結合する核酸応答エレメント;及び
(c)該受容体-リガンド複合体と該核酸応答エレメントとの間の結合を検出するための検出手段
を含むアッセイ試薬を準備する工程;並びに
(ii)生物学的試料をアッセイ試薬と配合する工程
を含み、
ここで、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.2≦x≦20]として定義され、ここで、該試料中のリガンドの存在は、該試料を該試験キットと配合し、該受容体-リガンド複合体と該核酸応答エレメントとの間の結合が検出された場合に決定される。
【0101】
本発明のこの態様による一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.3≦x≦7]として定義される。
【0102】
本発明のこの態様による一例では、該試験キットはさらに、本明細書に記載のようなステロイドホルモン受容体補因子、ステロイド代謝機構、転写機構及び/若しくは翻訳機構並びに/又は無細胞抽出物を含む。
【0103】
本発明のこの態様によるさらなる一例では、該ステロイドホルモン受容体補因子は、熱ショックタンパク質70、熱ショックタンパク質40、熱ショックタンパク質90、p23、熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)、48kD Hipタンパク質、p60、及びFKBP52を含むがこれらに限定されない、1つ以上の熱ショックタンパク質(HSP)から選択される。
【0104】
本発明のこの態様によるさらに関連した一例では、該熱ショックタンパク質はHSP90である。
【0105】
本発明のさらに別の態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするためのアッセイ法が提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該アッセイ法は、
(i)(a)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するステロイドホルモン受容体;及び
(b)該受容体-リガンド複合体に結合する核酸応答エレメント;及び
(c)熱ショックタンパク質90を含むがこれらに限定されない熱ショックタンパク質;及び
(d)該受容体-リガンド複合体と該核酸応答エレメントとの間の結合を検出するための検出手段
を含むアッセイ試薬を準備する工程;並びに
(ii)該生物学的試料を該アッセイ試薬と配合する工程
を含み、
ここで、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.2≦x≦20]として定義され、ここで、該試料中のリガンドの存在は、該試料を該試験キットと配合し、該受容体-リガンド複合体と該核酸応答エレメントとの間の結合が検出された場合に決定される。
【0106】
本発明のこの態様による一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.3≦x≦7]として定義される。
【0107】
本発明のこの態様による一例では、該試験キットはさらに、本明細書に記載のようなステロイドホルモン受容体補因子、ステロイド代謝機構、転写機構及び/若しくは翻訳機構並びに/又は無細胞抽出物を含む。
【0108】
本発明のこの態様によるさらなる一例では、該ステロイドホルモン受容体補因子は、熱ショックタンパク質70、熱ショックタンパク質40、熱ショックタンパク質90、p23、熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)、48kD Hipタンパク質、p60、及びFKBP52を含むがこれらに限定されない、1つ以上の熱ショックタンパク質(HSP)から選択される。
【0109】
本発明のこの態様によるさらに関連した一例では、該熱ショックタンパク質はHSP90である。
【0110】
本発明のさらに別の態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための製品が提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体を活性化し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該製品は、本明細書に記載のような試験キットを、該試料中のリガンドの存在をどのように検出するかの説明書と一緒に含む。
【0111】
本発明のまたさらなる態様では、アスリートにおけるドーピングを判定するための製品が提供され、該製品は、本明細書に記載のような試験キットを、アスリートに由来する試料中のリガンドの存在を検出するための説明書と一緒に含み、該試料中の該リガンドの存在は、アスリートにおけるドーピングの指標である。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【
図1】
図1は、アンドロゲン応答エレメント/エンハンサー配列(配列番号15)を示す。イタリック体ではない残基はエンハンサー配列を示し、イタリック体の残基はアンドロゲン応答エレメント配列の配列を示し、回文構造が太字で強調されている。
【
図2】
図2は、テストステロンにより活性化されたアンドロゲン受容体(AR)がGFPの転写及び翻訳を誘導することを示す。インビトロにおいて連動した転写反応と翻訳反応を、アンドロゲン応答エレメント/エンハンサー-最小プロモーター-GFP DNA鋳型を使用して構築した。反応は、0.5mLのエッペンドルフチューブ中で構築され、4nMのテストステロンの添加によって開始された。2時間のインキュベート後、GFPは、増加した蛍光として測定された。
*P<0.05(スチューデントt検定)、テストステロンリガンドの付与されたアンドロゲン受容体対アンドロゲン受容体を含まない対照。
【
図3】
図3は、GFPレベルが、対照に対して、テストステロンにより誘導された反応の方がより大きいことを示す。インビトロにおいて連動した転写反応と翻訳反応を、アンドロゲン応答エレメント/エンハンサー-最小プロモーター-GFP DNA鋳型を使用して構築した。反応(50μL)は、0.5mLのエッペンドルフチューブ中で構築され、4nMのテストステロンの添加によって開始された。5時間のインキュベート後、GFPは、増加した蛍光として測定された。
****P<0.0001(シダック多重比較検定を用いる一元配置分散分析)。
【
図4】
図4は、ろ紙ディスク上に保存された凍結乾燥型の反応成分が、テストステロンにより誘導されるGFPを生成することができることを示す。インビトロにおいて連動した転写反応と翻訳反応を、アンドロゲン応答エレメント/エンハンサー-最小プロモーター-GFP DNA鋳型を使用して構築し、ペーパーディスク上に直ちに分注し、瞬間凍結させ、凍結乾燥させ、-80℃で保存した。復元された反応は、0.5mLのエッペンドルフチューブ中で50μlのヌクレアーゼ非含有水を使用して構築され、4nMのテストステロンの添加によって開始された。6時間のインキュベート後、GFPは、増加した蛍光として測定された。
【
図5】
図5は、アンドロゲン受容体により調節されたインビトロにおける転写/翻訳アッセイのテストステロン特異性を示す。インビトロにおいて連動した転写反応と翻訳反応を、アンドロゲン応答エレメント/エンハンサー-最小プロモーター-GFP DNA鋳型を使用して構築した。反応(50μL)は、0.5mLのエッペンドルフチューブ中で構築され、1μMのテストステロン、1μMのエストラジオール、又は1μMのプロゲステロンによって活性化された。5時間のインキュベート後、GFPは、蛍光として測定された。
【
図6】
図6は、アンドロゲン受容体により調節されたインビトロにおける転写/翻訳アッセイの感度についての初期の評価を示す。インビトロにおいて連動した転写反応と翻訳反応を、アンドロゲン応答エレメント/エンハンサー-最小プロモーター-GFP DNA鋳型を使用して構築した。反応(50μL)は、0.5mLのエッペンドルフチューブ中で構築され、μM未満からnM未満の範囲におよぶテストステロンの添加によって開始された。5時間のインキュベート後、GFPは、蛍光として測定された。
【
図7】
図7は、MMTV-ルシフェラーゼ鋳型(プラスミドは、3000bpを超えるDNAバンドである)を用いたインビトロ転写反応によって生成されたRNA分子を含むRNAアガロースゲルを示す。ゲルは、約850bpにおいてRNAバンドが明らかであることを示す(遺伝子転写物の長さに基づいて予想されるサイズ)。様々なレーン(左から右へと)は、レーン1(左端)DNAサイズマーカー、レーン2(テストステロンにより刺激されたMMTVのインビトロ転写)、レーン3(エタノールで処理されたMMTVのインビトロ転写)、レーン4(カラム洗浄1番)、レーン5(カラム洗浄2番)を示す。
【
図8】
図8は、アンドロゲン応答エレメント/エンハンサーDNA鋳型(約850bpのDNAバンド)を用いたインビトロ転写反応によって生成されたRNA分子を含むRNAアガロースゲルを示す。ゲルは、約450bpにおいてRNAバンドが明らかであることを示す。様々なレーン(左から右へと)は、レーン1 G44、レーン2 G32、レーン3 4nM(1倍)テストステロン、レーン4 40nM(10倍)テストステロン、レーン5エタノールを示す。
【
図9】
図9は、Quant-IT RNA標準曲線を示す。RNA標準物質を、Quant-IT色素と共にインキュベートし、蛍光を測定した。この標準曲線を使用して、インビトロ転写反応におけるRNA分子濃度を計算した。
【
図10】
図10は、シアニン-5標識UTP(cy-5-UTP)及び関連する励起及び発光スペクトルを示す。
【
図11】
図11は、UTP及びCTPについて最適化された合成アンドロゲン応答エレメント/エンハンサーGFP DNA配列(配列番号18)を示す。
【
図12】
図12は、インビトロ転写反応が蛍光標識されたRNA分子を生成することを示す。アンドロゲン応答エレメント/エンハンサー合成DNA鋳型を用いてのインビトロ転写反応を、テストステロン(4nM)を用いて活性化した。反応は、対照(標識なし、及び自己蛍光についての対照)、CY-5により標識されたCTP及びCY-5により標識されたUTP、CY-5により標識されたCTP、又はCY-5により標識されたUTPであった。
*P<0.005(シダック多重比較検定を用いる一元配置分散分析)二重標識反応vs対照。
【
図13】
図13は、インビトロ転写反応が、cy-5により標識されたCTP、及びcy-5により標識されたUTP、及びアンドロゲン応答エレメント/エンハンサー合成DNA鋳型を用いて確立されたことを示す。反応は、4nMのテストステロン(T)、40nMのT(10倍のT)又は0.1%(v/v)エタノール(E)を用いて活性化された。RNA分子をカラム精製し、その後、直接蛍光を測定した。
*P<0.05エタノール対テストステロン。
*P<0.05(シダック事後多重比較検定を用いる一元配置分散分析)。
【
図14】
図14は、インビトロ転写反応が、cy-5により標識されたCTP、及びcy-5により標識されたUTP、及びMMTV-ルシフェラーゼDNA鋳型を用いて確立されたことを示す。反応は、4nMのテストステロン(T)、40nMのT(10倍のT)又は0.1%(v/v)エタノール(E)を用いて活性化された。RNA分子をカラム精製し、その後、直接蛍光を測定した。
*P<0.05エタノール対テストステロン、EとTとの間のスチューデントt検定。10×Tについてはn=1。
【
図15】
図15は、インビトロ転写のコア成分の様々な濃度の評価を示す。インビトロ転写反応は、様々な濃度のヌクレオシド三リン酸(NTP)(1及び10nM)、MgCl
2(3、5、及び7.5nM)、アンドロゲン受容体(9.1、18、36、92、及び182nM、DNA濃度は12.8nMに保たれた)及びMMTV-ルシフェラーゼDNA鋳型(12.8、25.6、51.2、及び102.4nM、アンドロゲン受容体の濃度は18nMに保たれた)を用いて調製された。反応は4nMのテストステロンを用いて活性化された。RNA分子をカラム精製し、その後、直接定量した。インビトロ転写反応におけるDNAに対するアンドロゲン受容体の比(アンドロゲン受容体を変化させた場合)は、0.7、1.4、2.8、7.1、及び14.2であった。インビトロ転写反応におけるDNAに対するアンドロゲン受容体の比(DNAを変化させた場合)は、1.4、0.7、0.35、及び0.18であった。全ての反応がRNAの生成物を生じたが、2.8以下のアンドロゲン受容体:DNAの比が最も効率的であったが、一旦比率が0.35以下に達すると、劇的に応答は減少する。DNAに対するアンドロゲン受容体の高い比(7.1以上)及びDNAに対するアンドロゲン受容体の低い比(0.18以下)は、インビトロ転写反応にとって有害であることが示された。
【
図16】
図16が、生成物としてcy-5-ヌクレオシド三リン酸により標識されたRNA分子を用いてのインビトロ転写反応が、既知である低い(G32)及び高い(G44)生理活性を有する去勢された血漿試料間の有意差を示すことができることを示す。
*P<0.05 G32をG44と比較したスチューデントt検定。
【
図17】
図17は、逆転写定量PCRを使用したテストステロンにより誘導されたRNA合成の検出を示す。インビトロ転写反応は、MMTV-ルシフェラーゼDNA鋳型を用いて調製された。反応は、テストステロン(4nM)又はエタノール(E、0.1%v/v)を用いて活性化され、30℃で2時間インキュベートした。RNA分子を精製し、デオキシリボヌクレアーゼで処理し、その後、逆転写定量PCRを使用してRNAレベルを測定した。より低いサイクル閾値は、テストステロンにより処理された反応においてより多くのRNAが存在していたことを示す(
***P<0.0005スチューデントt検定)。
【
図18】
図18は、市販のHeLa核抽出物と、HeLa核抽出物、PC3核抽出物、HuH7核抽出物、及びHEK293核抽出物の社内調製物との間の比較測定を示す。インビトロ転写反応は、DNA鋳型としてのMMTV-ルシフェラーゼ、及び業者(プロメガ社)のHeLa細胞抽出物を用いて、又はHeLa、PC3(前立腺)、HuH7(肝臓)若しくはHEK293(腎臓)細胞の培養液から調製された社内製核抽出物から調製された。一旦調製されると、インビトロ転写反応は、テストステロン(4nM)を用いて活性化され、2時間インキュベートされた。RNAを精製し、DNA鋳型をデオキシリボヌクレアーゼによって破壊し、その後、逆転写定量PCRを使用してRNAレベルを測定した。
【
図19】
図19は、テストステロンにより誘導されるアンドロゲン受容体の活性化が、社内製の核抽出物の存在下においてインビトロ転写反応を媒介したことを示す。試験された4つ全ての核抽出物が、サイクル閾値数の減少によって示されるように、エタノール(E)に対してテストステロン(T)によって活性化された場合に、より多くのRNA転写物を生成する能力を示した。より少ない閾値数は、より高いレベルのRNA転写物を示す。HeLa(子宮頸癌細胞)、HuH7(肝細胞)、HEK293(腎臓細胞)、及びPC3(前立腺癌細胞)。
【
図20】
図20は、インビトロ転写反応が、テストステロン及びその活性代謝物であるジヒドロテストステロン(DHT)によって刺激され得ることを示す。各々のインビトロ転写-逆転写定量PCRを3回完了させた(n=3)。Y軸はサイクル閾値を示し、サイクル閾値の減少は、より多くのRNA転写物を示す。
【
図21】
図21は、ビーズ上に固定されたアンドロゲン応答エレメント/エンハンサーDNA鋳型が、逆転写定量PCRによって測定されるように、テストステロン(T)により活性化されたアンドロゲン受容体により誘導されるRNA転写物のインビトロ転写を支持することを示す。逆転写定量PCRは、特異的なプライマー/プローブセットを使用して実施された。E-エタノール、T-テストステロン、G32-ウマ血漿、G44-ウマ血漿。Y軸はサイクル閾値を示し、サイクル閾値の減少は、より多くのRNA転写物を示す。
【
図22】
図22は、ステムループ逆方向プライマーアプローチを使用して逆転写定量PCRによって測定されたインビトロ転写反応を示す。テストステロン(4nM)により活性化されたインビトロ転写反応は、アンドロゲン応答エレメント/エンハンサーGFP鋳型からなるものであった。mRNA転写物は反応液から精製され、デオキシリボヌクレアーゼIにより処理され、レベルを、ステムループ逆転写プライマー、並びにステムループ配列に対して特異的な逆PCRプライマー及びプローブを含む、2工程の逆転写定量PCR反応において測定した。Y軸はサイクル閾値を示し、サイクル閾値の減少は、より多くのRNA転写物を示す。
【
図23】
図23は、テストステロンにより活性化されたアンドロゲン受容体-アンドロゲン応答エレメント/エンハンサーインビトロ転写アッセイが、RNAマンゴーアプタマー分子を生成し、これはTO1-PB蛍光によって検出され得ることを示す。示されている数値は、TO1-PBの蛍光バックグラウンドに対して補正されている。
【
図24】
図24は、4つの異なるRNAマンゴーDNA鋳型が、活性化されていないか(エタノール対照)又は4nMのテストステロン(T)で活性化されているかのいずれかであるインビトロ転写反応において試験されたことを示す。マンゴーII、III、及びIVについてはn=4、Iについてはn=1。
【
図25】
図25は、テストステロンにより活性化された反応が、対照反応よりも多くのマンゴーIIアプタマーを生成することを示す。インビトロ転写反応を構築し、テストステロン(4nM)又はエタノール(ベースライン対照)を用いて活性化した。三通りの反応を3日連続して完了した。結果は平均値±標準誤差として示され、log10スケールでプロットされている。
*P<0.05スチューデントt検定、エタノール対テストステロン。
【
図26】
図26は、インビトロ転写-マンゴーII反応が、nM未満のテストステロン濃度を検出することができることを示す。インビトロ転写反応を構築し、2~0.4(nM)の範囲のテストステロン又はエタノール(ベースライン対照、0nM)を用いて活性化した。結果は平均値±標準誤差として示され、log10スケールでプロットされている。
【
図27】
図27は、インビトロ転写-マンゴー反応が、ウマ血漿試料中のアンドロゲン活性を検出することができることを示す。インビトロ転写反応を構築し、去勢された競走馬に由来するウマ血清(15%v/v)G44及びG32を用いて活性化した。結果は平均値±標準誤差として示される。
【
図28】
図28は、インビトロ転写-マンゴー反応が、4つの異なる選択的アンドロゲン受容体修飾薬及び2つの異なるアンドロゲン作用蛋白同化ステロイド薬を検出することができることを示す。インビトロ転写反応を、6つのアンドロゲン性分子の中の1つ、又はテストステロンを用いて活性化した。
**P<0.01、
*P<0.05(シダック多重比較検定を用いる一元配置分散分析)。
【
図29】
図29は、テストステロンにより活性化されたインビトロ転写反応が、エタノール対照よりも多くのiホウレンソウアプタマーを生成することを示す。インビトロ転写反応を構築し、テストステロン(4nM)又はエタノール(ベースライン対照)を用いて活性化した。三通りの反応を3日連続して完了させた。結果は平均値±標準誤差として示される。
【
図30】
図30は、インビトロ転写-iホウレンソウ反応が、ウマ血漿試料中のアンドロゲン活性を検出することができることを示す。インビトロ転写反応を構築し、ウマ血漿試料G33又はG44を用いて活性化した。
【
図31】
図31は、アンドロゲン受容体がアンドロゲン応答エレメントGFP DNA鋳型に結合することを示す。右端から、タンパク質ラダーはサイズを示す。レーン1は、アンドロゲン受容体抗体と二次セイヨウワサビペルオキシダーゼ抗体を用いてプローブ化された組換えアンドロゲン受容体タンパク質を示す。レーン2は、アンドロゲン応答エレメントGFP DNA鋳型のみを示し、アンドロゲン受容体は反応混液に全く添加されていない。レーン3~5は、アンドロゲン受容体が、MgCl
2依存的にアンドロゲン応答エレメントGFP鋳型に結合することを示す。次のレーン2~5(インキュベート後の上清)は、インキュベート反応後に取り出された上清が非常にかすかなアンドロゲン受容体バンドしか示さないことを示し、このことは、大半の添加されたアンドロゲン受容体がビーズに結合していることを示す。右手のレーン2~5は、それらが加熱処理(DNAはビーズから分離するだろう)及び洗浄された後のビーズを示す。非常にかすかなアンドロゲン受容体バンドが存在し、このことは、大半のアンドロゲン応答エレメントGFP DNA鋳型/アンドロゲン受容体複合体が、ビーズから除去されたことを示す。要するに、これらの陰性対照は陽性反応の特異性を示し、アンドロゲン受容体がビーズ上に固定されたアンドロゲン応答エレメントGFP鋳型に結合していることを示す。
【
図32】
図32は、アンドロゲン受容体/アンドロゲン応答エレメントDNA鋳型のドットブロットを示す。
【
図33】
図33は、テストステロンを含有している試験反応混液、並びに様々な陽性対照及び陰性対照についての、アンドロゲン受容体アッセイプロトタイプ1による緑色蛍光タンパク質(GFP)発現を示す。
【
図34】
図34は、アンドロゲン受容体アッセイプロトタイプ1対アンドロゲン受容体アッセイプロトタイプ0のテストステロン用量反応曲線を示す。テストステロンは、1×10
-6Mから1×10
-12Mまで連続希釈され、プロトタイプ0又はプロトタイプ1のいずれかを使用した、レポータータンパク質の生成物についての各濃度を測定した。シグモイド用量反応曲線が作成された。
【
図35】
図35は、テストステロン、エストラジオール、及びプロゲステロンの添加された、アンドロゲン受容体アッセイプロトタイプ1による、緑色蛍光タンパク質の相対的発現を示す。これらのデータは、エストラジオール及びプロゲステロン(アンドロゲン受容体に特異的ではないリガンドであるが、アンドロゲン受容体と交差反応し活性化することが知られている)に対する、テストステロン(すなわち、アンドロゲン受容体特異的リガンド)についてのアッセイシステムの特異性を実証する。
【
図36】
図36は、MMTV-ルシフェラーゼDNA鋳型、アンドロゲン受容体、HeLa細胞抽出物、反応緩衝液を使用した、インビトロ転写反応の照射されたアガロースゲル及び産物の写真を示す。反応を組み立て、アンドロゲン受容体をテストステロン(100ng)を用いて活性化した。対照は、アンドロゲン受容体の非存在下において、エタノール及びテストステロンを含んでいた。
【
図37】
図37は、MMTV-ルシフェラーゼDNA鋳型、アンドロゲン受容体、HeLa細胞抽出物、反応緩衝液を使用したインビトロ転写反応を示す。反応を組み立て、アンドロゲン受容体を漸減濃度(100ng、50ng、25ng、12.5ng、エタノール)のテストステロンを用いて活性化した。
【
図38】
図38は、MMTV-ルシフェラーゼDNA鋳型、アンドロゲン受容体、社内製HeLa細胞抽出物、反応緩衝液を使用したインビトロ転写反応を示す。反応を組み立て、アンドロゲン受容体をテストステロン(100ng)を用いて活性化した。対照はエタノールを含んでいた。10、5、及び2.5μlの逆転写産物をPCR反応において試験した。
【
図39】
図39は、薬理学的に妥当な用量のテストステロンを投与されていた競走馬に由来する血清を使用して、活性化の30分後及び60分後の両方において、細胞密度(OD
600=0.4又はOD
600=0.2)の関数としてのアッセイ性能(β-ガラクトシダーゼ活性)を測定する、酵母細胞アンドロゲン受容体プロトタイプアッセイ0を示す。
【
図40】
図40は、100、75、及び50μg/mLの細胞抽出物におけるHeLa細胞抽出物濃度の関数としての逆転写定量PCRサイクル閾値を測定する、アンドロゲン受容体プロトタイプアッセイ2を示す。エタノールは陰性対照として含まれていた。
【
図41】
図41は、テストステロン(100ng)対エタノールを用いての、インビトロ転写-逆転写PCRを示す。
【
図42】
図42は、デオキシリボヌクレアーゼIで処理されたDNA鋳型のPCRを示す。
【
図43】
図43は、インビトロ転写反応の逆転写PCRを示す。インビトロ転写反応を実施した(テストステロン、エタノール、ヌクレオシド三リン酸なし)。逆転写PCRに進める前に、Turboデオキシリボヌクレアーゼを使用して、DNA鋳型を除去した。結果は、インビトロ転写反応陽性についてのDNAバンドを示し、テストステロン>エタノールであった(逆転写定量PCRによって確認された)。ヌクレオシド三リン酸を全く含まないもの(それ故、RNAは全く形成されることができない)は全くバンドを示さず、このことは、DNA鋳型が破壊されたことを示す。第4番目のレーンは対照が水であるPCRである。
【
図44】
図44は、アンドロゲン受容体に対する結合及びアンドロゲン受容体の活性化によって測定された場合の、ジヒドロテストステロン(DHT)に対するテストステロン(T)のEC
50プロットを示す。テストステロンに対するジヒドロテストステロンの相対強度は2.3であると計算された。
【
図45】
図45は、テストステロンが、iホウレンソウRNAアプタマー分子の転写を活性化することを示す(A)4×iホウレンソウDNA鋳型(B)F30足場iホウレンソウ鋳型。インビトロにおける転写反応が実施され、その後、DFHBI及び蛍光緩衝液が添加された。蛍光は、エタノール(ビヒクル、活性化されていないベースライン)又はRNA無生成の対照のいずれかと比べて、テストステロンにより活性化された反応の方が有意に増加していた。n=4 反応(A)、n=3 反応(B)。
【
図46】
図46は、反応混合物へのHSP90の添加効果を示す。HSP90が反応混合物に添加されていない場合(0ng)、エタノール対照を上回るテストステロンによる誘導レベルがより少ないことによって示されているように、リガンド(テストステロン)によるアンドロゲン受容体の活性化はより少ない。しかしながら、100ngのHSP90が反応混合物に含まれると、エタノール対照を上回るテストステロンによる誘導レベルの上昇によって実証されるように、アンドロゲン受容体の活性化は顕著に増加する。最後に、200ngのHSP90が反応混合物に含まれると、リガンドの付加されていないアンドロゲン受容体によるRNAアプタマー合成の活性化はほぼ完全に抑制され、HSP90によるこのようなアンドロゲン受容体の遮断は、アンドロゲン受容体がリガンドのテストステロンによって活性化される場合に克服される。
【0113】
一般的定義
特記されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、当技術分野(例えば、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、及び生化学)の技術者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有するものと捉えられるだろう。
【0114】
本明細書において開示される数字の範囲(例えば1~10)への言及は、その範囲内の全ての関連する数字(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9、及び10)及びまたその範囲内の任意の有理数の範囲(例えば、2~8、1.5~5.5、及び3.1~4.7)への言及も取り込むものとし、それ故、本明細書において明確に開示される全ての範囲の全ての部分範囲が明確に開示されている。これらは、具体的に意味されるものの単なる例であり、列挙されている最小の数値と最大の数値との間の数値の全ての可能な組み合わせが、本出願において同じように明確に記述されていると考えるべきである。
【0115】
「及び/又は」、例えば「X及び/又はY」という用語は、「X及びY」又は「X又はY」のいずれかを意味すると理解され、両方の意味又はいずれかの意味についての明示的な支持を与えると見なすものとする。
【0116】
「1つの(a)」又は「1つの(an)」という用語は、1つ又は1つを超える明記された実体を指し;例えば、「1つの受容体」又は「1つの核酸分子」は、1つ以上の受容体若しくは核酸分子、又は少なくとも1つの受容体若しくは核酸分子を指し得る。したがって、「1つの(a)」又は「1つの(an)」、「1つ以上」及び「少なくとも1つの」という用語は、本明細書において同義語として使用され得る。
【0117】
本明細書全体を通して、「含む(comprise)」という単語、又は「含む(comprises)」又は「含んでいる」などの変化形は、1つの記述されている要素、整数、若しくは工程、又は一群の要素、整数、若しくは工程の包含を意味するが、任意の他の要素、整数、若しくは工程、又は一群の要素、整数、若しくは工程の除外を意味するものではないことが理解されるだろう。
【0118】
本明細書全体を通して、特記しない限り又は内容から別様であることが要求されない限り、単一の工程、単一の問題の組成物、一群の工程又は一群の問題の組成物への言及は、1つ及び複数の(すなわち1つ以上の)そのような工程、問題の組成物、一群の工程又は一群の問題の組成物を包含すると見なすものとする。
【0119】
選択された定義
本発明の目的のために、以下の用語は、以下の意味を有するものとする。
【0120】
本明細書において使用する「アッセイプロトタイプ0」という用語は、ステロイドホルモン受容体を活性化するリガンドの検出のための、酵母及び哺乳動物細胞ベースアッセイを指す。
【0121】
本明細書において使用する「アッセイプロトタイプ1」という用語は、ステロイド活性を有するリガンドを試験試料から検出するための無細胞アッセイを指し、該アッセイは、リガンド活性化受容体(又は受容体-リガンド複合体)に結合する核酸応答エレメントに作動可能に連結したレポーターエレメントのレポーター発現レベル(例えば緑色蛍光タンパク質)を決定し、リガンドの存在を検出することによって機能する。
【0122】
本明細書において使用する「アッセイプロトタイプ2」という用語は、ステロイド活性を有するリガンドを試験試料から検出するための無細胞アッセイを指し、該アッセイは、リガンド活性化受容体(すなわち受容体-リガンド複合体)に結合する核酸に作動可能に連結したレポーターエレメントのレポーター転写物レベル(例えばmRNA又はcDNA)を決定し、リガンドの存在を検出することによって機能する。
【0123】
本明細書において使用する「アッセイプロトタイプ3」という用語は、ステロイド活性を有するリガンドを試験試料から検出するための無細胞アッセイを指し、該アッセイはリガンド活性化受容体(すなわち受容体-リガンド複合体)と活性化受容体結合ドメインを含む核酸配列との間の結合相互作用を決定し、リガンドの存在を検出することによって機能する。
【0124】
本明細書において使用する「ステロイドホルモン受容体」という用語は、リガンド(該リガンドはステロイドホルモン受容体を活性化することができる)に選択的に結合する、タンパク質又はポリペプチド(組換えポリペプチドを含む)を指し、これには、アンドロゲン受容体、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、鉱質コルチコイド受容体、及び糖質コルチコイド受容体が含まれるがこれらに限定されない。典型的には、ステロイドホルモン受容体は、リガンド結合ドメイン、活性化ドメイン、及びデオキシリボース核酸結合ドメインを含む。この定義によると、「ステロイドホルモン受容体」は場合により、リガンドにより活性化されるために折り畳まれかつホルモン応答性状態にステロイドホルモン受容体を保つことを助ける、他の補因子(例えば熱ショックタンパク質などを含む)を含んでいてもよい。
【0125】
本明細書において使用する「ステロイドホルモン受容体補因子」という用語は、リガンドにより活性化されるために、最適に折り畳まれかつホルモン応答性状態にステロイドホルモン受容体を保つことを助ける、1つ以上の補因子を指す。
【0126】
「リガンド」という用語は一般的に、受容体に結合する任意の分子を指し、これには、ポリペプチド、タンパク質、ビタミン、糖質、糖タンパク質、治療剤、薬物、グリコサミノグリカン、又はその任意の組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。本明細書において使用する「リガンド」は、ステロイドホルモン、例えば性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン、アンドロゲンなどを含むがこれらに限定されない)並びにその天然及び合成の誘導体及び類似体及び代謝物、デザイナーステロイドホルモン、アンドロゲン作用蛋白同化ステロイド、並びに選択的なアンドロゲン受容体修飾薬、プロゲステロン受容体修飾薬、及びエストロゲン受容体修飾薬、現在公知であるもの、及び開発されることが予期されるものを含むがこれらに限定されない。
【0127】
本明細書において使用する「受容体-リガンド複合体」及び「活性化ステロイドホルモン受容体」という用語は、ステロイドホルモン受容体に結合したリガンドを指し、ここでステロイドホルモン受容体は、リガンドに結合すると構造的転換を受け、その後、活性化形態であると言われる。本明細書に記載のような受容体-リガンド複合体は、単量体のリガンド結合ホルモン受容体(すなわち、HR-L;ここでの「HR」はホルモン受容体であり、「L」はリガンドである)、二量体のリガンド結合ホルモン受容体(すなわち(HR-L)2)、三量体のリガンド結合ホルモン受容体(すなわち(HR-L)3)、又は当業者には明らかであろういくつかの他の高次構造を含むがこれらに限定されない。
【0128】
本明細書において使用する「ゲノム応答」という用語は、活性化ステロイドホルモン受容体(すなわちリガンド結合受容体)が、核酸結合モチーフに選択的に結合し、結合モチーフに直接的に又は間接的に連結されている核酸分子(遺伝子を含む)の発現を調節することができることを指す。誤解を避けるために記すと、「ゲノム応答」という用語は、細胞の核内での遺伝子の調節を指す必要はなく、むしろ、該応答は、活性化ホルモン受容体が核酸配列の転写のスイッチをオン若しくはオフにする能力を有するか、又は本明細書に記載の試験キット、アッセイ、及び方法に使用されるレポーター構築物内に含有されている核酸配列などの核酸配列の発現を低減若しくは増強する能力を有する、応答である。
【0129】
本明細書において使用する「ステロイド代謝機構」という用語は、任意の酵素又は非酵素補因子を指し、リガンドを生理学的に不活性な形態から生理学的に活性な形態へと、又は生理学的に活性化な形態からより生理学的に活性な形態へと、又は生理学的に活性な形態からあまり生理学的に活性ではない形態へと、又は生理学的に活性な形態から生理学的に不活性な形態へと変換するに十分である、酵素補因子と非酵素補因子の組み合わせを含む。
【0130】
本明細書において使用する「無細胞抽出物」という用語は、細胞又は細胞内に見られる核に由来する抽出物を指し、あらゆる細胞膜成分を実質的に含まない。
【0131】
本明細書において使用する「検出手段」という用語は、活性化ステロイドホルモン受容体と核酸応答エレメントとの間の結合相互作用を検出するのに適応した任意の装置、機器、又は構成を指す。検出手段の例としては、光学的方法、分光法、可視分光法、ラマン分光法、紫外分光法、表面プラズモン共鳴、電気化学的方法、インピーダンス、抵抗、静電容量、質量の変化、力学的共振の変化による機械的感知、電気泳動、ゲル電気泳動、ゲル遅延度、画像撮影法、蛍光及び蛍光共鳴エネルギー移動、ポリメラーゼ連鎖反応などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0132】
本明細書において使用する「核酸配列」という用語は、デオキシリボース核酸(DNA)配列、リボース核酸配列(RNA)、メッセンジャーリボース核酸(mRNA)及び相補的DNA(cDNA)を指し、ポリヌクレオチドとも呼ばれる、2つ以上のヌクレオチドの連続配列からなる。
【0133】
本明細書において使用する「レポーター構築物」という用語は、その発現をアッセイすることのできる、RNA又は酵素又はタンパク質をコードしているレポーター分子をコードしている核酸配列を指し;このようなRNAは、フルオロフォア結合アプタマー、又は合成RNA若しくはmRNAを含むがこれらに限定されず、このようなタンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、オレンジ色蛍光タンパク質(OFP)、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、β-グルクロニダーゼ(GUS)、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ、アミノ酸生合成遺伝子、例えば酵母LEU2、HIS3、又はLYS2遺伝子、核酸生合成遺伝子、例えばURA3又はADE2遺伝子、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子、又は特異的な抗体が利用可能である任意の表面抗原遺伝子を含むがこれらに限定されない。さらに、レポーター遺伝子は、その発現産物を検出することのできる任意の関心対象の遺伝子を包含し得る。
【0134】
本明細書において使用する「プロモーター」という用語は、作動可能に連結された転写される配列の5'末端の転写開始部位の近くに位置する核酸配列である。該プロモーターは、作動可能に連結された遺伝子の転写の変調において相互作用する1つ以上の調節エレメントを含有していてもよい。プロモーターは本来は最小であり、これには、最小サイトメガロウイルスプロモーター、最小pAプロモーター、最小ヘルペスウイルスチミジンキナーゼプロモーター、最小TATA様プロモーターが挙げられるがこれらに限定されない。
【0135】
本明細書において使用する「作動可能に連結された」という用語は、最初のエレメントの活性の変調が、第二のエレメントに対して効果を誘導するように整列されている2つの巨大分子エレメントを説明する。このように、プロモーターエレメントの活性の変調を使用して、作動可能に連結されたレポーター構築物の発現を変化及び/又は調節し得る。例えば、プロモーターエレメントに作動可能に連結されたレポーター構築物の転写は、プロモーターの活性を「活性化」する因子によって誘導され;プロモーターエレメントに作動可能に連結されたレポーター構築物の転写は、プロモーターの活性を「抑制」する因子によって阻害される。したがって、プロモーター領域は、このようなレポーター構築物の転写がプロモーターの活性によって影響を受けている場合、レポーター構築物に作動可能に連結されている。
【0136】
本明細書において使用する「発現」という用語は、遺伝子内にコードされている情報が発現されるプロセスを指す。遺伝子がタンパク質をコードしている場合、発現は、DNAからmRNAへの転写、mRNA(必要である場合)から成熟mRNA産物へのプロセシング、及び成熟mRNAからタンパク質への翻訳の両方を含む。核酸分子、例えば、デオキシリボース核酸(DNA)又は遺伝子は、該分子が、ポリペプチドのコード配列と、DNA内に含まれる遺伝子情報をタンパク質産物へと転写、プロセシング及び翻訳する能力を適切な宿主環境において提供する発現制御配列とを含有している場合、並びにこのような発現制御配列が、該ポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列に作動可能に連結されている場合に、ポリペプチド(又はタンパク質)を「発現することができる」と言われる。
【0137】
本明細書において使用する「試料」という用語は、リガンドの存在について試験することが望まれる任意の試料を指す。
【0138】
本明細書において使用する「相対強度」又は「RP」という用語は、基準化合物と比較した、試験化合物によって示される生物学的活性の倍数を指し、ここでの生物学的活性は、(例えば)本明細書に記載のアッセイ及び試験キットを使用して測定された場合の、該化合物がステロイドホルモン受容体に結合し活性化する能力によって定義される。相対強度が1を超える場合、試験化合物は、基準化合物と比較してその生物学的活性の点においてより強力であり;ここでの相対強度が1未満である場合、試験化合物は、基準化合物と比較してその生物学的活性の点においてあまり強力ではなく;相対強度が1である場合、試験化合物及び基準化合物は、それらの生物学的活性の点で同等に強力である。
【0139】
本明細書において使用する「活性化係数」又は「AF」という用語は、(例えば)生理学的に不活性な状態から生理学的に活性な状態への、又はあまり生理学的に活性ではない状態からより生物学的に活性な状態への、試験化合物の代謝的変換の尺度に関する。1を超える活性化係数とは、試験化合物が、アッセイにおいて代謝機構の存在下でより生理学的に活性な状態へと代謝的変換を受けたことを意味する。
【0140】
本明細書において使用する「基準閾値」という用語は、試験試料の非存在下において測定されたアッセイ活性のレベルを意味する。本明細書に記載の本発明による特定の例では、基準閾値は、試験試料の代わりにエタノールを使用して決定される。
【0141】
詳細な説明
本発明は、リガンドの存在について試料をスクリーニングするのに有用な試験キット、アッセイ、及び方法を提供し、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができる。特定の例では、本明細書に記載の本発明は、ヒト並びにヒト以外のアスリート(競走馬及びイヌを含む)に使用される運動能力向上プロドラッグ/薬物(例えば蛋白同化ステロイド)の検出に有用性を有する。他の例では、本明細書に記載の本発明は、ステロイドホルモン受容体に結合し、細胞内においてゲノム応答を惹起するか、又は代謝プロセス後にそうし得る(すなわち、いわゆる「プロドラッグ」の場合)添加剤について、食品及び健康食品サプリメントをスクリーニングする際に有用性を有する。
【0142】
本発明によるアッセイ(これに、本明細書に記載の試験キット及び方法が基づいている)は、試験される予定の試料に由来するリガンドの結合を通じたステロイドホルモン受容体の活性化の原則に基づいて作動する、基本的に活性に基づいたアッセイである。ステロイドホルモン受容体の活性化は、リガンドが受容体に結合し、タンパク質の三次構造にコンフォメーション変化を誘導した場合に起こり、このことは、受容体-リガンド複合体(本明細書においては「活性化ホルモン受容体」とも称される)がその後、核酸応答エレメントに結合し、いわゆる「ゲノム応答」(換言すれば、細胞核内の遺伝子をアップレギュレート/ダウンレギュレートし、その後、生理学的蛋白同化効果をもたらし得る能力)を惹起することができることを意味する。本明細書に記載の試験キット、アッセイ、及び方法によって測定されるのは、試験される試料中のステロイド活性又はステロイド様活性を有するリガンドの存在を検出する代わりとしての、活性化ステロイドホルモン受容体と核酸応答配列との間のこの結合相互作用である。
【0143】
したがって、本発明による試験キット及びアッセイは、(例えば)「デザイナー薬物」などの未知の構造を有するリガンドを検出する能力を有する。歴史的には、これは可能ではなかった。なぜなら、ガス/液体クロマトグラフィー及び質量分析などの従来の実験検査機器は、調べられる分子構造の事前知識を必要とするからである。
【0144】
したがって、本発明による活性アッセイは、確立された先行技術に伴う制約を克服する。
【0145】
さらに、本明細書に記載のアッセイは、分子フレームワークに基づいてモデル化され、これは主に細胞ベースシステムを模倣しているが、細胞の複雑さが存在しないことが、細胞ベースアッセイと比較して、増強された機能と改善されたアッセイの感度を備えたインビトロのシステムを与える。
【0146】
本明細書に記載の様々な試験キット及びアッセイは各々、(i)試験される予定の試料中に存在し得るリガンドとの結合のための、ステロイドホルモン受容体(リガンド結合ドメインを含む)、及び(ii)活性化ステロイドホルモン受容体(又はリガンド-受容体複合体;HR-L)に結合するタンパク質結合ドメインを含む核酸応答エレメントを提供する。「活性化ステロイドホルモン受容体」という用語は受容体-リガンド複合体を指し、様々な順列のHR-L構造(例えば、単量体、二量体、三量体など)を含み得る。核酸応答エレメントは、受容体-リガンド複合体に特異的な結合モチーフを含有している。したがって、本発明の試験キット及びアッセイを関心対象の試験試料と配合することによって、ステロイドホルモン受容体に結合し細胞内においてゲノム応答を惹起する能力を有するリガンドの検出が可能である。
【0147】
「受容体結合ドメイン」、「活性化受容体結合ドメイン」、「ホルモン受容体結合ドメイン」、「活性化ホルモン受容体結合ドメイン」、「受容体-リガンド結合ドメイン」及び「ホルモン受容体-リガンド結合ドメイン」という用語は同義語として使用され、本明細書に定義されているような、活性化ホルモン受容体又はリガンド-受容体複合体に結合する、核酸応答エレメントのタンパク質結合ドメインを指す。
【0148】
本明細書に記載の試験キット、アッセイ、及び方法はさらに、(iii)ステロイドホルモン受容体補因子並びに転写機構及び/又は翻訳機構を含んでいてもよい(その追加の補因子及び/又は機構は、アッセイの全体的な性能を増強する)。本明細書に記載のようなステロイドホルモン受容体補因子(群)は、ホルモン受容体が、リガンドによる活性化のために最適に折り畳まれホルモン応答性状態を保つことを助け、主に、ステロイドホルモン受容体がその応答エレメントに結合するのを妨げる。本発明によるステロイドホルモン受容体補因子の例としては、熱ショックタンパク質、例えば熱ショックタンパク質70、熱ショックタンパク質40、熱ショックタンパク質90、及び熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)、p23、48kD Hipタンパク質、p60、及びFKBP52が挙げられるがこれらに限定されない。
【0149】
本明細書に記載の試験キット、アッセイ、及び方法はさらに、(iv)リガンドを生理学的に不活性な形態から生理学的に活性な形態へと、又は生理学的に活性な形態からより生理学的に活性な形態へと、又は生理学的に活性な形態からあまり生理学的に活性ではない形態へと、又は生理学的に活性な形態から生理学的に不活性な形態へと変換するに十分である、ステロイド代謝機構を含んでいてもよい。リガンドが生理学的に活性な形態である場合にのみ、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体を活性化し、ゲノム応答を惹起する能力を有する。したがって、本発明による試験キット、アッセイ、及び方法へのステロイド代謝機構の包含は、関心対象の試験試料からの生理学的に不活性なリガンド((例えば)該リガンドはプロドラッグ(例えばプロホルモン)として存在する)の検出を容易にすることを助け、さもなければ、確立された方法論を使用した検出を免れるだろう。さらに、本発明による試験キット、アッセイ、及び方法へのステロイド代謝機構の包含は、効果を示すことが必要とされるリガンドの生物学的活性/生物学的強度を決定することを助ける。
【0150】
本発明によると、ステロイドホルモン受容体補因子、転写機構及び/又は翻訳機構、並びに、ステロイド代謝機構が、無細胞抽出物を介して、試験キット、アッセイ、及び方法に提供され得る。本発明による一例では、無細胞抽出物は、追加のタンパク質及びタンパク質ではない酵素、補因子など((例えば)追加のステロイドホルモン受容体補因子を含む)、転写機構及び/又は翻訳機構、並びにステロイド代謝機構を含有している。さらなる一例では、無細胞抽出物は、関心対象の細胞に由来する。関連した一例では、無細胞抽出物は、標的リガンドが生理学的に活性であろう細胞に由来する。この点をより良く説明するために、及び例示のためだけに、本発明による試験キットが、競走馬から得られた試験試料から運動能力向上アンドロゲンを検出するように構成されている場合、該試験キットに包含される無細胞抽出物は、ウマ動物の細胞に由来し得る。そのようにして該試験キットは、関心対象のリガンドの検出のために最適化されている。しかしながら、この例は、無細胞抽出物が、標的リガンドが必ずしも生理学的に活性ではない別の種の細胞に由来する可能性を排除するものではない(例えば、上記の例では、細胞抽出物は、ウマ細胞株ではなくヒト細胞株に由来する)。
【0151】
同様に、本発明による試験キット、アッセイ、及び方法に提供されるステロイドホルモン受容体は、関心対象のリガンドの検出が調べられる予定である標的種に直接由来する。この脈絡において使用される「由来する」という用語は、関心対象の標的種の細胞若しくは細胞核から精製されているか、又は合成若しくは組換え手段によって作製されている((例えば)リガンドとの結合などを増強するための1つ以上の突然変異を含み得る)、ステロイドホルモン受容体を含む。上記に言及されている例を続けると、本発明による試験キット、アッセイ、及び方法が、競走馬の血清からのアンドロゲンの起こり得る検出のために構成されている場合、該試験キットは、(i)ウマ細胞から精製されているか、又は(ii)組換え手段若しくは合成手段によって作製され、さもなければ、ウマ細胞から精製されているアンドロゲン受容体の性能を模倣しているかのいずれかである、ウマアンドロゲン受容体を含んでいるだろう。
【0152】
さらに、本発明は、追加のいくつかの補因子(群)及び/又は機構が無細胞抽出物によって提供され、他の補因子(群)及び/又は機構が組換え形若しくは合成形で提供されている、試験キットを考える。例示のためだけに、本発明はさらに、転写機構及び/又は翻訳機構並びにステロイド代謝機構を提供する無細胞抽出物を含む試験キットを考えるが、ステロイドホルモン受容体補因子(例えばHSP90)は組換え形で提供される。
【0153】
本発明によると、無細胞抽出物は、定義によると、あらゆる細胞膜材料を実質的に含まない。
【0154】
本明細書に記載の試験キット、アッセイ、及び方法はさらに、(v)該受容体-リガンド複合体と該核酸応答エレメントとの間の結合を検出するための検出手段を含み得る。この結合相互作用は、核酸配列に作動可能に連結されたレポーター構築物を介して間接的に(例えばアッセイプロトタイプ1及びアッセイプロトタイプ2)又は直接的に(例えばアッセイプロトタイプ3)測定され得る。
【0155】
本発明の試験キット、アッセイ、及び方法によると、アッセイプロトタイプ2は、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することのできるリガンドを、試験試料から検出するための無細胞アッセイを指し、該アッセイは、リガンド活性化受容体(又は受容体-リガンド複合体)に結合する核酸に作動可能に連結されたレポーターエレメントのRNA転写物レベル(例えばmRNA又はcDNA又は合成RNA)を決定することによって機能する。アッセイプロトタイプ1は、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することのできるリガンドを、試験試料から検出するための無細胞アッセイを指し、該アッセイは、リガンド活性化受容体(又は受容体-リガンド複合体)に結合する核酸に作動可能に連結されたレポーターエレメントの遺伝子発現レベル(例えば緑色蛍光タンパク質)を決定してリガンドの存在を検出することによって機能し;アッセイプロトタイプ3は、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することのできるリガンドを、試験試料から検出するための無細胞アッセイを指し、該アッセイは、リガンド活性化受容体(又は受容体-リガンド複合体)と、活性化受容体結合ドメインを含む核酸配列との間の結合相互作用を決定して、リガンドの存在を検出することによって機能する。
【0156】
本発明による試験キット及びアッセイは、無細胞である。これは、特に重要である。なぜなら、アッセイシステムの分子的複雑さがかなり低減しているからである。例えば、(i)ステロイドホルモン分子の熱力学的シンクを作り出す可能性を有する細胞膜構造、及び(ii)細胞ベースシステムに観察される内因性ステロイドホルモン代謝、が存在しないことにより、感度の増強したアッセイシステムが提供される。さらに、かつ有利には、本明細書に記載の試験キット、アッセイ、及び方法によると、不可欠な構造要素(例えばステロイドホルモン受容体及び核酸応答エレメント(1つ以上の活性化受容体結合ドメインを含む))の相対量を、アッセイの機能の増強及び感度の向上をもたらすために正確に制御することができる。またさらには、他の補因子(例えば、ステロイドホルモン受容体補因子(群)を含む)、転写機構及び/又は翻訳機構、並びに、ステロイド代謝機構の相対量もまた、アッセイの機能の増強及び感度の向上をもたらすために正確に制御されるべきである。この点をさらに説明するために、
図43及び44に概略が示された実験を参照する。最初に出願人は、アッセイプロトタイプ0についての細胞培養液中の酵母細胞の相対的稠密度/密度を制御することの重要性を実証し(
図43)、ここではより高い細胞密度(すなわちOD
600=0.4)ではレポーター構築物の活性は、テストステロン添加後に、陰性エタノール対照とは区別できず;一方、より低い細胞密度(すなわちOD
600=0.2)では、テストステロンと対照試料との間に測定可能な差が存在した。これらの最初の観察は、無細胞抽出物を含むアッセイプロトタイプ2に拡張され(
図44)、ここでは出願人は、テストステロンを対照から特異的に区別するために無細胞抽出物の相対濃度を制御する必要があったことを実証した。ここでも、これらのデータは、関心対象のリガンドの検出を成し遂げるために、試験キット/アッセイ成分の相対量を正確に制御する重要性を強調する。
【0157】
比較可能な感度及び分子的複雑性を強調するために、以下の表Iは、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来の細胞ベースアッセイ(すなわちアッセイプロトタイプ0)と比較した、本発明によるアッセイプロトタイプ(すなわちアッセイプロトタイプ1~3)についての感度、分子的複雑性、検出手段、遂行時間などをはじめとする基本的なアッセイの特徴を列挙する。
【0158】
【0159】
本明細書に記載のアッセイの相対感度をさらに説明するために、アッセイの感度を、
図1~6、44、及び45と合わせて読んで、実施例2及び5に従って検証した。簡潔に言えば、アッセイプロトタイプ1の例は、アンドロゲン受容体、及び緑色蛍光タンパク質レポーターに作動可能に連結されたアンドロゲン応答エレメントを使用して工学操作された。テストステロン活性化アンドロゲン受容体(すなわち、テストステロン-アンドロゲン受容体複合体)とアンドロゲン受容体応答エレメントとの間の結合は、GFP発現レベルを決定することによって測定された。実施例2及び5並びに
図34及び35を参照して、テストステロン用量反応曲線が作成された。プロトタイプ1(すなわち無細胞アッセイ)のEC
50は、7.9×10
-11であると決定され、これはプロトタイプ0(すなわち細胞ベースアッセイ)の約100倍の感度の増加を示し、ここでの公表されているEC
50値は、5×10
-9Mの次数である(Death et al. (2004) J. Clin. Endo. Metabol. 89:2498-2500)。
【0160】
本明細書に記載の試験キット、アッセイ及び方法に従って、出願人は、核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の最適量がx:1であるべきであると決定し、ここでのxは[0.2≦x≦20]として定義され、これは、0.2:1、0.3:1、0.4:1、0.5:1、0.6:1、0.7:1、0.8:1、0.9:1、1:1、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、1.9:1、2:1、2.1:1、2.2:1、2.3:1、2.4:1、2.5:1、2.6:1、2.7:1、2.8:1、2.9:1、3:1、3.1:1、3.2:1、3.3:1、3.4:1、3.5:1、3.75:1、4:1、4.25:1、4.5:1、4.75:1、5:1、5.5:1、6:1、6.5:1、7:1、7.5:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、及び20:1を含むがこれらに限定されない。この理由は、ステロイドホルモン受容体は、そのリガンド結合形/活性化形において、二量体(例えば(SR-L)2)を形成し、これはその後、その会合する応答エレメントに結合し活性化する。したがって、応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の量を正確に制御することによって、アッセイの全体的な感度は有意に増強される。なぜなら、リガンドの存在下において、アッセイは、最適数の結合相互作用を測定するように構成されているであろうからである。これとは対照的に、リガンドの存在を検出するように構成されている細胞ベースレポーターアッセイについて同じ程度の制御を再現することは不可能ではなくても困難である。なぜなら、細胞にクローニングされた(例えば)組換え受容体及び/又は核酸応答エレメントをコードしている遺伝子又は核酸配列の総コピー数は、正確性をもって予測又は制御することが全くできないからである。
【0161】
さらに、
図46に示されるデータは、アッセイにおけるステロイドホルモン受容体補因子の相対量を制御することの重要性を実証する。特に、テストステロンにより誘導される応答エレメントの相対的活性化レベル(総蛍光によって測定された場合の)は、あまりにも多いHSP90(すなわち200ng)は、HSP90が全くない(すなわち0ng)よりも蛍光を抑制した一方で、最適シグナルは、100ngのHSP90の存在下で測定されたことを示した。これらのデータはさらに、試験試料からのリガンドの検出のために、最適なシグナルを達成及びそれ故アッセイ感度を達成するために、アッセイパラメーターを正確に制御することができることの重要性を強固にする。
【0162】
出願人は、核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の最適な比は、最適には≧0.3:1及び≦7:1の範囲内に存し得ると決定しているが、この範囲外の比も本発明によって考えられる。例えば、核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の比は(例えば)x:1であり、ここでのxはステロイドホルモン受容体の量であり、x=0.2、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、及び20である。
【0163】
さらに、出願人は、核酸応答配列に対するステロイドホルモン受容体の1つの最適な比は、≧0.3:1及び≦7:1の範囲内にあるべきであると決定しているが、アッセイシステムをあまりにも多くの受容体で飽和させないように注意を払わなければならない。なぜなら、これはそれ自体で、最適な結合を妨げる熱力学的障壁又は速度論的障壁を作り出す可能性があるからである(例えば、核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の比が20:1を超える、及びアッセイ条件に応じて7:1)。しかしながら、当業者は、当然のこととして、その成分の一部の相対量に基づいて、アッセイの最適な感度を決定することができる。
【0164】
本発明による試験キット及びアッセイによって付与されるさらに別の利点は、相対的に実施し易いことである。換言すれば、本明細書に記載の試験キット、アッセイ及び方法の実施は、複雑な細胞培養技術、熟練実験技術者、又は複雑な実験検査機器及び分析を必要としない。これは特に有利である。なぜなら、本発明による試験キット、アッセイ及び方法は、当技術分野において訓練を受けていない職員によって、比較的簡単な検査手順に従って実施され得るからである。さらに、試験キット、アッセイ及び方法の実施は、(例えば)競技前又は競技後直ちにアスリートから採取された試料中の運動能力向上物質について試験する場合、即時の情報を提供することができる。
【0165】
したがって、本発明の1つの態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該試験キットは、
(i)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するステロイドホルモン受容体;及び
(ii)該受容体-リガンド複合体に結合する核酸応答エレメント;及び
(iii)該受容体-リガンド複合体と該核酸応答エレメントとの間の結合を検出するための検出手段
を含み、ここで、該試料中のリガンドの存在は、該試料を該試験キットと配合し、該受容体-リガンド複合体と該核酸配列との間の結合が検出された時に決定される。
【0166】
本発明のこの態様による一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxはステロイドホルモン受容体の量であり、[0.2≦x≦20]として定義される。関連した一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxはステロイドホルモン受容体の量であり、[0.3≦x≦7]として定義される。
【0167】
本発明のこの態様による別の例では、該試験キットはさらに、最適に折り畳まれかつホルモン応答性状態(すなわちリガンドとの結合のために)にステロイドホルモン受容体を保つことを助ける、ステロイドホルモン受容体補因子を含む。本発明によるステロイドホルモン受容体補因子の例としては、熱ショックタンパク質70、熱ショックタンパク質40、熱ショックタンパク質90、p23、熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)、48kD Hipタンパク質、p60、及びFKBP52が挙げられるがこれらに限定されない。
【0168】
本発明のこの態様による関連した一例では、該試験キットは、熱ショックタンパク質(HSP)を含む。さらに関連した一例では、HSPはHSP90である。
【0169】
別の例では、該ステロイドホルモン受容体補因子は、無細胞抽出物によって提供されるか、又は組換え形若しくは合成形で提供される。
【0170】
本発明のこの態様によるさらなる一例では、該核酸応答エレメントは、レポーター構築物に作動可能に連結されたプロモーターを含む。またさらなる例では、該レポーター構築物は、少なくとも1つのRNAアプタマーをコードしている配列を含み、このRNAアプタマーは転写後に折り畳まれて、フルオロフォアと結合することのできる構造を形成し、その蛍光は、RNAアプタマーとの結合時にのみ活性化又は増加する。このように、RNAアプタマーへのフルオロフォアの結合は、核酸がリガンド-受容体複合体によって活性化されたことを知らせ、最終的には試験された試料中のリガンドの存在を反映する、検出可能な蛍光シグナルを発生する。(例えば)実施例4及び7を、それに続く
図46及び47と合わせて読んで参照されたい。
【0171】
本発明のさらなる態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該試験キットは、
(i)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するステロイドホルモン受容体;及び
(ii)ステロイドホルモン受容体補因子;及び
(iii)該受容体-リガンド複合体に結合する核酸応答エレメント;及び
(iv)該受容体-リガンド複合体と該核酸応答エレメントとの間の結合を検出するための検出手段
を含み、ここで、該試料中のリガンドの存在は、該試料を該試験キットと配合し、該受容体-リガンド複合体の該核酸配列への結合が検出された時に決定される。
【0172】
本発明のこの態様による一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxはステロイドホルモン受容体の量であり、[0.2≦x≦20]として定義される。関連した一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxはステロイドホルモン受容体の量であり、[0.3≦x≦7]として定義される。
【0173】
本発明のさらなる態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該試験キットは、
(i)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するステロイドホルモン受容体;及び
(ii)ステロイドホルモン受容体補因子;及び
(iii)該受容体-リガンド複合体に結合する核酸応答エレメント;及び
(iv)該受容体-リガンド複合体と該核酸応答エレメントとの間の結合を検出するための検出手段
を含み、ここで、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxはステロイドホルモン受容体の量であり、[0.2≦x≦20]として定義され、
ここで、該試料中のリガンドの存在は、該試料を該試験キットと配合し、該受容体-リガンド複合体の該核酸配列への結合が検出された時に決定される。
【0174】
一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxはステロイドホルモン受容体の量であり、[0.3≦x≦7]として定義される。
【0175】
本明細書に記載のような試験キットはさらに、内因的に不活性なリガンドの検出を容易にするためのステロイド代謝機構を含み得る。
【0176】
したがって、本発明のさらなる態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該試験キットは、
(i)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するステロイドホルモン受容体;及び
(ii)ステロイドホルモン受容体補因子及び/又はステロイド代謝機構;及び
(iii)該受容体-リガンド複合体に結合する核酸応答エレメント;及び
(iv)該受容体-リガンド複合体と該核酸応答エレメントとの間の結合を検出するための検出手段
を含み、ここで、該試料中のリガンドの存在は、該試料を該試験キットと配合し、該受容体-リガンド複合体と該核酸配列との間の結合が検出された時に決定される。
【0177】
本発明のこの態様による一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxはステロイドホルモン受容体の量であり、[0.2≦x≦20]として定義される。関連した一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxはステロイドホルモン受容体の量であり、[0.3≦x≦7]として定義される。
【0178】
本明細書に記載のような試験キットはさらに無細胞抽出物を含み得る。
【0179】
したがって、本発明のまたさらなる態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該試験キットは、
(i)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するステロイドホルモン受容体;及び
(ii)ステロイドホルモン受容体補因子及び/又はステロイド代謝機構及び/又は無細胞抽出物;及び
(iii)該受容体-リガンド複合体に結合する核酸応答エレメント;及び
(iv)該受容体-リガンド複合体と該核酸応答エレメントとの間の結合を検出するための検出手段
を含み、ここで、該試料中のリガンドの存在は、該試料を該試験キットと配合し、該受容体-リガンド複合体の該核酸配列への結合が検出された時に決定される。
【0180】
本発明のこの態様による一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxはステロイドホルモン受容体の量であり、[0.2≦x≦20]として定義される。関連した一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxはステロイドホルモン受容体の量であり、[0.3≦x≦7]として定義される。
【0181】
本発明のこれらの態様及び他の態様による別の例では、該核酸応答エレメントはレポーター構築物に連結され、該核酸応答エレメントに対する該受容体-リガンド複合体の結合は、該レポーター構築物の転写又は翻訳を調べることによって決定される。
【0182】
したがって、本明細書に記載の試験キットはさらに、レポーター構築物の成功裡の転写及び/又は翻訳を達成するための転写機構及び/又は翻訳機構を含む。
【0183】
一例では、該転写機構及び/又は翻訳機構は、核抽出物又は無細胞抽出物によって提供される。
【0184】
別の例では、該レポーター構築物は、プロモーター配列及びレポーター構築物を含み、該プロモーター配列は、核酸応答エレメントが受容体-リガンド複合体に結合した時に活性化される。プロモーターの例としては、最小サイトメガロウイルスプロモーター、最小pAプロモーター、最小ヘルペスウイルスチミジンキナーゼプロモーター、最小TATA様プロモーターが挙げられるがこれらに限定されない。
【0185】
さらなる一例では、核酸応答エレメントと、該レポーター構築物の発現を駆動するプロモーターとは、作動可能に連結されている。
【0186】
関連した一例では、核酸応答エレメント及びレポーター構築物は、同じ核酸配列又は異なる核酸配列内に含まれる。
【0187】
別の関連した例では、核酸応答エレメント、プロモーター及びエンハンサー配列、並びにレポーター構築物は、同じ核酸配列又は異なる核酸配列内に含まれ、これは、特定のエレメントが同じ核酸配列内のどこに含まれ、他のエレメントが別の核酸配列内のどこに含まれるかの例を含む。
【0188】
したがって、本発明による試験キット、アッセイ及び方法は、例えば、ステロイドホルモン受容体活性を有するリガンドの存在について試料をスクリーニングするための手段としての、アッセイと試験試料を配合した時の、メッセンジャーリボース核酸(mRNA)レベル又は相補的デオキシリボース核酸(cDNA)レベルを調べることによって、レポーター構築物の転写物レベルを検出するように構成され得る。
【0189】
本発明はさらに、転写されると折り畳まれて、フルオロフォアに結合することのできる構造を形成する、1つ以上のRNAアプタマー配列のコピーを含むレポーター構築物を考え、該フルオロフォアの蛍光は、RNAアプタマーに結合した時にのみロック解除/活性化される。このようなRNAアプタマー/フルオロフォアの組み合わせの例としては、ホウレンソウ及びその関連するフルオロフォアである3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシベンジリデンイミダゾリノン(DFHBI);ホウレンソウ2及びその関連するフルオロフォアであるDFHBI-1T及びDFHBI-2T;iホウレンソウ及びその関連するフルオロフォアであるDFHBI-1T及びDFHBI-2T;ブロッコリー及びその関連するフルオロフォアであるDFHBI-1T;コーン及びその関連するフルオロフォアであるDFHO;マンゴー及びチアゾールオレンジ(TO;TO-1及びTO-3を含む)に由来するその関連するフルオロフォア;ジメチルインドールレッド2s(DiR2s)アプタマー及びその関連するフルオロフォアであるオキサゾールチアゾールブルー(OTB);アプタマーII-ミニ3-4c及びその関連するフルオロフォアであるヘキスト;ジニトロベンゼン(DNB)及びその関連するフルオロフォアであるローダミングリーン-ジニトロアニリン(RG-DN);ブラックホールクエンチャーアプタマー(BHQapt)(A1)及びその関連するフルオロフォアであるCY3-BHQ1;レッド-ブロッコリー(Red-Broccoli)及びその関連するフルオロフォアであるDFHO;DNB(1,3-ジニトロベンゼン)及びその関連するフルオロフォアであるテトラメチルローダミン-ジニトロアニリン(TMR-DN)及びスルホローダミン-ジニトロアニリン(SR-DN);ジメチルインドールレッド(DIR)アプタマー及びその関連するフルオロフォアであるジメチルインドールレッド;マラカイトグリーン(MG)アプタマー及びその関連するフルオロフォアであるマラカイトグリーン;ジメチルインドールレッド2s-アプタマー及びその関連するフルオロフォアであるジメチルインドールレッド-pro;スルホローダミンBアプタマー及びその関連するフルオロフォアであるパテントブルー((例えば)Bouhedda F. Et al., International Journal of Molecular Sciences, 2017を参照)が挙げられるがこれらに限定されない。重要なことは、いくつかのフルオロフォアは低いレベルの生来の蛍光又はバックグラウンドの蛍光を有している可能性があるにも関わらず、分子の蛍光を増強するフルオロフォアとRNAアプタマーとの間の結合相互作用である。
【0190】
したがって、本発明の別の態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該試験キットは、
(i)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するステロイドホルモン受容体;及び
(ii)該受容体-リガンド複合体に結合する核酸応答エレメント;及び
(iii)該核酸応答エレメントに作動可能に連結されたレポーター構築物
を含み、ここで、該レポーター構築物は、該受容体-リガンド複合体が該核酸応答エレメントに結合した場合に活性化され、
ここで、該試料中のリガンドの存在は、該試料を該試験キットと配合し、該レポーター構築物の転写が検出された時に決定される。
【0191】
本発明のさらなる態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該試験キットは、
(i)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するステロイドホルモン受容体;及び
(ii)該受容体-リガンド複合体に結合する核酸応答エレメント;及び
(iii)該核酸応答エレメントに作動可能に連結されたレポーター構築物;及び
(iv)転写機構
を含み、ここで、該レポーター構築物は、該受容体-リガンド複合体が該核酸応答エレメントに結合した場合に活性化され、
ここで、該試料中のリガンドの存在は、該試料を該試験キットと配合し、該レポーター構築物の転写が検出された時に決定される。
【0192】
本発明のこの態様によると、該試験キットはさらに、本明細書に記載のようなステロイドホルモン受容体補因子、ステロイド代謝機構及び/又は無細胞抽出物を含み得る。
【0193】
本発明のこの態様による特定の例では、(例えば)mRNA又はcDNAを含むレポーター遺伝子転写物レベルは、定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR、例えばリアルタイムqPCR及び逆転写qPCR)などの確立された技術を使用して、又はインターカレートした色素の検出に基づく蛍光などの他の技術を使用して、半定量/定量され得る。例えば、RNAアプタマーに結合してRNA-フルオロフォア複合体を形成するフルオロフォアの使用は、本明細書に記載のとおりである。これらの技術及び他の技術は当業者には公知であろう。
【0194】
したがって、本発明の別の態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該試験キットは、
(i)受容体-リガンド複合体を形成するステロイドホルモン受容体;及び
(ii)該受容体-リガンド複合体に結合する核酸応答エレメント;及び
(iii)該核酸応答エレメントに作動可能に連結されたレポーター構築物
を含み、ここでの該レポーター構築物は、フルオロフォアに結合することのできる少なくとも1つのRNAアプタマー配列を含み、
ここで、該レポーター構築物は、該受容体-リガンド複合体が該核酸応答エレメントに結合した場合に活性化され、
ここで、該試料中のリガンドの存在は、該試料を該試験キットと配合し、少なくとも1つのRNAアプタマーへのフルオロフォアの結合によって活性化された蛍光が検出された時に決定される。
【0195】
本発明のこの態様による一例では、核酸応答エレメントとレポーター構築物は同じ核酸配列上に含まれる。関連した一例では、核酸応答エレメントとレポーター構築物とを含む核酸配列は以下のように配列番号19によって定義される:
配列番号19
【化1】
【0196】
本発明のこの態様によるさらに別の例では、該試験キットはさらに、レポーター構築物の転写を検出するための検出手段を含む。
【0197】
本発明のこの態様による一例では、該試験キットはさらに、RNAアプタマーを含むレポーター構築物の転写を容易にするための転写機構を含む。
【0198】
本発明のこの態様による別の例では、RNAアプタマーは、ホウレンソウ、iホウレンソウ及びブロッコリーから選択され、RNAアプタマーに結合し、それにより蛍光シグナルを発生するフルオロフォアは、3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシベンジリデンイミダゾリノン(DFHBI)である。
【0199】
本発明のこの態様による別の例では、RNAアプタマーはマンゴーであり、RNAアプタマーに結合し、それにより蛍光シグナルを発生するフルオロフォアはチアゾールオレンジ(TO)である。
【0200】
本発明のこれらの態様及び他の態様によるさらなる一例では、該レポーター構築物は、1コピーのRNAアプタマー配列、又は複数コピーのRNAアプタマー配列、(例えば)RNAアプタマーをコードしている2、3、4、5、6などのコピーの配列を含む。当業者は、RNAアプタマー配列のコピー数が、慣用的な最適化研究によって決定された場合の、最適なシグナルノイズ比によって支配されることを認識しているだろう。さらなる一例では、レポーター構築物は、当技術分野では「4×ホウレンソウ」と称される時もある、4コピーのRNAアプタマー配列iホウレンソウを含む。RNAアプタマーiホウレンソウをコードしているDNA配(配列番号17)は以下の通りである:
配列番号17
【化2】
【0201】
実施例7に報告されているレポーター構築物/アッセイプロトタイプを工学操作するために使用される4×ホウレンソウのDNA鋳型配列は、当技術分野において十分に文書化されている。
【0202】
あるいは、該アッセイは、ステロイドホルモン受容体に結合し細胞内でゲノム応答を惹起する能力を有するリガンドの存在について試料をスクリーニングするための手段としての、アッセイと試験試料を配合した時の、レポーター構築物のタンパク質発現レベルを検出するように構成されていてもよい。
【0203】
したがって、本発明のさらに別の態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該試験キットは、
(i)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するステロイドホルモン受容体;及び
(ii)該受容体-リガンド複合体に結合する核酸応答エレメント;及び
(iii)該核酸配列に作動可能に連結されたレポーター構築物
を含み、
ここで、該レポーター構築物は、該受容体-リガンド複合体が該核酸応答エレメントに結合した場合に活性化され、
ここで、該試料中のリガンドの存在は、該試験試料を該試験キットと配合し、該レポーター構築物の翻訳が検出された時に決定される。
【0204】
本発明のさらなる態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該試験キットは、
(i)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するホルモン受容体;及び
(ii)該受容体-リガンド複合体に結合する核酸応答エレメント;及び
(iii)該核酸配列に作動可能に連結されたレポーター構築物;及び
(iv)転写機構及び翻訳機構
を含み、
ここで、該レポーター構築物は、該受容体-リガンド複合体が該核酸応答エレメントに結合した場合に活性化され、
ここで、該試料中のリガンドの存在は、該試料を該試験キットと配合し、該レポーター構築物の翻訳が検出された場合に決定される。
【0205】
本発明のこの態様によると、該試験キットはさらに、本明細書に記載のようなステロイドホルモン受容体補因子及び/又はステロイド代謝機構及び/又は無細胞抽出物を含み得る。
【0206】
ここでも、該レポーター構築物の翻訳に基づいた遺伝子発現レベルの検出は、使用されるレポーターマーカーの性質に依存するだろう。例えば、該レポーター構築物は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、オレンジ色蛍光タンパク質などの蛍光タンパク質をコードしている遺伝子を含み得、蛍光遺伝子産物は、当業者には公知のスペクトルに基づいた方法を使用して検出及び半定量/定量することができる。あるいは、(例えば)β-ガラクトシダーゼ(LacZ)及びβ-グルクロニダーゼ(GUS)、ルシフェラーゼの検出についての広く確立された方法論が存在するので、本発明による試験キット、アッセイ、及び方法に使用するためのレポーター構築物は、これらの遺伝子産物をコードしている遺伝子を含むように工学操作され得る。
【0207】
図1~6、33及び34と合わせて読まれる実施例2及び5は、本発明のこの態様による試験キット/アッセイを説明している。
【0208】
本発明のさらに別の態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該試験キットは、
(i)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するステロイドホルモン受容体;及び
(ii)該受容体-リガンド複合体に結合する核酸応答エレメント;及び
(iii)該受容体-リガンド複合体と該核酸応答エレメントとの間の結合を検出するための検出手段
を含み、ここで、該試料中のリガンドの存在は、該試料を該試験キットと配合し、該受容体-リガンド複合体と該核酸応答エレメントとの間の結合が検出された時に決定される。
【0209】
本発明のこの態様によると、該試験キットはさらに、本明細書に記載のようなステロイドホルモン受容体補因子並びに/又はステロイド代謝機構並びに/又は転写機構及び/若しくは翻訳機構並びに/又は無細胞抽出物を含み得る。
【0210】
また、本発明のこの態様によると、該核酸応答エレメントと該活性化ホルモン受容体/受容体-リガンド複合体との間の結合相互作用は、直接測定される。直接結合相互作用は、光学的方法、分光法、可視分光法、ラマン分光法、紫外分光法、表面プラズモン共鳴、電気化学的方法、インピーダンス、抵抗、静電容量、質量の変化、力学的共振の変化による機械的感知、電気泳動、ゲル電気泳動、ゲル遅延度、画像撮影法、蛍光、及び蛍光共鳴エネルギー移動を含むがこれらに限定されない、いくつもの技術を使用して検出され得る。
【0211】
本発明のさらなる一例では、ホルモン受容体は、アンドロゲン受容体、エストロゲン受容体(エストロゲン受容体α(ER-α)及びエストロゲン受容体β(ER-β)を含む)、プロゲステロン受容体(プロゲステロン受容体A(PRA)及びプロゲステロン受容体B(PRB)を含む)、鉱質コルチコイド受容体、及び糖質コルチコイド受容体から選択される。
【0212】
したがって、本発明の他の態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該試験キットは、
(i)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するアンドロゲン受容体;又は
(ii)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するエストロゲン受容体(ここでのエストロゲン受容体は、エストロゲン受容体α又はエストロゲン受容体βである);又は
(iii)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するプロゲステロン受容体(ここでのプロゲステロン受容体は、プロゲステロン受容体A又はプロゲステロン受容体Bである);又は
(iv)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成する鉱質コルチコイド受容体;又は
(v)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成する糖質コルチコイド受容体;及び
(vi)上記の(i)~(v)のいずれか1つに定義されているような受容体-リガンド複合体に結合する核酸応答エレメント;及び
(vii)該受容体-リガンド複合体と該核酸応答エレメントとの間の結合を検出するための検出手段
を含み、ここで、該試験試料中のリガンドの存在は、該試料を該試験キットと配合し、該受容体-リガンド複合体と該核酸配列との間の結合が検出された時に決定される。
【0213】
本発明のさらなる態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該試験キットは、
(i)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するアンドロゲン受容体;又は
(ii)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するエストロゲン受容体(ここでのエストロゲン受容体は、エストロゲン受容体α又はエストロゲン受容体βである);又は
(iii)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するプロゲステロン受容体(ここでのプロゲステロン受容体は、プロゲステロン受容体A又はプロゲステロン受容体Bである);又は
(iv)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成する鉱質コルチコイド受容体;又は
(v)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成する糖質コルチコイド受容体;及び
(vi)上記の(i)~(v)のいずれか1つに定義されているような受容体-リガンド複合体に結合する核酸応答エレメント;及び
(vii)該受容体-リガンド複合体と該核酸応答エレメントとの間の結合を検出するための検出手段;及び
(viii)本明細書に記載のようなステロイドホルモン受容体補因子、ステロイド代謝機構、転写機構及び/若しくは翻訳機構並びに/又は無細胞抽出物
を含み、ここで、該試験試料中のリガンドの存在は、該試料を該試験キットと配合し、該受容体-リガンド複合体と該核酸配列との間の結合が検出された時に決定される。
【0214】
本発明のこれらの態様による一例では、該核酸応答エレメントは、試験される予定の試料の性質及び調べられる予定のリガンド個体群候補に依存して、アンドロゲン応答エレメント、エストロゲン応答エレメント、プロゲステロン応答エレメント、鉱質コルチコイド応答エレメント、又は糖質コルチコイド応答エレメントから選択される。
【0215】
別の例では、アンドロゲン応答エレメントは、活性化アンドロゲン受容体に選択的に結合するDNA結合モチーフを含む。関連した一例では、該DNA結合モチーフは、二量体のリガンド結合アンドロゲン受容体(すなわち(AR-L)2;ここでの「AR」はアンドロゲン受容体であり、「L」はリガンドである)に結合する。さらに関連した一例では、DNA結合モチーフは、活性化アンドロゲン受容体と会合する応答エレメントとの間に結合特異性を作り出すジヘキサマー回文構造を含有している。
【0216】
さらに別の例では、エストロゲン応答エレメントは、活性化エストロゲン受容体に選択的に結合するDNA結合モチーフを含む。関連した一例では、該DNA結合モチーフは、二量体のリガンド結合エストロゲン受容体(すなわち(ER-L)2;ここでの「ER」は、ER-α又はER-βから選択されるエストロゲン受容体である)に結合する。さらなる関連した一例では、該DNA結合モチーフは、活性化エストロゲン受容体と会合する応答エレメントとの間に結合特異性を作り出すジヘキサマー回文構造を含有している。
【0217】
さらなる一例では、該プロゲステロン応答エレメントは、活性化プロゲステロン受容体に選択的に結合するDNA結合モチーフを含む。関連した一例では、該DNA結合モチーフは、二量体のリガンド結合プロゲステロン受容体(すなわち(PR-L)2;ここでの「PR」はPRA又はPRBから選択されるエストロゲン受容体である)に結合する。さらに関連した一例では、該DNA結合モチーフは、活性化プロゲステロン受容体と会合する応答エレメントとの間に結合特異性を作り出すジヘキサマー回文構造を含有している。
【0218】
またさらなる一例では、鉱質コルチコイド応答エレメントは、活性化鉱質コルチコイド受容体に選択的に結合するDNA結合モチーフを含む。関連した一例では、該DNA結合モチーフは、二量体のリガンド結合鉱質コルチコイド受容体(すなわち(MR-L)2;ここでの「MR」は鉱質コルチコイド受容体である)に結合する。さらに関連した一例では、該DNA結合モチーフは、活性化鉱質コルチコイド受容体と会合する応答エレメントとの間に結合特異性を作り出すジヘキサマー回文構造を含有している。
【0219】
さらに別の例では、糖質コルチコイド応答エレメントは、活性化糖質コルチコイド受容体に選択的に結合するDNA結合モチーフを含む。関連した一例では、該DNA結合モチーフは、二量体のリガンド結合糖質コルチコイド受容体(すなわち(GR-L)2;ここでの「GR」は糖質コルチコイド受容体である)に結合する。さらに関連した一例では、該DNA結合モチーフは、活性化糖質コルチコイド受容体と会合する応答エレメントとの間に結合特異性を作り出すジヘキサマー回文構造を含有している。
【0220】
本発明のこれらの態様及び他の態様によるさらに別の例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.2≦x≦20]として定義される。関連した一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.3≦x≦7]として定義される。
【0221】
したがって、本発明のまたさらなる態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該試験キットは、
(i)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するホルモン受容体;及び
(ii)該受容体-リガンド複合体に結合する核酸応答エレメント;及び
(iii)該受容体-リガンド複合体と該核酸応答エレメントとの間の結合を検出するための検出手段
を含み、ここで、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.2≦x≦20]として定義され、
ここで、該試料中のリガンドの存在は、該試料を該試験キットと配合し、該受容体-リガンド複合体と該核酸応答との間の結合が検出された時に決定される。
【0222】
本発明のこの態様による一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.3≦x≦7]として定義される。
【0223】
本発明のこの態様によると、該試験キットはさらに、本明細書に記載のようなステロイドホルモン受容体補因子、ステロイド代謝機構、転写機構及び/若しくは翻訳機構、並びに/又は無細胞抽出物を含み得る。
【0224】
本発明によるアッセイは、応答エレメントが、二量体のホルモン受容体-リガンド複合体(すなわち(HR-L)2)のみ認識し選択的に結合する回文構造配列を含んでいる、システムを記載しているが、本発明はさらに、活性化ホルモン受容体と応答エレメントとの間の他の種類のタンパク質/核酸結合相互作用も考える。例えば、(HR-L)1、(HR-L)3などの(HR-L)2ではない複合体も、様々な応答エレメントに、又はアッセイデザイン及び機能に応じて活性化ホルモン受容体に結合するように構成され得、ここでは1つの受容体に結合した2つのリガンド(例えばHR-(L)2)、又は1つのリガンドに結合した複数の受容体(例えば(HR)2-L)、又は複数のリガンドに結合した複数の受容体(例えば(HR)3-(L)2)などが存在し、これらの全てが、応答エレメント内のDNAモチーフに選択的に結合し、プロモーター/エンハンサー構造に基づいてゲノム応答を活性化し得る。
【0225】
当業者は、本発明の試験キット、アッセイ及び方法が、リガンドとの結合を介して活性化されると、(例えば)ホモ二量体又はヘテロ二量体(又は実際にあらゆる他のリガンド-受容体複合体構造)を形成することのできる、1つ以上の受容体型を含み得ることを理解しているだろう。例示のためだけに、エストロゲン及びエストロゲン様ステロイドホルモン又は非ステロイドホルモンの検出の場合、該試験キット、アッセイ及び方法は、エストラジオールなどのステロイドリガンドにより活性化されると、(例えば)ER-α若しくはER-βのホモ二量体(すなわち(ER-α)-(ER-α);又は(ER-β)-(ER-β))又はER-αとER-βのヘテロ二量体(すなわち(ER-α)-(ER-β);又は(ER-β)-(ER-α))を形成し得る、エストロゲン受容体α(ER-α)とエストロゲン受容体β(ER-β)の両方の混合物を含んでいてもよい。同様に、プロゲスチン及びプロゲスチン様ステロイドホルモン又は非ステロイドホルモンの検出の場合、該試験キット、アッセイ及び方法は、プロゲスチンなどのステロイドリガンドにより活性化されると、(例えば)PRA若しくはPRBのホモ二量体(すなわちPRA-PRA又はPRB-PRB)又はPRAとPRBのヘテロ二量体(すなわちPRA-PRB又はPRB-PRA)を形成し得る、プロゲステロン受容体A(PRA)とプロゲステロン受容体B(PRB)の両方の混合物を含んでいてもよい。
【0226】
本発明の別の例では、該ステロイドホルモン受容体は細胞から精製されるか、又は組換えクローニング、発現、及び精製を通じて細胞ベースのホルモン受容体から誘導される。
【0227】
本発明のさらに別の例では、該ホルモン受容体は合成物であり、その合成は(i)内因性細胞ベースホルモン受容体に基づいてモデル化されているか、又は(ii)工学操作形の内因性の細胞ベースのホルモン受容体に基づいてモデル化されているかのいずれかであり、ここでの該受容体は、(例えば)アッセイ感度を向上させるためにリガンドのその受容体に対する結合速度論を改善するように、又は(例えば)アッセイの実施を支援するための基材若しくは固相支持体に固定させるためのペプチドハンドルを用いて受容体を工学操作するために、工学操作されている。例示のためだけに、当業者は、アンドロゲン受容体が、5つの異なるドメインを有し(名目上はA/B、C、D、E及びFのドメイン)、これらのいずれか1つのドメインは、リガンドとの結合感度が高く又は低くなるように受容体を工学操作するために突然変異されていてもよいことを理解しているだろう。他のホルモン受容体の構造は、ステロイドホルモン検出の関連分野の技術者には公知であり、同様に工学操作され得るだろう。
【0228】
当業者は、すぐ上で記載されているものなどのステロイドホルモン受容体(又は任意の他の試験キット/アッセイ成分)への修飾は、合成手段及び組換え手段を介して工学操作され得ることを認識しているだろう。
【0229】
当業者はまた、ステロイドホルモン受容体が、検出のために関心対象のリガンドに結合し、該リガンドによって活性化される能力を保持している限り、任意のステロイドホルモン受容体が、本発明の試験キット、アッセイ及び方法に使用され得ることを認識しているだろう。これは、内因性細胞型に基づいたステロイドホルモン受容体、並びに、組換え型を含み、リガンドに対する親和性の増加又は減少のために工学操作された組換えホルモン受容体を含む。
【0230】
したがって、本発明による試験キット、アッセイ及び方法は、ステロイド応答を惹起する任意のリガンドをスクリーニング/検出するために構成され得る。しかしながら、当業者は、本明細書に記載の様々なアッセイ概念によると、様々なクラスのホルモン(すなわちリガンド)の検出が、適切に構成され最適化されなければならない試験キット、アッセイ及び方法のフォーマットを必要としていることを認識しているだろう。例えば、テストステロン並びに他のテストステロン様ホルモンなどの、アンドロゲン受容体に結合し活性化するリガンドの検出は、活性化アンドロゲン受容体複合体に結合することのできるアンドロゲン応答エレメントと一緒にアンドロゲン受容体を含む、試験キット/アッセイを必要とする。
【0231】
本発明の一例では、アンドロゲン応答エレメントは、以下に示される1つ以上の配列を含む核酸配列である:
配列番号1
アンドロゲン応答エレメント:センス鎖
GGTACAnnnTGTTCT(ここでのnは任意のヌクレオチドである);又は
配列番号2
アンドロゲン応答エレメント:アンチセンス鎖
CCATGTnnnACAAGA(ここでのnは任意のヌクレオチドである)。
【0232】
同様に、エストラジオール、エストロン、他のエストロゲン様ステロイドホルモン及び非ステロイド性エストロゲン受容体修飾薬などの、エストロゲン受容体に結合し活性化するリガンドの検出は、活性化エストロゲン受容体複合体に結合することのできるエストロゲン応答エレメントと一緒に、エストロゲン受容体α(ER-α)又はエストロゲン受容体β(ER-β)のいずれかを含む試験キット/アッセイを必要とする。
【0233】
本発明の別の例では、該エストロゲン応答エレメントは、以下に示される1つ以上の配列を含む核酸配列である:
配列番号3
ER-α応答エレメント;センス鎖
AGGTCAnnnTGACCT(ここでのnは任意のヌクレオチドである);又は
配列番号4
ER-α応答エレメント;アンチセンス鎖
TCCAGTnnnACTGGA(ここでのnは任意のヌクレオチドである);又は
配列番号5
ER-β応答エレメント;センス鎖
AGGTCAnnnTGACCT(ここでのnは任意のヌクレオチドである);又は
配列番号6
ER-β応答エレメント;アンチセンス鎖
TCCAGTnnnACTGGA(ここでのnは任意のヌクレオチドである)。
【0234】
同様に、プロゲストーゲン及び他のプロゲストーゲン様ホルモンなどの、プロゲステロン受容体に結合し活性化するリガンドの検出は、活性化プロゲステロン受容体に結合することのできる核酸をベースとしたプロゲステロン応答エレメントと一緒に、プロゲステロン受容体A(PRA)又はプロゲステロン受容体B(PRB)を含む試験キット/アッセイを必要とする。
【0235】
本発明のさらに別の例では、プロゲステロン応答エレメントは、以下に示される1つ以上の配列を含む核酸配列である:
配列番号7
PRA応答エレメント;センス鎖
AGAACAnnnTGTTCT(ここでのnは任意のヌクレオチドである);又は
配列番号8
PRA応答エレメント;アンチセンス鎖
TCTTGTnnnACAAGA(ここでのnは任意のヌクレオチドである)。
配列番号9
PRB応答エレメント;センス鎖
AGAACAnnnTGTTCT(ここでのnは任意のヌクレオチドである);又は
配列番号10
PRB応答エレメント;アンチセンス鎖
TCTTGTnnnACAAGA(ここでのnは任意のヌクレオチドである)。
【0236】
同様に、アルドステロン及び他のアルドステロン様ホルモン又は非ステロイド性鉱質コルチコイド受容体修飾薬などの、鉱質コルチコイド受容体に結合し活性化するリガンドの検出は、活性化鉱質コルチコイド受容体に結合することのできる核酸をベースとした鉱質コルチコイド応答エレメントと一緒に、鉱質コルチコイド受容体を含む、試験キット/アッセイを必要とする。
【0237】
本発明のさらに別の例では、鉱質コルチコイド応答エレメントは、以下に示される1つ以上の配列を含む核酸配列である:
配列番号11
鉱質コルチコイド応答エレメント;センス鎖
AGAACAnnnTGTTCT(ここでのnは任意のヌクレオチドである);又は
配列番号12
鉱質コルチコイド応答エレメント;アンチセンス鎖
TCTTGTnnnACAAGA(ここでのnは任意のヌクレオチドである)。
【0238】
同様に、コルチゾール、他のコルチゾール様ホルモン、及び非ステロイド性糖質コルチコイド受容体修飾薬などの、糖質コルチコイド受容体に結合し活性化するリガンドの検出は、活性化糖質コルチコイド受容体に結合することのできる核酸をベースとした糖質コルチコイド応答エレメントと一緒に、糖質コルチコイド受容体を含む、試験キット/アッセイを必要とする。
【0239】
本発明のさらに別の例では、糖質コルチコイド応答エレメントは、以下に示される1つ以上の配列を含む核酸配列である:
配列番号13
糖質コルチコイド応答エレメント;センス鎖
AGAACAnnnTGTTCT(ここでのnは任意のヌクレオチドである);又は
配列番号14
糖質コルチコイド応答エレメント;アンチセンス鎖
TCTTGTnnnACAAGA(ここでのnは任意のヌクレオチドである)。
【0240】
以前に記載されているように、様々な応答エレメントが、活性化リガンド-受容体複合体に選択的に結合するように構成された結合モチーフを取り込んでいる。例えば、アンドロゲン、エストロゲン、プロゲステロン、鉱質コルチコイド、及び糖質コルチコイドの応答エレメントはそれぞれ、回文構造ジヘキサマー配列を含み、これはその二次構造の配向において、応答エレメントに対する二量体化リガンド受容体複合体(すなわち(HR-L)2)の結合を容易にする。
【0241】
本明細書に記載の試験キット、アッセイ、及び方法はさらに、本明細書に記載の試験キット、アッセイ、及び方法の機能及び/又は感度を増強するための、翻訳機構及び/若しくは転写機構、1つ以上のステロイドホルモン受容体補因子(熱ショックタンパク質を含むがこれらに限定されない)、並びに/又は緩衝液を含み得る。
【0242】
一例では、本発明によるステロイドホルモン受容体補因子は、熱ショックタンパク質70、熱ショックタンパク質40、熱ショックタンパク質90、p23、熱ショックタンパク質組織化タンパク質(Hop)、48kD Hipタンパク質、p60、及びFKBP52を含むがこれらに限定されない。
【0243】
本発明はさらに、試験試料からの1つ以上の生理学的に不活性なリガンドの検出を考え、該リガンドは、生理学的に活性な形態へと変換されると、ステロイドホルモン受容体を最終的に活性化することができる。したがって、本明細書に記載のような試験キット、アッセイ、及び方法はさらに、その対応するステロイドホルモン受容体を活性化するように、リガンドをプロセシングすることのできるステロイド代謝機構を含む。このように、栄養サプリメントなどの試料からの、生理学的に不活性なリガンド(例えばプロホルモン)の検出が可能である。
【0244】
したがって、本発明のまたさらなる態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための試験キットが提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該試験キットは、
(i)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するステロイドホルモン受容体;及び
(ii)該受容体-リガンド複合体に結合する核酸応答エレメント;及び
(iii)該受容体-リガンド複合体と該核酸応答エレメントとの間の結合を検出するための検出手段;及び
(iv)ステロイドホルモン受容体補因子、転写機構及び/若しくは翻訳機構、ステロイド代謝機構並びに/又は無細胞抽出物
を含み、ここで、該試料中のリガンドの存在は、該試料を該試験キットと配合し、該受容体-リガンド複合体と該核酸配列との間の結合が検出された時に決定される。
【0245】
本発明のこの態様による一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.2≦x≦20]として定義される。関連した一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.3≦x≦7]として定義される。
【0246】
特定の例では、ステロイドホルモン受容体補因子、翻訳機構及び/若しくは転写機構並びに/又はステロイド代謝機構は、本明細書において定義されているような1つ以上の無細胞抽出物に由来し得る。
【0247】
別の例では、該試験試料は生物学的試料である。関連した一例では、該生物学的試料は、血液、血漿、血清、唾液、細胞間質液、精液、及び尿を含むがこれらに限定されない、体液試料である。
【0248】
別の例では、該試験試料は、ウマ動物、イヌ動物、ヒトコブラクダ動物、ウシ動物、ブタ動物、ヒツジ動物、ヤギ動物、トリ動物、サル動物、ネズミ動物、ウサギ動物、シカ動物、魚類動物、サケ科動物、霊長類動物、サル動物、及びヒト動物を含むがこれらに限定されない、動物に由来する。
【0249】
別の例では、該試験試料は非生物学的試料である。関連した一例では、非生物学的試料は、液体試料(水を含む)、土壌試料、テキスタイル試料(プラスチックを含むがこれらに限定されない)、鉱物試料、食物試料、及び医薬品を含むがこれらに限定されない。
【0250】
食物試料の例としては、野菜、肉類、飲料、サプリメント、及びハーブエキスが挙げられるがこれらに限定されない。
【0251】
医薬品の例としては、薬物、トニック剤、シロップ剤、丸剤、ロゼンジ剤、クリーム剤、スプレー剤、及びゲル剤が挙げられるがこれらに限定されない。
【0252】
デザイナーステロイド及び非ステロイド系蛋白同化薬は、アンチドーピングラボラトリーにとって重大で増大している難題を課している。テトラヒドロゲストリノン及びマドールの検出と共に2000年代初期に初めて同定されたが、デザイナー蛋白同化薬によって課される脅威は、数多くの薬剤候補を含むまでに急速に増えている。これらの合成由来の蛋白同化薬は、製造及び供給の両面から発覚又は法的管理を回避するように設計され、多くはインターネット上で広く入手可能であり、ここではいわゆる「サプリメント」として販売されている。
【0253】
質量分析法は依然として、生物学的試料及び/又はサプリメント中の既知の不正なステロイドホルモン及び非ステロイド系蛋白同化薬の同定のための主要な技術である。質量分析法は、その感度及び特異性にも関わらず、検出のためにステロイド及び非ステロイド系蛋白同化薬の化学構造の事前の知識を必要とすることによって依然として限界がある。さらに、質量分析法は、検出される蛋白同化薬の生物学的活性についての情報を提供することができず、生理活性分子と生理不活性分子とを区別することができない。これは、アスリート、コーチ、トレーナー、マネージャー、及び製造業者の法的告発にとって必要とされる情報である。
【0254】
近年、酵母及び哺乳動物細胞に基づいたインビトロのアンドロゲンバイオアッセイを使用して、サプリメント中の、新規合成アンドロゲンの存在、プロゲスチンのアンドロゲン能、並びにアンドロゲン、プロアンドロゲン、デザイナーアンドロゲン及びデザイナー非ステロイド系蛋白同化薬が検出されている。しかしながら、これらのアッセイは、本明細書において何処かで記載されているような、分子的複雑性に関連した限界があり、分子的性質及び微生物学的性質の両面のある、時間のかかる、労力のかかるかつ費用のかかる、技能を必要とする。したがって、慣例のスクリーニングに含めるために、アッセイをそれらの現在の形態で考えることは不可能である。換言すれば、酵母及び哺乳動物細胞に基づいたアッセイは、高処理量ではない又は費用効果的ではないために、かなりの制約がある。
【0255】
有利には、本発明は、基本的にステロイドホルモン受容体活性化の原則に基づいて作動する、活性に基づいた試験キット、アッセイ及び方法を提供する。試験される予定の試料内に存在するリガンドによるステロイドホルモン受容体活性化を検出することによって、本発明は、調べられるリガンド(群)の構造に関する知識に依拠せず、生物学的に活性なリガンドの存在と生物学的に不活性なリガンドの存在とを容易に区別することができ、かつ、実施するのに複雑な実験機器又は特殊な専門知識を必要としない費用効果的で信頼性があり再現性があるシステムを提供する、無細胞試験キット、アッセイ、及び方法を提供する。
【0256】
したがって、本明細書に記載の試験キット、アッセイ、及び方法による一例では、リガンドは、運動能力向上デザイナー薬物及び/又はステロイドである。
【0257】
本明細書に記載の試験キット、アッセイ、及び方法による別の例では、リガンドは、未知の化学構造のものである。
【0258】
本明細書に記載の試験キット、アッセイ、及び方法によるさらなる一例では、リガンドは、以前には未知であった化学構造のものである。
【0259】
本発明はまた、本明細書に記載の試験キットに基づいたアッセイ法を考える。
【0260】
したがって、本発明のさらに別の態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするためのアッセイ法が提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該アッセイ法は、
(i)(a)該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するステロイドホルモン受容体;及び
(b)該受容体-リガンド複合体に結合する核酸配列;及び
(c)該受容体-リガンド複合体と該核酸配列との間の結合を検出するための検出手段
を含むアッセイ試薬を準備する工程;並びに
(ii)該試験試料を該アッセイ試薬と配合する工程
を含み、ここで、該試料中のリガンドの存在は、該試験試料を該試験キットと配合し、該受容体-リガンド複合体と該核酸配列との間の結合が検出された場合に決定される。
【0261】
本発明のこの態様によると、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり得、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.2≦x≦20]として定義される。関連した一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.3≦x≦7]として定義される。
【0262】
本発明のこの態様によると、該試験キットはさらに、本明細書に記載のような、ステロイドホルモン受容体補因子、ステロイド代謝機構、転写機構及び/若しくは翻訳機構、並びに/又は無細胞抽出物を含み得る。
【0263】
本明細書に記載の方法によると、試験結果を、基準閾値と比較して、試験試料中に存在するリガンドによって発生したシグナルの絶対レベルを決定してもい。実際に出願人は、リガンドに結合していない受容体による応答エレメントの非特異的結合及び/又は活性化を観察した(例えば、
図32)。したがって、あらゆる所与の試験試料について半定量的分析を実施することが望ましい場合、本明細書に記載のアッセイ及び方法を、まず基準閾値を確立するために試験試料の非存在下において(例えば、陰性対照として作用するエタノールの存在下で)実施してもよい。試験試料から得られたアッセイ結果を、その後、基準閾値と比較して、簡単な減算法を使用して試料中に存在するリガンド(群)に起因する絶対活性を決定してもよい。
【0264】
本発明はさらに、基準化合物と比較した試験化合物の強度を決定するための、本明細書に記載のアッセイ及び試験キットの使用を考える。本発明によると、「相対強度」という用語は、基準化合物に対して試験化合物の生物学的活性を正規化することによって決定された場合の、基準化合物と比較した試験化合物の生物学的活性の倍数として定義される。
【0265】
試験化合物及び基準化合物の生物学的活性は、EC50、すなわち、その特定の化合物についての用量反応曲線から最大の半分の応答を与える化合物の濃度を使用して決定され得る。用量反応曲線は、該化合物を連続希釈し、そのステロイドホルモン受容体との結合/活性化プロファイルを測定することによって作成される。その後、化合物の濃度(すなわち、化合物の連続希釈により、対数スケールで最良に提示される濃度範囲が生じる)に対する、測定された活性(例えば、蛍光、吸光度、化学発光などによって測定された場合の)のプロットを作成する。
【0266】
相対強度の概念をさらに説明するために、相対強度の測定及び計算の一例を
図44に提示する。テストステロン(T;基準)のアンドロゲン受容体との結合/活性化の活性を、ジヒドロテストステロン(DHT;試験化合物)と比較し、ここでの測定されたEC
50値は、4.08×10
-9(T)及び1.74×10
-9(DHT)であった。相対強度は、ジヒドロテストステロンのEC
50値に対してテストステロンのEC
50値を正規化することによって決定され(すなわち、4.08×10
-9/1.74×10
-9)、約2.3の相対強度が算出された。換言すれば、この実験では、ジヒドロテストステロンの方が、テストステロンよりも、その標的であるアンドロゲン受容体に結合し活性化する際に2.3倍強力であった。
【0267】
当業者は、試験化合物の相対強度の尺度は、使用される基準化合物と比較したものであることを認識しているだろう。換言すれば、試験化合物の相対強度は、その生物学的活性を正規化する基準化合物に応じて異なる可能性がある。
【0268】
相対強度が1を超える場合、試験化合物は、アッセイにおいて基準化合物と比較して、より高く測定された生物学的活性を引き起こす。相対強度が1未満である場合、試験化合物は、アッセイにおいて基準化合物と比較して、より低く測定された生物学的活性を引き起こす。相対強度が1である場合、試験化合物及び基準化合物はアッセイにおいて同等な生物学的活性を引き起こす。
【0269】
相対強度はまた、問題の試験化合物の活性化係数を決定するために使用してもよい。本明細書において使用する活性化係数は、試験化合物の2つの状態の間の相対的活性化の尺度としての、酵母細胞中で又は無酵母細胞抽出物(すなわち代謝機構を全く含有していない)を使用して決定された試験化合物の、哺乳動物細胞中で又は無哺乳動物細胞抽出物(すなわち代謝機構を含む)を使用して決定された同試験化合物の相対強度に対する、相対強度に関する。1を超える活性化係数は、該試験化合物が、アッセイにおいて代謝機構の存在下において、より生理学的に活性な状態への代謝的変換を受けたことを意味する。
【0270】
この点をさらに説明するために、出願人は、以下のような表IIにおいて、酵母細胞株及びヒト細胞株の両方において、ジヒドロテストステロンに対する、既知のアンドロゲン蛋白同化ステロイドである「ジャングル・ウォーフェア(Jungle Warfare)」のEC50及び相対強度を決定した。
【0271】
【0272】
活性化係数は、哺乳動物細胞(すなわち、生理学的に不活性な形態から生理学的に活性な形態へと、あまり生物学的に活性ではない形態からより生物学的に活性な形態へと、より生物学的に活性な形態からあまり生物学的に活性ではない形態へと、又は生理学的に活性な形態から生理学的に不活性な形態へとアンドロゲンを変換することのできる代謝機構を含む)中で測定された相対強度を、酵母細胞(すなわち代謝機構を含まない)中で測定された相対強度で割ることによって計算された。これにより、約40の活性化係数(すなわちAF=相対強度(哺乳動物)/相対強度(酵母))が得られ、これはこの例ではEC50値を考慮すると、「ジャングル・ウォーフェア」は生理学的に活性なサプリメントとして存在することを意味し、これは代謝後に、ジヒドロテストステロン(これは基準化合物であり、これに対して、その活性がこれらの計算のために正規化される)よりもより生理学的に活性である形態へと変換する。
【0273】
さらに別の例では、出願人は、BMS-564929の分類に指定された公知の選択的アンドロゲン受容体分子(SARM)のEC50及び相対強度を決定した。このSARMは、競走馬及びヒトの両方において以前に検出されたことがあった。酵母(すなわち代謝機構が全くない)におけるジヒドロテストステロンと比較したその相対強度によって決定されたような、BMS-564929は、およそ5×10-4という非常に低い相対強度値を有していた(表II)。しかしながら、BMS-564929のEC50を、HuH7細胞(ここで代謝される)において測定した場合、それは、ジヒドロテストステロンの相対強度に対して約60%の相対強度(すなわち0.607)というはるかにより強力なアンドロゲンとなる。結果として、1200を超えるその活性化係数は、BMS-564929が、代謝後に、不活性な選択的アンドロゲン受容体修飾薬から活性な選択的アンドロゲン受容体修飾薬へと変換されることを反映する。
【0274】
これらのデータは、特定の化合物/リガンドを調べた場合の代謝の活性化力、及び、調査中の試料に由来する化合物/リガンドを代謝(すなわち、生理学的に不活性な形態から生理学的に活性な形態へと、生理学的に活性な形態からより生理学的に活性な形態へと、より生理学的に活性な形態からあまり生理学的に活性ではない形態へと、又は生理学的に活性な形態から生理学的に不活性な形態へと化合物/リガンドを変換)することのできる代謝機構を場合により含むアッセイシステムの重要性を強調する。この特色の非存在下では、アッセイシステムは、プロドラッグ形/非代謝形の(例えば)デザイナー薬物などを検出する際に常に信頼性があるわけではない可能性があり、さもなければ検出から免れる可能性がある。
【0275】
本発明のさらに別の態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするためのアッセイ法が提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体と複合体を形成し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該アッセイ法は、
(i)a.該試験試料に由来するリガンドと受容体-リガンド複合体を形成するステロイドホルモン受容体;及び
b.該受容体-リガンドに結合する核酸応答エレメント;及び
c.該受容体-リガンド複合体と該核酸応答エレメントとの間の結合を検出するための検出手段
を含むアッセイ試薬を準備する工程;並びに
(ii)該試験試料を該アッセイ試薬と配合する工程
を含み、ここで、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.2≦x≦20]として定義され、
ここで、該試料中のリガンドの存在は、該試料を該試験キットと配合し、該受容体-リガンド複合体と該核酸応答エレメントとの間の結合が検出された場合に決定される。
【0276】
一例では、該試験キットにおける核酸応答エレメントに対するステロイドホルモン受容体の相対量はx:1であり、ここでのxは、ステロイドホルモン受容体の量であり、[0.3≦x≦7]として定義される。
【0277】
特定の例では、本明細書に記載の本発明は、ヒト、並びに、競走馬、ラクダ、及びイヌをはじめとするヒト以外のアスリートに使用される運動能力向上プロドラッグ/薬物(例えば、蛋白同化ステロイド及び選択的アンドロゲン受容体修飾薬)の検出に有用性を有する。
【0278】
したがって、本発明の別の態様では、アスリートのドーピング状態を判定するための方法が提供され、該方法は、アスリートから得られた試験試料を、本明細書に記載のような試験キットと配合する工程を含む。
【0279】
本発明のこの態様による一例では、アスリートから得られた試験試料は、血清又は血漿の試料である。
【0280】
本発明のさらなる態様では、リガンドの存在について試験試料をスクリーニングするための製品が提供され、該リガンドは、ステロイドホルモン受容体を活性化し、細胞内にある場合にはゲノム応答を惹起することができ、該製品は、本明細書に記載のような試験キットを、該試料中のリガンドの存在をどのように検出するかの説明書と一緒に含む。
【0281】
本発明のまたさらなる態様では、アスリートにおけるドーピングを判定するための製品が提供され、該製品は、本明細書に記載のような試験キットを、アスリートに由来する試料中のリガンドの存在を検出するための説明書と一緒に含み、該試料中の該リガンドの存在は、アスリートにおけるドーピングの指標である。
【0282】
最後に、本発明はさらに、リガンドのそのステロイドホルモン受容体への結合を妨げ、これにより該リガンドがもはや該受容体を活性化しゲノム応答を惹起しないような、化合物について関心対象の試料をスクリーニングすることによって、標的リガンドのアンタゴニストを検出するための、本明細書に記載のような試験キット、アッセイ及び方法の使用を考える。
【0283】
これは、(例えば)内分泌癌及び非内分泌癌の処置用の治療薬候補として、ステロイドホルモン受容体の活性化を遮断するアンタゴニストについてスクリーニングする必要性がある場合に、特に有用である。例えば、本発明による1つ以上のエストロゲン受容体を含む活性に基づいた試験キット、方法及びアッセイを使用して、乳癌組織におけるエストロゲン受容体活性化のアンタゴニストの存在について化合物ライブラリーをスクリーニングすることができる。
【0284】
本発明は、以下の実施例を参照してさらに記載されている。特許請求されている本発明は、いずれにしても、これらの実施例によって限定されるものではないことが理解されるだろう。
【0285】
実施例
以下の情報及びデータは、(例えば)テストステロン及びジヒドロテストステロンをはじめとする、アンドロゲン受容体に結合し活性化するリガンドの検出に関する、様々なプロトタイプアッセイを実証する。これらの実施例を使用して、本明細書において記載され特許請求されている活性アッセイプラットフォームを説明し、ここでのアンドロゲンリガンドの検出によって例証されるアッセイ概念及び原理は、エストラジオールをはじめとするエストロゲン受容体に結合するリガンド、プロゲステロンをはじめとするプロゲステロン受容体に結合するリガンド、鉱質コルチコイド受容体に結合するリガンド、及び糖質コルチコイド受容体に結合するリガンドを含むがこれらに限定されない、関心対象の他の受容体リガンドの検出にも同等に適用されるだろう。
【0286】
実施例1
アッセイ概念の概観
1.1 インビトロ転写プラットフォーム
インビトロ転写プラットフォームの主な成分は、アンドロゲン応答エレメント(ARE)エンハンサーにより駆動される最小プロモーターDNA鋳型、組換えアンドロゲン受容体(AR)、準備のできた転写機構を含有している細胞抽出物又は核抽出物、及びRNA合成若しくはRNAの合成とタンパク質の合成の両方を可能とする、転写緩衝液又は転写/翻訳緩衝液を含む。最小プロモーターは、基礎レベルのRNA分子の合成及びその後にタンパク質の合成を駆動するだろう。アンドロゲン応答エレメント/エンハンサーに結合したリガンド活性化アンドロゲン受容体による転写の活性化は、RNA分子の合成量及びタンパク質のレベルを増加させるだろう。
【0287】
アンドロゲン応答エレメント(ARE)
これらの実験において試験されたアンドロゲン応答エレメントとしては以下が挙げられる:
1.ステロイドホルモンに応答して強く転写される応答エレメントである、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)、
2.エンハンサー/アンドロゲン応答エレメント、これはエンハンサー領域のためにアンドロゲン受容体に対してより特異的である。共通のアンドロゲン応答エレメントのDNA配列は、糖質コルチコイド受容体(GR)、鉱質コルチコイド受容体(MR)、及びプロゲステロン受容体(PR)の応答エレメントに対して高い相同性を示す。アンドロゲンに対するアンドロゲン応答エレメントの特異性を高めるために、隣接するアンドロゲン特異的エンハンサー領域が使用された。
【0288】
アンドロゲン受容体(AR)
アブカム社及びシグマアルドリッチ社の両方から得られたアンドロゲン受容体をはじめとする独立の業者からの市販の組換えアンドロゲン受容体(AR)が試験された。
【0289】
細胞抽出物又は核抽出物
試験された細胞抽出物又は核抽出物としては、市販のHeLa(子宮頸癌細胞株)抽出物、社内で作製されたHeLa細胞抽出物、社内で作製されたPC-3(前立腺癌細胞株)抽出物、社内で作製されたHEK293(腎臓)抽出物、及び社内で作製されたHuH7(ヒト肝臓細胞株)抽出物が挙げられる。
【0290】
1.2 アンドロゲン応答エレメントにより媒介される転写/翻訳の説明
天然のアンドロゲンのシグナル伝達は、アンドロゲン性分子が細胞に拡散することから始まり、そこで該分子は、熱ショックタンパク質90(HSP90)に結合して細胞質内で不活性化状態に保たれているアンドロゲン受容体に結合する。アンドロゲン性分子(又はリガンド)と結合すると、アンドロゲン受容体は、コンフォメーション変化を受けてHSP90を放出し、核局在化部位及び二量体化部位を露出させる。リガンド-アンドロゲン受容体複合体は核に移動し、そこでアンドロゲン受容体は、DNA内のアンドロゲン応答エレメントに結合し、RNAポリメラーゼIIに指令してアンドロゲン受容体により調節される遺伝子の転写を開始する。RNAポリメラーゼIIによる遺伝子の転写は、mRNA転写物を産生し、これは次に、タンパク質を作成するためのリボソーム機構の鋳型として作用する。
【0291】
簡単に言うと、アンドロゲン-アンドロゲン受容体は、DNAに結合して[工程1;実施例4のアッセイプロトタイプ3]、mRNAを生成し[工程2;実施例3のアッセイプロトタイプ2]、これはタンパク質合成のための鋳型として作用する[工程3;実施例2のアッセイプロトタイプ1]。
【0292】
実施例2
アッセイプロトタイプ1:アンドロゲン応答エレメント/エンハンサーにより調節されるレポータータンパク質の合成
2.1 概観
アンドロゲン受容体がアンドロゲン応答エレメント/エンハンサーに結合した後、それはRNAポリメラーゼIIを指揮して細胞内転写機構と相互作用し、メッセンジャーRNA分子を生成し、これは次に、タンパク質合成のための鋳型として作用する。最終結果は新規タンパク質の合成である。
【0293】
これらの実験では、アンドロゲン応答エレメント/エンハンサー配列は、プラスミドpSF-pA-最小プロモーター-GFP(オックスフォードジェネティクス社)内のpA-最小プロモーター-緑色蛍光タンパク質(GFP)配列の上流にクローニングされ、これにより、インビトロで連動した転写/翻訳反応に導入されると、このDNA鋳型は、リガンドにより活性化されるアンドロゲン受容体を駆動してGFPを生じるだろう。
【0294】
2.2 アプローチ及び結果
(1)アンドロゲン応答エレメント/エンハンサー配列は、
図1に示されているように、エンハンサー配列、その後に3つの直列のアンドロゲン応答エレメント配列を有するように設計された(配列番号15)。
【0295】
センスオリゴヌクレオチド及びアンチセンスオリゴヌクレオチドは、別々の分子としてシグマアルドリッチ社によって商業的に合成された。別々の鎖を、慣用的な温度ハイブリダイゼーション反応によってアニーリングした。アニーリングは、3%ゲル電気泳動によって確認された。合成されたアンドロゲン応答エレメント/エンハンサー配列は、それぞれ5’末端及び3'末端に、制限酵素SalI及びSmaIのオーバーハング配列を取り込み、これにより、定方向の制限酵素クローニングを使用して、アンドロゲン応答エレメント/エンハンサー配列DNAを、これもSalI及びSmaIで消化されているプラスミドpSF-pA-最小プロモーターGFPに挿入することができる。その後、プラスミドDNAを、インビトロ転写/翻訳反応に使用する前に、制限酵素PvuIを用いて線状化した。
【0296】
(2)市販のインビトロ転写/翻訳キット(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、1工程のヒトの連動インビトロ転写キット)を使用した。該キットは、HeLa細胞抽出物、アクセサリータンパク質、及び反応混液を含有している。該反応混液に、組換えアンドロゲン受容体タンパク質(アブカム社)を加えた。
【0297】
(3)転写を開始するために、4nMのテストステロン(T)を、構築した反応に加えた。陰性対照については、アンドロゲン受容体は反応に添加されなかった。反応液を30℃で300rpmで振盪しながら2時間インキュベートした。
【0298】
結果を
図2に提示し、ここではテストステロンにより活性化されるアンドロゲン受容体が、GFPの転写及び翻訳を誘導する。
【0299】
次に、アッセイの誘導性を決定した。反応を、50μlの反応液を調製したことを除き、上記のように組み立てた。(ベースラインのプロモーター活性化を)測定するためのアンドロゲン受容体を全く含まない陰性対照、並びに、DNA鋳型を全く含まない対照(細胞溶解液の自己蛍光を測定するための)も含まれた。転写/翻訳を活性化するために、4nMのテストステロンが添加されたか、又は、活性化されないビヒクル対照として、エタノールが0.1%v/vの最終濃度で添加された。反応液を30℃で300rpmで振盪しながら5時間インキュベートした。
【0300】
結果を
図3に示し、ここでの、緑色蛍光タンパク質の翻訳によって発生するような蛍光レベルは、様々な対照反応と比較して、テストステロンにより誘導されるアンドロゲン受容体活性化反応の方が有意に高かった。
【0301】
理想的には、アッセイの1つの応用は、野外適用(例えば競走馬又はアスリートの走路)において、検査を使用できることであろう。この目的を達成するために、出願人は、ろ紙ディスクの表面上への凍結乾燥反応により、有効なインビトロでの転写/翻訳反応がもたらされたかどうかを試験した。
【0302】
反応液(50μl)を上記のように構築し(試験物、及び陰性対照としてのアンドロゲン受容体を全く含まないもの)、その後、ホワットマンろ紙の小さな環状ディスク上にピペットで移した。反応混液を移した直後、ろ紙を、液体窒素中で瞬間凍結させ、凍結乾燥機に移し、その後、反応液-ろ紙ディスクを-80℃で一晩保存した。
【0303】
翌日、ペーパーディスクをヌクレアーゼ非含有水で復元し、30℃の温度まで上げた。インビトロ転写/翻訳反応を、4nMのテストステロンを用いて開始し、反応混合物を30℃で300rpmで振盪しながら6時間インキュベートした。
【0304】
結果を
図4に示し、ここではアンドロゲン受容体陽性アッセイ反応は、アンドロゲン受容体を全く含まない対照と比較して、増加した蛍光を有していた。アンドロゲン受容体を全く含まない反応についての高い蛍光ベースラインは大部分が、ペーパーディスクの自己蛍光に起因する可能性がある。
【0305】
アッセイの特異性を実証するために、出願人は、他の性ホルモン(例えば)エストラジオール及びプロゲステロンに対する無応答を実証することによって、テストステロン特異的な活性化を示した。これらのデータは
図5に示され、ここでは、高い用量(すなわちμMの濃度)でさえ、エストラジオール及びプロゲステロンは、アンドロゲン受容体-アンドロゲン応答エレメント/エンハンサーにより調節されるインビトロ転写/翻訳アッセイを活性化することができなかった。これらのデータはまた、増加したテストステロン[μM対nM(
図3)]が、より高いレベルの蛍光を誘導したことを実証し、このことは、予想されたように、より多くのアンドロゲン受容体が、より高いテストステロン濃度で生成されたことを示す(蛍光単位はそれぞれ8000対600)。
【0306】
アッセイの感度を次に試験した。インビトロ転写反応と翻訳反応を構築し、3.7×10
-7から5×10
-11Mの濃度範囲にわたるテストステロンによって活性化した。データを
図6に示し、ここでは約EC
50(最大の半分の応答をもたらす用量)は7.9×10
-11Mである。
【0307】
要約すると、インビトロで連動した転写/翻訳アッセイ(すなわちアッセイプロトタイプ1)は、テストステロンによるアンドロゲン受容体の活性化後に、アンドロゲン応答エレメント/エンハンサーにより調節されるDNA鋳型からGFPを成功裡に生成した。これらのデータは、アッセイプロトタイプ1が、(i)テストステロンに対して特異的であり、エストラジオール又はプロゲステロンによって活性化不可能であり、(ii)nMからnM未満の生理学的範囲にわたり感度が高く、(iii)反応混合物を、瞬間凍結させ、凍結乾燥させ、-80℃で保存した後に復元させることができることを示し、これは、野外試験バージョンのこの試験の重要な最初の工程を例証する所見である。
【0308】
実施例3
アッセイプロトタイプ2:アンドロゲン応答エレメント/エンハンサーにより調節されるRNA合成
インビトロ転写(IVT、翻訳にもはや連動していない)反応から生成されたRNA分子の量を検出及び測定するための、多くの様々なアプローチが調べられ、これには:
(i)RNA分子の直接的検出(すなわち)原理証明、
(ii)フルオロフォアで標識されたヌクレオシド三リン酸の取り込みを通じたRNA分子の直接的検出、
(iii)逆転写定量PCR、
(iv)RNAアプタマー及びフルオロフォアとの結合
が含まれる。
【0309】
mRNA転写物からタンパク質を産生する必要がもはやなかったので、このアッセイプロトタイプの検証に使用されるmRNA転写物は、(a)より短い分子の方が分解からより保護されるので、切断短縮されたGFP配列であるか;(b)合成mRNA配列であるか;又は(c)RNAアプタマー配列であった。
【0310】
3.1 プロトタイプ2によるRNAの直接的検出
(i)インビトロ転写により生成されたRNA分子の可視化
インビトロ転写反応によりRNAが産生された(これは、シアニン-5-ヌクレオシド三リン酸による標識、逆転写定量PCR、又はRNAアプタマーの検出によって定量することができる)ことを示すために、インビトロ転写反応を、MMTV-ルシフェラーゼDNA鋳型を用いて調製し、テストステロン(4nM)又はビヒクル対照としてのエタノール(0.1%v/v)を用いて活性化した。1時間のインキュベート後、RNA/DNAを標準的なカラム精製によって転写反応から精製し、その後、RNA/DNA分子をアガロースゲル電気泳動にかけた。その後、DNA分子及びRNA分子を、サイバーグリーン色素によって可視化した。結果を
図7に提示し、そこで850bpのRNAバンド(これは転写物の予想されたサイズである)が検出された。
【0311】
同様に、アンドロゲン応答エレメント/エンハンサーインビトロ転写反応がRNA分子を産生していることを示すために、インビトロ転写反応を、アンドロゲン応答配列/エンハンサーDNA鋳型を用いて調製し、テストステロン(4nMの1×テストステロン又は40nMの10×テストステロン)、エタノール(0.1%v/v)、G32又はG44(去勢競走馬に由来するウマ血漿試料)を用いて活性化した。1時間のインキュベート後、DNA/RNAを標準的なカラム精製によって転写反応から精製し、その後、DNA/RNA分子をアガロースゲル電気泳動にかけた。DNA及びRNAを、サイバーグリーン色素を用いて可視化した。データを
図8に提示する。
【0312】
(ii)インビトロ転写反応において産生されたRNA分子の蛍光による検出
次に、インビトロ転写反応において産生されたRNA分子を、Quant-IT RNAアッセイ(モレキュラープローブズライフテクノロジーズ社)を使用して定量した。アッセイは、二本鎖DNAよりもRNAに対して高度に選択的である蛍光色素に基づく。色素がRNAに結合した後、複合体は3時間安定である。インビトロ転写反応を、アンドロゲン応答エレメント/エンハンサーDNA鋳型を用いて調製し、テストステロン(4nM)を用いて刺激し、30℃で1時間インキュベートした。ヌクレオシド三リン酸を全く含まない反応が対照として作用した。
【0313】
【0314】
【0315】
これらのデータは、対照反応よりも、アンドロゲン受容体により活性化された反応の方が、mRNA転写物が約7倍多いことを示す。
【0316】
3.2:フルオロフォアにより標識されたヌクレオシド三リン酸の取り込みを通じたRNAの直接的検出
インビトロ転写反応において産生されたRNA分子を検出するために開発された次のアプローチは、蛍光標識されたヌクレオシド三リン酸をRNA分子に取り込む工程を含む。RNA分子は、一度に1つのヌクレオシド三リン酸(UTP、CTP、ATP、GTP)を付加するRNAポリメラーゼIIによって合成され、ヌクレオシド三リン酸は、RNA分子の構築ブロックを示す。このアプローチの基礎にある考えは、UTPをシアニン-5-標識UTP(cy-5-UPT)で、又はCTPをシアニン-5-標識CTP(cy-5-CPT)で、又はその両方で置換することであった。シアニン-5-標識UTP(cy-5-UPT)及び関連する励起及び発光の波長スペクトルを
図10に示す。
【0317】
これらの実験のために切断短縮されたアンドロゲン応答エレメント/エンハンサーGFP DNA配列を、
図11に示されているように、UTP及びCTPについて最適化されている合成DNA配列に切り替えた。この鋳型は、標識されたUTP及び/又は標識されたCTPの取り込みを増加させるだろう。設計され、アンドロゲン応答エレメント/エンハンサー/最小チミジンキナーゼプロモータープラスミドにクローニングされた配列が以下に示されている(それは、RNAではなくDNA鋳型として示されることに注意し、ここでのDNA内のdTTPは、RNA内のUTPのコードである)。この合成DNAは、遺伝子をコードしておらず、有効なメッセンジャーRNA、及びそれ故タンパク質を産生しないだろう。
【0318】
DNAは、短いDNA分子として商業的に(シグマアルドリッチ社)合成され、プラスミドpAで提供された。エシェリヒア・コリ(大腸菌)適格細胞を、(アンピシリン耐性を用いて選択された)プラスミドを用いて形質転換し、E.coli細胞を使用して、プラスミドDNAを増幅した。プラスミドDNAを細菌培養液から単離し、標準的なPCRのための鋳型として使用した。その後、PCRにより増幅されたDNA分子は、フェノール/クロロホルム抽出、続くエタノール沈降を使用して精製され、その後、インビトロ転写反応においてDNA鋳型(470bp)として使用された。インビトロ転写反応はテストステロン(4nM)によって活性化され、ここでのUTPはcy-UTP:UTPの組み合わせで置換されていたか、又は、CTPは、cy-5-CTP:CTPの組み合わせで置換されていたか、又はUTPとCTPの両方が、cy-5-UTP:UTP:cy-5-CTP:CTPの組み合わせで置換されていた。カラム精製を使用して、転写反応からRNA分子を精製し(遊離cy-NTPを除去するために)、100μLのヌクレアーゼ非含有水中に再懸濁した。フルオロフォアを630nmで励起し、蛍光の発光を650nmで測定した。いくつかの反応について、MMTV-ルシフェラーゼをDNA鋳型として使用して、両方のアンドロゲン受容体DNA結合部位を例証した。結果を
図12に示す。
【0319】
次に、テストステロン対その不活性なビヒクル対照(エタノール)による活性化レベルを、アンドロゲン応答エレメント/エンハンサー合成DNA鋳型及びMMTV-ルシフェラーゼDNA鋳型の両方について試験した。インビトロ転写反応を、cy-5-UTP:UTP:cy-5-CTP:CTPの組み合わせと、アンドロゲン応答エレメント/エンハンサー合成DNA鋳型又はMMTV-ルシフェラーゼDNA鋳型のいずれかを用いて構築した。反応をテストステロン(4nM)又はその不活性対照(0.1%(v/v)エタノール)を用いて活性化した。結果を
図13及び
図14に提示する。アンドロゲン応答エレメント/エンハンサー合成DNA鋳型対MMTV-ルシフェラーゼDNA鋳型の蛍光解読値を比較すると、4nMのテストステロンの解読値は合成DNA鋳型の方が高かった。これは、cy-5-標識ヌクレオチドの取り込みを増加させるように合成DNA配列中に工学操作されたより多数のU塩基及びC塩基と矛盾しなかった(
図11)。
【0320】
インビトロ転写反応は、コア成分のアンドロゲン受容体、DNA鋳型、MgCl
2、及びヌクレオシド三リン酸を含有している。次の実験は、インビトロ転写反応のこれらのコア成分の濃度の変更が、RNA分子の生成レベルに影響を及ぼすかどうかを試験した。
図15に示されているように、インビトロ転写反応を、1×又は10×ヌクレオシド三リン酸;3mM、5mM、及び7.5mMのMgCl
2;25ng、50ng、100ng、250ng、又は500ngのアンドロゲン受容体;100ng、200ng、400ng、又は800ngのDNA鋳型を用いて調製した。これらのデータは、RNA分子合成が、漸増濃度のMgCl
2、アンドロゲン受容体、及びDNA鋳型と共に減少することを示す。所見は、より多くのRNA分子合成に対して鋳型にされたDNAに対するアンドロゲン受容体の範囲を示す。これらのデータは、DNA鋳型に対するアンドロゲン受容体の最適なモル比が、≧0.3:1及び≦7:1の範囲内にあることを示す。
【0321】
次の実験は、cy-5-NTP標識アプローチが、G32及びG44と命名された、去勢競走馬から得られた2つのウマ血漿試料中のアンドロゲン受容体生理活性の差を検出することができるかどうかを調べた。これらの2つのウマ血漿試料は、HEK293細胞に基づいたアンドロゲン受容体生理活性アッセイを用いて以前に試験されたことがあり、G44は、G32よりも活性が高いことが示された。インビトロ転写反応は、cy-5-UTP:UTP又はcy-5-CTP:CTPの組み合わせ及びアンドロゲン受容体応答エレメント/エンハンサー合成DNA鋳型を用いて構築された。反応は去勢血漿(15%v/v)を用いて活性化された。結果を
図16に提示し、アッセイプロトタイプ2が、そのそれぞれのアンドロゲン含量の以前の検証に基づいて、2つの野外試料間を正確に区別することができたことを確認する。
【0322】
3.3 逆転写定量PCRによるRNAの検出(バージョン1-DNA鋳型としてのMMTV-最小プロモーター-切断短縮ルシフェラーゼ遺伝子)
このアッセイプロトタイプのための最初の実験は、インビトロ転写-逆転写定量PCR測定のための、MMTV-最小プロモーター切断短縮ルシフェラーゼ遺伝子DNA鋳型を例証した。
【0323】
インビトロ転写反応を構築し、テストステロン(4nM)の添加により活性化し、その後、30℃で2時間インキュベートした。
【0324】
インビトロ転写反応後、DNA鋳型を、デオキシリボヌクレアーゼIによる消化によって除去した(Baseline-Zeroデオキシリボヌクレアーゼ、エピセンター社)。RNAを、標準的なフェノール/クロロホルムによる抽出、続くエタノールによる沈降(又はカラム精製)によって精製した。標準的な逆転写反応(Superscript VILO cDNA合成キット、サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を完了してcDNAを生成した。cDNAを、特異的なプライマーキットを使用して定量PCR(カパサイバー・ファスト定量PCRキット)によって増幅した。
【0325】
これらのデータを
図17に提示し、これは、テストステロンにより処理されたインビトロ転写反応に対する、エタノールにより処理されたインビトロ転写反応におけるRNAレベルについて測定された場合の、サイクル閾値の生データを示す。PCRは、非常に少数のcDNA(=RNA)分子を非常の多数の二本鎖DNA分子に指数関数的に増幅させることによって作用する。増幅開始時により多くの出発cDNA分子が存在すれば、そうしたcDNA分子から産生される二本鎖DNAの蛍光による検出は、より低い増幅サイクル数(サイクル閾値と称される)で行なわれるだろう。
図17では、テストステロンの平均サイクル閾値数は約24であり、エタノールでは約30である。このことは、出発RNAレベル間で64倍の差が存在していたことを示唆する。
【0326】
MMTV-ルシフェラーゼDNA鋳型を用いたインビトロ転写反応/逆転写定量PCR反応を次に使用して、様々な細胞型から調製された核抽出物を例証した。インビトロ転写反応の例証のために主に使用された核抽出物はHeLa核抽出物(子宮頸癌細胞株)であった。この細胞株はアンドロゲン受容体を発現していない。この核抽出物は市販されている(例えばプロメガ社)。出願人の研究室では、社内製のHeLa核抽出物を作製するためのプロトコールが確立された。その後、同じプロトコールを使用して、PC-3(ヒト前立腺癌細胞株)、HuH7(ヒト肝臓細胞株)、及びHEK293(ヒト腎臓細胞株)細胞から核抽出物を調製した。これらのデータを
図18に提示し、様々な細胞型に由来する社内製の核抽出物は、インビトロ転写反応を支えるための適切な転写機構を提供することを示す。サイクル閾値データは、どの抽出物も、それが生成するRNA転写量のかなりの増加(サイクル閾値の減少によって示される)も顕著な減少(サイクル閾値の増加によって示される)ももたらさなかったことを示す。
【0327】
次に、様々な核抽出物の内因性活性化レベルを決定した。インビトロ転写反応を、転写を駆動する様々な核抽出物を用いて、上記のように調製し、反応を、テストステロンを用いて、又はビヒクル対照としてのエタノールを用いて活性化した。これらのデータを
図19に提示し、4つ全ての細胞株が、テストステロンに応答する転写的に活性な核抽出物を産生することを示す。HuH7細胞及びHEK293細胞は、アンドロゲン受容体を発現している安定な細胞株であり、PC3細胞は内因性アンドロゲン受容体を発現し、一方、HeLa細胞はアンドロゲン受容体を発現していない。
【0328】
これまでに例証されたインビトロ転写反応は、男性における主要な男性内因性アンドロゲン、すなわちテストステロンを用いてのみ活性化されていた。アンドロゲン受容体は、アンドロゲン受容体に対して、テストステロンよりも4倍高い生理活性を示す強力な内因性アンドロゲンであるジヒドロテストステロンなどの他の天然アンドロゲンによっても活性化される。インビトロ転写反応を、市販のHeLa核抽出物を用いて調製し、テストステロン(T、4nM)又はジヒドロテストステロン(DHT、4nM)のいずれかを用いて活性化した。逆転写定量PCRにMMTV-ルシフェラーゼDNA鋳型と、mRNAレベルの解読値を用いた。これらのデータを
図20に提示し、より少ないサイクル閾値によって実証されるように(ジヒドロテストステロンは約20に対してテストステロンは約24)、ジヒドロテストステロンがテストステロンよりも多くのRNA合成を誘導したことを示す。これらの結果は、ジヒドロテストステロンについてアンドロゲン受容体に対するより高い結合親和性、及びアンドロゲン受容体のそのより高い内因的活性化が報告されていることと矛盾しない。
【0329】
3.4 逆転写定量PCRによるRNAの検出(バージョン2-DNA鋳型としてのアンドロゲン応答エレメント/エンハンサー-最小プロモーター-切断短縮GFP遺伝子)
この実験シリーズでは、インビトロ転写-逆転写定量PCR測定のためのアンドロゲン応答エレメント/エンハンサー最小プロモーターGFP DNA鋳型が例証された。
【0330】
バージョン2(アンドロゲン応答エレメント/エンハンサー-最小プロモーター-GFP)の開発中に、インキュベート後にインビトロ転写反応からのDNA鋳型の完全な除去に取り組む工程、及び、新規合成されたRNAを分解から防御する工程を含む、多くの改善が行なわれた。その後の開発は、DNA鋳型がリアルタイムPCR反応中に確実に増幅できないようにするために、特定の目的のために作られたプライマーセットを設計することであった。
【0331】
インビトロ転写反応後のDNA鋳型の破壊を増加させるために、EDTAをインビトロ転写緩衝液から除去した。なぜなら、EDTAはデオキシリボヌクレアーゼIを抑制する可能性があるからである。EDTAの除去は、インビトロ転写反応に対して全く影響を及ぼさなかった(データは示されていない)。次に、DNAを磁気ビーズ上に固定することができるようにDNAを修飾した。ビオチン基が5’-センスプライマーに付着したPCRプライマーを使用して、DNA鋳型を増幅した。GFP遺伝子を切断短縮した3’-アンチセンスプライマーの使用により、より短いDNA鋳型の作製、それ故に分解に対してより耐性が高いより短いmRNA転写物の作製も可能となった。その後、ビオチンでタグ化されたDNAを、ストレプトアビジンでコーティングされた磁気ビーズ(ダイナビーズ280)と混合して、ビーズ上にDNAを捕捉した。このことにより、DNA鋳型の除去が改善された。なぜなら、インビトロ転写反応が完了した後に、DNA鋳型を、磁石を通してビーズをチューブの底に持ってくることにより、インビトロ転写反応から分離することができるからである。インビトロ転写反応を新たなチューブに移し、ZeroBaselineデオキシリボヌクレアーゼで処理した。この2工程のアプローチは、PCR反応に入る残留DNA鋳型のリスクを減少させた。
【0332】
磁気ビーズ上に固定されたDNA鋳型を含む改変されたインビトロ転写-逆転写定量PCRシステムを試験するために、インビトロ転写反応を以下のように構築した:
反応混液:
緩衝液+ビーズ 6μl
MgCl2 1.5μl
アンドロゲン受容体(25ng) 0.5μl
ヌクレオシド三リン酸 1μl
dH2O 10.23μl
エタノール/テストステロン 1μl
HeLa抽出物(8単位) 3.8μl
リボヌクレアーゼout 0.5μl
【0333】
インビトロ転写反応を、テストステロン(4nM)又はエタノール(0.1%v/v)の添加により活性化し、30℃で2時間インキュベートした。ウマ試料であるG32及びG44も、この改変されたシステムで試験した。磁気分離を使用してDNA鋳型からインビトロ転写反応を分離し、その後、RNAを標準的なフェノール/クロロホルムによる抽出、続くエタノールでの沈降によって精製した。あるいは、RNAをカラムによる精製によって精製した。その後、エピセンター社のBaseline ZeroデオキシリボヌクレアーゼIを使用して、全ての残留するDNA鋳型を破壊し、その後、逆転写-定量PCRを特異的プライマー/プローブセットを使用して実施した。結果を
図21に提示し、テストステロン(T)が、エタノール(E)よりも多くのRNA転写物の生成を誘導したことを示す。結果はまた、アンドロゲン受容体-インビトロ転写反応が、ウマ血漿試料中の内因性アンドロゲン生理活性を区別することができ、G44はG32よりも高い活性を示すことを実証する。
【0334】
PCR試薬にDNA鋳型がコンタミする可能性を克服するために、修正された逆転写工程及びPCRが設計された。特異的な逆転写プライマーを使用して、ステムループ構造を、cDNA合成工程中にDNA鋳型の末端に付加した。PCRの変性工程中に、ステムループ構造は開環し、PCR特異的プライマー部位を露出する。特異的な逆転写プライマー、その後に特異的な逆方向PCRプライマーを使用して、元来のDNA鋳型の増幅は全く起こり得なかった。
【0335】
インビトロ転写反応を実施し、その後、フェノール/クロロホルムによる抽出、続くエタノールによる沈降を使用して、RNA分子を精製し、デオキシリボヌクレアーゼIによる処理を使用して、DNA鋳型を破壊した。あるいは、カラムによる精製を、デオキシリボヌクレアーゼIによる処理と共に使用し、精製されたRNA分子を調製した。その後、逆転写定量PCRを、cDNA合成工程のための特異的な逆転写プライマーを使用して実施した。定量PCRは、特異的なPCR逆方向プライマー、正方向プライマー、及びプローブセットを使用することに従う。逆方向プライマー及びプローブは共に、cDNAのヘアピンループ領域にアニーリングし、元来のDNA鋳型にはアニーリングしないだろう(いくらかの残留している又は混入している分子がPCR反応チューブに進入している場合)。結果を
図22に提示し、ステムループアッセイは、インビトロ転写反応において産生されたRNAを測定するための方法としての、逆転写定量PCRをさらに例証したことを実証する。
【0336】
3.5 RNAアプタマー:フルオロフォアの複合体の形成によるRNAの検出
アンドロゲン受容体-インビトロ転写-RNA検出のための1チューブによる選択肢を作製する機会は、RNA分子アプタマー技術から発生する。以下の実験において例証されているRNAアプタマーは、RNAマンゴー及びRNA iホウレンソウである。
【0337】
(1)RNAマンゴー
RNAマンゴーは、フルオロフォアであるTO1-PEG-ビオチン(TO1-PB)(TO-チアゾールオレンジ)に結合する高親和性のRNAアプタマーである。RNAマンゴーに結合すると、TO1-PEG-ビオチンの蛍光は最大1000倍まで増加する。RNAマンゴーはTO1にKD=3.2±0.7nMで結合し、それ故、低濃度のフルオロフォアを使用してRNAマンゴーを検出することができる。TO1にRNAが結合する結合速度は30分以内であり、2時間を超える緩徐な解離速度を示す。
【0338】
水溶液中では、TO1は、非常に低い蛍光を示す。なぜなら、その2つのヘテロ環の間の橋は頑丈ではないからである。RNAマンゴーに結合すると、橋は頑丈になり、分子は強く蛍光を発するようになる。RNAマンゴー分子の折り畳み及び安定性をさらに支えるために、それは足場構造と一緒に作製されることが多い。足場構造の配列は、この試験に使用されるDNA鋳型に含まれている。
【0339】
マンゴーI、II、III、及びIVと命名された、いくつかの形状のRNAマンゴーが存在する。これらの4つ全てのRNAマンゴー形が、インビトロでの転写アッセイにおいてアンドロゲン受容体/アンドロゲン応答エレメント/エンハンサーを使用して例証されている(配列は付録資料に含まれている)。インビトロ転写反応を構築し、テストステロン(4nM)を用いて活性化した。インビトロ転写反応液を30℃で1時間インキュベートし、その後、TO1-PB(40nM)の補充されたRNAマンゴー結合緩衝液で希釈した。結合反応を、25℃で25分間続けた。結果を
図23に提示し、テストステロンにより活性化されたアンドロゲン受容体-アンドロゲン応答エレメント/エンハンサーインビトロ転写アッセイがRNAマンゴーアプタマー分子を生成し、これはTO1-PB蛍光によって検出され得ることを示す。
【0340】
次に、エタノール対照と比較した、テストステロンにより活性化された反応から生成されたRNAマンゴーアプタマーのレベルを、各マンゴー形について測定した。インビトロ転写反応を構築し、テストステロン(4nM)又はエタノール(対照として、0.1%v/v最終濃度)を用いて活性化した。インビトロ転写反応液を30℃で1時間インキュベートし、その後、TO1-PB(40nM)の補充されたRNAマンゴー結合緩衝液で希釈した。結合反応を、25℃で25分間続けた。結果を
図24に提示し、ベースライン発現(エタノール)と誘導レベル(テストステロン)との間に最も高い倍率差を有するマンゴー変異体は、マンゴーIIであったことを示す。したがって、マンゴーIIをその後の実験に使用した。
【0341】
次に、ベースラインの発現に対して、テストステロンを用いたマンゴーIIの結果の再現性を判定することが必要であった。実験は連日3回繰り返された。これらのデータを
図25に示し、エタノール対照と比較したマンゴーIIアプタマーのテストステロン特異的な活性化を実証する。
【0342】
これまでのインビトロ転写反応は、7.8~29.4nMという男性の生理学的範囲を測定するのに適した4nMのテストステロンを用いて活性化されている。しかしながら、細胞ベースバイオアッセイの感度範囲はnM未満であり、よって、インビトロ転写アッセイがnM未満の濃度のテストステロンを検出することができるかどうかは疑問であった。インビトロ転写反応液を調製し、2、0.8、0.4nMのテストステロンを用いて活性化し、エタノール(0.1%v/v)と比較した。結果を
図26に提示し、リガンドによる活性化のためにマンゴーIIアプタマーを用いて構成されたアッセイプロトタイプ2が、nM未満の範囲で検出され得ることを実証する。
【0343】
次に、アッセイプロトタイプ2のRNAマンゴーアプタマーアッセイが、ウマ血漿試料中のアンドロゲン活性を測定することができるかどうかを調べた。2つの去勢試料(G44及びG32として知られる)が(a)細胞ベースバイオアッセイ(HEK293)、(b)プロトタイプ2の逆転写定量PCRアッセイ、(c)プロトタイプ2の直接的な解読アッセイ(ここではG44が、G32よりも一貫してより高いアンドロゲン活性を示している)において試験された。これらの2つの試料をアッセイプロトタイプ2のRNAマンゴーアプタマーアッセイにおいて試験した。結果を
図27に提示し、ここでもG44が、G32よりも高いアンドロゲン活性を有し、これは、確立された細胞ベースバイオアッセイ及び他のアッセイプロトタイプ2の構成の所見と一致していることを示す。
【0344】
次に、プロトタイプ2のマンゴーRNAアプタマーアッセイが、アンドロゲン作用蛋白同化ステロイド(AAS)及び選択的アンドロゲン受容体修飾薬(SARM)を検出することができるかどうかを調べた。競走馬産業において乱用物質として近年検出されている4つの異なる選択的アンドロゲン受容体修飾薬、すなわちLGD-2226、BMS-564929、オスタリン、及びアンダリンを、アンドロゲン受容体-アンドロゲン応答エレメント/エンハンサー-RNAマンゴーアプタマーアッセイにおいて試験した。2つの異なるアンドロゲン作用蛋白同化ステロイドである11-ケトテストステロン及び11-ケトジヒドロテストステロンも試験した。インビトロ転写反応液を調製し、6つの異なるアンドロゲン性分子(すなわちLGD-2226、BMS-564929、オスタリン、アンダリン、11-ケト-ジヒドロテストステロン、及び11-ケト-テストステロン)の中の1つ又はテストステロンを用いて活性化した。エタノールはベースライン対照として使用された。これらのデータを
図28に提示し、この特定の活性/活性化アッセイの構成を使用したこれらのアンドロゲン性分子の検出を明瞭に示す。これらの6つのアンドロゲン性分子は、スポーツドーピング剤として使用される物質として、使用のために入手可能なSARM及びAASのほんの僅かな割合しか占めないが、アンドロゲン受容体により誘導されるインビトロ転写反応が、内因性ではないアンドロゲンに対して応答性であることを示す。
【0345】
(2)RNA iホウレンソウ
RNA iホウレンソウは、フルオロフォアである3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシベンジリデンイミダゾリノン(DFHBI)に結合するRNAアプタマーである。RNA iホウレンソウに結合すると、DFHBIの蛍光は測定可能な程に増加する。RNA iホウレンソウは、DFHBIに1.18μMの親和性で結合する。RNAマンゴー実験と同様に、ベースラインの発現(エタノール対照)と比較した、テストステロンにより活性化された反応から生成されたRNA iホウレンソウアプタマーのレベルを測定した。インビトロ転写反応間の唯一の差は、DNAマンゴー鋳型からDNAiホウレンソウ鋳型への切り替えであった。DNA鋳型は、F30の足場と共に発現されたiホウレンソウを有していた。インビトロ転写反応を構築し、テストステロン(4nM)又はエタノール(0.1%v/vの最終濃度)を用いて活性化した。インビトロ転写反応液を30℃で1時間インキュベートし、その後、DFHBI(40μM)の補充されたRNA iホウレンソウ結合緩衝液で希釈した。結合反応を37℃で25分間続けた。結果を
図29に提示し、テストステロンにより活性化されたインビトロ転写反応が、エタノール対照よりも多くのiホウレンソウアプタマーを産生したことを明瞭に示す。
【0346】
iホウレンソウ反応は、テストステロンに対して応答性であることが示されていたので、インビトロ転写反応を構築し、ウマ血漿試料であるG33又はG44を用いて活性化した。どちらの試料も、細胞ベースバイオアッセイを用いて以前に試験され、G33はG44よりも低いアンドロゲン生理活性を有することが示されている。インビトロ転写反応液を30℃で1時間インキュベートし、その後、DFHBI(40μM)の補充されたRNA iホウレンソウ結合緩衝液で希釈した。結合反応を37℃で25分間続けた。その後、蛍光を405nmの励起及び498nmの発光で解読した。結果を
図30に提示し、インビトロ転写反応-iホウレンソウアッセイ反応が、ウマ血漿試料中のアンドロゲン活性を検出することができることを示す。
【0347】
さらに、これらのデータは、G44が、G33よりも高いアンドロゲン活性を有するという以前に確立された観察を確認し、このことは、細胞ベースバイオアッセイの知見と一致する。
【0348】
実施例4
アッセイプロトタイプ3:アンドロゲン受容体はDNAに直接結合する
出願人はさらに、内因性アンドロゲン性分子であるテストステロンが、活性アッセイシステムにおいてアンドロゲン受容体のアンドロゲン応答エレメント/エンハンサーDNA鋳型への結合を誘導することができると決定した。
【0349】
アンドロゲン応答エレメント最小プロモーターGFP DNA鋳型を磁気ビーズ上に固定した。ビーズ(100ngのアンドロゲン応答エレメント最小プロモーターGFP DNAに等価である)を、磁気スタンドを使用して転写緩衝液中で洗浄した。上清を除去し、ビーズを25μLの転写緩衝液に再懸濁し、100ngの組換えアンドロゲン受容体及び5nMのテストステロンを加えた。反応液を30℃で1時間インキュベートした。転写緩衝液に、補充しないか、1.5μL又は3μLのMgCl
2を補充した。インキュベート後、上清をビーズから除去し、ビーズを転写緩衝液で2回洗浄し、その後、20μLの転写緩衝液、ウェスタンブロットローディング緩衝液、及び還元剤に再懸濁した。この時点で、試料を95℃まで加熱することにより、DNA/ビーズ結合を壊し、上清を、20μlの転写緩衝液、ウェスタンブロットローディング緩衝液、及び還元剤を含有している新しいチューブに取り出した。その後、試料をPAGE(150V、1.5時間)にかけ、PDVFメンブラン(1時間100V)に転写した。遮断は、5%PBSTM中で室温で1時間で完了し、その後、PBSTM中の一次アンドロゲン受容体抗体に4℃で一晩曝した。PDVFメンブランをPBST中で5分間3回洗浄し、その後、PBSTM中、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲートさせた抗マウスIgGと共に4時間インキュベートした。ブロットを再度、PBST中で5分間3回洗浄した。HRPを、WestPicoを使用して5分間かけて可視化した。結果を
図31に提示し、アンドロゲン受容体がアンドロゲン応答エレメントGFP DNA鋳型に結合することを示す。
【0350】
次に、テストステロンにより活性化されたより多くのアンドロゲン受容体が、エタノール(ビヒクル対照)と比較して、アンドロゲン応答エレメント-DNA鋳型に結合するかどうかを判定した。さらなる対照として、エストロゲン応答エレメント-DNA鋳型へのアンドロゲン受容体の結合を試験した。アンドロゲン応答エレメントDNA鋳型を、転写緩衝液の存在下で組換えアンドロゲン受容体と共にインキュベートし、対照としてエストロゲン応答エレメント(ERE)DNA鋳型も、組換えアンドロゲン受容体と共にインキュベートした。テストステロン(5nM)又はエタノール(0.1%v/v)は、アンドロゲン受容体がDNA鋳型に結合するのを活性化するために使用された。その後、アンドロゲン受容体/アンドロゲン応答エレメント複合体を、ニトロセルロース上に固定し、その後、アンドロゲン受容体を、アンドロゲン受容体に対する一次抗体、その後、セイヨウワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートさせた二次抗体を使用して標的化させた。
【0351】
図32に提示されたドットブロットは、エタノール対照と比較して、テストステロンによる刺激により、より多くのアンドロゲン受容体の結合を示す。それはまた、アンドロゲン受容体がエストロゲン応答エレメント鋳型には結合しなかったことも示す。
【0352】
要約すると、この実施例において提示されたデータは、組換えアンドロゲン受容体タンパク質とアンドロゲン応答エレメント-DNA鋳型のインビトロにおける連動反応が、アンドロゲン応答エレメントに対するアンドロゲン受容体の結合を成功裡に示したことを示す。さらに、実験は、より多くのアンドロゲン受容体がアンドロゲン応答エレメントに結合することをテストステロンが誘導することを示した。アンドロゲン受容体自身の応答エレメントに対するアンドロゲン受容体の結合特異性は、エストロゲン応答エレメントに対するアンドロゲン受容体の弱い結合によって実証される。
【0353】
実施例5
アッセイプロトタイプ1についての補足情報
5.1 DNA鋳型の作製
アッセイプロトタイプ1の作製に使用されるアンドロゲン応答エレメント/エンハンサー配列は以下の通りである:
配列番号15:センス鎖
【化3】
配列番号16:アンチセンス鎖
【化4】
【0354】
5.2 インビトロ転写/インビトロ翻訳反応
以下の反応混液を調製した:
反応混液1番[試験物]
i.HeLa細胞抽出物*
ii.組換えアンドロゲン受容体*
iii.反応緩衝液*
iv.アンドロゲン応答エレメントプロモーター/epAGFP DNA鋳型
v.40nMのテストステロン
反応混液2番[ビヒクル対照]
1.HeLa細胞抽出物
2.組換えアンドロゲン受容体
3.反応緩衝液
4.アンドロゲン応答エレメントプロモーター/epAGFP DNA鋳型
5.0.1%v/vエタノール
反応混液3番[陰性対照]
1.HeLa細胞抽出物
2.組換えアンドロゲン受容体
3.反応緩衝液
4.0.1%v/vエタノール
反応混液4番[陰性対照]
1.HeLa細胞抽出物
2.反応緩衝液
3.アンドロゲン応答エレメントプロモーター/epAGFP DNA鋳型
4.0.1%v/vエタノール
反応混液5番[陽性対照]
1.HeLa細胞抽出物
2.反応緩衝液
3.サイトメガロウイルスプロモーター-GFP DNA鋳型
4.0.1%v/vエタノール
【0355】
*HeLa細胞抽出物、組換えアンドロゲン受容体、及び反応緩衝液は、サーモフィッシャーサイエンティフィック社を入手源とした。
【0356】
陰性対照として、反応混液3番をDNA鋳型を用いずに構築し(反応3番)、反応混液4番をアンドロゲン受容体を用いずに構築した。なぜならHeLa細胞はアンドロゲン受容体を含有していないと報告されているからである(これはウェスタン分析を使用して確認されている)。
【0357】
陽性対照として、反応混液5番を、インビトロ転写キット(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)のDNA対照プラスミド(サイトメガロウイルスプロモーター-GFP)を用いて構築した。
【0358】
様々な反応混合物を37℃で5時間インキュベートした。GFP発現量を検出するための蛍光の解読は、標準的な96ウェルの蛍光光度計(488nm/525nm)を使用して行なわれた。
【0359】
結果を
図33に示す。これらのデータは、エタノール(反応混液2番)によって刺激された場合ではなくテストステロン(反応混液1番)によって刺激された場合に、緑色蛍光タンパク質が、アンドロゲン受容体/アンドロゲン応答エレメント/エンハンサーアッセイにおいて発現されたことを示す。全ての陰性対照が、低い蛍光解読値を示した(反応混液3番;反応混液4番)。エタノール対照において測定可能な蛍光が存在し、このことは、最小プロモーターpAからのGFPの低い基礎発現を示す。レベルは、アンドロゲン受容体を全く含まない対照について測定されたレベルと類似し、ここでもこのことは、pAからのGFPの基礎的なRNAPII発現を示す。DNA鋳型を全く含まない対照は、絶対的なベースラインレベルを示した。この反応で測定された蛍光は、HeLa細胞抽出物の自己蛍光に起因する。
【0360】
誘導性アンドロゲン受容体/アンドロゲン応答エレメント/エンハンサー鋳型によって産生されたGFPの量は、陽性対照であるサイトメガロウイルス-GFP(反応混液5番)の量よりはるかに低かった。サイトメガロウイルスは強力なプロモーターであるので、高いレベルのGFPを産生するはずである。続いて、アッセイプロトタイプ1をさらに最適化して、ダイナミックレンジを改善した(GFPの生成量を増加;データは示されていない)。
【0361】
5.3 アッセイプロトタイプ1(v1)の感度(EC
50)の決定
次の工程は、アッセイがテストステロンを測定することのできる濃度範囲を評価することであった。上記の複数の反応混液1s番を組み立て、これを使用して1μMから1nMのテストステロンを試験した。データを使用して、シグモイド用量反応曲線を作成した。結果を
図34及び35に示す。
【0362】
図34は、アッセイプロトタイプ0(すなわち細胞ベースアッセイ)と比較した、アッセイプロトタイプ1の相対感度を示す。
【0363】
図35は、アッセイプロトタイプ0の5×10
-9MのEC
50と比較した、アッセイプロトタイプ2の7.9×10
-11MのEC
50を示す。これは、細胞ベースアッセイ(アッセイプロトタイプ0)のほぼ100倍の感度の増加を示す。
【0364】
5.4 アッセイプロトタイプ1(v1)の特異性の決定
ステロイドホルモンファミリーはエストラジオール(E2)及びプロゲステロン(P)を含み、どちらも高い用量ではアンドロゲン受容体を活性化することができる。それ故、出願人は次に、アッセイプロトタイプ2(v1)が、生理学的範囲内のエストラジオール(E2)及びプロゲステロン(P)によって活性化され得るかどうかを試験した。4nMから1μMを試験すると、出願人は、プロゲステロン及びエストラジオールのどちらも、アンドロゲン受容体を活性化することができたが、濃度がμMの範囲内にあった場合のみであったことを発見した。重要なことには、この応答はわずかであり、この同じ濃度でテストステロンについて測定された応答よりはるかに低かった。このシステムにおける蛍光の基礎値は約190単位である(上記の5.2章及び5.3章において決定)ことを注記する。
【0365】
実施例6
アッセイプロトタイプ2の補足情報
6.1 インビトロ転写(IVT)反応
アッセイプロトタイプ2は、タンパク質の合成(翻訳)を必要とせず、その特異的な受容体であるアンドロゲン受容体(AR)のアンドロゲンによる活性化後のインビトロ転写にのみ基づく。以下の反応混液を調製した:
【0366】
反応混液6番
1.HeLa細胞抽出物
2.反応緩衝液
3.ヌクレオシド三リン酸及びMgCl2
4.DNA鋳型
5.組換えアンドロゲン受容体
6.100ngのテストステロン
反応混液7番
1.HeLa細胞抽出物
2.反応緩衝液
3.ヌクレオシド三リン酸及びMgCl2
4.DNA鋳型
5.組換えアンドロゲン受容体
6.0.1%v/vのエタノール
【0367】
反応混液を37℃で1時間インキュベートし、その間にmRNAはDNA鋳型から合成された。
【0368】
逆転写PCR(RT-PCR)を使用して、mRNAをDNA産物へと変換した。最初に、これは、2%アガロースゲル電気泳動を使用して可視化された(
図36)。
【0369】
これは、インビトロ転写反応が作動したであろう最初の指標であった。ルシフェラーゼ特異的プライマーを用いての逆転写PCRは、両方の対照と比較して、アンドロゲン受容体がテストステロンによって活性化された後により強力なバンド(より多くのRNAが産生されたことを示す)を示した。どちらの対照にも産物の基礎量が存在した。
【0370】
これらの実験は、3日間連続して繰り返され、全て同じ結果であった(ゲルは示されていない)。これらのデータは、テストステロン(T)がアンドロゲン受容体(AR)に結合し、MMTVでの転写を開始するようにアンドロゲン受容体を誘導する場合にインビトロ転写反応が一貫して活性化されることを示す。
【0371】
次の工程は、アッセイ内でいくらかのダイナミックレンジが存在したことを示すテストステロン用量反応が見られるかどうかを判定することであった。100、50、25、及び12.5ngのテストステロン対エタノールを使用した逆転写PCRは、漸減しているDNA生成量を示し、このことは、より低いテストステロン濃度によるアンドロゲンのより低い活性化に伴うmRNAの産生減少を示す(
図37)。
【0372】
6.2 インビトロ転写成分
テストステロン+アンドロゲン受容体による転写活性化を示すために使用されたインビトロ転写成分は、市販のキットであるHeLaScribeキットに由来するものであった。アンドロゲン受容体-テストステロンインビトロ転写反応は、このキットからの、HeLa細胞抽出物及び反応緩衝液を使用した。
【0373】
HeLa細胞抽出物は、HeLa培養細胞を使用して研究室で作製された。社内で開発された抽出物を、アンドロゲン受容体-テストステロンインビトロ転写反応において試験した(
図38)。
【0374】
これらの実験は、3回繰り返されることにより、再現性が実証された。
【0375】
最終的には、目標は、逆転写PCRよりもむしろ逆転写定量PCRを使用することである。アンドロゲン受容体-テストステロン反応、対、アンドロゲン受容体+テストステロンインビトロ転写反応を、上記の
図38のように完了させた。その後、RNAを抽出し、逆転写工程を完了させてcDNAを生成し、1:100の希釈率のcDNAを、サイバーグリーンに基づいた逆転写定量PCRアッセイ(タカラ社)で、逆転写PCRに使用されたのと同じ遺伝子特異的プライマーを使用して試験した。
【0376】
アンドロゲン受容体-テストステロン反応のCT平均値は21.78であった。アンドロゲン受容体+テストステロンのCT平均値は18.03であった。これは、13.5倍の発現増加を示す。
【0377】
6.3 アッセイの最適化
6.3.1 ステロイドホルモン受容体補因子
細胞内で、アンドロゲン受容体は、熱ショックタンパク質90(HSP90)とのタンパク質-タンパク質相互作用によって不活性な状態に保たれている。アンドロゲンが細胞内に進入すると、アンドロゲンはアンドロゲン受容体に結合し、このリガンド-タンパク質相互作用は、アンドロゲン受容体からのHSP90の転位を引き起こす。開発中のアッセイでは、HSP90が添加されることにより、リガンドの付加されたアンドロゲン受容体のみが、確実にMMTV-ルシフェラーゼの転写を活性化した。
【0378】
HSP90を含むインビトロ転写反応を実施し、対照には、HSP90が全く添加されなかった。その後、RNAの抽出を完了し、その後、逆転写反応を完了した。サイバーグリーンに基づいた定量PCR(タカラ社)は、HSP90の非存在下において15.37のCT値を示し、HSP90の存在下では17.08のCT値を示した。
【0379】
テストステロンで活性化された場合、HSP90を全く含まないものは10.86を示したが、HSP90を含むものは14.24を示した。
【0380】
これらの所見は、HSP90を含めばバックグラウンドが約4倍抑制され、活性化は約16倍増加することを示す。
【0381】
インビトロ転写反応液を37℃で1時間インキュベートした。インキュベート時間を2時間まで延長することにより、mRNAの増加、及びエタノールとテストステロンとの間でより大きな差がもたらされるかどうかを判定するために試みられた。インビトロ転写反応、RNA抽出、逆転写定量PCRの後のCT値は、この時間後に約4倍しか増加しなかったことを示す。37℃で1時間という標準的なプロトコールが、アッセイの開発のために採用されるだろう。
【0382】
インビトロ転写反応は、MgCl2感受性であり得る。それ故、MgCl2濃度の漸増がmRNAの生成量を増加させるかどうかを試験した。インビトロ転写反応を、3、4、5、6、及び7nMのMgCl2を用いて組み立てた。37℃で1時間後、mRNAを抽出し、逆転写定量PCRを実施した。CT値は、25.75における3nMが、他のどのMgCl2濃度よりも低かったことを示した(4、5、6、及び7nMについてそれぞれ、29.38、26.35、27.95、及び26.22)。それ故、インビトロ転写反応において3nMのMgCl2を使用する標準的なプロトコールがアッセイの開発のために採用された。
【0383】
6.3.2 細胞/無細胞抽出物の最適化
出願人は、細胞ベースバイオアッセイでは、アッセイされる細胞数が依然として特定の閾値未満であることが絶対的に不可欠であることを実証した。例えば、アッセイプロトタイプ0(酵母アンドロゲン受容体バイオアッセイ)が最適に機能するためには、細胞培養液の吸光度(OD)は、アッセイがアンドロゲン受容体の活性化をバックグラウンドノイズと区別するために0.2未満でなければならない。吸光度が0.2を超えると、ベースライン対照を上回る試験試料間の差をアッセイが示すことはできない。これは
図39に示されている。これらの結果のために、サラブレッド種の競走馬に時点0においてテストステロンを投与した。30分後及び60分後の時点で、血液試料を採取し、5%競走馬血清の存在下で酵母アンドロゲン受容体バイオアッセイ細胞をインキュベートすることによってアンドロゲン受容体生理活性について分析した。酵母細胞があまりにも稠密であれば(例えば吸光度0.4)、30分後も60分後も、陰性対照(エタノール)試料を上回り増加したアンドロゲン受容体生理活性を示さなかった。しかしながら、細胞が最適な稠密度である場合(吸光度0.2)、30分後及び60分後の試料のどちらも、陰性対照と比較して増加したアンドロゲン受容体生理活性を示した。また、60分後の試料は、30分後の試料よりも高い活性を示した。多くの増殖因子を含有している血清の存在下では特に、細胞増殖を制御することは難しい。細胞が過増殖すれば、実験を停止し、出発細胞数を経験的に推定して再開しなければならない。
【0384】
アッセイプロトタイプ2では、細胞抽出物の成分を正確に最適化することが可能である。細胞抽出物成分を活性について試験することができる。一旦、活性単位として規定されれば、細胞抽出物の成分の活性単位数を、各反応に添加することができ、これにより、反応の化学量論を定めることができる。その細胞抽出物の濃度は、
図40に見られるように重要な考察である。これらの結果のために、アッセイプロトタイプ2の無細胞反応を調製し、100ngのテストステロン又は陰性ビヒクル対照として作用する等容量のエタノールのいずれかを用いて活性化した。各対の無細胞反応(テストステロン及びエタノール)について、滴定量のHeLa細胞抽出物を加えた(1mlあたり、100、75、又は50μgのタンパク質)。結果は、100μgのHeLa抽出物を反応に加えた場合には、テストステロンによる活性化を、陰性対照から区別することができなかったことを実証する。HeLa細胞抽出物の濃度が減少すると(75μg、その後は50μg)、テストステロンと陰性対照との間に明白で測定可能な差が存在した。このことは、サイクル閾値に差が検出されているので明らかである。テストステロンの閾値は、エタノールの閾値より低く、このことは、より多くの出発RNA分子を示す。このことは、無細胞反応に添加する最適なHeLa細胞抽出物濃度を決定することを可能とする。その後、この濃度の活性を決定し、活性単位として規定する。その後、全ての将来の反応を、規定量の活性単位を含有するように構築することができる。この工程は、細胞増殖のアンビギュイティ、及びその後の細胞ベースバイオアッセイに固有の反復測定における矛盾を取り除く。
【0385】
6.4 RNA抽出
6.4.1 逆転写PCRへの反応
最初に、逆転写工程、それに続くPCR工程において、mRNA試料として単にインビトロ転写反応を使用することが可能かどうかを試験した。
【0386】
未精製逆転写PCR反応は、PCRバンドが得られたことを示した(
図41)。
【0387】
PCRは最適化されなかったが、それは、DNAが産生され、RNA抽出工程を全く含まないことが可能であることを示した。
【0388】
6.4.2 デオキシリボヌクレアーゼによる処理
デオキシリボヌクレアーゼIを使用して、逆転写PCR工程の前にDNA鋳型を破壊した。DNAの完全な破壊のために必要とされるデオキシリボヌクレアーゼIの単位数は、漸増量のデオキシリボヌクレアーゼIを使用して経験的に評価された(
図42)。結果から、4μLが、インビトロ転写反応に使用されることが選択された。しかしながら、DNA鋳型を排除することに失敗し、これはインビトロ転写反応緩衝液の高い塩濃度に起因する可能性が最も高い。デオキシリボヌクレアーゼIはTurboデオキシリボヌクレアーゼ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)に切り替えられた。なぜなら、それは、高い塩濃度に対してより耐容性があるからである。結果は、DNA鋳型が破壊され、PCR産物は全く産生されなかったことを示す(
図43)。
【0389】
6.4.3 インビトロ転写-逆転写定量PCRの単一工程
次のアプローチは、インビトロ転写反応から直接、逆転写定量PCRを再考することであった。
図40に示される未精製反応は、可能であったが、最適化を必要とすることを証明した。細胞対サイクル閾値反応酵素/混合物(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を使用して、インビトロ転写反応を、テストステロン(100ng)又はエタノール(対照としての)によって活性化されたアンドロゲン受容体を用いて実施した。デオキシリボヌクレアーゼによる処理、続いてその後に逆転写定量PCRを、一工程のアプローチを使用して実施した。閾値サイクル(C
T)の数値は、エタノール21.99、テストステロン19.80(1回目の試み)、エタノール22.21、テストステロン19.98(2回目の試み)であり、その後、20を超えるCT値に移動するように反応容量を調整した後に(20を超えればより正確である)、エタノール34.5、テストステロン24.29であった。これは、テストステロン-アンドロゲン受容体により誘導されたmRNA合成の1184倍の活性化を示す。
【0390】
したがって、アンドロゲン受容体アッセイプロトタイプ2の原理証明が確立され、ここでのインビトロ転写反応は、リガンドの付与されたアンドロゲン受容体によって活性化され得、その後のRNAは逆転写定量PCRによって検出され得る。
【0391】
実施例7
アプタマー:フルオロフォアアッセイプロトタイプ2の補足情報
7.1 序論
本試験は、蛍光発生RNAアプタマーiホウレンソウと、緑色蛍光タンパク質(GFP)、すなわち3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシベンジリデンイミダゾリノン(DFHBI)という天然フルオロフォアを模倣した市販の色素とを使用した。
【0392】
最小プロモーターエレメントの上流にアンドロゲン応答エレメント(ARE)及びiホウレンソウ蛍光発生RNAアプタマーをコードしているDNA配列(群)を有しているDNA鋳型を工学操作した。アンドロゲンの検出が、インビトロにおいて、DNA鋳型及びアンドロゲン受容体(AR)(これらは一緒に、アンドロゲンの存在下においてのみ、iホウレンソウ蛍光発生RNAアプタマーの転写を駆動する)を使用して実証された。
【0393】
7.2 方法
インビトロ転写反応は、1×転写緩衝液(20mM HEPES pH7.9、100mM KCl、20%グリセロール)、3mM MgCl2、10mMヌクレオシド三リン酸、50ngの組換えアンドロゲン受容体タンパク質、20UのリボヌクレアーゼOut、100ngのDNA鋳型、及び60μgのHeLa細胞抽出物(プロメガ社)を配合し、ヌクレアーゼ非含有水を用いて25μLの最終容量とすることで実施された。テストステロン(1μL)又はビヒクル対照としてのエタノール(1μL)を反応混液に加えて、その後、それを30℃で1時間インキュベートした。
【0394】
DNA鋳型は、(A)各ホウレンソウ配列間にリンカーを有する、エンハンサー/アンドロゲン応答エレメントチミジンキナーゼ最小プロモーター4×iホウレンソウ(ARE4×iSpinach)、又は(B)F30足場配列前に32塩基長のリンカー配列を有するエンハンサー/アンドロゲン応答エレメントチミジンキナーゼ最小プロモーターのいずれか、iホウレンソウ配列、次いで残りのF30足場(ARE-F30iSpinach)であった。
【0395】
インビトロ転写反応後、2μLのフルオロフォアDFHBI(200μM)及び73μLの蛍光緩衝液(200mM KCl、10mM NaHPO4 pH7.2、0.05%Tween-20)を最終容量100μLに加えた。結合反応液を37℃で25分間暗闇中でインキュベートした。
【0396】
反応を、Fluroskan(サーモフィッシャー社)で黒色透明底の96ウェルプレート中で、バンド幅15~25nmで、460nmでの最大励起波長及び505nmでの最大発光波長の検出により測定した。
【0397】
対照反応については、DNA鋳型を、アンドロゲン受容体を含まず、ヌクレオチド三リン酸を含まない、転写反応に加えた。これは、RNAの生成が全くない対照であり、DNAに対するDFHBIの結合及び細胞抽出物の自己蛍光について試験する。
【0398】
DNA鋳型を合成し(GeneART、サーモフィッシャー社)、プラスミドベクターpMAにサブクローニングした。このプラスミドは、アンピシリン耐性を有する。プラスミドの増幅及び精製が可能となるように、プラスミドベクターを用いて適格なE.coliを形質転換した。プラスミドDNAを、酵素PvuIを使用した制限エンドヌクレアーゼによる消化によって線状化し、産物をカラムによる精製により清浄化した。
【0399】
7.3 結果
結果を
図45に提示し、これはテストステロンにより活性化されたアンドロゲン受容体反応が、エタノール及びRNAを全く含まない対照よりも高い蛍光を有し、これは、エタノール又はRNAを全く含まない対照反応と比較して、テストステロンの存在に因り、より多くの蛍光発生RNAアプタマーを合成したという直接的なエビデンスを提供する。
【0400】
テストステロンにより活性化されたアンドロゲン受容体反応は、試験された2つのDNA鋳型について増加した蛍光を示した:(A)アンドロゲン応答エレメント4×iホウレンソウ;及び(B)アンドロゲン応答エレメント-F30iホウレンソウ。
【0401】
7.4 結論
結果は、初めて、インビトロにおけるテストステロンによるアンドロゲン受容体の活性化及びそれに続くアンドロゲン応答エレメントにより指令されるRNA転写を検出するための、蛍光発生RNAアプタマーの合成を示す。
【0402】
出願人はまた、他の蛍光発生RNAアプタマー、(例えば)マンゴーI、II、III、及びIVを含むレポーター構築物も工学操作し、そのアプタマーに特異的な色素であるチアゾールオレンジ(TO1)を使用して、検出手段として不確かな有用性を実証した(実施例3)。
【0403】
本発明は例として記載されているが、特許請求の範囲に定義されているような本発明の範囲から逸脱することなく、変更及び改変を行ない得ることが理解されるべきである。さらに、既知の均等物が特定の特色に対して存在する場合、このような均等物も、本明細書に具体的に参照されているかのように組み入れられる。
【0404】
本明細書において参照又は記載された全ての特許、刊行物、科学文献、ウェブサイト、並びに他の文書及び資料は、本発明が属する技術分野の技能者の技能レベルを示し、各々のこのような参照された文書及び資料は、その全体が個々に参照により組み入れられているのと同程度に参照により本明細書に組み入れられるか、又はその全体が本明細書に示される。出願人は、あらゆるこのような特許、刊行物、科学文献、ウェブサイト、電子的に入手可能な情報、及び他の参照されている資料又は文書からのいずれかの及び全ての資料及び情報を本明細書に物理的に組み入れる権利を保有する。
【0405】
使用されている用語及び表現は、限定ではなく説明のために使用され、このような用語及び表現の使用には、示されている及び記載されている特色のあらゆる均等物又はその一部を除外する意図はなく、様々な改変が、特許請求されているような本発明の範囲内で可能であることが認識されている。したがって、本発明は、好ましい実施態様及び任意選択の特色によって具体的に開示されているが、本明細書に開示された概念の改変及び変更が、当業者によって採用され得ること、そして、このような改変及び変更は、本明細書に記載のような及び添付の特許請求の範囲によって定義されているような本発明の範囲内であると見なされることが理解されるだろう。
【0406】
本発明は、本明細書において広範にかつ包括的に記載されている。包括的な開示内に該当するより狭義の種及び亜属のグループもそれぞれ、本発明の一部を形成している。これは、切り取られた資料が本明細書において具体的に言及されているか否かに関係なく、属から任意の対象を除去する条件付き又は消極的な限定付きで、本発明の包括的な記載を含む。
【0407】
他の例も以下の特許請求の範囲内である。さらに、本発明の特色又は態様は、マーカッシュ群の表現で記載され、当業者は、本発明はまたそれによって、マーカッシュ群の任意の個々のメンバー又はメンバーのサブグループの表現で記載されていることを認識しているだろう。
【配列表】