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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】クラウドを用いた分析情報提供システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/0203 20230101AFI20231006BHJP
【FI】
G06Q30/0203
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021158100
(22)【出願日】2021-09-28
(65)【公開番号】P2023048661
(43)【公開日】2023-04-07
【審査請求日】2023-07-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502076051
【氏名又は名称】マップソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078776
【弁理士】
【氏名又は名称】安形 雄三
(74)【代理人】
【識別番号】100121887
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 好章
(74)【代理人】
【識別番号】100200333
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 真二
(72)【発明者】
【氏名】山下 靖人
【審査官】石田 紀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-185539(JP,A)
【文献】特開2003-288459(JP,A)
【文献】特開2001-236411(JP,A)
【文献】特開2004-152097(JP,A)
【文献】特開2013-088996(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2003-0038178(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0313022(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターネットに接続されたクラウドサーバに構築され、演算処理部で演算処理を実施し、前記インターネットを経て分析結果をユーザ端末に表計算ファイルの形式でダウンロードするようになっている分析情報提供システムであり、
前記インターネットにはASP端末と、地図運営企業体によってアップデートされる市街地図の電子地図データを提供する他社地図サーバが接続されており、
前記演算処理部は、データベースから入力された国勢調査データ、昼間人口推計データ、将来推計人口データ、商業統計データ、消費支出推計データ、住民基本台帳人口データ、診療科目別患者数等業種別需要量統計データなどの統計データ、医療機関データ、介護施設データ、小売店データ、飲食店データなどの業種別の既存施設のポイントデータ、市区町村行政界地図、町丁目行政界地図、道路地図、市街地図、メッシュ地図、国勢調査用町丁目界地図等の地図データ、前記他社地図サーバからの前記電子地図データ、前記ユーザ端末から入力された業種、商圏に関する商圏情報、分析のための分析条件、需要量算出のための基本重み付け係数、面積重み付け係数、規模重み付け係数、需要流出係数に基づいて、前記商圏における前記業種の期待需要量を算出し、
前記基本重み付け係数が、計画する当該施設の総合的な魅力度、顧客を引き付ける力を示し、前記当該施設の規模を除いたものであり、
前記面積重み付け係数が、計画施設を中心とした第1商圏と、競合施設を中心とした第2商圏との重複部分の面積を、前記第1商圏の面積で除算した値をべき係数でべき乗した係数であり、
前記規模重み付け係数が、前記当該施設の規模を示す係数であり、
前記需要流出係数が、前記第1商圏内の需要量が他の事業に流出する率を示す係数であり、
前記期待需要量を前記分析結果として出力することを特徴とするクラウドを用いた分析情報提供システム。
【請求項2】
前記演算処理部が、
前記商圏を前記地図データ及び前記電子地図データに基づいて設定するための商圏設定部と、設定された前記商圏の総需要量を前記統計データに基づいて算出する需要量算出部と、前記商圏内の既存施設を前記統計データに基づいて抽出する既存施設抽出部と、前記基本重み付け係数、前記面積重み付け係数、前記規模重み付け係数、前記需要流出係数、前記総需要量を用いた所定演算式で、前記分析処理を実施する分析処理部と、前記分析処理で演算された前記期待需要量を含む前記分析レポートを作成する分析レポート作成部とで構成されており、
前記所定演算式が、
前記総需要量に前記需要流出係数を乗算して前記第1商圏内の前記計画施設の前記基本重み付け係数、前記面積重み付け係数、前記規模重み付け係数を乗算した値を、前記第2商圏内の前記競合施設の前記基本重み付け係数、前記面積重み付け係数、前記規模重み付け係数の乗算値の加算値で除算した式である請求項1に記載のクラウドを用いた分析情報提供システム。
【請求項3】
前記面積重み付け係数に代え、前記重複部分の人口比を前記べき係数でべき乗した人口重み付け係数としている請求項1又は2に記載のクラウドを用いた分析情報提供システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラウド(クラウド・コンピューティング)を用いた分析情報をユーザに提供するASP(Application Service Provider、SaaS(Software as a Service))の分析情報提供システムに関し、特に指定した地域(商圏)に、医療機関、介護施設、福祉施設、商品販売店舗、飲食店、サービス提供施設などの計画施設を展開する組織体や事業主(ユーザ)に対して、地図情報や人口などの統計データ、既存施設のポイントデータを用いた将来の事業の予測成算を示す分析情報(期待需要量)を、複数の重み付け係数を用いて的確に算出して提供することが可能なクラウドを用いた分析情報提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院、介護施設、福祉施設、商業店舗などの事業者が新たに事業を展開する場合、その地に進出して後、事業が円滑に運営できるかを予測する必要がある。成算がないと予測される場合には、事業展開を断念することになり、展開後に想定を下回る結果となった場合には、経営が立ち行かなかなる。そのため、事業者が新たに事業を展開する場合には、確実で正確な分析情報(需要量)を予め取得する必要がある。
【0003】
最近インターネットの普及と情報の高速化に伴い、個々のパソコン(PC)等の端末にプログラムデータを保有しなくても良いクラウド(クラウド・コンピューティング)システムが利用されている。クラウドシステムは、ソフトウェアを実行するためのプログラム及びデータをインターネット上のクラウドに置き、インターネット回線を通じてプログラムデータにアクセスして、ソフトウェアを利用できるようにした仕組みであり、クラウドシステムにより事業展開の分析を行うことができれば、システム運営者(ASP)及び利用する事業者(ユーザ)共に有意義である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-125881号公報
【文献】特開2004-152097号公報
【文献】特開2004-102748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クラウドシステムを用いた分析情報提供システムであれば、ASPサービス提供者にとっては直接的なハードウエアの保守管理が必要でなく、自身でサーバを保守点検する労力やコストが軽減されると共に、公開されている外部データをリアルタイムに活用することができ、ユーザ(ASPサービス利用者)にとっては自社内、外出先若しくは自宅等のPCから容易に、しかも自分に都合の良い時に必要な分析情報を取得することができる。また、ユーザ(ASPサービス利用者)は、自己の業種に対応した的確な分析情報を取得できることが望ましい。
【0006】
本発明は上述のような事情よりなされたものであり、本発明の目的は、所望地域(商圏)に店舗や施設などを展開する組織体や事業主(ユーザ)に対して、地図情報や人口などの統計データを用いた事業の成算を示す分析情報(期待需要量)を的確に提供することが可能な、クラウド(ASP)を用いた分析情報提供システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、インターネットに接続されたクラウドサーバに構築され、演算処理部で演算処理を実施し、前記インターネットを経て分析結果をユーザ端末に表計算ファイルの形式でダウンロードするようになっている分析情報提供システムに関し、本発明の上記目的は、前記インターネットにはASP端末と、地図運営企業体によってアップデートされる市街地図の電子地図データを提供する他社地図サーバが接続されており、前記演算処理部は、データベースから入力された国勢調査データ、昼間人口推計データ、将来推計人口データ、商業統計データ、消費支出推計データ、住民基本台帳人口データ、診療科目別患者数等業種別需要量統計データなどの統計データ、医療機関データ、介護施設データ、小売店データ、飲食店データなどの業種別の既存施設のポイントデータ、市区町村行政界地図、町丁目行政界地図、道路地図、市街地図、メッシュ地図、国勢調査用町丁目界地図等の地図データ、前記他社地図サーバからの前記電子地図データ、前記ユーザ端末から入力された業種、商圏に関する商圏情報、分析のための分析条件、需要量算出のための基本重み付け係数、面積重み付け係数、規模重み付け係数、需要流出係数に基づいて、前記商圏における前記業種の期待需要量を算出し、前記基本重み付け係数が、計画する当該施設の総合的な魅力度、顧客を引き付ける力を示し、前記当該施設の規模を除いたものであり、前記面積重み付け係数が、計画施設を中心とした第1商圏と、競合施設を中心とした第2商圏との重複部分の面積を、前記第1商圏の面積で除算した値をべき係数でべき乗した係数であり、前記規模重み付け係数が、前記当該施設の規模を示す係数であり、前記需要流出係数が、前記第1商圏内の需要量が他の事業に流出する率を示す係数であり、前記期待需要量を前記分析結果として出力することによって達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る分析情報提供システムによれば、ASPサービス提供者は、ネットを介して公開されている外部データを活用することができ、自己が管理するサーバではなく、クラウドサーバにおいてシステムを構築でき、ハード的な保守管理から解放される。データやソフトウェアの保守管理が、集中化されたクラウドサーバ上で随時行われるので、常に最新の環境の下にサービスを提供することができる。
【0009】
また、ASPサービス利用者(ユーザ)は、オフィスや外出先、店舗等の自分に都合の良い場所から、任意な時にインターネットを経てクラウドサーバにアクセスして、期待需要量の取得といった所望のサービスを受けることができる。ASPサービス利用者は、自己の端末に特別のソフトウェアやデータをインストールする必要がなく、インターネットに接続できる環境であれば良く、自社内、外出先若しくは自宅等のPCから容易に、しかも自分に都合の良い時に必要な分析情報を取得することができる。そして、指定した地域(商圏)に店舗や施設などを展開する予定がある場合、地図情報や人口などの統計データ、既存施設のポイントデータを用いた事業の成算を示す分析情報(期待需要量)を、複数の重み付け係数を用いて的確に算出して取得することが可能である。
【0010】
更に、ASPサービス利用者は、自己が保有する顧客データ、店舗データなどのユーザデータを必要時にアップロードし、地図上に展開、登録して自己の環境に則した的確な分析結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の全体構成例を示す構成図である。
図2】ユーザがクラウドサーバを利用するときの構成例を示す構成図である。
図3】ASPサービス提供者とユーザ(ASPサービス利用者)との間の契約関係締結の動作例を示すフローチャートである。
図4】ユーザがASPサービス提供者から分析情報(期待需要量)を受ける動作例を示すフローチャートである。
図5】業種入力画面の一例を示す画面図である。
図6】業種入力画面の一例を示す画面図である。
図7】商圏指定(円)の操作例を示す画面図である。
図8】商圏指定(到達圏)の操作例を示す画面図である。
図9】商圏指定(任意商圏)の操作例を示す画面図である。
図10】地点入力の動作例を示すフローチャートである。
図11】地点入力の具体的画面例を示す画面図である。
図12】ポイント指定の具体的画面例を示す画面図である。
図13】分析レポート(調剤薬局市場)の一例を示す図である。
図14】分析レポートの一例(重み付け係数一覧表)を示す図である。
図15】ユーザデータのアップロードを説明するための工程流れ図である。
図16】基本重み付け係数の特性例を示す特性図である。
図17】重み付け係数に用いるべき係数εの特性例を示す特性図である。
図18】規模重み付け係数の特性例を示す特性図である。
図19】需要流出係数の特性例を示す特性図である。
図20】分析処理部の詳細構成例を示すブロック図である。
図21】分析処理部の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、施設(若しくは事業所など)を有する医療機関、介護施設、小売店、飲食店等の各種業界において、新たな施設を展開する際、新規開業する施設(計画施設)の獲得できる期待需要量Eを、複数の重み付け係数を用いて的確に算出する。本発明の分析処理はインターネットを介したWeb環境において、商圏分析の条件設定を行った後、分析の拠点となる場所(商圏)を指定した後に分析処理を行い、期待需要量Eなどを含む分析結果をExcelのファイル(分析レポート)として取得できるようになっている。なお、期待需要量Eの算出は、業種別毎(診療圏分析では診療科目毎、介護圏分析では介護事業種別毎、外食市場分析では業態毎等)に行うことができる。
【0013】
例えば、小売店が出店候補地情報を入手した際、候補地に新たな店舗を出店するための商圏分析を行い、新規出店の成功の可否を判定するための科学的な根拠を数値で算出して提供する。また、競合店の出店計画が発生した時点で、自店舗の商圏への影響を分析し、対応策を策定するための科学的な根拠を数値で算出して提供する。
【0014】
図1は本発明の全体構成を示しており、ASPサービス提供者のASP端末(例えばPC)10はインターネット1に接続されており、クラウドサーバもインターネット1に接続されている。また、ユーザとなるASPサービス利用者のユーザ端末(例えばPC)11~1Nもインターネット1に接続されており、クラウドサーバには、ASP端末10を介して、定期的に更新される国勢調査などの統計データ、既存施設のポイントデータ及び地図データが取り込まれ、データベース(DB)170に蓄積される。また、インターネット1には、市街地図を提供する他社地図サーバ30が接続されており、クラウドサーバには、インターネット1を経て、他社地図サーバ30からの電子市街地図データEMが取り込まれるようになっており、クラウドサーバ内に、本発明に係る分析情報提供システム100がシステム構築されている。
【0015】
インターネット1に接続されている他社地図サーバ30は、随時地図運営企業体によって最新の市街地図データにアップデートされる。クラウドサーバ内の分析情報提供システム100は、データベース170に蓄積された最新の統計データ、ポイントデータ、地図データ及び他社地図サーバ30の電子市街地図データEMを利用することができる。
【0016】
定期的に更新されてデータベース170に蓄積された統計データ(国勢調査データ、昼間人口推計データ、将来推計人口データ、商業統計データ、消費支出推計データ、住民基本台帳人口データ、診療科目別患者数等業種別需要量統計データ)、業種別の既存施設ポイントデータ(医療機関データ、介護施設データ、小売店データ、飲食店データなど)などを使用するので、ユーザが必要な情報を適宜利用することができ、的確で詳細な情報分析を行うことが可能となる。なお、地図データとしては、最新の市区町村行政界地図、町丁目行政界地図、道路地図、市街地図、メッシュ地図、国勢調査用町丁目界地図等を使用して、分析情報を地図上に表示する。
【0017】
分析情報提供システム100は、全体の制御演算処理を実施する複数のCPU(Central Processing Unit)101を備え、CPU101には、分析を希望する商圏(地域若しくはエリア)を、地図データに基づいて設定するための商圏設定部110と、設定された商圏の総需要量Dを統計データに基づいて算出する需要量算出部120と、設定された商圏内の既存施設を抽出する既存施設抽出部130と、複数の重み付け係数などを入力し、所定の演算式で情報の分析処理を実施して期待需要量Eを求める分析処理部140と、分析処理された結果(期待需要量Eなど)を、Excelのフォーマット形式で分析レポートとして作成する分析レポート作成部150と、ユーザの本システムへのアクセスの許諾若しくは拒否を判定するセキュリティ部160と、データや情報、パラメータ等を格納するデータベース(DB)170と、ユーザデータを登録するユーザデータベース171と、データ入出力のインタフェースやフォーマット変換等を行う入出力部180と、ユーザが保有する固有のユーザデータを本システムに登録するためのユーザデータ登録部190とが相互に接続されている。
【0018】
図2は、実際にユーザ(ASPサービス利用者)がサービス提供を受ける際に、ASPサービス提供者が運営管理する本発明の分析情報提供システム100と、ユーザのオフィスや自宅、外出先等に設置された使用者端末(本例ではユーザ端末11としている)との接続関係を示しており、ユーザは、インターネット1を介してクラウドサーバの分析情報提供システム100を利用して、自己の計画施設に対する分析結果である期待需要量Eなどを分析レポートとして手得する。ユーザは分析レポートの内容を参照して、事業の新規展開等を判断する。
【0019】
図3は、ASPサービス提供者とユーザ(ASPサービス利用者)との間の契約関係締結の動作例を示すフローチャートであり、本例では全てオフラインで実施される。
【0020】
先ずユーザは、ASPサービス提供者からインターネット等で開示されている登録申請書に必要事項を書き込んで、登録申請書を電子メール、FAX、郵送などでASPサービス提供者に登録の申請を行う(ステップS1)。ASPサービス提供者はその登録申請の審査を行い(ステップS3)、申請内容が許諾要件を満たしているか否かを判定する(ステップS4)。申請内容が許諾要件を満たしていない場合には、再度申請(修正)を行い、申請内容が許諾要件を満たしている場合には当該ユーザの名称、住所等を、分析情報提供システム100に登録し(ステップS5)、当該申請ユーザに所定のID及びPWを付与して終了する(ステップS6)。ユーザが使用端末を限定したいと望む場合には、当該使用端末のIPアドレスをASPサービス提供者に告知し、ASPサービス提供者はそれを登録する(ステップS5)。申請ユーザにID及びPWを付与する1回の行為を、1ライセンスと称する。
【0021】
なお、ここではオフライン作業による登録工程を説明したが、申請から登録までをWeb上でオンライン的に実施することも可能である。
【0022】
ASPサービス提供者の分析情報提供システム100に登録されたユーザが、所望する分析サービスの提供を受ける場合の構成例は図2であり、その動作例を図4のフローチャートに従って説明する。
【0023】
先ずユーザは端末11を起動し(ステップS10)、インターネット1を経て分析情報提供システム100へアクセスし(ステップS11)、ASPサービス提供者から登録時に付与(ライセンス)されているID及びパスワードPWを入力する(ステップS12)。端末限定のためにIPアドレスを登録している場合には、当該端末が登録されているIPアドレスを介して接続されているかを、セキュリティ部160がチェックする。入力されたID及びパスワードPWはセキュリティ部160で正否を判定され(ステップS13)、当該アクセスを許諾できる場合には、ユーザは、分析を希望する業種、例えば診療分野、介護分野、小売店分野、学習塾分野などを端末11から、所定画面から入出力部180を介して入力して指定する(ステップS20)。許諾されない場合は、再度繰り返す。
【0024】
業種入力画面の一例は図5及び図6であり、業種選択方法には2種類ある。即ち、「診療圏分析」や1ライセンス(ID)に「商圏分析」の業種が1種類の場合は、図5の画面左側のメニューで選択する。また、1ライセンス(ID)に「商圏分析」の業種が複数種類装備される場合は、図6の商圏分析欄の「受付画面」の「分析パターン」のプルダウンメニューで選択する。図6の例では”1.(介護圏分析)~”18.(外食チェーン市場分析(寿司店))”の18種類の業種を選択でき、タイトル(分析レポートの名称)、メールアドレスは必須入力項目となっている。「診療圏分析」は医療専用の分析機能であるが、診療圏分析以外の業種(介護、障害、保育、調剤薬局、小売店、飲食店、学習塾など)については、汎用的に開発した「商圏分析」機能により、業種別に分析内容の設定を行って対応している。
【0025】
次いで、希望する分析領域の商圏を商圏設定部110で設定する(ステップS30)。商圏は半径指定の円商圏、円の多角形による分断商圏、車運転時間(分)や徒歩時間、自転車時間による到達商圏、多角形任意形状の商圏、市区町村商圏、二次医療圏及び前記商圏を指定の市区町村界で限定した商圏などである。
【0026】
商圏指定(ステップS30)には図7に示すような指定地点からの半径の指定による円による距離圏をベースに商圏を作成し、その範囲内に含まれるデータベース(DB)170に登録されている統計データ、ポイントデータ及びユーザデータベース171に登録されているユーザデータの集計をする。また、図8に示すように任意の地点から車での走行時間をベースに到達圏を作成し、その範囲内に含まれる統計データ、ポイントデータ、ユーザデータの集計をするようにしたり、或いは図9に示すように任意の商圏を作成し、その範囲内に含まれる統計データ、ポイントデータ、ユーザデータの集計をするようにしても良い。ユーザデータについては、後述する。
【0027】
次いで、指定した業種の分析条件を入出力部180から分析処理部140に入力する(ステップS40)。分析条件は、全ての業種について後述する重み付け係数α、β、γ及び係数Δのうち、係数γに対応するデータ項目を指定すると共に、係数Δを入力する。また、各業種に特有な項目を入力する。基本重み付け係数αは、出力されたExcel形式の分析レポートに基づいてユーザが入力するが、デフォルトはα=1.0に設定されている。面積(人口)重み付け係数βは、既存施設の位置に基づいて自動計算されて入力される。重み付け係数α、β、γ及び係数Δについては、後述する。また、商圏が指定された段階で、需要量算出部120は当該商圏内の総需要量Dを算出し、総需要量Dを分析処理部140に入力する。分析条件は、例えば入力された業種が医療機関の場合には、診療科目、病床数、勤務医数などである。介護施設では、介護事業種別、定員などである。
【0028】
次いで、どの地域(商圏)に新規展開(計画施設)するかの希望地点を入力する(ステップS50)。地点の入力(ステップS50)の詳細を、図10のフローチャートに従って説明する。地点の入力は、図11の画面例の左側メニューの「地図検索」を指定し、「住所」若しくは「路線駅名」を入力して行う(ステップS51)。「住所」入力では、プダウンメニューによる入力と、住所キー入力の直接入力とがあり、「住所」若しくは「路線駅名」が入力されると、当該地域近辺の地図が図12に示されるように画面表示される(ステップS52)。画面表示された地図上でポイントを指示すると(ステップS53)、当該指定されたポイント位置が地図上に赤丸(図12に示すX)で表示される。
【0029】
業種及び商圏が指定され、分析条件が入力され、更に希望地点が入力された段階で、データベース170にアクセスし、既存施設抽出部130は、データベース170より指定商圏内の同一業種の既存施設を抽出して読み出し(ステップS60)、後述する分析処理を分析処理部140において行う(ステップS70)。分析処理が終了すると、分析レポート作成部150は算出した期待需要量E等を記載した分析レポートを、Excel形式で作成すると共に(ステップS80)、ユーザに分析処理完了通知を送信し(ステップS81)、これによりユーザは本システムから分析結果である分析レポートをダウンロードする(ステップS82)。分析レポートの一例(一部)を図13に示す。図14は、調剤薬局市場の分析レポートにおける重み付け係数の一覧表の一例を示しており、後述する基本重み付け係数αを変更する際の参考とする。
【0030】
本発明では、ASPサービス利用者は自己が保有するユーザデータ(顧客データ、店舗データなど)をアップロードして、分析を自己の業種に合った形態で実施することができる。つまり、自己が保有するユーザデータを、住所に基づいて緯度経度座標に変換して地図上にアップロードし、住所を持つCSV(Comma Separated Value)データを地図上で閲覧したり、分析に利用することができる。図15はその様子を模式的に示しており、図15(A)に示すCSVの住所付き会員データを図15(B)の条件指定に基づき、ユーザデータ登録部190にて、住所から緯度経度座標に変換し、ユーザデータベース171に登録する。
【0031】
次に、本発明の分析処理部140における分析処理(ステップS70)で使用する重み付け係数α、β、γ及び係数Δについて説明する。係数αは基本重み付け係数であり、係数βは面積(又は人口)重み付け係数であり、γは規模重み付け係数であり、係数Δは需要流出係数である。ここでは、商圏内にn箇所の既存施設(競合施設)Fi(i=1~n)があるものとするが、商圏内に既存施設が無い場合もある。
(1)基本重み付け係数α:
基本重み付け係数αは、計画施設及び競合施設の魅力度(集客力)を示す係数であり、需要を吸引する力を反映する係数である。図16の特性図(実線)に示すように、基本重み付け係数αの初期値(デフォルト)は、魅力度標準相当の“1.0”に設定されているが、個々の施設毎に“0.0”より大きい値を適宜設定することができる。特性は、図16の破線のような非線形であっても良い。いずれの場合も、基本重み付け係数αの初期値(デフォルト)は“1.0”であるが、業種毎、既存施設毎に本システム利用者の判断で、施設の一覧表を参照して、その都度査定して設定、変更するようになっている。つまり、人気や評判などの魅力度(集客力)が大きければ、“1.0”より大きい基本重み付け係数αを設定し、逆に魅力度(集客力)が小さければ、“1.0”より小さい基本重み付け係数αを設定する。これにより、期待需要量Eの正確なシミュレーションを行うことができる。
【0032】
基本重み付け係数αは、計画する当該施設の総合的な魅力度、顧客を引き付ける力を示し、施設の規模を除いたものである。例えば、医療機関では、取り扱う診療科目毎の診療処置能力、患者対応サービスの質等であり、小売店では、価格の割安感、品質の良さ等になる。結果としては、単位規模(例えば病床数、勤務医数、売り場面積)当りの集客数が、他の競合施設より多いか、或いは少ないかが判断材料になる。
(2)面積(人口)重み付け係数β:
面積重み付け係数βは、商圏の重複面積による重み付け係数である。商圏形状としては、半径で指定される円による商圏、又は徒歩、自転車、車等での所要時間による到達圏、又は道路に沿った距離により指定される到達圏などである。計画施設を中心とした商圏Aと、競合施設を中心とした商圏Aiの重複した商圏の面積をSi、商圏Aの面積をSとすると、べき係数εを用いて面積重み付け係数βiは、下記数1で表わされる。
(数1)
βi=(Si/Sε

即ち、面積重み付け係数βは、計画施設より遠い競合施設ほど競合度合いが低くなることを示している。べき係数εは集中度合若しくは拡散度合を決定しており、図17に示すような線形特性である。集中度合及び拡散度合の中間部を標準とし、べき係数εは初期値“1.0”に設定されているが、業種、業態、立地に基づいて集中度合(若しくは拡散度合)が算出され、集中度合(若しくは拡散度合)から図17の特性に従って自動的に算出される。
【0033】
また、面積重み付け係数βで使用する値を重複商圏の面積Siに代えて、重複商圏内の人口比を使用する方法もある。この場合の人口重み付け係数は、“β’”である。なお、面積重み付け係数β及び人口重み付け係数β’は、いずれも既存施設の位置と商圏半径又は車運転時間等の到達時間により算出されるものであり、業種に関わらず数1で計算される。
(3)規模重み付け係数γ:
規模重み付け係数γは、施設の規模を示す係数であり、業種により異なるが、図18に示すように規模の大きさに従って大きくなる特性である。施設の規模を数値化するために、既存の競合施設の規模の要因となる複数のデータ項目の数値と、実際に獲得している需要量の実績値により、回帰分析を行って設定した回帰式で計算される値を、計画施設及び競合施設の規模重み付け係数γとしている。
【0034】
病院・入院の場合、規模重み付け係数γaは、病床数xと勤務医数yの重回帰分析で求められ、aφ、a1,a2を定数として、下記数2の回帰式で計算される。
(数2)
γa=aφ+a1・x+a2・y

また、小売店の場合は、規模重み付け係数γbは、売り場面積zで表わされ、bを定数として、下記数3の回帰式で計算される。
(数3)
γb=b・z

(4)需要流出係数Δ:
需要流出係数Δは、商圏内の需要量が他の事業に流出する率を示す係数である。需要流出係数Δの特性例は図19であり、通常は“1.0”をデフォルトとしているが、流出する量に応じて“1.0”未満の値を設定する。
【0035】
次に、分析処理部140の詳細構成例を図20に示して説明する。
【0036】
分析処理部140は、入力情報、データに基づいて期待需要量Eの演算を実施する演算部141を備え、演算部141には総需要量Dが入力される。また、演算部141には、基本重み付け係数α(デフォルトα=1)を入力するα入力部142と、べき係数εを入力するε入力部143と、商圏Aiの重複した商圏の面積Siを算出して入力するSi算出部144と、商圏Aの面積Sを算出して入力するS算出部145と、規模重み付け係数γを抽出して入力するγ抽出部146と、需要流出係数Δを入力するΔ入力部147とが接続されている。演算部141は、計画施設の商圏内の総需要量Dを入力すると共に、上記計画施設の重み付け係数α、β、γと,競合施設の重み付け係数αi、βi、γi(i=1~n)とを演算する。
【0037】
このような構成において、その動作例を図21のフローチャートを参照して説明する。
【0038】
先ず、α入力部142から基本重み付け係数αが演算部140に入力され(ステップS100)、次いでε入力部143からべき係数εが演算部141に入力され(ステップS110)、Si算出部144で算出された面積Siが演算部141に入力され(ステップS111)、S算出部144で算出された面積Sが演算部141に入力される(ステップS112)。そして、演算部141は、入力されたべき係数ε、面積Si及びSに基づいて前記数1を演算し、面積重み付け係数βiを算出する(ステップS113)。その後、γ抽出部146で抽出された規模重み付け係数γが演算部141に入力され(ステップS120)、Δ算出部147で算出された需要流出係数Δが演算部141に入力され(ステップS130)、需要量算出部120からの総需要量Dが演算部141に入力される(ステップS140)。
【0039】
演算部141は、計画施設の期待需要量Eを下記数4に従って算出する。即ち、総需要量Dに需要流出係数Δを乗算し、これに計画施設の重み付け係数α、β、γを乗算し、この乗算値を、競合施設の重み付け係数αi、βi、γiの施設数i=1~nの加算値(Σ)で除算して期待需要量Eを算出する(ステップS150)。各種業種によっても、下記数4を適用することができる。
(数4)
=(D×Δ)×α×β×γ÷Σ(αi×βi×γi)
i=1~n

期待需要量Eが算出されると、他の報告事項と共に分析レポートが出力されるので、ユーザはこの結果を参照して基本重み付け係数α及びγ、べき係数εを変更するか否かを判定し(ステップS160)、変更する場合は、Excel上で変更を行うと、Excel上で期待需要量Eを再計算することができる。期待需要量Eが大きいほど、商圏における成果が期待できることになる。
【0040】
総需要量Dは需要量算出部120で算出され、業種が医療機関の場合は診療科目別推計患者数であり、介護施設にあっては介護事業種目別毎の推計要介護者数である。計画施設及び既存施設の基本重み付け係数α、αiは、施設毎に査定した値にExcel上で変更する。
【0041】
なお、規模の数値が誤っている場合、分析・出力されたExcelデータで修正が可能である。
【0042】
本発明は医療機関、介護事業所、障害福祉事業所のほか、外食業、保育、小売、教育産業、調剤薬局、フィットネスクラブ等の健康産業、美容産業等に適用できる。例えば外食市場においては、業態別に商圏内の「一般外食の推計消費支出」と、商圏内の競合となる業態の「既存の飲食店データ」とから計画店舗の期待売上高を推計する。業態としては、居酒屋、寿司店、蕎麦・うどん店、ラーメン店、お好み焼き店、焼き肉店、カフェ等の各種業態の市場分析を行うことができる。
【符号の説明】
【0043】
1 インターネット
10 ASP端末(PC)
11~1N ユーザ端末(PC)
30 他社地図サーバ
100 分析情報提供システム
101 CPU
110 商圏設定部
120 需要量算出部
130 既存施設抽出部
140 分析処理部
150 分析レポート作成部
160 セキュリティ部
170 データベース(DB)
171 ユーザデータベース(DB)
180 入出力部
190 ユーザデータ登録部
図1
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