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  • 特許-微細化装置付き真空脱気機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】微細化装置付き真空脱気機
(51)【国際特許分類】
   B01D 19/00 20060101AFI20231006BHJP
   B01J 3/00 20060101ALN20231006BHJP
【FI】
B01D19/00 101
B01D19/00 102
B01J3/00 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021513076
(86)(22)【出願日】2019-04-09
(86)【国際出願番号】 JP2019015523
(87)【国際公開番号】W WO2020208724
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】595111804
【氏名又は名称】エム・テクニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】榎村 眞一
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-281786(JP,A)
【文献】特開平07-136406(JP,A)
【文献】実開昭47-006038(JP,U)
【文献】実開平04-134404(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第103465387(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 19/00
B01D 1/22
B01J 3/00-03
B28B 7/44
C08F 6/10
C02F 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が真空のベッセル内に液状の処理物を導入して脱気を行った後に前記処理物を前記ベッセルの排出口から前記ベッセル外へ排出する真空脱気機において、
前記ベッセル内に配された微細化スクリーン付き回転ローターと、ローター用電動機と、筒状の駆動軸と、前記回転ローターとは別途に前記ベッセル内の前記処理物を前記ベッセル外へ排出する機能を備えた回転排出羽根と、羽根用電動機と、上端が前記筒状の駆動軸の内部を貫いている回転シャフトとが敷設され、
前記回転ローターは、前記ローター用電動機によって回転する前記筒状の駆動軸によって回転し、
前記回転排出羽根は、前記羽根用電動機によって回転する前記回転シャフトによって回転し、
前記微細化スクリーンは、平盤状の前記回転ローターの外周部に配置され、
前記ローター用電動機と前記羽根用電動機とは、前記筒状の駆動軸及び前記回転シャフトの軸方向において、前記排出口とは反対側に設けられたことを特徴とする微細化スクリーン付き真空脱気機。
【請求項2】
前記回転排出羽根は、スクリュウ型回転排出羽根であることを特徴とする請求項に記載の微細化スクリーン付き真空脱気機。
【請求項3】
前記真空のベッセルに温度調整機構が敷設されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の微細化スクリーン付き真空脱気機。
【請求項4】
前記ベッセルから連続的に処理物を抜き取る目的で回転容積式一軸偏心ねじポンプもしくは高真空引き抜き型ダイアフラムポンプが敷設されたことを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の微細化スクリーン付き真空脱気機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細化装置付き真空脱気機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医薬品、化粧品、食品、ファインケミカルなど、さまざまな製品の製造過程で、液状の処理物に気泡が生じるが、この気泡は製品作りに種々の障害をもたらす。そのため、処理物に対して真空脱気機によって脱泡処理が行われるが、この脱泡処理では、低粘度から高粘度まで液体中の気泡を真空状態で連続して取り除くことが求められている。このような課題に対応し、微細化装置付き真空脱気機として、以下の先行技術文献が知られており、本願出願人にあっても、エム・テクニック株式会社製脱泡機を市場に投入している。
しかしながら、単に、微細気泡も除去できるばかりではなく、インラインで接続し、密閉環境下での連続脱泡運転、連続脱溶媒や脱VOC、遠心分離効果、薄膜効果、微粒化効果、破砕効果、脱気効果など1ユニットで多様な機能を実現し、洗浄性向上、高品質管理、製造の高効率化が求められている中で、従来技術においては、ベッセル内の処理物をスムーズに排出する点で課題が残っていた。
特に高粘度の処理物の場合には、脱気効果を上昇させるために真空度は非常に高くなる。ところが真空度が高くなるに伴い、処理が完了した処理物を真空下から排出することが困難になり、排出不可能な事態に陥ることが多々あった。
このように排出不可能な事態が発生すると、次のような中断排出を行う必要があった。中断排出とは、連続脱気処理を一旦中止して、真空度を下げるもしくは大気圧に戻した上で、処理物をベッセルから排出する排出作業を言う。この中断排出によって処理物を排出し終わると、再度ベッセル内の真空引きを行なって、目的の真空度になってから再度処理物を送って、連続処理を再開するが、再びベッセル内に処理物が溜まると、再度真空を下げるもしくは大気圧に戻し処理物を排出しなければならないと言うように、連続処理と中断排出とを繰り返し行う必要があり、非常に効率が悪い。
先行文献6ではベッセル内に掻き取り装置が付いた真空脱気機が開示されているが、この掻き取り装置は内壁面に付着した処理物を掻き取るものに過ぎず、排出性能に限って言えば排出口への排出作用、さらに言えば排出ポンプへの押し込み作用を実現するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平02-004602号公報
【文献】特開2005-205322号公報
【文献】特開2001-009206号公報
【文献】特開昭63-162005号公報
【文献】特開平07-208375号公報
【文献】特開平07-136406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高粘度などの処理物対する脱気処理に際しても中断排出を行う事態の発生を抑制し、高真空下から処理物を連続的に排出することができるようにした微細化装置付き真空脱気機の提供を課題とする。
本発明において、高粘度の処理物とはポリマー溶液やペースト等々の高粘度液を言うが、粘度で示すと5,000mPa・s以上を言う。また高真空とは5Pa以下を言う。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、内部が真空のベッセル内に液状の処理物を導入して脱気を行った後に前記処理物を前記ベッセル外へ排出する真空脱気機において、前記ベッセル内に配された微細化装置付き回転ローターと、前記ベッセル内の処理物をベッセル外へ排出する目的で回転ローターとは別途の回転排出羽根とが敷設されたことを特徴とする微細化装置付き真空脱気機を提供することにより上記の課題を解決する。
前記微細化装置は、処理物の微細化を行うことによって脱気効果を高める機能を果たすものであり、例えば前記回転ローターに配された微細化スクリーンを示すことができる。
前記回転排出羽根は、回転することによって処理物をベッセルの排出口に向けて強制的に移動させる機能を果たすものであり、例えばスクリュウ型回転排出羽根を示すことができる。
前記真空のベッセルには、温度調整機構を敷設して実施することができる。
前記ベッセルの排出口には、連続的に処理物を抜き取る目的で回転容積式一軸偏心ねじポンプもしくは高真空引き抜き型ダイアフラムポンプなどの排出ポンプを敷設して実施することができる。これによって、前記回転排出羽根により処理物を排出ポンプへ押し込み、高粘度の処理物にあっても、押し込み作用と排出ポンプの吸引作用との両作用の相乗効果によって連続的な排出を実現することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、処理物を連続的に排出する機能を高めた微細化装置付き真空脱気機を提供することができたものである。
これによって、高真空下での脱気処理に際しても、ベッセル内から処理物を連続的に排出することができる。
また、高粘度の処理物に対する脱気処理に際しても、中断排出を行う事態の発生を抑制し、高真空下から処理物を連続的に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る微細化装置付き真空脱気機の内部構造説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する
【0009】
(概要)
この微細化装置付き真空脱気機は、内部が真空のベッセル10内に液状の処理物を導入して脱気を行った後に処理物をベッセル10外へ排出するものである。
ベッセル10内には、回転ローター32に設けられた微細化装置31と、処理物をベッセル10外へ排出するための排出装置41とが敷設されている。
処理物は、微細化装置31によって微細化され脱気が行われた後に、排出装置41の回転排出羽根42によって排出口14から外部に排出される
【0010】
(ベッセル10について)
ベッセル10は、5Pa~0.1Pa程度の高真空に保たれる密閉性を備えた容器であって、この実施の形態では容器本体11とその上部に配置された蓋体15とが開閉可能に接合されたものである。具体的には、容器本体11は、上部の円筒部12と、円筒部12から漸次その内径を減少していく下部のロート部13とを備え、ロート部13の下端には脱気処理後の処理物を外部に排出する排出口14が設けられている。
この容器本体11には、その外壁面に沿って温水や冷水などの温度調整の流体を流すジャケットなどの温度調整機構52が配置されている。なお温度調整機構52は蓋体15にも設けて実施しても構わない。この温度調整機構52は、ベッセル10内部の処理物を所定の温度域に保つためや、必要に応じて加温加冷するために用いることができる。
蓋体15には、ベッセル10の内部を真空に保つための真空口16が設けられており、真空口16に接続された真空ポンプ53によって内部の気体が外部に排出されることにより、ベッセル10の内部が所定圧の真空状態となる。
また蓋体15には、処理物をベッセル10の内部に投入するための導入口17が設けられており、これに接続されたタンクなどの供給源51から処理物がベッセル10へ導入される。
容器本体11と蓋体15は両者に設けられたフランジ同士を対向させて減圧下での気密性を確保して固定されることによって一体的なベッセル10が構成されるが、ベッセル10はどの位置で2分化しても構わないし、その接合手段も適宜変更して実施することができる
【0011】
(微細化装置31について)
微細化装置31は、容器本体11の円筒部12に対応する位置に配置されたもので、平盤状の回転ローター32と、その外周部に設けられた第一スクリーン33と第二スクリーン34を備える。回転ローター32は、筒状の駆動軸35によって回転する。具体的には、駆動軸35は蓋体15の外部上に設けられたローター用電動機22によってローター用動力伝達部23を介して回転する。
この回転ローター32の内周側には、導入口17に接続された環状路18が配置されており、環状路18先端の投入口19から、処理物が放射状に回転ローター32に向けて導入される。
回転ローター32の上面は平滑な平坦面とされており、投入された処理物は、回転する回転ローター32の遠心力によってその上面で薄膜化される。
遠心力によって回転ローター32の外周方向に進んだ処理物が環状に配置された第一スクリーン33と第二スクリーン34を通過することによって、脱泡効果が高められる。スクリーンは1つでも構わないが、パンチングプレートなどの比較的目の大きな第一スクリーン33と、金属メッシュなどの比較的目の小さな第二スクリーン34とを用いることによって、順次細分化が図れることにより、円滑かつ適正な細分化を図ることができる点で有利である。なお第3第4などのより多くのスクリーンを用いて実施しても構わない。
回転ローター32と第二スクリーン34を通過した処理物は、霧状になって円筒部12の内壁面に衝突する。この衝突によって、さらに脱気が促され、衝突後の処理物が円筒部12の内壁面に沿って薄膜流化することにより微細な気泡も脱泡される
【0012】
(排出装置41について)
排出装置41は、回転シャフト43によって回転する回転排出羽根42を備えるものであり、容器本体11のロート部13と対応する位置に配置されている。
回転シャフト43の上端は、前述の筒状の駆動軸35の内部を貫いており、羽根用電動機24によって羽根用動力伝達部25を介して、回転ローター32とは別途に回転する。ここで別途とは、回転排出羽根42と回転ローター32とが別々に回転することを意味し、回転方向は同一であっても構わないし異なるものであっても構わない。回転ローター32の回転は処理物の微細化のためになされるものであり、その目的に最適な回転数で運転され、他方、回転排出羽根42の回転は脱気処理が終了した処理物をベッセル10の外部に円滑に排出するためになされるものであり、その目的に最適な回転数で運転される。そのため、回転駆動源が同一であるか否かは問わず、両者は別途に回転するものとして実施される。
具体的には、真空脱気機の大きさにもよるが、回転ローター32の回転速度は500rpm~8000rpm程度が適当であり、回転排出羽根42の回転速度は10rpm~400rpm程度が適当である。
【0013】
この実施の形態にあっては、回転排出羽根42は螺旋状に伸びるスクリュウ型回転排出羽根として実施されている。径の大きな回転排出羽根42の上部にあっては支持体44を介して回転シャフト43に支持されているが、径の小さな下部においては回転排出羽根42が回転シャフト43に直接支持されており、回転排出羽根42の下端は排出口14に臨む位置へ達している。高粘度の処理物にあっては、ベッセル10の内壁面に付着してベッセル中央部まで処理物が中々来ないため、径の大きな回転排出羽根42の上部では中央に羽根のない空洞状態としているが、上下方向の全領域に渡って回転排出羽根42を回転シャフト43にまで達するよう設けて、中央に空洞がない状態で実施しても構わない。
この回転排出羽根42が回転することによって高粘度の処理物にあっても、強制的に排出口14に送り込まれることによって、ベッセル10内部での滞留が必要以上に生ずることが抑制される。なお、前述のように、衝突後の処理物は円筒部12の内壁面に沿って薄膜流化することにより微細な気泡も脱泡されるが、その機能を阻害しない程度の処理物の滞留量に止めることが適当である。具体的には、多くとも下部のロート部13内に収まる程度に止めることが適当であるが、円筒部12の軸方向の長さを長くした場合には、その途中まで滞留するものであっても構わない。
ベッセル10の下部、この例では円筒部12の下部は、漏斗状とせずに筒状であっても構わないが、漏斗状にすることによって、徐々に加圧されて投入口19に接続された排出ポンプ54への押し込み効果が高まる点で有利である。
なお、流体の種類によっては投入口19に排出ポンプ54を接続せずに実施することもできるが、高粘度の処理物にあっては回転容積式一軸偏心ねじポンプもしくは高真空引き抜き型ダイアフラムポンプを排出ポンプ54として敷設して実施することが好ましい。
これによって、ロート部13の内壁面に沿って配置された回転排出羽根42の回転によって、処理物を加圧しながら上記の排出ポンプ54へ押し込むことができ、高粘度の処理物にあっても、押し込み作用と排出ポンプの吸引作用との両作用の相乗効果によって連続的な排出を実現することができるものである。
その結果、高粘度の処理物にあっても、中断排出の必要性を抑制しながら連続的な脱気処理が可能となるものである。
【0014】
なお、回転排出羽根42は1条のものを示したが、2以上の多条であっても構わないし、連続的に伸びるもののほか断続的に伸びるものであっても構わない。
回転排出羽根42の外周とベッセル10(この例ではロート部13)の内壁面とのクリアランスは0.1mm~2mm程度であることが好ましいが、この値は、処理物を排出口14へ強制的に送り込むことを実現することができる範囲内で適宜変更して実施することができる。ローター用電動機22、ローター用動力伝達部23、羽根用電動機24及び羽根用動力伝達部25からなる駆動装置21は、駆動軸35及び回転シャフト43の軸方向において、排出口14とは反対側の蓋体15側に設けて実施することにより、排出装置41が設けられているベッセル10の内部空間を高粘度の処理物の排出に最も有利な形状に設計することができる点で有利であるが、駆動装置21を排出口14と同じ側の容器本体11に設けて実施しても構わない。
【符号の説明】
【0015】
10 ベッセル
11 容器本体
12 円筒部
13 ロート部
14 排出口
15 蓋体
16 真空口
17 導入口
18 環状路
19 投入口
21 駆動装置
22 ローター用電動機
23 ローター用動力伝達部
24 羽根用電動機
25 羽根用動力伝達部
31 微細化装置
32 回転ローター
33 第一スクリーン
34 第二スクリーン
35 駆動軸
41 排出装置
42 回転排出羽根
43 回転シャフト
44 支持体
51 供給源
52 温度調整機構
53 真空ポンプ
54 排出ポンプ
図1