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特許7361416光断層画像撮影装置及びそれに用いる光源装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】光断層画像撮影装置及びそれに用いる光源装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20231006BHJP
【FI】
A61B3/10 100
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022045529
(22)【出願日】2022-03-22
(62)【分割の表示】P 2017246663の分割
【原出願日】2017-12-22
(65)【公開番号】P2022075870
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2022-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】501299406
【氏名又は名称】株式会社トーメーコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野澤 有司
(72)【発明者】
【氏名】加藤 千比呂
(72)【発明者】
【氏名】加茂 考史
【審査官】小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-209577(JP,A)
【文献】特開2017-189219(JP,A)
【文献】特開2013-208393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の光断層画像を撮影する光断層画像撮影装置であって、
波長掃引型の光源装置と、
前記光源装置から出力される光を前記被検眼に照射する測定光学系と、を備えており、
前記測定光学系は、前記光源装置から出力される光が前記被検眼に入射される位置における光の直径を調整可能に構成されており、
前記直径が3mm以上であり、
前記光源装置の波長掃引周波数が10Hz以上、かつ、5000Hz以下である、光断層画像撮影装置。
【請求項2】
前記光源装置から前記被検眼に照射される光の中心波長が700nm以上、かつ、1400nm以下である、請求項に記載の光断層画像撮影装置。
【請求項3】
前記光源装置を制御する制御装置をさらに備えており、
前記光源装置は、前記光源装置の波長掃引周波数と前記光源装置から前記被検眼に照射される光の中心波長との少なくとも1つを調整可能に構成されており、
前記制御装置は、前記光源装置から出力される光の前記波長掃引周波数と前記中心波長との少なくとも1つを調整する、請求項1又は2に記載の光断層画像撮影装置。
【請求項4】
前記測定光学系は、前記被検眼の瞳孔径以下となるように前記直径を調整可能である、請求項1~のいずれか一項に記載の光断層画像撮影装置。
【請求項5】
前記測定光学系は、前記被検眼に照射される光の焦点位置を調整可能な焦点調整機構を備える、請求項1~のいずれか一項に記載の光断層画像撮影装置。
【請求項6】
前記被検眼からの反射光を受光してその光の強度に応じた信号を出力する受光素子と、
前記受光素子から出力される信号をサンプリングするサンプリング回路と、
前記光源装置から出力される光の周波数に基づいて前記信号をサンプリングするタイミングを規定するクロック信号を生成するサンプルクロック生成装置と、をさらに備える、請求項1~のいずれか一項に記載の光断層画像撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、光断層画像撮影装置及びそれに用いる光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼の眼軸長や被検眼内の各部位の位置等を測定する光断層画像撮影装置が開発されている。例えば、特許文献1の光断層画像撮影装置は、光源からの光を被検眼の内部に照射すると共にその反射光を導く測定光学系と、光源からの光を参照面に照射すると共にその反射光を導く参照光学系を備えている。測定の際には、測定光学系により導かれた反射光と参照光学系により導かれた反射光とを合成した干渉光から、被検眼内部の対象部位の位置を特定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-176842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるような光断層画像撮影装置では、通常、1~2mm程度の比較的小さい直径を有する光が被検眼に照射される。しかしながら、例えば、白内障等によって被検眼の水晶体に混濁部位があると、光源装置から被検眼に照射された光が混濁部位で減衰し、網膜まで到達する光量が少なくなることがある。その結果、網膜からの反射光が検出し難くなり、網膜の位置や眼軸長等を測定することが困難になるという問題があった。本明細書は、被検眼の網膜から反射される光の信号強度を高くできる技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示する第1の光断層画像撮影装置は、被検眼の光断層画像を撮影する。光断層画像撮影装置は、波長掃引型の光源装置と、光源装置から出力される光を被検眼に照射する測定光学系と、を備えている。光源装置から被検眼に照射される光の直径をDとし、光源装置の波長掃引周波数をSとし、光源装置から被検眼に照射される光の中心波長をλとすると、D/S×λ>1.61となる。
【0006】
上記の光断層画像撮影装置では、被検眼に上記の条件を満たす光を照射することによって、信号の受信感度を向上させることができる。このため、網膜からの反射光の信号を高感度で取得することができる。
【0007】
また、本明細書に開示する光源装置は、被検眼の断層画像を撮影する光断層画像撮影装置に装備され、被検眼に照射される光を出力する波長掃引型の光源装置である。光源装置は、被検眼に照射される光の直径をDとし、波長掃引周波数をSとし、中心波長をλとすると、D/S×λ>1.61となるように、波長掃引周波数Sと中心波長λの少なくとも一方を調整可能に構成されている。
【0008】
上記の光源装置では、被検眼に上記の条件を満たす光を照射するように、波長掃引周波数Sと中心波長λの少なくとも一方を調整できる。このため、上記の光断層画像撮影装置と同様の作用効果を奏することができる。
【0009】
また、本明細書に開示する第2の光断層画像撮影装置は、被検眼の光断層画像を撮影する。光断層画像撮影装置は、波長掃引型の光源装置と、光源装置から出力される光を被検眼に照射する測定光学系と、を備えている。光源装置から被検眼に照射される光の直径Dが3mm以上となる。
【0010】
上記の光断層画像撮影装置では、被検眼に照射される光の直径Dが3mm以上となるため、網膜に到達する光を多くすることができる。このため、被検眼の水晶体に混濁部位があっても、網膜からの反射光の信号を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例に係る光断層画像撮影装置の光学系の概略構成を示す図。
図2】実施例に係る光断層画像撮影装置の制御系を示すブロック図。
図3】0点調整機構の機能を説明するための図。
図4】焦点調整機構によって、被検眼に入射される光の直径を変化させる機能を説明するための図。
図5】被検眼の水晶体に混濁部位が生じている場合に、被検眼に入射される光を模式的に示す図であり、(a)は光の直径が小さい場合を示し、(b)は光の直径が大きい場合を示す。
図6】干渉信号波形を処理する手順を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0013】
(特徴1)本明細書が開示する光断層画像撮影装置では、直径Dが3mm以上であってもよい。
【0014】
(特徴2)本明細書が開示する光断層画像撮影装置では、波長掃引周波数Sが10Hz以上、かつ、5000Hz以下であってもよい。このような構成によると、信号の受信感度をより向上させることができると共に、アーチファクトの発生を低減することができる。
【0015】
(特徴3)本明細書が開示する光断層画像撮影装置では、中心波長λが700nm以上、かつ、1400nm以下であってもよい。このような構成によると、光が眼内を伝播する間に光の強度が減衰することを低減でき、信号の受信感度をより向上させることができる。
【0016】
(特徴4)本明細書が開示する光断層画像撮影装置は、光源装置を制御する制御装置をさらに備えていてもよい。光源装置は、波長掃引周波数Sと中心波長λの少なくとも1つを調整可能に構成されていてもよい。制御装置は、光源装置から出力される光の波長掃引周波数Sと中心波長λの少なくとも1つを調整してもよい。このような構成によると、被検眼に照射される光の直径Dに応じて、光源装置から出力される光の波長掃引周波数Sと中心波長λの少なくとも1つを調整することで、上記の条件式を満たすことが容易となる。
【0017】
(特徴5)本明細書が開示する光断層画像撮影装置では、測定光学系は、被検眼に照射される光の直径Dを調整可能に構成されていてもよい。測定光学系は、被検眼の瞳孔径以下となるように直径Dを調整してもよい。このような構成によると、被検眼の瞳孔径に合わせて被検眼に照射する光の直径Dを調整することができる。このため、被検眼に効率よく光を照射することができる。
【0018】
(特徴6)本明細書が開示する光断層画像撮影装置では、測定光学系は、被検眼に照射される光の焦点位置を調整可能な焦点調整機構を備えていてもよい。このような構成によると、焦点調整機構を用いることによって、直径Dを容易に調整することができる。
【0019】
(特徴7)本明細書が開示する光断層画像撮影装置は、被検眼からの反射光を受光してその光の強度に応じた信号を出力する受光素子と、受光素子から出力される信号をサンプリングするサンプリング回路と、光源装置から出力される光の周波数に基づいて信号をサンプリングするタイミングを規定するクロック信号を生成するサンプルクロック生成装置と、をさらに備えていてもよい。このような構成によると、サンプリングされる信号に歪みが生じることを抑制することができ、より精度の高い断層画像を取得できる。
【実施例
【0020】
以下、実施例に係る光断層画像撮影装置について説明する。図1に示すように、光断層画像撮影装置は、光源装置12と、被検眼100を検査するための測定部10と、K-clock発生装置60を備えている。光源装置12から出射される光は、ビームスプリッタ18に照射され、ビームスプリッタ18で測定部10に導かれる光とK-clock発生装置60に導かれる光に分岐される。
【0021】
測定部10は、被検眼100から反射される反射光と参照光とを干渉させる干渉光学系14と、被検眼100の前眼部を観察する観察光学系50と、被検眼100に対して測定部10を所定の位置関係にアライメントするためのアライメント光学系(図示省略)を有している。アライメント光学系は、公知の光断層画像撮影装置に用いられているものを用いることができるため、その詳細な説明は省略する。
【0022】
干渉光学系14は、光源装置12からの光を被検眼100の内部に照射すると共にその反射光を導く測定光学系と、光源装置12からの光を参照面に照射すると共にその反射光を導く参照光学系と、測定光学系により導かれた反射光と参照光学系により導かれた参照光とを合成した干渉光を受光する受光素子26によって構成されている。
【0023】
光源装置12は、波長掃引型の光源装置であり、出射される光の波長が所定の周期で変化するようになっている。光源装置12から出射される光の波長が変化すると、出射される光の波長に対応して、被検眼100の深さ方向の各部位から反射される光のうち参照光と干渉を生じる反射光の反射位置が被検眼100の深さ方向に変化する。このため、出射される光の波長を変化させながら干渉光を測定することで、被検眼100の内部の各部位(すなわち、水晶体104や網膜106)の位置を特定することが可能となる。
【0024】
ここで、光源装置12は、波長(詳細には、中心波長)が700nm以上、かつ、1400nm以下の光を出力することが好ましい。波長が700nm以下の光は、可視光となる。このため、波長が700nm以上の光を出力することによって、被検者が眩しさを感じることを回避できると共に、被検眼100の瞳孔が縮瞳することを抑制することができる。また、波長が1400nm以上の光は、水に吸収され易い。このため、波長が1400nm以下の光を出力することによって、光が眼内を伝播する間に光の強度が減衰することを抑制することができ、受光素子26で受光する光の検出感度が低下することを抑制することができる。本実施例では、光源装置12は、波長が700nmの光を出力している。さらに、光源装置12の波長掃引周波数は、10Hz以上、かつ、5000Hz以下であることが好ましい。波長掃引周波数を低くすると、受光素子26で受光する光の検出感度が向上する。このため、波長掃引周波数を5000Hz以下とすることによって、受光素子26で干渉光を良好に検出することができる。また、光断層画像を撮影する間に被検眼100が移動すると、取得される光断層画像にアーチファクトが発生する。撮影中の被検眼100が移動する一因として、被検者の拍動(1~2Hz)による振動がある。このため、波長掃引周波数を10Hz以上とすることによって、波長掃引周波数が被検者の拍動より速くなるため、撮影中に被検者の拍動による振動で被検眼100が移動することを抑制でき、取得される光断層画像にアーチファクトが発生ことを抑制することができる。本実施例では、光源装置12の波長掃引周波数を1300Hzとしている。なお、光源装置12から出力される光の波長掃引周波数は制御装置64によって調整可能であり、この構成については後述する。
【0025】
測定光学系は、ビームスプリッタ24と、ミラー28と、0点調整機構30と、ミラー34と、焦点調整機構40と、ミラー46と、ホットミラー48によって構成されている。光源装置12から出射された光は、ビームスプリッタ18を介して測定部10に導かれる。測定部10に導かれた光は、ビームスプリッタ24、ミラー28、0点調整機構30、ミラー34、焦点調整機構40、ミラー46、及びホットミラー48を介して被検眼100に照射される。被検眼100からの反射光は、ホットミラー48、ミラー46、焦点調整機構40、ミラー34、0点調整機構30、ミラー28、及びビームスプリッタ24を介して受光素子26に導かれる。0点調整機構30と焦点調整機構40については、後で詳述する。
【0026】
参照光学系は、ビームスプリッタ24と、参照ミラー22によって構成されている。ビームスプリッタ18で測定部10に導かれる光の一部は、ビームスプリッタ24で反射され、参照ミラー22に照射され、参照ミラー22によって反射される。参照ミラー22で反射された光は、ビームスプリッタ24を介して受光素子26に導かれる。参照ミラー22とビームスプリッタ24と受光素子26は、干渉計20内に配置され、その位置が固定されている。このため、本実施例の光断層画像撮影装置では、参照光学系の参照光路長は一定で変化しない。
【0027】
受光素子26は、参照光学系により導かれた光と測定光学系により導かれた光とを合成した干渉光を検出する。受光素子26としては、例えば、フォトダイオードを用いることができる。
【0028】
観察光学系50は、被検眼100にホットミラー48を介して観察光を照射すると共に、被検眼100から反射される反射光(すなわち、照射された観察光の反射光)を撮影する。ここで、ホットミラー48は、干渉光学系14の光源装置12からの光を反射する一方で、観察光学系50の光源装置からの光を透過する。このため、本実施例の光断層画像撮影装置では、干渉光学系14による測定と、観察光学系50による前眼部の観察を同時に行うことができる。なお、観察光学系50には、公知の光断層画像撮影装置に用いられているものを用いることができるため、その詳細な構成については説明を省略する。
【0029】
ここで、測定光学系に設けられる0点調整機構30と焦点調整機構40について説明する。0点調整機構30は、コーナキューブ32と、コーナキューブ32をミラー28,34に対して進退動させる第2駆動装置56(図2に図示)を備えている。第2駆動装置56がコーナキューブ32を図1の矢印Aの方向に駆動することで、光源装置12から被検眼100までの光路長(すなわち、測定光学系の物体光路長)が変化する。図3に示すように、光源装置12から被検眼100の検出面(図3では角膜表面)までの物体光路長(詳細には、光源装置12~検出面+検出面~受光素子26)と、光源装置12から参照ミラー22までの参照光路長(詳細には、光源12~参照ミラー22+参照ミラー22~受光素子26)とに光路差ΔZが存在する場合、光路差ΔZが大きくなるほど、検出面から反射される反射光と参照光とを合成した干渉光の強度は弱くなる。逆に、光路差ΔZが小さいほど、干渉光の強度は強くなる。このため、本実施例では、0点調整機構30により物体光路長を変化させることで、参照光路長と物体光路長とが一致する位置(いわゆる、0点)を角膜102の表面から網膜106の表面まで変化させることができる。
【0030】
焦点調整機構40は、光源装置12側に配置される凸レンズ42と、被検眼100側に配置される凸レンズ44と、凸レンズ42に対して凸レンズ44を光軸方向に進退動させる第3駆動装置58(図2に図示)を備えている。凸レンズ42と凸レンズ44は、光軸上に配置され、入射する平行光の焦点の位置を変化させる。すなわち、第3駆動装置58が凸レンズ44を図1の矢印Bの方向に駆動することで、被検眼100に照射される光の焦点の位置が被検眼100の深さ方向に変化する。
【0031】
焦点調整機構40において、凸レンズ42と凸レンズ44との間隔を調整することで、被検眼100に光が入射される位置(すなわち、角膜102の前面の位置)における光の直径D(以下、単に「光の直径D」ともいう)を変化させることができる。具体的には、凸レンズ44から照射される光が平行光となるように凸レンズ42と凸レンズ44との間隔を調整すると、図4(a)に示すように、被検眼100に平行光が入射される。一方、図4(a)の状態から凸レンズ44を凸レンズ42から離れる方向に移動させると、凸レンズ44から照射される光は収束光となり、図4(b)に示すように、被検眼100に収束光が入射される。このとき、被検眼100に入射される光の直径Dは、被検眼100に平行光が入射されるとき(すなわち、図4(a)のとき)の光の直径Dより小さくなる。また、図4(a)の状態から凸レンズ44を凸レンズ42に近づく方向に移動させると、凸レンズ44から照射される光は発散光となり、図4(c)に示すように、被検眼100に発散光が入射される。このとき、被検眼100に入射される光の直径Dは、被検眼100に平行光が入射されるとき(すなわち、図4(a)のとき)の光の直径Dより大きくなる。このように、光の直径Dを変化させることによって、被検眼100に照射する光の直径を変化させることができる。
【0032】
例えば、被検眼100の水晶体104に、白内障等により混濁部位105が生じていることがある。図5は、被検眼100の水晶体104に混濁部位105が生じている場合に被検眼100に入射される光を模式的に示している。なお、図5では、説明を容易にするため、光の直径Dの大きさに関わらず、被検眼100に入射される光を平行光で示している。図5(a)に示すように、光の直径Dが小さい場合には、光源装置12から出力された光が混濁部位105で減衰し、網膜106に到達する光量が少なくなる。一方、図5(b)に示すように、光の直径Dが大きい場合には、入射される光の一部は混濁部位105で減衰されるものの、入射される光の他の部分は混濁部位105を通過することなく網膜106まで到達する。このため、被検眼100に入射される光の直径Dを大きくすることによって、水晶体104に混濁部位105がある被検眼100に対しても、網膜106から反射される光の信号強度を高くすることができる。光の直径Dは、3mm以上、かつ、被検眼100の瞳孔径以下であることが好ましい。光の直径Dを3mm以上とすることによって、網膜106まで光が到達し易くなる。また、光の直径Dを被検眼100の瞳孔径以下とすることによって、効率よく眼内に光を照射できる。なお、測定の際には、散瞳剤等によって被検眼100の瞳孔径を大きくしてもよい。被検眼100の瞳孔径を大きくすることによって、光の直径Dを大きくすることができる。
【0033】
K-clock発生装置60は、等間隔周波数(光の周波数に対して均等な周波数間隔)にて干渉信号のサンプリングを行うために、ビームスプリッタ18から分岐された光からサンプルクロック(K-clock)信号を光学的に生成する。そして、生成されたK-clock信号は、制御装置64に向けて出力される。これにより、干渉信号の歪みが抑えられ、分解能が悪化することが防止される。
【0034】
また、本実施例の光断層画像撮影装置では、被検眼100に対して測定部10(詳細には、測定部10のうち干渉計20を除いた部分の光学系)の位置を調整するための位置調整機構16(図2に図示)と、その位置調整機構16を駆動する第1駆動装置54(図2に図示)を備えている。なお、位置調整機構16による位置を調整する処理については後述する。
【0035】
次に、本実施例の光断層画像撮影装置の制御系の構成を説明する。図2に示すように、光断層画像撮影装置は制御装置64によって制御される。制御装置64は、CPU,ROM,RAM等からなるマイクロコンピュータ(マイクロプロセッサ)によって構成されている。制御装置64には、光源装置12と、第1~第3駆動装置54~58と、モニタ62と、観察光学系50が接続されている。制御装置64は、光源装置12のオン/オフを制御すると共に、光源装置12から出力される光の波長掃引周波数を制御する。したがって、制御装置64は、光源装置12から出力される光の波長掃引周波数を変更することができる。また、制御装置64は、第1~第3駆動装置54~58を制御することで各機構16、30、40を駆動し、また、観察光学系50を制御して観察光学系50で撮像される前眼部像をモニタ62に表示する。
【0036】
上述したように、制御装置64は、光源装置12から出力される光の波長掃引周波数を調整可能であり、第3駆動装置58を制御して焦点調整機構40を駆動することによって被検眼100に入射する光の直径Dを調整可能である。したがって、制御装置64は、光源装置12から出力される光の波長掃引周波数Sと、被検眼100に入射する光の直径Dを調整して、D/S×λ>1.61となるように調整できる。なお、Sは波長掃引周波数を示し、λは光の波長を示す。D/S×λ>1.61を満足するように光の直径Dを大きくすると、網膜106まで到達する光量を多くすることができる。また、D/S×λ>1.61を満足するように光の波長掃引周波数Sを小さくすると、受光素子26で受光する光の検出感度が向上する。従来においては、処理能力を高くするため、波長掃引周波数Sを高くして被検眼100を測定していた。しかしながら、本発明者が、水晶体104に混濁部位105がある被検眼100においても良好な断層画像を得るという観点から種々検討したところ、光の直径D、波長掃引周波数S、波長λの関係が測定に影響を及ぼすことがわかった。そして、本発明者が直径D、波長掃引周波数S、波長λの関係をさらに検討した結果、D/S×λ>1.61となる光を照射すると、水晶体104に混濁部位105がある被検眼100においても良好な測定結果が得られることがわかった。
【0037】
なお、本実施例では、制御装置64は、光源装置12から出力される光の波長掃引周波数Sを変更(調整)可能であったが、このような構成に限定されない。制御装置64は、光源装置12から出力される光の波長λを調整可能であってもよいし、波長掃引周波数Sと波長λの両方を調整可能であってもよい。
【0038】
また、制御装置64には、受光素子26と、K-clock発生装置60が接続されている。制御装置64には、受光素子26で検出される干渉光の強度に応じた干渉信号が入力する。また、制御装置64には、K-clock発生装置60で生成されたK-clock信号が入力する。制御装置64は、受光素子26からの干渉信号をK-clock信号に基づいてサンプリングする。すなわち、本実施例において、制御装置64は、「サンプリング回路」の一例として機能している。そして、制御装置64は、サンプリングされた干渉信号をフーリエ変換することによって、被検眼100の各部位(角膜102の前後面、水晶体104の前後面、網膜106の表面)の位置を特定し、被検眼100の眼軸長を算出する。
【0039】
次に、実施例に係る光断層画像撮影装置を用いて、水晶体104に混濁部位105がある被検眼100の光断層画像を撮影する手順について説明する。まず、検査者は図示しないジョイスティック等の操作部材を操作して、被検眼100に対して測定部10の位置合わせを行う。すなわち、制御装置64は、検査者の操作部材の操作に応じて、第1駆動装置54により位置調整機構16を駆動する。これによって、被検眼100に対する測定部10のxy方向(縦横方向)の位置とz方向(進退動する方向)の位置が調整される。また、制御装置64は、第2駆動装置56を駆動して、0点調整機構30を調整する。これによって、物体光路長と参照光路長が一致する0点の位置が被検眼100の所定の位置(例えば、角膜102の前面)となる。
【0040】
次いで、制御装置64は、第3駆動装置58を駆動して、焦点調整機構40を調整する。これによって、被検眼100に入射する光の直径Dが調整される。また、制御装置64は、光源装置12から出力される光の波長掃引周波数Sを調整する。詳細には、制御装置64は、D/S×λ>1.61となるように光の直径Dと波長掃引周波数Sを調整する。なお、制御装置64は、D/S×λ>1.61となるように、光の直径D又は波長掃引周波数Sのいずれか一方を調整してもよい。
【0041】
次いで、制御装置64は、光源装置12から照射される光の周波数を変化させながら、受光素子26で検出される信号を取り込む。既に説明したように、光源装置12から照射される光の周波数を変化させると、測定光と参照光とが干渉して干渉波を生じる位置が被検眼100の深さ方向に変化する。このため、受光素子26から出力される干渉信号は、図6に示すように、信号強度が時間によって変化する信号となり、この信号には被検眼100の各部(角膜102の前面及び後面、水晶体104の前面及び後面、網膜106の表面)から反射された各反射光と参照光とを合成した干渉波による信号となる。そこで、制御装置64は、受光素子26から入力する信号をフーリエ変換することで、その信号から被検眼100の各部(角膜102の前面及び後面、水晶体104の前面及び後面、網膜106の表面)から反射された反射光による干渉信号成分を分離する。これにより、制御装置64は、被検眼100の各部の位置を特定することができる。
【0042】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0043】
10:測定部
12:光源装置
14:干渉光学系
16:位置調整機構
26:受光素子
30:0点調整機構
40:焦点調整機構
50:観察光学系
62:K-clock発生装置
64:制御装置
100:被検眼
図1
図2
図3
図4
図5
図6