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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】イヤホン
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20231006BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20231006BHJP
   A61B 5/256 20210101ALI20231006BHJP
   A61B 5/291 20210101ALI20231006BHJP
   H04R 1/46 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
H04R1/10 104Z
A61B5/02 310J
A61B5/256 130
A61B5/291
H04R1/10 104E
H04R1/46
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022539786
(86)(22)【出願日】2020-07-25
(86)【国際出願番号】 JP2020028608
(87)【国際公開番号】W WO2022024162
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-06-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523190398
【氏名又は名称】株式会社MOVE
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】保坂 明彦
【審査官】上田 雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-122915(JP,A)
【文献】特開2019-4396(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0010461(US,A1)
【文献】国際公開第2009/031238(WO,A1)
【文献】特開2006-33150(JP,A)
【文献】特開2019-195179(JP,A)
【文献】特開2016-158878(JP,A)
【文献】特開平7-115695(JP,A)
【文献】特開2011-217986(JP,A)
【文献】特表2012-502719(JP,A)
【文献】特開2008-92356(JP,A)
【文献】特開2009-44429(JP,A)
【文献】特開2007-37187(JP,A)
【文献】特開2015-207928(JP,A)
【文献】特表2019-523666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00-31/00
A61B 5/02- 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一軸方向に延びる音導管と、
前記音導管の基端側に配される前記一軸方向に音響を出力するスピーカと、
前記音導管に対して前記スピーカの背面側に該スピーカと離隔して配される振動を感知するマイクと、
前記音導管に対して前記マイクの背面側に配される無線通信基板と、
前記音導管の基端に連結し前記一軸方向に対して傾斜する傾斜面と前記一軸方向に直交する方向に展開して前記スピーカを収容する円環状の基端部とを有するフロント部と、前記音導管に対して前記フロント部の背面側に連結し前記マイクを収容し支持する連結部と、前記音導管に対して前記連結部の背面側に連結し前記無線通信基板を収容するリア部と、を有するハウジングと、を備えており、
前記スピーカの周囲に配置され、前記フロント部の基端部に収容される複数の電極と、前記基端部の外側に取り外し可能に嵌合するリング体とを更に備え、前記リング体が内面上に前記複数の電極を有することを特徴とする、イヤホン。
【請求項2】
前記リング体は、外向きに凸状に突起したリング突起部を有することを特徴とする、請求項に記載のイヤホン。
【請求項3】
前記リング体は、弾性体であることを特徴とする、請求項1又は2のいずれか一項に記載のイヤホン。
【請求項4】
前記リング体は、絶縁性の絶縁部により分割され、前記複数の電極にそれぞれ接続する複数の導電性の導電部を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のイヤホン。
【請求項5】
前記導電部の一つは、円弧状に突起した弧状部を有することを特徴とする請求項に記載のイヤホン。
【請求項6】
前記導電部の別の一つは、該導電部から伸長する伸長部を有することを特徴とする請求項4又は5に記載のイヤホン。
【請求項7】
前記傾斜面は、前記直交する方向に対して25~35度の角度で傾斜し、凹状に形成されていることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載のイヤホン。
【請求項8】
前記フロント部は、前記一軸方向の一側から他側に見て、前記音導管の基端から前記一軸方向に直交する方向の一側に偏心した形状を有し、
前記リア部は、前記一軸方向の一側から他側に見て、前記一軸方向に直交する方向を長軸方向とする形状を有することを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載のイヤホン。
【請求項9】
前記リア部は、前記スピーカと、前記マイクと、前記音導管に対して前記マイクの背面側に配されるマイク基板と、前記無線通信基板と、に電力を供給する電源を前記マイク基板と前記無線通信基板との間に収容することを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載のイヤホン。
【請求項10】
前記リア部は、前記音導管に対する背面側に操作画面を有することを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載のイヤホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イヤホン、特に生体信号を取得するワイヤレスイヤホンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、血圧測定の方式としてオシロメトリック方式が知られている。オシロメトリック方式は、上腕又は手首にカフを巻いて、血管を圧迫し、血液の流れ(血流)を一旦止めてから、カフ圧を緩めて減圧していく過程で、心臓の拍動に同調した血管壁の振動を反映したカフ圧に基づいて血圧を測定するものである。
【0003】
しかしながら、従来のオシロメトリック方式では、被検者の上腕又は手首にカフを巻く必要があり、該カフの上腕又は手首への締付圧力による被検者への負担が大きく、連続的な血圧測定が難しいという、問題があった。
【0004】
そこで、特許文献3では、被検者の外耳に装着される挿入部と、前記挿入部内に配置され、前記被検者の生体データを検知するセンサ-とを備え、前記挿入部は、前記被検者の外耳形状の三次元データに基づき前記被検者の耳孔介腔の形状及び外耳道(外耳孔)の形状に沿った形状に成形されていることを特徴とする生体データ測定装置が開示されている。
【0005】
しかしながら、この生体データ測定装置は、被検者の外耳形状の三次元データに基づき前記被検者の耳孔介腔の形状及び外耳道の形状に沿った形状に成形する必要があることから、被検者毎に被検者の外耳形状等を測定し成形する必要があり、煩雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-102257号公報
【文献】特開2006-102258号公報
【文献】特開2020-069272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、運動を行う場合や、長時間にわたって装着する場合であっても、耳に安定して装着して、連続的に生体信号を取得することができ、また、生体信号を取得するイヤホンの装着者(被検者)毎に装着者の耳孔介腔並びに外耳形状等を測定し成形する煩雑な成形工程を経ることなく提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るイヤホンは、
一軸方向に延びる音導管と、
音導管の基端側に配される一軸方向に音響を出力するスピーカと、
音導管に対して前記スピーカの背面側に該スピーカと離隔して配される振動を感知するマイクと、
音導管に対して前記マイクの背面側に配される無線通信基板と、
音導管の基端に連結し一軸方向に対して傾斜する傾斜面と一軸方向に直交する方向に展開してスピーカを収容する円環状の基端部とを有するフロント部と、音導管に対してフロント部の背面側に連結し収容するマイクを収容し支持する連結部と、音導管に対して連結部の背面側に連結し無線通信基板を収容するリア部と、を有するハウジングと、を備えることを特徴とする。
【0009】
この特徴によれば、イヤホンを装着して運動を行う場合や、長時間にわたって装着する場合であっても、耳に安定して装着して連続的に生体信号を取得することができ、また、生体信号を取得するイヤホンを煩雑な成形工程を経ることなく提供することができる。
【0010】
本発明に係るイヤホンは、スピーカの周囲に配置され、フロント部の基端部に収容される複数の電極を更に備えることを特徴とする。
【0011】
この特徴によれば、生体信号を電気信号として取得することができる。
【0012】
本発明に係るイヤホンは、基端部の外側に取り外し可能に嵌合するリング体を更に備えることを特徴とする。
【0013】
この特徴によれば、イヤホンを装着して運動を行う場合や、長時間にわたって装着する場合であっても、確実に耳に安定して装着して連続的に生体信号を取得することができ、また、生体信号を取得するイヤホンを煩雑な成形工程を経ることなく容易に提供することができる。
【0014】
本発明に係るイヤホンは、基端部の外側に取り外し可能に嵌合するリング体を更に備え、リング体が内面上記複数の電極を有することを特徴とする。
【0015】
この特徴によれば、生体信号を電気信号として確実に取得することができる。
【0016】
本発明に係るイヤホンのリング体は、外向きに凸状に突起したリング突起部を有することを特徴とする。
【0017】
この特徴によれば、イヤホンを装着者毎に装着者の外耳形状等を測定し成形する煩雑な成形工程を経ることなく提供することができ、また、イヤホンを装着した際のフィット感を向上させるとともに、確実に耳に安定して装着することができる。
【0018】
本発明に係るイヤホンのリング体は、弾性体であることを特徴とする。
【0019】
この特徴によれば、イヤホンを装着する際のフィット感をより向上させるとともに、確実に耳に安定して装着することができる。
【0020】
本発明に係るイヤホンのリング体は、絶縁性の絶縁部により分割され、前複数の電極にそれぞれ接続する複数の導電性の導電部を有することを特徴とする。
【0021】
この特徴によれば、被検者の生体信号をより確実に取得することができる。
【0022】
本発明に係るイヤホンのリング体の導電部の一つは、円弧状に突起した弧状部を有することを特徴とする。
【0023】
この特徴によれば、イヤホンを装着する際、弧状部を耳珠に装着し、安定して装着することができる。
【0024】
本発明に係るイヤホンのリング体の導電部の別の一つは、該導電部から伸長する伸長部を有することを特徴とする。
【0025】
伸長部の先端部を額に装着することにより、脳波を取得することができる。
【0026】
本発明のイヤホンの傾斜面は、直交する方向に対して25~35度の角度で傾斜し、凹状に形成されていることを特徴とする。
【0027】
この特徴によれば、イヤホンを耳に装着する際、傾斜面が耳孔介腔の内面に当接して、安定して装着することができる。
【0028】
本発明に係るイヤホンのフロント部は、一軸方向の一側から他側に見て、音導管の基端から前記一軸方向に直交する方向の一側に偏心した形状を有し、
リア部は、一軸方向の一側から他側に見て、一軸方向に直交する方向を長軸方向とする形状を有することを特徴とする。
【0029】
この特徴によれば、膨らんだフロント部にスピーカを収容するので、スピーカを大きくして音導管と同方向に向けることができ、音質が良い。
【0030】
本発明に係るイヤホンのリア部は、スピーカと、マイクと、音導管に対してマイクの背面側に配されるマイク基板と、無線通信基板と、に電力を供給する電源をマイク基板と無線通信基板との間に収容することを特徴とする。
【0031】
この特徴よれば、また、リア部に生体信号を取得するマイク及び無線通信により音声信号を受信する無線通信基板(電源を含めてもよい)を収容することができる。
【0032】
本発明に係るイヤホンのリア部は、音導管に対する背面側に操作画面を有することを特徴とする。
【0033】
この特徴によれば、リア部の背面に大きな操作画面を設けることができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係るイヤホンは、運動を行う場合や、長時間にわたって装着する場合であっても、耳に安定して装着して連続的に生体信号を取得することができ、また、生体信号を取得するイヤホンを被検者毎に被検者の外耳形状等を測定し成形する煩雑な成形工程を経ることなく提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係るイヤホンの外観図である。
図2図2は、本発明の第1の実施形態に係るイヤホンの模式断面図である。
図3図3は、本発明の第1の実施形態に係るイヤホンのフロント部の模式断面図である。
図4図4は、本発明の第2の実施形態に係るイヤホンの模式断面図である。
図5図5は、本発明の第2の実施形態に係るイヤホンのフロント部の模式断面図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係るイヤホンを耳に装着した状態を外側から見た模式図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係るイヤホンを耳に装着した状態の外耳孔を含む断面の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の第1の実施形態について、説明する。
【0037】
図1に、本発明の実施形態に係るイヤホン1の外観図を示す。(A)は平面図、(B)は左側面図、(C)は正面図、(D)は右側面図である。また、図2は、イヤホン1の内部構成を示す図1(A)のA-A模式断面図である。基端部23に垂直な音導管3の軸方向をZ軸方向、基端部23を構成する平面内のZ軸に垂直な互いに直交する方向をX軸及びY軸方向とする。
【0038】
イヤホン1は、左耳用であり、音導管3、ハウジング2、スピーカ41、マイク42、及び無線通信基板54を備える。なお、右耳用のイヤホン1は、左耳用のイヤホン1に対してX軸方向に対称な形となる。
【0039】
音導管3は、スピーカ41から出力される音響を伝達する管状部材である。音導管3は、例えば熱可塑性樹脂を用いて円筒状に成形される。中空部の内半径を例えば3mm以上とする。なお、音導管3の先端に、シリコンゴム等から成形されるイヤーピース(不図示)を設けてもよい。それにより、音導管3を外耳孔74に差し込んだ際にイヤーピース(不図示)が変形して孔内にはまり込むことで、外耳孔74内を気密に維持しつつ音導管3を支持することができる。
【0040】
ハウジング2は、スピーカ41、マイク42、マイク基板43、電源51、メイン基板52及び無線通信基板54を収容する筐体であり、フロント部21、連結部26及びリア部28を有する。フロント部21は、連結部26を介してリア部28に接続している。また、フロント部21、連結部26及びリア部28は、音導管3と同一の素材より音導管3を含めて一体的に成形することができる。
【0041】
フロント部21は、音導管3の基端を支持するとともにスピーカ41を収容する部分である。フロント部21は、外表面において、Z軸方向(又はこれに直交するX軸方向)に対して傾斜する傾斜面22を有し、これを介して音導管3の基端から-X側に膨らみ、ただし+X側にはわずかに膨らむ偏心した錐台状に成形され、XY平面に展開する円環状の基端部23有する。それにより、スピーカ41を音導管3に近接してフロント部21に収容することができ、そのフロント部21を耳珠71に干渉することなく耳孔介腔72内に収めることができる。また、音導管3は、Z軸方向に対して例えば25~35度、好ましくは約30度の角度φで傾斜し、傾斜面22は、X軸方向に対して例えば25~35度、好ましくは約30度の角度θで傾斜し、凹状に形成されている。それにより、イヤホン1を耳7に装着する際、傾斜面22を耳孔介腔72の内面に当接するとともに音導管3を外耳孔74の方向に向けてその中に挿入することができる。
【0042】
スピーカ41は、音響を出力するデバイスである。フロント部21が音導管3の基端からX側に膨らんでいるので、大きなスピーカ41とすることができる。スピーカ41は、ボイスコイル、圧電素子等によって、外部から入力される電気信号に従って一軸方向(ここでは、Z軸方向)に向く振動板を振動させることにより、スピーカ41(すなわち、振動板)の中心を通るZ軸に平行な中心軸に沿って音響を発する(図7参照)。なお、スピーカ41は、音導管3の基端側で、Z軸方向に向けて、音導管3に対してX側に偏位してフロント部21内に収容され、ハウジング2が確実に耳珠71と舟状窩73に装着することが可能としている。
【0043】
なお、ハウジング2(又は音導管3)のスピーカ41よりも音導管3の側に、空気孔29を備えることが好ましい。ハウジング2、音導管3、外耳孔74及び鼓膜によって閉鎖された空間が形成される。この空間の気圧は、外気圧よりも高くなることがある。その場合、この空間内を伝達される音響の特性が変化し得る。かかる特性変化を防止するものである。本実施形態では、空気孔29を傾斜面22に備えるものとした。
【0044】
図3は、基端部23に嵌合されたリング体24を示すフロント部21の図1(C)のB-B模式断面図である。基端部23は、外周に弾性体からなる環状のリング体24が取り外し可能に嵌合され、イヤホン1を装着した際のフィット感を向上させるとともに、耳7に安定して装着することを可能としている。図3(A)に、リング体24に有するその円周の約1/4の部分に外向きに凸状に突起したリング突起部25を示す。イヤホン1の装着者の耳7の形状(大きさ)に応じて、リング突起部25の突起する高さの異なるリング体24を基端部23に嵌合することにより、イヤホン1を安定して装着することを可能としている。なお、小さな耳7に装着する場合には、リング突起部25を有しないリング体24を基端部23に嵌合すれば良い。
【0045】
図3(B)に、リング体24の有する、リング体24の耳珠71に接する部分に円弧状に突起した弧状部64を示す。弧状部64を耳珠71に装着することにより、より安定して装着することが可能となるとともに、耳珠71からの生体信号をより確実に取得することができ、好ましい。
【0046】
連結部26は、フロント部21とリア部28とを接続するとともに、マイク42を収容し、支持する。マイク42は、スピーカ41の振動を拾わないように、スピーカ41と離隔して配置されている。マイク42は、心臓の拍動に同調した頸動脈壁の振動を、耳7の周辺部、特に耳珠71か伝わる振動を脈波音をとして感知し、脈波音を電気信号に変換してマイク42の背面側に配置されているマイク基板43に伝達する。なお、マイク42は、脈波音を確実に感知することができれば良く、連結部26に限られず、例えば、リア部28に収容され、支持されても良い。
【0047】
一方、リア部28は、連結部26の-Z側でマイク基板43、電源51、メイン基板52及び無線通信基板54を収容する部分である。リア部28は、一軸方向(Z軸方向)の一側から他側(音導管3側からリア部28)に見て、Y軸方向を長軸方向とする上端(Y軸方向)が円形の略長方形状を有する。フロント部21は、連結部26を介して、リア部28の上端から下方(-Y軸方向)に約1/4下がった位置であって、リア部28の長軸方向の中心線からーX軸方向に基端部23の直径の約1/4基端部23が偏位した位置に配置されている。リア部28は、タッチパネル等の操作画面(不図示)又は操作用スイッチ(不図示)を音導管3に対する背面側、すなわち-Z面に露出して支持する。これにより、大きな操作画面(不図示)をハウジング2に設けることができる。
【0048】
マイク42は、脈波を音響信号として入力するデバイスである。マイク42は、感圧素子、圧電素子等によって、心臓の拍動に同調した頸動脈壁の振動を耳珠71から伝わる脈波として、リング体24、フロント部21及び連結部26を介して受信し、電気信号に変換の上、マイク基板43を介して外部に電気信号として出力する。なお、連結部26ないしフロント部21にマイク42以外に、光学式心拍センサ-や温度計等のセンサ-を配置し、深部体温や酸素飽和度を測定することも可能である。
【0049】
マイク基板43は、マイク42、電極61及び各センサ-が取得した生体信号を電気信号に変換し無線通信基板54に伝達する、制御回路が設けられた基板である。
【0050】
電源51は、スピーカ41、マイク42、マイク基板43、メイン基板52及び無線通信基板54に電力を供給する電源51である。電源51は、ハウジング2内でマイク基板43とメイン基板52との間に配され、リア部28内に収容される。なお、電源51は、フロント部21又は連結部26に収容されても良いし、フロント部21、連結部26及びリア部28にまたがって収容されてもよい。それにより、スピーカ41とメイン基板52との間のスペースに大きな電源51を設け、スピーカ41及びマイク42等の生体信号センサ-の長時間使用を可能とすることができる。
【0051】
メイン基板52は、ハウジング2内に収容されたスピーカ41、マイク42、マイク基板43、無線通信基板54及び電源51を制御する制御回路が設けられた基板である。
【0052】
無線通信基板54は、例えばブルートゥース(登録商標)のような無線通信により外部装置(不図示)から音声信号を受信してスピーカ41を駆動する、また、マイク基板43より伝達された生体信号に係る情報を無線通信により外部装置(不図示)に送信する、制御回路が設けられた基板である。無線通信基板54は、音導管3に対してスピーカ41及び電源51の背面側に配され、リア部28内に収容される。無線通信基板54は、無接点給電により操作画面(不図示)に給電するとともに、操作画面(不図示)を介してユーザが入力する操作によりスピーカ41及びマイク42等の生体信号センサ-を制御する。なお、電源51への給電は、無接点給電に限定されず、例えば、リア部28に設けられたUSBコネクター(不図示)を介した有線による給電であっても良い。
【0053】
次に、本発明の第2の実施形態に係るイヤホン1について、説明する。なお、本発明の第1の実施形態と第2の実施形態との異なる部分のみについて説明することとし、第1の実施形態と同様な点については、説明を省略する。
【0054】
図4は、本発明の第2の実施形態に係るイヤホン1の内部構成を示す図1(A)のA-A模式断面図である。イヤホン1は、左耳用であり、音導管3、ハウジング2、スピーカ41、マイク42、電極61及び無線通信基板54を備える。なお、右耳用のイヤホン1は、左耳用のイヤホン1に対してX軸方向に対称な形となる。
【0055】
ハウジング2は、スピーカ41、マイク42、マイク基板43、電源51、メイン基板52、脳波解析用チップ53、無線通信基板54、及び電極61、を収容する筐体であり、フロント部21、連結部26及びリア部28を有する。フロント部21は、連結部26を介してリア部28に接続している。
【0056】
フロント部21は、音導管3の基端を支持するとともにスピーカ41を収容する部分である。フロント部21は、外表面において、Z軸方向(又はこれに直交するX軸方向)に対して傾斜する傾斜面22を有し、これを介して音導管3の基端から-X側に膨らみ、ただし+X側にはわずかに膨らむ偏心した錐台状に成形され、XY平面に展開する円環状の基端部23有する。
【0057】
図5は、第2の実施形態に係るイヤホン1の、基端部23に取り外し可能に嵌合されたリング体24を示すフロント部21の図1(C)のB-B模式断面図である。
【0058】
基端部23の内のスピーカ41の周囲には、生体信号を取得するための複数の電極61が配置されている。第5図には、一例として3つの電極61が配置されている状態を示す。
【0059】
基端部23が耳珠71に接する位置に第1の電極611が、基端部23が舟状窩73側の皮膚に接する位置にアースとしての第2の電極612が、配置され、耳珠71から脈波を電気信号として取得する。また、基端部23の上方(Y軸方向)に、脳波に係る生体信号を取得する第3の電極613が配置されている。なお、脈波のみ又は脳波のみを取得する場合には、電極61は一対(第1と第2の電極611,612、又は、第3と第2の電極613,612)で足りる。
【0060】
一方、基端部23には、環状のリング体24が取り外し可能に嵌合されている。リング体24は、導電性の弾性体からなり、絶縁性の絶縁部63により複数の導電部62に分割され、それぞれの導電部62が、対応する電極61に電気信号として取得した生体信号を伝達する。リング体24が導電性であると、耳7周辺の広い範囲の皮膚と接触して生体信号を電気信号としてより確実に取得することができる。
【0061】
また、リング体24の上方(Y軸方向)に伸長し、その先端部を額に装着して脳波を取得する伸長部65を有しても良い。伸長部65は、リング体24と一体的に形成されても良いし、リング体24とは別個に伸長部65単体で形成され、リング体24と伸長部65とがコネクタ(不図示)を介して連結されても良い。
【0062】
なお、電極61が生体信号を確実に検知することが可能であれば、基端部23にリング体24が嵌合されていなくとも良く、例えば、電極61が直接皮膚と接触するように配置されても良い。
【0063】
電極61は、板状又は棒状の形状を有する、金属,合金,グラファイト,半導体,金属酸化物等の導体である。
【0064】
一方、リア部28は、連結部26の-Z側でマイク基板43、電源51、メイン基板52、脳波解析用チップ53及び無線通信基板54を収容する。脳波解析用チップ53は、電極61を介して取得した脳波を解析する回路である。
【0065】
第1の電極611は、心臓の拍動に同調した頸動脈壁の振動を耳珠71から伝わる脈波を電気信号としてリング体24の導電部62を介して取得し、マイク基板43とメイン基板52を介して、無線通信基板54から外部装置に出力される。
【0066】
一方、脳からの電気信号である脳波は、耳7の周辺部から、電気信号として導電部62を介して第3の電極613により取得される。そして、取得された電気信号は、メイン基板52を経由して脳波解析用チップ53に伝達され、脳波として解析され、無線通信基板54から外部装置に出力される。
【0067】
次に、本発明の実施形態に係るイヤホン1を耳7に装着する方法を示す。図6は、イヤホン1を装着した状態を外側から見た図、図7は、イヤホン1を装着した状態を外耳孔74を含む断面を示した図である。フロント部21のX端部を舟状窩73側に向け、基端部23の-X端部を耳珠71側に向けてフロント部21を耳孔介腔72に入れ、傾斜面22を耳孔介腔72の内面に当接して音導管3を外耳孔74に挿入する。
【0068】
音導管3の基端から基端部23の-X端部が耳珠71の裏側により支持され、フロント部21のX端部が耳孔介腔72により支持される。
【0069】
リア部28は、耳珠71に極近接してその上に配され下方(-Y軸方向)に延びるので、耳珠71及び舟状窩73によるサイズの制約を受けることはなく、大きなメイン基板52及び無線通信基板54を収容することができる。
【0070】
無線通信基板54及び電源51を収容するリア部28は、質量が大きく図6における下方に向けて重力を受けるが、フロント部21が耳珠71と耳孔介腔72により支持され、重力を受けてもイヤホン1が耳7から脱落するモーメントは発生しない。
【0071】
以上により、イヤホン1が安定して耳7に装着され、装着者が激しく動いた場合であっても安定して装着することができ、また、長時間装着した場合であっても、装着者に不快感を与えることがない。
【0072】
次に、本発明に係る実施形態のイヤホン1の想定される使用方法について説明する。
【0073】
長距離を運行するトラックやバスの運転者が、本発明に係るイヤホン1を装着し、イヤホン1を起動させた上でトラック等の乗務を開始する。イヤホン1は、逐次、マイク42又は電極61から取得した脈波又は脳波などの生体信号を無線通信基板54から出力し、これらの生体信号はイヤホン1の近隣に配置されたスマートホン(不図示)等の通信機器を介して、ホストコンピュータ(不図示)に送信される。ホストコンピュータ(不図示)は、受信した生体信号を解析し、記録するとともに、運転者の体調や精神状態を判断する。そして、運転者の疲労や異変(例えば、危険を察知し、動揺した場合)を感知した場合には、ホストコンピュータ(不図示)は、通信機器(不図示)を介して無線通信基板54に信号を送信し、メイン基板52を介してスピーカ41から、運転者に休息や注意を促す等の音声信号を出力する。
【0074】
また、単独で作業や機器の運転を行う作業員、高温や騒音の激しい劣悪な作業環境下の作業員、等の体調管理にも、本発明に係るイヤホン1の利用が期待される。
【0075】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【産業上の利用の可能性】
【0076】
運動を行う場合や、長時間にわたって装着する場合であっても、耳に安定して装着して連続的に生体信号を取得することができるイヤホンであって、生体信号を取得するイヤホンを被検者毎に被検者の外耳形状等を測定し成形する煩雑な成形工程を経ることなく提供することができる。連続的に生体信号を取得する用途に利用されることが期待される。
【符号の説明】
【0077】
1 イヤホン
2 ハウジング
3 音導管
7 耳
21 フロント部
22 傾斜面
23 基端部
24 リング体
25 リング突起部
26 連結部
28 リア部
29 空気孔
41 スピーカ
42 マイク
43 マイク基板
51 電源
52 メイン基板
53 脳波解析用チップ
54 無線通信基板
61 電極
611 第1の電極
612 第2の電極
613 第3の電極
62 導電部
63 絶縁部
64 弧状部
65 伸長部
71 耳珠
72 耳孔介腔
73 舟状窩
74 外耳孔


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7