IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中国科学院蘇州納米技術与納米▲ファン▼生研究所の特許一覧

<>
  • 特許-汗センサ及び汗検知システム 図1
  • 特許-汗センサ及び汗検知システム 図2
  • 特許-汗センサ及び汗検知システム 図3A
  • 特許-汗センサ及び汗検知システム 図3B
  • 特許-汗センサ及び汗検知システム 図4
  • 特許-汗センサ及び汗検知システム 図5
  • 特許-汗センサ及び汗検知システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】汗センサ及び汗検知システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/06 20060101AFI20231006BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
G01N27/06 B
A61B5/00 N
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022544276
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-30
(86)【国際出願番号】 CN2021133342
(87)【国際公開番号】W WO2022142910
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】202011631972.2
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516082763
【氏名又は名称】中国科学院蘇州納米技術与納米▲ファン▼生研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】王 書▲チー▼
(72)【発明者】
【氏名】張 ▲ティン▼
(72)【発明者】
【氏名】劉 梦愿
(72)【発明者】
【氏名】陸 騏峰
(72)【発明者】
【氏名】楊 顕青
(72)【発明者】
【氏名】李 連輝
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0012114(US,A1)
【文献】特表2017-538108(JP,A)
【文献】特開2020-171350(JP,A)
【文献】FRANCIS et al.,Digital nanoliter to milliliter flow rate sensor with in vivo demonstration for continuous sweat rate measurement,Lab on a Chip 2019,2018年12月07日,Issue 1,p.178-185
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/10
G01N 27/14-27/24
A61B 5/00
G01N 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
汗センサであって、
絶縁層と、前記絶縁層内に設けられた導電電極と、第1貫通孔とを含み、前記第1貫通孔が前記絶縁層及び前記導電電極を貫通する導汗電極層と、
前記絶縁層上に設けられ、かつ前記第1貫通孔に連通している第2貫通孔を有する粘着層と、
前記粘着層上に設けられ、かつ前記第2貫通孔を覆う吸水性拡散層とを含み、
前記汗センサによって汗が検出されたとき、前記導電電極によって記録された前記第1貫通孔を通過した汗の導電率値から導電率方形波曲線を取得し、前記導電率方形波曲線によって汗の電解質総濃度及び汗総量を同時に取得し、
前記導電率方形波曲線の振幅が前記第1貫通孔内のリアルタイムな汗の電解質総濃度と相関性を示し、前記第1貫通孔を通過する前記汗の体積が発汗速度及び前記導電率方形波曲線の導電率方形波間の時間差と相関性を示す、ことを特徴とする汗センサ。
【請求項2】
前記第1貫通孔の中心軸線と前記第2貫通孔の中心軸線とが重なっている、ことを特徴とする請求項1に記載の汗センサ。
【請求項3】
前記導電電極は第1電極と第2電極とを含み、前記第1電極と前記第2電極は異なる平面にあり、前記第1電極の電極貫通孔の中心軸線、前記第2電極の電極貫通孔の中心軸線及び前記第1貫通孔の中心軸線が重なっている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の汗センサ。
【請求項4】
前記汗センサは、前記絶縁層の前記粘着層と反対する面上に設けられ、前記第1貫通孔に連通している第3貫通孔を有する接触層をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の汗センサ。
【請求項5】
前記第1貫通孔の中心軸線と前記第3貫通孔の中心軸線とが重なっている、ことを特徴とする請求項に記載の汗センサ。
【請求項6】
絶縁層と、前記絶縁層内に設けられた複数の導電電極と、複数の第1貫通孔とを含み、第1貫通孔がそれぞれ前記絶縁層及び対応する1つの前記導電電極を貫通する導汗電極層と、
前記絶縁層上に設けられ、かつ複数の第2貫通孔を有し、前記第2貫通孔が前記第1貫通孔に1対1で対応して連通する粘着層と、
前記粘着層上に設けられ、かつ前記複数の第2貫通孔を覆う吸水性拡散層とを含み、
汗が検出されたとき、前記導電電極によって記録された前記第1貫通孔を通過した汗の導電率値から導電率方形波曲線を取得し、前記導電率方形波曲線によって汗の電解質総濃度及び汗総量を同時に取得し、
前記導電率方形波曲線の振幅が前記第1貫通孔内のリアルタイムな汗の電解質総濃度と相関性を示し、前記第1貫通孔を通過する前記汗の体積が発汗速度及び前記導電率方形波曲線の導電率方形波間の時間差と相関性を示す、ことを特徴とする汗検知システム。
【請求項7】
導電電極はそれぞれ第1電極と第2電極とを含み、各導電電極の第1電極及び第2電極は異なる平面にあり、各導電電極の第1電極は同一平面にあり、各導電電極の第2電極は同一平面にあり、各導電電極の第1電極の電極貫通孔の中心軸線、第2電極の電極貫通孔の中心軸線及び対応する第1貫通孔の中心軸線が重なっており、
前記複数の導電電極はアレイ状に配列され、同一列にある導電電極の第1電極は一体に接続され、同一行にある導電電極の第2電極は一体に接続される、ことを特徴とする請求項に記載の汗検知システム。
【請求項8】
前記絶縁層の前記粘着層と反対する面に設けられ、複数の第3貫通孔を有し、前記第3貫通孔が前記第1貫通孔に1対1で対応して連通する接触層をさらに含む、ことを特徴とする請求項又はに記載の汗検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2020年12月31日に提出された、出願番号が202011631972.2、発明の名称が「汗センサ及び汗検知システム」の中国特許出願に基づく優先権を主張している。
【0002】
(技術分野)
本願はセンサの技術分野に属し、具体的には、汗センサ及び汗検知システムに関する。
【背景技術】
【0003】
運動中の人体の汗成分の異常な変化は血中濃度レベルと相関しているか、又は人体の健康状態を直接示すことができる。例えば、Naは人体の汗の中で最も多い電解質であり、汗分泌の重要な基礎であり、その濃度は人体のさまざまな種類の水塩代謝障害症状を反映することができる。例えば、スポーツ選手、軍人、労働者などが極端な環境(激しい運動、過熱火災救助など)で仕事をする時に深刻な脱水状況が発生し、高ナトリウム血症が発生し、その汗と血液中のNa濃度は正常値よりはるかに高くなり、もし適時に判断して水分と電解質を補充しなければ、深刻な生理的脅威、さらに死亡を引き起こす恐れが高い。
【0004】
現在、従来の汗センサでは、発汗量と電解質濃度を同時にリアルタイムで連続的に検出することができず、新旧の汗が混ざって電解質濃度の検出に支障をきたすことを回避できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来技術に存在する技術的課題を解決するために、本願は、汗量と電解質濃度を同時にリアルタイムで連続的に検出することができ、しかも、新旧の汗が混ざって電解質濃度の検出に支障をきたすことを回避できる汗センサ及び汗検知システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の実施例の一態様に係る汗センサは、
絶縁層と、前記絶縁層内に設けられた導電電極と、第1貫通孔とを含み、前記第1貫通孔が前記絶縁層及び前記導電電極を貫通する導汗電極層と、
前記絶縁層上に設けられ、かつ前記第1貫通孔に連通している第2貫通孔を有する粘着層と、
前記粘着層上に設けられ、かつ前記第2貫通孔を覆う吸水性拡散層とを含む。
【0007】
上記の一態様に係る汗センサの一例では、前記第1貫通孔の中心軸線と前記第2貫通孔の中心軸線とが重なっている。
【0008】
上記の一態様に係る汗センサの一例では、前記導電電極は第1電極と第2電極とを含み、前記第1電極と前記第2電極は同一面にあり、前記第1電極の電極貫通孔の中心軸線、前記第2電極の電極貫通孔の中心軸線及び前記第1貫通孔の中心軸線が重なっている。
【0009】
上記の一態様に係る汗センサの一例では、前記導電電極は第1電極と第2電極とを含み、前記第1電極と前記第2電極は異なる平面にあり、前記第1電極の電極貫通孔の中心軸線、前記第2電極の電極貫通孔の中心軸線及び前記第1貫通孔の中心軸線が重なっている。
【0010】
上記の一態様に係る汗センサの一例では、前記汗センサは、前記絶縁層の前記粘着層と反対する面上に設けられ、前記第1貫通孔に連通している第3貫通孔を有する接触層をさらに含む。
【0011】
上記の一態様に係る汗センサの一例では、前記第1貫通孔の中心軸線と前記第3貫通孔の中心軸線とが重なっている。
【0012】
上記の一態様に係る汗センサの一例では、前記絶縁層及び/又は前記接触層の材料はポリジメチルシロキサン、シリコーンゴム又は熱可塑性ポリエステルである。
【0013】
上記の一態様に係る汗センサの一例では、前記汗センサによって汗が検出されたとき、前記導電電極によって記録された前記第1貫通孔を通過した汗の導電率値から導電率方形波曲線を取得し、前記導電率方形波曲線によって汗の電解質総濃度及び汗総量を同時に取得し、
前記導電率方形波曲線の振幅が前記貫通孔内のリアルタイムな汗の電解質総濃度と相関性を示し、前記貫通孔を通過する前記汗の体積が発汗速度及び前記導電率方形波曲線の導電率方形波間の時間差と相関性を示す。
【0014】
本願の別の態様に係る汗検知システムは、
絶縁層と、前記絶縁層内に設けられた複数の導電電極と、複数の第1貫通孔とを含み、第1貫通孔がそれぞれ前記絶縁層及び対応する1つの前記導電電極を貫通する導汗電極層と、
前記絶縁層上に設けられ、かつ複数の第2貫通孔を有し、前記第2貫通孔が前記第1貫通孔に1対1で対応して連通する粘着層と、
前記粘着層上に設けられ、かつ前記複数の第2貫通孔を覆う吸水性拡散層とを含む。
【0015】
上記の別の態様に係る汗検知システムの一例では、導電電極はそれぞれ第1電極と第2電極とを含み、各導電電極の第1電極及び第2電極は異なる平面にあり、各導電電極の第1電極は同一平面にあり、各導電電極の第2電極は同一平面にあり、各導電電極の第1電極の電極貫通孔の中心軸線、第2電極の電極貫通孔の中心軸線及び対応する第1貫通孔の中心軸線が重なっており、
前記複数の導電電極はアレイ状に配列され、同一列にある導電電極の第1電極は一体に接続され、同一行にある導電電極の第2電極は一体に接続される。
【0016】
上記の別の態様に係る汗検知システムの一例では、前記汗検知システムは、前記絶縁層の前記粘着層と反対する面に設けられ、複数の第3貫通孔を有し、前記第3貫通孔が前記第1貫通孔に1対1で対応して連通する接触層をさらに含む。
【発明の効果】
【0017】
従来技術に比べて、本願の有益な効果は少なくとも以下のとおりである。
【0018】
本願の汗センサは汗量と電解質濃度を同時にリアルタイムで連続的に検出することができ、しかも、新旧の汗が混ざって電解質濃度の検出に支障をきたすことを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図面を参照しながら行われる以下の説明によれば、本願の実施例の上記及び他の態様、特徴や利点がより明らかになる。
【0020】
図1】本願の第1実施例に係る汗センサの構造概略図である。
図2】本願の第1実施例に係る汗センサを備えたウェアラブルデバイスが人体の皮膚の表面に装着された状態の概略図である。
図3A】導電率方形波曲線の検出原理の概略図である。
図3B】本願の実施例に係る汗センサについてマイクロ流体シリンジポンプテストをして得られた導電率方形波曲線図である。
図4】本願の第2実施例に係る汗センサの構造概略図である。
図5】本願の第3実施例に係る汗センサの構造概略図である。
図6】本願の実施例に係る汗検知システムの構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本願の特定の実施例を詳細に説明する。ただし、本願は様々な形態をもって実施されてもよく、しかも、本願はここで説明される特定の実施例に限定されるものとして解釈すべきではない。むしろ、これらの実施例は本願の原理及びその実際の適用を解釈するために提供されるものであり、これにより、当業者は本願の各種実施例や特定の期待される適用に適したさまざまな修正を理解できる。
【0022】
本明細書で使用される場合、「含む」という用語及びこの変形はオープンな用語を指し、「含むが、これらに限定されない」ことを意味する。「に基づく」、「に従う」などの用語は、「少なくとも部分的に基づく」、「少なくとも部分的に従う」ことを意味する。「1つの実施例」及び「一実施例」という用語は「少なくとも1つの実施例」を示す。「別の実施例」という用語は「少なくとも1つの別の実施例」を示す。「第1」、「第2」などの用語は異なる対象又は同一対象を指す。以下、明示的か暗黙的かを問わず、以下の意味が含まれる。文脈において明確な定義がない限り、1つの用語の定義は明細書を通じて同じである。
【0023】
図1は本願の第1実施例に係る汗センサの構造概略図である。図1において、図(B)は本願の第1実施例に係る汗センサの上面図を示し、なお、図(B)において、電極構造を明確に示すために、粘着層3及び吸水性拡散層4が示されておらず、図(A)は図(B)のa-a’線に沿って本願の第1実施例に係る汗センサを切断した断面図を示し、もちろん、図(A)においては、人体皮膚システムが追加的に示されている。
【0024】
図1を参照すると、本願の第1実施例に係る汗センサは、導汗電極層2と、粘着層3と、吸水性拡散層4とを含む。
【0025】
具体的には、導汗電極層2は、絶縁層21と、絶縁層21内に設けられた導電電極(未図示)と、第1貫通孔(未図示)とを含み、第1貫通孔は絶縁層21及び導電電極を貫通する。一例では、導電電極は第1電極221と第2電極222とを含み、第1電極221と第2電極222は同一平面にあり、しかも、第1電極221の電極貫通孔(未図示)の中心軸線、第2電極222の電極貫通孔(未図示)の中心軸線及び前記第1貫通孔の中心軸線が重なっている。
【0026】
一例では、絶縁層21は主として可撓性絶縁重合体材料を用い、ポリジメチルシロキサン、シリコーンゴム、熱可塑性ポリエステルなどとしてもよい。絶縁層21の厚さは0.1mm~2mmの間である。
【0027】
第1電極221及び第2電極222は、絶縁層21の内部に嵌設され、厚さ方向の中央部分にある。第1電極221及び第2電極222は、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック、炭素繊維などの材料で製造された一定の厚さ及び幅のフィルム電極であってもよいし、金、白金、銅などの導電率テスト用金属など他の材料で製造された一定の厚さ及び幅のフィルム電極であってもよい。第1電極221及び第2電極222の厚さは0.01mm~1mmの間であり、しかも、第1電極221及び第2電極222の幅(線幅)は各貫通孔(例えば電極貫通孔、第1貫通孔など)の直径未満である。
【0028】
ここでは、第1電極221及び第2電極222の絶縁層21への嵌設方法については特に限定がない。例えば、一例では、まず、層絶縁層21を作製し、スクリーン印刷などの方法によりこの絶縁層21上に同一平面にある第1電極221及び第2電極222を作製し、最後に、一層の絶縁層21、第1電極221及び第2電極222上に別の一層の絶縁層21を作製し、このように、第1電極221及び第2電極222が絶縁層21の内部に嵌設される。別の例では、まず、機械加工方法により電極形状のモールドテンプレートを製造し、次に、テンプレート複製方法により絶縁層21の作製材料であるプレポリマーをモールドテンプレートに注入し、硬化させて成形した後、剥離して電極形状の凹溝を形成し、凹溝に充填して第1電極221及び第2電極222を作製し、次に、第1電極221及び第2電極222の上に別の絶縁層21を作製し、このように、第1電極221及び第2電極222が絶縁層21の内部に嵌設される。
【0029】
絶縁層21及び第1電極221と第2電極222の中央位置に、レーザー切断、テンプレート方法や機械穴開けの方法によって貫通孔23(第1貫通孔、電極貫通孔などからなる)が形成され、貫通孔23の直径は0.5mm~2mmの間であり、第1電極221及び第2電極222の有効テスト面が貫通孔23の内壁の表面に露出している。好ましくは、貫通孔23の円筒状の内壁と貫通孔に露出している第1電極221及び第2電極222の表面とが疎水性を示すので、絶縁層21の材料及び電極材料として疎水性材料を用いることや、後処理例えばシラン試薬による処理によって疎水性の貫通孔が得られ得る。
【0030】
粘着層3は絶縁層21上に設けられ、しかも、粘着層3は第1貫通孔に連通している第2貫通孔(未図示)を有する。つまり、貫通孔23は絶縁層21、粘着層3、及び第1電極221と第2電極222を貫通し、貫通孔23の絶縁層21内の部分は第1貫通孔とされ、貫通孔23の粘着層3内の部分は第2貫通孔とされ、貫通孔23の第1電極221内の部分は第1電極221の電極貫通孔とされ、貫通孔23の第2電極222内の部分は第2電極222の電極貫通孔とされる。
【0031】
粘着層3は、導汗電極層2と吸水性拡散層4とを固定して接続する粘性のフィルムであり、一定の厚さの超薄型両面テープ(厚さ0.01mm~0.05mm)、粘弾性ポリマーのプレポリマーなどを含む。一例では、粘着層3において、導汗電極層2の第1貫通孔が重なる位置でレーザー切断、テンプレート方法又は機械穴開けの方法によって第1貫通孔の尺寸と同じ第2貫通孔が形成され、汗が第1貫通孔及び第2貫通孔を流れる。さらに、第1貫通孔の中心軸線と第2貫通孔の中心軸線とが重なっている。
【0032】
吸水性拡散層4は粘着層3上に設けられ、かつ前記第2貫通孔を覆う。一例では、吸水性拡散層4は親水性材料フィルムであり、衣類生地、紙ベースセルロース系フィルム、ゲルなどの吸水材料を含むが、これらに限定されない。本実施例では、吸水性拡散層4は、衣類自体、好ましくは、通気性と発汗性を有するスポーツタイツ類、リストバンド、てのひら保護具、肘当て、吸汗バンドなどを吸水層としてもよい。吸水性拡散層4の厚さが限定されない。吸水性拡散層4は粘着層3を介して導汗電極層2とともに一体型汗センサを形成する。
【0033】
図2は本願の第1実施例に係る汗センサを備えたウェアラブルデバイスが人体皮膚の表面に装着された状態の概略図である。図2を参照すると、本願の第1実施例に係る汗センサは、弾性織物、弾性体材料で製造されたベルトで包まれて固定され、ウェアラブルデバイスを構成し、このウェアラブルデバイスはスポーツタイツ類、リストバンド、てのひら保護具、肘当て、吸汗バンドなどの織物と組み合わせられて、弾性吸水固定ベルトデバイス41とすることができる。
【0034】
本願の実施例に係る汗センサが人体皮膚1に装着されると、皮膚の下皮12内の汗腺14が汗13を分泌し、汗13は汗腺14から分泌されたときに一定の圧力を持ち、この圧力は最高で70000N/m-2であり、汗14を貫通孔23に圧送して吸水性拡散層4で迅速に吸収させるのに十分であり、汗13が貫通孔23の内壁を通過する際に、貫通孔23内に露出している平行電極(即ち第1電極221及び第2電極222)は、汗液又は汗滴を通過する導電率値をリアルタイムで記憶する。図3Aは導電率方形波曲線の検出原理の概略図であり、ここで、ΔT1は1番目の導電率方形波の持続時間、ΔT2は2番目の導電率方形波の持続時間を示し、一方、図3Bは本願の実施例に係る汗センサについてマイクロ流体シリンジポンプテストを行って得られた導電率方形波曲線図である。
【0035】
図3Bを参照すると、導電率方形波曲線の高さ又は振幅は貫通孔23内のリアルタイムな汗電解質総濃度と相関性を示し、貫通孔23を通過する汗滴の体積及び発汗速度は次の導電率方形波曲線が現れるまでの時間差と相関性を示し、このため、本願の実施例による汗センサは、リアルタイムで連続的な導電率方形波曲線から、汗の電解質濃度と発汗量を区別することができ、また、新旧の汗が混ざって正確性に支障をきたすことがないという利点がある。
【0036】
図4は本願の第2実施例に係る汗センサの構造概略図である。図4においては、図(B)は本願の第2実施例に係る汗センサの上面図を示し、なお、図(B)においては、電極構造を明確にするために、粘着層3及び吸水性拡散層4が示されておらず、図(A)は図(B)のa-a’線に沿って本願の第2実施例に係る汗センサを切断した断面図を示し、もちろん、図(A)には、人体皮膚システムが付加的に示されており、図(C)は本願の第2実施例に係る汗センサの第1電極及び第2電極の構造概略図を示している。
【0037】
図4を参照すると、図1に示す第1実施例に係る汗センサと比べて、構造上、第1電極221及び第2電極222が同一平面にない点が異なる。例えば、第2電極222は第1電極221の上方にあり、このため、第2電極222の電極貫通孔と第1電極221の電極貫通孔とが垂直方向に重なる。
【0038】
図5は本願の第3実施例に係る汗センサの構造概略図である。図5においては、図(B)は本願の第3実施例に係る汗センサの上面図を示し、なお、図(B)においては、電極構造を明確にするために、粘着層3及び吸水性拡散層4が示されておらず、図(A)は、図(B)のa-a’線に沿って本願の第3実施例に係る汗センサを切断した断面図を示し、もちろん、図(A)には人体皮膚システムが付加的に示されている。
【0039】
図5を参照すると、図1に示す第1実施例に係る汗センサに比べて、構造上、本願の第3実施例に係る汗センサは、絶縁層21の粘着層3と反対する面に設けられ、しかも、第1貫通孔に連通している第3貫通孔(未図示)を有する接触層24をさらに含む点が異なる。さらに、前記第1貫通孔の中心軸線と前記第3貫通孔の中心軸線とが重なっており、つまり、貫通孔23は接触層24を貫通している。
【0040】
接触層24の作用には、以下の2つがある。第一には、導汗電極層2の厚さが調整されやすい。第二には、絶縁層21の硬さが皮膚と直接接触するのに適していない場合、接触層24によって皮膚とうまく接触して貼着することができる。接触層24の材料は、ポリジメチルシロキサン、シリコーンゴム、熱可塑性ポリエステルなどを含むが、これらに限定されるものではない。接触層24と絶縁層21とは、一般的な架橋粘着などの技術により密着されてもよい。
【0041】
図6は本願の実施例に係る汗検知システムの構造概略図である。説明の便宜上、図6は導電電極及び絶縁層のみを示している。
【0042】
図6を参照すると、本願の実施例に係る汗検知システムは、図4に示す本願の第2実施例に係る汗センサを複数含み、複数の前記汗センサはアレイ状に配列される。
【0043】
この場合、各汗センサの絶縁層21、粘着層3、吸水性拡散層4及び/又は接触層24(設けられた場合)は一体に接続され、つまり、複数の導電電極は層絶縁層21内に設けられ、粘着層3及び吸水性拡散層4は絶縁層21上に一括して積層され、接触層24は絶縁層21の粘着層3と反対する面上に設けられる。
【0044】
もちろん、各貫通孔23も粘着層3を貫通して複数の第2貫通孔を構成し、しかも、接触層24を貫通して複数の第3貫通孔を構成する。つまり、第1貫通孔(各電極貫通孔を含む)、第2貫通孔及び第3貫通孔は1対1で対応して連通している。
【0045】
複数の前記汗センサがアレイ状に配置されている場合、各導電電極の第1電極は同一平面にあり、各導電電極の第2電極は同一平面にあり、しかも、第1電極及び第2電極は異なる平面にある。このため、各列の導電電極の全ての第1電極は一体に接続されるとともに、列導電端子に接続され、一方、各行の導電電極の全ての第2電極は一体に接続されるとともに、行導電端子に接続される。例えば、図6において、1列目の導電電極の全ての第1電極は一体に接続されるとともに、列導電端子223に接続され、2列目の導電電極の全ての第1電極は一体に接続されるとともに、列導電端子224に接続され、3列目の導電電極の全ての第1電極は一体に接続されるとともに、列導電端子225に接続され、1行目の導電電極の全ての第2電極は一体に接続されるとともに、行導電端子226に接続され、2行目の導電電極の全ての第2電極は一体に接続されるとともに、行導電端子227に接続され、3行目の導電電極の全ての第2電極は一体に接続されるとともに、行導電端子228に接続される。
【0046】
上記した汗検知システムは、アレイ状に配列された複数の導電電極を通じて、複数のサンプリング点のデータを取得することができ、これにより、単位面積あたりの汗の発汗量及び汗の電解質濃度の分析の正確性がさらに向上する。
【0047】
上記では、本願の特定実施例について説明した。他の実施例は添付の特許請求の範囲に増する。
【0048】
本明細書を通じて使用されている用語「例示的に」、「例」などは、「例、実例又は一例として」を意味し、他の実施例よりも「好ましい」又は「優位性がある」を意味するわけではない。係る技術を理解するために、特定の実施形態には詳細が含まれている。ただし、これらの技術は以上の詳細無しで実施されてもよい。いくつかの実例では、係る実施例の概念を理解しにくくすることがないように、公知の構造や装置はブロック図の形で示されている。
【0049】
以上、図面を参照しながら本願の実施例の好適な実施形態が説明されたが、本願の実施例は上記の実施方式の詳細に限定されるものではなく、本願の実施例の技術的構想を逸脱することなく、本願の実施例の技術的解決手段についてさまざまな簡単な変形を行うことができ、これらの簡単な変形は全て本願の実施例の特許範囲に属する。
【0050】
本明細書の内容の上記説明は当業者が本明細書の内容を実現又は使用するために提供されるものである。当業者にとっては、本明細書の内容に対する各種の修正が明らかなことであり、しかも、本明細書の内容による特許範囲を逸脱することなく、本明細書で定義された一般的な原理は他の変形に適用されてもよい。このため、本明細書の内容は本明細書に記載の例や設計に限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規性を満たす最も広い範囲と一致する。
【0051】
(付記)
(付記1)
絶縁層と、前記絶縁層内に設けられた導電電極と、第1貫通孔とを含み、前記第1貫通孔が前記絶縁層及び前記導電電極を貫通する導汗電極層と、
前記絶縁層上に設けられ、かつ前記第1貫通孔に連通している第2貫通孔を有する粘着層と、
前記粘着層上に設けられ、かつ前記第2貫通孔を覆う吸水性拡散層とを含む、ことを特徴とする汗センサ。
【0052】
(付記2)
前記第1貫通孔の中心軸線と前記第2貫通孔の中心軸線とが重なっている、ことを特徴とする付記1に記載の汗センサ。
【0053】
(付記3)
前記導電電極は第1電極と第2電極とを含み、前記第1電極と前記第2電極は同一面にあり、前記第1電極の電極貫通孔の中心軸線、前記第2電極の電極貫通孔の中心軸線及び前記第1貫通孔の中心軸線が重なっている、ことを特徴とする付記1又は2に記載の汗センサ。
【0054】
(付記4)
前記導電電極は第1電極と第2電極とを含み、前記第1電極と前記第2電極は異なる平面にあり、前記第1電極の電極貫通孔の中心軸線、前記第2電極の電極貫通孔の中心軸線及び前記第1貫通孔の中心軸線が重なっている、ことを特徴とする付記1又は2に記載の汗センサ。
【0055】
(付記5)
前記汗センサは、前記絶縁層の前記粘着層と反対する面上に設けられ、前記第1貫通孔に連通している第3貫通孔を有する接触層をさらに含む、ことを特徴とする付記1に記載の汗センサ。
【0056】
(付記6)
前記第1貫通孔の中心軸線と前記第3貫通孔の中心軸線とが重なっている、ことを特徴とする付記5に記載の汗センサ。
【0057】
(付記7)
前記汗センサによって汗が検出されたとき、前記導電電極によって記録された前記第1貫通孔を通過した汗の導電率値から導電率方形波曲線を取得し、前記導電率方形波曲線によって汗の電解質総濃度及び汗総量を同時に取得し、
前記導電率方形波曲線の振幅が前記貫通孔内のリアルタイムな汗の電解質総濃度と相関性を示し、前記貫通孔を通過する前記汗の体積が発汗速度及び前記導電率方形波曲線の導電率方形波間の時間差と相関性を示す、ことを特徴とする付記1に記載の汗センサ。
【0058】
(付記8)
絶縁層と、前記絶縁層内に設けられた複数の導電電極と、複数の第1貫通孔とを含み、第1貫通孔がそれぞれ前記絶縁層及び対応する1つの前記導電電極を貫通する導汗電極層と、
前記絶縁層上に設けられ、かつ複数の第2貫通孔を有し、前記第2貫通孔が前記第1貫通孔に1対1で対応して連通する粘着層と、
前記粘着層上に設けられ、かつ前記複数の第2貫通孔を覆う吸水性拡散層とを含む、ことを特徴とする汗検知システム。
【0059】
(付記9)
導電電極はそれぞれ第1電極と第2電極とを含み、各導電電極の第1電極及び第2電極は異なる平面にあり、各導電電極の第1電極は同一平面にあり、各導電電極の第2電極は同一平面にあり、各導電電極の第1電極の電極貫通孔の中心軸線、第2電極の電極貫通孔の中心軸線及び対応する第1貫通孔の中心軸線が重なっており、
前記複数の導電電極はアレイ状に配列され、同一列にある導電電極の第1電極は一体に接続され、同一行にある導電電極の第2電極は一体に接続される、ことを特徴とする付記8に記載の汗検知システム。
【0060】
(付記10)
前記絶縁層の前記粘着層と反対する面に設けられ、複数の第3貫通孔を有し、前記第3貫通孔が前記第1貫通孔に1対1で対応して連通する接触層をさらに含む、ことを特徴とする付記8又は9に記載の汗検知システム。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6