(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】真空断熱パネル
(51)【国際特許分類】
E04B 1/80 20060101AFI20231006BHJP
E04B 1/90 20060101ALI20231006BHJP
F16L 59/065 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
E04B1/80 100Z
E04B1/90 Q
F16L59/065
(21)【出願番号】P 2023136615
(22)【出願日】2023-08-24
【審査請求日】2023-08-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508202832
【氏名又は名称】アイディールブレーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100224926
【氏名又は名称】内田 雄久
(72)【発明者】
【氏名】松永 智也
(72)【発明者】
【氏名】大島 和仁
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 孝典
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-068485(JP,A)
【文献】特開2009-019673(JP,A)
【文献】特開2010-127463(JP,A)
【文献】特開2011-174602(JP,A)
【文献】特開2015-102176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/74 - 1/90
F16L 59/00 -59/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の板材が、それらの間に内部空間が形成されるように互いに対向した、真空断熱パネルであって、
金属製の第1板材と、
前記第1板材との間に内部空間を形成する金属製の第2板材と、
前記第1板材と前記第2板材とを前記内部空間側から支持するスペーサーと、
を備え、
前記第1板材は、外縁側の第1外縁板部と、前記第1外縁板部から起立されて曲面で形成される起立板部と、前記起立板部から連続されるとともに前記スペーサーに支持される主板部と、を有し、
前記第1外縁板部と、前記第2板材の外縁側の第2外縁板部との間には、ガスバリア性を有する第1樹脂材が介装されること
を特徴とする真空断熱パネル。
【請求項2】
前記スペーサーは、樹脂材であり、前記第1外縁板部及び前記第2外縁板部から離間すること
を特徴とする請求項1記載の真空断熱パネル。
【請求項3】
前記第1外縁板部と前記第2外縁板部との間には、前記第1樹脂材よりも熱伝導率が低い第2樹脂材が介装されること
を特徴とする請求項1又は2記載の真空断熱パネル。
【請求項4】
前記スペーサーは、
前記第1板材に沿って延長され、前記第1板材を支持する板状の第1支持部と、
前記第1支持部との間に中空空間を形成するように前記第2板材に沿って延長され、前記第2板材を支持する板状の第2支持部と、
前記第1支持部と前記第2支持部とを前記中空空間側から支持する複数の第3支持部と、
を有し、
複数の前記第3支持部は、一方向に延在し、前記第1支持部及び前記第2支持部と一体成形されてなること
を特徴とする請求項1又は2記載の真空断熱パネル。
【請求項5】
前記第1樹脂材は、前記第1外縁板部と前記第2外縁板部の間にのみ介装されること
を特徴とする請求項1又は2記載の真空断熱パネル。
【請求項6】
前記第2板材は、前記第1外縁板部と前記スペーサーとの間に、屈曲した屈曲部を有すること
を特徴とする請求項1又は2記載の真空断熱パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建築物に用いる真空断熱パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅・ビル・工場・倉庫等のような建築物に断熱壁を設ける場合、断熱パネルを取り付ける方法により施工される。断熱パネルは、一対の面材で形成する内部空間に断熱材を積層して、又は現場発泡して得るほか、より断熱性の優れる構造として、内部空間を真空引きする真空断熱パネルが従来知られている。一方で、真空断熱パネルは、材質や構造によっては内部空間と大気圧との気圧差により面材が変形し、面材同士の接触によって断熱性が大きく低下するおそれがある。
【0003】
特許文献1では、対向させた一対のチタン薄板の表面それぞれを略半球状に突出させた突出部同士を相互に当接させた真空断熱パネルが開示されている。また、特許文献2では、断熱性を有する芯材とその周囲を覆う外包金属板からなり、内部が真空状態とされて外包金属板の周縁部で封止された真空断熱パネルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-211376号公報
【文献】特開2013-170652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された真空断熱パネルによれば、突出部同士が相互に当接することで、チタン薄板の変形を抑制することができる。しかしながら、特許文献1に開示された真空断熱パネルは、接合に必要な外縁部分に加えて半球状の突出部同士を相互に当接させるため、経時又は外圧により当接部分がずれた場合に断熱性が低下する問題がある。また、特許文献2に開示された真空断熱パネルによれば、内部が芯材で満たされており真空層の形成が想定されていない。このため、真空層による断熱性の向上を実現できない問題がある。また、特許文献1-2によれば、対向する金属板同士を溶接により接合した構造が開示されている。ここで、例えば真空チャンバ内に溶接工具を持ち込んで溶接を行う場合、真空断熱パネルの製造コストが非常に高く、製造性が低い問題がある。
【0006】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、製造性の向上が図られた真空断熱パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明における真空断熱パネルは、一対の板材が、それらの間に内部空間が形成されるように互いに対向した、真空断熱パネルであって、金属製の第1板材と、前記第1板材との間に内部空間を形成する金属製の第2板材と、前記第1板材と前記第2板材とを前記内部空間側から支持するスペーサーと、を備え、前記第1板材は、外縁側の第1外縁板部と、前記第1外縁板部から起立されて曲面で形成される起立板部と、前記起立板部から連続されるとともに前記スペーサーに支持される主板部と、を有し、前記第1外縁板部と、前記第2板材の外縁側の第2外縁板部との間には、ガスバリア性を有する第1樹脂材が介装されることを特徴とする。
【0008】
第2発明における真空断熱パネルは、第1発明において、前記スペーサーは、樹脂材であり、前記第1外縁板部及び前記第2外縁板部から離間することを特徴とする。
【0009】
第3発明における真空断熱パネルは、第1発明又は第2発明において、前記第1外縁板部と前記第2外縁板部との間には、前記第1樹脂材よりも融点が高い第2樹脂材が介装されることを特徴とする。
【0010】
第4発明における真空断熱パネルは、第1発明又は第2発明において、前記スペーサーは、前記第1板材に沿って延長され、前記第1板材を支持する板状の第1支持部と、前記第1支持部との間に中空空間を形成するように前記第2板材に沿って延長され、前記第2板材を支持する板状の第2支持部と、前記第1支持部と前記第2支持部とを前記中空空間側から支持する複数の第3支持部と、を有し、複数の前記第3支持部は、一方向に延在し、前記第1支持部及び前記第2支持部と一体成形されてなることを特徴とする。
【0011】
第5発明における真空断熱パネルは、第1発明又は第2発明において、前記第1樹脂材は、前記第1外縁板部と前記第2外縁板部の間にのみ介装されることを特徴とする。
【0012】
第6発明における真空断熱パネルは、第1発明又は第2発明において、前記第2板材は、前記第1外縁板部と前記スペーサーとの間に、屈曲した屈曲部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1発明~第6発明によれば、金属製の第1板材の第1外縁板部と、金属製の第2板材の第2外縁板部との間に、ガスバリア性を有する第1樹脂材が介装される。すなわち、溶接温度よりも低い温度で金属板同士を接合することができる。このため、溶接工具よりも低いコストでかつ短時間に金属製の各板材同士を接合することができる。これにより、真空断熱パネルの製造性の向上を図ることができる。また、第1板材は、起立板部が曲面で形成される。このため、シェル構造により第1板材に加わる外圧を逃がしやすい。これにより、真空断熱パネルの耐久性の向上を図ることができる。
【0014】
特に、第2発明によれば、スペーサーは、樹脂材であり、第1外縁板部及び第2外縁板部から離間する。このため、金属よりも熱伝導率の低い樹脂材のスペーサーで各板材を支持しつつ、各板材の接合時に外縁側からスペーサーに熱が伝導しにくいため内部空間においてスペーサーが変形又は蒸発しにくい。これにより、真空断熱パネルの断熱性の向上を図りつつ製造性の向上を図ることができる。
【0015】
特に、第3発明によれば、第1外縁板部と第2外縁板部との間には、第2樹脂材が介装される。このため、樹脂材の厚さを確保しやすく、各板材間において熱がより伝導しにくい。これにより、真空断熱パネルの断熱性の向上を図ることができる。
【0016】
特に、第4発明によれば、スペーサーは、第1支持部との間に中空空間を形成するように第2板材に沿って延長され、第2板材を支持する板状の第2支持部と、一方向に延在し、第1支持部及び第2支持部と一体成形されてなる第3支持部と、を有する。このため、中空空間において真空層を形成することができる。これにより、真空断熱パネルの断熱性の向上を図ることができる。また、第1支持部、第2支持部及び第3支持部を押出し成形等により容易に製造できる。これにより、真空断熱パネルの製造性のさらなる向上を図ることができる。
【0017】
特に、第5発明によれば、第1樹脂材は、第1外縁板部と第2外縁板部の間にのみ介装される。このため、第1樹脂材が加熱され蒸発することで内部空間の真空状態に与える影響を抑制しやすい。これにより、真空断熱パネルの断熱性の低下抑制を図ることができる。
【0018】
特に、第6発明によれば、第2板材は、前記第1外縁板部と前記スペーサーとの間に、屈曲した屈曲部を有する。このため、第2板材は、第1板材の加熱に伴う変形に追従して変形することができ、しわや割れが発生しにくい。これにより、真空断熱パネルの断熱性の低下抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1(a)~
図1(d)は、本実施形態における真空断熱パネルの一例を示す模式図であり、
図1(a)が平面図、
図1(b)が
図1(a)のA-A断面図、
図1(c)が
図1(b)の部分拡大断面図であり、
図1(d)が
図1(a)のB-B断面図である。
【
図2】
図2(a)~
図2(d)は、本実施形態における真空断熱パネルの第1変形例を示す模式図であり、
図2(a)が平面図、
図2(b)が部分拡大断面図であり、
図1(d)が
図2(a)のC-C断面図である。
【
図3】
図3(a)~
図3(d)は、本実施形態における真空断熱パネルの第2変形例~第5変形例を示す模式図である。
【
図4】
図4(a)~
図4(c)は、本実施形態における真空断熱パネルの第6変形例~第8変形例を示す模式図であり、
図4(d)~
図4(e)は、本実施形態における真空断熱パネルの第9変形例を示す模式図である。
【
図5】
図5(a)~
図5(b)は、本実施形態における真空断熱パネルの製造方法の一例を示す模式図であり、
図5(a)が断面図、
図5(b)が
図5(a)の部分拡大断面図である。
【0020】
以下、本発明の実施形態としての真空断熱パネル100の一例について、図面を参照しながら詳細に説明をする。なお、各図において、第1方向Xとし、第1方向Xと交差、例えば直交する1つの方向を第2方向Yとし、第1方向X及び第2方向Yのそれぞれと交差、例えば直交する方向を厚さ方向Zとする。各図における構成は、説明のため模式的に記載されており、例えば各構成の大きさや、構成毎における大きさの対比等については、図とは異なってもよい。
【0021】
(真空断熱パネル100)
図を参照して、本実施形態における真空断熱パネル100の一例を説明する。
【0022】
真空断熱パネル100は、例えば住宅、ビル、工場、倉庫等の建築物の断熱壁に用いられる。真空断熱パネル100は、例えば構造用合板の屋外側に固定されて用いられる。
【0023】
真空断熱パネル100は、一対の板材が互いに対向して構成される。真空断熱パネル100は、例えば
図1(a)~
図1(d)に示すように、第1板材1と、第2板材2と、第1樹脂材3と、スペーサーSと、を備える。真空断熱パネル100は、例えば第1板材1と第2板材2とが互いに対向して構成される。真空断熱パネル100は、第1方向X及び第2方向Yを含む平面方向に向かって延びるように存在する。
【0024】
真空断熱パネル100は、例えば第1板材1と第2板材2との間に形成される内部空間QにスペーサーSが設けられる。真空断熱パネル100は、第1板材1と第2板材2とが外縁領域で第1樹脂材3を介して接合され、内部空間Qにおいて真空に保たれた真空層が形成されている。
【0025】
ここで、本発明における真空とは、大気圧よりも減圧された状態、すなわち負圧であることを意味する。詳しくは、例えばISO 3529-1、又はJIS Z 8161-2に記載の真空を意味し、低真空、中真空、高真空、超高真空を含む。真空層を形成することで、内部空間Q内の空気対流による熱伝導が非常に小さくなる。これにより、各板材1、2が接触する領域と比べて断熱性の向上を図ることができる。また、真空層の形成に伴い、内部空間Q内の負圧により第1板材1が第2板材2側に変形しようとする外力がかかるが、スペーサーSに支持されることで、当該外力に対して十分な強度を得ることができる。
【0026】
真空断熱パネル100の寸法としては、例えば第1方向Xの長さが1.5m~3m程度、第2方向Yの長さが450mm程度、厚さ方向Zの厚さが8mm~20mm程度である。
【0027】
<第1板材1>
第1板材1は、内部空間Qに対向する内面が、スペーサーSに支持される。
【0028】
第1板材1の材質としては、例えばアルミニウム、ステンレス鋼(SUS304等)等の金属が用いられる。
【0029】
第1板材1は、例えば
図1(a)に示すように、平面視矩形状である。第1板材1は、例えば
図1(b)に示すように、外縁領域において第2板材2と接合され、中央領域において第2板材2から離間する。
【0030】
第1板材1は、例えば
図1(c)に示すように、第1主板部11と、第1外縁板部12と、起立板部13と、からなり、第1外縁板部12において第2板材2と接合され、第1主板部11及び起立板部13において第2板材2と離間する。第1主板部11は、起立板部13を介して第1外縁板部12に支持される。第1主板部11は、例えば凹凸が無く平坦な平板状に形成される。起立板部13は、第1外縁板部12から起立されて曲面で形成される。第1主板部11は、起立板部13に連続されるとともにスペーサーSに支持される。
【0031】
第1板材1は、例えば起立板部13が曲面で形成される。この場合、シェル構造により第1板材1に加わる外圧を逃がしやすい。これにより、真空断熱パネル100の耐久性の向上を図ることができる。なお、起立板部13は滑らかな曲面形状であり折り目を持たないため、
図1(a)においてはその曲面形状の領域を網掛けで示している。
【0032】
ここで、第1外縁板部12のうち矩形の短手であって外側に露出した面を第1主面f1とし、矩形の長手であって外側に露出した面を第2主面f2とする。また、第1外縁板部12のうち第1主面f1の反対の面であって第2板材2と接触する面を第3主面f3とし、第2主面f2の反対の面であって第2板材2と接触する面を第4主面f4とする。この場合において、第1板材1は、第2板材2と接触する各主面f3、f4と第2板材2との間に樹脂材(後述の第1樹脂材3を含む)が介装された状態で、露出した各主面f1、f2、が加熱されることで、各主面f3、f4、を介して伝導した熱により樹脂材が溶ける。その後、真空断熱パネル100を冷却することで溶けた樹脂材が凝固し、各主面f3、f4と第2板材2とを溶着により接合することができる。
【0033】
第1主面f1のうち第1方向Xの幅w1は、例えば約20mmである。第2主面f2のうち第2方向Yの幅w2は、例えば約20mmである。
【0034】
第1板材1の厚さ方向Zの厚さは、例えば0.1mm~2.0mm程度であり、特に0.2mm前後が好ましい。また、第1板材1の第1外縁板部12を基準とした第1主板部11の厚さ方向Zの立ち上がり幅は、例えば1.0mm~20.0mm程度であり、特に7.5mm前後が好ましい。
【0035】
<第2板材2>
第2板材2は、内部空間Qに対向する内面が、スペーサーSに支持される。第2板材2の材質としては、例えば第1板材1と同様の材質が用いられてもよい。
【0036】
第2板材2は、例えば平面視矩形状である。第2板材2は、例えば
図1(b)に示すように、外縁領域において第1板材1の外縁と接触し、中央領域において第1板材1から離間する。
【0037】
第2板材2は、例えば
図1(c)に示すように、第2主板部21と、第2外縁板部22と、からなり、第2外縁板部22において第1樹脂材3を介して第1外縁板部12と接合され、第2主板部21において第1主板部11及び起立板部13から離間する。第2主板部21及び第2外縁板部22は、例えば凹凸が無く平坦な平板状に形成される。
【0038】
第2板材2は、例えば起立板部13に対応する起立板部を有してもよい。この場合、第2主板部21は、当該起立板部を介し第2外縁板部22に支持される。また、第2板材2は、第2外縁板部22の表面の第1樹脂材3が加熱され、当該外縁板部と第1外縁板部12とが接合されることにより、第1板材1と接合される。
【0039】
第2板材2の厚さ方向Zの厚さは、例えば0.1mm~2.0mm程度であり、特に0.3mm前後が好ましい。
【0040】
<第1樹脂材3>
第1樹脂材3は、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなり、ガスバリア性を有する。ここで、ガスバリア性を有する樹脂とは、例えばJIS K 7126(プラスチック-フィルム及びシート-ガス透過度試験方法)に記載のガス透過性試験において、温度23℃及び湿度0%(0%RH)の環境下での酸素透過性が0.001cm3/(m3・24h・atm)以下、かつ水蒸気透過性が0.002g/(m3・24h)以下を満足するガス透過性を有する樹脂フィルムを指す。第1樹脂材3としては、例えばEVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)やPVDC(ポリ塩化ビニリデン)等が用いられる。
【0041】
第1樹脂材3が第1外縁板部12と第2外縁板部22との間に介装された状態で外縁側(例えば第1外縁板部12又は第2外縁板部22)が加熱されることにより、第1板材1と第2板材2とが接合される。すなわち、溶接温度よりも低い温度で金属製の各板材1、2同士を接合することができる。この場合、溶接工具よりも低いコストでかつ短時間に金属板同士を接合することができる。これにより、真空断熱パネル100の製造性の向上を図ることができる。
【0042】
第1樹脂材3は、例えば第1板材1に対向する第2板材2の表面のうち第2外縁板部22のみに設けられてもよい。すなわち、第1樹脂材3は、第1外縁板部12と第2外縁板部22の間にのみ介装される。この場合、第1樹脂材3が加熱され蒸発することで内部空間Qの真空状態に与える影響を抑制しやすい。これにより、真空断熱パネル100の断熱性の低下抑制を図ることができる。この場合において、第1樹脂材3は、第1外縁板部12の第3主面f3に設けられてもよい。
【0043】
<スペーサーS>
スペーサーSは、例えば
図1(c)~
図1(d)に示すように、第1板材1を支持する第1支持部S1と、第2板材2を支持する第2支持部S2と、各支持部S1、S2を支持する複数の第3支持部S3と、を有する。
【0044】
第1支持部S1は、例えば板状であり、第1板材1に沿って延長される。第1支持部S1は、例えば第1板材1と面で接触し、第1板材1をその接触面で支持する。
【0045】
第2支持部S2は、例えば板状であり、第2板材2に沿って延長される。第2支持部S2は、第1支持部S1との間に中空空間Rを形成するように、第1支持部S1から離間する。第2支持部S2は、例えば第2板材2又は第2板材2の表面上の第1樹脂材3と面で接触し、第2板材2をその接触面で支持する。第2支持部S2は、例えば
図1(c)に示すように、第1樹脂材3を介して第2板材2を支持してもよく、第2板材2を直接支持してもよい。ここで、中空空間Rは、内部空間QのうちスペーサーSが占有する領域を除外した領域を示す。
【0046】
複数の第3支持部S3は、第1支持部S1と第2支持部S2とを中空空間R側から支持する。複数の第3支持部S3は、例えば
図1(d)に示すように、第1支持部S1及び第2支持部S2から厚さ方向Zに沿って中空空間R側に向かって加わる荷重を支持することで、中空空間Rを保持する。
【0047】
これら各支持部S1~S3の構成により、スペーサーSは、第1板材1と第2板材2との間に中空空間Rを形成することができる。この場合、中空空間Rにおいて真空層を形成することができる。これにより、真空断熱パネル100の断熱性の向上を図ることができる。また、各支持部S1、S2が第1板材1と第2板材2とを支持するため、各板材1、2の一方の支持部分がずれても中空空間Rを維持することができる。これにより、真空断熱パネル100の断熱性の低下抑制を図ることができる。
【0048】
また、複数の第3支持部S3は、例えば
図1(c)に示すように、板状であり、一方向(
図1(d)においては第1方向X)に延在し、第1支持部S1及び第2支持部S2と一体成形されてもよい。この場合、第1支持部S1、第2支持部S2及び第3支持部S3を押出し成形等により容易に製造できる。これにより、真空断熱パネル100の製造性のさらなる向上を図ることができる。
【0049】
スペーサーSの材質としては、例えばISO1043-1、又はJIS K 6899-1に記載のプラスチック(合成樹脂)が用いられる。真空断熱パネル100は、金属よりも熱伝導率が低い樹脂からなるスペーサーSで各板材1、2を支持するため、各板材1、2について樹脂よりも強度の高い金属を用いる場合、スペーサーSを適用しない場合と比べて金属板同士が接触する面積を低減できる。これにより、真空断熱パネル100の耐久性を向上しつつ断熱性の向上を図ることができる。
【0050】
スペーサーSは、例えば第1外縁板部12から離間する。この場合、金属よりも熱伝導率の低い樹脂材のスペーサーSで各板材1、2を支持しつつ、各板材1、2の接合時に外縁側からスペーサーSに熱が伝導しにくいため内部空間QにおいてスペーサーSが変形又は蒸発しにくい。これにより、真空断熱パネル100の断熱性の向上を図りつつ製造性の向上を図ることができる。
【0051】
スペーサーSと第1外縁板部12との離間距離について、第3主面f3からの第1方向Xに沿った離間幅w3は、例えば約10~20mmである。また、第4主面f4からの第2方向Yに沿った離間幅w4は、例えば約10~20mmである。
【0052】
スペーサーSの寸法としては、例えば第1支持部S1の長手方向(
図1における第1方向X)の長さが約1460mm、短手方向(
図1における第2方向Y)の長さが約372.5mm、厚さが0.5mmである。第2支持部S2の寸法は、例えば第1支持部S1と同様でよい。
【0053】
第3支持部S3の寸法は、例えば長手方向(
図1における第1方向X)の長さが第1支持部S1と同様であり、第2方向Yの厚さが約0.5mm、短手方向(
図1における厚さ方向Z)の幅w5が、約10mmである。ここで、第3支持部S3の幅w5は、第1支持部S1と第2支持部S2との離間幅と同様である。また、隣り合う複数の第3支持部S3の幅w6は、例えば約12mmである。
【0054】
(真空断熱パネル100の第1変形例)
<第2板材2>
第2板材2は、例えば
図2(a)~
図2(c)に示すように、第1外縁板部12とスペーサーSとの間の起立板部13に対向する領域において起立板部13に向かって屈曲した突起状の屈曲部Tを有する。
図2(a)においては、一点鎖線で示した屈曲部Tの領域が、網掛けで示した起立板部13の曲面形状の領域と平面視において重なることが示されている。屈曲部Tは、例えば第1方向X及び第2方向Yの外圧によって弾性変形又は塑性変形する。屈曲部Tは、第1外縁板部12とスペーサーSとの間であって第1主板部11に対向する領域に設けられてもよい。屈曲部Tは、第1樹脂材3とスペーサーSとの間に設けられてもよい。なお、図示は省略するが、屈曲部Tは、起立板部13とは反対側に向かって屈曲した溝状であってもよい。
【0055】
ここで、真空断熱パネル100を製造するために第1樹脂材3を加熱して各板材1、2を接合する際、第1外縁板部13周辺の温度が約200℃、第1主板部11周辺の温度が約20℃と大きな温度差が生じ、熱膨張の差が大きくなり、第1板材1においてひずみが発生しやすい。このひずみを対策しない場合、内部応力が持続的に作用してクリープによりひずみが経時的に増大し、最終的に第1樹脂材3が各板材1、2から剥離するおそれがある。
【0056】
本変形例によれば、第2板材2に屈曲部Tを設けることで、第2板材2は第1板材1の加熱に伴う変形に追従して変形することができ、第2板材2の表面等においてしわや割れが発生しにくい。これにより、真空断熱パネル100の断熱性の低下抑制を図ることができる。
【0057】
また、屈曲部Tは、例えば起立板部13から離間する。この場合、起立板部13(第1板材1)との接触による熱伝導が生じず、屈曲部T自体の熱膨張など、起立板部13の変形に追従しない変形を低減することができる。これにより、真空断熱パネル100の断熱性のさらなる低下抑制を図ることができる。
【0058】
屈曲部Tの寸法としては、例えば屈曲した突起又は溝の幅が約1mm、屈曲した突起又は溝の高さが約2mm~3mmである。
【0059】
(真空断熱パネル100の第2変形例)
<第1樹脂材3>
第1樹脂材3は、例えば
図3(a)に示すように、第1板材1に対向する第2板材2の表面の全体(第2主板部21及び第2外縁板部22)に設けられることで、第2板材2の表面への塗布の作業性が向上し、製造コストを抑えることができる。また、第1板材1の配置の柔軟性が向上する。これにより、真空断熱パネル100の製造性の向上を図ることができる。
【0060】
(真空断熱パネル100の第3変形例)
<真空断熱パネル100>
真空断熱パネル100は、例えば
図3(b)に示すように、さらに第2樹脂材4を備えてもよい。
【0061】
<第2樹脂材4>
第2樹脂材4は、例えばISO1043-1、又はJIS K 6899-1に記載のプラスチック(合成樹脂)のうち、第1樹脂材3よりも熱伝導率が低い樹脂からなる。第2樹脂材4としては、例えばシリコン樹脂等が用いられる。
【0062】
第2樹脂材4は、例えば第1樹脂材3と第2板材2との間に介装される。この場合、第1樹脂材3のみが介装される場合と比べて、樹脂材の厚さを確保しやすく、各板材1、2間において熱がより伝導しにくい。これにより、真空断熱パネル100の断熱性の向上を図ることができる。また、第2樹脂材4が第1樹脂材3よりも融点が高くてもよい。この場合、第2樹脂材4が第1樹脂材3よりも溶けにくく、第1樹脂材3が加熱されたときに蒸発しにくく内部空間Qの真空状態に与える影響を抑制しやすい。これにより、真空断熱パネル100の断熱性の低下抑制を図ることができる。
【0063】
(真空断熱パネル100の第4変形例)
<真空断熱パネル100>
真空断熱パネル100は、例えば
図3(c)に示すように、第1外縁板部12と第2外縁板部22とを塑性変形させてかしめることにより、外縁屈曲部22aを形成してもよい。この場合、第1樹脂材3のみで接合する場合と比べて、各板材1、2をより強固に接合することができる。これにより、真空断熱パネル100の耐久性の向上を図ることができる。
【0064】
なお、外縁屈曲部22aを形成する際に、第1樹脂材3を第2外縁板部22と同様に変形させることにより、樹脂屈曲部3aを形成してもよい。この場合、第1樹脂材3が外縁屈曲部22aの内部に含まれ、各板材1、2をより強固に接合することができる。これにより、真空断熱パネル100の耐久性のさらなる向上を図ることができる。
【0065】
(真空断熱パネル100の第5変形例)
<真空断熱パネル100>
真空断熱パネル100は、例えば
図3(d)に示すように、第1外縁板部12、第2外縁板部22及び第1樹脂材3を保護する保護材5が取り付けられてもよい。この場合、各板材1、2の接合部分について外部環境の影響を受けにくい。これにより、真空断熱パネル100の耐久性の向上を図ることができる。
【0066】
保護材5の材質としては、例えば公知のモール材が用いられ、樹脂材のモール材が用いられてもよい。保護材5は、例えば断面コの字状に形成され、コの字状の両側で第1外縁板部12と第2外縁板部22とを挟んで保持する。また、保護材5として、ロウやラテックス等の接着材料がディップコーティングされた膜の固化により形成されてもよい。
【0067】
(真空断熱パネル100の第6変形例)
<スペーサーS>
スペーサーSは、例えば
図4(a)に示すように、第1板材1を支持する第1支持部S1と、第2板材2を支持する第2支持部S2と、各支持部S1、S2同士を連結する連結部S4と、を有する。
【0068】
スペーサーSは、例えば格子状の連結部S4を基材として、格子の各交点において、第1板材1に向かって突出した第1支持部S1と、第2板材2に向かって突出した第2支持部S2と、を有する。すなわち、スペーサーSは、一の第1支持部S1に対して複数の第1支持部S1が連結部S4を介して連結され、一の第2支持部S2に対して複数の第2支持部S2が連結部S4を介して連結される。この場合、複数の支持部S1、S2により各板材1、2に作用する応力を分散できる。これにより、真空断熱パネル100の耐久性の向上を図ることができる。
【0069】
また、平板状の連結部S4を用いる場合と比べて材料コストを低減しつつ各支持部S1、S2が一部に集中することを防ぐことができる。これにより、真空断熱パネル100の製造性の向上を図ることができる。
【0070】
スペーサーSは、例えば複数の第1支持部S1と第1板材1と連結部S4との間に中空空間R1を形成し、複数の第2支持部S2と第2板材2と連結部S4との間に中空空間R2を形成することで、中空空間Rを形成する。
【0071】
このとき、第1支持部S1は、例えば凸曲面で第1板材1の内面を支持する。また、第2支持部S2は、例えば凸曲面で第2板材2の内面を支持する。すなわち、各支持部S1、S2は、第1板材1と第2板材2とを点支持する。この場合、中空空間Rにおいて真空層をより大きい体積で形成することができる。これにより、真空断熱パネル100の断熱性のさらなる向上を図ることができる。
【0072】
スペーサーSの寸法としては、例えば第1方向Xに沿った隣り合う第1支持部S1同士及び隣り合う第2支持部S2同士の幅X1は20mm~30mm程度、第2方向Yに沿った隣り合う第1支持部S1同士及び隣り合う第2支持部S2同士の幅は20mm~30mm程度である。
【0073】
スペーサーSの例としては、例えば縦糸と横糸とが交差する格子状を成す公知の有結ネットを用いてもよい。このとき、各支持部S1、S2は、有結ネットの結び目で構成される。この場合、スペーサーSの配置を調整する手間を低減できる。これにより、真空断熱パネル100の製造性の向上を図ることができる。
【0074】
(真空断熱パネル100の第7変形例)
<スペーサーS>
スペーサーSは、例えば
図4(b)に示すように、複数の網の目が交差したネット状を成してもよい。スペーサーSは、例えば第1方向Xに沿って延びる横糸の第1支持部S1と、第2方向Yに沿って延びる縦糸の第2支持部S2と、が交差する格子状を成すネットである。連結部S4は、当該縦糸と当該横糸との交点において各支持部S1、S2を連結する。この場合において、第1支持部S1と第2支持部S2とは、厚さ方向Zに沿って互いに支持する。ここで、格子状とは、長方形格子の他、三角格子、六角格子、ハニカム構造等を含む。なお、スペーサーSは、当該横糸と当該縦糸とが交互に織り込まれることにより、当該横糸及び当該縦糸が、第1支持部S1と第2支持部S2とを交互に成してもよい。
【0075】
すなわち、スペーサーSは、一の第1支持部S1に対して複数の第2支持部S2が連結部S4を介して連結され、一の第2支持部S2に対して複数の第1支持部S1が連結部S4を介して連結される。この場合、複数の支持部S1、S2により各板材1、2に作用する応力を分散できる。これにより、真空断熱パネル100の耐久性の向上を図ることができる。
【0076】
スペーサーSは、例えば複数の第1支持部S1と各板材1、2との間に中空空間R1を形成し、複数の第2支持部S2と各板材1、2との間に中空空間R2を形成することで、中空空間Rを形成する。
【0077】
スペーサーSの寸法としては、例えば第1方向Xに沿った隣り合う第2支持部S2同士の幅X2は20mm~30mm程度、第2方向Yに沿った隣り合う第1支持部S1同士の幅は20mm~30mm程度である。
【0078】
スペーサーSに用いられる織り込まれたネットの種類として、例えば平織ネット、カラミ織ネット、ラッセル織ネット、モジ網、スズライン網等が挙げられる。スペーサーSとしては、無結ネットであってもよい。
【0079】
また、スペーサーSは、樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等)の押出成形、切込加工、プレス加工等により第1支持部S1と第2支持部S2と連結部S4とが一体的に成形されたプラスチックネットでもよい。この場合、スペーサーSの網目が崩れにくく、各板材1、2に作用する応力を分散させやすい。これにより、真空断熱パネル100の耐久性向上を図ることができる。また、スペーサーSの配置を調整する手間を低減できる。これにより、真空断熱パネル100の製造性の向上を図ることができる。
【0080】
スペーサーSの例としては、例えば「ナクサ(登録商標)」、「ネトロン(登録商標)シート」、「トリカルネット(登録商標)」が含まれる。
【0081】
スペーサーSは、第1方向Xに沿って延びる板状、棒状等の第1支持部S1と、第2方向Yに沿って延びる板状、棒状等の第2支持部S2と、が交差して格子状に形成されてもよい。
【0082】
(真空断熱パネル100の第8変形例)
<スペーサーS>
スペーサーSは、例えば
図4(c)に示すように、平板状の連結部S4を基材として、その平板状の表面において、第1板材1に向かって突出した第1支持部S1と、第2板材2に向かって突出した第2支持部S2と、を有する。この場合、格子状の連結部S4を用いる場合と比べて各支持部S1、S2の支持部分がずれにくく、各板材1、2に作用する応力をより分散させやすい。これにより、真空断熱パネル100の耐久性の向上を図ることができる。また、スペーサーSの配置を調整する手間を低減できる。これにより、真空断熱パネル100の製造性の向上を図ることができる。
【0083】
スペーサーSは、例えば複数の第1支持部S1と第1板材1と連結部S4との間に中空空間R1を形成し、複数の第2支持部S2と第2板材2と連結部S4との間に中空空間R2を形成することで、中空空間Rを形成する。
【0084】
スペーサーSの寸法としては、例えば第1方向Xに沿った隣り合う第1支持部S1同士及び隣り合う第2支持部S2同士の幅X3は20mm~30mm程度、第2方向Yに沿った隣り合う第1支持部S1同士及び隣り合う第2支持部S2同士の幅は20mm~30mm程度である。
【0085】
スペーサーSは、例えば平板状の熱可塑性樹脂に対してプレス成形やエンボス成形等を実施することにより、平板状の両面に各支持部S1、S2を形成してもよい。
【0086】
スペーサーSの例としては、例えば株式会社カツロン製「ラクラクロード」が含まれる。
【0087】
(真空断熱パネル100の第9変形例)
<スペーサーS>
スペーサーSは、例えば
図4(d)~
図4(e)に示すように、第1方向X及び第2方向Yを含む平面方向に沿って複数設けられた第1支持部S1と第2支持部S2とが、断面視において互い違いに設けられ連結部S4を介して互いに連結された形状、すなわちスペーサーSの表面が波のように凹凸した形状を成してもよい。スペーサーSは、第1板材1に向かって突出した第1支持部S1と、第2板材2に向かって突出した第2支持部S2と、第1支持部S1と第2支持部S2とを連結する連結部S4を有する。各支持部S1、S2は、それぞれ凸曲面で構成され、凸曲面の頂点において第1板材1と第2板材2とを点支持することができる。
【0088】
スペーサーSの寸法としては、
図4(d)に示すように、例えば第1方向Xに沿った隣り合う第1支持部S1同士の幅X4は20mm~30mm程度、第2方向Yに沿った隣り合う第1支持部S1同士の幅Y4は20mm~30mm程度である。また、第1方向Xに沿った隣り合う第2支持部S2同士の幅X4’は20mm~30mm程度、第2方向Yに沿った隣り合う第2支持部S2同士の幅Y4’は20mm~30mm程度である。
【0089】
スペーサーSは、例えば
図4(e)に示すように、複数の第1支持部S1と第1板材1と第2支持部S2の反対の面(第1板材1に対向する面)と連結部S4との間に中空空間R1を形成し、複数の第2支持部S2と第2板材2と第1支持部S1の反対の面(第2板材2に対向する面)と連結部S4との間に中空空間R2を形成することで、中空空間Rを形成する。
【0090】
(真空断熱パネル100の製造方法)
次に、
図5(a)~
図5(b)を参照して、上述した真空断熱パネル100の製造方法の一例を説明する。
【0091】
まず、
図5(a)~
図5(b)に示すように、中空状の導電性トレイ61の上に、第1外縁板部12の第1主面f1の各辺が全て接触し、かつ起立板部13が導電性トレイ61の内部に向かって立ち上がる向きになるように、第1板材1を配置する。また、第1主板部11の内面側にスペーサーSを配置した上で、第1樹脂材3が塗布された第2板材2を、第1外縁板部12の第3主面f3と第1樹脂材3とが対向するように、第1板材1の上方に配置する。このとき、内部空間Qを真空引きするために、例えば操作可能な図示しない電動式くさびを第1外縁板部12と第2外縁板部22との間に介装して、内部空間Qと外部環境とを連通する隙間を第1外縁板部12と第2外縁板部22との間に形成する。これにより、真空引き前パネル101の設置が完了する。
【0092】
ここで、スペーサーSの厚さ方向Zの厚さによっては、第1外縁板部12と第2板材2の第2外縁板部22との接触が良好とならない場合があるため、第2板材2の上方に、導電性トレイ61と同様の材質及び形状の導電性トレイ62を配置してもよい。この場合、第1外縁板部12と第2外縁板部22とは、各導電性トレイ61、62に挟持されることにより良好に接触し、内部空間Qの密閉性を向上させやすい。
【0093】
また、第1外縁板部12と第2外縁板部22との間に隙間を形成した状態の真空引き前パネル101を、導電性トレイ61、62ごと真空チャンバCに収容した上で、真空チャンバC内を真空引きする。このとき、内部空間Qと真空チャンバC内とは連通しており、真空チャンバC内が真空引きされることで内部空間Qも真空となる。内部空間Qが真空になった後、真空チャンバC内を真空に保ったまま真空チャンバC外から上述の図示しない電動式くさびを操作して、当該くさびを第1外縁板部12と第2外縁板部22との間から取り外す。このとき、第2板材2は、電動式くさびからの支持を失って第1板材1の上に落下する。これにより、内部空間Qを真空に保った状態で第1外縁板部12と第2外縁板部22とを隙間なく接触させることができる。
【0094】
その後、図示しない外部電源を導電性トレイ61、62に電気的に接続して、導電性トレイ61、62に電力供給する。その結果、第1板材1の第1外縁板部12及び第2外縁板部22を介して第1樹脂材3が加熱され、第1外縁板部12と第2外縁板部22とが電気溶着される。これにより、内部空間Qが真空チャンバCから取り出した後も真空に保たれる。
【0095】
以上の手順により、真空断熱パネル100の製造が完了する。なお、導電性トレイ61、62及び真空引き前パネル101を上下方向にさらに積層した上で同時に電気溶着することで、真空断熱パネル100をさらに効率よく製造することができる。
【0096】
また、第2板材2の上方に図示しないジャッキをさらに配置し、電気溶着する際に各導電性トレイ61、62を上方から押圧してもよい。この場合、第1外縁板部12と第2外縁板部22とは、各導電性トレイ61、62に強固に挟持されることによりさらに良好に接触し、内部空間Qの密閉性をさらに向上しやすい。また、導電性トレイ61、62及び真空引き前パネル101を上下方向にさらに積層した場合において、各パネルを確実に挟持することができる。これにより、真空断熱パネル100の製造効率と品質の向上を図ることができる。
【0097】
本実施形態によれば、金属製の第1板材1の第1外縁板部12と、金属製の第2板材2の第2外縁板部22との間に、ガスバリア性を有する第1樹脂材3が介装される。すなわち、溶接温度よりも低い温度で金属板同士を接合することができる。このため、溶接工具よりも低いコストでかつ短時間に金属製の各板材1、2同士を接合することができる。これにより、真空断熱パネル100の製造性の向上を図ることができる。また、第1板材1は、起立板部13が曲面で形成される。このため、シェル構造により第1板材1に加わる外圧を逃がしやすい。これにより、真空断熱パネル100の耐久性の向上を図ることができる。
【0098】
また、本実施形態によれば、スペーサーSは、樹脂材であり、第1外縁板部12及び第2外縁板部22から離間する。このため、金属よりも熱伝導率の低い樹脂材のスペーサーSで各板材1、2を支持しつつ、各板材1、2の接合時に外縁側からスペーサーSに熱が伝導しにくいため内部空間QにおいてスペーサーSが変形又は蒸発しにくい。これにより、真空断熱パネル100の断熱性の向上を図りつつ製造性の向上を図ることができる。
【0099】
また、本実施形態によれば、第1外縁板部12と第2外縁板部22との間には、第1樹脂材3より熱伝導率が低い第2樹脂材4が介装される。このため、樹脂材の厚さを確保しやすく、各板材1、2間において熱がより伝導しにくい。これにより、真空断熱パネル100の断熱性の向上を図ることができる。また、第2樹脂材4の融点が第1樹脂材3の融点よりも高い場合には、第2樹脂材4が第1樹脂材3よりも溶けにくく、第1樹脂材3が加熱されたときに蒸発しにくく内部空間Qの真空状態に与える影響を抑制しやすい。これにより、真空断熱パネル100の断熱性の低下抑制を図ることができる。
【0100】
また、本実施形態によれば、スペーサーSは、第1支持部S1との間に中空空間Rを形成するように第2板材2に沿って延長され、第2板材2を支持する板状の第2支持部S2と、一方向に延在し、第1支持部S1及び第2支持部S2と一体成形されてなる第3支持部S3と、を有する。このため、中空空間Rにおいて真空層を形成することができる。これにより、真空断熱パネル100の断熱性の向上を図ることができる。また、第1支持部S1、第2支持部S2及び第3支持部S3を押出し成形等により容易に製造できる。これにより、真空断熱パネル100の製造性のさらなる向上を図ることができる。
【0101】
また、本実施形態によれば、第1樹脂材3は、第1外縁板部12と第2外縁板部22の間にのみ介装される。このため、第1樹脂材3が加熱され蒸発することで内部空間Qの真空状態に与える影響を抑制しやすい。これにより、真空断熱パネル100の断熱性の低下抑制を図ることができる。
【0102】
また、本実施形態によれば、第2板材2は、第1外縁板部12とスペーサーSとの間に、屈曲した屈曲部Tを有する。このため、第2板材2は、第1板材1の加熱に伴う変形に追従して変形することができ、しわや割れが発生しにくい。これにより、真空断熱パネル100の断熱性の低下抑制を図ることができる。
【0103】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図しない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0104】
100 真空断熱パネル
101 真空引き前パネル
1 第1板材
11 第1主板部
12 第1外縁板部
13 起立板部
2 第2板材
21 第2主板部
22 第2外縁板部
3 第1樹脂材
4 第2樹脂材
5 保護材
61、62 導電性トレイ
C 真空チャンバ
Q 内部空間
R 中空空間
S スペーサー
T 屈曲部
S1 第1支持部
S2 第2支持部
S3 第3支持部
S4 連結部
X 第1方向
Y 第2方向
Z 厚さ方向
【要約】
【課題】製造性の向上が図られた真空断熱パネルを提供する。
【解決手段】真空断熱パネル100は、一対の板材1、2が、それらの間に内部空間Qが形成されるように互いに対向した、真空断熱パネル100であって、金属製の第1板材1と、第1板材1との間に内部空間Qを形成する金属製の第2板材2と、第1板材1と第2板材2とを内部空間Q側から支持するスペーサーSと、を備え、第1板材1は、第1外縁板部13と、第1外縁板部13から起立されて曲面で形成される起立板部12と、起立板部12から連続されるとともにスペーサーSに支持される主板部11と、を有し、第1板材1の外縁側の第1外縁板部12と、第2板材2の外縁側の第2外縁板部22との間には、ガスバリア性を有する第1樹脂材3が介装されることを特徴とする。スペーサーSは、樹脂材であり、第1外縁板部12及び第2外縁板部22から離間する。
【選択図】
図1