(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】作業車両の安全システム
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20231006BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20231006BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
B66F9/24 L
G08B21/02
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2019017401
(22)【出願日】2019-02-01
【審査請求日】2022-01-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100098420
【氏名又は名称】加古 宗男
(72)【発明者】
【氏名】林 俊孝
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-105807(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0151508(US,A1)
【文献】特開2008-097592(JP,A)
【文献】特開2015-005152(JP,A)
【文献】特開2006-236025(JP,A)
【文献】特開2011-227619(JP,A)
【文献】特開2021-139283(JP,A)
【文献】特開2021-033403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00 - 11/04
G08B 19/00 - 21/24
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業場所内を移動及び/又は旋回する作業車両の周囲の警告エリア内にいる人を検出する検出部と、前記検出部で前記警告エリア内にいる警告対象の人を検出したときに前記作業車両の運転者に警告する警告部とを備えた作業車両の安全システムにおいて、
前記警告エリア内で作業す
る作業
者を予め記憶し
、前記作業者を特定の作業者として識別する識別装置と、
前記検出部が前記警告エリア内に人を検出したときに前記識別装置が前記特定の作業者であるか否かを識別し、前記検出部が検出した人数と前記識別装置が識別した前記特定の作業者の人数とが一致した場合は警告の対象外とし、前記検出部が検出した人数と前記識別装置が識別した前記特定の作業者の人数とが一致しない場合は前記警告部によって前記作業車両の運転者に警告する安全システム制御部と
を備える、作業車両の安全システム。
【請求項2】
前記識別装置は、前記特定の作業者に持たせたワイヤレス送信機から送信される識別信号を前記作業車両に設けられた受信機で受信し、その受信レベルに基づいて当該ワイヤレス送信機を持つ前記特定の作業者が前記警告エリア内にいるか否かを識別する、請求項1に記載の作業車両の安全システム。
【請求項3】
前記識別装置は、前記特定の作業者に持たせた位置測位端末と前記作業車両に設けられた位置測位端末とからなる位置測位システムによって前記特定の作業者が前記警告エリア内にいるか否かを識別する、請求項1に記載の作業車両の安全システム。
【請求項4】
前記検出部は、前記作業車両に設けられた人感センサ、エリアセンサ、レーザセンサ、モーションセンサのいずれかを用いて構成されている、請求項1乃至3のいずれかに記載の作業車両の安全システム。
【請求項5】
前記検出部は、前記作業車両に設けられたカメラで当該作業車両の周囲を撮像し、その画像を処理することで前記警告エリア内にいる人を検出する、請求項1乃至3のいずれかに記載の作業車両の安全システム。
【請求項6】
前記検出部は、前記作業車両に設けられたカメラで当該作業車両の周囲を撮像し、その画像を処理することで前記警告エリア内にいる人を検出し、
前記識別装置は、前記特定の作業者の顔の画像データを登録したデータベースを備え、前記検出部で前記警告エリア内にいる人を検出した場合には、前記カメラの画像から得られた顔の画像を前記データベースに登録されている前記特定の作業者の顔の画像データと照合して前記警告エリア内にいる人が前記特定の作業者であるか否かを識別する、請求項1に記載の作業車両の安全システム。
【請求項7】
前記安全システム制御部は、前記検出部で前記特定の作業者以外の人を検出したときに前記警告部によって前記作業車両の運転者に前記特定の作業者以外の人の位置を示して警告する、請求項1乃至6のいずれかに記載の作業車両の安全システム。
【請求項8】
作業場所内を移動及び/又は旋回する作業車両の周囲の警告エリア内にいる人を検出する検出部と、前記検出部で前記警告エリア内にいる警告対象の人を検出したときに前記作業車両の運転者に警告する警告部とを備えた作業車両の安全システムにおいて、
前記警告エリア内で作業す
る作業
者を予め記憶し
、前記作業者を特定の作業者として識別する識別装置と、
前記警告部を制御する安全システム制御部とを備え、
前記警告エリアを外側の第1警告エリアと内側の第2警告エリアとに区分し、
前記安全システム制御部は、前記検出部が前記外側の第1警告エリア内に人を検出したときに前記識別装置が前記特定の作業者であるか否かを識別し、前記外側の第1警告エリア内であり且つ前記内側の第2警告エリア外の範囲において、前記検出部が検出した人数と前記識別装置が識別した前記特定の作業者の人数とが一致した場合は警告の対象外とし、前記検出部が検出した人数と前記識別装置が識別した前記特定の作業者の人数とが一致しない場合は前記警告部によって前記作業車両の運転者に警告し、前記内側の第2警告エリア内の範囲において、前記検出部が人を検出した場合は前記識別装置が前記特定の作業者を識別したか否かに関わらず前記警告部によって前記作業車両の運転者に警告する、作業車両の安全システム。
【請求項9】
前記安全システム制御部は、前記警告部によって前記内側の第2警告エリアで警告する場合は、前記外側の第1警告エリアで警告する場合よりも強く警告する、請求項8に記載の作業車両の安全システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、作業場所内を移動及び/又は旋回する作業車両の周囲の警告エリア内に人がいる場合に、作業車両の運転者(オペレータ)に警告する機能を備えた作業車両の安全システムに関する技術を開示したものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1(国際公開WO2015/147149号公報)に記載された作業車両の安全システムは、作業車両の前方のエリアを作業車両からの距離に応じて3つのエリア(警報エリア、減速エリア、自動停止エリア)に区分すると共に、作業車両に人検知センサを設けて、この人検知センサで作業車両から最も離れた警報エリア内に侵入した人を検出したときに警報を発し、また、中間の減速エリア内に侵入した人を人検知センサで検出したときに作業車両を減速し、更に、作業車両に最も近い自動停止エリア内に侵入した人を人検知センサで検出したときに作業車両を自動停止させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の作業車両は、自律走行(自動走行)する作業車両であるが、フォークリフト等の作業車両は、人が運転し、前進、後進、旋回等、複雑な動きをする。工場等の作業場所内には、作業車両の運転者以外にも作業者が何人か作業している場合が多い。作業者の中には、作業経験が豊富で、安全教育を受けて安全意識の高い作業者が存在する一方、作業経験が少なく、安全教育を受けていない安全意識の低い作業者も存在する。また、作業場所内には、作業者以外にも、外部から見学者や配送業者等の来訪者が入ってくる場合もある。安全意識の高い作業者は、安全意識の低い作業者と比べて、作業車両にある程度近付いて作業しても危険性は少ないが、安全意識の低い作業者や来訪者が作業車両に近付くと危険である。
【0005】
従って、警報エリアは、安全意識の低い作業者や来訪者に対する安全性を優先して広めに設定する必要がある。一方、人検知センサは、警報エリア内に人が侵入したことは検知できても、その人が安全意識の高い人か低い人かまでは識別できない。このため、広めに設定した警報エリア内に安全意識の高い作業者が意図的に入って作業する場合でも、人検知センサが検知作動して警報が発せられるため、警報の発生頻度が高くなる。作業車両を人が運転する場合には、警報が発せられる都度、作業車両の運転者が作業を中断又は作業スピードを落として警報エリア内に侵入した人の動きを確認したり、その人が安全意識の高い作業者か否かを確認する必要がある。そのため、安全意識の高い作業者が人検知センサで検知されて警報が発せられることで警報の発生頻度が高くなると、作業車両による作業能率が低下する。しかも、警報エリア内に安全意識の高い作業者と安全意識の低い人の両方が入って警報が発せられる場合は、作業車両の運転者が警報エリア内にいる安全意識の高い作業者を見つけると、安全意識の高い作業者で警報が発せられたと早合点して、安全意識の低い人を見逃してしまう可能性(安全意識の低い人が警報エリア内にいないと誤認してしまう可能性)があり、安全意識の低い人に対する安全性が低くなってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、作業場所内を移動や旋回する作業車両の周囲の警告エリア内にいる人を検出する検出部と、前記検出部で前記警告エリア内にいる警告対象の人を検出したときに前記作業車両の運転者に警告する警告部とを備えた作業車両の安全システムにおいて、前記警告エリア内で作業する作業者を予め記憶し、前記作業者を特定の作業者として識別する識別装置と、前記検出部が前記警告エリア内に人を検出したときに前記識別装置が前記特定の作業者であるか否かを識別し、前記検出部が検出した人数と前記識別装置が識別した前記特定の作業者の人数とが一致した場合は警告の対象外とし、前記検出部が検出した人数と前記識別装置が識別した前記特定の作業者の人数とが一致しない場合は前記警告部によって前記作業車両の運転者に警告する安全システム制御部とを備えた構成としたものである。
【0007】
この場合、例えば、作業経験が豊富で、安全教育を受けて安全意識の高い作業者を特定の作業者に指定して予め識別装置に記憶しておき、作業車両の運転中には、警告エリア内で作業する特定の作業者を識別装置で識別し、前記検出部が前記警告エリア内に人を検出したときに前記識別装置が前記特定の作業者であるか否かを識別し、前記検出部が検出した人数と前記識別装置が識別した前記特定の作業者の人数とが一致した場合は警告の対象外とするようにすれば、安全意識の低い作業者や来訪者に対する安全性を優先して警告エリアを広めに設定しても、警告エリア内で特定の作業者のみが作業する場合は、作業車両の運転者に警告が発せられることがなく、作業車両の運転者は警告に煩わされずに作業を続けることができる。
【0008】
一方、警告エリア内に特定の作業者以外の人(安全意識の低い作業者や来訪者)がいる場合は、前記検出部が検出した人数と前記識別装置が識別した前記特定の作業者の人数とが一致しないため、作業車両の運転者に警告が発せられるようになっている。これにより、作業車両の運転者は、警告が発せられたときには、警告エリア内に特定の作業者以外の人がいることに確実に気付いて注意するようになり、特定の作業者以外の人に対する安全性を向上させながら、警告エリア内で特定の作業者のみが作業するときの警告の発生を防いで、作業車両による作業能率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は実施例1の作業車両の周囲に設定した警告エリアを示す平面図である。
【
図2】
図2は実施例1の作業車両安全システムの電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は実施例1の安全システム制御プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は実施例2の作業車両の周囲に設定した第1警告エリアと第2警告エリアを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本明細書に開示した2つの実施例1,2を説明する。
【実施例1】
【0011】
実施例1を
図1乃至
図3に基づいて説明する。
まず、
図1及び
図2に基づいて作業車両11の安全システムの構成を説明する。
【0012】
作業車両11は、例えば工場敷地内や工場建物内の作業場所内を移動や旋回するフォークリフト、搬送車、高所作業車等であったり、或は、建設・土木工事現場の作業場所内を移動や旋回するブルドーザー、クレーン車、バックホー、ホイルローダー等であっても良い。
【0013】
この作業車両11の周囲の所定距離以内のエリアは、警告エリア12となっている。この警告エリア12の広さは、安全教育を受けていない安全意識の低い作業者Cや来訪者D(見学者や配送業者等)に対する安全性を優先して広めに設定されている。作業車両11の1箇所又は複数箇所には、警告エリア12内にいる全ての人を検出する検出部13が設けられている。この検出部13は、人感センサ、エリアセンサ、レーザセンサ、モーションセンサのいずれかを用いて構成されている。更に、検出部13は、警告エリア12内に複数人いる場合には、その人数も検出できるように構成されている。
【0014】
作業場所内で作業する特定の作業者Bは、識別信号を送信するワイヤレス送信機14を所持する。このワイヤレス送信機14は、例えば、ブルートゥース(登録商標)等の近距離無線送信機、RFIDタグ等で構成されている。ここで、特定の作業者Bは、作業経験が豊富で、安全教育を受けて安全意識の高い作業者であり、作業場所の管理責任者によって指定される。特定の作業者Bには、管理責任者からワイヤレス送信機14が付与される。
【0015】
作業車両11には、ワイヤレス送信機14から送信される識別信号を受信する受信機15が設けられ、この受信機15で受信した識別信号の受信レベルに基づいて当該ワイヤレス送信機14を持つ特定の作業者Bが警告エリア12内にいるか否かを識別するようになっている。特定の作業者Bが複数人いる場合は、特定の作業者Bの各々に固有の識別信号が割り当てられる。これにより、警告エリア12内に複数の特定の作業者Bがいる場合は、受信機15で受信した異なる識別信号の数によって特定の作業者Bの人数を検出できるようになっている。
【0016】
作業車両11には、検出部13で警告エリア12内にいる警告対象の人を検出したときに作業車両11の運転者Aに警告表示及び/又は警告音や音声で警告する警告部16が設けられている。ここで、警告対象の人は、特定の作業者B以外の人であり、具体的には安全教育を受けていない安全意識の低い作業者Cや来訪者Dである。
【0017】
作業車両11には、上述した安全システムを制御する安全システム制御部17が設けられている。この安全システム制御部17は、ワイヤレス送信機14と受信機15との通信結果に基づいて警告エリア12内で作業する特定の作業者Bを識別する識別装置としても機能する。
【0018】
安全システム制御部17は、1台又は複数台のコンピュータ(CPU)によって構成され、作業車両11の運転中に
図3の安全システム制御プログラムを所定周期で繰り返し実行することで、検出部13によって警告エリア12内への人の出入りを監視して、警告エリア12内で特定の作業者B以外の人(安全教育を受けていない安全意識の低い作業者Cや来訪者D)を検出したときに警告部16によって作業車両11の運転者Aに警告表示及び/又は警告音や音声で警告する。この際、特定の作業者B以外の人の位置を示して警告するようにしても良い。以下、
図3の安全システム制御プログラムの処理内容を説明する。
【0019】
安全システム制御部17は、作業車両11の運転中に
図3の安全システム制御プログラムを起動すると、まず、ステップ101で、検出部13が警告エリア12内で人を検出したか否かを判定し、人を検出していなければ、警告する必要がないため、そのまま本プログラムを終了する。
【0020】
その後、検出部13が警告エリア12内で人を検出した時点で、ステップ101からステップ102に進み、受信機15の受信結果に基づいて警告エリア12内に特定の作業者Bがいるか否かを判定する。その結果、警告エリア12内に特定の作業者Bがいないと判定した場合、つまり検出部13が警告エリア12内で検出した人が全て特定の作業者B以外の人(安全教育を受けていない安全意識の低い作業者Cや来訪者D)であると判定した場合には、ステップ104に進み、警告部16によって作業車両11の運転者Aに警告表示及び/又は警告音や音声で警告する。
【0021】
一方、上記ステップ102で、受信機15の受信結果に基づいて警告エリア12内に特定の作業者Bがいると判定した場合には、ステップ103に進み、検出部13が検出した警告エリア12内の人数が受信機15の受信結果に基づいて識別された特定の作業者Bの人数よりも多いか否かで、警告エリア12内に特定の作業者B以外の人がいるか否かを判定する。その結果、このステップ103で、検出部13が検出した警告エリア12内の人数が特定の作業者Bの人数よりも多いと判定した場合、すなわち警告エリア12内に特定の作業者B以外の人がいると判定した場合には、ステップ104に進み、警告部16によって作業車両11の運転者Aに警告表示及び/又は警告音や音声で警告する。
【0022】
これに対し、上記ステップ103で、検出部13が検出した警告エリア12内の人数が特定の作業者Bの人数よりも多くないと判定した場合(具体的には検出部13が検出した警告エリア12内の人数が特定の作業者Bの人数と一致すると判定した場合)には、警告エリア12内にいる人が全て特定の作業者Bである(警告は不要)と判断して、本プログラムを終了する。
【0023】
以上説明した本実施例1では、安全教育を受けて安全意識の高い作業者が特定の作業者Bに指定され、この特定の作業者Bは、識別信号を送信するワイヤレス送信機14を所持する。そして、作業車両11の運転中に検出部13が警告エリア12内で人を検出したときには、受信機15の受信結果に基づいて警告エリア12内にいる人が全て特定の作業者Bであるか否かを判定し、警告エリア12内にいる人が全て特定の作業者Bである場合には、警告を行わず、警告エリア12内に特定の作業者B以外の人がいる場合のみ、警告部16によって作業車両11の運転者Aに警告表示及び/又は警告音や音声で警告するようにしたので、特定の作業者B以外の人である、安全意識の低い作業者Cや来訪者Dに対する安全性を優先して警告エリア12を広めに設定しても、警告エリア12内で特定の作業者Bのみが作業する場合は作業車両11の運転者Aに警告が発せられることがなく、作業車両11の運転者Aは警告に煩わされずに作業を続けることができる。
【0024】
一方、警告エリア12内に特定の作業者B以外の人がいる場合は、作業車両11の運転者Aに警告が発せられるようになっている。これにより、作業車両11の運転者Aは、警告が発せられたときには、警告エリア12内に特定の作業者B以外の人がいることに確実に気付いて注意するようになり、特定の作業者B以外の人である、安全意識の低い作業者Cや来訪者Dに対する安全性を向上させながら、警告エリア12内で特定の作業者Bのみが作業するときの警告の発生を防いで、作業車両11による作業能率を向上させることができる。
【0025】
尚、本実施例1では、識別信号を送信するワイヤレス送信機14を特定の作業者Bに所持させ、作業車両11に設けられた受信機15で識別信号を受信することで特定の作業者Bを識別すると共に、受信した識別信号の信号レベルに基づいて特定の作業者Bが警告エリア12内であるか否かを判定するようにしたが、特定の作業者Bに持たせた位置測位端末と作業車両11に設けられた位置測位端末とからなる位置測位システムによって特定の作業者Bが警告エリア12内にいるか否かを識別するようにしても良い。
【0026】
ここで、作業場所が屋外の場合は、GPS衛星を使用した位置測位が可能であるため、特定の作業者BにGPS発信機(位置測位端末)を所持させ、作業車両11に設けられた位置測位端末でGPS発信機から発信された位置情報を携帯電話通信網等を介して受信して特定の作業者Bの位置を測定するようにしても良い。
【0027】
一方、作業場所が屋内の場合は、GPS衛星の信号を受信できないため、位置測位システムとしては、例えば、UWB(Ultra Wide Band :超広帯域)無線を利用したUWB測位システム、人の耳では聞き取れない超音波を利用した音波測位システム、人には見えない高速の点滅パルスを利用する可視光測位システム等を使用するようにすれば良い。
【0028】
UWB測位システムを使用する場合は、識別信号をUWB電波で発信するタグ(位置測位端末)を特定の作業者Bに所持させ、作業車両11に所定間隔で設置された複数のセンサ(位置測位端末)がタグからのUWB電波を受信することで、特定の作業者Bを識別すると共に、電波の入射角度や到達時間差によって特定の作業者Bの位置(タグの位置)を測定する。
【0029】
音波測位システムを使用する場合は、人の耳では聞き取れない超音波で識別信号を発信するスピーカ(位置測位端末)を特定の作業者Bに所持させ、作業車両11に設けたマイク(位置測位端末)で超音波を受信することで、特定の作業者Bを識別してその位置(スピーカの位置)を測定する。
【0030】
可視光測位システムを使用する場合は、人には見えない高速の点滅パターンで識別信号を発信するLED等の点滅器(位置測位端末)を特定の作業者Bに所持させ、作業車両11に設けたカメラやイメージセンサ等の位置測位端末で点滅パターンを受信することで、特定の作業者Bを識別してその位置(点滅器の位置)を測定する。
【0031】
また、警告エリア12内にいる人を検出する検出部13は、人感センサ、エリアセンサ、レーザセンサ、モーションセンサ等に限定されず、作業車両11に設けられたカメラで作業車両11の周囲を撮像し、その画像を処理することで警告エリア12内にいる人とその位置を検出して、警告エリア12内にいる人を検出するようにしても良い。この場合、カメラとして、認識対象までの距離を測定できるステレオカメラ(3Dカメラ)を使用すれば、警告エリア12内にいる人の位置を精度良く検出することができる。
【0032】
警告エリア12内にいる人を検出する検出部13としてステレオカメラ等のカメラを使用する場合は、特定の作業者Bを識別する識別装置を顔認識システムで構成しても良い。この場合、特定の作業者Bの顔の画像データを登録したデータベースを備え、警告エリア12内にいる人を検出した場合には、カメラの画像から得られた顔の画像を前記データベースに登録されている特定の作業者Bの顔の画像データと照合して警告エリア12内にいる人が特定の作業者Bであるか否かを識別するようにすれば良い。
【実施例2】
【0033】
次に、
図4を用いて実施例2を説明する。但し、上述した実施例1と実質的に同じ部分については同一符号を付して説明を省略又は簡略化し、主として異なる部分について説明する。
【0034】
前記実施例1では、作業車両11の周囲の所定距離以内の警告エリアは、1つの警告エリア12としたが、
図4に示す実施例2では、警告エリアを外側の第1警告エリア21と内側の第2警告エリア22とに区分している。
【0035】
安全システム制御部17は、外側の第1警告エリア21では、前記実施例1と同様の識別装置で識別された特定の作業者Bを警告の対象外とし、検出部13によって外側の第1警告エリア21内で特定の作業者B以外の人を検出したときに警告部16によって作業車両11の運転者Aに警告表示及び/又は警告音や音声で特定の作業者B以外の人の位置を示して警告する。
【0036】
一方、安全システム制御部17は、内側の第2警告エリア22では、特定の作業者Bも警告の対象とし、検出部13によって内側の第2警告エリア22内で人を検出したときに警告部16によって作業車両11の運転者Aに警告表示及び/又は警告音や音声で内側の第2警告エリア22内の全ての人の位置を示して警告する。
【0037】
更に、安全システム制御部17は、警告部16によって内側の第2警告エリア22で警告する場合は、外側の第1警告エリア21で警告する場合よりも強く警告する。この際、警告表示の場合は、外側の第1警告エリア21では例えば黄色で警告表示し、内側の第2警告エリア22では、黄色より目立つ赤色で警告表示するというように、警告表示の色を外側の第1警告エリア21と内側の第2警告エリア22とで切り替える。警告音や音声の場合は、内側の第2警告エリア22の音量を外側の第1警告エリア21の音量よりも大きくする。
【0038】
以上説明した本実施例2では、安全教育を受けていない安全意識の低い作業者Cや来訪者Dに対する安全性を優先して外側の第1警告エリア21を広めに設定することで、前記実施例1と同様の効果を得ることができる。しかも、内側の第2警告エリア22では、特定の作業者Bも警告の対象とし、特定の作業者Bが内側の第2警告エリア22内に入った場合には、作業車両11の運転者Aに警告するようにしたので、特定の作業者Bが作業車両11に接近し過ぎた場合には、作業車両11の運転者Aに警告することができ、特定の作業者Bに対する安全性も向上できる。
【0039】
尚、本発明は、上記実施例1,2に限定されず、例えば、
図3の安全システム制御プログラムの処理手順を変更しても良い等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できることは勿論である。
【符号の説明】
【0040】
11…作業車両、12…警告エリア、13…検出部、14…ワイヤレス送信機、15…受信機、16…警告部、17…安全システム制御部、21…外側の第1警告エリア、22…内側の第2警告エリア、A…運転者、B…特定の作業者、C…特定の作業者以外の作業者、D…来訪者