(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】作業車、特にトラクタのための駆動システムの運転方法
(51)【国際特許分類】
B60W 10/10 20120101AFI20231006BHJP
B60W 10/18 20120101ALI20231006BHJP
B60W 10/02 20060101ALI20231006BHJP
B60W 10/184 20120101ALI20231006BHJP
B60W 10/16 20120101ALI20231006BHJP
B60W 10/119 20120101ALI20231006BHJP
B60K 23/08 20060101ALI20231006BHJP
B60K 23/04 20060101ALI20231006BHJP
B60T 7/04 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
B60W10/00 126
B60W10/00 124
B60W10/184
B60W10/16
B60W10/02
B60W10/119
B60K23/08 C
B60K23/04 E
B60T7/04 D
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018187113
(22)【出願日】2018-10-02
【審査請求日】2021-09-21
(31)【優先権主張番号】A 50839/2017
(32)【優先日】2017-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(73)【特許権者】
【識別番号】597083976
【氏名又は名称】アー・ファウ・エル・リスト・ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】AVL LIST GMBH
【住所又は居所原語表記】HANS-LIST-PLATZ 1,A-8020 GRAZ,AUSTRIA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】藤本 義知
(72)【発明者】
【氏名】北村 悠貴
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・パックマイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ・ヘンペル
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ベイヤー
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-043284(JP,A)
【文献】特開昭63-090434(JP,A)
【文献】特表2005-526647(JP,A)
【文献】特開2004-224164(JP,A)
【文献】特開昭59-114147(JP,A)
【文献】特開平05-016689(JP,A)
【文献】実開昭56-056429(JP,U)
【文献】特開昭54-038028(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0250236(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 ~ 10/198
B60K 23/00 ~ 23/08
B60T 7/00 ~ 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車(1)、特にトラクタのための駆動システム(2)の運転方法であって、
前記作業車(1)の少なくとも1つの操向ブレーキモードにおいて、前記作業車(1)の少なくとも1つの左ブレーキ(5)と少なくとも1つの右ブレーキ(6)とが互いに独立に操作され、前記作業車(1)の少なくとも1つのブレーキモードにおいて、前記作業車(1)の前記左ブレーキ(5)と前記右ブレーキ(6)とが一体化されて操作されるように構成した方法において、
少なくとも1つの第一センサ(5a、6a)によって、左ブレーキ(5)または右ブレーキ(6)が有効化となっているか否かが検出されて、ブレーキの有効化を示すステータス(BSL、BSR)に関する第一情報が電子制御ユニット(ECU)に送信され、
第二センサ(10a)によって、前記左ブレーキ(5)と前記右ブレーキ(6)とが一体化となっているか否かが検出されて、前記左ブレーキ(5)と前記右ブレーキ(6)との間の一体化を示すステータス(BSK)に関する第二情報が前記電子制御ユニット(ECU)に送信され、
前記第一情報および前記第二情報に基づいて前記電子制御ユニット(ECU)によって、少なくとも1つの安定化手段が実行されるか否かが決定され、
前記安定化手段は、前記作業車(1)における左側の駆動輪(4a)と右側の駆動輪(4b)との間に設けられ、有効化により左右の前記駆動輪(4a、4b)の回転数を同期させる切換式のディファレンシャルロック(DL)の無効化の実現手段であ
り、
前記第一情報に基づいて、前記左ブレーキ(5)及び前記右ブレーキ(6)のうちの一方の有効化が確認され、かつ、前記左ブレーキ(5)及び前記右ブレーキ(6)のうちの他方の無効化が確認される場合において、前記第二情報に基づいて、前記左ブレーキ(5)と前記右ブレーキ(6)との一体化が確認されるときに、前記電子制御ユニット(ECU)によって、動作中の前記ディファレンシャルロック(DL)は有効化されたままであり、
前記第一情報に基づいて、前記左ブレーキ(5)及び前記右ブレーキ(6)のうちの一方の有効化が確認され、かつ、前記左ブレーキ(5)及び前記右ブレーキ(6)のうちの他方の無効化が確認される場合において、前記第二情報に基づいて、前記左ブレーキ(5)と前記右ブレーキ(6)との切り離しが確認されるときに、前記電子制御ユニット(ECU)によって、動作中の前記ディファレンシャルロック(DL)は無効化されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記安定化手段は、パートタイム全輪駆動(AWD)の有効化の実現手段であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記安定化手段は、前記作業車(20)の駆動輪(4a、4b)の駆動源(20)からの遮断の実現手段であることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
第三センサ(9a)によって、ハンドブレーキ(9)が有効化となっているか否かが検出されて、前記ハンドブレーキの有効化を示すステータス(BSH)に関する第三情報が前記電子制御ユニット(ECU)に送られることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの第一情報に基づいて、前記左ブレーキ(5)および/または前記右ブレーキ(6)の無効化が確認されると共に、前記第二情報に基づいて、前記左ブレーキ(5)と前記右ブレーキ(6)との切り離しが確認される場合に、前記電子制御ユニット(ECU)によって、全輪駆動(AWD)が無効化されることを特徴とする請求項2~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
第三情報に基づいて、ハンドブレーキ(9)の無効化も確認される場合にのみ、制御ユニットによって、前記全輪駆動(AWD)が無効化されることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記第一情報に基づいて、前記左ブレーキ(5)および前記右ブレーキ(6)の無効化が確認されると共に、第三情報に基づいて、ハンドブレーキ(9)の無効化が確認される場合に、前記電子制御ユニット(ECU)によって、全輪駆動(AWD)が無効化されることを特徴とする請求項2~6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの第一情報に基づいて、前記左ブレーキ(5)および/または右ブレーキ(6)の有効化が確認されると共に、前記第二情報にもとづいて、前記左ブレーキ(5)と前記右ブレーキ(6)との一体化が確認される場合に、前記電子制御ユニット(ECU)によって、全輪駆動(AWD)が有効化されることを特徴とする請求項2~7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
第三情報に基づいて、ハンドブレーキ(9)の有効化が確認される場合に、電気制御ユニット(ECU)によって、全輪駆動(AWD)が有効化されることを特徴とする請求項4~8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前記第一情報に基づいて、前記左ブレーキ(5)と前記右ブレーキ(6)との同時有効化または無効化が確認される場合に、前記電子制御ユニット(ECU)によって、動作中の前記ディファレンシャルロック(DL)は有効化されたままであることを特徴とする請求項1~
9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
実車速(VS)が所定の閾値を上回る場合に、前記電子制御ユニット(ECU)によって、動作中の前記ディファレンシャルロック(DL)は無効化されることを特徴とする請求項1~
10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
前記作業車(1)の実際のステアリング角(SA)が所定の閾値を上回る場合に、前記電子制御ユニット(ECU)によって、動作中の前記ディファレンシャルロック(DL)は無効化されることを特徴とする請求項1~
11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
前記第一情報に基づいて、前記左ブレーキ(5)と前記右ブレーキ(6)との同時有効化が確認される場合および/または前記第二情報に基づいて、前記左ブレーキ(5)と前記右ブレーキ(6)との一体化が確認される場合に、前記電子制御ユニット(ECU)によって、駆動源(20)が前記駆動輪(4a、4b)から遮断されることを特徴とする請求項3~
12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
前記第一情報に基づいて、前記左ブレーキ(5)と前記右ブレーキ(6)との同時無効化が確認される場合に、前記電子制御ユニット(ECU)によって、駆動源(20)が前記駆動輪(4a、4b)に連結されるかまたは前記駆動輪と連結されたままであることを特徴とする請求項3~
13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
前記第一情報に基づいて、前記左ブレーキ(5)または前記右ブレーキ(6)の有効化が確認されると共に、前記第二情報に基づいて、前記左ブレーキ(5)と前記右ブレーキ(6)との切り離しが確認される場合に、前記電子制御ユニット(ECU)によって、駆動源(20)が前記駆動輪(4a、4b)に連結されるかまたは前記駆動輪と連結されたままであることを特徴とする請求項3~
14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
作業車(1)、特にトラクタのための駆動システム(2)であって、
前記作業車(1)の少なくとも1つの操向ブレーキモードにおいて、前記作業車(1)の少なくとも1つの左ブレーキ(5)と少なくとも1つの右ブレーキ(6)とが互いに独立に操作可能であり、前記作業車(1)の少なくとも1つのブレーキモードにおいて、前記作業車(1)の前記左ブレーキ(5)と前記右ブレーキ(6)とが一体化されて操作可能であるように構成した駆動システムにおいて、
少なくとも1つの第一センサ(5a、6a)によって、前記左ブレーキ(5)または右ブレーキ(6)が有効化となっているか否かが検出可能であって、ブレーキの有効化を示すステータス(BSL、BSR)に関する第一情報が少なくとも1つの第一情報送信路(5b、6b)を経て電子制御ユニット(ECU)に送信可能であり、
第二センサ(10a)によって、前記左ブレーキ(5)と前記右ブレーキ(6)とが一体化となっているか否かが検出可能であって、前記左ブレーキ(5)と右ブレーキ(6)との間の一体化を示すステータス(BSK)に関する第二情報が第二情報送信路(10b)を経て前記電子制御ユニット(ECU)に送信可能であり、
前記電子制御ユニット(ECU)が、前記第一情報および前記第二情報に応じて少なくとも1つの安定化装置の有効化または無効化に関する決定を行なうためのロジックユニット(12)を有し、
少なくとも1つの安定化装置は、前記作業車(1)における左側の駆動輪(4a)と右側の駆動輪(4b)との間に設けられ、有効化により左右の前記駆動輪(4a、4b)の回転数を同期させる切換式のディファレンシャルロック(DL)として構成され
、
前記第一情報および前記第二情報に応じて、前記操向ブレーキモードにおいて、前記ロジックユニット(12)によって、前記ディファレンシャルロック(DL)が無効化され、
前記第一情報に基づいて、前記左ブレーキ(5)及び前記右ブレーキ(6)のうちの一方の有効化が確認され、かつ、前記左ブレーキ(5)及び前記右ブレーキ(6)のうちの他方の無効化が確認される場合において、前記第二情報に基づいて、前記左ブレーキ(5)と前記右ブレーキ(6)との一体化が確認されるときに、前記ロジックユニット(12)によって、動作中の前記ディファレンシャルロック(DL)は有効化されたままであり、
前記第一情報に基づいて、前記左ブレーキ(5)及び前記右ブレーキ(6)のうちの一方の有効化が確認され、かつ、前記左ブレーキ(5)及び前記右ブレーキ(6)のうちの他方の無効化が確認される場合において、前記第二情報に基づいて、前記左ブレーキ(5)と前記右ブレーキ(6)との切り離しが確認されるときに、前記ロジックユニット(12)によって、動作中の前記ディファレンシャルロック(DL)は無効化されることを特徴とする駆動システム。
【請求項17】
少なくとも1つの安定化装置はパートタイム全輪駆動(AWD)として構成されていることを特徴とする請求項
16記載の
駆動システム。
【請求項18】
少なくとも1つの安定化装置は、前記作業車(1)の駆動源(20)と前記駆動輪(4a、4b)との間の駆動トレイン(21)における遮断クラッチ(CL)として構成されていることを特徴とする請求項
16または
17記載の
駆動システム。
【請求項19】
第三センサ(9a)によって、前記作業車(1)のハンドブレーキ(9)が有効化となっているか否かが検出可能であり、前記ハンドブレーキ(9)の有効化を示すステータス(BSH)に関する第三情報が第三情報送信路を経て前記電子制御ユニット(ECU)に送信可能であることを特徴とする請求項
16~
18のいずれか一項記載の駆動システ
ム。
【請求項20】
前記左ブレーキ(5)および前記右ブレーキ(6)のステータス(BSL、BSR)を検出するためにそれぞれ第一センサ(5a、6a)が設けられていることを特徴とする請求項
16~
19のいずれか一項記載の駆動システ
ム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車、特に、トラクタのための駆動システムの運転方法であって、作業車の少なくとも1つの操向ブレーキモードにおいて、作業車の少なくとも1つの左ブレーキと少なくとも1つの右ブレーキとが互いに独立に操作され、作業車の少なくとも1つのブレーキモードにおいて、作業車の左ブレーキと右ブレーキとが一体化されて操作されるように構成した方法に関する。本発明はさらに、上記方法を実施するための駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
標準的に、トラクタのブレーキシステムは次のように、つまり、低速の車速において小さな回転半径を描くための操舵を支援し得るようにすべく、操向ブレーキモードにおいてトラクタの片側の車輪のみを制動することができるように構成されている(操向ブレーキ)。そのため、ほとんどの場合に、たとえば道路走行時に、ブレーキモードにおいて両側車輪を制動するために、通例、機械的もしくは電子的に一体化可能な二体式のブレーキペダルが設けられる。双方のブレーキペダルが切り離されている場合には、トラクタは、左ブレーキペダルのみまたは右のみブレーキペダルが操作されることにより、操向ブレーキによって操向可能である。低車速で操向ブレーキの有効化となっている間は、全輪駆動は、駆動トレインに応力付加が生じ得るために、好ましくない。
【0003】
特に、そのフロントブレーキが独立した摩擦ブレーキなしで形成されているパートタイム全輪駆動のトラクタおよび二輪駆動と四輪駆動との切換えが可能なトラクタの場合、ブレーキモードにおけるブレーキ挙動を改善するために、四輪駆動への切換えが行なわれる。それゆえ、たとえば特許文献1から、左右の車輪ブレーキ用のブレーキペダルが一緒に操作されると、二輪駆動から四輪駆動へ切換えられるトラクタのための車輪駆動システムが知られている。その際、左右の操向ブレーキが有効化され、四輪駆動が動作する。したがって、専用のブレーキなしに形成されている車輪は、ブレーキペダルが操作されると、駆動側において常に共通して制動される。
【0004】
トラクタは、さらに、ほとんどの場合、少なくとも1つの左駆動輪と少なくとも1つの右駆動輪との間で一体駆動する回転連結を作り出して、駆動輪の回転数を同期させるために、ディファレンシャルロックを標準装備している。これによって、特に、地面が固くない場合、たとえば農作業に際して、車両の直進走行挙動およびトラクションが向上する。さらに、ブレーキ時において、たとえば不均等なブレーキ摩耗によって生じる車両の左側と右側との間の制動力の相違は、ディファレンシャルロックを有効化することによって解消できる。
【0005】
ただし、特にグリップの良い地面でのカーブ走行に際し、駆動トレインの応力を低下させ、車両の操向性を向上させると共に、駆動輪のタイヤ摩耗を減少させるためには、ディファレンシャルロックの無効化が好適である。同じ理由から、通例、操向ブレーキが無効化となっている場合にのみ、ディファレンシャルロックの有効化が可能である。
【0006】
たとえば、ブレーキシリンダに接続されたセンサを通じて、左または右のブレーキが互いに独立してまたは共通して操作されるか否かを確認することが可能である。ただし、何らかの理由から、左側または右側のセンサがブレーキステータスを検知するために機能しない場合には、操向ブレーキが動作中でなくとも、制動プロセスの間、全輪駆動および/またはディファレンシャルロックは言うまでもなく無効化されたままとなる。これは一方で、前車軸が後車軸と共に共通制動されないことから、トラクタの制動挙動を大幅に劣化させる。他方で、摩擦状態が異なるせいで左右駆動輪間の回転数差がもはや調整されないために、特に、地面が固くない場合、トラクタの作業能力、トラクションおよび直進走行挙動が大幅に劣化してしまう。
【0007】
逆に、センサが故障している場合には、ブレーキ運転の終了に際しまたは操向ブレーキを実施するための片ブレーキの操作に際し、全輪駆動またはディファレンシャルロックの無効化は保証されず、そのため、駆動トレインの機械的ストレスによる損傷を排除できない。
【0008】
オートマチックトランスミッションまたは自動化されたマニュアルトランスミッションの場合、作業車を停止させるために双方のブレーキが有効化となっているとの情報がトランスミッションによって求められる。左のブレーキも右のブレーキも共に有効化となっていると認識される場合には、たとえば内燃機関によって構成された駆動源は、駆動源の停止ないしエンストを回避すべく、駆動トレインから遮断される。トラクタの場合、通例、内燃機関によって油圧補助システムが駆動されているので、内燃機関が停止すると、これらの補助システムも停止することになる。他方、操向ブレーキモードにおいて、駆動源は、作業車の推進を可能とするため、引き続き駆動トレインに連結されたままとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、誤った制動信号から結果する不安定な走行状態を回避し、特に、ブレーキ運転および/または操向ブレーキ運転における作業車のドライバビリティーおよび作業能力を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は、本発明により、冒頭に述べた方法すなわち、好ましくは少なくとも1つの第一センサによって、左ブレーキまたは右ブレーキが有効化となっているか否かが検出されて、ブレーキの有効化を示すステータスに関する第一情報が電子制御ユニットに送信され、好ましくは第二センサによって左ブレーキと右ブレーキとが一体化となっているか否かが検出されて、左ブレーキと右ブレーキとの間の一体化を示すステータスに関する第二情報が電子制御ユニットに送信され、第一情報および第二情報に基づいて電子制御ユニットによって、少なくとも1つの安定化手段が実行されるか否か、つまり、特には、全輪駆動、ディファレンシャルロックまたはクラッチが制御されるか否かが決定されることによって達成される。
【0012】
第一情報と第二情報からなる組み合わせによって、たとえば第一センサが故障していても、ブレーキモードおよび操向ブレーキモードの確実な認識が保証される。したがって、センサが故障していても、ディファレンシャルロック、全輪駆動または走行クラッチの確実な有効化または無効化が達成される。
【0013】
本発明の第1実施態様において、少なくとも1つの安定化手段は、パートタイム全輪駆動を有効化することにある。さらに、本発明の一実施態様において、好ましくは第三センサによって、ハンドブレーキが有効化となっているか否かが検出されて、ハンドブレーキの有効化を示すステータスに関する第三情報が電子制御ユニットに送られるように構成されている。
【0014】
好適には、第一センサが左ブレーキ用に、第一センサが右ブレーキ用に設けられている。第一センサはそれぞれ、ブレーキの油圧システムに接続された圧力センサまたは変位センサ、たとえば誘導センサ、ホールセンサまたは接触センサであってよく、該センサは二つの切換え状態に関する情報、つまり、無効化された状態を表す“0”および有効化された状態を表す“1”を供給する。第二センサはシンプルな接触センサ、誘導センサまたはホールセンサであってよく、該センサは第一ブレーキと第二ブレーキ間の一体化状態に関する情報、たとえば、切断を表す“0”および一体化を表す“1”を出力する。同様なことは第三センサにも当てはまり、該センサは出力信号、つまり、無効化されたハンドブレーキを表す“0”および有効化されたハンドブレーキを表す“1”を電子制御ユニットに送信する。
【0015】
その際、本発明の実施形態の1つにおいて、少なくとも1つの第一情報に基づいて、左ブレーキおよび/または右ブレーキの無効化が確認されると共に、第二情報に基づいて、左ブレーキと右ブレーキとの切り離しが確認される場合には、電子制御ユニットによって、全輪駆動は無効化されたままである。したがって、全輪駆動の無効化には、一方で、左および/または右ブレーキが無効化となっているとの条件と、他方で、第一および右ブレーキが互いに切り離されているとのさらに別の条件が満たされていなければならない。その際、第三情報に基づいて、ハンドブレーキの無効化も確認される場合にのみ、制御ユニットによって全輪駆動は無効化されたままとすることが特に好適である。他方、ハンドブレーキが操作される場合には、制動力が制動されていない車輪にも与えられるように、全輪駆動の無効化は行なわれない。むしろ、第三情報に基づいて、ハンドブレーキの有効化が確認される場合に、電子制御ユニットによって全輪駆動が有効化される。
【0016】
なお、全輪駆動の無効化とは、全輪駆動、たとえば四輪駆動から、もっと少ない数の駆動輪ないし駆動軸による駆動たとえば二輪駆動に切換えられることを意味する。逆に、全輪駆動の有効化とは、たとえば、もっと少数の駆動輪ないし駆動軸による駆動たとえば二輪駆動から、もっと多数の駆動輪ないし駆動軸による駆動への切換えが行なわれる。
【0017】
本発明のさらに別の実施形態において、第一情報に基づいて、左ブレーキおよび右ブレーキの無効化が確認されると共に、第三情報に基づいて、ハンドブレーキの無効化が確認される場合には、電子制御ユニットによって、全輪駆動も無効化される。こうしてすべてのブレーキが無効化となっている場合に、全輪駆動を、安全性を損なう危険なしに、無効化することが可能である。
【0018】
本発明のさらに別の実施態様において、少なくとも1つの第一情報に基づいて、左ブレーキおよび/または右ブレーキの有効化が確認されると共に、第二情報に基づいて、左ブレーキと右ブレーキとの一体化が確認される場合には、電子制御ユニットによって全輪駆動が有効化される。
【0019】
本方法を実施するには、左ブレーキ用の第一センサと右ブレーキ用のさらに別の第一センサとを備え、その際、第一センサによって、左ブレーキまたは右ブレーキが有効化となっているか否かを検出し得るように構成した駆動システムが適している。さらに、第一ブレーキと第二ブレーキとの間の一体化のステータスを検出することのできる第二センサが設けられている。オプショナルに、ハンドブレーキの有効化のステータスを確認することのできる第三センサも設けられていてよい。
【0020】
第一センサ、第二センサおよび第三センサは、第一情報送信路および第二情報送信路を介して、電子制御ユニットと接続されている。電子制御ユニットは、第一情報および第二情報に応じて、少なくとも1つの安定化手段の有効化または無効化に関する決定を行うために、ハードウェアまたはソフトウェアとして実現された決定構造ないしロジックユニットを有している。安定化手段は、全輪駆動、ディファレンシャルロックによりおよび/または駆動源と駆動輪との間の駆動トレインにおける遮断クラッチによって構成されてもよい。
【0021】
一体化を検出するセンサによって、左ブレーキと右ブレーキ間の一体化が有効化となっているかまたは無効化となっているかが検出されることにより、スイッチセンサが故障している場合にも、ステアリング制動が行なわれているか否かを確認することが可能である。操向ブレーキが行なわれている場合には、安定化手段は無効化される。ステアリング制動の認識は、本発明によれば、一体化センサの情報によって行なわれる。
【0022】
一方のブレーキ、したがって左ブレーキまたは右ブレーキが有効化となっていると共に、それぞれ他方のブレーキ、したがって右ブレーキないし左ブレーキが無効化されていれば、電子制御ユニットによって、作業車の操縦者が操向ブレーキを実行しようとしていることが認識される。場合、駆動トレインを保護するために、駆動軸の数が減少させられ、したがって、四輪駆動から二輪駆動への切換えが行なわれおよび/または左駆動輪と右駆動輪との間の一体的な回転連結が中止される。再び右ブレーキが左ブレーキと同期して協働操作されると、トラクタの全車輪における制動パワーを確保するために、再び全輪駆動の有効化が行なわれる。第一ブレーキおよび右ブレーキの非同期操作が終了させられ、場合により、その他の基本条件、たとえば、車速およびステアリング角も満たされていれば、左および右の駆動輪間の回転数を同期させるために、特にドライバーの要求に応じて、再びディファレンシャルロックの有効化を行なうことができる。
【0023】
すべてのブレーキが左および右のブレーキペダルの解除によって無効化されるか無効化となっている場合にも、ドライバーがマニュアル操作によって全輪駆動を求めた場合を除いて、再び全輪駆動を無効化すること、したがって、四輪駆動から二輪駆動への切換えを行なうことが可能である。
以下、本発明を制限するものではない図面によって示した実施形態に依拠して、本発明を詳細に説明する。各図は以下を示している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明による方法を実施するための駆動トレインを概略的に示す図である。
【
図2】第1実施態様によって本発明による方法を実施するための決定行列を示す図である。
【
図3】第一センサが故障している場合の全輪駆動の有効化または無効化に関する決定行列を示す図である。
【
図4】第二実施態様によって本発明による方法を実施するための決定行列を示す図である。
【
図5】第一センサが故障している場合のディファレンシャルロックの有効化または無効化に関する決定行列を示す図である。
【
図6】第三実施態様によって本発明による方法を実施するための決定行列を示す図である。
【
図7】第一センサが故障している場合の切換クラッチの有効化または無効化に関する決定行列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、たとえば内燃機関によって構成された駆動源20を備えた駆動システム2と、パートタイム全輪駆動AWDを備えた駆動トレイン21とを有する作業車1たとえばトラクタを概略的に示している。前車輪4c、4dに通じる駆動トレイン21の部分において、全輪駆動AWDを有効化または無効化し得る駆動切換え要素は符号11で示されている。駆動トレイン21において、駆動源20と駆動輪4a、4bとの間には、遮断クラッチCLが配置されている。さらに、駆動トレイン21において、少なくとも1つの左駆動綸4aと右駆動輪4bとの間には、切換式ディファレンシャルロックDLが配置されている。車軸、本実施形態において後車軸3の駆動輪4a、4bは機械式ブレーキ5、6を有している。作業車1の前輪は4c、4dで示されている。機械式ブレーキ5、6はブレーキペダル7、8を経て油圧式操作、または、ハンドブレーキ9を経てマニュアル式操作が可能である。
【0026】
全輪駆動AWD、ディファレンシャルロックDLおよび/または遮断クラッチCLは、作業車1の安定化手段を実施するための安定化装置として機能する。
【0027】
二輪駆動運転においては、後車軸3の駆動輪4a、4bのみが駆動され、全輪駆動運転ないし四輪駆動運転においては、すべての車輪4a、4b、4c、4dが駆動される。機械式ブレーキ5、6はブレーキペダル7、8を経て油圧式操作またはハンドブレーキ9を経てマニュアル式操作が可能である。左ブレーキ5および右ブレーキ6は、操向ブレーキモードを実現するために、左ブレーキペダル7ないし右ブレーキペダル8を経て別々に有効化することが可能である。これは作業車1の低速運転時の操向性を向上させる。左ブレーキ5および右ブレーキ6は、たとえば道路走行運転中に作業車1を通常ブレーキモードで運転するために、一体化装置10によって互いに一体化可能である。一体化装置10は、たとえば、左ブレーキペダル7と右ブレーキペダル8を一体化するための機械式連結要素によって形成することが可能である。
【0028】
左ブレーキ5および右ブレーキ6にはそれぞれ第一センサ5a、6aが配されており、該センサは、それぞれ第一情報送信路5b、6bを介して、左ブレーキ5のステータスBSLおよび右ブレーキ6のステータスBSRに関する第一情報を電子制御ユニットECUに送信する。さらに、たとえば、左ブレーキペダル7および右ブレーキペダル8の一体化装置10の領域には第二センサ10aが配置されており、該センサは、左ブレーキ5と右ブレーキ6との一体化を示すステータスBSKに関する第二情報を検出し、それを第二情報送信路10bを介して電子制御ユニットECUに供給する。第三センサ9aは、ハンドブレーキ9の操作のステータスBSHを検出する。第三情報は、第三情報送信路9bを介して、同じく電子制御ユニットに供給される。情報送信路5b、6b、9b、10bは有線であっても無線であってもよい。
【0029】
電子制御ユニットECUは、第一情報、第二情報および第三情報に応じて、少なくとも1つの安定化装置を有効化または無効化するように構成されたロジックユニット12を有している。いずれか1つの安定化装置の有効化により、それぞれの安定化手段を実現することが可能である。いずれの安定化手段も単独でまたは他の安定化手段と一緒に実行可能である。
【0030】
ロジックユニット12はソフトウェアによって実現されていても、ハードウェアによって実現されていてもよい。ロジックユニット12は
図2~7に示した決定行列を基礎としており、この決定行列においては、全輪駆動AWD、ディファレンシャルロックDLおよび/または遮断クラッチCLの有効化ないし無効化の作動条件として、左ブレーキのステータスBSL、右ブレーキのステータスBSR、一体化装置のステータスBSK、ハンドブレーキ9のステータスBSHならびに車両速度VSおよびステアリング角SAが考慮されている。
図2~7において、“0”はそれぞれ無効化状態を表し、“1”はそれぞれ有効化状態を表している。
【0031】
図2には、第一縦列の数字1~16によって、左ブレーキ5のステータス、右ブレーキ6のステータス、ハンドブレーキ9のステータス、左ブレーキ5と右ブレーキ6との間の一体化のステータス、BSL、BSR、BSH、BSKに関するセンサ5a、6a、9a、10aの情報のさまざまな組み合わせならびにそれからの結果である全輪駆動AWDの有効化に関する決定値が示されている。
【0032】
左ブレーキ5のステータスBSL=0および/または右ブレーキ6のステータスBSR=0は、左ブレーキ5ないし右ブレーキ6の無効化を示している。ただし、これは第一センサ5aまたは6aの誤作動に基づく可能性もある。それゆえ、付加的な決定条件として、左ブレーキ5と右ブレーキ6との間の一体化を示すステータスBSKに関する第二センサ10aの第二情報が援用される。さらに、ハンドブレーキ9のステータスBSHも、全輪駆動AWDの有効化または無効化に関する決定に利用される。
【0033】
全輪駆動AWDの無効化には、ハンドブレーキ9およびブレーキの少なくとも一方、したがって、左ブレーキ5および/または右ブレーキ6が無効化されていなければならない(
図2、横列1、9、11、13、参照)。
【0034】
その他のいずれの場合にも、制動力を作業車1のすべての車輪4個に伝えるために、全輪駆動AWDは有効化されるかまたは有効化されたままである(
図2、横列2~8、10、12、14~16、参照)。
【0035】
操向ブレーキモードにおける全輪駆動AWDの無効化により、安定した走行挙動が達成されると共に、駆動システム2の駆動トレインの損傷が確実に防止される。ブレーキモードにおける全輪駆動AWDの有効化により、作業車1のすべての車輪4個による制動が行われることによって安全性が高められる。他方、通常ブレーキモード運転における全輪駆動AWDの有効化により、車両1の安定した、制御可能かつ迅速なスローダウンを達成することができる。
【0036】
全輪駆動の有効化のための付加的な決定ユニットとしての第二センサ10aの使用により、全輪ブレーキとして機能する全輪駆動の堅牢性および信頼度の向上ならびに安定した走行挙動の達成が可能となる。
【0037】
図3から明らかなように、双方の第一センサ5a、6aのいずれか一方が少なくとも1つのブレーキペダルの操作を示し(BSL=1またはBSR=1)、さらに第二センサ10aが、左ブレーキ5と右ブレーキ6とが一体化となっていること(BSK=1)を示す場合には、全輪制動を可能にするための全輪駆動は、第一センサ5a、6aの一方が故障している場合にも有効化となる(AWD=1)。反対に、第二センサ10aが、第一のブレーキ5と右ブレーキ6との一体化が外されていること(BSK=0)を示すと直ちに、全輪駆動は無効化される(AWD=0)。
【0038】
図4には、第一縦列の数字1~10によって、左ブレーキ5のステータス、右ブレーキ6のステータス、左ブレーキ5と右ブレーキ6との間の一体化のステータスBSL、BSR、BSKに関するセンサ5a、6a、10aの情報のさまざまな組み合わせならびにそれからの結果であるディファレンシャルロックDLの有効化に関する決定が示されている。加えてさらに、決定条件として、車両速度VSおよびステアリング角SAが顧慮され、その際、それぞれ“-”は、車両速度VSないしステアリング角SAに関する実際値が所定の閾値を下回っていることを意味している。“+”は、車両速度VSないしステアリング角SAに関する実際値が所定の閾値を上回っていることを意味している。“X”は、BSL、BSR、VS、SA、BSKに関するステータスないし値が任意であることを意味している。
図4の横列9および10から、車両速度VSまたはステアリング角SAに関する値がそれぞれの所定の閾値を上回ると直ちに、ディファレンシャルロックDLは無効化されることが読み取られる。
【0039】
左ブレーキ5に関するステータスBSL=0および/または右ブレーキ6に関するステータスBSR=0は、左ブレーキ5ないし右ブレーキ6の無効化を示している。ただし、これは、第一センサ5aまたは6aの一方の誤作動に基づく可能性もある。それゆえ、付加的な決定条件として、左ブレーキ5と右ブレーキ6との間の一体化を示すステータスBSKに関する第二センサ10aの第二情報が援用される。
【0040】
ディファレンシャルロックDLの無効化には、ブレーキの少なくとも一方、したがって、左ブレーキ5および/または右ブレーキ6が無効化となっていると共に、一体化装置10も無効化、したがって、開放となっているか(
図4、横列6、7、参照)および/または車速VSおよび/またはステアリング角SAが所定の閾値を上回っていなければならない。
【0041】
その他のいずれの場合にも、ディファレンシャルロックDLは有効化されるかまたは有効化されたままである(
図4、数字1~5および8、参照)。
【0042】
操向ブレーキモードにて相対的に大きなステアリング角変位時ならびに相対的に高速の車速VS時におけるディファレンシャルロックDLの無効化により、駆動システム2の駆動トレイン2の損傷が防止されると共に、車両の高い安定性が達成されるため、走行方向変更を支障なく行なうことが可能である。低速直進走行にて、ブレーキペダル7、8が同期操作されるかまたはされない場合におけるディファレンシャルロックDLの有効化により、駆動輪4a、4bの回転数が同期されることによって、特に、地面が固くない場合、作業車1のトラクションおよびドライバビリティーが高められると同時に、作業車の安定性が高められる。
【0043】
第二センサ10aがディファレンシャルロックDLの有効化に関する付加的な決定条件として使用されることにより、駆動の堅牢性と信頼度ならびに作業車1の走行挙動の安定性の向上が可能となる。
【0044】
図5から明らかなように、双方の第一センサ5a、6aのいずれか一方が少なくともいずれか一方のブレーキペダル7、8の操作を示し(BSL=1またはBSR=1)、さらに加えて、第二センサ10aが、左ブレーキ5と右ブレーキ6とが一体化となっている(BSK=1)ことを示す場合には、ディファレンシャルロックDLは、第一センサ5a、6aの一方が故障している場合にも有効化となっている(DL=1)。反対に、第二センサ10aが、第一のブレーキ5と右ブレーキ6との一体化が外となっていること(BSK=0)を示すと直ちに、ディファレンシャルロックDLは無効化される(DL=0)。
【0045】
図6には、第1縦列の数字1~8によって、左ブレーキ5のステータス、右ブレーキ6のステータス、左ブレーキ5と右ブレーキ6との間の一体化のステータスBSL、BSR、BSKに関するセンサ5a、6a、10aの情報のさまざまな組み合わせ、ならびにそれからの結果である、駆動源20と駆動輪4a、4bとの間の駆動連結を生成または切断するための遮断クラッチCLの有効化ないし無効化に関する決定が示されている。その際、“0”は、遮断クラッチCLは操作されていないこと、したがって、駆動源20と駆動輪との間の駆動連結は切断されていないことを意味している。他方、“1”は、クラッチCLは開放されており、それゆえ、駆動源20は駆動輪4a、4bから切り離されていることを意味している。
【0046】
図6から、少なくとも一方のブレーキペダル7、8が操作され(BSL=1、BSR=1)、同時に、左ブレーキ5と右ブレーキ6との間の一体化が確認される(BSK=1)場合には、駆動源20は駆動輪4a、4bから切り離されていることが理解できる(横列6、7、8)。双方のブレーキペダル7、8が同時に操作される場合にも、遮断クラッチCLは有効化され、したがって、双方のブレーキペダル7、8間の一体化が存在しない場合にも開放される(横列4)。他方、双方のブレーキペダル7、8間の一体化が存在せず、少なくとも一方のブレーキペダル7、8が操作されない場合には、クラッチCLは無効化されたままであり、したがって、閉鎖されたままであり、それゆえ、駆動源20と駆動輪4a、4bとの間の駆動連結は維持される(横列1~3)。
【0047】
図7から明らかなように、双方の第一センサ5a、6aの一方が少なくとも一方のブレーキペダルの操作を示し(BSL=1またはBSR=1)、加えてさらに、第二センサ10aが左ブレーキ5と右ブレーキ6とが一体化となっていること(BSK=1)を示す場合には、遮断クラッチCLは、第一センサ5a、6aの一方が故障している場合にも開放され、それゆえ、駆動源20は駆動輪4a、4bから遮断される。したがって、通常ブレーキモードが存在し、操向ブレーキモードは存在しないと一義的に認識される。駆動輪4a、4bからの駆動源20の遮断により、駆動源20のエンストが確実に防止される。これによって、トラクタの農作業運転の連続的かつ安定した続行が保障される。