IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ノリタケカンパニーリミテドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】AgPdコアシェル粒子およびその利用
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/00 20220101AFI20231006BHJP
   B22F 1/05 20220101ALI20231006BHJP
   B22F 1/102 20220101ALI20231006BHJP
   B22F 1/14 20220101ALI20231006BHJP
   B22F 1/17 20220101ALI20231006BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20231006BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20231006BHJP
   H01B 5/00 20060101ALI20231006BHJP
   C22C 5/06 20060101ALN20231006BHJP
【FI】
B22F1/00 K
B22F1/05
B22F1/102
B22F1/14 600
B22F1/17
H01B1/00 C
H01B1/00 E
H01B1/22 A
H01B5/00 C
H01B5/00 E
C22C5/06 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018196532
(22)【出願日】2018-10-18
(65)【公開番号】P2020063487
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 慶樹
(72)【発明者】
【氏名】太田 敬子
(72)【発明者】
【氏名】菊川 結希子
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-118868(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180286(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00
H01B 5/00
H01B 1/00
H01B 1/22
C22C 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属元素の物質量を100mol%としたときのAgの物質量が90mol%~100mol%であるAgコア粒子と、金属元素の物質量を100mol%としたときのPdの物質量が80mol%~100mol%であって該Agコア粒子の表面の少なくとも一部を被覆するPdシェルとからなるAgPdコアシェル粒子を含み、
該AgPdコアシェル粒子が全体の80個数%以上である粉体材料であって、
前記AgPdコアシェル粒子の表面には、ヒドロキノン及び/又はキノン類が付着しており、
該粉体材料を所定の媒体に分散した状態において、動的光散乱法に基づくZ平均粒子径(DDLS)が0.1μm~2μmであり、且つ、動的光散乱法に基づく多分散指数(PDI)が0.4以下である、粉体材料。
【請求項2】
前記Z平均粒子径(DDLS)と、電界放出型走査電子顕微鏡像(FE-SEM像)に基づく平均粒子径(DSEM)との比であるDDLS/DSEMが、2以下である、請求項1に記載の粉体材料。
【請求項3】
前記AgPdコアシェル粒子の表面に、さらにポリビニルピロリドン(PVP)が付着していることを特徴とする、請求項1または2に記載の粉体材料。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の粉体材料と、
該粉体材料を分散させる媒体と、
を備える、導体ペースト。
【請求項5】
金属元素の物質量を100mol%としたときのAgの物質量が90mol%~100mol%であるAgコア粒子と、金属元素の物質量を100mol%としたときのPdの物質量が80mol%~100mol%であって該Agコア粒子の表面の少なくとも一部を被覆するPdシェルとからなるAgPdコアシェル粒子を製造する方法であって、
前記Agコア粒子を構成するための銀化合物を含む第1の反応液を調製する工程;
前記第1の反応液に、ヒドロキノンとポリビニルピロリドン(PVP)とをアルコール系溶媒に溶解したアルコール系溶液として調製された第1の還元剤を添加して還元処理を行うことにより、該反応液中に銀を主構成元素とするAgコア粒子を生成する工程、ここで前記第1の還元剤は、少なくともヒドロキノンを含む;
前記生成したAgコア粒子が分散した状態の分散液に前記Pdシェルを構成するためのパラジウム化合物を添加して第2の反応液を調製する工程;
前記第2の反応液に、第2の還元剤を添加して還元処理を行うことにより、該反応液中のAgコア粒子の表面にパラジウムを主構成元素とするPdシェルを形成する工程;
を包含する、AgPdコアシェル粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀(Ag)を主構成元素とするAg粒子(Agコア)の表面に、パラジウム(Pd)を主構成元素とするPdシェルが形成されたAgPdコアシェル粒子とその製造方法に関する。さらに本発明は、かかるAgPdコアシェル粒子を主体に構成される粉体材料および該粉体材料が媒体中に分散されたペースト状(スラリー状)の材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の産業分野において、機能性の付与やコスト削減などの観点からコアシェル粒子が用いられている。例えば、導体ペーストや触媒などの分野においては、Agを主構成元素とするAgコアの表面に、Pdを主構成元素とするPdシェルが形成されたAgPdコアシェル粒子の開発が進められている。以下の特許文献1には、塩化アンミン銀水溶液に還元剤を加えて銀粒子を形成した後、該銀粒子にパラジウムを被覆してパラジウム被覆銀粉を製造する方法が記載されている。
【0003】
ところで、近年の電子部品の小型化や電極の薄層化などの要請に伴い、電極膜等を形成するためのペースト状(スラリー状)組成物である導体ペースト用の粉体材料に関しては、該粉体材料中の主成分たる金属粒子の粒子径がより小さく、且つ、シャープな粒度分布を有していることが求められている。このため、AgPdコアシェル粒子を導体ペースト用の粉体材料の主成分として使用する場合には、シャープな粒度分布を維持しつつ当該コアシェル粒子の粒子径をサブミクロン領域に制御することが重要視されている。
【0004】
しかし、従来の方法でこの種のコアシェル粒子を製造すると、製造後のコアシェル粒子(典型的には一次粒子)同士の凝集や連結(ネッキング)が生じ、粒径の大きな凝集塊や連結(ネッキング)塊などの二次粒子が多量に形成されてしまうことがあった。かかる二次粒子は、複数の一次粒子同士がシェルによって固着されており、解砕できないほど強固であるため、得られた二次粒子の粒径は一次粒子のコアの粒径に比べて著しく大きくなり、かつ、粒径のばらつきが大きくなる原因になる。例えば、特許文献1に開示される技術では、Pdシェルによる連結自体を抑制することが困難である。特許文献1には、平均粒子径が0.4μm程度のパラジウム被覆銀粉(コアシェル粒子)が形成されるという旨が記載されている。しかし、特許文献1に記載の平均粒子径とは、走査型電子顕微鏡(SEM)によって評価された粒子径であり、一次粒子の粒子径を測定したものと考えられる。実際には、コアシェル粒子を含む粉体材料を製造すると、複数の一次粒子が固着した二次粒子が多量に形成されてしまうという問題が生じていた。
【0005】
一方、粉体材料に含まれる金属粒子の粒子径を小さくするための技術が非特許文献1に提示されている。かかる非特許文献1には、ポリビニルピロリドン(PVP)の存在下で金属粒子(Rh、Pdなど)を析出させることによって、表面がPVPによって保護された金属超微粒子を生成する技術が開示されている。このように、非特許文献1には、PVPが金属を微粒子として析出させる作用を有していることが示されている。
また、上述のPVPをコアシェル粒子の製造に用いる技術が非特許文献2、3に開示されている。例えば、非特許文献2では、先ず、硝酸銀とPVPとを溶解させた溶液を調製し、当該溶液からAgを析出させてAgコア粒子を生成している。そして、このAgコア粒子を含む分散液に硝酸パラジウムを溶解させた後に、Pdを析出させることによってAgコア粒子の表面にPdシェルを形成している。この非特許文献2では、かかる手順で得られたAgPd微粒子(コアシェル粒子)の平均粒径が約5.0nmである旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-176605号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】趙斌、戸嶋直樹、高分子論文集、Vol.46(1989)No.9、pp.551
【文献】第9回分子科学討論会講演要旨2P077
【文献】Nature nanotechnology,6,302(2011)Supplementary information
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した非特許文献2、3に記載の技術を実際に用いると、微小なPd単独粒子が多量に形成され易くなるという問題が生じ得る。具体的には、非特許文献2、3において、FE-SEM、EDX元素マッピングによるAg元素とPd元素の分布状態を確認すると、Pd単独粒子が多量に形成されている。このようなPd単独粒子を多く含む粉体材料からコアシェル粒子のみを取り出すことは極めて困難であるため、上述した非特許文献2、3の方法を実際の製造工程に適用すると、製造後の粉体材料に含まれるコアシェル粒子の割合(コアシェル粒子の収率)が大きく低下し、ひいては、コアシェル粒子特有の特性が十分に発揮されなくなり、また、製造効率の低下を招く虞がある。
【0009】
そこで本発明は、上述したようなAgPdコアシェル粒子を製造する場合の従来の問題点に鑑みて創出されたものであり、その主な目的は、AgPdコアシェル粒子の収率を低下させることなく、固着による二次粒子の形成を適切に抑制することによって、コアシェル粒子の粒子径がサブミクロン領域に制御されたAgPdコアシェル粒子を効率良く得ることができる技術を提供することである。さらには、かかるAgPdコアシェル粒子を主体に構成される粉体材料、ならびに該粉体材料が所定の分散媒に分散されたペースト状(スラリー状)の材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を実現するべく、本発明は、AgPdコアシェル粒子の製造方法を提供する。即ち、ここで開示される製造方法は、
銀を主構成元素とするAgコア粒子と、該Agコア粒子の表面の少なくとも一部を被覆するパラジウムを主構成元素とするPdシェルとからなるAgPdコアシェル粒子を製造する方法であって、
Agコア粒子を構成するための銀化合物を含む第1の反応液を調製する工程;
第1の反応液に、第1の還元剤を添加して還元処理を行うことにより、該反応液中に銀を主構成元素とするAgコア粒子を生成する工程、ここで第1の還元剤は、少なくともヒドロキノンを含む;
上記生成したAgコア粒子が分散した状態の分散液にPdシェルを構成するためのパラジウム化合物を添加して第2の反応液を調製する工程;および
第2の反応液に、第2の還元剤を添加して還元処理を行うことにより、該反応液中のAgコア粒子の表面にパラジウムを主構成元素とするPdシェルを形成する工程;
を包含する製造方法である。
【0011】
本発明者は、Agコア粒子の生成用原料である銀化合物を含む第1の反応液に還元剤を添加して該銀化合物を還元処理してAgコア粒子を生成する際、ヒドロキノンを共存させておくことによって、生成されたAgコア粒子の表面にヒドロキノン及び/又はキノン類が存在することを見出し、本発明を完成するに至った。
なお、本明細書において「キノン類」には、2つのケトン構造を有する環状有機化合物(キノン化合物)、例えば、o-ベンゾキノン、p-ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン等が包含されるが、これらに限られない。本発明の内容から明らかであるが、例えば、上記還元処理の際に反応液中で生成され得るヒドロキノンの酸化誘導体や分解産物についても、ここで定義される「キノン類」に包含され得る物質である。
生成されるAgコア粒子の表面にヒドロキノン及び/又はキノン類が付着していることにより、その後のPdシェル形成工程においてPdイオンの還元析出が、該Agコア粒子の表面において選択的(優先的)に行われる。このため、ここで開示される製造方法によると、高い収率でAgPdコアシェル粒子を製造することができる。
また、Pdイオンの還元析出が、該Agコア粒子の表面において選択的(優先的)に行われることから、Pdシェル形成過程においてAgコア粒子間の接触点におけるPd析出が抑制される。このため、Pdシェル形成時の凝集やネッキングを防止して粒子径が小さく、或いはまた、粒度分布が狭く制御されたAgPdコアシェル粒子を製造することができる。
【0012】
ここで開示されるAgPdコアシェル粒子製造方法の好適な一態様では、上記第1の還元剤は、さらにポリビニルピロリドン(PVP)を含むことを特徴とする。
AgPdコアシェル粒子の製造において、PVPはAgおよびPdの何れに対しても親和性が高く、さらにヒドロキノンおよびキノン類に対しても高い親和性を有する高分子化合物である。このため、Agコア粒子の生成用原料である銀化合物を含む第1の反応液に還元剤を添加して該銀化合物を還元処理してAgコア粒子を生成する際、ヒドロキノンに加えてPVPを共存させておくことによって、生成されたAgコア粒子の表面にヒドロキノン及び/又はキノン類とPVPとの複合物が安定して存在し得る。このことにより、その後のPdシェル形成工程では、該Agコア粒子の表面において、Pdイオンの還元析出がより選択的(優先的)に進行する。このため、本態様の製造方法によると、膜状に被覆率の高いPdシェルが形成されたAgPdコアシェル粒子を高効率に製造することができる。
【0013】
好ましくは、第1の還元剤は、ヒドロキノンとPVPとをアルコール系溶媒に溶解したアルコール系溶液として調製され、該調製した第1の還元剤を第1の反応液に添加する。このような還元剤の添加による還元処理によって、表面にヒドロキノン及び/又はキノン類とPVPとの複合物が存在するAgコア粒子を効率よく生成することができる。
【0014】
また、本発明は、ここで開示される製造方法により好適に製造されるAgPdコアシェル粒子を用いて製造される粉体材料を提供する。即ち、ここで開示される粉体材料は、
銀を主構成元素とするAgコア粒子と、該Agコア粒子の表面の少なくとも一部を被覆するパラジウムを主構成元素とするPdシェルとからなるAgPdコアシェル粒子により実質的に構成される粉体材料であって、該AgPdコアシェル粒子の表面には、ヒドロキノン及び/又はキノン類が付着していることを特徴とする。
【0015】
上述のとおり、ここで開示される製造方法によると、高い収率でAgPdコアシェル粒子を製造することができるため、上記粉体材料は、かかるAgPdコアシェル粒子により実質的に構成される。ここで「実質的に構成される」とは、AgPdコアシェル粒子の存在比率が顕著であることをいい、典型的には、粉体材料を構成するAgをコアとする粒子全体の80個数%以上、さらに好ましくは90個数%以上(さらには95個数%以上)が、AgPdコアシェル粒子であることをいう。
かかる構成の粉体材料は、触媒活性の高いPdシェルの被覆率が高いAgPdコアシェル粒子の含有率が高いため、Ag粒子とPd粒子との混合粉体材料、あるいは、従来のこの種の粉体材料のようなAg粒子やPd粒子の含有率が比較的高い(相対的にAgPdコアシェル粒子の含有率が低い)粉体材料と比較して、例えば以下に列挙するような数々のアドバンテージを備えている。
(1)融点の高いPdシェルの被覆率が高いため、当該金属粒子の耐熱性、焼結挙動を制御することが容易となり、均一で欠陥の少ないAgPd合金焼成膜(導体膜)を形成することができる。
(2)粒子の表面が化学的に安定なPdシェルで高率に被覆されているため、当該粒子表面における酸化等の経時変化を抑制することができる。このことは、当該粉体材料や該粉体材料を含むペースト材料等の保存安定性向上につながる。
(3)粒子の表面が化学的に安定なPdシェルで高率に被覆されているため、高価なPdを多量に用いることなくPd触媒活性を効果的に発揮させることができる。例えば、該粉体材料を含むペーストの塗膜を焼成する際に、バインダー樹脂、ビヒクル等の有機成分の燃え抜けが良好となり、カーボン残留物の減少につながる。或いはまた、異種金属間の相互作用による触媒活性(例えばリガンド効果、コヒーレント効果)を向上させ得る。
【0016】
ここで開示される粉体材料の好ましい一態様では、該粉体材料を所定の媒体(典型的には水、ジメチルホルムアミド(DMF)、エチレングリコール(EG)、イソボロニルアセテート(IBA)等が挙げられる。以下同じ。)に分散した状態において、動的光散乱法(DLS法)に基づくZ平均粒子径(DDLS)が0.1μm~2μmであり、且つ、動的光散乱法に基づく多分散指数(PDI)が0.4以下であることを特徴とする。
さらに好ましくは、ここで開示される粉体材料の好ましい一態様では、
Z平均粒子径(DDLS)と、電界放出型走査電子顕微鏡像(FE-SEM像)に基づく平均粒子径(DSEM)との比であるDDLS/DSEMが、2以下である。
ここで開示される製造方法で得られるAgPdコアシェル粒子は、コアシェル粒子同士の凝集やネッキングが抑制され、粒径の大きな凝集塊や連結塊が形成され難いため、上記のような粒子径が小さく、粒度分布が狭く制御されたAgPdコアシェル粒子からなる粉体材料を提供することができる。
【0017】
また、ここで開示される粉体材料の好ましい他の一態様では、該粉体材料を所定の媒体に分散した状態において、動的光散乱法のNNLS法に基づく粒度分布におけるピーク粒径0.1μm~2μmの範囲のピーク強度が散乱強度基準で全体の80%以上であることを特徴とする。
ここで開示される製造方法で得られるAgPdコアシェル粒子によると、このように粒度分布が狭く制御されたAgPdコアシェル粒子からなる粉体材料を提供することができる。
【0018】
また、ここで開示される粉体材料の特に好ましい一態様では、AgPdコアシェル粒子の表面に、さらにPVPが付着していることを特徴とする。
上述のとおり、PVPをヒドロキノンとともに用いる態様の製造方法によると、膜状に被覆率の高いPdシェルが形成されたAgPdコアシェル粒子を高効率に製造することができる。このため、得られる粉体材料は、上記(1)~(3)に記したような効果をより高レベルに実現した粉体材料として種々の産業分野に用いることができる。
【0019】
上記のとおり、ここで開示される製造方法により製造され、種々のアドバンテージを備えるAgPdコアシェル粒子から実質的に構成される粉体材料は、種々の産業分野において好適に使用できるが、なかでも特に好適な用途として近年の小型化した電子部品の電極膜(導体膜)を形成することが挙げられる。したがって、本発明はまた、ここで開示されるいずれかの粉体材料と、該粉体材料を分散させる媒体と、を備える導体ペースト(ペースト状組成物)を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1A】実施例1-1の粉体材料についてのFE-SEM像ならびにEDX元素マッピング像であり、上段がFE-SEM像、中段がAgの元素マッピング像、下段がPdの元素マッピング像である。
図1B】実施例1-2の粉体材料についてのFE-SEM像ならびにEDX元素マッピング像であり、上段がFE-SEM像、中段がAgの元素マッピング像、下段がPdの元素マッピング像である。
図1C】実施例2-1の粉体材料についてのFE-SEM像ならびにEDX元素マッピング像であり、上段がFE-SEM像、中段がAgの元素マッピング像、下段がPdの元素マッピング像である。
図1D】実施例3-1の粉体材料についてのFE-SEM像ならびにEDX元素マッピング像であり、上段がFE-SEM像、中段がAgの元素マッピング像、下段がPdの元素マッピング像である。
図1E】実施例3-2の粉体材料についてのFE-SEM像ならびにEDX元素マッピング像であり、上段がFE-SEM像、中段がAgの元素マッピング像、下段がPdの元素マッピング像である。
図1F】実施例4-1の粉体材料についてのFE-SEM像ならびにEDX元素マッピング像であり、上段がFE-SEM像、中段がAgの元素マッピング像、下段がPdの元素マッピング像である。
図1G】実施例5-1の粉体材料についてのFE-SEM像ならびにEDX元素マッピング像であり、上段がFE-SEM像、中段がAgの元素マッピング像、下段がPdの元素マッピング像である。
図1H】実施例6-1の粉体材料についてのFE-SEM像ならびにEDX元素マッピング像であり、上段がFE-SEM像、中段がAgの元素マッピング像、下段がPdの元素マッピング像である。
図2A】各比較例で使用した市販のAg粉についてのFE-SEM像である。
図2B】比較例3の粉体材料についてのFE-SEM像である。
図2C】比較例8の粉体材料についてのFE-SEM像ならびにEDX元素マッピング像であり、上段がFE-SEM像、中段がAgの元素マッピング像、下段がPdの元素マッピング像である。
図3A】実施例1-1の粉体材料の動的光散乱法による粒度分布を示す図である。
図3B】実施例1-2の粉体材料の動的光散乱法による粒度分布を示す図である。
図3C】実施例2-1の粉体材料の動的光散乱法による粒度分布を示す図である。
図3D】実施例3-1の粉体材料の動的光散乱法による粒度分布を示す図である。
図3E】実施例3-2の粉体材料の動的光散乱法による粒度分布を示す図である。
図3F】実施例4-1の粉体材料の動的光散乱法による粒度分布を示す図である。
図3G】実施例5-1の粉体材料の動的光散乱法による粒度分布を示す図である。
図3H】実施例6-1の粉体材料の動的光散乱法による粒度分布を示す図である。
図4】AgスラリーA、C、Ag粉体G、実施例1-1、3-1の熱脱着GCスペクトルを示す図である。
図5】AgスラリーA、C、実施例1-1、3-1のFT-IRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
なお、本明細書において、所定の数値範囲をA~B(A、Bは任意の数値)と記すときは、A以上B以下の意味である。
【0022】
ここで開示される製造方法は、コアシェル構造の金属微粒子であってコア部分がAgで構成されており且つシェル部分がPdで構成されているAgPdコアシェル粒子を製造する方法である。かかる製造方法は、大まかにいって、
Agコア粒子を構成するための銀化合物を含む第1の反応液を調製する工程と、
還元処理を行うことによって該第1の反応液中に銀を主構成元素とするAgコア粒子を生成する工程と、
生成したAgコア粒子が分散した状態の分散液にPdシェルを構成するためのパラジウム化合物を添加して第2の反応液を調製する工程と、
還元処理を行うことにより、該反応液中のAgコア粒子の表面にパラジウムを主構成元素とするPdシェルを形成する工程とを包含する。
【0023】
ここで開示される製造方法では、上述したAgコア粒子およびPdシェルを形成する材料は、それぞれ、AgおよびPdを構成元素とする化合物の状態で製造プロセスに提供される。ここで用いられる銀化合物およびパラジウム化合物は、それぞれの反応液中で還元処理を行うことによってAgコア粒子およびPdシェルを生成できるものであればよい。 銀化合物およびパラジウム化合物としては、銀およびパラジウムの塩又は錯体を好ましく用いることができる。塩としては、例えば、塩化物、臭化物、ヨウ化物などのハロゲン化物や、水酸化物、硫化物、硫酸塩、硝酸塩、等を用いることができる。また、錯体としては、アンミン錯体、シアノ錯体、ハロゲノ錯体、ヒドロキシ錯体などを用いることができる。
【0024】
ここで開示される製造方法で用いられる第1の反応液は、上述したような銀化合物を適当な溶媒に溶かした溶液または適当な分散媒に分散した分散液として調製され得る。ここで該反応液を構成する溶媒(分散媒である場合を包含する。以下同じ。)は、水系溶媒でもよいし、有機系溶媒であってもよい。
水系溶媒で第1の反応液を調製する場合、溶媒には水や水を主体とする混合液(例えば、水とエタノールの混合溶液)を用いることができる。また、有機系溶媒で第1の還元剤を調製する場合には、メタノール、エタノール等のアルコール類、若しくは、アセトン、メチルケトンのようなケトン類、若しくは、酢酸エチルのようなエステル類、等を用いることができる。
【0025】
反応液中の銀化合物の含有量は、目的に応じて異なり得るため、特に限定されない。一例であるが、溶媒が水その他の水系溶媒(例えば水とエタノールの混合溶媒)である場合には、銀化合物のモル濃度が0.1M~3M程度になるように反応液を調製することが好ましい。
また、第1の反応液を調製する際、銀化合物と溶媒の他に種々の添加剤を加えることができる。かかる添加剤としては、例えば、錯化剤が挙げられる。錯化剤には、例えば、アンモニア水、シアン化カリウム、ヒドラジン一水和物、等を用いることができる。この錯化剤を適量加えることにより、Agを中心金属イオンとする錯体が反応液中で容易に形成され得る。これによって、その後の還元処理によってAgコア粒子を容易に析出させることができる。
【0026】
また、第1の反応液を調製する際、一定の範囲内に温度条件を維持しながら攪拌するとよい。このときの温度条件としては、20℃~60℃(より好ましくは30℃~50℃)程度であるとよい。また、攪拌の回転速度は、100rpm~1000rpm(より好ましくは300rpm~800rpm、例えば500rpm)程度であるとよい。
【0027】
ここで開示される製造方法では、上述したような銀化合物を含む第1の反応液を還元処理することによってAgコア粒子を生成する。この工程は、銀化合物を含む反応液中に適当な還元剤(第1の還元剤)を添加することによって容易に実施できる。
第1の還元剤は、少なくともヒドロキノン(C)を含むように調製される。ヒドロキノンを還元剤として使用することによって、上記のとおり、生成されるAgコア粒子の表面にヒドロキノン及び/又はキノン類を存在させることができる。
また、第1の還元剤は、ヒドロキノンに加えてPVPを含むように調製されることが好ましい。ヒドロキノンに加えてPVPを含む還元剤を使用することによって、表面にヒドロキノン及び/又はキノン類とPVPとの複合物が存在するAgコア粒子を効率よく生成することができる。なお、第1の還元剤として、ヒドロキノン、PVP以外の還元剤を共存させてもよい。例えば、炭酸ヒドラジン、ヒドラジン、ヒドラジン一水和物、フェニルヒドラジン等のヒドラジン化合物を併用してもよい。
【0028】
還元剤の添加量は、第1の反応液に含まれる銀化合物を所定時間内に全て還元するのに十分な量であればよく、反応系の状態に合わせて適切に設定すればよいため、特に制限はない。その際、還元剤の濃度を適宜調整することにより、Agコア粒子の粒子径(ひいてはAgPdコアシェル粒子の粒子径)を制御することもできる。一般的には、還元剤の濃度を高くすることにより、Agコア粒子の粒子径(ひいてはAgPdコアシェル粒子の粒子径)を小さくすることができる。また、還元処理の際に、第1の反応液にpH調整剤を添加して、pHを8以上、例えば9~11程度に調整することが好ましい。ここで、pH調整剤には、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、アンモニア水、その他の塩基性物質を用いることができる。
還元処理時間は、適宜設定することができる。特に制限はないが、例えば、0.5時間~3時間程度が好ましい。
【0029】
上記還元処理によって生成したAgコア粒子の回収は、従来と同様でよく、特に制限はない。好ましくは、反応液中に生成したAgコア粒子を沈降させ、あるいは遠心分離して上澄みを除去する。好ましくは複数回の洗浄後、適当な分散媒中に回収したAgコア粒子を分散することにより、Agコア粒子の分散液(以下「Agスラリー」ともいう。)として回収することができる。
【0030】
ここで開示される製造方法では、次に、AgスラリーにPdシェルを上述したようなパラジウム化合物を添加して第2の反応液を調製する。かかる第2の反応液中のパラジウム化合物の含有量は、目的に応じて異なり得るため、特に限定されない。一例であるが、第2の反応液中に含まれるAgとPdとの質量比:Ag/Pdが、70/30~95/5(例えばAg/Pdが80/20~90/10)程度であれば、高価なPdの使用量を抑制しつつ好適なPdシェルを高い被覆率で形成することができる。
なお、第2の反応液の調製に使用する溶媒(分散媒)、その他の添加剤、調製プロセス等は、ほぼ第1の反応液と同様でよいため、重複した説明は省略する。但し、第2の反応液は、Agコア粒子の分散液ともいえるため、調製時に上記攪拌に加えて超音波処理を行うことが反応液の均質化という観点から好ましい。例えば、超音波ホモジナイズは、15kHz~50kHz程度の周波数、100W~500W程度の出力で行うことができる。
【0031】
Pdシェル形成のための第2の還元剤としては、当該反応系において還元作用を奏し得る種々の化合物を採用することができる。例えば、炭酸ヒドラジン、ヒドラジン、ヒドラジン一水和物、フェニルヒドラジン等のヒドラジン化合物が好ましいがこれに限られず、例えば、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸などの有機酸およびその塩(酒石酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、等)、或いは、水素化ホウ素ナトリウム等が挙げられる。
第2の還元剤の添加量は、第2の反応液に含まれるAgコア粒子の表面にPdシェルを所定時間内に好適に形成し得るのに十分な量であればよく、反応系の状態に合わせて適切に設定すればよいため、特に制限はない。還元剤を添加した後に反応液を撹拌しながら還元反応を進行させた方が好ましい。
還元処理時間は、適宜設定することができる。特に制限はないが、例えば、0.25時間~2時間程度が好ましい。
【0032】
次に、生成されたAgPdコアシェル粒子を第2の反応液から回収する。かかる回収の方法としては、従来と同様でよく、特に制限はない。上述した第1の反応液からAgコア粒子を回収する態様と同じでよい。例えば、反応液中に生成したAgPdコアシェル粒子を沈降させ、あるいは遠心分離して上澄みを除去する。好ましくは複数回の洗浄後、乾燥させ、適当に解砕処理することによりAgPdコアシェル粒子から実質的に構成される粉体材料を得ることができる。また、かかる粉体材料を適当な分散媒に分散させることによりペースト状(スラリー状)の組成物を得ることができる。
【0033】
以上の工程を経て、ここで開示される製造方法により、ここで開示されるAgPdコアシェル粒子を好適に製造することができる。また、かかるAgPdコアシェル粒子から実質的に構成される粉体材料を提供することができる。
なお、ここで提供されるAgPdコアシェル粒子は、銀を主構成金属元素とするAgコア粒子と、該Agコア粒子の表面の少なくとも一部を被覆するパラジウムを主構成元素とするPdシェルとからなるAgPdコアシェル粒子であって、該コアシェル粒子の表面にヒドロキノン及び/又はキノン類が付着していればよく、その他の構成要素(構成金属元素等)の存在を否定するものではない。例えば、Agコア粒子に含まれる全ての金属元素の物質量を100mol%とした場合、Agの物質量は、90mol%~100mol%であるとよく、95mol%~100mol%であると好ましい。このとき、Ag元素以外にAgコア粒子に含まれ得る金属元素としては、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、パラジウム(Pd)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、金(Au)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)、等が挙げられる。これらの中でも、Pdシェルとの馴染みやすさなどを考慮すると、Pd、Pt等の白金族元素が適当である。酸化物や硫化物などの化合物がAgコア粒子に含まれていてもよい。
【0034】
特に限定するものではないが、Agコア粒子の形状は略球形が好ましく、その平均粒子径は、例えば、10nm~2000nm程度が適当であり、50nm~1000nm程度がより好ましい。
なお、平均粒子径は種々の方法で測定し得る。動的光散乱法(例えばキュムラント法)に基づくZ平均粒子径(DDLS)、走査型電子顕微鏡(SEM)例えば電界放出型走査電子顕微鏡による測定画像(FE-SEM像)に基づく平均粒子径(DSEM)、等が典型例として挙げられる。
【0035】
一方、Pdシェルは、Pdを主構成金属元素とする金属被膜である。
上述したAgコア粒子と同様に、Pdシェルには、Pd以外に種々の金属元素が含まれていてもよい。例えば、Pdシェルに含まれる全ての金属元素の物質量を100mol%とした場合、Pd元素の物質量は、80mol%~100mol%であるとよく、90mol%~100mol%であると好ましい。また、Pd以外にPdシェルに含まれ得る金属元素としては、Ni、Cu、Al、Fe、Co、Au、Pt、Ru、Ir、In、Zn、Sn、Bi、Sb、などが挙げられる。また、コアシェル粒子表面の化学的、熱的安定性の向上やAgコア粒子との馴染みやすさを考慮すると、これらの金属元素の中でも、これらの中でも、Pdシェルとの馴染みやすさなどを考慮すると、Pt等の白金族元素が適当である。酸化物や硫化物などの化合物がPdシェルに少量含まれていてもよい。Au、Pt、Agなどが、Pd以外の金属元素として含まれていると好ましい。例えば、上述したような金属元素の酸化物、リン化物、窒化物等の化合物の状態でPdシェルに含まれていてもよい。また、本発明を特に限定するものではないが、Pdシェルの厚みは、例えば0.2nm~100nmであり得る。
【0036】
ここで開示される粉体材料は、上記(1)~(3)に列挙したような数々のアドバンテージを備えているため、電子材料分野における利用により、電子部品の小型化や電極の薄層化を実現することができる。
特に、例えば動的光散乱法に基づくZ平均粒子径(DDLS)が0.1μm~2μmであり、且つ、動的光散乱法に基づく多分散指数(PDI)が0.4以下であることを特徴とする粉体材料、さらにはDDLSと、電界放出型走査電子顕微鏡像(FE-SEM像)に基づく平均粒子径(DSEM)との比であるDDLS/DSEMが2以下である粉体材料のような比較的平均粒子径が小さく且つ粒度分布が狭く制御されているAgPdコアシェル粒子からなる粉体材料を採用することにより、電極の薄層化、信頼性の向上等を更に好適に進展させることができる。
【0037】
また、ここで開示される粉体材料を、水系溶媒あるいは有機系溶媒などの分散媒に分散させることにより、種々の用途のペースト状組成物(導体ペースト)を提供することができる。かかる導体ペーストには、粒子径がサブミクロン領域に制御されたAgPdコアシェル粒子が含まれているため、充分に薄層化された電極を好適に形成することができる。 なお、導体ペーストの分散媒は、従来と同様、導電性粉体材料を良好に分散させ得るものであればよく、従来の導体ペースト調製に用いられているものを特に制限なく使用することができる。例えば、有機系溶媒として、ミネラルスピリット等の石油系炭化水素(特に脂肪族炭化水素)、エチルセルロース等のセルロース系高分子、エチレングリコール及びジエチレングリコール誘導体、トルエン、キシレン、ブチルカルビトール(BC)、ターピネオール等の高沸点有機溶媒を一種類又は複数種組み合わせたものを用いることができる。
また、導体ペーストには、AgPdコアシェル粒子の他に、分散剤、樹脂材料(例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、セルロース系高分子、ポリビニルアルコール、ロジン樹脂等)、ビヒクル、フィラー、ガラスフリット、界面活性剤、消泡剤、可塑剤(例えばフタル酸ジオクチル(DOP)等のフタル酸エステル)、増粘剤、酸化防止剤、分散剤、重合禁止剤などの添加物が含まれていてもよい。
【0038】
以下、ここで開示されるAgPdコアシェル粒子の製造と利用に関する実施例をいくつか説明するが、かかる試験例は本発明を限定することを意図したものではない。なお、以下のAgPdコアシェル粒子の製造例において、原料ベースでのAg/Pd質量比は、すべて90/10である。
【0039】
<1.Agスラリーの製造例>
サンプルA(以下「AgスラリーA」という。):
硝酸銀(AgNO:大浦貴金属工業(株)製品)15.63gを純水150mLに溶解し、28%アンモニア水(和光純薬工業(株)製品)13mLを加え、マグネチックスターラーで撹拌し、原料となる銀化合物であるAgアンミン錯体を含む第1の溶液Aを調製した。
次いで、ヒドロキノン(東京化成工業(株)製品)5.07gとポリビニルピロリドン(PVP)K30(和光純薬工業(株)製品)3.00gとを、アルコール(甘糟化学産業(株)製品である工業用アルコール)150mLに溶解し、ヒドラジン一水和物(和光純薬工業(株)製品)0.18mLを加え撹拌し、第1の還元剤を調製した。
そして、第1の溶液Aをマグネチックスターラー(500rpm)で撹拌しつつ、第1の還元剤を一気に加え、その還元作用によってAgコア粒子を生成させた。次いで、1時間ほど沈降させ、上澄みを除去した後、上記アルコールをさらに300mL加え、撹拌し、再度1時間ほど沈降させ、上澄みを除去した。
ここに上記アルコール40mLを加え、生成Agコア粒子を分散させたスラリーを市販の遠心分離機で6000rpm、5分間の遠心分離処理を行い、沈降させ、上澄みを除去する洗浄工程を2回繰り返した。
その後、上記アルコール40mLをアルコール:純水=1:1(体積比)の混合溶媒40mLに変更し、同じ工程を繰り返した。
そして、得られたAgコア粒子沈澱物に純水を加え、AgスラリーAを調製した。
後述する熱重量・示差熱(TG-DTA)測定の結果、AgスラリーAには、Agコア粒子が全体の33.34wt%ほど含まれており、さらに、ヒドロキノン由来のキノン類とPVPが少量含まれていることが認められた。
【0040】
サンプルB(以下「AgスラリーB」という。):
ヒドラジン一水和物の添加量を0.018mLに変更した他は、AgスラリーAの製造と同じ材料、同じプロセスにより、AgスラリーBを調製した。
TG-DTAの結果、AgスラリーBには、Agコア粒子が全体の36.73wt%ほど含まれており、さらに、ヒドロキノン由来のキノン類とPVPが少量含まれていることが認められた。
【0041】
サンプルC(以下「AgスラリーC」という。):
PVPを添加しない他は、AgスラリーAの製造と同じ材料、同じプロセスにより、AgスラリーCを調製した。
TG-DTAの結果、AgスラリーCには、Agコア粒子が全体の30.34wt%ほど含まれており、さらに、ヒドロキノン由来のキノン類が少量含まれていることが認められた。
【0042】
サンプルD(以下「AgスラリーD」という。):
ヒドラジン一水和物およびPVPのいずれも添加しない他は、AgスラリーAの製造と同じ材料、同じプロセスにより、AgスラリーDを調製した。
TG-DTAの結果、AgスラリーDには、Agコア粒子が全体の30.43wt%ほど含まれており、さらに、ヒドロキノン由来のキノン類が少量含まれていることが認められた。
【0043】
サンプルE(以下「AgスラリーE」という。):
ヒドラジン一水和物を添加しない他は、AgスラリーAの製造と同じ材料、同じプロセスにより、AgスラリーEを調製した。
TG-DTAの結果、AgスラリーEには、Agコア粒子が全体の26.55wt%ほど含まれており、さらに、ヒドロキノン由来のキノン類とPVPが少量含まれていることが認められた。
【0044】
サンプルF(以下「AgスラリーF」という。):
28%アンモニア水の使用量を26mLに変更した他は、AgスラリーAの製造と同じ材料、同じプロセスにより、AgスラリーFを調製した。
TG-DTAの結果、AgスラリーFには、Agコア粒子が全体の20.57wt%ほど含まれており、さらに、ヒドロキノン由来のキノン類とPVPが少量含まれていることが認められた。
【0045】
<2.粉体材料の製造例(実施例および比較例)>
【0046】
実施例1-1:
9gのAgスラリーA(Agコア粒子含有量:3.00g)に、0.17%アンモニア水にジアンミンジクロロパラジウム(II)を溶解して調製したPd錯体溶液50mL(Pd含有量:0.333gに調整した。)を加え、マグネチックスターラーで撹拌し、さらに純水44mLを加え、10分間の超音波分散処理を行った。
次いで、このスラリーをマグネチックスターラーで撹拌しつつ、第2の還元剤としての炭酸ヒドラジン(大塚化学(株)製品)0.85mLを加え、30分間ほど撹拌を継続した。このとき、炭酸ヒドラジン添加後70~80秒ほどで、上記Pd錯体の還元によるPd析出を示すスラリーの黒変と発泡が観察された。次いで、上澄みのXRF分析により、使用したPd錯体は、すべて還元され析出したことが確認された。
こうして得られたAgPdコアシェル粒子のスラリー(以下「AgPdスラリー」という。)を1時間ほど沈降させ(1時間以内にほぼ完全に沈降した。)、上澄みを除去した後、上記アルコール:純水=1:1(体積比)の混合溶媒40mLに分散させ、市販の遠心分離機で6000rpm、10分間の遠心分離を行い、上澄みを除去する洗浄工程を2回行った。さらに、上記アルコール:純水=1:1(体積比)の混合溶媒40mLを純水40mLに変更し、同様の洗浄工程を繰り返した。
そして、生成されたAgPdコアシェル粒子(粉体)に含まれる水分をアセトンに置換するため、アセトン40mLを加え、分散および遠心分離(6000rpm、10分間)を行い、上澄みを除去する工程を2回行った。そして室温で1時間ほど真空乾燥させた後、乳鉢で解砕することにより、実施例1-1に係るAgPdコアシェル粒子からなる乾燥粉体材料を調製した。
【0047】
実施例1-2:
上記Pd錯体溶液に、さらにポリビニルピロリドン(PVP)K30(和光純薬工業(株)製品)0.20gを溶解(添加)した他は、実施例1-1に係る粉体材料の製造と同じ材料、同じプロセスにより、実施例1-2に係るAgPdコアシェル粒子からなる乾燥粉体材料を調製した。
【0048】
実施例2-1:
9gのAgスラリーA(Agコア粒子含有量:3.00g)を、8.17gのAgスラリーB(Agコア粒子含有量:3.00g)に変更した他は、実施例1-1に係る粉体材料の製造と同じ材料、同じプロセスにより、実施例2-1に係るAgPdコアシェル粒子からなる乾燥粉体材料を調製した。
【0049】
実施例3-1:
9gのAgスラリーA(Agコア粒子含有量:3.00g)を、9.89gのAgスラリーC(Agコア粒子含有量:3.00g)に変更した他は、実施例1-1に係る粉体材料の製造と同じ材料、同じプロセスにより、実施例3-1に係るAgPdコアシェル粒子からなる乾燥粉体材料を調製した。
【0050】
実施例3-2:
9gのAgスラリーA(Agコア粒子含有量:3.00g)を、9.89gのAgスラリーC(Agコア粒子含有量:3.00g)に変更し、且つ、使用したPVPをポリビニルピロリドン(PVP)K90(和光純薬工業(株)製品)に変更した他は、実施例1-2に係る粉体材料の製造と同じ材料、同じプロセスにより、実施例3-2に係るAgPdコアシェル粒子からなる乾燥粉体材料を調製した。
【0051】
実施例4-1:
9gのAgスラリーA(Agコア粒子含有量:3.00g)を、9.86gのAgスラリーD(Agコア粒子含有量:3.00g)に変更した他は、実施例1-1に係る粉体材料の製造と同じ材料、同じプロセスにより、実施例4-1に係るAgPdコアシェル粒子からなる乾燥粉体材料を調製した。
【0052】
実施例5-1:
9gのAgスラリーA(Agコア粒子含有量:3.00g)を、11.30gのAgスラリーE(Agコア粒子含有量:3.00g)に変更した他は、実施例1-1に係る粉体材料の製造と同じ材料、同じプロセスにより、実施例5-1に係るAgPdコアシェル粒子からなる乾燥粉体材料を調製した。
【0053】
実施例6-1:
9gのAgスラリーA(Agコア粒子含有量:3.00g)を、14.58gのAgスラリーF(Agコア粒子含有量:3.00g)に変更した他は、実施例1-2に係る粉体材料の製造と同じ材料、同じプロセスにより、実施例6-1に係るAgPdコアシェル粒子からなる乾燥粉体材料を調製した。
【0054】
比較例1:
上記ジアンミンジクロロパラジウム(II)0.655gを、0.17%アンモニア水100mLに溶解してPd錯体溶液を調製し、さらにポリエチレングリコール#200(関東化学(株)製品)を0.30g添加して溶解させた。
そして上記Pd錯体溶液に、市販のAg粉体(三井金属工業(株)製品:SPQ02X)を3.0g加え、マグネチックスターラーで撹拌後、10分間の超音波分散処理を行った。マグネチックスターラーで撹拌しつつ、還元剤として炭酸ヒドラジン(大塚化学(株)製品)0.85mLを加え、30分間撹拌を継続した。このとき、炭酸ヒドラジンによってPdはすべて還元され析出した。
以後は、実施例1-1と同じ材料、同じプロセスにより、比較例1に係る粉体材料を調製した。
【0055】
比較例2:
上記Pd錯体溶液に、分散剤としてANTI-TERRA250(BYK社製品)を0.15g加えて溶解させ、且つ、上記ポリエチレングリコール#200は添加しない他は、比較例1と同じ材料、同じプロセスにより、比較例2に係る粉体材料を調製した。
【0056】
比較例3:
添加するANTI-TERRA250(BYK社製品)の添加量を2.00gに増量した他は、比較例2と同じ材料、同じプロセスにより、比較例3に係る粉体材料を調製した。
【0057】
比較例4:
添加する分散剤をANTI-TERRA250からBYK-LP C 22136(BYK社製品)に変更し、その添加量を0.15gとした他は、比較例2と同じ材料、同じプロセスにより、比較例4に係る粉体材料を調製した。
【0058】
比較例5:
添加する分散剤をBYK-LP C 22136からBYK-LP C 22139(BYK社製品)に変更した他は、比較例4と同じ材料、同じプロセスにより、比較例5に係る粉体材料を調製した。
【0059】
比較例6:
添加する分散剤をBYK-LP C 22136からBYK-LP C 22141(BYK社製品)に変更した他は、比較例4と同じ材料、同じプロセスにより、比較例6に係る粉体材料を調製した。
【0060】
比較例7:
添加する分散剤をBYK-LP C 22136からDISPERBYK 102(BYK社製品)に変更した他は、比較例4と同じ材料、同じプロセスにより、比較例7に係る粉体材料を調製した。
比較例8:
ポリエチレングリコール#200を添加せず、且つ、加えるAg粉体を市販Ag粉体(SPQ02X)から公知のPVP付着Ag粉体G(例えば特開平4-59904号公報の実施例6に開示された製造方法で調製できる。)に変更した他は、比較例1と同じ材料、同じプロセスにより比較例8に係る粉体材料を調製した。
【0061】
<3.各評価試験>
上記の各粉体材料に関し、以下に説明する各種の評価試験を行った。
【0062】
(1)FE-SEM観察およびEDXによるPd分布状況の解析:
市販の装置であるS-4700((株)日立ハイテクノロジーズ製品)およびX-max((株)堀場製作所製品)を用いて、AgPdコアシェル粒子のFE-SEMに基づく平均粒子径(DSEM)ならびにPdの分布状態を調べた。
即ち、1サンプルにつき複数視野のFE-SEM像から計200個以上の粒子の粒径を測定し、FE-SEM像に基づく平均粒子径(DSEM)ならびに標準偏差を算出した。このとき、明らかに連結(ネッキング)している粒子は一つの粒子としてカウントした。よって、Agコア粒子とAgPdコアシェル粒子のFE-SEM像に基づく平均粒子径(DSEM)の比較により、シェル形成によって生じた明らかな粒子連結(ネッキング)の程度を把握することができる。
各実施例における試験結果を、それぞれ、図1A~1Hに示す。また、表1の該当欄に各実施例に係る粉体材料ならびにAgスラリーA~FのFE-SEMに基づく平均粒子径(nm)および標準偏差を示す。
【0063】
図1A~1Hに示される実質的に全ての粒子においてPdがAg粒子上にほぼ均一に析出し、Pdが析出していないAg粒子やPd単独の粒子は観察視野中に全く確認されなかった。
このことは、生成されるAgコア粒子の表面にヒドロキノン及び/又はキノン類が付着していることにより、その後のPdシェル形成工程においてPdイオンの還元析出が、該Agコア粒子の表面において選択的(優先的)に行われ得ることを示すものである。したがって、ここで開示される製造方法によると、高い収率でAgPdコアシェル粒子を製造することができる。さらにPdイオンの還元析出が該Agコア粒子の表面において選択的(優先的)に行われることから、Pdシェル形成過程においてAgコア粒子間の接触点におけるPd析出が抑制される。このため、Pdシェル形成時の凝集やネッキングを防止して粒子径が小さく、或いはまた、粒度分布が狭く制御されたAgPdコアシェル粒子を製造することができる。
【0064】
また、PVPを使用せずに製造した実施例3-1および実施例4-1については、PdがAgコア粒子の表面に粒状に析出していた。他方、ヒドロキノンとともにPVPを使用して製造した他の実施例については、PdがAgコア粒子の表面に膜状に析出しており、被覆率も高いことが分かった。このことは、製造時にヒドロキノンに加えてPVPを共存させておくことによって、生成されたAgコア粒子の表面にヒドロキノン及び/又はキノン類とPVPとの複合物が安定して存在し、結果、その後にAgコア粒子の表面においてPdイオンの還元析出がさらに選択的(優先的)に進行し、膜状に被覆率の高いPdシェルが形成されたAgPdコアシェル粒子を高効率に製造し得ることを示している。
【0065】
一方、比較例1~7の粉体材料を製造するために使用した市販のAg粉体のFE-SEM像を図2Aに示し、比較例3の粉体材料のFE-SEM像を図2Bに示す。
これらSEM像から明らかなように、ヒドロキノンやPVPを使用していない比較例の粉体材料では、粒子の凝集や連結(ネッキング)が著しく、分散性の悪いAgPdコアシェル粒子しか得られなかった。また、詳しい結果は示していないが、Pdシェルの形成状態も悪く、Agコア粒子の一部にまばらにしか形成されていない状況であった。
なお、他の比較例についてであるが、比較例1に係る粉体材料は、凝集が著しくFE-SEM観察は行っていない。比較例2,4,5~7に係る粉体材料については、反応容器の内壁面にPdが析出してしまい、目的とするようなAgPdコアシェル粒子は、殆ど形成されなかった。
【0066】
また、比較例8に使用した公知のPVP付着Ag粉体Gは、本発明と同様に硝酸銀のヒドロキノン還元により得られたものであるが、亜硫酸塩を添加することでヒドロキノン及び/又はキノン類が別物質へと変換され、結果、Ag粒子およびそのスラリーにヒドロキノン及びキノン類が残存しないという特徴がある。即ち、PVPのみが付着したAg粒子となっており、図4に示した熱脱着GC-MS測定結果からもヒドロキノン及び/又はキノン類が存在しないことが確認されている。図2Cに示した比較例8に係る粉体材料のFE-SEM像からは、Pdシェルの形成状態が悪く、独立したPd粒子の形成も確認された。ヒドロキノン還元で作製したAg粉体であっても、ヒドロキノン及び/又はキノン類が存在しなければ高品質なAgPdコアシェル粒子は得られないことが明らかとなった 。
【0067】
(2)TG-DTAによる有機物含有率の算出:
市販の装置であるThermo plus TG8120((株)リガク製品)を採用し、昇温速度20℃/分で室温から600℃まで加熱し、10分間キープした。
概ね160℃までの重量減少は、吸着水や溶媒の蒸発とみなし、これを除去した残りの重量に対する有機物燃焼による発熱ピークを伴う重量減少より、「有機物含有率(wt%)」を算出した。ここで有機物とは、実質的には、ヒドロキノン及び/又はキノン類(実施例3-1、4-1)、あるいは、ヒドロキノン及び/又はキノン類ならびにPVP(その他の実施例)を示している。結果を表1の該当欄に示す。
【0068】
(3)BET比表面積の算出:
市販の装置であるBELSORP-max(マイクロトラック・ベル(株)製品)を採用し、真空(室温)で1時間以上前処理した後、-196℃のN吸着等温線を測定し、BET多点法により比表面積を求めた。また、比表面積より、下式を用いてBET径を算出した。即ち、
d=6/(ρs)
ここで、d:BET径、ρ:密度(Ag:10.49g/cm、AgPd(但しPdが10wt%):10.64g/cm)、s:BET比表面積である。
結果を表1の該当欄に示す。
【0069】
(4)動的光散乱法(DLS法)に基づくZ平均粒子径(D DLS )、多分散指数(PDI)ならびに粒度分布の算出:
市販の装置であるゼータサイザーナノZS(Malvern Panalytical社製品)を採用し、
所定の媒体(水、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、または、エチレングリコール(EG))を分散媒とし、超音波分散により適度な濃度の試料を調製し、20~25℃でDLS測定し、一般的なキュムラント法に基づいてZ平均粒子径(DDLS)および多分散指数(PDI)を求めた。なお、分散媒や分散方法はサンプルに応じ適当なものを選択することができ、分散剤や粘度調整剤等の添加剤を用いることができる。
また、一般的なNNLS法に基づいて、粒度分布におけるピーク粒径0.1μm~2μmの範囲のピーク強度が散乱強度基準で全体の何%以上であるかを調べた。
また、Z平均粒子径(DDLS)と、FE-SEM像に基づく平均粒子径(DSEM)との比であるDDLS/DSEMについても調べた。かかる比の大小で、シェル形成によって生じた凝集の程度を評価することができる。
結果を表1の該当欄、ならびに、各実施例の粒度分布については、実施例1-1から実施例6-1まで順番にそれぞれ図3A~3Hに示す。
ここで、図3A、3B、3Cおよび3Hに示す粒度分布を測定した際の分散媒は水であり、図3D、3Eおよび3Gに示す粒度分布を測定した際の分散媒はDMFであり、図3Fに示す粒度分布を測定した際の分散媒はEGである。

【0070】
【表1】
【0071】
図3A~3Hから明らかなように、いずれの実施例についても動的光散乱法のNNLS法に基づく粒度分布におけるピーク粒径0.1μm~2μmの範囲のピーク強度が散乱強度基準で全体の80%以上であった。また、PDIはいずれも0.4以下(特に好ましくは0.3以下)であった。
また、表1の該当欄に示すように、ここで開示される製造方法によれば、粒度分布が狭い、換言すれば、粒子径の揃ったAgPdコアシェル粒子からなる粉体材料を提供することができる。また、DDLS/DSEMの値がいずれも2以下、特に好適なものは1.5以下(例えば1.3以下の実施例も存在する。)であり、凝集や連結(ネッキング)が抑制されていることが認められた。したがって、ここで開示される製造方法によると、粒径の大きな凝集塊や連結塊が形成され難いため、粒子径が比較的小さく、粒度分布が狭く制御されたAgPdコアシェル粒子からなる粉体材料を提供することができる。
【0072】
(5)熱脱着GC-MS測定:
市販の熱脱着測定が可能なGC-MS装置を用いてAgコア粒子及びAgPdコアシェル粒子を解析した。
乾燥して粉末とした試料に高純度ヘリウムガスを通気しながら300℃で30分間加熱した。試料から発生したガス成分を冷却濃縮後、GC-MSで測定した。質量分析装置のイオン化方式は、電子衝撃法(EI法;70eV)を用いた。
本測定の結果、図4のスペクトルにおいて保持時間9.7分付近(星印)のピークはベンゾキノンであり、16.9分付近(四角印)のピークはヒドロキノンである。また、8.0分付近(丸印)におけるピークは無水マレイン酸であり、ヒドロキノン或いはキノンの分解物であると考えられる。さらに、11.1分(三画印)におけるピークのフェノールもヒドロキノン或いはキノン由来であると考えられる。AgスラリーA、Ag粉体G、実施例1-1に見られる13.3分(菱形印)のピーク2-ピロリドンはPVP由来であると考えられる。比較例8に使用したAg粉体Gからはヒドロキノン及び/又はキノン類に由来するピークは確認されなかった。
以上のことから、Ag粒子及びAgPdコアシェル粒子の表面にはヒドロキノン及び/又はキノン類が存在することが確認された。
【0073】
(6)FT-IR測定:
市販の装置であるフーリエ変換赤外分光光度計Cary670-IR(Agilent technology社)を用いてFT-IRスペクトルの解析を行った。
乾燥して粉末とした試料をセラミックカップに充填後、測定セルにセットし、拡散反射法にて測定した。続いて、リファレンスとしてアルミミラーを同様の手順にて測定した。得られたスペクトルをクベルカ-ムンク変換したスペクトルを図5に示す。試料はスラリーA、実施例1-1、スラリーC,実施例3-1を測定した。
本測定の結果、図5のスペクトルにおいて1690cm-1付近のピーク(丸印)はPVPに由来するものであった。また、1630cm-1付近のピーク(三画印)はカルボン酸塩由来であり、これはキノン分解成分であると考えられる。
したがって、本測定からもAgコア粒子及びAgPdコアシェル粒子の表面にキノン類が存在することが確認された。
【0074】
以上、本発明の具体例を試験例に基づいて詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図4
図5