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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】電磁比例弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20231006BHJP
   F16K 37/00 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
F16K31/06 325
F16K37/00 J
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019029906
(22)【出願日】2019-02-21
(65)【公開番号】P2020133803
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 仁
(72)【発明者】
【氏名】西田 裕平
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0020901(US,A1)
【文献】特開2017-020541(JP,A)
【文献】特開平02-062405(JP,A)
【文献】特開2000-291608(JP,A)
【文献】特開2014-66178(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06-31/11
F16K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に移動可能なスプールと、該スプールの該軸方向の一方側に配置され、制御対象に制御圧を供給する制御ポート部と、を有する弁ユニットと、
前記スプールの前記軸方向の他方側に配置されており前記制御圧を励磁電流により変化させるソレノイドコイルと、該ソレノイドコイルを収容するハウジングと、該ハウジング内にあって前記制御ポート部と接続されている受圧室と、前記受圧室の少なくとも一部を画定し前記ソレノイドコイルの励磁電流により前記軸方向に移動する駆動ロッドと、前記受圧室の少なくとも一部を画定し前記駆動ロッドに設けられたプランジャーと、を有する駆動装置と、
を備え
前記受圧室は、前記プランジャーの軸方向の後側にある第1受圧室と、前記プランジャーの軸方向の前側にある第2受圧室とに区画され、
前記プランジャーは、前記第1受圧室と前記第2受圧室とを接続する接続流路を有する、
電磁比例弁。
【請求項2】
前記受圧室における前記制御圧を検出する圧力センサを備える請求項1に記載の電磁比例弁。
【請求項3】
弁本体と、該弁本体の軸方向の一方側に配置される制御ポート部と、該弁本体内に移動可能に収納され、該軸方向の位置により該制御ポート部の制御圧を変化させるスプールと、を有する弁ユニットと、
前記弁ユニットに対して前記制御ポート部の反対側に配置され、励磁電流により前記スプールの前記軸方向の位置を変化させるソレノイドコイルと、該ソレノイドコイルを収納するハウジングと、該ハウジング内であって前記制御ポート部と接続されている受圧室と、前記受圧室の少なくとも一部を画定し前記ソレノイドコイルの励磁電流により前記軸方向に移動する駆動ロッドと、前記受圧室の少なくとも一部を画定し前記駆動ロッドに設けられたプランジャーと、を有する駆動装置と、
を備え
前記受圧室は、前記プランジャーの軸方向の後側にある第1受圧室と、前記プランジャーの軸方向の前側にある第2受圧室とに区画され、
前記プランジャーは、前記第1受圧室と前記第2受圧室とを接続する接続流路を有する、
電磁比例弁。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記受圧室における前記制御圧を検出する圧力センサを備える請求項3に記載の電磁比例弁。
【請求項5】
前記圧力センサを覆い、ハウジングに取り付けられる蓋部を備える請求項4に記載の電磁比例弁。
【請求項6】
弁本体と、該弁本体の軸方向の一方側に配置される制御ポート部と、該弁本体内に移動可能に収納され、該軸方向の位置により該制御ポート部の制御圧を変化させるスプールと、を有する弁ユニットと、
前記弁ユニットに対して前記制御ポート部の反対側に配置され、励磁電流により前記スプールの前記軸方向の位置を変化させるソレノイドコイルと、該ソレノイドコイルを収納するハウジングと、該ハウジング内にあり前記制御ポート部と接続されている受圧室と、前記受圧室の少なくとも一部を画定し前記ソレノイドコイルの励磁電流により前記軸方向に移動する駆動ロッドと、前記受圧室の少なくとも一部を画定し前記駆動ロッドに設けられたプランジャーと、を有する駆動装置と、
前記受圧室における前記制御圧を検出する圧力センサと、
前記圧力センサを覆い、前記ハウジングに取り付けられる蓋部と、
を備え
前記受圧室は、前記プランジャーの軸方向の後側にある第1受圧室と、前記プランジャーの軸方向の前側にある第2受圧室とに区画され、
前記プランジャーは、前記第1受圧室と前記第2受圧室とを接続する接続流路を有する、
電磁比例弁。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の電磁比例弁を備える方向切替弁。
【請求項8】
請求項に記載の方向切替弁を備えた建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、主として電磁比例弁に関する。
【背景技術】
【0002】
制御対象の油圧機器へ供給するパイロット油の給排を励磁電流に応じて調整する電磁比例弁が知られている。従来の電磁比例弁は、軸方向に移動可能なスプールを収容する弁本体と、当該スプールを駆動する駆動装置とを備えている。かかる電磁比例弁においては、軸方向におけるスプールの位置を切り替えることにより、そのスプールの位置に応じた制御圧を制御対象の油圧機器へ供給することができる。
【0003】
電磁比例弁は、特開2005-188707号公報(特許文献1)に開示されているように、方向切替弁におけるパイロット弁として用いられる。同公報に記載されている方向切替弁においては、電磁比例弁から供給される制御圧によりメインスプールのスプール位置が切り替えられる。
【0004】
電磁比例弁から出力される制御圧のキャリブレーションを行うためには、この制御圧をモニタリングする必要がある。従来は、特開2001-289202号公報(特許文献2)に記載されているように、電磁比例弁と制御対象の弁構造体との間の接続ブロックに当該電磁比例弁から出力された制御圧を取り出すためのゲージポートを設け、このゲージポートに制御圧を計測するための圧力センサを取り付けることで制御圧を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-188707号公報
【文献】特開2001-289202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、従来の電磁比例弁から出力される制御圧を検出するためには、接続ブロックにゲージポートを設けたり、当該接続ブロックに圧力センサを取り付けるための継手を設ける必要がある。
【0007】
本開示の目的の一つは、電磁比例弁の制御圧を検出するための機構を簡素化することである。本開示の目的の一つは、電磁比例弁の外部にゲージポートや継手を設けることなく当該電磁比例弁の制御圧を検出できるようにすることである。本開示の上記以外の目的は、本明細書の記載全体を通じて明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態による電磁比例弁は、軸方向に移動可能なスプールと、該スプールの該軸方向の一方側に配置され、制御対象に制御圧を供給する制御ポート部と、を有する弁ユニットと、前記スプールの前記軸方向の他方側に配置されており前記制御圧を励磁電流により変化させるソレノイドコイルと、該ソレノイドコイルを収容し、前記制御ポート部と接続されている受圧室と、を有する駆動装置と、を備える。
【0009】
本発明の一実施形態による電磁比例弁は、前記受圧室における前記制御圧を検出する圧力センサを備える。
【0010】
本発明の一実施形態による電磁比例弁は、弁本体と、該弁本体の軸方向の一方側に配置される制御ポート部と、該弁本体内に移動可能に収納され、該軸方向の位置により該制御ポート部の制御圧を変化させるスプールと、を有する弁ユニットと、前記弁ユニットに対して前記制御ポート部の反対側に配置され、励磁電流により前記スプールの前記軸方向の位置を変化させるソレノイドコイルと、該ソレノイドコイルを収納するハウジングと、該ハウジング内であって前記制御ポート部と接続されている受圧室と、を有する駆動装置と、を備える。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記ハウジングは、前記受圧室における前記制御圧を検出する圧力センサを備える。
【0012】
本発明の一実施形態による電磁比例弁は、前記圧力センサを覆い、ハウジングに取り付けられる蓋部を備える。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記駆動部は、前記受圧室の少なくとも一部を画定する駆動ロッドを備える。
【0014】
本発明の一実施形態において、前記駆動部は、前記受圧室の少なくとも一部を画定し、前記駆動ロッドに設けられたプランジャーを備える。
【0015】
本発明の一実施形態による電磁比例弁は、弁本体と、該弁本体の軸方向の一方側に配置される制御ポート部と、該弁本体内に移動可能に収納され、該軸方向の位置により該制御ポート部の制御圧を変化させるスプールと、を有する弁ユニットと、前記弁ユニットに対して前記制御ポート部の反対側に配置され、励磁電流により前記スプールの前記軸方向の位置を変化させるソレノイドコイルと、該ソレノイドコイルを収納するハウジングと、該ハウジング内にあり前記制御ポート部と接続されている受圧室と、を有する駆動装置と、前記受圧室における前記制御圧を検出する圧力センサと、前記圧力センサを覆い、前記ハウジングに取り付けられる蓋部と、を備える。
【0016】
本発明の一実施形態による方向切替弁は、上記のいずれかの電磁比例弁を備える。
【0017】
本発明の一実施形態による建設機械は、上記の方向切替弁を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明の実施形態によって、電磁比例弁の外部にゲージポートや継手を設けることなく当該電磁比例弁から出力される制御圧を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態による電磁比例弁の外観を模式的に示す図である。
図2図1の電磁比例弁の縦断面図である。図2においては、スプールが中立位置にある。
図3図1の電磁比例弁の縦断面図である。図2においては、スプールが供給位置にある。
図4図1の電磁比例弁の縦断面図である。図2においては、スプールが排出位置にある。
図5図1の電磁比例弁を備える方向切替弁を説明するブロック図である。
図6図5の方向切替弁を備える建設機械を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、適宜図面を参照し、本発明の様々な実施形態を説明する。なお、複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。各図面においては、説明の都合上、一部の構成要素が省略されることがある。
【0021】
本発明の一実施形態による電磁比例弁1について、図1から図4を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態による電磁比例弁1の外観を模式的に示す図であり、図2図4は、当該電磁比例弁1の縦断面図である。
【0022】
図示のように、電磁比例弁1は、駆動装置10と、弁ユニット30と、を備える。駆動装置10と弁ユニット30とは中心軸Aに沿って配置されている。本明細書において、中心軸Aに沿う方向を単に「軸方向」ということがある。本明細書において軸方向における前後に言及するときには、文脈上別に解される場合を除き、図1図4に示されている前後方向を基準とする。この用法に従えば、弁ユニット30は、駆動装置10の前方に配置されている。
【0023】
弁ユニット30は、軸方向に延びる中空の弁本体40と、この弁本体40に軸方向に移動可能に設けられたスプール70と、を備える。
【0024】
駆動装置10は、スプール70を駆動し、当該スプール70の軸方向における位置を制御する。駆動装置10は、中空のハウジング11と、蓋部12と、圧力センサ15と、ソレノイドコイル23と、固定鉄心24と、プランジャー26と、プランジャー26に設けられた駆動ロッド27と、を備える。
【0025】
ハウジング11は、中心軸A方向に沿って延びる円筒形状を有する。ハウジング11は、その内部空間と外部空間とを区画する外壁11aと、ガイド壁11bと、を有する。外壁11aは円筒形状を有する。ガイド壁11bは、外壁11aと同芯で外壁11aより小径の円筒形状を有する。ガイド壁11bは、外壁11aから径方向に離間した位置に設けられる。これにより、外壁11aとガイド壁11bとの間に空間が画定される。この外壁11aとガイド壁11bとの間の空間にソレノイドコイル23が支持される。
【0026】
ハウジング11は、軸方向に延びる貫通孔を有する。言い換えると、ハウジング11は中空であり、その内部空間がハウジング11の前方及び後方に開口している。ハウジング11の前方の開口は、固定鉄心24により封止されている。ハウジング11の後方の開口は、蓋部12により封止されている。蓋部12は、ハウジング11の後方の開口を封止することにより、受圧室を制御圧に維持する。蓋部12は、キャップ、蓋体、シール、及びハウジング11の後方の開口を閉塞して受圧室を制御圧に維持するための前記以外の部材である。蓋部12は、ハウジング11と一体であってもよい。言い換えると、蓋部12とハウジング11とは一体のワンピース構造を有していてもよい。ハウジング11の開口を封止するために、固定鉄心24及び蓋部12に加え、必要に応じてシール部材が用いられる。蓋部12の形状及び配置は本明細書で明示的に説明されたものには限定されない。蓋部12は、他の部材と協働してハウジング11の後方の開口を封止してもよい。
【0027】
プランジャー26及び駆動ロッド27はいずれも、ガイド壁11bで画定される円筒形状の空間において中心軸A上に配置されている。プランジャー26及び駆動ロッド27はいずれも中心軸Aに沿って前後方向に移動可能に設けられている。プランジャー26及び駆動ロッド27は、一体のワンピース構造を有していてもよい。駆動ロッド27は、プランジャー26から軸方向前方に延びている。図示の実施形態では、駆動ロッド27は、プランジャー26から軸方向後方に僅かに突出している。駆動ロッド27は、中心軸Aに沿って延びる棒状の部材である。
【0028】
プランジャー26の少なくとも一部は磁性体から成る。プランジャー26は、少なくともその一部がソレノイドコイル23の径方向内側に配置される。プランジャー26は、中心軸Aから径方向外側にシフトした位置において軸方向に延びる貫通孔26aを有する。
【0029】
ハウジング11の内部空間は、プランジャー26によって区画されている。具体的には、ハウジング11の内部区間は、軸方向においてプランジャー26よりも後側にある第1ソレノイド室14aと、軸方向においてプランジャー26よりも前側にある第2ソレノイド室14bと、に区画される。第1ソレノイド室14aと第2ソレノイド室14bとは貫通孔26aによって接続されている。このように、貫通孔26aは第1ソレノイド室14aと第2ソレノイド室14bとを接続する。本明細書においては貫通孔26aにより画定される作動油の流路を第1接続流路cp1と呼ぶことがある。
【0030】
圧力センサ15は、第1ソレノイド室14aの圧力を検出するセンサである。圧力センサ15は、検出した圧力を示す検出信号を不図示のコントローラに送信する。一実施形態において、圧力センサ15は、少なくともその一部が第1ソレノイド室14aに露出するように設けられる。図示の実施形態において、圧力センサ15は、その下面15aの一部が第1ソレノイド室14aに露出していてもよいし、下面15aの全部が第1ソレノイド室14aに露出してもよい。圧力センサ15の下面15aは、ステンレスダイヤフラム、シリコンダイヤフラム、又はこれら以外のダイヤフラムを有していてもよい。圧力センサ15は、ダイヤフラムの変形により生じる電気抵抗の変化を電気信号に変換するひずみゲージを備えてもよい。本発明に適用できる圧力センサは本明細書で明示的に説明されたものに限られない。
【0031】
図示の実施形態において、圧力センサ15は、蓋部12に設けられている。圧力センサ15は、少なくともその一部が蓋部12によって覆われている。圧力センサ15の設置場所は、図示された位置には限られない。圧力センサ15は、キャップ15の別の位置に設けられてもよい。圧力センサ15は、蓋部12以外の電磁比例弁1の構成要素に設けられてもよい。圧力センサ15は、ハウジングに設けられてもよい。例えば、圧力センサ15は、ハウジング11の内周面に取り付けられてもよい。
【0032】
ソレノイドコイル23は、不図示のコントローラから入力される制御信号に基づいて励磁される。コントローラは、各種の演算処理を行うプロセッサと、各種プログラム及び各種データを格納するメモリと、機器インタフェースと、を備える。機器インタフェースは、ソレノイドコイル23、圧力センサ15、及びこれら以外の機器と接続される。コントローラは、ソレノイドコイル23に制御信号(制御パルス)を出力することでプランジャー26及び駆動ロッド27を駆動し、これによりスプール70の位置を切り替える。コントローラは、圧力センサ15からの検出信号に基づいて後述する制御ポート部apに出力される制御圧を特定する。
【0033】
固定鉄心24は、概ね円柱形状を有する。固定鉄心24は、その径方向中心に軸方向に延びる貫通孔を有する。この貫通孔には、駆動ロッド27が挿入されている。駆動ロッド27は、固定鉄心24から弁ユニット30の内部空間に進入することができる。駆動ロッド27の先端(前端)はスプール70の基端(後端)に接している。
【0034】
固定鉄心24は、中心軸Aから径方向外側にシフトした位置において軸方向に延びる貫通孔24aを有する。貫通孔24aは貫通孔26aと対向する位置に設けられる。第2ソレノイド室14bと後述する予備室41とは、貫通孔24aによって接続されている。貫通孔24aによって第2ソレノイド室14bと予備室41とが接続される。本明細書においては貫通孔24aによって画定される流路を第2接続流路cp2と呼ぶことがある。
【0035】
プランジャー26は、ソレノイドコイル23により駆動される。すなわち、プランジャー26は、ソレノイドコイル23によって駆動されることにより、軸方向へ移動することができる。具体的には、ソレノイドコイル23に励磁電流が印加されると、プランジャー26が固定鉄心24に吸着され、これによりプランジャー26及び駆動ロッド27が軸方向前方へ移動する。駆動ロッド27が軸方向前方へ移動すると、スプール70が駆動ロッド27により軸方向前方に押される。このように、ソレノイドコイル23、固定鉄心24、プランジャー26、及び駆動ロッド27を有する駆動部によりスプール70が駆動される。
【0036】
次に、弁ユニット30について説明する。既述のとおり、弁ユニット30は、弁本体40と、弁本体40に移動可能に設けられたスプール70と、を備える。弁本体40は、軸方向に延びる貫通孔40aを有する。貫通孔40aは、弁本体40の前端から後端まで軸方向に延びている。弁本体40は、その後端の径方向中央に凹部40bを有する。凹部40bを画定する弁本体40の上面、固定鉄心24の前面、駆動ロッド27、及びスプール70により予備室41が画定されている。
【0037】
弁本体40は、圧力源Pに接続する圧力源ポート部ppと、タンクTに接続するタンクポート部tpと、制御圧が出力される制御ポート部apと、を有する。制御ポート部apは、スプール70又は弁本体40の軸方向の一方側(前方)に配置される。スプール70の軸方向の他方側(後方)には、ソレノイドコイル23が設けられる。制御ポート部apは、貫通孔40aの前端付近の領域よりなる。制御ポート部apは、制御対象の油圧機器と不図示の流路を介して接続されている。これにより、制御ポート部apによって制御対象の油圧機器に制御圧が供給される。
【0038】
スプール70は、軸方向に延びる軸形状を有している。スプール70は、貫通孔40a内に軸方向において移動可能に設けられている。スプール70の後端は、駆動ロッド27の先端に接している。スプール70は、中心軸Aに沿って延びる貫通孔70aを有する。貫通孔70aは、スプールの前端70bから後端70cまで延びている。スプール70は、作動油が流れる複数の流路を有する。図示の実施形態においては、スプール70の貫通孔70aによって作動油が流れるメイン流路mpが画定される。メイン流路mpは、スプールの前端70bから後端70cまで延びる。よって、メイン流路mpは、制御ポート部apに開口している。また、スプール70は、メイン流路mpからスプール70の外表面まで延びる第1分岐流路bp1及び第2分岐流路bp2を有する。スプール70は、その軸方向の後端付近に、メイン流路mpと予備室41とを接続する第3接続流路cp3を有する。
【0039】
弁ユニット30は、弁本体40内に配置された付勢部材80を有している。付勢部材80は、スプール70を駆動ロッド27に向けて付勢している。言い換えると、付勢部材80は、スプール70を中心軸Aに沿って後方に付勢している。付勢部材80は、例えば圧縮ばねである。
【0040】
付勢部材80から受ける軸方向後方への付勢力によって、スプール70は駆動ロッド27と常時接触している。よって、駆動ロッド27が中心軸Aに沿って前方へ移動すると、この駆動ロッド27からの推力により、スプール70も弁本体40に対して中心軸に沿って前方へ移動する。逆に、駆動ロッド27が中心軸Aに沿って後方へ移動すると、スプール70は、付勢部材80からの付勢力により、駆動ロッド70と接触したまま中心軸Aに沿って後方へ移動する。駆動ロッド27からスプール70に対して作用する推力は、ソレノイドコイル23の励磁電流に応じた大きさとなる。よって、ソレノイドコイル23に印加する励磁電流の大きさを調整することにより、スプール70の軸方向における位置を制御することができる。
【0041】
スプール70は、少なくとも中立位置、供給位置、又は排出位置のいずれかに切り替えられる。図2は、スプール70が中立位置にある電磁比例弁1を示し、図3は、スプール70が供給位置にある電磁比例弁1を示し、図4は、スプール70が排出位置にある電磁比例弁1を示している。
【0042】
スプール70が図2に示されている中立位置に位置する場合、各ポートpp,tp,apは、互いから遮断される。この場合、制御ポート部apに接続されている油圧機器に対しては作動油の給排がなされない。
【0043】
スプール70が図3に示されている供給位置に位置する場合、制御ポート部apがメイン流路mp及び第1分岐流路bp1を介して圧力源ポート部ppに接続し、タンクポート部tpはその他のポートpp,apから遮断される。これにより、圧力源Pから油圧機器へ作動油が供給される。また、制御ポート部apは、メイン流路mp、第3接続流路cp3、予備室41、第2接続流路cp2、第2ソレノイド室14b、及び第1接続流路cp1を介して第1ソレノイド室14aに接続されているので、スプール70が供給位置に位置する場合には、第1ソレノイド室14aは、制御ポート部ap内の作動油の圧力である制御圧に維持される。第1ソレノイド室14a、及び、この第1ソレノイド室14aと制御ポート部apとの間にある空間(例えば、第2ソレノイド室14b)が制御ポート部apの制御圧に維持されるので、これらの空間の一部又は全部が受圧室とされる。例えば、第1ソレノイド室14a及び第2ソレノイド室14bの少なくとも一方が制御ポート部apの制御圧に維持される受圧室とされる。ソレノイドコイル23は、この受圧室に収容されている。この受圧室の少なくとも一部は、駆動ロッド27によって画定される。この受圧室の少なくとも一部は、プランジャー26によって画定される。
【0044】
スプール70が、図4に示されている排出位置に位置する場合、制御ポート部apがメイン流路mp及び第1分岐流路bp1を介してタンクポート部tpに接続し、圧力源ポート部ppはその他のポートtp,apから遮断される。これにより、油圧機器からタンクTへ油が排出される。
【0045】
続いて、電磁比例弁1の動作について説明する。ソレノイドコイル23が励磁されていない場合、付勢部材80の付勢力によって、スプール70は図4に示されている排出位置に維持される。このとき、既述のように、制御ポート部apからスプール70の主流路mp及び第2分岐流路bp2を介してタンクポート部tpに至る流路が開放される。したがって、制御ポート部apに接続された油圧機器からタンクポート部tpに接続されたタンクTに油が回収される。
【0046】
この状態から、ソレノイドコイル23が励磁されるとプランジャー26が駆動され、このプランジャー26が駆動ロッド27とともに、付勢部材80からの付勢力に抗して軸方向前方へ移動する。このとき、駆動ロッド27の前端はスプール70と接しているため、スプール70に軸方向前方への推力が作用する。この推力によって、スプール70は、排出位置から図2に示されている中立位置に到達する。スプール70が中立位置に位置すると、第1分岐流路bp1と圧力源ポート部ppとの接続が遮断されたまま、第2分岐流路bp2とタンクポート部tpとの接続も遮断される。したがって、スプール70が中立位置に位置するときには、制御ポート部apに接続された油圧機器からの油の排出及び当該油圧機器への油の供給は行われない。
【0047】
ソレノイドコイル23にさらに大きな励磁電流が印加されると、プランジャー26及び駆動ロッド27がさらに軸方向前方へ移動する。この駆動ロッド27から受ける推力により、スプール70は、図3に示されている供給位置に到達する。スプール70が供給位置に位置すると、制御ポート部apからスプール70の主流路mp及び第1分岐流路bp1を介して圧力源ポート部ppに至る流路が開放される。これにより、圧力源ポート部ppに接続された圧力源Pから制御ポート部apに接続された油圧機器へ油が供給される。スプール70が供給位置に位置する場合における圧力源Pから油圧機器への油の供給量は、第1分岐流路bp1と圧力源ポート部ppとが重なる面積、すなわち第1分岐流路bp1と圧力源ポート部ppとのラップ量に応じて変化する。より具体的には、励磁電流が大きいほど第1分岐流路bp1と圧力源ポート部ppとのラップ量が大きくなり、圧力源ポート部ppから制御ポート部apへより多くの油が流れる。したがって、励磁電流流が大きいほど制御ポート部apに出力される制御圧も大きくなる。
【0048】
既述のとおり、制御ポート部apは、メイン流路mp、第3接続流路cp3、予備室41、第2接続流路cp2、第2ソレノイド室14b、及び第1接続流路cp1を介して第1ソレノイド室14aに接続されている。よって、スプール70が供給位置に位置している間、第1ソレノイド室14aは、制御ポート部apから出力される制御圧に維持される。この第1ソレノイド室14aの圧力は、圧力センサ15によって検出され、検出された圧力を示す電気信号が圧力センサ15からコントローラに対して出力される。以上のようにして、電磁比例弁1と制御対象となる油圧機器との間にゲージポートや外付けの圧力センサを取り付けることなく、電磁比例弁1から出力される制御圧を検出することができる。
【0049】
続いて、図5及び図6を参照して、電磁比例弁1のアプリケーションの例について説明する。図5は、電磁比例弁1を備える方向切替弁100を説明するブロック図である。図示のように、方向切替弁100は、電磁比例弁1と、電磁比例弁1から供給される制御圧により作動する弁構造体2と、を備える。弁構造体2は、メインスプールを備えており、電磁比例弁1から出力される制御圧によって当該メインスプールの位置を切り替えることにより、不図示の油圧シリンダへの作動油の供給量を調整する。
【0050】
図6は、方向切替弁100を備える建設機械200を説明するブロック図である。建設機械200は、方向切替弁100を備える。建設機械は、例えば油圧により作動する油圧ショベルである。建設機械200は、様々な油圧シリンダを備える。建設機械200が備える油圧シリンダには、ブームを駆動するブームシリンダ、アームを駆動するアームシリンダ、バケットを駆動するバケットシリンダ、及びこれら以外の油圧シリンダが含まれる。方向切替弁100は、建設機械200に備えられる油圧シリンダに対する作動油の供給量を制御する。
【0051】
続いて、上記実施形態が奏する作用効果について説明する。上記の電磁比例弁1は、制御対象に供給される制御圧に維持される受圧室と、当該受圧室における制御圧を検出する圧力センサ15と、を備える。これにより、電磁比例弁1の外部に制御圧を取り出すためのゲージポートや圧力センサを取り付けるための継手を設ける必要がなくなる。よって、上記実施形態による電磁比例弁1によれば、簡素な機構で電磁比例弁1が出力する制御圧を検出することができる。また、ゲージポートや圧力センサ用の継手が不要となるため、電磁比例弁1と制御対象の油圧機器との間の接続ブロックをコンパクト化することができる。
【0052】
上記の実施形態において、受圧室は、例えば、第1ソレノイド室14a及び第2ソレノイド室14bの少なくとも一方である。図示の実施形態においては、圧力センサ15は、第1ソレノイド室14aの圧力を検出している。圧力センサ15は、第2ソレノイド室14bの圧力を検出するように設けられてもよい。この場合、圧力センサ15は、第2ソレノイド室14bに露出するように設けられてもよい。第1ソレノイド室14aと第2ソレノイド室14bのそれぞれにおける制御圧を検出するために、2つの圧力センサ15が設けられてもよい。
【0053】
上記の実施形態において、圧力センサ15は、ハウジング11内に設けられている。これにより、電磁比例弁1の外部に圧力センサを設ける必要がない。よって、コンパクトな機構で電磁比例弁の制御圧を検出することができる。
【0054】
上記の実施形態において、圧力センサ15は、ハウジング11の開口を封止する蓋部12に設けられている。開口を封止するキャップに圧力センサ15を設けることにより、圧力センサ15がハウジング11の表面に近い位置に設けられる。これにより、圧力センサ15の検出信号を外部に容易に取り出すことができる。例えば、圧力センサ15とコントローラとの間に信号線が設けられ、この信号線を介して圧力センサ15の検出信号がコントローラに送信される場合には、信号線の引き回しが容易となる。
【0055】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【0056】
本明細書及び添付図面で明示された駆動装置10及び弁ユニット30の構成部材の具体的な形状、配置、機能、及び材料は例示である。本発明の趣旨に反しない限り、駆動装置10及び弁ユニット30の各構成部材の形状、配置、機能、及び材料は、適宜変更され得る。例えば、駆動装置10は、ソレノイドコイル23に励磁電流を流した際に、駆動ロッド27が軸方向後方へ移動するように駆動ロッドを駆動してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 電磁比例弁
10 駆動装置
11 ハウジング
12 蓋部
14a 第1ソレノイド室14a
14b 第2ソレノイド室14b
15 圧力センサ
23 ソレノイドコイル
24 固定鉄心
26 プランジャー
27 駆動ロッド
30 弁ユニット
40 弁本体
70 スプール
P 圧力源
T タンク
ap 制御ポート部
pp 圧力源ポート部
tp タンクポート部
mp メイン流路
cp1 第1接続流路
cp2 第2接続流路
cp3 第3接続流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6