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特許7361477車両の乗員監視装置、および交通システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】車両の乗員監視装置、および交通システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20231006BHJP
   B60R 21/0136 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
G08G1/16 F
B60R21/0136 310
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019042455
(22)【出願日】2019-03-08
(65)【公開番号】P2020144752
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100182051
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 直宏
(74)【代理人】
【識別番号】100179280
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 育郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180747
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】時崎 淳平
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮太
(72)【発明者】
【氏名】丸橋 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】大西 恵太
【審査官】増子 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-147557(JP,A)
【文献】特開平07-047866(JP,A)
【文献】特開2002-362301(JP,A)
【文献】特開2017-105357(JP,A)
【文献】特開2003-168177(JP,A)
【文献】特開2016-088201(JP,A)
【文献】特開2018-152034(JP,A)
【文献】特開2010-039992(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103818385(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 10/30
B60W 30/00 - 60/00
G08G 1/00 - 99/00
B60R 21/00 - 21/13
B60R 21/34 - 21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に乗車している乗員を撮像する撮像デバイスと、
前記撮像デバイスによる撮像機能および撮像された画像を記録する画像記録機能を含む基本機能の処理と、前記撮像された画像に基づいて、乗車している少なくともドライバについての判定処理を実行可能な制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記車両の衝突が予測または検出された場合、前記基本機能の処理を実行し、前記判定処理停止するように構成され、
前記停止する判定処理には、少なくともわき見判定機能、居眠り・眠気判定機能、デッドマン判定機能、ジェスチャ判定機能、感情判定機能、個人認識機能のうち一つ以上の機能が含まれる、
車両の乗員監視装置。
【請求項2】
前記撮像デバイスが撮像する画角を、ドライバを撮像する状態とドライバとともに他の乗員を含めて撮像する状態との間で切り替える切替部、を有し、
前記制御部は、
前記車両の衝突が予測または検出された場合、前記切替部により、ドライバを撮像する状態から、ドライバとともに他の乗員を含めて撮像する状態へ切り替えて、ドライバ挙動検出機能および他乗員挙動検出機能のための処理を実行する、
請求項1記載の車両の乗員監視装置。
【請求項3】
車両に設けられる請求項1または2記載の車両の乗員監視装置と、
前記乗員監視装置と通信する他の通信装置と、
を有し、
前記他の通信装置は、少なくとも衝突の可能性を、前記乗員監視装置へ送信し、
前記乗員監視装置は、受信した衝突の可能性に基づいて、前記車両の衝突を予測または検出する、
交通システム。
【請求項4】
車両に乗車している乗員を撮像する撮像デバイスと、
前記撮像デバイスによる撮像機能および撮像された画像を記録する画像記録機能を含む基本機能の処理と、前記撮像された画像に基づいて、乗車している少なくともドライバについての判定処理を実行可能な制御部と、
を有し、
前記制御部は、
前記車両の衝突が予測された場合、前記基本機能の処理を実行し、前記判定処理を停止し、
前記車両の衝突が予測された後に衝突が検出されない場合、停止した前記判定処理を再開
前記停止する判定処理には、少なくともわき見判定機能、居眠り・眠気判定機能、デッドマン判定機能、ジェスチャ判定機能、感情判定機能、個人認識機能のうち一つ以上の機能が含まれる、
車両の乗員監視装置。
【請求項5】
前記制御部は、
停止した記判定処理について、わき見判定機能、居眠り・眠気判定機能、またはデッドマン判定機能のための処理を、ジェスチャ判定機能、感情判定機能、個人認識機能のための処理よりも優先して再開する、
請求項記載の車両の乗員監視装置。
【請求項6】
車両に乗車している乗員を撮像する撮像デバイスと、
前記撮像デバイスによる撮像機能および撮像された画像を記録する画像記録機能を含む基本機能の処理と、前記撮像された画像に基づいて、乗車している少なくともドライバについての判定処理を実行可能な制御部と、
前記撮像デバイスにより撮像された画像を記録可能なメモリと、
を有し、
前記制御部は、
前記車両の衝突が検出された場合、前記基本機能の処理を実行し、前記判定処理を停止し、前記撮像デバイスにより撮像される画像を前記メモリに記録するように構成され、
前記停止する判定処理には、少なくともわき見判定機能、居眠り・眠気判定機能、デッドマン判定機能、ジェスチャ判定機能、感情判定機能、個人認識機能のうち一つ以上の機能が含まれる、
車両の乗員監視装置。
【請求項7】
車両に乗車している乗員を撮像する撮像デバイスと、
前記撮像デバイスによる撮像機能および撮像された画像を記録する画像記録機能を含む基本機能の処理と、前記撮像された画像に基づいて、乗車している少なくともドライバについての判定処理を実行可能な制御部と、
前記撮像デバイスにより撮像された画像を記録可能なメモリと、
を有し、
前記制御部は、
前記車両の衝突が検出された場合、前記基本機能の処理を実行し、前記判定処理を停止し、前記撮像デバイスにより撮像される画像を前記メモリに記録するように構成され、
前記停止する判定処理には、少なくともわき見判定機能、居眠り・眠気判定機能、デッドマン判定機能、ジェスチャ判定機能、感情判定機能、個人認識機能のうち一つ以上の機能が含まれ、
前記車両の衝突が検出された後所定の期間が経過したら、停止してい少なくとも前記わき見判定機能、前記居眠り・眠気判定機能、および前記デッドマン判定機能のうち一つ以上を再開し、再開した前記わき見判定機能、前記居眠り・眠気判定機能、および前記デッドマン判定機能のうち一つ以上の判定結果をメモリに記録する、
車両の乗員監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の乗員監視装置、および交通システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両では、乗員監視装置を設けることがある。
乗員監視装置は、予め組み込まれた車両に乗車している乗員を判定する機能を有する(特許文献1)。乗員監視装置により判定された乗員に応じて、車両は、車両の制御を許可したり、禁止したりすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-43009号公報
【文献】特開2016-038793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の乗員監視装置では、実用化するにあたり、さらに特許文献2のようにドライバの姿勢などを判定することが求められる。乗員監視装置には、多機能化が求められる。
その一方で、乗員監視装置には、今後、これらの通常走行のための判定機能だけでなく、衝突の際に乗員の挙動を検出などすることが望まれてくると予想される。特に、ドライバのみならず、ドライバ以外の他の乗員についても、衝突の際の挙動を検出できることが望まれるようになる予想される。
これらの多種多様な多くの検出機能や判定機能を実行するためには、乗員監視装置に用いる制御部としてのECUには、高い処理能力が求められる。
しかも、乗員監視装置に用いる制御部としてのECUが単に高い処理能力を有するだけでは、たとえば乗員保護に対して十分な性能が得られない可能性がある。
【0005】
このように、車両の乗員監視装置には、複数の判定機能を状況に応じて適切に実行することが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施の形態に係る車両の乗員監視装置は、車両に乗車している乗員を撮像する撮像デバイスと、前記撮像デバイスによる撮像機能および撮像された画像を記録する画像記録機能を含む基本機能の処理と、前記撮像された画像に基づいて、乗車している少なくともドライバについての判定処理を実行可能な制御部と、を有し、前記制御部は、前記車両の衝突が予測または検出された場合、前記基本機能の処理を実行し、前記判定処理停止するように構成され、前記停止する判定処理には、少なくともわき見判定機能、居眠り・眠気判定機能、デッドマン判定機能、ジェスチャ判定機能、感情判定機能、個人認識機能のうち一つ以上の機能が含まれる。
車両の乗員監視装置。
【0007】
好適には、前記撮像デバイスが撮像する画角を、ドライバを撮像する状態とドライバとともに他の乗員を含めて撮像する状態との間で切り替える切替部、を有し、前記制御部は、前記車両の衝突が予測または検出された場合、前記切替部により、ドライバを撮像する状態から、ドライバとともに他の乗員を含めて撮像する状態へ切り替えて、ドライバ挙動検出機能および他乗員挙動検出機能のための処理を実行する、とよい。
【0010】
本発明の一実施の形態に係る交通システムは、車両に設けられる上述したいずれかの車両の乗員監視装置と、前記乗員監視装置と通信する他の通信装置と、を有し、前記他の通信装置は、少なくとも衝突の可能性を、前記乗員監視装置へ送信し、前記乗員監視装置は、受信した衝突の可能性に基づいて、前記車両の衝突を予測または検出する。
【0011】
本発明の一実施の形態に係る車両の乗員監視装置は、車両に乗車している乗員を撮像する撮像デバイスと、前記撮像デバイスによる撮像機能および撮像された画像を記録する画像記録機能を含む基本機能の処理と、前記撮像された画像に基づいて、乗車している少なくともドライバについての判定処理を実行可能な制御部と、を有し、前記制御部は、前記車両の衝突が検出された場合、前記基本機能の処理を実行し、前記判定処理を停止し、前記車両の衝突が予測された後に衝突が検出されない場合、停止した前記判定処理を再開前記停止する判定処理には、少なくともわき見判定機能、居眠り・眠気判定機能、デッドマン判定機能、ジェスチャ判定機能、感情判定機能、個人認識機能のうち一つ以上の機能が含まれる。
【0012】
好適には、前記制御部は、停止した記判定処理について、わき見判定機能、居眠り・眠気判定機能、またはデッドマン判定機能のための処理を、ジェスチャ判定機能、感情判定機能、個人認識機能のための処理よりも優先して再開する、とよい。
【0014】
本発明の一実施の形態に係る車両の乗員監視装置は、車両に乗車している乗員を撮像する撮像デバイスと、前記撮像デバイスによる撮像機能および撮像された画像を記録する画像記録機能を含む基本機能の処理と、前記撮像された画像に基づいて、乗車している少なくともドライバについての判定処理を実行可能な制御部と、前記撮像デバイスにより撮像された画像を記録可能なメモリと、を有し、前記制御部は、前記車両の衝突が検出された場合、前記基本機能の処理を実行し、前記判定処理を停止し、前記撮像デバイスにより撮像される画像を前記メモリに記録するように構成され、前記停止する判定処理には、少なくともわき見判定機能、居眠り・眠気判定機能、デッドマン判定機能、ジェスチャ判定機能、感情判定機能、個人認識機能のうち一つ以上の機能が含まれる。
【0015】
本発明の一実施の形態に係る車両の乗員監視装置は、車両に乗車している乗員を撮像する撮像デバイスと、前記撮像デバイスによる撮像機能および撮像された画像を記録する画像記録機能を含む基本機能の処理と、前記撮像された画像に基づいて、乗車している少なくともドライバについての判定処理を実行可能な制御部と、前記撮像デバイスにより撮像された画像を記録可能なメモリと、を有し、前記制御部は、前記車両の衝突が検出された場合、前記基本機能の処理を実行し、前記判定処理を停止し、前記撮像デバイスにより撮像される画像を前記メモリに記録するように構成され、前記停止する判定処理には、少なくともわき見判定機能、居眠り・眠気判定機能、デッドマン判定機能、ジェスチャ判定機能、感情判定機能、個人認識機能のうち一つ以上の機能が含まれ、前記車両の衝突が検出された後所定の期間が経過したら、停止してい少なくとも前記わき見判定機能、前記居眠り・眠気判定機能、および前記デッドマン判定機能のうち一つ以上を再開し、再開した前記わき見判定機能、前記居眠り・眠気判定機能、および前記デッドマン判定機能のうち一つ以上の判定結果をメモリに記録する。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、撮像デバイスによる撮像機能および撮像された画像を記録する画像記録機能を含む基本機能の処理と、撮像された画像に基づいて、乗車している少なくともドライバについての複数の判定処理を実行可能な制御部は、車両の衝突が予測または検出された場合、基本機能の処理を実行し、判定処理を停止する。よって、本発明では、車両の衝突が予測または検出された後には、乗員監視装置の制御部は、非常に短い期間ごとに、停止していない残りの判定処理を、即時性を確保するように実行可能である。

【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係る交通システムで利用可能な自動車の模式的な説明図である。
図2図2は、図1の自動車の制御系の模式的な説明図である。
図3図3は、図2の乗員監視ECUを有する乗員監視装置の構成図である。
図4図4は、乗員監視装置に実現される複数の機能の一例の説明図である。
図5図5は、図3の乗員監視ECUによる複数の機能の起動処理のフローチャートである。
図6図6は、乗員監視ECUにより実行されるAI機能の一例を説明する図である。
図7図7は、AI機能についての、図5に対応する起動処理の流れを示すフローチャートである。
図8図8は、本発明の第二実施形態に係る交通システムにおいて、乗員監視ECUによる複数の機能の起動処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0019】
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態に係る交通システム80で利用可能な自動車1の模式的な説明図である。
図1の自動車1は、車両の一例である。自動車1は、車体の中央に乗員が乗車する車室2が設けられる。車室2には、乗員が着座するシート3が設けられる。車室2の前部には、トーボード4が設けられる。シート3の前側において、トーボード4から後向きにハンドル5が突出する。乗員は、シート3に着座してハンドル5などの操作部材を操作することができる。
【0020】
図2は、図1の自動車1の制御系50の模式的な説明図である。図2には、乗員監視装置40とともに、交通システム80の他の通信装置が図示されている。
【0021】
図2では、自動車1の制御系50を構成する複数の制御モジュールが、それぞれに組み込まれる制御ECU(Electronic Control Unit)により代表して示している。
具体的には、図2には、駆動ECU51、操舵ECU52、制動ECU53、自動運転/運転支援ECU54、運転操作ECU55、検出ECU56、空調ECU57、乗員監視ECU58、保護ECU59、外通信ECU60、UIECU61、システムECU62、が図示されている。これら複数の制御ECUは、自動車1で採用されるたとえばCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)といった車ネットワーク66により、中継装置としてのセントラルゲートウェイ67(CGW)67に接続される。
そして、各制御モジュールにおいて、制御ECUは、自動車1で用いる電子機器に接続される。起動された制御ECUは、各種の処理を実行し、車ネットワーク66から取得する情報(データ)に基づいてそれぞれに接続されている電子機器の動作を制御する。また、制御ECUは、それぞれに接続されている電子機器の動作状態などの情報(データ)を車ネットワーク66へ出力する。
たとえば、運転操作ECU55には、乗員が自動車1の走行を制御するために操作するハンドル5、ブレーキペダル71、アクセルペダル72、シフトレバー73などの操作検出センサが接続される。運転操作ECU55は、操作量に応じた制御情報を、車ネットワーク66へ出力する。駆動ECU51、操舵ECU52、制動ECU53は、車ネットワーク66から情報を取得し、自動車1の走行を制御する。
【0022】
検出ECU56には、自動車1の速度センサ74、衝突などでの加速度を検出する加速度センサ75、上述した外カメラ31、などが接続される。検出ECU56には、自動車1の速度センサ74および加速度センサ75の値、外カメラ31の画像などを、車ネットワーク66へ出力する。検出ECU56は、外カメラ31の画像に基づいて衝突を予測し、予測結果を車ネットワーク66へ出力してよい。検出ECU56は、加速度センサ75の加速度が通常走行中より衝撃による高い閾値以上である場合、衝突検出を車ネットワーク66へ出力してよい。検出ECU56は、外カメラ31の画像に基づいて歩行者または自転車との衝突を予想した後に加速度センサ75の加速度が通常より高い閾値以上である場合、歩行者との衝突検出を車ネットワーク66へ出力してよい。セントラルゲートウェイ67は、情報を中継する。UIECU61は、車ネットワーク66から情報を取得し、それに接続される表示デバイス76に、これらの情報を表示する。UIECU61には、表示デバイス76とともに、乗員が操作する操作デバイス77が接続される。
【0023】
乗員監視ECU58には、上述した内カメラ41、マイクロホン78、が接続される。乗員監視ECU58は、乗員監視装置40の制御ECUであり、内カメラ41の画像、マイクロホン78の音、車ネットワーク66から取得するたとえば衝撃の加速度などの情報に応じて、自動車1に乗車している乗員に関する各種の処理を実行する。乗員監視ECU58は、必要に応じて画像、音、その他の情報(データ)を車ネットワーク66へ出力する。
【0024】
保護ECU59には、エアバッグ装置20、シートベルト装置10、が接続される。保護ECU59は、車ネットワーク66から取得した情報に基づいて、エアバッグ装置20およびシートベルト装置10の動作を制御する。
【0025】
外通信ECU60は、たとえば、自動車1の外に存在する通信基地局81、他の自動車82の通信装置と無線通信する。通信基地局81、および他の自動車82の通信装置は、サーバ装置83とともに、交通システム80を構成する。外通信ECU60は、車ネットワーク66から取得した情報を、通信基地局81、他の自動車82の通信装置へ無線送信する。送信された情報は、たとえばサーバ装置83や他の自動車82において利用され得る。また、外通信ECU60は、通信基地局81、他の自動車82の通信装置から、情報を受信し、車ネットワーク66へ出力する。これにより、自動車1のたとえば乗員監視ECU58は、外通信ECU60を通じて、車外のサーバ装置83や他の自動車82との間で情報(データ)を送受することができる。
【0026】
また、図2に示す制御系50は、自動車1に設けられるバッテリ91から各部へ電力が供給されることにより動作し得る。バッテリ91から各部への電力供給線は、たとえば車ネットワーク66の通信ケーブルとともに自動車1に張り巡らされる。制御系50は、バッテリ91のほかにも、発電機、受電機から電力が供給されてもよい。
【0027】
上述するように、自動車1では、衝突の際に乗員を保護するために、シートベルト装置10、エアバッグ装置20などの乗員保護装置が設けられる。
シートベルト装置10は、シート3に着座した乗員の前に掛け渡されるシートベルト11を有する。シートベルト装置10は、衝突の際にシートベルト11に張力を与えて、乗員がシート3から離れ難くなるように拘束する。
エアバッグ装置20は、たとえばシート3の前側や横側において展開するエアバッグ21を有する。エアバッグ装置20は、衝突の際にエアバッグ21を展開し、シート3から倒れたり離れたりしようとする乗員を支える。
このように、自動車1は、衝突の際に、乗車している乗員を保護することが可能である。
しかしながら、自動車1は、正面などの特定の方向のみにおいて衝突するものではない。自動車1は、図1に矢線に示すように、たとえば斜め方向などからも衝突する可能性がある。
このような特殊な衝突の場合において、乗員保護装置は、乗車している乗員を完璧に保護できない可能性がある。
また、乗員保護装置は、乗員についての大けがを抑制し得たとしても、小さなけがを抑制し得るとは限らない。乗員保護装置は、自動車1に想定されるあらゆる衝突について、無けがを保証するものではない。
【0028】
そこで、自動車1では、乗員などの人の保護性能をさらに向上させるために、さらなる工夫を講じることが求められている。
自動車1では、自動車1の走行方向である前方などを監視する外カメラ31を設け、撮像した画像を解析することにより、衝突を事前に予測したり、予測に基づいて自動車1を自動制御したりすることが可能になる。
また、自動車1には、自動車1に乗車している乗員を監視する乗員監視装置40(DMS:Driver Monitoring System)40を設けることができるものがある。乗員監視装置40は、たとえばトーボード4の上部において車幅方向の中央に設けられ、自動車1に乗車している乗員を識別する。これにより、自動車1には、識別した乗員に応じて、自動車1の走行制御を許可したり禁止したりすることができる。
そして、このような乗員監視装置40の内カメラ41の画像から、衝突の際に乗員の特に頭部の位置および挙動を判定し、これに応じて乗員保護装置の動作を制御することが考えられる。特に、ドライバのみならず、ドライバ以外の他の乗員についても、衝突の際の挙動を検出できることが望まれるようになる予想される。これにより、乗員保護装置による乗員保護を最適化することが可能になると考えられる。
また、自動車1の乗員監視装置40には、ドライバの姿勢などを判定することが求められる。乗員監視装置40には、多機能化が求められる。
これらの多種多様な多くの検出機能や判定機能を実行するためには、乗員監視装置40に用いる乗員監視ECU58には、高い処理能力が求められる。
しかも、乗員監視装置40に用いる乗員監視ECU58が単に高い処理能力を有するだけでは、たとえば乗員保護に対して十分な性能が得られない可能性がある。
たとえば、乗員監視ECU58が衝突の際に乗員の位置および挙動を高速で判定しようとする間に、乗員の判定機能などの他の機能の処理が割り込むことになると、乗員監視ECU58は、衝突の際に必要とされる最新の乗員の位置および挙動を判定できなくなる可能性がある。この場合、乗員保護装置は、最新ではない少し前の乗員の位置および挙動に応じて、乗員保護を実行することになる。
このように、自動車1の乗員監視装置40には、複数の判定機能を自動車1の状況に応じて適切に実行することが求められる。
【0029】
図3は、図2の乗員監視ECU58を有する乗員監視装置40の構成図である。
【0030】
図3の乗員監視装置40は、車内通信部101、乗員監視ECU58、メモリ102、タイマ103、マイクロホン78、内カメラ41、レンズ104の駆動部105、およびこれらを接続する内部バス106、を有する。乗員監視装置40は、この他にもたとえば、独自に、車外緊急通信機107、補助加速度センサ108、歩行者などを撮像するための補助外カメラ109を、内部バス106に接続して備えてもよい。これにより、乗員監視装置40は、それ単独で、衝突時処理を実行するための機能を確保することができる。
また、乗員監視装置40の各部には、自動車1のバッテリ91から、電力が供給される。その電力供給経路には、バックアップ電力を蓄積する蓄電池110が接続される。乗員監視装置40は、自動車1から取外可能に設けられてよい。
【0031】
車内通信部101は、車ネットワーク66に接続される。車内通信部101は、車ネットワーク66を通じて、たとえば図中に例示するように検出ECU56、保護ECU59、外通信ECU60、などの他の制御ECUとの間で情報(データ)を送受する。
【0032】
内カメラ41は、自動車1の車室2を撮像する撮像デバイスである。内カメラ41は、乗車している乗員を撮像する。
【0033】
駆動部105は、レンズ104を駆動して、レンズ104の位置を制御する。レンズ104の位置が制御されることにより、内カメラ41が撮像する画角が変化する。レンズ104が最遠位置に制御されると、内カメラ41は、たとえば図1(B)の二点鎖線枠に示すように、ハンドル5などを操作するためにシート3に着座しているドライバとしての乗員の頭部を含む上体を撮像する。レンズ104が最近位置に制御されると、内カメラ41は、たとえば図1(B)の一点鎖線枠に示すように、車室2の全体を撮像する。この場合、内カメラ41は、ドライバとしての乗員の他に、助手席や後部座席のシート3に着座している他の乗員をも撮像することができる。
【0034】
マイクロホン78は、自動車1の車室2の音を電気信号へ変換する。
【0035】
タイマ103は、経過時間または時刻を計測する。
【0036】
車外緊急通信機107は、自動車1事故などの緊急時などにおいて自動車1の外の通信基地局81や他の自動車82と通信することができる通信装置である。車外緊急通信機107は、外通信ECU60と同じ通信方式で、通信基地局81や他の自動車82と通信してよい。
【0037】
補助加速度センサ108は、加速度センサ75と同様に、自動車1に作用する加速度を検出する。
【0038】
メモリ102は、乗員監視装置40が取得する各種の画像および検出値などを記録する。また、メモリ102は、乗員監視用のプログラムを記録する。
乗員監視ECU58は、メモリ102から乗員監視用のプログラムを読み込んで実行する。これにより、乗員監視ECU58には、乗員監視装置40の制御部が実現される。乗員監視装置40の制御部は、乗員監視装置40の全体の動作を制御し、乗員監視装置40に乗員監視機能を実現する。
【0039】
図4は、乗員監視装置40に実現される複数の機能の一例の説明図である。
【0040】
図4の乗員監視装置40に実現される複数の機能は、乗員監視装置40としての基本機能、乗員の安全を判定する安全機能、乗員の利便性を向上する利便機能、に分類できる。
基本機能には、たとえば、内カメラ41による撮像機能、メモリ102への画像記録機能、車内通信部101による車内通信機能、車内通信部101および外通信ECU60の通信による車外通信機能、がある。撮像機能は、内カメラ41および補助外カメラ109により実現されてもよい。車外通信機能は、車外緊急通信機107により実現されてもよい。
安全機能には、たとえば、ドライバを含む撮像画像に基づいてドライバの挙動を検出するドライバ挙動検出機能、ドライバ以外の他の剰員の撮像画像に基づいて他の乗員の挙動を検出する他乗員挙動検出機能、ドライバを含む撮像画像に基づいてドライバのわき見を判定するわき見(視線)判定機能、ドライバを含む撮像画像に基づいてドライバの居眠りや眠気を判定する居眠り・眠気判定機能、ドライバを含む撮像画像に基づいてドライバの生死を判定するデッドマン判定機能、がある。
利便機能には、たとえば、ドライバを含む撮像画像に基づいてドライバのジェスチャを判定するジェスチャ判定機能、ドライバを含む撮像画像に基づいてドライバの感情を判定する感情判定機能、ドライバを含む撮像画像に基づいてドライバの個人認識する個人認識機能、ドライバを含む撮像画像に基づいてその他の判定をするその他の判定機能、がある。また、利便機能には、上述した各機能でのAI判定処理に用いるAI判定エンジンを更新する更新機能、が含まれる。
【0041】
乗員監視ECU58は、自動車1の状況に応じて、これら複数の機能(処理)の実行/停止を制御する。図4には、自動車1が正常に動作して走行可能な状況である通常起動状態、自動車1の衝突を予測した状況である衝突予測後状態、自動車1の実際の衝突を検知した状況である衝突検知後状態、が示されている。
通常起動状態である場合、乗員監視ECU58は、乗員監視装置40について図4のすべての機能を実行する。ただし、乗員監視ECU58は、レンズ104が広角である場合のみ、他乗員挙動検出機能を実行する。乗員監視ECU58は、複数の判定処理を実行することができる。
衝突予測後状態である場合、乗員監視ECU58は、乗員監視装置40の一部の機能のみを実行し、その他の機能を停止する。たとえば、乗員監視ECU58は、利便機能についてはすべてを停止する。また、乗員監視ECU58は、安全機能についての、わき見(視線)判定機能、居眠り・眠気判定機能、デッドマン判定機能、を停止する。乗員監視ECU58は、それ以外の基本機能、ドライバ挙動検出機能、および他乗員挙動検出機能を実行する。なお、乗員監視ECU58は、基本機能についての、車外通信機能、を停止してもよい。
衝突検知後状態である場合、乗員監視ECU58は、衝突予測後状態よりも少ない最低限度の機能のみを実行し、その他の機能を停止する。たとえば、乗員監視ECU58は、利便機能、および安全機能についてはすべてを停止する。また、乗員監視ECU58は、基本機能についての、車外通信機能、を停止する。乗員監視ECU58は、それ以外の撮像機能、画像記録機能、車内通信機能、を実行する。なお、乗員監視ECU58は、車内通信機能の替わりに、または車内通信機能とともに、車外通信機能、を実行してもよい。停止された機能により、乗員監視ECU58の処理能力は消費されなくなる。また、乗員監視ECU58の消費電力も抑制可能である。
【0042】
図5は、図3の乗員監視ECU58による複数の機能の起動処理のフローチャートである。
乗員監視ECU58は、乗員監視装置40が自動車1とともに起動されると、図5の起動処理を実行する。なお、乗員監視ECU58は、自動車1が停車中でも、たとえばドアキーの解除などにより、図5の起動処理を実行してよい。
【0043】
ステップST1において、乗員監視ECU58は、乗員監視装置40について図4の通常起動状態に示すすべての機能を起動する。乗員監視装置40は、たとえば乗員監視に設けられる内カメラ41により、ドライバの静止画の撮像し、その画像に基づいてドライバを特定する個人認識処理を実行する。予め自動車1に登録されたドライバとして認証された場合、乗員監視ECU58は、車内通信部101により、認証OKの結果を車ネットワーク66へ出力する。たとえば、運転操作ECU55は、認証OKの結果に基づいてハンドル5などの操作を許可する。これにより、自動車1は、走行可能になる。ドライバが降車すると、乗員監視ECU58は、認証されたドライバが無いことを示す認証NGの結果を車ネットワーク66へ出力する。運転操作ECU55は、認証NGの結果に基づいてハンドル5などの操作を禁止する。これにより、自動車1は、走行不能となる。
【0044】
ステップST2において、乗員監視ECU58は、衝突予想の有無を判断する。乗員監視ECU58は、たとえば検出ECU56が車ネットワーク66へ出力した衝突予測を車内通信部101から取得し、衝突予想の有無を判断する。また、外通信ECU60は、他の自動車82や通信基地局81などから自車またはその前を走行する他の自動車82についての衝突の可能性を受信すると、進路前方の衝突情報を車ネットワーク66へ出力する。乗員監視ECU58は、この進路前方の衝突情報を取得して、衝突予想の有無を判断してよい。衝突予想がありでない場合、乗員監視ECU58は、処理をステップST7へ進める。衝突予想がある場合、乗員監視ECU58は、処理をステップST3へ進める。
【0045】
衝突を予想した後のステップST3において、乗員監視ECU58は、画角切り替えを駆動部105へ指示して、画角を挟角から広角へ切り替える。内カメラ41は、ドライバのみを撮像する状態から、車室2の全体を撮像する状態に切り替わる。また、通常起動状態にあるため、乗員監視ECU58は、撮像画像に基づいて、ドライバ挙動検出処理とともに、他乗員挙動検出処理を実行する。
【0046】
ステップST4において、乗員監視ECU58は、乗員監視装置40の動作状態を、衝突予想後の第一縮退状態とする。第一縮退状態において、乗員監視ECU58は、図4の衝突予測後状態にて継続(0)が付されている機能のみを実行し、停止(×)が付されている挙動検出処理以外の判定処理(機能)を停止する。これにより、乗員監視ECU58は、他の判定処理の割り込みなどにより邪魔されることなく、ドライバ挙動検出機能と、他乗員挙動検出機能とを実行する。乗員監視ECU58は、短く安定した周期で高速に、ドライバ挙動検出機能と、他乗員挙動検出機能とを、繰り返し実行することができる。その結果、乗員監視ECU58は、内カメラ41による最新の広角画像に基づいて、ドライバを含む複数の乗員の位置および挙動について現在のものを検出できる。乗員監視ECU58は、ドライバを含む複数の乗員の位置および挙動についての判定結果として、最新のものを車ネットワーク66へ出力できる。保護ECU59には、ドライバを含む複数の乗員の位置および挙動についての最新の判定結果に基づいて、エアバッグ装置20およびシートベルト装置10の動作を準備できる。
【0047】
ステップST5において、乗員監視ECU58は、衝突により自動車1に作用する加速度を取得して、衝突を検出する。乗員監視ECU58は、たとえば検出ECU56が車ネットワーク66へ出力した衝突検出を車内通信部101から取得し、衝突を検出する。乗員監視ECU58は、補助加速度センサ108の加速度が通常走行中より高い衝突有無の閾値以上である場合、衝突検出と判断してよい。衝突が検出されない場合、処理をステップST2へ戻す。衝突が検出される場合、処理をステップST6へ進める。
【0048】
ステップST6において、乗員監視ECU58は、乗員監視装置40の動作状態を、衝突検出後の第二縮退状態とする。第二縮退状態において、乗員監視ECU58は、図4の衝突検知後状態にて継続(0)が付されている機能のみを実行し、停止(×)が付されている機能する。これにより、乗員監視ECU58は、他の判定処理の割り込みなどにより邪魔されることなく、内カメラ41により撮像された複数の乗員を撮像する画像をメモリ102に記録する処理のみを実行する。乗員監視ECU58は、複数の乗員を撮像した画像をメモリ102に繰り返し記録する処理のみの実行により、必要最小限の電力消費で動作することができる。
【0049】
ステップST2において衝突を予想しない場合、乗員監視ECU58は、処理をステップST7へ進める。乗員監視ECU58は、通常状態への復帰処理を実行する。
ステップST7において、乗員監視ECU58は、画角切り替えを駆動部105へ指示して、画角を広角から挟角へ切り替える。内カメラ41は、車室2の全体を撮像する状態から、ドライバのみを撮像する状態に切り替わる。
ステップST8において、乗員監視ECU58は、乗員監視装置40の動作状態を、衝突予想後の第一縮退状態から、通常起動状態へ戻す再開処理を実行する。乗員監視ECU58は、挙動検出処理以外の停止していた判定処理(機能)を起動させて、図4の通常起動状態に示すすべての機能を起動する。この際、乗員監視ECU58は、図4の利便機能および安全機能については、利便機能の判定処理より安全機能の判定処理を優先して先に起動する。
【0050】
ここで、乗員監視装置40のAIによる更新機能について説明する。
図6は、乗員監視ECU58により実行されるAI機能の一例を説明する図である。乗員監視ECU58は、図4の機能ごとに図6のAI機能を備えてよい。
図6のAI機能は、AI更新エンジン111、設定データ112、主推論アルゴリズム113、を有する。
設定データ112は、たとえば各種のパラメータである。
主推論アルゴリズム113は、設定データ112を用いて、乗員監視装置40の各機能の処理またはその一部の処理を実行するプログラムである。主推論アルゴリズム113は、たとえば画像データに基づいて判定対象の特徴についての期待値を生成する。この場合、図4の各機能は、主推論アルゴリズム113に基づいて最も高い期待値が得られる画像部分について、判定処理を実行すればよい。
AI更新エンジン111は、学習データに基づいて、設定データ112および/または主推論アルゴリズム113を更新するプログラムである。
たとえば、AI更新エンジン111は、学習データとしての画像データを取得し、その特徴を抽出し、特徴に基づく推論学習処理を実行し、その結果により設定データ112および/または主推論アルゴリズム113を更新する。これにより、設定データ112および/または主推論アルゴリズム113が更新される。
【0051】
図7は、AI機能についての、図5に対応する起動処理の流れを示すフローチャートである。
ステップST11において、乗員監視ECU58は、主推論アルゴリズム113を起動する。
ステップST12において、乗員監視ECU58は、AI更新エンジン111を起動する。
ステップST13において、AI更新エンジン111としての乗員監視ECU58は、学習データとしての画像データを取得する。画像データは、内カメラ41により撮像された画像でよい。
ステップST14において、AI更新エンジン111としての乗員監視ECU58は、画像データに含まれる特徴を抽出する。
ステップST15において、AI更新エンジン111としての乗員監視ECU58は、抽出した特徴と画像データとに基づいて、推論学習処理を実行する。
ステップST16において、AI更新エンジン111としての乗員監視ECU58は、推論学習処理の結果により、設定データ112および/または主推論アルゴリズム113を更新する。これにより、設定データ112および/または主推論アルゴリズム113が更新される。
ステップST17において、乗員監視ECU58は、衝突予想の有無を判断する。ステップST17は、図5のステップST2と同じである。衝突を予想しない場合、乗員監視ECU58は、処理をステップST12へ戻す。乗員監視ECU58は、上述した処理を繰り返し、設定データ112および/または主推論アルゴリズム113を更新し続ける。衝突を予想する場合、乗員監視ECU58は、処理をステップST18へ進める。
ステップST18では、乗員監視ECU58は、AI更新エンジン111を停止する。その後、乗員監視ECU58は、処理をステップST17へ戻す。乗員監視ECU58は、衝突が予想されている期間では、AI更新エンジン111を停止し続ける。乗員監視ECU58は、衝突が予想されている期間では、AI更新エンジン111の処理を実行しなくなる。乗員監視ECU58は、挙動検出処理以外の判定処理とともに更新機能を停止して、挙動検出処理を繰り返し実行することができる。
【0052】
以上のように、本実施形態では、撮像された画像に基づいて、乗車している少なくともドライバについての挙動検出処理を含む複数の判定処理を実行可能な剰員監視ECUは、自動車1の衝突が予測または検出された場合、挙動検出処理以外の判定処理を停止して、挙動検出処理を繰り返し実行する。よって、自動車1の衝突が予測または検出された後には、乗員監視装置40の剰員監視ECUは、非常に短い期間ごとに乗員の挙動検出情報を更新でき、乗員の挙動検出情報の即時性を確保できる。衝突時の乗員の挙動を、乗員保護に好適に活用できる程度に高い精度で検出して、乗員保護性能を向上することを期待できる。
特に、本実施形態では、自動車1の衝突が予測または検出された場合、切替部により、ドライバを撮像する状態から、ドライバとともに他の乗員を含めて撮像する状態へ切り替える。たとえば、剰員監視ECUは、自動車1の衝突が予測された場合、切替部により、ドライバを撮像する状態から、ドライバとともに他の乗員を含めて撮像する状態へ切り替えて、ドライバおよび他の乗員の挙動検出処理を実行し、挙動検出処理以外の判定処理を停止する。よって、剰員監視ECUは、ドライバおよび他の乗員の挙動検出処理を実行して、自動車1に乗車しているドライバを含む複数の乗員について、各々の衝突時の乗員の挙動を検出できる。剰員監視ECUは、挙動検出処理以外の判定処理を停止しているため、ドライバ以外の他の乗員の挙動検出処理を実行するとしても、各々の非常に短い期間ごとに乗員の挙動検出情報を更新でき、乗員保護に好適に活用できる程度に高い精度で検出することが可能になる。
【0053】
また、本実施形態では、自動車1の衝突が検出された場合、剰員監視ECUは、挙動検出処理を含む判定処理を停止し、撮像デバイスにより撮像される画像をメモリ102に繰り返し記録する。よって、衝突検出後には、乗員監視装置40は、車室2の画像をメモリ102に繰り返し記録する処理のみを実行する。これにより、乗員監視装置40は、自動車1に乗車している複数の乗員についての衝突後の状態を蓄積するように記録することができる。剰員監視ECUの動作による電力消費を抑えて、自動車1に残存する電力を有効に利用して、自動車1に乗車している複数の乗員についての衝突後の状態を蓄積記録することができる。
【0054】
本実施形態では、剰員監視ECUは、自動車1の衝突が予測された後に衝突が検出されない場合、ジェスチャ判定、感情判定、個人判定といった利便機能の判定処理より、ドライバのわき見判定、居眠り判定、眠気判定、デッドマン判定といった安全機能の判定処理を優先して再開する。よって、再開直後から乗員監視装置40は、ドライバのわき見判定、居眠り判定、眠気判定、デッドマン判定をすることができる。
【0055】
本実施形態では、剰員監視ECUは、自動車1の衝突が予測または検出された場合、挙動検出処理以外の判定処理とともに、判定処理を更新する更新機能を停止する。よって、衝突の直前までに更新された判定処理により、たとえば挙動、ジェスチャ、感情、わき見、居眠り、眠気、デッドマンといった判定を実行することが可能になる。乗員が乗車した後に、乗員に適するように更新され得る判定処理により、これらの判定を好適に実行することが可能になる。
【0056】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る交通システム80について説明する。以下の説明では、主に上述した実施形態との相違点について説明する。本実施形態では、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0057】
図8は、本発明の第二実施形態に係る交通システム80において、乗員監視ECU58による複数の機能の起動処理のフローチャートである。
乗員監視ECU58は、乗員監視装置40が自動車1とともに起動されると、図8の起動処理を実行する。なお、乗員監視ECU58は、自動車1が停車中でも、たとえばドアキーの解除などにより、図8の起動処理を実行してよい。
【0058】
乗員監視ECU58は、ステップST5において衝突を検出すると、ステップST6において乗員監視装置40の動作状態を、衝突検出後の第二縮退状態とする。
その後のステップST21において、乗員監視ECU58は、タイマ103により所定の衝突検出後期間が計測されたか否かを判断する。衝突検出後期間が計測されていない場合、乗員監視ECU58は、ステップST21の処理を繰り返す。これにより、乗員監視ECU58は、衝突検出後期間において、内カメラ41により撮像された複数の乗員を撮像する画像をメモリ102に蓄積して記録することができる。衝突検出後期間が計測されると、乗員監視ECU58は、処理をステップST8へ進める。
【0059】
ステップST8において、乗員監視ECU58は、乗員監視装置40の動作状態を、衝突検出後の第二縮退状態から、通常起動状態へ戻す再開処理を実行する。乗員監視ECU58は、挙動検出処理以外の停止していた判定処理(機能)を起動させて、図4の通常起動状態に示すすべての機能を起動する。この際、乗員監視ECU58は、図4の利便機能および安全機能については、利便機能の判定処理より安全機能の判定処理を優先して先に起動する。
また、乗員監視ECU58は、内カメラ41により撮像された複数の乗員を撮像する画像に基づいて判定した各種の判定結果を、メモリ102に記録する。これにより、メモリ102には、衝突後の乗員の画像とともに、乗員監視装置40により判定した図4の各機能での判定結果が記録される。
【0060】
また、乗員監視ECU58は、その後に、衝突後にメモリ102に蓄積するように記録した画像および判定結果を、車内通信部101から車ネットワーク66へ出力してよい。外通信ECU60は、車ネットワーク66から衝突後の画像などを取得し、交通システム80へ送信する。乗員監視ECU58は、メモリ102の画像および判定結果を車外緊急通信機107から交通システム80へ送信してもよい。車内通信部101から画像および判定結果を受信することにより、交通システム80のサーバ装置83および他の自動車82は、自動車1についての衝突した後の状態を詳しく把握することができる。交通システム80において外通信ECU60と通信する他の通信装置としてのサーバ装置83および他の自動車82は、画像および判定結果を、緊急通報として取得できる。
【0061】
以上のように、本実施形態では、剰員監視ECUは、自動車1の衝突が検出された後、所定の期間が経過したら、挙動検出処理以外の判定処理を再開する。これにより、乗員監視装置40は、たとえば衝突後の乗員のジェスチャ判定、感情判定、わき見判定、居眠り判定、眠気判定、デッドマン判定、を実行して、それらの判定結果をメモリ102に記録することができる。
【0062】
また、本実施形態では、衝突を予測すると、システムの基本動作は停止することなく、判定処理のみを停止する。その結果、本実施形態では、各判定機能でデータを共有できるだけでなく、衝突を予測した後の乗員の挙動の検出精度を向上させることが可能となる。
また、本実施形態では、判定処理を停止するだけなので、停止後のメモリ102には、判定機能停止前の乗員の情報、各機能でのキャリプレーション、判定値などの設定を残すことが可能である。この場合、衝突の予測がなくなって判定を再開する場合、停止していた判定機能を有効にするだけでよい。再開された各機能は、停止前の設定を用いて、再開された直後から直ちに適切な動作を再開することが可能となる。
また、本実施形態では、衝突を予測すると、複数の判定機能を停止する。これにより、衝突の予測後にドライバ以外の乗員を含めた広範囲な画像を処理するためのリソースを確保することができる。メモリ102を追加したりすることなく、停止後に開放される記録領域を用いて、ドライバ以外の乗員を含めた広範囲な画像を処理することが可能である。
【0063】
以上の実施形態は、本発明の好適な実施形態の例であるが、本発明は、これに限定されるのもではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形または変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1…自動車(車両)、10…シートベルト装置、20…エアバッグ装置、31…外カメラ、40…乗員監視装置、41…内カメラ、58…乗員監視ECU(制御部)、75…加速度センサ、80…交通システム、81…通信基地局、82…他の自動車、83…サーバ装置、101…車内通信部、102…メモリ、103…タイマ、104…レンズ、105…駆動部、106…内部バス、107…車外緊急通信機、108…補助加速度センサ、109…補助外カメラ、110…蓄電池

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8