(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】試験試料に含有される干渉物質を分離するための検査室システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20231006BHJP
【FI】
G01N35/02 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019088136
(22)【出願日】2019-05-08
【審査請求日】2022-05-02
(32)【優先日】2018-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・グラウザー
(72)【発明者】
【氏名】ディートマー・カッペルホフ
(72)【発明者】
【氏名】ユーセフ・カヤリ
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2010/074265(JP,A1)
【文献】特開2001-272409(JP,A)
【文献】特表平11-502625(JP,A)
【文献】国際公開第2018/060447(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/071813(WO,A1)
【文献】実開平07-026767(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0040403(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02631007(EP,A1)
【文献】特表2009-510481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-35/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験試料(34、36)に含有される干渉物質(24、26)を分離するための検査室システム(10)であって、
少なくとも第1および第2の分離容器(12、14)であって、各分離容器(12、14)は、固体表面(16、18)および捕捉分子(20、22)を備え、前記捕捉分子(20、22)は前記固体表面(16、18)に固定化され、前記第1の分離容器(12)の前記捕捉分子(20)は、第1の分析方法の検査室試験の干渉物質(24)と結合するように構成され、前記第2の分離容器(14)の前記捕捉分子(22)は、第2の分析方法の検査室試験の干渉物質(26)と結合するように構成され、前記第1の分析方法は前記第2の分析方法と異なる、少なくとも第1および第2の分離容器(12、14)と、
少なくとも1つの分離ステーション(30、32)を備える少なくとも1つの検査室機器(28)であって、前記少なくとも1つの分離ステーション(30、32)は、前記少なくとも第1および/または第2の分離容器(12、14)を受け入れ、前記少なくとも第1および/または第2の分離容器(12、14)に含有される試験試料(34、36)を、前記少なくとも第1および/または第2の分離容器(12、14)の前記固体表面(16、18)から分離するように構成さ
れ、前記少なくとも1つの分離ステーション(30、32)が、少なくとも1つの分離装置(31、33)を備え、前記少なくとも1つの分離装置(31、33)が、ピペット装置、遠心分離機、ロータ、磁気分離および培養ステーション、ろ過ステーション、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、少なくとも1つの検査室機器(28)と、
データベース(68)であって、前記データベースは少なくとも1つの試験試料レコード(70、72、74)を含み、前記試験試料レコード(70、72、74)は、試験試料識別(76)と、少なくとも1つの試験試料属性(78、80、82)とを含み、前記少なくとも1つの試験試料属性(78、80、82)のうちの少なくとも1つが選択的試験試料属性(84、86、88)である、データベース(68)と、
管理ユニット(90)であって、前記管理ユニット(90)は前記検査室機器(28)に通信可能に接続され、前記管理ユニット(90)は、プロセッサ(94)と、前記少なくとも1つの選択的試験試料属性(84、86、88)に基づいて試験試料を選択すること、前記選択された試験試料に干渉分離プロトコル(60、62)を割り当てること、ならびに前記選択された試験試料および割り当てられた干渉分離プロトコルに基づく指示を前記検査室機器に送信することを行うための命令が設けられたコンピュータ可読媒体(96)と、を備える管理ユニット(90)と、
を備える検査室システム(10)。
【請求項2】
前記分離容器(12、14)が回転可能分離容器である、請求項
1に記載の検査室システム。
【請求項3】
前記固体表面(16、18)が、前記分離容器(12、14)の内側表面からなる、請求項1
または2に記載の検査室システム。
【請求項4】
前記分離容器(12、14)がフィルタ(42)を備え、前記固体表面(16、18)が前記フィルタ(42)からなる、請求項1
または2に記載の検査室システム。
【請求項5】
前記分離容器(12、14)がビーズ(44)を備え、前記固体表面(16、18)が前記ビーズ(44)の表面からなる、請求項1
または2に記載の検査室システム。
【請求項6】
前記第1の分析方法および前記第2の分析方法が、異なる先行試験反応に対する、異なる検出方法または同じ検出方法を備え、前記検出方法が、測光法、分光法、蛍光測定法、濁度測定法、比濁法、ルミネッセンス測定、蛍光偏光測定法、炎光測光法、原子吸収測光法、電位差測定法、電流測定法、電量測定法、抵抗測定、フロー・サイトメトリ、コールター法、放射測定法、撮像法、質量分析法、目視検査、重量測定法、および温度測定法からなる群から選択され、前記先行試験反応が、化学的試験反応、免疫学的試験反応、酵素試験反応、分子生物学試験反応、色素染色、凝固試験反応、凝集試験反応、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1から
5のいずれか一項に記載の検査室システム。
【請求項7】
前記少なくとも第1の分離容器(12)に含有される前記試験試料(34)が、第1の試験試料タイプであり、前記少なくとも第2の分離容器(14)に含有される前記試験試料(36)が、第2の試験試料タイプであり、前記第1の試験試料タイプは前記第2の試験試料タイプと異なる、請求項1から
6のいずれか一項に記載の検査室システム。
【請求項8】
前記検査室機器が試験試料出力領域(46)をさらに備え、前記試験試料出力領域は、検査室搬送システム(48)に動作可能に結合され、前記検査室搬送システム(48)は、少なくとも第1および第2の分析モジュール(50、52)に動作可能に結合され、前記第1の分析モジュール(50)は前記第2の分析モジュール(52)と異なる、請求項1から
7のいずれか一項に記載の検査室システム。
【請求項9】
前記検査室機器が、
制御ユニット(54)をさらに備え、前記制御ユニットは、プロセッサ(56)と、少なくとも第1および第2の干渉分離プロトコル(60、62)が設けられたコンピュータ可読媒体(58)と、を備え、前記第1の干渉分離プロトコル(60)は、前記少なくとも第1の分離容器(12)に含有される試験試料(34)を、第1の分析方法の検査室試験の干渉物質(24)から分離する少なくとも1つの処理ステップ(64)を含み、前記第2の干渉分離プロトコル(62)は、前記少なくとも第2の分離容器(14)に含有される試験試料(36)を、第2の分析方法の検査室試験の干渉物質(26)から分離する少なくとも1つの処理ステップ(66)を含み、前記プロセッサ(56)は、前記少なくとも第1および第2の干渉分離プロトコル(60、62)に従って前記検査室機器(28)を制御するように構成される、請求項1から
8のいずれか一項に記載の検査室システム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの選択的試験試料属性(84、86、88)が、前記試験試料に対して指示された検査室試験(84)、前記試験試料に関連する患者情報(88)、前記試験試料の無効な試験結果および/または臨床的に矛盾する結果(86)、からなる群から選択される、請求項
1に記載の検査室システム。
【請求項11】
前記検査室機器が、
少なくとも第1の分離容器保管区域(100)および第2の分離容器保管区域(102)をさらに備え、前記第1の分離容器保管区域(100)および前記第2の分離容器保管区域(102)は互いから分離され、前記少なくとも第1の分離容器(12)は、前記少なくとも第1の分離容器保管区域(100)に保管され、前記少なくとも第2の分離容器(14)は、前記少なくとも第2の分離容器保管区域(102)に保管される、請求項1から
10のいずれか一項に記載の検査室システム。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の検査室システム(10)によって実施される、試験試料に含有される干渉物質を分離するための方法(103)であって、
a)少なくとも1つの選択的試験試料属性に基づいて、少なくとも第1の試験試料を選択するステップ(104)と、
b)前記第1の試験試料と、第1の分離容器の固体表面および捕捉分子とを、第1の分析方法の検査室試験の干渉物質を前記捕捉分子に結合させるのに十分な、または第1の分析方法の検査室試験の干渉物質を前記捕捉分子に結合させ、かつ前記捕捉分子を前記第1の分離容器の前記固体表面に固定化させるのに十分な条件下で、ある期間にわたって、互いと組み合わせるステップ(106)と、
c)前記少なくとも第1の試験試料を前記第1の分離容器の前記固体表面から分離するステップ(108)と、
d)少なくとも1つの選択的試験試料属性に基づいて、少なくとも第2の試験試料を選択するステップ(110)と、
e)前記第2の試験試料と、第2の分離容器の固体表面および捕捉分子とを、第2の分析方法の検査室試験の干渉物質を前記捕捉分子に結合させるのに十分な、または第2の分析方法の検査室試験の干渉物質を前記捕捉分子に結合させ、かつ前記捕捉分子を前記第2の分離容器の前記固体表面に固定化させるのに十分な条件下で、ある期間にわたって、互いと組み合わせるステップ(112)と、
f)前記少なくとも第2の試験試料を前記第2の分離容器の前記固体表面から分離するステップ(114)と、
を含み、
ステップa)(104)は、ステップd)(110)の前、後、またはそれと同時に実行され、ステップb)(106)およびc)(108)を含むステップシーケンスは、ステップe)(112)およびf)(114)を含むステップシーケンスの前、後、またはそれと同時に実行され、前記第1の分析方法は前記第2の分析方法と異なる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体外診断用試験試料の調製の分野に属する。この分野の中では、本発明は、試験試料に含有される干渉物質を分離するための検査室システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
検査室試験との干渉は、干渉物質が検体および/または試験試薬と否定的に相互作用し、検査室試験の測定可能な検体濃度を変えるときに発生する。この結果、不正確な(上昇または低下した)試験結果となり、または最悪の場合には偽陰性もしくは偽陽性の試験結果が生じ、それにより、試験結果の誤った解釈、不適切なさらなる試験、および患者に対して有害な結果をもたらし得る治療の開始が生じ得る。干渉は検体および/または試験試薬に依存し得るため、検査室試験は、基礎となる分析方法または使用される分析モジュールに応じて、独自かつ固有の干渉を有し得る。検査室試験との干渉は、特定の検査室試験に干渉する、内因性干渉物質(患者体内に天然に存在する)から発生する場合も、または外因性干渉物質(患者体内に天然には存在しない)に由来する場合もある。そのため、干渉は患者にも依存し得る。
【0003】
診断用の検査室環境では、試験試料が、分析前ステーション、1つまたは複数の分析モジュールを含む分析ステーション、および分析後ステーションなどの複数のステーションで処理され、分析される。通例、そのような診断用検査室環境は、包括的な診断のために種々の検体またはパラメータを試験するための検査室試験ポートフォリオを提供するために、それぞれ異なる分析方法を実施する、免疫化学分析器、臨床化学分析器、核酸分析器、凝固分析器、血液学分析器、尿分析器、および血液ガス分析器などのいくつかの異なる分析ステーションを有する。
【0004】
新しい検査室試験の開発中には、すでに、例えば遮断薬や特異的な試験試薬設計のような手段により、干渉を最小にするための多大な努力が費やされる。しかし、検査室試験ポートフォリオは常に変化を受け、また新しい検査室試験の開始に伴って新しい干渉も出現し得る。また、患者に関連する新しい医療的または環境的条件(例えば、栄養補助食品として摂取されるビオチンの大量投与)も、新しい干渉を生じさせ得る。新たに出現する干渉物質のための干渉最小化手段を有効な分析ステーション上に実装することは、分析ステーション当たりの追加的コストを生じる可能性があり、または新しいハードウェアコンポーネント(例えば、分離装置の組み込み)が必要となるために実現可能でないこともある。さらに、そのような干渉最小化手段は、遮断薬を追加するなどの追加的な方法ステップまたは処理ステップが必要とされ得るため、分析ステーションのスループットに悪影響を及ぼし得る。したがって、特定の状況下では、そのような新しい干渉は、既存の分析ステーション、分析モジュール、または分析ワークフローを利用して改善できない場合がある。
【0005】
米国特許出願公開第20150056689(A1)号は、質量分析法用の試料調製および分析システムを開示する。このシステムの試料調製ステーションは、調製された試料を分析ステーションに移送する前に干渉物質を分離するマトリクス干渉除去ステーションを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第20150056689(A1)号
【文献】EP3174970A1
【文献】WO2017064089A1
【文献】EP3213819A1
【文献】EP2148204B1
【文献】米国特許第8834814号(B2)
【文献】EP2538227B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
試験試料に含有される干渉物質を、単純で、柔軟性があり、コスト効率の高い方式で分離することに対する必要性がある。本発明の目的は、従来の試料調製を改良することであり、特に生体外診断用試料の容器調製の自動化の必要性によりよく応えることであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、試験試料に含有される干渉物質を分離するための検査室システムおよび方法を開示する。
本発明は、試験試料に含有される干渉物質を分離するための検査室システムに関する。検査室システムは、少なくとも第1および第2の分離容器を備える。各分離容器は、固体表面および捕捉分子を備え、上記捕捉分子は上記固体表面に固定化される。第1の分離容器の捕捉分子は、第1の分析方法の検査室試験の干渉物質と結合するように構成される。第2の分離容器の捕捉分子は、第2の分析方法の検査室試験の干渉物質と結合するように構成される。そして、第1の分析方法は第2の分析方法と異なる。検査室システムは、少なくとも1つの分離ステーションを備えた少なくとも1つの検査室機器をさらに備える。少なくとも1つの分離ステーションは、少なくとも第1および/または第2の分離容器を受け入れ、少なくとも第1および/または第2の分離容器に含有される試験試料を、少なくとも第1および/または第2の分離容器の固体表面から分離するように構成される。
【0009】
本発明は、試験試料に含有される干渉物質を分離するための方法にも関する。この方法は、以下のステップを含む。
a)少なくとも1つの選択的試験試料属性に基づいて、少なくとも第1の試験試料を選択するステップ
b)第1の試験試料と、第1の分離容器の固体表面および捕捉分子とを、第1の分析方法の検査室試験の干渉物質を捕捉分子に結合させるのに十分な、または第1の分析方法の検査室試験の干渉物質を捕捉分子に結合させ、かつ上記捕捉分子を第1の分離容器の固体表面に固定化させるのに十分な条件下で、ある期間にわたって、互いと組み合わせるステップ
c)少なくとも第1の試験試料を第1の分離容器の固体表面から分離するステップ
d)少なくとも1つの選択的試験試料属性に基づいて、少なくとも第2の試験試料を選択するステップ
e)第2の試験試料と、第2の分離容器の固体表面および捕捉分子とを、第2の分析方法の検査室試験の干渉物質を捕捉分子に結合させるのに十分な、または第2の分析方法の検査室試験の干渉物質を捕捉分子に結合させ、かつ上記捕捉分子を第2の分離容器の固体表面に固定化させるのに十分な条件下で、ある期間にわたって、互いと組み合わせるステップ
f)少なくとも第2の試験試料を第2の分離容器の固体表面から分離するステップ。
【0010】
ステップa)は、ステップd)の前、後、またはそれと同時に実行され、ステップb)およびc)を含むステップシーケンスは、ステップe)およびf)を含むステップシーケンスの前、後、またはそれと同時に実行される。そして、第1の分析方法は第2の分析方法と異なる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】試験試料に含有される干渉物質を分離するための検査室システムの一実施形態の図である。
【
図2】
図2Aは、分離容器の実施形態の図である。
図2Bは、分離容器の実施形態の図である。
図2Cは、分離容器の実施形態の図である。
図2Dは、分離容器の実施形態の図である。
【
図3】第1および第2の干渉分離プロトコルが設けられたコンピュータ可読媒体の模式表現を示す図である。
【
図4】試験試料レコードを含むデータベースのデータ概念を示す図である。
【
図5】
図5Aは、試験試料に含有される干渉物質を分離するための方法の実施形態のフローチャートである。
図5Bは、試験試料に含有される干渉物質を分離するための方法の実施形態のフローチャートである。
図5Cは、試験試料に含有される干渉物質を分離するための方法の実施形態のフローチャートである。
図5Dは、試験試料に含有される干渉物質を分離するための方法の実施形態のフローチャートである。
図5Eは、試験試料に含有される干渉物質を分離するための方法の実施形態のフローチャートである。
図5Fは、試験試料に含有される干渉物質を分離するための方法の実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、試験試料に含有される干渉物質を分離するための検査室システムに関する。検査室システムは、少なくとも第1および第2の分離容器を備える。各分離容器は、固体表面および捕捉分子を備え、上記捕捉分子は上記固体表面に固定化される。第1の分離容器の捕捉分子は、第1の分析方法の検査室試験の干渉物質と結合するように構成される。第2の分離容器の捕捉分子は、第2の分析方法の検査室試験の干渉物質と結合するように構成される。そして、第1の分析方法は第2の分析方法と異なる。検査室システムは、少なくとも1つの分離ステーションを備えた少なくとも1つの検査室機器をさらに備える。少なくとも1つの分離ステーションは、少なくとも第1および/または第2の分離容器を受け入れ、少なくとも第1および/または第2の分離容器に含有される試験試料を、少なくとも第1および/または第2の分離容器の固体表面から分離するように構成される。
【0013】
本明細書で使用される場合、用語「干渉物質」は、試験試料の検体および/または検査室試験の試験試薬と相互作用し、測定可能な検体濃度を実際と異なるように変え、その結果試験試料の不正確な試験結果をもたらす物質に関係する。干渉物質は、内因性または外因性干渉物質として分類できる。内因性干渉物質は患者体内に天然に存在するのに対し、外因性干渉物質は患者体内に導入される。内因性干渉物質の非制限的な例は、ヘモグロビン、ビリルビン、脂質、タンパク質、または抗体(例えば免疫グロブリンG(IgG))である。外因性干渉物質の非制限的な例は、薬剤、代謝産物、添加物(例えばビオチンなどのビタミン)、毒物、薬草製品、IV流体、療法として使用される物質(例えば、ヘパリン、抗体等)、または試験試料の調製から来る成分である。特定の干渉物質は特定の検査室試験に干渉する可能性があり、他の干渉物質は複数の検査室試験に干渉する可能性がある。例えば、ビオチンは、免疫学的試験反応に基づくTSH(甲状腺刺激ホルモン)検査室試験に干渉することが知られている。ヘパリンは、分子生物学分析で広く使用される分析方法であるPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)に基づく検査室試験に干渉することが知られている。ヘモグロビンは、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)に基づく検査室試験、ならびに、クレアチニン、トリグリセリド、グルコース、コレステロール、リン、尿酸、鉄、総タンパク、およびビリルビンなどの臨床化学的検査室試験に干渉することが知られている。
【0014】
本明細書で使用される場合、用語「試験試料」は、検体の存在、および所望される場合には検体の濃度またはパラメータが、検査室試験を使用してそれから判定されることが可能な、患者の標本(例えば、血清、血漿、全血、尿、便、痰、脳脊髄液、骨髄等)に関係する。試験試料は特定の時に個々の患者から採取されるので、下記でさらに説明されるように、対応する試験試料属性は各試験試料に固有である。
【0015】
本明細書で使用される用語「分離容器」は、試験試料を受け入れるように適合された器または入れ物に関係し、試験試料中に干渉物質が存在する場合には、捕捉分子を介して、または捕捉分子およびリンカー分子を介して、干渉物質を器の固体表面に結合または固定化させることによって、試験試料から干渉物質が分離されることができる。分離容器の材料ならびに直径、側部の長さ、高さ、幾何学的形状のような寸法は、様々であり、試験試料または試験試料タイプ、干渉物質を分離するために必要とされる方法または処理ステップ、および製造者に依存し得る。
【0016】
一実施形態では、分離容器は、円筒形、円錐形、立方体形状の容器であり得る。分離容器は、閉じられた底部および開いた頂部を有し得る。円筒形容器の閉じられた底部は、丸められ得、開いた頂部は、例えばキャップを使用することにより閉じることが可能であり得る。単一の円筒形または円錐形の分離容器の非制限的な例は、当技術分野でよく知られている一次または二次試験試料容器である。あるいは、2つ以上の分離容器が一つのマルチ分離容器アセンブリとして配設されてもよい。そのようなマルチ分離容器アセンブリの非制限的な例は、当技術分野でよく知られているマルチウェルプレートである。
【0017】
別の実施形態では、分離容器は、ろ過ステーションに動作可能に結合されるように構成された入口および出口を備える流動容器として形成され得る。
分離容器の一実施形態では、分離容器は回転可能分離容器である。回転可能分離容器は、容器がそれを中心として回転可能な長手軸を備える。回転可能分離容器は、試験試料を受け入れるための頂部開口を備えた上部部分を備え得る。回転可能分離容器は、回転可能分離容器が静止している間に試験試料を保持するための下部部分をさらに備え得る。回転可能分離容器は、上部部分と下部部分との間に位置する中間部分をさらに備えてよく、中間部分は、回転可能分離容器が回転している間に試験試料を保持するための側部チャンバを備える。側部チャンバは、下部部分から取り外し可能であり得る。そのような回転可能分離容器の幾何学的形状は、EP3174970A1、
図1、
図2、
図3、
図4、
図5、
図7の参照符号200、300、400、500、および対応する説明に記載されるように設計され得る。
【0018】
分離容器は、捕捉分子がその上に固定化もしくは結合される、または固定化もしくは結合されることが可能な固体表面を備える。一実施形態では、分離容器の固体表面は捕捉分子で被覆される。例えば、特定の干渉物質と結合または捕捉することが可能な一次抗体、核酸、または酵素が、当技術分野で知られている技法を使用して固体表面に付けられ得る。別の実施形態では、固体表面は、捕捉分子と結合または捕捉することが可能なリンカー分子で被覆され得る。リンカー分子は、当技術分野で知られる技法を使用して固体表面に付けられ得、捕捉分子が試験試料に加えられ、試験試料中に懸濁させられる。例えば、溶解した捕捉分子を含有する分離溶液が、分離容器中の試験試料に加えられて、分離混合物を生成することができる。または、分離容器に、溶解した捕捉分子を含有する分離溶液が事前に充填され、試験試料が分離容器に加えられて、分離混合物を生成することができる。したがって、捕捉分子がリンカー分子に結合した後に、捕捉分子および捕捉された干渉物質が次いで分離容器の固体表面に固定化されることができる。例えば、検査室試験の干渉物質と結合するように構成された一次抗体と結合することが可能な二次抗体が、当技術分野で知られる技法を使用して固体表面に付けられる。固体表面の材料は、試験試料または試験試料タイプ、干渉物質を分離するために必要とされる方法または処理ステップ、捕捉分子またはリンカー分子の化学的性質、および製造者に依存し得る。
【0019】
異なる干渉物質に固有の様々な捕捉分子が、異なる分離容器の固体表面に固定化されることが可能であるため、本検査室システムは、利点として、異なる検査室試験の様々な異なる干渉物質を分離するための高い柔軟性を提供する。さらに、固体表面を捕捉分子またはリンカー分子で被覆することは、時間およびコストを多大に要さないため、出現する新しい干渉物質のための分離容器が最短の時間で開発され、使用されることが可能となる。
【0020】
本明細書で使用される場合、用語「捕捉分子」は、干渉物質に非共有結合または共有結合するように構成される分子または化合物に関係する。一実施形態では、捕捉分子は分離容器の固体表面に直接付けられ、したがって固体表面上に固定化され得る。別の実施形態では、捕捉分子は、分離容器の固体表面に付けられたリンカー分子に結合するようにさらに構成され得る。そのため、捕捉分子は、リンカー分子に結合することによって、分離容器の固体表面に固定化され得る。そして、次いで干渉物質は、捕捉分子に結合することによって固体表面に固定化され得る。
【0021】
捕捉分子の非制限的な例は、干渉物質としてのビオチンに非共有結合することができるアビジンまたはストレプトアビジンである。捕捉分子の別の非制限的な例は、干渉物質としてのヘパリンに結合することができるトリエチルアミノエチルセルロースである。捕捉分子のさらに他の非制限的な例は、干渉物質としてのヘモグロビンに結合することができる高分子電解質ポリマー組成物であるHemogloBind(商標)である。また、干渉する標的配列に対する相補的配列をもつ核酸も、捕捉分子として機能することができる。さらに、特定の結合特性をもつ酵素が、固体表面に被覆される捕捉分子として使用され得る。
【0022】
分離容器の一実施形態では、固体表面は、分離容器の内側表面からなる。例えば、試験試料容器またはマルチウェルプレートの内側表面が、捕捉分子またはリンカー分子で被覆され得る。別の例では、上記のような回転可能分離容器の側部チャンバが、捕捉分子またはリンカー分子で被覆され得る。分離容器の内側表面は、改良された、より効率的な干渉物質固定化のために固体表面のサイズを増すように、折りたたまれた構造を有し得る。
【0023】
分離容器の別の実施形態では、分離容器はフィルタを備え、固体表面はこのフィルタからなる。したがって、試験試料容器内に位置するフィルタが、捕捉分子またはリンカー分子で被覆され得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「フィルタ」は、試験試料が通り抜けることができる固体表面をもち、それにより、試験試料に含有される干渉物質が固定化された捕捉分子によってフィルタ上に維持される、多孔質構造または母材に関係する。フィルタの材料ならびに孔径や厚さのようなフィルタの性質は様々であり、試験試料または試験試料タイプ、干渉物質を分離するために必要とされる方法または処理ステップ、および製造者に依存し得る。フィルタは取り外し可能フィルタであり得る。例えば、フィルタは、例えば機械的留め具要素などの任意の適切な手段により分離容器の内部に付けられ得、それにより分離容器にフィルタが挿入され、取り外されることができる。これは、フィルタを取り外した後、分離容器が試験試料容器としてさらに使用でき、例えば試験試料の分析のようなさらなる処理のために追加的な試験試料容器が必要ないという利点を有する。あるいは、フィルタは、分離容器の内側表面と一体成形されてもよい。
【0025】
分離容器のさらなる実施形態では、分離容器はビーズを備え、固体表面はビーズの表面からなる。本明細書で使用される場合、用語「ビーズ」は、捕捉分子またはリンカー分子で被覆された固体表面を備える粒子に関係する。分離容器は、ビーズで事前充填され得、次いで、試験試料を分離容器に加えて分離混合物を生成することにより、ビーズを懸濁させることができる。あるいは、ビーズが分離溶液に溶解され、その分離溶液が分離容器中の試験試料に加えられてもよい。捕捉分子および捕捉された干渉物質をビーズの固体表面に結合または固定化させた後、遠心分離およびそれに続く新しい試験試料容器への試験試料の移送により、干渉物質が試験試料から分離されることができる。粒子の材料、質量、ならびに直径または幾何学的形状のような粒子の寸法は様々であり、試験試料または試験試料タイプ、干渉物質を分離するために必要とされる方法または処理ステップ、および製造者に依存し得る。
【0026】
ビーズのより具体的な実施形態では、ビーズは磁気ビーズである。そのため、捕捉分子および捕捉された干渉物質をビーズの固体表面に結合または固定化させた後、例えば下記でさらに説明されるように磁気分離および培養ステーションを使用して磁場を印加することによって、干渉物質が試験試料から分離されることができる。
【0027】
検査室システムは、少なくとも第1および第2の分離容器を備える。一実施形態では、少なくとも第1および第2の分離容器は同じであり、各分離容器は、第1の分析方法の検査室試験および第2の分析方法の検査室試験の干渉物質と結合するように構成される同じ捕捉分子を備える。例えば、少なくとも第1および第2の分離容器は、円筒形の分離容器であり得、各自の内側表面は、PCRに基づく検査室試験および複数の臨床化学的検査室試験に干渉することが知られている干渉物質としてのヘモグロビンを分離するために、HemogloBind(商標)で被覆され得る。
【0028】
別の実施形態では、少なくとも第1および第2の分離容器は同じであり、各分離容器は異なる捕捉分子を備え、一方の捕捉分子は、第1の分析方法の検査室試験の干渉物質と結合するように構成され、他方の捕捉分子は、第2の分析方法の検査室試験の異なる干渉物質と結合するように構成される。例えば、少なくとも第1および第2の分離容器は、円筒形の分離容器であり得る。第1の分離容器の内側表面は、PCRに基づく検査室試験に干渉することが知られている干渉物質としてのヘパリンを分離するために、トリエチルアミノエチルセルロースで被覆され得る。そして、第2の分離容器の内側表面は、TSH(甲状腺刺激ホルモン)による検査室試験に干渉することが知られている干渉物質としてのビオチンを分離するために、アビジンまたはストレプトアビジンで被覆され得る。
【0029】
さらなる実施形態では、少なくとも第1および第2の分離容器は異なり、各分離容器は、第1の分析方法の検査室試験または第2の分析方法の検査室試験の干渉物質と結合するように構成される同じ捕捉分子を備える。例えば、少なくとも第1の分離容器は円筒形の分離容器であり得、その内側表面は、PCRに基づく検査室試験および臨床化学的検査室試験に干渉することが知られている干渉物質としてのヘモグロビンを分離するためにHemogloBind(商標)で被覆され得る。そして、少なくとも第2の分離容器は、干渉物質としてのヘモグロビンを分離するためにHemogloBind(商標)で被覆され得る取り外し可能フィルタを備える、円筒形の分離容器であり得る。
【0030】
追加的な実施形態では、少なくとも第1および第2の分離容器は異なり、各分離容器は異なる捕捉分子を備え、一方の捕捉分子は、第1の分析方法の検査室試験の干渉物質と結合するように構成され、他方の捕捉分子は、第2の分析方法の検査室試験の異なる干渉物質と結合するように構成される。例えば、少なくとも第1の分離容器は、円筒形の分離容器であり得、その内側表面は、PCRに基づく検査室試験に干渉することが知られている干渉物質としてのヘパリンを分離するためにトリエチルアミノエチルセルロースで被覆され得る。そして、少なくとも第2の分離容器は、TSH(甲状腺刺激ホルモン)の検査室試験に干渉することが知られている干渉物質としてのビオチンを分離するためにアビジンまたはストレプトアビジンで被覆され得る取り外し可能フィルタを備えた、円筒形の分離容器であり得る。
【0031】
一実施形態では、少なくとも第1および/または第2の分離容器は、第1の分析方法の検査室試験または第2の分析方法の検査室試験の複数の干渉物質と結合するように構成される複数の異なる捕捉分子を備える。これは、1つのみの分離容器を使用して複数の干渉物質が試験試料から分離可能であるという利点を有する。例えば、分離容器の内側表面は、各々が特定の干渉物質に特異的に結合する複数の抗体または核酸で被覆され得る。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「検査室試験」は、対象検体の存在、および所望される場合には検体の濃度を判定するための、試験試料の分析または調査に関係する。よって、検査室試験は、試験試料中で分析される必要がある検体またはパラメータを定める。判定された検体の存在および/または濃度に基づいて、定性的または定量的な試験結果が生成され、これは、診断の実施、治療もしくは療法の計画、治療もしくは療法が効いているかどうかの判断、または経時的な疾患の観察を助けることができる。調査対象の検体は、特定の検査室試験に固有であり得る干渉物質と否定的に干渉し得る。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「分析方法」は、検体に関連する信号または物理的パラメータの定性的および/もしくは定量的な検出または測定のために使用される技法または技術に関する。分析方法は、どのようにしておよびどの手段を用いて検体が試験試料中で検出されるかを定める。分析方法は、検体に関連する信号または物理的パラメータが直接検出可能である場合は、検出方法のみを備え得る。あるいは、分析方法は、検体に関連する検出可能信号を生じさせるための先行試験反応と、生じた信号を検出するための検出方法とを備えてもよい。次いで、検出または測定された検体に関連する信号または物理的パラメータが処理されて、試験試料中の対象検体の存在および/または濃度を示す検査室試験の試験結果を得る。
【0034】
検査室システムの一実施形態では、第1および第2の分析方法は、異なる先行試験反応に対する、異なる検出方法または同じ検出方法を備える。検出方法は、測光法、分光法、蛍光測定法、濁度測定法、比濁法、ルミネッセンス測定、蛍光偏光測定法、炎光測光法、原子吸収測光法、電位差測定法、電流測定法、電量測定法、抵抗測定、フロー・サイトメトリ(flow cytometry)、コールター(coulter)法、放射測定法、撮像法、質量分析法、目視検査、重量測定法、および温度測定法からなる群から選択される。そして、先行試験反応は、化学的試験反応、免疫学的試験反応、酵素試験反応、分子生物学試験反応、色素染色、凝固試験反応、凝集試験反応、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「測光法」は、光度計を使用して、人間の目に対する知覚される明るさとしての、検体に関係する光の強度または光電流を測定するための方法に関係する。これは、絶対的な力としての検体に関係する放射エネルギー(光を含む)の測定である放射測定法とは別のものである。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「分光法」は、検体に関係する物質が電磁気放射と相互作用する、または電磁気放射を発するときに発生するスペクトルを、分光計を使用して測定するための方法に関係する。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「蛍光測定法」は、光の特定のスペクトルによって励起した後の発光スペクトルの強度および波長分布など、検体に関係する蛍光のパラメータを、蛍光計を使用して測定するための方法に関係する。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「濁度測定法」は、濁度計を使用して、液体を通して光を見、どれほどの光が遮断または減衰されるかを判定することにより、液体の検体に関係する濁度を測定し、比較するための方法に関係する。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「比濁法」は、比濁計を使用して、透過または反射または散乱される光を利用して、懸濁液の検体に関係する濃度または粒子サイズを判定するための方法に関係する。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「ルミネッセンス測定」は、照度計を使用して、ルミネッセンスの強度および波長分布など、検体に関係するルミネッセンスのパラメータを測定するための方法に関係する。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「蛍光偏光測定法」は、蛍光偏光計を使用して、異なる偏光軸に沿った検体に関係する蛍光の強度を測定するための方法に関係する。
本明細書で使用される場合、用語「炎光測光法」は、溶液中の検体に関係する金属塩が高温の炎光中で蒸発させられ、炎光光度計を使用して金属のスペクトル線の強度を測定することによる定量的な分析を受ける方法に関係する。特定の金属イオンの濃度を判定するのは無機化学分析であり、そのような金属イオンにはナトリウム、カリウム、リチウム、およびカルシウムがある。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「原子吸収測光法」は、原子吸収光度計を使用して、気体状態の自由原子による光学放射(光)の吸収を使用して、検体に関係する化学元素を定量的に判定するための分光分析方法に関係する。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「電位差測定法」は、電位差計またはイオン選択性電極を使用した、検体に関係する電位の測定に関係する。
本明細書で使用される場合、用語「電流測定法」は、電流計を使用した、電流または電流の変化に基づく、溶液中の検体に関係するイオンの検出に関係する。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「電量測定法」は、電量計を使用して、使用された電気の量を測定することにより、電解中に放出される検体に関係する物質の量を判定するための方法に関係する。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「抵抗測定」は、抵抗計を使用して検体に関係する抵抗を測定するための方法に関係する。
本明細書で使用される場合、用語「フロー・サイトメトリ」は、蛍光性色素で染色し、フローサイトメータを使用して、通常はレーザビーム照明または他の光学照明による蛍光を検出することにより、細胞およびそれらの検体に関係する成分または他の粒子を同定および分類するための技法に関係する。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語「コールター法」は、コールター・カウンタを使用して、検体に関係する粒子をサイズで分類し、計数する技法に関係し、これは、電解質中に懸濁させた非導電性の粒子によって発生する電気インピーダンスの測定可能な変化に基づく。
【0047】
本明細書で使用される場合、用語「放射測定法」は、放射計を使用して、可視光を含む、検体に関係する電磁気放射を測定するための技法に関係する。光学における放射測定技法は、人間の目との光の相互作用を特徴化する測光技法と対照的に、空間中での放射のパワーの分布を特徴化する。
【0048】
本明細書で使用される場合、用語「撮像法」は、光学的開口およびカメラを備え得る撮像装置を使用して、検体に関係する物体の形態または構造を表現または再現するための技法に関係する。
【0049】
本明細書で使用される場合、用語「質量分析法」は、検体に関係する化学種をイオン化し、質量分光計を使用して、イオンの質量電荷比に基づいてイオンを分類する技法に関係する。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語「目視検査」は、人間の視覚を使用した、検体に関係する検出可能信号の調査に関係する。
本明細書で使用される場合、用語「重量測定法」は、重力計を使用して、検体に関係する重量、重力場、または密度を測定するための方法に関する。
【0051】
本明細書で使用される場合、用語「温度測定法」は、温度計またはサーミスタを使用して、検体に関係する温度を測定するための方法に関する。
本明細書で使用される場合、用語「化学的試験反応」は、沈殿、錯体形成、酸化還元反応、または、通常は特徴的に着色もしくは白濁した生成物を生成するために、特定の検体に関係する物質と示差的に反応する物質または溶液を含む試験試薬を使用して、検体に関係するイオンまたは元素の群の存在を定性的または定量的に示す塩酸基反応などの、化学的反応に関係する。
【0052】
本明細書で使用される場合、用語「免疫学的試験反応」は、特定の抗体(通常)または抗原(場合により)の使用を通じて、溶液中の検体に関係する高分子または検体に関係する小分子の存在または濃度を測定するための反応に関係する。免疫学的試験反応のための試験試薬は、検体に関係する高分子または小分子に特異的に結合することが可能な抗体または抗原を含み得る。試験試薬は、補助成分をさらに含み得る。
【0053】
本明細書で使用される場合、用語「酵素試験反応」は、特定の酵素を介して検体に関係する物質の存在もしくは濃度を測定するため、または検体に関係する酵素活動を判定するための反応に関係する。酵素試験反応のための試験試薬は、酵素または酵素抱合体、ならびに必要とされる場合は補酵素および/または他の補助成分を含み得る。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語「分子生物学試験反応」は、DNAやRNAなどの検体に関係する核酸を抽出、精製、増幅、分離、固定化、雑種形成、および/または切断するための反応に関係する。分子生物学試験反応のための試験試薬は、ポリメラーゼ、リガーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、または逆転写酵素などの、DNAまたはRNA処理酵素を含み得、さらに補助成分を含み得る。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「色素染色」は、細胞の構造的詳細の定性的および/または定量的な判定のための細胞物質と色素との間の反応に関する。色素染色のための試験試薬は、1つまたは複数の色素および補助成分を含み得る。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「凝固試験反応」は、液体、特に血液が、固体状態または半固体状態に変化する反応またはプロセスに関係する。凝固試験反応は、血液の凝血能力および凝血に要する時間を測定するために使用される。凝固試験反応に基づく、頻繁に指示される検査室試験は、プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)、およびトロンビン時間(TT)である。凝固試験反応のための試験試薬は、例えばカルシウムイオンまたはトロンビンなど、凝固試験反応を引き起こす活性化物質を含み得る。試験試薬は、補助成分および/または反応物をさらに含み得る。
【0057】
本明細書で使用される場合、用語「凝集試験反応」は、結果として粒子(赤血球やバクテリアなど)の目に見える凝集が生じる、粒子抗原と抗体との間の反応に関係する。凝集試験反応のための試験試薬は、カルシウムイオンなど、そのような反応を発生させることが知られている凝集素を含み得、補助成分をさらに含み得る。
【0058】
検査室システムは、少なくとも1つの分離ステーションを備えた少なくとも1つの検査室機器をさらに備える。本明細書で使用される場合、用語「分離ステーション」は、1つまたは複数の分離装置を備える検査室機器のモジュールまたは構成に関係する。分離装置は、独立して、または他の分離装置と組み合わせてのいずれかで、捕捉分子および干渉物質が固定化された分離容器の固体表面から試験試料を分離することができる。本明細書で使用される用語「分離」は、対象となる検体を含む試験試料と干渉物質とが互いから物理的に隔離されることを意味する。そのような分離装置の動作領域は、分離ステーションに制限されず、分離ステーションの外部の機能または動作も担い得る。例えば、分離装置は、下記でさらに説明されるように、分離ステーション内の分離容器の固体表面から試験試料を分離することが可能であると共に、分離ステーションの外部におけるピペット動作、例えば試験試料の分取のようなピペット動作を行うこと、または定められた体積の試験試料を分離ステーションの外に位置する試験試料容器から分離ステーションに位置する分離容器に移送することが可能なピペット装置であり得る。
【0059】
分離ステーションは、分離容器を受け入れるように構成された1つまたは複数のホルダをさらに備え得る。そして、各ホルダは、1つまたは複数の分離容器を挿入する1つまたは複数の挿入領域を備え得る。ホルダは、例えば捕捉分子と干渉物質の間の効率的な結合を支援する培養ステップのような、試験試料から干渉物質を分離するために必要とされる特定の方法または処理ステップが分離ステーション内で直接行われることが可能となるように、加熱および/または冷却装置を備え得る。あるいは、分離ステーションの分離装置は、1つまたは複数の分離容器を受け入れるように構成された1つまたは複数のホルダを備えてもよい。そして、各ホルダは、1つまたは複数の分離容器を挿入する1つまたは複数の挿入領域を備え得る。
【0060】
検査室システムの一実施形態では、少なくとも1つの分離ステーションは少なくとも1つの分離装置を備える。そして、少なくとも1つの分離装置は、ピペット装置、遠心分離機、ロータ、磁気分離および培養ステーション、ろ過ステーション、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0061】
本明細書で使用される場合、用語「ピペット装置」は、分離容器もしくは試験試料容器から、および/またはそれらの中への、試験試料、捕捉分子を含む分離溶液、または試薬の吸引および/または分注のようなピペット動作を実施するように構成された装置に関係する。ピペット装置は、使い捨てのピペット端部を結合するか、またはピペット針を備えるかのいずれかである。ピペット装置は、単一のピペットまたは複数のピペットを備えることができる。そのようなピペット装置は当技術分野でよく知られており、WO2017064089A1、
図1~14の参照符号100、および対応する説明に記載されるように設計され得る。ピペット装置は、定められた体積の試験試料を試験試料容器から吸引し得、その定められた体積の試験試料を分離容器の中に分注し得る。ピペット装置は、試験試料を分離容器から移液し、試験試料容器の中に移送することにより、分離容器に含有される試験試料を分離容器の固体表面から分離し得る。
【0062】
本明細書で使用される用語「遠心分離機」は、ホルダに挿入された分離容器に含有される試験試料に遠心力を印加する、高速に回転するホルダをもつ装置に関係する。使用される分離容器に応じて、遠心分離機は、独立して、またはピペット装置と組み合わせてのいずれかで、捕捉分子および干渉物質が固定化された分離容器の固体表面から、試験試料を分離することができる。例えば、捕捉分子またはリンカー分子で被覆された取り外し可能フィルタを備える分離容器が使用される場合は、遠心分離後に、固定化された捕捉分子および干渉物質を含むフィルタが取り外されることができ、それにより分離容器がさらに試験試料容器として使用できる。よって、分離のために追加的な分離装置は必要とされない。被覆されたビーズを備える分離容器が使用される場合は、遠心分離後に、ピペット装置を使用して、固定化された捕捉分子および干渉物質を含む分離容器の底部にある生成されたビーズの膜から、試験試料が分離されなければならない。この場合、遠心分離機は、分離自体を実施すると言うよりは、干渉物質からの試験試料の分離に寄与するか、またはそれを支援する。
【0063】
遠心分離機は、例えば培養ステップのような特定の方法または処理ステップが遠心分離機で直接実施されることが可能となるように、組み込まれた加熱および/または冷却装置を備え得る。そのような遠心分離機は当技術分野でよく知られている。
【0064】
本明細書で使用される用語「ロータ」は、上記のような回転可能分離容器を旋回または回転させるように構成された装置に関係する。ロータは、分離容器を保持するためのホルダまたはアダプタを備えることができる。ロータは、回転アクチュエータによって駆動されて、分離容器の制御された円環運動を可能にし得る。それにより、分離容器はその長手軸を中心として回転される。そのようなロータは、EP3174970A1、
図1、
図2Dの参照符号102、および対応する説明に記載されるように設計され得る。使用される分離容器に応じて、ロータは、独立して、またはピペット装置と組み合わせてのいずれかで、捕捉分子および干渉物質が固定化された分離容器の固体表面から試験試料を分離することができる。例えば、捕捉分子で被覆された取り外し可能側部チャンバを備える回転可能分離容器が使用される場合は、回転後に、固定化された捕捉分子および干渉物質を含む側部チャンバが、試験試料を含む下部部分から取り外されることができ、それにより、回転可能分離容器の下部は試験試料容器として使用できる。よって、分離のために追加的な分離装置は必要とされない。側壁が被覆された回転可能分離容器が使用される場合は、回転後に、ピペット装置を使用して、分離容器の側壁の固定化された干渉物質から試験試料が分離されなければならない。この場合、ロータは、分離自体を実施すると言うよりは、干渉物質からの試験試料の分離に寄与するか、またはそれを支援する。
【0065】
本明細書で使用される場合、用語「磁気分離および培養ステーション」は、液体試験試料中に存在する磁気粒子またはビーズを分離容器の固体表面に固定化するように適合された装置に関係する。磁気分離および培養ステーションは、分離容器またはマルチ分離容器アセンブリを挿入するためのホルダまたはアダプタを備えることができる。磁気分離および培養ステーションは、アクチュエータに接続された可動磁石をさらに備える。アクチュエータは、可動磁石を分離容器に近づける方に、または分離容器から遠ざかる方に移動するように構成される。磁気分離および培養ステーションは、ヒートブロックをさらに備える。ヒートブロックは、分離容器の内容物に熱を伝達するために、分離容器に接触するように構成される。これは、捕捉分子と干渉物質との間、および/または捕捉分子とリンカー分子との間の効率的な結合を支援し得る。磁気分離および培養ステーションは、EP3213819A1、
図5、
図6、
図8の参照符号40、および対応する説明に記載されるように設計され得る。使用される分離容器に応じて、磁気分離および培養ステーションは、独立して、またはピペット装置と組み合わせてのいずれかで、捕捉分子および干渉物質が固定化された分離容器の固体表面から試験試料を分離することができる。例えば、被覆された磁気ビーズと、被覆された磁気ビーズよりも小さい孔径をもつ無被覆の取り外し可能フィルタとを備える分離容器が使用される場合は、磁場の印加後に、固定化された捕捉分子および干渉分子を含むフィルタが取り外されることができ、それにより分離容器は試験試料容器として使用できる。よって、分離のために追加的な分離装置は必要とされない。被覆された磁気ビーズのみを備える分離容器が使用される場合は、磁場の印加後に、ピペット装置を使用して、固定化された捕捉分子および干渉物質を含む分離容器の底部にある生成された磁気ビーズの膜から、試験試料が分離されなければならない。この場合、磁気分離および培養ステーションは、分離自体を実施すると言うよりは、干渉物質からの試験試料の分離に寄与するか、またはそれを支援する。
【0066】
本明細書で使用される場合、用語「ろ過ステーション」は、固定化された捕捉分子および干渉物質から試験試料を分離するために、分離容器の被覆されたフィルタに試験試料を通すように構成された装置に関係する。ろ過ステーションは、分離容器またはマルチ分離容器アセンブリを保持するためのホルダまたはアダプタを備え得る。ホルダは、被覆されたフィルタを備える分離容器を3次元空間内に配置することができ、これにより試験試料がフィルタに塗布/移液されて、重力でフィルタを通過することができる。あるいは、ろ過ステーションは、分離容器に動作可能に結合され得るポンプをさらに備えてもよく、これにより、試験試料を分離容器の被覆されたフィルタに通し、それにより、試験試料に含有される干渉物質をフィルタ上の固定化された捕捉分子によって維持するために、試験試料への制御された圧力または吸引力が印加されることが可能となる。そのようなろ過ステーションは当技術分野でよく知られている。
【0067】
検査室システムの一実施形態では、検査室機器は、少なくとも1つの試験試料処理装置をさらに備える。そして、試験試料処理装置は、ピペット装置、加熱装置、冷却装置、混合装置、振とう装置、容器ハンドラ、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0068】
本明細書で使用される場合、用語「試験試料処理装置」は、下記でさらに説明されるように、干渉分離プロトコルに従って試験試料に処理ステップまたは動作を実施するように構成された装置に関係する。検査室機器の試験試料処理装置は、分離ステーション内の機能または動作も担い得る。例えば、試験試料処理装置は、分離ステーションの外部でのピペット動作(例えば、試験試料の分取、試験試料への分離溶液の付加、分離ステーションに移送される試験試料の吸引)、および分離ステーションの内部でのピペット動作(例えば、分離容器の中への試験試料の分注、試験試料への分離溶液の付加、分離容器の固体表面からの試験試料の分離)を行うことが可能なピペット装置であり得る。
【0069】
本明細書で使用される場合、用語「加熱装置」は、試験試料を定められた温度で定められた継続時間にわたって加熱するように構成された装置に関係する。そのような加熱装置は当技術分野でよく知られている。
【0070】
本明細書で使用される用語「冷却装置」は、試験試料を定められた温度で定められた継続時間にわたって冷却するように構成された装置に関係する。そのような冷却装置は当技術分野でよく知られている。
【0071】
一実施形態では、加熱装置および冷却装置は、試験試料を定められた温度で定められた継続時間にわたって加熱および冷却するように構成される1つの培養装置として組み合わせられ得る。そのような培養装置は当技術分野でよく知られている。
【0072】
本明細書で使用される場合、用語「混合装置」は、試験試料を定められた速度で定められた継続時間にわたって混合または撹拌するように構成された装置に関係する。あるいは、混合装置は、試験試料が予め定められた温度で混合および撹拌されることが可能となるように、加熱、冷却、または培養装置も備える。そのような混合装置は当技術分野でよく知られている
本明細書で使用される場合、用語「振とう装置」は、試験試料を定められた速度で定められた継続時間にわたって振とうするように構成された装置に関係する。あるいは、振とう装置は、試験試料が予め定められた温度で振とうされることが可能となるように、加熱、冷却、または培養装置も備える。そのような振とう装置は当技術分野でよく知られている。
【0073】
本明細書で使用される用語「容器ハンドラ」は、分離容器または試験試料容器を検査室機器内の定められた位置に配置または挿入するように構成された装置に関係する。容器ハンドラは、容器を保持し、検査室機器内で移動することができる。例えば、容器ハンドラは、分離容器を、分離装置の指定されたホルダ位置または検査室機器の試料出力領域に配置し得る。容器ハンドラは、容器ロータ、またはグリッパが装備されたロボットアームを備え得る。検査室機器内で容器を操作し、配置するためのそのような装置は、当技術分野でよく知られており、EP2148204B1、
図3、
図4の参照符号310、および対応する説明に記載されるように設計され得る。一実施形態では、容器ハンドラは、容器のキャップを取り外す、および/または容器にキャップを嵌めるようにさらに構成され得る。そのような容器ハンドラは、当技術分野でよく知られており、米国特許第8834814号(B2)に記載されるように、またはEP2538227B1に記載されるように設計され得る。
【0074】
検査室システムの特定の一実施形態では、少なくとも1つの試験試料処理装置は少なくとも1つの分離ステーションからなる。例えば、分離ステーションの分離容器ホルダは、例えば、捕捉分子と干渉物質の間の効率的な結合を支援する培養ステップのような、試験試料から干渉物質を分離するために必要とされる特定の方法または処理ステップが、分離ステーション内で直接実施されることが可能となるように、加熱、冷却、混合、および/または振とう装置を備え得る。
【0075】
検査室システムの一実施形態では、少なくとも第1の分離容器に含有される試験試料は第1の試験試料タイプであり、少なくとも第2の分離容器に含有される試験試料は第2の試験試料タイプである。そして、第1の試験試料タイプは第2の試験試料タイプと異なる。
【0076】
干渉は、試験試料タイプに依存する場合もある。いくつかの試験試料タイプは、対応する検査室試験に干渉するよく知られた干渉物質を含む。例えば、人間の抗動物抗体は、血清の試験試料および/または血漿の試験試料中に存在する知られている干渉物質であり、免疫学的試験反応に基づく検査室試験に干渉し得る。そのような干渉は、対応する抗体で被覆された固体表面を備える分離容器を使用して、血清または血漿の試験試料から分離され得る。フィブリンは、血漿の試験試料中に存在する知られている干渉物質であり、抗フィブリン抗体で被覆された固体表面を備える分離容器を使用して、血漿の試験試料から分離され得る。尿の試験試料では、ビタミンC(アスコルビン酸)が知られている干渉物質であり、これは、抗ビタミンC抗体で被覆された固体表面を備える分離容器を使用して、尿の試験試料から分離され得る。別の例は、便の試験試料中の干渉物質としての尿酸であり、これは、抗尿酸抗体で被覆された固体表面を備える分離容器を使用して、便の試験試料から分離され得る。
【0077】
より具体的な実施形態では、試験試料タイプは、血清の試験試料、血漿の試験試料、全血の試験試料、尿の試験試料、便の試験試料、痰の試験試料、脳脊髄液の試験試料、骨髄の試験試料からなる群から選択される。
【0078】
検査室システムの一実施形態では、検査室機器は、試験試料入力領域をさらに備える。本明細書で使用される場合、用語「試験試料入力領域」は、検査室機器によって処理されようとする試験試料が、少なくとも1つの分離ステーションにさらに搬送される前に一時的に配置される、検査室機器の専用領域に関係する。試験試料入力領域は、試験試料を含有している1つまたは複数の試験試料容器を手動で挿入するための少なくとも1つのホルダまたはラックを備え得る。あるいは、試験試料入力領域は、試験試料容器の入ったホルダまたはラックを検査室搬送システムから受け入れるために検査室搬送システムに動作可能に結合されることが可能なホルダまたはラックコンベヤを備えてもよい。または、試験試料入力領域は、検査室搬送システムの一部からなり得る。
【0079】
検査室システムの一実施形態では、検査室機器は、試験試料出力領域をさらに備える。試験試料出力領域は、検査室搬送システムに動作可能に結合され、検査室搬送システムは、少なくとも第1および第2の分析モジュールに動作可能に結合される。そして、第1の分析モジュールは、第2の分析モジュールと異なる。
【0080】
本明細書で使用される場合、用語「試験試料出力領域」は、検査室機器によって処理された試験試料が、接続された分析モジュールにさらに搬送される前に一時的に配置される、検査室機器の専用領域に関係する。一実施形態では、試験試料出力領域は、処理された試験試料を含有する1つまたは複数の分離容器または試験試料容器を挿入するための少なくとも1つのホルダまたはラックを備え得る。試験試料出力領域は、検査室搬送システムに動作可能に結合されることが可能なホルダまたはラックコンベヤを備え得る。そのため、検査室搬送システムは、分離容器または試験試料容器の入ったホルダまたはラックを試験試料出力領域から受け入れることができる。あるいは、試験試料出力領域は、検査室搬送システムの一部からなってもよい。
【0081】
一実施形態では、試験試料出力領域は、ユーザが、処理された試験試料をさらに手動で搬送するために、分離容器または試験試料容器の入ったホルダまたはラックを取り外す、または取り出すことができるゲートを備え得る。手動の取り出しは、種々の分析モジュールが検査室搬送システムに動作可能に結合されない、半自動化された検査室環境で有利である可能性がある。
【0082】
本明細書で使用される場合、用語「検査室搬送システム」は、接続された分析前ステーション、分析モジュール、または分析後ステーションに、試験試料を搬送または分配するように設計されているシステムに関係する。検査室搬送システムは、分離容器または試験試料容器の入ったホルダまたはラックがその上に載せて搬送されることが可能な搬送面を備え得る。検査室搬送システムは、ホルダまたはラックを移動するためのコンベヤベルトを備え得る。あるいは、検査室搬送システムは、搬送面の下に静的に配設され、ホルダまたはラックを移動するための磁場を生成するように適合された、いくつかの電磁気アクチュエータを備え得る。あるいは、検査室搬送システムは、自走式のホルダまたはラックがその上を移動できる安定した搬送面を備えてもよい。
【0083】
試験試料または試料容器の予備的な処理のために、通常は分析前ステーションが使用され得る。分析モジュールは、例えば、測定可能信号を発生させるために試験試料または試験試料の一部と試験試薬とを使用するように設計されることができ、測定可能信号に基づいて、検体が存在するかどうか、および所望される場合はどの濃度で存在するかを判定することができる。異なる分析方法の検査室試験が同じ分析ステーションで行われることが可能となるように、複数の分析モジュールが1つの分析ステーションとして組み合わせられ得る。試験試料の保存のような試験試料の後処理のために、通常は分析後ステーションが使用され得る。分析前ステーション、分析モジュール、および分析後ステーションは、例えば、以下の装置の群、すなわち、試験試料または試験試料容器を分類するための分類装置、試験試料容器のキャップまたは蓋を取り外すためのキャップ取外し装置、試験試料容器にキャップまたは蓋を嵌めるためのキャップ嵌め装置、試験試料容器のキャップまたは蓋を取り外す/嵌めるためのキャップ取外し/嵌め装置、試験試料および/または試験試薬を移液するためのピペット装置、試験試料および/または試験試薬を分取するための分取装置、試験試料および/または試験試薬を遠心分離するための遠心分離装置、試験試料および/または試験試薬を加熱するための加熱装置、試験試料および/または試験試薬を冷却するための冷却装置、試験試料および/または試験試薬を混合するための混合装置、試験試料の検体を隔離するための隔離装置(例えばクロマトグラフもしくは電気泳動装置)、試験試料および/または試験試薬を保管するための保管装置、試験試料および/または試験試薬を保存するための保存装置、試験試料容器タイプを判定するための試験試料容器タイプ判定装置、試験試料品質を判定するための試験試料品質判定装置、試験試料容器を識別するための試験試料容器識別装置、試験試料の検体を検出するための検出装置、例えば、光度計、分光計、蛍光計、濁度計、比濁計、照度計、蛍光偏光計、炎光光度計、原子吸収光度計、電位差計、イオン選択性電極、電流計、電量計、抵抗計、フローサイトメータ、コールター・カウンタ、放射計、カメラ、質量分光計、重力計、温度計、サーミスタ、またはそれらの組み合わせ、からの少なくとも1つの装置を備え得る。そのような分析前ステーション、分析モジュール、分析後ステーション、および装置は、当技術分野でよく知られている。
【0084】
検査室システムの一実施形態では、第1の分析モジュールは、第1の分析方法の検査室試験を実施するように構成され、第2の分析モジュールは、第2の分析方法の分析方法の検査室試験を実施するように構成される。そのため、第1および第2の分析モジュールは、上記のように、異なる検出装置または同じ検出装置のいずれかと、2つの異なる分析方法の検査室試験を実施するための異なる試験試薬とを備える。
【0085】
検査室システムの一実施形態では、検査室機器は、制御ユニットをさらに備える。制御ユニットは、プロセッサと、少なくとも第1および第2の干渉分離プロトコルが設けられたコンピュータ可読媒体とを備える。第1の干渉分離プロトコルは、少なくとも第1の分離容器に含有される試験試料を、第1の分析方法の検査室試験の干渉物質から分離する少なくとも1つの処理ステップを含み、第2の干渉分離プロトコルは、少なくとも第2の分離容器に含有される試験試料を、第2の分析方法の検査室試験の干渉物質から分離する少なくとも1つの処理ステップを含む。プロセッサは、少なくとも第1および第2の干渉分離プロトコルに従って検査室機器を制御するように構成される。
【0086】
本明細書で使用される用語「制御ユニット」は、干渉分離プロトコルに従って試験試料が処理されるような方式で検査室機器を制御するように構成されるプロセッサを備えた、任意の物理的または仮想的な処理装置を包含する。制御ユニットは、割り当てられた干渉分離プロトコルおよび時間スケジュールに従って検査室機器で処理される必要のある試験試料に関して、情報または指示を管理ユニットから受け取り得る。制御ユニットのプロセッサは、割り当てられた干渉分離プロトコルに従って検査室機器の少なくとも1つの分離ステーションを制御し得る。制御ユニットは、少なくとも1つの試験試料処理装置をさらに制御し得る。制御ユニットのプロセッサは、例えば、分離容器に含有される試験試料を干渉物質から分離するために、干渉分離プロトコルを行わせる命令が設けられたコンピュータ可読媒体に記憶されたコンピュータ可読プログラムを実行するように適合された、プログラム可能論理コントローラとして具現化され得る。制御ユニットは、検査室機器で処理される必要のある試験試料に関する情報または指示を直接入力するためのユーザインターフェースをさらに備え得る。さらに、ユーザが、制御ユニットのユーザインターフェースで、干渉分離プロトコルを試験試料に割り当ててもよく、または干渉分離プロトコルの処理ステップを設定してもよい。
【0087】
本明細書で使用される場合、用語「干渉分離プロトコル」は、試験試料に含有される干渉物質を分離するための予め定められた手順またはプロセスに関係する。干渉分離プロトコルは、複数の処理ステップを含み得、処理ステップのタイミングおよび/または順序を定める。そして、処理ステップは、どの動作がどのように試験試料、分離溶液、または分離混合物に対して実施される必要があるかを定め得る。よって、処理ステップは、試験試料に含有される干渉物質を分離するために使用される、分離装置および/または試料処理装置、例えば時間、速度、温度などの装置パラメータ、ならびに分離容器を定め得る。
【0088】
そのような処理ステップの非制限的な例は、ピペット装置を使用した、分離容器からの、および/または分離容器の中への試験試料または捕捉分子が溶解した分離溶液の吸引および/または分注、培養装置を使用した、定められた温度での定められた継続時間にわたる試験試料または試験試料および分離溶液を含む分離混合物の培養、遠心分離機を使用した、定められた速度および温度での定められた継続時間にわたる試験試料または分離混合物の遠心分離、ロータを使用した、定められた速度および温度での定められた継続時間にわたる試験試料または分離混合物の旋回、磁気分離および培養ステーションを使用した、定められた時間にわたる試験試料または分離混合物の電界への曝露、ろ過ステーションを使用した、定められた圧力での試験試料または分離混合物のろ過、加熱装置を使用した、定められた温度での定められた継続時間にわたる試験試料または分離混合物の加熱、冷却装置を使用した、定められた温度での定められた継続時間にわたる試験試料または分離混合物の冷却、混合装置を使用した、定められた速度および温度での定められた継続時間にわたる試験試料または分離混合物の混合、振とう装置を使用した、定められた速度および温度での定められた継続時間にわたる試験試料または分離混合物の振とう、容器ハンドラを使用した、分離ステーションまたは試験試料出力領域の定められた位置への分離容器または試験試料容器の配置または挿入、である。
【0089】
検査室システムの一実施形態では、コンピュータ可読媒体は、少なくとも第1および第2の干渉分離プロトコルを記憶する。各干渉分離プロトコルは、処理ステップの予め定められた順序を備え得る。そして、第1の干渉分離プロトコルの少なくとも1つの処理ステップは、第2の干渉分離プロトコルと異なる。
【0090】
干渉物質としてのビオチンを除去するための第1の干渉分離プロトコルの非制限的な例は、以下の処理ステップを含み得る。
- 容器ハンドラを使用して、アビジンまたはストレプトアビジンで被覆された分離容器を分離ステーションのホルダの中に挿入する
- 容器ハンドラを使用して、試験試料容器を試料出力領域のホルダの中に挿入する
- ピペット装置を使用して、定められた体積の試験試料を分離容器内に分注する
- 分離ステーションの培養装置を使用して、試験試料を、定められた時間にわたり、定められた温度で培養する
- ピペット装置を使用して、試験試料を分離容器から吸引する
- ピペット装置を使用して、試験試料を試験試料容器内に分注する。
【0091】
干渉物質としてのヘモグロビンを除去するための第2の干渉分離プロトコルの非制限的な例は、以下のステップを含み得る。
- 容器ハンドラを使用して、HemogloBind(商標)で被覆された磁気ビーズを備える分離容器を、分離ステーションの磁気分離および培養ステーションホルダの中に挿入する
- 容器ハンドラを使用して、試験試料容器を試料出力領域のホルダの中に挿入する
- ピペット装置を使用して、定められた体積の試験試料を分離容器内に分注する
- 磁気分離および培養ステーションを使用して、試験試料を、定められた時間にわたり、定められた温度で培養する
- 分離ステーションの磁気分離および培養ステーションを使用して、定められた強さの磁場を、定められた時間にわたって分離容器に印加する
- ピペット装置を使用して、試験試料を分離容器から吸引する
- ピペット装置を使用して、試験試料を試験試料容器に分注する。
【0092】
一実施形態では、干渉分離プロトコルの処理ステップは設定可能である。試験試料に含有される干渉物質を分離するための検査室システムの要件は、検査室試験ポートフォリオおよび設置された分析モジュールに依存し得、検査室ごとに異なり得る。したがって、ユーザは、干渉分離プロトコルごとに、必要とされる分離装置および/または試料処理装置を定め、例えば時間、速度、温度などの装置パラメータ、ならびに試験試料に含有される干渉物質を分離するために使用される分離装置を設定することができる。
【0093】
検査室システムの一実施形態では、検査室システムはデータベースをさらに備える。データベースは、少なくとも1つの試験試料レコードを含み、試験試料レコードは、試験試料識別と、少なくとも1つの試験試料属性とを含む。そして、少なくとも1つの試験試料属性のうちの少なくとも1つは、選択的試験試料属性である。検査室システムは、検査室機器に通信可能に接続された管理ユニットをさらに備える。管理ユニットは、プロセッサと、少なくとも1つの選択的試験試料属性に基づいて試験試料を選択すること、選択された試験試料に干渉分離プロトコルを割り当てること、ならびに選択された試験試料および割り当てられた干渉分離プロトコルに基づいて検査室機器に指示を送信することを行うための命令が設けられたコンピュータ可読媒体と、を備える。
【0094】
本明細書で使用される場合、用語「試験試料属性」は、特定の試験試料または試験試料群に関連する情報および/または特性に関係する。試験試料に関連する情報は、非制限的な例として、試験試料タイプ、試験試料の使用期限日、試験試料の体積、試験試料に対して指示された検査室試験、患者情報、以前の検査室試験で得られたすでに入手可能になっている試験結果、試験試料の無効な試験結果および/または臨床的に矛盾する結果を示すフラグ、である。試験試料属性が特定の予め定められた条件を満たす場合、それは、検査室機器上で干渉分離プロトコルを適用するための試験試料がそれに基づいて選択される「選択的試験試料属性」になり得る。よって、1つの選択的試験試料属性に基づいて試験試料を選択するための命令は、if-then規則を含み得る。例えば、ある試験試料が一定の条件を満足する特定の試験試料属性を備える場合は、この試験試料が選択され、選択された試験試料に干渉分離プロトコルが割り当てられ、割り当てられた干渉分離プロトコルが、検査室機器上で、選択された試験試料に実施される。干渉物質を分離するための検査室システムの検査室機器は複数の異なる分析モジュールに接続され得るため、検査室機器上で干渉分離プロトコルを適用するための試験試料の的を絞った選択により、検査室機器のスループットが、すべての接続された分析モジュールのスループットの制限要因とならないことを保証し得る。
【0095】
より具体的な実施形態では、少なくとも1つの選択的試験試料属性は、試験試料に対して指示された検査室試験、試験試料に関連する患者情報、試験試料の無効な試験結果および/または臨床的に矛盾する結果、からなる群から選択される。
【0096】
干渉は検体に依存するおよび/または試験試薬に依存する可能性があり、一部の検査室試験は他の検査室試験よりも干渉の影響を受けやすいため、試験試料の選択は、試験試料に対して指示された検査室試験に基づくことができる。よって、試験試料の選択は、検査室試験に固有であり得る。知られている干渉物質および干渉物質による影響の受けやすさなどの、検査室試験の干渉に関する情報は、検査室試験の提供者または製造者によって提供され得る。選択的試験試料属性となる試験試料属性の条件は、指示された検査室試験に知られている干渉物質があるかどうか、および/または干渉物質の影響を受けやすいかどうかであり得る。例えば、TSHの検査室試験が指示されるすべての試験試料が選択されてよく、干渉物質としてのビオチンを分離するための干渉分離プロトコルが、それら選択された試料に対して検査室機器上で実施されてよい。
【0097】
本明細書で使用される用語「患者情報」は、特定の患者に関連する1つまたは複数の患者属性または情報に関係する。そのような患者情報の非制限的な例は、年齢、性別、現行のおよび/または過去の投薬/療法、現行のおよび/または過去の食事、現行のおよび/または過去の作業環境、ならびに試料採取の時間である。この情報は、試験試料に干渉分離プロトコルを適用するための試験試料を選択するために使用できる。患者情報は、特定の患者が上昇したレベルまたは高いレベルの内因性および/または外因性干渉物質を有し得ることの指標を提供し得る。上昇したレベルの干渉物質を引き起こす、または干渉物質を導入し得る、知られている投薬または食事などの、干渉に関係する患者情報は、医師により提供され得る。よって、選択的試験試料属性となる試験試料属性の条件は、患者が特定の療法を受けたことがあるかどうか、特定の食事を摂取したかどうか、または、上昇したレベルの干渉物質を引き起こす、もしくは干渉物質を導入する環境または条件に曝されたかどうか、であり得る。例えば、健康補助食品を摂取している患者から採られた試験試料が選択されてよく、干渉物質としてのビオチンを分離するために、干渉分離プロトコルが、検査室機器上で、選択された試料に実施されてよい。または、ルテニウムに曝された患者(例えば衣類の染色工程に従事している)から採られた試験試料が選択されてよく、干渉物質としてのルテニウムを分離するために、干渉分離プロトコルが、検査室機器上で、選択された試料に実施されてよい。
【0098】
本明細書で使用される場合、用語「無効な試験結果」は、前の検査室試験の試験結果であって、特定の試験試料に対してすでに入手可能になっており、かつ、例えば予め定められた検体範囲などの特定の試験結果有効性基準を満足しなかった試験結果に関係する。そのような無効な試験結果は、実施された検査室試験に関して試験試料中に干渉物質が存在することを示し得る。無効な試験結果は、前の検査室試験を実施した分析モジュールによって提供され得る。よって、選択的試験試料属性となる試験試料属性の条件は、有効性範囲の外側にある試験結果であり得る。無効な試験結果をもつ試験試料が選択され、その試験試料の再試験前に、選択された試料に対して検査室機器上で干渉分離プロトコルが実施されてよい。
【0099】
本明細書で使用される場合、用語「臨床的に矛盾する結果」は、患者の特定の条件の鑑別診断に当てはまらない試験結果または医学的知見に関係する。そのような臨床的に矛盾する結果は、特定の患者が上昇したまたは高いレベルの内因性および/または外因性干渉物質を有する可能性があることを示し得る。よって、選択的試験試料属性となる試験試料属性の条件は、試験結果または医学的知見が鑑別診断に当てはまらないかどうかであり得る。例えば、甲状腺パラメータ(fT4)のレベルが他の判定された甲状腺パラメータ(TSHまたはfT3)のレベルと合致しない場合、対応する試験試料が選択されてよく、その試験試料の再試験前に、選択された試料に対して検査室機器上で干渉分離プロトコルが実施されてよい。
【0100】
一実施形態では、データベースに記憶されていない、またはまだ記憶されていない情報に基づいて、ユーザが、処理される試験試料を手動で選択し得る。例えば、ユーザは、緊急を要する試験試料およびその緊急を要する試験試料についての試験試料属性を含むデータシートを医師から受け取り得る。試験試料属性に基づいて、ユーザは次いで、干渉分離プロトコルが試験試料に割り当てられて検査室機器で実施される必要があるかどうかを判定し得る。試験試料の選択、干渉分離プロトコルの割り当ておよび検査室機器への指示は、検査室機器または管理ユニットのユーザインターフェースで、ユーザによって入力され得る。
【0101】
別の実施形態では、選択的試験試料属性に基づく試験試料の選択は実施されず、検査室機器上ですべての試験試料に対して干渉分離プロトコルが行われ得る。例えば、検査室試験ポートフォリオが数個のみの検査室試験を含む高度に特化された検査室環境では、選択的試料属性に基づく個々の試験試料の選択は必要とされない場合がある。
【0102】
検査室システムのさらなる実施形態では、検査室機器は、少なくとも第1の分離容器保管区域および第2の分離容器保管区域をさらに備える。第1の分離容器保管区域と第2の分離容器保管区域とは互いから分離されている。そして、少なくとも第1の分離容器は、少なくとも第1の分離容器保管区域に保管され、少なくとも第2の分離容器は、少なくとも第2の分離容器保管区域に保管される。よって、起こり得る交差汚染を最小にするために、第1の分析方法の検査室試験の干渉物質を分離するための分離容器と、第2の分析方法の検査室試験の干渉物質を分離するための分離容器とが、互いから空間的に分離されて保管され得る。
【0103】
本明細書で使用される場合、用語「保管区域」は、複数の分離容器を保管することができる様々なサイズの戸棚に関係する。少なくとも第1および第2の保管区域は、検査室機器内で物理的に分離され、互いから独立していてよい。あるいは、少なくとも第1および第2の保管区域は、検査室機器の1つの中央保管ステーションからなってもよく、第1および第2の分離容器保管区域は、保管ステーション内で指定された領域および/または区画壁によって分離される。各保管区域または保管ステーションは、保管区域内の分離容器の周囲温度を室温以下に保持するための温度調節ユニットを有し得る。内部に、各保管区域または保管ステーションは、多数の分離容器を予め定められた保管位置に保管するための複数の棚またはラックを備え得る。各保管区域または保管ステーションは、棚に加えて、またはその代わりに、分離容器のための区画されたトレーまたはインサートを有し得る。さらに、異なるサイズおよび幾何学的形状の分離容器を保管する際に利用可能な空間を最適化できるように、異なる高さをもつ棚または区画が設けられ得る。分離容器は、手動でおよび/または例えば容器ハンドラを使用して自動的に、各保管区域もしくは保管ユニットの中に納められ、または各保管区域もしくは保管ユニットから取り出され得る。例えば、ユーザは、ある保管区域に特定のタイプの分離容器を手動で納め得る。次いで、容器ハンドラが、容器ハンドラを使用して、分離容器を保管区域から分離ステーションに移送し得る。
【0104】
本発明は、試験試料に含有される干渉物質を分離するための方法にも関する。この方法は、以下のステップを含む。
a)少なくとも1つの選択的試験試料属性に基づいて、少なくとも第1の試験試料を選択するステップ
b)第1の試験試料と、第1の分離容器の固体表面および捕捉分子とを、第1の分析方法の検査室試験の干渉物質を捕捉分子に結合させるのに十分な、または第1の分析方法の検査室試験の干渉物質を捕捉分子に結合させ、かつ上記捕捉分子を第1の分離容器の固体表面に固定化させるのに十分な条件下で、ある期間にわたって、互いと組み合わせるステップ
c)少なくとも第1の試験試料を第1の分離容器の固体表面から分離するステップ
d)少なくとも1つの選択的試験試料属性に基づいて、少なくとも第2の試験試料を選択するステップ
e)第2の試験試料と、第2の分離容器の固体表面および捕捉分子とを、第2の分析方法の検査室試験の干渉物質を捕捉分子に結合させるのに十分な、または第2の分析方法の検査室試験の干渉物質を捕捉分子に結合させ、かつ上記捕捉分子を第2の分離容器の固体表面に固定化させるのに十分な条件下で、ある期間にわたって、互いと組み合わせるステップ
f)少なくとも第2の試験試料を第2の分離容器の固体表面から分離するステップ。
【0105】
ステップa)は、ステップd)の前、後、またはそれと同時に実行され、ステップb)およびc)を含むステップシーケンスは、ステップe)およびf)を含むステップシーケンスの前、後、またはそれと同時に実行される。そして、第1の分析方法は第2の分析方法と異なる。
【0106】
上記方法の一実施形態では、方法のステップa)における少なくとも第1の試験試料の選択、および/またはステップd)における少なくとも第2の試験試料の選択は、検査室機器もしくは管理ユニットのユーザインターフェースでユーザによって手動で実施されるか、または、プロセッサが、上記のように少なくとも1つの選択的試験試料属性に基づいて試験試料を選択するためのコンピュータ可読媒体に記憶された命令を実行することによって実施され得る。ステップa)のタイミングは、ステップd)のタイミングとは独立している。よって、ステップa)は、ステップd)の前、後、またはそれと同時に実行されることができる。例えば、ユーザが、検査室機器のユーザインターフェースで第1の試験試料を選択することができ、それと同時に、管理ユニットがデータベースに記憶された少なくとも1つの選択的試験試料属性に基づいて第2の試験試料を選択する。
【0107】
上記方法のより具体的な実施形態では、少なくとも1つの選択的試験試料属性は、上記のように、試験試料に対して指示された検査室試験、試験試料に関連する患者情報、試験試料の無効な試験結果および/または臨床的に矛盾する結果、からなる群から選択される。
【0108】
上記方法の一実施形態では、ステップb)およびc)を含むステップシーケンスは、常にステップa)の後に実行され、ステップe)およびf)を含むステップシーケンスは、常に方法ステップd)の後に実行される。そして、ステップb)およびc)を含むステップシーケンスは、ステップe)およびf)を含むステップシーケンスの前に実行されても、後に実行されてもよい。検査室機器の構成に応じて、1つのみの分離ステーションが利用可能な場合もある。したがって、ステップb)およびc)を含むステップシーケンスは、ステップe)およびf)を含むステップシーケンスの前または後にのみ実行され得、同時には実行され得ない場合もある。
【0109】
上記方法のさらなる実施形態では、ステップb)およびc)を含むステップシーケンスのタイミングは、ステップe)およびf)を含むステップシーケンスのタイミングとは独立している。検査室機器の構成に応じて、複数の分離ステーションが利用可能であり得、独立して動作し得る。例えば、第1の試料に割り当てられた第1の干渉分離プロトコルが第1の分離ステーションで実施され、第2の試料に割り当てられた第2の干渉分離プロトコルが検査室機器の第2の分離ステーションで実施され得る。そのため、ステップb)およびc)を含むステップシーケンスは、ステップe)およびf)を含むステップシーケンスと同時に、かつ独立して実行され得る。
【0110】
上記方法の一実施形態では、第1の分析方法の検査室試験の干渉物質を第1の試験試料から分離するステップb)およびc)は、第1の干渉分離プロトコルに従って実施され、第2の分析方法の検査室試験の干渉物質を第2の試験試料から分離するステップe)およびf)は、検査室機器の制御ユニットに記憶された第2の干渉分離プロトコルに従って実施される。方法のステップb)、c)、e)、およびf)は、第1および第2の干渉分離プロトコルの1つまたは複数の処理ステップを含み得る。例えば、ステップb)およびe)は、容器ハンドラを使用した、定められた位置への分離容器または試験試料容器の配置または挿入、分離容器からの、および/または分離容器の中への、試験試料、捕捉分子が溶解した分離溶液、または試薬の吸引および/または分注、試験試料または試験試料および分離溶液を含む分離混合物の定められた温度での定められた継続時間にわたる培養、加熱装置を使用した、定められた温度での定められた継続時間にわたる試験試料または分離混合物の加熱、冷却装置を使用した、定められた温度での定められた継続時間にわたる試験試料または分離混合物の冷却、混合装置を使用した、定められた速度および温度での定められた継続時間にわたる試験試料または分離混合物の混合、定められた速度および温度での定められた継続時間にわたる試験試料または分離混合物の振とう、を含み得る。例えば、ステップc)およびe)は、定められた速度および温度での定められた継続時間にわたる試験試料または分離混合物の遠心分離、定められた速度および温度での定められた継続時間にわたる試験試料または分離混合物の旋回、定められた時間にわたる試験試料または分離混合物の電界への曝露、定められた圧力での試験試料または分離混合物のろ過、ピペット装置を使用した分離容器からの試験試料の吸引、を含み得る。
【0111】
一実施形態では、方法のステップa)、b)、およびc)は、第1の分析方法の検査室試験の干渉物質を第1の試験試料から分離するためのステップシーケンスを定め、方法のステップd)、e)、およびf)は、第2の分析方法の検査室試験の干渉物質を第2の試験試料から分離するためのステップシーケンスを定め、第1の分析方法は第2の分析方法と異なる。ステップa)、b)、およびc)を含むステップシーケンスは、ステップd)、e)、およびf)を含むステップシーケンスの前、後、またはそれと同時に実行され得る。
【0112】
上記方法のさらなる実施形態では、第1の試験試料は、ステップc)の後に第1の分析モジュールに搬送され、第2の試験試料は、ステップf)の後に第2の分析モジュールに搬送される。そして、第1の分析モジュールは、第1の分析方法を実施するように構成され、第2の分析モジュールは、第2の分析方法を実施するように構成される。
【0113】
上記方法のより具体的な実施形態では、第1の試験試料は、手動で、または検査室搬送システムで、第1の分析モジュールに搬送される。そして、第2の試験試料は、手動で、または検査室搬送システムで、第2の分析モジュールに搬送される。
【0114】
上記方法の一実施形態では、方法は、本明細書に記載されるような検査室システムによって実施される。
【0115】
図の詳細な説明
図1に、試験試料(34、36)に含有される干渉物質(24、26)を分離するための検査室システム(10)の模式表現が示される。図示される検査室システム(10)は、第1および第2の分離容器(12、14)を備える。各分離容器(12、14)は、固体表面(16、18)および捕捉分子(20、22)を備える。第1の分離容器(12)の捕捉分子(20)は、第1の分離容器(12)の固体表面(16)に固定化され、第1の分離容器(12)の中に位置する第1の試験試料(34)に含有される第1の分析方法の検査室試験の干渉物質(24)と結合するように構成される。第2の分離容器(14)の捕捉分子(22)は、第2の分離容器(14)の固体表面(18)に固定化され、第2の分離容器(14)内に位置する第2の試験試料(36)に含有される第2の分析方法の検査室試験の干渉物質(26)と結合するように構成される。図示される実施形態では、第1および第2の分離容器(12、14)は同じであり、例えば回転可能分離容器であるが、異なる干渉物質(24、26)を捕捉するための異なる捕捉分子(20、22)を備える。代替の実施形態では、第1および第2の分離容器は同じであり、同じ干渉物質を捕捉するための同じ捕捉分子を備え得る。別の実施形態では、第1および第2の分離容器は、異なり、異なる干渉物質を捕捉するための異なる捕捉分子を備え得る。さらなる実施形態では、第1および第2の分離容器は、異なり、同じ干渉物質を捕捉するための同じ捕捉分子を備え得る。
【0116】
図示される検査室システム(10)は、第1の分離ステーション(30)と第2の分離ステーション(32)とを備える検査室機器(28)をさらに備える。各分離ステーション(30、32)は、少なくとも1つの分離装置(31、33)を備える。図示される実施形態では、第1および第2の分離装置(31、33)は同じであり、例えば、分離容器(12、14)を保持するためのホルダまたはアダプタを備えたロータである。図示される検査室機器(28)は、第1および第2の試料処理装置(38、40)をさらに備えてよく、これは、例えば、試験試料および/または捕捉分子が溶解した分離溶液を、分離ステーション(30、32)内に位置する分離容器(12、14)から、および/もしくはその中へ、または試験試料入力領域(45)に位置する試験試料容器から、吸引および/または分注するためのピペット装置などである。検査室機器は、検査室搬送システム(48)に動作可能に結合された試験試料出力領域(46)をさらに備え得る。分離容器(12、14)は、容器ハンドラ(図示せず)により、分離ステーション(30、32)から試験試料出力領域(46)に移動され得る。代替の実施形態では、分離容器(12、14)に含有される試験試料(34、36)は、ピペット装置などの試料処理装置(38、40)を使用して、試験試料出力領域(46)に位置する試験試料容器へと移送され得る。図示される実施形態では、検査室搬送システム(48)は、第1の分析モジュール(50)および第2の分析モジュール(52)に動作可能に結合され、第1の分析モジュール(50)は第2の分析モジュール(52)と異なる。例えば、第1の分析モジュール(50)は第1の分析方法の検査室試験を実施するように構成され、第2の分析モジュール(52)は第2の分析方法の検査室試験を実施するように構成される。
【0117】
検査室機器は、
図3にさらに説明されるように、プロセッサ(56)と、少なくとも第1および第2の干渉分離プロトコル(60、62)が設けられたコンピュータ可読媒体(58)とを備える制御ユニット(54)をさらに備える。そして、プロセッサ(56)は、少なくとも第1および第2の干渉分離プロトコル(60、62)に従って検査室機器(28)を制御するように構成される。制御ユニット(54)は、ユーザインターフェース(55)をさらに備え得る。
【0118】
図示される検査室システムは、
図4にさらに説明されるように試験試料レコード(70、72、74)を含むデータベース(68)と、検査室機器(28)に通信可能に接続された管理ユニット(90)とをさらに備える。管理ユニット(90)は、プロセッサ(94)と、少なくとも1つの選択的試験試料属性(84、86、88)に基づいて試験試料を選択すること、選択された試験試料に干渉分離プロトコル(60、62)を割り当てること、ならびに選択された試験試料および割り当てられた干渉分離プロトコルに基づく指示を検査室機器(28)に送信することを行うための命令が設けられたコンピュータ可読媒体(96)と、を備える。
【0119】
図2A~2Dは、固体表面(16)と捕捉分子(22)とを備える分離容器(12)の異なる実施形態を図示する。
図2Aおよび
図2Bに示されるように、固体表面(16)は、分離容器(12)の内側表面からなることができ、分離容器(12)の捕捉分子は上記固体表面(16)に固定化される。より具体的な実施形態では、内側表面は捕捉分子で被覆される(
図2A)。別の具体的な実施形態では、内側表面は、捕捉分子(22)と結合または捕捉することが可能なリンカー分子(23)で被覆される(
図2B)。
図2Cに示されるように、分離容器(12)はフィルタ(42)を備え得、固体表面(16)は、捕捉分子(22)で被覆されたフィルタ(42)からなる。
図2Dに示されるようなさらなる実施形態では、分離容器(12)はビーズ(44)を備え、固体表面(16)は、捕捉分子(22)で被覆されたビーズの表面からなる。あるいは、分離容器のフィルタまたはビーズは、捕捉分子と結合または捕捉することが可能なリンカー分子で被覆されてもよい(図示せず)。
【0120】
図3は、第1の干渉分離プロトコル(60)および第2の干渉分離プロトコル(62)が設けられたコンピュータ可読媒体(58)の模式表現を示す。第1の干渉分離プロトコル(60)は、干渉物質としてのビオチンを、TSHの検査室試験が指示された試験試料から分離するように設計され得る。第1の干渉分離プロトコル(60)は、次の6つの処理ステップ(64)を備え得る。
【0121】
- 容器ハンドラを使用して、アビジンまたはストレプトアビジンで被覆された分離容器を分離ステーションのホルダの中に挿入する
- 容器ハンドラを使用して、試験試料容器を試料出力領域のホルダの中に挿入する
- 分離ステーションのピペット装置を使用して、定められた体積の試験試料を分離容器内に分注する
- 分離ステーションの培養装置を使用して、試験試料を定められた時間にわたって定められた温度で培養する
- 分離ステーションのピペット装置を使用して、試験試料を分離容器から吸引する
- 分離ステーションのピペット装置を使用して、試験試料を試験試料容器内に分注する。
【0122】
第2の干渉分離プロトコル(62)は、臨床化学的検査室試験(例えば鉄)が指示された試験試料から、干渉物質としてのヘモグロビンを分離するように設計され得る。第1の干渉分離プロトコル(62)は、次の7つの処理ステップ(66)を備え得る。
【0123】
- 容器ハンドラを使用して、HemogloBind(商標)で被覆された磁気ビーズを備える分離容器を、分離ステーションの磁気分離および培養ステーションホルダの中に挿入する
- 容器ハンドラを使用して、試験試料容器を試料出力領域のホルダの中に挿入する
- 分離ステーションのピペット装置を使用して、定められた体積の試験試料を分離容器内に分注する
- 分離ステーションの磁気分離および培養ステーションを使用して、試験試料を定められた時間にわたり定められた温度で培養する
- 分離ステーションの磁気分離および培養ステーションを使用して、定められた強さの磁場を、定められた時間にわたって分離容器に印加する
- 分離ステーションのピペット装置を使用して、試験試料を分離容器から吸引する
- 分離ステーションのピペット装置を使用して、試験試料を試験試料容器内に分注する。
【0124】
図4は、試験試料レコード(70、72、74)を備えるデータベース(68)のデータ概念の例を図示する。各試験試料レコード(70、72、74)は、試験試料識別(76)と、少なくとも1つの試験試料属性(78、80、82)とを含む。図示される例では、試験試料レコード(78、80、82)ごとに、属性「試験試料に対して指示された検査室試験」(78)、「患者情報」(80)、および「無効な試験結果」(82)が記憶される。さらに、各試験試料レコード(70、72、74)は試験試料属性(78、80、82)を備え、これは、選択的試験試料属性(84、86、88)であり、これに基づいて検査室機器上で干渉分離プロトコル(60、62)を適用するための試験試料が選択される。例えば、試験試料識別「1」の試験試料には、TSHの検査室試験が指示される(84)。TSHの検査室試験は干渉物質としてのビオチンの影響を受けやすいことが知られているため、この試験試料は、検査室機器上で干渉物質としてのビオチンを分離するための干渉分離プロトコル(60)を適用するために選択される。試験試料識別「2」の試験試料については、無効な試験結果が入手可能であり(86)、例えば、測定された鉄値が範囲外にあり、これは、試験試料中に干渉物質としてのヘモグロビンが存在することを示し得る。そのため、この試験試料は、検査室機器上で干渉物質としてのヘモグロビンを分離するための干渉分離プロトコル(62)を適用するために選択される。試験試料識別「3」の試験試料は、ヘパリンの投薬(88)を受けた患者に由来するものである。よって、指示されたPCRに基づくHIVの検査室試験に干渉し得る、上昇したまたは高いヘパリンレベルが予想できる。したがって、この試験試料は、HIVの検査室試験を実施する前に検査室機器上で干渉物質としてのヘパリンを分離するための干渉分離プロトコルを適用するために選択される。
【0125】
図5A~5Fは、試験試料に含有される干渉物質を分離するための方法(103)の実施形態のフローチャートを図示し、方法の時間軸(116)に沿った方法の各ステップ(104~114)の時間的順序を含んでいる。図示される試験試料に含有される干渉物質を分離するための方法(103)の各々は、6つのステップ(104~114)を含む。方法のステップa)(104)で、少なくとも1つの選択的試験試料属性(84)に基づいて第1の試験試料(34)が選択される。方法のステップb)(106)で、第1の試験試料(34)が、第1の分離容器(12)の固体表面(16)および捕捉分子(20)と、第1の分析方法の検査室試験の干渉物質(24)を捕捉分子(20)に結合させるのに十分な、または第1の分析方法の検査室試験の干渉物質(24)を捕捉分子(20)に結合させ、かつ上記捕捉分子を第1の分離容器(12)の固体表面(16)に固定化させるのに十分な条件下で、ある期間にわたって、組み合わせられる。その後、方法のステップc)(108)で、検査室機器(28)の少なくとも1つの分離ステーション(30、32)の少なくとも1つの分離装置(31、33)を使用して、第1の試験試料(34)が第1の分離容器(12)の固体表面(16)から分離される。方法のステップd)(110)で、少なくとも1つの選択的試験試料属性(86)に基づいて第2の試験試料(36)が選択される。方法のステップe)(112)で、第2の試験試料(36)が、第2の分離容器(14)の固体表面(18)および捕捉分子(22)と、ある時間にわたって、および、第2の分析方法の検査室試験の干渉物質(26)を捕捉分子(22)に結合させるのに十分な、または第2の分析方法の検査室試験の干渉物質(26)を捕捉分子(22)に結合させ、かつ上記捕捉分子(22)を第2の分離容器(14)の固体表面(18)に固定化させるのに十分な条件下で、互いと組み合わせられる。その後、方法のステップf)(114)で、第2の試験試料(36)が第2の分離容器(14)の固体表面(18)から分離される。
図5Aに示されるように、ステップa)(104)は、ステップd)(110)の前に実行され、ステップb)(106)およびc)(108)を含むステップシーケンスは、ステップe)(112)およびf)(114)を含むステップシーケンスの前に実行される。
図5Bに示されるように、ステップa)(104)は、ステップd)(110)の後に実行され、ステップb)(106)およびc)(108)を含むステップシーケンスは、ステップe)(112)およびf)(114)を含むステップシーケンスの後に実行される。ステップa)(104)は、
図5Cに示されるようにステップd)(110)と同時に実行されることもでき、次いで、ステップb)(106)およびc)(108)を含むステップシーケンスが、ステップe)(112)およびf)(114)を含むステップシーケンスの前に実行される。無論、ステップb)(106)およびc)(108)を含むステップシーケンスは、ステップe)(112)およびf)(114)を含むステップシーケンスの後に実行されることもできる(図示せず)。
図5Dに示されるように、ステップa)(104)はステップd)(110)の後に実行されることもでき、次いでステップb)(106)およびc)(108)を含むステップシーケンスが、ステップe)(112)およびf)(114)を含むステップシーケンスの前に実行される。
図5A~5Dに示される方法(103)は、少なくとも1つの分離ステーション(30、32)を備える検査室機器(28)上で実装され得る。検査室機器が少なくとも2つの分離装置(30、32)を備える場合は、
図5Eに示されるように、ステップb)(106)およびc)(108)を含むステップシーケンスは、ステップe)(112)およびf)(114)を含むステップシーケンスと同時に実行されることもできる。さらに、
図5Fに示されるように、ステップb)(106)およびc)(108)のタイミングは、ステップe)(112)およびf)(114)のタイミングから独立している。よって、ステップb)(106)およびc)(108)を含むステップシーケンスは、ステップe)(112)およびf)(114)を含むステップシーケンスと並行して、かつそれから独立して実行されることもできる。
【符号の説明】
【0126】
10 検査室システム
12 第1の分離容器
14 第2の分離容器
16 第1の分離容器の固体表面
18 第2の分離容器の固体表面
20 第1の分離容器の捕捉分子
22 第2の分離容器の捕捉分子
23 リンカー分子
24 第1の分析方法の検査室試験の干渉物質
26 第2の分析方法の検査室試験の干渉物質
28 検査室機器
30 第1の分離ステーション
31 第1の分離装置
32 第2の分離ステーション
33 第2の分離装置
34 第1の分離容器に含有される試験試料
36 第2の分離容器に含有される試験試料
38 試料処理装置
40 試料処理装置
42 フィルタ
44 ビーズ
45 試験試料入力領域
46 試験試料出力領域
48 検査室搬送システム
50 第1の分析モジュール
52 第2の分析モジュール
54 制御ユニット
55 制御ユニットのユーザインターフェース
56 制御ユニットのプロセッサ
58 コンピュータ可読媒体
60 第1の干渉分離プロトコル
62 第2の干渉分離プロトコル
64 第1の分析方法の検査室試験の干渉物質を分離する処理ステップ
66 第2の分析方法の検査室試験の干渉物質を分離する処理ステップ
68 データベース
70 試験試料1の試験試料レコード
72 試験試料2の試験試料レコード
74 試験試料3の試験試料レコード
76 試験試料識別
78 試験試料属性「試験試料に対して指示された検査室試験」
80 試験試料属性「患者情報」
82 試験試料属性「無効な試験結果」
84 試験試料1の選択的試験試料属性
86 試験試料2の選択的試験試料属性
88 試験試料3の選択的試験試料属性
90 管理ユニット
92 管理ユニットのユーザインターフェース
94 管理ユニットのプロセッサ
96 コンピュータ可読媒体
100 第1の分離容器保管区域
102 第2の分離容器保管区域
103 試験試料に含有される干渉物質を分離するための方法
104 方法のステップa)
106 方法のステップb)
108 方法のステップc)
110 方法のステップd)
112 方法のステップe)
114 方法のステップf)
116 方法の時間軸