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  • 特許-モータ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/22 20060101AFI20231006BHJP
   H02K 7/106 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
H02K5/22
H02K7/106
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019126850
(22)【出願日】2019-07-08
(65)【公開番号】P2021013257
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】591218307
【氏名又は名称】株式会社ニッセイ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】山口 上陽
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-117736(JP,A)
【文献】特開2003-274597(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0164384(US,A1)
【文献】特開2018-057080(JP,A)
【文献】特開2005-210837(JP,A)
【文献】特開2014-039401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/22
H02K 7/106
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電用のケーブルを有するステータと、
前記ステータを内蔵するモータフレームと、
前記モータフレームに隣接して配置され、前記ケーブルを通すためのケーブル孔が外周面に設けられたモータブラケットと、
前記モータブラケットに隣接して配置されるカバーと、
前記ケーブル孔に配置され、前記ケーブルを固定するケーブルクランプと、
中心軸を中心として前記モータブラケットに回転自在に軸支されるモータシャフトと
を備えており、
前記モータブラケットは、前記ケーブル孔と、前記カバーとの間を、前記モータシャフトを除いて仕切るように構成されており、
前記モーターブラケットには、前記中心軸とはずれた位置に、前記中心軸と平行な方向に貫通する開口部が形成され
前記開口部は、前記ケーブル孔の軸線の方向から見て、前記ケーブル孔と重なる位置であり、且つ、前記中心軸の方向から見て、前記ケーブルと重なる位置に形成され、
前記開口部と前記ケーブル孔とが連通している
ことを特徴とするモータ。
【請求項2】
前記開口部の縁の少なくとも一部は、前記ケーブル孔の軸線と平行な互いに対向する2つの平面であり、前記2つの平面の間隔は、前記ケーブルの外径よりも大きい
ことを特徴とする請求項に記載のモータ。
【請求項3】
前記開口部の縁の少なくとも一部には、前記中心軸の方向から見て、前記ケーブル孔の軸線と重なる位置に凹部が形成されている
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のモータ。
【請求項4】
前記モータシャフトを制動するためのブレーキを更に備え、
前記ブレーキは、前記開口部を塞ぐように前記モータブラケットに固定される
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のモータ。
【請求項5】
前記ケーブル孔の軸線は、前記中心軸と交わらず、交差している
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のモータ。
【請求項6】
前記ケーブルの外径と、前記ステータの外径及び内径との関係は下記式(1)を満たすことを特徴とする請求項に記載のモータ。
ケーブル外径>(ステータ外径-ステータ内径)/6・・・(1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関し、特にモータのケーブル引き出し構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、マグネットを備えた回転子と、ステータコイルが巻回された固定子とから構成される、3相のインナーロータ型ブラシレスモータの構造が開示されている。このブラシレスモータによれば、ステータコイルとリード線との接続部には端子が使用され、ハウジングの端部内側には、合成樹脂製のリード線保持カラーが取り付けられている。給電用のリード線はカラーとハウジングとの間に挟持されているため、ハウジング外部からリード線に力が加えられても、その端部には曲げ力が作用せず、リード線とコイルとの接続部における断線を防止している。
【0003】
また、特許文献2には、電動機等から引き出されるケーブルの防水性を確保することができるケーブル出口構造(ケーブルクランプ)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-134715号公報
【文献】特開2003-274597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で開示されたモータに対して、防水性を確保する目的で、特許文献2で開示されたケーブルクランプを適用することが考えられる。しかしながら、このような構造においてケーブルをクランプする際の作業性には課題がある。
【0006】
モータのケーブル部分の組立手順では、まず、ケーブルをケーブルクランプの孔に通し、ケーブルクランプをモータのハウジングに固定する。次に、ケーブルの外部への引き出し長さを調整した状態で、ケーブルクランプを締め付け、ケーブルを固定する。この際、ケーブルを外部に引っ張り過ぎるとコイルとの接続部に負荷がかかり、ケーブルが断線してしまうおそれがある。また逆に、ケーブルを引き出す長さが少な過ぎる場合には、モータのハウジング内部でケーブルがたわみ、ロータ等の回転部にケーブルが接触して断線してしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、モータブラケットに軸方向の開口部を設けることで、クランプ時のケーブルの状態を確認でき、クランプ作業性を向上させることができるモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、請求項1記載のモータは、給電用のケーブルを有するステータと、前記ステータを内蔵するモータフレームと、前記モータフレームに隣接して配置され、前記ケーブルを通すためのケーブル孔が外周面に設けられたモータブラケットと、前記モータブラケットに隣接して配置されるカバーと、前記ケーブル孔に配置され、前記ケーブルを固定するケーブルクランプと、中心軸を中心として前記モータブラケットに回転自在に軸支されるモータシャフトとを備えており、前記モータブラケットは、前記ケーブル孔と、前記カバーとの間を、前記モータシャフトを除いて仕切るように構成されており、前記モーターブラケットには、前記中心軸とはずれた位置に、前記中心軸と平行な方向に貫通する開口部が形成され、前記開口部は、前記ケーブル孔の軸線の方向から見て、前記ケーブル孔と重なる位置であり、且つ、前記中心軸の方向から見て、前記ケーブルと重なる位置に形成され、前記開口部と前記ケーブル孔とが連通していることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項記載のモータは、請求項に記載のモータであって、更に、前記開口部の縁の少なくとも一部は、前記ケーブル孔の軸線と平行な互いに対向する2つの平面であり、前記2つの平面の間隔は、前記ケーブルの外径よりも大きいことを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項記載のモータは、請求項1からのいずれか1項に記載のモータであって、更に、前記開口部の縁の少なくとも一部には、前記中心軸の方向から見て、前記ケーブル孔の軸線と重なる位置に凹部が形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項記載のモータは、請求項1からのいずれか1項に記載のモータであって、更に、前記モータシャフトを制動するためのブレーキを更に備え、前記ブレーキは、前記開口部を塞ぐように前記モータブラケットに固定されることを特徴とするものである。
【0014】
また、請求項記載のモータは、請求項1からのいずれか1項に記載のモータであって、更に、前記ケーブル孔の軸線は、前記中心軸と交わらず、交差していることを特徴とするものである。
【0015】
また、請求項記載のモータは、請求項に記載のモータであって、更に、前記ケーブルの外径と、前記ステータの外径及び内径との関係は下記式(1)を満たすことを特徴と
するものである。
ケーブル外径>(ステータ外径-ステータ内径)/6・・・(1)
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載のモータによれば、モータの組立時に開口部から内部のケーブルの状態を確認することができる。このため、モータの組立時の作業性が向上する。
また、上記の効果に加えて、開口部によりケーブルとモータブラケットとの干渉を防ぐことができる。このため、開口部を設けない構造と比較してモータブラケットの軸方向の厚みを薄くすることができ、モータの軸方向の長さを短くすることができる。
また、上記の効果に加えて、中心軸方向から見て開口部とケーブルが重なるため、モータの組立時の作業性がより向上する。
【0019】
また、請求項記載のモータによれば、開口部の幅がケーブルの外径よりも広いので、モータの組立時の作業性がより向上する。
【0020】
また、請求項記載のモータによれば、ケーブル孔の軸線上に凹部が設けられるため、凹部によりケーブルとモータブラケットとの干渉を防止すことができ、ケーブルの曲げ半径に余裕を持たせることができる。
【0021】
また、請求項記載のモータによれば、ブレーキフィールドにより開口部を塞ぐことにより、モータ部へのブレーキ摩耗粉等の侵入を防止することができる。
【0022】
また、請求項記載のモータによれば、ケーブル孔を中心からずらして設けることにより、ケーブルの曲げ半径に余裕を持たせることができる。
【0023】
また、通常、ケーブルの曲げ半径は、ケーブルの外径の2倍以上を確保しなければならないものが一般的である。このため、通常では使用できるケーブルの外径は(ステータの外径-ステータの内径)÷6が最大であるが、請求項記載のモータによれば、ケーブル孔を中心からずらして設けることにより、それよりも太いケーブルを使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明に係るモータの中央縦断面図である。
図2】モータからカバー及びブレーキを取り外した状態の右側面図である。
図3】モータを出力軸側から見た図(左側面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明に係るモータ1の中央縦断面図であり、図2は、モータ1からカバー5及びブレーキ40を取り外した状態の右側面図であり、図3は、モータ1を出力軸20側から見た図(左側面図)である。
【0026】
モータ1は、中空状のモータフレーム2と、モータフレーム2の負荷側(図1の左側)に設けられた負荷側ブラケット3と、モータフレーム2の反負荷側(図1の右側)に設けられたモータブラケット4と、モータブラケット4の反負荷側に設けられたカバー5とを備えている。
【0027】
モータフレーム2の外周面は略正方形であり、外周面のうち三面には放熱のための複数のフィン6が形成されている。外周面のうちの残りの一面には、モータ1の銘鈑配置用の平面を確保するため、フィン6は形成されていない。モータフレーム2の内周面には、円筒状のステータ10が焼き嵌めにより固定されている。ステータ10は、円筒状のステータコア11と、ステータコア11に巻かれるコイル12とを有する。また、ステータ10の径方向内方には、ロータ組13が配置されている。ロータ組13は、円筒状のロータコア14と、ロータコア14の中心に圧入されるモータシャフト15とからなり、負荷側ベアリング16及び反負荷側ベアリング17によってモータシャフト15の中心軸O1を中心に回転可能に軸支されている。また、ロータコア14には、図示しないスロットが形成され、スロット内には図示しないマグネットが配置されており、ステータ10における反負荷側の側面には基板18が配置され、基板18にはスロット内のマグネットの磁極位置を検知するためのセンサとしてホールIC19が配置されている。
【0028】
ステータ10の反負荷側の側面において、コイル12の末端はロウ付け等によりケーブル21aと接続されている。ケーブル21aは、ステータ10の側面の内周寄りの位置から、中心軸O1に沿う方向に延びるように配置されている。本実施形態では、ケーブル21aの外径D1aは8mmであり、ケーブル21aの最小曲げ半径D2aは16mmである。また、基板18にはホールIC19の信号を出力するためのケーブル21bが接続されている。ケーブル21bは、基板18に接続され、中心軸O1に沿う方向に延びるように配置されている。本実施形態では、ケーブル21bの外径D1bは6.8mmであり、ケーブル21bの最小曲げ半径D2bは13.6mmである。また、ステータ10の外径D3は77mmであり、ステータ10の内径D4は40mmである。
【0029】
モータシャフト15の一端は、負荷側ベアリング16を介して負荷側ブラケット3の中央に軸支されている。モータシャフト15の先端は、負荷側ブラケット3の中心を貫通して外部に突出し、相手側機械と連結される出力軸20を兼ねている。モータシャフト15の他端は、反負荷側ベアリング17を介してモータブラケット4の中央に軸支され、モータブラケット4の中心を貫通している。
【0030】
モータブラケット4は外周面が略正方形であり、外周面の一面には、2個のケーブル孔22a,22bが、中心からの距離がそれぞれ等しい位置に、左右対称に形成されている。各ケーブル孔22a,22bには、ケーブルクランプ23がそれぞれ配置されている。コイル12と接続されたケーブル21aは、中心軸O1に沿う方向から90度曲げられ、一方のケーブル孔22aを通ってモータブラケット4の外部に引き出され、ケーブルクランプ23によって固定されている。基板18を介してホールIC19と電気的に接続された信号用のケーブル21bは、他方のケーブル孔22bを通ってモータブラケット4の外部に引き出され、ケーブルクランプ23によって固定されている。
【0031】
モータブラケット4の内部には、ケーブル孔22a,22bが形成された一面と中心軸O1との間に、中心軸O1方向に貫通する開口部30が形成されている。開口部30の縁31は、中心軸O1を中心にした円弧状の外側縁32と、ケーブル孔22a,22bの軸線O2に対して平行で、互いに対向する2つの平面33,33と、ケーブル孔22a,22bの軸線O2上の点を中心とした半円状の凹部34,34と、2つの凹部34,34の間をつなぎ中心軸O1を中心とする円弧状の内側縁35とからなる。開口部30は、中心軸O1に垂直な方向から見て、ケーブル孔22a,22bの軸線O2と重なる位置に形成されている。対向する2つの平面33,33の間隔Dは、中心軸O1の方向より見てケーブル21a,21bの状態が完全に確認できるように、ケーブル21a,21bそれぞれの外径よりも広くなっている。
【0032】
カバー5の内部には、ブレーキ40が設けられている。ブレーキ40は、モータブラケット4におけるモータフレーム2と反対側の面39に、複数のボルト41によって、開口部30を覆うように固定されている。
【0033】
ブレーキ40は、ブレーキフィールド42と、ブレーキフィールド42内に収容されてブレーキリード線43と電気的に接続されるブレーキコイル44と、ブレーキフィールド42の反負荷側に配置されるアーマチュア45と、アーマチュア45の反負荷側に配置される摩擦板46と、摩擦板46の反負荷側に配置されるリング状のサイドプレート47とを備えている。サイドプレート47は、スペーサ48を介して、ブレーキフィールド42の反負荷側の面に固定されている。アーマチュア45は、ボルト41の頭に外周が係合して回転を規制された状態で軸方向へ移動可能に支持されるが、ブレーキフィールド42に設けられた図示しないコイルバネによって、サイドプレート47側へ付勢されている。ブレーキリード線43は、カバー5に形成されたブレーキリード線用の孔49を通り、ゴムブッシュ50を介してカバー5の外部へ引き出されている。
【0034】
モータシャフト15の反負荷側の端部はブレーキ40の中心を貫通してカバー5内に突出している。モータシャフト15の反負荷側の端部にはキー溝51が軸方向に形成されており、アーマチュア45とサイドプレート47との間に設けられた摩擦板46が、ブレーキハブ52を介してモータシャフト15の反負荷側の端部と回転方向で一体に結合されている。このブレーキハブ52は、外周に摩擦板46の中心孔が嵌合する複数の平面を有する筒体で、中心には、モータシャフト15の端部に隙間嵌めで嵌合する貫通孔が形成されている。貫通孔の内面には、モータシャフト15のキー溝51に対応するキー溝が形成されている。さらに、ブレーキハブ52の外周には、ブレーキハブ52の軸方向に垂直な向きにネジ孔53が形成されており、内面のキー溝と連通している。
【0035】
よって、ブレーキハブ52は、モータシャフト15の端部に嵌合挿入した状態で、ネジ孔53から螺合させた止めネジ54をキー55に押圧させることで、モータシャフト15と一体にキー結合される。
【0036】
モータフレーム2と負荷側ブラケット3との間には、シールのためのOリング61が挟まれている。モータフレーム2とモータブラケット4との間には、シールのためのOリング62が挟まれている。モータブラケット4とカバー5との間には、シールのためのOリング63が挟まれている。ケーブルクランプ23、Oリング61、Oリング62、及びOリング63により、モータ1の防水性が確保される。
【0037】
次に、上記形態のモータの動作を説明する。モータ1がオンになり、コイル12に所定の電圧が付与されると、ロータ組13が回転してモータシャフト15が中心軸O1周りで回転し、出力軸20が回転する。また、モータ1のオン時、ブレーキリード線43を経てブレーキ40のブレーキコイル44に給電がなされ、電磁力によりブレーキコイル44がアーマチュア45を負荷側に引きつけ、摩擦板46がアーマチュア45及びサイドプレート47から離れて、モータシャフト15が回転可能となる。モータ1のオフ時には、アーマチュア45がスプリングの付勢力により摩擦板45に押し当てられ、摩擦板45とアーマチュア45及びサイドプレート47との間の摩擦力により、モータシャフト15の回転が妨げられる。
【0038】
次に、上記形態のモータの組立方法を説明する。まず、ステータ10をモータフレーム2内に焼き嵌めにより固定する。次に、負荷側ブラケット3にロータ組13を取り付け、ロータ組13の外周を覆うようにモータフレーム2及びステータ10を負荷側ブラケット3に取り付ける。次に、ケーブル21a及びケーブル21bをモータブラケット4に設けたケーブルクランプ23に通し、ケーブル21a及びケーブル21bを中心軸O1の方向から90度曲げた方向に引き出した状態で、モータブラケット4をモータフレーム2に組み付ける。このとき、モータフレーム2内部のケーブル21a及びケーブル21bの状態を、開口部30から確認し、ケーブル21a及びケーブル21bを適切な長さまで、外部に引き出し、ケーブルクランプ23を固定する。ケーブル21a及びケーブル21bの引き出し量が多過ぎる場合、コイル12とケーブル21aとの接続部、または基板18とケーブル21bとの接続部に過大な負荷がかかり、断線してしまうおそれがある。また、引き出し量が少な過ぎると、ケーブル21aまたはケーブル21bにたるみが発生し、モータシャフト15等の回転部に接触し、破損してしまうおそれがある。
【0039】
このように、上記形態のモータによれば、モータブラケット4の内部には、ケーブル孔22a,22bと中心軸O1との間に、中心軸O1方向に貫通する開口部30が形成されている。このため、モータ1の組立時に開口部30から内部のケーブル21a,21bの状態を確認することができる。このため、モータ1の組立時の作業性が向上する。
【0040】
また、開口部30は、ケーブル孔22a,22bの軸線O2の方向より見て、ケーブル孔22a,22bと重なる位置に形成され、開口部30とケーブル孔22a,22bとが連通していることにより、ケーブル21a,21bがモータブラケット4と干渉することを防ぐことができる。このため、モータブラケット4の軸方向の厚みを薄くすることができ、モータ1の軸方向の長さを短くすることができる。
【0041】
また、開口部30は、中心軸O1の方向より見て、ケーブル21a及びケーブル21bと重なる位置に形成されている。このため、モータ1の組立時の作業性がより向上する。
【0042】
また、開口部30の一部には、ケーブル孔22a,22bの軸線O2と平行で、互いに対向する2つの平面33が形成されており、2つの平面33の間隔D5は、それぞれのケーブル孔22a,22bの外径よりも大きい。このため、モータ1の組立時の作業性がより向上する。
【0043】
また、開口部30の一部には、ケーブル孔22a,22bの軸線O2上の点を中心とする半円状の凹部34が形成されている。このため、凹部34によりケーブル21a,21bとモータブラケット4との干渉を防ぐことができ、ケーブル21a,21bの曲げ半径に余裕を持たせることができる。
【0044】
また、ブレーキ40は、開口部30を塞ぐようにモータブラケット4に固定されている。このため、モータフレーム2内へのブレーキ40で発生する摩耗粉等の侵入を防止することができる。
【0045】
また、ケーブル孔22a,22bは、軸線O2が中心軸O1とは交わらず、交差する位置に形成されている。このため、ケーブル21a,21bとコイル12との接続部からケーブル孔22a,22bまでの距離を広くすることができ、ケーブル21a,21bの曲げ半径に余裕を持たせることができる。
【0046】
また、一般的にケーブルの最小曲げ半径は、直径の2倍であるため、ステータの側面のうち内周側に寄せた位置に接続されたケーブルを、90度曲げて径方向に引き出すモータの場合、ステータの径方向片側の厚さはケーブルの外径の3倍以上必要である。また、(ステータの外径-ステータの内径)÷2がステータの径方向片側の厚さである。つまり、(ステータの外径-ステータの内径)÷6が、使用できるケーブルの最大外径となる。しかしながら本実施形態のモータ1では、ケーブル孔22a,22bの軸線O2が中心軸O1とは交わらず、交差する位置に形成されているため、ケーブル21a,21bの曲げ半径に余裕を持たせることができる。ケーブル21aの外径D1aは8mmであり、ステータの外径D3は77mmであり、ステータの内径D4は40mmである。つまり一般的なモータの構成であれば通常使用できるケーブルの最大径は
(77-40)÷6 ≒ 6.2 (mm)
であるが、本実施形態ではそれよりも太い外径8mmのケーブルが使用可能である。
【0047】
以上のように、本実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。以下に、上記実施形態に加えうる変更の例について説明する。
【0048】
例えば、本実施形態では、モータシャフトの出力部分は丸シャフトとしたが、モータシャフトに歯切り加工を施してギアを形成し、相手機械のギアと直接噛み合うように接続してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 モータ
2 モータフレーム
4 モータブラケット
5 カバー
10 ステータ
15 モータシャフト
21a,21b ケーブル
22a,22b ケーブル孔
23 ケーブルクランプ
30 開口部
31 開口部の縁
33 平面
34 凹部
40 ブレーキ
O1 中心軸
O2 ケーブル孔の軸線
D1a,D1b ケーブルの外径
D3 ステータの外径
D4 ステータの内径
D5 平面の間隔
図1
図2
図3