(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】X線診断装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/12 20060101AFI20231006BHJP
A61B 6/00 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
A61B6/12
A61B6/00 331E
A61B6/00 320Z
A61B6/00 350Z
(21)【出願番号】P 2019135059
(22)【出願日】2019-07-23
【審査請求日】2022-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2018143752
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今川 和夫
(72)【発明者】
【氏名】阿部 真吾
(72)【発明者】
【氏名】高橋 章仁
【審査官】下村 一石
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-150206(JP,A)
【文献】特開2014-144053(JP,A)
【文献】特開2015-000231(JP,A)
【文献】特開2016-193090(JP,A)
【文献】特開2018-020113(JP,A)
【文献】特開平04-187142(JP,A)
【文献】米国特許第05278887(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を発生させるX線発生部と、
前記X線発生部から発せられたX線の照射領域を制限するX線絞り部と、
前記X線発生部から発せられたX線を検出するX線検出部と、
前記X線検出部による検出結果に基づくX線画像を取得する画像取得部と、
被検体の血管の走行に関する血管走行情報を取得する血管走行情報取得部と、
前記X線画像におけるデバイスの位置を特定するデバイス位置特定部と、
取得された前記血管走行情報と特定された前記デバイスの位置とに基づいて前記X線絞り部を制御する絞り制御部と、
を備えるX線診断装置。
【請求項2】
前記絞り制御部は、前記X線の照射領域を、前記デバイスの移動に合わせて移動させるように前記X線絞り部を制御することを特徴とする請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項3】
前記絞り制御部は、前記照射領域の中心を前記デバイスの先端位置に合わせるように前記X線絞り部を制御することを特徴とする請求項2に記載のX線診断装置。
【請求項4】
前記デバイス位置特定部は、前記デバイスの位置を、前記デバイスの先端位置と前記X線画像の複数のフレーム及びフレームレートを用いて特定することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のX線診断装置。
【請求項5】
前記血管走行情報と前記照射領域に関する情報との対応付けを記憶する記憶回路をさらに備え、
前記絞り制御部は、前記対応付けを参照して前記X線絞り部を制御することを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれかに記載のX線診断装置。
【請求項6】
X線を発生させるX線発生部と、
前記X線発生部と被検体との間に設けられ、前記X線発生部から照射された前記X線を通過させる開口を有し前記X線の照射領域を制限するフィルタと、
前記フィルタを移動させるフィルタ駆動機構と、
前記X線発生部から発せられた前記X線を検出するX線検出部と、
前記X線検出部による検出結果に基づくX線画像を取得する画像取得部と、
前記被検体の血管の走行に関する血管走行情報を取得する血管走行情報取得部と、
前記X線画像におけるデバイスの位置を特定するデバイス位置特定部と、
取得された前記血管走行情報と特定された前記デバイスの位置とに基づいて前記フィルタ駆動機構を介して前記フィルタを制御するフィルタ駆動制御部と、
を備えるX線診断装置。
【請求項7】
前記フィルタ駆動制御部は、前記X線の照射領域を、前記デバイスの移動に合わせて移動させるように前記フィルタを制御することを特徴とする請求項6に記載のX線診断装置。
【請求項8】
前記フィルタ駆動制御部は、前記照射領域の中心を前記デバイスの先端位置に合わせるように前記フィルタを制御することを特徴とする請求項7に記載のX線診断装置。
【請求項9】
前記デバイス位置特定部は、前記デバイスの位置を、前記デバイスの先端位置と前記X線画像の複数のフレーム及びフレームレートを用いて特定することを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれかに記載のX線診断装置。
【請求項10】
前記血管走行情報と前記照射領域に関する情報との対応付けを記憶する記憶回路をさらに備え、
前記フィルタ駆動制御部は、前記対応付けを参照して前記フィルタを制御することを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれかに記載のX線診断装置。
【請求項11】
前記血管走行情報は、自装置において撮像された少なくとも1つの前記X線画像から取得された情報であることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれかに記載のX線診断装置。
【請求項12】
前記血管走行情報は、自装置とは異なる他装置において取得されたボリュームデータから取得された情報であることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれかに記載のX線診断装置。
【請求項13】
視野の大きさを異なる大きさに変更する指示を受け付ける操作部をさらに備え、
前記絞り制御部は、前記血管走行情報及び特定された前記デバイスの位置に基づいて前記X線画像における関心領域を取得する関心領域取得部を有し、
前記絞り制御部は、前記指示が受け付けられた場合、前記指示に基づく大きさと取得された前記関心領域とに基づいて、前記X線画像の領域の一部を新たな視野として取得し、前記新たな視野をX線の照射領域とするように前記X線絞り部を制御することを特徴とする請求項1に記載のX線診断装置。
【請求項14】
前記絞り制御部は、前記関心領域が前記新たな視野に含まれるように、前記新たな視野を取得することを特徴とする請求項13に記載のX線診断装置。
【請求項15】
X線を発生させるX線発生部と、
前記X線発生部から発せられたX線を検出するX線検出部と、
前記X線検出部による検出結果に基づくX線画像を取得する画像取得部と、
被検体の血管の走行に関する血管走行情報を取得する血管走行情報取得部と、
前記X線画像におけるデバイスの位置を特定するデバイス位置特定部と、
取得された前記血管走行情報と特定された前記デバイスの位置とに基づいて前記X線画像における関心領域を取得する関心領域取得部と、
を備えるX線診断装置。
【請求項16】
取得された前記関心領域を用いてX線照射条件を取得するX線照射条件取得部をさらに備えることを特徴とする請求項15に記載のX線診断装置。
【請求項17】
前記X線照射条件取得部は、取得された前記関心領域における画素値に基づいて前記X線照射条件を取得することを特徴とする請求項16に記載のX線診断装置。
【請求項18】
取得された前記関心領域における画素値を用いて画像処理パラメータを取得する画像処理パラメータ取得部と、
取得された前記画像処理パラメータを用いて前記X線画像に画像処理を行う画像演算部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項15に記載のX線診断装置。
【請求項19】
前記X線発生部から発せられたX線の照射領域を制限するX線絞り部と、
取得された前記関心領域に基づいて前記X線絞り部を制御する絞り制御部と、
をさらに備える請求項15に記載のX線診断装置。
【請求項20】
視野の大きさを異なる大きさに変更する指示を受け付ける操作部をさらに備え、
前記絞り制御部は、前記指示が受け付けられた場合、前記指示に基づく大きさと取得された前記関心領域とに基づいて、前記X線画像の領域の一部を新たな視野として取得し、前記新たな視野をX線の照射領域とするように前記X線絞り部を制御することを特徴とする請求項19に記載のX線診断装置。
【請求項21】
前記血管走行情報は、前記被検体の血管の走行
方向及び太さを少なくとも含む、
請求項1乃至20のうちいずれか一項に記載のX線診断装置。
【請求項22】
前記絞り制御部は、取得された前記血管走行情報と特定された前記デバイスの位置とに基づいて、前記X線絞り部により前記照射領域の位置と、大きさと、形状とを制御する、
請求項1乃至21のうちいずれか一項に記載のX線診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、X線診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線診断装置は、例えば、循環器疾患の検査や治療に使用される。また、X線診断装置を使用したこのような検査、治療が行われる際には、造影剤や血栓溶解剤等の注入を目的としたカテーテル、狭窄部位を径方向に拡張するバルーン付きカテーテル、バルーンによって拡張された血管径を維持するステント、カテーテルの先端に装着された微小カッターを血管内で移動あるいは回転させて狭窄部位の沈着物(プラーク)を切除するDCA(方向性冠動脈プラーク切除器)やロータブレータ等(以下では、これらを纏めてデバイスと称する。)が併用される場合も多い。
【0003】
また、上述のようなX線診断装置により撮像されて得られたX線画像において、医師等が注目する領域を示す関心領域が設定されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書等に開示の実施形態が解決しようとする課題には、関心領域の設定を適切に行うこと、及び、設定された関心領域に基づき、例えばX線絞り及びX線フィルタのうち少なくとも一方の制御を適切に行うことが含まれる。ただし、上記課題に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果を奏することも、本明細書等に開示の実施形態が解決する他の課題として位置づけることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施の形態におけるX線診断装置は、X線発生部と、X線絞り部と、X線検出部と、画像取得部と、血管走行情報取得部と、デバイス位置特定部と、絞り制御部とを備える。X線発生部は、X線を発生させる。X線絞り部は、X線発生部から発せられたX線の照射領域を制限する。X線検出部は、X線発生部から発せられたX線を検出する。画像取得部は、X線検出部による検出結果に基づくX線画像を取得する。血管走行情報取得部は、血管走行情報を取得する。デバイス位置特定部は、X線画像におけるデバイスの位置を特定する。絞り制御部は、取得された血管走行情報と特定されたデバイスの位置とに基づいてX線絞り部を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態1に係るX線診断装置の構成を示すブロック図。
【
図2】実施形態1に係るX線診断装置の動作を示すフローチャート。
【
図3】実施形態1に係るX線診断装置の動作を示すフローチャート。
【
図4】実施形態1に係るX線診断装置において、血管内で特定されたデバイスの先端位置とX線の照射領域(関心領域)との関係を示す模式図。
【
図5】実施形態1に係るX線診断装置において、血管内で特定されたデバイスの先端位置とX線の照射領域(関心領域)との関係を示す模式図。
【
図6】血管走行情報と関心領域に関する情報との対応付けの一例を示すテーブル例。
【
図7】実施形態2に係るX線診断装置の構成を示すブロック図。
【
図8】実施形態2に係るシステム制御回路の構成を示すブロック図。
【
図10】実施形態2に係るX線診断装置の動作を示すフローチャート。
【
図11】実施形態2の変形例に係るシステム制御回路の構成を示すブロック図。
【
図12】実施形態3に係るX線診断装置の構成を示すブロック図。
【
図13】実施形態3に係るシステム制御回路の構成を示すブロック図。
【
図15】実施形態3に係るX線診断装置の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施形態1)
以下、実施形態1について図面を参照して詳細に説明する。
【0009】
図1は、実施形態1に係るX線診断装置Sの構成を示すブロック図である。実施形態1におけるX線診断装置Sは、X線発生部1とX線検出部2の他、X線発生部1におけるX線の照射に必要な高電圧を発生する高電圧発生部3を備えている。これらX線発生部1とX線検出部2は、保持アーム4の両端にそれぞれ設けられている。この保持アーム4の形状としては、例えばC型の形状(Cアーム)が採用されている。
【0010】
また、このX線診断装置Sは、この保持アーム4や寝台Bの移動を行う機構部5と、X線検出部2によって検出されるX線透過情報を画像として取得、保存する画像取得部6と、画像取得部6により取得されたX線画像データを用いてディスプレイに表示させるための制御を行う表示制御部7と、表示制御部7にて生成された、例えば、撮像内容や撮像条件を表示させるディスプレイ8とを備えている。
【0011】
さらに、X線診断装置Sは、例えば、自装置、或いは、他装置から取得した血管走行情報を記憶する記憶部9と、医療従事者がこのX線診断装置Sに対して種々の指示を与えるために用いる操作部10と、X線診断装置Sの上記各ユニットを制御するシステム制御回路Cとを備えている。
【0012】
X線発生部1は、被検体Mに対しX線を照射するX線管11と、このX線管11から照射されたX線の照射範囲を被検体Mに合わせるX線絞り部12とを備えている。X線管11はX線を発生させる真空管であり、陰極(フィラメント)より放出された電子を高電圧によって加速させてタングステン陽極に衝突させることによってX線を発生させる。一方、X線絞り部12は、X線管11と被検体Mの間に位置し、X線管11から照射されたX線ビームを撮像領域、或いは、デバイスの移動にあわせた位置、サイズに絞り込む機能を有するX線絞り機構の一例である。
【0013】
一方、X線の照射を受けてX線を検出するX線検出部2は、平面検出器21と、ゲートドライバ22と、電荷・電圧変換部23と、A/D変換部24とを備えている。
【0014】
平面検出器21は、被検体Mを透過したX線を電荷に変換して蓄積する。平面検出器21は、例えば、微小な検出素子を列方向及びライン方向に2次元的に配列して構成されている。この構成により、各々の検出素子はX線を感知し、入射X線量に応じて電荷を生成し、この電荷を電荷・電圧変換部23に送る。
【0015】
ゲートドライバ22は、平面検出器21に蓄積された電荷をX線画像信号として読み出すためにTFTのゲート端子に駆動電圧を供給する。電荷・電圧変換部23は、平面検出器21から読み出された電荷を電圧に変換する。A/D変換部24は、電荷・電圧変換部23の出力をデジタル信号に変換する。
【0016】
高電圧発生部3は、X線発生部1がX線を照射するための高電圧を発生する。高電圧発生部3は、X線制御部31と高電圧発生器32とを有する。X線制御部31は、システム制御回路Cからの入力に基づいて、X線管11における管電流、管電圧、照射時間等のX線照射条件についての制御信号を高電圧発生器32へ出力するX線制御機能の一例である。高電圧発生器32は、X線制御部31からの入力に基づいて、X線管11の陽極と陰極との間に高電圧を印加する。
【0017】
保持アーム4は、X線発生部1及びX線検出部2をつなぎ保持している。X線発生部1とX線検出部2とは、寝台Bを挟むように対向した位置にてCアームである保持アーム4の両端に設けられている。保持アーム4はこのようにその両端にこれらの機器を備えており、かつ、撮像条件に応じて移動可能とされている。また、照射されたX線であって被検体Mを透過したX線をX線検出部2において検出することから、Cアームの両端に設けられているX線発生部1とX線検出部2とは被検体M(寝台B)を挟んで対向する位置に位置することを前提とする。
【0018】
なお、
図1に示されているX線診断装置Sにおいては、X線発生部1が寝台Bの下、すなわちX線診断装置Sの設置面に近接した位置にあり、X線検出部2は逆に、寝台Bの上となる位置にある。
【0019】
機構部5は、X線診断装置Sの各部の機構を駆動し、例えば、保持アーム移動機構51と、寝台移動機構52とを備えるとともに、これら機構部5の各部を制御する機構制御部53を備えている。
【0020】
保持アーム移動機構51は、保持アーム4を移動させる。例えば、X線発生部1及びX線検出部2を被検体Mの体軸方向に対して相対的に移動させる。寝台移動機構52は、寝台Bを水平方向、或いは垂直方向に移動させる。
【0021】
機構制御部53は、後述するシステム制御回路Cからの制御信号によって、保持アーム移動機構51及び寝台移動機構52から構成される機構部5の駆動を制御する。
【0022】
なお、ここでの機構部5は上述した保持アーム移動機構51、寝台移動機構52、機構制御部53以外の機構を備えていないということではなく、あくまでも例示に過ぎない。
【0023】
画像取得部6は、X線検出部2による検出結果に基づくX線画像を取得する。画像取得部6は、画像取得機能/機構の一例である。画像取得部6は、画像演算部61と、画像データ記憶部62とから構成される。画像演算部61は、X線検出部2により取得されたX線透過情報を受信し、そのX線透過情報に基づいて輪郭強調やS/N比の改善等を目的とした画像処理演算を行う画像処理機能の一例である。画像データ記憶部62は、画像演算部61における画像処理演算後のX線画像データを一時的に記憶する。
【0024】
表示制御部7は、画像取得部6において取得されたX線画像データを用いて、ディスプレイ8に表示させるための表示データであるX線画像データを生成、変換する。表示制御部7は、表示データ生成部71と、変換部72を備える。表示データ生成部71は、画像取得部6からX線画像データを取得してX線画像データを生成する。変換部72は、生成されたX線画像データに基づいて表示用のX線画像に変換する処理を行なう。
【0025】
ディスプレイ8は、例えば液晶ディスプレイである。このディスプレイ8は、システム制御回路Cから出力信号を受信して、例えば、医師が手技を行うに当たって必要なデバイスを含むX線画像や、ある画像の処理要求をX線診断装置Sに対して行うに当たっての条件設定に必要な画像等を表示する。
【0026】
記憶部9は、例えば、半導体メモリや磁気ディスク等の記憶装置で構成されている。例えば、自装置、或いは、他装置から取得した血管走行情報を記憶する。また、画像取得部6において取得されたX線画像を記憶することとしても良い。また、その他X線診断装置Sにおける各種情報を記憶する。
【0027】
操作部10は、キーボード、各種スイッチ、マウス等を備えたインタラクティブなインターフェイスである操作機構の一例である。X線診断装置Sを使用する医療従事者は操作部10を用いて、例えば、X線管11に印加する管電圧、管電流、X線の照射時間、といった撮像の各種条件や検査の開始、機構部5の移動制御などのコマンド信号を入力する。
【0028】
システム制御回路Cは、操作部10から送られてくる医療従事者の指示や撮像条件などの情報に基づいてX線透過情報の収集や表示の制御、或いは駆動機構に関する制御などX線診断装置Sを構成するシステム全体の制御を行う。また、医師が手技を行う際のデバイスの位置等に基づいて適切な関心領域となるように、X線絞り部12の制御を行う。
【0029】
さらにシステム制御回路Cは、血管走行情報取得機能C1と、位置特定機能C2と、絞り制御機能C3とを備える。
【0030】
なお、ここでシステム制御回路Cにおける血管走行情報取得機能C1、位置特定機能C2、絞り制御機能C3は、それぞれ特許請求の範囲における血管走行情報取得部、デバイス位置特定部、絞り制御部に該当する。
【0031】
システム制御回路Cにおける血管走行情報取得機能C1は、医師が被検体Mに対してカテーテルの挿入等の手技を行う際にX線診断装置Sを用いて取得されるX線画像を基に、血管走行に関する情報を取得する機能である。例えば、医師がIVR(interventional radiology)を用いた、上述したような手技を実行する前には、被検体Mの血管像が撮像され、血管路の太さや分岐形状を含む形態や走行方向といった血管走行情報が取得される。
【0032】
具体的には、例えば、被検体Mの血管内に挿入された造影用カテーテルから造影剤を流しながらX線発生部1からX線を照射してX線検出部2において検出されたX線を基に時系列の造影X線画像を取得する。システム制御回路Cは、当該血管走行情報取得機能C1を用いて取得した時系列の造影X線画像のうちの一つ、又は、各画素に対して、時系列の造影X線画像における当該各画素の最小画素値を割り当てて得たボトムトレース画像を、血管走行を示す画像として採用する。そして、血管走行を示す画像に対して、血管路の芯線(血管領域の略中央を繋いだ曲線)を抽出するとともに、当該芯線上の各位置において血管路の太さを算出する。システム制御回路Cは、抽出した芯線に基づき、血管路の各位置における血管の分岐形状と走行方向とを特定する。
【0033】
このようにしてシステム制御回路Cは、当該血管走行情報取得機能C1を用いて取得された血管走行情報を取得する。取得された血管走行情報は、例えば、記憶部9に記憶される。
【0034】
なお、システム制御回路Cが血管走行情報取得機能C1を用いて取得する血管走行情報は、このように自装置において取得された情報に限られず、例えば、自装置とは異なる他装置から取得した情報であっても良い。ここで「他装置」としては、例えば、他のX線診断装置やX線CT装置等が挙げられる。他装置からは、例えば、
図1には図示しない通信制御回路、通信ネットワークを介して取得されることとしても良い。また、血管走行情報自体も3次元ボリュームデータに基づく3次元画像であっても良い。
【0035】
システム制御回路Cにおける位置特定機能C2は、X線画像におけるデバイスの位置、例えば、先端位置を特定する機能である。また、現在のデバイスの先端位置だけではなく、デバイスがこれから先移動していくであろう移動位置についても推定する。
【0036】
システム制御回路Cが位置特定機能C2を用いてデバイスの先端の移動位置を推定するに当たっては、過去のX線画像の複数のフレームにおけるデバイスの先端位置とフレームレートとが用いられる。これらの情報を利用することによって、デバイスの先端位置のこれから先の移動量を算出することができる。
【0037】
ここで、デバイスの先端位置の移動量については、例えば、過去の複数のフレームのうち、相前後するフレームにおけるデバイスの先端位置に関する情報の差分を求め、その差分の平均を移動量と定義することができる。但し、移動量の算出の方法については、このような方法に限定されない。
【0038】
システム制御回路Cにおける絞り制御機能C3は、取得された血管走行情報と特定されたデバイスの位置とに基づいてX線絞り部12を制御する機能である。上述したように、デバイスの先端の移動位置に合わせて関心領域を設定、移動させることができるように、X線絞り部12を制御して関心領域をデバイスの先端の移動位置に追随させる。ここでは、原則として、デバイスの先端の移動位置に関心領域の中心を合わせるように追随させる。
【0039】
ここで、「関心領域」とは、X線の照射領域である。すなわち、次にX線画像を撮像したい領域を設定し、当該領域がX線の照射領域又は高線量領域となるようにX線診断装置におけるX線絞り部を適宜制御することでX線の照射領域を制限する。従って、絞り制御機能C3がX線絞り部12を制御することによって、結果として当該関心領域をデバイスの先端位置に合わせて(追随させて)移動させることができる。また、関心領域の大きさや形状を変更させることも可能である。
【0040】
具体的には、システム制御回路Cは、絞り制御機能C3を用いて、まず位置特定機能C2により特定されたデバイスの先端位置の情報を取得する。ここでは、絞り制御機能C3は、位置特定機能C2により算出されたデバイスの先端位置の移動量を取得する。もしこの移動量が、予め設定されている閾値未満である場合には、システム制御回路Cは、絞り制御機能C3を用いてのX線絞り部12の制御を行わない。
【0041】
すなわち、移動量が予め設定されている閾値未満である場合には、現在関心領域内にデバイスの先端位置が位置しており、次にデバイスが移動した場合であってもその先端の移動位置は、関心領域内に依然として存在していることになるからである。従って、このような場合には、関心領域をデバイスの先端の移動位置に合わせて移動させる必要はなく、システム制御回路Cは、絞り制御機能C3を用いてのX線絞り部12の制御を行わない。
【0042】
なお、当該閾値については、任意に設定することが可能である。また、閾値は、デバイスの移動量に応じて複数設定されても良い。さらに、閾値は、デバイスの先端位置の実際の移動距離に基づいて設定されても、或いは、移動距離と関心領域の中心から関心領域内における領域の境界までの距離との割合に基づいて設定されても良い。設定された閾値は、例えば、記憶部9に記憶される。
【0043】
このように、ここでは上述したように閾値を設けて必ずしもデバイスの先端の移動位置に関心領域を追随させない処理を採用することもできる。一方で、このような処理を行わず、あくまでもデバイスの先端の移動位置に忠実に関心領域を追随させる処理を採用することも可能である。
【0044】
さらに、システム制御回路Cは、絞り制御機能C3を用いてデバイスの先端位置における血管走行情報を参照する。すなわち、例えば、デバイスの先端位置が太い血管の中に存在するのか、細い血管の中に存在するのか、或いは、血管の分岐箇所に存在するのかということである。
【0045】
例えば、医師が被検体Mの血管内においてデバイスを進める手技を行う際には、多くの場合、細い血管よりも太い血管の中でデバイスを移動させる方がデバイスの移動速度は速くなり、移動量は多くなる。一方、細い血管の中ではより慎重にデバイスを移動させることが多いため、大概デバイスの移動速度は遅くなり、移動量は小さくなる。
【0046】
従って、システム制御回路Cが血管走行情報を参照した結果、例えば太い血管から分岐した細い血管へとデバイスの先端位置が移動するような場合には、分岐箇所においてデバイスの移動量は大きく減少すると考えられる。
【0047】
もしこのような血管走行情報を参照しないままシステム制御回路Cが絞り制御機能を用いて関心領域を移動させると、結果としてデバイスの先端位置に関心領域が追随せず、関心領域内にデバイスの先端位置が表示されないということになりかねない。このような状態が生ずることを回避するべく、システム制御回路Cは、血管走行情報を参照し、必要に応じて関心領域の移動量を補正する。
【0048】
また、システム制御回路Cは、絞り制御機能C3を用いて関心領域の大きさや形状を調整することができる。例えば、太い血管の中をデバイスが移動する場合の関心領域の大きさを基準とすると、例えば、デバイスの先端位置が血管の分岐に入るような場合には、当該分岐を含んで、上述した基準となる関心領域の大きさよりも大きな範囲がディスプレイ8に表示されるように、関心領域の大きさを大きくする処理を行う。
【0049】
一方、例えば、分岐した後の血管のように、細い血管の中をデバイスが移動するような場合には、あまり広い領域を関心領域とするようにX線絞り部12を制御すると、被検体Mは不要な被曝を受けることになる。そこで、このような場合には、関心領域の大きさを小さくする処理を行う。
【0050】
さらに、デバイスの先端位置によっては、例えば、血管の外側の領域といった、関心領域の中に血管とデバイスの先端位置以外の領域が大きく映り込む場合がある。このような領域については、ディスプレイ8上に表示させておく必要性は低い。従って、被検体Mに対する不要な被曝を回避するためにも、システム制御回路Cは関心領域の形状を変化させ、関心領域の形状をより適した形状とすることも可能である。
【0051】
以上のように、システム制御回路Cは、デバイスの先端の移動位置に関する情報のみならず、血管走行情報を用いて関心領域の移動量、大きさや形状について調整を行った上で絞り制御機能C3を用いてX線絞り部12の制御を行う。X線絞り部12は、システム制御回路Cからの制御信号に基づいて、デバイスの先端位置に関心領域の中心が重なるように、X線管11から照射されるX線の照射範囲に対する制限を行う。
【0052】
寝台Bは、検査や処置の際、被検体が載置される。寝台Bは、
図1においては図示しない天板と本体とから構成されている。天板は、被検体を載置する。本体は、寝台Bを設置面に固定するとともに、必要に応じて天板を水平方向、或いは、垂直方向に移動させて、処置において被検体を適切な位置に配置する。
【0053】
以上で、X線診断装置Sの各部の構成について説明した。以下、デバイスの移動に合わせて関心領域を追随させる処理の流れについて、
図2ないし
図6を参照して説明する。ここで、まず
図2及び
図3は、実施形態1に係るX線診断装置Sの動作を示すフローチャートである。
【0054】
なお、以下に説明するデバイスの移動に合わせて関心領域を追随させる処理の流れについて、
図2及び
図3に示すフローチャートでは、取得されたX線画像における1フレームに対する処理について示している。また、当該処理においては、既に医師による手技が開始されていることを前提とする。従って、X線診断装置Sによって取得された1フレームに基づくX線画像が取得され、既にディスプレイ8に表示されている。また、当該X線画像には、手技において使用されるデバイスが表示されている(ST1)。
【0055】
関心領域の中心には、デバイスの先端位置が表示されている。上述したように、この関心領域は、システム制御回路Cによる絞り制御機能C3によってX線絞り部12が制御されてX線が照射される領域である。
【0056】
ここで
図4は、実施形態の係るX線診断装置において、血管内で特定されたデバイスの先端位置とX線の照射領域(関心領域)との関係を示す模式図であり、模式図の中央に血管Vが表示されている。血管V内には、デバイスD1が示されている。デバイスD1は、大きな矢印D2で示される方向に移動可能である。また、デバイスD1の先端(先端位置)は、符号D3で示している。
【0057】
また、
図4において血管Vの血管の走行方向に沿って示されている複数の矩形は、関心領域である。このうち、デバイスD1の先端位置D3がその矩形内部に示されている実線の関心領域R1が現在X線が照射されている領域である。
【0058】
なお、上述したように、関心領域R1は、デバイスD1の先端位置D3の移動に伴って移動することから、
図4においては、理解の便宜上、過去に関心領域R1が移動してきた領域、或いは、未来に関心領域R1が移動すると思われる領域を破線の矩形で示している。
【0059】
まず、システム制御回路Cは、位置特定機能C2を用いてデバイスD1の先端位置D3の特定を行う。すなわち、システム制御回路Cは、過去のフレームにおけるデバイスD1の先端位置D3とフレームレートを取得する(ST2)。そして、取得された情報から、当該先端位置D3がこれから先移動していく際の移動量を算出する(ST3)。
【0060】
算出されたデバイスD1の先端位置D3の移動量に関する情報は、システム制御回路Cが絞り制御機能C3をもってX線絞り部12の制御を行うに際して利用される。絞り制御機能C3では、受信したデバイスD1の先端位置D3の移動量が閾値以上であるか否かの判断を行う(ST4)。すなわち、関心領域R1を当該先端位置D3の移動位置に追随させて移動させる必要があるか否かの判断を行う。
【0061】
その結果、デバイスD1の先端位置D3の移動量が閾値未満である場合には(ST4のNO)、ステップST2に戻り、改めてシステム制御回路Cが位置特定機能C2を用いて、過去のフレームにおけるデバイスD1の先端位置D3とフレームレートを取得する処理を行う。
【0062】
一方、デバイスD1の先端位置D3の移動量が閾値以上である場合には(ST4のYES)、システム制御回路Cは、絞り制御機能C3を用いて、現在のデバイスD1の先端位置D3における血管走行情報を参照する(ST5)。
【0063】
なお、上述したように、システム制御回路Cが参照する血管走行情報は、医師による手技の前に取得されている情報である。また、その取得についても、当該血管走行情報は、X線診断装置Sで取得された血管走行情報であっても、或いは、他装置によって取得された血管走行情報であっても良い。また、
図2及び
図3におけるフローチャートにおいては、「血管走行情報」は「血管情報」と、「関心領域」は「ROI」とそれぞれ省略して表している。
【0064】
次に、システム制御回路Cは、記憶部9にアクセスして、
図6に示すような血管走行情報と関心領域に関する情報との対応付けの一例を示すテーブル例を参照して、関心領域の移動量について補正が必要であるか否かを判断する(ST6)。
【0065】
図6に示すテーブル例では、縦軸に血管走行情報、横軸に関心領域に関する情報が示されている。そして、血管走行情報としては、大きく「直径」と「分岐」とに分かれている。また、関心領域(ROI)に関する情報としては、順に「移動量」、「大きさ」、「形状」が示されている。
【0066】
なお、血管走行情報及び関心領域に関する情報のいずれについても、
図6に示すテーブル例に挙げられている項目は、あくまれも例示であり、これ以外の情報がテーブルに定義されていても良い。
【0067】
図6に示されているテーブル例には、例えば、血管の直径(太さ)が「A1」である場合には、関心領域の移動量は「X11」と規定されている。また、血管の形状として分岐が「B2」である場合の関心領域の移動量は「X15」と規定されている。
【0068】
従って、システム制御回路Cは絞り制御機能C3を用いるに当たって
図6に示すようなテーブル例を参照することで、算出されたデバイスD1の先端位置D3の移動量に鑑みて、関心領域の移動量について補正が必要であるか否かを判断することができる。
【0069】
そして、もし補正が必要な場合には(ST6のYES)、血管走行情報に基づいて関心領域の移動量についての補正量を取得する(ST7)。一方、補正が不要である場合には(ST6のNO)、特に補正量を取得することはない。
【0070】
以上で、システム制御回路Cは、次にX線を照射する関心領域に関する情報を取得したことになる。すなわち、システム制御回路Cは、絞り制御機能C3を用いて算出されたデバイスD1の先端位置D3と血管走行情報とから、次の関心領域の中心位置を決定する(ST8)。
【0071】
図4を用いて説明すると、この次にX線が照射される関心領域は、例えば、関心領域R2で示される領域である。つまり、ここでは、デバイスD1の先端位置D3は、血管Vの内部を進んで、関心領域R2で示される領域に到達すると推定されるものであることから、この位置を関心領域とすることで、結果としてデバイスD1の先端位置D3の動きに追随して関心領域を移動させることができる。
【0072】
また、ここではこのようにデバイスD1の先端位置D3が血管Vの内部を前進することを前提としたが、例えば、矢印D2に示すように、デバイスD1の先端位置D3が血管Vの内部を後退して、関心領域R3で示される領域に到達するものであっても構わない。このような場合であっても、同様に、先端位置D3の動きに追随するように関心領域R3にX線を照射させることができる。
【0073】
次に、システム制御回路Cは、関心領域の大きさや形状について調整する必要があるか否かの判断を行う(
図3のST9)。この関心領域の大きさや形状について調整する処理については、適宜
図5も利用して説明する。
【0074】
図5は、実施形態1の係るX線診断装置において、血管内で特定されたデバイスの先端位置とX線の照射領域(関心領域)との関係を示す模式図である。但し、
図5は概ね
図4と同じ図であるが、以下に説明するように、異なる部分がある。
【0075】
図5に示す血管V1は、複数の分岐が含まれている。また、
図5に示されている関心領域については、
図4の場合のように全ての関心領域が同じ大きさの矩形で示されておらず、例えば、関心領域R1に隣接する関心領域R4は、関心領域R1よりも大きい。一方、当該関心領域R4に隣接する関心領域R5は、関心領域R1や関心領域R4よりも小さく示されている。
【0076】
例えば、医師がデバイスD1を用いた検査や処置を行う場合、当該分岐の何れかにデバイスD1の先端位置D3を進めることが予想される。従って、システム制御回路Cが絞り制御機能C3を用いて、特に算出されたデバイスD1の先端位置D3と血管走行情報とから分岐が含まれることを把握すると、関心領域の大きさ、形状の調整処理の実行の有無を判断する。これは、上述したように、もし分岐が含まれる場合には、当該分岐も含むように関心領域の大きさが大きくなるように制御させることが、医師が手技を進める上で必要だからである。
【0077】
システム制御回路Cは、
図6に示す血管走行情報及び関心領域に関する情報の対応付けを参照する。例えば、血管走行情報としての分岐が「B3」である場合、対応する関心領域の大きさは「Y16」であり、関心領域の形状は「Z16」である。
【0078】
システム制御回路Cは、新たに推定されたデバイスD1の先端位置D3における血管V1の形態を取得し、当該形態に対応する関心領域の大きさや形状をこれまでの関心領域の大きさ、形状と比較し、もし異なるのであれば、調整が必要と判断する(ST9のYES)。
【0079】
そこで当該判断に基づいて、システム制御回路Cは、絞り制御機能C3を用いて、参照した上記対応付けに基づいて、次のX線の照射領域である関心領域の大きさ、形状を調整する(ST10)。
【0080】
例えば、上述したように、血管走行情報としての分岐が「B3」である場合、関心領域の大きさは「Y16」である。そこで、システム制御回路Cは絞り制御機能C3を用いて、関心領域の大きさを「Y16」となるように設定し、当該設定された関心領域にX線が照射されるようにX線絞り部12を制御する。このときのX線の照射領域が、
図5では、例えば、関心領域R4として表わされている。関心領域R4は、分岐を含むように、関心領域R1よりも大きくなるようにシステム制御回路Cの絞り制御機能C3によって調整されている。
【0081】
一方、反対に、分岐を通り過ぎて細い血管に入った場合には、既に分岐はなく、この場合には、血管V1の太さ(直径)を参照することになる。
図5に示す関心領域R5は、関心領域R1,R4よりも小さく示されている。これは、細い血管をデバイスD1が移動する場合には、その先端位置D3の移動量は通常小さくなると考えられるからである。
【0082】
そこで、上述したように、このような場合にもシステム制御回路Cは、関心領域の大きさや形状についての調整が必要と判断し、参照した上記対応付けに基づいて、次にX線が照射される関心領域の大きさ、形状を調整する。この場合には、被検体Mの被曝量も考慮して関心領域R5の大きさも小さく調整される。
【0083】
なお、対応付けを見ても特に調整を行う必要がないと判断される場合には(ST9のNO)、関心領域の大きさ、形状に関する調整は行われない。
【0084】
以上で、次のデバイスD1の先端位置D3に追随する関心領域の大きさ、形状が特定された。そこで、システム制御回路Cは、絞り制御機能C3を用いて、特定された関心領域の情報に基づいて、被検体Mに対するX線の照射位置を決定する(ST11)。そして、X線絞り部12に対して照射の指示を出す。これによって、新たなX線画像が取得される(ST12)。
【0085】
表示制御部7では、取得されたX線画像をディスプレイ8に表示させる際に、デバイスD1の先端位置D3をX線の照射領域である関心領域の中心に合わせて表示させる。これによって、ディスプレイ8において、例えば、
図4に示すようなデバイスD1の先端位置D3が関心領域R2内に、或いは、
図5に示すようなデバイスD1の先端位置D3が関心領域R5内に表示される(ST13)。
【0086】
システム制御回路Cは、このまま継続して関心領域にX線を照射させるか否か、すなわち、関心領域へのX線の照射を終了するか否かを判定し(ST14)、操作部10からX線の照射を終了する旨の信号を受信した場合には(ST14のYES)、これまで説明してきたデバイスD1の先端位置D3の移動に合わせて関心領域を追随させる処理を終了させる。
【0087】
一方、このまま継続して関心領域にX線を照射させる旨の信号を受信した場合には(ST14のNO)、システム制御回路Cでは、さらにX線画像のフレームが更新されたか、すなわち、新たなX線画像が取得されたか否かを判定し(ST15)、取得されていない場合には(ST15のNO)、ディスプレイ8における表示を継続する。
【0088】
一方、フレームが更新された場合には(ST15のYES)、システム制御回路Cは、再度ステップST1に戻ってこれまで説明してきたデバイスD1の先端位置D3の移動に合わせて関心領域を追随させる処理を繰り返す。
【0089】
このように現在ディスプレイ8に表示されているデバイスの先端位置の次の位置を推測し、そのデバイスの先端位置を含むようにX線絞り部12を制御することによって、デバイスの先端位置の移動に合わせて関心領域を設定、移動させることができる。
【0090】
すなわちX線診断装置は、医師が、例えば被検体へのカテーテルの挿入作業等の手技を行う際に、並行して被検体に対するX線撮像を行うために用いられる。このとき、医師は撮像されたX線画像を視認することによって被検体の内部構造を把握しながら手技を進めることになる。
【0091】
この際、常にX線撮像が可能な全ての領域に対してX線の照射を行ってX線画像を取得することは、被検体に対する過剰な被曝を強制することになりかねない。そこでX線画像を撮像したい領域を設定し、当該領域がX線の照射領域又は高線量領域となるようにX線診断装置におけるX線絞り部を適宜制御することでX線の照射領域を制限する。当該制限された照射領域がいわゆる「関心領域」であり、医師が手技を行う領域である。
【0092】
そして、医師は手技の進み具合によって、適宜全領域に対してX線照射を行って得られるX線画像を表示させる。ここでデバイスは、手技の進捗に応じて血管内を移動するので、デバイスの移動に伴って関心領域もまた追随させる必要がある。但し、X線の照射領域を制限して関心領域を設定する操作は関心領域ごとに行われるため、デバイスの移動に伴って関心領域を逐次設定し直していた。
【0093】
関心領域の設定し直しは、例えば、技師等の医療従事者が医師の手技に合わせて手動で行う。また、デバイスの移動ベクトルを推定することによって、自動的に関心領域を追随させる方法等もある。
【0094】
しかしながら、関心領域を自動的にデバイスの移動に追随させる方法の場合、例えば、デバイスが急に移動方向を変更すると、関心領域を追随させることが困難であった。また例えば、医師がデバイスを血管に挿入させようとしてデバイスの血管への挿入の動作を繰り返すような場合も同様に、当該デバイスの前後往復移動に関心領域を追随させることが困難であった。
【0095】
また、関心領域をデバイスの移動に追随させる場合には、デバイスの移動ベクトルが利用されるが、画像のフレームレートが低い場合は、基となるX線画像が少なくなるため、移動ベクトルの推定精度が低下する。移動ベクトルの推定精度が低下すると、デバイスの移動に関心領域を追随させることが困難となる。
【0096】
また、被検体への被曝低減の観点からすると、デバイスの移動に伴って、適宜絞りを調整して関心領域の大きさを変更できることが好ましい。
【0097】
そこで以上説明したような処理を行うことによって、X線絞り及びX線フィルタのうち少なくとも一方の制御を適切に行うことができる。すなわち、デバイスの移動に伴うX線照射の絞り、或いは、フィルタの制御を簡便に行うとともに適切な照射範囲を設定することで、手技の効率化、安全性の向上を図り、被検体及び医療従事者の被曝量低減を図ることができる。
【0098】
なお、ここでは、ステップST1からステップST15まで一連の処理として説明したが、例えば、血管の分岐が存在しないことが明確な場合には、ステップST8までの処理を行い、これらの処理を繰り返すことで、デバイスの先端位置に追随して関心領域が移動するように、システム制御回路Cが絞り制御機能C3を用いてX線絞り部12を制御してX線が照射される領域を移動させることができる。
【0099】
また、これまでは、絞り制御機能がX線絞り部を制御してX線の照射領域を制限することで、関心領域をデバイスの先端位置の動きに合わせて移動させる処理を説明した。その他当該処理については、関心領域を作出する際に、X線の照射領域を制限する方法としてフィルタを利用する場合にも適用することができる。すなわち、デバイスの先端位置の動きに合わせてフィルタを移動させることによって、関心領域をデバイスの先端位置の動きに追随させることができる。
【0100】
ここでフィルタは、X線管と被検体との間に設けられ、被曝低減対象の部位に照射されるX線を減衰させる。フィルタは、例えば、独立して移動可能な複数の金属板であり、各金属板の材質は、例えば、銅板、アルミニウム等であるが、X線を減衰させることが可能であれば、銅板やアルミニウム以外であってもよい。また、各金属板は、例えば長方形状を有している。また、フィルタを構成する金属板の枚数は、任意に設定可能である。
【0101】
なお、上述したようにフィルタは、独立して移動可能な複数の金属板で構成されるものの他、例えば、開口を有する1枚の金属板で構成されるものも含まれる。
【0102】
フィルタは、システム制御回路のフィルタ駆動制御機能による制御の下、フィルタ駆動機構を介して回転移動又は水平移動される。すなわち、フィルタは、フィルタ駆動機構によって単数、或いは、複数の金属板が回転移動又は水平移動されることで、X線管が発生したX線を絞り込んで被検体に照射させる。
【0103】
(実施形態2)
次に、実施形態2について、
図7から
図10を参照して詳細に説明する。
【0104】
図7は、実施形態2に係るX線診断装置S100の構成を示すブロック図である。
図8は、実施形態2に係るシステム制御回路C100の構成を示すブロック図である。
図9は、視野と関心領域の関係を示す模式図である。
図10は、実施形態2に係るX線診断装置S100の動作を示すフローチャートである。
【0105】
図7に示すように、X線診断装置S100は、操作部10aを備える点で、実施形態1に係るX線診断装置Sと異なる。また、実施形態2に係るX線診断装置S100は、システム制御回路C100を備える点で、実施形態1に係るX線診断装置Sと異なる。実施形態2に係るX線診断装置S100の構成要素のうち、実施形態1において説明したX線診断装置Sと同様の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0106】
図7に示すように、実施形態2に係る操作部10aは、視野変更指示受付部10bを備える。操作部10a及び視野変更指示受付部10bは、ボタン、キーボード、各種スイッチ、及び/又はマウス等を備えたインタラクティブなインターフェイスである操作機構及び視野変更指示受付機構の一例である。視野変更指示受付部10bは、線診断装置S100を使用する医療従事者から、ディスプレイ8に表示されているX線画像の視野の大きさを異なる大きさへ変更する指示を受け付ける。ここで、視野の大きさを異なる大きさへ変更する指示とは、ディスプレイ8に現在表示されているX線画像の一部を拡大して表示させる指示、いわゆるズームインを行う指示を含む。また、ディスプレイ8に現在表示されているX線画像よりも広い視野を表示させる指示、いわゆるズームアウトを行う指示を含む。操作部10aの視野変更指示受付部10bを介して受け付けられた指示はシステム制御回路C100へ送られ、システム制御回路C100は、視野の大きさを異なる大きさへ変更する指示が受け付けられたか否か、判定する。
【0107】
また、視野の大きさとは、視野の面積の大きさ、視野の一辺の長さ、倍率等を含む。また、視野とは、ディスプレイ8に表示されるX線画像の範囲、平面検出器21によりX線検出が行われた範囲、又はX線絞り部12により形成されたX線照射領域の範囲である。また、変更後の視野の大きさは、視野の大きさを異なる大きさへ変更する指示に基づく大きさであり、変更前の視野の大きさを第1の大きさ、変更後の視野の大きさすなわち変更指示に基づく大きさを第2の大きさと称しても良い。視野変更指示受付部10bは、例えば、ズームインボタンとズームアウトボタンで構成されても良く、7×7インチ、3×3インチ等の平面検出器21の領域を指定する複数のボタン、又は異なる倍率を示す複数のボタンで構成されても良い。または、視野変更指示受付部10bは1つのボタンにより構成され、そのボタンを押すと複数の異なる視野の大きさに順次切り替えられる構成でも良い。ここで、ボタンは、上述のインタラクティブなインターフェイスの一例として記載した。
【0108】
図7に示された実施形態2に係るシステム制御回路C100は、
図8に示すように、血管走行情報取得機能C1と、位置特定機能C2aと、絞り制御機能C3aと、ROI取得機能(関心領域取得機能)C4とを備える。絞り制御機能C3aは、視野取得機能C31を備える。
【0109】
なお、ここでシステム制御回路C100における血管走行情報取得機能C1、位置特定機能C2a、絞り制御機能C3a、ROI取得機能C4は、それぞれ特許請求の範囲における血管走行情報取得部、デバイス位置特定部、絞り制御部、関心領域取得部に該当する。
【0110】
実施形態2に係る位置特定機能C2aは、X線画像におけるデバイスの位置、例えば、先端位置を特定する。また、ここでのX線画像とは、X線画像のうちの現在フレーム、すなわち最新フレームである。
【0111】
絞り制御機能C3a及びROI取得機能C4については、まず、ROI取得機能C4から説明する。ROI取得機能C4は、X線画像における関心領域(ROI、Reasion Of Interest)を取得する。関心領域は、デバイスとデバイスを含む血管とを含む領域であり、例えば、デバイスの先端と、デバイスの先端を含む血管とを含む領域である。ROI取得機能C4は、すでに取得されている血管走行情報と、位置特定機能C2aにより特定されたデバイスの位置とを参照し、血管走行情報及び特定されたデバイスの位置に基づいて、X線画像における関心領域を取得する。例えば、ROI取得機能C4は、すでに取得されている血管走行情報と、位置特定機能C2aにより特定されたデバイスの先端位置とを参照し、血管走行情報及び特定されたデバイスの先端位置に基づいて、X線画像における関心領域を取得する。ここで、この血管走行情報は、実施形態1の血管走行情報と同じである。
【0112】
図9に示された関心領域Rは、関心領域の一例である。ここで、
図9は、デバイスD1の先端位置D3、血管V、血管Vのうちの一部の血管である血管V1等を示している。
図9において、デバイスの先端位置D3は、血管V1内に位置している。破線で示されている関心領域Rは、デバイスの先端位置D3と、先端位置D3を含む血管すなわち血管V1とを含むように設定されている。関心領域Rは、例えば、
図9に示すように血管V1に沿うように設定される。すなわち、関心領域Rは血管に沿うように、後述する視野W1に対して傾いていても良い。また、
図9においては、関心領域R内においてデバイスの先端位置D3がこれから進んでいく方向の血管V1の領域が、関心領域R内において先端位置D3がすでに通過してきた血管V1の領域よりも大きくなるように、関心領域Rは設定されているが、少なくともデバイスの先端位置D3と、先端位置D3を含む血管とを含むように設定されていれば良い。また、
図9に示された関心領域Rは長方形であるが、関心領域Rの形状は長方形に限定されず、正方形、円、楕円等であっても良い。
【0113】
図8に戻り、絞り制御機能C3a及び絞り制御機能C3aの視野取得機能C31について説明する。
【0114】
視野取得機能C31は、視野変更指示受付部10bを介して視野の大きさを異なる大きさへ変更する指示が受け付けられた場合、その指示に基づく大きさと取得された関心領域とに基づいて、X線画像の領域の一部を、指示に基づく大きさを有する新たな視野として取得する機能を有する。より詳細には、視野取得機能C31は、関心領域が新たな視野に含まれるように、X線画像の領域の一部を、指示に基づく大きさを有する新たな視野として取得する。ここで、関心領域が新たな視野に含まれることは、関心領域が新たな視野に完全に含まれること、及び関心領域が変更後の視野に最大限に含まれることを含む。
【0115】
そして、絞り制御機能C3aは、新たな視野に基づいて、X線絞り部12を制御する。より詳細には、絞り制御機能C3aは、指示に基づく大きさを有する新たな視野をX線の照射領域とするように、X線絞り部12を制御する。そして、新たな照射領域に対応するX線画像が、ディスプレイ8に表示される。
【0116】
図9は、上述の関心領域R及び血管V、V1、変更前の視野W1及び変更後の視野W2を示している。一例として、
図9を参照して、ズームインする場合について、説明する。ここでは、一例として、視野の一辺の大きさを指定して視野を変更する。そして変更後の視野W2の一辺の大きさW2aは、変更前の視野W1の一辺の大きさW1aよりも小さい。一例として、変更前の視野W1に相当するX線画像がディスプレイ8に表示されている時に、医療従事者から、X線画像の視野の大きさを大きさW2aへ変更する指示を受け付けた場合を考える。視野取得機能C31は、指示された変更後の視野の大きさW2aと取得された関心領域Rとに基づいて、関心領域Rが変更後の視野W2に最大限に含まれるように、X線画像の領域の一部を、大きさW2aを有する新たな視野W2として取得する。変更後の視野W2に対応するX線画像は、変更前の視野W1に対応するX線画像と同じ大きさでディスプレイ8に表示されるので、結果として視野W2でズームインしたこととなる。
【0117】
以上で、X線診断装置S100の構成について説明した。以下、視野を変更させる処理の流れについて、
図10を参照して説明する。ここで、
図10のステップST27、ST28については、実施形態1のステップST14、ST15と同じ処理であるため、その詳細な説明は省略する。また、ここでは一例としてズームインする場合について、説明する。
【0118】
図10のフローにおいて、X線診断装置S100のシステム制御回路C100は、まずX線画像を取得する指示を行い、X線画像が取得される(ST21)。そして、システム制御回路C100は、位置特定機能C2aを用いて、取得されたX線画像におけるデバイスの先端位置を特定する(ST22)。そして、システム制御回路C100は、ROI取得機能C4を用いて、血管走行情報及び特定された先端位置に基づいて、関心領域(ROI)を取得する(ST23)。
【0119】
そして、システム制御回路C100は、視野の大きさを異なる大きさへ変更する指示が受け付けられたか否か、判定する(ST24)。受け付けられたと判定した場合(ST24のYES)、処理はステップST25へ移行し、システム制御回路C100は、視野取得機能C31を用いて、指示に基づく大きさと関心領域とに基づいて、新たな視野を取得する(ST25)。より詳細には、視野取得機能C31は、関心領域が新たな視野に含まれるように、X線画像の領域の一部を、指示に基づく大きさを有する新たな視野として取得する。
【0120】
次に、システム制御回路C100は、絞り制御機能C3aを用いて、新たな視野に基づいて、X線絞り部12を制御する(ST26)。絞り制御機能C3aは、より詳細には、指示に基づく大きさを有する新たな視野をX線の照射領域とするように、X線絞り部12を制御する。そして、新たな照射領域に対応するX線画像が、ディスプレイ8に表示される。
【0121】
一方、ステップST24において、システム制御回路C100は、視野の大きさを異なる大きさへ変更する指示が受け付けられたと判定しない場合(ST24のNO)、処理はステップST27へ移行する。以上が、視野を変更させる処理の流れについての説明である。
【0122】
なお、ここでは、ステップST21からステップST28まで一連の処理として説明したが、例えば、関心領域の取得に関連するステップと、取得された関心領域に基づく処理に関連するステップと、をそれぞれ独立した処理としても良い。
【0123】
このように、実施形態2においては、血管走行情報及び特定されたデバイス先端位置に基づいて関心領域が取得される。これにより、医療従事者が注目する領域に、関心領域を設定することができる。さらに、視野サイズが変更される時、取得された関心領域に基づいて変更後の視野の位置が取得される。これにより、視野サイズ変更の指示が入力された後、医療従事者が保持アーム4又は寝台Bを移動しなくても、変更後の視野は注目する領域を含むことができる。また、関心領域の設定方法がより簡便かつ設定位置が適正化されることにより、手技効率、治療安全性が向上する。
【0124】
なお、上述の実施形態2において、視野の大きさを異なる大きさへ変更する指示が受け付けられた場合における、その指示に基づく大きさと取得された関心領域とに基づいて新たな視野として取得する機能の例として、関心領域が新たな視野に含まれるように新たな視野を設定する構成について説明したが、例えば、ズームイン後の新たな視野の中心を、関心領域の中心に近づけるように当該新たな視野の中心を設定する構成など、様々な構成により当該機能は実現されうる。ズームイン後の新たな視野の中心を、関心領域の中心に近づけるように当該新たな視野の中心を設定する構成によれば、関心領域が必ずしも最大限新たな視野に含まれるわけではないが、血管走行情報及びデバイス先端位置の両方を考慮した視野を設定することができる。
【0125】
(実施形態2の変形例)
次に、実施形態2の変形例について、
図11を参照して詳細に説明する。
図11は、実施形態2の変形例に係るシステム制御回路C150の構成を示すブロック図である。実施形態2の変形例は、実施形態1と、実施形態2との組み合わせである。実施形態2の変形例に係るX線診断装置S100は、
図7に示されたX線診断装置S100のブロック図において、システム制御回路C100の代わりにシステム制御回路C150を備える。実施形態2の変形例に係るX線診断装置S100の構成要素のうち、実施形態1に係るX線診断装置Sの構成要素及び実施形態2に係るX線診断装置S100の構成要素と同様の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0126】
図11に示すように、システム制御回路C150は、血管走行情報取得機能C1と、位置特定機能C2と、絞り制御機能C3bとを備える。絞り制御機能C3bは、視野取得機能C31と、ROI取得機能(関心領域取得機能)C32とを備える。ROI取得機能C32は、第1ROI取得機能(第1関心領域取得機能)C321と、第2ROI取得機能(第2関心領域取得機能)C322とを備える。
【0127】
なお、ここでシステム制御回路C150における血管走行情報取得機能C1、位置特定機能C2、絞り制御機能C3b、ROI取得機能C32は、それぞれ特許請求の範囲における血管走行情報取得部、デバイス位置特定部、絞り制御部、関心領域取得部に該当する。
【0128】
第1ROI取得機能C321は、実施形態1における関心領域の設定に関する処理を行う機能を有する。第1ROI取得機能C321は、実施形態1の
図2及び
図3に示された処理のうち、ステップST4ないしST10の処理を行う。実施形態1において、関心領域は、血管走行情報と、デバイスがこれから先移動していくであろう移動位置とに基づいて、設定されている。ここで、このデバイスの移動位置、例えばデバイスの先端の移動位置は、複数のX線画像におけるデバイスの位置、例えばデバイスの先端位置に基づき推定される。故に、第1ROI取得機能C321は、血管走行情報と、X線画像におけるデバイスの位置、例えばデバイスの先端位置とに基づき、X線画像における関心領域を取得していると言える。絞り制御機能C3bは、第1ROI取得機能C321により取得された関心領域に基づいてX線絞り部12を制御する。より具体的には、絞り制御機能C3bは、第1ROI取得機能C321により取得された関心領域をX線照射領域とするようにX線絞り部12を制御する。
【0129】
第2ROI取得機能C322は、実施形態2のROI取得機能C4と同じ機能を有する。視野取得機能C31は、指示に基づく大きさと第2ROI取得機能C322により取得された関心領域とに基づいて新たな視野を取得し、絞り制御機能C3bは、新たな視野基づいてX線絞り部12を制御する。より具体的には、絞り制御機能C3bは、視野取得機能C31により取得された新たな視野をX線の照射領域とするように、X線絞り部12を制御する。
【0130】
ここで、新たな視野は関心領域を含むので、新たな視野は関心領域に基づき取得されるとも言える。故に、絞り制御機能C3bは、第2ROI取得機能C322により取得された関心領域に基づいて、X線絞り部12を制御するとも言える。絞り制御機能C3bは、第2ROI取得機能C322により取得された関心領域を含む領域をX線の照射領域とするように、X線絞り部12を制御する。
【0131】
ここで、実施形態2の変形例に係るROI取得機能C32は絞り制御機能C3bに含まれているが、実施形態2と同様に、絞り制御機能C3bと並列な関係であっても良い。
【0132】
このように、実施形態2の変形例は実施形態1と実施形態2の組み合わせである。そのため、実施形態1において追随した視野(照射領域)がディスプレイ8に表示されている時に視野サイズ変更の指示が入力された場合、まず、第2ROI取得機能C322は、ディスプレイ8に表示されている視野内において関心領域取得する。そして、視野取得機能C31は、第2ROI取得機能C322により取得された関心領域を含むように新たな視野を取得する。これにより、実施形態1の効果と実施形態2の効果を組み合わせることができる。関心領域の設定方法がより簡便かつ設定位置が適正化されることにより、手技効率、治療安全性が向上する。
【0133】
(実施形態3)
次に、実施形態3について、
図12から
図15を参照して詳細に説明する。
【0134】
図12は、実施形態3に係るX線診断装置S200の構成を示すブロック図である。
図13は、実施形態3に係るシステム制御回路C200の構成を示すブロック図である。
図14は、X線画像における関心領域を示す模式図である。
図15は、実施形態3に係るX線診断装置S200の動作を示すフローチャートである。
【0135】
図12に示すように、実施形態3に係るX線診断装置S200は、システム制御回路C200を備える点で、実施形態1に係るX線診断装置S及び実施形態2に係るX線診断装置S100と異なる。実施形態3に係るX線診断装置S200の構成要素のうち、実施形態1において説明したX線診断装置S及び実施形態2において説明したX線診断装置S100と同様の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0136】
図13に示すように、システム制御回路C200は、血管走行情報取得機能C1と、位置特定機能C2aと、絞り制御機能C3cと、ROI取得機能(関心領域取得機能)C4と、X線照射条件取得機能C5と、画像処理パラメータ取得機能C6とを備える。X線照射条件取得機能C5は、ABC機能C51を備える。画像処理パラメータ取得機能C6は、ABC機能C61を備える。“ABC”とは、自動明るさ調整(Auto Brightness Control)の略語である。
【0137】
なお、ここでシステム制御回路C200における血管走行情報取得機能C1、位置特定機能C2a、絞り制御機能C3c、ROI取得機能C4、X線照射条件取得機能C5、画像処理パラメータ取得機能C6は、それぞれ特許請求の範囲における血管走行情報取得部、デバイス位置特定部、絞り制御部、関心領域取得部、X線照射条件取得部、画像処理パラメータ取得部に該当する。
【0138】
絞り制御機能C3cは、X線絞り部12を制御する。ROI取得機能C4は、実施形態2のROI取得機能C4と同様に、関心領域を取得する。
【0139】
X線照射条件取得機能C5は、ROI取得機能C4により取得されたX線画像上の関心領域に基づいてX線照射条件を取得する。システム制御回路C200は、取得されたX線照射条件をX線制御部31へ送る。ここでのX線画像とは、例えばロー画像である。X線制御部31は、システム制御回路C200から取得したX線照射条件に基づいて、X線管11における管電流、管電圧、照射時間等のX線照射条件についての制御信号を高電圧発生器32へ出力する。これにより、以降のフレーム、例えば次のフレームでは、更新されたX線照射条件に基づいたX線が照射される。
【0140】
X線照射条件取得機能C5のABC機能C51は、ROI取得機能C4により取得されたX線画像上の関心領域に基づいて、例えば関心領域における画素値に基づいてX線画像の明るさを調整するためのパラメータを取得する機能を有する。このパラメータは、X線照射条件のうちの少なくとも1つである。システム制御回路C200は、取得されたパラメータをX線制御部31へ送る。X線制御部31は、システム制御回路C200から取得したパラメータに基づいて、制御信号を高電圧発生器32へ出力する。これにより、例えば次に取得されるX線画像は、関心領域を基準としてX線画像の明るさが調整されているので、関心領域の内部に相当する画像が見やすくなる。ここで、関心領域における画素値とは、X線画像のうちの関心領域に相当する部分を構成する画素の画素値である。
【0141】
図14に破線で示された関心領域Rは、実施形態3に係る関心領域の一例である。実施形態3に係る関心領域Rは、実施形態2に係る関心領域と同様に取得される。
図14の領域Eは、X線画像における比較的暗い領域である。比較的暗い領域Eに基づき、又は比較的暗い領域Eを含む領域に基づきX線画像の明るさ調整を行うためのパラメータが取得されると、以降のフレーム、例えば次のフレームでは、暗い領域Eを明るくするようなX線照射条件に基づいたX線が照射される。これにより、関心領域Rが明るくなり過ぎる恐れがあった。
【0142】
一方、ABC機能C51は、関心領域を基準としてX線画像の明るさを調整するためのパラメータを取得するので、医療従事者が見たい領域がよく見えるようになる。
【0143】
図13に示された画像処理パラメータ取得機能C6は、ROI取得機能C4により取得されたX線画像上の関心領域に基づいて、例えば関心領域における画素値に基づいて画像処理パラメータを取得する。システム制御回路C200は、取得された画像処理パラメータを画像演算部61へ送る。画像演算部61は、システム制御回路C200から取得した画像処理パラメータに基づいて、X線画像に対して明るさ調整、輪郭強調、S/N比の改善等を目的とした画像処理演算を行う。ここでのX線画像とは例えばロー画像であるが、ロー画像を加工して得られたX線画像であっても良い。また、例えば、上述のロー画像は、X線照射条件取得機能C5によって取得されたX線照射条件が反映されて得られたロー画像であるが、反映されずに得られたロー画像であっても良い。
【0144】
画像処理パラメータ取得機能C6のABC機能C61は、ROI取得機能C4により取得されたX線画像上の関心領域に基づいて、例えば関心領域における画素値に基づいて明るさ調整を行うためのパラメータを取得する。このパラメータは、画像処理パラメータのうちの少なくとも1つである。システム制御回路C200は、取得されたパラメータを画像演算部61へ送る。画像演算部61は、システム制御回路C200から取得したパラメータに基づいて、X線画像に対して明るさ調整を目的とした画像処理演算を行う。ここで、明るさ調整とは、一般的な画像処理における明るさ調整であり、例えばゲイン及び/又はオフセットの調整である。これにより、当該X線画像は、関心領域を基準としてX線画像の明るさが調整されるので、関心領域の内部に相当する画像が見やすくなる。
【0145】
図14を参照してABC機能C61を説明する。比較的暗い領域Eに基づき、又は比較的暗い領域Eを含む領域に基づきX線画像の明るさ調整を行うためのパラメータが取得されると、暗い領域Eを明るくするような明るさ調整が行われる。これにより、関心領域Rが明るくなり過ぎる恐れがあった。
【0146】
一方、ABC機能C61は、関心領域を基準としてX線画像の明るさを調整するためのパラメータを取得するので、医療従事者が見たい領域がよく見えるようになる。
【0147】
以上で、X線診断装置S200の構成について説明した。以下、X線照射条件及び画像処理パラメータを取得する処理の流れについて、
図15を参照して説明する。ここで、
図15のステップST41、ST42、ST43については、
図10のステップST21、ST22、ST23と同じ処理であるため、その説明は省略する。
【0148】
図15のステップST44において、X線診断装置S200のシステム制御回路C200は、X線照射条件取得機能C5を用いて、関心領域に基づいてX線照射条件を取得する。例えば、システム制御回路C200は、X線照射条件取得機能C5のABC機能C51を用いて、X線画像の明るさを調整するためのパラメータをX線照射条件として取得する。
【0149】
そして、システム制御回路C200は、取得したX線照射条件をX線制御部31へ送る(ST45)。X線制御部31は、取得したX線照射条件に基づいて、制御信号を高電圧発生器32へ出力する。そして、更新されたX線照射条件に基づいたX線がX線管11から照射され、X線検出部2は次のフレームとして新たなX線画像を取得し(ST46)、次のステップに移行する。
【0150】
ステップST47において、システム制御回路C200の画像処理パラメータ取得機能C6は、関心領域に基づいて画像処理パラメータを取得する。例えば、システム制御回路C200は、画像処理パラメータ取得機能C6のABC機能C61を用いて、X線画像の明るさ調整を行うための画像処理パラメータを取得する。
【0151】
そして、システム制御回路C200は、取得した画像処理パラメータを画像演算部61へ送る(ST48)。画像演算部61は、取得した画像処理パラメータに基づいて、X線画像に対して明るさ調整を行う。以上が、X線照射条件及び画像処理パラメータを取得する処理の流れについての説明である。
【0152】
なお、ここでは、ステップST41からステップST48まで一連の処理として説明したが、例えば、X線照射条件の取得に関連する処理と、画像処理パラメータの取得に関連する処理と、をそれぞれ独立した処理としても良い。
【0153】
また、
図15の処理は、所定のタイミングで実行される。所定のタイミングとは、X線の照射を開始した時、再開した時、関心領域をデバイスの先端の移動位置に追随させた時、視野サイズを変更した時、次のフレームを撮像する時などである。
【0154】
また、実施形態3に係る位置特定機能C2aが行う処理は、実施形態1に係る位置特定機能C2の機能の一部により行われても良い。
【0155】
このように、実施形態3においては、血管走行情報及び特定されたデバイス先端位置に基づいて関心領域が取得される。これにより、医療従事者が注目する領域に、関心領域を設定することができる。そして、関心領域に基づいてX線照射条件及び画像処理パラメータが取得される。これにより、医療従事者が注目する領域以外の領域に基づいてX線照射条件及び画像処理パラメータが取得されることを防止できる。よって、例えば、
図4の比較的暗い領域Eに基づいてX線照射条件及び画像処理パラメータが取得されるのを防止でき、医療従事者が注目する領域が明るくなり過ぎるのを防止できる。関心領域の設定方法がより簡便かつ設定位置が適正化されることにより、手技効率、治療安全性が向上する。
【0156】
なお、システム制御回路C、システム制御回路C100、システム制御回路C150、及びシステム制御回路C200における、血管走行情報取得機能C1、位置特定機能C2、C2a、絞り制御機能C3、C3a、C3b、C3c、視野取得機能C31、ROI取得機能C4、C32、第1ROI取得機能C321、第2ROI取得機能C322、X線照射条件取得機能C5、画像処理パラメータ取得機能C6、ABC機能C51、C61は、それぞれが制御回路で構成されていても良い。或いは、例えば、関心領域追随アプリケーションといったアプリケーションソフトが制御回路、システム制御回路C、システム制御回路C100、システム制御回路C150、及びシステム制御回路C200に実装されることによって、上述した各機能が実行されても良い。
【0157】
また、画像演算部61及びX線制御部31は、それぞれが制御回路で構成されていても良いし、システム制御回路C、システム制御回路C100、システム制御回路C150、及びシステム制御回路C200によりその機能が実行されても良い。或いは、アプリケーションソフトが制御回路、システム制御回路C、システム制御回路C100、システム制御回路C150、及びシステム制御回路C200に実装されることによって、上述した各機能が実行されても良い。
【0158】
このように、例えば、システム制御回路C、システム制御回路C100、システム制御回路C150、システム制御回路C200、及び制御回路が実行する各種機能については、所定のメモリや記憶部9等に記憶される、すなわち、関心領域追随プログラムといったプログラムをプロセッサに実行させることによって実現することも可能である。ここで本明細書における「プロセッサ」という文言は、例えば、専用又は汎用のCPU(Central Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。
【0159】
プロセッサは、例えば記憶部9に保存された、又は、プロセッサの回路内に直接組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。プログラムを記憶する記録回路は、プロセッサごとに個別に設けられるものであっても構わないし、或いは、例えば、画像取得部6及びX線制御部31が行う機能に対応するプログラムを記憶するものであっても、さらには記憶部9の構成を採用しても構わない。記憶部の構成には、例えば、半導体や磁気ディスクといった一般的なRAM(Random Access Memory)やHDD(Hard Disc Drive)等の記憶装置が適用される。
【0160】
また、上述の実施形態における移動量とは、移動方向と移動距離とを含むベクトルである。
【0161】
このように、関心領域の設定方法がより簡便かつ設定位置が適正化されることにより、手技効率、治療安全性が向上する。
【0162】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0163】
1 X線発生部
2 X線検出部
3 高電圧発生部
4 保持アーム
5 機構部
6 画像取得部
7 表示制御部
8 ディスプレイ
9 記憶部
10、10a 操作部
10b 視野変更指示受付部
C、C100、C150、C200 システム制御回路
C1 血管走行情報取得機能
C2、C2a 位置特定機能
C3、C3a、C3b、C3c 絞り制御機能
S、S100、S150、S200 X線診断装置
C31 視野取得機能
C4、C32 ROI取得機能
C321 第1ROI取得機能
C322 第2ROI取得機能
C5 X線照射条件取得機能
C6 画像処理パラメータ取得機能
C51、C61 ABC機能