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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】凝集体の撮影装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/02 20060101AFI20231006BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20231006BHJP
   G03B 15/02 20210101ALI20231006BHJP
   G03B 7/083 20210101ALI20231006BHJP
   G03B 15/05 20210101ALI20231006BHJP
   G01B 11/10 20060101ALI20231006BHJP
   C02F 1/52 20230101ALI20231006BHJP
【FI】
G01N15/02 B
G03B15/00 T
G03B15/02 C
G03B7/083
G03B15/05
G01B11/10 H
C02F1/52 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019138535
(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公開番号】P2021021640
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 敦
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-205235(JP,A)
【文献】特開2016-190175(JP,A)
【文献】特開昭61-017938(JP,A)
【文献】特開昭51-039176(JP,A)
【文献】特開昭61-259496(JP,A)
【文献】特開平01-303878(JP,A)
【文献】特開平09-281100(JP,A)
【文献】特開2018-004506(JP,A)
【文献】特開平09-122656(JP,A)
【文献】特開2019-035623(JP,A)
【文献】特開2010-167362(JP,A)
【文献】特開2011-045839(JP,A)
【文献】特開昭61-003032(JP,A)
【文献】特開平7-167770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00-15/14
G03B 15/00-15/035,15/06-15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部で凝集体含有液が流動する液流部と、
前記液流部外に設置されて前記凝集体含有液を撮影するカメラと、
少なくとも撮影領域を周囲の環境光から遮光する遮光手段と、
前記撮影領域に光を照射する撮影用光源と、
を備え、
前記液流部がのぞき窓が設けられた配管であり、
前記遮光手段が前記のぞき窓を覆うハウジングであり、
前記ハウジング内に前記カメラおよび前記撮影用光源が設置されている、凝集体の撮影装置。
【請求項2】
内部で凝集体含有液が流動する液流部と、
前記液流部内の液面上に設置されて前記凝集体含有液を直接撮影するカメラと、
少なくとも撮影領域を周囲の環境光から遮光する遮光手段と、
前記撮影領域に光を照射する撮影用光源と、
を備え、
前記液流部が水槽であり、
前記遮光手段が前記水槽の上部開口を覆う蓋であり、
前記カメラが前記蓋に設けられた孔に固定されている、凝集体の撮影装置。
【請求項3】
前記撮影用光源の電源が直流電源である、請求項1または2に記載の凝集体の撮影装置。
【請求項4】
前記撮影用光源の電源が交流電源であり、
前記交流電源の周波数fと、前記カメラのシャッタースピードsとの間に関係式:f≧(10/s)が成立する、請求項1または2に記載の凝集体の撮影装置。
【請求項5】
前記撮影用光源の電源が交流電源であり、
前記カメラのシャッターが開いている間の前記交流電源の波形が等しくなるように前記カメラおよび前記交流電源の少なくとも一方を制御する制御手段を更に備える、請求項1または2に記載の凝集体の撮影装置。
【請求項6】
前記カメラおよび前記撮影用光源が、ハレーションが発生しない位置に設置されている、請求項1~5の何れかに記載の凝集体の撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝集体の撮影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上水処理、下水処理、工業用水処理、工業排水処理などの各種水処理分野では、被処理水中の懸濁物質を除去する際に、懸濁物質の凝集処理が行われている。
【0003】
ここで、懸濁物質の凝集処理では、凝集剤を用いて被処理水中の懸濁物質を凝集させ、フロック(凝集体)を生成させることにより、被処理水中から懸濁物質を除去し易くする。そのため、凝集処理を用いた水処理技術では、凝集剤を用いたフロックの形成が良好に進行することが肝要となる。
【0004】
そこで、例えば特許文献1では、懸濁物質の凝集処理において、形成したフロックを撮影し、得られた画像データを二値化してフロックの平均粒径を計算することにより、フロックの平均粒径に基づいて凝集剤の注入量を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭62-241512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の技術では、凝集剤の注入量等を変化させた際の凝集体の平均粒子径の変化を正確に把握することができない場合があった。
【0007】
そこで、本発明は、凝集体の平均粒子径の変化の正確な把握を可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討を行なった。そして、本発明者は、撮影により得られた画像データから凝集体の平均粒子径を求める上記従来の技術では、凝集槽が設置されている屋内の照明などの周囲の環境光の影響により画像データのバラツキやノイズが大きくなり、サイズの大きい凝集体の粒子径を正確に測定できないため、凝集体の粒子径分布および平均粒子径の変化を正しく把握できていないことを見出した。そこで、本発明者は更に検討を重ね、撮影領域を周囲の環境光から遮光した状態で撮影を行えば、画像データのバラツキやノイズが小さくなり、サイズの大きい凝集体の粒子径を正確に測定できるので、凝集体の粒子径分布および平均粒子径の変化を正しく把握できることを新たに見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の凝集体の撮影装置は、内部で凝集体含有液が流動する液流部と、前記液流部内の液面上または前記液流部外に設置されて前記凝集体含有液を撮影するカメラと、少なくとも撮影領域を周囲の環境光から遮光する遮光手段と、前記撮影領域に光を照射する撮影用光源とを備えることを特徴とする。このように、遮光手段および撮影用光源を設け、周囲の環境光を遮光した状態で撮影を行えば、凝集体の粒子径分布および平均粒子径の変化を正確に把握可能な画像データを得ることができる。
【0010】
ここで、本発明の凝集体の撮影装置において、前記液流部は水槽または配管であり得る。
【0011】
また、本発明の凝集体の撮影装置は、前記撮影用光源の電源が直流電源であることが好ましい。撮影用光源の電源が直流電源であれば、撮影用光源から照射される光の脈動を抑制し、画像データのノイズを更に低減することができる。
【0012】
更に、本発明の凝集体の撮影装置は、前記撮影用光源の電源が交流電源であり、前記交流電源の周波数fと、前記カメラのシャッタースピードsとの間に関係式:f≧(10/s)が成立することが好ましい。撮影用光源の電源が交流電源の場合であっても、交流電源の周波数fと、カメラのシャッタースピードsとが上記関係式を満たしていれば、撮影用光源から照射される光の脈動の影響を抑制し、画像データのノイズを更に低減することができる。
【0013】
また、本発明の凝集体の撮影装置は、前記撮影用光源の電源が交流電源であり、前記カメラのシャッターが開いている間の前記交流電源の波形が等しくなるように前記カメラおよび前記交流電源の少なくとも一方を制御する制御手段を更に備えることが好ましい。撮影用光源の電源が交流電源の場合であっても、制御手段を設け、カメラのシャッターが開いている間の交流電源の波形が等しくなるようにすれば、撮影用光源から照射される光の脈動の影響を抑制し、画像データのノイズを更に低減することができる。
【0014】
そして、本発明の凝集体の撮影装置は、前記カメラおよび前記撮影用光源が、ハレーションが発生しない位置に設置されていることが好ましい。カメラおよび撮影用光源をハレーションが発生しない位置に設置すれば、高品質な画像データを得て、凝集体の粒子径分布および平均粒子径の変化を更に高い精度で把握することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の凝集体の撮影装置によれば、凝集体の平均粒子径の変化の正確な把握を可能にする画像データが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に従う凝集体の撮影装置の一例の概略構成を示す図である。
図2】本発明に従う凝集体の撮影装置の他の例の概略構成を示す図である。
図3】本発明に従う凝集体の撮影装置の別の例の概略構成を示す図である。
図4】カメラのシャッターが開くタイミングと撮影用光源の交流電源の波形との関係を説明する図である。
図5】ハレーションの発生を防止するためのカメラと撮影用光源との位置関係を説明する図である。
図6】実施例1で求めた凝集汚泥の平均粒子径の経時変化を示すグラフである。
図7】比較例1で求めた凝集汚泥の平均粒子径の経時変化を示すグラフである。
図8】実験例1で求めた凝集汚泥の平均粒子径の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一の構成要素を示すものとする。
【0018】
ここで、本発明の凝集体の撮影装置は、特に限定されることなく、例えば凝集汚泥などの凝集体を撮影する際に用いることができる。そして、撮影により得られた画像データは、特に限定されることなく、任意に画像処理装置で二値化処理などの画像処理を施した後、画像解析装置等を用いて例えば凝集体の粒子径分布や平均粒子径を求める際に用いることができる。また、求められた粒子径分布や平均粒子径のデータは、特に限定されることなく、例えば凝集処理の条件の制御などに利用することができる。
【0019】
本発明の凝集体の撮影装置は、凝集体の撮影時に撮影領域に環境光(例えば、撮影場所の周囲に設置された水銀灯や蛍光灯等の人工照明の光など)が入射すると、得られる画像データのバラツキやノイズが大きくなり、サイズの大きい凝集体の粒子径が正確に測定できなくなることを見出してなされたものである。そして、本発明の凝集体の撮影装置は、内部で凝集体含有液が流動する液流部と、液流部内の液面上または液流部外に設置されて凝集体含有液を撮影するカメラと、少なくとも撮影領域を周囲の環境光から遮光する遮光手段と、撮影領域に光を照射する撮影用光源とを備え、環境光を遮光した状態での凝集体の撮影を可能としたものである。
【0020】
具体的には、本発明の凝集体の撮影装置の一例は、撮影装置100の概略構成を図1に示すように、流入配管20を介して流入した凝集体含有液が内部で流動する液流部としての水槽10と、水槽10内の凝集体含有液を撹拌する撹拌機11と、水槽10内の液面WS上に設置されて凝集体含有液を撮影するカメラ40と、撮影領域に光を照射する撮影用光源50(図示例では2つ)と、少なくとも撮影領域を周囲の環境光から遮光する遮光手段60と、水槽10から脱水機などの後処理装置(図示せず)へと凝集体含有液が流出する流出配管30とを備えている。
【0021】
ここで、水槽10は、凝集体含有液が流れるものであれば特に限定されず、例えば、反応槽、混和槽、凝集槽または濃縮槽などであり得る。また、凝集体含有液としては、懸濁物質含有水に凝集剤を添加してなる凝集処理水などの凝集体を含む任意の液体を用いることができる。
なお、図1では水槽10が開放型の水槽である場合を示すが、水槽10は密閉型の水槽であってもよい。また、水槽10は、通常、鋼板、コンクリート、不透明樹脂などの光不透過性材料で形成されている。
【0022】
カメラ40は、図1に示す撮影装置100では水槽10の上部開口を覆う蓋(遮光手段60)に設けられた孔に固定されており、水槽10内の液面WS上から凝集体含有液を撮影するものである。そして、カメラ40としては、凝集体含有液を撮影することが可能であれば、任意のカメラを用いることができる。なお、カメラ40は、凝集体含有液中に浸漬されるものではないので、防水性能の低いものであってもよい。
ここで、カメラ40のシャッタースピード(シャッターが開放されている時間)は、特に限定されることなく、1/500秒以上1/240秒以下であることが好ましい。シャッタースピードが上記下限値以上であれば、撮影用光源50の電源(図示せず)として交流電源を用いた場合であっても、後に詳細に説明するように光の脈動の影響を抑制し易い。また、シャッタースピードが上記上限値以下であれば、流動している凝集体含有液の撮影に当たり、被写体ブレの発生を十分に防止することができる。
【0023】
周囲の環境光から遮光された撮影領域に光を照射する撮影用光源50としては、特に限定されることなく、例えばLEDライト、白熱電球などの任意の光源を用いることができる。
【0024】
ここで、遮光手段60を備える撮影装置100では撮影領域に撮影用光源50から照射された光のみがあたるところ、カメラ40での撮影に当たり、撮影用光源50から照射される光に脈動が生じると、画像データにノイズが入り得る。そのため、撮影用光源50から照射される光の脈動の影響を抑制してノイズが更に少ない画像データを得る観点からは、撮影装置100では、撮影用光源50の電源(図示せず)として直流電源または所定の交流電源を用いるか、或いは、カメラ40および電源を同期する制御手段(図示せず)を設けることが好ましい。
【0025】
具体的には、撮影用光源50の電源として例えば商用電源(周波数:50Hzまたは60Hz)をそのまま用いた場合、カメラ40のシャッターが開くタイミングと電源の波形との関係を図4(a)に示すように、撮影を複数回行った際に各撮影間でシャッターが開いている間の電源の波形が異なることとなり、その結果、撮影中の光の脈動の具合が異なり得る。そのため、光の脈動の影響に起因して画像データにノイズが入り得る。
【0026】
しかし、例えば撮影用光源50の電源として直流電源を用いれば、撮影用光源から照射される光が脈動すること自体を抑制し、画像データのノイズを更に低減することができる。
【0027】
或いは、撮影用光源50の電源として高周波数の交流電源を用いれば、カメラ40のシャッターが開くタイミングと電源の波形との関係を図4(b)に示すように、シャッターが開いている間に含まれる交流電源の波数を多くし、撮影用光源から照射される光の脈動の影響を低減することができるので、画像データのノイズを更に低減することができる。
具体的には、交流電源の周波数を2.4kHz以上、好ましくは10kHz以上、より好ましくは100kHz以上とすることにより、或いは、カメラ40のシャッタースピード(s)と交流電源の周波数(f)との間に関係式:f≧(10/s)を成立させることにより、シャッターが開いている間に含まれる交流電源の波数を多くし、撮影用光源から照射される光の脈動の影響を低減することができる
【0028】
また、カメラ40のシャッターが開くタイミングと電源の波形との関係を図4(c)に示すように、カメラ40および電源の少なくとも一方を制御する制御手段を設け、カメラ40のシャッターが開いている間の交流電源の波形が等しくなるように制御すれば、撮影用光源から照射される光の脈動の影響を低減することができるので、画像データのノイズを更に低減することができる。
【0029】
なお、高品質な画像データを得て、凝集体の粒子径分布および平均粒子径の変化を更に高い精度で把握する観点からは、上述したカメラ40および撮影用光源50は、ハレーションが発生しない位置に設置することが好ましく、ハレーションが発生せず、また、凝集体に影ができ難い位置に設置することがより好ましい。
具体的には、カメラ40および撮影用光源50は、カメラ40を囲繞するように撮影用光源50を円環状に配置するか、2つ以上の撮影用光源50を図5に示す角度αが角度βの1.2倍以上となり、且つ、90°-βが30°以上となる位置に配置することが好ましい。ここで、図5において、「CL1」は液面WSと直交するカメラ40のレンズの光軸を示し、「W」は中央でCL1が交差する撮影幅(撮影領域)を示し、「VL」は撮影幅Wの端縁を通って液面WSに直交する仮想線を示し、「CL2」は仮想線VLを挟んでカメラ40とは反対側に位置する撮影用光源50の光軸を示す。なお、図5では簡略化のために撮影用光源50を一つのみ示している。また、カメラ40の液面WSとの間の距離は、特に限定されることなく、例えば300mm以上500mm以下とすることができ、撮影用光源50と液面WSとの間の距離は、特に限定されることなく、例えば100mm以上500mm以下とすることができる。
【0030】
遮光手段60は、図1では水槽10の上部開口を覆って撮影領域を周囲の環境光から遮光する蓋である。
【0031】
そして、撮影装置100では、遮光手段60および撮影用光源50を設け、周囲の環境光を遮光した状態で凝集体含有液の撮影を行うことができるので、周囲の環境光が入射する状態で撮影を行う場合と比較し、凝集体の粒子径分布および平均粒子径の変化を正確に把握可能な画像データを得ることができる。
また、撮影装置100では、液面上にカメラ40を設置して凝集体含有液を直接撮影しているので、のぞき窓などを介して撮影する場合と比較し、設備コストを低減することができる。
【0032】
なお、図1に示す撮影装置100では、カメラ40および撮影用光源50を水槽10内の液面上に設置したが、本発明の凝集体の撮影装置では、例えば図2に示すように、水槽10の外にカメラ40および撮影用光源50を設置してもよい。
【0033】
ここで、図2に示す撮影装置100Aは、水槽10内の凝集体含有液を観察可能なのぞき窓12が密閉型の水槽10(図示例では水槽10の側面)に設けられていると共に、カメラ40および撮影用光源50がのぞき窓12を覆う遮光手段60としてのハウジング内に設置されている点以外は、図1に示す撮影装置100と同様の構成を有している。そして、この撮影装置100Aでは、図1に示す撮影装置100と同様に、周囲の環境光を遮光した状態でのぞき窓12を介して凝集体含有液の撮影を行うことができるので、周囲の環境光が入射する状態で撮影を行う場合と比較し、凝集体の粒子径分布および平均粒子径の変化を正確に把握可能な画像データを得ることができる。
【0034】
また、図1および図2に示す撮影装置100,100Aでは、水槽10内の凝集体含有液をカメラ40で撮影したが、本発明の凝集体の撮影装置では、例えば図3に示すように、配管内(図示例では流出配管30内)を流れる凝集体含有液をカメラ40で撮影してもよい。
【0035】
ここで、図3に示す撮影装置100Bは、流出配管30内の凝集体含有液を観察可能なのぞき窓31が流出配管30に設けられていると共に、カメラ40および撮影用光源50がのぞき窓31を覆う遮光手段60としてのハウジング内に設置されている点以外は、図2に示す撮影装置100Aと同様の構成を有している。そして、この撮影装置100Bでは、図1,2に示す撮影装置100,100Aと同様に、周囲の環境光を遮光した状態でのぞき窓31を介して凝集体含有液の撮影を行うことができるので、周囲の環境光が入射する状態で撮影を行う場合と比較し、凝集体の粒子径分布および平均粒子径の変化を正確に把握可能な画像データを得ることができる。
なお、図示例ではのぞき窓31が配管31の上側に設けられている場合を示したが、のぞき窓の設置位置は配管の上側に限定されるものではない。
【0036】
更に、図1~3に示す撮影装置100,100A,100Bでは、遮光手段60が水槽の上部開口やのぞき窓を完全に覆う場合を示したが、本発明の凝集体の撮影装置では、遮光手段は、周囲の環境光から少なくとも撮影領域を遮光できるものであればよい。また、本発明の凝集体の撮影装置では、撮影領域を周囲の環境光から遮光できていれば、撮影領域以外の部分に環境光が入射してもよい。更に、本発明の凝集体の撮影装置は、カメラが液流部内の液面上または液流部外を移動可能に構成されていてもよい。
【実施例
【0037】
(実施例1)
図1に示す撮影装置100を使用し、汚泥貯留槽から入手した汚泥含有水に凝集剤としての両性高分子(栗田工業製、商品名「クリベストP353」)を添加してなる凝集汚泥含有水を撮影した。なお、凝集剤の注入率は、最初は0.34%-DSとし、途中で0.40%-DSに引き上げた後、再び0.34%-DSに戻した。また、カメラ40としては画像センサー(キーエンス社製、商品名「CV-X」)を使用し、撮影用光源50としてはLED照明(イマック社製、商品名「IDBA-SE300」)を使用した。更に、カメラ40のシャッタースピードは1/500秒とし、撮影用光源50の電源としては周波数125kHzの交流電源を用いた。
そして、撮影により得られた画像データを画像センサー(CV-X)で2値化処理し、フィルター処理および移動平均処理を行って凝集汚泥の平均粒子径の経時変化を求めた。結果を図6に示す。
図6より、凝集剤の注入率の変化に伴う凝集汚泥の平均粒子径の変化を的確に把握できることが分かる。
【0038】
(比較例1)
撮影装置として遮光手段を有さない以外は図1に示す撮影装置100と同様の構成を有する撮影装置を使用した以外は実施例1と同様にして凝集汚泥含有水を撮影した。なお、凝集剤の注入率は、最初は0.40%-DSとし、途中で0.45%-DSに引き上げた後、再び0.40%-DSに戻した。
そして、撮影により得られた画像データを画像センサー(CV-X)で2値化処理し、フィルター処理および移動平均処理を行って凝集汚泥の平均粒子径の経時変化を求めた。結果を図7に示す。
図7より、凝集剤の注入率の変化に伴う凝集汚泥の平均粒子径の変化を把握できないことが分かる。
【0039】
(実験例1)
図1に示す撮影装置100を使用し、汚泥貯留槽から入手した汚泥含有水に凝集剤としての両性高分子(栗田工業製、商品名「クリベストP353」)を一定の注入率(0.4%-DS)で添加してなる凝集汚泥含有水を撮影した。なお、撮影装置100は、途中で遮光手段の除去および撮影用光源の電源の変更を順次行い、最終的に最初の状態に戻した。カメラ40としては画像センサー(キーエンス社製、商品名「CV-X」)を使用し、撮影用光源50としてはLED照明(イマック社製、商品名「IDBA-SE300」)を使用した。更に、カメラ40のシャッタースピードは1/500秒とし、撮影用光源50の電源としては周波数125kHzの交流電源(変更前)および周波数60Hzの交流電源(変更後)を用いた。
そして、撮影により得られた画像データを画像センサー(CV-X)で2値化処理し、フィルター処理および移動平均処理を行って凝集汚泥の平均粒子径の経時変化を求めた。結果を図8に示す。
図8より、遮光手段がある状態よりも遮光手段が無い状態の方が画像データから求められる凝集汚泥の平均粒子径が低くなり、サイズの大きい凝集汚泥を適切に撮影できていないことが分かる。また、電源の変更により撮影用光源からの光の脈動の影響を受けるようになると画像データから求められる凝集汚泥の平均粒子径が更に低下することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の凝集体の撮影装置によれば、凝集体の平均粒子径の変化の正確な把握を可能にする画像データが得られる。
【符号の説明】
【0041】
100,100A,100B 撮影装置
10 水槽
11 撹拌機
12 のぞき窓
20 流入配管
30 流出配管
31 のぞき窓
40 カメラ
50 撮影用光源
60 遮光手段
WS 液面
CL1 光軸
CL2 光軸
W 撮影幅
VL 仮想線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8