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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】リリーフ弁装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 17/04 20060101AFI20231006BHJP
   F16K 51/00 20060101ALI20231006BHJP
   F16K 31/524 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
F16K17/04 Z
F16K51/00 A
F16K31/524 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019153322
(22)【出願日】2019-08-26
(65)【公開番号】P2021032337
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】外村 賢昭
【審査官】笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-240831(JP,A)
【文献】実開昭50-055628(JP,U)
【文献】実開平06-059669(JP,U)
【文献】再公表特許第2008/096646(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 17/04
F16K 51/00
F16K 31/524
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の機器の2次側圧力が上昇したときに弁体の開放により2次側を1次側に連通して上昇した前記2次側圧力を低下させるリリーフ弁装置であって
前記1次側と前記2次側とが直線状に配置された略筒状の弁ボディと、
前記弁ボディの外側に配置された筒状操作部材と、
前記筒状操作部材の所定の操作により前記弁体を開閉して詰り物質を除去する詰り解消手段と、
を備えたことを特徴とするリリーフ弁装置。
【請求項2】
請求項1記載のリリーフ弁装置に於いて、
前記詰り解消手段は、
前記筒状操作部材の、軸方向の移動操作による前記軸方向の動きを前記軸方向に略直交する方向の動きに変換する第1変換手段と、
前記第1変換手段で変換した前記軸方向に略直交する方向の動きを、前記弁体を開閉する方向の動きに変換する第2変換手段と、
を備えたことを特徴とするリリーフ弁装置。
【請求項3】
請求項2記載のリリーフ弁装置に於いて、
前記第1変換手段は、
前記弁ボディの外側に前記軸方向に移動自在に配置された前記筒状操作部材の内周面に形成され、軸心側にテーパー面が開いた環状テーパー溝と、
前記環状テーパー溝に配置された複数のボール部材と、
前記弁ボディに形成され、前記複数のボール部材の各々を前記軸に略直交する方向に出没自在に保持する複数のボール収納孔と、
を備え、前記筒状操作部材を前記軸方向に移動操作したときの前記環状テーパー溝の動きにより前記ボール部材を前記ボール収納孔から出没させて前記軸に略直交する方向の動きに変換し、
前記第2変換手段は、
前記弁体と同軸に連結された錐状部材を備え、当該錐状部材の錐状外周面に対する前記複数のボール部材の出没に連動して、前記ボール部材の前記軸に略直交する方向の動きを前記弁体を開閉する方向の動きに変換して前記弁体を開閉させる、
ことを特徴とするリリーフ弁装置。
【請求項4】
請求項1記載のリリーフ弁装置に於いて、
前記詰り解消手段は、
前記筒状操作部材の軸周りの回転操作による回転方向の動きを軸方向に略直交する方向の動きに変換する第3変換手段と、
前記第3変換手段で変換した前記軸方向に略直交する方向の動きを、前記弁体を開閉する方向の動きに変換する第4変換手段と、
を備えたことを特徴とするリリーフ弁装置。
【請求項5】
請求項4記載のリリーフ弁装置に於いて、
前記第3変換手段は、
前記弁ボディの外側に前記軸回りに回転自在に配置された前記筒状操作部材の内周面に所定角度単位に形成され、回転角に応じて溝の深さが変化する複数の環状カム溝と、
前記複数の環状カム溝の各々に配置された複数のカム部材と、
前記弁ボディに形成され、前記カム部材を前記軸に略直交する方向に出没自在に保持する複数のカム収納孔と、
を備え、前記筒状操作部材を前記軸回りに回転操作したときの前記環状カム溝の回転方向の動きにより、前記カム収納孔から前記カム部材を出没させて前記軸に略直交する方向の動きに変換し、
前記第4変換手段は、
前記弁体と同軸に連結された錐状部材を備え、当該錐状部材の錐状外周面に対する前記複数のカム部材の出没に連動して、前記カム部材の前記軸に略直交する方向の動きを前記弁体を開閉する方向の動きに変換して前記弁体を開閉させることを特徴とするリリーフ弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラー設備等の流水検知装置に並列接続して2次側の圧力上昇を1次側に逃がすリリーフ弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスプリンクラー消火設備にあっては、消火ポンプ等の加圧送水装置から給水本管が建物の高さ方向に立ち上げられ、給水本管からは建物の階別に分岐管が流水検知装置(「自動警報弁」ともいう)を介して引き出され、分岐管に閉鎖型の複数のスプリンクラーヘッドを接続し、分岐管の末端は末端試験装置を介して排水管に接続している。
【0003】
火災が発生すると、熱によってスプリンクラーヘッドが開放し、加圧送水装置から供給される消火用水を散布して火災を消火抑制する。スプリンクラーヘッドが開放すると分岐管に消火用水が流れることで流水検知装置の弁体が開放し、圧力スイッチを作動して流水検知信号を制御盤に出力して火災発生を報知し、更に、移報信号を火災受信機に送って火災警報を出力させる。
【0004】
夏場などにおいて、流水検知装置の二次側配管内の圧力が異常に上昇すると、漏水が発生したり、構成機器が破損する可能性がある。このため流水検知装置と並列に、2次側の圧力上昇を1次側に逃がし、1次側から2次側への流れは阻止するリリーフ弁装置を設け、2次側の漏水や構成機器の破損等を防止するようにしている(特許文献1)。
【0005】
このようなリリーフ弁装置にあっては、運用期間が長くなると、長期間閉鎖状態にある弁体の2次側にゴミなどの異物が付着して目詰まりを起こし、2次側圧力の上昇に対し弁体の開動作が行われても、上昇した2次側圧力を速やかに1次側に逃がすことができなくなる場合がある。
【0006】
この問題を解決するためには定期点検等の際に、リリーフ弁装置を取り外して分解清掃することで異物を除去すれば良いが、流水検知装置周りの狭い場所に設置されたリリーフ弁装置を取り外して分解清掃し、再び組み立てて元に戻す作業が必要となり、煩雑で手間と時間がかかる。
【0007】
一方、スプリンクラー消火設備の分岐管の末端に設けた末端試験装置は、末端試験弁とオリフィスで構成され、末端試験弁を開操作したときにオリフィスで決まるスプリンクラーヘッド1台の作動に相当する流量を流して放水試験を行うようにしている。
【0008】
このような末端試験装置として、ボール弁にオリフィスを一体に備えたものが提案され、操作レバーを所定方向に90°回すとボール弁が開放して弁体に形成したオリフィスを介して排水側にスプリンクラーヘッド1台の作動に相当する量の消火用水が流れ、また、操作レバーを反対方向に90°回すとオリフィスが逆向きに開いて排水側に消火用水が流れることで、オリフィスに付着したごみなどの異物の除去や目詰まりを簡単に解消できるようにしている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平7-265456号公報
【文献】特開2006-223418公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献2の末端試験装置と同様に、流水検知装置と並列に設けたリリーフ弁装置についても、操作レバーによる弁体の開閉でごみなどの異物を簡単に除去することが考えられる。
【0011】
しかしながら、流水検知装置に並列に設けたリリーフ弁装置は、2次側圧力の上昇に対しスプリングに抗して弁体を軸方向に移動して開閉する構造の弁であり、特許文献2の異物除去構造を適用することができない。
【0012】
また、操作レバーは操作時の可動範囲、所要スペースが大きく、流水検知装置周りに操作レバー付きのリリーフ弁装置を配置するには、操作レバーの操作を可能とする十分な空きスペースを確保する必要があり、リリーフ弁装置を含めた流水検知装置の所要設置スペースが大きくなる問題がある。
【0013】
本発明は、リリーフ弁の取外しや分解を伴わず、操作に必要なスペースを縮小しつつ、異物を除去して詰まりを簡単に解消する弁体の操作を可能とするリリーフ弁装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(消火設備のリリーフ弁装置)
本発明は、所定の機器の2次側圧力が上昇したときに弁体の開放により2次側を1次側に連通して上昇した2次側圧力を低下させるリリーフ弁装置であって
1次側と2次側とが直線状に配置された略筒状の弁ボディと、
弁ボディの外側に配置された筒状操作部材と、
筒状操作部材の所定の操作により弁体を開閉して詰り物質を除去する詰り解消手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0015】
(詰り解消手段1)
詰り解消手段は、
筒状操作部材の、軸方向の移動操作による軸方向の動きを軸方向に略直交する方向の動きに変換する第1変換手段と、
第1変換手段で変換した軸方向に略直交する方向の動きを、弁体を開閉する方向の動きに変換する第2変換手段と、
を備える。
【0016】
(第1変換手段と第2変換手段)
第1変換手段は、
弁ボディの外側に軸方向に移動自在に配置された筒状操作部材の内周面に形成され、軸心側にテーパー面が開いた環状テーパー溝と、
環状テーパー溝に配置された複数のボール部材と、
弁ボディに形成され、複数のボール部材の各々を軸に略直交する方向に出没自在に保持する複数のボール収納孔と、
を備え、筒状操作部材を軸方向に移動操作したときの環状テーパー溝の動きによりボール部材をボール収納孔から出没させて軸に略直交する方向の動きに変換し、
第2変換手段は、
弁体と同軸に連結された錐状部材を備え、当該錐状部材の錐状外周面に対する複数のボール部材の出没に連動して、ボール部材の軸に略直交する方向の動きを、弁体を開閉する方向の動きに変換して弁体を開閉させる。
【0017】
(詰り解消手段2)
詰り解消手段は、
筒状操作部材の、軸周りの回転操作による回転方向の動きを軸方向に略直交する方向の動きに変換する第3変換手段と、
第3変換手段で変換した軸方向に略直交する方向の動きを、弁体を開閉する方向の動きに変換する第4変換手段と、
を備える。

【0018】
(第3変換手段と第4変換手段)
第3変換手段は、
弁ボディの外側に軸回りに回転自在に配置された筒状操作部材の内周面に所定角度単位に形成され、回転角に応じて溝の深さが変化する複数の環状カム溝と、
複数の環状カム溝の各々に配置された複数のカム部材と、
弁ボディに形成され、カム部材を軸に略直交する方向に出没自在に保持する複数のカム収納孔と、
を備え、筒状操作部材を軸回りに回転操作したときの環状カム溝の回転方向の動きにより、カム収納孔からカム部材を出没させて軸に略直交する方向の動きに変換し、
第4変換手段は、
弁体と同軸に連結された錐状部材を備え、当該錐状部材の錐状外周面に対する複数のカム部材の出没に連動して、カム部材の軸に略直交する方向の動きを、弁体を開閉する方向の動きに変換して弁体を開閉させる。
【発明の効果】
【0019】
(基本的な効果)
本発明のリリーフ弁装置によれば、弁ボディの外側に配置した筒状操作部材の操作は、筒状操作部材の筒の中心軸に沿う軸方向の移動操作(スライド操作)又は軸回りの回転操作であり、従来の操作レバーのように大きな操作スペースを必要とすることなく操作可能であり、所定の機器として例えば流水検知装置の2次側と1次側の間に配置して配管接続しても、リリーフ弁装置を含めた流水検知装置の配置スペースを拡大する必要がない。
【0020】
(詰り解消手段1の効果)
また、詰り解消手段1は、筒状操作部材の軸方向の移動操作による動きを軸に略直交する方向の動き動きに変換し、更に、弁体を開閉する方向の動きに変換して弁体に作用させることで、簡単に弁体を開閉してごみなどの異物を除去して詰りを解消できる。
【0021】
(第1変換手段と第2変換手段の効果)
また、第1変換手段は、筒状操作部材の軸方向の移動操作による動きを環状テーパー溝、ボール部材及びボール収納孔により、ボール部材の軸に略直交する方向の動きに変換し、更に、第2変換手段は、ボール部材と錐状部材により、ボール部材の軸に略直交する方向の動きを弁体を開閉する方向の動き(ここでは軸方向の動き)に変換して弁体に作用させることができる。このため筒状操作部材を軸方向に往復移動する操作により、簡単に繰返し弁体を開閉してごみなどの異物を除去して詰りを解消できる。
【0022】
(詰り解消手段2の効果)
また、詰り解消手段は、筒状操作部材の軸周りの回転操作による回転方向の動きを軸に略直交する方向の動きに変換し、更に、弁体を開閉する方向の動きに変換して弁体に作用させることで、弁体を開閉してごみなどの異物を除去し、簡単に詰りを解消できる。
【0023】
(第3変換手段と第4変換手段の効果)
また、第3変換手段は、筒状操作部材の軸周りの回転操作による回転方向の動きを環状カム溝、カム部材及びカム収納孔により、カム部材の軸に略直交する方向の動きに変換し、更に、カム部材と弁体と同軸に連結された錐状部材により、カム部材の軸に略直交する方向の動きを、弁体を開閉する方向の動き(ここでは軸方向の動き)に変換して弁体に作用させることで、筒状操作部材を軸回りに往復回転する操作により、繰返し弁体を開閉してごみなどの異物を除去し、簡単に詰りを解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】流水検知装置を備えたスプリンクラー消火設備の分岐管系統の概略を示した説明図
図2】本発明によるリリーフ弁装置の第1実施形態を軸方向の縦断面で示した説明図
図3図2のa-a矢視の横断面を示した説明図
図4】リリーフ弁装置に設けた詰り解消手段の動作を示した説明図
図5図2の筒状操作部材を軸方向に移動操作して弁体を開放した状態を示した説明図
図6図2の第1実施形態の変形例を軸方向の断面で示した説明図
図7】本発明によるリリーフ弁装置の第2実施形態を軸方向の縦断面で示した説明図
図8図7のb-b矢視の横断面を示した説明図
図9図8の筒状操作部材を取り出して横断面で示した説明図
図10図7の筒状操作部材を初期位置に戻す初期位置復帰手段の構造を示した説明図であり、図10(A)に図7のc-c矢視の横断面を示し、図10(B)に図10(A)のd-d矢視の縦断面を直線展開して示し、図10(C)に筒状操作部材の回転操作によりコイルバネを圧縮する動作状態を示す。
図11図7の筒状操作部材を軸回りに回転操作して弁体を開放した状態を軸方向の縦断面で示した説明図
図12図11のe-e矢視の横断面を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0025】
[スプリンクラー消火設備の概要]
図1に示すように、スプリンクラー消火設備は、消火ポンプ等の加圧送水装置からの給水本管11に例えば建物の階別に制御弁15及び流水検知装置10を介して分岐管12が接続され、2次側にスプリンクラーヘッド14を接続し、末端には末端試験弁16とオリフィス18を接続している。
【0026】
流水検知装置10は、周知のように、火災時にスプリンクラーヘッド14が作動して消火用水を散布すると圧力スイッチ20がオンして流水検知信号を出力する。
【0027】
流水検知装置10には仕切弁22を介して2次側圧力計24が接続され、また仕切弁26を介して1次側圧力計28が接続され、仕切弁22,26の間に本発明のリリーフ弁装置30を接続し、リリーフ弁装置30の1次側に排水弁27を接続している。
【0028】
[リリーフ弁装置の第1実施形態]
(リリーフ弁装置の構造)
図2に示すように、本実施形態のリリーフ弁装置30は、1次側と2次側の弁ホディ32,34を有し、それぞれ2次側ポート31と1次側ポート35が開口している。
【0029】
弁ボディ32,34の内部には弁座シート52を配置し、スプリング54により弁体46を弁座シート52に押圧し、常時は閉鎖位置に保持している。
【0030】
弁体46に加わる2次側圧力P2とその受圧面積で決まる開放力をF2とし、弁体46に加わる1次側圧力P1とその受圧面積で決まる閉鎖力をF1とし、スプリング54の押圧力をF3とすると、
F2≦(F1+F3)
のとき弁体46は弁座シート52に当接して閉鎖している。
【0031】
また、2次側圧力P2が上昇して
F2>(F1+F3)
の関係になると、弁体46が開放し、上昇した2次側圧力P2を低下させる。
【0032】
(詰り解消手段の構造)
図2及び図3に示すように、筒状操作部材36は弁ホディ32の下側の外周段部55に上側から軸方向に所定範囲(ストローク)で移動自在に嵌め込まれ、上端内側を止め環62で抜け止めし、下端内側にスプリング56を組込み、図示の初期位置を保持している。
【0033】
本実施形態の詰り解消手段は、筒状操作部材36の、軸方向の移動操作による軸方向の動きを、軸に略直交する方向の動きに変換する第1変換手段と、第1変換手段で変換した軸に略直交する方向の動きを、弁体46を開閉する方向の動きに変換する第2変換手段で構成される。
【0034】
第1変換手段は、筒状操作部材36の内周面に形成され、軸心側にテーパー面が開いた環状テーパー溝38、環状テーパー溝38に配置された例えば4個のボール部材40、弁ボディ32に形成され環状テーパー溝38に配置されたボール部材40の各々を軸に略直交する方向に出没自在に保持するボール収納孔50で構成され、筒状操作部材36を軸方向に往復させる移動操作をしたときの環状テーパー溝38の動きによりボール部材40を弁ボディ32に設けたボール収納孔50から出没させて軸に略直交する方向の動きに変換する。
【0035】
第2変換手段は、弁軸48を介して弁体46と連結された錐状部材42を備え、錐状部材42は錐状外周面44を持ち、軸方向に複数の連通穴43を形成し、弁体46と一体に軸方向で移動自在に組み込んでいる。錐状部材42の錐状外周面44には、図2に示す初期位置において、ボール部材40が周囲を囲むように当接しており、第1変換手段で変換されたボール部材40の出没する動き、即ちボール部材40の軸に略直交する方向即ち軸方向の動きを、弁体46を開閉する方向即ち軸方向の動きに変換して弁体46を開閉する。
【0036】
即ち、ボール部材40が環状テーパー溝38から出没することにより、ボール部材40が錐状外周面44に対し当接(押圧)と非当接を繰り返す動きにより弁体46の開閉方向の動きが生じ、これにより弁体46を開閉する。
【0037】
(詰り解消手段の動作機能)
図4に示すように、筒状操作部材36を点線で示す筒状操作部材36’となる位置に軸方向で移動操作したときの軸方向の移動量をL1とする。これにより環状テーパー溝38も移動し、ボール収納孔50に収納しているボール部材40は軸心に向かい、点線で示すボール部材40’の位置に移動し、このときの軸45に略直交する方向の移動量をL2とする。
【0038】
ボール部材40がボール部材40’の位置に移動すると、錐状部材42は錐状外周面44に対するボール部材40の当接(押圧)を受けて軸方向に移動し、図2に示すよう弁軸48で連結した弁体46を開放方向に移動し、このときの錐状部材42の軸方向の移動量をL3とする。
【0039】
ここで、環状テーパー溝38の上側テーパー面の軸方向に対するテーパー角をθ1とすると、筒状操作部材36の移動量L1とボール部材40の移動量L2との間には
L2/L1=tanθ1
の関係がある。
【0040】
また、錐状部材42の錐状外周面44のテーパー角をθ2とすると、ボール部材40の移動量L2と錐状部材42の移動量L3との間には
L2/L3=tanθ2
の関係がある。
【0041】
このため筒状操作部材36の移動操作による移動量L1と錐状部材42の移動量L3、即ち弁体46の開放側への移動量L3との間には
L3=(tanθ1/tanθ2)・L1=K・L1
の関係がある。
【0042】
ここで、(tanθ1/tanθ2)は所定の定数Kであり、θ1>θ2とすることで1以上となり、その結果、筒状操作部材36の軸方向の移動量をK倍に拡大して弁体46を開放側に動かすことができる。
【0043】
また、筒状操作部材36の肉厚は、例えば弁ボディ32,34の肉厚と同程度とし、筒状操作部材36の外径を比較的小さくすることができ、特許文献2の操作レバーの操作に要するスペースに比べて省スペースで操作可能としている。更に、操作部材としてレバーを使用する場合に比べ、誤って操作部材に物を衝突させて破損するといった可能性も低減する。
【0044】
(詰り解消操作)
スプリンクラー消火設備の定期点検時等には、図1に示した仕切弁26を閉じ、排水弁27を開いた状態で、図5に示すように、リリーフ弁装置30の筒状操作部材36を矢印Aに示すように軸方向に往復させる移動操作を行う。
【0045】
この操作により環状テーパー溝38、ボール部材40、錐状部材42を介して弁体46が開閉され、弁体46を開いたときに2次側から1次側に消火用水が流れ、弁体46の2次側に付着しているごみなどの異物を排出して詰りを解消する。
【0046】
[第1実施形態の変形例]
図6に示すように、本実施形態のリリーフ弁装置30は、2次側の弁ボディ32aの2次側ポート31aの内部開口端に弁座シート52aが配置され、スプリング54aにより弁体46aを弁座シート52aに押圧し、常時は閉鎖位置に保持している。
【0047】
1次側の弁ボディ34aの外周の外側には筒状操作部材36aが軸方向に所定範囲(ストローク)で移動自在に嵌め込まれ、上端内側を止め環62で抜け止めし、下端内側の段付き部にスプリング56を組込み、図示の初期位置を保持している。本実施形態の詰り解消手段の具体的構成は、図2の実施形態と同じになることから、同一符号を付して説明は省略する。
【0048】
本実施形態においても、筒状操作部材36を往復させる移動操作を行うと、環状テーパー溝38、ボール部材40、錐状部材42を介して弁体46aが開閉され、弁体46aを開いたときに2次側から1次側に消火用水が流れ、弁体46aの2次側に付着しているごみなどの異物を排出して詰りを解消する。
【0049】
[リリーフ弁装置の第2実施形態]
(詰り解消手段の構造)
図7及び図8に示すように、本実施形態のリリーフ弁装置30は、弁ボディ32の外周の外側に配置した筒状操作部材36を軸周りに往復させる回転操作により弁体46を開閉し、ごみ等の異物を排出して詰りを解消する詰り解消手段を設けたことを特徴とする。
【0050】
筒状操作部材36は、弁ホディ32の外周下側の鍔部74の上部に軸方向に嵌め込まれ、上端内側を止め環62の係合で抜け止めし、弁ボディ32の外側に回転自在に配置される。また、後述する初期位置復帰手段で筒状操作部材36を図示の初期位置に保持している。
【0051】
本実施形態の詰り解消手段は、筒状操作部材36の、軸周りの回転操作による回転方向の動きを、軸に略直交する方向の動きに変換する第3変換手段と、第3変換手段で変換した軸に略直交する方向の動きを、弁体46を開閉する方向の動きに変換する第4変換手段で構成される。
【0052】
第3変換手段は、筒状操作部材36の内周面の例えば4箇所に分けて所定角度単位に形成され環状カム溝70を備え、環状カム溝70の深さは、図9に示すように、初期位置で最も深く、回転角の変化に応じて溝の深さが浅くなるカム溝形状としている。環状カム溝70にはカム部材として機能するボール部材40が配置され、ボール部材40はカム収納孔として機能する、弁ボディ32に設けたボール収納孔50に出没自在に収納されている。
【0053】
これにより第3変換手段は、筒状操作部材36を軸周りで往復させる回転操作に伴う環状カム溝70の回転方向の動きにより、ボール収納孔50からボール部材40を出没させて軸に略直交する方向の動きに変換する。
【0054】
第4変換手段は、弁軸48を介して弁体46と同軸に連結された錐状部材42を備え、錐状部材42は錐状外周面44を持ち、また、軸方向に複数の連通穴43を形成し、弁体46と一体に軸方向に移動自在に組み込んでいる。
【0055】
錐状部材42の錐状外周面44にはボール部材40が周囲を囲むように初期位置において当接しており、第1実施形態同様に錐状外周面44に対するボール部材40の出没に連動して、ボール部材40の軸に略直交する方向の動きを、弁体46を開閉する方向の動きに変換して弁体46を開閉する。
【0056】
(筒状操作部材の初期位置復帰手段)
図10(A)に示すように、図7に示した弁ボディ32の鍔部74には例えば120°間隔で形成したボール溝77にボール76を鍔面74aから僅かに突出して嵌合しており、筒状操作部材36の下端面36bを鍔面74aの3個所に配置したボール76の点接触により低摩擦で軸45を中心に所定角度範囲で回転自在に支持している。
【0057】
また、周方向でボール76の配置位置の間となる鍔面74aの3か所に分けてバネ収納溝78が形成され、コイルバネ80が組み込まれている。バネ収納溝78に対しては、図10(B)に示すように、筒状操作部材36の下端面36bに起立固定したピン82の先端が挿し込まれ、コイルバネ80の一端に当接している。
【0058】
図10(C)に示すように、操作者が筒状操作部材36を矢印Cの方向に回転操作すると、ピン82の移動によりコイルバネ80が圧縮され、筒状操作部材36を初期位置に戻す復元力が発生し、操作者が手を離せばコイルバネ80に押されて筒状操作部材36は初期位置に戻される。
【0059】
なお、図10の初期位置復帰手段は、これに限定されず、筒状操作部材36の回転操作に伴い初期位置に戻す方向の復元力を発生するものであれば、適宜の構造が含まれる。また、筒状操作部材36の初期位置復帰手段は必須ではなく、例えば筒状操作部材36を初期位置(弁体閉鎖位置)と回転位置(弁体開放位置)とに位置決めする構造を設け、筒状操作部材36を往復させる回転操作を行って弁体46を開閉させても良い。
【0060】
(詰り解消操作)
図7及び図8に示す筒状操作部材36の初期状態にあっては、ボール部材40は環状カム溝70の最も深い初期位置にあり、弁体46はスプリング54により弁座シート52に押圧され、閉鎖状態となっている。
【0061】
この状態で図12の矢印Bに示すように、筒状操作部材36を軸回りに往復させる回転操作を行うと、環状カム溝70の回転方向の動きにより、ボール収納孔50からボール部材40を出没させて軸45に略直交する方向の動きに変換し、ボール部材40の出没する動きに連動して、錐状部材42は図11に示すように、ボール部材40の軸に略直交する方向の動きを、弁体46を開閉する方向の動きに変換し、弁体46を開閉させる。
【0062】
定期点検等の際には、図1の仕切弁26を閉じ、排水弁27を開いていることから、弁体46を開いたときに2次側から1次側に消火用水が流れ、弁体46の2次側に付着しているごみなどの異物を排出して詰りを解消する。
【0063】
なお、本実施形態では、カム部材としてボール部材40を使用しているが、これに限定されず、適宜の形状のカム部材を含む。
【0064】
[本発明の変形例]
(流水検知装置)
上記の実施形態は、スプリンクラー消火設備の流水検知装置に設けるリリーフ弁装置を例にとっているが、これに限定されず、泡消火設備の流水検知装置に設けるリリーフ弁装置であっても良く、更に、水系媒体の供給系統に設けられる適宜の機器に設けるリリーフ弁装置を対象とする。
【0065】
(その他)
また本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0066】
10:流水検知装置
12:分岐管
14:スプリンクラーヘッド
22,26:仕切弁
27:排水弁
30:リリーフ弁装置
32,32a,34,34a:弁ボディ
36,36a:筒状操作部材
38:環状テーパー溝
40:ボール部材
42:錐状部材
44:錐状外周面
46,46a:弁体
50:ボール収納孔
52,52a:弁座シート
70:環状カム溝

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12