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  • 特許-雌型コンタクト 図1
  • 特許-雌型コンタクト 図2
  • 特許-雌型コンタクト 図3
  • 特許-雌型コンタクト 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】雌型コンタクト
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/11 20060101AFI20231006BHJP
【FI】
H01R13/11 C
H01R13/11 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019156626
(22)【出願日】2019-08-29
(65)【公開番号】P2021034330
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094330
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 正紀
(72)【発明者】
【氏名】築地 英明
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-346958(JP,A)
【文献】特開2007-200860(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0222038(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/00-13/08
H01R13/10-13/14
H01R13/15-13/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前壁と、
前記前壁から左右両側に折れ曲がって延びる両側壁と、
前記両側壁のうちの第1の側壁から折れ曲がって前記前壁と対面する向きに延びる後壁と、
前記両側壁のうちの第2の側壁から折れ曲がって前記後壁よりも前記前壁側に位置し該後壁に沿って延びる内壁と、
前記内壁から前記前壁側に折れ曲がって形成された板ばね部とを有し、
前記板ばね部が、
前記内壁から折れ曲がって該内壁よりも前記前壁側に位置し片持ち梁形状に形成されて該前壁との間に挿入されてきた雄型コンタクトを挟んで該雄型コンタクトと電気的に接続されるメインばねと、
前記メインばねの自由端側において前記内壁側に密着曲げされて該メインばねの固定端側に延び、先端部を前記後壁に対面させたアシストばねとを備え、
前記内壁が、前記後壁の、前記アシストばねの先端部と対面する部分を前記前壁側に露出させた形状を有し、
前記アシストばねの先端部が、前記後壁と前記メインばねの固定端側との双方に接した状態に挟まれていることを特徴とする雌型コンタクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿入されてきた雄型コンタクトと電気的に接続される雌型コンタクトに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の様々な電子部品の小型化の要請により、雌型コンタクトにも小型化が要請されてきている。雌型コンタクトの小型化の有効な手段の1つとして、薄い金属板材を使って雌型コンタクトを製造することが考えられる。
【0003】
ここで、特許文献1には、片持ち梁形状の第1板ばね部と、その第1板ばね部の先端に密着折返し部を介して連結された第2板ばね部とを有するコンタクトを備えた端子金具が開示されている。相手の雄型コンタクトは、第1板ばね部と端子金具の天井板との間に挿し込まれる。すると、第2板ばね部の先端部が端子金具の底板上を摺動する。
【0004】
この特許文献1のコンタクトは、第2板ばね部が第1板ばね部のばね力のアシストとなり、第1板ばね部と第2板ばね部との合計のばね力が雄型コンタクトとの接圧に寄与する。したがって、特許文献1のコンタクトは、薄い金属板材を使用するのに適した構造となっている。また、特許文献1のコンタクトは、第1板ばね部と第2板ばね部は密着折返し部を介して連結されている。したがって、特許文献1のコンタクトは、第1板ばね部と第2板ばね部をU字型の曲げ部を介して連結した構造と比べ、小型化が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-346957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上掲の特許文献1のコンタクトの場合、第1板ばね部の固定端が端子金具の底板に接してその底板に支持されている。また、第2板ばね部も、端子金具の、その同じ底板に接してその底板上を摺動する。さらに、その底板の、第1板ばね部の固定端の支持部と、第2板ばね部の摺動部との間にはランス孔が形成されている。このため、第2板ばね部を第1板ばね部のばね力のアシストとして使ってばね力を強めると、端子金具の底板が撓んで所定の接圧が得られないおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、小型化に適し、かつ、接圧の信頼性を向上させた雌型コンタクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明の雌型コンタクトは、
前壁と、
前壁から左右両側に折れ曲がって延びる両側壁と、
両側壁のうちの第1の側壁から折れ曲がって前壁と対面する向きに延びる後壁と、
両側壁のうちの第2の側壁から折れ曲がって後壁よりも前壁側に位置し後壁に沿って延びる内壁と、
内壁から前壁側に折れ曲がって形成された板ばね部とを有し、
その板ばね部が、
内壁から折れ曲がって内壁よりも前壁側に位置し片持ち梁形状に形成されて前壁との間に挿入されてきた雄型コンタクトを挟んで雄型コンタクトと電気的に接続されるメインばねと、
メインばねの自由端側において内壁側に密着曲げされてメインばねの固定端側に延び、先端部を後壁に対面させたアシストばねとを備え、
内壁が、後壁の、アシストばねの先端部と対面する部分を前壁側に露出させた形状を有し、
上記アシストばねの先端部が、十記後壁と上記記メインばねの固定端側との双方に接した状態に挟まれているすることを特徴とする。
【0009】
本発明の雌型コンタクトの場合、上掲の特許文献1のコンタクトと同様、メインばねとアシストばねが密着曲げにより連結されている。このため、小型化に適した構造となっている。
【0010】
また、本発明の雌型コンタクトの場合、アシストばねは、その先端部が後壁に対面してその後壁に支えられる。一方、メインばねの固定端は内壁に支持されている。このように、本発明の雄型コンタクトの場合、メインばねとアシストばねは、内壁と後壁という、重なり合った互いに異なる壁に支えられている。このため、雄型コンタクトが挿入されてもメインばねとアシストばねとの双方が後壁を押してその後壁を撓ませることが回避され、接圧の信頼性が向上する。
【0012】
さらに、本発明の雌型コンタクトの場合、アシストばねの先端部が、後壁とメインばねの固定端側との双方に接した状態に挟まれているため、雄型コンタクトが挿入されたときにアシストばねの摺動に対する抵抗となる。これにより、雄型コンタクトとの高い接圧が得られ接圧の信頼性がさらに向上する。

【発明の効果】
【0013】
以上の本発明によれば、小型化に適し、かつ、接圧の信頼性を向上させた雌型コンタクトが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態としての雌型コンタクトの斜視図である。
図2図1の雌型コンタクトの、平面図(A)、正面図(B)、および底面図(C)である。
図3図2(B)に示す矢印A-Aに沿う断面図(A)、および図2(B)に示す矢印B-Bに沿う断面を示した斜視図(B)である。
図4】本発明の第2実施形態の雌型コンタクトの、第1実施形態における図3(A)に対応する断面図(A)、および図3(B)に対応する斜視図(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態としての雌型コンタクトの斜視図である。ここで、図1(A)は、前壁が現れる向きの斜視図、図1(B)は、後壁が現れる向きの斜視図である。
【0016】
また、図2は、図1の雌型コンタクトの、平面図(A)、正面図(B)、および底面図(C)である。
【0017】
さらに、図3は、図2(B)に示す矢印A-Aに沿う断面図(A)、および図2(B)に示す矢印B-Bに沿う断面を示した斜視図(B)である。
【0018】
この雌型コンタクト10は、前壁20と、左右の側壁30と、後壁40とを有するボックス型のコンタクトである。これら前壁20、左右の側壁30、および後壁40に囲まれて形成された空間の底部には、雄型コンタクト(不図示)が挿入される挿入口70が形成されている。
【0019】
前壁20には、窪み部21が形成されている。この窪み部21は、前壁20の内壁の突起22となって、所定の接圧で押された雄型コンタクトの受け部となっている。
【0020】
左右の側壁30は、前壁20から左右両側に折れ曲がって延びている。
【0021】
後壁40は、左右の側壁30のうちの第1の側壁31から折れ曲がって前壁20と対面する向きに延びている。
【0022】
また、この雌型コンタクト10は、内壁50を有する。この内壁50は、左右の側壁30のうちの第2の側壁31から折れ曲がって後壁40よりも前壁20側に位置し、後壁40に沿って延びている。
【0023】
さらに、この雌型コンタクト10は、内壁50から前壁20側に折れ曲がって形成された板ばね部60を有する。この板ばね部60には、メインばね61と、メインばね61より幅が狭いアシストばね62が形成されている。
【0024】
メインばね61は、内壁50よりも前壁20側に位置し、この雌型コンタクト10の底部に設けられている挿入口70側の固定端から斜め上方に向かって片持ち梁形状に形成されている。そして、このメインばね61は、挿入されてきた雄型コンタクト(不図示)を前壁20の突起22との間に挟んで雄型コンタクトに所定の接圧で接触する。
【0025】
また、アシストばね62は、メインばね61の自由端612側において内壁50側に密着曲げされ、斜め下方、すなわちメインばね61の固定端611側に向かって延びている。そして、このアシストばね62は、その先端部621を後壁40に接するように対面させている。ここで、内壁50には、後壁40の、アシストばね62の先端部621と対面する部分を前壁20側に露出させる開口51が形成されている。そして、このアシストばね62は、その先端部621がその開口51内に入り込んで後壁40と対面している。なお、内壁50には、開口51ではなく、後壁40の、アシストばね62の先端部621と対面する部分を前壁20側に露出させる切欠き等を有していてもよい。
【0026】
この雌型コンタクト10によれば、メインばね61とアシストばね62が密着曲げにより連結されているため、小型化に適した構造となっている。
【0027】
また、この雌型コンタクト10の場合、アシストばね62は、その先端部621が後壁40に対面してその後壁40に支えられる。一方、メインばね61の固定端611は内壁50に支持されている。このように、この雌型コンタクト10の場合、メインばね61とアシストばね62は、内壁50と後壁40という互いに重なり合った異なる壁に支えられている。このため、雄型コンタクトが挿入されてもメインばね61とアシストばね62との双方が後壁40を押して後壁40を撓ませることが回避され、接圧の信頼性が向上している。
【0028】
次に、本発明の第2実施形態の雌型コンタクトについて説明する。ここでは、上述の第1実施形態との相違が現れている、第1実施形態における図3に対応する図4のみ図示する。また、その図4について、上述の第1実施形態の雌型コンタクトの構成要素に対応する構成要素には、形状等の相違があっても図3において付した符号と同一の符号を付して示し、特徴点のみ説明する。
【0029】
図4は、本発明の第2実施形態の雌型コンタクトの、第1実施形態における図3(A)に対応する断面図(A)、および図3(B)に対応する斜視図(B)である。
【0030】
この図4に示す第2実施形態の雌型コンタクト10の場合、アシストばね62の先端部621が、メインばね61の固定端611側と後壁40との双方に接した状態に挟まれている。このように、アシストばね62の先端部621が、それらの双方に接した状態に挟まれていると、雄型コンタクトが挿入されたときの、アシストばね62の摺動に対する抵抗、すなわちアシストばね62の弾性変形に対する抵抗となる。これにより、雄型コンタクトとの高い接圧が得られ接圧の信頼性がさらに向上する。
【符号の説明】
【0031】
10 雌型コンタクト
20 前壁
30 側壁
31 第1の側壁
32 第2の側壁
40 後壁
50 内壁
60 板ばね部
61 メインばね
611 メインばねの固定端
612 メインばねの自由端
62 アシストばね
621 アシストばねの先端部
図1
図2
図3
図4