(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】AFP-L3測定方法及びAFP-L3測定キット、並びに、これらに用いるブロック化標識レクチン
(51)【国際特許分類】
G01N 33/574 20060101AFI20231006BHJP
【FI】
G01N33/574 E
G01N33/574 B
(21)【出願番号】P 2019159747
(22)【出願日】2019-09-02
【審査請求日】2022-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】306008724
【氏名又は名称】富士レビオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西井 友教
(72)【発明者】
【氏名】岡田 和訓
(72)【発明者】
【氏名】石川 直樹
(72)【発明者】
【氏名】飯田 久美子
(72)【発明者】
【氏名】八木 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】青柳 克己
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-253866(JP,A)
【文献】国際公開第2017/183711(WO,A1)
【文献】特開昭63-289001(JP,A)
【文献】特開昭61-079164(JP,A)
【文献】国際公開第2006/070732(WO,A1)
【文献】特開2018-004323(JP,A)
【文献】特開2001-181299(JP,A)
【文献】国際公開第2018/174044(WO,A1)
【文献】Hiroaki Tateno, Sachiko Nakamura-Tsuruta, Jun Hirabayashi,Comparative analysis of core-fucose-binding lectins from Lens culinaris and Pisum sativum using frontal affinity chromatography,Glycobiology,2009年02月13日,Volume 19, Issue 5,Pages 527-536,https://doi.org/10.1093/glycob/cwp016
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 -33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中のAFP-L3を測定する方法であり、
第1の水溶性高分子からなる水溶性担体と前記水溶性担体に固定された標識物質及びレンズマメレクチンとを備えるブロック化標識レクチンと、前記試料と、を接触させる測定工程を含
み、
前記ブロック化標識レクチンが、第1の水溶性高分子の重量平均分子量が200,000以上である高分子量ブロック化標識レクチンと、第1の水溶性高分子の重量平均分子量が100,000未満である低分子量ブロック化標識レクチンと、の組み合わせであり、
前記測定工程が、標識物質及びレンズマメレクチンを備える標識化レクチンと、前記試料と、を接触させる工程をさらに含む、
ことを特徴とするAFP-L3測定方法。
【請求項2】
前記水溶性担体に固定されていない遊離レンズマメレクチンの存在下で前記測定工程を実施することを特徴とする、請求項1に記載のAFP-L3測定方法。
【請求項3】
第2の水溶性高分子の存在下で前記測定工程を実施することを特徴とする、請求項1又は2に記載のAFP-L3測定方法。
【請求項4】
請求項1~
3のうちのいずれか一項に記載のAFP-L3測定方法に用いるための、第1の水溶性高分子からなる水溶性担体と前記水溶性担体に固定された標識物質及びレンズマメレクチンとを備えるブロック化標識レクチン
であり、第1の水溶性高分子の重量平均分子量が200,000以上である高分子量ブロック化標識レクチンと、第1の水溶性高分子の重量平均分子量が100,000未満である低分子量ブロック化標識レクチンと、の組み合わせである、ブロック化標識レクチン。
【請求項5】
試料中のAFP-L3を測定するためのキットであり、請求項
4に記載のブロック化標識レクチン
と、標識物質及びレンズマメレクチンを備える標識化レクチンとを含むことを特徴とする、AFP-L3測定キット。
【請求項6】
前記水溶性担体に固定されていない遊離レンズマメレクチンをさらに含むことを特徴とする、請求項
5に記載のAFP-L3測定キット。
【請求項7】
第2の水溶性高分子をさらに含むことを特徴とする、請求項
5又は6に記載のAFP-L3測定キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AFP-L3測定方法及びAFP-L3測定キット、並びに、これらに用いるブロック化標識レクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、腫瘍マーカーといった悪性疾患のモニタリングマーカーとして、糖タンパク質、糖脂質、遊離糖鎖といった糖鎖又は糖鎖を有する物質の測定方法が盛んに研究されている。これらの中でも、これら被測定物質の量的変化のみならず、その糖鎖の変化による質的変化をも測定可能な観点から、被測定物質の糖鎖部分に結合するレクチンを用いた測定方法や、これと該被測定物質の抗体による測定とを組み合わせた測定方法が注目を集めている。このようなレクチンによる測定が可能な被測定物質(レクチン結合性物質)として、肝炎、肝硬変、肝細胞がん等で発現するがん胎児性糖タンパク質であるα-フェトプロテイン(AFP)のうち、フコースが付加された糖鎖(コアフコース構造)を持つα-フェトプロテインL3(AFP-L3)が肝細胞がんに特異性の高いマーカーとなることが知られている。現在、AFP部分に結合する抗体とコアフコース構造に結合するレクチン(レンズマメレクチン(LCA))とを組み合わせた「ミュータスワコー AFP-L3」が、AFP-L3分画検出用の試薬として、富士フイルム和光純薬株式会社により製造販売されている。この試薬は、液相中で抗原抗体反応後に形成した免疫複合体をイオン交換カラムや電気泳動によって分離して測定するLBA法(Liquid-phase Binding Assay)を用いたものであるが、この方法を実施するために設計された汎用性の低い専用機等を使用する必要があり、測定コストが高いという問題を有していた。
【0003】
前記レクチン結合性物質の測定方法としては、他に、例えば、国際公開第2017/183711号(特許文献1)において、レクチン反応性糖鎖含有実体の存在下において、レクチンをレクチン標的分子(レクチン結合性物質)に結合させることを含む、レクチン標的分子の捕捉方法が記載されている。
【0004】
また、抗体等のプローブと酵素等の標識物質との複合体を用いる免疫学的測定方法においては、高感度化を目的とした様々な研究が行われており、例えば、前記複合体として、国際公開第2006/070732号(特許文献2)には、分子量20,000~4,000,000の2分子以上の担体が酵素を介して結合し、該担体に酵素が結合した複合体に、プローブ分子が結合したブロック化酵素プローブ複合体が記載されており、特開2001-181299号公報(特許文献3)には、担体に2個以上の酵素が結合し、その酵素の少なくとも1個以上に他の物質に特異的な結合性を示すタンパク質が結合した酵素-タンパク質複合体が記載されている。また、例えば、測定条件として、特開2018-4323号公報(特許文献4)や特開昭61-79164号公報(特許文献5)には、免疫化学反応においてデキストラン等の活性化因子を共存させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/183711号
【文献】国際公開第2006/070732号
【文献】特開2001-181299号公報
【文献】特開2018-4323号公報
【文献】特開昭61-79164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、レクチンを用いてAFP-L3を簡便に測定する方法については、未だ十分な研究がなされていない。また、レクチンを用いてAFP-L3を測定する方法においては、レクチンを含む複合体を単に用いても、抗原抗体反応と比べてレクチンと糖鎖との親和性が弱いため、CLEIA法(化学発光酵素免疫測定法)等での高感度測定は困難であるという問題点を有していた。さらに、レクチンを用いる測定方法では、レクチンが目的のAFP-L3以外の物質(例えば、対象外のタンパク質等に結合したレクチン認識糖鎖)にも非特異的に結合するため、バックグラウンドが高くなって特異性が低くなり、これによっても高感度での測定が困難となるという問題点を有していた。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、試料中のAFP-L3を簡便かつ高感度で測定可能な、AFP-L3測定方法及びAFP-L3測定キット、並びに、これらに用いるブロック化標識レクチンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、試料中のAFP-L3の測定において、水溶性高分子からなる水溶性担体と前記水溶性担体に固定された標識物質及びレンズマメレクチンとを備える複合体(ブロック化標識レクチン)を用いることにより、これを前記試料と接触させるという簡便な手技のみで、AFP-L3の測定感度を十分に向上できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
かかる知見により得られた本発明の態様は次のとおりである。
(1)試料中のAFP-L3を測定する方法であり、
第1の水溶性高分子からなる水溶性担体と前記水溶性担体に固定された標識物質及びレンズマメレクチンとを備えるブロック化標識レクチンと、前記試料と、を接触させる測定工程を含む、AFP-L3測定方法。
(2)前記水溶性担体に固定されていない遊離レンズマメレクチンの存在下で前記測定工程を実施する、(1)に記載のAFP-L3測定方法。
(3)第2の水溶性高分子の存在下で前記測定工程を実施する、(1)又は(2)に記載のAFP-L3測定方法。
(4)前記ブロック化標識レクチンが、第1の水溶性高分子の重量平均分子量が200,000以上である高分子量ブロック化標識レクチンと、第1の水溶性高分子の重量平均分子量が100,000未満である低分子量ブロック化標識レクチンと、の組み合わせである、(1)~(3)のうちのいずれかに記載のAFP-L3測定方法。
(5)前記測定工程が、標識物質及びレンズマメレクチンを備える標識化レクチンと、前記試料と、を接触させる工程をさらに含む、(1)~(4)のうちのいずれかに記載のAFP-L3測定方法。
(6)(1)~(5)のうちのいずれかに記載のAFP-L3測定方法に用いるための、第1の水溶性高分子からなる水溶性担体と前記水溶性担体に固定された標識物質及びレクチンとを備える、ブロック化標識レクチン。
(7)試料中のAFP-L3を測定するためのキットであり、(6)に記載のブロック化標識レクチンを含む、AFP-L3測定キット。
(8)前記ブロック化標識レクチンが、第1の水溶性高分子の重量平均分子量が200,000以上である高分子量ブロック化標識レクチンと、第1の水溶性高分子の重量平均分子量が100,000未満である低分子量ブロック化標識レクチンと、の組み合わせである、(7)に記載のAFP-L3測定キット。
(9)前記水溶性担体に固定されていない遊離レンズマメレクチンをさらに含む、(7)又は(8)に記載のAFP-L3測定キット。
(10)第2の水溶性高分子をさらに含む、(7)~(9)のうちのいずれかに記載のAFP-L3測定キット。
(11)標識物質及びレンズマメレクチンを備える標識化レクチンをさらに含む、(7)~(10)のうちのいずれかに記載のAFP-L3測定キット。
【0010】
なお、本発明の構成によって上記目的が達成される理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、本発明のAFP-L3測定に用いるブロック化標識レクチンにおいては、AFP-L3に結合するレンズマメレクチンと、標識物質とが、水溶性高分子からなる水溶性担体に固定されているため、複数のレンズマメレクチンが高分子である前記水溶性担体によって一連となった複合体を形成する。これが試料中のAFP-L3と接触すると、これら複数のレンズマメレクチンがそれぞれ目的物質であるAFP-L3のレクチン結合性糖鎖構造に結合するため、レンズマメレクチンと前記レクチン結合性糖鎖構造との各々の結合点における親和性が弱くとも、一つの複合体に対して複数の結合点が生じることによって、複合体全体としては親和性が向上し、AFP-L3を高感度で測定可能になるものと本発明者らは推察する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、試料中のAFP-L3を簡便かつ高感度で測定可能な、AFP-L3測定方法及びAFP-L3測定キット、並びに、これらに用いるブロック化標識レクチンを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例2-1~2-4におけるカウントとL3型抗原濃度との関係を示す曲線である。
【
図2】実施例3-3~3-6におけるカウントとL3型抗原濃度との関係を示す曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0014】
本発明のAFP-L3測定方法は、試料中のAFP-L3を測定する方法であり、
第1の水溶性高分子からなる水溶性担体と前記水溶性担体に固定された標識物質及びレンズマメレクチンとを備えるブロック化標識レクチンと、前記試料と、を接触させる測定工程を含む、
ことを特徴とする方法である。また、本発明のAFP-L3測定キットは、試料中のAFP-L3を測定するためのキットであり、前記ブロック化標識レクチンを含むことを特徴とするキットである。さらに、本発明のブロック化標識レクチンは、上記本発明のAFP-L3測定方法及びAFP-L3測定キットに用いるための上記のブロック化標識レクチンである。
【0015】
[試料]
本発明のAFP-L3測定方法に用いられる「試料」としては、AFP-L3が存在し得る試料である限り特に制限はない。一般的には、診断対象等、目的のAFP-L3を測定する対象(好ましくはヒト)から採取された血清、血漿、全血、尿、便、口腔粘膜、咽頭粘膜、腸管粘膜、及び各種生検試料等が挙げられる。本発明に係る試料として好ましくは、水性試料であり、血清又は血漿である。これらの試料は、必要に応じて希釈したものであってもよい。
【0016】
[AFP-L3]
本発明において、「AFP-L3」とは、α-フェトプロテイン(AFP)であって、AFPが一つ有するN型糖鎖にコアフコースが付加された糖鎖構造(二分岐型複合糖鎖の還元末端側のN-アセチルグルコサミンにα1-6の形式でフコースが結合した構造)を持つα-フェトプロテインL3(AFP-L3)のことを示す。AFP-L3は、血清中のAFP濃度とは独立の指標として、肝細胞がんの検出、悪性度判定、治療効果判定等のための指標となることが知られている。
【0017】
AFP-L3の糖鎖はレンズマメレクチンと親和性があり、レンズマメレクチンと結合可能な糖鎖(レクチン結合性糖鎖構造を有する糖鎖)である。レンズマメレクチン(LCA)は、レンズマメ由来のレクチンであって、前記コアフコースに対して親和性を有する。
【0018】
[ブロック化標識レクチン]
本発明において、「ブロック化標識レクチン」とは、水溶性高分子からなる水溶性担体と前記水溶性担体に固定された標識物質及びレンズマメレクチンとを備える複合体であって、水溶性担体と標識物質とレンズマメレクチンとが直接的又は間接的に結合した結合体である。本発明のブロック化標識レクチンに含まれるレンズマメレクチンとしては、上述のとおりである。
【0019】
本発明のブロック化標識レクチンにおいては、前記水溶性担体に標識物質及びレンズマメレクチンが担持されていればよく、水溶性担体に標識物質及びレンズマメレクチンが互いに独立して結合していても、水溶性担体、標識物質及びレンズマメレクチンのいずれもが他の2者と結合していても、水溶性担体に標識物質又はレクチンを介して他方のレクチン又は標識物質が結合していてもよい。
【0020】
〔水溶性担体〕
本発明のブロック化標識レクチンに含まれる水溶性担体は、主に前記標識物質及びレンズマメレクチンを担持する担体として機能するものであり、水溶性高分子からなる。本発明に係る水溶性担体を構成する水溶性高分子(以下、「第1の水溶性高分子」という)としては、前記標識物質及びレンズマメレクチンを固定させて担持できる水溶性高分子である限り特に制限はない。本発明において、「水溶性高分子」とは、常温常圧下で水に対する溶解度が0.01g/mLを超える、好ましくは0.05g/mL以上である、より好ましくは0.1g/mL以上である高分子化合物を示す。
【0021】
本発明に係る第1の水溶性高分子としては、重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算での重量平均分子量、以下同じ)が、測定の感度の観点及び水溶性であるという観点から、6,000~4,000,000であることが好ましく、20,000~1,000,000であることがより好ましい。さらに、被測定物質であるAFP-L3の濃度が低濃度であっても高感度で測定可能になる傾向にあるという観点からは、より高分子量であることが好ましく、20,000~1,000,000であることが好ましく、50,000~700,000であることがより好ましい。
【0022】
また、本発明のブロック化標識レクチンとしては、第1の水溶性高分子の重量平均分子量が200,000以上である高分子量ブロック化標識レクチンと、第1の水溶性高分子の重量平均分子量が100,000未満である低分子量ブロック化標識レクチンと、の組み合わせであることも好ましく、第1の水溶性高分子の重量平均分子量が200,000~700,000(さらに好ましくは250,000~500,000)である高分子量ブロック化標識レクチンと、第1の水溶性高分子の重量平均分子量が20,000~100,000(さらに好ましくは50,000~70,000)である低分子量ブロック化標識レクチンと、の組み合わせであることがより好ましい。前記高分子量ブロック化標識レクチンと、低分子量ブロック化標識レクチンとを組み合わせることにより、被測定物質であるAFP-L3の測定可能な濃度範囲がより広くなる傾向にある。これは、前記高分子量ブロック化標識レクチンの間に低分子量ブロック化標識レクチンが入り込んで、ブロック化標識レクチンの密度がより密になるためであると本発明者らは推察する。
【0023】
また、本発明のブロック化標識レクチンとして、前記高分子量ブロック化標識レクチンと前記低分子量ブロック化標識レクチンとを組み合わせる場合、これらの質量比(高分子量ブロック化標識レクチンの質量:低分子量ブロック化標識レクチンの質量)としては、10:1~1:10であることが好ましく、5:1~1:5であることがより好ましく、3:1~1:3であることがさらに好ましい。
【0024】
本発明に係る第1の水溶性高分子としては、例えば、デキストラン、アミノデキストラン、フィコール(商品名)、デキストリン、アガロース、プルラン、各種セルロース(例えば、ヘミセルロースやリグリン等)、キチン、キトサン、β―ガラクトシダーゼ、サイログロブリン、ヘモシアニン、ポリリジン、ポリペプチド及びDNA、並びに、これらの修飾体(例えば、DEAE Dextranやデキストラン硫酸ナトリウム等)が挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。これらの中でも、本発明に係る第1の水溶性高分子としては、安価で大量に入手可能であり、また、官能基の付加、カップリング反応などの化学的な加工が比較的容易である観点からは、デキストラン及びアミノデキストラン、並びに、これらの修飾体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、デキストランであることがより好ましい。
【0025】
〔標識物質〕
本発明のブロック化標識レクチンに含まれる標識物質は、主に前記ブロック化標識レクチンの標識として機能するものであり、公知の免疫学的測定において標識物質として用いられているものを特に制限なく用いることができる。
【0026】
本発明に係る標識物質としては、例えば、酵素;アクリジニウム誘導体等の発光物質;ユーロピウム等の蛍光物質;アロフィコシアニン(APC)及びフィコエリスリン(R-PE)等の蛍光蛋白質;I125等の放射性物質;フルオレセインイソチオシアネート(FITC)及びローダミンイソチオシアネート(RITC)等の低分子量標識物質;金粒子;アビジン;ビオチン;ラテックス;ジニトロフェニル(DNP);ジゴキシゲニン(DIG)が挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。例えば、前記標識物質として酵素を用いた場合には、発色基質、蛍光基質、化学発光基質等を基質として添加することにより、前記基質に応じて種々の検出・定量を行うことができる。前記酵素としては、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリフォスファターゼ(ALP)、β-ガラクトシダーゼ(β-gal)、グルコースオキシダーゼ、ルシフェラーゼを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
〔ブロック化標識レクチンの構成及び製造方法〕
本発明のブロック化標識レクチンにおいて、前記標識物質の含有量としては特に制限されず、測定機構等に応じて適宜調整することができるが、測定感度をより向上させるために、第1の水溶性高分子1分子に結合する標識物質の分子数ができるだけ多くなるように設定することが好ましく、例えば、前記標識物質が酵素である場合、第1の水溶性高分子の質量(第1の水溶性高分子が2種以上の組み合わせである場合にはそれらの合計、以下同じ)100質量部に対する標識物質の質量(標識物質が2種以上の組み合わせである場合にはそれらの合計)が、100~1,000質量部であることが好ましく、300~800質量部であることがより好ましい。
【0028】
本発明のブロック化標識レクチンにおいて、レンズマメレクチンの含有量としては特に制限されないが、測定感度を向上させるために、第1の水溶性高分子1分子に結合するレンズマメレクチンの分子数ができるだけ多くなるように設定することが好ましく、例えば、第1の水溶性高分子の質量100質量部に対するレンズマメレクチンの質量が、100~2,000質量部であることが好ましく、300~1,500質量部であることがより好ましい。
【0029】
また、本発明のブロック化標識レクチンとしては、ブロック化標識レクチン1分子あたりの重量平均分子量が、1,000,000~10,000,000であることが好ましく、1,500,000~5,000,000であることがより好ましい。前記重量平均分子量が前記下限未満である場合には、測定感度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、測定感度が向上する一方で、水溶液中において凝集等を生じやすくなる傾向にある。
【0030】
本発明のブロック化標識レクチンは、前記水溶性担体に前記標識物質及びレンズマメレクチンを固定することによって製造することができる。かかる製造方法としては、適宜従来公知の方法又はそれに準じた方法を採用することができ、前記水溶性担体に前記標識物質及びレンズマメレクチン(以下、場合により「被担持物質」と総称する)を直接固定してもよく、間接的に固定してもよい。
【0031】
前記被担持物質を前記水溶性担体に直接固定する方法としては、例えば、前記被担持物質及び/又は前記水溶性担体を構成する第1の水溶性高分子に、カルボキシ基、エポキシ基、トシル基、アミノ基、ヒドロキシ基、イソチオシアネート基、イソシアネート基、アジド基、アルデヒド基、カーボネート基、アリル基、アミノオキシ基、マレイミド基、チオール基等の活性基を付与し、或いは、前記被担持物質及び/又は水溶性担体としてこれらの活性基を有する水溶性高分子を用い、当該活性基と前記被担持物質との共有結合によって固定する方法が挙げられる。前記活性基を付与した被担持物質及び第1の水溶性高分子としては、市販のものをそのまま用いてもよいし、適切な反応条件で被担持物質及び水溶性高分子表面に前記活性基を導入して調製してもよい。一例として、チオール基の導入は、例えば、S-アセチルメチルカプト無水コハク酸やN-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート、2-イミノチオラン等の市販の試薬を用いて行うことができ、アミノ基へのマレイミド基の導入は、例えば、N-(6-マレイミドカプロイロキシ)スクシンイミドやN-(4-マレイミドブチリロキシ)スクシンイミド等の市販の試薬を用いて行うことができる。ピリジルジスルフィド基の導入は、例えば、N-Succinimidyl 3-(2-pyridyldithio)propionate(SPDP)やN-{6-[3-(2-Pyridyldithio)propionamido]hexanoyloxy}sulfosuccinimide、sodium salt(Sulfo-AC5-SPDP)等の市販の試薬を用いて行うことができる。
【0032】
また、前記被担持物質を前記水溶性担体に間接的に固定する方法としては、例えば、ポリヒスチジン、ポリエチレングリコール、システイン及び/又はリジンを含むオリゴペプチド、前記活性基を有するリンカー分子(例えば、ヒドラジン塩、ヒドラジド、AMAS(N-α-maleimidoacet-oxysuccinimide ester)、BMPS(N-β-maleimidopropyl-oxysuccinimide ester)、GMBS(N-γ-maleimidobutyryl-oxysuccinimide ester)、MBS(m-maleimidobenzoyl-N-hydroxysuccinimide ester)、SMCC(succinimidyl 4-(N-maleimidomethyl)cyclohexane-1-carboxylate)等)、EMCS(N-ε-malemidocaproyl-oxysuccinimide ester)、SMPB(succinimidyl 4-(p-maleimidophenyl)butyrate)、SMPH(Succinimidyl 6-((beta-maleimidopropionamido)hexanoate))、LC-SMCC(succinimidyl 4-(N-maleimidomethyl)cyclohexane-1-carboxy-(6-amidocaproate))、Sulfo-KMUS(N-κ-maleimidoundecanoyl-oxysulfosuccinimide ester)、SIA(succinimidyl iodoacetate)、SBAP(succinimidyl 3-(bromoacetamido)propionate)、SIAB(succinimidyl (4-iodoacetyl)aminobenzoate)、Sulfo-SANPAH(sulfosuccinimidyl 6-(4’-azido-2’-nitrophenylamino)hexanoate、SDA(NHS-Diazirine) (succinimidyl 4,4’-azipentanoate)、Sulfo-SDAD(Sulfo-NHS-SS-Diazirine) (sulfosuccinimidyl 2-((4,4’-azipentanamido)ethyl)-1,3’-dithiopropionate)、EDC(1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide hydrochloride)、NHS(N-hydroxysuccinimide)、BMPH(N-β-maleimidopropionic acid hydrazide)、EMCH(N-ε-maleimidocaproic acid hydrazide)、MPBH(4-(4-N-maleimidophenyl)butyric acid hydrazide)、KMUH(N-κ-maleimidoundecanoic acid hydrazide)、PDPH(3-(2-pyridyldithio)propionyl hydrazide)、PMPI(p-maleimidophenyl isocyanate)、SPB(succinimidyl-[4-(psoralen-8-yloxy)]-butyrate))等のリンカーを介して固定する方法が挙げられる。前記リンカーの選択及びその大きさは、前記被担持物質との結合の強さや前記被担持物質を前記水溶性担体に固定化したことによる立体障害等を考慮して適宜設定することができる。
【0033】
本発明のブロック化標識レクチンの製造方法においては、前記水溶性担体に前記標識物質及びレンズマメレクチンを一度に固定しても、これらを別々に順次固定してもよいが、製造のしやすさ、並びに、標識物質及びレンズマメレクチン量の制御しやすさの観点からは、前記水溶性担体にいずれか一方を固定してから他方を固定することが好ましい。
【0034】
かかる製造方法としては、特に制限されず、例えば、下記の実施例に記載のように、前記標識物質が酵素である場合、先ず、第1の水溶性高分子を過ヨウ素酸ナトリウムのような酸化剤で酸化してアルデヒド基を付与し、ヒドラジン塩酸塩と反応させた後、これをジメチルアミンボラン(DMAB)等の還元剤と反応させてヒドラジン化し、一方、前記酵素も過ヨウ素酸ナトリウムのような酸化剤で酸化してその糖鎖にアルデヒド基を付与させる。次いで、上記で付与したヒドラジン残基とアルデヒド基とを反応させてヒドラゾン結合させ、得られた第1の水溶性高分子-酵素結合体を、SM(PEG)4のようなリンカーで処理し、一方、レンズマメレクチンをチオール化試薬でチオール化してチオール基を付与させる。最後に、これらを共有結合させることにより、第1の水溶性高分子(水溶性担体)-酵素-レンズマメレクチンの三者を共有結合させることができる。この方法によれば、2分子以上の第1の水溶性高分子が酵素を介して結合したものに、レンズマメレクチンが結合したものが得られる。これらの反応に供する第1の水溶性高分子、標識物質、レクチンの比率は、上記のブロック化標識レクチンにおける各含有量の好ましい範囲を達成するように適宜選択することができる。
【0035】
<AFP-L3測定方法>
本発明のAFP-L3測定方法は、上記本発明のブロック化標識レクチンと、前記試料と、を接触させる測定工程を含む。本発明において、「測定」には、AFP-L3の存在の有無の確認をする検出の他、AFP-L3の量の定量又は半定量が含まれる。
【0036】
本発明において、AFP-L3の測定は、標識物質によって生じるシグナルを検出し、必要に応じてこれを定量することによって行われる。前記「シグナル」には、呈色(発色)、反射光、発光、蛍光、放射性同位体による放射線等が含まれ、肉眼で確認できるものの他、シグナルの種類に応じた測定方法・装置によって確認できるものも含まれる。本発明のAFP-L3測定方法によれば、測定感度が高く、標識物質によって生じるシグナルの強度が十分に強い。そのため、汎用の免疫学的測定方法のために市販されている自動免疫測定装置をそのまま用いて実施することができる。
【0037】
本発明のAFP-L3測定方法においては、前記試料として、特に血清の場合、精製処理を施したものを前記測定工程に供することが好ましい。すなわち、本発明のAFP-L3測定方法としては、精製処理と、前記測定工程と、を含むことが好ましい。前記精製処理としては、特に制限されないが、好ましくは、以下の精製処理が挙げられる。
【0038】
[精製処理]
本発明のAFP-L3測定方法においては、AFP-L3をレンズマメレクチンを用いて測定する前に、前記試料に対して、下記の精製処理:
非水溶性担体及び前記非水溶性担体に固定された分子を備え、かつ、前記分子がAFP-L3を捕捉可能な分子である捕捉担体と、前記試料と、を接触させ、AFP-L3を前記捕捉担体に捕捉させる捕捉工程と、
前記捕捉担体に結合していない夾雑物を除去する洗浄工程と、
前記捕捉担体からAFP-L3を遊離させて調製試料を得る遊離工程と、
を含む処理を施すことが好ましい。
【0039】
〔捕捉担体(AFP-L3捕捉分子固定化担体)〕
本発明において、「捕捉担体」とは、非水溶性担体と前記非水溶性担体に固定された分子とを備える複合体であって、前記分子がAFP-L3を捕捉可能な分子であり、前記非水溶性担体と前記分子とが直接的又は間接的に結合した結合体である。
【0040】
(AFP-L3捕捉分子)
本発明において、「AFP-L3を捕捉可能な分子」とは、AFP-L3と結合可能であり、該AFP-L3を対象物質として捕捉可能な分子(以下、場合により「AFP-L3捕捉分子」という)である。前記AFP-L3捕捉分子としては、AFP-L3への結合能を有する限り特に制限はなく、抗体、結合タンパク質(プロテインA、プロテインG、プロテインL等)、レセプタータンパク質、核酸等が挙げられる。前記抗体としては、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。また、本発明において、「抗体」には、完全な抗体の他、抗体断片(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、単鎖抗体、ダイアボディー等)や抗体の可変領域を結合させた低分子化抗体も含まれる。なお、精製工程においては、特に対象物質以外の糖含有成分を洗浄除去することが望ましいため、前記AFP-L3捕捉分子からは、糖鎖結合性を有するレクチン(レンズマメレクチン)は除くことが好ましい。
【0041】
また、本発明に係る捕捉担体において、精製処理に用いる前記AFP-L3捕捉分子としては、レンズマメレクチンが認識して結合する糖鎖部分のみに特異的に結合する分子(例えば、レンズマメレクチンと同じ部位を認識して結合可能な抗体)であっても、AFP-L3のうち、前記糖鎖部分以外の部分(例えば、AFP-L3のタンパク質(AFP)部分)又は前記糖鎖部分をその一部として含む部分を認識して結合可能な分子であってもよいが、AFP-L3のうち、前記糖鎖部分以外の部分を認識して結合可能な分子であることが好ましく、抗AFP抗体であることがさらに好ましい。そのため、前記AFP-L3捕捉分子としては、AFP-L3に加えて、AFP-L3からレクチンが認識して結合する糖鎖部分を除いた物質(例えば、AFP、AFP-L1等)をも捕捉可能な分子でありうる。
【0042】
前記AFP-L3捕捉分子は、従来公知の産生方法を適宜採用、改良することによって産生することができ、また、一般に流通されているものを適宜用いてもよく、例えば、抗AFPモノクローナル抗体(富士レビオ社製)等を適宜用いることができる。
【0043】
(非水溶性担体)
前記捕捉担体に含まれる非水溶性担体は、主に前記AFP-L3捕捉分子を担持し、固相化する担体として機能するものであり、非水溶性の物質である。本発明において、「非水溶性の物質」とは、常温常圧下において水に不溶(水に対する溶解度が0.001g/mL以下、好ましくは0.0001g/mL以下、以下同様)である物質を示す。
【0044】
このような非水溶性担体の材質としては、一般的に免疫学的測定に用いられているものを用いることができ、特に制限はされず、例えば、高分子ポリマー(ポリスチレン、(メタ)アクリル酸エステル、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ナイロン等)、ゼラチン、セルロース、ニトロセルロース、ガラス、ラテックス、シリカ、金属(金、白金等)、及び金属化合物(酸化鉄、酸化コバルト、ニッケルフェライト等)からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。また、前記非水溶性担体の材質としては、これらの複合材であってもよく、例えば、前記高分子ポリマー、ゼラチン、セルロース、及びラテックスからなる群から少なくとも1種の有機高分子と、酸化鉄(スピネルフェライト等)、酸化コバルト、及びニッケルフェライトからなる群から少なくとも1種の金属化合物と、からなる有機無機複合材であってもよい。さらに、前記非水溶性担体としては、カルボキシ基、エポキシ基、トシル基、アミノ基、ヒドロキシ基、イソチオシアネート基、イソシアネート基、アジド基、アルデヒド基、カーボネート基、アリル基、アミノオキシ基、マレイミド基、チオール基等の活性基で表面修飾されたものであってもよい。
【0045】
また、本発明において、前記非水溶性担体の形状としても特に制限はされず、例えば、プレート、繊維、膜、粒子等のいずれであってもよいが、反応効率の観点からは、粒子であることが好ましく、自動化・短時間化の観点からは、磁性粒子であることがより好ましい。このような非水溶性担体としては、従来公知のものを適宜用いることができ、市販のものを適宜用いることもできる。
【0046】
(捕捉担体の構成及び製造方法)
前記捕捉担体において、前記AFP-L3捕捉分子の含有量としては特に制限されず、該AFP-L3捕捉分子とAFP-L3との結合のしやすさ等に応じて適宜調整することができるが、例えば、前記非水溶性担体(好ましくは粒子)の質量(非水溶性担体が2種以上の組み合わせである場合にはそれらの合計)100質量部に対するAFP-L3捕捉分子の質量(AFP-L3捕捉分子が2種以上の組み合わせである場合にはそれらの合計)が、0.1~10質量部であることが好ましく、1~5質量部であることがより好ましい。
【0047】
前記捕捉担体は、前記非水溶性担体に前記AFP-L3捕捉分子を固定することによって製造することができる。かかる製造方法としては、適宜従来公知の方法又はそれに準じた方法を採用することができ、前記非水溶性担体に前記AFP-L3捕捉分子を直接固定してもよく、間接的に固定してもよい。直接固定する場合には、例えば、前記非水溶性担体及び/又は前記AFP-L3捕捉分子として、カルボキシ基、エポキシ基、トシル基、アミノ基、ヒドロキシ基、イソチオシアネート基、イソシアネート基、アジド基、アルデヒド基、カーボネート基、アリル基、アミノオキシ基、マレイミド基、チオール基等の活性基を有するものを用い、又は必要に応じて前記活性基を付与して、これらを結合させることにより、前記AFP-L3捕捉分子を前記非水溶性担体に直接固定することができる。間接的に固定する場合には、例えば、前記AFP-L3捕捉分子に結合するリンカーを前記非水溶性担体に固定し、該リンカーに前記AFP-L3捕捉分子を結合させることにより、前記AFP-L3捕捉分子を前記非水溶性担体に間接的に固定することができる。前記リンカーとしては、特に制限されず、例えば、AFP-L3捕捉分子に結合可能な二次抗体、プロテインG、プロテインA、光分解可能な光切断型リンカー、前記活性基を有するリンカー分子(例えば、ヒドラジン塩、ヒドラジド、AMAS(N-α-maleimidoacet-oxysuccinimide ester)、BMPS(N-β-maleimidopropyl-oxysuccinimide ester)、GMBS(N-γ-maleimidobutyryl-oxysuccinimide ester)、MBS(m-maleimidobenzoyl-N-hydroxysuccinimide ester)、SMCC(succinimidyl 4-(N-maleimidomethyl)cyclohexane-1-carboxylate)等)、EMCS(N-ε-malemidocaproyl-oxysuccinimide ester)、SMPB(succinimidyl 4-(p-maleimidophenyl)butyrate)、SMPH(Succinimidyl 6-((beta-maleimidopropionamido)hexanoate))、LC-SMCC(succinimidyl 4-(N-maleimidomethyl)cyclohexane-1-carboxy-(6-amidocaproate))、Sulfo-KMUS(N-κ-maleimidoundecanoyl-oxysulfosuccinimide ester)、SIA(succinimidyl iodoacetate)、SBAP(succinimidyl 3-(bromoacetamido)propionate)、SIAB(succinimidyl (4-iodoacetyl)aminobenzoate)、Sulfo-SANPAH(sulfosuccinimidyl 6-(4’-azido-2’-nitrophenylamino)hexanoate、SDA(NHS-Diazirine) (succinimidyl 4,4’-azipentanoate)、Sulfo-SDAD(Sulfo-NHS-SS-Diazirine) (sulfosuccinimidyl 2-((4,4’-azipentanamido)ethyl)-1,3’-dithiopropionate)、EDC(1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide hydrochloride)、NHS(N-hydroxysuccinimide)、BMPH(N-β-maleimidopropionic acid hydrazide)、EMCH(N-ε-maleimidocaproic acid hydrazide)、MPBH(4-(4-N-maleimidophenyl)butyric acid hydrazide)、KMUH(N-κ-maleimidoundecanoic acid hydrazide)、PDPH(3-(2-pyridyldithio)propionyl hydrazide)、PMPI(p-maleimidophenyl isocyanate)、SPB(succinimidyl-[4-(psoralen-8-yloxy)]-butyrate))等が挙げられる。また、前記AFP-L3捕捉分子に何らかの修飾を行い、その修飾部分を捕捉する物質を前記非水溶性担体に固定化して、前記非水溶性担体上にAFP-L3捕捉分子を固定してもよい。例えば、前記修飾部分の代表例としてはビオチンが、その修飾部分を捕捉する物質の代表例としてはストレプトアビジンが、それぞれ挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの反応に供する非水溶性担体及びAFP-L3捕捉分子の比率は、上記の捕捉担体における比率の好ましい範囲を達成するように適宜選択することができる。また、このような捕捉担体としては、例えば、抗AFP抗体結合粒子(富士レビオ社製)等の市販のものを適宜用いてもよい。
【0048】
〔捕捉工程〕
前記捕捉工程においては、前記捕捉担体と前記試料とを接触させ、AFP-L3と前記AFP-L3捕捉分子との結合を介して前記AFP-L3を前記捕捉担体に捕捉させる。前記捕捉担体と前記試料とを接触させる方法としては、特に制限されず、適宜従来公知の方法又はそれに準じた方法を採用することができ、例えば、前記非水溶性担体がプレートで前記捕捉担体がAFP-L3捕捉分子固定化プレートである場合にはこれに前記試料を注入する方法や、前記非水溶性担体が粒子で前記捕捉担体がAFP-L3捕捉分子固定化粒子である場合には前記試料中に前記AFP-L3捕捉分子固定化粒子を添加する方法が挙げられる。
【0049】
前記試料としては、試料希釈液で希釈して用いてもよく、また、前記捕捉担体が前記AFP-L3捕捉分子固定化粒子である場合には、粒子懸濁媒(粒子液)に懸濁して用いてもよく、さらに、前記捕捉担体と前記試料との反応系(例えば、抗原抗体反応系)には、他の反応用バッファーを適宜添加してもよい。これらの試料希釈液、粒子懸濁媒、反応用バッファーとしては、特に制限されないが、例えば、それぞれ独立に、公知の緩衝液(ナトリウムリン酸バッファー、MES、Tris、CFB、MOPS、PIPES、HEPES、トリシンバッファー、ビシンバッファー、グリシンバッファー等)が挙げられ、また、前記粒子懸濁媒及び反応用バッファーとしては、それぞれ独立に、BSA等の安定化蛋白や血清等が添加されたものであってもよい。
【0050】
前記捕捉工程における前記捕捉担体と前記試料との反応において、前記捕捉担体及び前記試料を含む反応液中の、捕捉担体の含有量(終濃度)(捕捉担体が2種以上の組み合わせである場合にはそれらの合計、以下同じ)としては、特に制限されず、試料の種類、濃度、精製過程の目的等に応じて適宜調整されるものであるため特に制限されないが、短時間に効率よく前記AFP-L3捕捉分子が捕捉する物質を回収する観点から、例えば、0.01~1.5質量%であることが好ましく、0.05~1質量%であることがより好ましく、0.1~0.5質量%であることがさらに好ましい。
【0051】
また、前記捕捉工程の条件としても特に制限されず、適宜調整することができ、例えば、室温~45℃、好ましくは20~37℃、pH6~9程度、好ましくはpH7~8で、5秒~10分程度、好ましくは30秒~5分程度行うことができるが、これらの条件に限定されるものではない。
【0052】
〔洗浄工程〕
前記洗浄工程においては、前記捕捉担体に結合した物質(試料中にAFP-L3が含まれる場合には少なくともこれを含む)と、それ以外の前記捕捉担体に結合していない(捕捉されていない)夾雑物とを分離し、前記夾雑物を除去する。前記夾雑物を除去する方法としては、特に制限されず、適宜従来公知の方法又はそれに準じた方法を採用することができ、例えば、前記非水溶性担体がプレートで前記捕捉担体がAFP-L3捕捉分子固定化プレートである場合には前記捕捉工程の後にプレート上から液相(上清)を除去する方法や、前記非水溶性担体が粒子で前記捕捉担体がAFP-L3捕捉分子固定化粒子である場合には前記捕捉工程の後に前記粒子を遠心や集磁によって回収して液相(上清)を除去する方法が挙げられる。また、前記洗浄工程においては、次いで、必要に応じて、洗浄液の注入及び除去を繰り返してもよい。前記洗浄液としては、例えば、中性(好ましくは、pH6~9)の公知の緩衝液(ナトリウムリン酸バッファー、MES、Tris、CFB、、MOPS、PIPES、HEPES、トリシンバッファー、ビシンバッファー、グリシンバッファー等)が挙げられ、また、BSA等の安定化蛋白や界面活性剤等が添加されたものであってもよい。
【0053】
〔遊離工程〕
前記遊離工程においては、前記捕捉担体に結合したAFP-L3を、前記捕捉担体から遊離させ、測定工程に供するための試料として、再遊離したAFP-L3を含有する調製試料を得る。前記捕捉担体からAFP-L3を遊離させる方法としては、特に制限されず、例えば、反応系を酸性又はアルカリ性にする方法;前記リンカーとして光切断型リンカーを用いた場合には、光照射によってこれを切断する方法;界面活性剤を用いた方法;タンパク質変性剤を用いた方法;熱を加える方法;上記の方法を複合的に用いた方法等が挙げられる。
【0054】
例えば、反応系を酸性にする場合には、好ましくはpH4以下(より好ましくは、pH3~1)の溶出液を前記AFP-L3が結合した捕捉担体に接触させる方法が挙げられ、アルカリ性にする場合には、好ましくはpH9以上(より好ましくは、pH10~14)の溶出液を接触させる方法が挙げられる。前記溶出液としては、酸性化剤(例えば、塩酸、硫酸、酢酸、クエン酸)又はアルカリ化剤(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム)等を含有するものが挙げられる。また、これらの場合には、次いで、中和剤(例えば、塩酸、硫酸、酢酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、アルカリ性若しくは酸性に調製した公知の緩衝液)等を前記溶出液に添加して反応系を中和することが好ましい。
【0055】
その他の遊離工程の条件としては特に制限されず、適宜その方法によって調整することができ、例えば、室温~37℃、好ましくは20~37℃で、5秒~10分程度、好ましくは30秒~5分程度行うことができるが、これらの条件に限定されるものではない。
【0056】
[測定工程]
本発明のAFP-L3測定の測定方法の原理としては、免疫学的測定方法のサンドイッチ法、競合法、及び免疫比濁法と同様の原理をいずれも採用することができる。本発明のAFP-L3測定方法において、前記試料中のAFP-L3を定量する場合には、一般的に、ELISA、CLEIA(化学発光酵素免疫測定法)等の、マイクロプレートや粒子を担体とする方法を採用し、前記標識物質の種類に応じた検出・定量を行い、標準試料による測定値との比較をすることにより行うことができる。一方、より簡便かつ迅速にAFP-L3を検出する観点からは、サンドイッチ法として、例えば、イムノクロマト等の方法を採用することができる。
【0057】
本発明のAFP-L3測定方法としては、より感度及び特異度の高い検出システムを構築可能な傾向にある観点からは、AFP-L3を捕捉可能な抗体を用い、これとブロック化標識レクチンとのいずれかを捕捉体、他方を検出体(標識体)としてAFP-L3を測定するサンドイッチ法が好ましい。前記サンドイッチ法としては、2ステップ法であるフォワードサンドイッチ法(捕捉体と試料中のAFP-L3、捕捉体に結合したAFP-L3と検出体との反応を逐次的に行う)、リバースサンドイッチ法(予め検出体と試料中のAFP-L3とを反応させ、生成した複合体を捕捉体と反応させる)、及び1ステップ法(捕捉体、試料中のAFP-L3、検出体の反応を同時に1ステップで行う)を挙げることができるが、これらのいずれも採用可能である。
【0058】
より好ましくは、例えば、前記フォワードサンドイッチ法を以下のように行うことができる。先ず、マイクロプレートや磁性粒子等の非水溶性担体に、AFP-L3を捕捉可能な抗体を捕捉体(捕捉抗体)として固相化する。このとき、必要に応じて、前記捕捉抗体や非水溶性担体への非特異的な吸着を防ぐことを目的として、適当なブロッキング剤(例えば、牛血清アルブミンやゼラチン等)で前記非水溶性担体のブロッキングを行う。次いで、前記捕捉抗体が固相化された非水溶性担体と試料中のAFP-L3とを接触させ、結合させる(一次反応工程)。この後、必要に応じて、捕捉抗体に結合しなかったAFP-L3や夾雑物を適当な洗浄液(例えば、緩衝液等)等で除去する。次いで、本発明のブロック化標識レクチンを検出体として、前記捕捉抗体に捕捉されたAFP-L3に接触させ、結合させる(二次反応工程)。この反応により、捕捉抗体-AFP-L3-ブロック化標識レクチンを含む免疫複合体が前記非水溶性担体上に形成される。結合しなかった検出体(ブロック化標識レクチン)を洗浄液で洗浄した後、所定の方法で検出体の標識物質を測定する。例えば、前記ブロック化標識レクチンに含まれる標識物質が酵素である場合には、酵素に対応する発色基質や発光基質を添加し、酵素と基質とを反応させることによってシグナルを測定する。
【0059】
上記サンドイッチ法において用いる「AFP-L3を捕捉可能な抗体」としては、上記のAFP-L3捕捉分子において挙げた抗体と同様のものが挙げられる。かかる測定工程に用いるAFP-L3を捕捉可能な抗体としては、測定精度をより高める観点から、レンズマメレクチンが認識して結合する糖鎖部分のみに特異的に結合する抗体(つまり、レンズマメレクチンと同じ部位を認識若しくは物理的に被覆して結合する抗体)又は前記糖鎖部分をその一部として含む部分を認識して結合する抗体ではなく、AFP-L3のうち、前記糖鎖部分以外の部分(例えば、AFP-L3のタンパク質(AFP)部分)を認識して結合する抗体であることが好ましい。また、レンズマメレクチンが認識する糖鎖構造を持たない抗体、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2断片等であることも好ましい。さらに、測定工程に用いるAFP-L3を捕捉可能な抗体としては、完全な抗体を使用してもよいが、完全な抗体は糖鎖構造を有するため、レンズマメレクチンとの非特異的反応を生じ、バックグラウンドを上昇させる可能性を否定できない。そのため、糖鎖構造を有しない抗原結合性断片とするか、抗体上の糖鎖を予め破壊しておくことが、より好ましい。
【0060】
また、上記サンドイッチ法において用いる「非水溶性担体」としては、前記抗体を固定させて担持でき、常温常圧において水に不溶である限り特に制限はなく、上記の精製処理で捕捉担体に含まれる非水溶性担体として挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0061】
本発明のAFP-L3測定方法において、前記接触の方法としては、適宜従来公知の方法又はそれに準じた方法を採用することができ、例えば、前記非水溶性担体がプレートである場合にはこれに前記試料及びブロック化標識レクチンを注入する方法や、前記非水溶性担体が粒子である場合にはその粒子液と前記試料とブロック化標識レクチンの溶液とを一度に又は順次に混合する方法が挙げられる。
【0062】
本発明のAFP-L3測定方法において、前記測定工程、つまり、ブロック化標識レクチンとAFP-L3との反応において、前記ブロック化標識レクチン及びAFP-L3を含む反応液中の、ブロック化標識レクチンの含有量(終濃度)(ブロック化標識レクチンが2種以上の組み合わせである場合にはそれらの合計、以下同じ)としては、特に制限されず、試料の種類、濃度等に応じて適宜調整されるものであるため特に制限されないが、過剰に用いると高いバックグラウンドシグナルを生じる可能性がある観点から、例えば、0.001~10μg/mLであることが好ましく、0.01~5μg/mLであることがより好ましく、0.1~1μg/mLであることがさらに好ましい。
【0063】
本発明のAFP-L3測定方法において、前記測定工程の他の条件としても、特に制限されず、適宜調整することができ、例えば、室温~37℃、好ましくは20~37℃、pH5.0~7.0、好ましくは5.5~6.5で、3分~120分程度、好ましくは5分~10分程度行うことができるが、これらの条件に限定されるものではない。
【0064】
〔第2の水溶性高分子〕
本発明のAFP-L3測定方法において、前記測定工程、すなわち、前記ブロック化標識レクチンとAFP-L3との反応は、水溶性高分子の存在下で行うこと、つまり、該水溶性高分子と前記ブロック化標識レクチンと前記試料(AFP-L3)とが共存する条件下で行うことが好ましい。
【0065】
前記ブロック化標識レクチンと共存させることが好ましい水溶性高分子は、前記水溶性担体を構成する第1の水溶性高分子とは異なり、前記標識物質及びレンズマメレクチンを担持していない遊離の水溶性高分子(以下、「第2の水溶性高分子」という)である。本発明のAFP-L3の測定方法では、前記測定工程において第2の水溶性高分子を共存させることにより、測定感度をさらに向上させることが可能となる。
【0066】
かかる第2の水溶性高分子としては、第1の水溶性高分子として挙げたものと同様のものが挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。また、第1の水溶性高分子と同種の高分子であってよい。これらの中でも、第2の水溶性高分子としては、測定感度がより向上する傾向にある観点からは、デキストラン及びアミノデキストラン、並びに、これらの修飾体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、デキストランであることがより好ましい。
【0067】
また、第2の水溶性高分子の重量平均分子量としては、測定感度がより向上する傾向にある観点からは、500,000~5,000,000であることが好ましく、1,000,000~3,000,000であることがより好ましく、1,500,000~2,500,000であることがさらに好ましい。
【0068】
前記測定工程において第2の水溶性高分子を共存させる場合、第2の水溶性高分子は、前記試料又は試料希釈液に予め添加しておいてもよく、ブロック化標識レクチンの溶液に予め添加しておいてもよく、これらと第2の水溶性高分子の溶液とを混合してもよい。このとき、第2の水溶性高分子の量としては、特に限定されないが、前記試料、ブロック化標識レクチン、及び第2の水溶性高分子を含む反応液中における第2の水溶性高分子の含有量(第2の水溶性高分子が2種以上の組み合わせである場合にはそれらの合計)が、0.01~10w/v%であることが好ましく、0.5~3w/v%であることがより好ましい。
【0069】
〔標識化レクチン〕
本発明のAFP-L3測定方法においては、前記測定工程が、標識物質及びレンズマメレクチンを備える標識化レクチンと、前記試料と、を接触させる工程をさらに含むこと、つまり、該標識化レクチンと前記ブロック化標識レクチンと前記試料(AFP-L3)とが共存する条件下で、前記ブロック化標識レクチンとAFP-L3とを反応させると共に、前記標識化レクチンとAFP-L3とを反応させることが好ましい。本発明のAFP-L3の測定方法では、前記測定工程において標識化レクチンを共存させることにより、測定感度をさらに向上させることが可能となる。これは、反応系に標識されたレンズマメレクチンが余剰に存在することによって、AFP-L3とブロック化標識レクチンとの反応が結合方向により促進されるため、また、高分子体であるブロック化標識レクチンが立体障害によって結合できないAFP-L3に対してでも低分子である標識化レクチンでは結合が可能となるため、であると本発明者らは推察する。
【0070】
本発明において、前記ブロック化標識レクチンと共存させることが好ましい「標識化レクチン」とは、標識物質及びレンズマメレクチンを備える複合体であって、標識物質とレンズマメレクチンとが直接的又は間接的に結合した結合体である。前記標識化レクチンは、前記水溶性担体を備えていない点で本発明のブロック化標識レクチンとは異なる。本発明のブロック化標識レクチンに含まれるレンズマメレクチンとしては、上述のとおりである。
【0071】
前記標識化レクチンに含まれる標識物質としては、本発明のブロック化標識レクチンに含まれる標識物質として挙げたものと同様のものが挙げられ、これらのうちの1種を単独であっても2種以上の組み合わせであってもよい。また、ブロック化標識レクチンに含まれる標識物質と同種の物質であってよい。
【0072】
前記標識化レクチンにおいて、前記標識物質とレンズマメレクチンとの含有量比としては特に制限されず、測定機構等に応じて適宜調整することができるが、例えば、前記標識物質が酵素である場合、標識物質とレンズマメレクチンとの含有量比(標識物質の質量(標識物質が2種以上の組み合わせである場合にはそれらの合計):レンズマメレクチンの質量)が、10:1~1:10であることが好ましく、5:1~1:5であることがより好ましい。
【0073】
前記標識化レクチンは、前記標識物質とレンズマメレクチンとを結合することによって製造することができる。かかる製造方法としては、適宜従来公知の方法又はそれに準じた方法を採用することができ、前記標識物質とレンズマメレクチンとを直接固定してもよく、間接的に固定してもよい。このような方法としては、本発明のブロック化標識レクチンの製造方法として挙げた方法と同様の方法が挙げられる。これらの反応に供する標識物質及びレンズマメレクチンの比率は、上記の好ましい含有量比を達成するように適宜選択することができる。
【0074】
前記測定工程において前記標識化レクチンを共存させる場合、標識化レクチンは、前記試料又は試料希釈液に予め添加しておいてもよく、ブロック化標識レクチンの溶液に予め添加しておいてもよく、これらと標識化レクチンの溶液とを混合してもよい。このとき、標識化レクチンの量としては、特に限定されないが、前記試料、ブロック化標識レクチン、及び標識化レクチンを含む反応液中において、ブロック化標識レクチンの含有量100質量部に対する標識化レクチンの含有量(標識化レクチンが2種以上の組み合わせである場合にはそれらの合計)が、1~1,000質量部であることが好ましく、10~500質量部であることがより好ましい。
【0075】
〔遊離レンズマメレクチン〕
本発明のAFP-L3測定方法において、前記測定工程、すなわち、前記ブロック化標識レクチンとAFP-L3との反応は、遊離レンズマメレクチンの存在下で行うこと、つまり、該遊離レンズマメレクチンと前記ブロック化標識レクチンと前記試料(AFP-L3)とが共存する条件下で行うことが好ましい。
【0076】
前記ブロック化標識レクチンと共存させることが好ましい遊離レンズマメレクチンは、前記ブロック化標識レクチンに含まれるレンズマメレクチン及び前記標識化レクチンに含まれるレンズマメレクチンとは異なり、前記水溶性担体にも前記標識物質にも固定されていない遊離のレンズマメレクチン(以下、「遊離レンズマメレクチン」という)である。かかる遊離レンズマメレクチンとしては、上記でレンズマメレクチンとして挙げたものと同様である。
【0077】
レンズマメレクチンを用いるAFP-L3の測定方法では、レンズマメレクチンが目的のAFP-L3以外の物質(例えば、対象外のタンパク質等に結合したレクチン認識糖鎖)にも非特異的に結合するため、バックグラウンドが高くなる傾向にあるが、本発明のAFP-L3の測定方法では、前記測定工程において前記遊離レンズマメレクチンを共存させることにより、バックグラウンドの上昇をより抑制することが可能となる。この理由の一つとしては、前記遊離レンズマメレクチンによる適度なマスキング効果が挙げられるものと本発明者らは推察する。また、前記遊離レンズマメレクチンを共存させることにより、前記ブロック化標識レクチンの反応性が向上する場合がある。この理由としては、多価の前記遊離レンズマメレクチンが前記ブロック化標識レクチンの持つ糖鎖構造に一価の結合をする場合には前記ブロック化酵素標識レクチンの見かけの価数が向上するため、或いは、前記遊離レンズマメレクチンの添加によって局所のレンズマメレクチン濃度が向上することにより前記ブロック化標識レクチンとAFP-L3との間の結合と乖離との平行反応が結合へ傾くためであると本発明者らは推察する。
【0078】
前記測定工程において前記ブロック化標識レクチンと前記遊離レンズマメレクチンとを共存させる場合、該遊離レンズマメレクチンは、前記試料又は試料希釈液に予め添加しておいてもよく、ブロック化標識レクチンの溶液に予め添加しておいてもよく、これらと遊離レンズマメレクチンの溶液とを混合してもよい。このとき、前記遊離レンズマメレクチンの量としては、特に限定されないが、前記試料、ブロック化標識レクチン(又はブロック化標識レクチン及び標識化レクチン)、及び前記遊離レンズマメレクチンを含む反応液中において、ブロック化標識レクチンの含有量(又はブロック化標識レクチン及び標識化レクチンの合計含有量)100質量部に対する遊離レンズマメレクチンの含有量が、1~10,000質量部であることが好ましく、10~5,000質量部であることがより好ましい。
【0079】
本発明のAFP-L3測定方法においては、前記試料として、試料希釈液で希釈したものを用いても、前記精製処理後の調製試料を用いてもよく、また、前記サンドイッチ法における非水溶性担体が粒子である場合には、当該粒子の粒子懸濁媒に懸濁して用いてもよい。さらに、本発明のAFP-L3測定方法において、前記サンドイッチ法における前記捕捉体及び検出体と前記試料との反応系には、他の反応用バッファーを適宜添加してもよい。これらの試料希釈液、粒子懸濁媒、反応用バッファーとしては、上記の精製処理で挙げたものと同様のものが挙げられ、特に制限されず、それぞれ適宜選択することができる。
【0080】
<AFP-L3測定キット>
本発明のAFP-L3測定キットは、構成試薬として、少なくとも、本発明のブロック化標識レクチンを備える。また、第2の水溶性高分子、前記標識化レクチン、前記遊離レンズマメレクチン、及び前記捕捉担体からなる群から選択される少なくとも1種をさらに備えることが好ましい。これらは、それぞれ独立に、固体(粉末)状であっても緩衝液に溶解された液体状であってもよい。液体状である場合、各溶液(標品)におけるブロック化標識レクチン、前記標識化レクチン、及び前記捕捉担体の濃度は、特に限定されないが、過剰に添加すると場合により非特異的なシグナルが増加する傾向にある観点から、それぞれ独立に、0.01~10μg/mLであることが好ましく、0.1~5.0μg/mLであることがより好ましく、0.5~3.0μg/mLであることがさらに好ましい。また、第2の水溶性高分子の濃度は、0.01~10.0w/v%であることが好ましく、0.1~5.0w/v%であることがより好ましく、0.5~3.0w/v%であることがさらに好ましい。さらに、遊離レンズマメレクチンの濃度は、1μg/mL以上であることが好ましく、10~500μg/mLであることがより好ましく、50~250μg/mLであることがさらに好ましい。
【0081】
本発明のAFP-L3測定キットとしては、ELISA、CLEIA、イムノクロマト等の通常の免疫学的測定で備えるべき構成をさらに備えていてもよい。例えば、上記のサンドイッチ法を測定方法の原理とする場合には、捕捉体を固相化した(又はするための)磁性ビーズを含む磁性粒子液又は該捕捉体を固相化した(又はするための)プレート、標準検体試薬(各濃度)、対照試薬、前記試料希釈液、前記粒子懸濁媒、前記反応用バッファー、前記洗浄液、及び希釈用カートリッジからなる群から選択される少なくとも1種をさらに備えていてもよい。
【0082】
また、前記標識物質が酵素である場合には、標識物質の検出・定量に必要な基質や反応停止液等をさらに含んでいてもよい。また、本発明のAFP-L3測定キットは、さらに、必要に応じて、試料の前処理を行うための前処理液を備えていてもよい。また、前記サンドイッチ法としてイムノクロマトを採用する場合には、前記ブロック化標識レクチンを担持したゾーンを含むデバイスをさらに含んでいてもよい。前記デバイスとしては、展開液パッドや吸収パッド等、イムノクロマトに適したその他の構成要素を備えることができる。さらに、本発明のAFP-L3測定キットには、当該キットの使用説明書をさらに含んでいてもよい。
【実施例】
【0083】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例において、「%」の表示は、特に記載のない場合、重量/容量(w/v:g/mL)パーセントを示す。
【0084】
(実施例1)
ブロック化標識レクチン及び標識化レクチンを用いたアルファフェトプロテインL3分画(AFP-L3)の測定
(1)ヒドラジン化デキストランの調製
4.8mLの0.1Mリン酸バッファー(pH7.0)に分子量250Kのデキストラン(CarboMer社製)を240.0mg添加し、25℃の暗所で30分間攪拌して、溶解させた。次いで、150mM NaIO4を2.664mL、イオン交換水を0.536mL添加して、25℃の暗所で30分間攪拌した。PD-10カラム(GE Healthcare社製、Sephadex G-25充填カラム)を用いて、0.1Mナトリウムリン酸バッファー(pH6.0)でバッファー交換を行い、20.0mLの溶液を得た。5.04gのNH2NH2・HClを添加し、25℃の暗所で2時間攪拌した。800mgのDMAB(ジメチルアミンボラン)を加え、さらに25℃の暗所で2時間攪拌した。RC50K(分子量5万の再生セルロース)透析膜を用いてイオン交換水4Lによる透析を暗所で3時間行った後、4℃で一晩静置した。0.1Mナトリウムリン酸バッファー(pH6.0)を用いたゲル濾過(Sephadex G-25)でバッファー交換を行い、85.0mLの溶液を得た。デキストランの濃度が1.0mg/mLとなるように調整し、ヒドラジン化デキストランの溶液を得た。
【0085】
(2)デキストラン-酵素結合体の調製
10mg/mLのアルカリフォスファターゼ(オリエンタル酵母社製、ALP-50)30.0mLについて、0.1Mナトリウムリン酸バッファー(pH6.0)を用いたゲル濾過(Sephadex G-25)でバッファー交換を行い、3.0mg/mLの溶液を90.6mL調製した。27mM NaIO4を45.3mL添加して、25℃の暗所で3分間攪拌した。0.1Mナトリウムリン酸バッファー(pH6.0)を用いたゲル濾過(Sephadex G-25)でバッファー交換を行い、0.5mg/mLの溶液を調製した。実施例1の(1)で調製した1.0mg/mLヒドラジン化デキストランをヒドラジド基(アミノ基)の濃度が25μMになるように添加し、25℃の暗所で16時間攪拌した。DMABを85mg添加し、25℃の暗所で2時間攪拌した。次いで、1.5M Trisバッファー(pH9.0)を10.1mL添加し、25℃の暗所で2時間攪拌した。Labscale TFF System(Merck Millipore社製)に限外濾過モジュール(ペリコンXL50、Merck Millipore社製)を取り付け15mLまで濃縮し、0.1Mナトリウムリン酸バッファー(pH7.0)を用いたゲル濾過(Superdex 200pg)を行い、3.0mg/mLのデキストラン-酵素結合体の溶液14mLを得た。
【0086】
(3)デキストラン-酵素結合体のマレイミド-PEG化
実施例1の(2)で調製したデキストラン-酵素結合体に0.1Mナトリウムリン酸バッファー(pH7.0)を加えて2mg/mLデキストラン-酵素結合体を750μL調製した。これにDMSO中に溶解した250mMのSM(PEG)4(Thermo Fisher Scientific社製、SM(PEG)4)を8.35μL添加、混合し、25℃の暗所で1時間転倒混和した。反応後、PD-10カラム(Sephadex G-25)を用いて20mM EDTA・2Na、0.5% CHAPSを含む0.1Mナトリウムリン酸バッファー(pH6.3)にバッファー交換を行った。バッファー交換後に遠心式フィルター(Merck社製、Amicon Ultra 50K)を用いてマレイミド-PEG化デキストラン-酵素結合体の濃縮を行い、最終濃度を2mg/mLに調製した。
【0087】
(4)レクチンのチオール化
5mgのレンズマメレクチン(LCA;J-ケミカル社製)を2.5mLの0.1Mナトリウムリン酸バッファー(pH7.0)中に溶解し、2mg/mL LCA溶液を得た。2.5mLのLCA溶液に100μLの0.5M EDTA・2Na(pH8.0)を添加して混和し、次いで75μLの10mg/mL 2-イミノチオラン塩酸塩溶液を添加し、25℃の暗所で1時間転倒混和した。反応後、PD-10カラム(Sephadex G-25)を用いて20mM EDTA・2Na、0.5% CHAPSを含む0.1Mナトリウムリン酸バッファー(pH6.3)にバッファー交換を行った。バッファー交換後のLCAは650μg/mLに調製した。
【0088】
(5)カップリング
実施例1の(4)で得たチオール化して650μg/mLに調製したLCA 2mLに対して、10μLの1M Glucoseを添加し、25℃の暗所で30分間転倒混和した。次いで、実施例1の(3)で得たマレイミド-PEG化デキストラン-酵素結合体の溶液(2mg/mL)を500μL添加し、25℃の暗所で1時間転倒混和し、LCAとデキストラン-酵素結合体とをカップリングさせた。反応後、25μLの200mM 3-Mercapto-1,2-propanediolを添加し、25℃の暗所で30分間転倒混和した。さらにその後、50μLの200mM 2-Iodoacetamideを添加し、25℃の暗所で30分間転倒混和した。反応後の溶液は遠心式フィルター(Merck社製、Amicon Ultra 50K)を用いて濃縮した後にφ0.22μmフィルターを通過させ、ゲル濾過クロマトグラフィー(カラム:Superose 6 Increase 10/300 GL、バッファー:0.1M MES、0.5M NaCl、1mM MgCl2、0.1mM ZnCl2、5mM Glucose、0.05% CHAPS、pH6.8)によって精製し、最終的に167.4μg/mLのブロック化標識レクチン1(デキストラン-酵素-LCA結合体)の溶液を2mL得た。
【0089】
(6)標識化レクチンの調製
5mgのレンズマメレクチン(LCA;J-ケミカル社製)を1mLの0.1Mナトリウムリン酸バッファー(pH7.0)中に溶解し、5mg/mL LCA溶液を得た。1mLのLCA溶液に41μLの10mg/mL Sulfo-EMCS(同仁化学研究所社製)を添加し、25℃の暗所で1時間転倒混和した。反応後、NAP-10カラム(GE Healthcare社製、Sephadex G-25充填カラム)を用いて0.5%CHAPSを含む0.1Mナトリウムリン酸バッファー(pH6.0)にバッファー交換を行い、回収したマレイミド化LCAを濃度2.5mg/mLに調製した。
【0090】
300μLの10mg/mLのアルカリフォスファターゼ(オリエンタル酵母社製、ALP-50)をNAP-5カラム(GE Healthcare社製、Sephadex G-25充填カラム)を用いて0.1Mナトリウムリン酸バッファー(pH7.0)でバッファー交換を行し、3.4mg/mL ALP溶液を0.8mL得た。次いで13.2μLの10mg/mL 2-イミノチオラン塩酸塩溶液を添加し、25℃の暗所で1時間転倒混和した。反応後、NAP-10カラム(Sephadex G-25)を用いて0.5% CHAPSを含む0.1Mナトリウムリン酸バッファー(pH6.0)にバッファー交換を行い、回収したチオール化ALPを濃度1.8mg/mLに調製した。
【0091】
1.07mLの2.5mg/mLマレイミド化LCAと0.83mLの1.8mg/mLチオール化ALPとを混合して25℃の暗所で20時間静置し、LCAとALPとをカップリングさせた。反応後、19μLの150mM 3-Mercapto-1,2-propanediolを添加し、25℃の暗所で1時間静置した。反応後の溶液は遠心式フィルター(Merck社製、Amicon Ultra 50K)を用いて濃縮した後にφ0.22μmフィルターを通過させ、ゲル濾過クロマトグラフィー(カラム:Superdex200 PG、バッファー:0.1M MES、0.15M NaCl、1mM MgCl2、1mM ZnCl2、0.3M Metyl-α-D-mannopyranoside、0.05% CHAPS、0.9% NaN3、pH6.8)によって精製し、最終的に543μg/mLの標識化レクチン1(ALP-LCA結合体)の溶液を1mL得た。
【0092】
(7)AFP-L3の測定
磁性粒子(富士レビオ社製)と抗AFPモノクローナル抗体F(ab’)2断片(富士レビオ社製)とを反応させて抗体断片を粒子上に固相化した。抗体断片を固相化した粒子を、粒子濃度が0.01%となるように粒子希釈液(50mM Tris、100mM KCl、0.5% BSA、pH7.2)で希釈して、抗AFP抗体F(ab’)2断片結合粒子液を調製した。
【0093】
試料として、がん変異型AFP抗原(Huh7細胞培養無血清上清、AFP-L3含有率93.3%、以下「L3型抗原」とも称する)をCarbo-Free Blocking Solution(CFB;VECTOR社製)で1.6、3.1、6.3、12.5、25、50、100、又は200ng/mLとなるように希釈し、各L3型抗原検体溶液を調製した。また、参考試料として、健常人型AFP抗原(LEE Biosolutions社製、AFP-L3含有率7.8%、以下「L1型抗原」とも称する)をCFBで200ng/mLとなるように希釈したL1型抗原検体溶液も調製した。
【0094】
実施例1の(5)で得られたブロック化標識レクチン1及び実施例1の(6)で得られた標識化レクチン1を、標識体希釈液(30mM MES、360mM NaCl、1.5%アルギニン、0.06%ヒドラジン塩酸塩、0.06mM ZnCl2、0.6mM MgCl2、30μg/mL Inactivated ALP、30μg/mL Mouse KLG、2.4% C14APS、0.15% Tween 20、1×CFB、1%Tergitol 15-s-7、0.0005% Antiform SI)でそれぞれ0.5μg/mLとなるように希釈し、ブロック化標識レクチン1液、及び標識化レクチン1液の各標識体液をそれぞれ調製した。各標識体液には、遊離のデキストラン2000K(Sigma社製)を、0、1.0、2.0、又は3.0%となるように添加した。
【0095】
前記のL1型抗原検体溶液、及びL3型抗原検体溶液について、ルミパルス(登録商標)L-2400(富士レビオ社製)を用いてAFP-L3の測定を行った。50μLの各検体溶液を上記の抗AFP抗体F(ab’)2断片結合粒子液50μLと混和し、37℃で8分間反応させた。次いで、磁性粒子を集磁し、ルミパルス(登録商標)洗浄液(富士レビオ社製)で5回洗浄した。次いで、上記の各標識体液をそれぞれ50μL添加し、37℃で8分間反応させた。次いで、磁性粒子を集磁し、5回洗浄した後、AMPPD(3-(2’-スピロアダマンタン)-4-メトキシ-4-(3’-ホスホリルオキシ)フェニル-1,2-ジオキセタン・2ナトリウム塩)を含むルミパルス(登録商標)基質液(富士レビオ社製)を50μL添加し、37℃で4分間反応させた。AMPPDが磁性粒子に結合したアルカリフォスファターゼの触媒作用により分解されることで放出される波長463nmに極大吸収を有する光の発光量を計測した。測定結果は、基質の発光強度(カウント)で出力した。各条件における測定結果を下記の表1に示す。なお、表示の結果は、二重測定の平均値からバッファーのみを測定したブランク値を減じた値を示したものである。
【0096】
【0097】
表1に示したように、ブロック化標識レクチン1及び標識化レクチン1ともに、L1型抗原にはほとんど結合せず、L3型抗原と結合することが確認された。特に、本発明のブロック化標識レクチン1を使用した場合(実施例1-1~1-4)に、標識化レクチン1を使用した場合(比較例1-1~1-4)よりも高いシグナルが得られ、より高感度での測定が可能であることが示唆された。さらに、各標識体液に遊離デキストランを添加した場合、標識化レクチン1と比して、ブロック化標識レクチン1使用時のシグナルが有意に高値化することが確認された。
【0098】
(実施例2)
遊離デキストラン及び遊離LCAを用いたAFP-L3測定
標識体希釈液(30mM MES、360mM NaCl、1.5%アルギニン、0.06mM ZnCl2、0.6mM MgCl2、2.4% C14APS、0.15% Tween 20、1×CFB、1% Tergitol 15-s-7、0.0005% Antiform SI)にさらに1.0%の遊離デキストランを添加したもの、50μg/mLの遊離LCAを添加したもの、1.0%の遊離デキストラン2000K及び50μg/mLの遊離LCAの両方を添加したものを用いて、実施例1の(5)で得られたブロック化標識レクチン1を0.5μg/mLとなるように希釈し、各条件の標識体液をそれぞれ調製した。また、試料として、下記の表2に記載の各濃度(2.0~1000ng/mL)のL3型抗原を含むCFBを検体溶液として調製した。
【0099】
上記の各検体溶液及び標識体液を用いたこと以外は実施例1の(7)と同様にして、AFP-L3の測定を行った。各条件におけるAFP-L3の測定結果(基質の発光強度(カウント))を下記の表2及び
図1に示す。なお、表示の結果は、二重測定の平均値からバッファーのみを測定したブランク値を減じた値を示したものである。
【0100】
【0101】
表2及び
図1に示したように、遊離デキストラン及び遊離LCAのいずれも添加しなかった場合(実施例2-1)と比較すると、遊離デキストランの添加(実施例2-2)によってL3型抗原の全濃度域においてシグナルの増強が確認された。また、遊離LCAの添加(実施例2-3)によってもほぼ同様の効果が見られた。さらに、これらを両方添加した場合(実施例2-4)には特に、低濃度のL3型抗原を検出するシグナルが増強された。また、バッファーのみを測定したブランク値を比較すると、遊離デキストランを添加した場合(実施例2-2)にはブランク測定時のシグナルが大きく上昇したが、遊離LCAを添加した場合(実施例2-3)にはその上昇が小さく、両者を共添加した場合(実施例2-4)には遊離デキストラン単独の場合と比較してブランク測定時のシグナルが低下した。これらのことより、遊離デキストラン及び遊離LCAが、AFP-L3のさらなる測定の高感度化に寄与し、かつ、互いの高感度化に寄与する効果を阻害することがないことが確認された。
【0102】
(実施例3)
複数のブロック化標識レクチン混合物を用いたAFP-L3の測定
(1)ブロック化標識レクチンの調製
デキストランとして、分子量500Kのデキストラン(Fluka社製)又は分子量70Kのデキストラン(TCI社製)を用いたこと以外は実施例1の(1)~(5)と同様にして、各ブロック化標識レクチンを調製した。分子量500Kのデキストランを用いたブロック化標識レクチンを「ブロック化標識レクチン2(500K)」と、分子量70Kのデキストランを用いたブロック化標識レクチンを「ブロック化標識レクチン3(70K)」と、それぞれ表記する。
【0103】
(2)AFP-L3の測定1
粒子希釈液の組成を、50mM Tris、150mM NaCl、2mM EDTA・2Na、0.5mg/mL Sodium Dextran Sulfate 5,000、30μg/mL Mouse KLG、1.0% BSA、0.005% Antiform SI、0.1% ProClin 300、pH7.2としたこと以外は、実施例1の(7)と同様にして、抗AFP抗体F(ab’)2断片結合粒子液を調製した。
【0104】
また、L3型抗原の濃度を、1.0、2.0、3.9、7.8、15.6、31.3、62.5、125、又は250ng/mLとなるように希釈したこと以外は実施例1の(7)と同様にして、各検体溶液を調製した。
【0105】
ブロック化標識レクチン2(500K)、ブロック化標識レクチン3(70K)、又は実施例1の(6)で得られた標識化レクチン1を、標識体希釈液(30mM MES、360mM NaCl、1.5%アルギニン、0.06%ヒドラジン塩酸塩、0.06mM ZnCl2、0.6mM MgCl2、30μg/mL Inactivated ALP、30μg/mL Mouse KLG、2.4% C14APS、0.15% Tween 20、1×CFB、1% Tergitol 15-s-7、1.0%遊離デキストラン2000K、50μg/mL遊離LCA、0.0005% Antiform SI)でそれぞれ0.5μg/mLとなるように希釈し、ブロック化標識レクチン2(500K)液、ブロック化標識レクチン3(70K)液、及び標識化レクチン1液の3種類の標識体液をそれぞれ調製した。
【0106】
上記の各標識体液、検体溶液、及び抗AFP抗体F(ab’)2断片結合粒子液を用いたこと以外は実施例1の(7)と同様にして、AFP-L3の測定を行った。各条件におけるAFP-L3の測定結果(基質の発光強度(カウント))を下記の表3に示す。なお、表示の結果は、二重測定の平均値からバッファーのみを測定したブランク値を減じた値を示したものである。
【0107】
【0108】
表3に示したように、ブロック化標識レクチン2(500K)(実施例3-1)及びブロック化標識レクチン3(70K)(実施例3-2)はいずれも標識化レクチン1(比較例3-1)と比較して非常に高感度にL3型抗原を検出し、特に、ブロック化標識レクチン2(500K)は、ブロック化標識レクチン3(70K)よりもさらに高感度にL3型抗原を検出した。これらの結果から、本発明のブロック化標識レクチンを用いることで、標識化レクチンよりも高感度にAFP-L3を測定できること、さらには、ブロック化標識レクチンの調製時に、より大きな分子サイズのデキストランを用いることで、さらに高感度に前記被測定物質を測定できることが示された。
【0109】
(3)AFP-L3の測定2
L3型抗原の濃度を、下記の表4に記載の各濃度(2.0~2000ng/mL)となるように希釈したこと以外は実施例1の(7)と同様にして、各検体溶液を調製した。また、下記の表4に示す濃度及び組み合わせで、ブロック化標識レクチン2(500K)、ブロック化標識レクチン3(70K)、及び実施例1の(6)で得られた標識化レクチン1を、標識体希釈液(30mM MES、360mM NaCl、1.5%アルギニン、0.06mM ZnCl2、0.6mM MgCl2、2.4% C14APS、0.15% Tween 20、1×CFB、1% Tergitol 15-s-7、1%遊離デキストラン2000K、50μg/mL遊離LCA、0.0005% Antiform SI)に0.5μg/mLとなるようにそれぞれ希釈し、ブロック化標識レクチン2(500K)液、ブロック化標識レクチン3(70K)液、及び標識化レクチン1液の3種類の標識体液をそれぞれ調製した。
【0110】
上記の各検体溶液及び標識体液を用いたこと以外は実施例1の(7)と同様にして、AFP-L3の測定を行った。各条件におけるAFP-L3の測定結果(基質の発光強度(カウント))を下記の表4及び
図2に示す。なお、表示の結果は、二重測定の平均値からバッファーのみを測定したブランク値を減じた値を示したものである。
【0111】
【0112】
表4及び
図2に示したように、デキストランの分子量の異なる複数のブロック化標識レクチンを組み合わせ、また、標識化レクチンをさらに組み合わせることで、特に、高濃度のAFP-L3を含む検体であっても、より正確に定量可能となることが確認された。
【0113】
(実施例4)
血清中のAFP-L3測定における試料の精製処理
試料として、L3型抗原を200ng/mL含むCFB(B1、バッファー検体)、L3抗原を200ng/mL添加した健常人血清(S1、血清検体)、L3型抗原を添加しない健常人血清(S2、血清検体)を、それぞれ調製した。
【0114】
(1)試料の精製処理
40μLの抗AFP抗体結合粒子(富士レビオ社製)と300μLの各血清検体(S1又はS2)とを混合し、室温で40秒間撹拌振とうを行った。磁性粒子を集磁して上清を除去した後、300μLのルミパルス(登録商標)洗浄液で3回洗浄した。溶出液(0.1M Glycine、0.3M NaCl、0.2% TritonX-100、1×CFB、pH2.1)を200μL加え、室温で20秒間撹拌振とうを行った。上清を別の容器に移し替え、10μLの2M Tris(pH10.0)を加えて中和した後、90μLのCFBを加え、精製処理済み試料を調製した。
【0115】
(2)AFP-L3の測定
実施例1の(5)で得られたブロック化標識レクチン1、又は実施例1の(6)で得られた標識化レクチン1を、標識体希釈液(30mM MES、360mM NaCl、1.5%アルギニン、0.06mM ZnCl2、0.6mM MgCl2、30μg/mL Inactivated ALP、30μg/mL Mouse KLG、2.4% C14APS、0.15% Tween 20、1×CFB、1% Tergitol 15-s-7、2%遊離デキストラン2000K、0.0005% Antiform SI)に0.5μg/mLとなるようにそれぞれ希釈し、ブロック化標識レクチン1液、及び標識化レクチン1液の各標識体液をそれぞれ調製した。
【0116】
実施例4の(1)の精製処理を行ったS1及びS2について、上記の各標識体液を用いたこと以外は実施例1の(7)と同様にして、AFP-L3の測定を行った。併せて、実施例4の(1)の精製処理を行わない条件で、その他の条件は上記と同様にして、S1、S2及びB1について、AFP-L3の測定を行った。各条件におけるAFP-L3の測定結果(基質の発光強度(カウント))を下記の表5に示す。なお、表示の結果は、二重測定の平均値からバッファーのみを測定したブランク値を減じた値を示したものである。
【0117】
【0118】
表5に示したように、精製処理を行わない条件では、健常人血清検体(S2)で高いシグナルが検出された。しかし、本発明のブロック化標識レクチン1を用いた場合(実施例4-1)では、標識化レクチン1を用いた場合(比較例4-1)に比して、AFP-L3をより多く含む血清検体(S1)からより高いシグナルが得られたため、AFP-L3の検出自体は十分に可能であることが確認された。また、精製処理を行った結果、AFP-L3をより多く含む血清検体(S1)のシグナルも低下したが、健常人血清検体(S2)のシグナルが顕著に低下し、AFP-L3をより精度よく測定可能となることが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明によれば、試料中のAFP-L3を簡便かつ高感度で測定可能な、AFP-L3測定方法及びAFP-L3測定キット、並びに、これらに用いるブロック化標識レクチンを提供することが可能となる。