(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ロボットシステム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20231006BHJP
【FI】
G05D1/02 H
G05D1/02 G
(21)【出願番号】P 2019164110
(22)【出願日】2019-09-10
【審査請求日】2022-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】妻鹿 利宏
(72)【発明者】
【氏名】田崎 宣明
(72)【発明者】
【氏名】水野 大輔
(72)【発明者】
【氏名】堀 淳二
(72)【発明者】
【氏名】村上 浩章
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-39075(JP,A)
【文献】特公昭50-38477(JP,B1)
【文献】特開平2-197905(JP,A)
【文献】特開2001-209428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波又は電磁波を発信する第1発信器を備え、天井パネルの上側空間を走行する第1ロボットと、
前記第1ロボットの前記第1発信器から発信された超音波又は電磁波を受信する第2受信器を備え、前記天井パネルの下側空間を走行し、前記第1ロボットとの間でデータの授受を行
う第2ロボットと、を含み、
前記第2ロボットは、前記第1ロボットの走行方向前側を走行し、
前記第2受信器で受信した超音波又は電磁波に基づいて、前記第1ロボットの前記第2ロボットに対する相対位置を検出し、検出した前記相対位置に基づいて、前記第1ロボットの前記天井パネルの上側空間の絶対位置と、走行方向を算出して前記第1ロボットに送信し、
前記第1ロボットは、前記第2ロボットから受信した前記絶対位置と前記走行方向に基づいて自律走行すること、
を特徴とするロボットシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のロボットシステムであって、
前記第2ロボットは、超音波又は電磁波を発信する第2発信器を備え、
前記第1ロボットは、前記第2発信器から発信された超音波又は電磁波を受信する第1受信器を備え、
前記天井パネルの上側空間で前記第1ロボットの走行方向前側に存在する物体の位置情報と形状情報とを検出するセンサ装置を
更に含み、
前記センサ装置は、
前記第2発信器から発信された超音波又は電磁波と、前記第1受信器によって受信された超音波又は電磁波と、を比較することにより、前記物体の前記位置情報と前記物体の前記形状情報とを検出し、
前記第2ロボットは、前記センサ装置によって取得した前記物体の前記位置情報と前記形状情報とに基づいて、前記第1ロボットを走行又は停止させること、
を特徴とするロボットシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のロボットシステムであって、
前記第2ロボットは、前記第1ロボットを走行させる際に、
前記物体の前記位置情報と前記形状情報とを前記第1ロボットに送信し、
前記第1ロボットは、前記第2ロボットから受信した前記物体の前記位置情報と前記形状情報とに基づいて、前記物体を乗り越える走行パターンを生成し、生成した
前記走行パターンに基づいて自律走行すること、
を特徴とするロボットシステム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のロボットシステムであって、
前記第2ロボットは、前記天井パネルの下側空間に配置されたワイヤに沿って走行すること、
を特徴とするロボットシステム。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか1項に記載のロボットシステムであって、
前記第1ロボットは、前記天井パネルの上側空間を撮像する撮像装置を備えること、
を特徴とするロボットシステム。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか1項に記載のロボットシステムであって、
前記第2ロボットは、前記天井パネルの下側空間に配置されたワイヤに沿って走行し、前記第1ロボットの直下に移動して、前記第1ロボットのバッテリを非接触で充電すること、
を特徴とするロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井パネルの上側空間を走行する第1ロボットと天井パネルの下側空間を走行する第2ロボットとで構成されるロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビルの天井裏に通信ケーブル等を配置する場合には、天井裏に突出した構造部材を乗り越えて移動するロボットが必要となる。このため、ハブの周囲に放射状に配置された可撓性及び復元性を有する複数のスポーク板によって構成された車輪を備え、遠隔操作により天井裏の突出物を乗り越えて走行するロボットが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、撮像装置で撮像した画像等に基づいて自律走行可能なロボットが多く提案されている。しかし、天井パネルの上側空間は、同一形状の構造材が複数配置されているので景色に特徴がなく、撮像した各画像にはあまり特徴的な画像が含まれない場合が多い。この場合、天井パネル上側空間でのロボットの位置、走行方向等自律走行に必要なデータが不十分となり、ロボットが自律走行することが困難な場合もあった。
【0005】
そこで、本発明は、天井パネルの上側空間で自律走行可能なロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のロボットシステムは、超音波又は電磁波を発信する第1発信器を備え、天井パネルの上側空間を走行する第1ロボットと、前記第1ロボットの前記第1発信器から発信された超音波又は電磁波を受信する第2受信器を備え、前記天井パネルの下側空間を走行し、前記第1ロボットとの間でデータの授受を行う第2ロボットと、を含み、前記第2ロボットは、前記第1ロボットの走行方向前側を走行し、前記第2受信器で受信した超音波又は電磁波に基づいて、前記第1ロボットの前記第2ロボットに対する相対位置を検出し、検出した前記相対位置に基づいて、前記第1ロボットの前記天井パネルの上側空間の絶対位置と、走行方向を算出して前記第1ロボットに送信し、前記第1ロボットは、前記第2ロボットから受信した前記絶対位置と前記走行方向に基づいて自律走行すること、を特徴とする。
【0007】
このように、天井パネルの下側空間で第1ロボットの走行方向前側を走行する第2ロボットが第1ロボットの絶対位置と走行方向とを検出し、第1ロボットは、第2ロボットから送信された絶対位置と走行方向とに基づいて自立走行するので、第1ロボットは、景色に特徴がない天井パネルの上側空間を好適に自律走行できる。また、第1ロボットと第2ロボットの間に天井パネルが介在していても、天井パネル下側空間を走行する第2ロボットが天井パネル上側空間を走行する第1ロボットの絶対位置と走行方向を取得することができ、第1ロボットを好適に自律走行させることができる。
【0008】
本発明のロボットシステムにおいて、前記第2ロボットは、超音波又は電磁波を発信する第2発信器を備え、前記第1ロボットは、前記第2発信器から発信された超音波又は電磁波を受信する第1受信器を備え、前記天井パネルの上側空間で前記第1ロボットの走行方向前側に存在する物体の位置情報と形状情報とを検出するセンサ装置を更に含み、前記センサ装置は、前記第2発信器から発信された超音波又は電磁波と、前記第1受信器によって受信された超音波又は電磁波と、を比較することにより、前記物体の前記位置情報と前記物体の前記形状情報とを検出し、前記第2ロボットは、前記センサ装置によって取得した前記物体の前記位置情報と前記形状情報とに基づいて、前記第1ロボットを走行又は停止させてもよい。
【0009】
これにより、天井パネルが介在していても天井パネル下側空間を走行する第2ロボットが天井パネルの上側空間に配置されている物体の位置、形状を検出でき、第1ロボットを好適に自律走行させることができる。また、第2ロボットが第1ロボットの走行方向前側の物体の位置情報と形状情報とによって第1ロボットを走行又は停止させるので、第1ロボットのセンサでは走行方向前側の物体を乗り越えられるかどうかを判断できない場合に適切に第1ロボットを停止させて第1ロボットあるいは天井パネルが損傷することを抑制できる。
【0010】
本発明のロボットシステムにおいて、前記第2ロボットは、前記第1ロボットを走行させる際に、前記物体の前記位置情報と前記形状情報とを前記第1ロボットに送信し、前記第1ロボットは、前記第2ロボットから受信した前記物体の前記位置情報と前記形状情報とに基づいて、前記物体を乗り越える走行パターンを生成し、生成した走行パターンに基づいて自律走行してもよい。
【0011】
これにより、第1ロボットは、様々な形状の物体を自律走行により乗り越えることができる。
【0012】
本発明のロボットシステムにおいて、前記第2ロボットは、前記天井パネルの下側空間に配置されたワイヤに沿って走行してもよい。
【0013】
これにより、第2ロボットを天井パネルの直ぐ下で天井パネルに略平行に走行させて、第1ロボットの位置検出、走行方向の検出、天井パネルの上側空間の物体の検出を精度よく行うことができる。
【0018】
本発明のロボットシステムにおいて、前記第1ロボットは、前記天井パネルの上側空間を撮像する撮像装置を備えてもよい。
【0019】
これにより、天井パネルの上側空間の遠隔点検を行うことができる。
【0020】
本発明のロボットシステムにおいて、前記第2ロボットは、前記天井パネルの下側空間に配置されたワイヤに沿って走行し、前記第1ロボットの直下に移動して、前記第1ロボットのバッテリを非接触で充電してもよい。
【0021】
これにより、第1ロボットに搭載されるバッテリの容量を小さくでき、第1ロボットを小型、軽量とすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、天井パネルの上側空間で自律走行可能なロボットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施形態のロボットシステムの構成を示す図である。
【
図4】実施形態のロボットシステムを示す制御ブロック図である。
【
図5】点検ロボットが天井パネルの上側の梁に接近した状態を示す図である。
【
図6】点検ロボットが天井パネル上側の梁の上に乗り上げる状態を示す図である。
【
図7】点検ロボットが天井パネル上側の梁を乗り越えて、空調機の上に乗り上げる状態を示す図である。
【
図8】点検ロボットが天井パネル上側の空調機に乗り上げた状態を示す図である。
【
図9】点検ロボットが天井パネル上側の空調機の端部で停止した状態を示す図である。
【
図10】点検ロボットのボデーの下面を示す斜視図である。
【
図11】先導ロボットの充電器で点検ロボットのバッテリの充電を行う状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら実施形態のロボットシステム100について説明する。
図1に示すように、ロボットシステム100は、天井パネル11の上側空間10を走行する第1ロボットである点検ロボット30と、天井パネル11の下側空間20で点検ロボット30の走行方向前側を走行する第2ロボットである先導ロボット50と、を含んでいる。
【0025】
図2に示すように、点検ロボット30は、走行用のクローラ機構32と段差を乗り越えるためのフリッパー33を備えるクローラ型の自律走行ロボットである。点検ロボット30は、ボデー31と、ボデー31の両側に取付けられたクローラ機構32と、クローラ機構32の両外側で車両前方、又は後方に向かって延びるフリッパー33とを含んでいる。クローラ機構32とフリッパー33とはボデー31の内部に取付けられた駆動モータ39によって駆動される。また、ボデー31の内部には、駆動モータ39に電力を供給するバッテリ40が取付けられている(
図4参照)。また、ボデー31の下面には、バッテリ40の充電を行う充電器41が取付けられている(
図10参照)。
【0026】
ボデー31の頂部には、天井パネル11の上側空間10の点検を行う点検用センサ35が取付けられている。点検用センサ35は、例えば、360°カメラ等の撮像装置と赤外線センサ、レーダ等各のセンサによって構成されてもよい。ボデー31の前側には、先導ロボット50との間で超音波、或いは電磁波の発信、受信を行う第1発受信器37が取付けられている。第1発受信器37は、第1発信器37aと第1受信器37bとで構成される。また、ボデー31の前側には、点検ロボット30が自立走行を行うための画像や物体のデータを検出する走行用センサ36が取付けられている。また、ボデー31の内部には、点検ロボット30の走行制御や点検データの取得を行う点検ロボット制御装置42と、先導ロボット50との間でデータの授受を行う第1通信装置38が取付けられている(
図4参照)。なお、点検ロボット制御装置42、第1通信装置38については、後で
図4を参照して説明する。
【0027】
図1に示すように、先導ロボット50は、天井パネル11の下側空間20に張り渡されたワイヤ22の上を走行するワイヤ移動型のロボットである。ここで、天井パネル11の下側空間20は、例えば、居室であり、居室の床21の上には基準点23が設定されている。ワイヤ22は、両端が図示しない壁面に固定されている。
【0028】
図3に示すように、先導ロボット50は、ボデー51と、ボデー51の両側に取付けられたプーリ52と、ボデー51の前端と後端とに設けられた天井走行ローラ53,54とを含んでいる。プーリ52は、上下一対に配置された上側プーリ52uと下側プーリ52dの間にワイヤ22を挟み込み、ワイヤ22に対してボデー51を移動させると共に、ボデー51をワイヤ22から吊り下げるものである。プーリ52は、ボデー51の前方の両側面に2つずつ、後方の両側面に1つずつ取付けられている。天井走行ローラ53,54は、ボデー51の前端と後端の上面から上方向に立ち上がるポスト53a,54aと、各ポスト53a,54aの上端に取付けられたローラ53b,54bとで構成される。ローラ53b,54bのボデー51に対する高さは同一である。
図1に示すようにプーリ52によってボデー51がワイヤ22から吊り下げられると、ローラ53b,54bは、天井パネル11の下面に接する。そして、ボデー51がワイヤ22に対して移動するとローラ53b,54bは天井パネル11の下面に接した状態で回転する。天井走行ローラ53,54は、ボデー51がワイヤ22に対して移動する際に、天井パネル11の下面とボデー51との距離を一定に保持する。
【0029】
ボデー51の内部には、プーリ52を駆動する駆動モータ61と、駆動モータ61に電力を供給するバッテリ62とが取付けられている(
図4参照)。また、ボデー51の上面には、点検ロボット30の充電器41を介して点検ロボット30のバッテリ40を非接触で充電する充電器55が取付けられている。
【0030】
また、ボデー51の中央部には、点検ロボット30との間で超音波、或いは電磁波の発信、受信を行う第2発受信器57が取付けられている。第2発受信器57は、第2発信器57aと第2受信器57bとで構成される。第2発受信器57は、超音波或いは電磁波を発信、受信する発受信面が後ろ斜め上方に向くように回転機構58に取付けられている。回転機構58は、第2発受信器57の発受信面の上下方向の角度と左右方向の角度とを変化させることができる。また、回転機構58は、ボデー51の幅方向に移動可能なスライダ59の上に取付けられている。このため、第2発受信器57は発受信面の上下方向の角度と、左右方向の角度と、左右方向の位置とをそれぞれ調整可能となるようにボデー51の上に取付けられている。また、ボデー51の下面には、
図1に示す天井パネル11の下側空間20に配置した基準点23との間で通信して天井パネル11の下側空間20の中での先導ロボット50の絶対位置を取得する絶対位置検出センサ56が取付けられている。
【0031】
また、ボデー51の内部には、先導ロボット50の走行制御等を行う先導ロボット制御装置63と、点検ロボット30との間でデータの授受を行う第2通信装置60が取付けられている(
図4参照)。なお、先導ロボット制御装置63、第2通信装置60については、後で
図4を参照して説明する。
【0032】
次に、
図4を参照しながら、点検ロボット30の制御系統の構成について説明する。
図4に示すように、点検ロボット30の点検用センサ35、走行用センサ36、駆動モータ39、充電器41、第1発受信器37、第1通信装置38は、それぞれ点検ロボット制御装置42に接続されている。点検ロボット制御装置42は、内部にCPU等のプロセッサとメモリとを含むコンピュータで構成されており、プロセッサとメモリとが協働することにより、点検ロボット走行制御部43と点検データ取得部44の2つの制御ブロックを実現する。
【0033】
点検用センサ35が取得した天井パネル11の上側空間10の画像等のデータは、点検データ取得部44に出力され、点検データ取得部44は、画像等のデータを記憶すると共に、第1通信装置38に出力する。第1通信装置38は、通信回線70を介して点検データを
図1に示すユーザ74の携帯端末75に出力する。ここで、通信回線70は、インターネットでもよいし、LAN回線でもよいし、電話回線でもよい。
【0034】
点検ロボット走行制御部43は、走行用センサ36で取得した前方の画像等のデータに基づいて駆動モータ39を調整して点検ロボット30を自律走行させる。また、点検ロボット走行制御部43は、先導ロボット50から第1通信装置38を介して点検ロボット30の絶対位置と走行方向、並びに走行方向前方に位置する物体の位置や形状データを取得する。そして、点検ロボット走行制御部43は、これらのデータと走行用センサ36から入力される画像データ等を用いて走行パターンを生成し、生成した走行パターンで駆動モータ39を駆動して点検ロボット30を自立走行させる。これにより、点検ロボット走行制御部43は、天井パネル11の上側空間10に存在する物体を乗り越え走行させる。
【0035】
次に、先導ロボット50の制御系統の構成について説明する。
図4に示すように、先導ロボット50の第2発受信器57、第2通信装置60、駆動モータ61、絶対位置検出センサ56、充電器55は、それぞれ先導ロボット制御装置63に接続されている。先導ロボット制御装置63は、内部にCPU等のプロセッサとメモリとを含むコンピュータで構成されており、プロセッサとメモリとが協働することにより、先導ロボット走行制御部64と、物体検出部65と、点検ロボット位置検出部66と、点検ロボット走行/停止制御部67の4つの制御ブロックを実現する。
【0036】
点検ロボット位置検出部66には、第2受信器57bで受信した点検ロボット30の第1発信器37aから発信された超音波信号又は電磁波信号が入力される。また、点検ロボット位置検出部66には、絶対位置検出センサ56から天井パネル11の下側空間20における先導ロボット50の絶対位置が入力される。点検ロボット位置検出部66は、第2受信器57bから入力された信号に基づいて、先導ロボット50に対する点検ロボット30の相対位置を算出し、算出した相対位置と絶対位置検出センサ56から入力された先導ロボット50の絶対位置とに基づいて点検ロボット30の絶対位置と走行方向とを算出して先導ロボット走行制御部64と点検ロボット走行/停止制御部67とに出力する。ここで、点検ロボット30の絶対位置とは、天井パネル11の下側空間20に配置された基準点23に対する絶対位置である。
【0037】
先導ロボット50の物体検出部65は、第2発信器57aから所定の超音波信号又は電磁波信号を点検ロボット30に向けて発信する。点検ロボット30は、第1受信器37bで受信した超音波信号又は電磁波信号を第1通信装置38に出力する。第1通信装置38は、通信回線70を介して第1受信器37bから入力された超音波信号又は電磁波信号を先導ロボット50の第2通信装置60に送信する。第2通信装置60は受信したデータを物体検出部65に出力する。物体検出部65は、第2通信装置60から入力された点検ロボット30が受信した超音波信号又は電磁波信号と点検ロボット30に向けて発信した超音波信号又は電磁波信号とを比較することにより、天井パネル11の上側空間10の中で先導ロボット50と点検ロボット30との間に存在する物体の位置情報と形状情報を検出する。そして検出した物体の位置情報と形状情報を点検ロボット走行/停止制御部67と先導ロボット走行制御部64とに出力する。先導ロボット50は、点検ロボット30の走行方向前側を走行するので、物体検出部65は、点検ロボット30の走行方向前側に位置する物体の位置情報と形状情報とを抽出して点検ロボット走行/停止制御部67と先導ロボット走行制御部64とに出力することとなる。この構成において、先導ロボット50の第2発信器57aと、第2通信装置60と、物体検出部65と、点検ロボット30の第1受信器37bと、第1通信装置38と、通信回線70とは、請求項に記載のセンサ装置を構成する。
【0038】
点検ロボット走行/停止制御部67は、点検ロボット位置検出部66から入力された点検ロボット30の絶対位置と走行方向と、物体検出部65から入力された点検ロボット30の走行方向前側に位置する物体の位置情報と形状情報に基づいて、点検ロボット30が走行を継続可能どうか判断する。そして、点検ロボット走行/停止制御部67は、点検ロボット30が走行を継続すると点検ロボット30が損傷を受けると判断した場合には、点検ロボット30の走行を停止させる停止指令信号を第2通信装置60、通信回線70、第1通信装置38を介して点検ロボット30の点検ロボット走行制御部43に出力する。点検ロボット走行制御部43は、停止指令信号が入力された場合には、駆動モータ39を停止して走行を停止する。また、点検ロボット走行/停止制御部67は、点検ロボット30が走行を継続可能と判断した場合には、走行継続信号を出力する。
【0039】
先導ロボット走行制御部64は、絶対位置検出センサ56から入力された先導ロボット50の絶対位置と、点検ロボット位置検出部66から入力された点検ロボット30の絶対位置と走行方向と、物体検出部65から入力された物体の位置情報と形状情報に基づいて、点検ロボット30の走行方向前方を少し離れて走行するのに最適な移動速度を算出する。そして、先導ロボット走行制御部64は、算出した最適な移動速度に基づいて、駆動モータ61によりプーリ52を回転させてワイヤ22に沿って先導ロボット50を走行させる。
【0040】
次に、物体である梁12や空調機13が突出している天井パネル11の上を点検ロボット30が走行する場合を例に、点検ロボット30と先導ロボット50との走行制御の具体例について説明する。なお、以下の説明では、第1、第2発受信器37,57は超音波信号を発受信するものとして説明する。
【0041】
最初に
図1を参照しながら点検ロボット30が天井パネル11の上の平坦な部分を走行する場合について説明する。
図1に示すように、点検ロボット30は天井パネル11の上の平坦な部分を矢印91に示す方向に一定の速度で走行している。先に説明したように、先導ロボット50の点検ロボット位置検出部66は、第2受信器57bで点検ロボット30の第1発信器37aからの超音波信号を受信し、受信した超音波信号に基づいて点検ロボット30の絶対位置と走行方向を算出して点検ロボット走行制御部43と先導ロボット走行制御部64に出力する。また、物体検出部65は、第2発信器57aから所定の超音波信号を発信し、点検ロボット30の第1受信器37bが受信した超音波信号のデータを第1、第2通信装置38,60、通信回線70を介して取得して点検ロボット30の走行方向前側に位置する物体の位置情報と形状情報を先導ロボット走行制御部64と点検ロボット走行/停止制御部67に出力する。平坦な部分では、物体が無いので、点検ロボット走行/停止制御部67は走行継続指令を点検ロボット走行制御部43に出力する。点検ロボット走行制御部43は、点検ロボット位置検出部66から入力された絶対位置と走行方向と、走行用センサ36からの画像等のデータとに基づいて点検ロボット30を一定の速度で自立走行させる。点検ロボット30は、自律走行している間に点検用センサ35によって天井パネル11の上側空間10の画像等を取得して通信回線70を介してユーザ74の携帯端末75、あるいは先導ロボット50に送信する。
【0042】
一方、先導ロボット走行制御部64は、絶対位置検出センサ56から入力された先導ロボット50の絶対位置と、点検ロボット位置検出部66から入力された点検ロボット30の絶対位置と走行方向とに基づいて、先導ロボット50が点検ロボット30の少し前を点検ロボット30と同様の速度で走行するように駆動モータ61の回転数を制御する。これにより先導ロボット50は、矢印92に示す方向に走行していく。
【0043】
図5に示すように、点検ロボット30が梁12に近づいてくると、先導ロボット50の第2発信器57aから発信された超音波信号は、梁12を通って点検ロボット30の第1受信器37bに到達する。物体検出部65は、入力された超音波信号のデータと発信した超音波信号のデータとを用いて梁12の位置情報と形状情報を算出して点検ロボット走行/停止制御部67と先導ロボット走行制御部64に出力する。
【0044】
図5に示すように、梁12の高さは点検ロボット30のフリッパー33の先端高さよりも低いので、点検ロボット走行/停止制御部67は、点検ロボット30が梁12の上に乗り上げて走行可能と判断し、点検ロボット走行制御部43に走行継続の信号を出力する。点検ロボット走行制御部43は、走行用センサ36から入力された画像等のデータと、点検ロボット位置検出部66から入力された点検ロボット30の絶対位置及び走行方向と、物体検出部65から入力された梁12の位置情報と形状情報とに基づいて、点検ロボット30を自律走行させる。先導ロボット50は、
図1を参照した説明したのと同様の制御により、点検ロボット30の少し前を点検ロボット30と同様の速度で走行する。
【0045】
点検ロボット30が梁12の直近まで接近すると、第2発信器57aから発信される超音波信号が梁12の先に位置する空調機13に当たるようになる。これにより、物体検出部65は、梁12と同様、空調機13の位置情報と形状情報を検出して点検ロボット走行制御部43に送信する。
【0046】
点検ロボット走行制御部43は、点検ロボット30が梁12の直近まで接近し、梁12と空調機13の位置情報と形状情報とを受信したら梁12、空調機13を乗り越える為の走行パターンを生成する。走行パターンは、例えば、次のようなものでもよい。
(1)
図6に示すように、前側のフリッパー33が梁12に接したらフリッパー33を矢印93に示すように回転させてボデー31の前方を持ち上げる。
(2)
図7に示すように、後側のフリッパー33を矢印94に示すように回転させてボデー31の後部を持ち上げて前半分を梁12の上に載せながら前進する。
(3)
図7に示すように、前側のフリッパー33の位置を元の位置に戻して前進して前半分を梁12の上に載せる。
(4)
図7に示すように、前側のフリッパー33を矢印95に示すように回転させてボデー31の前側を持ち上げ、空調機13の上に前方部分を乗り上げる。
(5)
図8に示すように、後側のフリッパー33を矢印96に示すように回転させてボデー31の後部を持ち上げた状態で前進し、ボデー31を空調機13の上に乗り上げる。
【0047】
そして、点検ロボット走行制御部43は、生成した走行パターンと、走行中に先導ロボット50から受信する点検ロボット30の絶対位置、並びに、梁12、空調機13の位置情報と形状情報と、走行用センサ36から入力される画像データ等に基づいて点検ロボット30を自律走行させ、点検ロボット30を空調機13の上に乗り上げさせる。
【0048】
一方、先導ロボット50は、点検ロボット30が梁12あるいは空調機13に乗り上げようとしている場合には、点検ロボット30の走行速度あるいは移動速度に合わせて移動速度を低くする。これにより、先導ロボット50は常に点検ロボット30の少し前を走行していく。
【0049】
点検ロボット30は空調機13の上に乗り上げると、空調機13の上を走行し、
図9に示すように、空調機13の端部近傍まで走行してくる。この際、点検ロボット30の走行用センサ36からの画像データでは、空調機13の端部の先に梁12等が位置しているのか、何もない大きな段差となっているのかを検出できない。
【0050】
一方、先導ロボット50の第2発信器57aから発信した超音波信号は、天井パネル11を通過した後、空調機13の端部を通過してから点検ロボット30の第1受信器37bで受信される。物体検出部65は、点検ロボット30の第1受信器37bで受信された超音波信号と第2発信器57aから発信した超音波信号とを対比することにより、空調機13の端部が段差形状となっていることを検出する。そして、物体検出部65は、このことを点検ロボット走行/停止制御部67に出力する。点検ロボット走行/停止制御部67は、空調機13の端部の段差が点検ロボット30のフリッパー33が届かないような高さとなっている場合、点検ロボット30が空調機13の上から安全に降りることが困難と判断して、走行停止信号を点検ロボット走行制御部43に送信する。点検ロボット走行制御部43は、走行停止信号を受信した場合に、駆動モータ39を停止して点検ロボット30の走行を停止する。これにより、点検ロボット30が空調機13の上から転落して点検ロボット30あるいは天井パネル11が損傷することを抑制できる。
【0051】
次に、点検ロボット30のバッテリ40を非接触で充電する場合について説明する。
図10に示すように、点検ロボット30はボデー31の下側に非接触での充電が可能な充電器41を備えている。点検ロボット走行制御部43は、バッテリ40の残存容量が少なくなってきた場合には、
図11に示すように、点検ロボット30を天井パネル11の上の平坦な部分に移動させる。一方、先導ロボット50は、ボデー51の上側に突出した非接触式の充電器55が点検ロボット30の充電器41の直下となる位置まで移動する。
【0052】
そして、先導ロボット50は、充電器55、41を介して先導ロボット50のバッテリ62で点検ロボット30のバッテリ40を充電する。これにより、点検ロボット30のバッテリ40を小型にして点検ロボット30を小型、軽量にできる。なお、この際、先導ロボット50のバッテリ62を外部電源によって充電しながらバッテリ62で点検ロボット30のバッテリ40を充電してもよい。
【0053】
以上説明したように、実施形態のロボットシステム100は、点検ロボット30が先導ロボット50から送信された絶対位置と走行方向とに基づいて自立走行するので、景色に特徴がない天井パネル11の上側空間10でも好適に自律走行できる。また、実施形態のロボットシステム100において、先導ロボット50は、点検ロボット30を走行させる際に梁12や空調機13の位置情報と形状情報とを点検ロボット30に送信し、点検ロボット30は、受信した梁12や空調機13の位置情報と形状情報とに基づいて、これらを乗り越える走行パターンを生成し、生成した走行パターンに基づいて自律走行するので、様々な形状の梁12や空調機13等の物体を自律走行により乗り越えることができる。
【0054】
さらに、先導ロボット50が点検ロボット30の走行方向前側の梁12や空調機13等の物体の位置情報と形状情報とによって点検ロボット30を走行又は停止させるので、点検ロボット30の走行用センサ36では走行方向前側の物体を乗り越えられるかどうかを判断できない場合に、点検ロボット30を停止させて点検ロボット30あるいは天井パネル11が損傷することを抑制できる。
【符号の説明】
【0055】
10 上側空間、11 天井パネル、12 梁、13 空調機、20 下側空間、21 床、22 ワイヤ、23 基準点、30 点検ロボット、31,51 ボデー、32 クローラ機構、33 フリッパー、35 点検用センサ、36 走行用センサ、37 第1発受信器、38 第1通信装置、39,61 駆動モータ、40,62 バッテリ、41,55 充電器、42 点検ロボット制御装置、43 点検ロボット走行制御部、44 点検データ取得部、50 先導ロボット、52 プーリ、52d 下側プーリ、52u 上側プーリ、53,54 天井走行ローラ、53a,54a ポスト、53b,54b ローラ、56 絶対位置検出センサ、57 第2発受信器、58 回転機構、59 スライダ、60 第2通信装置、63 先導ロボット制御装置、64 先導ロボット走行制御部、65 物体検出部、66 点検ロボット位置検出部、67 点検ロボット走行/停止制御部、70 通信回線、74 ユーザ、75 携帯端末、100 ロボットシステム。