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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】受信装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/077 20130101AFI20231006BHJP
   H04B 10/61 20130101ALI20231006BHJP
   G02F 2/00 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
H04B10/077 190
H04B10/61
G02F2/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019169498
(22)【出願日】2019-09-18
(65)【公開番号】P2021048486
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】別府 翔平
(72)【発明者】
【氏名】釣谷 剛宏
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 浩司
(72)【発明者】
【氏名】鴫原 正博
(72)【発明者】
【氏名】菊田 将弘
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0054513(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103312645(CN,A)
【文献】特開2017-11501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/077
H04B 10/61
G02F 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変調光及びパイロット光を含む光信号を局所光に基づきコヒーレント検波して、前記変調光に対応する変調信号及び前記パイロット光に対応するパイロット信号を含む電気信号を出力する受信手段と、
前記受信手段が出力する電気信号を離散フーリエ変換して前記パイロット信号の周波数を検出し、検出した周波数の基準周波数に対する誤差に基づき前記電気信号の周波数誤差を判定して補償する第1補償手段と、
前記第1補償手段による補償後の前記パイロット信号の周波数を前記基準周波数だけ低くする様に周波数変換する周波数変換手段と、
前記周波数変換後の前記パイロット信号を離散フーリエ変換して前記周波数変換後の前記パイロット信号の周波数を検出することにより、前記第1補償手段による補償後の前記変調信号の周波数誤差を判定し、前記第1補償手段による補償後の前記変調信号の周波数誤差を補償する第2補償手段と、
を備えていることを特徴とする受信装置。
【請求項2】
前記第1補償手段は、前記受信手段が出力する電気信号を第1サンプリング速度でサンプリングして得た時間サンプルを離散フーリエ変換する第1離散フーリエ変換手段を有し、
前記第2補償手段は、前記周波数変換手段による周波数変換後の前記パイロット信号を第2サンプリング速度でサンプリングして得た時間サンプルを離散フーリエ変換する第2離散フーリエ変換手段を有し、
前記第1サンプリング速度の前記第2サンプリング速度に対する比は、前記第1離散フーリエ変換手段の変換サイズ以下であることを特徴とする請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記第2離散フーリエ変換手段の変換サイズは、前記第2サンプリング速度を、前記第2補償手段による補償後の前記変調信号に残留する周波数誤差の許容値に基づく値で除した値以上であることを特徴とする請求項2に記載の受信装置。
【請求項4】
前記許容値に基づく値は、前記許容値の2倍であることを特徴とする請求項3に記載の受信装置。
【請求項5】
前記第2離散フーリエ変換手段の変換サイズは、前記局所光の線幅で、前記第2サンプリング速度を除した値以下であることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項6】
前記基準周波数は、前記第1離散フーリエ変換手段が出力する周波数サンプル上の周波数であることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項7】
前記第1サンプリング速度を前記第2サンプリング速度に変換する速度変換手段をさらに備えており、
前記速度変換手段は、周波数領域において前記第1サンプリング速度を前記第2サンプリング速度に変換することを特徴とする請求項2から6のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項8】
前記第1サンプリング速度を前記第2サンプリング速度に変換する速度変換手段をさらに備えており、
前記速度変換手段は、時間領域において前記第1サンプリング速度を前記第2サンプリング速度に変換することを特徴とする請求項2から6のいずれか1項に記載の受信装置。
【請求項9】
変調光及びパイロット光を含む光信号を局所光に基づきコヒーレント検波して、前記変調光に対応する変調信号及び前記パイロット光に対応するパイロット信号を含む電気信号を出力する受信手段を有する受信装置の1つ以上のプロセッサで実行されると、前記1つ以上のプロセッサに、
前記受信手段が出力する電気信号を離散フーリエ変換して前記パイロット信号の周波数を検出し、検出した周波数の基準周波数に対する誤差に基づき前記電気信号の周波数誤差を判定して補償する第1補償処理と、
前記第1補償処理後の前記パイロット信号の周波数を前記基準周波数だけ低くする様に周波数変換する周波数変換処理と、
前記周波数変換処理後の前記パイロット信号を離散フーリエ変換して前記周波数変換処理の前記パイロット信号の周波数を検出することにより、前記第1補償処理後の前記変調信号の周波数誤差を判定し、前記第1補償処理後の前記変調信号の周波数誤差を補償する第2補償処理と、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コヒーレント光通信システムの受信装置における周波数補償技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コヒーレント光通信システムにおいて伝送速度を高くするための方法の1つは、使用する変調方式の多値度を高くすることである。コヒーレント光通信システムにおいて、受信装置は、受信装置の光源と送信装置の光源との周波数差(以下、単に、周波数差として参照する。)を補償して復調を行う。ここで、多値度を高くすると、この周波数補償後においても残存する周波数誤差(以下、残存誤差)の許容範囲が小さくなる。つまり、多値度を高くすると、受信装置に要求される周波数補償の精度が高くなる。
【0003】
非特許文献1は、送信装置において、情報を搬送する変調光に連続光をパイロット光として付加し、受信装置がこのパイロット光に基づき周波数補償を行う構成を開示している。具体的には、非特許文献1に開示の受信装置は、その光源が生成する局所光で変調光及びパイロット光を含む光信号をコヒーレント受信し、これにより得た電気信号を離散フーリエ変換することによりパイロット光に対応する信号成分の周波数を検出して周波数差を判定し、変調光に対応する信号成分の周波数補償を行っている。
【0004】
しかしながら、多値度の高い変調方式の場合、残存誤差の許容範囲の最大値は100kHz程度であり、残存誤差を許容範囲内に収めるためには、離散フーリエ変換のサイズ(以下、FFTサイズ)を10程度とする必要があり、リアルタイムでの処理は難しい。
【0005】
一方、非特許文献2は、4乗法及びズームFFTを使用することで周波数差を判定して補償する構成を開示している。具体的には、変調信号を4乗することにより凡その周波数差を判定し、判定した凡その周波数差に基づき周波数範囲を決定し、4乗した変調信号に対して決定した周波数範囲のズームFFTを適用することで周波数差を判定して補償する構成を非特許文献2は開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】J.Zhu et al.,"RF-Pilot Phase Noise Compensation for Long-Haul Coherent Optical OFDM Systems",IEEE 14th CWIT,2015年
【文献】B.Tang et al.,"Low Complexity Carrier Frequency Offset Estimation Scheme Based on Zoom-FFT for M-QAM",OECC2019,TuB2-5,2019年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献2の構成では、変調信号の4乗後にズームFFTを適用することによりFFTサイズを抑えることができる。しかしながら、4乗法は光通信システムにおける雑音が多い場合には動作が不安定となる。
【0008】
本発明は、受信装置において精度良く周波数補償を行う技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によると、受信装置は、変調光及びパイロット光を含む光信号を局所光に基づきコヒーレント検波して、前記変調光に対応する変調信号及び前記パイロット光に対応するパイロット信号を含む電気信号を出力する受信手段と、前記受信手段が出力する電気信号を離散フーリエ変換して前記パイロット信号の周波数を検出し、検出した周波数の基準周波数に対する誤差に基づき前記電気信号の周波数誤差を判定して補償する第1補償手段と、前記第1補償手段による補償後の前記パイロット信号の周波数を前記基準周波数だけ低くする様に周波数変換する周波数変換手段と、前記周波数変換後の前記パイロット信号を離散フーリエ変換して前記周波数変換後の前記パイロット信号の周波数を検出することにより、前記第1補償手段による補償後の前記変調信号の周波数誤差を判定し、前記第1補償手段による補償後の前記変調信号の周波数誤差を補償する第2補償手段と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、受信装置において精度良く周波数補償を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態による受信装置の構成図。
図2】一実施形態による受信装置内の各位置での信号を示す図。
図3】一実施形態による受信装置内の各位置での信号を示す図。
図4】一実施形態による受信装置内の各位置での信号を示す図。
図5】一実施形態による受信装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうちの二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。さらに、以下の各図においては、実施形態の説明に必要ではない構成要素については図から省略する。
【0013】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態による受信装置の構成図である。本実施形態において、送信装置は、情報を搬送する変調光にパイロット光を付加し、変調光及びパイロット光を含む光信号を送信する。図2(A)は、送信装置が送信し、受信装置が受信する光信号を示している。光信号は、変調光50及びパイロット光51を含む。なお、変調光の中心周波数をfcとし、パイロット光の周波数は、fcよりfpだけ高いものとする。なお、図2(A)に示す様に、本実施形態においては、パイロット光51の周波数を変調光50より高くしているが、低くする構成であっても良い。
【0014】
受信装置の光源10は、局所光を生成して受信部11に出力し、受信部11は、局所光に基づきコヒーレント検波を行って電気信号を出力する。なお、本実施形態において受信装置は、ホモダイン検波を行うものとするが、本発明は、ヘテロダイン検波に対しても適用することができる。ホモダイン検波であるため、光源10は、理想的には、変調光50の中心周波数に等しい周波数fcの連続光を生成すべきである。しかしながら、実際には、光源10が生成する連続光の周波数は、変調光50の中心周波数fcに一致しない。本例においては、図2(A)に示す様に、光源10が生成する連続光の周波数が、理想的な周波数fcに対してfdだけ高い周波数frであるものとする。
【0015】
図2(B)は、受信部11が出力する電気信号を示している。電気信号は、変調光50に対応する変調信号60と、パイロット光51に対応するパイロット信号61と、を含む。光源10が生成する連続光の周波数が理想的なfcであると、変調信号60の中心周波数は0であり、パイロット信号61の周波数はfpとなる。しかしながら、本例において、光源10が生成する連続光の周波数は、理想的な周波数fcよりfdだけ高いため、図2(B)に示す様に、変調信号60の中心周波数は-fdになり、パイロット信号61の周波数はfp-fdとなる。つまり、変調信号60には、送信装置の光源と、光源10の周波数差に対応する周波数誤差fdが含まれることになる。
【0016】
FFT部12は、受信部11が出力する電気信号をサンプリング速度S1でサンプリングして離散フーリエ変換し、離散的な周波数サンプルを出力する。なお、サンプリング速度S1の下限値は、受信部11が出力する電気信号の周波数成分の最高周波数に基づきサンプリング定理により決定されることになる。
【0017】
シフト部13は、FFT部12が出力する周波数サンプルからパイロット信号61の周波数を検出し、理想的なパイロット信号61の周波数fpに対する検出した周波数の誤差を判定し、周波数サンプルを周波数軸上でシフトさせることで、この検出した誤差を補償する。なお、パイロット信号61の振幅は変調信号60の振幅より大きいため、シフト部13は、振幅が最も大きい周波数サンプルの周波数をパイロット信号61の周波数と検出する。また、理想的なパイロット信号61の周波数fp(基準周波数)は、受信装置の図示しない記憶部に予め格納されている。
【0018】
ここで、例えば、シフト部13が検出するパイロット信号61の周波数に誤差がなく、かつ、シフト部13が任意の周波数だけ周波数サンプルを周波数軸上で移動させることができるものとする。この場合、シフト部13は、周波数fp-fdをパイロット信号61の周波数と検出、つまり、パイロット信号61の誤差を-fdと判定し、よって、図2(B)に示す信号を周波数fdだけ高くなる様にシフトさせる。これにより、シフト部13は、変調信号60の周波数誤差を補償することができる。
【0019】
しかしながら、周波数サンプルは、周波数軸上において離散的であるため、検出されるパイロット信号61の周波数には誤差が生じる。なお、FFT部12が出力する周波数サンプル間の周波数間隔は、FFT部12におけるFFTサイズをN1とするとS1/N1である。なお、S1は、上述した様に、FFT部12におけるサンプリング速度である。また、シフト部13におけるシフト処理は、FFT部12が出力する周波数サンプルの周波数間隔を単位として行わなければならない。つまり、シフト部13における周波数シフトの最小間隔はS1/N1である。例えば、理想的なパイロット信号61の周波数fpが、FFT部12が出力する周波数サンプルの間の周波数であると、S1/N1の整数倍で周波数シフトすることによる周波数誤差も生じる。このため、本実施形態では、理想的なパイロット信号61の周波数fpが、FFT部12が出力する周波数サンプルの周波数となる様に設定する。これにより、シフト部13における周波数シフトがS1/N1の整数倍であることに起因する周波数誤差を防ぐ。なお、周波数fpは、変調光50の中心周波数とパイロット光51との相対的な周波数差であるため、送信装置は、周波数fpを所定値に制御することができる。
【0020】
一方、周波数サンプルが周波数軸上において離散的であることによる、パイロット信号61の周波数の検出誤差を小さくするには、周波数サンプルの周波数間隔を狭くして周波数軸上における分解能を高くする必要がある。周波数軸上における分解能を高くするには、サンプリング速度S1を小さくするか、FFTサイズN1を大きくしなければならない。しかしながら、上述した様に、サンプリング速度S1の下限値は電気信号の帯域により制限される。高速通信においては変調速度を大きくするため、電気信号の帯域幅は広くなり、よって、サンプリング速度S1を小さくすることには限界がある。また、FFTサイズN1を大きくするとリアルタイムでの処理が難しくなるため、N1はリアルタイム処理が可能なサイズに抑えなければならない。つまり、周波数サンプルが周波数軸上において離散的であることによる、パイロット信号61の周波数の検出誤差を小さくすることができない。
【0021】
纏めると、シフト部13による周波数シフトでは、周波数誤差fdを完全に補償することができず、周波数シフト後(周波数補償後)においても残留誤差feが生じる。残留誤差feは、FFT部12が出力する周波数サンプルが離散的であることによるパイロット信号61の周波数の検出誤差に起因し、その最大値は|S1/(2×N1)|である。図3(A)は、シフト部13が出力する周波数シフト後の電気信号の例を示している。図3(A)に示す様に、変調信号60の中心周波数は-feであり、パイロット信号61の周波数はfp-feであり、周波数feの残留誤差が生じている。
【0022】
フィルタ部14は、周波数シフト後の電気信号の内のパイロット信号61を除去し、変調信号60のみを通過させ、フィルタ後の変調信号60をIFFT部15に出力する。IFFT部15は、フィルタ部14が出力する変調信号60の周波数サンプルを離散逆フーリエ変換して時間列のサンプル(時間サンプル)をシフト部16に出力する。なお、IFFT部15のIFFTサイズは、FFT部12のFFTサイズと同じN1である。図3(B)は、シフト部16に出力される変調信号60の周波数波形を示している。図3(B)に示す様に、変調信号60には周波数feの残留誤差があるため、多値変調された変調信号60を精度良く復調するためには、この残留誤差feをさらに補償する必要がある。
【0023】
フィルタ部17は、周波数シフト後の電気信号の内の変調信号60を除去し、パイロット信号61のみを通過させ、パイロット信号61をシフト部18に出力する。図4(A)は、シフト部18に出力されるパイロット信号61を示している。シフト部18は、パイロット信号61の周波数を理想的な周波数fpだけ低くシフトさせる。つまり、シフト部18は、パイロット信号61の周波数を理想的な周波数fpだけ低い周波数に周波数変換する。上述した様に、周波数fpは、FFT部12が出力する周波数サンプル上の周波数であるため、シフト部18による周波数シフト処理により残留誤差feは変化しない。図4(B)は、シフト部18が出力するパイロット信号61を示している。図4(B)に示す様に、シフト部18が出力するパイロット信号61の周波数は、残留誤差に対応する-feとなる。
【0024】
IFFT部19は、シフト部18が出力するパイロット信号61に対応する周波数サンプルを離散逆フーリエ変換して時間サンプルを出力する。なお、IFFT部19のIFFTサイズは、FFT部12のFFTサイズと同じN1である。
【0025】
ダウンサンプリング(DS)部20は、IFFT部19が出力するパイロット信号61の時間サンプルをDS率RでダウンサンプリングしてFFT部21に出力する。つまり、DS部20は、IFFT部19が出力する時間サンプルをR個毎に1つだけ抜き出すことでダウンサンプリングを行う。したがって、FFT部21における時間サンプルのサンプリング速度S2は、S2=S1/Rとなる。つまり、DS率Rは、R=S1/S2であり、FFT部12におけるサンプリング速度の、FFT部21におけるサンプリング速度に対する比を示す値である。
【0026】
FFT部21は、DS部20が出力するダウサンプリング後の時間サンプルの離散フーリエ変換を行い、周波数サンプルをシフト部16に出力する。なお、FFT部21におけるFFTサイズをN2とする。なお、N2は、FFTサイズN1と同様に、リアルタイム処理が可能なサイズである。シフト部16は、FFT部21が出力する周波数サンプルに基づきパイロット信号61の周波数-feを検出する。この周波数-feは、IFFT部15から入力される変調信号60の残留誤差である。したがって、シフト部16は、変調信号60の周波数誤差を補償する様に、変調信号60の時間サンプルを周波数feだけ高くする様に周波数補償する。そして、シフト部16は、残留誤差feを補償した変調信号60を後段にある図示しない復調部に出力する。これにより、復調部は、変調信号60を精度良く復調することができる。なお、シフト部16においては、シフト部13やシフト部18とは異なり、時間領域において周波数をシフトさせる。これは、周波数サンプルの周波数間隔を単位としたシフトしかできないとの制限を取り除き、任意の周波数量での周波数補償を行うためである。
【0027】
上述した様に、シフト部13が出力するパイロット信号61の残留誤差feは、FFT部12が出力する周波数サンプル間の間隔で決まり、-S1/(2×N1)~S1/(2×N1)の範囲内である。したがって、サンプリング定理により、DS部20でのダウンサンプリング後のサンプリング速度S2=S1/Rは、2×S/(2×N1)以上でなければならない。したがって、Rは、以下の式(1)を満たす様に選択される。
R=S1/S2≦N1 (1)
【0028】
また、DS部20でのダウンサンプリングによりサンプリング速度S2=S1/Rとなるため、FFT部21が出力する周波数サンプルの間隔はS2/N2=S1/(R×N2)となる。したがって、シフト部16でのシフト処理後においても、この間隔の半分であるS2/(2×N2)=S1/(2×R×N2)の誤差は、依然、残留することになる。この残留誤差は、変調方式で決まる周波数誤差の許容値の最大値fm(以下、単に、許容値fm)以下でなければならない。したがって、N2は、以下の式(2)を満たす様に選択される。
N2≧S2/(2×fm)=S1/(2×R×fm) (2)
【0029】
さらに、FFT部21が出力する周波数サンプルの間隔S2/N2=S1/(R×N2)が、光源10により生成される連続光の線幅Δf以下であると、連続光の周波数揺らぎにより周波数補償処理が不安定となる。つまり、N2は、以下の式(3)も満たす様に選択される。
N2≦S2/Δf=S1/(R×Δf) (3)
【0030】
以上、DS部20において適切なDS率でダウンサンプリングし、FFT部21のFFTサイズN2を適切に選択することで、最終的な変調信号60の残留誤差をfm以下に抑えることができ、多値変調された変調信号60の復調を精度良くリアルタイムに行うことができる。
【0031】
以下、本発明を限定しない具体的な数値例を述べる。電気信号の周波数帯域に基づき、サンプリング速度S1を4.096G/sとし、FFT部12におけるFFTサイズN1をリアルタイム処理が可能な1024とする。また、光源10により生成される連続光の線幅Δf=50kHzとし、周波数誤差の許容値fmを100kHzとする。
【0032】
まず、この場合、FFT部12における周波数サンプルの間隔は4MHzとなる。したがって、シフト部13によるシフト後の残留誤差feは最大で2MHzとなり、許容値fm=100kHzより大きく、このままでは精度良く復調することができない。
【0033】
一方、式(1)~式(3)より、R≦1024、かつ、20480≦N2×R<81920を満たすN2及びRを選択すると、変調信号60の残留誤差をfmより小さくし、かつ、連続光の周波数揺らぎによらず安定した復調を行うことができる。この条件を満たすN2及びRの組み合わせは複数存在する。一例として、N2=256及びR=256、N2=128及びR=512、N2=64及びR=1024等である。
【0034】
<第二実施形態>
続いて、第二実施形態について第一実施形態との相違点を中心に説明する。図5は、本実施形態による受信装置の構成図である。なお、図1に示す第一実施形態の受信装置と同様の機能ブロックについては同じ参照符号を付与してその説明については省略する。
【0035】
第一実施形態においては、シフト部18による周波数シフト後、IFFT部19においてパイロット信号61を時間領域の信号に戻したのちDS部20においてダウンサンプリングを行っていた。本実施形態では、シフト部18による周波数シフト後、時間領域の信号に戻す前に周波数領域においてダウサンプリングする。このため、DS部22は、シフト部18が出力する周波数サンプルから、直流(周波数0)を含む所定数の連続する周波数サンプルを選択する。なお、後段のIFFT部23で時間サンプルに変換できる様に、DS部22が選択する周波数サンプルは偶数個である。具体的には、合計2Q個(Qは2以上の整数)の周波数サンプルを選択する場合、DS部22は、直流に対応する周波数サンプルと、直流に対応する周波数サンプルから正の周波数側において連続するQ個のサンプルと、負の周波数側において連続する(Q-1)個の周波数サンプルを選択する。
【0036】
IFFT部23は、DS部22が選択した周波数サンプルを離散逆フーリエ変換して時間サンプルを出力する。なお、IFFT部23のIFFTサイズは、DS部22が選択する周波数サンプル数と同じ2Qである。例えば、FFT部12でのFFTサイズを1024とし、2Qを4とすると、IFFT部23が出力する時間サンプルは、第一実施形態においてDS率Rを256とした場合に第一実施形態のDS部20が出力する時間サンプルと同様である。したがって、第一実施形態と同様に、FFT部21が出力する周波数サンプルに基づきシフト部16は残留誤差を許容値fmより小さくすることができる。なお、N1/2Qは、第一実施形態のDS率Rに対応する。
【0037】
なお、上述した各実施形態においては、シフト部13及びシフト部18は、周波数サンプルの周波数間隔を単位として周波数をシフトさせるものであったため、変調光50の中心周波数とパイロット光51の周波数との差である周波数fpをFFT部12が出力する周波数サンプル上の周波数としていた。しかしながら、例えば、一旦、時間領域の信号に変換するなど、任意の周波数量のシフトを行える場合には、周波数fpをFFT部12が出力する周波数サンプル上の周波数にする必要はない。
【0038】
なお、本発明による受信装置の受信部11より下流側の処理は、適切なプログラムを1つ以上のプロセッサで実行させることで行うことができる。つまり、本発明は、1つ以上のプロセッサを有する装置の当該1つ以上のプロセッサで実行されると、当該装置を上述した受信装置として動作させるコンピュータプログラムにより実現することができる。これらコンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。
【符号の説明】
【0039】
11:受信部、12、21:FFT部、13、16、18:シフト部、14、17:フィルタ部、15、19:IFFT部、20:DS部
図1
図2
図3
図4
図5