(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】ブレース取付構造、構造物およびブレース取付方法
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20231006BHJP
E04B 1/24 20060101ALI20231006BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
E04H9/02 311
E04B1/24 F
E04B1/58 G
(21)【出願番号】P 2019185130
(22)【出願日】2019-10-08
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】591205536
【氏名又は名称】JFEシビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 勝宣
(72)【発明者】
【氏名】中小路 俊幸
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-126947(JP,A)
【文献】特開2002-339590(JP,A)
【文献】特開2003-064620(JP,A)
【文献】特開2001-164790(JP,A)
【文献】特開2017-082532(JP,A)
【文献】特開2019-148068(JP,A)
【文献】特開平05-280202(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0197954(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/02
E04B 1/24
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸力材と、前記軸力材の軸方向の両端にそれぞれ接合された取付部材と、を備え、軸方向の力を受けるブレースを、建築構造物に設置するブレース取付構造であって、
前記ブレースは、
各前記取付部材のうちの一方の取付部材が、前記建築構造物の鉄筋コンクリートを用いて形成される鉄筋コンクリート構造部に設置された固定部に取り付けられ、
前記固定部は、
前記鉄筋コンクリート構造部の前記鉄筋コンクリート内に埋設され、前記建築構造物に固定されるアンカー部と、
前記アンカー部から前記鉄筋コンクリート構造部の表面に向かって立設され、前記アンカー部と一体に埋設される縦プレートと、
前記鉄筋コンクリート構造部の表面に対して交わる方向に配置され、一方の端部が前記縦プレートに接続され、他方の端部が前記ブレースの前記一方の取付部材と接合されるガセットプレートと、を備え
、
前記アンカー部は、
上下方向に一対で配置された矩形長板状の上フランジおよび下フランジと、
前記上フランジおよび下フランジ間に立設され、当該上フランジおよび下フランジを接続する矩形長板状のウエブと、を有してH形形状に形成され、
前記鉄筋コンクリート構造部の表面に沿って配置されるものであり、
前記アンカー部は、
前記上フランジおよび下フランジの長手方向における両端部または両端部間に配置され、当該上フランジおよび下フランジを補強する矩形状の反力プレートを更に備えている、ブレース取付構造。
【請求項2】
前記アンカー部は、前記ウエブの前記反力プレートが設けられた両端部に、前記ウエブの長手方向に沿って配置される補剛リブが接合されている、請求項1に記載のブレース取付構造。
【請求項3】
前記固定部は、
前記縦プレートの前記鉄筋コンクリート構造部の表面側に位置する端部に接続され、
前記鉄筋コンクリート構造部の表面と略平行に配置される上面プレートを更に備え、
前記ガセットプレートは、前記上面プレートを介して前記縦プレートに接続される、請求項1
又は2に記載のブレース取付構造。
【請求項4】
前記ガセットプレートは、
前記一方の端部が前記縦プレートに接続された前記上面プレートに溶接接合され、前記他方の端部が前記ブレースと一体に接合される、請求項3に記載のブレース取付構造。
【請求項5】
前記アンカー部は、
前記上フランジおよび下フランジの長手方向における中間部に配置され、当該上フランジおよび下フランジを補強する補剛プレートを更に備える、請求項
1~4のいずれか一項に記載のブレース取付構造。
【請求項6】
前記縦プレートには、
前記鉄筋コンクリートの鉄筋を挿通させる鉄筋孔が形成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のブレース取付構造。
【請求項7】
前記縦プレートと、前記アンカー部の前記ウエブと、が一体に形成されてなる、請求項
1~6のいずれか一項に記載のブレース取付構造。
【請求項8】
前記ブレースにおける前記一方の取付部材と、前記ガセットプレートと、が高力ボルトと、添接板と、によって接合されている、請求項1~7のいずれか一項に記載のブレース取付構造。
【請求項9】
前記アンカー部の中心部が、2つの前記ブレースの軸線の交差点に配置される、請求項1~
8のいずれか一項に記載のブレース取付構造。
【請求項10】
前記ブレースが、
前記軸力材および各前記取付部材に加え、前記軸力材を補剛する補剛材を備えて構成され、圧縮方向の軸力による部材座屈を抑止する座屈拘束ブレースである、請求項1~
9のいずれか一項に記載のブレース取付構造。
【請求項11】
前記鉄筋コンクリート構造部が、前記建築構造物の梁またはスラブである、請求項1~
10のいずれか一項に記載のブレース取付構造。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか一項に記載のブレース取付構造によって固定されたブレースが設けられている、構造物。
【請求項13】
軸力材と、前記軸力材の軸方向の両端にそれぞれ接合された取付部材と、を備え、軸方向の力を受けるブレースを、建築構造物に設置するブレース取付方法であって、
前記建築構造物の基礎に、固定架構を介してアンカー部を設置する工程と、
前記アンカー部と、前記アンカー部に立設された縦プレートとに対して、鉄筋を組み付ける工程と、
前記基礎にコンクリートを打設し、前記アンカー部と前記縦プレートとを一体に埋設する工程と、
前記コンクリートの打設によって形成された面部に対して交わる方向に配置されるガセットプレートの一方の端部を前記縦プレートに接続する工程と、
前記ガセットプレートの他方の端部を前記ブレースの取付部材と接合する工程と、を含む
ものであり、
前記アンカー部は、
上下方向に一対で配置された矩形長板状の上フランジおよび下フランジと、
前記上フランジおよび下フランジ間に立設され、当該上フランジおよび下フランジを接続する矩形長板状のウエブと、を有してH形形状に形成され、
前記建築構造物の鉄筋コンクリートを用いて形成される鉄筋コンクリート構造部の表面に沿って配置されるものであり、
前記アンカー部は、
前記上フランジおよび下フランジの長手方向における両端部または両端部間に配置され、当該上フランジおよび下フランジを補強する矩形状の反力プレートを更に備えている、ブレース取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震などにより加わる荷重を吸収する制振ブレース、および、荷重を支持し構造物の耐震性を向上する耐震ブレースの取付構造、それを用いた構造物および制振・耐震ブレースの取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビル、倉庫、店舗等の建築構造物では、地震などにより水平方向に加わる荷重(以下、これを地震エネルギーと称す)を吸収し、当該建築構造物の柱や梁等の主要構造部材の損傷を低減するための制振ダンパーとして制振ブレースや、荷重を支持し構造物の耐震性を向上する耐震ブレースが設置されている。制振・耐震ブレースは、柱の端部と梁の端部との接合部と、鉄筋コンクリートの梁または床スラブと、の間に斜めに設置される。このように設置された制振・耐震ブレースでは、地震などに起因した水平荷重を軸力によって支持することにより、建築構造物の変形、または部材の応力を抑制し、建築構造物の剛性を確保するようになっている。なお、以下では制振・耐震ブレースのことを総称してブレースと表記する。
【0003】
一般的に、ブレースとしては、H形鋼または溝形鋼等を用いたものの他に、圧縮方向の軸力による部材座屈を抑止する座屈拘束ブレースが知られている。とりわけ、座屈拘束ブレースは、一般的なブレースが有する軸力材、および、軸力材を主架構に接合するための取付部材に加え、補剛材を備えて構成される。座屈拘束ブレースは、地震による建築構造物の振動、すなわち、水平方向に加わる地震エネルギーにより、軸方向に圧縮される。座屈拘束ブレースの軸方向の圧縮は、座屈拘束ブレースの軸力材が負担する。座屈拘束ブレースは、軸方向圧縮により軸力材が座屈することなく、ブレース軸方向に塑性変形するように、軸力材のたわみおよび座屈を補剛する補剛材を備えている。補剛材は、座屈拘束ブレースに入力された軸力を負担することなく、軸力材の座屈拘束材として軸力材の周囲を覆うよう設けられている。座屈拘束ブレースは、上述した構造により、圧縮軸力作用時にも軸力材の全体座屈の発生を防止ないしは発生時期を遅らせて、安定した軸方向変形を生じせしめて、地震エネルギーの吸収能力や荷重の支持能力を大きくするようになっている。
【0004】
かかるブレースは、両端部に設けられた取付部材を用いて建築構造物に設置される。その際、ブレースは、一方の端部の取付部材が柱の端部と梁の端部との接合部に固定され、他方の端部の取付部材が鉄筋コンクリートの梁または床スラブに固定される。このとき、梁または床スラブに接続される取付部材は、アンカーボルトを介して固定されていた(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-82532号公報
【文献】特開2018-178433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に開示されているように、ブレースの他方の端部がアンカーボルトを介して固定される場合、次のような不都合があった。すなわち、梁や床スラブの表面からアンカーボルトの頭部が多数突出するため、建築構造物における床面の景観を損なう問題があった。また、アンカーボルトの頭部が床面から突出しており、その部分に通路、設備、または、物品等を配置することが困難で使用する用途が制約されるため、建築構造物の内部空間を利用する上で障害になっていた。加えて、細径長尺のアンカーボルトを多数用いるため、アンカーボルトの位置が不正確なものが発生する虞があり、固定部材やブレースの設置時に、ボルト孔を修正したり、新たに削孔したりしなければならないトラブルの発生を未然に回避することが困難であった。そのため、多数のアンカーボルトを正確な位置や高さで設置するべく、測量、位置決め、架台を用いた固定設置作業等が発生し、ボルト設置のための施工コストが嵩むと共に工期が長期化する問題があった。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためのものであり、ブレース固定用のアンカーボルトを不要とし、床面の景観を損なうことなく、建築構造物の内部空間を有効活用できると共に、ボルト設置のための施工コストを削減しつつ、工期の長期化を抑制できるブレースの取付構造、構造物およびブレース取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るブレース取付構造は、軸力材と、前記軸力材の軸方向の両端にそれぞれ接合された取付部材と、を備え、軸方向の力を受けるブレースを、建築構造物に設置するブレース取付構造であって、前記ブレースは、各前記取付部材のうちの一方の取付部材が、前記建築構造物の鉄筋コンクリートを用いて形成される鉄筋コンクリート構造部に設置された固定部に取り付けられ、前記固定部は、前記鉄筋コンクリート構造部の前記鉄筋コンクリート内に埋設され、前記建築構造物に固定されるアンカー部と、前記アンカー部から前記鉄筋コンクリート構造部の表面に向かって立設され、前記アンカー部と一体に埋設される縦プレートと、前記鉄筋コンクリート構造部の表面に対して交わる方向に配置され、一方の端部が前記縦プレートに接続され、他方の端部が前記ブレースの前記一方の取付部材と接合されるガセットプレートと、を備え、前記アンカー部は、上下方向に一対で配置された矩形長板状の上フランジおよび下フランジと、前記上フランジおよび下フランジ間に立設され、当該上フランジおよび下フランジを接続する矩形長板状のウエブと、を有してH形形状に形成され、前記鉄筋コンクリート構造部の表面に沿って配置されるものであり、前記アンカー部は、前記上フランジおよび下フランジの長手方向における両端部または両端部間に配置され、当該上フランジおよび下フランジを補強する矩形状の反力プレートを更に備えているものである。
【0009】
本発明に係るブレース取付構造を用いた構造物は、上記のブレース取付構造によって固定されたブレースが設けられているものである。
【0010】
本発明に係るブレース取付方法は、軸力材と、前記軸力材の軸方向の両端にそれぞれ接合された取付部材と、を備え、軸方向の力を受けるブレースを、建築構造物に設置するブレース取付方法であって、前記建築構造物の基礎に、固定架構を介してアンカー部を設置する工程と、前記アンカー部と、前記アンカー部に立設された縦プレートとに対して、鉄筋を組み付ける工程と、前記基礎にコンクリートを打設し、前記アンカー部と前記縦プレートとを一体に埋設する工程と、前記コンクリートの打設によって形成された面部に対して交わる方向に配置されるガセットプレートの一方の端部を前記縦プレートに接続する工程と、前記ガセットプレートの他方の端部を前記ブレースの取付部材と接合する工程と、を含むものであり、前記アンカー部は、上下方向に一対で配置された矩形長板状の上フランジおよび下フランジと、前記上フランジおよび下フランジ間に立設され、当該上フランジおよび下フランジを接続する矩形長板状のウエブと、を有してH形形状に形成され、前記建築構造物の鉄筋コンクリートを用いて形成される鉄筋コンクリート構造部の表面に沿って配置されるものであり、前記アンカー部は、前記上フランジおよび下フランジの長手方向における両端部または両端部間に配置され、当該上フランジおよび下フランジを補強する矩形状の反力プレートを更に備えているものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ブレースを固定する固定部が鉄筋コンクリート内に埋設されるので、ブレース固定用のアンカーボルトを不要とし、床面の景観を損なうことなく、建築構造物の内部空間を有効活用できると共に、ボルト設置のための施工コストを削減しつつ、工期の長期化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係るブレース10の取付構造が用いられる構造物の一例の模式図である。
【
図2】
図1のブレース10の取付構造を示す正面図である。
【
図3】
図2のブレース10の取付構造をA-A方向から見て示す上面図である。
【
図4】
図2のブレース10の取付構造をD-D方向から見て示す上面図である。
【
図5】
図2のブレース10の取付構造のB-B断面を示す説明図である。
【
図6】
図2のブレース10の取付構造のC-C断面を示す説明図である。
【
図7】実施の形態1に係るブレース10の取付構造に作用する応力を示す模式図である。
【
図8】
図7のブレース10の取付構造のP-P断面を示す説明図である。
【
図9】
図7のブレース10の取付構造のQ-Q断面を示す説明図である。
【
図10】実施の形態1に係るブレース10の取付方法を示すフローチャートである。
【
図11】実施の形態1に係るブレース10の取付構造の変形例1を示す正面図である。
【
図12】実施の形態1に係るブレース10の取付構造の変形例2を示す正面図である。
【
図13】実施の形態1に係るブレース10の取付構造の変形例3を示す正面図である。
【
図14】実施の形態1に係るブレース10の取付構造の変形例4を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るブレース取付構造、構造物およびブレース取付方法の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、図面の形態は一例であり、本発明を限定するものではない。各図は模式的に示すものであって、各部材の相対的な大きさや板厚等は図示する寸法に限定されるものではない。また、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。さらに、各図において、同一の符号を付したものは、同一のまたはこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。また、明細書全文に示す構成要素の形態は、あくまで例示であってこれらの記載に限定されるものではない。
【0014】
実施の形態1.
まず、
図1~
図6を用いて本実施の形態1に係るブレース10の取付構造について説明する。
図1は、実施の形態1に係るブレース10の取付構造が用いられる構造物の一例の模式図である。
図2は、
図1のブレース10の取付構造を示す正面図である。
図3は、
図2のブレース10の取付構造をA-A方向から見て示す上面図である。
図4は、
図2のブレース10の取付構造をD-D方向から見て示す上面図である。
図5は、
図2のブレース10の取付構造のB-B断面を示す説明図である。
図6は、
図2のブレース10の取付構造のC-C断面を示す説明図である。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態1に係るブレース10の取付構造は、以下の構成の構造物、すなわち、ビル、倉庫、店舗等の建築構造物100に用いられる。具体的に、建築構造物100は、地盤1に杭2を介して固定されたフーチング3と、主鉄筋41および帯鉄筋42(
図5参照)等の鉄筋を配筋した後、コンクリートが打設されて形成された鉄筋コンクリート梁4とにより構築された基礎5上に形成される。基礎5のフーチング3上には、複数の柱6がそれぞれ対向して立設され、下端部がフーチング3に定着される。そして、基礎5上にスラブ7が形成され構造物の床となる。また、建築構造物100は、対向して配置される一対の柱6、6の上端部間には梁8が架設されている。これら柱6の上端部と、梁8の端部とは接合されている。柱6と梁8との接合部には、ブレース10を取り付ける接合部材9が設けられている。このように構成された建築構造物100には、地震などにより水平方向に加わる地震エネルギーを吸収し、当該建築構造物100の柱6や梁8等の主要構造部材の損傷を低減するための制振ダンパーとしてブレース10が斜めに設置されている。
【0016】
本実施の形態1の場合、ブレース10は、軸力材11(
図2など参照)と、軸力材11を補剛する補剛材12と、軸力材11の軸方向両端部に配置され、軸力材11を主架構に接合する取付部材13と、を備えている。この場合、ブレース10は、圧縮方向の軸力による部材座屈を抑止する座屈拘束ブレースとして構成されている。ブレース10は、軸力材11および各取付部材13に加え、軸力材11を補剛する補剛材12を備えることで、圧縮方向の軸力による部材座屈を抑止できる。ブレース10は、上下端部に設けられた取付部材13、13のうちの一方である下端部の取付部材13が、建築構造物100の鉄筋コンクリート梁4上に形成される鉄筋コンクリート構造部50の表面であるスラブ7に設置された固定部20に取り付けられる。なお、固定部20が設置される鉄筋コンクリート構造部50としては、建築構造物100の床面を構成するスラブ7のみに限らず、梁(鉄筋コンクリート梁4、または、鉄筋コンクリート製の天井梁(不図示)等)、鉄筋コンクリート梁4とスラブ7とを含む部分、または、基礎5とスラブ7とを含む部分であってもよい。
【0017】
固定部20は、柱6、6の下端部間におけるスラブ7を下方から支える鉄筋コンクリート梁4の中央部に埋設されている。また、ブレース10は、上下端部に設けられた取付部材13、13のうちの他方である上端部の取付部材13が、柱6の上端部と梁8の端部に連結された接合部材9に取り付けられる。固定部20は、後述するガセットプレート24を備えており、このガセットプレート24にブレース10の下端部に設けられた取付部材13が接合される。このようにして、ブレース10は、柱6と梁8との接合部と、スラブ7を下方から支える鉄筋コンクリート梁4に設置された固定部20との間に斜めに配置される。
【0018】
(ブレース10)
図1および
図2に示すように、ブレース10は、例えば、円筒形状の軸力材11と、軸力材11の外周を覆う円筒形状の補剛材12を有する。ブレース10の中心軸は、軸力材11の中心軸と同心上に配置されている。補剛材12の中心軸も同様に同心上に配置されている。つまり、軸力材11は、円筒形状の補剛材12の内部の中心を長手方向に貫通するものである。軸力材11は、補剛材12により外周を包囲され、変形が拘束される。軸力材11の長手方向の上端部の取付部材13が、柱6の上端部と梁8の端部に連結された接合部材9に不図示のボルトなどによって取り付けられる。
【0019】
補剛材12の長手方向の上端部は、軸力材11に接合されている取付部材13に接続されている。これにより、補剛材12の上方端部は、取付部材13と相対変位しないように固定される。また、軸力材11の長手方向の下端部は、取付部材13に接合されている。補剛材12の下端部は、軸力材11および取付部材13と相対変位ができるように構成されている。補剛材12の内側面と軸力材11の外周面との間は、所定の隙間が形成されている。よって、ブレース10に建築構造物100の変形による荷重が加わった場合に軸力材11が伸縮しても、補剛材12は中心軸方向の荷重が加わらないように構成されている。軸力材11の長手方向の下端部の取付部材13は、ブレース10を建築構造物100のスラブ7を下方から支える鉄筋コンクリート梁4に設けられた固定部20(より具体的には、アンカー部21と一体に鉄筋コンクリート梁4内に埋設されたガセットプレート24)と接合するための継手となる。
【0020】
(軸力材11)
軸力材11は、長尺材であって、断面円筒形状の鋼材である。本実施の形態1においては、断面円筒形状の鉄鋼製の長尺材である軸力材11が示されているが、軸力材11は、例えば、棒鋼又は平板を断面十字に接合したものであってもよく、ブレース10の中心軸に対し垂直な面で切った断面形状は限定されるものではない。軸力材11の長手方向の上端部および下端部には、取付部材13が接合されている。
【0021】
軸力材11は、塑性変形する材料によって形成され、軸力材11が塑性変形する際にブレース10に入力されたエネルギーを吸収し、より高い耐震、制振ダンパーとしての効果が得られる。
【0022】
(補剛材12)
補剛材12は、例えば断面円筒形状の鋼管であり、管内部に軸力材11を貫通させる構造になっている。なお、補剛材12は、円筒形状に限られない。軸力材11が軸力によりたわんだ際に、軸力材11が座屈しないよう、そのたわみを拘束できれば、例えば、断面が矩形の角筒であってもよい。補剛材12の長手方向寸法は、軸力材11の長手方向寸法よりも長くなっていることが望ましい。また、軸力材11と補剛材12との間にモルタル等を充填して補剛してもよい。さらには、角型鋼管を複数接合して補剛材12を形成し、軸力材11のたわみを拘束してもよい。補剛材12の構造は、軸力材11の形状およびたわみの態様に応じて適宜変更することができる。
【0023】
(固定部20)
具体的に、固定部20は、
図2に示すように、アンカー部21と、縦プレート22と、上面プレート23と、ガセットプレート24と、を有して構成され、地盤1上に敷設された均しコンクリート1Aの上面に固定架構30を介して配置される。アンカー部21は、鉄筋コンクリート梁4内に埋設され、建築構造物100に固定される。縦プレート22は、アンカー部21からスラブ7に向かって立設され、アンカー部21と一体に埋設される。また、ガセットプレート24は、スラブ7に対して交わる方向に配置され、一方の端部が縦プレート22に接続され、他方の端部がブレース10の一方、すなわち、下端部の取付部材13と接合されている。
【0024】
このとき、ガセットプレート24は、縦プレート22のスラブ7側に位置する端部に接続され、スラブ7と略平行に配置される上面プレート23を更に備えることが好ましい。その場合、ガセットプレート24は、上面プレート23を介して縦プレート22に接続されることで、アンカー部21との接合強度の向上を図ることができる。
【0025】
(アンカー部21)
アンカー部21は、上下方向に一対で配置された矩形長板状の上フランジ211および下フランジ212と、上フランジ211および下フランジ212間に立設された矩形長板状のウエブ213と、を有してH形形状に形成されている。これら上フランジ211および下フランジ212と、ウエブ213とは、溶接などによって接合されている。アンカー部21は、柱6、6の下端部間におけるスラブ7に沿って配置される。
【0026】
また、アンカー部21は、上フランジ211および下フランジ212と、ウエブ213と、の長手方向における両端部に、それぞれ溶接などで接合された反力プレート214が設置されている。このとき反力プレート214は、
図3および
図5に示すように、水平方向の寸法が上フランジ211および下フランジ212の短手方向の寸法より大きく、鉛直方向の寸法が上フランジ211および下フランジ212間の寸法より大きく形成されている。これにより、外部から加わる外力(例えば、後述するコンクリートからの水平反力HR(
図7参照))に抗することができる。
【0027】
さらに、アンカー部21は、ウエブ213の反力プレート214が設けられた両端部に、ウエブ213の長手方向に沿って配置される補剛リブ215が溶接などによって接合されている。この場合、補剛リブ215は、ウエブ213の鉛直方向における上下の位置に離間して配置されている。これにより、ウエブ213の剛性、とりわけ、長手方向における両端部に外部から加わる外力(例えば、後述するコンクリートからの水平反力HR(
図7参照))に対する剛性をより高めることができる。
【0028】
また、アンカー部21は、
図2、
図3および
図6に示すように、上フランジ211、下フランジ212およびウエブ213の長手方向における中間部に、当該上フランジ211および下フランジ212を補強する矩形平板状の補剛プレート216が設置されている。補剛プレート216は、溶接などによって上フランジ211、下フランジ212およびウエブ213に接合されている。これにより、アンカー部21の剛性を更に高めることができる。
【0029】
(縦プレート22)
縦プレート22は、
図2、
図3、
図5および
図6に示すように、一方の端部がアンカー部21の上フランジ211に溶接などによって接合され、スラブ7に向かって立設されている。また、縦プレート22は、他方の端部が上面プレート23に溶接などによって接合されている。縦プレート22には、鉄筋コンクリート梁4の鉄筋(帯鉄筋42)を挿通させる鉄筋孔22aが形成されている。縦プレート22は、アンカー部21と一体に鉄筋コンクリート梁4内に埋設される。なお、縦プレート22は、上面プレート23を介すことなく、ガセットプレート24と溶接などによって接合されてもよい。また、縦プレート22と、アンカー部21のウエブ213と、を一体に形成するようにしてもよい。これにより、縦プレート22を別体で設ける場合に比較して、固定部20の製作を省力化できる。
【0030】
(上面プレート23)
上面プレート23は、矩形長板状の形状をなし、一方の面に縦プレート22の他方の端部が接合され、他方の面にガセットプレート24の一方の端部が接合されている。上面プレート23において、縦プレート22およびガセットプレート24は、溶接などによって接合されている。この上面プレート23を設けることで、上面プレート23を介さずに縦プレート22とガセットプレート24とを接合する場合と比較して、格段と容易に接合できる。
【0031】
(ガセットプレート24)
ガセットプレート24は、
図2および
図5に示すように、一方、すなわち、下方の端部が、縦プレート22に接続された上面プレート23に溶接などによって接合されている。また、ガセットプレート24は、他方、すなわち、上方の端部が、ブレース10の下端部に配置された取付部材13に対し、添接板14と、高力ボルト15と、によって取り付けられ、一体に接合されている。このように、本実施の形態1の場合、ガセットプレート24は、鉄筋コンクリート梁4内に埋設される固定部20の上面プレート23に、溶接などによって接合されている。このため、ブレース10の固定用のアンカーボルト(不図示)を不要とし、床面の景観を損なうことなく、建築構造物100の内部空間を有効活用できる。これと共に、ボルト設置のための施工コストを削減しつつ、工期の長期化を抑制できる効果を奏することができる。
【0032】
(固定架構30)
ここで、上述したような固定部20は、均しコンクリート1A上に設置された固定架構30を介して設置される。固定架構30は、
図1、
図2および
図4に示すように、鉛直方向に立設され、それぞれ対向して配置される複数の柱状部材31と、これら対向する柱状部材31の長手方向の上端部同士および下端部同士を接合する複数の梁状部材32と、これら対向する柱状部材31の短手方向の上端部同士および下端部同士を接合する複数の角材33と、を備えて構成されている。角材33は、それぞれ梁状部材32よりも長さが短く設定されている。複数の梁状部材32は、それぞれアンカー部21の長手方向に沿って、鉛直方向の上下にそれぞれ配置される。また、複数の角材33は、複数の梁状部材32における長手方向の端部同士および鉛直方向の端部同士をそれぞれ接続するように配置される。これら柱状部材31と、梁状部材32と、角材33とは、接着または溶接等によって接合される。また、水平方向に対向する梁状部材32、32間には、角材33と平行して配置される補強部材34が設けられていてもよい。なお、固定架構30において、前述した柱状部材31、梁状部材32および角材33は角柱形状に限らず、山形状のアングルを用いて構成してもよい。また、梁状部材32は、鉛直方向の上下のうち、上方のみに配置するようにしてもよい。要は、固定部20を鉄筋コンクリート梁4内に埋設固定するにあたり、当該固定部20を設置する位置に保持可能なものであれば、各構成部材の形状、材質、および、全体の形状等は適宜、選択可能となっている。
【0033】
(固定部20に作用する応力の説明)
次に、このように、構成された固定部20に作用する応力について、
図7~
図9を用いて説明する。
図7は、実施の形態1に係るブレース10の取付構造に作用する応力を示す模式図である。
図8は、
図7のブレース10の取付構造のP-P断面を示す説明図である。
図9は、
図7のブレース10の取付構造のQ-Q断面を示す説明図である。
【0034】
前述したように構成された固定部20を用いて建築構造物100を構成する一つの架構に対し、2つのブレース10、10を設置する場合、以下のように配置することが望ましい。例えば、
図7に示すように、建築構造物100を構成する一つの架構に対し、2つのブレース10、10を設置する場合、アンカー部21の中心部が、2つのブレース10、10の軸線の交差点Oに配置されることが望ましい。このように、ブレース10、10を、それぞれの軸線の交差点Oに配置することで、建築構造物100に対して地震などにより水平方向に加わる地震エネルギーを効果的に吸収することができる。
【0035】
具体的に、
図7~
図9に示すように、建築構造物100に対して地震などにより水平方向に地震エネルギーが加わると、建築構造物100も振動し架構が変形する。ブレース10は、架構の変形により図中白抜き矢印で示す圧縮軸力W1および引張軸力W2が加わることで伸縮し、振動によるエネルギーを吸収する。振動によるエネルギーの吸収は、ブレース10の軸力材11が塑性変形することにより行われる。ブレース10が振動によるエネルギーを吸収することにより、柱6および梁8に及ぶ振動が減衰される。
【0036】
このとき、ブレース10に作用する圧縮軸力W1および引張軸力W2は、ガセットプレート24、上面プレート23および縦プレート22を介してアンカー部21に伝達される。これにより、アンカー部21には、鉛直力N、水平力Hおよび曲げモーメントMが作用する。反力プレート214には、水平力Hに対抗して、鉄筋コンクリート梁4から水平反力HRが作用する。上フランジ211の外面には、鉛直力Nに対抗して、鉄筋コンクリート梁4から鉛直反力NRUが作用する。下フランジ212の外面には、鉛直力Nに対抗して、鉄筋コンクリート梁4から鉛直反力NRLが作用する。また、曲げモーメントMに対抗して、上フランジ211の外面における鉛直反力NRUと、下フランジ212の外面における鉛直反力NRLと、のコンクリート反力分布形状による曲げ抵抗力が作用する。このように、アンカー部21は、上フランジ211、下フランジ212およびウエブ213によるH形断面をなしており、アンカー部21に作用する鉛直力Nおよび曲げモーメントMに対して、H形断面の梁として剛性や強度を確保している。また、2つのブレース10の軸線が交差する点Oにアンカー部21の中心点が位置するように、固定部20を設置することにより、アンカー部21に曲げモーメントMが作用しなくなる。これにより、鉛直力Nと水平力Hに抵抗するようにアンカー部21を設計すればよいため、固定部20の断面や長さを削減でき、コストダウンを図ることができる。
【0037】
なお、
図1に示される建築構造物100に設置されるブレース10の数および位置は、一例であり、適宜変更することができる。
【0038】
(実施の形態1に係るブレース10の取付方法)
ここで、
図1に示した建築構造物100に設置されるブレース10は、
図10に示す、以下のような手順、すなわち、ブレース10の取付方法によって構築される。以下、
図10を用いてブレース10の取付方法について説明する。
図10は、実施の形態1に係るブレース10の取付方法を示すフローチャートである。
【0039】
図10に示すように、まず、フーチング3が形成された地盤1上の均しコンクリート1Aの上面に固定架構30を設置する(ステップS1)。このとき、レベル確認後の地盤1上の均しコンクリート1Aの上面に固定架構30の下端部の梁状部材32および角材33を、定着あと打ちボルト35で固定することで、固定架構30の移動や、地盤1への埋め込み(下がり)を防止する。また、固定架構30の定着あと打ちボルト35による固定後に、再度、レベルおよび位置の確認を行う。
【0040】
次に、均しコンクリート1Aに設置した固定架構30上にアンカー部21、縦プレート22および上面プレート23を溶接にて取り付け、固定部20を形成する(ステップS2)。次いで、鉄筋コンクリート梁4を構成する主鉄筋41および帯鉄筋42(
図5参照)等の基礎配筋を行う(ステップS3)。このとき、縦プレート22には、鉄筋(帯鉄筋42)を挿通させる鉄筋孔22aが形成されているので、縦プレート22によって配筋作業が妨害されることはない。
【0041】
次に、コンクリートを打設して固定部20を埋設した鉄筋コンクリート梁4を形成する(ステップS4)。このとき、固定部20の上面プレート23が鉄筋コンクリート梁4の表面に露出するように、コンクリートを打設する。次いで、埋戻しを行う(ステップS5)。ここで、上面プレート23に対する溶接作業スペースを確保するため、固定部20を埋設した鉄筋コンクリート梁4の溶接作業側の埋戻し土をトン袋に確保し、土留めを設置する。
【0042】
次いで、鉄筋コンクリート梁4上に露出した上面プレート23にガセットプレート24を溶接する(ステップS6)。次に、フーチング3上に柱6や梁8等の鉄骨を設置し(ステップS7)、土砂を埋戻しして(ステップS8)、スラブ7下までコンクリートを打設する(ステップS9)。
【0043】
次に、スラブ7の配筋を行い(ステップS10)、コンクリートを打設してスラブ7を形成する(ステップS11)。そして、この後、ブレース10を設置する(ステップS12)。このとき、ブレース10の上端部に設けられた取付部材13は、柱6と梁8との間に設けられた接合部材9に不図示のボルトなどによって接合される。また、ブレース10の下端部に設けられた取付部材13は、鉄筋コンクリート梁4内に埋設固定された固定部20のガセットプレート24に対し、添接板14や高力ボルト15を用いて接合される。
【0044】
(実施の形態1の効果)
以上、説明したように、本実施の形態1に係るブレース10の取付構造では、建築構造物100を構成する一つの架構に対して、ブレース10を設置する際に、当該ブレース10を固定する固定部20が鉄筋コンクリート梁4内に埋設される。このため、ブレース10の固定用のアンカーボルトを不要とし、建築構造物100の床面の景観を損なうことなく、建築構造物100の内部空間を有効活用できると共に、ボルト設置のための施工コストを削減しつつ、工期の長期化を抑制できる。
【0045】
(ブレース10の取付構造の変形例)
図11は、実施の形態1に係るブレース10の取付構造の変形例1を示す正面図である。
図11に示すように、変形例1に係るブレース10の取付構造は、固定部20を用いて建築構造物100を構成する一つの架構に対して設置するブレース10が1つである点を除き、前述した実施の形態1と同様に構成されている。この場合も、実施の形態1と同様に、ブレース10を固定する固定部20が鉄筋コンクリート梁4内に埋設されるため、ブレース10の固定用のアンカーボルトを不要とする。よって、建築構造物100の床面の景観を損なうことなく、建築構造物100の内部空間を有効活用できると共に、ボルト設置のための施工コストを削減しつつ、工期の長期化を抑制できる。
【0046】
図12は、実施の形態1に係るブレース10の取付構造の変形例2を示す正面図である。
図12に示すように、変形例2に係るブレース10の取付構造は、ブレース10の下端部に設けられた取付部材13を延長し、固定部20の上面プレート23に対し、直接、溶接接合している。変形例2に係るブレース10の取付構造は、取付部材13を延長し、固定部20の上面プレート23に対し、直接、溶接接合している点を除き、前述した実施の形態1と同様に構成されている。
【0047】
変形例2に係るブレース10の取付構造の場合、固定部20を鉄筋コンクリート梁4内に埋設するところまでは、実施の形態1と同様である。そして、鉄筋コンクリート梁4内に埋設された固定部20の上面プレート23に対し、ブレース10の下端部の延長された取付部材13を直接、溶接接合する。その後、コンクリートを打設してスラブ7を形成すると共に、固定部20の上面プレート23にブレース10の下端部の取付部材13を固着させる。
【0048】
この場合も、実施の形態1と同様に、ブレース10を固定する固定部20が鉄筋コンクリート梁4内に埋設されるため、ブレース10の固定用のアンカーボルトを不要とする。よって、建築構造物100の床面の景観を損なうことなく、建築構造物100の内部空間を有効活用できると共に、ボルト設置のための施工コストを削減しつつ、工期の長期化を抑制できる。加えて、ガセットプレート24が不要となると共に、ガセットプレート24の固定用の添接板14や高力ボルト15(
図2参照)等も不要となるため、部品点数を削減でき、コストダウンを図ることもできる。
【0049】
図13は、実施の形態1に係るブレース10の取付構造の変形例3を示す正面図である。
図13に示すように、変形例3に係るブレース10の取付構造の場合、固定部20のアンカー部21において、反力プレート214に替えて、上フランジ211および下フランジ212の外面側に反力プレート217が設けられている。この場合、上フランジ211および下フランジ212と、ウエブ213と、の長手方向における両端部に設けられた反力プレート214に替えて、上フランジ211および下フランジ212の外面側に反力プレート217が設けられている。変形例3に係るブレース10の取付構造は、この点を除き、前述した実施の形態1と同様に構成されている。
【0050】
反力プレート217は、上フランジ211および下フランジ212の外面に、それぞれ同形状のものを別体として配置し、溶接などによって接合する構成としてもよいし、上フランジ211および下フランジ212を貫通させる貫通孔が形成された1つの反力プレート217で構成してもよい。なお、後者の場合も前者と同様に、反力プレート217と上フランジ211および下フランジ212の外面とは溶接などによって接合される。これにより、上フランジ211および下フランジ212の両端部に反力プレート214を設ける場合と比較して、コンクリートの打設時に、隅々までコンクリートを行きわたらせることができ、コンクリートを確実に充填できる。また、コンクリートの打設作業における効率化を図ることもできる。
【0051】
この場合も、実施の形態1と同様に、ブレース10を固定する固定部20が鉄筋コンクリート梁4内に埋設されるため、ブレース10の固定用のアンカーボルトを不要とする。よって、建築構造物100の床面の景観を損なうことなく、建築構造物100の内部空間を有効活用できると共に、ボルト設置のための施工コストを削減しつつ、工期の長期化を抑制できる。加えて、反力プレート214に替えて、反力プレート217を上フランジ211および下フランジ212の外面に設け、補剛リブ215が不要となる分、部品点数も削減できる。
【0052】
図14は、実施の形態1に係るブレース10の取付構造の変形例4を示す正面図である。
図14に示すように、変形例4に係るブレース10の取付構造は、前述した変形例3の反力プレート217に替えて、上フランジ211および下フランジ212の間に反力プレート218が設けられている。この点を除き、変形例4に係るブレース10の取付構造は、変形例3と同様に構成されている。すなわち、変形例4のブレース10の取付構造の場合、上フランジ211および下フランジ212の外面の反力プレート217に替えて、上フランジ211および下フランジ212の間に反力プレート218が立設されている。これにより、反力プレート218が上フランジ211および下フランジ212における中間リブとして、上フランジ211および下フランジ212の断面保持機能を兼ね備えることができる。
【0053】
この場合も、実施の形態1と同様に、ブレース10を固定する固定部20が鉄筋コンクリート梁4内に埋設されるため、ブレース10の固定用のアンカーボルトを不要とする。よって、建築構造物100の床面の景観を損なうことなく、建築構造物100の内部空間を有効活用できると共に、ボルト設置のための施工コストを削減しつつ、工期の長期化を抑制できる。加えて、反力プレート214に替えて、反力プレート218を上フランジ211および下フランジ212の間に設け、補剛リブ215が不要となる分、部品点数も削減できる。
【0054】
このように、反力プレート214、217および218は、アンカー部21における上フランジ211および下フランジ212の長手方向における両端部または両端部間、より具体的には両端部の間の任意の位置に配置されていればよい。
【符号の説明】
【0055】
1 地盤、1A 均しコンクリート、2 杭、3 フーチング、4 鉄筋コンクリート梁、5 基礎、6 柱、7 スラブ、8 梁、9 接合部材、10 ブレース、11 軸力材、12 補剛材、13 取付部材、14 添接板、15 高力ボルト、20 固定部、21 アンカー部、22 縦プレート、22a 鉄筋孔、23 上面プレート、24 ガセットプレート、30 固定架構、31 柱状部材、32 梁状部材、33 角材、34 補強部材、35 定着あと打ちボルト、41 主鉄筋、42 帯鉄筋、100 建築構造物、211 上フランジ、212 下フランジ、213 ウエブ、214 反力プレート、215 補剛リブ、216 補剛プレート、217 反力プレート、218 反力プレート、O 交差点。