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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】検量線生成装置及び自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20231006BHJP
【FI】
G01N35/00 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019204795
(22)【出願日】2019-11-12
(65)【公開番号】P2021076524
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 順生
(74)【代理人】
【識別番号】100202429
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 信人
(72)【発明者】
【氏名】相澤 優作
(72)【発明者】
【氏名】杉田 悟
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-502094(JP,A)
【文献】特開平10-111248(JP,A)
【文献】特開昭54-108693(JP,A)
【文献】特開2019-082477(JP,A)
【文献】特開昭54-109494(JP,A)
【文献】特開昭60-079269(JP,A)
【文献】特開平07-218507(JP,A)
【文献】特開平08-075740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器に既知の濃度の検出対象を含む標準試料と、前記検出対象と結合する成分が固定化された不溶性担体を含む試薬とを吐出する分注部と、
前記標準試料と前記試薬との反応液を光学的に測定する測光部と、
前記測光部で測定した複数の異なる濃度の前記標準試料の測定結果を表す反応曲線に近似する近似関数を導出し、この導出した近似関数のパラメータに基づいて、検量線を生成する検量線生成部であって、測定結果に基づいて、前記反応曲線における前記近似関数を導出する区間を変更する、検量線生成部と、
を備える検量線生成装置であって、
前記検量線生成部は、前記測定結果に基づいて導出した近似関数の前記反応曲線への近似の精度に基づいて、前記反応曲線における前記近似関数を導出する区間を変更する、検量線生成装置
【請求項2】
前記検量線生成部は、導出した近似関数が前記反応曲線に所定の基準よりも高い精度で近似した場合に、その導出した近似関数を前記反応曲線の近似関数とする、請求項に記載の検量線生成装置。
【請求項3】
前記検量線生成部は、導出した近似関数の前記反応曲線への近似の精度が、前記所定の基準以下であった場合には、前記反応曲線における前記近似関数を導出する区間を短くして、再度、その反応曲線に近似する近似関数を導出する、請求項に記載の検量線生成装置。
【請求項4】
前記検量線生成部は、前記反応曲線における前記近似関数を導出する区間を短くする際には、前記導出する区間の始点及び終点の少なくとも一方を移動する、請求項に記載の検量線生成装置。
【請求項5】
前記検量線生成部は、前記反応曲線と前記近似関数との間の近似の精度を、吸光度の測定値に基づいて生成された前記反応曲線と、これを近似した前記近似関数との間における近似の程度を示す値である決定係数を算出して判定する、請求項乃至請求項のいずれかに記載の検量線生成装置。
【請求項6】
前記検量線生成部は、導出した近似関数の前記決定係数が、所定の閾値を上回った場合に、導出した近似関数が前記反応曲線に所定の基準よりも高い精度で近似したと判定する、請求項に記載の検量線生成装置。
【請求項7】
前記近似関数は、n次関数(nは自然数)である、請求項1乃至請求項のいずれかに記載の検量線生成装置。
【請求項8】
前記近似関数は、y=ax+bの一次関数であり、前記検量線生成部は、パラメータaを、前記標準試料の既知の濃度に対する測定値として、検量線を生成する、請求項に記載の検量線生成装置。
【請求項9】
前記検量線生成部が生成した検量線を記憶する記憶部をさらに備える、請求項1乃至請求項のいずれかに記載の検量線生成装置。
【請求項10】
前記分注部は、不知の濃度の前記検出対象を含む被検試料に、前記試薬を吐出して添加し、
前記測光部は、前記被検試料に前記試薬が添加された反応液を光学的に測定するとともに、
前記測光部で測定した前記被検試料の測定結果を表す反応曲線に近似する近似関数を導出し、この導出した近似関数のパラメータと、前記記憶部から読み出した検量線とに基づいて、前記被検試料の前記検出対象の濃度を算出する検出対象濃度算出部と、
請求項に記載の検量線生成装置と、
を備える自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、検量線生成装置及び自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、検出対象の成分を含む血液等の被検試料に種々の検査項目に対応する試薬を添加し、被検試料に含まれる特定の成分に試薬を反応させる。自動分析装置は、この反応を、例えば光学的に測定することで、検査項目に対応した被検試料の成分を分析する。
【0003】
このような自動分析装置において、ラテックス凝集法を用いて測定の高感度化を図る技術が知られている。ラテックス凝集法では、不溶性の担体であるラテックス粒子の表面に抗体を結合させた試薬を被検試料に添加して反応液とする。反応液では、被検試料中に含まれる抗原がラテックス粒子の表面の抗体と結合することで、ラテックス粒子が凝集する。そして、ラテックス粒子が凝集する過程において、反応液に光を照射し、反応液を光が通過する際に弱まる程度、すなわち吸光度を測定することで、試料中に含まれる検出対象の濃度を測定する。
【0004】
吸光度に基づいて、被検試料中に含まれる検出対象の濃度を測定するためには、予め、吸光度と被検試料中の検出対象の濃度との関係を定めた検量線を生成しておく必要がある。検量線を生成するためには、自動分析装置において、予め濃度が分かっている標準試料に試薬を添加し、この添加した後に測定される吸光度の変化を示す反応曲線を、複数の濃度について生成する必要がある。そして、この反応曲線を表したグラフを用いて、試薬を添加した後の所定タイミングにおける吸光度を、標準試料の既知の濃度に1対1で対応付けることにより、検量線が得られる。
【0005】
しかしながら、異なる複数の濃度の標準試料について生成した反応曲線において、高濃度の標準試料に関してフック現象が発生し、時間の経過とともに、高濃度の反応曲線で示される吸光度が、それよりも濃度の低い反応曲線で示される吸光度よりも低くなってしまう現象が現れる。これは、測定対象の標準試料が高濃度であるにもかかわらず、試薬との反応が抑制されてしまうことにより生じる現象である。このため、フック現象が起こる前の区間を用いるように吸光度測定区間を設定したり、フック現象が起こった場合に自動分析装置がエラーを出力したりするような対策がとられている。
【0006】
その一方で、低濃度の被検試料を実際に測定する際には、試料と試薬の反応がある程度進み、異なる低濃度の間でお互いの吸光度の違いが明瞭になる測光タイミングで測定した吸光度を用いて濃度を決定する方が望ましい。また、自動分析装置がエラーを出力したとしても、フック現象に対する解決策としては十分とはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-082477号公報
【文献】特開2011-226909号公報
【文献】特開2019-060813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本実施形態の目的は、標準試料の測定結果である反応曲線に基づいて、適切な検量線を生成し得る検量線生成装置及び自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態に係る検量線生成装置は、既知の濃度の検出対象を含む標準試料に、前記検出対象と結合する成分が固定化された不溶性担体を含む試薬を吐出して添加する分注部と、前記標準試料に前記試薬が添加された反応液を光学的に測定する測光部と、前記測光部で測定した複数の異なる濃度の前記標準試料の測定結果を表す反応曲線に近似する近似関数を導出し、この導出した近似関数のパラメータに基づいて、検量線を生成する検量線生成部であって、測定結果に基づいて、前記反応曲線における前記近似関数を導出する区間を変更する、検量線生成部と、を備える。
【0010】
また、本実施形態に係る自動分析装置は、上記検量線生成装置を備えた上で、前記分注部は、不知の濃度の前記検出対象を含む被検試料に、前記試薬を吐出して添加し、前記測光部は、前記被検試料に前記試薬が添加された反応液を光学的に測定するとともに、前記測光部で測定した前記被検試料の測定結果を表す反応曲線に近似する近似関数を導出し、この導出した近似関数のパラメータと、前記記憶部から読み出した検量線とに基づいて、前記被検試料の前記検出対象の濃度を算出する検出対象濃度算出部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る自動分析装置の機能構成を示したブロック図。
図2図1に示す自動分析装置における分析機構の構成の一例を示す図。
図3】標準試料についての測定値及び反応曲線の一例を表す図。
図4】ある反応曲線を用いて、その反応曲線の近似関数を導出する手法を説明する図(近似の精度が低い状態)。
図5】ある反応曲線を用いて、その反応曲線の近似関数を導出する手法を説明する図(近似関数を導出する区間を短くして、近似の精度を上げた状態)。
図6】ある反応曲線を用いて、その反応曲線の近似関数を導出する手法を説明する図(近似関数を導出する区間をさらに短くして、近似の精度をさらに上げた結果、近似の精度が所定の基準よりも高くなった状態)。
図7】近似関数を導出した区間を明示して、複数の異なる濃度の標準試料の反応曲線と、その導出された近似関数を示す図。
図8】導出された近似関数に基づいて生成された検量線の一例を示す図。
図9図3の測定値及び反応曲線に、ある被検試料の測定値及び反応曲線を追加した図。
図10】被検試料の測定値である傾きaに基づいて、その被検試料の検出対象の濃度を算出する手法の一例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本実施形態に係る自動分析装置を説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行うこととする。
【0013】
(自動分析装置)
図1は、本実施形態に係る自動分析装置1の機能構成の例を示すブロック図である。図1に示される自動分析装置1は、例えば、分析機構2と、解析回路3と、駆動機構4と、入力インターフェース5と、出力インターフェース6と、通信インターフェース7と、記憶回路8と、制御回路9とを備えて構成されている。
【0014】
自動分析装置1は、ラテックス凝集法を用いて試料等の濃度を測定する装置であり、試薬に添加する不溶性の担体としては、各種の担体粒子が利用可能である。担体粒子としては、例えば、ラテックス粒子、ポリスチレン、ポリスチレンラテックス、シリカ粒子等を用いることができる。
【0015】
分析機構2は、標準試料、又は、被検試料等の試料に、この試料に設定される各検査項目で用いられる試薬を添加する。分析機構2は、試料に試薬を添加して得られる反応液を測定し、例えば、標準データ、及び、被検データを生成する。本実施形態においては、標準データは、含まれる検出対象の濃度が既知の標準試料についての吸光度の測定データを表す。また、被検データは、被検試料についての吸光度の測定データを表す。
【0016】
解析回路3は、分析機構2により生成される標準データ及び被検データを解析し、検量データ及び分析データ等を生成するプロセッサである。検量データは、例えば、標準データに基づいて生成された検量線に関する情報を含んでいる。また、分析データは、被検データを検量データに基づいて分析することで得られる、例えば、被検試料に含まれる検出対象の濃度に関する情報を含んでいる。
【0017】
解析回路3は、記憶回路8に記憶されている動作プログラムを実行し、この動作プログラムに対応する機能を実現することで、検量データ及び分析データ等を生成する。例えば、解析回路3は、1)吸光度が既知で濃度が0の標準試料と、濃度が既知である複数の標準試料とについて得られた標準データと、2)これらの標準試料について予め設定された濃度と、3)予め設定された測光タイミング等に基づき、検量線を生成し、この検量線に関する情報を含む検量データを算出する。また、解析回路3は、被検データと、この被検データに対応する検査項目の検量線を含む検量データと、予め設定された測光タイミング等に基づき、分析データを生成する。解析回路3は生成した検量データ及び分析データ等を制御回路9へ出力する。
【0018】
駆動機構4は、制御回路9の制御に従い、分析機構2を駆動させる。駆動機構4は、例えば、ギア、ステッピングモータ、ベルトコンベア、及びリードスクリュー等により実現される。
【0019】
入力インターフェース5は、例えば、操作者から又は病院内ネットワークNWを介して、測定を依頼された試料に係る各検査項目の分析パラメータ等の設定を受け付ける。入力インターフェース5は、例えば、マウス、キーボード、及び、操作面へ触れることで指示が入力されるタッチパッド等により実現される。入力インターフェース5は、制御回路9に接続され、操作者から入力される操作指示を電気信号へ変換し、電気信号を制御回路9へ出力する。なお、本実施形態においては、入力インターフェース5は、マウス、及びキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、自動分析装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力される操作指示に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路9へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース5の例に含まれる。
【0020】
出力インターフェース6は、制御回路9に接続され、制御回路9から供給される信号を出力する。出力インターフェース6は、例えば、表示回路、及び印刷回路等により実現される。表示回路には、例えば、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、及びプラズマディスプレイ等が含まれる。なお、本実施形態においては、表示対象を表すデータをビデオ信号に変換し、ビデオ信号を外部へ出力する処理回路も表示回路に含まれる。印刷回路は、例えば、プリンタ等を含む。なお、本実施形態においては、印刷対象を表すデータを外部へ出力する出力回路も印刷回路に含まれる。
【0021】
通信インターフェース7は、例えば、病院内ネットワークNWに接続されており、自動分析装置1を病院内ネットワークNWに接続する。通信インターフェース7は、病院内ネットワークNWを介してHIS(Hospital Information System)とデータ通信を行う。なお、通信インターフェース7は、病院内ネットワークNWと接続する検査部門システム(Laboratory Information System:LIS)を介してHISとデータ通信を行っても構わない。
【0022】
記憶回路8は、磁気的、若しくは、光学的記録媒体、又は、半導体メモリ等の、プロセッサにより読み取り可能な記録媒体等により構成されている。なお、記憶回路8は、必ずしも単一の記憶装置により実現される必要は無い。例えば、記憶回路8は、複数の記憶装置により実現することもできる。
【0023】
また、記憶回路8は、解析回路3で実行される動作プログラム、及び、制御回路9で実行される動作プログラムを記憶している。記憶回路8は、分析機構2内に保持されている試薬に関する検量線に関する情報を記憶する。詳しくは後述するが、分析機構2で使用される試薬に関する検量線は、自動分析装置1にて生成され、検量データとして、記憶回路8に記憶される。また、記憶回路8に記憶される検量データには、例えば、試薬について予め設定された測光タイミングに関するデータも、検査項目毎に含まれている。
【0024】
測光タイミングは、検量線を含む検量データを生成する際に用いる吸光度等の情報を取得する時点を表す。すなわち、測光タイミングは、例えば、検出対象と結合する成分が固定化された不溶性担体である担体粒子が含まれる試薬を標準試料に添加してからの経過時間を表している。また、測光タイミングは、分析データを生成する際に用いる吸光度等の情報を取得する時点を表す。すなわち、測光タイミングは、例えば、不溶性担体の粒子が含まれる試薬を被検試料に添加してからの経過時間を表している。
【0025】
すなわち、記憶回路8は、解析回路3により生成される検量データを、検査項目毎に記憶する。また、記憶回路8は、解析回路3により生成される分析データを、被検試料毎に記憶する。
【0026】
制御回路9は、自動分析装置1の中枢として機能するプロセッサである。制御回路9は、記憶回路8に記憶されている動作プログラムを実行することで、この動作プログラムに対応する機能を実現する。なお、制御回路9は、記憶回路8で記憶されているデータの少なくとも一部を記憶する記憶領域を備えていてもよい。
【0027】
図2は、図1に示す分析機構2の構成の一例を示す模式図である。この図2に示すように、本実施形態に係る自動分析装置1の分析機構2は、反応ディスク201と、恒温部202と、サンプルディスク203と、第1試薬庫204と、第2試薬庫205とを備えて構成されている。
【0028】
反応ディスク201は、反応容器2011を所定の経路に沿って搬送する。具体的には、反応ディスク201は、複数の反応容器2011を、環状に配列させて保持する。反応ディスク201は、駆動機構4により、既定の時間間隔で回動と停止とが交互に繰り返される。
【0029】
反応容器2011は、例えば、ガラスにより形成されている。反応容器2011は、四角柱状をなしており、上部に開口部を有している。四角柱を形成する第1乃至第4側壁のうち、第1側壁の外面からは、測光ユニット214に設けられる光源から照射される光が入射される。第1乃至第4側壁のうち、第1側壁と対向する第2側壁の外面からは、第1側壁の外面から入射された光が出射される。
【0030】
恒温部202は、所定の温度に設定された熱媒体を貯留する。恒温部202は、貯留する熱媒体に反応容器2011を浸漬させることで、反応容器2011に収容される反応液を所定の温度まで昇温し保温する。
【0031】
サンプルディスク203は、試料を収容する試料容器を複数保持する。サンプルディスク203は、駆動機構4により回動される。本実施形態においては、検出対象の成分を含む試料を適宜、被検試料と言う。
【0032】
第1試薬庫204は、標準試料及び被検試料に含まれる所定の成分と反応する第1試薬を収容する試薬容器を複数保冷する。第1試薬は、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)等を含む緩衝液である。試薬容器には、試薬ラベルが貼付されている。試薬ラベルには、試薬情報を表す光学式マークが印刷されている。光学式マークには、例えば、1次元画素コード及び2次元画素コード等、任意の画素コードが用いられる。試薬情報は、試薬容器に収容される試薬に関する情報であり、例えば、試薬名、試薬メーカコード、試薬項目コード、ボトル種類、ボトルサイズ、容量、製造ロット番号、及び、有効期間等を含んでいる。
【0033】
また、第1試薬庫204は、標準試料を収容する標準試料容器を複数保冷する。複数の標準試料容器のそれぞれには、濃度が異なる同一の成分の標準試料が収容されている。なお、標準試料容器は、サンプルディスク203に保持されていても構わない。
【0034】
第1試薬庫204内には、試薬ラック2041が回転自在に設けられている。試薬ラック2041は、複数の試薬容器及び複数の標準試料容器を、円環状に配列して保持する。試薬ラック2041は、駆動機構4により回動される。また、第1試薬庫204内には、試薬容器に貼付されている試薬ラベルから試薬情報を読み取るリーダ(図示せず)が設けられている。読み取られた試薬情報は、記憶回路8で記憶される。
【0035】
第1試薬庫204上の所定の位置には、第1試薬吸引位置が設定されている。第1試薬吸引位置は、例えば、第1試薬分注プローブ209の回動軌道と、試薬ラック2041に円環状に配列される試薬容器及び標準試料容器の開口部の移動軌道とが、交差する位置に設けられる。
【0036】
第2試薬庫205は、2試薬系の第1試薬と対をなす第2試薬を収容する試薬容器を複数保冷する。第2試薬は、試料に含まれる所定の抗原又は抗体と、特異的抗原抗体反応により結合又は乖離する抗原又は抗体が固定化された不溶性担体、例えば、担体粒子を含む溶液である。特異的反応により結合又は乖離するものとして酵素、基質、アプタマー、受容体であっても良い。第2試薬庫205内には、試薬ラック2051が回転自在に設けられている。
【0037】
試薬ラック2051は、複数の試薬容器を円環状に配列して保持する。なお、第2試薬庫205において、標準試料を収容する標準試料容器が保冷されていてもよい。試薬ラック2051は、駆動機構4により回動される。また、第2試薬庫205内には、試薬容器に貼付されている試薬ラベルから試薬情報を読み取るリーダ(図示せず)が設けられている。読み取られた試薬情報は、記憶回路8で記憶される。
【0038】
第2試薬庫205上の所定の位置には、第2試薬吸引位置が設定されている。第2試薬吸引位置は、例えば、第2試薬分注プローブ211の回動軌道と、試薬ラック2051に円環状に配列される試薬容器の開口部の移動軌道とが、交差する位置に設けられる。
【0039】
また、図2に示す自動分析装置1の分析機構2は、さらに、サンプル分注アーム206と、サンプル分注プローブ207と、第1試薬分注アーム208と、第1試薬分注プローブ209と、第2試薬分注アーム210と、第2試薬分注プローブ211と、第1攪拌ユニット212と、第2攪拌ユニット213と、測光ユニット214と、洗浄ユニット215を備えて構成されている。
【0040】
サンプル分注アーム206は、反応ディスク201とサンプルディスク203との間に設けられている。サンプル分注アーム206は、駆動機構4により、鉛直方向に上下動自在、かつ、水平方向に回動自在に設けられている。サンプル分注アーム206は、一端にサンプル分注プローブ207を保持する。
【0041】
サンプル分注プローブ207は、サンプル分注アーム206の回動に伴い、円弧状の回動軌道に沿って回動する。この回動軌道上には、サンプルディスク203で保持される試料容器の開口部が位置するようになっている。また、サンプル分注プローブ207の回動軌道上には、サンプル分注プローブ207が吸引した試料を反応容器2011へ吐出するためのサンプル吐出位置が設けられている。サンプル吐出位置は、サンプル分注プローブ207の回動軌道と、反応ディスク201に保持されている反応容器2011の移動軌道とが、交差する位置に設けられる。
【0042】
サンプル分注プローブ207は、駆動機構4によって駆動され、サンプルディスク203で保持される試料容器の開口部の直上、又は、サンプル吐出位置において上下方向に移動する。また、サンプル分注プローブ207は、制御回路9の制御に従い、直下に位置する試料容器から試料を吸引する。また、サンプル分注プローブ207は、制御回路9の制御に従い、吸引した試料を、サンプル吐出位置の直下に位置する反応容器2011へ吐出する。
【0043】
第1試薬分注アーム208は、第1試薬庫204の外周近傍に設けられている。第1試薬分注アーム208は、駆動機構4により、鉛直方向に上下動自在、かつ、水平方向に回動自在に設けられている。第1試薬分注アーム208は、一端に第1試薬分注プローブ209を保持している。
【0044】
第1試薬分注プローブ209は、第1試薬分注アーム208の回動に伴い、円弧状の回動軌道に沿って回動する。この回動軌道上には、第1試薬吸引位置が設けられている。また、第1試薬分注プローブ209の回動軌道上には、第1試薬分注プローブ209が吸引した第1試薬又は標準試料を反応容器2011へ吐出するための第1試薬吐出位置が設定されている。第1試薬吐出位置は、第1試薬分注プローブ209の回動軌道と、反応ディスク201に保持されている反応容器2011の移動軌道とが、交差する位置に設けられる。
【0045】
第1試薬分注プローブ209は、駆動機構4によって駆動され、回動軌道上の第1試薬吸引位置又は第1試薬吐出位置において上下方向に移動する。また、第1試薬分注プローブ209は、制御回路9の制御に従い、第1試薬吸引位置の直下に位置する試薬容器から第1試薬又は標準試料を吸引する。また、第1試薬分注プローブ209は、制御回路9の制御に従い、吸引した第1試薬又は標準試料を、第1試薬吐出位置の直下に位置する反応容器2011へ吐出する。すなわち、第1試薬分注プローブ209は、本実施形態における分注部の一例である。
【0046】
第2試薬分注アーム210は、第1試薬庫204の外周近傍に設けられている。第2試薬分注アーム210は、駆動機構4により、鉛直方向に上下動自在、かつ、水平方向に回動自在に設けられている。第2試薬分注アーム210は、一端に第2試薬分注プローブ211を保持している。
【0047】
第2試薬分注プローブ211は、第2試薬分注アーム210の回動に伴い、円弧状の回動軌道に沿って回動する。この回動軌道上には、第2試薬吸引位置が設けられている。また、第2試薬分注プローブ211の回動軌道上には、第2試薬分注プローブ211が吸引した第2試薬を反応容器2011へ吐出するための第2試薬吐出位置が設定されている。第2試薬吐出位置は、第2試薬分注プローブ211の回動軌道と、反応ディスク201に保持されている反応容器2011の移動軌道とが、交点する位置に設けられる。
【0048】
第2試薬分注プローブ211は、駆動機構4によって駆動され、回動軌道上の第2試薬吸引位置、又は第2試薬吐出位置において上下方向に移動する。また、第2試薬分注プローブ211は、制御回路9の制御に従い、第2試薬吸引位置の直下に位置する試薬容器から第2試薬を吸引する。また、第2試薬分注プローブ211は、制御回路9の制御に従い、吸引した第2試薬を、第2試薬吐出位置の直下に位置する反応容器2011へ吐出する。すなわち、第2試薬分注プローブ211は、本実施形態における分注部の一例である。
【0049】
第1攪拌ユニット212は、反応ディスク201の外周近傍に設けられている。第1攪拌ユニット212は、第1攪拌アーム2121及び第1攪拌アーム2121の先端に設けられる第1攪拌子を有する。第1攪拌ユニット212は、第1攪拌子により、反応ディスク201上の第1攪拌位置に位置する反応容器2011内に収容されている標準試料と第1試薬との混合液を攪拌する。また、第1攪拌ユニット212は、第1攪拌子により、反応ディスク201上の第1攪拌位置に位置する反応容器2011内に収容されている被検試料と第1試薬との混合液を攪拌する。
【0050】
第2攪拌ユニット213は、反応ディスク201の外周近傍に設けられている。第2攪拌ユニット213は、第2攪拌アーム2131及び第2攪拌アーム2131の先端に設けられる第2攪拌子を有する。第2攪拌ユニット213は、第2攪拌子により、反応ディスク201上の第2攪拌位置に位置する反応容器2011内に収容されている標準試料、第1試薬、及び第2試薬の混合液を攪拌する。また、第2攪拌ユニット213は、第2攪拌子により、第2攪拌位置に位置する反応容器2011内に収容されている被検試料、第1試薬、及び第2試薬の混合液を攪拌する。
【0051】
測光ユニット214は、反応容器2011内に吐出された試料、第1試薬、及び第2試薬の反応液を光学的に測定する。測光ユニット214は、光源、及び光検出器を有する。測光ユニット214は、制御回路9の制御に従い、光源から光を照射する。照射された光は、反応容器2011の第1側壁から入射され、第1側壁と対向する第2側壁から出射される。測光ユニット214は、反応容器2011から出射された光を、光検出器により検出する。測光ユニット214は、本実施形態における測光部の一例である。
【0052】
具体的には、例えば、光検出器は、光源から反応容器2011に照射される光の光軸上の位置に配置されている。光検出器は、反応容器2011内の標準試料、第1試薬、及び第2試薬の反応液を透過した光を検出し、検出した光の強度に基づき、吸光度により表される標準データを生成する。また、光検出器は、反応容器2011内の被検試料、第1試薬、及び第2試薬の反応液を透過した光を検出し、検出した光の強度に基づき、吸光度により表される被検データを生成する。測光ユニット214は、生成した標準データ及び被検データを測定結果として解析回路3へ出力する。
【0053】
洗浄ユニット215は、測光ユニット214で反応液の測定が終了した反応容器2011の内部を洗浄する。
【0054】
図1に示すように、制御回路9は、記憶回路8に記憶されている動作プログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。例えば、制御回路9は、動作プログラムを実行することで、システム制御機能91、校正制御機能92、及び測定制御機能93を実現する。なお、本実施形態では、単一のプロセッサによってシステム制御機能91、校正制御機能92、及び測定制御機能93が実現される場合を説明するが、これに限定されない。例えば、複数の独立したプロセッサを組み合わせて制御回路を構成し、各プロセッサが動作プログラムを実行することによりシステム制御機能91、校正制御機能92、及び測定制御機能93を実現するようにしてもよい。
【0055】
システム制御機能91は、入力インターフェース5から入力される入力情報に基づき、自動分析装置1における各部を統括して制御する機能である。
【0056】
校正制御機能92は、標準データを生成するように、分析機構2及び駆動機構4を制御する機能である。具体的には、制御回路9は、所定のタイミングで校正制御機能92を実行する。所定のタイミングとは、例えば、初期設定時、装置起動時、メンテナンス時、及び操作者から校正動作開始の指示が入力された際等である。
【0057】
校正制御機能92を実行すると制御回路9は、分析機構2及び駆動機構4を制御する。分析機構2及び駆動機構4が制御されることで、分析機構2では、標準データが生成される。具体的には、例えば、駆動機構4により駆動されることで、分析機構2の第1試薬分注プローブ209は、標準試料を第1試薬庫204から吸引し、吸引した標準試料を反応容器2011へ吐出する。続いて、第1試薬分注プローブ209は、第1試薬を第1試薬庫204から吸引し、吸引した第1試薬を、標準試料が吐出された反応容器2011へ吐出する。続いて、第1攪拌ユニット212は、標準試料に第1試薬が添加された溶液を撹拌する。
【0058】
次に、第2試薬分注プローブ211は、第2試薬を第2試薬庫205から吸引し、吸引した第2試薬を、標準試料と第1試薬とが混合された混合液へ吐出する。続いて、第2攪拌ユニット213は、混合液に第2試薬が添加された溶液を撹拌する。測光ユニット214は、標準試料、第1試薬、及び第2試薬が撹拌されてなる反応液を光学的に測定することで、標準データを生成する。測光ユニット214は、生成した標準データを解析回路3へ出力する。測光ユニット214は、予め設定された周期で予め設定された回数、反応液の測定を繰り返し、生成した標準データを解析回路3へ出力する。分析機構2は、予め設定した複数の濃度の標準試料について上記動作を繰り返し、生成した標準データを解析回路3へ出力する。なお、標準試料、第1試薬、及び第2試薬を反応容器2011に吐出する順番は、上記に限られるものではなく、任意に順序を変更することが可能である。
【0059】
測定制御機能93は、被検データを生成するように、分析機構2及び駆動機構4を制御する機能である。具体的には、制御回路9は、所定の指示に応じて測定制御機能93を実行する。所定の指示とは、例えば、操作者から入力される測定動作開始の指示、及び予め設定した時刻に到達したことを表す指示等である。
【0060】
測定制御機能93を実行すると制御回路9は、分析機構2及び駆動機構4を制御する。分析機構2及び駆動機構4が制御されることで、分析機構2では、被検データが生成される。具体的には、駆動機構4により駆動されることで、分析機構2のサンプル分注プローブ207は、被検試料をサンプルディスク203から吸引し、吸引した被検試料を反応容器2011へ吐出する。続いて、第1試薬分注プローブ209は、第1試薬を第1試薬庫204から吸引し、吸引した第1試薬を、被検試料が吐出された反応容器2011へ吐出する。続いて、第1攪拌ユニット212は、被検試料に第1試薬が添加された溶液を撹拌する。
【0061】
次に、第2試薬分注プローブ211は、第2試薬を第2試薬庫205から吸引し、吸引した第2試薬を、被検試料と第1試薬とが混合された混合液へ吐出する。続いて、第2攪拌ユニット213は、混合液に第2試薬が添加された溶液を撹拌する。続いて、測光ユニット214は、被検試料、第1試薬、及び第2試薬が撹拌されてなる反応液を光学的に測定することで、被検データを生成する。測光ユニット214は、生成した被検データを解析回路3へ出力する。測光ユニット214は、予め設定された周期で予め設定された回数、反応液の測定を繰り返し、生成した被検データを解析回路3へ出力する。
【0062】
また、図1に示される解析回路3は、記憶回路8に記憶されている動作プログラムを実行することで、当該プログラムに対応する機能を実現する。例えば、解析回路3は、動作プログラムを実行することで、検量データ生成機能31及び分析データ生成機能32を実現する。なお、本実施形態では、単一のプロセッサによって検量データ生成機能31、及び分析データ生成機能32が実現される場合を説明するが、これに限定されない。例えば、複数の独立したプロセッサを組み合わせて解析回路を構成し、各プロセッサが動作プログラムを実行することにより検量データ生成機能31、及び分析データ生成機能32を実現するようにしてもよい。
【0063】
検量データ生成機能31は、分析機構2で生成された標準データに基づいて検量データを生成する機能である。具体的には、解析回路3は、分析機構2で生成された標準データを受信すると、検量データ生成機能31を実行する。検量データ生成機能31を実行すると解析回路3は、異なる複数の濃度の標準試料に関する吸光度を含む測定データである標準データに基づいて、検量線を生成する。この生成された検量線は、検量データとして記憶回路8に記憶させる。このため、検量データ生成機能31は、本実施形態における検量線生成部の一例である。
【0064】
分析データ生成機能32は、分析機構2で生成された被検データを解析することで分析データを生成する機能である。具体的には、解析回路3は、分析機構2で生成された被検データを受信すると、分析データ生成機能32を実行する。分析データ生成機能32を実行すると解析回路3は、検量線に関する情報を含む検量データを記憶回路8から読み出す。解析回路3は、これら被検データ及び検量データに基づき、被検試料の検出対象の濃度に関する情報を含む分析データを生成する。
【0065】
(検量線の生成)
次に、本実施形態に係る自動分析装置1における検量線の生成の例について詳細に説明する。以下では、例えば、病院等において、上記の自動分析装置1を用いて複数の異なる濃度の標準試料のそれぞれの吸光度が測定され、測定された吸光度に基づき、検量線が生成される場合を例に説明する。なお、本実施形態に係る自動分析装置1は、検量線を生成する際には、検量線生成装置としての役割を果たすこととなる。
【0066】
検量線の生成は、例えば、毎朝、病院の検査技師等の操作者により行われる。すなわち、操作者は、自動分析装置1を起動して、解析回路3の検量データ生成機能31を実行させる。解析回路3の検量データ生成機能31を実行すると、制御回路9は、分析機構2及び駆動機構4を制御して、検量線を生成し、この生成された検量線は検量データとして記憶回路8に記憶される。
【0067】
検量線を生成する際には、解析回路3及び制御回路9は、標準試料についてのタイムコース(反応曲線)を生成する。例えば、反応容器2011-1~2011-8へ、濃度が既知の標準試料S1~S8がそれぞれ分注される。例えば、標準試料S1の濃度は0であり、標準試料S2の濃度は0.5ng/mlであり、標準試料S3の濃度は1ng/mlであり、標準試料S4の濃度は2ng/mlであり、標準試料S5の濃度は4ng/mlであり、標準試料S6の濃度は8ng/mlであり、標準試料S7の濃度は16ng/mlであり、標準試料S8の濃度は32ng/mlであるとする。
【0068】
続いて、反応容器2011-1~2011-8へそれぞれ分注された標準試料S1~S8に、緩衝液である第1試薬が吐出されて添加される。第1試薬が添加された標準試料S1~S8は撹拌される。反応容器2011-1~2011-8に収容される混合液は、撹拌後、所定の温度で所定期間インキュベーションされる。インキュベーション後、反応容器2011-1~2011-8にそれぞれ収容される混合液に、標準試料中の検出対象と結合する成分が固定化された担体粒子を含む第2試薬が添加される。第2試薬が添加された混合液は撹拌される。
【0069】
反応容器2011-1~2011-8にそれぞれ収容される標準試料S1~S8、第1試薬、及び第2試薬の反応液は、所定の温度で所定期間インキュベーションされている間に光が照射される。具体的には、例えば、反応容器2011-1~2011-8には、標準試料S1~S8に第2試薬が添加された後、4.6秒の周期で33回、光源から光がそれぞれ照射される。反応容器2011-1~2011-8を透過した透過光は、光検出器により検出される。検出された光の強度に基づき、標準試料についての反応曲線であるタイムコースが取得される。すなわち、第1サイクルから第33サイクルのそれぞれで、反応液の吸光度が測定され、標準試料S1~S8のそれぞれについて、33回の吸光度が測定される。この測定結果である測定データが、標準データとなり、分析機構2から解析回路3に出力される。
【0070】
図3は、標準試料S1~S8についての測定値及びタイムコース(反応曲線)の例を表す図である。図3では、第17サイクルから第33サイクルにおいて、検出対象に関して濃度の異なる標準試料S1~S8を用いた反応液で測定された吸光度が表されている。図3において、四角印は吸光度の測定値を表し、各四角印を結んだ線は反応曲線を表す。反応曲線C1は、標準試料S1の各サイクルの吸光度に基づいて算出される。反応曲線C1と同様に、反応曲線C2~C8は、それぞれ標準試料S2~S8の各サイクルの吸光度に基づいて算出される。濃度が低い標準試料S2~S4については、反応時間の増加量と、吸光度の増加量とは、略比例関係にある。一方、濃度が中程度から高い標準試料S5~S8については、反応時間が経過すると、吸光度が飽和に近づく。
【0071】
この図3から分かるように、第2試薬に含まれる担体粒子の凝集反応は、試料の濃度が増大すると吸光度が飽和し、フック現象を起こす特性を有する。このため、本実施形態においては、標準試料S1~S8の反応曲線C1~C8に近似する近似関数を導出し、この導出した近似関数に基づいて検量線を生成する。特に、本実施形態においては、一次関数を用いて、反応曲線C1~C8を線形近似し、この一次関数に基づいて検量線を生成する。
【0072】
図4乃至図6は、本実施形態において、反応曲線に近似する近似関数を導出する過程を説明する図である。すなわち、図4乃至図6は、ある標準試料についての測定値に基づいて生成された反応曲線の一例を示しており、実線が反応曲線を示しており、点線が近似関数を示している。また、グラフにおいては、縦軸が吸光度を表しており、横軸が時間(サイクル)を表している。
【0073】
まず図4に示すように、解析回路3の検量データ生成機能31は、第19サイクルから第33サイクルの反応曲線を、一次関数を用いて線形近似して、近似関数を導出する。すなわち、y=ax+bの形の一次関数で、第19サイクルから第33サイクルの反応曲線を近似する。
【0074】
次に、解析回路3の検量データ生成機能31は、導出した近似関数について決定係数を算出して、近似の精度を求める。ここで、決定係数とは、吸光度の測定値に基づいて生成された反応曲線と、これを近似した一次関数との間における近似の程度を示す値である。この決定係数が1に近いほど、両者が近似していることを意味する。換言すれば、本実施形態において近似関数を導出するとは、この決定係数が最も小さくなるように、y=ax+bの一次関数のパラメータaとパラメータbを求めることを意味する。この図4の例では、決定係数は0.0091である。このため、反応曲線と導出した一次関数との間の近似の精度は低く、両者はかけ離れていることが分かる。
【0075】
このため、図5に示すように、解析回路3の検量データ生成機能31は、近似関数を導出する区間を狭める。本実施形態においては、反応曲線の始点である第19サイクルは不変にして、反応曲線の終点を、順次、始点の方向にずらして移動することにより、近似関数を導出する区間を短くしていく。これは、図3のタイムコース(反応曲線)から分かるように、フック現象が起こるのが33あるサイクルの内の終盤であり、このフック現象を避けて近似関数を導出できるようにするためである。また、濃度の高い標準試料S6~S8の反応曲線の形を観察すると、近似関数を導出する区間を短くすることにより、y=ax+bの一次関数で近似したとしても、決定係数の向上を期待できるからである。
【0076】
この図5の例では、終点を第33サイクルから、より早いサイクルである第27サイクルに移動して、第19サイクルから第27サイクルの反応曲線に近似する近似関数を導出する。このように近似関数を導出する区間を短くしたことにより、決定係数は0.7237に上昇している。本実施形態においては、この決定係数に所定の閾値を設定し、決定係数が所定の閾値を上回った場合に、導出した近似関数が反応曲線に所定の基準よりも高い精度で近似したと判定して、近似関数を決定する。ここでは、例えば決定係数の閾値を0.9であると仮定する。このため、図5に示した近似関数では、決定係数が閾値である0.9以下であるので、検量データ生成機能31は、さらに、近似関数を導出する区間を短くする。
【0077】
すなわち、図6に示すように、解析回路3の検量データ生成機能31は、終点を第27サイクルから、より早いサイクルである第24サイクルに移動して、第19サイクルから第24サイクルの反応曲線に近似する近似関数を導出する。このように近似関数を導出する区間を短くしたことにより、決定係数は0.9898に上昇している。この結果、図6の近似関数が決定係数の閾値である0.9を上回ったことになるので、解析回路3の検量データ生成機能31は、このときの近似関数であるy=ax+bのパラメータaとパラメータbを、この反応曲線に近似する近似関数のパラメータとして決定する。つまり、算出されたパラメータaとパラメータbに基づいて定まるy=ax+bが、この図4乃至図6に示されている反応曲線の近似関数であると決定し、近似関数の導出が終了する。
【0078】
解析回路3の検量データ生成機能31は、この近似関数の導出をすべての標準試料S1~S8の反応曲線C1~C8について行う。図7は、標準試料S1~S8について導出した近似関数を、それぞれの反応曲線C1~C8に重ねて示したタイムコースの一例を表しており、実線が反応曲線を示しており、点線が近似関数を示している。また、この図7においては、近似関数を導出した区間だけ、反応曲線と近似関数を描いている。このため、反応曲線と近似関数の横軸の長さは、反応曲線における近似関数を導出した区間の長さを示している。
【0079】
図7に示すように、標準試料S1~S8の反応曲線C1~C8は、試料の濃度が高くなると、近似関数を導出する区間が短くっている。これは、図3からも分かるように、標準試料の濃度が高くなると、反応曲線の長い区間を一次関数であるy=ax+bで近似することが難しく、どうしても反応曲線の短い区間の近似しかできないためである。このため、結果として、高い濃度でフック現象が発生する、反応曲線の終盤のサイクルを排除することができる。
【0080】
次に、解析回路3の検量データ生成機能31は、近似関数y=ax+bの傾きaを測定値として、検量線を生成する。すなわち、パラメータaを、標準試料の既知の濃度に対する測定値として、検量線を生成する。図8は、解析回路3の検量データ生成機能31が生成した検量線の一例を示す図である。この図8は、図7に例示した標準試料S1~S8のそれぞれについて、近似関数y=ax+bの傾きを示すパラメータaを測定値として検量線を描いている。また、図8に示すグラフにおいては、縦軸が傾きaを表しており、横軸が濃度を表している。
【0081】
具体的には、図7に示したグラフにおける標準試料S1~S8の近似関数の傾きaは、それぞれ、0.0001、0.0106、0.0157、0.0215、0.0261、0.0329、0.0422、0.0573である。また、標準試料S1~S8の濃度は、それぞれ、0、0.5ng/ml、1ng/ml、2ng/ml、4ng/ml、8ng/ml、16ng/ml、32ng/mlであるので、これらを、図8に示すグラフにプロットし、各プロットの間を線形補間して直線で結ぶことにより、本実施形態に係る検量線が生成される。或いは、各プロットを滑らかな曲線で結ぶことにより、検量線を生成するようにしてもよい。このようにして生成された検量線は、検量データとして、解析回路3から記憶回路8に出力されて記憶される。
【0082】
また、解析回路3は、検量データに加えて、測光タイミングに関するデータも、記憶回路8に記憶させる。すなわち、本実施形態においては、検量線を生成する際に標準試料S1~S8を測定するタイミングである、1サイクルが4.6秒の周期で33回、測定するという情報も、測光タイミングに関するデータとして記憶回路8に記憶される。
【0083】
これらの説明から明らかなように、自動分析装置1を用いて検量線を生成する際には、この自動分析装置1は、検量線生成装置として機能することが分かる。
【0084】
(分析データの生成)
次に、自動分析装置1が分析データを生成する動作の例を詳細に説明する。
【0085】
制御回路9は、例えば、操作者から測定動作開始の指示が入力されると、測定制御機能93を実行する。測定制御機能93を実行すると制御回路9は、分析機構2及び駆動機構4を制御することで所定の検査項目についての被検データを生成する。
【0086】
解析回路3は、分析機構2から出力された被検データを受信すると、分析データ生成機能32を実行する。分析データ生成機能32を実行すると解析回路3は、被検データに対応する検査項目について記憶されている検量データを記憶回路8から読み出す。
【0087】
図9は、被検データの反応曲線Dを、図3のタイムコース(反応曲線)に追加的に描いたグラフを示している。すなわち、解析回路3の分析データ生成機能32は、不知の濃度の検出対象を含む被検試料について、検量線を生成した測光タイミングと同じ測光タイミングで反応液の吸光度を測定した測定結果と、その測光タイミングとに基づいて、反応曲線Dを生成する。そして、図4乃至図6を用いて説明したのと同様の手法で、被検データの反応曲線Dについて、この反応曲線Dを近似する関数である近似関数を導出する。上述したように、本実施形態においては、この近似関数は、y=ax+bの一次関数である。
【0088】
次に、解析回路3の分析データ生成機能32は、y=ax+bの傾きaを、その被検試料の測定値として用いて、図8に示す検量線に基づいて、試料の濃度を算出する。図9の例では、近似関数y=ax+bの傾きaが0.0238であったとすると、図8の検量線から、被検試料の濃度は3ng/mlと算出することができる。すなわち、本実施形態においては、検量線の各プロットの間は、線形補間をして直線で結ぶこととしているので、プロットとプロットの間に位置する測定値のプロットを按分することにより、濃度を算出することができる。
【0089】
図10は、このプロットとプロットの間を按分する処理を説明するためのグラフを示しており、図8に示す検量線のうち標準試料S4と標準試料S5の部分を拡大して示すグラフである。上記の例では、標準試料S4のプロットは、傾きaが0.0215であり、濃度が2ng/mlである。一方、標準試料S5のプロットは、傾きが0.0261であり、濃度が4ng/mlである。このため、(0.0238-0.0215):(0.0261-0.0238)=(x-2):(4-x)の関係が成り立つ。これによりxを求めることにより、被検試料の濃度が3ng/mlであると算出される。
【0090】
次に、解析回路3の分析データ生成機能32は、算出された被検試料の濃度を分析データとして制御回路9に出力する。制御回路9は、算出された被検試料の検出対象の濃度を含む分析データを、例えば、記憶回路8に記憶させ、操作者が事後的に測定結果として取得できるようにする。また、制御回路9は、算出された被検試料の検出対象の濃度を含む分析データを、例えば、出力インターフェース6から出力して、表示回路で表示したり、印刷回路で印刷したりすることもできる。
【0091】
これらの説明から明らかなように、解析回路3の分析データ生成機能32は、被検試料の検出対象の濃度を算出する際には、検出対象濃度算出部として機能することがわかる。
【0092】
以上のように、本実施形態に係る自動分析装置1によれば、標準試料S1~S8を用いて検量線を生成する際に、標準試料S1~S8のタイムコースにおけるそれぞれの反応曲線に近似する近似関数を導出し、この近似関数のパラメータの少なくとも一部を用いて、検量線を生成することとしたので、タイムコースにフック現象が生じていたとしても、精度よく被検試料の測定が可能な検量線を生成することができる。
【0093】
(変形例)
上述した実施形態においては、検量データ生成機能31が反応曲線の近似に用いる近似関数は一次関数であったが、この近似関数は一次関数に限られるものではない。例えば、近似関数は、n次関数(nは自然数)を用いることができる。この場合、検量データ生成機能31が用いる近似関数は、
で表すことができ、検量線を生成する上での測定値として
を用いることができる。
【0094】
具体的には、n=2の場合、すなわち、近似関数が二次関数である場合には、y=a+ax+aの形で、反応曲線を近似することができる。この場合、例えば、検量データ生成機能31は、導出された近似関数y=a+ax+aにおけるa +a を測定値として、検量線を生成するようにすることができる。検量線の測定値を算出するにあたり、どのパラメータをどのように用いるかは、試験等を繰り返して決定される事項であり、様々な手法を採用し得る。つまり、検量線を生成する際に用いる縦軸である測定値も、種々のものを採用することができる。
【0095】
例えば、
の近似関数に対して、検量線を生成する上での測定値として、三乗和である
を用いることができる。或いは、
の近似関数に対して、測定値として、二乗平均である
を用いることもできる。さらには、すべてのパラメータを用いる必要はなく、例えば、特定のパラメータ1つを用いて、測定値を算出するようにしてもよい。
【0096】
また、検量データ生成機能31が反応曲線の近似に用いる近似関数は、n次関数ではなく、ロジスティックカーブ等の非線形曲線や、スプライン等の補間曲線を用いることもできる。すなわち、反応曲線を近似することの可能なあらゆる種類の関数を、近似関数として用いることができる。
【0097】
さらに、上述した実施形態においては、反応曲線と近似関数との間の近似の程度を表す決定係数を用いて、導出した近似関数が反応曲線に所定の基準よりも高い精度で近似したと判断して、その近似関数をその反応曲線を近似する近似関数と決定したが、近似の精度を測る基準は決定係数に限るものでは無い。例えば、反応曲線と近似関数との間の相関係数を用いて近似の程度を測り、両者が所定の基準よりも高い精度で近似したかどうかを判定するようにしてもよい。
【0098】
また、上述した実施形態においては、反応曲線と近似関数との間の近似の精度が所定の基準以下である場合には、反応曲線における近似関数を導出する区間の終点をより早いサイクルに移動することにより、その区間を短くするようにしたが、反応曲線の近似関数を導出する区間を短くする手法は、これに限るものでは無い。例えば、反応曲線における近似関数を導出する区間の始点をより遅いサイクルに移動することにより、その区間を短くしてもよい。
【0099】
さらには、反応曲線における近似関数を導出する区間の始点と終点の双方を移動することにより、その区間を短くしてもよい。すなわち、反応曲線における近似関数を導出する区間の始点をより遅いサイクルに移動し、その終点をより早いサイクルに移動するようにしてもよい。この場合、始点の移動量と終点の移動量は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0100】
例えば、反応曲線における近似関数を導出する区間の始点を2サイクル分遅くし、その終点も2サイクル分早くするようにしてもよい。或いは、例えば、反応曲線における近似関数を導出する区間の始点を1サイクル分遅くし、その終点を3サイクル分早くするようにしてもよい。
【0101】
さらには、反応曲線における近似関数を導出する区間の始点と終点を交互に移動するようにしてもよい。例えば、反応曲線と近似関数との間の近似の精度が所定の基準以下である場合には、まず反応曲線における近似関数を導出する区間の始点をより遅いサイクルに移動し、それでも近似の精度が所定の基準以下である場合には、その終点をより早いサイクルに移動するようにしてもよい。
【0102】
以上のことから分かるように、反応曲線と近似関数との間の近似の精度が所定の基準以下である場合には、検量データ生成機能31は、反応曲線における近似関数を導出する区間の始点及び終点の少なくとも一方を移動することにより、その区間を短くするようにすることができる。
【0103】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置および方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置および方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0104】
1…自動分析装置、2…分析機構、3…解析回路、4…駆動機構、5…入力インターフェース、6…出力インターフェース、7…通信インターフェース、8…記憶回路、9…制御回路、31…検量データ生成機能、32…分析データ生成機能、91…システム制御機能、92…校正制御機能、93…測定制御機能、201…反応ディスク、202…恒温部、203…サンプルディスク、204…第1試薬庫、205…第2試薬庫、206…サンプル分注アーム、207…サンプル分注プローブ、208…第1試薬分注アーム、209…第1試薬分注プローブ、210…第2試薬分注アーム、211…第2試薬分注プローブ、212…第1攪拌ユニット、213…第2攪拌ユニット、214…測光ユニット、215…洗浄ユニット、2011…反応容器、C1~C8…反応曲線、D…反応曲線、S1~S8…標準試料
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