(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】電磁継電器
(51)【国際特許分類】
H01H 50/36 20060101AFI20231006BHJP
【FI】
H01H50/36 K
(21)【出願番号】P 2019229125
(22)【出願日】2019-12-19
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】501398606
【氏名又は名称】富士通コンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】春原 崇喜
(72)【発明者】
【氏名】栫山 祐騎
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-121490(JP,A)
【文献】特開2017-187047(JP,A)
【文献】実開昭58-042020(JP,U)
【文献】特開平05-204510(JP,A)
【文献】実開平06-063944(JP,U)
【文献】実開昭63-135744(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 45/00 - 45/14
50/00 - 50/92
F16B 5/00 - 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻枠に巻回されたコイル及び前記巻枠内に配置された鉄心を有する電磁石と、
前記電磁石の作動に伴って動作する接極子、前記接極子に取り付けられた可動ばね、及び前記可動ばねに取り付けられた可動接点を備える可動端子と、
前記可動接点に対向して配置された固定接点と、
前記可動ばねがかしめられる継鉄と、を備え、
前記継鉄は、前記可動ばねに挿入されるかしめ用の突起と、前記突起
の根元に形成されかつ前記突起より高さが低い
リング状の隆起部とを有する、電磁継電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁継電器に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁継電器(リレー)は、コイルに電圧を印加して接点を開閉するように構成されている(例えば特許文献1-5参照)。また電磁継電器には、コイルへの電圧の印加によって可動する可動端子と、2つの固定端子とを有し、可動端子は電圧印加時には一方の固定端子に接触し、電圧が印加されていないときは他方の固定端子に接触するように構成されたものがある(例えば特許文献6-7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-142208号公報
【文献】特開2012-142210号公報
【文献】特開2006-059702号公報
【文献】特開2015-125985号公報
【文献】特開2017-068926号公報
【文献】特開2014-049315号公報
【文献】特開2011-081961号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電磁継電器では、継鉄にプレス成形等によってかしめ用の突起を形成し、該突起を可動ばねに挿入してかしめることによって可動端子を継鉄に固定する。かしめる際のパンチのプレス力等により、比較的薄い金属板からなる可動ばねが変形することがある。
【0005】
そこで本発明は、可動ばねをかしめる際の該可動ばねの変形を防止する構造を備えた電磁継電器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、巻枠に巻回されたコイル及び前記巻枠内に配置された鉄心を有する電磁石と、前記電磁石の作動に伴って動作する接極子、前記接極子に取り付けられた可動ばね、及び前記可動ばねに取り付けられた可動接点を備える可動端子と、前記可動接点に対向して配置された固定接点と、前記可動ばねがかしめられる継鉄と、を備え、前記継鉄は、前記可動ばねに挿入されるかしめ用の突起と、前記突起の根元に形成されかつ前記突起より高さが低いリング状の隆起部とを有する、電磁継電器である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、継鉄の突起の根元に隣接しかつ突起より高さが低い段差状の隆起部を設けることで、可動ばねをかしめたときのかしめ方向の寸法変化を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る電磁継電器の一構成例の斜視図である。
【
図10】可動端子における可動ばねの切断位置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、実施形態に係る電磁継電器の構成を示し、
図2は
図1の分解斜視図である。電磁継電器10は例えば車載電装用リレーであり、図示しないプリント基板等に実装可能なベース12と、ベース12に設けられ、巻枠14に巻回されたコイル巻線16及び巻枠14内に配置された鉄心18を有する電磁石20と、鉄心18の一端に結合された略L字形状の継鉄22と、電磁石20の作動に伴って鉄心18の他端に対して接離する方向に動作する2つの可動接点24を備えた可動端子26と、巻枠14に取り付けられるとともにコイル巻線16の両端に接続された2つのコイル端子28とを有する。
【0010】
電磁継電器10は、可動接点24に対向して配置された固定接点を備え、かつ巻枠14に取り付けられた固定端子を有する。本実施形態では、2つの固定常閉接点30を有する第1固定端子(ブレーク端子)32と、2つの固定常開接点34を有する第2固定端子(メーク端子)36とを有する。可動接点24は、電磁石20がOFFのときは固定常閉接点30に接触し、ONのときは固定常開接点34に接触する。可動端子26、ブレーク端子32及びメーク端子36の各々が2つの接点を有することにより、高い通電性能の電磁継電器10が得られる。
【0011】
また電磁継電器10は、ベース12に嵌合するように構成され、ベース12と協働して上述の構成要素を収容するカバー38を有する。
図1ではカバー38は省略している。
【0012】
なお本実施形態では便宜上、鉄心18の軸方向に平行な方向をz方向(高さ方向)、z方向に垂直でかつ、2つの可動接点24又は2つの固定接点30若しくは34の配列方向をy方向(幅方向)、y方向及びz方向の双方に垂直な方向をx方向(前後方向)とそれぞれ称する。
【0013】
図3は、巻枠14に対する各端子の取り付け方向を示す。従来の電磁継電器では、固定端子は巻枠に対して上方からz方向に挿入して固定する場合が多いが、本実施形態では、固定端子32及び36の少なくとも一方を巻枠14に対してz方向に交差する方向(ここではx方向)に移動させて固定する。より具体的には、巻枠14は、y方向両側に形成されかつx方向、好ましくはx方向にのみ開口した第1挿入穴40を有する。第1固定端子32は
図4に示すように、第1挿入穴40に対してx方向に挿入可能な凸状の第1挿入部42を有する。
【0014】
同様に、巻枠14は、y方向両側に形成されかつx方向、好ましくはx方向にのみ開口した第2挿入穴44を有し、第2固定端子36は第2挿入穴44に対してx方向に挿入可能な凸状の第2挿入部46を有する。なお、巻枠14は、y方向両側に形成されかつx方向、好ましくはx方向にのみ開口した第3挿入穴48を有し、コイル端子28は第3挿入穴48に対してx方向に挿入可能な凸状の第3挿入部50を有してもよい。
【0015】
z方向から固定端子を挿入する方法では、端子の挿入方向と可動接点の変位方向がほぼ同一となるので、固定端子の固定が確実でないと可動接点が動作したときに固定端子が可動接点の動作方向に変位してしまい、電磁継電器の性能・特性が不都合に変化する場合がある。この現象は特に、電磁継電器の製造工程においてカバーと端子を接着する前の段階で、中間検査を実施したときなどに発生し得る。
【0016】
これに対し本実施形態では、端子をx方向に挿入することで、可動接点が動作しても固定端子が動いてしまうことがなく、電磁継電器の性能・特性のばらつきを抑えられる。また、メーク端子36、ブレーク端子32及びコイル端子28を巻枠14に対して全てx方向に挿入するようにしてもよく、その場合は、巻枠14の樹脂成形に使用する金型の割り方を単純化できる。なお各挿入部は、圧入によって各挿入穴内に固定されることが好ましい。
【0017】
また
図4に示すように、第1挿入部42をy方向の両側に1つずつ形成し、巻枠14に2つの第1挿入部42がそれぞれ挿入される2つの第1挿入穴40を設けることもできる。これにより、第1固定端子32はより確実に巻枠14に対して固定される。
【0018】
例えば第1固定端子32をx方向に移動させて巻枠14に取り付ける場合、第1固定端子32の第1挿入部42に対応する第1挿入穴40の位置によっては、巻枠14が大型化することがある。そこで
図3に示すように、第1固定端子32の第1挿入部42を第1固定接点30よりもz方向の下方に設けることにより、第1挿入穴40を巻枠14の上端に形成する必要がなくなる。よって巻枠14の高さを小さくすることができ、結果として高さが低いコンパクトな電磁継電器10が提供される。このことは、第2固定端子36についても同様である。
【0019】
第1固定端子32に対する第1固定接点30の固定方法には種々の方法がある。例えばかしめを用いた場合、
図5に示すように第1固定端子32上側のかしめた側にかしめによる突出部52が形成され得る。突出部52によって、第1固定端子32とカバー38とのクリアランスが大きくなり、結果として電磁継電器10が高さ方向に大型化する場合がある。
【0020】
そこで第1固定接点30を、溶接又はロウ付け等による接合によって第1固定端子32に固定してもよい。この場合、突出部52は形成されないので、第1固定端子32とカバー38とのクリアランスを小さくでき、電磁継電器10の小型化が図れる。
【0021】
図6は、第2固定端子の他の構造例を示す。
図1~
図3に示す第2固定端子36は、2つの端子部材の各々に1つの固定接点34を設けているが、
図6の例では、実質1枚の金属板に2つの固定接点を設けたものを第2固定端子36aとして使用している。第2固定端子36aを1枚の板から形成することによって、2つ以上の部材で固定端子を構成する場合よりも通電容量を大きくすることができる。また、第2固定端子36aによりコイル16が存在する空間と接点が存在する空間とを分断できるので、コイル16から水蒸気が発生しても、水蒸気が接点又はその近傍に付着・進入し、結露又は氷結して接点の開閉動作に悪影響を与える可能性を低減できる。
【0022】
図7は、鉄心18の配置例を示す図であり、明確化のために可動端子及びブレーク端子は省略している。従来の電磁継電器には、鉄心が巻枠の中心に配置されず、例えば継鉄側に偏心して配置され、鉄心と固定接点との間の距離が比較的大きいものがある。このような電磁継電器では、巻線空間を有効に活用できない。そこで
図7のように、鉄心18を巻枠14の中心に配置することで、電磁継電器10内部の巻線空間を最大限活用することができる。
【0023】
また
図7の配置では、鉄心18の頭部54の形状が単純な円板状であると、頭部54が接点34等と干渉し、これを回避するために電磁継電器が大型化する虞がある。そこで
図7及び
図8に示すように、頭部54を、鉄心18の軸部55の径方向断面より大きい面積を有する一方で、鉄心18の中心から頭部54の周縁までの距離が少なくとも接点側において他の部分より短い、小判形、トラック形や楕円形などの形状とすることができる。これにより、
図7に示すように鉄心18と接点34とをより近接させることができ、電磁継電器のx方向の寸法をより小さくすることができる。なお頭部54は、接点側の周縁までの距離のみが他より短い、例えば円形の一部を直線状に切除した形状でもよいが、組立時に鉄心18の角度位置を考慮する必要があること等から、図示例のように例えば180°の点対称形状であることが好ましい。
【0024】
図9に示すように、可動端子26は、接極子56と、接極子56にかしめられた可動ばね58と、可動ばね58にかしめられた2つの可動接点24とを有する。可動端子26の製造工程として、個々の可動ばね58が切断される前の金属板を接極子56にかしめた後に金属板を自動切断機に順送して所定の切断位置60で切断し、可動端子26を形成するものがある。ここで、
図9に示す例のように可動ばね58の切断位置60が接極子56に接している場合、可動ばね58を切断する治具が接極子56に干渉し、切断が困難となり得る。
【0025】
そこで
図10に示すように、接極子56をその幅方向(y方向)両端が中心より凹んだ形状とし、必要に応じて切断部位60をx方向に延長することにより、可動ばね58の切断部位60に接極子56が存在しないようにすることができ、好適な切断が可能となる。
【0026】
また、可動ばね58を接極子56にかしめる際のプレス力によって、可動ばね58に歪みが生じる場合がある。このとき、可動ばね58のかしめ位置と可動接点24のかしめ位置がx方向に整列していると、可動ばね58の歪みの影響が可動接点24のかしめ位置に及び、可動接点24の位置決め精度が悪化する場合がある。
【0027】
そこで
図10に示すように、可動ばね58のかしめ部位62と可動接点24のかしめ位置とがx方向に整列しないように、例えばy方向に所定距離y1だけ互いにずらすことにより、かしめによる可動ばね58の歪みによって可動接点24が悪影響を受けないようにすることができる。
【0028】
図11は、継鉄22の側面を、その部分拡大図とともに示す。継鉄22はプレス成形等によって形成されたかしめ用突起64を有し、突起64を可動ばね58の穴66(
図9参照)に挿入してかしめることにより、可動端子26が継鉄22に固定される。ここで、かしめる際のパンチのプレス力等により、比較的薄い金属板からなる可動ばね58が変形してしまうことがある。
【0029】
そこで
図11のA部詳細図に示すように、突起64の根元に隣接しかつ突起64より低い段差状の隆起部68を継鉄22に設けることで、可動ばねをかしめたときのかしめ方向(x方向)の寸法変化を低減することができる。一例であるが、隆起部68は、高さが20~50μmであり、x方向にみたときに、突起64の直径に等しい内径と、直径より大きい外径とを有するリング形状を有する。さらに、隆起部68の外形はx方向にみたときのパンチの外形より大きいことが好ましい。
【0030】
図12及び
図13はそれぞれ、巻枠14の斜視図及び側断面図である。電磁継電器の小型化を図る手段として巻枠14の薄肉化が挙げられるが、薄肉の巻枠14にコイル巻線を巻いたときの圧力によって巻枠14の端部に形成されたフランジ70が反り、接極子56等に干渉する虞がある。そこで、フランジ70と接極子56との干渉を防止するため、
図13に示すようにフランジ70を先細のテーパ形状とする。
【0031】
さらに、フランジ70の反りの影響はその外周部に近付くほど大きくなるので、例えば
図12に示すように、フランジ70の外周部の少なくとも一部を面取り形状又は丸みを持った形状72とすることにより、フランジ70が反っても他部材と干渉する可能性を大きく低減することができる。
【0032】
電磁継電器では、可動接点と固定接点との接離を繰り返すと、接点が摩耗し金属粉や金属くずが発生する。ここで電磁継電器の搭載方向や、振動などの外的要因により、電磁継電器内部を金属粉等が移動して、接極子と鉄心又は継鉄との間に進入し、動作不良を起こすことがある。
【0033】
そこで
図12又は
図13に示すように、固定接点又は可動接点から発生した金属くずが鉄心方向へ移動しないように、固定接点及び可動接点が配置される領域と鉄心が配置される領域との間に、両領域を分断する壁74を設けることができる。図示例では、壁74は所定高さを有し、y方向に所定の幅を有する直線状の壁として巻枠14の上端面に形成され、例えば巻枠14を樹脂成形する際のモールド壁として形成することができる。壁74により、金属くずの進入を効率的に防止でき、電磁継電器の動作不良の確率を大きく低減することができる。
【0034】
図14及び
図15は、ベース12の構造例を示す。ベース12と各端子、さらにベース12とカバー38は、例えば熱硬化性樹脂によって互いに接着される。これらの部材間の接着強度を満足するためには、接着層76が所定の深さを有することが望まれる。また、電磁継電器が実装される基板(図示せず)からの遮熱のため、ベース12の下面は基板に接触しないことが望まれる。さらに、電磁継電器内部の構造物間の不要な干渉を回避することが望まれる。これらの要求を満足した上で、ベース12自体が一定以上の強度を有することが望ましい。
【0035】
そこで
図14に示すように、ベース12の内側下面領域を、端子が挿入・接着される端子挿入穴78を含む端子用の領域80と、巻枠14及び継鉄22等が配置される構造物用の領域82と、領域80と領域82との間の中間領域84とに区分し、それぞれの領域間に段差部86、88を設けて、各領域の深さが異なるようにすることができる。領域80を中間領域84よりも浅くすることによって、領域80の下方の接着層76の厚さを大きくして接着力を高めることができる。また接着剤を使用しない領域82を中間領域84よりも深くすることによって、巻枠等の構造物の配置空間をより大きく確保することができる。ベース自体の強度に関し、ベース各部で薄い箇所ができないようテーパを設けたり、リブを設けたりすることによって剛性を高めている。
【符号の説明】
【0036】
10 電磁継電器、12 ベース、14 巻枠、16 コイル、
18 鉄心、20 電磁石、22 継鉄、24 可動接点、
26 可動端子、28 コイル端子、30 第1固定接点、32 第1固定端子、
34 第2固定接点、36,36a 第2固定端子、38 カバー、
40 第1挿入穴、42 第1挿入部、44 第2挿入穴、46、第2挿入部、
48 第3挿入穴、50 第3挿入部、52 突出部、54 頭部、
56 接極子、58 可動ばね、60 切断部位、62 かしめ部位、
64 かしめ用突起、66 穴、68 隆起部、70 フランジ、
72 丸み部、74 壁、76 接着層、78 端子挿入穴、80 端子用領域、
82 構造物用領域、84 中間領域、86,88 段差部