(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-05
(45)【発行日】2023-10-16
(54)【発明の名称】輸血キット、輸血システム、緊急輸血用輸血キット
(51)【国際特許分類】
A61M 5/14 20060101AFI20231006BHJP
A61M 1/02 20060101ALI20231006BHJP
A61M 39/22 20060101ALI20231006BHJP
A61M 39/28 20060101ALI20231006BHJP
【FI】
A61M5/14 500
A61M1/02 101
A61M39/22 100
A61M39/28
(21)【出願番号】P 2019545603
(86)(22)【出願日】2018-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2018035892
(87)【国際公開番号】W WO2019065823
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2017187420
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】八尾 隆慶
(72)【発明者】
【氏名】細江 薫
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106964021(CN,A)
【文献】特表平04-504532(JP,A)
【文献】特開2001-070443(JP,A)
【文献】特開2007-029272(JP,A)
【文献】特開平11-164884(JP,A)
【文献】特開平11-319084(JP,A)
【文献】特表平8-500532(JP,A)
【文献】特表平6-500254(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/14
A61M 1/02
A61M 39/22
A61M 39/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液が流動する流路をチューブ構造により構成し、該流路を通して輸血対象に前記血液を投与する輸血キットであって、
供血者から採取された
白血球を含む血液を収容する血液バッグと、
前記血液中の
前記白血球を除去するフィルタと、
前記輸血対象に前記フィルタにより白血球が除去された血液を輸血するための輸血部と、
前記血液バッグと前記フィルタとを接続する第1流路と、
前記フィルタと前記輸血部とを接続する第2流路と、
前記第1流路に連通する一端と、前記第2流路に連通する他端とを有し、前記フィルタをバイパスして前記第1流路から前記第2流路へと前記血液を流すことが可能なバイパス流路と、
前記第1流路の途中であって前記一端と前記フィルタとの間に設けられ、前記第1流路を開閉する第1クランプと、
前記バイパス流路の途中に設けられ、前記バイパス流路を開閉する第2クランプと、を有し、
前記第1クランプを開状態にして前記第1流路を開放し、且つ、前記第2クランプを閉状態にして前記バイパス流路を閉塞することで、
前記血液バッグから前記輸血部へと前記血液を供給する際に、前記血液に含まれている前記白血球を前記フィルタによっ
て除去
しつつ、前記血液を前記輸血対象に投与することができ、
前記第1クランプを閉状態にして前記第1流路を閉塞し、且つ、前記第2クランプを開状態にして前記バイパス流路を開放することで、前記フィルタを通さずに
前記白血球を含んでいる前記血液を前記輸血対象に投与することができる
ことを特徴とする輸血キット。
【請求項2】
請求項1記載の輸血キットにおいて、
前記輸血部は、前記第2流路の端部に設けられ、前記輸血対象に構築された導入部に装着可能な端部コネクタを備える
ことを特徴とする輸血キット。
【請求項3】
請求項1記載の輸血キットにおいて、
前記輸血部は、前記第2流路の端部に設けられ、前記輸血対象に直接挿入され、挿入状態で該輸血対象に血液を投与可能な投与針である
ことを特徴とする輸血キット。
【請求項4】
請求項2又は3記載の輸血キットにおいて、
前記第2流路には、前記流路内のエアを排出する一方で、前記流路内の血液の流出を規制するエアベント部が設けられている
ことを特徴とする輸血キット。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の輸血キットにおいて、
前記第1流路、前記第2流路及び前記バイパス流路は、血液を滞留させずに流動させる
ことを特徴とする輸血キット。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の輸血キットにおいて、
供血者に挿入される採血針を有すると共に、
前記採血針と前記血液バッグを接続する採血流路を有する
ことを特徴とする輸血キット。
【請求項7】
血液が流動する流路をチューブ構造により構成し、該流路を通して供血者から採取した血液を輸血するための輸血システムであって、
前記供血者から血液を採取する採血部と、
前記供血者から採取された
白血球を含む血液を収容する血液バッグと、
前記採血部と前記血液バッグとを接続する採血流路と、
前記血液中の
前記白血球を除去するフィルタと、
輸血対象に前記フィルタにより白血球が除去された血液を輸血するための輸血部と、
前記血液バッグと前記フィルタとを接続する第1流路と、
前記フィルタと前記輸血部とを接続する第2流路と、
前記第1流路に連通する一端と、前記第2流路に連通する他端とを有し、前記フィルタをバイパスして前記第1流路から前記第2流路へと前記血液を流すことが可能なバイパス流路と、
前記第1流路の途中であって前記一端と前記フィルタとの間に設けられ、前記第1流路を開閉する第1クランプと、
前記バイパス流路の途中に設けられ、前記バイパス流路を開閉する第2クランプと、を有し、
前記第2流路には、一端に前記輸血部と接続するための接続部が設けられ、
前記輸血部には、前記接続部と接続される被接続部が設けられ、
前記第1クランプを開状態にして前記第1流路を開放し、且つ、前記第2クランプを閉状態にして前記バイパス流路を閉塞することで、
前記血液バッグから前記輸血部へと前記血液を供給する際に、前記血液に含まれている前記白血球を前記フィルタによっ
て除去
しつつ、前記血液を前記輸血対象に投与することができ、
前記第1クランプを閉状態にして前記第1流路を閉塞し、且つ、前記第2クランプを開状態にして前記バイパス流路を開放することで、前記フィルタを通さずに
前記白血球を含んでいる前記血液を前記輸血対象に投与することができる
ことを特徴とする輸血システム。
【請求項8】
請求項7記載の輸血システムにおいて、
前記バイパス流路には、前記流路を開閉可能なクランプがあり、該バイパス流路は、初期状態で前記流路が閉塞状態とされている
ことを特徴とする輸血システム。
【請求項9】
供血者から採取した血液を輸血するため、前記供血者から血液を採取する本体部と、採取した血液を輸血対象へ投与するための投与キットと、を含む緊急輸血用輸血キットであって、
前記本体部及び前記投与キットは、前記血液が流動する流路をチューブ構造により構成し、
前記本体部は、前記供血者から血液を採取する採血部と、
前記供血者から採取された
白血球を含む血液を収容する血液バッグと、
前記採血部と前記血液バッグとを接続する採血流路と、
前記血液中の
前記白血球を除去するフィルタと、
前記血液バッグと前記フィルタとを接続する第1流路と、
前記フィルタの下流側に延在し、端部に前記投与キットに接続する接続部が設けられた第2流路と、
前記第1流路に連通する一端と、前記第2流路に連通する他端とを有し、前記フィルタをバイパスして前記第1流路から前記第2流路へと前記血液を流すことが可能なバイパス流路と、
前記第1流路の途中であって前記一端と前記フィルタとの間に設けられ、前記第1流路を開閉する第1クランプと、
前記バイパス流路の途中に設けられ、前記バイパス流路を開閉する第2クランプと、を有し、
前記投与キットは、前記輸血対象に前記血液を輸血するための投与部と、
前記接続部に接続される被接続部と、を有し、
前記本体部と、前記投与キットとが一体に包装されており、
前記第1クランプを開状態にして前記第1流路を開放し、且つ、前記第2クランプを閉状態にして前記バイパス流路を閉塞することで、
前記血液バッグから前記接続部へと前記血液を供給する際に、前記血液に含まれている前記白血球を前記フィルタによっ
て除去
しつつ、前記血液を前記輸血対象に投与することができ、
前記第1クランプを閉状態にして前記第1流路を閉塞し、且つ、前記第2クランプを開状態にして前記バイパス流路を開放することで、前記フィルタを通さずに
前記白血球を含んでいる前記血液を前記輸血対象に投与することができる
ことを特徴とする緊急輸血用輸血キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸血対象への輸血に用いられる輸血キット、輸血システム、緊急輸血用輸血キット及び輸血キットの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
輸血では、通常、患者(輸血対象)に対し、白血球が除去された血液成分(赤血球、血漿、血小板等)を投与している。白血球を除去することで、輸血副作用が抑制されるからである。しかしながら、大量出血等が生じて緊急に輸血する場合は、血液成分に関係なく供血者から提供された全血を輸血する場合もある。
【0003】
また、緊急輸血に使用される輸血システムとしては、例えば、登録実用新案第3005461号公報に開示されているような急速輸液キットがあげられる。この急速輸液キットは、外圧の付加や外圧の開放により駆動するポンプ部を輸液経路の途中に備え、このポンプ部により必要な速度で必要量の輸液を行う。
【発明の概要】
【0004】
ところで、登録実用新案第3005461号公報に開示の急速輸液キットは、白血球除去フィルタを備えた構成でなく、また1つのシステムにおいて通常時用と緊急時用の切り換えが可能な構成でもない。このため例えば、白血球を除去する通常の輸血中に大量の輸血が緊急に必要となった場合には、通常時用の輸血システムを取り外して、急速輸血キットを新たに接続し直さなければならない。特に、一刻を争う状況下で緊急のシステムを構築する場合は、医療従事者を焦らせてしまう等、負担も大きくなる。
【0005】
本発明は、上記の実情に鑑みてなされたものであって、通常時に安全な輸血を行う一方で、緊急時等に全血を簡単に輸血可能とすることで、より使い勝手に優れた輸血キット、輸血システム、緊急輸血用輸血キット及び輸血キットの使用方法を提供することを目的とする。
【0006】
前記の目的を達成するために、本発明は、血液が流動する流路をチューブ構造により構成し、該流路を通して輸血対象に前記血液を投与する輸血キットであって、供血者から採取された血液を収容する血液バッグと、前記血液中の白血球を除去するフィルタと、前記輸血対象に前記フィルタにより白血球が除去された血液を輸血するための輸血部と、前記血液バッグと前記フィルタとを接続する第1流路と、前記フィルタと前記輸血部とを接続する第2流路と、前記第1流路と前記第2流路との間を接続し、前記フィルタをバイパスするバイパス流路と、を有することを特徴とする。
【0007】
上記によれば、輸血キットは、通常時に、第1流路及び第2流路を経由して血液を流動させることで、フィルタにて白血球を除去した輸血を行うことができる。これにより輸血対象の輸血副作用を抑制する安全な輸血が実施可能となる。また輸血キットは、緊急時に、バイパス流路を経由して血液を流動させることで、白血球除去フィルタを介さずに、血液を大量且つ急速に投与することが可能となる。すなわち、輸血キットは、フィルタを流動するルートとフィルタを流動しないルートとを簡単に切り換え可能とすることで、より使い勝手に優れたものとなり、医療従事者の作業負担を軽減すると共に、医療処置を迅速化することができる。
【0008】
さらに、前記第1流路の前記バイパス流路の分岐箇所よりも下流側、及び前記バイパス流路の各々には、各流路を開閉可能なクランプが設けられていることが好ましい。
【0009】
輸血キットは、第1流路の前記バイパス流路の分岐箇所よりも下流側及びバイパス流路に設けられたクランプを医療従事者が操作することで、流路の閉塞及び開放を簡単に切り換えることができる。
【0010】
ここで、前記輸血部は、前記第2流路の端部に設けられ、前記輸血対象に構築された導入部に装着可能な端部コネクタを備えることが好ましい。
【0011】
輸血キットの端部コネクタは、輸血対象に構築された導入部に対して簡単に接続されるため、輸血をより短時間に開始させることが可能となる。
【0012】
或いは、前記輸血部は、前記第2流路の端部に設けられ、前記輸血対象に直接挿入され、挿入状態で該輸血対象に血液を投与可能な投与針であってもよい。
【0013】
これにより、輸血キットは、投与針を輸血対象に挿入することで、輸血を簡単に開始することができる。
【0014】
また、前記第2流路には、前記流路内のエアを排出する一方で、前記流路内の血液の流出を規制するエアベント部が設けられていることが好ましい。
【0015】
輸血キットは、エアベント部を有することで、輸血の開始前のプライミングを自動的且つ容易に実施することができる。
【0016】
またさらに、前記第1流路、前記第2流路及び前記バイパス流路は、血液を滞留させずに流動させることが好ましい。
【0017】
輸血キットは、第1流路、第2流路及びバイパス流路において、血液を滞留させない構成とする(例えば、血液成分をバッグに貯留させる等の構成がない)ことで、輸血対象への多量の輸血を急速に行うことができる。
【0018】
さらに、供血者に挿入される採血針を有すると共に、前記採血針と前記血液バッグを接続する採血流路を有するとよい。
【0019】
輸血キットは、採血流路が血液バッグに接続されていることで、供血者の血液を貯留した後、その血液バッグから直ぐに輸血を行うことができる。
【0020】
また、前記の目的を達成するために、本発明は、血液が流動する流路をチューブ構造により構成し、該流路を通して供血者から採取した血液を輸血するための輸血システムであって、前記供血者から血液を採取する採血部と、前記供血者から採取された血液を収容する血液バッグと、前記採血部と前記血液バッグとを接続する採血流路と、前記血液中の白血球を除去するフィルタと、輸血対象に前記フィルタにより白血球が除去された血液を輸血するための輸血部と、前記血液バッグと前記フィルタとを接続する第1流路と、前記フィルタと前記輸血部とを接続する第2流路と、前記第1流路と前記第2流路との間を接続し、前記フィルタをバイパスするバイパス流路と、を有し、前記第2流路には、一端に前記輸血部と接続するための接続部が設けられ、前記輸血部には、前記接続部と接続される被接続部が設けられることを特徴とする。
【0021】
この場合、前記第1流路には、前記バイパス流路の分岐箇所と前記フィルタとの間に前記流路を開閉可能なクランプがあるとよい。
【0022】
前記バイパス流路には、前記流路を開閉可能なクランプがあり、該バイパス流路は、初期状態で前記流路が閉塞状態とされているとよい。
【0023】
さらに、前記の目的を達成するために、本発明は、供血者から採取した血液を輸血するため、前記供血者から血液を採取する本体部と、採取した血液を輸血対象へ投与するための投与キットと、を含む緊急輸血用輸血キットであって、前記本体部及び前記投与キットは、前記血液が流動する流路をチューブ構造により構成し、前記本体部は、前記供血者から血液を採取する採血部と、前記供血者から採取された血液を収容する血液バッグと、前記採血部と前記血液バッグとを接続する採血流路と、前記血液中の白血球を除去するフィルタと、前記血液バッグと前記フィルタとを接続する第1流路と、前記フィルタの下流側に延在し、端部に前記投与キットに接続する接続部が設けられた第2流路と、前記第1流路と前記第2流路との間を接続し、前記フィルタをバイパスするバイパス流路と、を有し、前記投与キットは、前記輸血対象に前記血液を輸血するための投与部と、前記接続部に接続される被接続部と、を有し、前記本体部と、前記投与キットとが一体に包装されていることを特徴とする。
【0024】
またさらに、前記の目的を達成するために、本発明は、血液が流動する流路をチューブ構造により構成し、該流路を通して輸血対象に前記血液を投与する輸血キットの使用方法であって、当該輸血キットは、供血者から採取された血液を収容する血液バッグと、前記血液中の白血球を除去するフィルタと、前記輸血対象に前記フィルタにより白血球が除去された血液を輸血するための輸血部と、前記血液バッグと前記フィルタとを接続する第1流路と、前記フィルタと前記輸血部とを接続する第2流路と、前記第1流路と前記第2流路との間を接続し、前記フィルタをバイパスするバイパス流路と、を有し、前記輸血キットの使用において、前記第1流路を開放する一方で前記バイパス流路を閉塞することで、前記フィルタを通した前記血液を投与する第1状態と、前記バイパス流路を開放する一方で前記第1流路の前記バイパス流路の分岐箇所よりも下流側を閉塞することで、前記フィルタを通さない前記血液を投与する第2状態と、に選択的に切り換えることを特徴とする。
【0025】
本発明によれば、輸血キット、輸血システム、緊急輸血用輸血キット及び輸血キットの使用方法は、通常時に安全な輸血を行う一方で、緊急時等に全血を簡単に輸血可能とすることで、より使い勝手に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る輸血システムの全体構成を示す説明図である。
【
図2】
図1の輸血システムの使用方法を示すフローチャートである。
【
図3】
図3Aは、第1経路を使用した血液の流動状態を示す説明図である。
図3Bは、第2経路を使用した血液の流動状態を示す説明図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る輸血システムの全体構成を示す説明図である。
【
図5】変形例に係る輸血システムの全体構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
〔第1実施形態〕
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る輸血システム10は、可撓性を有すると共に、流路14を内部に備えるチューブ12(チューブ構造)によって、血液を流動する流動経路16を構成している。流動経路16は、供血者から血液を採取する採血経路18(採血流路)と、患者(輸血対象)に血液を投与する投与経路20(投与流路)とを含む。これら採血経路18及び投与経路20の各々は、血液を一時的に貯留する血液バッグ22に接続されている。なお、流動経路16を構成するチューブ構造には、チューブ12の他にも液体を流動可能な種々の管状部材が含まれる。例えば、後記の3ポートコネクタ30、40、42、点滴筒48等もチューブ構造に相当する。
【0029】
また、輸血システム10は、戦地や災害時等の緊急医療現場において使用される緊急輸血用輸血キットとして構成されている。輸血システム10は、採血経路18、投与経路20及び血液バッグ22を有する本体部24(輸血キット)と、本体部24とは別部材で構成され患者に対し血液を投与する血液導入キット26(投与キット)とをセットで提供する。なお、輸血システム10は、このようなセットでの提供に限定されず、例えば本体部24のみを単体で提供してもよい。液体を患者に投与する導入部25(輸血部)は、輸血前に予め構築されている場合もあるからである。
【0030】
そして、輸血システム10(本体部24)の投与経路20は、血液を流動させる複数の経路(第1経路80、第2経路90)を並列に備えることで、輸血時の患者の状態等に応じて輸血ルートを簡単に切り換え可能としている。すなわち、輸血システム10は、通常時に第1経路80を使用して、白血球除去フィルタ82により白血球をトラップし、他の血液成分(赤血球、血小板、血漿)を患者に投与するように構成される。その一方で、輸血システム10は、緊急時に第2経路90を使用して、白血球を除去していない血液(全血)を患者に投与するように構成される。以下、この輸血システム10について具体的に説明していく。
【0031】
輸血システム10の採血経路18は、上記のチューブ12と、採血針28(採血部)と、3ポートコネクタ30とを有し、これらを相互接続することで、図示しない供血者から血液バッグ22まで血液を流動可能としている。また、採血経路18には、供血者の初流血を貯留するための初流血バッグ32が設けられている。
【0032】
採血経路18のチューブ12は、採血針28と3ポートコネクタ30の間を延在する採血チューブ34と、3ポートコネクタ30と血液バッグ22の間を延在する採血側血液バッグ接続チューブ36と、3ポートコネクタ30と初流血バッグ32の間を延在する初流血バッグ接続チューブ38とを含む。すなわち、3ポートコネクタ30は、採血チューブ34、採血側血液バッグ接続チューブ36及び初流血バッグ接続チューブ38を連結する継手である。また図示は省略するが、各チューブ34、36、38には、クランプが予め設けられていてもよい。
【0033】
採血経路18の採血針28は、供血者の採血に伴い、医療従事者によって供血者に穿刺及び留置される。また、採血側血液バッグ接続チューブ36の所定箇所には、供血者の血液を吸引する採血ポンプ36aが配置される。供血者の血液は、吸引の開始時に、まず採血チューブ34、3ポートコネクタ30及び初流血バッグ接続チューブ38を介して初流血バッグ32に貯留される。そして、初流血バッグ32に初血液が所定量貯留されると、初流血バッグ接続チューブ38が図示しないクランプにより閉塞される。これにより、供血者の血液が、採血チューブ34、3ポートコネクタ30及び採血側血液バッグ接続チューブ36を介して血液バッグ22に貯留される。
【0034】
血液バッグ22は、血液を所定量貯留可能な内部空間22aを有し、例えば、チューブ12との接続部分を下にして、図示しないスタンドに吊り下げられる。この血液バッグ22の内部空間22aには、供血者から採取した血液の凝固を抑制する抗凝固剤が予め注入されている。抗凝固剤としては、例えば、ACD(acid-citrate-dextrose)やCPD等があげられる。
【0035】
そして、輸血システム10の投与経路20には、上記のチューブ12に加えて、白血球除去フィルタ82、第1の3ポートコネクタ40、第2の3ポートコネクタ42及び端部コネクタ44が設けられている。また投与経路20の適宜の位置には、複数のクランプ46、点滴筒48、ローラクランプ50が設けられている。
【0036】
投与経路20は、これら各部材(チューブ構造)を組み付けることによって、上流経路60と、上流経路60よりも下流側(患者に近い側)の下流経路70とを構築し、またこれらの経路60、70の間に、第1経路80及び第2経路90を構築している。
【0037】
より具体的には、投与経路20のチューブ12は、投与側血液バッグ接続チューブ62、フィルタ上流チューブ84、フィルタ下流チューブ86、投与下流チューブ72及びバイパスチューブ92を含む。
【0038】
投与側血液バッグ接続チューブ62は、所定長さ延在し、一端部が血液バッグ22に接続される一方で、他端部が第1の3ポートコネクタ40に接続され、血液バッグ22から第1又は第2経路80、90に血液を導く上流経路60を構成している。投与側血液バッグ接続チューブ62の途中位置には、血液の投与時に、血液を流動させる投与ポンプ64がセットされてもよい。特に、後述する第2経路90を経由する輸血は、血液を大量に投与するため、投与ポンプ64は、バイパスチューブ92にセットされてもよい。
【0039】
フィルタ上流チューブ84及びフィルタ下流チューブ86は、第1経路80を構成しており、その間に白血球除去フィルタ82が設けられている。フィルタ上流チューブ84は、一端部が第1の3ポートコネクタ40に接続され、他端部が白血球除去フィルタ82に接続されている。すなわち、投与側血液バッグ接続チューブ62及びフィルタ上流チューブ84、第1の3ポートコネクタ40の内部に、第1流路57が構成されている。この場合、第1の3ポートコネクタ40が第1流路57の分岐箇所を構成する。さらに、フィルタ下流チューブ86は、一端部が白血球除去フィルタ82に接続され、他端部が第2の3ポートコネクタ42に接続されている。
【0040】
フィルタ上流チューブ84の途中位置には、複数のクランプ46の1つである第1クランプ88が設けられている。第1クランプ88は、医療従事者によるフィルタ上流チューブ84の流路14(すなわち、第1経路80)の開閉を変更可能とする。
【0041】
白血球除去フィルタ82は、フィルタ上流チューブ84及びフィルタ下流チューブ86の各流路14に連通する空洞を有する袋体82aと、この袋体82a内で空洞を分割する(遮る)ように設けられたフィルタ本体82bとを備える。例えば、フィルタ本体82bは、白血球よりも小さな孔径の孔を複数有するメッシュ状フィルタにより構成される。メッシュ状フィルタは複数枚積層されてもよい。なお、フィルタ本体82bは、血液中に含まれる他の微小な物質を除去する機能を有していてもよい。
【0042】
このフィルタ本体82bによって、白血球除去フィルタ82は、空洞に供給された血液から白血球を取り除き(つまり血液を濾過し)、他の血液成分(血漿、血小板、赤血球等)を通過させる。すなわち輸血システム10は、通常の輸血時に、白血球除去フィルタ82を通すことで、白血球による輸血副作用(ウィルス感染、発熱等)を抑制する。
【0043】
投与下流チューブ72は、一端部が第2の3ポートコネクタ42に接続される一方で、他端部(下流経路70の最下流側)に端部コネクタ44(輸血部:接続部)が設けられている。すなわち、フィルタ下流チューブ86、投与下流チューブ72及び、第2の3ポートコネクタ42の内部に、第2流路58が構成されている。端部コネクタ44は、輸血用医療機器の規格に沿った汎用の雌型ロックコネクタが適用される。本体部24は、この端部コネクタ44により血液導入キット26に接続可能に構成される。
【0044】
血液導入キット26は、患者に導入部25を構築する部材であり、本体部24と一体に包装されて提供される。この血液導入キット26は、端部コネクタ52(被接続部)と、患者に穿刺(挿入)及び留置される投与針54(投与部)と、一端部が端部コネクタ52に接続され他端部が投与針54に接続される接続チューブ56とを有する。
【0045】
血液導入キット26の端部コネクタ52は、例えば、雄型ロックコネクタが適用され、本体部24の端部コネクタ44に接続される。投与針54は、一対のウイング54aを有する翼状針に構成されている。この場合、一対のウイング54aは医師や看護師等の医療従事者が把持穿刺操作を行う把持部になると共に、献血中に供血者の体表に拡げられテープや包帯による固定時に使用される固定部となる。なお、投与針54は、翼状針に限定されず、種々の構造を適用可能である。
【0046】
また、投与下流チューブ72の途中位置には、点滴筒48及びローラクランプ50が設けられている。点滴筒48は、患者に投与する血液の投与速度を確認可能とする。ローラクランプ50は、医療従事者のローラの回転操作によって、投与下流チューブ72の流路14を開閉する。例えばプライミング工程が実施された後、ローラクランプ50は、本体部24の端部コネクタ44と血液導入キット26の端部コネクタ52を接続するまでの間、流路14を遮断するように操作される。
【0047】
そして、輸血システム10のバイパスチューブ92は、第2経路90を構成し、白血球除去フィルタ82を迂回するように設けられる。具体的には、バイパスチューブ92は、その一端部が第1の3ポートコネクタ40に接続され、その他端部が第2の3ポートコネクタ42に接続される。すなわち、バイパスチューブ92、第1の3ポートコネクタ40及び第2の3ポートコネクタ42の内部に、バイパス流路59が構成されている。このバイパスチューブ92は、フィルタ上流チューブ84及びフィルタ下流チューブ86を足した長さよりも、長尺に形成されている。
【0048】
バイパスチューブ92の途中位置には、第2クランプ94が設けられている。第2クランプ94は、医療従事者による、バイパスチューブ92の流路14(つまり第2経路90)の開閉を変更可能とする。
【0049】
なお、後述するように通常時には、第1経路80が使用されることで、第2経路90(すなわちバイパスチューブ92)は、第2クランプ94によって流路14を遮断状態としている。このため、第2クランプ94は、ノーマリクローズ型の構造を適用することがより好ましく、バイパスチューブ92も長期間の流路14の閉塞状態から容易に弾性復元な物性を有するとよい。
【0050】
以上のチューブ12を構成する材料は、軟質樹脂材料が好適であり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等のフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂又はこれらの混合物、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルナイロン樹脂、オレフィン系樹脂とエチレン・酢酸ビニル共重合体との混合物等があげられる。
【0051】
なお、本実施形態に係る輸血システム10は、上述した部材以外にも、流動経路16に組み付け可能な種々の部材を適用することができることは勿論である。
【0052】
第1実施形態に係る輸血システム10は、基本的には以上のように構成され、以下、その使用方法について説明する。
【0053】
輸血システム10は、例えば、戦地や災害時等の緊急医療現場において、供血者から血液を採取して、この血液を直ぐに患者に輸血するために使用される。なお、供血者に採血経路18を接続して血液バッグ22に血液を貯留(採血)する工程については、周知の方法をとり得るため、その説明を省略する。
【0054】
例えば患者への輸血では、
図2に示すように、本体部24のプライミング工程、血液導入キット26により導入部25を患者に構築する導入部構築工程、本体部24と血液導入キット26を接続する組付工程、及び血液を投与する投与工程を実施する。
【0055】
プライミング工程(ステップS1)では、血液バッグ22から血液を流出させて、投与側血液バッグ接続チューブ62、フィルタ上流チューブ84、フィルタ下流チューブ86、投与下流チューブ72及びバイパスチューブ92の各流路14を流動させる。この際、ローラクランプ50は、投与下流チューブ72を開放しており、血液は、各流路14内に存在するエアを押し出しつつ、投与下流チューブ72の他端部(端部コネクタ44)付近に至る。そして、血液が流路14を満たすと、ローラクランプ50を閉じて流路14を一旦遮断する。
【0056】
導入部構築工程(ステップS2)では、医療従事者が血液導入キット26の投与針54を患者に穿刺及び留置して、血液導入キット26を介して患者の血管への流路14を確保する。投与針54の穿刺時には、患者の血液がフラッシュバックすることで、この血液が接続チューブ56から端部コネクタ52に至り、血液導入キット26のエアが抜ける。
【0057】
このため、組付工程(ステップS3)では、本体部24の端部コネクタ44と、血液導入キット26の端部コネクタ52とを接続することで、エアを排除した状態で本体部24の投与経路20が患者の血管まで連通する。従って、組付工程後の投与工程では、エアを殆ど含まない血液が患者に投与される。
【0058】
投与工程(ステップS4)では、基本的(通常時)に、第1経路80を使用して患者に輸血を行う。すなわち
図3Aに示すように、医療従事者は、第2クランプ94の閉操作より第2経路90を閉塞して、第1経路80を通して血液を流動させる。つまり、血液バッグ22から流出した供血者の全血WBは、上流経路60から第1経路80に流動し、白血球除去フィルタ82を通過することで、白血球が除去された血漿、血小板、赤血球を含む血液成分(以下、除去済血液RBという)となる。そして、除去済血液RBは、第1経路80から下流経路70及び血液導入キット26を介して患者に投与される。
【0059】
すなわち、輸血システム10は、第1経路80の選択により、白血球除去フィルタ82に血液を通過させることで、輸血速度が低下するが、除去済血液RBを継続的に患者に投与する安全な輸血を行うことができる。
【0060】
そして、輸血システム10は、患者に大量出血等が生じて多量の輸血を急速に行う状況下等において、第2経路90を使用して患者に輸血を行う。この場合、医療従事者は、閉塞中の第2クランプ94を開操作して第2経路90を開放する一方で、第1クランプ88を閉操作して第1経路80を閉塞する。これにより、
図3Bに示すように、流動経路16(投与経路20)が第1経路80から第2経路90に切り替わる。
【0061】
つまり、全血WBが血液バッグ22から上流経路60、第2経路90及び下流経路70の順に流動して、患者に投与される。投与される全血WBは、白血球除去フィルタ82を通過していないことで、白血球が除去されていないが、大量且つ急速に患者に投与される。これにより医療従事者は、急変した患者への救命処置を迅速に行うことができる。
【0062】
なお、輸血システム10の使用方法は、上記の手順に限定されるものではない。例えば、患者の血管に通じる導入部25が先に構築されていれば、この導入部25に本体部24の端部コネクタ44を接続する(すなわち導入部構築工程を省略する)ことができる。
【0063】
以上の第1実施形態に係る輸血システム10(輸血キット、緊急輸血用輸血キット、輸血キットの使用方法)は、以下の効果を奏する。
【0064】
輸血システム10は、通常時に、第1流路57及び第2流路58を経由して血液を流動させることで、白血球除去フィルタ82にて白血球を除去した輸血を行うことができる。これにより患者の輸血副作用を抑制する安全な輸血を行うことが可能となる。また輸血システム10は、緊急時に、バイパス流路59を経由して血液を流動させることで、白血球除去フィルタ82を介さずに、血液を大量且つ急速に投与することが可能となる。すなわち、輸血システム10は、第1経路80と第2経路90を簡単に切り換え可能とすることで、より使い勝手に優れたものとなり、医療従事者の作業を軽減すると共に、医療処置を迅速化することができる。
【0065】
また、輸血システム10は、上流経路60、下流経路70及び第2経路90において、血液を滞留させない構成とする(例えば、血液成分をバッグに貯留させる等の構成がない)ことで、患者への多量の輸血を急速に行うことができる。さらに、輸血システム10は、第1経路80に設けられた第1クランプ88、及び第2経路90に設けられた第2クランプ94を医療従事者が操作することで、流路14の閉塞及び開放を簡単に切り換えることができる。
【0066】
そして、本体部24の端部コネクタ44は、患者に構築された導入部25に対して簡単に接続することができ、輸血をより短時間に開始させることが可能となる。また、上流経路60が血液バッグ22に直接連結されていることで、輸血システム10は、血液バッグ22に貯留された血液を患者に直ちに投与することが可能となり、より迅速に輸血を行うことができる。さらにまた、輸血システム10は、採血経路18が血液バッグ22に直接連結されていることで、供血者の血液を貯留した後、その血液バッグ22から直ぐに輸血を行うことができる。
【0067】
〔第2実施形態〕
本発明の第2実施形態に係る輸血システム10Aは、
図4に示すように、投与経路20の下流側(下流経路70)に導入部25を構築する導入構造部74が一体的に設けられている点で、第1実施形態に係る輸血システム10と異なる。なお、以降の説明において、上述の実施形態と同じ構成又は同じ機能を有する要素には、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0068】
具体的には、下流経路70の導入構造部74は、投与下流チューブ72のローラクランプ50よりも下流側に位置し、オスクローズドコネクタ76及び投与針54(輸血部:翼状針)を備える。なお、輸血システム10Aの採血経路18、上流経路60、第1経路80及び第2経路90は、第1実施形態と同一の構成である。
【0069】
オスクローズドコネクタ76は、投与下流チューブ72と投与針54を連通するメイン流路76aを備え、且つメイン流路76aから分岐するサブ流路76bを備える3ポート型に構成されている。そして、オスクローズドコネクタ76には、サブ流路76bを閉塞するように、エアベント部77であるエアベントフィルタ付きキャップ78が設けられる。
【0070】
エアベントフィルタ付きキャップ78は、オスクローズドコネクタ76内のサブ流路76bに対向する図示しないフィルタにより、サブ流路76bに案内されたエアを排出する一方で、血液の排出を規制する。また、オスクローズドコネクタ76は、エアベントフィルタ付きキャップ78が取り外された場合は、オスクローズドコネクタ76のサブ流路76bを自己閉塞する。これによりオスクローズドコネクタ76からの血液の流出がなくなり、投与針54に血液を良好に流動させる。
【0071】
投与針54は、オスクローズドコネクタ76の下流側の近傍位置に設けられることで、血液バッグ22からのプライミング後に、エアが殆ど混じり込んでいない血液を患者に供給する。
【0072】
第2実施形態に係る輸血システム10Aは、基本的には以上のように構成される。この輸血システム10Aを使用する場合は、プライミング工程、導入部構築工程、及び投与工程を実施する(
図2中のステップS3を省いたフロー)。
【0073】
プライミング工程では、血液バッグ22から投与経路20に血液を流出させ、血液は、各流路14内に存在するエアを押し出しつつ流動する。この各流路14のエアは、エアベントフィルタ付きキャップ78を介して外部に流出し、これにより血液が投与経路20の流路14を概ね満たす。すなわち、エアベント部77によって血液バッグ22の血液は、投与経路20内のオスクローズドコネクタ76までの流路14を自動的にプライミングすることができる。
【0074】
また導入部構築工程において、医療従事者は、輸血システム10Aの投与針54を患者の血管内に穿刺及び留置する。これにより投与針54から患者の血液がフラッシュバッグし、オスクローズドコネクタ76よりも先端側のエアがエアベントフィルタ付きキャップ78を介して外部に流出する。そして下流経路70までプライミングされた血液と、フラッシュバッグした血液が混じり合うようになる。プライミング工程及び導入部構築工程の後は、エアベントフィルタ付きキャップ78を外すことで、オスクローズドコネクタ76のサブ流路76bを遮断する。
【0075】
これにより、投与工程では、エアを殆ど含まない血液を患者に投与することができる。また投与工程は、第1実施形態と同様に、通常時に第1経路80を経由した輸血と、緊急時に第2経路90を経由した輸血とを選択的に実施することができる。
【0076】
以上のように、第2実施形態に係る輸血システム10Aでも、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。特に、この輸血システム10Aは、下流経路70に投与針54を直接連結した構成であるため、第1実施形態中の端部コネクタ44、52同士を接続する工程を省くことができる。これにより、一層迅速に血液の投与を開始することが可能となる。また、輸血システム10Aは、エアベント部77を用いることで、プライミング工程の作業が簡単化(自動化)するので、使い勝手がより向上する。
【0077】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、発明の要旨に沿って種々の改変が可能である。例えば、第1経路80と第2経路90の切り換えは、第1クランプ88及び第2クランプ94による流路14の開閉操作に限定されない。一例として、第1の3ポートコネクタ40に代えて、上流経路60と第1経路80の連通状態と、上流経路60と第2経路90の連通状態を切り換え可能な三方活栓を適用してもよい。
【0078】
また、第1経路80は、遠心分離装置等にセットされて、全血の遠心分離を行い、分離された血液成分(血漿や血小板等)を下流経路70に流動させる構成でもよい。
【0079】
またさらに、投与経路20は、血液バッグ22に直接連結される構成に限定されず、びん針等の接続機構(不図示)によって、別途供給された血液バッグ22に接続する構成でもよい。すなわち、本発明に係る輸血システム10、10Aは、投与経路20のみによって構成することが可能である。
【0080】
図5に示す変形例に係る輸血システム11は、端部コネクタ44の上流側近傍位置にエアベントフィルタ79(エアベント部77)を有する点で、第1実施形態に係る輸血システム10と異なる。なお、エアベント部77の構成以外は、輸血システム10と同様である。
【0081】
エアベントフィルタ79は、下流経路70においてエアを排出する一方で、血液の排出を規制する。これにより端部コネクタ44を有する輸血システム11でも、自動的にプライミングを実施することができる。